説明

インクジェット記録材料およびその製造方法

【課題】水系の顔料インクジェットプリンターで印字してもインク吸収性に優れ、かつ印字後に画像部のひび割れが生じないインクジェット記録材料およびその製造方法を提供する。
【解決手段】支持体上にカチオン性ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコールおよびほう酸またはその塩を含有するインク受容層(ただし、該インク受容層が無機微粒子を含む場合には、無機微粒子の含有量はインク受容層の全固形分に対して5質量%以下である)を有するインクジェット記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録材料およびその製造方法に関し、更に詳しくは、水系の顔料インクジェットプリンターで印字してもインク吸収性に優れ、かつ印字後に画像部のひび割れが生じないインクジェット記録材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像出力方法としてのインクジェット方式は、写真用途等の一般消費者向けだけでなく、産業用途としても広く使用されており、その用途は益々拡大している。
【0003】
一般消費者向けの用途では染料インク、顔料インクの違いはあるものの水系インクが主流である。産業用途ではインクは多岐に渡り、水系インクだけでなく、溶剤系インク、紫外線硬化型インク、ラテックスインクと呼ばれる熱硬化型インク等、多くの種類が用いられている。
【0004】
出力画像の耐候性の観点からは、一般に水系インクよりも非水系インクのほうが優れている。また、非水系インクの中には、記録材料表面で固化するものやインク媒体が揮発性の高いものが多く、記録材料の選択肢は広いというメリットが一般的にある。一方、水系インク用の記録材料は吐出されるインクをすべて吸収する必要があり、使用できる記録材料に制約がある。しかしながら水系インクジェットプリンターは、溶剤インク等では必要な排気装置等の大がかりな設備は必要なく、臭気の問題も特に生じないため作業環境上非常に運用しやすいことが大きな利点である。
【0005】
近年、その水系インクジェットプリンターに白色インクを搭載したプリンターが発売になり、その活用は更に広範囲に渡ることが期待されている。白色インクは、白色の画像を形成するだけでなく、特開2010−221533号公報に挙げられているように、他の色の背景部分に打ち込むことにより画像部分の鮮明さを際立たせる効果がある。上記のような白色インクを搭載した水系インクジェットプリンターは例えば、セイコーエプソン社からMAXART PX−W8000という名称で発売されている。
【0006】
支持体上にインク受容層を設けてなる、上記水系インクジェット記録方式用の記録材料において、インク受容層は2種類に大別される。一方は無機顔料と樹脂バインダーを主成分とする多孔質のインク受容層であり、他方は水溶性ポリマーを主成分とするインク受容層である。
【0007】
前者の多孔質のインク受容層が含有する無機顔料としては、優れた光沢性、写像性および発色性が得られる観点から、平均二次粒子径を500nm以下まで粉砕・分散した気相法シリカや湿式法シリカ等の無機微粒子をインク受容層の顔料成分として用いることが提案されている。気相法シリカの使用例として、例えば特開平10−119423号公報、特開2000−211235号公報、特開2000−309157号公報等が挙げられ、粉砕沈降法シリカの使用例としては、例えば特開平9−286165号公報、特開平10−181190号公報等が挙げられる。また粉砕ゲル法シリカの使用例として例えば特開2001−277712号公報等が挙げられ、シリカ以外の無機顔料については、アルミナやアルミナ水和物を用いた使用例としては例えば特開昭62−174183号公報、特開平2−276670号公報、特開平5−32037号公報、特開平6−199034号公報等に挙げられる。
【0008】
前者のインク受容層は、無機顔料によって形成された空隙にインクを吸収し、後者のインク受容層は、水溶性ポリマーが膨潤することによってインクを吸収する。このようなインク吸収のメカニズムの違いから前者は空隙型(あるいはマイクロポーラス型)、後者は膨潤型(あるいはポリマー型)と呼ばれている。
【0009】
膨潤型のインク受容層は、連続的で均一な被膜となるので、高い光沢度が得られること、インク吸収容量が高くインク打ち込み量を多くできることから画像濃度を高くすることができるということ、使用する素材によっては透明性の高い塗層を得られること、記録材料を鋭角に折り曲げても塗層が割れないといった利点がある一方で、インク吸収速度や印字後の乾燥速度が劣るという問題がある。
【0010】
一方、空隙型のインク受容層はインク吸収速度や印字後の乾燥速度に優れ好ましいが、反面インク吸収容量を超えたインク量を打ち込むとインクが打ち込まれた部分にとどまらず画像が鑑賞に堪え得ないものになってしまうということ、インク受容層を構成している無機微粒子の凝集物どうしが形成している空隙でインクを吸収しているため、粒子径の小さな無機微粒子を使用すると塗層の透明性が向上するがインク吸収性が低下してしまい、塗層の高い透明性と高いインク吸収性の両立が困難であること、塗層が脆弱であるため記録材料を鋭角に折り曲げるとひび割れが生じてしまう等といった問題がある。
【0011】
このようにインク吸収のメカニズムの違いから個々のインク受容層の特性も異なるため、用途によってインク受容層は空隙型と膨潤型とを使い分ける必要がある。上述のように白色インクを他の有色インクと合わせて使用する場合には様々な用途があるが、例えば軟包装フィルムのデザイン構成といった用途が挙げられる。これは、例えばPETボトル飲料用のラベルのデザイン構成に代表されるように、透明性の高い記録材料上に画像を出力しPETボトル等の対象物に巻き付けてそのデザインや見栄えを吟味する用途である。このような軟包装フィルムのデザイン構成では出力物を鋭角に折り曲げて見る場合があることや、記録材料自体に高い透明性が必要であることから膨潤型のインク受容層が適している。
【0012】
膨潤型のインク受容層としては、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等セルロース誘導体、アクリル酸系ポリマー等、種々の親水性ポリマーを含有するインク受容層が提案されている。
【0013】
高いインクジェット適性と同時に耐水性や光沢性に優れたインクジェット記録材料が得られるインクジェット受理剤として例えば特開2007−276392号公報(特許文献1)には、カチオン性ポリウレタン樹脂と、2級アミン類およびエピハロヒドリン類を反応させて得られるカチオン性共重合体とを含有してなるインクジェット受理剤が提案されている。特開2007−168164号公報(特許文献2)には、カチオン性ポリウレタン樹脂と、ケン化度が70モル%〜90モル%のポリビニルアルコールおよび水溶性多価金属塩とを含有してなるインクジェット受理剤が提案されている。特開2009−46780号公報(特許文献3)には、カチオン性ポリウレタン樹脂と水溶性マグネシウム塩およびポリビニルアルコールとを合わせて含有するインクジェット受理剤が提案されている。また、特開2005−74880号公報(特許文献4)には、インク受理層が水性ウレタン樹脂と水性アクリル樹脂からなり、オキサゾリン基を有するポリマーおよびアクリル系の水溶性自己乳化型エポキシ硬化剤を架橋剤として含有しているインクジェット記録シートが提案されている。
【0014】
しかしながら前述の白色インクを他の着色インクと合わせて使用する場合には、印字環境によっては塗層がひび割れるという問題が生じることがわかった。ここでいう印字環境とは、記録材料を印字する際の温度、湿度であり、温湿度が高い条件下で印字した場合に、記録材料によっては印字部分にひび割れが生じてしまう。特に白色インクを使用した場合にこの現象は顕著であり、大きな問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−276392号公報
【特許文献2】特開2007−168164号公報
【特許文献3】特開2009−46780号公報
【特許文献4】特開2005−74880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、水系の顔料インクジェットプリンターで印字してもインク吸収性に優れ、かつ印字後に画像部のひび割れが生じないインクジェット記録材料およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の上記目的は、以下の手段により達成された。
(1)支持体上にカチオン性ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコールおよびほう酸またはその塩を含有するインク受容層(ただし、該インク受容層が無機微粒子を含む場合には、無機微粒子の含有量はインク受容層の全固形分に対して5質量%以下である)を有するインクジェット記録材料。
(2)(1)に記載のインクジェット記録材料の製造方法であって、支持体上に少なくとも2層以上のインク受容層を含有し、支持体に近い側から順に、カチオン性ポリウレタン樹脂とポリビニルアルコールとを合わせて含有する層と、カチオン性ポリウレタン樹脂とポリビニルアルコールおよびほう酸またはその塩とを合わせて含有する層とを逐次塗布する、またはこれらの層を重層塗布することを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法。
(3)(1)に記載のインクジェット記録材料の製造方法であって、支持体上に、カチオン性ポリウレタン樹脂とポリビニルアルコールとを合わせて含有するインク受容層を塗布し、ついでほう酸またはその塩を付与することを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の記録材料、またはその製造方法によれば、水系の顔料インクジェットプリンターで印字してもインク吸収性に優れ、印字部にひび割れが生じないインクジェット記録材料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
ポリウレタン樹脂はポリイソシアネートとポリオールを反応させて得られる。ポリイソシアネートとしては例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、3,3′−ジクロロ−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート等を挙げることができる。これらポリシアネート化合物を単独もしくは2種類以上を合わせて使用してもよい。
【0020】
ポリウレタン樹脂を得る際に用いるポリオールとしては公知のポリオールを用いることができるが、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリアクリレートポリオール等を挙げることができる。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−プロパンジオール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール類、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の3価以上のアルコール類、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ハイドロキノン、またはこれらの化合物のアルキレンオキサイド付加体等のジオール成分と、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロロペンタンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p′−ジカルボン酸、トリメリト酸、トリメシン酸、ひまし油脂肪酸の三量体、または、これらのポリカルボン酸の無水塩もしくはエステル形成性誘導体等のポリカルボン酸成分とから、縮合反応によって得られるポリエステル類、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステル類、これらの共重合ポリエステル類等が挙げられる。
【0021】
本発明に用いられるポリウレタン樹脂はインクの定着性の観点からカチオン性である必要があり、カチオン性ポリウレタン樹脂は公知のものを用いることができる。ポリウレタン樹脂中にカチオン基を導入する方法としては、例えば、後述する鎖伸長剤として用いるポリアミン類の3級アミノ基を酸で中和、または4級化剤で4級化させる方法や、特開2007−168164号公報に記載のように、側鎖に3級アミノ基を含有するポリオールを用い、該3級アミノ基を酸で中和、または4級化剤で4級化させてカチオン化せしめる方法等が挙げられる。側鎖に3級アミノ基を含有するポリオールを用いる場合には、他に3級アミノ基を含有しないポリオールを合わせて用いてもよい。上記の3級アミノ基を中和する際に使用することのできる酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、酪酸、乳酸、りんご酸、クエン酸、酒石酸、マロン酸、アジピン酸等の有機酸類やスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ヒドロキシメタンスルホン酸等の有機スルホン酸類、塩酸、硫酸、硝酸、りん酸、ほう酸、亜りん酸、ふっ酸等の無機酸等が挙げられ、これらを単独、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記の3級アミノ基を4級化する際に使用することのできる4級化剤としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のジアルキル硫酸類や、メチルクロライド、エチルクロライド、ベンジルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、ベンジルブロマイド、メチルヨーダイド、エチルヨーダイド、ベンジルヨーダイド等のハロゲン化アルキル類、メタンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸メチル等のアルキルまたはアリールスルホン酸メチル類、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のエポキシ類等が挙げられる。
【0022】
ポリウレタン樹脂の機械的特性や熱特性等の物性を調整する目的で利用する鎖伸長剤としては、例えば、ポリアミン類や活性水素含有の鎖伸長剤が挙げられる。ポリアミン類の鎖伸長剤としては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のジアミン類、ヒドラジン、N,N′−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン等のヒドラジン類、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類、β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3−セミカルバジド−プロピル−カルバジン酸エステル、セミカルバジド−3−セミカルバジドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等のセミカルバジド類が挙げられる。活性水素含有の鎖伸長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール類、ビスフェノールA、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類および水が挙げられる。
【0023】
本発明におけるカチオン性ポリウレタン樹脂の製造方法については公知の方法を用いることができる。例えば、ポリイソシアネートとポリオール等の原材料を一括で仕込んで反応させる一括式反応方法と、ポリイソシアネートとポリオール等の原材料の一部を分割して仕込んで反応させる逐次式反応方法とが挙げられる。
【0024】
また本発明に用いるカチオン性ポリウレタン樹脂としては、例えばDIC(株)からパテラコールシリーズとして、大原パラヂウム化学(株)からパラサーフUP−28、同UP−36として、また明成化学工業(株)からパスコールJK−830等として市販されているものを入手し、利用することもできる。
【0025】
本発明に用いられるカチオン性ポリウレタン樹脂の固形分塗布量は特に制約はないが、5〜40g/mが好ましく、7〜35g/mが特に好ましい。5g/m以下ではインク吸収性が低下するおそれがあり、40g/mより多くなるとコストが高くなってしまったり、カール性や透明性が悪化したりするおそれがある。
【0026】
インク受容層が含有するポリビニルアルコールは完全または部分ケン化のものがよく、ケン化率70%以上のものが好ましい。平均重合度は200〜5000のものが好ましい。また、カチオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも使用することができ、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコール等がそれである。本発明におけるポリビニルアルコールの添加量はポリウレタン樹脂に対して10〜90質量%が好ましく、18〜75質量%であることが特に好ましい。本発明のインク受容層は上記したカチオン性ポリウレタン樹脂とポリビニルアルコールをそれぞれ混合して塗布液を作製し、これを塗布することで形成してもよいが、例えば、パテラコールEG−4X(DIC(株)製)やパラサーフUP−28(大原パラヂウム化学(株)製)等は、カチオン性ポリウレタン樹脂とポリビニルアルコールが予め混合されているため、これらも好適に用いることができる。また、これら市販品に対し、ポリビニルアルコールやカチオン性ポリウレタン樹脂を追加して用いることもできる。
【0027】
膨潤型の記録材料に顔料インクを用いて画像を出力した際に印字部分にひび割れが発生する理由は以下のように推測される。インク中の溶媒成分は膨潤型のインク受容層中のポリマーが膨潤することにより吸収する。その後の乾燥過程でインク中の溶媒成分を放出する際にインク受容層は収縮する。一方、印字され溶媒成分から分離されたインク中の顔料色剤はインク受容層表面にとどまり画像を形成する。このインク顔料は特に溶媒成分を膨潤により吸収しているわけではないので印字から乾燥の過程において体積変化は生じない。このように画像部分とインク受容層との伸縮率の違いによりひび割れが生じると考えられる。また、インク受容層の伸縮を低減させるためにインク受容層の膨潤を抑制するとインク吸収性が低下するためその調整は非常に困難である。
【0028】
ポリビニルアルコールの架橋剤は数多く存在している。例えば、ほう酸やその塩、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム等のジルコニウム化合物や、乳酸チタン等の水溶性有機チタン化合物、エポキシ系化合物、メチロールメラミン、グリオキザール等の有機架橋剤等が知られている。
【0029】
本発明に用いられるほう酸またはその塩としては、例えば、オルトほう酸、メタほう酸、二ほう酸、四ほう酸、五ほう酸、八ほう酸、ほう砂等が挙げられ、これらを単独もしくは2種類以上を合わせて用いてもよい。インク受容層中のポリビニルアルコールを架橋することによりカチオン性ポリウレタン樹脂の膨潤を適度に抑制することができ印字部のひび割れを抑制しているものと考えられる。その機構から、ほう酸またはその塩は、インク受容層の支持体から最も遠い部分により多く含有されているほうが好ましい。インク受容層中にほう酸またはその塩を均一に存在させると、インク吸収性と画像部のひび割れ抑制の両立が困難となる場合がある。ほう酸またはその塩の好ましい添加量は、ほう酸またはその塩を含有するインク受容層中のポリビニルアルコールに対して15〜65質量%であり、20〜60質量%が特に好ましい。添加量が多くなりすぎるとインク吸収性が低下し、少なすぎるとひび割れ抑制効果が低下する。
【0030】
本発明において、ほう酸またはその塩をインク受容層中の支持体から最も遠い部分により多くに存在させる方法としては、1)カチオン性ポリウレタン樹脂とポリビニルアルコールを含有するインク受容層を2層以上設け、支持体から最も遠い側のインク受容層塗布液にほう酸またはその塩を添加する、2)インク受容層塗布液の上からほう酸またはその塩を付与する、のうちいずれの方法でもよい。上記1)の場合においては、支持体に近い側から順にカチオン性ポリウレタン樹脂とポリビニルアルコールを合わせて含有する層と、カチオン性ポリウレタン樹脂とポリビニルアルコールおよびほう酸またはその塩とを合わせて含有する層とを逐次塗布する、あるいは重層塗布することが望ましい。なお、本発明において逐次塗布とは、多層塗布方法の一つの形態であり、支持体に近い側のインク受容層を塗布、乾燥後、その上に更にインク受容層を塗布し、乾燥させる方式を意味する。また、本発明において重層塗布とは、支持体に近い側のインク受容層が塗布された後、乾燥する前に更にインク受容層を塗布する多層塗布方法を意味する。本発明における重層塗布には、それぞれの層を個別に塗布していく、いわゆるwet on wet方式やすべての層をスライドビード方式等の塗布装置を用いて同時に塗布する重層同時塗布方式等がある。wet on wet方式にて上層を塗布するタイミングは、下層塗布直後、恒率乾燥領域、減率乾燥領域のいずれの場合であってもよい。上記2)の場合においては、カチオン性ポリウレタン樹脂とポリビニルアルコールを合わせて含有する層を塗布した後にほう酸またはその塩を付与することが望ましい。ほう酸またはその塩の付与は、これらを溶解した溶液をインク受容層上に塗布する、スプレー等で吹き付けることで行うことが望ましい。ほう酸またはその塩を付与するタイミングは、インク受容層塗布液の乾燥後でもよいし、インク受容層塗布液が湿潤している未乾燥状態でもよい。また、インク受容層塗布液が未乾燥である場合は、インク受容層塗布液塗布直後、恒率乾燥領域、減率乾燥領域のいずれの場合であってもよい。
【0031】
本発明のインク受容層には、顔料インクの定着性向上、インク吸収性の調整等の目的で水溶性多価金属化合物を含有してもよい。顔料インクの定着性向上に効果がある水溶性多価金属化合物としては水溶性アルミニウム化合物および水溶性ジルコニウム化合物が好ましく利用できる。
【0032】
本発明のインク受容層に使用することができる水溶性ジルコニウム化合物として、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウム八水和物、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム等が挙げられる。これら水溶性ジルコニウム化合物の中でも、酢酸ジルコニウム(酢酸ジルコニル)、オキシ塩化ジルコニウムは特に好ましい。
【0033】
水溶性アルミニウム化合物としては例えば、無機塩としては塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アンモニウムミョウバン等が知られている。更に、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が知られている。
【0034】
これらの水溶性アルミニウム化合物の中でも、インク受容層を形成する塗布液に安定に添加できるものが好ましく、塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が好ましく用いられる。この化合物は、主成分が下記の式1、2または3で示され、例えば[Al(OH)153+、[Al(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
【0035】
[Al(OH)Cl6−n ・・式1
[Al(OH)AlCl ・・式2
Al(OH)Cl(3n−m) 0<m<3n ・・式3
【0036】
これらのものは、多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学工業(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って市販されており、各種グレードのものが容易に入手できる。本発明ではこれらの市販品をそのままでも使用できる。
【0037】
インク吸収性の調整とは、本発明に用いられるポリビニルアルコールの水素結合を適度に阻害することを目的としている。ポリビニルアルコールの水素結合が起こりすぎるとインク吸収性が悪化するおそれがある。一方、水素結合を阻害させすぎると、ポリビニルアルコールのほう酸またはその塩による架橋が起こりにくくなり印字後に画像部にひび割れが生じるおそれがある。本目的に好ましく用いられる水溶性多価金属化合物としては、例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、鉄(II)塩、銅(II)塩、亜鉛塩等の2価の金属塩やアルミニウム塩、クロム塩等の3価の金属塩を用いることができ、中でも、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩が好ましく用いられる。中でも、塩化マグネシウムがより好ましく用いられる。
【0038】
上記した水溶性多価金属化合物の含有量は、インク受容層の固形分塗布量に対して0.1〜12質量%の範囲が好ましい。
【0039】
本発明のインク受容層には、インク吸収性を向上させる目的でゼラチン、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、アクリル酸系ポリマー等の種々の親水性ポリマーを、ひび割れが発生しない範囲で添加することができる。
【0040】
インク受容層は、更に着色染料、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、架橋剤、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤、マット剤等の公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0041】
本発明のインク受容層は、耐折り割れ性や塗層の透明性といった観点から無機顔料を含有していないことが好ましい。無機顔料はマット剤等、必要に応じて含有させることはできるが、その添加量はインク受容層の固形分に対して5質量%以下である必要がある。塗層の透明性は、透明なフィルムベースにインク受容層を塗布し、得られた記録材料のヘイズをヘイズメーター等で測定することで判定できる。ヘイズ値が5%以下である場合は塗層が透明であると考えられる。
【0042】
本発明インク受容層の塗布方法としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、リバースコーター、スライドビードコーター、スライドカーテンコーター等のいずれの方法であってもよい。またインク受容層やその他の層等、2層以上を設ける場合には、スライドビードコーターやスライドカーテンコーター等による多層塗布方法が好ましく用いられる。
【0043】
本発明のインクジェット記録材料の支持体としては、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙等の吸収性支持体や、基紙の少なくとも一方の面を樹脂で被覆した樹脂被覆紙や樹脂フィルム等の非吸収性支持体が挙げられ、耐コックリング性の観点から非吸収性支持体であることが好ましく、特にヘイズ6%以下の樹脂フィルムが好ましい。これらの支持体の厚みは15〜350μm、好ましくは20〜300μmのものが用いられる。
【0044】
本発明のインクジェット記録材料のインク吸収性を有する側と支持体に対して反対側には、カール防止や印字直後に重ね合わせた際のくっつきやインク転写を更に向上させるために種々の種類の裏塗り層を設けてもよい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限定されるものではない。なお特に断らない限り、部および%は固形分での質量部および質量%を示す。
【0046】
(実施例1)
下記組成のインク受容層塗布液1を作製した。ついで、膜厚100μm、ヘイズ2.8%のポリエチレンテレフタレート製支持体上に、インク受容層塗布液1を固形分塗布量が15g/mとなるようにスライドビードコーターにて塗布した後、50℃の風を吹き付けて乾燥し実施例1の記録材料を得た。
【0047】
<インク受容層塗布液1>
パテラコールEG−4X 100部
(カチオン性ポリウレタン:ポリビニルアルコール:塩化マグネシウム=100:57:3.1)
ほう酸 9部
球状シリカマット剤(平均粒子径20μm) 0.4部
エチルアルコール 塗液質量に対して5%
固形分濃度が11%になるように水にて調整した。
【0048】
(実施例2)
実施例1で用いた支持体上に、支持体に近い順から下記組成のインク受容層塗布液2、ついで実施例1で用いたインク受容層塗布液1を固形分塗布量がそれぞれ12.5g/mおよび2.5g/mとなるようにスライドビードコーターにて重層塗布した後、50℃の風を吹き付けて乾燥し実施例2の記録材料を得た。
【0049】
<インク受容層塗布液2>
パテラコールEG−4X 100部
エチルアルコール 塗液質量に対して5%
固形分濃度が12%になるように水にて調整した。
【0050】
(実施例3)
実施例2において、インク受容層塗布液1を下記組成のインク受容層3に変更した以外は実施例2と同様にして実施例3の記録材料を得た。
【0051】
<インク受容層塗布液3>
パテラコールEG−4X 100部
ほう酸 18部
球状シリカマット剤(平均粒子径20μm) 0.4部
エチルアルコール 塗液質量に対して5%
固形分濃度が10%になるように水にて調整した。
【0052】
(実施例4)
実施例1において使用した支持体上に、下記インク受容層塗布液4を固形分塗布量が15g/mとなるようにスライドビードコーターにて塗布した後、50℃の風を吹き付けて乾燥し中間工程品4を得た。ついで下記組成の上塗り層塗布液1を中間工程品4上にバーコーターにて固形分塗布量が1g/mとなるように塗布後、50℃の風を吹き付けて乾燥し、実施例4の記録材料を得た。
【0053】
<インク受容層塗布液4>
パテラコールEG−4X 100部
球状シリカマット剤(平均粒子径20μm) 0.4部
エチルアルコール 塗液質量に対して5%
固形分濃度が12%になるように水にて調整した。
【0054】
<上塗り層塗布液1>
ほう酸 100部
エチルアルコール 塗液質量に対して10%
固形分濃度が5%になるように水にて調整した。
【0055】
(実施例5)
実施例1において使用した支持体上に、支持体から近い順に上記インク受容層塗布液4、ついで上塗り層塗布液1をそれぞれの固形分塗布量が15g/mと1g/mとなるようにスライドビードコーターにて重層同時塗布後、50℃の風を吹き付けて乾燥し実施例5の記録材料を得た。
【0056】
(実施例6)
実施例2において、インク受容層塗布液2を下記組成のインク受容層塗布液5に変更し、合わせてインク受容層塗布液1を下記組成のインク受容層塗布液6に変更した以外は実施例2と同様にして実施例6の記録材料を得た。
<インク受容層塗布液5>
パテラコールIJ−21(カチオン性ポリウレタン樹脂) 100部
ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500) 60部
エチルアルコール 塗液質量に対して5%
固形分濃度が9%になるように水にて調整した。
【0057】
<インク受容層塗布液6>
パテラコールIJ−21 100部
ほう酸 9部
ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500) 67部
球状シリカマット剤(平均粒子径20μm) 0.4部
エチルアルコール 塗液質量に対して5%
固形分濃度が8%になるように水にて調整した。
【0058】
(実施例7)
実施例2において、インク受容層塗布液2を下記組成のインク受容層塗布液7に変更し、合わせてインク受容層塗布液1を下記組成のインク受容層塗布液8に変更した以外は実施例2と同様にして実施例7の記録材料を得た。
<インク受容層塗布液7>
パテラコールIJ−70(カチオン性ポリウレタン樹脂) 100部
ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500) 60部
エチルアルコール 塗液質量に対して5%
固形分濃度が9%になるように水にて調整した。
【0059】
<インク受容層塗布液8>
パテラコールIJ−70 100部
ほう酸 9部
ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500) 60部
球状シリカマット剤(平均粒子径20μm) 0.4部
エチルアルコール 塗液質量に対して5%
固形分濃度が8%になるように水にて調整した。
【0060】
(比較例1)
実施例4において、上塗り層塗布液1を塗布しない以外は実施例4と同様にして比較例1の記録材料を得た。
【0061】
(比較例2)
実施例2において、インク受容層塗布液1を下記組成のインク受容層塗布液9に変更した以外は実施例2と同様にして比較例2の記録材料を得た。
【0062】
<インク受容層塗布液9>
パテラコールEG−4X 100部
ジルコゾールZA−30(酢酸ジルコニウム、第一稀元素化学工業(株)製) 9部
球状シリカマット剤(平均粒子径20μm) 0.4部
エチルアルコール 塗液質量に対して5%
固形分濃度が11%になるように水にて調整した。
【0063】
(比較例3)
実施例2において、インク受容層塗布液1を下記組成のインク受容層塗布液10に変更した以外は実施例2と同様にして比較例3の記録材料を得た。
【0064】
<インク受容層塗布液10>
パテラコールEG−4X 100部
ジルコゾールZA−30 20部
球状シリカマット剤(平均粒子径20μm) 0.4部
エチルアルコール 塗液質量に対して5%
固形分濃度が11%になるように水にて調整した。
【0065】
(比較例4)
実施例2において、インク受容層塗布液1を下記組成のインク受容層塗布液11に変更した以外は実施例2と同様にして比較例4の記録材料を得た。
【0066】
<インク受容層塗布液11>
パテラコールEG−4X 100部
EX−641(エポキシ樹脂、ナガセケムテックス(株)製) 10部
球状シリカマット剤(平均粒子径20μm) 0.4部
エチルアルコール 塗液質量に対して5%
固形分濃度が11%になるように水にて調整した。
【0067】
(比較例5)
実施例2において、インク受容層塗布液1を下記組成のインク受容層塗布液12に変更した以外は実施例2と同様にして比較例5の記録材料を得た。
【0068】
<インク受容層塗布液12>
パテラコールEG−4X 100部
EX−641 20部
球状シリカマット剤(平均粒子径20μm) 0.4部
エチルアルコール 塗液質量に対して5%
固形分濃度が11%になるように水にて調整した。
【0069】
(比較例6)
実施例2において、インク受容層塗布液1を下記組成のインク受容層塗布液13に変更した以外は実施例2と同様にして比較例6の記録材料を得た。
【0070】
<インク受容層塗布液13>
パテラコールEG−4X 100部
オルガチックスTC−310(乳酸チタン、(株)マツモト交商製) 8部
球状シリカマット剤(平均粒子径20μm) 0.4部
エチルアルコール 塗液質量に対して5%
固形分濃度が11%になるように水にて調整した。
【0071】
(比較例7)
実施例2において、インク受容層塗布液1を下記組成のインク受容層塗布液14に変更した以外は実施例2と同様にして比較例7の記録材料を得た。
【0072】
<インク受容層塗布液14>
パテラコールEG−4X 100部
オルガチックスTC−310 20部
球状シリカマット剤(平均粒子径20μm) 0.4部
エチルアルコール 塗液質量に対して5%
固形分濃度が10%になるように水にて調整した。
【0073】
(比較例8)
<気相法シリカ分散液1の作製>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9000)4部と気相法シリカ(平均一次粒径7nm、BET法による比表面積300m/g)100部を添加し予備分散液を作製した後、高圧ホモジナイザー処理して、固形分濃度20%の気相法シリカ分散液を作製した。気相法シリカの平均二次粒子径は135nmであった。
【0074】
<インク受容層塗布液15>
気相法シリカ分散液 (気相法シリカの固形分として)100部
ほう酸 4部
ポリビニルアルコール 23部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
エチルアルコール 塗液質量に対して5%
塗布液の固形分濃度 13.0%
【0075】
上記インク受容層塗布液15を、実施例1において使用した支持体上に固形分塗布量が25g/mとなるようにスライドビードコーターにて塗布した後、10℃で20秒間冷却後、30〜55℃の加熱空気を吹き付けて乾燥し、比較例8の記録材料を得た。
【0076】
得られた記録材料をセイコーエプソン社製水系顔料インクプリンターMAXART PX−W8000にて印字し評価した。評価の際には、まずEFI社製RIPを用いて得られた実施例1の記録材料のICCプロファイルを作成した。
【0077】
ついで、得られたICCプロファイルを用いて「カラーに白」という、有色インクにて画像を描画後、すぐに白色インクを印字するモードにて、C、M、Y、Bk、R、G、B、C+W(白色インク)、M+W、Y+W、Bk+W、R+W、G+W、B+Wの各ベタ画像を出力した。
【0078】
<インク吸収性の評価>
上記実施例1の記録材料用のICCプロファイルを用いて、上記画像を出力しインクがあふれているかどうかを目視にて確認し、下記基準にて評価した。
◎:インクあふれがない
○:R+W、G+W、B+Wでわずかにモットリングが見られるが実用上問題ない
△:R+W、G+W、B+Wで明瞭にモットリングが見られ実用上問題
×:有色インク+白色インクの部分でモットリングが見られインク吸収性が良くない
【0079】
<印字部のひび割れの評価>
上記画像を23℃50%R.H.にて印字し、印字後2分以内に50℃80%R.H.の雰囲気下にて1時間静置した。その後23℃50%R.H.にて24時間乾燥し画像部のひび割れを目視にて観察し、下記基準にて評価した。
○:画像部にひび割れがない
×:画像部にわずかでもひび割れがある
【0080】
<ヘイズの測定>
スガ試験機(株)製ヘーズコンピューターHZ−2を用いて得られた記録材料のヘイズを測定した。
【0081】
【表1】

【0082】
表1から明らかなように、本発明によれば水系の顔料インクジェットプリンターで印字してもインク吸収性に優れ、印字部にひび割れが生じないインクジェット記録材料を得ることができる。また、本発明のインクジェット記録材料は透明性が極めて高く、白色インクを用いた記録物を軟包装材料の出力校正等の用途に利用する際には好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にカチオン性ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコールおよびほう酸またはその塩を含有するインク受容層(ただし、該インク受容層が無機微粒子を含む場合には、無機微粒子の含有量はインク受容層の全固形分に対して5質量%以下である)を有するインクジェット記録材料。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット記録材料の製造方法であって、支持体上に少なくとも2層以上のインク受容層を含有し、支持体に近い側から順に、カチオン性ポリウレタン樹脂とポリビニルアルコールとを合わせて含有する層と、カチオン性ポリウレタン樹脂とポリビニルアルコールおよびほう酸またはその塩とを合わせて含有する層とを逐次塗布する、またはこれらの層を重層塗布することを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のインクジェット記録材料の製造方法であって、支持体上に、カチオン性ポリウレタン樹脂とポリビニルアルコールとを合わせて含有するインク受容層を塗布し、ついでほう酸またはその塩を付与することを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法。

【公開番号】特開2012−171270(P2012−171270A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36891(P2011−36891)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】