説明

インクジェット被記録材料

【課題】発色性が良好で鮮明な印字画像が得られ、印字画像部分にひび割れが発生しないインクジェット被記録材料を提供する。
【解決手段】基材と、その一方に形成されたインク受理層を有するインクジェット被記録材料において、インク受理層がブチラール化度60〜80モル%のポリビニルブチラールで構成され、インク受理層を構成するポリビニルブチラールを完全ケン化して得られるポリビニルアルコールのJIS K 6726に従って測定した平均重合度が500〜2,000であることを特徴とするインクジェット被記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット被記録材料に関する。さらに詳しくは、本発明は、発色性が良好で鮮明な印字画像が得られ、印字画像部分にひび割れが発生しないインクジェット被記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、インクをノズルから微細な液滴として被記録材料に吹き付けて印字画像を形成する方式であり、インクジェットプリンターは、ドットインパクトプリンターに比べると騒音が少なく、ページプリンターに比べると機構が簡単で低価格である。被記録材料のサイズが異なっても、ヘッドの移動距離の増減によって対応し得るために、業務用の大型機から家庭用の小型機まで普及が進んでいる。
従来は、主として紙を被記録材料として水性インクが用いられていたが、被記録材料として紙のみならず、プラスチックフィルム、布地、ガラスなども用いられるようになり、それに伴って、インクも有機溶剤を媒体とするインク、ホットメルトインクなどと多様化している。インクジェット記録方式ではインクは自然乾燥によるので、インクが速やかに被記録材料に吸収され、被記録材料の表面でのインクの滲みがなく、短時間でインクが乾燥することが求められる。
しかし、インクジェット用インクと被記録材料の表面には必ずしも親和性がなく、例えば、水性インクはプラスチックフィルムの表面では弾きを生ずる場合が多い。また、インクを速乾性にすると、ノズル詰まりを起こしやすくなるという問題もある。このために、被記録材料の表面にインク受理層を設けて、インクを吸収させ、インクの滲みを防止し、インクの指触乾燥時間を短縮する試みがなされている。
例えば、インク吸収性、インク定着性、インク乾燥性、ドット再現性などの印字性に優れ、インクの滲みや印字後の経時変化が抑制され、さらには、耐水性、耐候性、強度などに優れたインク受理層が形成されたインクジェット記録媒体として、インク受理層が、ポリビニルブチラール樹脂、その良溶媒及びその貧溶媒を含有する塗工液を支持体上に塗布し、乾燥して形成された多孔質樹脂層であるインクジェット記録媒体が提案されている(特許文献1)。しかし、このインクジェット記録媒体は、塗工液の乾燥を良溶媒の沸点以下の温度と良溶媒の沸点より高い温度の2段階で行うために、製造工程の管理が複雑となり、また、多孔質構造によりインクを受容するので、インク受理層を形成するポリマーとインクとの親和性によりインクを受容する場合に比べてインク保持力が弱い。
【特許文献1】特開2001−260520号公報(第2、4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、発色性が良好で鮮明な印字画像が得られ、印字画像部分にひび割れが発生しないインクジェット被記録材料を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ブチラール化度が60〜80モル%で、完全ケン化して得られるポリビニルアルコールの平均重合度が500〜2,000であるポリビニルブチラールは、インクジェット用インクの受容性に優れ、該ポリビニルブチラールによりインク受理層を構成したインクジェット被記録材料は、発色性が良好で鮮明な印字画像が得られ、印字画像部分にひび割れが発生しないことを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)基材と、その一方に形成されたインク受理層を有するインクジェット被記録材料において、インク受理層がブチラール化度60〜80モル%のポリビニルブチラールで構成され、インク受理層を構成するポリビニルブチラールを完全ケン化して得られるポリビニルアルコールのJIS K 6726に従って測定した平均重合度が500〜2,000であることを特徴とするインクジェット被記録材料、
(2)基材が、ポリエチレンテレフタレートを素材とする(1)記載のインクジェット被記録材料、及び、
(3)基材が、アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びアクリルウレタン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一つの合成樹脂を素材とする(1)記載のインクジェット被記録材料、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明のインクジェット被記録材料は、発色性が良好であって、インクジェット印刷により鮮明な印字画像を得ることができ、印刷後のインク受理層にひび割れを生ずることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のインクジェット被記録材料は、基材と、その一方に形成されたインク受理層を有するインクジェット被記録材料において、インク受理層がブチラール化度60〜80モル%のポリビニルブチラールで構成され、インク受理層を構成するポリビニルブチラールを完全ケン化して得られるポリビニルアルコールのJIS K 6726に従って測定した平均重合度が500〜2,000であるインクジェット被記録材料である。
本発明に用いる基材に特に制限はなく、例えば、印刷用紙、合成紙、合成樹脂被覆紙、合成樹脂層、織物、編物、木材、金属、ガラスなどを挙げることができる。これらの中で、インクジェット用インクの受容性に乏しい合成樹脂層を特に好適に適用することができる。基材として用いる合成樹脂に特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、セルローストリアセテート、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニルウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂などを挙げることができる。これらの中で、ポリエチレンテレフタレートは、強度と寸法安定性に優れ、また、アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びアクリルウレタン樹脂は、適当な機械的性質を有し、インク受理層を構成するポリビニルブチラールとの親和性が良好なのでいずれも好適に用いることができる。基材に用いる合成樹脂層には、必要に応じてコロナ放電処理などを施し、接着性を高めることができる。基材の厚さに特に制限はないが、10〜200μmであることが好ましく、30〜100μmであることがより好ましい。基材の厚さが10μm未満であると、取り扱い作業性が低下するおそれがある。基材の厚さは200μm以下でインクジェット被記録材料に要求される性能を満たし、通常は厚さ200μmを超える基材は必要とされない。
【0007】
本発明において、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はアクリルウレタン樹脂などからなる基材を形成する方法に特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどを工程シートとして、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はアクリルウレタン樹脂などの原料溶液を塗工し、乾燥して重合させることにより、基材を形成することができ、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はアクリルウレタン樹脂などの溶液を塗工し、乾燥することにより、基材を形成することもでき、あるいは、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はアクリルウレタン樹脂などを押出法、流延法などにより製膜して基材とすることもできる。アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はアクリルウレタン樹脂などには、必要に応じて、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤などを添加することができる。工程シートは、合成樹脂層を形成したのち剥離することができ、合成樹脂層の上にポリビニルブチラールからなるインク受理層を形成したのち剥離することもでき、あるいは、工程シートを剥離することなく、工程シートが積層されたままでインクジェット被記録材料の製品とすることもできる。
【0008】
本発明において、基材として用いるアクリル樹脂としては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどを主体とし、メタクリル酸メチル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどを共重合した樹脂などを挙げることができる。基材として用いるウレタン樹脂としては、例えば、ポリイソシアネート化合物とポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールとの反応により得られる樹脂などを挙げることができる。基材として用いるアクリルウレタン樹脂としては、例えば、両末端にヒドロキシル基を有するアクリルプレポリマーとポリイソシアネート化合物又は両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとの反応により得られる樹脂や、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの重合性不飽和結合を有するウレタンプレポリマーとアクリル系モノマーとの共重合体などを挙げることができる。
【0009】
本発明において、ポリビニルブチラールから構成されるインク受理層を基材上に形成する方法に特に制限はなく、例えば、ポリビニルブチラールを有機溶剤に溶解した塗工液を基材に塗工し、乾燥することによりインク受理層を形成することができる。ポリビニルブチラールを溶解する溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなどを挙げることができる。ポリビニルブチラールを溶解した塗工液を基材に塗工する方法に特に制限はなく、例えば、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスコーター、スプレイコーター、スロットオリフィスコーターなどを用いて塗工することができる。インク受理層の厚さは、15〜70μmであることが好ましく、20〜40μmであることがより好ましい。インク受理層の厚さが15〜70μmであると、インク受理層としての機能を十分に発揮することができる。インク受理層の厚さが15μm未満であると、印字画像の記録に必要な量のインクを吸収し得ないおそれがある。インク受理層の厚さが70μmを超えると、塗工の際にモトリング(不規則な模様)が生ずるおそれがあり、また印字画像の鮮明性が損なわれるおそれがある。
【0010】
本発明に使用されるポリビニルブチラールは、ポリビニルアルコールに(イソ)ブチルアルデヒドを反応させることにより得ることができる。ブチラール化は、沈殿法、溶解法、均一法、不均一法等、公知の方法を用いることができる。また、原料としてポリ酢酸ビニルを用いて、ケン化とブチラール化とを並行に行ってポリビニルブチラールを得ることもできる。
本発明に使用されるポリビニルブチラールを完全ケン化して得られるポリビニルアルコールの平均重合度は500〜2,000であり、より好ましくは700〜1,500であり、さらに好ましくは800〜1,200である。ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K 6726 3.7にしたがい、あらかじめ水酸化ナトリウムを用いてポリビニルブチラールを完全にケン化したのち、粘度計を用いて水との相対粘度を求め、相対粘度から計算によって平均重合度を算出する。ポリビニルブチラールを完全ケン化して得られるポリビニルアルコールの平均重合度が500未満であると、インク受理層の発色性が悪く、印字画像の鮮明性が低下するとともに、印刷面にひび割れを生じやすくなるおそれがある。ポリビニルブチラールを完全ケン化して得られるポリビニルアルコールの平均重合度が2,000を超えると、ポリビニルブチラールの溶解、塗工などの作業性が低下するとともに、インク受理層にインクが弾かれ、インクがインク受理層に入りにくくなって、印字画像の鮮明性が低下するおそれがある。また、インク受理層が硬くなって、ひび割れが生じやすくなるおそれがある。
本発明において、ポリビニルブチラールのブチラール化度は、60〜80モル%であり、好ましくは65〜78モル%であり、より好ましくは70〜76モル%である。ブチラール化度が60モル%未満であると、ポリビニルブチラールの溶剤に対する溶解性が低下し、またインクに対する吸収性が低下するおそれがある。ブチラール化度が80モル%を超えると、ポリビニルブチラールの製造が困難になるおそれがある。
【0011】
本発明のインクジェット被記録材料は、工程シート上にインク受理層を形成したのち、その上に基材を形成することによっても製造することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどを工程シートとして、ポリビニルブチラールを有機溶剤に溶解した塗工液を塗工し、乾燥することによりインク受理層を形成し、その上に基材を形成することができる。基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂などを挙げることができる。工程シートと基材をいずれもポリエチレンテレフタレートフィルムとする場合は、工程シートとして離型フィルムを用い、基材としてコロナ放電処理などにより接着性を高めたフィルムを積層することが好ましい。アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂などを基材とする場合は、例えば、インク受理層の上にアクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂などの原料(モノマーあるいはプレポリマー)溶液を塗工し、乾燥して重合させることにより、基材を形成することができ、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂などの溶液を塗工し、乾燥することにより、基材を形成することもでき、あるいは、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂などを押出法、流延法などにより積層して基材とすることもできる。工程シート上にインク受理層を形成したのち基材を形成したインクジェット被記録材料は、インクジェット印刷をする直前まで工程シートをつけたままとし、印刷する時点で工程シートを剥離すればよいので、印刷面を印刷直前まで保護し、汚れや傷の発生を防止することができる。
図1は、本発明のインクジェット被記録材料の一態様の部分断面図である。工程シ−ト1の上に、基材層2が設けられ、さらにその上にポリビニルブチラールにより構成されたインク受理層3が設けられている。インクジェットプリンターから吹き出されたインクの微細な液滴は、インク受理層により速やかに吸収され、インク受理層の表面で拡散することがないので、鮮明な印字画像が形成される。インク受理層は、強度が大きく、適度な硬さを有し、基材に強固に接着しているので、印刷後もインク受理層の印刷面にひび割れを生ずることがない。
【実施例】
【0012】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、インクジェット被記録材料の評価は、下記の方法により行った。
(1)インクジェット記録
インクジェット被記録材料のインク受理層に、ピエゾ方式のインクジェットプリンター[ローランド ディー.ジー.(株)、SOLJET ProII SC−540EX]と、グリコールエーテルを主成分とする非水系溶媒中に顔料を分散してなる溶剤系顔料インク[ローランド ディー.ジー.(株)、ECO−SOL INK]を使用して、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのフルカラーで100mm×148mmの花柄を印刷し、乾燥したのち、さらにその上からホワイトによる印刷を行った。印刷して3日後に、画像鮮明性及びひび割れの評価を行った。
(2)画像鮮明性
記録された印字画像の品質を目視により観察し、下記の2段階で評価した。
○:発色性が良好で、印字画像が鮮明である。
×:発色性が悪く、印字画像が不鮮明である。
(3)ひび割れ
インクジェット被記録材料の印字画像がある面とは反対の面から蛍光灯をあて、印字画像部分における光の透過を目視で観察し、100mm×148mmの印刷面内のひび割れの本数を数えた。ひび割れが20本を超える場合は、「>20本」と記録し、全数は数えなかった。
【0013】
実施例1
ポリビニルブチラール[ブチラール化度73モル%、完全ケン化して得られたポリビニルアルコールの平均重合度1,000、ガラス転移点64℃]100重量部を、メチルエルチケトン400重量部とジメチルホルムアミド100重量部の混合溶剤に溶解して、インク受理層塗工液を調製した。
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡績(株)、コスモシャインA4100]を基材として、上記のインク受理層塗工液を、フィルムアプリケーターを用いて、乾燥塗膜厚さが25μmとなるように塗工、乾燥して、インク受理層を形成し、インクジェット被記録材料を得た。
得られたインクジェット被記録材料は、発色性が良好で、印字画像が鮮明であり、印刷面内にひび割れは認められなかった。
実施例2
アクリル樹脂(メタクリル酸メチル/スチレン/アクリル酸ブチル(共重合比率(重量比)90/8/2)共重合体)100重量部、ポリエステル可塑剤[大日本インキ化学工業(株)、モノサイザーW−260]5重量部及び紫外線吸収剤[旭電化工業(株)、アデカスタブ1413]1重量部を、メチルエチルケトン200重量部とジメチルホルムアミド100重量部の混合溶剤に溶解して、基材塗工液を調製した。
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[帝人デュポンフィルム(株)、テイジンテトロンフィルムG2Z]を工程シートとして、フィルムアプリケーターを用いて、上記の基材塗工液を、乾燥塗膜厚さが50μmとなるように塗工、乾燥して、基材層を形成した。
次いで、この基材層の上に、実施例1で調製したインク受理層塗工液を、フィルムアプリケーターを用いて、乾燥塗膜厚さが25μmとなるように塗工、乾燥して、インク受理層を形成し、インクジェット被記録材料を得た。
得られたインクジェット被記録材料は、発色性が良好で、印字画像が鮮明であり、印刷面内に、ひび割れは認められなかった。
【0014】
実施例3
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[ユニチカ(株)、エンブレットS50]を工程シートとして、ウレタン樹脂溶液[大日精化工業(株)、レザミンNE8821]を、フィルムアプリケーターを用いて、乾燥塗膜厚さが50μmとなるように塗工、乾燥して、基材層を形成した。次いで、この基材層の上に、実施例1で調製したインク受理層塗工液を、フィルムアプリケーターを用いて、乾燥塗膜厚さが25μmとなるように塗工、乾燥して、インク受理層を形成し、インクジェット被記録材料を得た。
得られたインクジェット被記録材料は、発色性が良好で、印字画像が鮮明であり、印刷面内に、ひび割れは認められなかった。
実施例4
ポリビニルブチラール[ブチラール化度68モル%、完全ケン化して得られたポリビニルアルコールの平均重合度1,450、ガラス転移点67℃]100重量部を、メチルエチルケトン400重量部とジメチルホルムアミド150重量部の混合溶剤に溶解して、インク受理層塗工液を調製した。
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[ユニチカ(株)、エンブレットS50]を工程シートとして、アクリルウレタン樹脂溶液[広野化学工業(株)、ユーラックC−2800U]を、フィルムアプリケーターを用いて、乾燥塗膜厚さが50μmとなるように塗工、乾燥して、基材層を形成した。次いで、この基材層の上に、上記のインク受理層塗工液を、フィルムアプリケーターを用いて、乾燥塗膜厚さが25μmとなるように塗工、乾燥して、インク受理層を形成し、さらに、工程シートを剥離して、インクジェット被記録材料を得た。
得られたインクジェット被記録材料は、発色性が良好で、印字画像が鮮明であった。印刷面内のひび割れは、5本であった。
【0015】
比較例1
ポリビニルブチラール[ブチラール化度63モル%、完全ケン化して得られたポリビニルアルコールの平均重合度450、ガラス転移点68℃]100重量部を、メチルエチルケトン300重量部とジメチルホルムアミド30重量部の混合溶剤に溶解して、インク受理層塗工液を調製した。このインク受理層塗工液を、実施例1と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として、塗工、乾燥して、インクジェット被記録材料を得た。
得られたインクジェット被記録材料は、発色性が悪く、印字画像が不鮮明であった。印刷面内に、20本を超えるひび割れが認められた。
比較例2
ポリビニルブチラール[ブチラール化度65モル%、完全ケン化して得られたポリビニルアルコールの平均重合度2,400、ガラス転移点71℃]100重量部を、メチルエチルケトン450重量部とジメチルホルムアミド150重量部の混合溶剤に溶解して、インク受理層塗工液を調製した。このインク受理層塗工液を、実施例1と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として、塗工、乾燥して、インクジェット被記録材料を得た。
得られたインクジェット被記録材料は、発色性が悪く、印字画像が不鮮明であった。印刷面内のひび割れは、15本であった。
実施例1〜4及び比較例1〜2の結果を、表1に示す。
【0016】
【表1】

【0017】
表1に見られるように、完全ケン化して得られたポリビニルアルコールの平均重合度が1,000又は1,450であるポリビニルブチラールで構成されるインク受理層を有する実施例1〜4のインクジェット被記録材料は、発色性が良好で、印字画像が鮮明であり、印刷面内にひび割れが認められないか、あるいは、ひび割れが少ない。
これに対して、完全ケン化して得られたポリビニルアルコールの平均重合度が450であるポリビニルブチラールでインク受理層を構成した比較例1のインクジェット被記録材料と、完全ケン化して得られたポリビニルアルコールの平均重合度が2,400であるポリビニルブチラールでインク受理層を構成した比較例2のインクジェット被記録材料は、発色性が悪く、印字画像が不鮮明であり、印刷面内に多数のひび割れが生じている。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明のインクジェット被記録材料は、発色性が良好であって、インクジェット印刷により鮮明な印字画像を得ることができ、印刷後のインク受理層にひび割れを生ずることがない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のインクジェット被記録材料の一態様の部分断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 工程シート
2 基材層
3 インク受理層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、その一方に形成されたインク受理層を有するインクジェット被記録材料において、インク受理層がブチラール化度60〜80モル%のポリビニルブチラールで構成され、インク受理層を構成するポリビニルブチラールを完全ケン化して得られるポリビニルアルコールのJIS K 6726に従って測定した平均重合度が500〜2,000であることを特徴とするインクジェット被記録材料。
【請求項2】
基材が、ポリエチレンテレフタレートを素材とする請求項1記載のインクジェット被記録材料。
【請求項3】
基材が、アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びアクリルウレタン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一つの合成樹脂を素材とする請求項1記載のインクジェット被記録材料。

【図1】
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【公開番号】特開2007−130776(P2007−130776A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323302(P2005−323302)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000108214)ゼオン化成株式会社 (10)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】