説明

インクジェット記録方法

【課題】出射安定性に優れ、かつ形成した画像の滲み耐性、鮮鋭性、裏面描画性に優れたインクジェット捺染に用いるインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】25℃における蒸気圧が133Pa以下で、25℃での表面張力が25mN/m以上、40mN/m以下で、かつ25℃での粘度が1mPa・s以上、50mPa・s以下である溶媒Aを、インク全質量に対し50質量%以上、90質量%未満含有し、水の含有量が10質量%以上、45質量%未満で、かつ色材として水性染料を含有するインクジェット用インクを、ライン型のインクジェット記録ヘッドから10kHz以上の速度で、20pl以上、50pl以下のインク液滴量を吐出させて、布帛に記録することを特徴とするインクジェット記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布帛に画像記録するインクジェット捺染に用いるインクジェット記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式による画像の印刷方法は、インクの微小液滴をインクジェット記録ヘッドより飛翔させ、対象となる記録媒体に付着させて印刷を行う方法である。インクジェット方式は、その機構が比較的簡便、安価で、かつ高精細で高品位な画像を形成できることが利点である。
【0003】
このインクジェット方式の利点を生かして、布帛への画像印字、いわゆるインクジェット捺染についても開発が進められている。インクジェット捺染は、従来の捺染とは異なり、版を作製する必要がなく、手早く階調性に富んだ画像を形成できる利点を有している。更に、形成画像として必要な量のインクのみを画像形成に使用するため、従来方法に比較すると廃液が少ない等の環境的な利点も有する優れた画像形成方法であるといえる。
【0004】
インクジェット記録方式としては、種々のタイプのものがあるが、近年主流であるオンデマンド型の記録方式は、ピエゾ素子を用いるいわゆるピエゾ方式(圧電素子方式)とサーマルジェット方式(バブルジェット(登録商標)方式)に分類される。その中で、ピエゾ方式を用いたインクジェット記録方式は、インク吐出時に多数回加圧、減圧を繰り返す為、キャビテーションにより微小な気泡が発生しやすく、インク吐出時にドット抜け、着弾位置ずれ等の原因となり、粒状性等のプリント画質を劣化させることが知られている。
【0005】
一般に、キャビテーションとは、ある温度の液体の圧力がその温度によって決まる蒸気圧より低くなると液体が蒸発し、気泡となる物理現象である。その為、用いられるインクジェットインクには、通常、脱気処理を施して、インクジェットインクに含まれる気体量をできる限り少なくして、吐出時の気泡発生を防止している。脱気処理としては、例えば、インクジェットインクを減圧下で脱気する方法、超音波を照射して脱気する方法、特開平11−209670に記載のごとく、脱気用中空糸膜による脱気方法が試みられている。更には、超音波脱気法と中空糸膜脱気法とが連続的に行える装置を組み込んだインクジェットプリンタも提案されている。また、物理的な方法ではないが、特開平11−263929号公報には、界面活性剤による気泡発生の防止方法が提案されている。更には、インクジェット捺染に用いるインクジェットインクを製造する際に、カートリッジ充填前に中空糸膜及び超音波による脱気処理を施す方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
近年、インクジェット捺染分野においても、印字速度の高速化の要望がされており、その要望に対し様々な検討がなされてはいるが、インクジェットヘッドとしてラインヘッド方式を用いたインクジェットプリンタにおいては、出射安定性と画質(特に、滲み耐性、鮮鋭性)の両立を果たすことが大きな課題となっている。水系インクジェットインクにおいて、インク浸透能の高い普通紙に印字を行う際に、普通紙へのインクの浸透速度を制御し、出射安定性及び滲み耐性を改良する観点から、特定の表面張力値、粘度及び蒸気圧を備えた溶媒を50〜90質量%と、水を45質量%未満含有する高溶媒濃度の水性インクジェットインクが開示されている(例えば、特許文献2、3参照。)。しかしながら、この高溶媒濃度の水性インクジェットインクをインクジェット捺染用インクとして適用したところ、印字速度を高めるため、インクジェットヘッドを構成する圧電素子を高周波数で印加し、微小液滴で吐出を行うと、インク中での気泡発生等に起因する出射不良を生じ、逆に、低周波数で印字を行うと、出射安定性は改善されるものの、印字速度及び生産性が低下し、それを補う為に、大液滴化すると、滲みが増大し、鮮鋭性の低下やまだら状の画像ムラを引き起こし、出射安定性と画像品質の両立を図ることが難しいことが判明した。
【0007】
特に、色材として水性染料を用いた場合には、水性染料特有の性質として、分散染料や顔料に比較し、記録媒体上に着弾した後の画像滲みや液寄りが増大するという課題を抱えていることが判明した。
【特許文献1】特開2005−281523号公報
【特許文献2】特開2005−220296号公報
【特許文献3】特開2005−220297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、出射安定性に優れ、かつ形成した画像の滲み耐性、鮮鋭性、裏面描画性に優れたインクジェット捺染に用いるインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0010】
1.25℃における蒸気圧が133Pa以下で、25℃での表面張力が25mN/m以上、40mN/m以下で、かつ25℃での粘度が1mPa・s以上、50mPa・s以下である溶媒Aを、インク全質量に対し50質量%以上、90質量%未満含有し、水の含有量が10質量%以上、45質量%未満で、かつ色材として水性染料を含有するインクジェット用インクを、ライン型のインクジェット記録ヘッドから10kHz以上の速度で、20pl以上、50pl以下のインク液滴量を吐出させて、布帛に記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
【0011】
2.前記インクジェット用インクにおける前記溶媒Aと水の混合比率は、25℃で前記溶媒Aと水とが完全に相溶する条件であることを特徴とする前記1に記載のインクジェット記録方法。
【0012】
3.前記水性染料が、反応性染料、直接染料または酸性染料であることを特徴とする前記1または2に記載のインクジェット記録方法。
【0013】
4.前記インクジェット用インクは、中空糸膜による脱気処理を施し、溶存酸素濃度を2ppm以下とした後、前記ライン型のインクジェット記録ヘッドから吐出することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、出射安定性に優れ、かつ形成した画像の滲み耐性、鮮鋭性、裏面描画性に優れたインクジェット捺染に用いるインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0016】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、25℃における蒸気圧が133Pa以下で、25℃での表面張力が25mN/m以上、40mN/m以下で、かつ25℃での粘度が1mPa・s以上、50mPa・s以下である溶媒Aを、インク全質量に対し50質量%以上、90質量%未満含有し、水の含有量が10質量%以上、45質量%未満で、かつ色材として水性染料を含有するインクジェット用インクを、ライン型のインクジェット記録ヘッドから10kHz以上の速度で、20pl以上、50pl以下のインク液滴量を吐出させて、布帛に記録することを特徴とするインクジェット記録方法により、出射安定性に優れ、かつ形成した画像の滲み耐性、鮮鋭性、裏面描画性に優れたインクジェット捺染に用いるインクジェット記録方法を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0017】
以下、本発明のインクジェット記録方法を構成する各要素の詳細について説明する。
【0018】
《インクジェット用インク》
本発明に係るインクジェット用インクは、本発明で規定する溶媒Aを50質量を以上という高濃度で含有させることにより、布帛に印字した際に、過度の滲みを抑制することにより、形成した画像の鮮鋭性を高めることができると共に、布帛のような記録媒体に対する適切な浸透性を備えることにより、インクジェット捺染特有の表裏面で画像観察を行う場合でも、満足のいく画像を裏面にも描写することができる。
【0019】
〔溶媒A〕
本発明に係るインクジェット用インク(以下、単にインクともいう)は、25℃における蒸気圧が133Pa以下で、25℃での表面張力が25mN/m以上、40mN/m以下で、かつ25℃での粘度が1mPa・s以上、50mPa・s以下である溶媒Aを、インク全質量に対し50質量%以上、90質量%未満含有することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る溶媒A(水系溶媒)は、1つの要件として25℃での表面張力が25mN/m以上、40mN/m以下であることが特徴であるが、好ましくは25mN/m以上、32mN/m以下である。また、25℃での粘度としては、1mPa・s以上、50mPa・s以下であることが特徴の1つであるが、好ましくは1mPa・s以上、30mPa・s以下である。また、25℃における蒸気圧が133Pa以下であることが特徴の1つであるが、好ましくは1〜67Paである。
【0021】
本発明で用いることのできる溶媒A(水系溶媒)としては、上記で規定する3つの液特性をすべて満たすものであれば特に制限はないが、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート等を挙げることができる。
【0022】
本発明で規定した水系溶媒の各特性値は、例えば、「新版 溶剤ポケットブック」有機合成化学協会編、オーム社(1994年)に記載の各データや、あるいは公知の測定方法に従って求めることができる。
【0023】
本発明のインクにおいては、上記水系溶媒と共に、水をインク全質量に対し10質量%以上、45質量%未満含有せしめることが特徴の1つであり、好ましくは10質量%以上、30質量%未満である。インク中の水含有量を、本発明で規定した範囲とすることにより、画像の滲み耐性、鮮鋭性に優れたインクジェット捺染を実現することができる。
【0024】
本発明に係るインクジェット用インクにおいては、溶媒Aと水の混合比率は、25℃で溶媒Aと水とが完全に相溶する条件であることが好ましい。
【0025】
〔水性染料〕
本発明に係るインクには、上記説明した各溶媒と共に、色材として水性染料を含有することを特徴とする。
【0026】
本発明に係る水性染料としては、更には、反応性染料、直接染料または酸性染料であることが好ましい。本発明においては、布帛が綿、絹等の素材の場合は反応性染料から構成されるインクが好ましく用いられ、ナイロン、羊毛、絹、レーヨン等の素材の場合は酸性染料から構成されるインクが好ましく用いられる。
【0027】
本発明に好ましい酸性染料の具体的化合物を以下に示す。ただし、これらに例示した化合物に限定されるものではない。
【0028】
本発明に好ましい酸性染料は、
C.I.Acid Yellow1、3、6、11、17、18、19、23、25、36、38、40、40:1、42、44、49、59、59:1、61、65、67、72、73、79、99、104、159、169、176、184、193、200、204、207、215、219219:1、220、230、232、235、241、242、246、
C.I.Acid Orange3、7、8、10、19、22、24、51、51S、56、67、74、80、86、87、88、89、94、95、107、108、116、122、127、140、142、144、149、152、156、162、166、168、
C.I.Acid Red1、6、8、9、13、18、27、35、37、52、54、57、73、82、88、97、97:1、106、111、114、118、119、127、131、138、143、145、151、183、195、198、211、215、217、225、226、249、251、254、256、257、260、261、265、266、274、276、277、289、296、299、315、318、336、337、357、359、361、362、364、366、399、407、415、447、
C.I.Acid Vioret 17、19、21、42、43、47、48、49、54、66、78、90、97、102、109、126、
C.I.Acid Blue1、7、9、15、23、25、40、61:1、62、72、74、80、83、90、92、103、104、112、113、114、120、127、127:1、128、129、138、140、142、156、158、171、182、185、193、199、201、203、204、205、207、209、220、221、224、225、229、230、239、258、260、264、277:1、278、279、280、284、290、296、298、300、317、324、333、335、338、342、350、
C.I.Acid Green9、12、16、19、20、25、27、28、40、43、56、73、81、84、104、108、109、
C.I.Acid Brown2、4、13、14、19、28、44、123、224、226、227、248、282、283、289、294、297、298、301、355、357、413、
C.I.Acid Black1、2、3、24、24:1、26、31、50、52、52:1、58、60、63、63S、107、109、112、119、132、140、155、172、187、188、194、207、222
本発明に好ましい反応性染料の具体的化合物を以下に示す。ただし、これらに例示した化合物に限定されるものではない。
【0029】
C.I.Reactive Yellow2、3、7、15、17、18、22、23、24、25、27、37、39、42、57、69、76、81、84、85、86、87、92、95、102、105、111、125、135、136、137、142、143、145、151、160、161、165、167、168、175、176、
C.I.Reactive Orange1、4、5、7、11、12、13、15、16、20、30、35、56、64、67、69、70、72、74、82、84、86、87、91、92、93、95、107、
C.I.Reactive Red2、3、3:1、5、8、11、21、22、23、24、28、29、31、33、35、43、45、49、55、56、58、65、66、78、83、84、106、111、112、113、114、116、120、123、124、128、130、136、141、147、158、159、171、174、180、183、184、187、190、193、194、195、198、218、220、222、223、226、228、235、
C.I.Reactive Violet1、2、4、5、6、22、23、33、36、38、
C.I.Reactive Blue2、3、4、7、13、14、15、19、21、25、27、28、29、38、39、41、49、50、52、63、69、71、72、77、79、89、104、109、112、113、114、116、119、120、122、137、140、143、147、160、161、162、163、168、171、176、182、184、191、194、195、198、203、204、207、209、211、214、220、221、222、231、235、236、
C.I.Reactive Green8、12、15、19、21、
C.I.Reactive Brown2、7、9、10、11、17、18、19、21、23、31、37、43、46、
C.I.Reactive Black5、8、13、14、31、34、39等が挙げられる。
【0030】
本発明に好ましい直接染料の具体的化合物を以下に示す。ただし、これらに例示した化合物に限定されるものではない。
【0031】
C.I.Direct Yellow8、9、10、11、12、22、27、28、39、44、50、58、86、87、98、105、106、130、137、142、147、153、
C.I.Direct Orange6、26、27、34、39、40、46、102、105、107、118、
C.I.Direct Red2、4、9、23、24、31、54、62、69、79、80、81、83、84、89、95、212、224、225、226、227、239、242、243、254、
C.I.Direct Violet9、35、51、66、94、95、
C.I.Direct Blue1、15、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、160、168、189、192、193、199、200、201、202、203、218、225、229、237、244、248、251、270、273、274、290、291、
C.I.Direct Green26、28、59、80、85、
C.I.Direct Brown44、44:1、106、115、195、209、210、212:1、222、223、
C.I.Direct Black17、19、22、32、51、62、108、112、113、117、118、132、146、154、159、169、
〔その他の添加剤〕
インクの粘度や水性染料を安定に保つため、あるいは発色を良くするために、インク中に無機塩を添加しても構わない。無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫化マグネシウム等が挙げられる。
【0032】
インクの長期保存安定性を保つため、防腐剤、防黴剤をインク中に添加しても構わない。防腐剤、防黴剤としては、芳香族ハロゲン化合物(例えば、Preventol CMK)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(例えば、PROXEL GXL)などが挙げられる。
【0033】
本発明に係るインクジェット捺染においては、高温蒸熱法で染色する際に用いる布帛には、染着助剤が含まれていることが好ましい。染着助剤は捺染布を蒸熱する際に布状に凝縮した水と共融混合物を作り、再蒸発する水分の量を抑え、昇温時間を短縮する作用がある。更にこの共融混合物は繊維上の染料を溶解し染料の繊維への拡散速度を助長する作用がある。染着助剤としては尿素が挙げられる。
【0034】
《脱気処理》
本発明のインクジェット記録方法においては、インクジェット用インクを、中空糸膜による脱気処理を施し、溶存酸素濃度を2ppm以下とした後、ライン型のインクジェット記録ヘッドから吐出することが好ましい。
【0035】
本発明において、超音波による脱気処理と中空糸膜による脱気処理の順序は、特に制限はないが、下記の理由から、はじめに中空糸膜による脱気処理を行った後、超音波による脱気処理を施すことが、本発明の効果をより奏する点で好ましい。
【0036】
本発明に係る脱気処理に関する作用、機構等については、現段階では全て明確にはなっていないが、以下のように推定される。
【0037】
第1段階で中空糸膜による脱気処理を行うことにより、インク中に溶解している気体や溶媒中に存在する微小気泡(気泡核と呼ばれている)を除去することができる。
【0038】
この様な状態において、第2段階で超音波による脱気処理を行うことにより、インク液全体に超音波振動が付与されることにより、気泡核が、合一及び離脱して、気液界面に浮上、あるいは溶媒中に溶解して、気泡が消滅すると推定している。
【0039】
本発明に係るインクにおいて、中空糸膜モジュールを用いた脱気処理フローとしては、例えば、モジュール端部のインク供給口より中空糸膜の内側にインクを供給しモジュール側壁のガス脱気口より吸引して中空糸膜の外側を10KPa以下の減圧にすると共に膜を透過したインク中の溶存ガスを排出し、脱気されたインクはモジュールの他方の端部のインク出口より出る。この中空糸膜モジュールを用いての脱気処理は、中空糸膜の外側にインクを供給し内側を減圧するようにすることもできる。本発明に使用される中空糸膜の脱気モジュールとしては、市販のものが利用可能であり、例えば、三菱レイヨン(株)MHFシリーズ、大日本インキ化学工業(株)SEPARELシリーズ等が挙げられる。
【0040】
本発明に係るインクにおいては、インク中の溶存酸素濃度を2ppm以下とすることが好ましい。本発明でいう溶存空気濃度は、インク中の溶存酸素濃度を測定し、空気中の酸素割合を基に求めることができる。
【0041】
溶存酸素濃度を測定する方法としては、例えば、オストワルド法(実験化学講座1基本操作[I]、241頁、1975年、丸善 参照)や、マススペクトル法で測定する方法や、ガルバニ電池型やポーラログラフ型などの簡便な酸素濃度計や比色分析法を用いて測定することができる。また、溶存酸素濃度は市販の溶存酸素濃度計(東亜電波工業(株)製DO−30A型)を用いても、簡便に測定することができる。
【0042】
本発明において、インク中の溶存酸素濃度を2ppm以下であることが好ましい態様の1つであるが、より好ましくは0〜2ppm、特に好ましくは0〜1ppmである。インク中の溶存酸素濃度が2ppmを超えると、インク吐出時にキャビテーションが発生し易くなるため好ましくない。
【0043】
本発明に係るインクにおいて、本発明で規定する溶存酸素濃度を2ppm以下とする方法に関しては特に制限はないが、上記説明した中空糸膜による脱気処理過程での減圧度、あるいはインク液の処理速度(ml/min)を適宜選択することにより達成することができる。
【0044】
本発明に係るインクにおいて、超音波による脱気処理で用いることのできる超音波処理装置としては、特に限定されないが、例えば、(株)日本精機製作所製の循環式RUS−600T(周波数20kHz、最大出力600W)、(株)ブランソン製の連続式モデル900型(周波数20kHz、最大出力900W)等が使用可能である。
【0045】
本発明において、超音波の強度を制御する処理条件、例えば、周波数、振幅、照射エネルギー等の条件を、前述のごとく色材に超音波振動が付与されることにより、色材表面に付着している気泡核が、合一及び離脱して、気液界面に浮上、あるいは溶媒中に溶解する最適条件に設定し、かつ色材粒子が分散、解膠、凝集等により粒径変化を起こさない条件とする必要がある。
【0046】
従って、周波数としては、好ましくは30kHz以下であり、より好ましくは10〜30kHzの範囲である。周波数が30KHzを超えると、色材粒子に対する凝集作用が強くなり、分散性が劣化するため好ましくない。
【0047】
また、振幅についても、大きいほどキャビテーション圧が高いため、一般的な振幅範囲としては20〜60μmであることが好ましい。
【0048】
また、照射エネルギーとしては、1×10〜1×10Jであることが好ましく、更には2×10〜8×10Jであることが好ましい。照射エネルギーが1×10J未満であると気泡核を除去する能力が不十分であり、逆に1×10Jを超えると温度上昇が起こり凝集を引き起こすため好ましくない。
【0049】
《インクジェットプリンタ》
本発明のインクジェット記録方法においては、ライン型のインクジェット記録ヘッドを備えたインクジェットプリンタにより、10kHz以上の速度、20pl以上、50pl以下のインク液滴量の条件で、本発明に係るインクジェット用インクを布帛上に吐出して画像形成を行うことを特徴とする。
【0050】
本発明のインクジェット記録方法で使用するインクジェット記録ヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。又、吐出方式としては、電気−機械変換方式(シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(スパークジェット型等)等を具体的な例として挙げることができるが、何れの吐出方式を用いても構わない。
【0051】
又、印字方式としては、ラインヘッド方式を用いることを特徴とする。
【0052】
インクジェットプリンタの記録方式としては、主にシリアルヘッド方式とラインヘッド方式が知られているが、近年、記録速度が向上が求められており、高速印字適性を有するインクジェットプリンタが望まれている。一般に、シリアルヘッド方式を用いたプリンタでは、ヘッドを往復させる必要があるため、記録速度の向上に限界がある。これに対し、記録媒体幅の長さを有するラインヘッド方式であれば、ヘッドを固定できるため、印字速度は飛躍的に向上できる。
【0053】
ラインヘッド方式とは、固定したインクジェット記録ヘッドと布帛を副走査方向(移動方向)へ相対的に移動させることにより印画を行う方法である。すなわち、布帛に画像記録するインクジェット捺染に用いるインクジェットプリンタは、ラインヘッド方式のインクジェット記録ヘッドを、布帛の全幅をカバーするようにして、吐出するインクの種類に応じて複数個、固定配置されている。
【0054】
この様なラインヘッド方式のインクジェット記録ヘッドより、本発明に係るインクジェット用インクを吐出する条件としては、高精細な画像を得るため、ノズル径が10〜50μmのインクジェット記録ヘッドを用いて記録することが好ましい。粒状性を高めるためにはより小さい方が好ましいが、液滴体積が小さくなりすぎて気流の影響を受けるため、10〜40μmの範囲であることが特に好ましい。
【0055】
インクジェットヘッド駆動装置の駆動周波数は、高速印字特性を実現する観点から、15kHz以上であることを特徴とするが、20kHz以上が好ましく、30kHz以上、100kHz以下であることが、インクの目詰まりを防止する上で更に好ましい。同様な理由からインク吐出速度は6m/s以上が好ましく、8m/s以上、50m/s以下であることが更に好ましい。
【0056】
本発明のインクジェット記録方法において、インク飛翔時の液滴体積としては、滲み耐性及び鮮鋭性の向上に観点より、10pl以上、50pl以下とすることを特徴とする。
【0057】
《インクジェット捺染》
本発明のインクジェット記録方法を適用するインクジェット捺染において、用いることのできる布帛は、特に限定されるものではなく、綿、絹、羊毛、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、アクリル系繊維等種々の繊維素材が挙げられ、又、これらの混紡、交織物、不織布等のものであってもよい。
【0058】
本発明に係るインクジェット捺染においては、均一な染色物を得るために布帛に付着した不純物や汚れの除去を行なうことが好ましい(精練工程)。
【0059】
また、にじみ防止効果のため、前処理剤をパッド法、コーティング法、スプレー法などで付与せしめるのが好ましい(前処理工程)。その後、水性染料で染色することが可能な繊維が含有されている布帛上に、先に述べた構成のインクを用いてインクジェット記録方式で画像を形成した後(インク付与工程)、インクが付与されている布帛を熱処理し(発色工程)、更に熱処理された布帛を洗浄すること(洗浄工程)によって布帛への捺染が完了し、捺染物が得られる。
【0060】
本発明に係るインクジェット捺染の場合、精練工程として、布帛繊維に付着した天然不純物(油脂、ロウ、ペクチン質、天然色素等)、布帛製造過程で用いた薬剤の残留分(のり剤等)、よごれなどを洗浄しておくことが望ましい。洗浄に用いられる洗浄剤としては水酸化ナトリウム,炭酸ナトリウムといったアルカリ、陰イオン性界面活性剤,非イオン性界面活性剤といった界面活性剤、酵素等が用いられる。
【0061】
前処理としては、水溶性高分子類を布帛に前処理するなどの公知の方法から繊維素材やインクに適した方法を適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。例えば、水溶性金属塩、ポリカチオン化合物、水溶性高分子、界面活性剤及び撥水剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの物質が0.2〜50質量%付与された布帛に対して使用すれば、高度なにじみ防止が可能であり、高精細な画像を布帛にプリントすることができ好ましい。
【0062】
また、酸性染料を用いた場合の好ましい態様によれば、前処理剤は蒸熱により酸を発生するpH調整剤を含んでなることが好ましい。pH調整剤の好ましい例としては、酸アンモニウム塩、例えば硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、または第二リン酸ソーダが挙げられる。これらのpH調整剤を添加することで、色相の安定化と染着性とを向上させることが出来るとの利点が得られる。これらの添加量は染料種等を考慮して適宜決定されてよいが、0.2〜5質量%程度が好ましく、より好ましくは0.5〜3質量%程度である。
【0063】
発色工程とは、プリント後布帛表面に付着したのみで、十分布帛に吸着・固着されていないインク中の染料を布帛に吸着・固着させることによりそのインク本来の色相を発現させる工程である。その方法としては、蒸気によるスチーミング、乾熱によるベーキング、サーモゾル、加熱蒸気によるHTスチーマー、加圧蒸気によるHPスチーマーなどが利用される。それらはプリントする素材、インクなどにより適宜選択される。また、印字された布帛は直ちに加熱処理しても、しばらくおいてから加熱処理しても用途に合わせて乾燥・発色処理すればよく、本発明においてはいずれの方法を用いてもよい。
【0064】
加熱処理後は洗浄工程が必要である。なぜなら染着に関与しなかった染料が残留することで、色の安定性が悪くなり堅牢度が低下するからである。
【0065】
また、布帛に施した前処理物を除去することも必要であり、そのままにしておくと堅牢性の低下ばかりでなく布帛が変色する。
【0066】
そのため除去対象物や目的に応じた洗浄が必須である。その方法は、プリントする素材、インクにより選択され、例えばポリエステルの場合一般的には、苛性ソーダ、界面活性剤、ハイドロサルファイトの混合液により処理するものである。その方法は、通常オープンソーパーなどの連続型や液流染色機などによるバッチ型で実施されるもので、本発明においては、いずれの方法を用いてもよい。
【0067】
洗浄後は乾燥が必要である。洗浄した布帛を絞ったり脱水した後、干したりあるいは乾燥機、ヒートロール、アイロン等を使用して乾燥させる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0069】
実施例1
《インクの調製》
〔インク1の調製〕
下記各添加剤を順次混合、溶解して、反応性染料インクであるインク1を調製した。
【0070】
RY95:C.I.リアクティブイエロー95 11部
DPGmME:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 68.5部
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.1部
水 20.5部
次いで、上記調製したインク1に、脱気処理を施した。インク1に、中空糸膜モジュール(大日本インキ化学工業製 SEPAREL PF−004D)を用いて、8kPaの圧力下で、インク原液の流量1L/minで脱気処理を行った。次いで、(株)日本精機製作所製の超音波ホモジナイザー 循環式RUS−600T(周波数20kHz、出力600W)を用いて、照射エネルギー3.6×10J、流量1L/minで1パス処理した。上記処理を行った後、インク1をインクカートリッジに充填した。
【0071】
〔インク2〜11の調製〕
上記インク1の調製において、インクの調製に用いた溶媒Aであるジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGmME)に代えて、表1に記載の同量の各溶媒Aを用いた以外は同様にして、インク2〜11を調製した。
【0072】
〔インク12〜16の調製〕
上記インク1の調製において、溶媒Aであるジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGmME)と水の添加量を、表1に記載のように変更した以外は同様にして、インク12〜16を調製した。
【0073】
〔インク17の調製〕
上記インク1の調製において、インク調製後の脱気処理を行わなかった以外は同様にして、インク17を調製した。
【0074】
〔インク18、19の調製〕
上記インク1の調製において、反応性染料として、RY95(C.I.リアクティブイエロー95)に代えて、それぞれRR24(C.I.リアクティブレッド24)、RB72(C.I.リアクティブブルー72)に変更し、各反応性染料の添加量及び溶媒Aであるジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGmME)と水の添加量を、表1に記載のように変更した以外は同様にして、インク18、19を調製した。
【0075】
〔インク20、21の調製〕
上記インク18、19の調製において、インク調製後の脱気処理を行わなかった以外は同様にして、インク20、21を調製した。
【0076】
〔インク22〜24の調製〕
上記インク14〜16の調製において、反応性染料であるRY95(C.I.リアクティブイエロー95)に代えて、酸性染料としてAY74(C.I.アシッドイエロー74)をそれぞれ用いた以外は同様にして、インク22〜24を調製した。
【0077】
【表1】

【0078】
なお、表1に略称で記載した各添加剤の詳細は、以下の通りである。
【0079】
〈反応性染料〉
RY95:C.I.リアクティブイエロー95
RR24:C.I.リアクティブレッド24
RB72:C.I.リアクティブブルー72
〈酸性染料〉
AY74:C.I.アシッドイエロー74
〈溶媒〉
DPGmME:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
DPGmEE:ジプロピレングリコールモノエチルエーテル
TPGmME:トリプロピレンプリコールモノメチルエーテル
DEGmBE:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
2,4−PDO:2−メチル−2,4−ペンタンジオール
EGmBE:エチレングリコールモノブチルエーテル
DEG:ジエチレングリコール
1,5−PDO:1,5−ペンタンジオール
2−PDN:2−ピロリドン
EtOH:エタノール
また、表1に記載の溶媒Aの25℃における各特性値(蒸気圧、表面張力値、粘度)は、「新版 溶剤ポケットブック」有機合成化学協会編、オーム社(1994年)に記載の各データ値より引用した。
【0080】
《インクジェット画像記録》
〔記録方法1〕
上記調製したインク1を装填したコニカミノルタIJ株式会社製のラインヘッド方式のピエゾ型インクジェット記録ヘッド(256ノズル)を、下記布帛の搬送方向に対し直角に固定して配置し、駆動周波数20kHz、液滴速度が7m/s、液滴量35plとなる駆動条件で、下記布帛に3cm角の各ベタ画像及び6ポイントMS明朝体文を印字した。次いで、布帛を180℃で10分間加熱処理を行い、水洗、乾燥した。
【0081】
布帛は、シルケット加工した綿布に20g/Lのアルギン酸ナトリウム、30g/Lの炭酸ナトリウム、及び100g/Lの尿素を含む液体でパッド塗布し(絞り率:70%)、乾燥した綿布を用いた。
【0082】
〔記録方法2〜24〕
上記記録方法1において、充填するインク1を、それぞれインク2〜24に変更した以外は同様にして、布帛上に印字を行い、これを記録方法2〜24とした。
【0083】
〔記録方法25〜30〕
上記記録方法1において、インクジェット記録ヘッドの印字条件(駆動周波数、液滴量)を表2に記載のように変更した以外は同様にして印字を行い、これを記録方法25〜30とした。
【0084】
〔記録方法31〜36〕
上記記録方法9において、インクジェット記録ヘッドの印字条件(駆動周波数、液滴量)を表2に記載のように変更した以外は同様にして印字を行い、これを記録方法31〜36とした。
【0085】
《各評価》
〔出射安定性の評価〕
25℃、相対湿度50%の環境下で、上記各条件(インク種、駆動周波数、液滴量)で連続10時間の出射を行った後、各ノズルの出射状態を目視観察し、下記の基準に従って出射安定性を評価した。
【0086】
◎:全ノズルが、安定して出射した
○:1〜3のノズルで曲がり、欠射が認められた
△:4〜7のノズルで曲がり、欠射が認められた
×:8〜12のノズルで曲がり、欠射が認められた
××:13以上のノズルで曲がり、欠射が認められた
〔滲み耐性の評価〕
上記作成した各ベタ画像と白地(未印字部)の領域をルーペで観察し、下記の基準に従って滲み耐性を評価した。
【0087】
◎:画像境界領域で、滲みの発生が全く認められない
○:画像境界領域で、ほぼ滲みの発生が認められない
△:画像境界領域で、弱い滲みの発生が認められるが、実用上許容される品質である
×:画像境界領域で、明らかな滲みの発生が認められる
××:画像境界領域で、強い滲みの発生が認めら、実用に耐えない品質である
〔鮮鋭性の評価〕
上記印字した6ポイントMS明朝体文を目視観察し、下記の基準に従って滲み耐性を評価した。
【0088】
◎:6ポイントMS明朝体文を明瞭に認識できる
○:6ポイントMS明朝体文を容易に認識できる
△:6ポイントMS明朝体文をほぼ認識できる
×:6ポイントMS明朝体文が判別しにくい
××:6ポイントMS明朝体文の判別が困難である
〔裏面描画性の評価〕
上記作成した各ベタ画像の表面(印字面側)の反射濃度と、裏面側反射濃度を、光学濃度計(X−Rite社製938分光濃度計)で測定し、表面側濃度を100%としたときの裏面濃度率を求め、下記の基準に従って裏面描画性を評価した。
【0089】
裏面濃度率(%)=裏面反射濃度/表面反射濃度×100
◎:裏面濃度率が60%以上である
○:裏面濃度率が、50%以上、60%未満である
△:裏面濃度率が、40%以上、50%未満である
×:裏面濃度率が、30%以上、40%未満である
××:裏面濃度率が、30%未満である
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0090】
【表2】

【0091】
表2に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する構成からなるインクを用い、本発明で規定する印字条件で画像形成を行った本発明の記録方法は、比較例に対し、出射安定性に優れ、かつ形成した画像の滲み耐性、鮮鋭性、裏面描画性に優れていることが分かる。その中でも、特に、インクに脱気処理を施すことにより、安定した印字が実現できていることが分かる。
【0092】
また、記録方法22、23は、出射安定性、画像の滲み耐性、鮮鋭性、裏面描画性には良好な結果を示したが、インクジェット捺染法としての生産性が極めて低く、実用上問題が生じた。
【0093】
実施例2
実施例1に記載の反応性染料インク1〜17の調製において、反応性染料であるC.I.リアクティブイエロー95に代えて、C.I.ダイレクトイエロー86、C.I.ダイレクトブルー199、C.I.アシッドイエロー79、C.I.アシッドブルー112、C.I.アッシドレッド289を用いた以外は同様にして各インクを調製し、実施例1に記載の方法と同様の記録方法により、出射安定性、滲み耐性、鮮鋭性及び裏面描画性の評価の評価を行った結果、表1と同様の結果を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃における蒸気圧が133Pa以下で、25℃での表面張力が25mN/m以上、40mN/m以下で、かつ25℃での粘度が1mPa・s以上、50mPa・s以下である溶媒Aを、インク全質量に対し50質量%以上、90質量%未満含有し、水の含有量が10質量%以上、45質量%未満で、かつ色材として水性染料を含有するインクジェット用インクを、ライン型のインクジェット記録ヘッドから10kHz以上の速度で、20pl以上、50pl以下のインク液滴量を吐出させて、布帛に記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項2】
前記インクジェット用インクにおける前記溶媒Aと水の混合比率は、25℃で前記溶媒Aと水とが完全に相溶する条件であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記水性染料が、反応性染料、直接染料または酸性染料であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
前記インクジェット用インクは、中空糸膜による脱気処理を施し、溶存酸素濃度を2ppm以下とした後、前記ライン型のインクジェット記録ヘッドから吐出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2010−23362(P2010−23362A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188339(P2008−188339)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】