説明

インクジェット記録ヘッドの製造方法

【課題】好適な強度を維持したまま基板おもて面に形成するレジスト構造物等の影響を受けずに工程を追加することなく高精度なアライメントを行うことが出来るインクジェット記録ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】対向する第一の面及び第二の面を有し第二の面から基板の厚さを一部薄く加工することで形成した共通液室及び該共通液室に連通し基板を貫通する貫通孔である複数の独立インク供給口を有する基板と第一の面上に形成されインク流路及びインク吐出口を有するノズル構造物とを含むインクジェット記録ヘッドを製造する方法であり該複数の独立インク供給口を形成するためにフォトマスクを用いて基板上に塗布したレジストをパターニングする工程においてアライメントマークを用いて該マスクと該基板との位置合わせを行う際に基板の凹みにおいて赤外線アライメントを行うインクジェット記録ヘッドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録ヘッドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録ヘッドの製造方法の従来技術として、特許文献1が開示されている。特許文献1では、基板のおもて面(第一の面)に液流路を有するノズル構造物を形成した後、基板の裏面(第二の面)にインク供給のための共通液室(インク供給口)を形成するためのマスク材となる膜を形成している。そして、この膜を用いて、共通液室を形成した後、フォトリソグラフィーにより共通液室内に独立するインク供給口(独立インク供給口)を形成している。
【0003】
基板裏面のエッチング開始面のエッチングマスクは、フォトマスクを用いてフォトリソ技術により形成されており、基板とフォトマスクとのアライメントは、以下のように制御されている。即ち、基板の上面(おもて面)側から撮影した基板側アライメントマークの画像と、基板の下面(裏面)側から撮影したフォトマスクのアライメントマークの画像とを画像処理により重ね合わせる。そして、それらのアライメントマークの位置が合うようにフォトマスクの位置を制御することによって行う。
【0004】
特許文献2には、複数のデバイスが構成される基板と、基板上に塗布したレジストをマスキングするフォトマスクとの位置合わせに用いるアライメントマークを前記基板に形成する方法が開示されている。より具体的には、基板に形成するアライメントマークを、基板のデバイスが構成される部分のうち、前記基板に施される後の工程で前記基板から除去される領域内、即ち電子回路を形成しない領域に形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0095708号公報
【特許文献2】特開2005−109122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、レジストに独立供給口パターンを形成する際に、基板おもて面(第一の面側)のノズル構造物に回路を保護する保護膜をコートし、基板おもて面側からノズル構造物と保護膜を介して、基板とフォトマスクとのアライメントを行うと、ノズル構造物と保護膜の透明膜越しにアライメントを行うため、膜の影響で、アライメント精度が下がることがある。
【0007】
本発明の目的は、以下の通りである。即ち、好適な強度を維持したまま、基板おもて面に形成するノズル構造物や保護膜等の膜の影響を受けずに、工程を追加することなく、高精度なアライメントを行うことが出来るインクジェット記録ヘッドの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、対向する第一の面および第二の面を有し、かつ該第二の面から基板の厚さを一部薄く加工することで形成した共通液室、および該共通液室に連通し、基板を貫通する貫通孔である複数の独立インク供給口を有する基板と、
該第一の面上に形成され、該複数の独立インク供給口と連通するインク流路および該インク流路に連通するインク吐出口を有するノズル構造物と
を含むインクジェット記録ヘッドを製造する方法であって、
該複数の独立インク供給口を形成するために、フォトマスクを用いて基板上に塗布したレジストをパターニングする工程を有し、
該工程において、アライメントマークを用いて該フォトマスクと該基板との位置合わせを行う際に、基板の凹みにおいて赤外線アライメントを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、好適な強度を維持したまま、基板おもて面に形成するノズル構造物や保護膜等の膜の影響を受けずに、工程を追加することなく、高精度なアライメントを行うことが出来るインクジェット記録ヘッドの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の製造方法により得られるインクジェット記録ヘッドの一例の断面斜視図である。
【図2】実施例1に示すインクジェット記録ヘッドの製造方法を説明するための図である。
【図3】基板およびフォトマスクのアライメントマークの一例を表す図である。
【図4】基板裏面にレジストパターンを形成する際に、フォトマスク側から見た状態を示す図である。
【図5】赤外線アライメントを説明するための図である。
【図6】実施例2に示すインクジェット記録ヘッドの製造方法を説明するための図である。
【図7】実施例3に示すインクジェット記録ヘッドの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明により製造されるインクジェット記録ヘッドは、共通液室および複数の独立インク供給口を有する基板(インクジェット記録ヘッド用基板)と、インク流路およびインク吐出口を有するノズル構造物とを含む。
【0012】
なお、本発明では、基板おもて面のノズル構造物に回路を保護する保護膜を設けたとしても、ノズル構造物や、その保護膜の透明度、材質に影響を受けずに、高いアライメント精度を得ることができる。また、基板の一部のみを薄くするため強度に問題なく、さらに基板裏面の鏡面加工、支持基板取り付けなどの工程を追加することなく、高精度なアライメントを行うことが出来る。
【0013】
発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1に本発明を用いて製造したインクジェット記録ヘッドの一例を基板に対して垂直に切断した際の断面斜視図を示す。
【0014】
このインクジェット記録ヘッドは、インク吐出エネルギー発生素子11が所定のピッチで並んで形成されたシリコン基板10を有している。シリコン基板10は、対向する第一の面(おもて面)10aおよび第二の面(裏面)10bを有する。また、基板10は、第二の面10bから基板の厚さを一部薄く加工することで形成した共通液室20、および共通液室20に連通し基板10を貫通する貫通孔である複数の独立インク供給口21を有する。
【0015】
さらに、基板10の第一の面上には、感光性樹脂からなるノズル構造物14が形成されている。なお、ノズル構造物14は、第一の面10aに直接形成されても良いし、ノズル構造物14と第一の面10aとの間に他の層(例えば密着向上層)が形成されていても良い。ノズル構造物14は、各インク吐出エネルギー発生素子11の紙面上方に開口するインク吐出口15を有し、さらに、各インク吐出口15および各独立インク供給口21に連通するインク流路22を有する。
【0016】
なお、第二の面10bに開口する共通液室20は、例えばシリコンの異方性エッチングによって形成することができる。また、アライメントマークを基板裏側(第二の面側)から赤外線により透過し、フォトマスクと基板との位置合せを行った後、そのフォトマスクを用いて基板10をドライエッチングすることにより、独立インク供給口21を形成することができる。図1には、基板とフォトマスクとの位置合せに用いた基板側のアライメントマークの痕23aが記載されている。
【0017】
このインクジェット記録ヘッドは、独立インク供給口21を介してインク流路22内に充填されたインク(液体)に、エネルギー発生素子11の発生する圧力を加えることによって、インク吐出口15からインク液滴を吐出させることができる。そして、吐出したこのインク液滴を被記録媒体に付着させる事により記録を行うことができる。
【0018】
本発明は、複数の独立インク供給口を形成するために、フォトマスクを用いて基板上に塗布したレジスト(後述するレジスト層18)をパターニングする工程を有する。そして、この工程において、フォトマスクと基板との位置合わせを、基板側アライメントマークと、フォトマスク側アライメントマークとを用いて行う。また、この位置合わせの際、基板10の凹みにおいて、後述する赤外線アライメントを行う。
【0019】
なお、赤外線アライメントを行う基板10の凹みは、共通液室20であっても良いし、第二の面10bに形成された別の凹みであっても良い。
【0020】
なお、フォトマスクは、基板に形成する複数の独立インク供給口に対応するパターン形状を有しているが、本発明では、この独立インク供給口に対応するパターン形状をそのままフォトマスク側のアライメントマークとして用いることができる。例えば、レジスト層18にポジ型レジストを用いた場合は、フォトマスクが有する複数の独立インク供給口に対応する開口部のうちの少なくとも1つをそのままフォトマスク側のアライメントマークとして使用することができる。また、レジスト層18にネガ型レジストを用いた場合は、フォトマスクが有する複数の独立インク供給口に対応する遮光部のうちの少なくとも1つをそのままフォトマスク側のアライメントマークとして使用することができる。即ち、フォトマスク側のアライメントマークは、位置合わせの際に用いるマークとしての役割の他に、レジスト(レジスト層18)に独立供給口パターンを作製する役割も担うことができる。
【0021】
以下に、図2を用いて、本発明のインクジェット記録ヘッドの製造方法の一例を説明する。
【0022】
まず、図2(a)に示すインク吐出エネルギー発生素子11およびアライメントマーク23を備えた基板10を用意する。基板としては、例えばシリコン基板を用いることができる。なお、基板側のアライメントマーク23を構成する材料としては、例えば、Al、SiO等があげられる。
【0023】
この基板10は、おもて面10aに、フォトリソグラフィプロセスでインク流路22のパターンを形成した密着向上層12を有し、裏面10b側に、共通液室20の形成に用いるパターンが形成されたマスク材16及び熱酸化膜層(不図示)を有する。密着向上層12としては、例えばポリアミド系樹脂を用いることができ、マスク材16としては、例えばポリアミド系樹脂を用いることができる。
【0024】
続いて、図2(b)に示すように、この基板10の密着向上層12のパターン上に、ポジ型レジスト層13を形成する。なお、ポジ型レジスト層としては、例えばアクリル系樹脂を用いることができる。
【0025】
次に、前記ポジ型レジスト層13を覆うように液流路構造体材料を塗布し、液流路構造体材料層を形成する。塗布する液流路構造体材料としては、例えばエポキシ樹脂を主たる構成材料とする感光性材料を用いることができる。続いて、この液流路構造体材料層にインク吐出口15を形成し、インク流路がポジ型レジスト層13に充填されたノズル構造物14を形成する。具体的には、フォトマスク(不図示)を用いて、液流路構造体材料層を露光および現像し、吐出口15を形成する。なお、一般的には、液流路構造体材料層にはネガ型特性のものを使用するため、吐出口となる部分に光を照射させないフォトマスクを適用する。
【0026】
なお、液流路構造体材料層上に撥水材層を形成することもできる。撥水材層を形成した場合は、図2(c)に示すように、液流路構造体材料層と撥水材層とを同時に露光および現像し、吐出口15を形成して、ノズル構造物14および撥水性被膜14aを形成することができる。現像には、キシレン等の溶剤を適用することが好ましい。
【0027】
次に、図2(d)に示すように、ノズル構造物14上(図2(d)では、撥水性被膜14a表面)に、ノズル構造物をアルカリ溶液から保護する為に保護膜19を塗布する。この保護膜19の材料としては、例えば、東京応化工業社よりOBCの名称で上市される材料を用いることができる。
【0028】
その後、このシリコン基板を、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)に浸漬し、インク供給の為の共通液室20を形成する。このときシリコンの残し量、即ち第一の面10aから共通液室の底までの厚みは、アライメントマークの認識の観点から、100μm以上200μm以下とすることが好ましい。
【0029】
次に、裏面10bに形成したマスク材16と熱酸化膜層を、エッチング等を用いて除去する。その後、図2(e)に示すように、例えば、スプレー装置を使って、レジストを塗布し、レジスト層(感光性材料層)18を形成する。
【0030】
次に、フォトマスク側アライメントマーク26および基板側アライメントマーク23を用いた赤外線アライメントにより、フォトマスク25と基板10との位置合わせを行う。なお、図2(e)では、レジスト層18にポジ型レジストを用いた場合のフォトマスクを記載している。フォトマスク側のアライメントマーク26は、マスク形成時に形成する。
【0031】
以下、赤外線を用いたフォトマスク25と基板10との位置合わせ(赤外線アライメント)について詳しく説明する。
【0032】
位置合わせに用いるアライメントマークは、基板10とフォトマスク25それぞれの対向する位置(マーク23とマーク26との間には、他の層が介在して良い)に配置する。なお、マーク23と26とを対向する位置に配置し、基板の凹み(共通液室20や別の凹み)において赤外線アライメントを行うことができれば、基板10とフォトマスク25それぞれに形成するアライメントマークの位置(図2では紙面左右方向の位置)は必要に応じて選択することができる。
【0033】
図2(e)では、アライメントマーク23および26をそれぞれ共通液室20に対応する位置、より具体的には、マーク23は共通液室20の紙面上方に、マーク26は共通液室20の紙面下方に配置している。また、図2では、エネルギー発生素子11等の電子回路を形成していない領域にマーク23を形成している。
【0034】
赤外線アライメントを行う際、まず、基板10の厚みが一部薄くなった部分(凹み:図2では共通液室20)内に赤外線光(例えば、波長:1100nm〜1200nm)を照射して、基板10を透過させる。そして、基板側アライメントマーク23およびフォトマスク側アライメントマーク26を使用して、凹みにおいて赤外線アライメントを行う。これにより、裏面(第二の面)側からアライメントを行うことで膜の影響を受けなくなる。より具体的には、図5に示すように、基板おもて面のアライメントマーク23を基板裏面側から赤外線により透過し、マスク側アライメントマーク26と位置合わせを行う。
位置合わせは、赤外線を凹みに照射した後、基板のアライメントマークの中心と、マスク側アライメントマークの中心とを画像処理にて合わせこむことで行うことができる。
【0035】
ここで、基板10に形成するアライメントマーク23の例を図3(a)に示し、レジスト層18にポジ型レジストを用いた場合の、フォトマスク25側に形成するアライメントマーク26の例を図3(b)〜(d)に示す。マーク23を構成する材料は必要に応じて選ぶことができ、例えば、図3(a)において、符号23bで表される部分をAlで形成することができ、符号23cの部分をSiOで形成することができる。また、符号23cの部分を空いた空間(空隙)とすることもできる。
【0036】
なお、基板およびフォトマスクのアライメントマークの形状は、レジスト層18に用いたレジストの種類や、赤外線アライメントの後に行うレジスト層18のパターニングの条件や、基板10のエッチングの条件に応じて選択することができる。
【0037】
パターニングしたレジスト層18を用いて基板をエッチングする際に、例えば、図2のように、マーク26に対応する基板部分25bに、独立インク供給口等の基板10を貫通する貫通孔を形成する場合は、マーク26として、例えば以下のものを用いることができる。即ち、図3(b)に示すような大きなマークを使用することができる。このマークの大きさは、パターニングしたレジスト層18を用いて基板をエッチングする際に、基板部分25bについてもエッチング(例えばドライエッチング)が可能で、その部分25bに基板10を貫通する貫通孔が形成できる大きさであれば良い。なお、図3(b)では、開口部(抜き部)25cの大きさがマーク26の大きさとなる。
【0038】
なお、基板部分25bに独立インク供給口を形成する場合は、マーク26の開口部25cが独立インク供給口の開口部以上の大きさであることが好ましい。即ち、マーク26の面積(図3(b)では、マーク26の開口面積)が、形成する独立インク供給口の開口面積以上であることが好ましい。
【0039】
次に、赤外線アライメントの際、基板側のマーク23として図3(a)に示すマークを使用し、フォトマスク側のマーク26として、図3(b)に示すマークを使用した場合に、フォトマスク25側から基板10を見た際の各アライメントマークの状態を表す図を図4に示す。図4では、マーク26の抜き部25cを構成する四角形の内側に、マーク23の内側部分23cが配置されている。
【0040】
図6および7は、パターニングしたレジスト層18を用いて基板をエッチングする際に、フォトマスクのマークに対応する基板部分25bに、基板を貫通する貫通孔を形成しない場合の例を説明するための図である。図6および7の(a)、(b)、(c)はそれぞれ、図2の(a)、(h)、(i)に対応する。
【0041】
インクジェット記録ヘッドを製造する際は、通常1つのウェハー(基板)に複数のインクジェット記録ヘッド(チップ)を同時に作製する。図6および7では、この複数のチップのうちの2つのチップ(チップAおよびチップB)を記載している。
【0042】
また、図6、7のようにパターニングしたレジスト層18を用いて基板をエッチングする際に、フォトマスクのマークに対応する基板部分25bに、基板を貫通する貫通孔を形成しない場合は、マーク26として、例えば、以下のものを使用することができる。即ち、図3(c)、(d)に示すような細い、もしくは小さいマークを使用することができる。このマークの大きさは、パターニングしたレジスト層18を用いて基板をエッチングする際に、基板部分25bがエッチングされない、またはエッチングされてもその部分25bに基板10を貫通する貫通孔が形成されない大きさであれば良い。なお、図3(c)、(d)では、開口部(抜き部)25cの大きさがマーク26の大きさとなる。
【0043】
例えば、赤外線アライメントの際にマーク23として図3(a)に示すマーク、マーク26として図3(d)に示すマークを使用して、図4のように、フォトマスク25側から基板10を見た場合、符号23cで表される部分の内側に抜き部25cを配置することができる。
【0044】
なお、フォトマスクのマーク26のパターンが、使用するレジスト層18の解像限界を超えた場合は、フォトマスクを用いたパターニングの際、そのマーク26に対応するパターンはレジスト層18に形成されない。また、解像限界に達していなくても、細いもしくは小さいマーク26を使用した場合は、パターニングしたレジスト層18を用いたエッチングの際に、そのマーク26に対応する基板部分25bには、エッチングガスが入りにくくなる。この為、図6、7の(b)、(c)に示すように、レジスト層18を用いたエッチングの際に、開口部25aを通過したエッチングガスによって基板部分25bの一部はエッチングされたとしても、基板部分25bには基板を貫通する貫通孔を形成することなく、基板とフォトマスクの位置合わせを行うことができる。
【0045】
なお、この際、フォトマスク側のアライメントマークの形状(例えば、図3(d)では、四角形)を、開口部25aの開口形状(例えば、円形、四角形)より小さくすることができる。
【0046】
図6では、基板10のうち、除去されずに最終的にインクジェット記録ヘッドに残存する領域に、アライメントマーク23が形成されている。また、図7では、最終的に切断される領域(スクライブライン)に、アライメントマーク23が形成されている。なお、本発明では、レジスト層18のパターニング工程より後の工程で基板から除去される領域(例えば、独立インク供給口21となる領域)にアライメントマーク23を形成することもできる。
【0047】
図2では、赤外線アライメントの後、アライメントに用いたマーク26(例えば、図3(b)に示すマーク)を有するフォトマスク25を用いてレジスト層18を露光および現像し、図2(f)に示すように、独立供給口のパターン18aを形成する。
【0048】
そして次に、図2(g)に示すように、レジスト層18のパターンをマスクにして、ドライエッチング法によって、基板を貫通する複数の貫通孔を形成する。続いて、さらにエッチングを行い、図2(h)に示すように、これらの複数の貫通孔をインク流路となる部分(ポジ型レジスト層13)に連通させて、複数の独立供給口21を形成する。なお、レジスト層18のパターニングに使用する露光機としては、プロジェクション方式の露光機の他、プロキシミティ方式の露光機でも、所望のパターニングが出来れば、問題なく使用できる。
【0049】
最後に、図2(i)に示すように、このシリコン基板を、保護膜除去液に浸漬して保護膜19を除去する。なお、保護膜除去液としては、例えばキシレンを用いることができる。その後、全面露光により、インク流路22(液流路)の型材であるポジ型レジスト層13を分解させた後、溶剤を用いて除去する。なお、この溶剤としては、例えば、乳酸メチルを用いることができる。これにより、吐出口15と、吐出口15に連通するインク流路22とを有するインクジェット記録ヘッドが形成される。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
図2に示すプロセスフローに従い、インクジェット記録ヘッドを作製した。以下に詳しく説明する。
【0051】
まず、図2(a)に示すインク吐出エネルギー発生素子11およびアライメントマーク23を備えた基板10を用意した。なお、実施例1ではAlパターンを抜いたものをアライメントマーク23として、図3(a)に示すマークを使用し、このマーク23を共通液室20の紙面上方となる位置に配置した。また、この基板10のおもて面10aは、フォトリソグラフィプロセスでインク流路22のパターンが形成された密着向上層12を有しており、この密着向上層12は、ポリアミド系樹脂からなる。また、基板10の裏面10bは、共通液室20の形成に用いるパターンが形成されたマスク材16と、熱酸化膜層(不図示)を有しており、このマスク材16は、ポリアミド系樹脂からなる。
【0052】
続いて、図2(b)に示すように、この基板10の密着向上層12のパターン上に、アクリル系樹脂からなるポジ型レジスト層13をフォトリソグラフィプロセスで形成した。
【0053】
次に、図2(c)に示すように、前記ポジ型レジスト層13を覆うように、光硬化性樹脂からなる液流路構造体材料を塗布し、液流路構造体材料層を形成した。さらに、この液流路構造体材料層上に、撥水材層を形成した。次に、フォトマスク(不図示)を用いて、液流路構造体材料層と撥水材層を同時に露光および現像して、吐出口15を形成し、ノズル構造物14および撥水性被膜14aを形成した。なお、現像には、キシレンを用いた。
【0054】
次に、図2(d)に示すように、撥水性被膜14a表面に、ノズル構造物をアルカリ溶液から保護する為に保護膜19を塗布した。この保護膜19の材料として、東京応化工業社よりOBCの名称で上市される材料を用いた。その後、このシリコン基板をテトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)に浸漬し、インク供給の為の共通液室20を形成した。このとき、第一の面10aから共通液室の底までの厚みは、150μmであった。
【0055】
次に、図2(e)に示すように、裏面10bに形成したマスク材16と熱酸化膜層を除去した。その後、スプレー装置を使って、レジストとしてポジ型レジストを塗布し、レジスト層18を形成した。
【0056】
次に、図3(b)に示すマーク26を有するフォトマスク25を用いて、赤外線アライメントを行った。この際、共通液室(共通インク供給口)20内に、裏面10b側から、赤外線光(1100nm〜1200nm)を基板10に対して照射した。そして、共通液室内の基板側アライメントマーク23およびフォトマスク側アライメントマーク26を使用して赤外線アライメントを行った。なお実施例1では、フォトマスクのアライメントマークの開口形状と大きさ(開口面積)を、独立インク供給口21の開口形状と大きさに合せた。
【0057】
次に、そのフォトマスク25を用いて、レジスト層18を露光および現像し、図2(f)に示すように、独立供給口のパターンを形成した。
【0058】
続いて、図2(g)および(h)に示すように、形成したレジスト層18のパターンをマスクにして、ドライエッチング法によって、独立供給口21を形成した。この際、アライメントマーク26に対応する基板部分25bにも、基板10を貫通する貫通孔、即ち独立インク供給口21が形成された。
【0059】
最後に、図2(i)に示すように、このシリコン基板をキシレンに浸漬して保護膜19を除去し、吐出口15を形成した。その後、インク流路の型材であるポジ型レジスト層12を全面露光により分解させ、続いて溶剤(乳酸メチル)により除去し、吐出口15および独立インク供給口21に連通するインク流路22を形成した。
【0060】
(実施例2)
実施例2では、図6に示すように、チップA内の第二の面10bのうちの共通インク供給口20の開口部となる位置以外の位置の紙面上方に、基板側アライメントマーク23(図3(a)に示すマーク)を配置した。
【0061】
また、図6(a)に示すように、共通液室20に対応する開口部の他に、マーク23の紙面下方に位置する部分にも開口部を有するマスク材16を使用した。このマスク材16を使用することにより、実施例1と同様の方法で基板10の第二の面10bに共通インク供給口20を形成する際に、図6(b)に示すように、共通インク供給口20とは別の凹み24も形成された。
【0062】
なお、フォトマスク(不図示)側のアライメントマークには、独立供給口より細い開口形状を有する図3(c)に示すマークを使用した。そして、基板裏面10b側から、この凹み24に赤外線を照射して基板を透過し、基板とフォトマスクとのアライメントを行った。それ以外は実施例1と同様にして、図6(c)に示す吐出口15および吐出口15に連通する液流路22を有するインクジェット記録ヘッドを作製した。実施例2では、アライメントマーク26に対応する基板部分25bには、基板を貫通する貫通孔は形成されなかった。
【0063】
(実施例3)
実施例3では、図7に示すように、基板側アライメントマーク23(図3(a)に示すマーク)をチップ間の切断ラインL上に配置した。
【0064】
また、図7(a)に示すように、共通液室20に対応する開口部の他に、マーク23の紙面下方に位置する部分にも開口部を有するマスク材16を使用した。このマスク材16を使用することにより、実施例1と同様の方法で共通インク供給口20を形成する際に、図7(b)に示すように、凹み24も形成された。
【0065】
なお、フォトマスク(不図示)側のアライメントマークには、独立供給口より小さい開口形状を有する図3(d)に示すマークを使用した。そして、基板裏面10b側から、この凹み24に赤外線を照射して基板を透過し、基板とフォトマスクとのアライメントを行った。それ以外は実施例1と同様にして、図7(c)に示す吐出口15および吐出口15に連通する液流路22を有するインクジェット記録ヘッドを作製した。実施例3では、アライメントマーク26に対応する基板部分25bには、基板を貫通する貫通孔は形成されなかった。
【符号の説明】
【0066】
10:基板
10a:第一の面(おもて面)
10b:第二の面(裏面)
11:インク吐出エネルギー発生素子
13:ポジ型レジスト層
14:ノズル構造物
14a:撥水性被膜
15:吐出口
18:感光性材料層(レジスト層)
19:保護層
20:共通液室
21:独立インク供給口
22:流路
23:基板側アライメントマーク
24:共通液室とは別の凹み(アライメント用ダミー)
25:フォトマスク側アライメントマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第一の面および第二の面を有し、かつ該第二の面から基板の厚さを一部薄く加工することで形成した共通液室、および該共通液室に連通し、基板を貫通する貫通孔である複数の独立インク供給口を有する基板と、
該第一の面上に形成され、該複数の独立インク供給口と連通するインク流路および該インク流路に連通するインク吐出口を有するノズル構造物と
を含むインクジェット記録ヘッドを製造する方法であって、
該複数の独立インク供給口を形成するために、フォトマスクを用いて基板上に塗布したレジストをパターニングする工程を有し、
該工程において、アライメントマークを用いて該フォトマスクと該基板との位置合わせを行う際に、基板の凹みにおいて赤外線アライメントを行うことを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記赤外線アライメントを行う凹みが、前記共通液室であり、
前記赤外線アライメントに使用するフォトマスクのアライメントマークの面積が、独立インク供給口の開口面積以上であって、
該フォトマスクのアライメントマークに対応する基板部分に前記インク流路と連通する独立インク供給口を形成することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項3】
第二の面から基板の厚さを一部薄く加工して前記共通液室を形成する際に、該共通液室とは別の凹みを該第二の面に形成し、
前記赤外線アライメントを行う凹みが、該別の凹みであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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