説明

インクジェット装置

【目的】 回復のために排出される廃インクの量を必要最小限とし、画質の一層の均一化と向上とを図ることのできるインクジェット装置を提供する。
【構成】 被記録部材にインクを吐出して記録を行うインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドによって記録がなされる被記録部材を搬送する搬送手段と、前記インクジェットヘッドのインク吐出不良の回復及び予防を行うための回復条件を前記搬送手段による前記被記録部材の搬送状態に応じて異ならせる制御手段と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はインクジェット装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】インクジェット装置には、記録がなされる被記録部材を搬送する搬送系、インクジェットヘッドを載置して被記録部材に対向して移動するキャリッジ系、及びインクジェットヘッドのインク吐出不良の回復及び予防を行うための回復系などが設けられるのが一般的である。これらを駆動するための駆動源は、夫々の系に各々対応して設けられたり、或いは複数の系に共通なものとして設けられたりしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしいずれにしても、搬送系による被記録部材の搬送状態によっては、搬送後になされるべき回復の条件を調節すべき場合があった。例えば被記録部材の搬送状態によっては非キャッピング時間が長くなる場合があり、この場合にはインクジェットヘッドの吐出口からのインクの乾燥が進んで吐出口へのインクの固着が生じ結果として目詰まりを発生させてしまうことさえあった。
【0004】中でも、搬送手段の駆動と回復を行うためのポンプの駆動とを同一の駆動手段で行う場合には、前述した課題が際立つことが少なくなかった。
【0005】この様に、搬送手段による被記録部材の搬送状態と回復条件との関係にまで従来着目が至っておらず、この点は技術上の言わばエアーポケットとも言えるものとなっていた。本発明者等はこの点に着目し、本発明が完成に至ったわけである。
【0006】
【課題を解決するための手段】前述した課題を解決する本発明のインクジェット装置は、被記録部材にインクを吐出して記録を行うインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドによって記録がなされる被記録部材を搬送する搬送手段と、前記インクジェットヘッドのインク吐出不良の回復及び予防を行うための回復条件を前記搬送手段による前記被記録部材の搬送状態に応じて異ならせる制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0007】
【作用】本発明の実施例では、吸引ポンプ駆動と紙搬送駆動とを同じモーターで行う装置において、カセット給紙の場合よりスイッチバック方式の手差し給紙の場合の方が非キャッピング時間が長いので、手差し給紙の場合に空吐出の発数を多くするなどして補償している。この様に本発明によれば、給紙条件に応じて回復条件を異ならせるというきめ細かい操作を行うことにより、回復のために排出される廃インクの量を必要最小限とし、画質の一層の均一化と向上とを図ることができる。
【0008】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に従って詳細に説明する。
【0009】(第1の実施例)本発明の構成を給紙系、回復動作系の順で説明する。図1で左側がこの記録装置の前面となる。この図はカセット22からの給紙時の状態を示したものである。用紙の搬送ガイド部23は給紙ガイド23a,23bによって構成され、ピックアップローラー21によってカセット22から給紙された用紙3を副走査ローラー7に導く。印字部8において、ガイドレール9a,9bによって紙幅方向に移動可能とした印字ヘッド9により液滴を噴射して用紙に印字を行う。
【0010】次に図2、図3でピックアップローラー21の動作の説明をする。図1の状態がピックアップローラーの初期状態である。
【0011】ピックアップローラーは副走査モーターが後回転すると矢印a方向へ回転し、モーターが前回転すると矢印b方向へ回転する。
【0012】副走査モーター20の駆動力がギヤ33、アイドルギア26、27を介しギア28に伝達される。ギア28とピックアップローラー21の軸との間にはばねクラッチ29を介在し、ギア28まで伝達された駆動力はバネクラッチを介して選択的に伝達される。
【0013】30はバネクラッチ29の断接を切り替えるプランジャで、プランジャ30がoffのときには図示されているようにプランジャ爪30aがバネクラッチ29の爪29aと係合していてクラッチ29はオフとなり、駆動力はバネクラッチの軸には伝達されない。プランジャ30がオンのときにはプランジャ爪30aは左方に移動しての爪29aとの係合がはずれ、駆動力はバネクラッチの軸には伝達される。
【0014】装置が給紙動作時にピックアップローラーを1回転だけさせるために、プランジャが1度だけオンする。すると図2のようにピックアップローラー21が矢印a方向に回転してカセット22から、用紙1を送り出す。
【0015】装置はピックアップローラーは副走査モーターが後回転すると矢印a方向へ回転し、モーターが前回転すると矢印b方向へ回転するような構成になっている。そして、ピックアップローラーは用紙を送り出したあとのモーターが前回転及び後回転する場合は次のような状態になる。
【0016】副走査モーターが前回転すると、ピックアップローラーは矢印b方向へ回転しようとするが図のようにカセット22が装置内にある場合はカセット22内のシート3の上面に接触して停止する。ピックアップローラーはモーターが後回転しない限りこの状態が続く。もし、カセット22が装置内になければモーターが前回転すれば同時に矢印b方向へ回転する。
【0017】副走査モーターが後回転すると、ピックアップローラーは矢印a方向へ回転しようとするが通常は先に説明したプランジャがオフになっているので、図1の状態で停止する。
【0018】次に、回復動作系の説明をする。
【0019】図4はチューブポンプの断面図である。
【0020】インクジェットヘッド101の吐出口101Aに目詰まりが発生した場合、非印字位置で吸引回復動作が行われる。このチューブポンプの構成と機能の簡単な説明をする。
【0021】吸引回復動作時には、非印字位置においてインクジェットヘッド101に対してキャップ102の開口部を接触させ、吐出口101A部に密閉形を形成する。キャップ102のもう一方の開口部はチューブ103が接続されている。チューブ103はガイドローラー104、加圧コロ105、ポンプベース106でチューブポンプ部を形成している。チューブ103の一方は排インク処理部材107が配置されている。この排インク処理部材107は吸引動作によって吐出口101Aより引き出されたインクを貯める働きをする。
【0022】ガイドローラー104が矢印a1の方向に回転すると、加圧コロ105がXの位置でチューブ103を加圧する。加圧コロは接触している部分のチューブの内側の空間が0になるまでチューブを押しつぶす。加圧コロ105はXの状態からガイドローラー104をさらに矢印a1方向へ回転するとチューブ103を押しつぶした状態で矢印b方向に従動的に回転し移動する。そしてYの位置で一時停止する。この時、XからYの間に加圧コロに押しつぶされたチューブ内の体積変化により負圧が生じて吸引動作がおこなわれる。
【0023】なお、チューブポンプのホームポジションはBの位置である。この位置はチューブポンプの初期位置でもある。この位置は加圧コロがチューブを押しつぶしていない位置である。
【0024】本装置の構成において、ガイドローラー104の駆動源は副走査モーターであり、ピックアップローラー、副走査ローラー、排紙ローラー10の駆動源と同じ駆動源である。従って変装置では、例えば副走査モーターが前回転するとピックアップローラーは後回転し、同時にガイドローラーは前回転する。ピックアップローラーが1回転すると、ガイドローラーは90度回転する構成としている。
【0025】図1で左側がこの記録装置の前面となる。前述した様に、この図は第1の給紙手段であるカセット22からの給紙時の状態を示したものである。用紙の搬送ガイド部23は給紙ガイド23a,23bによって構成され、給紙ローラー21によってカセット22から給紙された用紙3を副走査ローラー7に導く。印字部8において、ガイドレール9a,9bによって紙幅方向に移動可能とした印字ヘッド9により液滴を噴射して用紙に印字を行う。印字された用紙は排紙ローラー10によって排紙口11より排紙トレイ34に排出される。カセット22は図中矢印B方向に引き出して用紙3をセットすることができる。
【0026】図5及び図6に第2の給紙手段である手ざし給紙の全体図を示し、図7にその詳細図を示す。
【0027】図5は手ざし給紙のために用紙18をセットした状態を示したもので、手ざしスイッチSW1を押すことによって、電気系統がカセット給紙モードから手ざしモードに切り替わると同時に、プランジャー20が励磁され、手ざしガイド板24a上昇する。次に、操作者がこのガイド板に沿って用紙を挿入すれば、用紙の先端18aは、排紙ローラー10のニップにあたり、紙検知レバー29を押す。レバー29が押されることでフォトセンサ(FT)によって電気信号が入り、排紙ローラー10及び副走査ローラー7が通常とは逆に左回転し、挿入した用紙18は記録装置内に給紙される。給紙された用紙の先端18aはガイド板23bによって給紙ローラー21とカセット22内の最上紙との間に導かれる。
【0028】図6は給紙された用紙が記録装置内に一時停止した状態を示したものである。停止の位置は用紙の後端18bが図7の紙検知レバー29を抜けてから印字部8の右側に到達し、後端18bが副走査ローラー7から抜けずにニップされている状態を保つ位置である。具体的にはレバー29を用紙の後端が抜けてからカウントを開始し、所定のカウント後にローラーを停止する。図6R>6の状態から給紙開始(印字開始)信号により再び副走査ローラー7と排紙ローラー10を正転(右回転)させると同時にプランジャー20の通電を停止すれば、手ざしガイド24aは図2の状態に戻り、手ざし給紙された用紙18はカセット22より給紙された場合とまったく同様の状態で印字、排出される。
【0029】図7において、手ざしガイド板24aは排紙トレイ24に揺動可能に取り付けてある。この手ざしガイド板24aはプランジャー20を通電すると図に示したように先端が排紙ローラー10のニップに向く位置まで上昇し、通電をきれば自重によって図1に示した位置に戻る。
【0030】29は用紙の有無を検知するレバーで、用紙が図中の左右どちらからきたとしても、用紙が排紙ローラー10のニップにはさみ込まれれば、紙ありと検知する。
【0031】次に、回復動作系の説明を改めて行う。
【0032】図4はチューブポンプの断面図である。
【0033】インクジェットヘッド101の吐出口101Aに目詰まりが発生した場合、非印字位置で吸引回復動作が行われる。このチューブポンプの構成と機能の簡単な説明をする。
【0034】吸引回復動作時には、非印字位置においてインクジェットヘッド101に対してキャップ102の開口部を接触させ、吐出口101A部に密閉形を形成する。キャップ102のもう一方の開口部はチューブ103が接続されている。チューブ103はガイドローラー104、加圧コロ105、ポンプベース106でチューブポンプ部を形成している。チューブ103の一方は排インク処理部107が配置されている。この排インク処理部材107は吸引動作によって吐出口101Aより引き出されたインクを貯める働きをする。
【0035】チューブを加圧する加圧コロ105の軸部分105Aがコロ軸受108に対して回転可能な状態で取り付けられている。加圧コロは圧縮バネ110により、チューブ103を押圧する方向に力が与えられる。
【0036】ガイドローラー104の軸部分104Aは不図示の軸受111を介してポンプベース106に対して回転可能である。ガイドローラー104が回転すると、加圧コロ105がXの位置でチューブ103を加圧する。加圧コロは接触している部分のチューブの内側の空間が0になるまでチューブを押しつぶす。加圧コロ105はXの状態からガイドローラー104を矢印a方向へ回転するとチューブ103を押しつぶした状態で矢印b方向従動的に回転し移動する。そしてYの位置で一時停止する。この時、XからYの間に加圧コロに押しつぶされたチューブ内の体積変化により負圧が生じて吸引動作がおこなわれる。
【0037】本装置の構成において、ガイドローラー104の駆動源は副走査ローラー、排紙ローラー10の駆動源と同じ駆動源である。従って、給紙動作や排紙動作で副走査ローラーが回転すると同時にガイドローラーが回転する。
【0038】さらに、用紙搬送系と回復動作系の関係を説明する。
【0039】カセットからの給紙動作、印字動作中の紙送り、排紙動作中、副走査ローラーと排紙ローラーは前回転する。この時、キャップ102の開口部はインクジェットヘッド101と接触していない状態である。図1で、ガイドローラーが矢印a方向に回転すると、空気がチューブ内に入る。そして、チューブ内のインクもしくは空気が排インクタンクの方向へ移動する。
【0040】手差し給紙動作は副走査ローラーと排紙ローラーを後回転させるが、この時も、キャップ102の開口部はインクジェットヘッド101と接触していない。ガイドローラーは図4では左回転するので、チューブ内のインクや空気は右から左へとキャップ側へ移動する。
【0041】手差し給紙によるコピー動作についてチューブ中のインクや空気の働きは、手差し給紙、記録動作、排紙動作をエラーやジャムが起こさず、正常に動作をすればチューブ中のインクは排インクタンクの方向へ移動する。
【0042】具体的には、手差し給紙時に3500(297/8。128*96)パルス分キャップ側へ移動し、記録動作時に3500パルス、排紙動作時に4000(200/8。128*96+1080+600)パルスそれぞれ排インクタンク側へ移動するので、一連の動作では4000パルス分排インクタンク側へ移動する。
【0043】しかし、手差し給紙時にJAMをすると、ガイドローラーは左回転している途中でストップした状態になり、記録動作や排紙動作を行わないので、結果として、手差し給紙前より、チューブ内のインクや空気がキャップ側へ移動してくることになる。
【0044】図8〜図10は本発明の一実施例であるインクジェット記録装置のメイン制御を示すフローチャートであり、図8〜図10を用いてメイン制御の概要を説明する。
【0045】電源ONされて、装置はステップS1で装置のイニシャルチェックを行う。このチェックは本装置のROMとRAMのチェック、つまり、プログラムやデータをチェックして装置が正常に動作できるか確認するものである。ステップS2で温度センサー回路の補正値を読み込む。ステップS3で初期ジャムチェックをする。この実施例では、前ドアーが閉じられたときもステップS3で初期ジャムチェックをする。ステップS4で、次のステップにおいて記録ヘッドの情報を読むに当たって必要な装置側のチェックを行う。ステップS5で、記録ヘッドに内蔵されているROMのデータを読み込む。次にステップS6でイニシャルデータ設定をする。
【0046】ステップS7で初期20℃温調をスタートし、ステップS8で回復動作判断■(電源ON時に吸引回復動作を行うかどうかの判断)を行う。以上までがウエイト状態までのシーケンスフロー説明である。
【0047】次に、スタンバイ状態のシーケンスフロー説明を行う。ステップS9で20℃温調を行い、ステップS10でスタンバイ空吐出を行う。ステップS11で給紙無しか調べる。給紙無しならばステップS21へ進む。ステップS12でクリーニングボタンが押されたかチェックし、押されていたら、ステップS13でクリーニング動作を行う。ステップS14でRHSボタンが押されていれば、ステップS15でRHSモードフラグをセットする。ここで、RHSとは記録ヘッドの濃度むらを補正するヘッドシェーディング処理をいい、印字したパターンの濃度むらを読み取り部(リーダー)によって読み取り、濃度むらを補正する。
【0048】ステップS16で手差し給紙された場合は、ステップS17で手差しフラグをセットし、コピー開始シーケンスであるステップS22へと進む。ステップS18でOHPボタンがONされれば、ステップS19でOHPモードフラグをセットし、ONされていなければステップS20でOHPモードフラグをリセットする。ステップS21でコピーボタンが押されれば、コピー開始シーケンスであるステップS22へと進む。一方、押されていなければステップS9へ戻る。ステップS13で、クリーニング動作が終了したときもステップS9へ戻る。
【0049】次に、コピーシーケンスの説明を行う。ステップS22で機内昇温を抑えるファンを回転させ、ステップS23で25℃温調をスタートする。ステップS24で給紙無しか調べ、給紙無しならばステップS25で空吐出■(N=100)を行い、ステップS29へ進む。ここで、Nは空吐出の回数を示す。ステップS26で回復動作判断■(給紙前に吸引回復動作を行うかどうかの判断)をし、次のステップS27で給紙をする。ステップS28で紙幅、紙種検知動作を行う。ステップS29で画像移動をするか調べ、画像移動を行うならばステップS30の副走査移動(用紙移動)を行い、画像移動をしないならばステップS31へ進む。ステップS31で書き込みヘッドの温度が25℃以上になっているか調べる。25℃以上になっていればステップS32で回復動作判断■(非キャッピング状態でのインクの蒸発量に基づいて、回復動作を行うかどうかの判断)をし、ステップS33で1ライン分の記録動作を行う。その後、ステップS34で回復動作判断■(ワイピングタイミングに基づいて、回復動作を行うかどうかの判断、図12参照)を行い、ステップS35で用紙搬送する。
【0050】ステップS36では記録動作が終了したか調べる。終了していれば、印字枚数等のデータをヘッドのROMに書き込んだ後、ステップS37へ進む。終了してなければステップS31へ戻る。ステップS37ではスタンバイ状態へ移るかどうか調べ、スタンバイ状態移行ならばステップS38へ進む。
【0051】ステップS38以降は、排紙動作及び1枚印字後の回復動作判断■(印字泡の除法、液室内気泡の除去、異常高温時の冷却、回復)を行うルーチンである。ステップS38では排紙動作の有無を調べる。排紙動作がなければ、ステップS39,S40,s41で45℃以下に下がるのを待ち、2分以内に下がらなければステップS42で異常を停止する。45℃以下になれば、ステップS50でワイピング動作をし、ステップS43で空吐出動作■(N=50)をして、次のステップS48でキャッピングをする。排紙動作があればステップS44で排紙動作をする。ステップS45で連続印字か調べ、連続印字ならステップS47の回復動作判断■(図13参照)の後、ステップS24へと戻る。連続印字でなければ、ステップS46の回復動作判断■を行い、判断後に、排紙無しの場合と同様にステップS48でキャッピングを行う。そして、ステップS49でファンを停止してステップS9へと戻り、コピー動作終了となる。
【0052】図11は本実施例の特徴をもっとも良く表すフローチャートである。給紙方法の違いによって記録ヘッドの回復動作をかえている。
【0053】まず給紙直後であるかどうかを調べ、給紙直後でなければ空吐出カウンタをしらべる。給紙直後であれば手ざし給紙かカセット給紙かしらべ、回復動作をおこなう。本実施例では空吐出を手ざし給紙時は15発、カセット給紙時は10発おこなう。手ざし給紙時の回復動作をおおくおこない、本実施例では空吐出数が多くなっている。
【0054】この理由はヘッドのキャッピングされていない時間(以下非キャッピング時間と書く)の長さにある。ヘッドにとっては非キャッピング状態は好ましくない状態であり、非キャッピング状態が長いと回復動作が必要である。以下に本実施例に係る装置の動作と非キャッピング時間についてのべる。
【0055】キャリッジは給紙動作の始めに図14に示すようにスタートポジション移動(以下SP移動と表す)をする。記録ヘッドがキャッピングされているホームポジション(以下HPと表す)からSPに移動するものである。キャリッジがSPに移動する事で図 に示すようにキャップからはなれた状態になる。HPでのキャッピングとSPでの非キャッピングについてはあとでのべる。
【0056】SP移動後、給紙動作をおこなうが結論からいうと給紙動作に要する時間は手ざし給紙時のほうがカセット給紙時より長い。次にカセット給紙動作と手ざし給紙動作の説明をする。
【0057】カセット給紙動作については図1を用いて説明した通りである。
【0058】また、手ざし給紙動作については図5〜図7を用いて説明した通りである。
【0059】本実施例では、給紙動作後の回復動作を空吐出動作のみおこなっている。吸引動作をおこなわない理由を以下に述べる。
【0060】図15に示すように装置は紙搬送用の駆動系と吸引動作用の駆動系が共通化してある構成となっているため、吸引ポンプを回転させると紙搬送ローラーも回転する。そのため、給紙動作直後の場合のように給排紙ローラーに紙がある場合は吸引動作をおこなうことができない。吸引動作をおこなえば給紙した紙が移動するからである。そこで本発明では給紙動作後の回復動作としては空吐出動作を行っている。
【0061】図15は本実施例に係る装置の紙搬送用の駆動系と吸引動作用の駆動系の構成を示す模式的上面図である。61は副走査モーターで紙をピックアップローラー63や給紙ローラー64、排紙ローラー65、吸引ポンプ66を駆動する。ピックアップローラー63は半月ローラー62をまわして紙をピックアップする。
【0062】副走査モーターの動力はベルト67、68、69でそれぞれ給紙ローラ64、排紙ローラー65、吸引ポンプ66に伝えられる。
【0063】(第2の実施例)先ず、本実施例に係るHPでのキャッピングとSPでの非キャッピングについての説明をする。
【0064】図16及び図17(a)〜(c)を用いて、本実施例の構成について示す。この実施例中には、上記発明の要件が、部分的に採用されたもっとも適正な実施例として記載してある。
【0065】まず図16に於いてインクジェットヘッド41を有する主走査キャリッジ42は主走査レール47に支持された状態で印字のために矢印a及びd方向に移動可能である。また本体底板45側には弾性体で形成され、インクジェットヘッド41の吐出口の目詰りを防止するためにヘッド41の先端部を覆うキャップ43を有するホルダー44が配置されていて、このホルダー44は底板45に固定されたガイド46上にホルダーの位置決めピン44bによって摺動可能な状態で置かれている。さらにホルダー44はバネ48によって矢印d方向に常に加圧される構成になっている。
【0066】またAは非印字位置であり、インクジェットヘッド41の目詰りを防止するためのキャッピング及び目詰りした吐出口を回復させるための操作、例えば吸引回復、加圧回復ヘッド内インクの循環回復が行われる主走査キャリッジ42のホームポジションと呼ばれる通常待機位置、Bは主走査キャリッジ42が印字のために動作を開始するスタートポジションと呼ばれる位置である。この場合に於けるホームポジションA、スタートポジションBはキャリッジ42の位置決め部42aを基準にしている。
【0067】次に上記構成に於ける動作を図17(a)〜(c)を用いて説明する。図16でのバネ48は、斜めに配置してあるが、図17では、所望の加圧方向に並行に配置してある。スキャンの印字を終えたキャリッジ42は、スタートポジションBに向かって(矢印a方向)移動し、スタートポジションBの手前、図17(a)のCポイント(キャリッジ42の待機位置)でキャリッジ42の位置決め部42aとホルダー44の位置決め部44aが接触する。さらにキャリッジ42がa方向に移動するとホルダー44もキャリッジ42と伴にa方向に移動しスタートポジションBに到達する(図17(b))。そしてキャリッジ42はこの位置で反転し、次の印字のために矢印a方向に移動方向を変える。このときキャリッジ42とホルダー44の位置決めのためにホルダー44を印字側に加圧するために設けられたバネ48はキャリッジ42のスタートポジションでの停止時(反転時)に於ける振動を抑えるダンバとしての働きも兼ねている。このスタートポジションにおいて上記インクジェットヘッドとキャップが互いに離間対向しているので、キャリッジの反転時、特には高速反転時の慣性力に対して発生するインク飛散に対してキャップは、飛散インクの回収効果を達成する。本実施例では、更に、キャップが記録ヘッドに近接するためにその効果を一層向上している。
【0068】キャリッジ42がスタートポジションBから次の印字のためにd方向に移動する。この時ホルダー44もバネ48の力によってキャリッジ42と伴にd方向に移動する。そしてホルダー44の位置決めピン44dがガイド部材46のストッパー部に設けられた弾性部材49に接触しホルダー44は停止し、キャリッジ42からは離れる。この時、弾性部材49の働きにより、従来発生していた位置決めピン44dと24ガイド部材46のストッパー部との接触で発生する騒音を防止している。この場合の弾性部材49はゴム状のものであっても良いし、圧縮コイルバネでも良い。さらに印字中に於いて各吐出口の状態を一定にさせる目的から全吐出口からの液滴の吐出(空吐出)を行う場合には図17(b)に於けるC位置からスタートポジションB位置の間で空吐出を行えば、インクジェットヘッド41からの空吐出による液滴をキャップ43内に噴射させることが出来る。この場合、キャリッジ42の位置決め部42aからインクジェットヘッド41の吐出口中心41aまでの距離bと、ホルダー44の位置決め部44aからキャップ43の中心43aまでの距離cを各ヘッドとキャップに対して同じに設定することにより、キャリッジ42の位置決め部42aとホルダー44の位置決め部44aが接触すればインクジェットヘッド41とキャップ43の主走査方向の位置決めが行える。
【0069】また、非印字中は図17(c)に示すように、キャリッジ42はスタートポジションBを越えてさらにa方向に移動し、ホルダー44に配置された位置決めピン44bがガイド部材46の斜面に沿って移動することによりホルダー44はa方向に移動しながらキャリッジ42側にも移動する。そして最終的にホームポジションAに於いて、キャップ43がインクジェットヘッド41に接触し、キャッピング動作が完了する。ホームポジションに於いては、インクジェットヘッド41の吐出口に目詰りが発生した場合にキャップ43内を負圧状態にし吐出口から吸引を行い、目詰り状態から元の状態に回復するなどの操作が図示しない吸引ポンプ、チューブ等で行われる。
【0070】(第3の実施例)本実施例ではスイッチバック手差し給紙の際に紙のサイズにより非キャッピング状態の時間が変化する。具体的にはA4サイズの場合の時間の方がB5サイズの場合の時間より若干長くなる。
【0071】また、印字モードによっては1ライン印字の時間的間隔が大きくなる場合がある。たとえば外部機器と接続して画像を出力する場合などは通常の1ライン印字の時間間隔が2ー3秒長くなる。この場合キャリッジがSPに停止している時間が2〜3秒長くなる。この場合キャリッジがSPに停止している時間が2〜3秒長くなる。このことは非キャッピング時間が長くなっていることをしめしている。印字モードによって印字中の非キャッピング時間の長さが変化することに対応するため、回復動作判断■を回復動作判断■′と書き換えて手差し給紙後の空吐及びnライン毎の空吐の発数を時間管理する。
【0072】図18は回復動作判断■′を説明するためのフローチャートである。時間管理の方法としてはまず給紙時に非キャッピング状態となると同時に測定用タイマ(非キャッピングタイマ:t)を0にリセットし手差し給紙とnライン毎の印字前空吐に於いてはtが3秒以下ならば空吐数を5発とし、3秒から10秒までならば10発、10秒以上ならば15発とする(ちなみに通常のカセット給紙には約7秒、A4サイズの手差し給紙には約10秒、1ライン印紙には約2秒必要とする)。
【0073】(その他)なお、本発明は、特にインクジェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギとして熱エネルギを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、前記熱エネルギによりインクの状態変化を生起させる方式の記録ヘッド、記録装置において優れた効果をもたらすものである。かかる方式によれば記録の高密度化、高精細化が達成できるからである。
【0074】その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は所謂オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特にオンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰させて、結果的にこの駆動信号に一対一対応し液体(インク)内の気泡を形成出来るので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも一つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。尚、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を使用すると、更に優れた記録を行うことができる。
【0075】記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路又は直角液流路)の他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59年第123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応せる構成を開示する特開昭59年第138461号公報に基づいた構成としても本発明は有効である。
【0076】更に、記録装置が記録できる最大記録媒体の幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドとしては、上述した明細書に開示されているような複数記録ヘッドの組み合わせによって、その長さを満たす構成や一体的に形成された一個の記録ヘッドとしての構成のいずれでも良いが、本発明は、上述した効果を一層有効に発揮することができる。
【0077】加えて、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘッド自体に一体的に設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。
【0078】又、本発明の記録装置の構成として設けられる、記録ヘッドに対しての回復手段、予備的な補助手段等を付加することは本発明の効果を一層安定できるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対しての、キャピング手段、クリーニング手段、加圧或は吸引手段、電気熱変換体或はこれとは別の加熱素子或はこれらの組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードを行うことも安定した記録を行うために有効である。
【0079】更に、記録装置の記録モードとしては黒色等の主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせによってでもよいが、異なる色の複色カラー又は、混色によるフルカラーの少なくとも一つを備えた装置にも本発明は極めて有効である。
【0080】以上説明した本発明実施例においては、液体インクを用いて説明しているが、本発明では室温で固体状であるインクであっても、室温で軟化状態となるインクであっても用いることができる。上述のインクジェット装置ではインク自体を30℃以上70℃以下の範囲内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一般的であるから、使用記録信号付与時にインクが液状をなすものであれば良い。加えて、積極的に熱エネルギーによる昇温をインクの固形状態から液体状態への態変化のエネルギーとして使用せしめることで防止するか又は、インクの蒸発防止を目的として放置状態で固化するインクを用いるかして、いずれにしても熱エネルギーの記録信号に応じた付与によってインクが液化してインク液状として吐出するものや記録媒体に到達する時点ではすでに固化し始めるもの等のような、熱エネルギーによって初めて液化する性質のインク使用も本発明には適用可能である。このような場合インクは、特開昭54−56847号公報あるいは特開昭60−71260号公報に記載されるような、多孔質シート凹部又は貫通孔に液状又は固形物として保持された状態で、電気熱変換体に対して対向するような形態としても良い。本発明においては、上述した各インクに対して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0081】
【発明の効果】以上説明した様に本発明の実施例では、吸引ポンプ駆動と紙搬送駆動とを同じモーターで行う装置において、カセット給紙の場合よりスイッチバック方式の手差し給紙の場合の方が非キャッピング時間が長いので、手差し給紙の場合に空吐出の発数を多くするなどして補償している。この様に本発明によれば、給紙条件に応じて回復条件を異ならせるというきめ細かい操作を行うことにより、回復のために排出される廃インクの量を必要最小限とし、画質の一層の均一化と向上とを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置の構成の概略を示す側面図であって、ピックアップローラ初期状態を示すものである。
【図2】図1のピックアップローラ部を拡大して示す概略図である。
【図3】本発明の装置の被記録材の搬送手段の一部を示す概略図である。
【図4】チューブポンプの構成の概略図である。
【図5】本発明の実施例に係る手ざしモードの状態を示す概略側面図である。
【図6】図5の手ざしモード実行時の概略図である。
【図7】図5の手ざしモード実行時の概略図である。
【図8】本発明の実施例に係るインクジェット装置のメイン制御を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施例に係るインクジェット装置のメイン制御を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施例に係るインクジェット装置のメイン制御を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施例に係るインクジェット装置の回復動作を説明するためのフローチャートである。
【図12】本発明の実施例に係るインクジェット装置の回復動作を説明するためのフローチャートである。
【図13】本発明の実施例に係るインクジェット装置の回復動作を説明するためのフローチャートである。
【図14】本発明の実施例に係るインクジェット装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図15】本発明の実施例に係るインクジェット装置の要部を示す模式的上面図である。
【図16】本発明の他の実施例に係るインクジェット装置のキャッピング機構を示す模式的上面図である。
【図17】本発明の他の実施例に係るインクジェット装置のキャッピング動作を示す模式的上面図である。
【図18】本発明の更に他の実施例に係るインクジェット装置の回復動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
101 インクジェットヘッド
102 キャップ
103 チューブ
104 ガイドローラー
105 加圧コロ
106 ポンプベース
107 排インク処理部材
10 排紙ローラー
17 副走査ローラー
20 副走査モーター
21 ピックアップローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 被記録部材にインクを吐出して記録を行うインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドによって記録がなされる被記録部材を搬送する搬送手段と、前記インクジェットヘッドのインク吐出不良の回復及び予防を行うための回復条件を前記搬送手段による前記被記録部材の搬送状態に応じて異ならせる制御手段と、を具備することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項2】 前記制御手段が、カセット搬送がなされた後の空吐出の発数をスイッチバック方式の手差し搬送がなされた後の空吐出の発数より多く設定する請求項1のインクジェット装置。
【請求項3】 前記搬送手段の駆動と前記回復を行うためのポンプの駆動とを同一の駆動手段で行う請求項1のインクジェット装置。
【請求項4】 前記ポンプがチューブポンプである請求項3のインクジェット装置。
【請求項5】 前記インクジェットヘッドが、インクを吐出するために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを発生する電気熱変換体を有する請求項1のインクジェット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図14】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図15】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図17】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図16】
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【図18】
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