説明

インクジェット装置用微粒子分散液

【課題】インクジェット装置用微粒子分散液において、比較的比重の大きな微粒子や粒子径の大きい微粒子を分散させた場合にも、ノズルからの吐出を容易とし、散布が良好に行われるようにすることである。
【解決手段】インクジェット装置用微粒子分散液は、分散媒、およびこの分散媒に溶解されている微粒子を含有しており、前記分散媒が重水を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット装置用微粒子分散液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネル(LCD)において、2枚の基板間の液晶層の厚みを均一かつ一定に保つためにスペーサビーズが使用されている。このスペーサビーズには、無機粒子や有機粒子、無機有機複合粒子等がある。
【0003】
無機粒子は一般に非常に硬く、このため配向膜やCF等に物理的損傷を与え欠陥を生じる結果となり、スペーサビーズとしてはあまり好ましくない。有機粒子は一般に軟らかく、そのため散布個数を大幅に増やす必要があり画像品位が落ちる。また耐熱性に劣るため長期信頼性に欠ける。これらの事情より、スペーサビーズとして良好な機械物性を与える無機有機複合粒子が一般に広く使用されている。
【0004】
また、スペーサビーズの配置方法として、従来は散布方式が適用されていた。しかし、この散布方式では、画素内にもスペーサビーズが配置されてしまうため、スペーサ表面や内部からの光り抜けが発生しコントラスト等の表示品位の低下が起こった。この問題を抑制するために、遮光部に選択的に配置しようとする試みがなされており、その一つとしてインクジェット法が検討されている。
【0005】
特許文献1では、表示体用微粒子スペーサ分散液において、沸点が200℃以上であり、かつ表面張力が42mN/m以上である溶媒を分散媒として用いている。特許文献1に記載されている分散媒の具体例として、比重1.08/粘度19mPa・sであるスペーサ分散液が、また比重1.045/粘度25mPa・sであるスペーサ分散液が記載されているが、これ以上の比重/粘度の分散液の記載はない。
【特許文献1】特開2007-47773
【0006】
特許文献2では、表示体用微粒子スペーサ分散液において、基板に対する後退接触角が5度以上で、含有される水が10重量%以下である分散媒を用いている。特許文献2に記載されている分散媒の具体例として、比重1.113/粘度23mPa・sであるスペーサ分散液が、また比重1.04/粘度56mPa・sであるスペーサ分散液が記載されているが、これ以上の比重/粘度の分散液の記載はない。
【特許文献2】特開2006‐209105
【0007】
特許文献3には、液晶表示装置製造用スペーサ分散液において、スペーサ粒子が内部に空隙を有する中空粒子であり、比重が1.3以下で、10%圧縮弾性率が2000〜15000MPaであること、分散溶媒との比重差が0.05以下であることが記載されている。特許文献3に記載されている分散媒の具体例として、比重1.063/粘度17.5mPa・sであるスペーサ分散液が記載されているが、これ以上の比重/粘度の分散液の記載はない。
【特許文献3】特開2006-171343
【0008】
特許文献4では、インクジェット装置を用いて基板の表面にスペーサ粒子を配置する際に用いられるスペーサ粒子分散液において、液滴を乾燥する工程において液滴が完全に乾燥する前に液滴内部で凝集させている。特許文献4に記載されている分散媒の具体例として、比重1.109/粘度20.2mPa・sであるスペーサ分散液が、また比重1.105/粘度14.6mPa・sであるスペーサ分散液が記載されているが、これ以上の比重/粘度の分散液の記載はない。
【特許文献4】特開2007-304580
【0009】
特許文献5では、インクジェット装置を用いて基板の表面にスペーサ粒子を配置する液晶表示装置の製造方法において、遮光領域の相当する領域中に形成された段差部分を含むようにスペーサ粒子分散液を着弾、乾燥させてスペーサ粒子を上記遮光領域に相当する領域中に留める。
【特許文献5】特開2005-4094
【0010】
特許文献6では、スペーサを有する液晶表示装置において、使用するスペーサの直径が液晶層の間隔より大きく、且つ前記スペーサを非画素領域である遮光部に設けられた凹部に固定する。
【特許文献6】特開2000-235188
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1〜4に記載されている分散媒の比重は最大で1.113であり、これ以上の比重の分散液は開示されていない。特許文献5には、インクジェット用スペーサ分散液は粘度が5〜10mPa・s、表面張力が30〜50mN/mであることが好ましいと記載されている。これらの粘度・表面張力の範囲内で調整できる分散液の比重は、一般に開示されている原料を組み合わせると上記文献に記載されているように比重1.15程度が上限である。
【0012】
無機有機複合微粒子などの、比較的比重の大きなスペーサ粒子の分散液をインクジェット法によって散布してスペーサを形成する場合、これまでの分散液では無機有機複合粒子の比重に液比重を近づけると粘度が大きくなってしまい、ノズルからの吐出が難しくなり、散布が良好に行われないことが判明してきた。
【0013】
さらに、特許文献5、6に記載されているように、スペーサビーズを効率よく遮光部に配置する為に基板上に凹部を設け、その凹部に選択的にスペーサビーズを配置しようとする試みがなされている。この場合、液晶層の間隔よりも大きいスペーサビーズを使用せざるを得ないが、ストークスの沈降速度理論より、スペーサビーズの大きさは沈降速度に大きく影響し、従来ビーズ径の小さい場合では安定に吐出可能であった比重差においても、ビーズ径の大きい場合は、安定に吐出できなくなる可能性がある。
【0014】
本発明の課題は、インクジェット装置用微粒子分散液において、比較的比重の大きな微粒子や粒子径の大きい微粒子を分散させた場合にも、ノズルからの吐出を容易とし、散布が良好に行われるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、インクジェット装置用微粒子分散液であって、
分散媒、および
この分散媒に溶解されている微粒子を含有しており、分散媒が重水を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
インクジェット用スペーサビーズインクに主に配合される水において、その水を重水にすることにより、水の場合と比較して同程度の粘度、表面張力を保ちながら比重のみを大きくする事ができた。従って、ビーズの分散媒の一成分として重水を使用することにより、従来難しかった比重の高いスペーサビーズや、粒子径の大きいスペーサビーズも安定に吐出可能となる。
【0017】
さらに、接着剤成分等の水溶性物質をスペーサビーズインクに配合する場合、水の影響により少なからず加水分解され長期安定性に欠ける場合があったが、重水のイオン積が水と比較して約1/6であることから、加水分解速度が抑えられ、長期安定性に優れると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の微粒子分散液の用途は、スペーサを基板上に定点配置させる技術に特に好適であるが、これに限定されない。例えば、本発明の微粒子分散液を、インクジェット法によって電子ペーパー用セル内に封入することができる。電子ペーパー用セルにおいては、セル一つ一つに同量の分散液を封入する必要があるが、本発明はこのような用途にも好適である。
【0019】
以下、本発明の微粒子分散液の各成分について述べる。
(重水)
通常の水は、重水に対し、「軽水」という。重水とは、水素原子および/または酸素原子が各同位体からなるものをいう。具体的には以下のものを指す。
(1) 水素原子Hに中性子が1つ増えた同位体2H(D)からなる水(化学式DO)
(2) 水素原子Hに中性子が2つ増えた同位体3H(T)からなる水(化学式TO)
(3) 酸素原子の同位体17O、18Oから構成される水
【0020】
重水の主用途は、原子炉の減速材である。他の用途としては、NMR解析用溶媒として使用されている。軽水と比較して重水の比重が重いことは広く知られているが、重水を上記用途以外に使用することは、(1)〜(3)の理由から通常考えられないことである。
(1) 人体に影響(毒性)が有りそうである。
(2) 価格が高く、アンプルサイズで取り扱われ、1回で使用する量は極微量である。
(3) NMR解析用途で使用する場合、一般には空気(水分)に触れないように乾燥N下で取り扱う為、一般溶剤として配合することなど考えられない。
【0021】
(他の混合分散媒)
本発明の分散液には、重水以外に、以下のような有機分散媒を混合することができる。
この有機分散媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のモノアルコール類等が挙げられる。
【0022】
また、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のエチレングリコールの多量体;これらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノイソプロピルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等の低級モノアルキルエーテル類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジプロピルエーテル等の低級ジアルキルエーテル類;モノアセテート、ジアセテート等のアルキルエステル類等が挙げられる。
【0023】
また、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等のプロピレングリコールの多量体;もしくはこれらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノイソプロピルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等の低級モノアルキルエーテル類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジプロピルエーテル等の低級ジアルキルエーテル類;モノアセテート、ジアセテート等のアルキルエステル類等が挙げられる。
【0024】
また、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−ヘキセン−2,5−ジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のジオール類、ジオール類のエーテル誘導体、ジオール類のアセテート誘導体、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類もしくはそのエーテル誘導体、アセテート誘導体等が挙げられる。
【0025】
更に、ジメチルスルホキシド、チオジグリコール、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン、スルフォラン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、α−テルピネオール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビス−α−ヒドロキシエチルスルフォン、ビス−α−ヒドロキシエチルウレア、N,N−ジエチルエタノールアミン、アビエチノール、ジアセトンアルコール、尿素等が挙げられる。
【0026】
分散媒全体の量を100重量部としたとき、重水の重量比率は、分散媒の粘度、表面張力の値が安定に吐出できる範囲内であれば特に限定されない。例えば、分散媒全体の量を100重量部としたとき、重水の重量比率は、本発明の効果の観点から、5重量部以上とすることが好ましく、20重量部以上とすることもできる。また、重水の重量比率は、100重量部であってもよいが、粘度調整の観点からは、例えば95重量部以下とすることもでき、さらには80重量部以下とすることもできる。
また、重水は軽水と混合して使用することが出来、水としての配合量の範囲内でそれぞれの比率を調整することにより、粘度や表面張力を大きく変化させずに容易に比重のみを調整することができる。
【0027】
分散媒全体の比重は、配合するスペーサ粒子の比重によって定まる。
また、分散媒全体の粘度は、1mPa・s〜30mPa・sとすることが好ましく,5mPa・s〜25mPa・sとすることが更に好ましい。
【0028】
(微粒子)
本発明で用いる微粒子の粒子径は特に限定されないが、0.5〜10μmが好ましい。粒子径が大きくなると、微粒子と分散媒との比重差による沈降速度への影響が大きくなるため、重水の配合は、より粒子径の大きい領域で特に効果的である。この観点からは、微粒子の粒子径は、5μm以上であることが好ましい。
微粒子の比重は、1.10〜1.30が好ましく、1.15〜1.25が特に好ましい。分散媒と微粒子との比重差は特に限定されないが、0以上、0.1以下が特に好ましい。
【0029】
微粒子の材質は特に限定されず、樹脂、有機物、無機物、これらの化合物や混合物等が挙げられる。上記樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール等の線状又は架橋高分子重合体;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジビニルベンゼン重合体、ジビニルベンゼン−スチレン共重合体、ジビニルベンゼン−アクリル酸エステル共重合体、ジアリルフタレート重合体、トリアリルイソシアヌレート重合体等の架橋構造を有する樹脂等が挙げられる。また、無機物としてはシリカ等があげられる。
【0030】
微粒子の製法も特に限定されず、乳化重合、分散重合、懸濁重合、シード重合等の重合法、高分子材料を溶媒に溶解させた溶液からの粒子析出造粒法、あるいは高分子材料を粉砕して粒子化する方法等、公知の方法から得ることができる。
【0031】
特に好ましくは、微粒子が無機有機複合粒子である。無機有機複合粒子とは、有機化合物および無機化合物をモノマーとして重合させることで得られた粒子である。また、無機化合物としては、SiO、Al、TiO、ZrO、Sb、SnO、Inなどの無機酸化物や、チタネート系、シラン系、アルミニウム系等のカップリング剤を例示できる。
【0032】
特に、無機化合物モノマーとして、加水分解性シリル基をモノマーとして使用することが好ましい。
γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルビス(トリメトキシ)メチルシラン、11―メタクリロキシウンデカメチレントリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4―ビニルテトラメチレントリメトキシシラン、8―ビニルオクタメチレントリメトキシシラン、3―トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、ビニルトリアセトキシシラン、p―トリメトキシシリルスチレン、p―トリエトキシシリルスチレン、p―トリメトキシシリル−α―メチルスチレン、p―トリエトキシシリル−α―メチルスチレン、γ―アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−β(N−ビニルベンジルアミノエチル−γ―アミノプロピル)トリメトキシシラン・塩酸塩
【0033】
また、加水分解性シリル基と重合させる重合性モノマーとしては、更に以下を例示できる。
グリシジル(メタ)アクリレート、β−(3,4,エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート。また重合後、酸またはアルカリで加水分解することにより(メタ)アクリル酸にすることのできる(メタ)アクリル酸をエステル化したメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、β−(パラフロロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−トリフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、スチレン
【0034】
スペーサー粒子としては、例えば、ナトコスペーサー(ナトコ(株)製)、ミクロパール(積水化学工業(株)製)、エポスター・ソリオスター・シーホスターKE(日本触媒化学工業)、ケミスノー(総研化学(株)製)、トスパール(GE東芝シリコーン(株)製)、ハヤビーズ(早川ゴム(株)製)等があげられるが、特に限定されるものではない。
【0035】
本発明の分散液中における微粒子の固形分濃度は、特に限定されないが、分散液全体の0.05〜10重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることがさらに好ましい。
【0036】
分散液中におけるスペーサ粒子の固形分濃度が0.05重量%未満であると、吐出された液滴中に微粒子が含まれなくなり易い。分散液中における微粒子の固形分濃度が10重量%を超えると、インクジェット装置のノズルが閉塞しやすくなったり、吐出された分散液やインクジェットインクの液滴中の微粒子の含有量が過剰となり易く、微粒子が積み重なりギャップ精度が低下する傾向がある。
【0037】
本発明の分散液においては、スペーサ粒子が分散媒中に単粒子状に分散していることが好ましい。
【0038】
また、本発明の分散液には、その効果を阻害しない範囲で、各種添加剤、例えば、粘接着性付与剤、粘性調整剤、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤が添加されていても良い。例えば粘接着性付与剤として、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂などを例示できる。
【0039】
本発明のスペーサ分散液をインクジェット方式によって基板上に吐出する。
インクジェット方式は、インクとして用いるスペーサ分散液の液滴生成原理による定着方法であり、連続ジェット方式とドロップ・オン・デマンド方式の2方式に分類されるがいずれも本発明において使用できる。
【0040】
連続ジェット方式は、液滴を連続して生成させ、記録信号に応じて液滴を選択して記録を行う方式である。連続ジェット方式には、Sweet型、マイクロドット型、Herz型、IRIS型などがあるが、いずれも本発明で使用できる。
【0041】
ドロップ・オン・デマンド方式は、記録信号に応じてスペーサ分散液を噴出させる方式である。ドロップ・オン・デマンド方式には、圧力パルス方式、サーマルジェット方式、ERF方式などがあるが、いずれも本発明で使用できる。
【0042】
また、好ましくは、ピエゾ素子の振動によって分散液をノズルから吐出させるピエゾ方式、急激な加熱による液体の膨張を利用して液体をノズルから吐出させるサーマル方式、発熱素子の急激な加熱によって液体をノズルから吐出させるバブルジェット(登録商標)方式等が挙げられる。
【0043】
インクジェット装置のノズル口径は、特に限定されるものではないが、例えば10〜100μmであってよい。ノズルから吐出される液滴の径は、特に限定されるものではないが、10〜100μmであることが好ましい。基板上に吐出された液滴の径は、特に限定されるものではないが、10〜150μmであることが好ましい。
【0044】
本発明は、スペーサ粒子を散布する用途に用いられ、各種表示素子やタッチスイッチ等に使用可能であるが、液晶表示素子に好適である。特に、画素間に遮光膜を配置した液晶表示素子の製造に好適である。この基板は、特に限定されるものではなく、ガラス板や樹脂板等の一般的に液晶表示装置のパネル基板として用いられているものであってよい。
【0045】
液晶表示素子は2枚の基板を重ね合わせて形成される。このため、通常は一方の基板に本発明のスペーサがインクジェット法で配置される。そして他方の基板と重ね合わせて液晶表示素子を作製する。スペーサを吐出する基板は、位置合わせの点からは、遮光膜が形成された側の基板とすることが好ましい。
【0046】
基板上におけるスペーサ粒子の配置は、特に限定されるものではなく、ランダム配置であっても良いし、特定の位置にパターン化して配置したパターン配置であってもよい。スペーサ粒子に起因する光抜けなどの表示品質の低下を抑制するという観点からは、パネルの非表示部分にスペーサ粒子を配置することが好ましい。
【0047】
非表示部分とは、一般に、画素の周囲に形成されたブラックマトリクスと呼ばれる遮光層のことであり、例えばTFT液晶表示装置においては、TFT素子が位置する部分が存在するが、スペーサはTFT素子を破壊することがないようにブラックマトリクス下に配置することが好ましい。
【0048】
基板上におけるスペーサの粒子密度は、特に限定されるものではないが、通常1mm平方の領域に50〜400個であることが好ましい。上記好ましい粒子密度が満たされる限り、スペーサはブラックマトリクス下のどのような部分にどのようなパターンで配置されても良い。
【0049】
基板上に吐出されたスペーサ分散液の液滴中の媒体を乾燥する方法は、特に限定されない。乾燥とは、媒体分子が自身の分子運動によって雰囲気中に拡散されればよい。この現象を促進させる為に、一般には熱を加えたり、雰囲気を減圧したりする手法がとられる。
【実施例】
【0050】
(スペーサ粒子(B)の製造)
特開2003-317546号公報記載の実施例(架橋重合体粒子B)と同様にして、スペーサ粒子(B)を得た。すなわち2Lセパラブルフラスコに、ポリビニルピロリドン3.5%メタノール/2−プロパノール溶液400g、スチレン42g、p-トリメトキシシリルスチレン63gを充填し、チッソ気流下において緩やかに攪拌しつつ63℃に加温する。アゾビスイソブチロニトリル4gを加え、15時間反応させる。反応終了後室温に冷却した後、水酸化カリウムの5%水溶液200gを追加し、2時間60℃で攪拌して加水分解及び架橋反応せしめた。得られた粒子を洗浄し、粒子(A)を得た。粒子(A)20gに対して、相互侵入高分子網目形成化合物(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)10gを溶解させたトルエン溶液20gを加え、エポキシを含浸させた。ついで、該エポキシ含浸粒子を200℃で16時間加熱した後、洗浄することにより、スペーサ粒子(B)を得た。スペーサ粒子(B)の平均粒子径は7.0μmであり、変動係数は3%であった。比重は1.22であった。
【0051】
(分散媒1の製造)
グリセリン/重水(DO)/イソプロピルアルコールをそれぞれ重量比60/35/5になるように容器に測りとり、混合して分散媒1とした。
【0052】
(分散媒2の製造)
グリセリン/水/イソプロピルアルコールをそれぞれ重量比60/35/5になるように容器に測りとり混合して分散媒2とした。
【0053】
(分散媒3の製造)
グリセリン/水/イソプロピルアルコールをそれぞれ重量比75/20/5になるように容器に測りとり混合して分散媒3とした。
【0054】
分散媒1、2、3の比重と粘度を測定した。
粘度測定には、東機産業株式会社製「RE型粘度計」を使用した。
比重測定には、ゲーリュサック型比重瓶を使用した。
【0055】
【表1】

【0056】
(実施例1の分散液の製造)
上記の手法により得られたスペーサ粒子(B)を、分散媒1にスペーサ粒子(B)/分散媒=1/99(重量比)となるように分散させ、目開き20μmのステンレスメッシュで濾過し、実施例1の分散液を得た。分散には超音波を使用した。
【0057】
(比較例1の分散液の製造)
上記の手法により得られたスペーサ粒子(B)を、分散媒2にスペーサ粒子(B)/分散媒=1/99(重量比)となるように分散させ、目開き20μmのステンレスメッシュで濾過し、比較例1の分散液を得た。分散には超音波を使用した。
【0058】
(比較例2の分散液の製造)
上記の手法により得られたスペーサ粒子(B)を、分散媒3にスペーサ粒子(B)/分散媒=1/99(重量比)となるように分散させ、目開き20μmのステンレスメッシュで濾過し、比較例3の分散液を得た。分散には超音波を使用した。
【0059】
作製した各分散液を、ピエゾ方式のヘッドの先端に口径30μmのノズルを搭載したインクジェット装置にて、インク充填直後及びインク充填60分後にガラス板上に吐出試験を行った。吐出できたノズル本数を表2に示した。更に、ヘッドの両側各5ノズルについて、ガラス板上に着弾した液滴中に含まれる粒子個数20ドットずつを計測し、平均値を得た。
【0060】
【表2】

【0061】
分散媒2では、重水を利用した分散媒1に比べて比重が低い。この結果、分散媒1を使用した実施例1では、分散媒2を使用した比較例1に対して、吐出安定性が著しく改善された。また、分散媒3は、分散媒1とほぼ同じ比重を有しているが、粘度は大きくなっている。この結果、分散媒3を使用した比較例2では、実施例1に比べて、吐出性能が著しく低下している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット装置用微粒子分散液であって、
分散媒、および
この分散媒に分散されている微粒子を含有しており、前記分散媒が重水を含むことを特徴とする、インクジェット装置用微粒子分散液。
【請求項2】
前記微粒子が無機有機複合粒子であることを特徴とする、請求項1記載の分散液。

【公開番号】特開2009−162832(P2009−162832A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339552(P2007−339552)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(392007566)ナトコ株式会社 (42)
【Fターム(参考)】