説明

インクジェット用白インク組成物、それを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置

【課題】 インク吸収性のない透明な記録媒体や明度が低い記録媒体や金属表面に対して良好な視認性を有し、かつ高い画像品質や乾燥性、基材接着性、耐久性等を示し、特に分散安定性、インク保存性および出射安定性が良好で硬化性および低収縮性、安全性に優れたカチオン系のインクジェット用白インク組成物と、それを用いた画像形成方法およびインクジェット記録装置の提供。
【解決手段】 酸化チタン、カチオン重合性化合物及び光重合開始剤を含有するインクジェット用白インク組成物において、該酸化チタンがアナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンを併用することを特徴とするインクジェット用白インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット用白インク組成物(以下、インクジェット用インク組成物、インク組成物ともいう)に関し、更に詳しくは、インク吸収性のない透明な記録媒体や明度が低い記録媒体や金属表面に対して良好な視認性を有し、かつインク保存性、出射安定性に優れ、また高い画像品質や乾燥性、基材接着性、耐久性等を示し、特に硬化性および低収縮性、安全性に優れたカチオン系のインクジェット用白インク組成物と、それを用いた画像形成方法およびインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は簡便、安価に画像を作成でき、また近年の画質の向上に伴い、各種印刷分野でも充分に対応できる高画質記録が可能な技術として注目を浴びている。しかし通常のインクジェット用インク組成物は印字方式から水系溶媒や非水系溶媒を主成分とした低粘度のインク組成物が一般的で、記録媒体としてはインク吸収性のあるものや、さらに高画質を得るためには専用紙が必要となる。
【0003】
これに対しインク吸収性のないフィルムや金属などの記録媒体に固着し印字できるインク組成物としては、例えば特許文献1に記載されている紫外線照射により高分子化する成分を含んでなるインク組成物や、特許文献2、3に記載されている色剤、紫外線硬化剤、光重合開始剤等を含んでなる紫外線硬化型インク組成物が提案されている。
【0004】
しかし、従来紫外線硬化型インクに用いられている多官能アクリレート系は、硬化時に酸素による硬化阻害をうけやすい、皮膚刺激性や感作性(かぶれ)が高く安全な化合物が少ない、硬化時の収縮率が高く、特に軟包装で使われる薄膜基材や、粘着ラベルなどに用いた場合、収縮が起こりやすい、など取り扱いが難しい。
【0005】
また、通常のインクジェット用のインクはほとんどが白色系の記録媒体への印字を対象とした透明性の高いインクで、透明な基材や明度の低い基材に印字した場合、コントラストが得られず、鮮明なカラー発色性が得られなかったり、視認性のある表示が難しくなる。
【0006】
視認性が悪い場合、隠蔽性の高い白インクを用いて視認性を得る手法が知られており、インクジェット用の白色インク組成物としては、例えば特許文献4に記載の無機白色顔料、有機溶剤、結着用樹脂などからなり5〜40℃における粘度が1〜15cpの白色インク組成物や、特許文献5に記載されている酸化チタン、重合性化合物、光重合開始剤と水性溶媒からなる光硬化型インクジェット記録用インク組成物が提案されている。
【0007】
しかし、これらのインク組成物は溶媒を含むため、常温では低粘度で、その結果インク吸収性のない記録媒体では着弾時にドットが広がったり、溶媒残留分を除くために加熱乾燥が必要となり、熱収縮性のある基材などへの印字には適さない。
【0008】
特に特許文献5においては多官能アクリレート系を用いているため、安全性などの上記問題が発生してしまう。
【0009】
また、通常印刷インクの白インクの顔料として、隠蔽力の強い酸化チタンが用いられることは公知であるが、酸化チタンは有機顔料に比べ、比重が重いため、長期間静置されると顔料が沈降しやすく、高粘度の塗料に比較して、低粘度のインクジェットインクでは特に沈降しやすく、大きな問題となってしまう。
【0010】
また、近年はインクジェット記録方式において、より高精細な記録が求められノズル径も細くなっているため、分散粒径が大きかったり、分散が不安定な場合、ノズル先端における目詰まりが発生したり出射性が劣化してしまう。
【特許文献1】特開平3−216379号公報
【特許文献2】米国特許5,623,001号明細書
【特許文献3】特開平8−143806号公報
【特許文献4】特公平2−45663号公報
【特許文献5】特開2000−336295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、すなわちインク吸収性のない透明な記録媒体や明度が低い記録媒体や金属表面に対して良好な視認性を有し、かつ高い画像品質や乾燥性、基材接着性、耐久性等を示し、特に分散安定性、インク保存性および出射安定性が良好で硬化性および低収縮性、安全性に優れたカチオン系のインクジェット用白インク組成物と、それを用いた画像形成方法およびインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0013】
(請求項1)
酸化チタン、カチオン重合性化合物及び光重合開始剤を含有するインクジェット用白インク組成物において、該酸化チタンがアナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンを併用することを特徴とするインクジェット用白インク組成物。
【0014】
(請求項2)
酸化チタンの粒径が50〜500nmであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用白インク組成物。
【0015】
(請求項3)
ルチル型とアナターゼ型の比率が5:95〜70:30の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット用白インク組成物。
【0016】
(請求項4)
ルチル型とアナターゼ型の比率が5:95〜50:50の範囲であることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット用白インク組成物。
【0017】
(請求項5)
前記カチオン重合性化合物の少なくとも一種が下記一般式(A)で表される脂環式エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェット用白インク組成物。
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、R100は置換基を表し、m0は0〜2を表す。r0は1〜3を表す。L0は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr0+1価の連結基または単結合を表す。)
(請求項6)
前記一般式(A)で表される脂環式エポキシ化合物が、下記一般式(I)及び(II)で表される脂環式エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種の脂環式エポキシ化合物であることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット用白インク組成物。
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、R101は置換基を表し、m1は0〜2を表す。r1は1〜3を表す。L1は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr1+1価の連結基または単結合を表す。)
【0022】
【化3】

【0023】
(式中、R102は置換基を表し、m2は0〜2を表す。r2は1〜3を表す。L2は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr2+1価の連結基または単結合を表す。)
(請求項7)
オキセタン化合物を含有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のインクジェット用白インク組成物。
【0024】
(請求項8)
光重合開始剤が、活性光線照射後にベンゼンを発生しないスルホニウム塩であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のインクジェット用白インク組成物。
【0025】
(請求項9)
塩基性化合物を含有することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のインクジェット用白インク組成物。
【0026】
(請求項10)
25℃における粘度が7〜50mPa・sであることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のインクジェット用白インク組成物。
【0027】
(請求項11)
重合に関与しない溶媒含有量が5%未満であることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のインクジェット用白インク組成物。
【0028】
(請求項12)
インクジェット記録ヘッドから請求項1〜11の何れか1項に記載のインクジェット用白インク組成物を記録材料上に噴射し、該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、該インクジェット用白インク組成物が着弾した後、0.001〜1.0秒の間に活性光線を照射することを特徴とする画像形成方法。
【0029】
(請求項13)
インクジェット記録ヘッドから請求項1〜11の何れか1項に記載のインクジェット用白インク組成物を記録材料上に噴射して該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、ラインヘッド方式の記録ヘッドより噴射して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【0030】
(請求項14)
請求項12または13に記載の画像形成方法に用いられるインクジェット記録装置であって、請求項1〜11の何れか1項に記載のインクジェット用白インク組成物を35〜100℃に加熱した後、吐出することを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0031】
本発明によるカチオン系のインクジェット用白インク組成物と、それを用いた画像形成方法およびインクジェット記録装置は、インク吸収性のない透明な記録媒体や明度が低い記録媒体や金属表面に対して良好な視認性を有し、かつ高い画像品質や乾燥性、基材接着性、耐久性等を示し、特に分散安定性、インク保存性および出射安定性が良好で硬化性および低収縮性、安全性に優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明を更に詳しく説明する。
【0033】
酸化チタン
酸化チタンには、アナターゼ型、ルチル型およびブルーカイト型の3つの結晶形態があるが、汎用なものとしてはアナターゼ型とルチル型に大別できる。アナターゼ型は比重が小さく小粒径化しやすく、一方ルチル型は屈折率が大きく隠蔽性が高い。
【0034】
本発明においては、それぞれの特徴を生かし、比重が小さく小粒径化しやすいアナターゼ型と、着色力の高いルチル型を併用することで、高い隠蔽性を有しながらも、インクの分散安定性や保存性、出射性が良好になる。
【0035】
併用する比率は、任意に選べるが、ルチル型とアナターゼ型の比率は、5:95〜70:30が好ましい。ルチル型の比率がこの範囲より少ないと隠蔽性がやや劣り、この範囲より少ないと、分散安定性がやや劣る。
【0036】
酸化チタンの表面処理方法としては、水系処理、気相処理等が行われるが、表面処理剤としては一般的にアルミナ・シリカ処理が使用され、未処理、アルミナ処理、アルミナ・シリカ処理等がある。
【0037】
酸化チタンの平均粒径は、50〜500nmであることが好ましく、50nm未満では十分な隠蔽性が得られず、500nmを超えると、インク保存性や出射性が劣化する傾向にある。より好ましくは100〜300nmである。
【0038】
活性剤
本発明における酸化チタンを分散させるための活性剤としては、インク組成物中の酸化チタンの分散性を良くすることにより、インク調製時の混錬、および調製後のインクの保存性や出射性を改良するものであり、公知の界面活性剤の他、高分子分散剤が好ましく使用される。
【0039】
例えば、ポリエチレングリコールエステル化合物、ポリエチレングリコールエーテル化合物、ポリオキシエチレンソルビタンエステル化合物、ソルビタンアルキルエステル化合物、脂肪族多価カルボン酸化合物、燐酸エステル化合物、ポリエステル酸のアマイドアミン塩、酸化ポリエチレン系化合物、脂肪酸アマイドワックス、ポリエーテルエステル酸のアミン塩、高分子量ポリエステル酸のアマイドアミン塩、高分子共重合物、高分子量ブロック共重合物、不飽和ポリアミノアマイドと低分子量酸ポリマーとの塩、分散体に親和性のある基を持った水酸基含有カルボン酸化合物、低分子量不飽和酸性ポリカルボン酸ポリマーとポリシロキサン共重合体化合物、低分子量不飽和酸性ポリカルボン酸ポリエステルとポリシロキサン共重合体化合物、低分子量不飽和ポリカルボン酸ポリマーの部分アミドおよびアルキルアンモニウム塩とポリシロキ酸共重合体化合物、ポリカルボン酸アルキルアンモニウム塩化合物、ポリアミノアミドのポリカルボン酸塩化合物、低分子量不飽和酸性ポリカルボン酸ポリエステル化合物などが挙げられる。
【0040】
これら活性剤のうち、本発明において、特にポリエステル系分散剤や高分子量ポリエステル系分散剤、ポリエステル酸のアマイドアミン塩、高分子量ポリエステル酸のアマイドアミン塩を用いることで、分散安定性、インク保存性、出射性がより良好になる。
活性剤の添加量は、酸化チタンに対して1〜30質量%、より好ましくは3〜15質量%の範囲で用いる。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0041】
本発明のインク組成物においては、光重合性化合物として、前記一般式(A)で表される脂環式エポキシ化合物を含有することを1つの特徴としている。
【0042】
前記一般式(A)において、R100は置換基を表し、m0は0〜2を表す。r0は1〜3を表す。L0は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr0+1価の連結基または単結合を表す。
【0043】
更に、前記一般式(A)で表される脂環式エポキシ化合物が、前記一般式(I)または(II)で表される脂環式エポキシ化合物であることが好ましい。
【0044】
前記一般式(I)において、R101は置換基を表し、m1は0〜2を表す。r1は1〜3を表す。L1は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr1+1価の連結基または単結合を表す。
【0045】
前記一般式(II)において、R102は置換基を表し、m2は0〜2を表す。r2は1〜3を表す。L2は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr2+1価の連結基または単結合を表す。
【0046】
一般式(A)、(I)または(II)において、R100、R101、R102、は置換基を表す、置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子、フッ素原子、等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、等)、アシル基(例えばアセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基、等)、アシルオキシ基(例えばアセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、等)、等が挙げられる。置換基として好ましいのは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基である。
【0047】
m0、m1、m2、は0〜2を表し、0または1が好ましい。
【0048】
0は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr0+1価の連結基あるいは単結合を、L1は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr1+1価の連結基あるいは単結合を、L2は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr2+1価の連結基あるいは単結合を表す。
【0049】
主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15の2価の連結基の例としては以下の基およびこれらの基と−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0050】
メチレン基:−CH2
エチリデン基:>CHCH3
イソプロピリデン基:>C(CH32
1,2−エチレン基:−CH2CH2−、
1,2−プロピレン基:−CH(CH3)CH2−、
1,3−プロパンジイル基:−CH2CH2CH2−、
2,2−ジメチル−1,3−プロパンジイル基:−CH2C(CH32CH2−、
2,2−ジメトキシ−1,3−プロパンジイル基:−CH2C(OCH32CH2−、
2,2−ジメトキシメチル−1,3−プロパンジイル基:−CH2C(CH2OCH32CH2−、
1−メチル−1,3−プロパンジイル基:−CH(CH3)CH2CH2−、
1,4−ブタンジイル基:−CH2CH2CH2CH2−、
1,5−ペンタンジイル基:−CH2CH2CH2CH2CH2−、
オキシジエチレン基:−CH2CH2OCH2CH2−、
チオジエチレン基:−CH2CH2SCH2CH2−、
3−オキソチオジエチレン基:−CH2CH2SOCH2CH2−、
3,3−ジオキソチオジエチレン基:−CH2CH2SO2CH2CH2−、
1,4−ジメチル−3−オキサ−1,5−ペンタンジイル基:−CH(CH3)CH2O−CH(CH3)CH2−、
3−オキソペンタンジイル基:−CH2CH2COCH2CH2−、
1,5−ジオキソ−3−オキサペンタンジイル基:−COCH2OCH2CO−、
4−オキサ−1,7−ヘプタンジイル基:−CH2CH2CH2OCH2CH2CH2−、
3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基:−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−、
1,4,7−トリメチル−3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基:−CH(CH3)CH2O−CH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2−、
5,5−ジメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基:−CH2CH2OCH2C(CH32CH2OCH2CH2−、
5,5−ジメトキシ−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基:−CH2CH2OCH2C(OCH32CH2OCH2CH2−、
5,5−ジメトキシメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基:−CH2CH2OCH2C(CH2OCH32CH2OCH2CH2−、
4,7−ジオキソ−3,8−ジオキサ−1,10−デカンジイル基:−CH2CH2O−COCH2CH2CO−OCH2CH2−、
3,8−ジオキソ−4,7−ジオキサ−1,10−デカンジイル基:−CH2CH2CO−OCH2CH2O−COCH2CH2−、
1,3−シクロペンタンジイル基:−1,3−C58−、
1,2−シクロヘキサンジイル基:−1,2−C610−、
1,3−シクロヘキサンジイル基:−1,3−C610−、
1,4−シクロヘキサンジイル基:−1,4−C610−、
2,5−テトラヒドロフランジイル基:2,5−C46O−、
p−フェニレン基:−p−C64−、
m−フェニレン基:−m−C64−、
α,α′−o−キシリレン基:−o−CH2−C64−CH2−、
α,α′−m−キシリレン基:−m−CH2−C64−CH2−、
α,α′−p−キシリレン基:−p−CH2−C64−CH2−、
フラン−2,5−ジイル−ビスメチレン基:2,5−CH2−C42O−CH2−、
チオフェン−2,5−ジイル−ビスメチレン基:2,5−CH2−C42S−CH2−、
イソプロピリデンビス−p−フェニレン基:−p−C64−C(CH32−p−C64−、
3価以上の連結基としては、上記に挙げた2価の連結基から任意の部位の水素原子を必要なだけ除いてできる基およびそれらと−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0051】
0、L1、L2は置換基を有していても良い。置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等)等が挙げられる。置換基として好ましいのは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基である。
【0052】
0、L1、L2としては主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜8の2価の連結基が好ましく、主鎖が炭素のみからなる炭素数1〜5の2価の連結基がより好ましい。
【0053】
また、本発明において用いられる脂環式エポキシ化合物の分子量は、170〜2000の範囲が好ましく、余り分子量が大きいと、インクとしたときに粘度が高くなるため適さない。
【0054】
以下、好ましい一般式(A)、(I)または(II)で表される脂環式エポキシ化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
【化4】

【0056】
【化5】

【0057】
上記説明した本発明に係る脂環式エポキシ化合物の添加量としては、インク全質量に対し10〜80質量%含有することが好ましい。10質量%未満であると硬化環境(温度、湿度)により硬化性が著しく変わり使えない。80質量%を超えると、硬化後の膜物性が弱く、使えない。本発明では脂環式エポキシ化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0058】
また、本発明に係る脂環式エポキシ化合物は、その製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed. by Alfred Hasfner, The chemistry of heterocyclic compounds−Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes, John & Wiley and Sons, An Interscience Publication, New York, 1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号、特許第2906275号、特許第2926262号公報等の文献を参考にして合成できる。
【0059】
本発明の組成物においては、上記説明した前記一般式(A)で表される新規な脂環式エポキシ化合物と共に、その他のオキシラン基含有化合物と併用してもよい。
【0060】
本発明に用いられるオキシラン基含有化合物としては、通常、エポキシ樹脂として用いられているモノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれも使用可能である。具体的には、従来公知の芳香族エポキシド、脂環族エポキシド及び脂肪族エポキシドが挙げられる。なお、以下エポキシドとは、モノマーまたはそのオリゴマーを意味する。これら化合物は一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。
【0061】
芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジまたはポリグリシジルエーテルであり、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0062】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく、具体例としては、例えば、ダイセル化学工業(株)製、セロキサイド2021、セロキサイド2021A、セロキサイド2021P、セロキサイド2080、セロキサイド2000、エポリードGT301、エポリードGT302、エポリードGT401、エポリードGT403、EHPE−3150、EHPEL3150CE、ユニオンカーバイド社製、UVR−6105、UVR−6110、UVR−6128、UVR−6100、UVR−6216、UVR−6000等を挙げることができる。
【0063】
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0064】
更に、これらの化合物の他に、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル及びフェノール、クレゾールのモノグリシジルエーテル等も用いることができる。これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
また、本発明においてはAMES及び感作性などの安全性の観点から、オキシラン基を有するエポキシ化合物としては、エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドの少なくとも一方であることが特に好ましい。エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセライドにエポキシ基を導入したものであれば、特に制限はなく用いられる。エポキシ化脂肪酸エステルとしては、オレイン酸エステルをエポキシ化して製造されたもので、エポキシステアリン酸メチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等が用いられる。また、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、同様に大豆油、アマニ油、ヒマシ油等をエポキシ化して製造されたもので、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ヒマシ油等が用いられる。
【0065】
本発明の活性光線硬化型組成物においては、光重合性化合物として、エポキシ化合物の他に、公知の光重合性化合物を併せて用いることもできる。
【0066】
本発明の活性光線硬化型インク組成物においては、光重合性化合物として少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を併用してもよい。
【0067】
また、オキセタン環を1個含有する単官能オキセタン化合物とオキセタン環を2個以上含有する多官能オキセタン化合物とを併用することが、硬化後の膜強度と記録材料への密着性を向上させる上で好ましい。ただし、オキセタン環を5個以上有する化合物を使用すると、インク組成物の粘度が高くなるため、取扱いが困難になったり、またインク組成物のガラス転移温度が高くなるため、得られる硬化物の粘着性が十分でなくなってしまう。本発明で使用するオキセタン環を有する化合物は、オキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。
【0068】
本発明の組成物において、オキセタン環を有する化合物としては、全組成物中の30〜95質量%、好ましくは50〜80質量%含有される。
【0069】
本発明の組成物においては、本発明に係る光重合性化合物と共に、公知の光重合性下化合物の併用を排除するものではなく、例えば、(1)スチレン誘導体、(2)ビニルナフタレン誘導体、(3)ビニルエーテル類、(4)N−ビニル化合物等を用いることもできる。
【0070】
(1)スチレン誘導体
例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン等
(2)ビニルナフタレン誘導体
例えば、1−ビニルナフタレン、α−メチル−1−ビニルナフタレン、β−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メトキシ−1−ビニルナフタレン等
(3)ビニルエーテル類
例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0071】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮するとジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい
(4)N−ビニル化合物類
例えば、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルインドール、N−ビニルピロール、N−ビニルフェノチアジン、N−ビニルアセトアニリド、N−ビニルエチルアセトアミド、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルフタルイミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール等
次に、活性光線照射後にベンゼンを発生しないオニウム塩(光酸発生剤)について説明する。
【0072】
本発明における「活性光線照射後にベンゼンを発生しない」とは、実質的にベンゼンを発生しないことを指し、具体的にはインク組成物中にオニウム塩(光酸発生剤)を5質量%含有したインクを用いて厚さ15μm、約100m2の画像を印字し、インク膜面を30℃に保った状態で光酸発生剤が十分分解する量の活性光線を照射した際に発生するベンゼンの量が、5μg以下の極微量あるいは皆無であることを指す。該オニウム塩としては、トリアリールスルホニウム塩あるいはジアリールヨードニウム塩が好ましく、S+あるいはI+と結合するベンゼン環に置換基をもつものであれば、上記条件を満たす。吐出安定性の観点からはトリアリールスルホニウム塩がより好ましい。
【0073】
例示化合物としては下記の物が挙げられる。X-はPF6-を表す。
【0074】
【化6】

【0075】
ジアリールヨードニウム塩の具体例としては、チバ・スペシャルティケミカルズ社製Irgacure250や日本曹達社製CI5102などが挙げられる。
【0076】
上記化合物はTHE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN Vol.71 No.11,1998年、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)に記載の光酸発生剤と同様、公知の方法にて容易に合成することができる。
【0077】
本発明においては、更なる吐出安定性の向上のため、塩基性化合物を併用することが好ましい。特に前記光酸発生剤としてヨードニウム塩を用いる場合には有効である。
【0078】
塩基性化合物としては、公知のあらゆるものを用いることができるが、代表的なものとして塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などが挙げられる。
【0079】
前記の塩基性アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属のアルコラート(ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等)が挙げられる。
【0080】
前記の塩基性アルカリ土類金属化合物としては、同様に、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、アルカリ金属のアルコラート(マグネシウムメトキシド等)が挙げられる。
【0081】
塩基性化合物を存在させる際のその濃度は、光重合性化合物の総量に対して10〜1000質量ppm、特に20〜500質量ppmの範囲であることが好ましい。なお、塩基性化合物は単独で使用しても複数を併用して使用してもよい。
【0082】
本発明のインク組成物には、上記説明した以外に様々な添加剤を用いることができる。例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、また素材特有の臭気を消すための消臭剤や香料などを添加することができる。
【0083】
また、ラジカル重合性モノマーと開始剤を組み合わせ、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとすることも可能である。
【0084】
本発明の活性光線硬化型インク組成物においては、25℃における粘度が7〜50mPa・sであることが、硬化環境(温度・湿度)に関係なく吐出が安定し、良好な硬化性を得るために好ましい。
【0085】
画像形成方法
(インクの吐出条件)
インクの吐出条件としては、記録ヘッド及びインクを35〜100℃に加熱し、吐出することが吐出安定性の点で好ましい。インク組成物は温度変動による粘度変動幅が大きく、粘度変動はそのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、インク温度を上げながらその温度を一定に保つことが必要である。インク温度の制御幅としては、設定温度±5℃、好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
【0086】
(インク着弾後の光照射条件)
本発明の画像形成方法においては、活性光線の照射条件として、インク着弾後0.001〜2.0秒の間に活性光線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001〜1.0秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングが出来るだけ早いことが特に重要となる。
【0087】
活性光線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号公報に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射はインク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号明細書では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明の画像形成方法においては、これらの何れの照射方法も用いることができる。
【0088】
また、活性光線を照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性光線を照射し、且つ全印字終了後、更に活性光線を照射する方法も好ましい態様の1つである。活性光線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
【0089】
従来、UVインクジェット方式では、インク着弾後のドット広がり、滲みを抑制のために、光源の総消費電力が1kW・hrを超える高照度の光源が用いられるのが通常であった。しかしながら、これらの光源を用いると、特にシュリンクラベルなどへの印字では、記録材料の収縮があまりにも大きく、実質上使用できないのが現状であった。
【0090】
本発明では、1時間あたりの消費電力が1kW以下の光源を用いても、高精細な画像を形成でき、且つ記録材料の収縮も実用上許容レベル内に収められる。1時間あたりの消費電力が1kW未満の光源の例としては、蛍光管、冷陰極管、LEDなどがあるが、これらに限定されない。
【0091】
インクジェット記録装置
以下、本発明のインクジェット記録装置について、図面を適宜参照しながら説明する。尚、図面の記録装置はあくまでも本発明のインクジェット記録装置の一態様であり、本発明のインクジェット記録装置はこの図面に限定されない。
【0092】
図1は本発明のインクジェット記録装置の要部の構成を示す正面図である。記録装置1は、ヘッドキャリッジ2、記録ヘッド3、照射手段4、プラテン部5等を備えて構成される。この記録装置1は、記録材料Pの下にプラテン部5が設置されている。プラテン部5は、紫外線を吸収する機能を有しており、記録材料Pを通過してきた余分な紫外線を吸収する。その結果、高精細な画像を非常に安定に再現できる。
【0093】
記録材料Pは、ガイド部材6に案内され、搬送手段(図示せず)の作動により、図1における手前から奥の方向に移動する。ヘッド走査手段(図示せず)は、ヘッドキャリッジ2を図1におけるY方向に往復移動させることにより、ヘッドキャリッジ2に保持された記録ヘッド3の走査を行なう。
【0094】
ヘッドキャリッジ2は記録材料Pの上側に設置され、記録材料P上の画像印刷に用いる色の数に応じて後述する記録ヘッド3を複数個、吐出口を下側に配置して収納する。ヘッドキャリッジ2は、図1におけるY方向に往復自在な形態で記録装置1本体に対して設置されており、ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に往復移動する。
【0095】
記録ヘッド3は、インク供給手段(図示せず)により供給された活性光線硬化型インク(例えば、UV硬化インク)を、内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により、吐出口から記録材料Pに向けて吐出する。記録ヘッド3により吐出されるUVインクは色材、重合性モノマー、開始剤等を含んで組成されており、紫外線の照射を受けることで開始剤が触媒として作用することに伴なうモノマーの架橋、重合反応によって硬化する性質を有する。
【0096】
記録ヘッド3は記録材料Pの一端からヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に記録材料Pの他端まで移動するという走査の間に、記録材料Pにおける一定の領域(着弾可能領域)に対してUVインクをインク滴として吐出し、該着弾可能領域にインク滴を着弾させる。
【0097】
上記走査を適宜回数行ない、1領域の着弾可能領域に向けてUVインクの吐出を行なった後、搬送手段で記録材料Pを図1における手前から奥方向に適宜移動させ、再びヘッド走査手段による走査を行ないながら、記録ヘッド3により上記着弾可能領域に対し、図1における奥方向に隣接した次の着弾可能領域に対してUVインクの吐出を行なう。
【0098】
上述の操作を繰り返し、ヘッド走査手段及び搬送手段と連動して記録ヘッド3からUVインクを吐出することにより、記録材料P上にUVインク滴の集合体からなる画像が形成される。
【0099】
照射手段4は、特定の波長領域の紫外線を安定した露光エネルギーで発光する紫外線ランプ及び特定の波長の紫外線を透過するフィルターを備えて構成される。ここで、紫外線ランプとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザー、紫外線レーザー、冷陰極管、ブラックライト、LED(light emitting diode)等が適用可能であり、帯状のメタルハライドランプ、冷陰極管、水銀ランプもしくはブラックライトが好ましい。特に波長254nmの紫外線を発光する低圧水銀ランプ、冷陰極管、熱陰極管及び殺菌灯が滲み防止、ドット径制御を効率よく行なえ、好ましい。ブラックライトを照射手段4の放射線源に用いることで、UVインクを硬化するための照射手段4を安価に作製することができる。
【0100】
照射手段4は、記録ヘッド3がヘッド走査手段の駆動による1回の走査によってUVインクを吐出する着弾可能領域のうち、記録装置(UVインクジェットプリンタ)1で設定できる最大のものとほぼ同じ形状か、着弾可能領域よりも大きな形状を有する。
【0101】
照射手段4は、ヘッドキャリッジ2の両脇に、記録材料Pに対してほぼ平行に固定して設置される。
【0102】
前述したようにインク吐出部の照度を調整する手段としては、記録ヘッド3全体を遮光することはもちろんであるが、加えて照射手段4と記録材料Pの距離h1より、記録ヘッド3のインク吐出部31と記録材料Pとの距離h2を大きくしたり(h1<h2)、記録ヘッド3と照射手段4との距離dを離したり(dを大きく)することが有効である。又、記録ヘッド3と照射手段4の間を蛇腹構造7にすると更に好ましい。
【0103】
ここで、照射手段4で照射される紫外線の波長は、照射手段4に備えられた紫外線ランプ又はフィルターを交換することで適宜変更することができる。
【0104】
本発明の活性光線硬化型インク組成物は非常に吐出安定性が優れており、ラインヘッドタイプの記録装置を用いて画像形成する場合に、特に有効である。
【0105】
図2は、インクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【0106】
図2で示したインクジェット記録装置は、ラインヘッド方式と呼ばれており、ヘッドキャリッジ2に、インクジェット記録ヘッド3を記録材料Pの全幅をカバーするようにして複数個、固定配置されている。
【0107】
一方、ヘッドキャリッジ2の下流側には、同じく記録材料Pの全幅をカバーするようにして、本発明に係る210〜280nmに最高照度を有する発光ダイオードからなる照射光源8、例えば、図2に示すように走査方向に4個、副走査方向に10個配列して、インク印字面全域をカバーするように配置されている照射手段4が設けられている。
【0108】
このラインヘッド方式では、ヘッドキャリッジ2及び照射手段4は固定され、記録材料Pのみが搬送されて、インク出射及び硬化を行って画像形成を行う。
【実施例】
【0109】
以下に、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらの例に限定されるものではない。
【0110】
〔酸化チタン分散物の作製〕
以下の組成を加圧ニーダーにより配合し、次いでロールミルによって練肉・分散を行い、酸化チタン分散物1〜4を得た。
【0111】
酸化チタン分散物1
アナターゼ型酸化チタン(平均粒径0.1μm、屈折率2.52) 50.0質量%
ポリエステル系活性剤:KS873N(楠本化成製) 4.0質量%
オキセタン化合物(アロンオキセタンOXT−221:東亞合成化学社製)
46.0質量%
酸化チタン分散物2
アナターゼ型酸化チタン(平均粒径0.15μm、屈折率2.52)50.0質量%
高分子量ポリエステルアマイドアミン塩:DA−7300(楠本化成製)系活性剤
4.0質量%
オキセタン化合物(アロンオキセタンOXT−221:東亞合成化学社製)
46.0質量%
酸化チタン分散物3
ルチル型酸化チタン(平均粒径0.15μm、屈折率2.71) 50.0質量%
ポリエステル系活性剤:KS873N(楠本化成製) 4.0質量%
オキセタン化合物(アロンオキセタンOXT−221:東亞合成化学社製)
46.0質量%
酸化チタン分散物4
ルチル型酸化チタン(平均粒径0.15μm、屈折率2.71) 50.0質量%
高分子量ポリエステルアマイドアミン塩:DA−7300(楠本化成製)系活性剤
4.0質量%
オキセタン化合物(アロンオキセタンOXT−221:東亞合成化学社製)
46.0質量%
下記処方にしたがい、白インク組成物1〜3を調製した。
【0112】
白インク組成物1
酸化チタン分散物1(アナターゼ型) 25.0質量%
酸化チタン分散物3(ルチル型) 5.0質量%
脂環式エポキシ化合物(EP−1) 17.8質量%
オキセタン化合物(アロンオキセタンOXT−221:東亞合成化学社製)
34.2質量%
オキセタン化合物(アロンオキセタンOXT−212:東亞合成化学社製)
9.0質量%
オキセタン化合物(アロンオキセタンOXT−101:東亞合成化学社製)
3.0質量%
光重合開始剤(TAS−A) 5.0質量%
塩基性化合物(トリイソプロパノールアミン) 0.1質量%
界面活性剤(KF351:信越シリコーン社製) 0.8質量%
芳香剤(リナルール:高砂香料社製) 0.1質量%
【0113】
【化7】

【0114】
白インク組成物2
酸化チタン分散物2(アナターゼ型) 25.0質量%
酸化チタン分散物4(ルチル型) 5.0質量%
脂環式エポキシ化合物(EP−1) 17.8質量%
オキセタン化合物(アロンオキセタンOXT−221:東亞合成化学社製)
34.2質量%
オキセタン化合物(アロンオキセタンOXT−212:東亞合成化学社製)
9.0質量%
オキセタン化合物(アロンオキセタンOXT−101:東亞合成化学社製)
3.0質量%
光重合開始剤(SP−152:旭電化工業) 5.0質量%
塩基性化合物(トリイソプロパノールアミン) 0.1質量%
界面活性剤(KF351:信越シリコーン社製) 0.8質量%
芳香剤(リナルール:高砂香料社製) 0.1質量%
白インク組成物3(比較)
酸化チタン分散物3(ルチル型) 30.0質量%
脂環式エポキシ化合物(EP−1) 17.8質量%
オキセタン化合物(アロンオキセタンOXT−221:東亞合成化学社製)
34.2質量%
オキセタン化合物(アロンオキセタンOXT−212:東亞合成化学社製)
9.0質量%
オキセタン化合物(アロンオキセタンOXT−101:東亞合成化学社製)
3.0質量%
光重合開始剤(TAS−A) 5.0質量%
塩基性化合物(トリイソプロパノールアミン) 0.1質量%
界面活性剤(KF351:信越シリコーン社製) 0.8質量%
芳香剤(リナルール:高砂香料社製) 0.1質量%
白インク組成物4〜8
酸化チタン分散物1と酸化チタン分散物3の比率を下記表1のようにした以外は白インク組成物3と同様にして白インク組成物4〜8を得た。
【0115】
【表1】

【0116】
各白インク組成物について以下の評価を行った。
【0117】
<分散安定性>
上記インク組成物を25℃で7日間放置した後、沈降状態を評価した。
【0118】
○:変化なし
×:上澄み、沈殿物あり
<粒径>
マルバーン社製のゼータサイザーナノを用いて、動的散乱法によりインク組成物中の分散粒子の平均粒径を測定した。
【0119】
◎:100〜200nm
○:200〜300nm
△:300〜500nm
×:500nm以上
<出射性>
ピエゾ型インクジェットノズルを備えた図1に記載の構成からなるインクジェット記録装置に、上記インク組成物を装填し、巾600mm、長さ500mの長尺のポリエチレンテレフタレート記録材料へ、画像記録を連続して行い、下記の目詰まり及び吐出安定性の評価を行った。インク供給系は、インクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、前室タンクからヘッド部分まで断熱して50℃の加熱を行った。ピエゾヘッドは、2〜20plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動して、連続吐出した。着弾後、キャリッジ両脇のランプユニットにより瞬時(着弾後0.5秒未満)に硬化される。本発明でいうdpiとは、2.54cmあたりのドット数を表す。なお、インクジェット画像の形成は、上記方法に従って、25度、30%RHの環境下でそれぞれ行った。
【0120】
(目詰まり)
巾600mm、長さ500mの画像記録を行った後、目視で下記基準で目詰まりを評価した。
【0121】
○:目詰まりがほとんどない
△:約1割目詰まりがある
×:大部分が目詰まりを起こしている
(隠蔽性)
厚さ100μmの透明PETフィルムにワイヤーバーで10μmの厚みに塗布した後、紫外線照射し硬化させた後、測色機(グレタグマクベス社製 spectrolino keywizard)を用い、以下の条件で透過濃度を測定した。
【0122】
光源:D50、視野:2°視野、濃度:ANSIT、白色基準:abs、フィルター:Blue−filter
○:0.50以上
△:0.45以上0.50未満
×:0.45未満
(吐出安定性)
上記インクジェット記録装置において、キャリッジ速度400mm/sで双方向印字を行った。記録材料右端より500mm(左端からは100mm)のところまで連続吐出を行い、記録材料をヘッド幅送った後、キャリッジが再び戻る際に記録材料左端より100mmのところより連続吐出を行った。記録材料右端より500mmを通過してからキャリッジが折り返して、記録材料左端より100mmを通過する時間は4秒となるよう設定した。キャリッジの行きの印字端、帰りの印字始めの重なりを目視観察し、間欠出射時の速度のばらつきを評価し、下記の基準に従い吐出安定性を評価した。
【0123】
○:行きと帰りで着弾位置にズレは見られない
△:行きと帰りとで着弾位置のズレが見られ、帰りがやや遅れている
×:行きと帰りとで明瞭な着弾位置のズレが見られる
<インク保存性>
上記インク組成物を70℃、7日間で保存した後、分散安定性(沈降性)、粒径および出射性を評価した。
【0124】
以上により得られた各評価結果を表2に示す。
【0125】
【表2】

【0126】
表2より本発明の白インク組成物は比較の白インク組成物に比べ分散安定性、インク保存性、出射性に優れていることが分かる。また、硬化した膜の膜強度および基材との密着性を、爪で擦り評価したが、いずれも画像が剥がれることなく良好な擦過性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す正面図である。
【図2】本発明のインクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【符号の説明】
【0128】
1 インクジェット記録装置
2 ヘッドキャリッジ
3 インクジェット記録ヘッド
31 インク吐出口
4 照射手段
5 プラテン部
6 ガイド部材
7 蛇腹構造
8 照射光源
P 記録材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン、カチオン重合性化合物及び光重合開始剤を含有するインクジェット用白インク組成物において、該酸化チタンがアナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンを併用することを特徴とするインクジェット用白インク組成物。
【請求項2】
酸化チタンの粒径が50〜500nmであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用白インク組成物。
【請求項3】
ルチル型とアナターゼ型の比率が5:95〜70:30の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット用白インク組成物。
【請求項4】
ルチル型とアナターゼ型の比率が5:95〜50:50の範囲であることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット用白インク組成物。
【請求項5】
前記カチオン重合性化合物の少なくとも一種が下記一般式(A)で表される脂環式エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェット用白インク組成物。
【化1】

(式中、R100は置換基を表し、m0は0〜2を表す。r0は1〜3を表す。L0は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr0+1価の連結基または単結合を表す。)
【請求項6】
前記一般式(A)で表される脂環式エポキシ化合物が、下記一般式(I)及び(II)で表される脂環式エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種の脂環式エポキシ化合物であることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット用白インク組成物。
【化2】

(式中、R101は置換基を表し、m1は0〜2を表す。r1は1〜3を表す。L1は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr1+1価の連結基または単結合を表す。)
【化3】

(式中、R102は置換基を表し、m2は0〜2を表す。r2は1〜3を表す。L2は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr2+1価の連結基または単結合を表す。)
【請求項7】
オキセタン化合物を含有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のインクジェット用白インク組成物。
【請求項8】
光重合開始剤が、活性光線照射後にベンゼンを発生しないスルホニウム塩であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のインクジェット用白インク組成物。
【請求項9】
塩基性化合物を含有することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のインクジェット用白インク組成物。
【請求項10】
25℃における粘度が7〜50mPa・sであることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のインクジェット用白インク組成物。
【請求項11】
重合に関与しない溶媒含有量が5%未満であることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のインクジェット用白インク組成物。
【請求項12】
インクジェット記録ヘッドから請求項1〜11の何れか1項に記載のインクジェット用白インク組成物を記録材料上に噴射し、該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、該インクジェット用白インク組成物が着弾した後、0.001〜1.0秒の間に活性光線を照射することを特徴とする画像形成方法。
【請求項13】
インクジェット記録ヘッドから請求項1〜11の何れか1項に記載のインクジェット用白インク組成物を記録材料上に噴射して該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、ラインヘッド方式の記録ヘッドより噴射して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の画像形成方法に用いられるインクジェット記録装置であって、請求項1〜11の何れか1項に記載のインクジェット用白インク組成物を35〜100℃に加熱した後、吐出することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−206623(P2006−206623A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16503(P2005−16503)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】