インクジェット記録ヘッドユニット及びその製造方法
【課題】親水領域における粘着剤の残存を軽減することが可能なインクジェット記録ヘッドを提供する。
【解決手段】シールテープH1401は、所定の粘着力の高粘着力領域H1405aと、所定の粘着力より低い粘着力の低粘着力領域H1405bとを有する。高粘着力領域H1405aは、オリフィス面H1103の撥水領域H1107aに貼られ、低粘着力領域H1405bは、オリフィス面H1103の親水領域H1107bに貼られている。
【解決手段】シールテープH1401は、所定の粘着力の高粘着力領域H1405aと、所定の粘着力より低い粘着力の低粘着力領域H1405bとを有する。高粘着力領域H1405aは、オリフィス面H1103の撥水領域H1107aに貼られ、低粘着力領域H1405bは、オリフィス面H1103の親水領域H1107bに貼られている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出して記録を行うインクジェット記録方式に用いられるインクジェット記録ヘッドユニットおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリント方式に用いられるインクジェット記録ヘッドの吐出口を、物流時に保護する吐出口保護方法には、シールテープでその吐出口を覆う方法などがある。シールテープは、例えば、粘着テープまたはホットメルトテープである。
【0003】
このような吐出口保護方法を用いた技術には、例えば、特許文献1に記載のインク収納部用封止部材がある。このインク収納部用封止部材では、吐出口を保護するシールテープを剥離する際の荷重が所定の範囲であるシールテープを用いることで、吐出口からのインク漏れを防止している。
【0004】
また、インクジェット記録ヘッドには、吐出口の近傍にインクを存在させないようにすることを目的として、吐出口を有する吐出口面(以下、オリフィス面とする)上の吐出口の近傍には撥水領域を、吐出口から離れた領域には親水領域を形成する場合がある。撥水領域は、少なくとも吐出口近傍にあり、親水領域は、その撥水領域の外周にある場合や、撥水領域に囲まれている場合などがある。
【0005】
ここで「撥水領域」とは、オリフィス面において相対的に撥水性が大きい領域であり、「親水領域」とは、相対的に撥水性が小さい領域である。
【特許文献1】特開平5−77435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したインクジェット記録ヘッドのオリフィス面における親水領域は、撥水領域に比べて粘着層を構成する粘着剤が貼り付き易い。このため、シールテープを剥離する際、撥水領域では、シールテープの粘着剤が残存しなくても、親水領域では、その粘着層が密着しすぎることで、粘着層の一部が剥離して粘着剤が残存する可能性がある。
【0007】
親水領域に粘着剤が残存すると、インクジェット記録装置がインクジェット記録ヘッドのオリフィス面をワイピングする等してクリーニングを行う際に、親水領域に残存した粘着剤がワイピングの際に吐出口の中に詰まり、不吐が発生する可能性が高くなる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上述した粘着剤の残存を軽減することが可能なインクジェット記録ヘッドユニット、およびそのインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明によるインクジェット記録ヘッドユニットは、インクを吐出するための複数の吐出口が形成された吐出口面を有するインクジェット記録ヘッドと、前記吐出口を封止するように前記吐出口面に貼付されるテープとを有するインクジェット記録ヘッドユニットであって、前記吐出口面は、水との接触角が第一の値を示す前記吐出口の周囲の領域と、前記接触角が前記第一の値より小さい第二の値を示す領域とを有し、前記テープは、第一部分と該第一部分より粘着性の小さい第二部分とを有し、少なくとも前記吐出口の周囲の領域には前記第一部分が対応し、該第二の値を示す領域には前記第二部分が対応するように、前記吐出口面に貼付されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吐出口面の粘着剤残りを軽減できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明における実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
本発明を適用可能なインクジェット記録ヘッドの構成について、図1及び図2を用いて説明する。
【0013】
図1(a)において、インクジェット記録ヘッドH1001は、インクタンク一体型であり、インクタンク内にインクが充填されている。なお、インクジェット記録ヘッドH1001は、インクタンク別体型でもよい。
【0014】
図1(b)は、インクジェット記録ヘッドH1001の吐出口面に対して、インクを吐出するための吐出口の保護用や封止用のシールテープH1401が貼られているインクジェット記録ヘッドユニットH1002である。このような梱包用の形態を有するインクジェット記録ヘッドユニットH1002は、物流時に用いられる。シールテープH1401は、吐出面に形成されている吐出口を覆って貼られる。
【0015】
シールテープH1401が貼られることで、吐出口の保護だけでなく、物流時に生じる温度変動および圧力変動などによる吐出口からのインク漏れを防止することが可能になる。また、シールテープH1401には、シールテープH1401を剥離しやすくするためのタグテープH1402が貼られる。
【0016】
以下、図1(a)及び図2を用いてインクジェット記録ヘッドH1001の詳細な説明を行う。
【0017】
インクジェット記録ヘッドH1001は、図1(a)で示すように、電気配線テープH1301と、インク供給保持部材H1501と、シール部材H1801と、蓋部材H1901とを有する。また、インクジェット記録ヘッドH1001は、図2で示すように、さらに、記録素子基板H1101と、インク吸収体H1601ないしH1603と、フィルタH1701ないしH1703とを有する。なお、インク吸収体H1601ないしH1603については、必ずしも用いる必要はない。
【0018】
記録素子基板H1101は、例えば、厚さが0.5mmから1mmのSi基板を基体として形成される。
【0019】
記録素子基板H1101は、インクを吐出するための電気信号を受信するための電極部(不図示)と、内部のインクが供給されるインク供給口(不図示)とを有する。また、記録素子基板H1101は、Si基板上にインクを吐出する吐出口(不図示)を有するノズル層が形成されている。
【0020】
電気配線テープH1301は、ポリイミドフィルム上に銅配線が形成されたものであり、インクを吐出するための電気信号を記録素子基板H1101に印加する経路を形成する。
【0021】
また、電気配線テープH1301は、外部信号入力端子H1302と、開口部H1303と、電極端子H1304とを有する。
【0022】
外部信号入力端子H1302は、本体装置(インクジェット記録装置)から電気信号を受信するための端子である。
【0023】
開口部H1303は、記録素子基板H1101を組み込むためのものである。
【0024】
電極端子H1304は、記録素子基板H1101の電極部に接続される端子であり、開口部H1303の縁付近に形成される。なお、電極端子H1304と外部信号入力端子H1302とは、銅配線による経路でつながれている。
【0025】
また、記録素子基板H1101と電気配線テープH1301との電気的接続部分には、周囲封止剤H1307およびリード封止剤H1308が塗布される。
【0026】
周囲封止剤H1307およびリード封止剤H1308は、インクから、記録素子基板H1101および記録素子基板H1101の電極部を保護する。
【0027】
周囲封止剤H1307およびリード封止剤H1308は、例えば、熱硬化性エポキシ封止剤である。しかしながら、周囲封止剤H1307およびリード封止剤H1308は、熱硬化性エポキシ封止剤に限らず、適宜変更可能である。
【0028】
インク供給保持部材H1501は、例えば、樹脂成形により形成される。
【0029】
インク供給保持部材H1501は、インク吸収体H1601ないしH1603のそれぞれを保持するための複数の内部空間を有する。
【0030】
また、インク供給保持部材H1501は、内部空間に挿入されたインク吸収体H1601ないしH1603のそれぞれから記録素子基板H1101にインクを供給するインク流路を有する。
【0031】
また、インク供給保持部材H1501のインク流路の下流部には、インク供給口H1201が形成される。記録素子基板H1101は、Si基板に形成されているインク供給口が、インク供給保持部材H1501に形成されているインク供給口H1201に連通するように固定される。
【0032】
インク吸収体H1601ないしH1603は、例えば、ポリプロピレン(PP)繊維の圧縮体である。なお、インク吸収体H1601ないしH1603は、PP繊維の圧縮体に限らず、適宜変更可能である。
【0033】
インク吸収体H1601ないしH1603のそれぞれは、インクを保持するための負圧を発生し、インクを保持する。例えば、インク吸収体H1601ないしH1603のそれぞれは、シアン、マゼンタおよびイエローのそれぞれのインクを保持する。
【0034】
また、インク吸収体H1601ないしH1603のそれぞれは、インク供給保持部材H1501の内部空間のそれぞれに挿入される。
【0035】
フィルタH1701ないしH1703は、記録素子基板H1101内部へのゴミの進入を防ぐためのものである。フィルタH1701ないしH1703のそれぞれは、インク供給保持部材H1501のインク流路と、インク吸収体H1601ないしH1603のそれぞれとの境界部に固定される。
【0036】
蓋部材H1901は、インク供給保持部材H1501内部を密閉するために、インク供給保持部材H1501の上部開口部に溶着される。
【0037】
ただし、蓋部材H1901は、インク供給保持部材H1501内部の各部の圧力変動を逃がすための細口H1911ないしH1913を有する。また、蓋部材H1901は、細口H1911ないしH1913のそれぞれを連通する微細溝H1921ないしH1923を有する。
【0038】
シール部材H1801は、微細溝H1923の細口H1913と連通した端部と異なる他端部を除いて、細口H1911ないしH1913と、微細溝H1921ないしH1923と、を覆うように蓋部材H1901に接着される。
【0039】
これにより、微細溝H1923の他端部が開口され、その他端部が、各内部空間を大気中に連通させる大気連通口を形成する。
【0040】
また、蓋部材H1901は、インクジェット記録ヘッドH1001を本体装置に固定するための係合部H1930を有している。
【0041】
なお、インク供給保持部材H1501および蓋部材H1901は、インク吸収体H1601ないしH1603およびフィルタH1701ないしH1703を内蔵するインク収納部の筺体を形成する。
【0042】
次に、本発明に用いられるインクジェット記録ヘッドの吐出口面について説明する。
【0043】
本発明に適用可能なインクジェット記録ヘッドH1001は、図3(a)で示すように、吐出口面(以下、オリフィス面と称する)H1103と、電気配線テープH1301と、周囲封止剤H1307と、リード封止剤H1308とを有する。
【0044】
図3(b)は、図3(a)のA−A断面図である。図3(b)で示すように、記録素子基板H1101は、Si基板H1101aとノズル層H1106とで構成される。Si基板H1101aには、吐出口H1102からインクを吐出するためのエネルギーを発生する発熱素子H1105と、インク供給口H1104とが形成されている。また、Si基板H1101a上に、フォトリソグラフィーなどの製法を用いて、ノズル層H1106に吐出口H1102やインク流路が形成される。
【0045】
オリフィス面H1103は、複数の吐出口H1102を有する。これらの吐出口H1102からインクが吐出される。ノズル層H1106のインク流路は、インク供給口H1104の開口部であるインク供給口開口部領域H1107cと連通される。インク供給口開口部領域H1107cは、ノズル層H1106のインク流路を介して吐出口H1102にインクを供給する。
【0046】
また、オリフィス面H1103は、相対的に撥水性が高い撥水領域H1107aと、相対的に撥水性が低い親水領域H1107bとを有し、シールテープH1401の貼付される面である。
【0047】
図3(a)に示すように、撥水領域H1107aは、少なくとも吐出口H1102の近傍に形成され、その吐出口の近傍にインクが残存しにくくする役割を果たす。もし吐出口近傍にインクの残存があれば、残存したインクが吐出口H1102の縁に付着したり、吐出口H1102に入り込んだりすることで、インクを吐出する際にインクの吐出方向が変わってしまい、記録に影響を与える可能性がある。このような理由で、少なくとも吐出口H1102の近傍には撥水領域H1107aが設けられる。
【0048】
親水領域H1107bは、図3(a)に示すように、吐出口H1102から離れたオリフィス面H1103上に、吐出口H1102の配列方向に沿って、帯状に形成されている。
【0049】
このように親水領域H1107bを形成することで、撥水領域H1107aである吐出口近傍に付着したインクを親水領域H1107bの方に移動させることができ、吐出口近傍のインクを減らすことができる。また、親水領域H1107bは、吐出口H1102から移動してくるインクを蓄積する役割を果たす。
【0050】
撥水領域H1107a及び親水領域H1107bの形成方法について説明する。例えば、先ず、全面が親水領域H1107bであるオリフィス面H1103の全面に撥水処理を行って、撥水領域H1107aを生成する。その後、その撥水領域H1107aの一部の表面をエキシマレーザ等で除去して、親水領域H1107bを露出させる。このように撥水領域H1107a及び親水領域H1107bを形成することができる。なお、撥水領域H1107a及び親水領域H1107bの形成方法は、この方法に限らず適宜変更可能である。
【0051】
ここで、インクが吐出口H1102近傍のインクの残存を減らすためには、撥水領域H1107aの純水との前進接触角が、第一の値として80°ないし105°であることが望ましい。さらに、親水領域を形成して吐出口H1102の周囲にあるインクの残存を軽減するためには、親水領域は、第一の値よりも純水の前進接触角が10°以上低い第二の値を有することが望ましい。
【0052】
本実施形態では、オリフィス面に対する撥水処理として、フッ素含有シラン化合物を用いており、撥水領域H1107aの純水との前進接触角は、100°に調整されている。また親水領域H1107bの純水との前進接触角は、70°以下に調整されている。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
図4(a)と図4(b)を参照して、インクジェット記録ヘッドの撥水領域H1107aと親水領域H1107bとを有するオリフィス面に対して、シールテープH1401が貼付された構成について説明する。
【0054】
図4(a)は、図3(a)で説明したインクジェット記録ヘッドに対して、シールテープH1401が貼付されたインクジェット記録ヘッドのオリフィス面である。また、図4(b)は、図4(a)のB−B断面図である。
【0055】
図4(b)に示すように、シールテープH1401は、シールテープ基材H1403と、粘着剤で形成される粘着層H1404とを含んで構成される。
【0056】
シールテープ基材H1403の厚さは、7μmから75μmの範囲内が望ましく、12μmないし30μmの範囲内であることがさらに望ましい。
【0057】
シールテープ基材H1403の厚さをこの範囲にすることで、シールテープH1401の弾性を非常に低くすることができる。そのため、シールテープH1401のオリフィス面H1103と接着していない部分に予期せぬ衝撃などが加わった場合においても、接着していない部分で衝撃を緩和することができる。よって、シールテープH1401とオリフィス面H1103とが接着している領域に伝わる衝撃を低減することができ、シールテープH1401とオリフィス面H1103とが剥離してしまうおそれが少なくなる。
【0058】
粘着層H1404は、高粘着力領域H1405aと、低粘着力領域H1405bとを有する。高粘着力領域H1405a及び低粘着力領域H1405bを形成する方法については、後で詳しく述べる。
【0059】
高粘着力領域H1405aは、所定の粘着力の第一部分であり、低粘着力領域H1405bは、所定の粘着力より低い粘着力の第二部分である。
【0060】
図4(b)に示すように、撥水領域H1107aには、高粘着力領域H1405aが対応するように貼られており、親水領域H1107bには、低粘着力領域H1405bが対応するように貼られている。
【0061】
なお、図4(a)及び図4(b)に示すように、オリフィス面H1103において撥水領域を示す吐出口の周囲の領域H1102aには、インク漏れを低減するために高粘着力領域H1405aが貼られていることが必要である。吐出口H1102の周囲の領域H1102aとしては、吐出口H1102の直径の少なくとも2倍以上の領域であれば良い。
【0062】
このような構成とすることで、少なくとも吐出口の周囲の領域H1102aを高粘着力領域H1405aで封止することによりインク漏れを低減しつつ、親水領域H1107bには低粘着力領域H1405bを貼付することで、粘着剤残りを低減することができる。
【0063】
なお、後述する本発明の製造方法によっては、親水領域H1107bと低粘着力領域H1405bとを精確に対応させることが困難である場合も考えられる。さらに、親水領域H1107bの一部が高粘着力領域H1405aと貼り合わされた場合には、シールテープH1401を剥離した際、粘着層で凝集破壊が生じ、親水領域H1107bに粘着剤が残存してしまうことも有り得る。したがって、図5に示すように親水領域H1107bを覆うように、低粘着力領域H1405bが貼られていることが望ましい。すなわち、親水領域H1107bの面積よりも大きい面積を有する低粘着力領域H1405bで、親水領域H1107bを覆うように貼り合わされた状態である。このように貼り合わされることで、親水領域H1107bと低粘着力領域H1405bとの貼り合せに少量のずれが生じていてもが親水領域H1107bに高粘着力領域H1405aが貼られている可能性を少なくすることができる。
【0064】
シールテープH1401とオリフィス面H1103とを剥離するのに要する剥離力を測定する方法について説明する。図6は、剥離力の測定装置の概略を示す模式図である。
【0065】
測定試料に対してシールテープH1401を貼り付けたものを用意し、シールテープH1401のタグテープH1402部分をクランプ200に取り付ける。クランプ200はステージ202上に取り付けられたプッシュプルゲージ201と連結されている。シールテープH1401を引き剥がす方向にステージ202を移動させてシールテープH1401を引き剥がす。この時のプッシュプルゲージ201によって剥離力が測定される。
【0066】
本発明において、上記方法で測定された剥離力の値は、撥水領域H1107aに貼られた高粘着力領域H1405aにおける剥離力と、親水領域H1107bに貼られた低粘着力領域H1405bにおける剥離力とのうち、大きい方の値が示される。この剥離力については、インク漏れに対する信頼性の観点から、親水領域H1107bに貼られた低粘着力領域H1405bにおける剥離力よりも、撥水領域H1107aに貼られた高粘着力領域H1405aにおける剥離力の方が大きいことが望ましい。
【0067】
上記測定方法によって、本実施例におけるオリフィス面H1103とシールテープH1401との剥離力を測定すると、その剥離力の値は、撥水領域H1107aに貼られた高粘着力領域H1405aにおける剥離力の値を示す。また、その値は、剥離速度を200mm/minとしたとき、10N/m以上40N/m以下の範囲になるような強さとなった。
【0068】
なお、オリフィス面の全面を親水領域とし、シールテープの全面を低粘着力領域とした場合における剥離力を上記測定方法によって測定した場合、その値は、剥離速度を200mm/minとしたとき、1N/m以上10N/m以下となった。
【0069】
次に、オリフィス面H1103における撥水領域H1107a及び親水領域H1107bの形状について説明する。図7(a)及び図7(b)は、図3(a)で示したオリフィス面H1103の撥水/親水領域の形状とは異なる形状を示している。
【0070】
図7(a)及び図7(b)では、撥水領域H1107aは、図3(a)と同様に、吐出口H1102と当接するオリフィス面H1103上に形成されている。
【0071】
撥水領域H1107aおよび親水領域H1107bの境界は、図7(a)では、直線形であり、図7(b)では、鋸歯形である。
【0072】
さらに、図7(a)及び図7(b)で示した親水領域H1107bの総面積は、図3(a)で示した親水領域H1107bの総面積より大きい。このため、図7(a)及び図7(b)で示したインクジェット記録ヘッドH1001は、親水領域H1107b内に蓄積可能なインクの量が図3(a)で示したインクジェット記録ヘッドH1001より多くなる。よって、図7(a)及び図7(b)で示したインクジェット記録ヘッドH1001は、インクの使用量が多い長尺ヘッドに適している。
【0073】
このようなインクジェット記録ヘッドは、親水領域H1107bが多いため、本発明を適用しなければ、粘着剤残りが発生しやすいと言える。インクジェット記録ヘッドは、本発明の構成を適用すれば、使用時にオリフィス面からシールテープを剥離する際に、粘着剤残りが発生しにくく、オリフィス面に蓄積可能なインクの量も多くなる。
【0074】
なお、親水領域H1107bの形状は、図3(a)、図7(a)及び図7(b)に示した形状に限らず適宜変更可能である。
【0075】
本実施例のインクジェット記録ヘッドユニットを評価した結果、搬送時にシールテープが剥がれることも、インク漏れ等が発生することもなかった。また、使用時にシールテープを剥離する際、オリフィス面H1103の破損も、粘着剤残りも発生しなかった。
【0076】
本実施例によれば、シールテープを剥離する際、親水領域H1107bに粘着剤が密着しすぎることを軽減することが可能になり、粘着剤の残存を軽減することが可能になる。
【0077】
(実施例2)
図8(a)は、本実施例のインクジェット記録ヘッドのオリフィス面における、インク供給口開口部領域H1107cの位置関係を説明するための模式図である。また、また、図8(b)は、図8(a)のC−C断面図である。
【0078】
実施例2は、実施例1の構成に加えて、さらに撥水領域H1107a内のインク供給口開口部領域H1107cに対応する部分のシールテープの粘着力を、低粘着力とした構成である。
【0079】
図8(b)に示すように、インク供給口開口部領域H1107cは、Si基板H1101aがノズル層H1106に対して開口部を有する領域である。本実施例では、インク供給口H1104から共通して、インク供給口の両側に配列している吐出口列にインクが供給される構成となっている。
【0080】
このような構成のため、ノズル層H1106のうち、インク供給口開口部領域H1107cに対向する部分は、シールテープH1401が剥離される際にオリフィス面H1103が変形または破損しやすい。よって、このインク供給口開口部領域H1107cに対向する部分のオリフィス面には、低粘着力の粘着層(低粘着力領域H1405b)が対応するようにシールテープH1401が貼付されていることが望ましい。
【0081】
しかしながら、図4(b)で説明したように、オリフィス面H1103の吐出口の周囲の領域H1102aには、インク漏れの観点から高粘着力の粘着層が対応するようにシールテープH1401が貼付されていることが必要である。
【0082】
図8(b)では、オリフィス面のインク供給口開口部領域H1107cに対向する領域のうち、吐出口の周囲の領域H1102aを除いた領域に、低粘着力の粘着層が対応するようにシールテープH1401が貼付される。これにより、オリフィス面H1103の変形または破損を低減することが可能となる。
【0083】
なお、親水領域H1107bおよびインク供給口開口部領域H1107cに貼られているシールテープH1401の低粘着力領域H1405bの粘着力のそれぞれは、本実施例では、互いに同じとしている。しかし、それぞれの粘着力は互いに異なっていてもよい。オリフィス面H1103の変形または破損を低減する観点から、インク供給口開口部領域H1107cに貼られているシールテープH1401の粘着力の方が、親水領域H1107bに貼られているシールテープH1401の粘着力よりも小さいことが望ましい。なお、インク供給口開口部領域H1107cに貼られているシールテープH1401の部分は、第三部分の一例である。
【0084】
以上のように構成することで、インク漏れ、オリフィス面の変形または破損を低減しつつ、粘着剤残りを低減することが可能となる。
【0085】
(実施例3)
実施例3以降では、本発明のインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法について説明する。
【0086】
本実施例では、シールテープH1401の粘着層として、紫外線硬化型粘着層を用いた例を示す。紫外線硬化型粘着層は、紫外線が照射されることで硬化し、粘着性が低下する性質を有する。
【0087】
シールテープ基材H1403としては、紫外線に対する高い透明特性を示すものが望ましく、例えばそのような材料としては樹脂フィルムが挙げられる。高い透明特性を示す樹脂フィルムであれば、樹脂フィルム越しに粘着層H1404へ紫外線を照射して硬化させることが可能である。このような特性を有する樹脂フィルムの具体例として、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどを有するポリオレフィン樹脂フィルムが挙げられる。
【0088】
また、シールテープ基材H1403の粘着層H1404を設ける面には、粘着層の密着性向上のために、プラズマ処理またはコロナ放電処理などの表面処理が行なわれてもよい。
【0089】
粘着層H1404は、例えば、アクリル系粘着剤ポリマー、紫外線硬化型オリゴマーおよび光開始剤で構成される。なお、粘着層H1404は、これらによる構成に限らず、適宜変更可能である。
【0090】
紫外線硬化型オリゴマーの主成分は、例えば、ポリエステル、エポキシおよびウレタンである。なお、紫外線硬化型オリゴマーの主成分は、これらに限らず、適宜変更可能である。
【0091】
光開始剤は、例えば、α−アリルベンゾイン、α−アリルベンゾインアリールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン化合物または1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンである。また、光開始剤は、4−(2−アクリロキシエトキシ)フェニル−2−ヒドロキシ−2−プロピルケトン等でもよい。なお、光開始剤は、これらに限らず適宜変更可能である。
【0092】
また、粘着層H1404の厚さは、5μmから50μmの範囲内でよいが、10μmから40μmの範囲内であることが望ましい。粘着層H1404の厚さが5μmより少ない状態では、粘着層H1404の柔軟性による粘着力発生の効果が低下するため、粘着層の厚さの下限は5μmが望ましい。また、50μm以上の厚さでは、柔軟性による粘着力発生の効果はあまり変わらないため、粘着層H1404の上限の厚さはコストの点から50μm程度でよい。
【0093】
図9(a)〜図9(c)には、本実施例におけるインクジェット記録ヘッドH1001に対するシールテープH1401の貼り合わせの工程フローを示す。
【0094】
図9(a):所定の粘着力を有するシールテープH1401を、撥水領域H1107aと親水領域H1107bとを有するオリフィス面H1103に貼り合わせる。
【0095】
図9(b):次に、親水領域H1107bに対応する領域以外をマスキングするようなマスク2001をシールテープ基材H1403側に配置する。その後、そのマスク2001が配置された側に、紫外線2002を照射する。
【0096】
図9(c):そして、紫外線2002が照射された領域の粘着剤の粘着力が低下したシールテープH1401が貼り合わされる。この際、紫外線2002は、粘着層H1404で吸収されるため、殆どオリフィス面H1103に到達することはない。
【0097】
以上のような工程を経て、本インクジェット記録ヘッドユニットを得ることができる。
【0098】
このように、シールテープH1401をオリフィス面H1103に貼り合わせた後、マスク2001を用いてそのシールテープに紫外線2002を照射することで、紫外線2002の照射領域の位置合わせを容易に行うことが可能となる。
【0099】
しかしながら、親水領域H1107bに精確に対応するように、低粘着力領域H1405bに対して高精度に紫外線照射領域を設定することは困難な場合も考えられる。そのような場合には、実施例1において図5で説明したように、親水領域H1107bを覆うように、低粘着力領域H1405bが貼られている構成とすれば良い。すなわち、図9(b)で示す工程において、親水領域H1107bに対応する部分を含んで少し広い領域に対して、紫外線2002を照射すれば良い。
【0100】
このような構成とすることで、紫外線の照射領域のずれにより親水領域H1107bに高粘着力領域H1405aが貼られる可能性を低減できる。したがって、シールテープH1401を剥離した際、粘着剤がシールテープH1401の粘着層H1404から脱落し、親水領域H1107bに粘着剤残りが発生することを低減できるという効果を奏する。
【0101】
(実施例4)
実施例3で示した工程フローでは、シールテープ基材H1403を紫外線2002が透過して、粘着層H1404に照射される状態を示した。しかし、シールテープ基材H1403が紫外線2002の透過性が低い材質で構成される場合には、実施例3で示した工程フローでは、領域毎に粘着層H1404の粘着力を変化させることは困難である。
【0102】
このように、シールテープ基材H1403が紫外線2002の透過性が低い材質で構成される場合におけるインクジェット記録ヘッドH1001に対するシールテープH1401の貼り合わせの工程フローを示す。なお、実施例3で説明した構成と同様の構成については説明を省略する。
【0103】
図10(a):親水領域H1107bに対応する領域以外をマスキングするようなマスク2001が粘着層H1404側に配置する。その後、そのマスク2001が配置された側に紫外線2002を照射する。
【0104】
図10(b):インクジェット記録ヘッドH1001の親水領域H1107b或いは別途設けたアライメントマーク(不図示)の位置をカメラ2003によって認識する。
【0105】
図10(c):インクジェット記録ヘッドH1001とカメラ2003との間にシールテープH1401を配する。そして、そのシールテープH1401の低粘着力領域H1405b或いはインクジェット記録ヘッドH1001に設けられたアライメントマークに対応した領域(不図示)の位置を、カメラ2003によって認識する。
【0106】
図10(d):そして、位置決めされたインクジェット記録ヘッドH1001の撥水領域H1107aと親水領域H1107bとを有するオリフィス面に対して、シールテープH1401を貼り合わせる。
【0107】
以上のような工程を経て、本発明のインクジェット記録ヘッドユニットを得ることができる。
【0108】
また、本実施例における方法では、実施例3の場合以上の精度でその位置合せを行い、親水領域H1107bに対応するように低粘着力領域H1405bを設けることは困難である。
【0109】
この場合、図5で示したように、少なくとも親水領域H1107bよりも低粘着力領域H1405bの面積を大きくし、低粘着力領域H1405bが親水領域を覆うように貼られるよう構成すればよい。
【0110】
このような構成とすることで、位置合せのずれにより親水領域H1107bに高粘着力領域H1405aが貼られる可能性を低減できる。したがって、シールテープH1401を剥離した際、粘着剤がシールテープH1401の粘着層H1404から脱落し、親水領域H1107bに粘着剤残りが発生することを低減できるという効果を奏する。
【0111】
本実施例の方法によれば、シールテープ基材H1403は、紫外線に対する透明特性を有していなくても良い。
【0112】
(実施例5)
本実施例では、シールテープの粘着層における所定の領域に対して、所望の粘着力を付する方法として、実施例3又は4で説明した紫外線硬化型粘着層を用いた方法とは異なる方法について説明する。なお、実施例3又は4で説明した構成と同様の構成については、説明を省略する。
【0113】
本実施例では、加熱した領域の粘着力が低下するシールテープを用いる。
【0114】
本実施例のシールテープH2401は、粘着層H2404に熱膨張性微小球を有する。この熱膨張性微小球とは、加熱により容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球である。
【0115】
加熱によりガス化して膨張する物質としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなどが挙げられる。
【0116】
弾性を有する殻としては、熱溶融性物質や熱膨張により破壊される物質で形成されることが望ましい。このような物質を用いることで、シールテープH2401の所望の領域を加熱した際、加熱された粘着層H2404中の熱膨張性微小球が膨張する。その結果、オリフィス面と粘着剤との接触面積が減り、粘着力を低下させることが可能となる。
【0117】
弾性を有する殻を形成する物質としては、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンなどが挙げられる。
【0118】
次に、図11(a)〜図11(c)を用いて、インクジェット記録ヘッドH1001に対する上述したシールテープH2401の貼り合わせの工程フロ−を示す。
【0119】
図11(a):アクリル系粘着剤中に熱膨張性微小球を含む粘着層H2404を有するシールテープH2401を、撥水領域H1107aと親水領域H1107bとを有するオリフィス面H1103に貼り合わせる。
【0120】
図11(b):加熱されたホーン2004を、シールテープH2401の親水領域H1107bに対応する領域に当てて、加熱する。この工程で、シールテープH2401の加熱された領域において、粘着層H2404中の熱膨張性微小球が膨張するので、オリフィス面と粘着剤との接触面積が減り、粘着力が低下する。なお、ホーン2004のよる加熱は、90℃から170℃程度で行われる。
【0121】
図11(c):オリフィス面の親水領域H1107bに、粘着層H2404の低粘着力領域H1405bが対応したシールテープH2401が貼り合わされた状態を示す。
【0122】
以上のような工程を経て、本発明のインクジェット記録ヘッドユニットを得ることができる。
【0123】
本実施例においても、実施例3及び4と同様に、図5で示した構成とすることで、実施例3及び4と同様の効果を得ることができる。
【0124】
なお、シールテープ基材H1403としては、粘着剤との親和性、耐熱性、及び市場における流通性の観点からポリエステル系の樹脂が望ましい。
【0125】
以上、実施例3〜実施例5で示した例は、実施例1で説明したシールテープの高粘着/低粘着力領域の形状を例として説明した。しかしながら、本例は、適宜マスクの形状やホーンの形状を変えることにより、実施例2で説明したシールテープの高粘着/低粘着力領域の形状にも適用可能である。
【0126】
また、実施例3〜実施例5で示した例においては、粘着層H1404として紫外線硬化型粘着層や、加熱した領域の粘着力が低下する粘着層を用いた。しかしながら、粘着層にエネルギーを付与することにより、その粘着性を変化させることができるものであれば、これに限らず適宜変更可能である。
【0127】
以上説明した実施形態および実施例において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明を適用可能な一般的なインクジェット記録ヘッドと、シールテープが貼付されたインクジェット記録ヘッドユニットの斜視図である。
【図2】一般的なインクジェット記録ヘッドの構成を示した分解斜視図である。
【図3】本発明を適用可能な一般的なインクジェット記録ヘッドのオリフィス面の説明図である。
【図4】実施例1のインクジェット記録ヘッドとシールテープを示した模式図である。
【図5】シールテープの高粘着力領域及び低粘着力領域と、オリフィス面の撥水領域及び親水領域との位置関係を説明するための模式図である。
【図6】剥離力の測定装置の概略を示す模式図である。
【図7】オリフィス面の撥水領域及び親水領域の形状の例を示した模式図である。
【図8】実施例2のインクジェット記録ヘッドとシールテープを示した模式図である。
【図9】本発明による製造方法の一つである実施例3における工程フローを示す模式図である。
【図10】本発明による製造方法の一つである実施例4における工程フローを示す模式図である。
【図11】本発明による製造方法の一つである実施例5における工程フローを示す模式図である。
【符号の説明】
【0129】
H1001 インクジェット記録ヘッド
H1002 インクジェット記録ヘッドユニット
H1102 吐出口
H1103 吐出口面(オリフィス面)
H1107a 撥水領域
H1107b 親水領域
H1401 シールテープ
H1405a 高粘着力領域
H1405b 低粘着力領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出して記録を行うインクジェット記録方式に用いられるインクジェット記録ヘッドユニットおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリント方式に用いられるインクジェット記録ヘッドの吐出口を、物流時に保護する吐出口保護方法には、シールテープでその吐出口を覆う方法などがある。シールテープは、例えば、粘着テープまたはホットメルトテープである。
【0003】
このような吐出口保護方法を用いた技術には、例えば、特許文献1に記載のインク収納部用封止部材がある。このインク収納部用封止部材では、吐出口を保護するシールテープを剥離する際の荷重が所定の範囲であるシールテープを用いることで、吐出口からのインク漏れを防止している。
【0004】
また、インクジェット記録ヘッドには、吐出口の近傍にインクを存在させないようにすることを目的として、吐出口を有する吐出口面(以下、オリフィス面とする)上の吐出口の近傍には撥水領域を、吐出口から離れた領域には親水領域を形成する場合がある。撥水領域は、少なくとも吐出口近傍にあり、親水領域は、その撥水領域の外周にある場合や、撥水領域に囲まれている場合などがある。
【0005】
ここで「撥水領域」とは、オリフィス面において相対的に撥水性が大きい領域であり、「親水領域」とは、相対的に撥水性が小さい領域である。
【特許文献1】特開平5−77435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したインクジェット記録ヘッドのオリフィス面における親水領域は、撥水領域に比べて粘着層を構成する粘着剤が貼り付き易い。このため、シールテープを剥離する際、撥水領域では、シールテープの粘着剤が残存しなくても、親水領域では、その粘着層が密着しすぎることで、粘着層の一部が剥離して粘着剤が残存する可能性がある。
【0007】
親水領域に粘着剤が残存すると、インクジェット記録装置がインクジェット記録ヘッドのオリフィス面をワイピングする等してクリーニングを行う際に、親水領域に残存した粘着剤がワイピングの際に吐出口の中に詰まり、不吐が発生する可能性が高くなる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上述した粘着剤の残存を軽減することが可能なインクジェット記録ヘッドユニット、およびそのインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明によるインクジェット記録ヘッドユニットは、インクを吐出するための複数の吐出口が形成された吐出口面を有するインクジェット記録ヘッドと、前記吐出口を封止するように前記吐出口面に貼付されるテープとを有するインクジェット記録ヘッドユニットであって、前記吐出口面は、水との接触角が第一の値を示す前記吐出口の周囲の領域と、前記接触角が前記第一の値より小さい第二の値を示す領域とを有し、前記テープは、第一部分と該第一部分より粘着性の小さい第二部分とを有し、少なくとも前記吐出口の周囲の領域には前記第一部分が対応し、該第二の値を示す領域には前記第二部分が対応するように、前記吐出口面に貼付されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吐出口面の粘着剤残りを軽減できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明における実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
本発明を適用可能なインクジェット記録ヘッドの構成について、図1及び図2を用いて説明する。
【0013】
図1(a)において、インクジェット記録ヘッドH1001は、インクタンク一体型であり、インクタンク内にインクが充填されている。なお、インクジェット記録ヘッドH1001は、インクタンク別体型でもよい。
【0014】
図1(b)は、インクジェット記録ヘッドH1001の吐出口面に対して、インクを吐出するための吐出口の保護用や封止用のシールテープH1401が貼られているインクジェット記録ヘッドユニットH1002である。このような梱包用の形態を有するインクジェット記録ヘッドユニットH1002は、物流時に用いられる。シールテープH1401は、吐出面に形成されている吐出口を覆って貼られる。
【0015】
シールテープH1401が貼られることで、吐出口の保護だけでなく、物流時に生じる温度変動および圧力変動などによる吐出口からのインク漏れを防止することが可能になる。また、シールテープH1401には、シールテープH1401を剥離しやすくするためのタグテープH1402が貼られる。
【0016】
以下、図1(a)及び図2を用いてインクジェット記録ヘッドH1001の詳細な説明を行う。
【0017】
インクジェット記録ヘッドH1001は、図1(a)で示すように、電気配線テープH1301と、インク供給保持部材H1501と、シール部材H1801と、蓋部材H1901とを有する。また、インクジェット記録ヘッドH1001は、図2で示すように、さらに、記録素子基板H1101と、インク吸収体H1601ないしH1603と、フィルタH1701ないしH1703とを有する。なお、インク吸収体H1601ないしH1603については、必ずしも用いる必要はない。
【0018】
記録素子基板H1101は、例えば、厚さが0.5mmから1mmのSi基板を基体として形成される。
【0019】
記録素子基板H1101は、インクを吐出するための電気信号を受信するための電極部(不図示)と、内部のインクが供給されるインク供給口(不図示)とを有する。また、記録素子基板H1101は、Si基板上にインクを吐出する吐出口(不図示)を有するノズル層が形成されている。
【0020】
電気配線テープH1301は、ポリイミドフィルム上に銅配線が形成されたものであり、インクを吐出するための電気信号を記録素子基板H1101に印加する経路を形成する。
【0021】
また、電気配線テープH1301は、外部信号入力端子H1302と、開口部H1303と、電極端子H1304とを有する。
【0022】
外部信号入力端子H1302は、本体装置(インクジェット記録装置)から電気信号を受信するための端子である。
【0023】
開口部H1303は、記録素子基板H1101を組み込むためのものである。
【0024】
電極端子H1304は、記録素子基板H1101の電極部に接続される端子であり、開口部H1303の縁付近に形成される。なお、電極端子H1304と外部信号入力端子H1302とは、銅配線による経路でつながれている。
【0025】
また、記録素子基板H1101と電気配線テープH1301との電気的接続部分には、周囲封止剤H1307およびリード封止剤H1308が塗布される。
【0026】
周囲封止剤H1307およびリード封止剤H1308は、インクから、記録素子基板H1101および記録素子基板H1101の電極部を保護する。
【0027】
周囲封止剤H1307およびリード封止剤H1308は、例えば、熱硬化性エポキシ封止剤である。しかしながら、周囲封止剤H1307およびリード封止剤H1308は、熱硬化性エポキシ封止剤に限らず、適宜変更可能である。
【0028】
インク供給保持部材H1501は、例えば、樹脂成形により形成される。
【0029】
インク供給保持部材H1501は、インク吸収体H1601ないしH1603のそれぞれを保持するための複数の内部空間を有する。
【0030】
また、インク供給保持部材H1501は、内部空間に挿入されたインク吸収体H1601ないしH1603のそれぞれから記録素子基板H1101にインクを供給するインク流路を有する。
【0031】
また、インク供給保持部材H1501のインク流路の下流部には、インク供給口H1201が形成される。記録素子基板H1101は、Si基板に形成されているインク供給口が、インク供給保持部材H1501に形成されているインク供給口H1201に連通するように固定される。
【0032】
インク吸収体H1601ないしH1603は、例えば、ポリプロピレン(PP)繊維の圧縮体である。なお、インク吸収体H1601ないしH1603は、PP繊維の圧縮体に限らず、適宜変更可能である。
【0033】
インク吸収体H1601ないしH1603のそれぞれは、インクを保持するための負圧を発生し、インクを保持する。例えば、インク吸収体H1601ないしH1603のそれぞれは、シアン、マゼンタおよびイエローのそれぞれのインクを保持する。
【0034】
また、インク吸収体H1601ないしH1603のそれぞれは、インク供給保持部材H1501の内部空間のそれぞれに挿入される。
【0035】
フィルタH1701ないしH1703は、記録素子基板H1101内部へのゴミの進入を防ぐためのものである。フィルタH1701ないしH1703のそれぞれは、インク供給保持部材H1501のインク流路と、インク吸収体H1601ないしH1603のそれぞれとの境界部に固定される。
【0036】
蓋部材H1901は、インク供給保持部材H1501内部を密閉するために、インク供給保持部材H1501の上部開口部に溶着される。
【0037】
ただし、蓋部材H1901は、インク供給保持部材H1501内部の各部の圧力変動を逃がすための細口H1911ないしH1913を有する。また、蓋部材H1901は、細口H1911ないしH1913のそれぞれを連通する微細溝H1921ないしH1923を有する。
【0038】
シール部材H1801は、微細溝H1923の細口H1913と連通した端部と異なる他端部を除いて、細口H1911ないしH1913と、微細溝H1921ないしH1923と、を覆うように蓋部材H1901に接着される。
【0039】
これにより、微細溝H1923の他端部が開口され、その他端部が、各内部空間を大気中に連通させる大気連通口を形成する。
【0040】
また、蓋部材H1901は、インクジェット記録ヘッドH1001を本体装置に固定するための係合部H1930を有している。
【0041】
なお、インク供給保持部材H1501および蓋部材H1901は、インク吸収体H1601ないしH1603およびフィルタH1701ないしH1703を内蔵するインク収納部の筺体を形成する。
【0042】
次に、本発明に用いられるインクジェット記録ヘッドの吐出口面について説明する。
【0043】
本発明に適用可能なインクジェット記録ヘッドH1001は、図3(a)で示すように、吐出口面(以下、オリフィス面と称する)H1103と、電気配線テープH1301と、周囲封止剤H1307と、リード封止剤H1308とを有する。
【0044】
図3(b)は、図3(a)のA−A断面図である。図3(b)で示すように、記録素子基板H1101は、Si基板H1101aとノズル層H1106とで構成される。Si基板H1101aには、吐出口H1102からインクを吐出するためのエネルギーを発生する発熱素子H1105と、インク供給口H1104とが形成されている。また、Si基板H1101a上に、フォトリソグラフィーなどの製法を用いて、ノズル層H1106に吐出口H1102やインク流路が形成される。
【0045】
オリフィス面H1103は、複数の吐出口H1102を有する。これらの吐出口H1102からインクが吐出される。ノズル層H1106のインク流路は、インク供給口H1104の開口部であるインク供給口開口部領域H1107cと連通される。インク供給口開口部領域H1107cは、ノズル層H1106のインク流路を介して吐出口H1102にインクを供給する。
【0046】
また、オリフィス面H1103は、相対的に撥水性が高い撥水領域H1107aと、相対的に撥水性が低い親水領域H1107bとを有し、シールテープH1401の貼付される面である。
【0047】
図3(a)に示すように、撥水領域H1107aは、少なくとも吐出口H1102の近傍に形成され、その吐出口の近傍にインクが残存しにくくする役割を果たす。もし吐出口近傍にインクの残存があれば、残存したインクが吐出口H1102の縁に付着したり、吐出口H1102に入り込んだりすることで、インクを吐出する際にインクの吐出方向が変わってしまい、記録に影響を与える可能性がある。このような理由で、少なくとも吐出口H1102の近傍には撥水領域H1107aが設けられる。
【0048】
親水領域H1107bは、図3(a)に示すように、吐出口H1102から離れたオリフィス面H1103上に、吐出口H1102の配列方向に沿って、帯状に形成されている。
【0049】
このように親水領域H1107bを形成することで、撥水領域H1107aである吐出口近傍に付着したインクを親水領域H1107bの方に移動させることができ、吐出口近傍のインクを減らすことができる。また、親水領域H1107bは、吐出口H1102から移動してくるインクを蓄積する役割を果たす。
【0050】
撥水領域H1107a及び親水領域H1107bの形成方法について説明する。例えば、先ず、全面が親水領域H1107bであるオリフィス面H1103の全面に撥水処理を行って、撥水領域H1107aを生成する。その後、その撥水領域H1107aの一部の表面をエキシマレーザ等で除去して、親水領域H1107bを露出させる。このように撥水領域H1107a及び親水領域H1107bを形成することができる。なお、撥水領域H1107a及び親水領域H1107bの形成方法は、この方法に限らず適宜変更可能である。
【0051】
ここで、インクが吐出口H1102近傍のインクの残存を減らすためには、撥水領域H1107aの純水との前進接触角が、第一の値として80°ないし105°であることが望ましい。さらに、親水領域を形成して吐出口H1102の周囲にあるインクの残存を軽減するためには、親水領域は、第一の値よりも純水の前進接触角が10°以上低い第二の値を有することが望ましい。
【0052】
本実施形態では、オリフィス面に対する撥水処理として、フッ素含有シラン化合物を用いており、撥水領域H1107aの純水との前進接触角は、100°に調整されている。また親水領域H1107bの純水との前進接触角は、70°以下に調整されている。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
図4(a)と図4(b)を参照して、インクジェット記録ヘッドの撥水領域H1107aと親水領域H1107bとを有するオリフィス面に対して、シールテープH1401が貼付された構成について説明する。
【0054】
図4(a)は、図3(a)で説明したインクジェット記録ヘッドに対して、シールテープH1401が貼付されたインクジェット記録ヘッドのオリフィス面である。また、図4(b)は、図4(a)のB−B断面図である。
【0055】
図4(b)に示すように、シールテープH1401は、シールテープ基材H1403と、粘着剤で形成される粘着層H1404とを含んで構成される。
【0056】
シールテープ基材H1403の厚さは、7μmから75μmの範囲内が望ましく、12μmないし30μmの範囲内であることがさらに望ましい。
【0057】
シールテープ基材H1403の厚さをこの範囲にすることで、シールテープH1401の弾性を非常に低くすることができる。そのため、シールテープH1401のオリフィス面H1103と接着していない部分に予期せぬ衝撃などが加わった場合においても、接着していない部分で衝撃を緩和することができる。よって、シールテープH1401とオリフィス面H1103とが接着している領域に伝わる衝撃を低減することができ、シールテープH1401とオリフィス面H1103とが剥離してしまうおそれが少なくなる。
【0058】
粘着層H1404は、高粘着力領域H1405aと、低粘着力領域H1405bとを有する。高粘着力領域H1405a及び低粘着力領域H1405bを形成する方法については、後で詳しく述べる。
【0059】
高粘着力領域H1405aは、所定の粘着力の第一部分であり、低粘着力領域H1405bは、所定の粘着力より低い粘着力の第二部分である。
【0060】
図4(b)に示すように、撥水領域H1107aには、高粘着力領域H1405aが対応するように貼られており、親水領域H1107bには、低粘着力領域H1405bが対応するように貼られている。
【0061】
なお、図4(a)及び図4(b)に示すように、オリフィス面H1103において撥水領域を示す吐出口の周囲の領域H1102aには、インク漏れを低減するために高粘着力領域H1405aが貼られていることが必要である。吐出口H1102の周囲の領域H1102aとしては、吐出口H1102の直径の少なくとも2倍以上の領域であれば良い。
【0062】
このような構成とすることで、少なくとも吐出口の周囲の領域H1102aを高粘着力領域H1405aで封止することによりインク漏れを低減しつつ、親水領域H1107bには低粘着力領域H1405bを貼付することで、粘着剤残りを低減することができる。
【0063】
なお、後述する本発明の製造方法によっては、親水領域H1107bと低粘着力領域H1405bとを精確に対応させることが困難である場合も考えられる。さらに、親水領域H1107bの一部が高粘着力領域H1405aと貼り合わされた場合には、シールテープH1401を剥離した際、粘着層で凝集破壊が生じ、親水領域H1107bに粘着剤が残存してしまうことも有り得る。したがって、図5に示すように親水領域H1107bを覆うように、低粘着力領域H1405bが貼られていることが望ましい。すなわち、親水領域H1107bの面積よりも大きい面積を有する低粘着力領域H1405bで、親水領域H1107bを覆うように貼り合わされた状態である。このように貼り合わされることで、親水領域H1107bと低粘着力領域H1405bとの貼り合せに少量のずれが生じていてもが親水領域H1107bに高粘着力領域H1405aが貼られている可能性を少なくすることができる。
【0064】
シールテープH1401とオリフィス面H1103とを剥離するのに要する剥離力を測定する方法について説明する。図6は、剥離力の測定装置の概略を示す模式図である。
【0065】
測定試料に対してシールテープH1401を貼り付けたものを用意し、シールテープH1401のタグテープH1402部分をクランプ200に取り付ける。クランプ200はステージ202上に取り付けられたプッシュプルゲージ201と連結されている。シールテープH1401を引き剥がす方向にステージ202を移動させてシールテープH1401を引き剥がす。この時のプッシュプルゲージ201によって剥離力が測定される。
【0066】
本発明において、上記方法で測定された剥離力の値は、撥水領域H1107aに貼られた高粘着力領域H1405aにおける剥離力と、親水領域H1107bに貼られた低粘着力領域H1405bにおける剥離力とのうち、大きい方の値が示される。この剥離力については、インク漏れに対する信頼性の観点から、親水領域H1107bに貼られた低粘着力領域H1405bにおける剥離力よりも、撥水領域H1107aに貼られた高粘着力領域H1405aにおける剥離力の方が大きいことが望ましい。
【0067】
上記測定方法によって、本実施例におけるオリフィス面H1103とシールテープH1401との剥離力を測定すると、その剥離力の値は、撥水領域H1107aに貼られた高粘着力領域H1405aにおける剥離力の値を示す。また、その値は、剥離速度を200mm/minとしたとき、10N/m以上40N/m以下の範囲になるような強さとなった。
【0068】
なお、オリフィス面の全面を親水領域とし、シールテープの全面を低粘着力領域とした場合における剥離力を上記測定方法によって測定した場合、その値は、剥離速度を200mm/minとしたとき、1N/m以上10N/m以下となった。
【0069】
次に、オリフィス面H1103における撥水領域H1107a及び親水領域H1107bの形状について説明する。図7(a)及び図7(b)は、図3(a)で示したオリフィス面H1103の撥水/親水領域の形状とは異なる形状を示している。
【0070】
図7(a)及び図7(b)では、撥水領域H1107aは、図3(a)と同様に、吐出口H1102と当接するオリフィス面H1103上に形成されている。
【0071】
撥水領域H1107aおよび親水領域H1107bの境界は、図7(a)では、直線形であり、図7(b)では、鋸歯形である。
【0072】
さらに、図7(a)及び図7(b)で示した親水領域H1107bの総面積は、図3(a)で示した親水領域H1107bの総面積より大きい。このため、図7(a)及び図7(b)で示したインクジェット記録ヘッドH1001は、親水領域H1107b内に蓄積可能なインクの量が図3(a)で示したインクジェット記録ヘッドH1001より多くなる。よって、図7(a)及び図7(b)で示したインクジェット記録ヘッドH1001は、インクの使用量が多い長尺ヘッドに適している。
【0073】
このようなインクジェット記録ヘッドは、親水領域H1107bが多いため、本発明を適用しなければ、粘着剤残りが発生しやすいと言える。インクジェット記録ヘッドは、本発明の構成を適用すれば、使用時にオリフィス面からシールテープを剥離する際に、粘着剤残りが発生しにくく、オリフィス面に蓄積可能なインクの量も多くなる。
【0074】
なお、親水領域H1107bの形状は、図3(a)、図7(a)及び図7(b)に示した形状に限らず適宜変更可能である。
【0075】
本実施例のインクジェット記録ヘッドユニットを評価した結果、搬送時にシールテープが剥がれることも、インク漏れ等が発生することもなかった。また、使用時にシールテープを剥離する際、オリフィス面H1103の破損も、粘着剤残りも発生しなかった。
【0076】
本実施例によれば、シールテープを剥離する際、親水領域H1107bに粘着剤が密着しすぎることを軽減することが可能になり、粘着剤の残存を軽減することが可能になる。
【0077】
(実施例2)
図8(a)は、本実施例のインクジェット記録ヘッドのオリフィス面における、インク供給口開口部領域H1107cの位置関係を説明するための模式図である。また、また、図8(b)は、図8(a)のC−C断面図である。
【0078】
実施例2は、実施例1の構成に加えて、さらに撥水領域H1107a内のインク供給口開口部領域H1107cに対応する部分のシールテープの粘着力を、低粘着力とした構成である。
【0079】
図8(b)に示すように、インク供給口開口部領域H1107cは、Si基板H1101aがノズル層H1106に対して開口部を有する領域である。本実施例では、インク供給口H1104から共通して、インク供給口の両側に配列している吐出口列にインクが供給される構成となっている。
【0080】
このような構成のため、ノズル層H1106のうち、インク供給口開口部領域H1107cに対向する部分は、シールテープH1401が剥離される際にオリフィス面H1103が変形または破損しやすい。よって、このインク供給口開口部領域H1107cに対向する部分のオリフィス面には、低粘着力の粘着層(低粘着力領域H1405b)が対応するようにシールテープH1401が貼付されていることが望ましい。
【0081】
しかしながら、図4(b)で説明したように、オリフィス面H1103の吐出口の周囲の領域H1102aには、インク漏れの観点から高粘着力の粘着層が対応するようにシールテープH1401が貼付されていることが必要である。
【0082】
図8(b)では、オリフィス面のインク供給口開口部領域H1107cに対向する領域のうち、吐出口の周囲の領域H1102aを除いた領域に、低粘着力の粘着層が対応するようにシールテープH1401が貼付される。これにより、オリフィス面H1103の変形または破損を低減することが可能となる。
【0083】
なお、親水領域H1107bおよびインク供給口開口部領域H1107cに貼られているシールテープH1401の低粘着力領域H1405bの粘着力のそれぞれは、本実施例では、互いに同じとしている。しかし、それぞれの粘着力は互いに異なっていてもよい。オリフィス面H1103の変形または破損を低減する観点から、インク供給口開口部領域H1107cに貼られているシールテープH1401の粘着力の方が、親水領域H1107bに貼られているシールテープH1401の粘着力よりも小さいことが望ましい。なお、インク供給口開口部領域H1107cに貼られているシールテープH1401の部分は、第三部分の一例である。
【0084】
以上のように構成することで、インク漏れ、オリフィス面の変形または破損を低減しつつ、粘着剤残りを低減することが可能となる。
【0085】
(実施例3)
実施例3以降では、本発明のインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法について説明する。
【0086】
本実施例では、シールテープH1401の粘着層として、紫外線硬化型粘着層を用いた例を示す。紫外線硬化型粘着層は、紫外線が照射されることで硬化し、粘着性が低下する性質を有する。
【0087】
シールテープ基材H1403としては、紫外線に対する高い透明特性を示すものが望ましく、例えばそのような材料としては樹脂フィルムが挙げられる。高い透明特性を示す樹脂フィルムであれば、樹脂フィルム越しに粘着層H1404へ紫外線を照射して硬化させることが可能である。このような特性を有する樹脂フィルムの具体例として、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどを有するポリオレフィン樹脂フィルムが挙げられる。
【0088】
また、シールテープ基材H1403の粘着層H1404を設ける面には、粘着層の密着性向上のために、プラズマ処理またはコロナ放電処理などの表面処理が行なわれてもよい。
【0089】
粘着層H1404は、例えば、アクリル系粘着剤ポリマー、紫外線硬化型オリゴマーおよび光開始剤で構成される。なお、粘着層H1404は、これらによる構成に限らず、適宜変更可能である。
【0090】
紫外線硬化型オリゴマーの主成分は、例えば、ポリエステル、エポキシおよびウレタンである。なお、紫外線硬化型オリゴマーの主成分は、これらに限らず、適宜変更可能である。
【0091】
光開始剤は、例えば、α−アリルベンゾイン、α−アリルベンゾインアリールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン化合物または1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンである。また、光開始剤は、4−(2−アクリロキシエトキシ)フェニル−2−ヒドロキシ−2−プロピルケトン等でもよい。なお、光開始剤は、これらに限らず適宜変更可能である。
【0092】
また、粘着層H1404の厚さは、5μmから50μmの範囲内でよいが、10μmから40μmの範囲内であることが望ましい。粘着層H1404の厚さが5μmより少ない状態では、粘着層H1404の柔軟性による粘着力発生の効果が低下するため、粘着層の厚さの下限は5μmが望ましい。また、50μm以上の厚さでは、柔軟性による粘着力発生の効果はあまり変わらないため、粘着層H1404の上限の厚さはコストの点から50μm程度でよい。
【0093】
図9(a)〜図9(c)には、本実施例におけるインクジェット記録ヘッドH1001に対するシールテープH1401の貼り合わせの工程フローを示す。
【0094】
図9(a):所定の粘着力を有するシールテープH1401を、撥水領域H1107aと親水領域H1107bとを有するオリフィス面H1103に貼り合わせる。
【0095】
図9(b):次に、親水領域H1107bに対応する領域以外をマスキングするようなマスク2001をシールテープ基材H1403側に配置する。その後、そのマスク2001が配置された側に、紫外線2002を照射する。
【0096】
図9(c):そして、紫外線2002が照射された領域の粘着剤の粘着力が低下したシールテープH1401が貼り合わされる。この際、紫外線2002は、粘着層H1404で吸収されるため、殆どオリフィス面H1103に到達することはない。
【0097】
以上のような工程を経て、本インクジェット記録ヘッドユニットを得ることができる。
【0098】
このように、シールテープH1401をオリフィス面H1103に貼り合わせた後、マスク2001を用いてそのシールテープに紫外線2002を照射することで、紫外線2002の照射領域の位置合わせを容易に行うことが可能となる。
【0099】
しかしながら、親水領域H1107bに精確に対応するように、低粘着力領域H1405bに対して高精度に紫外線照射領域を設定することは困難な場合も考えられる。そのような場合には、実施例1において図5で説明したように、親水領域H1107bを覆うように、低粘着力領域H1405bが貼られている構成とすれば良い。すなわち、図9(b)で示す工程において、親水領域H1107bに対応する部分を含んで少し広い領域に対して、紫外線2002を照射すれば良い。
【0100】
このような構成とすることで、紫外線の照射領域のずれにより親水領域H1107bに高粘着力領域H1405aが貼られる可能性を低減できる。したがって、シールテープH1401を剥離した際、粘着剤がシールテープH1401の粘着層H1404から脱落し、親水領域H1107bに粘着剤残りが発生することを低減できるという効果を奏する。
【0101】
(実施例4)
実施例3で示した工程フローでは、シールテープ基材H1403を紫外線2002が透過して、粘着層H1404に照射される状態を示した。しかし、シールテープ基材H1403が紫外線2002の透過性が低い材質で構成される場合には、実施例3で示した工程フローでは、領域毎に粘着層H1404の粘着力を変化させることは困難である。
【0102】
このように、シールテープ基材H1403が紫外線2002の透過性が低い材質で構成される場合におけるインクジェット記録ヘッドH1001に対するシールテープH1401の貼り合わせの工程フローを示す。なお、実施例3で説明した構成と同様の構成については説明を省略する。
【0103】
図10(a):親水領域H1107bに対応する領域以外をマスキングするようなマスク2001が粘着層H1404側に配置する。その後、そのマスク2001が配置された側に紫外線2002を照射する。
【0104】
図10(b):インクジェット記録ヘッドH1001の親水領域H1107b或いは別途設けたアライメントマーク(不図示)の位置をカメラ2003によって認識する。
【0105】
図10(c):インクジェット記録ヘッドH1001とカメラ2003との間にシールテープH1401を配する。そして、そのシールテープH1401の低粘着力領域H1405b或いはインクジェット記録ヘッドH1001に設けられたアライメントマークに対応した領域(不図示)の位置を、カメラ2003によって認識する。
【0106】
図10(d):そして、位置決めされたインクジェット記録ヘッドH1001の撥水領域H1107aと親水領域H1107bとを有するオリフィス面に対して、シールテープH1401を貼り合わせる。
【0107】
以上のような工程を経て、本発明のインクジェット記録ヘッドユニットを得ることができる。
【0108】
また、本実施例における方法では、実施例3の場合以上の精度でその位置合せを行い、親水領域H1107bに対応するように低粘着力領域H1405bを設けることは困難である。
【0109】
この場合、図5で示したように、少なくとも親水領域H1107bよりも低粘着力領域H1405bの面積を大きくし、低粘着力領域H1405bが親水領域を覆うように貼られるよう構成すればよい。
【0110】
このような構成とすることで、位置合せのずれにより親水領域H1107bに高粘着力領域H1405aが貼られる可能性を低減できる。したがって、シールテープH1401を剥離した際、粘着剤がシールテープH1401の粘着層H1404から脱落し、親水領域H1107bに粘着剤残りが発生することを低減できるという効果を奏する。
【0111】
本実施例の方法によれば、シールテープ基材H1403は、紫外線に対する透明特性を有していなくても良い。
【0112】
(実施例5)
本実施例では、シールテープの粘着層における所定の領域に対して、所望の粘着力を付する方法として、実施例3又は4で説明した紫外線硬化型粘着層を用いた方法とは異なる方法について説明する。なお、実施例3又は4で説明した構成と同様の構成については、説明を省略する。
【0113】
本実施例では、加熱した領域の粘着力が低下するシールテープを用いる。
【0114】
本実施例のシールテープH2401は、粘着層H2404に熱膨張性微小球を有する。この熱膨張性微小球とは、加熱により容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球である。
【0115】
加熱によりガス化して膨張する物質としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなどが挙げられる。
【0116】
弾性を有する殻としては、熱溶融性物質や熱膨張により破壊される物質で形成されることが望ましい。このような物質を用いることで、シールテープH2401の所望の領域を加熱した際、加熱された粘着層H2404中の熱膨張性微小球が膨張する。その結果、オリフィス面と粘着剤との接触面積が減り、粘着力を低下させることが可能となる。
【0117】
弾性を有する殻を形成する物質としては、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンなどが挙げられる。
【0118】
次に、図11(a)〜図11(c)を用いて、インクジェット記録ヘッドH1001に対する上述したシールテープH2401の貼り合わせの工程フロ−を示す。
【0119】
図11(a):アクリル系粘着剤中に熱膨張性微小球を含む粘着層H2404を有するシールテープH2401を、撥水領域H1107aと親水領域H1107bとを有するオリフィス面H1103に貼り合わせる。
【0120】
図11(b):加熱されたホーン2004を、シールテープH2401の親水領域H1107bに対応する領域に当てて、加熱する。この工程で、シールテープH2401の加熱された領域において、粘着層H2404中の熱膨張性微小球が膨張するので、オリフィス面と粘着剤との接触面積が減り、粘着力が低下する。なお、ホーン2004のよる加熱は、90℃から170℃程度で行われる。
【0121】
図11(c):オリフィス面の親水領域H1107bに、粘着層H2404の低粘着力領域H1405bが対応したシールテープH2401が貼り合わされた状態を示す。
【0122】
以上のような工程を経て、本発明のインクジェット記録ヘッドユニットを得ることができる。
【0123】
本実施例においても、実施例3及び4と同様に、図5で示した構成とすることで、実施例3及び4と同様の効果を得ることができる。
【0124】
なお、シールテープ基材H1403としては、粘着剤との親和性、耐熱性、及び市場における流通性の観点からポリエステル系の樹脂が望ましい。
【0125】
以上、実施例3〜実施例5で示した例は、実施例1で説明したシールテープの高粘着/低粘着力領域の形状を例として説明した。しかしながら、本例は、適宜マスクの形状やホーンの形状を変えることにより、実施例2で説明したシールテープの高粘着/低粘着力領域の形状にも適用可能である。
【0126】
また、実施例3〜実施例5で示した例においては、粘着層H1404として紫外線硬化型粘着層や、加熱した領域の粘着力が低下する粘着層を用いた。しかしながら、粘着層にエネルギーを付与することにより、その粘着性を変化させることができるものであれば、これに限らず適宜変更可能である。
【0127】
以上説明した実施形態および実施例において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明を適用可能な一般的なインクジェット記録ヘッドと、シールテープが貼付されたインクジェット記録ヘッドユニットの斜視図である。
【図2】一般的なインクジェット記録ヘッドの構成を示した分解斜視図である。
【図3】本発明を適用可能な一般的なインクジェット記録ヘッドのオリフィス面の説明図である。
【図4】実施例1のインクジェット記録ヘッドとシールテープを示した模式図である。
【図5】シールテープの高粘着力領域及び低粘着力領域と、オリフィス面の撥水領域及び親水領域との位置関係を説明するための模式図である。
【図6】剥離力の測定装置の概略を示す模式図である。
【図7】オリフィス面の撥水領域及び親水領域の形状の例を示した模式図である。
【図8】実施例2のインクジェット記録ヘッドとシールテープを示した模式図である。
【図9】本発明による製造方法の一つである実施例3における工程フローを示す模式図である。
【図10】本発明による製造方法の一つである実施例4における工程フローを示す模式図である。
【図11】本発明による製造方法の一つである実施例5における工程フローを示す模式図である。
【符号の説明】
【0129】
H1001 インクジェット記録ヘッド
H1002 インクジェット記録ヘッドユニット
H1102 吐出口
H1103 吐出口面(オリフィス面)
H1107a 撥水領域
H1107b 親水領域
H1401 シールテープ
H1405a 高粘着力領域
H1405b 低粘着力領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するための複数の吐出口が形成された吐出口面を有するインクジェット記録ヘッドと、前記吐出口を封止するように前記吐出口面に貼付されるテープとを有するインクジェット記録ヘッドユニットであって、
前記吐出口面は、水との接触角が第一の値を示す前記吐出口の周囲の領域と、前記接触角が前記第一の値より小さい第二の値を示す領域とを有し、
前記テープは、第一部分と該第一部分より粘着性の小さい第二部分とを有し、前記吐出口の周囲の領域には前記第一部分が対応し、該第二の値を示す領域には前記第二部分が対応するように、前記吐出口面に貼付されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッドユニット。
【請求項2】
前記第二部分の面積が前記第二の値を示す領域の面積と等しい、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドユニット。
【請求項3】
前記第二部分の面積が前記第二の値を示す領域の面積より大きい、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドユニット。
【請求項4】
前記インクジェット記録ヘッドは、インク供給口と、該インク供給口の両側に配列された複数の吐出口列とを有し、
前記インク供給口は、前記複数の吐出口列を構成する複数の吐出口と連通し、
前記テープは、前記第一部分よりも粘着性の小さい第三部分をさらに有し、該第三部分が、前記複数の吐出口列の間の領域であって前記吐出口の周囲の領域を除いた領域に対応するように、前記吐出口面に貼付されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドユニット。
【請求項5】
前記第二部分の粘着性と前記第三部分の粘着性とが同じである、請求項4に記載のインクジェット記録ヘッドユニット。
【請求項6】
前記第二部分の粘着性より、前記第三部分の粘着性の方が小さい、請求項4に記載のインクジェット記録ヘッドユニット。
【請求項7】
前記テープと前記吐出口面との剥離力が、剥離速度を200mm/minとしたとき、10N/m以上40N/m以下である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドユニット。
【請求項8】
インクを吐出するための複数の吐出口が形成された吐出口面を有するインクジェット記録ヘッドと、前記吐出口を封止するように前記吐出口面に貼付されるテープとを有するインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法であって、
前記吐出口面が、水との接触角が第一の値を示す前記吐出口の周囲の領域と、前記接触角が前記第一の値より小さい第二の値を示す領域とを有するインクジェット記録ヘッドと用意する工程と、
エネルギーが付与されることにより粘着性が変化するテープを前記吐出口面に貼る工程と、
前記吐出口面のうち前記吐出口の周囲の領域に対応する前記テープの第一部分の粘着力より、前記第二の値を示す領域に対応する前記テープの第二部分の粘着力の方が小さくなるように、前記テープに前記エネルギーを付与する工程と、を含むインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法。
【請求項9】
インクを吐出する複数の吐出口が形成された吐出口面を有するインクジェット記録ヘッドと、前記吐出口面を封止するテープとを有するインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法であって、
前記吐出口面が、水との接触角が第一の値を示す前記吐出口の周囲の領域と、前記接触角が前記第一の値より小さい第二の値を示す領域とを有し、エネルギーが付与されることにより粘着性が変化するテープが前記吐出口面に貼られているインクジェット記録ヘッドを用意する工程と、
前記吐出口面のうち前記吐出口の周囲の領域に対応する前記テープの第一部分の粘着力より、前記第二の値を示す領域に対応する前記テープの第二部分の粘着力の方が小さくなるように、前記テープに前記エネルギーを付与する工程と、を含むインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法。
【請求項10】
インクを吐出する複数の吐出口が形成された吐出口面を有するインクジェット記録ヘッドと、前記吐出口面を封止するテープとを有するインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法であって、
エネルギーが付与されることにより粘着性が変化するテープに、該テープの所定の第一部分の粘着力より、所定の第二部分の粘着力の方が小さくなるように、前記テープに前記エネルギーを付与する工程と、
前記吐出口面のうち前記吐出口の周囲の領域に前記第一部分が対応し、前記第二の値を示す領域に前記第二部分が対応するように、前記テープを前記吐出口面に貼付する工程と、を含むインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法。
【請求項11】
前記インクジェット記録ヘッドはさらに、インク供給口と、該インク供給口の両側に配置され、該インク供給口の開口部と連通する複数の吐出口で構成される複数の吐出口列とを有し、
前記吐出口面のうち前記吐出口の周囲の領域に対応する前記テープの第一部分の粘着力より、前記複数の吐出口列の間の領域であって前記吐出口の周囲の領域を除いた領域に対応する前記テープの第三部分の粘着力の方が小さくなるように、前記テープに前記エネルギーを付与する工程、を含む請求項8乃至10に記載のインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法。
【請求項12】
前記テープは、紫外線の照射により粘着性が低下するものであり、
前記エネルギーの付与は、紫外線の照射により行わる、請求項8乃至11のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法。
【請求項13】
前記テープは、加熱により粘着性が低下するものであり、
前記エネルギーの付与は、加熱により行われる、請求項8乃至11のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法。
【請求項1】
インクを吐出するための複数の吐出口が形成された吐出口面を有するインクジェット記録ヘッドと、前記吐出口を封止するように前記吐出口面に貼付されるテープとを有するインクジェット記録ヘッドユニットであって、
前記吐出口面は、水との接触角が第一の値を示す前記吐出口の周囲の領域と、前記接触角が前記第一の値より小さい第二の値を示す領域とを有し、
前記テープは、第一部分と該第一部分より粘着性の小さい第二部分とを有し、前記吐出口の周囲の領域には前記第一部分が対応し、該第二の値を示す領域には前記第二部分が対応するように、前記吐出口面に貼付されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッドユニット。
【請求項2】
前記第二部分の面積が前記第二の値を示す領域の面積と等しい、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドユニット。
【請求項3】
前記第二部分の面積が前記第二の値を示す領域の面積より大きい、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドユニット。
【請求項4】
前記インクジェット記録ヘッドは、インク供給口と、該インク供給口の両側に配列された複数の吐出口列とを有し、
前記インク供給口は、前記複数の吐出口列を構成する複数の吐出口と連通し、
前記テープは、前記第一部分よりも粘着性の小さい第三部分をさらに有し、該第三部分が、前記複数の吐出口列の間の領域であって前記吐出口の周囲の領域を除いた領域に対応するように、前記吐出口面に貼付されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドユニット。
【請求項5】
前記第二部分の粘着性と前記第三部分の粘着性とが同じである、請求項4に記載のインクジェット記録ヘッドユニット。
【請求項6】
前記第二部分の粘着性より、前記第三部分の粘着性の方が小さい、請求項4に記載のインクジェット記録ヘッドユニット。
【請求項7】
前記テープと前記吐出口面との剥離力が、剥離速度を200mm/minとしたとき、10N/m以上40N/m以下である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドユニット。
【請求項8】
インクを吐出するための複数の吐出口が形成された吐出口面を有するインクジェット記録ヘッドと、前記吐出口を封止するように前記吐出口面に貼付されるテープとを有するインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法であって、
前記吐出口面が、水との接触角が第一の値を示す前記吐出口の周囲の領域と、前記接触角が前記第一の値より小さい第二の値を示す領域とを有するインクジェット記録ヘッドと用意する工程と、
エネルギーが付与されることにより粘着性が変化するテープを前記吐出口面に貼る工程と、
前記吐出口面のうち前記吐出口の周囲の領域に対応する前記テープの第一部分の粘着力より、前記第二の値を示す領域に対応する前記テープの第二部分の粘着力の方が小さくなるように、前記テープに前記エネルギーを付与する工程と、を含むインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法。
【請求項9】
インクを吐出する複数の吐出口が形成された吐出口面を有するインクジェット記録ヘッドと、前記吐出口面を封止するテープとを有するインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法であって、
前記吐出口面が、水との接触角が第一の値を示す前記吐出口の周囲の領域と、前記接触角が前記第一の値より小さい第二の値を示す領域とを有し、エネルギーが付与されることにより粘着性が変化するテープが前記吐出口面に貼られているインクジェット記録ヘッドを用意する工程と、
前記吐出口面のうち前記吐出口の周囲の領域に対応する前記テープの第一部分の粘着力より、前記第二の値を示す領域に対応する前記テープの第二部分の粘着力の方が小さくなるように、前記テープに前記エネルギーを付与する工程と、を含むインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法。
【請求項10】
インクを吐出する複数の吐出口が形成された吐出口面を有するインクジェット記録ヘッドと、前記吐出口面を封止するテープとを有するインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法であって、
エネルギーが付与されることにより粘着性が変化するテープに、該テープの所定の第一部分の粘着力より、所定の第二部分の粘着力の方が小さくなるように、前記テープに前記エネルギーを付与する工程と、
前記吐出口面のうち前記吐出口の周囲の領域に前記第一部分が対応し、前記第二の値を示す領域に前記第二部分が対応するように、前記テープを前記吐出口面に貼付する工程と、を含むインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法。
【請求項11】
前記インクジェット記録ヘッドはさらに、インク供給口と、該インク供給口の両側に配置され、該インク供給口の開口部と連通する複数の吐出口で構成される複数の吐出口列とを有し、
前記吐出口面のうち前記吐出口の周囲の領域に対応する前記テープの第一部分の粘着力より、前記複数の吐出口列の間の領域であって前記吐出口の周囲の領域を除いた領域に対応する前記テープの第三部分の粘着力の方が小さくなるように、前記テープに前記エネルギーを付与する工程、を含む請求項8乃至10に記載のインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法。
【請求項12】
前記テープは、紫外線の照射により粘着性が低下するものであり、
前記エネルギーの付与は、紫外線の照射により行わる、請求項8乃至11のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法。
【請求項13】
前記テープは、加熱により粘着性が低下するものであり、
前記エネルギーの付与は、加熱により行われる、請求項8乃至11のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドユニットの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−34988(P2009−34988A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124927(P2008−124927)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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