説明

インクジェット用記録インク、これを用いたインクカートリッジ、画像形成方法、画像形成物

【課題】特にマゼンタインクにおいて顕著な問題であるインクの耐光性、耐水性を改善すると共に、吐出性及び画像濃度にも優れたインクジェット用記録インク、該インクを用いたインクカートリッジ、画像形成方法及び画像形成物の提供。
【解決手段】少なくとも染料、水、金属塩、水溶性有機溶剤及び紫外線吸収剤を含有するインクジェット用記録インクであって、前記染料がC.I.AR254、C.I.AR289、C.I.DR227から選ばれた少なくとも1種であり、前記金属塩が炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム、ケイ酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸リチウム、ケイ酸リチウム、酢酸リチウムから選ばれた少なくとも1種であり、前記水溶性有機溶剤が2−エチル−1,3−ヘキサンジオールであるインクジェット用記録インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用記録インク、該インクを用いたインクカートリッジ、画像形成方法及び画像形成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は他の記録方式に比べてプロセスが簡単であるためフルカラー化が容易であり、簡略な構成の装置であっても高解像度の画像が得られる利点がある。
インクジェット用インクとしては各種の水溶性染料を水、又は水と有機溶剤との混合液に溶解させた染料系インクが使用されているが、染料系インクは色調の鮮明性は優れているものの耐光性・耐水性に劣る欠点があった。一方、カーボンブラックや各種の有機顔料を分散させた顔料系インクは染料系インクと比較して耐光性・耐水性に優れるため盛んに研究されている。しかし、顔料は染料と異なり水不溶性であるため、顔料を水中に微粒子状態で安定に分散することが重要であるが、この分散は必ずしも簡単ではない。また顔料系インクは染料系インクと比較して色調の鮮明性で劣る。
【0003】
染料系インクにおける染料の耐光性を高めるため従来から種々の紫外線吸収剤が用いられており、その多くが油溶性であるが、特許文献1では水溶性の紫外線吸収剤を用いること、特許文献2では油溶性染料を用いること、特許文献3では紫外線吸収能を有するラテックスを用いることが提案されている。しかし、耐光性、耐水性、吐出性、画像濃度の全てを同時に満足するものは得られていない。
また、耐水性の良好な染料系インクとしては、油溶性染料を高沸点溶剤に分散ないし溶解させたもの、油溶性染料を揮発性の溶剤に溶解させたものがあるが、溶剤の臭気や溶剤の排出に対して環境上嫌われることがあり、大量の記録を行う場合や装置の設置場所によっては、溶剤回収等の必要性が問題となることがある。
更に、油溶性染料を有機溶剤に溶解させたのち水に分散させて水性インキを得る方法が特許文献4に開示されている。この方法によれば、水性でありながら耐水性の良好なインクが得られるが、有機溶剤に対する油溶性染料の溶解度は必ずしも充分でなく、水に分散させたときに染料濃度を高くすることが困難であった。また、インクが有機溶剤を多く含むため、溶剤の臭気や排出の問題もあった。
このように、耐光性、耐水性が良好で、吐出性や画像濃度にも優れた染料系インクは未だ知られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特にマゼンタインクにおいて顕著な問題であるインクの耐光性、耐水性を改善すると共に、吐出性及び画像濃度にも優れたインクジェット用記録インク、該インクを用いたインクカートリッジ、画像形成方法及び画像形成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、次の1)〜8)の発明によって解決される。
1) 少なくとも染料、水、金属塩、水溶性有機溶剤及び紫外線吸収剤を含有するインクジェット用記録インクであって、前記染料がC.I.AR254、C.I.AR289、C.I.DR227から選ばれた少なくとも1種であり、前記金属塩が炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム、ケイ酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸リチウム、ケイ酸リチウム、酢酸リチウムから選ばれた少なくとも1種であり、前記水溶性有機溶剤が2−エチル−1,3−ヘキサンジオールであることを特徴とするインクジェット用記録インク。
2) 前記紫外線吸収剤が、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸であることを特徴とする1)に記載のインクジェット用記録インク。
3) 前記紫外線吸収剤の含有量が5〜20重量%であることを特徴とする1)又は2)に記載のインクジェット用記録インク。
4) 前記金属塩の含有量が0.1〜2.0重量%であることを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載のインクジェット用記録インク。
5) 前記2−エチル−1,3−ヘキサンジオールの含有量が2.0〜4.0重量%であることを特徴とする1)〜4)のいずれかに記載のインクジェット用記録インク。
6) 1)〜5)のいずれかに記載のインクジェット用記録インクを収容したことを特徴とするインクカートリッジ。
7) 1)〜5)のいずれかに記載のインクジェット用記録インクを用いて印字することを特徴とする画像形成方法。
8) 7)に記載の画像形成方法で記録媒体に印字されたことを特徴とする画像形成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、特にマゼンタインクにおいて顕著な問題であるインクの耐光性、耐水性を改善すると共に、吐出性及び画像濃度にも優れたインクジェット用記録インク、該インクを用いたインクカートリッジ、画像形成方法及び画像形成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】インクカートリッジの一例を示す概略図。
【図2】図1のインクカートリッジのケース(外装)も含めた概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明のインクジェット用記録インク(以下、単にインクという)では、染料として、酸性染料であるC.I.AR(Asid Red)254、C.I.AR(Asid Red)289、直接性染料であるC.I.DR(Direct Red)227を用いる。他の染料でも多少の効果を奏することがあるが、顕著な効果が得られるのは上記の染料である。これらのナトリウム塩を含むマゼンタ染料の場合、pHによる塩析効果でインク着弾後に凝集しやすく、そのため耐水性が向上するのではないかと推測される。なお、C.I.はカラーインデックスの略である。
また本発明のインクでは、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム、ケイ酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸リチウム、ケイ酸リチウム、酢酸リチウムから選ばれた少なくとも1種の金属塩を添加する。これらの金属塩と紫外線吸収剤とが塩を形成し、耐光性、耐水性を向上させる。特に炭酸ナトリウムが好ましい。
金属塩の含有量は0.1〜2.0重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜1.5重量%である。0.1重量%以上であれば紫外線吸収剤と塩を形成しやすく、2.0重量%以下であればインクが乾燥した際(ノズル周辺)に結晶が析出するようなこともない。
【0009】
紫外線吸収剤は画像の保存性向上のために加える。また、紫外線吸収剤は前述したように金属塩と反応して塩を形成し、耐光性、耐水性の向上に寄与する。
紫外線吸収剤としては特に制限はなく、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シュウ酸アニリド系、シアノアクリレート系、トリアジン系などの中から適宜選択して用いることができるが、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましい。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン等が挙げられる。特に2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸が好ましい。
【0010】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例としては、2−(5−メチル−2′−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、5−t−ブチル−3−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシベンゼンプロピオン酸オクチルエステル、2−(2′−ヒドロキシ−3′−n−ドデシル−5′−メチル)フェニルベンゾトリアゾール等が挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は5〜20重量%が好ましく、より好ましくは10〜15重量%である。5重量%以上ならば十分な添加効果が得られる。また、20重量%以下であればインクが乾燥した際(ノズル周辺)に結晶が析出するようなことはない。
【0011】
本発明のインクでは、水溶性有機溶剤として2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを用いる。この水溶性有機溶剤は、湿潤効果よりも親水性/疎水性のバランスを調整して画像品質や耐光性、耐水性を向上させるために加える。疎水性を上げることにより凝集性、浸透性が上がり画像品質及び耐光性、耐水性を向上させることが可能となる。
2−エチル−1,3−ヘキサンジオールの含有量は2.0〜4.0重量%が好ましく、より好ましくは2.5〜3.5重量%である。2.0重量%以上であれば、凝集性、浸透性が落ちて画像品質や耐光性、耐水性が下がるようなことはない。また4.0重量%以下であれば、凝集性、浸透性が大きくなって、インクが乾燥した際(ノズル周辺)に結晶が析出するようなこともない。
【0012】
本発明のインクでは、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールの他に、種々の水溶性有機溶剤を湿潤剤として加えてもよい。湿潤剤によりインクの保水と湿潤性を確保することができ、インクを長期間保存しても色材の凝集や粘度の上昇がなく、優れた保存安定性を実現できる。またインクジェットプリンターのノズル先端等で開放状態に放置されても、乾燥物の流動性を長時間維持するインクジェット記録用インクが実現できる。更に、印字中又は印字中断後の再起動時にノズルの目詰まりが発生することもなく、高い吐出安定性が得られる。このような湿潤剤としては、沸点が180℃以上のものが好ましい。
【0013】
湿潤剤の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、3−メチル−1,3−ブチレングリコール、1,5−ぺンタンジオール、1,6−へキナンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、1,2,6−へキサントリオール、ぺトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノべンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。これらの湿潤剤は、単独で又は2種類以上混合して使用することができる。
【0014】
本発明のインクは容器に収容してインクカートリッジとして用いることができる。
図1にインクカートリッジの一例を示す。また、図2は、図1のインクカートリッジのケース(外装)も含めた図である。
図2に示すように、インクカートリッジ240は、インク注入口242からインク袋241内にインクを充填し排気した後、該インク注入口242を融着により閉じる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口243に装置本体の針を刺して装置に供給される。
インク袋241は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。このインク袋241は、図2に示すように、通常、プラスチックス製のカートリッジケース244内に収容され、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いられるようになっている。
【0015】
上記インクカートリッジをインクジェット装置に装着し、記録信号に応じてオリフィスからインクを吐出させて被記録材に印字し、画像形成物を得ることができる。
インクジェット装置としては、例えば連続噴射型又はオンデマンド型の記録ヘッドを有するものが挙げられる。オンデマンド型としては、ピエゾ方式、サーマルインクジェット方式、静電方式等がある。
また、画像形成に用いる記録媒体は、紙などのインクに対して吸収性を有するものでも、インクに対して実質的に非吸収性のものでもよい。
本発明の画像形成方法が適用可能な記録媒体の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリサルフォン、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル等を基材とするプラスチックシート、黄銅、鉄、アルミニウム、SUS、銅等の金属表面又は非金属の基材に蒸着等の手法により金属コーティング処理を施したもの、紙を基材として撥水処理などがなされたもの、無機質の材料を高温で焼成した、いわゆるセラミックス材料からなるものなどが挙げられる。
このうち、紙が経済性の点と画像の自然さの点で最も好ましい。
【実施例】
【0016】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「重量部」である。
【0017】
実施例1〜27、比較例1〜4
下記表1、表2の各実施例及び比較例の処方の材料を混合し、1時間攪拌した後、孔径0.8μmのメンブランフィルターでろ過して、インク(1)〜(31)を得た。
なお、蒸留水の「残量」は全体が100部となる量のことである。
表1、表2中の材料の詳細は次のとおりである。
<染料>
・α:C.I.Asid Red254と、C.I.Asid Red289の混合物
(後述するβ−2とβ−3の混合物)
・β−1:C.I.Direct Red227
(Kayaset Magent J−011、日本化薬社製)
・β−2:C.I.Asid Red254(AR254、ダイワ化成社製)
・β−3:C.I.Asid Red289
(Daiwa IJ Red 319H、ダイワ化成社製)
・γ:C.I.Direct Red 75
(Bayscript Magenta LFB、Bayer Corp社製)
<紫外線(UV)吸収剤>
・A:2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸(関東化学社製)
・B:Uvinul305(ベンゾフェノン系、BASF社製)
・C:PUVA−30W(ベンゾトリアゾール系、大塚化学社製)
・D:アデカスタブLX−332(オイル系光安定剤エマルジョン、旭電化社製)
<金属塩>(いずれも関東化学社製)
・No.1:炭酸ナトリウム
・No.2:ケイ酸ナトリウム
・No.3:酢酸ナトリウム
・No.4:炭酸カリウム
・No.5:ケイ酸カリウム
・No.6:酢酸カリウム
・No.7:炭酸リチウム
・No.8:ケイ酸リチウム
・No.9:酢酸リチウム
<水溶性有機溶剤(EHD)>
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール
<その他有機溶剤>
・グリセリン(関東化学社製)
<界面活性剤>
・ポリオキシエチレン(3)アルキル(C13)エーテル酢酸ナトリウム
(関東化学社製)
<防腐剤(LV)>
・プロキセルLV(S)20%溶液
<樹脂エマルジョン>
・スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン(BASF社製;J−450)
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
上記各インク(1)〜(31)を、リコー社製インクジェットプリンターIPSiO GX 5000用インクパックに充填してインクカートリッジを作成した。これを前記プリンターに装着し、ゼロックス社製PPC用紙XEROX4200(記録媒体)に印字し、下記試験法により特性を評価した。評価結果を纏めて表3に示す。
【0021】
<評価1:耐光性評価>
各インクを用いたベタ画像に対し、キセノン・フェードメーター用いて70000Lxで240時間照射した後、照射前後のベタ印字部分の光学濃度(OD)をX−rite938濃度計で測定し、次式によりOD残存率を算出し、下記の基準で評価した。
OD残存率(%)=(照射後のOD値/照射前のOD値)×100
〔評価基準〕
○:90%を超える。
△:80%以上、90%以下
×:80%未満
【0022】
<評価2:耐水性評価>
各インクを用いたベタ画像を24時間放置した後、水温20℃の蒸留水中に5分間浸漬させた。次いで記録媒体を取り出し、ろ紙を軽く押し当てて画像の表面の水分を吸い取り風乾させた後、浸漬前後のベタ画像の光学濃度(OD)をX−rite938濃度計で測定し、次式によりOD残存率を算出し、下記の基準で評価した。
OD残存率(%)=(浸漬後のOD値/浸漬前のOD値)×100
〔評価基準〕
○:90%を超える。
△:80%以上、90%以下
×:80%未満
【0023】
<評価3:画像濃度評価>
各インクを用いたベタ画像についてXrite濃度計で画像濃度を測定し、下記の基準で評価した。
〔評価基準〕
○:1.30以上
△:1.20以上、1.30未満
×:1.20未満
【0024】
<評価4:吐出性評価>
プリンターを恒温恒湿槽に入れ、槽内の環境を温度32℃、湿度30%RHに設定し、下記の印刷パターンチャートを20枚連続で印字した後、20分間印字を実施しない休止状態にした。この操作を50回繰り返し、累計で1,000枚印写した後、ノズルプレートを顕微鏡で観察して、固着の有無を下記の基準で評価した。
−印刷パターンチャート−
印刷パターンは、紙面全面積中、印字面積が5%であるチャートを、100%dutyで印字した。印字条件は、記録密度300dpi、ワンパス印字とした。
〔評価基準〕
○:ノズル近傍に固着なし。
△:ノズル近傍にやや固着。
×:ノズル近傍に固着あり。
【0025】
<評価5:保存性評価>
各インクをポリエチレン容器に入れて密封し、70℃で3週間保存した後の粒径、表面張力、粘度を測定し、初期物性との変化率により下記の基準で評価した。
〔評価基準〕
○:10%以下
△:10%を超え、30%以下
×:30%を超える。
【0026】
【表3】

【0027】
上記表3の結果から分かるように、実施例では全ての評価項目で「○」又は「△」となり、特に請求項3〜5の数値範囲を満たす場合は、全ての評価項目で「○」となった。
一方、紫外線吸収剤、金属塩、水溶性有機溶剤(EHD)の何れかを含まない比較例1〜3及び本発明で規定する染料以外の染料を用いた比較例4では、評価項目の少なくとも一つが「×」となった。
【符号の説明】
【0028】
240 インクカートリッジ
241 インク袋
242 インク注入口
243 インク排出口
244 カートリッジ外装
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特開平11−256081号公報
【特許文献2】特開2005−325150号公報
【特許文献3】特開2004−9405号公報
【特許文献4】特開昭62−207375号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも染料、水、金属塩、水溶性有機溶剤及び紫外線吸収剤を含有するインクジェット用記録インクであって、前記染料がC.I.AR254、C.I.AR289、C.I.DR227から選ばれた少なくとも1種であり、前記金属塩が炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム、ケイ酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸リチウム、ケイ酸リチウム、酢酸リチウムから選ばれた少なくとも1種であり、前記水溶性有機溶剤が2−エチル−1,3−ヘキサンジオールであることを特徴とするインクジェット用記録インク。
【請求項2】
前記紫外線吸収剤が、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用記録インク。
【請求項3】
前記紫外線吸収剤の含有量が5〜20重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット用記録インク。
【請求項4】
前記金属塩の含有量が0.1〜2.0重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット用記録インク。
【請求項5】
前記2−エチル−1,3−ヘキサンジオールの含有量が2.0〜4.0重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット用記録インク。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット用記録インクを収容したことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット用記録インクを用いて印字することを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成方法で記録媒体に印字されたことを特徴とする画像形成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−46644(P2012−46644A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190328(P2010−190328)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】