説明

インクジェット記録媒体

本発明は、記録媒体に関し、特に、優れたインク吸収速度、良好な乾燥特性、および良好な画像印刷品質を有する写真品質のインクジェット記録媒体に関する。本発明によると、支持体と、微孔性副層に隣接する密な最上層を含む非対称膜構造を有するインク受容層とを含み、前記インク受容層が少なくとも1種の水膨潤性ポリマーを含むインクジェット記録媒体が提供される。さらに本発明は、このような媒体を得る方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に関し、特に、優れたインク吸収速度、良好な乾燥特性、および良好な画像印刷品質を有する写真品質のインクジェット記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的なインクジェット記録または印刷システムにおいては、ノズルからインク液滴が記録要素または媒体に向けて高速で吐出されて、媒体上に画像が形成される。インク液滴又は記録液体は、一般に、染料などの記録剤と、ノズルの目詰まりを防止するための比較的多量の溶媒とを含む。溶媒、又はキャリア液体は、典型的には水、ならびに一価アルコールなどの有機材料で構成される。液体液滴として記録される画像には、記録液体が広がらずに速く乾燥する受容体が必要である。インクが十分吸収されることで画像の乾燥が促進され、同時に染料の移行が最小限となることで、記録された画像に良好な鮮明さが得られる。一般に、この受容体は、支持体とインク受容層とを含む。インク受容層の重要な性質の1つは液体吸収速度である。すべてではないとしても大部分のインク溶媒はこの層自体によって吸収される必要がある。紙または布またはセルロースが支持体として使用される場合のみ、一部の溶媒が支持体によって吸収されてもよい。したがって、インク受容層がバインダーおよび充填剤を含む場合、これら両方が著しいインク溶媒吸収能力を有するべきである。
【0003】
写真品質および良好な乾燥特性を有するインクジェット記録媒体を製造する方法としては一般に2つ存在する。
【0004】
相当の乾燥特性を有する写真品質のインクジェット記録媒体の類型の1つは、いわゆる「非微孔性フィルム型」であり、「膨潤型」としても知られ、欧州特許出願公開第806 299号明細書、および日本特開平2−276670号公報などのいくつかの特許公報において提案されている。この類型のインクジェット記録媒体では、紙または透明フィルムなどの支持体上に少なくとも1つのインク受容層が被覆される。これらの媒体の液体吸収および乾燥率を改善する方法の1つは、水膨潤性ポリマーの使用である。ドイツ特許出願公開第223 48 23号明細書、ドイツ特許出願公開第19721238号明細書、および米国特許第4,379,804号明細書には、インクジェット受容シートのインク受容層中にゼラチンを使用する方法が開示されている。これらの文献から、ゼラチンがインク溶媒の吸収に関して好都合な機能を有することが明らかとなった。ゼラチンは、汚れ耐性を改善し、画像エッジの切れの質を向上させると言われている。
【0005】
その他の一般的な方法は、媒体の多孔性に関与するシリカ、アルミナ水和物、および擬ベーマイトなどの無機多孔質粒子の使用であり、たとえば欧州特許出願公開第0 761 459号明細書および欧州特許出願公開第1 306 395号明細書に記載されている。これらの媒体は良好な乾燥特性を示すが、これらの染料安定性はあまりよくない。
【0006】
他の公知の方法では、支持体にインク受容層として機能することができる微孔性フィルムを設けられることである。しかし、この公知の技術は、媒体の光沢に関する問題が生じることがあり、印刷画像の光学濃度の低下を招く場合がある。
【0007】
米国特許第4,833,172号明細書には、ポリオレフィンと、水不溶性ケイ質粒子と、特定の加工用可塑剤とを含むシートを延伸し、続いて延伸後にこの可塑剤を除去することにより微孔性フィルムを製造する方法が開示されている。光沢増加のために、前記微孔性フィルムをカレンダー加工することができる。
【0008】
米国特許第5,605,750号明細書では、支持体と、その中でも特に米国特許第4,833,172号明細書に記載の方法によって製造された薄層の微孔性フィルムと、1〜8nm(10Å〜80Å)の平均細孔半径を有する多孔質擬ベーマイトの上部画像形成層とを含むインクジェット媒体が提案されている。この媒体によって、記録された画像に対して高い光学濃度および良好な色域が得られる。
【0009】
インクジェット媒体への延伸微孔性フィルムの使用が記載されている他の文献がいくつか存在し、たとえば国際公開第99/41086号パンフレット、米国特許第4,861,644号明細書、国際公開第97/33758号パンフレット、および国際公開第02/053391号パンフレットに記載されている。
【0010】
膜技術分野においては、ある粒径の粒子に対して選択性を有する微孔性材料が、"相転移"と呼ばれる技術によって製造される。米国特許第6,132,858号明細書には、インクジェット印刷媒体に適した微孔性支持体を製造するためのこの相転移技術の適用が記載されている。その記載内容では、水不溶性ポリマーを有機溶媒中に溶解させ、支持体上に被覆し、次に非溶媒流体クエンチを行うと、ポリマー溶液で相転移が起きて、支持体上に固体の多孔質被膜層を形成する。この方法において、非溶媒流体として典型的には水が使用され、ポリマーは典型的には疎水性ポリマーである。欧州特許出願公開第1 176 030号明細書にも、水不溶性ポリマーを使用する相転移技術の使用が記載されている。
【0011】
例えば、欧州特許出願公開第0 156 532号明細書および米国特許出願公開第2001/0021439号などのいくつかの特許公報には、均一構造の単一の多孔質層が開示されており、一方、他の用途においては、2つの特徴的な層が、一つの層は微孔性層と、また一つの層は膨潤性層と互いに隣接しているインクジェット画像記録材料の設計が開示されている。欧州特許出願公開第1 211 089号明細書および欧州特許出願公開第1 176 029号明細書には、支持体と隣接する層が、親水性流体吸収性膨潤性ポリマーからなり、最外層が、乾式相転移によって形成された開放細孔構造を含むインク受容層であり、良溶媒と貧溶媒との混合物が上記最外層の溶液中に混入され、この貧溶媒の沸点が良溶媒の沸点よりも高い、2層のインクジェット画像受容要素が開示されている。この主要ポリマーは疎水性ポリマーであり、非溶媒として水が使用される。
【0012】
欧州特許出願公開第0 812 697号明細書には、支持体とインク受容層との間に微孔性層が存在する2層のインクジェット受容要素が開示されている。
【0013】
インクジェット記録媒体を提供するための両方の解決法(すなわち、微孔性層を有する媒体または水膨潤性層を有する媒体)を比較すると、どちらの解決法も利点と欠点とを有することが分かった。
【0014】
一方で、微孔性のインクジェット記録媒体は優れた乾燥特性を有するが、一般に染料の退色の問題がある。他方で、膨潤型のインクジェット記録媒体は、染料の退色は少なくなりうるが、一般に乾燥が遅くなる場合がある。
【0015】
膨潤性層と、特徴的な微孔性層との両方を有する多層材料は、外部の微孔性層で染料の悪い退色挙動および低い光沢が得られ、微孔性副層を有する膨潤性外層は乾燥の問題が解決できていないため、基本的に同様の品質問題を有する。
【0016】
優れた乾燥特性を有し、さらに染料の退色が最小限であるインクジェット記録媒体が強く求められている。さらに、これらのインクジェット記録媒体は、好ましくは、好適な耐久性、インクジェットプリンターへの良好なシート供給特性、良好な画像濃度、および良好な解像度などの性質を有するべきである。
【0017】
本発明が指向しているのはこの要求を満たすことである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の要約
本発明の一目的は、優れた乾燥特性と、優れた染料退色耐性と、高光沢とを併せ持つインクジェット記録媒体を提供することである。
【0019】
これらの目的は、同時に多孔質および膨潤性の両方である少なくとも1つの層を含むインクジェット記録媒体を提供することによって実現可能なことが分かった。この所謂膨潤性微孔性層のこのような新規で独特の設計によって、当分野の既存問題が顕著に解決される。したがって、本発明は、支持体と、前記支持体に接着された水膨潤性インク受容層とを含むインクジェット記録媒体であって、前記インク受容層が非対称膜構造を有する、すなわち、このインク受容層が微孔性副層と隣接した密な最上層を含み、前記インク受容層が少なくとも1種の水膨潤性ポリマーを含むインクジェット記録媒体を提供する。「密な最上層」とは、最上層の多孔度が微孔性副層の多孔度よりも低いことを意味する。
【0020】
上記膨潤性微孔性インク受容層は、
−少なくとも1種の水膨潤性ポリマー、
−好ましくはインク受容層5〜95体積%の間の空隙体積を有する細孔/空隙、
−細孔/空隙が好ましくは100nm〜10μmの間、好ましくは200nm〜5μmの間の平均細孔径を有する微孔性副層、および
−微孔性副層上に存在し、好ましくは、インク受容層の20体積%未満の空隙体積、および1μm未満、好ましくは0.1μm未満の平均細孔径を有する、薄層の密な最上層(スキン層とも呼ぶ)を含むことを特徴とすることができる。
【0021】
本明細書において表現される細孔径および細孔体積は、走査型電子顕微鏡法(SEM)によって適切な倍率で撮影された断面写真から細孔の寸法を測定することによって適宜評価される。平均径は、多数の異なる断面、典型的には5つの異なる断面を測定することによって得られる。
【0022】
本明細書において使用される用語「水膨潤性ポリマー」は、水と接触するとき膨潤するポリマーを意味する。特に、このポリマーは、水を吸収して、その乾燥厚さと比較して厚さの増加が少なくとも3%、より典型的には少なくとも7%、さらには少なくとも12%となることができる。
【0023】
発明の詳細な説明
本発明は、支持体と、支持体の上に被覆された微孔性層とを含むインクジェット記録媒体の提供に関する。本発明による微孔性層は、少なくとも1種の水膨潤性ポリマーを含む。この微孔性インクジェット媒体によって、その上に印刷された画像の品質に関する利点が得られる。理論によって束縛しようと望むものではないが、本発明の微孔性膨潤性媒体の上に画像が印刷されると、層の膨潤能力と、乾燥表面が結果として得られる毛管力との2つの反応機構によって、インク溶媒はこの媒体により容易に吸収されると考えられる。このように迅速な吸収のため、画像の解像度は低下せず、画像のスミアリングまたは汚れを防止することができる。「ビーディング」現象を引き起こすインク液滴の合体も回避することができる。
【0024】
本発明の利点は、微孔性層の構造、および微孔構造を形成するポリマー材料によって得られる。微孔性層の構造は、好ましくは相転移技術を使用して形成される。この相転移方法は、典型的には、溶媒中に溶解させた均一なポリマーを支持体に被覆するステップと、続いてこの溶液を非溶媒と接触させる、典型的には被覆した支持体を非溶媒浴中に浸漬することによって、微孔性構造を形成するステップと、続いて乾燥工程のステップとを含む。相分離を引き起こす他の方法としては、たとえば、溶媒/非溶媒/ポリマー系中の溶媒の制御蒸発、ポリマー溶液の急冷、またはポリマー溶液中に非溶媒蒸気の浸透が挙げられる。
【0025】
微孔構造は、空隙を含み、これらの空隙は、沈殿および乾燥した水膨潤性ポリマーによって互いに分離されることができるし、部分的または完全に相互連結してもよい。
【0026】
膨潤度は、ポリマー材料の化学組成および/またはポリマーの化学的または物理的な架橋によって制御され、上記のようなインク吸収特性は、親水性側または官能基の数及び種類によって、架橋度によって、あるいはこれらの要因の組み合わせによって注意深く制御することができる。水膨潤性ポリマーとしてのゼラチンの場合、架橋は、リジンアミノ酸の遊離アミン基、またはゼラチン中に存在するカルボキシ基の反応を引き起こす数種の化学物質によって実現することができる。膨潤度は、典型的には膨潤性微孔性層の全体の厚さの3%〜400%以上まで容易にコントロールすることができる。好ましくは、膨潤度は7%を超え、より好ましくは12%を超える。
【0027】
膨潤性微孔性層の上には、密なポリマー層が存在することができる。この密なポリマー層は、インクを迅速に受容し吸収するための膨潤性を有する。この膨潤はその全厚さの5%以上に制限することができる。密な最上層は、インク溶媒を迅速に吸収しながら、高い色濃度を発現するために最上層中にできる限りインク染料を維持するインク受容層としての機能と、所望の光沢レベルの実現との2つの機能を有する。
【0028】
本発明のこの実施形態において、薄層の密な最上層と微孔性副層とを含む非対称構造は、浸漬析出法単独により1ステップで形成することができる。便宜上、最上部領域を最上層と呼び、および底部領域を副層と呼ぶが、実際にはこれは化学組成が均一であるが構造は均一ではないただ1つの単一層のことである。
【0029】
したがって、本発明による媒体の好ましい実施形態においては、最上層の均一相の化学組成は、上記副層の均一相の化学組成と同一または実質的に同一である。ポリマー−溶媒系に対して弱い非溶媒を選択すると、その非溶媒浴中にこのポリマー−溶媒系を浸漬した場合の分離が遅くなる。非溶媒浴中への溶媒の外方拡散 (out-diffusion)は、ポリマー溶液中への非溶媒の内方拡散(in-diffusion)よりも速い。この結果、最上層中で増加されたポリマー濃度で分離するため密な最上層が形成される。密な層が形成された後、この層によって溶媒および非溶媒の交換が妨害され、交換速度がより等しくなる。この結果、最上層中のポリマー濃度よりも低いポリマー濃度で分離するため微孔性副層が形成される。特に、密な最上層と膨潤性微孔性副層とを有し2官能性のインク吸収材料を実現するために単一の工程段階のみを有するこの実施形態が好ましい。このような2官能性の層構造は非常に好ましく、本発明の独自の特徴である。
【0030】
1つの単一ステップで非対称膜を形成する方法がいくつか見いだされている。その最適な方法は、ポリマー、溶媒、および非溶媒の選択に依存する。
【0031】
一例として、ゼラチンがポリマーとして選択される場合は、微孔性副層に隣接する薄層の密な最上層を含む非対称膜は、溶媒として水と非溶媒としてエタノールを選択することによって形成できることが分かった。この非溶媒をドープ溶液と混合することによって、密な最上層の厚さが増加する。ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの別のポリマーをゼラチン溶液中に加えても、密な最上層の形成に影響が生じる。
【0032】
ジメチルスルホキシドが溶媒として選択される場合、ある量の水をドープ溶液に加えるか、またはドープ中のポリマー濃度を増加させるなどの別の方法が、非対称膜を形成するために必要である。
【0033】
ポリビニルアルコール(PVA)がポリマーとして選択される場合、ドープ溶液中に酢酸を加えることで非対称膜の形成を促進できると考えられる。この場合、好ましくは水が溶媒として選択され、硫酸ナトリウムで飽和させた塩基性水溶液が非溶媒として選択される。
【0034】
上記要因以外に、非溶媒浴の温度、被覆したドープ溶液を凝固浴中に浸漬する前に一定時間冷却するなどの、適切な工程条件を選択することによって非対称膜を形成することも可能である。
【0035】
非対称膜の作製方法は、上記の例に限定されるものではない。さらに実験を行うことで、当業者であれば、本発明による非対称膜を形成するための他の方法を見いだすことができるであろう。
【0036】
別の実施形態において、本発明は、最上層またはスキン層が存在するインクジェット記録媒体に関する。好ましい方法である前述の単一ステップ工程による最上層の適用以外に、この最上層は、追加の被覆ステップなどにおいて別に適用することもできる。
【0037】
密な最上層は必ずしも完全に閉鎖している必要はない。許容できない程度まで光沢を低下させることがないナノ細孔(すなわち典型的には1〜100nmの平均直径を有する)が存在することができる。微細孔によって、インク吸収速度(したがっていわゆる「乾燥速度」)をさらに増加させることができる。本明細書に記載の浸漬析出方法は、前述のように非溶媒と接触する層中で小さい細孔が得られ、一方、より深い層ではより大きな細孔が得られる傾向にある。
【0038】
本発明の一実施形態においては、微孔性被膜は、1種以上の水膨潤性ポリマーを含む。前記ポリマーを水溶性ポリマーの群から選択することが好ましい。
【0039】
多孔性を付与するために粒子を加える必要がある従来技術の微孔性被膜とは異なり、本発明の微孔性被膜層は、粒子の添加が不要である。したがって、本発明のさらに別の実施形態においては、微孔性被膜層が多孔性付与粒子を実質的に含有しない。
【0040】
微孔性被膜に所望程度の多孔性を付与するためにポリマー被覆溶液中に粒子を混入する必要はないが、選択された物理的性質を微孔性被膜に付与するためにポリマー被覆溶液に粒子を加えることができる。たとえば、ポリマー被覆溶液への顔料粒子の混入は、微孔性被膜層を透過する光の量を減少させるため、または微孔性層に特定の色を付与するために利用することができる。
【0041】
膨潤性微孔性被膜層を製造するために使用されるポリマー被覆溶液は、好ましくはポリマー、溶媒、非溶媒、および添加剤の一般分類から選択される成分を含有する。本発明に使用されるポリマーは、水膨潤性ホモポリマーおよび水膨潤性コポリマー、たとえば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリアクリル酸、ゼラチン、ゼラチン誘導体、変性ゼラチン、完全または部分加水分解ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、およびそれらの混合物から選択される。
【0042】
ゼラチン、変性ゼラチン、ポリビニルアルコール、および変性ポリビニルアルコールが好ましい。使用可能な多様のゼラチンまたは変性ゼラチンが存在する。たとえば、アルカリ処理ゼラチン(ウシの骨または皮のゼラチン)または酸処理ゼラチン(豚の皮ゼラチン)、アセチル化ゼラチン、フタル酸化ゼラチン、アルキル第4級アンモニウム変性ゼラチン、コハク酸化ゼラチン、アルキルコハク酸化ゼラチン、脂肪酸のN−ヒドロキシスクシンイミドで変性したゼラチン、およびそれらの混合物からなる群より選択される変性ゼラチンが挙げられる。本発明の画像記録要素中に使用される溶媒吸収層を形成するために、これらのゼラチンを単独使用してもよく、併用してもよい。
【0043】
様々の種類のポリビニルアルコール(PVA)が、本発明での使用に適している。一般に、多種多様なPVA系ポリマーを使用することができるが、好ましいPVA系ポリマーは、ゼラチン水溶液との混和性が良好となるように変性されたPVA系ポリマーである。これらの変性では、PVA系ポリマーの主鎖中に、水素結合部位、イオン結合部位、カルボキシル基、スルホニル基、アミド基などを提供する基を導入することで、変性PVA系ポリマーが得られる。非常によい結果が得られる変性PVA系ポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)−コ−ポリ(n−ビニルホルムアミド)コポリマー(PVA−NVF)である。本発明で使用すると非常に好適なPVA−NVFコポリマーは、国際公開第03/054029号パンフレットに記載されているコポリマーであり、これは一般式I、
【0044】
【化1】

【0045】
を有する(式中、
nは0〜約20モル%の間であり、
mは約50〜約97モル%の間であり、
xは0〜約20モル%の間であり、
yは0〜約20モル%の間であり、
zは0〜約2モル%の間であり、
x+yは約3〜約20モル%の間であり、
1およびR3は独立に、H、3−プロピオン酸またはそのC1〜C6アルキルエステル、または2−メチル−3−プロピオン酸またはそのC1〜C6アルキルエステルであり、
2およびR4は独立に、HまたはC1〜C6アルキルである)。
【0046】
低分子量PVAを使用することもできる。
【0047】
一定量の非水膨潤性ポリマーを加えることもできるが、十分な量の水膨潤性ポリマーを維持するため、これらは好ましくは25重量%未満、より好ましくは20重量%未満の量で加えるべきである。
【0048】
ポリマー被覆溶液中の水膨潤性ポリマーの濃度は、好ましくは約3〜50重量%の間であり、より好ましくは5〜40重量%の間である。
【0049】
各水膨潤性ポリマーまたはポリマーの組み合わせに好適な微孔性層を得るために、以下のことを考慮することで溶媒および非溶媒の最適な組み合わせを容易に選択することができる。通常、溶媒は、ポリマーを完全に溶解させる溶媒の能力に基づいて選択される。特定の1種の溶媒自体を使用することもできるし、他の溶媒と併用することもできる。
【0050】
ゼラチンおよびその誘導体に適した溶媒は、水、2,2,2トリフルオロエタノール、酢酸、エチレンクロロヒドリン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ホルムアミド、プロピオンアミド、グリセリン、およびそれらの組み合わせである。
【0051】
PVAに適した溶媒の一部の例は、水、水と酢酸との混合物、水とアルコールとの混合物、グリコール、グリセリン、ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、およびヘキサメチルリン酸トリアミドである。
【0052】
好ましい非溶媒は、ポリマードープ溶液中のポリマーを凝集させることができる非溶媒である。ゼラチンおよびその誘導体に適した非溶媒は、アセトン、酢酸メチル、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ジメチルカーボネート、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、エチル−2−ピロリドン、ブチロラクトン、トリエチルホスフェート、ジメチルスルホン、プロピレンカーボネート、アジポニトリル、およびそれらの混合物である。
【0053】
PVAの場合、好適な非溶媒は、Na2SO4を含む塩基性水溶液、エタノール、ケトン、カルボン酸、エステル、炭化水素、塩素化炭化水素、テトラヒドロフラン(THF)である。
【0054】
相転移鋳造法は、好ましくはポリマー被覆溶液を支持体上に被覆することを伴う。次に、被覆した支持体を非溶媒浴中でクエンチすることで、微孔構造が形成される。このクエンチングの前に、たとえばゲル化温度未満に温度を下げることによって、ポリマー被膜をゲル化させることができる。
【0055】
別の実施形態においては、水膨潤性ポリマーを溶媒と非溶媒との混合物中に溶解し、非溶媒が溶媒よりも高い沸点(またはある温度で低蒸気圧)を有するように被覆溶液を調製する。次に、この被覆溶液を支持体上に適用する。乾燥中に相転移が起こり、微孔性フィルムが形成される。
【0056】
本発明の別の実施形態においては、多層被膜を支持体上に形成する。この多層被膜は、溶媒中に溶解させた少なくとも1種の水膨潤性ポリマーを有する一つの層と、非溶媒を含む別の層とを含み、両方の層を支持体上に被覆した後で溶媒と非溶媒とが混合される。非溶媒の沸点は、好ましくは溶媒の沸点よりも高くなるべきである。被覆工程の後の乾燥工程中に微孔性層が形成される。したがって、本発明は、溶媒および非溶媒の組み合わせが選択され、ある温度における非溶媒の蒸気圧が溶媒の蒸気圧よりも低い実施形態も含んでいる。
【0057】
別の実施形態においては、水膨潤性ポリマーの溶液を含む層に、一定量の電解質を加えることによって相分離を生じさせる。乾燥工程中、イオン濃度が増加し、水膨潤性ポリマーが析出することによって形成される所望の微細孔構造が得られる。
【0058】
別の実施形態においては、水膨潤性ポリマーを含む被膜のpHを変化させることによってポリマーを析出させる。等電点に向けてpHを変化させることによってポリマーが析出できる。このようなpHの変化は、多層被膜中の隣接する層の間の溶媒交換によって、または被覆した材料を特定のpHを有する溶媒を含む浴に通すことによって実現することができる。
【0059】
別の実施形態においては、この析出は、水膨潤性ポリマー溶液を支持体上に被覆した後で温度ショックを導入することで実現することができる。温度低下によって、溶媒に対するポリマーの溶解性が低下し、その結果析出が起こる。この方法は、いわゆる温度誘導相分離方法(TIPS)として知られている。
【0060】
別の実施形態においては、支持体上に被覆した後で水膨潤性ポリマーの変性を行う。これは、試薬を加えることで実施することができる。この試薬は隣接層中に加えることができるし、または、溶液の形態などで試薬を含む浴に材料を通すことによって加えることができる。この化学反応によって、水膨潤性ポリマーと結合する帯電基の数の減少などにより、水膨潤性ポリマーが沈殿する程度に親水性を低下させることができる。この方法は、いわゆる反応誘導相分離方法として知られている。
【0061】
熟練の技術者であれば、本明細書に記載の原理に適合しこれと一致する水膨潤性ポリマーの析出を実現する類似の方法が見いだせるであろう。
【0062】
ポリマー被覆溶液は、当技術分野において公知のあらゆる好適な方法によって支持体上に被覆することができる。好適な被覆方法は、たとえば、カーテンコーティング、押出コーティング、エアナイフコーティング、スライドコーティング、ロール塗布法、反転ロールコーティング、浸漬被覆法、スプレー塗装、ロッドバーコーティングなどである。
【0063】
一般に、被覆された支持体は、次に乾燥させて、相転移工程中に吸収した溶媒および非溶媒を除去する。被覆された支持体の乾燥には種々の技術を使用することができ、たとえばエアナイフ、スキージブレード、真空ローラー、およびスポンジを使用することができる。被膜の擦過を防止するために被覆された被膜に物理的に接触しない方法によって乾燥するのが好ましい。このような方法としては、減圧、速い気流、赤外線、近赤外線、マイクロ波などによる放射線、対流熱、またはそれらの組み合わせの使用が挙げられる。
【0064】
成分の特定の選択、特に溶媒、非溶媒、および任意の添加剤の使用によって、本発明による媒体は、微孔構造が独立した細孔又はセルを含むことができるという点で独特の微細孔構造を有することができることが分かった。通常は、連続した細孔構造、すなわち細孔がチャネルによって互いに相互連結した細孔構造を有することが、より高いインク吸収性を与えて好ましいが、微孔性層中、特に最上層が存在する場合の副層中に独立セルが存在しても、本発明による媒体の性質に必ずしも悪影響が生じるわけではないことが分かった。したがって、本発明の一実施形態においては、全空隙体積の少なくとも一部が独立したセルまたは細孔により形成される。
【0065】
微孔性副層中の細孔は、好ましくは、インク受容層の全体積を基準にして5〜95体積%の間の空隙体積を有する(層の体積は、その表面積にその平均厚さを乗じたものに相当する)。平均細孔径は100nm〜10μmの間であり、好ましくは200nm〜5μmの間である。
【0066】
好ましくは、インク受容層の20体積%未満の空隙体積を有し、その細孔は平均細孔径が1μm未満となるように、微孔性層の薄層の密な最上部が形成されるように、細孔構造を設計することができる。このより密な最上部は、好ましくは0.1〜5μmの間の厚さを有する。このような密な最上部が形成される場合、Dr.ランゲ(Lange)反射率計レフロ−3D(Refro−3D)型を60°の角度で使用して測定した場合に60%以上となりうる非常に良好な光沢が得られる。
【0067】
支持体の厚さは、支持体上に配置される微孔性被膜の性能には無関係であると考えられる。大部分の印刷用途では、支持体は5〜500マイクロメートルの厚さを有する。微孔性被膜の厚さは、必ずしも制御要因ではなく、微孔性被膜の最適な厚さは、上に微孔性被膜が形成される支持体、および被覆された支持体が使用される用途と関連する。たとえば、インク吸収性がほとんどまたはまったくない支持体上では、好ましくはその微孔性被膜は、高吸収性の支持体上に微孔性被膜が形成される場合よりも厚い。さらに、微孔性被膜の厚さは、支持体を出入りして透過する光の量を制御するために変動させることができる。大部分の支持体および用途においては、微孔性被膜は200マイクロメートル未満の厚さを有する。好ましくは、微孔性被膜の乾燥時厚さは約5〜200マイクロメートルの間であり、より好ましくは10〜100マイクロメートルの間である。微孔性層の厚さが5マイクロメートル未満であると、溶媒を十分吸収することが困難となる。微孔性層中に使用されるポリマー量は、希望する微孔性層の厚さと関連し、一般には1〜100g/m2の間であり、好ましくは5〜50g/m2の間である。
【0068】
ポリマー被覆溶液は、種々の添加剤をさらに含むことができ、これらは溶液を支持体に塗布する前、または塗布後に加えることができる。たとえば、細孔構造に影響を与えるためにLiClを加えることができる。従来の膜技術で一般に使用される他の添加剤を使用することもできる。
【0069】
水膨潤性ポリマーの架橋は、膨潤および機械的強度を制御するための優れた手段となる。ゼラチンの場合、硬化剤としても知られる多数の公知の架橋剤が存在する。硬化剤の例としては、ホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒドなどのアルデヒド化合物、ジアセチルおよびクロロペンタンジオンなどのケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、反応性ハロゲン含有化合物、特に米国特許第3,288,775号明細書に開示される化合物、ピリジン環がサルフェート基またはアルキルサルフェート基を有するカルバモイルピリジニウム化合物、特に米国特許第4,063,952号明細書および米国特許第5,529,892号明細書に開示される化合物、ジビニルスルホンなどが挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いても、併用してもよい。
【0070】
PVAの場合、ホウ砂、ホウ酸、グリオキサール、またはジカルボン酸を含む架橋剤を選択することが好ましい。
【0071】
インク受容層中に存在する架橋剤の量は、好ましくは0.001g/m2〜10g/m2の範囲であり、より好ましくは0.001g/m2〜7g/m2の範囲である。架橋剤は、ポリマー溶液中、非溶媒中、または両方の溶液中に加えることができる。
【0072】
ポリマー被覆溶液は界面活性剤をさらに含むことができる。これらは陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、および非イオン性界面活性剤であってよい。
【0073】
陰イオン性界面活性剤の例としては、アルキルスルホカルボキシレート、α−オレフィンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルアセテート、N−アシルアミノ酸およびそれらの塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキルサルフェート、ポリオキシアルキルエーテルサルフェート、ポリオキシアルキルエーテルホスフェート、ロジンセッケン、ヒマシ油サルフェート、ラウリルアルコールサルフェート、アルキルフェノールホスフェート、アルキルホスフェート、アルキルアリルスルホネート、ジエチルスルホスクシネート、ジエチルヘキシルスルホスクシネート、ジオクチルスルホスクシネートなどが挙げられる。
【0074】
陽イオン性界面活性剤の例としては、2−ビニルピリジン誘導体、およびポリ−4−ビニルピリジン誘導体が挙げられる。
【0075】
両性界面活性剤の例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、プロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、およびイミダゾリン誘導体が挙げられる。
【0076】
非イオン性界面活性剤の有用な例としては、非イオン性フッ素化界面活性剤および非イオン性炭化水素界面活性剤が挙げられる。非イオン性炭化水素界面活性剤の有用な例としては、エーテル、たとえば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル;エステル、たとえば、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンジステアレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート;グリコール界面活性剤などが挙げられる。上記界面活性剤は、好ましくは、ポリマー被膜溶液中に、0.1〜1000mg/m2の量、好ましくは0.5〜100mg/m2の量で存在する。
【0077】
ポリマー被覆溶液は、以下の成分の1種以上をさらに含むことができる。
【0078】
−本発明に使用される記録要素の非ブロッキング特性、およびそれらの汚れ耐性に寄与する目的用のマット剤、たとえば、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、および架橋ポリ(メタクリル酸メチル)またはポリスチレンのビーズなどのポリマービーズ。これらのマット剤は単独で用いても、または併用してもよい。
【0079】
−1種以上の可塑剤、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノメチルエーテル、グリセリンモノクロロヒドリン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、無水テトラクロロフタル酸、無水テトラブロモフタル酸、リン酸尿素、トリフェニルホスフェート、グリセロールモノステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、テトラメチレンスルホン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、およびポリエチルアクリレート、ポリメチルアクリレートなどの低Tg値を有するポリマーラティス。
【0080】
−1種以上の充填剤。前述したように、多孔性付与粒子の存在は必須ではない。にもかかわらず、一部の従来の充填剤を使用することができ、その一部の充填剤は多孔性をさらに付与することができる。有機粒子および無機粒子の両方を充填剤として使用することができる。有用な充填剤は、たとえば、シリカ(コロイダルシリカ)、アルミナまたはアルミナ水和物(アルミナゾル、コロイド性アルミナ、陽イオン性酸化アルミニウムまたはその水和物、および擬ベーマイト)、表面処理した陽イオン性コロイド性ルシリカ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、炭酸亜鉛、サテンホワイト、珪藻土、合成非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム、および合成マイカである。これらの無機充填剤の中で、多孔質合成シリカ、多孔質炭酸カルシウム、および多孔質アルミナなどの多孔質無機充填剤が好ましい。有用な有機充填剤の例は、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリメタクリル酸メチル、エラストマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリエステル、ポリエステル−コポリマー、ポリアクリレート、ポリビニルエーテル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリシリコン、グアナミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、エラストマー性スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、尿素樹脂、尿素−ホルマリン樹脂である。このような有機および無機の充填剤は、単独で用いても、または併用してもよい。
【0081】
−1種以上の媒染剤。媒染剤は、本発明のインク受容層中に混入することができる。このような媒染剤としては、インク組成物中に使用される染料と錯体形成可能なモノマーまたはポリマーの陽イオン性化合物が挙げられる。このような媒染剤の有用な例としては第4級アンモニウムブロックコポリマーが挙げられる。他の好適な媒染剤としては、ジアミノアルカン、アンモニウム第4級塩、および第4級アクリルコポリマーラテックスが挙げられる。その他の好適な媒染剤は、フルオロ化合物、たとえばフッ化テトラアンモニウム水和物、2,2,2−トリフルオロエチルアミン塩酸塩、1−(α,α,α−トリフルオロ−m−トリル)ピペラジン塩酸塩、4−ブロモ−α,α,α−トリフルオロ−o−トルイジン塩酸塩、ジフルオロフェニルヒドラジン塩酸塩、4−フルオロベンジルアミン塩酸塩、4−フルオロ−α,α−ジメチルフェネチルアミン塩酸塩、2−フルオロエチルアミン塩酸塩、2−フルオロ−1−メチルピリジニウム−トルエンスルホン酸塩、4−フルオロフェネチルアミン塩酸塩、フルオロフェニルヒドラジン塩酸塩、1−(2−フルオロフェニル)ピペラジンモノ塩酸塩、1−フルオロピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩である。
【0082】
−1種以上の従来の添加剤、たとえば、
・顔料:白色顔料、たとえば、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウムなど;青色顔料または染料、たとえば、コバルトブルー、ウルトラマリン、またはフタロシアニンブルー;マゼンタ顔料または染料、たとえば、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、またはマンガンバイオレット;
・殺生物剤;
・pH調整剤;
・防腐剤;
・粘度調節剤;
・分散剤;
・UV吸収剤;
・増白剤;
・酸化防止剤;および/または
・帯電防止剤。
【0083】
これらの添加剤は、達成すべき目的に応じて公知の化合物および材料から選択することができる。
【0084】
上記添加剤(マット剤、可塑剤、充填剤/顔料、媒染剤、従来の添加剤)は、水膨潤性微孔性インク受容層組成物の固形分を基準にして0〜30重量%の範囲で加えることができる。
【0085】
非水溶性粒子状添加剤の粒径は、得られる細孔構造に対して不利な影響が生じないようにするため、あまり大きくなるべきではない。したがって、使用される粒径は好ましくは10μm未満となるべきであり、より好ましくは7μm以下となるべきである。取扱上の目的で、粒径は好ましくは0.1μmを超え、より好ましくは約1μm以上である。
【0086】
微孔性被膜は、種々の支持体上に形成することができる。支持体の選択は、主として、被覆された媒体が使用される用途に基づく。本発明において使用される支持体は、好適には、紙、顔料塗工紙、積層紙、積層顔料塗工紙、写真用印画紙原紙、合成紙、またはカール挙動を最小限にするために表および裏の被覆のバランスがとれるプラスチックフィルムから選択することができる。
【0087】
媒体の光沢は、使用される支持体の適切な表面荒さを選択することにより改善することが可能なことが分かった。Raの値が1.0μm未満、好ましくは0.8μm未満であることを特徴とする表面荒さを有する支持体を提供すると、非常に光沢のある媒体を得ることができることが分かった。小さな値のRaは、平滑な表面を表している。RaはDIN 4776に準拠し;バージョン1.62のソフトウェアパッケージを以下の設定で使用して測定される。
(1)点密度500P/mm(2)面積5.6×4.0mm2(3)カットオフ波長0.80mm(4)速度0.5mm/秒、UBM装置を使用。
【0088】
本発明の支持体として使用される原紙は、高品質印刷用紙に従来使用されていた材料から選択される。一般に、これは天然木材パルプを主成分とし、希望するならタルク、炭酸カルシウム、TiO2、BaSO4などの充填剤を加えることができる。一般に、紙は、アルキルケテンダイマー、高級脂肪酸、パラフィン蝋、アルケニルコハク酸、エピクロロヒドリン脂肪酸アミドなどの内部サイズ剤も含有する。さらに紙は、ポリアミン、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリエピクロロヒドリン、またはデンプンなどの湿式および乾式増強剤を含有することができる。紙中のさらに別の添加剤としては、定着剤、たとえば硫酸アルミニウム、デンプン、陽イオン性ポリマーなどを挙げることができる。標準グレードの原紙のRa値は、1.0μmを十分に超え、典型的には1.3μmを超える。1.0μm未満のRa値を有する原紙を得るためには、このような標準グレードの原紙を顔料で被覆することができる。あらゆる顔料を使用することができる。顔料の例は、炭酸カルシウム、TiO2、BaSO4、クレー、たとえばカオリン、スチレン−アクリル酸コポリマー、ケイ酸−Mg−Alなど、またはそれらの組み合わせである。その量は0.5〜35.0g/m2の間、より好ましくは0.5〜20.0g/m2の間である。この着色被膜は、水中の顔料スラリーとして、スチレン−ブタジエンラテックス、メタクリル酸メチル−ブタジエンラテックス、ポリビニルアルコール、変性デンプン、ポリアクリレートラテックス、またはそれらの組み合わせなどの好適なバインダーとともに使用して、浸漬被覆、ロール塗布、ブレードコーティング、またはバーコーティングなどの当技術分野で公知のあらゆる技術によって適用することができる。顔料塗工原紙は、場合によりカレンダー加工することができる。表面粗さは、使用される顔料の種類、および顔料とカレンダー加工との併用によって影響されうる。顔料塗工原紙基材は好ましくは0.4〜0.8μmの間の表面粗さを有する。スーパーカレンダー加工によって表面粗さを0.4μm未満の値まで減少させると、一般に厚さおよび剛性の値が許容レベル未満となる。
【0089】
本発明のインク受容性多層は、顔料塗工原紙に直接適用することができる。別の実施形態においては、着色上面と裏面とを有する顔料塗工原紙は、高温同時押出によって両面にポリマー樹脂が設けられて、積層顔料塗工原紙が得られる。典型的にはこの(同時)押出温度は280℃を超えるが350℃未満である。使用される好ましいポリマーは、ポリオレフィンであり、特にポリエチレンである。好ましい実施形態においては、上面のポリマー樹脂は、積層顔料塗工原紙の白色度を向上させるために、不透明白色顔料、たとえばTiO2(アナターぜまたはルチル)、ZnOまたはZnS、染料、青味剤などの有色顔料、たとえばウルトラマリンまたはコバルトブルー、接着促進剤、蛍光増白剤、酸化防止剤などを含むことができる。白色以外の顔料を使用することによって、種々の色の積層顔料塗工原紙を得ることができる。積層顔料塗工原紙の全重量は好ましくは80〜350g/m2の間である。この積層顔料塗工原紙は非常に良好な平滑性を示し、本発明のインク受容層を適用した後、優れた光沢を有する記録媒体が得られる。
【0090】
本発明に使用される他の支持体は、合成紙、またはカール挙動を最小限にするために表および裏の被覆のバランスがとれるプラスチックフィルムから適宜選択することができる。
【0091】
プラスチックフィルムの材料の例は、ポリオレフィン、たとえばポリエチレンおよびポリプロピレン、ビニルコポリマー、たとえばポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、およびポリスチレン、ポリアミド、たとえば6,6−ナイロンおよび6−ナイロン、ポリエステル、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2および6−ナフタレート、およびポリカーボネート、ならびに酢酸セルロース、たとえば三酢酸セルロースおよび二酢酸セルロースである。支持体の被覆性を改善するために、支持体はゼラチン下塗り層を有することができる。支持体とインク受容層との間の接着性を改善するために、支持体をコロナ処理することができる。接着性を改善するためにプラズマ処理などの他の技術を使用することもできる。
【0092】
希望するなら、本発明の微孔性層が形成された後、インク浸透性粘着防止保護層、たとえば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体を含む層を上部被覆することができる。この上部被覆層は非多孔質であるが、インク浸透性であり、水性インクで要素上に印刷された画像の光学濃度を改善する機能を果たす。上部被覆層は、摩耗、汚れ、および水による損傷から微孔性層を保護する機能も果たす。
【0093】
上部被覆材料は、好ましくは0.1〜8.0マイクロメートルの範囲、より好ましくは0.5〜4.0マイクロメートルの範囲の乾燥時厚さで水または水−アルコール溶液から微孔性層上に被覆される。この上部被覆層は、相転移技術で微孔性層が得られた後の別途の操作段階で被覆することができる。
【0094】
実際には、種々の添加剤を上部被覆層中に使用することができる。このような添加剤としては、被覆混合物の濡れまたは拡散作用を制御する界面活性剤、帯電防止剤、懸濁剤、摩擦特性を制御するかまたは被覆製品のスペーサーとして機能する粒子、酸化防止剤UV安定剤などが挙げられる。
【0095】
以下の非限定的な実施例によって本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0096】
(膜構造の測定)
膜構造を分析するために、電界放射型走査電子顕微鏡(JEOL USA、モデルJSM−6330F)を使用して断面写真を撮影した。密な最上層の厚さをこの断面写真から求めた。
【0097】
(乾燥試験)
原HPインクを搭載したHP995cプリンタを使用することによって、インクジェット媒体上に標準黒色画像(4cm×4cm)を印刷した。以下のプリンタ設定を選択した。
−印刷品質:最高
−用紙の種類:hpプレミアムプラス写真用紙(hp premium plus photo paper)光沢
−用紙サイズ:A4。
【0098】
紙がプリンタから排出された直後に、印刷画像の四隅を指でかるくなでることによってインクジェット媒体の乾燥特性を評価した。インクジェット媒体の乾燥速度は、スミアリングしたインクの濃度を目視で分析することによって求めた。以下の分類を適用した。
○:インクのスミアリングがまったくない
×:2つ以上の隅でインクのスミアリングがみられた。
【0099】
(吸収速度測定)
20nLの体積を有する水滴の吸収速度を、接触角装置(米国ASTインコーポレイテッド(AST Inc.)製のVCA2500XE)を使用して測定した。水滴を媒体上に載せた直後に、その水滴を記録し、水滴と媒体との間の接触角を測定し、この装置の標準ソフトウェアで水滴の体積を計算した。これらの測定および計算は、吸収速度に応じてある時間間隔で繰り返した。この測定において、最初に水滴体積を測定した時間を「時間0」と定義した。吸収速度は次式で計算され、
【0100】
吸収速度=|dV/dt|
【0101】
上式中、dVは、微小時間差dt内で減少する体積である。吸収速度は最長時間5秒以内で計算される。
【0102】
(光沢測定)
インクジェット媒体の光沢度は、反射率計Dr.ランゲ(Lange)のレフロ−3D(Refro−3D)型を60°の角度で使用して測定した。
【0103】
(オゾン堅牢度試験)
インクカートリッジ57番および58番を搭載したHP 5652プリンタを使用して、異なる濃度でシアン、マゼンタ、およびイエローを含む標準カラーパターンをインクジェット媒体上に印刷した。このパターンを印刷した後、印刷した媒体を、オゾンチャンバーOTC−1(米国のUSAインコーポレイテッド(USA Inc.)内)内で室温にて48時間保管した。このチャンバー内のオゾン濃度は5ppmであった。オゾン処理の前後に、印刷されたパターンの色濃度をオートスキャン分光光度計(米国のXライト・インコーポレイテッド(X−rite Inc.)、モデルDTP41B)で測定した。インクジェット媒体のオゾン堅牢度特性は、初期濃度1±0.05を有する色濃度の減少を計算することによって求めた。この方法は、米国のウィルヘルム・イメージング・リサーチ・カンパニー(Wilhelm Imaging Research company)により提案されている。
【0104】
(本発明の実施例1)
45℃で2.5時間撹拌しながら、193kDの平均MWを有する20gの石灰処理ゼラチンを、80gのジメチルスルホキシド(ドイツのメルク(Merck)社製)中に加えることで、均一のドープ溶液を調製した。
【0105】
(多孔質インクジェット媒体の作製方法)
両面にポリエチレンが積層された写真グレード用紙(205g/m2)を支持体として使用した。濡れ性を向上させるためにこの表面をコロナ処理した後、100μmの開口部を有するナイフコーターで溶液を被覆した。被覆された支持体を直ちに20℃のエタノール浴(ドイツのメルク(Merck)社製、無水グレード)中に浸漬し、30分維持すると、支持体上に多孔質層が形成された。次に、この多孔質層を減圧下で約14時間(一晩中)乾燥させた。
こうして得られた多孔質インクジェット媒体について乾燥試験を行い、その結果を表1にまとめている。
【0106】
(本発明の実施例2)
20gの石灰処理ゼラチン(平均MW=193kD)と50gの水を室温で混合し、これを90分間静置して、ゼラチンを膨潤させ、次に最高60℃の温度で洗浄して、撹拌しながら完全に可溶化することによって、ゼラチンドープ溶液を調製した。このゼラチン溶液が完全に溶解してから、温度を40℃まで下げ、激しく撹拌しながらこの溶液に30gのエタノールを加え、30分間維持すると、ドープ溶液が均一混合物となった。ここで、7.5重量%の2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジンを含有する架橋溶液3gを加えた。次に、実施例1に記載の方法に従い、この溶液を使用することによって多孔質インクジェット媒体を作製した。ナイフコーターの代わりにKHコーターバー200(湿潤時厚さ200マイクロメートル)を使用して、写真グレード用紙上に溶液を被覆した。乾燥後、20℃および65%RHで少なくとも24時間膜をさらにコンディショニングして、硬化剤をゼラチンと十分に架橋させた。
こうして得られた多孔質インクジェット媒体について乾燥試験を行い、その結果を表1にまとめている。
【0107】
(本発明の実施例3)
室温で撹拌しながら、193kDの平均MWを有する15gの脱イオン石灰処理ゼラチンを84gの水に加え、これを90分間静置して、ゼラチンを膨潤させることによって、均一のドープ溶液を調製した。その後、このドープ溶液を60℃の温度で溶解させた。ゼラチンが完全に溶解してから、温度を40℃まで下げた。激しく撹拌しながらこの溶液に1gのエタノール(ドイツのメルク製の無水グレード)を加え、30分間維持すると、溶液が均一混合物となった。実施例1に記載の手順に従って、この溶液を積層写真グレード用紙の上に被覆し、これをエタノール浴中に浸漬することによって、多孔質インクジェット媒体を作製した。ナイフコーターの代わりにKHコーターバー200を使用した。浸漬浴の温度は25℃に設定した。このフィルムを減圧下で30分乾燥させた。
こうして得られた多孔質インクジェット媒体について、乾燥試験、光沢および吸収速度測定、ならびにオゾン堅牢度評価を行った。これらの結果を表1、2、および3にまとめている。
【0108】
(本発明の実施例4)
実施例3に記載の方法に従い、ゼラチン溶液中のエタノール量を5重量%まで増加させて、15重量%のゼラチンを含有する均一のドープ溶液を調製した。次に、実施例3に記載の手順に従って、この溶液を積層写真グレード用紙の上に被覆し、これをエタノール浴中に浸漬することによって、多孔質インクジェット媒体を作製した。
こうして得られた多孔質インクジェット媒体について、乾燥試験、光沢測定、および吸収速度測定を行った。これらの結果を表1および2にまとめている。
【0109】
(本発明の実施例5)
実施例3に記載の方法に従い、ゼラチン溶液中のエタノール量を15重量%まで増加させて、15重量%のゼラチンを含有する均一のドープ溶液を調製した。次に、実施例3に記載の手順に従って、この溶液を積層写真グレード用紙の上に被覆し、これをエタノール浴中に浸漬することによって、多孔質インクジェット媒体を作製した。
こうして得られた多孔質インクジェット媒体について、乾燥試験、光沢および吸収速度測定、ならびにオゾン堅牢度評価を行った。これらの結果を表1、2、および3にまとめている。
【0110】
(本発明の実施例6)
2.5重量%のPVAを含有する変性ポリビニルアルコールとゼラチン溶液との混合物を以下のように調製した。
ドイツのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)より購入した10重量%のポリ(ビニルアルコール)−コ−ポリ(n−ビニルホルムアミド)コポリマー(PVA−NVF)を85℃の水に溶解させた。
10gの前記10重量%PVA−NVF溶液を、40℃の温度で15重量%のゼラチン濃度を有する30gの石灰処理ゼラチン溶液に加えた(このゼラチンの平均MWは200kDであった)。次に、実施例3に記載の手順に従って、この溶液を積層写真グレード用紙の上に被覆し、これをエタノール浴中に浸漬することによって、多孔質インクジェット媒体を作製した。
こうして得られた多孔質インクジェット媒体について、乾燥試験、光沢および吸収速度測定、ならびにオゾン堅牢度評価を行った。これらの結果を表1、2、および3にまとめている。
【0111】
(本発明の実施例7)
実施例3に記載の方法に従い、ゼラチン溶液中にはエタノールを全く加えずに、15重量%のゼラチンを含有するドープ溶液を調製した。次に、実施例3に記載の手順に従って、この溶液を積層写真グレード用紙の上に被覆し、これをエタノール浴中に浸漬することによって、多孔質インクジェット媒体を作製した。
こうして得られた多孔質インクジェット媒体について、乾燥試験、光沢および吸収速度測定、ならびにオゾン堅牢度評価を行った。これらの結果を表1、2、および3にまとめている。
【0112】
(比較例1)
写真グレード品質を有し、典型的な膨潤性紙として知られているインクジェット紙の市販品を購入した。膨潤型の一部の例としては、HPプレミアム・プラス写真用紙グロッシー(HP Premium Plus photo paper−Glossy)、フジフイルム・プレミアム・フォト・ペーパー(FujiFilm Premium Plus Photo Paper)、およびイルフォード・クラシック・グロス・ペーパー(Ilford Classic Gloss Paper)が挙げられる。これらの紙の1つについて、乾燥試験、光沢および吸収速度測定、ならびにオゾン堅牢度評価を行った。これらの結果を表1、2、および3にまとめている。
【0113】
(比較例2)
写真グレード品質であり典型的な微孔性インクジェット媒体として知られている市販のインクジェット紙の1つについて同じ評価を行った。微孔型の一部の例は、エプソン・プレミアム・グロッシー・フォト・ペーパー(Epson Premium Glossy Photo Paper)、フジフイルム・プレミアム・フォト・ペーパー、およびキヤノン・フォト・ペーパー・プロ(Canon Photo Paper Pro)である。
【0114】
【表1】

【0115】
表1は、インクジェット媒体上に印刷した画像の乾燥速度の定性的データを示している。これより分かるように、本発明によるインクジェット媒体は、シアン、マゼンタ、およびイエローのインク(高インク使用量)の組み合わせである黒色画像の乾燥速度に顕著な改善が見られる。
【0116】
【表2】

【0117】
表2は、水滴吸収速度の定性的データを示している。本発明によるインクジェット媒体の吸収速度は、市販の膨潤型の吸収速度よりも相当速いことが分かる。PVAおよびゼラチンの混合物によって吸収速度がさらに改善されて微孔型に近づくと判断できる。
表1および2から、本発明の吸収速度における改善が、実際に印刷画像をほとんど瞬間的に乾燥させるための必要条件を満たしていることが分かる。
表2は、本発明によるインクジェット媒体の光沢度が、ドープ溶液の組成によって変動しうることをさらに示している。密な最上層が厚くなるほど、媒体の光沢度が高くなり、吸収速度が低くなる。当業者であれば分かるように、用途に依存して、所望の光沢度および吸収速度の間の最適バランスを本発明によって見いだすことができる。
【0118】
【表3】

【0119】
表3は、本発明によるインクジェット媒体のオゾン堅牢度が、比較例2(微孔型)よりもはるかに優れており、比較例1(膨潤型)よりも幾分優れていることを示している。
表1、2、および3から、本発明は、2つの既存の種類のインクジェット媒体の最良の性質に1つの媒体で首尾良く適合させたと結論づけることができる。したがって、本発明によるインクジェット媒体は、膨潤型と比べて吸収速度の顕著な改善が見られ、同時に微孔型と比較してオゾン堅牢度特性が顕著に改善された。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】密な最上層(1)と微孔性副層(2)とを含む本発明による非対称膜の断面のSEM写真を示めす。これは浸漬析出方法によって作製しており、石灰処理ゼラチンの15%水溶液を含むドープ溶液を基材上に被覆した。被覆した基材を、25℃でエタノール浴(ドイツのメルク社製の無水グレード)中に浸漬した。この非対称膜の固形分含量は30g/m2である。密な最上層(1)は約1マイクロメートルの厚さを有する。密な最上層の下に微孔性副層(2)が存在する。
【図2】微孔性副層(2)の多孔質構造を示す図1の一部の拡大図である。高度の多孔質構造が相互連結する細孔を有することが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体に接着された水膨潤性インク受容層とを含むインクジェット記録媒体であって、前記インク受容層が、微孔性副層に隣接する密な最上層を含む非対称膜構造を有し、前記インク受容層が少なくとも1種の水膨潤性ポリマーを含む、インクジェット記録媒体。
【請求項2】
前記最上層の均一相の化学組成が、前記副層の均一相の化学組成と実質的に同一である、請求項1に記載の媒体。
【請求項3】
前記水膨潤性ポリマーが、前記最上層および前記副層の乾燥重量の少なくとも75%を構成する、請求項1または2に記載の媒体。
【請求項4】
前記微孔性層が多孔質顔料粒子を実質的に含まない、前記請求項のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項5】
前記微孔性副層が、前記インク受容層の全体積を基準にして、5〜95体積%の空隙を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項6】
前記微孔性副層の細孔の平均直径が100nm〜10μmの間である、前記請求項のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項7】
前記インク受容層の親水性媒体中の膨潤が、乾燥時の層の全体厚さの3%を超え、好ましくは乾燥時の層の全体厚さの7%を超え、より好ましくは12%を超える、前記請求項のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項8】
前記最上層が、前記インク受容層の全体積を基準にして、20%未満の空隙を含み、平均細孔サイズが1μm未満、好ましくは1〜100nmの間である、前記請求項のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項9】
前記最上層の厚さが、5μm未満、好ましくは0.1〜5.0μmの間である、前記請求項のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項10】
前記水膨潤性ポリマーが、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンアルコール、ゼラチン、ゼラチン誘導体、変性ゼラチン、完全または部分的に加水分解したポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、およびそれらの混合物からなる群より選択される、前記請求項のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項11】
前記水膨潤性ポリマーが、ゼラチン、変性ゼラチン、加水分解したゼラチン、PVA、変性PVA、PVA系コポリマーまたはターポリマー、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項10に記載の媒体。
【請求項12】
前記インク受容層が、0.001〜10g/m2、より好ましくは0.001〜7g/m2の量の架橋結合剤をさらに含む、前記請求項のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項13】
前記支持体が、紙、顔料塗工紙、積層紙、積層顔料塗工紙、バライタ紙、合成紙、またはプラスチックフィルムである、前記請求項のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項14】
水膨潤性ポリマー、溶媒、および非溶媒流体を含む成分の適切な組み合わせを選択するステップと、
前記水膨潤性ポリマーを前記溶媒中に含む均一配合物を調製するステップと、
支持体上に前記配合物を被覆するステップと、
前記被覆された支持体を前記非溶媒流体と接触させることによって前記水膨潤性ポリマーを析出させて、微孔性副層と隣接した密な最上層を含む非対称微孔性膜を形成させるステップと、
前記被覆された支持体を乾燥させるステップとの連続するステップを含む、微孔性インクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項15】
水膨潤性ポリマー、溶媒、および非溶媒を含む適切な混合物を選択するステップと、
均一ポリマー溶液が得られる比率で、前記水膨潤性ポリマー、前記溶媒、および前記非溶媒の混合物を含む配合物を調製するステップであって、前記非溶媒の沸点は前記溶媒の沸点よりも高いステップと、
前記配合物を支持体上に被覆して、前記溶媒が最初に蒸発し続いて非溶媒が蒸発する条件で、前記被覆された支持体を乾燥させることで、前記水膨潤性ポリマーを析出させて、微孔性副層と隣接して密な最上層を含む非対称微孔性膜を形成させるステップとを含む、微孔性インクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体、あるいは請求項14及び15のいずれかによる方法によって製造されるインクジェット記録媒体を提供するステップと、
インクジェットインクを所望の画像のパターンで、前記媒体と接触させるステップとを含む、永久的ではっきりしたインクジェット画像を形成する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−502220(P2007−502220A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523148(P2006−523148)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000567
【国際公開番号】WO2005/016655
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(598169815)フジ フォト フィルム ビー.ブイ. (12)
【氏名又は名称原語表記】Fuji Photo Film B.V.
【Fターム(参考)】