説明

インクジェット記録材料

【課題】白紙部の黄変が少ないインクジェット記録材料を提供する。
【解決手段】支持体上に、少なくとも一方の表面にサブミクロン顔料、バインダー、着色剤を含有するインク受容層を有するインクジェット記録材料において、該インクジェット記録材料のCIE Lab(L表色系)で規定されるb値をb(A)とし、該インクジェット記録材料のインク受容層から該着色剤を除いて得られる記録材料を、キセノン光照射試験機にて照射した際の照射後のb値をb(B)としたとき、b(A)が、b(B)と、式|b(A)−b(B)|≦1.5の関係を満足することを特徴とするインクジェット記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録材料に関するものであり、さらに詳しくは、支持体上に、少なくとも一方の表面にサブミクロン顔料、バインダー、着色剤を含有するインク受容層を塗工してなるインクジェット記録材料であって、白紙部の耐黄変性に優れたインクジェット記録材料に関する。さらに好適には、印刷校正に用いる校正用インクジェット記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンターやプロッターの目ざましい進歩により、フルカラーでしかも高精細な画像が容易に得られるようになってきた。
【0003】
インクジェット記録方式は、種々の作動原理によりインクの微小液滴を飛翔させて紙等の記録材料に付着させ、画像・文字等の記録を行うものである。インクジェット記録方式はコンピューターにより作成した文字や各種図形等の画像情報のハードコピー作成装置として、種々の用途において近年急速に普及している。特に多色インクジェット記録方式により形成されるカラー画像は製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画に比較しても遜色のない記録を得ることが可能であり、さらに作成部数が少ない用途においては、印刷技術や写真技術によるよりも安価で済むことから広く応用されている。
【0004】
近年、インクジェット記録方式によって印刷されたインクジェット記録材料を使用して、印刷仕上がりをシミュレーションする印刷校正用途に利用することも多くなってきた。最近のインクジェットプリンターでは、印刷校正用専用機とした製品も市場に出てきており、それに対応したインクジェット記録材料の製品化が望まれてきた。このような印刷校正に利用されるインクジェット記録材料は、校正の対象となる校正対象印刷用紙の色相や質感を忠実に再現することが重要であり、特に印刷仕上がり色を校正するために、インクジェット記録材料の色相を校正対象印刷用紙の色相に近似させることが最も重要である。
【0005】
そのため、このようなインクジェット記録材料は蛍光染料、着色染料、あるいは着色顔料等の色材を用い、インク受容層の色相を調整することが一般的であり、特に校正用インクジェット記録材料については色相、光沢度、及び坪量を校正対象印刷用紙に近似させることにより、校正用の記録材料として違和感をなくすことにつとめている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ただし、上記のようにして色相、光沢度、及び坪量を校正対象印刷用紙に近似させたとしても、日光や紫外線、酸化性ガス等の暴露により白紙部の黄変が発生するという問題があった。
【0007】
一方、このような白紙部の黄変を改良するために、インク受容層にジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物を有することで白紙部の黄変が少ないインクジェット記録材料(例えば、特許文献2参照)、紫外線吸収性カチオンポリマーを含有するインクジェット記録材料(例えば、特許文献3参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平12−343815号公報
【特許文献2】特開2002−219856号公報
【特許文献3】特開平8−169172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、白紙部の黄変が少ないインクジェット記録材料、及び印刷仕上がりをシミュレーションする校正用インクジェット記録材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題に対し検討を行った結果、課題の解決は、支持体上に、少なくとも一方の表面にサブミクロン顔料、バインダー、着色剤を含有するインク受容層を有するインクジェット記録材料において、該インクジェット記録材料のCIE Lab(L表色系)で規定されるb値をb(A)とし、該インクジェット記録材料のインク受容層から該着色剤を除いて得られる記録材料を、キセノン光照射試験機にて照射した際の照射後のb値をb(B)としたとき、b(A)が、b(B)と、式|b(A)−b(B)|≦1.5の関係を満足することを特徴とするインクジェット記録材料によって達成される。
【0011】
また、該インクジェット記録材料が、印刷仕上がりをシミュレーションする印刷校正に用いられる校正用インクジェット記録材料であることが好ましい。
【0012】
また、該着色剤が、アクリル板もしくは金属板に0.02g/m塗工し、キセノン光照射試験機にて放射強度0.5W/mで120時間照射した際の光学濃度残存率が90%以下であることが好ましい。
【0013】
また、該インクジェット記録材料のインク受容層の色相と、印刷仕上がりをシミュレーションする校正対象印刷用紙の色相との間のCIE Lab(L表色系)で規定される色差が、1.5以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、白紙部の黄変が少ないインクジェット記録材料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のインクジェット記録材料を詳細に説明する。
本発明において、支持体としては通常紙が用いられるが、必要に応じて不織布など紙以外の支持体を用いることもできる。
【0016】
元来、インクジェット記録材料は日光、紫外線に暴露されると白紙部が黄変することが知られており、試験的にはキセノン光照射試験機によって黄変を確認することができる。その原因として、インク受容層を有しないインクジェット記録材料は、支持体の紙に含まれるリグニンの化学変化、サイズ剤として添加されるロジンが鉄と反応することによるロジン酸鉄の生成等により引き起こされる。また、インク受容層を有するインクジェット記録材料の場合は、インク受容層が含有するラテックス、蛍光染料または各種添加剤の分解等により黄変が引き起こされると推測されている。
【0017】
インクジェット記録材料は、インク受容層の白紙部の黄変の抑制や耐光性を得るために、着色剤としてそれ自身の耐光性や保存性に優れるものを含有することが一般的である。しかしながら、本発明は、着色の濃度が光によって比較的減衰傾向を示す着色剤を含有するインク受容層を有するインクジェット記録材料によって、白紙部の黄変の抑制や耐光性を得ることを見出した。
【0018】
本発明に用いられる着色剤は、インクジェット記録材料の色相のb値に寄与する着色剤であることが好ましい。本発明は、色相を調整する際に、b値に寄与する着色剤を光によって着色の濃度が減衰する着色剤を用いることにより、着色剤と日光や紫外線によって引き起こされる黄変によって発生する着色成分との間において、色相がバランスするように制御することによって、外観上のインクジェット受容層の黄変を抑制することができる。
【0019】
本発明のインクジェット記録材料は、本発明のインクジェット記録材料のb値をb(A)とし、本発明のインクジェット記録材料から着色剤を除いて得られる記録材料のキセノン光照射試験後のb値をb(B)としたとき、b(A)が、b(B)と下記の式を満足する。
式 |b(A)−b(B)|≦1.5
これにより、インクジェット記録材料の黄変を抑制することができる。
【0020】
着色剤の含有量は所望の色合いが出せるものであれば特に限定されないが、通常インク受容層中の全固形分重量に対して0.001〜2質量%で使用されることが好ましい。
【0021】
本発明にかかるキセノン光照射試験後のb値は、キセノン光照射試験機を用い、温度40℃湿度50%RH条件下、放射強度0.5W/mで24時間照射した記録材料から測定される値である。また、この条件は黄変の度合いを評価するためのキセノン光照射試験条件とすることができる。
【0022】
本発明にかかる白紙部の黄変度合いの測定及び色差の測定は、色彩色差計を用い得られるCIE Lab(L表色系)の値から計算できる。また、本発明にかかる着色剤の光学濃度残存率は、アクリル板もしくは金属板に0.02g/m塗工し、キセノン光照射試験機によって、放射強度0.5W/mで120時間照射した際、照射前の光学濃度計の値に対する照射後の光学濃度計の値の百分率として求められる。
【0023】
本発明に用いられる着色剤としては、染料系着色剤及び顔料系着色剤が使用できる。好ましくは、光学濃度残存率が90%以下となる着色剤であり、さらに好ましくは、光学濃度残存率が85%以下となる着色剤である。この値以下の着色剤を選択することによって、キセノン光照射試験前後のb値を制御することができ、より好ましく黄変を抑制することができる
【0024】
着色剤の具体例としては、例えば、アゾ化合物(ジチゾン、ホルマザン)、キノン系(ナフトキノン、アントラキノン、アクリドン、アントアントロン、インダントレン、ピレンジオン、ビオラントロン)、キノンイミン(アジン、オキサジン、チアジン)、インジゴ染料(インジルビン、オキシインジゴ、チオインジゴ)、硫化染料、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン(フルオラン、フルオレセイン、ローダミン)、フェロセン、フルオレノン、フルギド、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン(カロテン、マレイン酸誘導体、ピロラゾン、スチルベン、スチリル)、ポリメチン(シアニン、ピリジニウム、ピリリウム、キノリニウム、ローダニン)、キサンテン、アリザリン、アクリジン、アクリジノン、カルボスチリル、クマリン、ジフェニルアミン、キナクリドン、キノフタロン、フェノキサジン、フタロペリノン、ポルフィン、クロロフィル、フタロシアニン、クラウン化合物、スクアリリウム、チアフルバレン、チアゾール、ニトロ染料、ニトロソ染料、発色後のロイコ染料などの染料系着色剤、またはチタンブラック、チタニウムイエロー、群青、紺青、コバルト青、カーボンブラック、鉄黒、酸化亜鉛、酸化コバルト、酸化珪素、水酸化アルミニウム、アゾ顔料、アゾレーキ顔料、フタロシアニン系顔料、建染染料系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、澱粉、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン樹脂などの合成樹脂粒子、シリコーン粒子などの顔料系着色剤及びスチルベン系、ジスチルベン系、ベンゾオキサゾール系、クマリン系、イミダゾール系、ベンゾイミダゾール系、ピラゾリン系などの蛍光染料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
これらの着色剤は、単独あるいは2種類以上併用することもできる。また、混合比率は色斑が生じない限り、いかなる比率で用いても良い。
【0026】
本発明において、インク受容層とは、市販のインクジェットプリンター、インクジェットプロッター及びインクジェットプルーファー等に使用されている染料インクや顔料インクに対して、吸収性、画像再現性、色彩性等の特性に対応する目的で形成された塗工層を言う。
【0027】
本発明のインクジェット記録材料は、校正用に利用する場合、印刷仕上がりをシミュレーションする校正対象印刷用紙の色相に近似させることが好ましい。より具体的には、インクジェット記録材料のインク受容層の色相を、校正対象印刷用紙の色相に近似させることが好ましく、さらには、インクジェット記録材料のインク受容層の色相と、印刷仕上がりをシミュレーションする校正対象印刷用紙の色相との間のCIE Lab(L表色系)で規定される色差が、1.5以下であることが好適である。
【0028】
本発明において、インク受容層は2層以上の積層構成にすることも可能である。その場合、本発明に用いられる着色剤は、いずれのインク受容層に含有させてもかまわないが、支持体から最も近い最下層に含有することが、校正対象印刷用紙の色相、光沢度に近似させやすいため、特に好ましい。
【0029】
本発明に用いられるサブミクロン顔料とは、その分散液を基板上に散布し、走査型電子顕微鏡で観察したときに、観察野において粒子が占める面積の80%以上を、長辺1μm以下の粒子が占める無機顔料を指す。サブミクロン顔料の種類は特に制限されないが、ゲル法シリカ、沈降法シリカ、コロイダルシリカ、気相法シリカ、気相法アルミナ、擬ベーマイト等を例示することができる。特に、該観察野において粒子が占める面積の80%以上を、長辺400nm以下の粒子が占める無機顔料を用いることで、特に高い表面光沢が得られることから好ましい。また、該観察野において粒子が占める面積の80%以上を、長辺100〜400nmの粒子が占める無機顔料を用いると、インク受容層の塗液を塗工後、高速に乾燥してもインク受容層の表面のひびなどの欠陥が生じにくいことからより好ましい。
【0030】
また、サブミクロン顔料としては、比表面積がある程度以上であるものを用いると高い印字濃度が得られることから好ましい。一方比表面積が大きすぎるものを用いるとインクの吸収性が低下することがある。具体的には、BET法による比表面積が60〜600m/gのものを用いることが好ましく、150〜400m/gのものを用いることがより好ましい。なお、このような比表面積を有するサブミクロン顔料は通常、直径数十nm以下の一次粒子が結合し、その内部に空隙を有する高次構造を形成してなる顔料である。
【0031】
本発明に用いられるバインダーとしては、各種公知であるものを使用することができる。例えば、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系化合物、澱粉及びその変性物、ゼラチン及びその変性物、カゼイン、プルラン、アラビアゴム、及びアルブミン等の天然高分子樹脂またはこれらの誘導体、ポリビニルアルコール及びその変性物、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリル共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のラテックスやエマルジョン類、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等のビニルポリマー、ポリエチレンイミン、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及び無水マレイン酸またはその共重合体等を挙げられる。特に好ましくは、ポリビニルアルコールである。
【0032】
本発明に用いられるポリビニルアルコールとしては、70mol%から100mol%までの種々けん化度のポリビニルアルコールを使用できる。またシリル基、カルボキシル基、アミノ基、アセトアセチル基等の種々官能基を導入した、または、エチレン等他の単量体をランダム的、グラフト的、またはブロック的に導入した変性ポリビニルアルコールも使用することができる。
【0033】
ポリビニルアルコールは、その水溶液の粘度が高いものの方が、含有量が比較的少量であっても塗工されたインク受容層の乾燥時に表面のひびが生じにくいので、その含有量を少なくすることができ、結果としてインク吸収性を向上させられるので好ましい。その反面、その水溶液の粘度が高すぎると、インク受容層の塗液の粘度が高くなりすぎて塗工操作が困難になることがあるから好ましくない。具体的には、JIS Z8803に基づき25℃においてウベローデ粘度計を使用して測定される固形分濃度4質量%の水溶液の粘度が15〜400mPa・秒であることが好ましく、30〜200mPa・秒であることがより好ましい。これらのポリビニルアルコールは、その1種を単独で用いても良いし、けん化度、粘度、変性などが異なる2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0034】
本発明に用いられるバインダーの含有量は、少なすぎると乾燥時に表面にひびが生じたり、形成されるインクジェット記録材料の表面強度が不足することがある。一方でバインダーの含有量が多すぎるとインク吸収性が低下することがある。具体的には、バインダーの含有量はサブミクロン顔料の2〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
【0035】
本発明のインク受容層には、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、蛍光増白剤、耐水化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、カチオン性高分子電解質など各種公知の添加剤を添加することもできる。
【0036】
本発明において、インク受容層の塗液を塗工する方法に特に制限はなく、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、リバースロールコーター、コンマコーター(登録商標)、ゲートロールコーター、フィルムトランスファーコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等各種の塗工方法を用いることができる。これらのうち、カーテンコーターは、得られる塗工層の均一性が高く、さらにインク受容層の塗工に際しては塗液の支持体への浸透が生じにくく非常に良好な面質を与えるので、好ましく使用される。本発明のインク受容層の塗液を支持体上に塗工する量に特に制限はないが、インク吸収性と経済性を両立させるためには通常、固形分として10〜25g/mを塗工することが好ましい。ただし、特に多量のインクを吸収することを求められる場合には、30g/m程度を塗工することが好ましいこともある。
【実施例】
【0037】
以下本発明の実施例を示す。また、本実施例中で、特に明示しない限り部は質量部、%は質量%を示すものとする。
【0038】
(実施例1)
[処理組成物1の調製]
水420部に、ホウ酸(HBO)40部とホウ酸塩であるホウ砂(Na・10HO)40部を溶解し、ホウ酸/ホウ砂における質量比が1/1となる合計濃度16質量%の処理組成物1を調製した。
【0039】
[アルミナ水和物ゾルの調製]
水299部に酢酸1部を混合し、擬ベーマイト構造を有するアルミナ水和物(サソール社製Disperal HP14)100部を添加し、そのまま2時間攪拌し、固形分濃度25%のアルミナ水和物ゾルを得た。この分散物を水で100倍に希釈し、ガラス基板上に散布して走査型電子顕微鏡で観察したところ、観察野において粒子が占める面積の80%以上を、長辺100〜400nmの粒子が占めていた。
【0040】
[インク受容層の塗液1の調製]
上記のアルミナ水和物ゾルの100部(固形分25部)に、けん化度88mol%、4%水溶液の25℃における粘度95mPa・秒のポリビニルアルコール(クラレ社製PVA235)の10%水溶液20部(固形分2部)を添加し、着色剤としてYELLOW HG(東洋インキ製造社製)0.01部を添加し、インク受容層の塗液1を調製した。YELLOW HGを、アクリル板に0.02g/m塗工し、キセノン光照射試験機(アトラス社製Ci−4000)にて放射強度0.5W/mで120時間照射した際の光学濃度残存率は85%であった。
【0041】
[インクジェット記録材料の作製]
坪量157g/mの原紙(三菱製紙社製ダイヤフォーム)上に、処理組成物1を、乾燥後の付着量が1g/mとなるようにエアナイフコーターを用いて塗布し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させ、ソフトカレンダーを用いて処理した後、インク受容層の塗液1を、乾燥後の塗工量が20g/mとなるようにカーテンコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させた。さらに得られた塗工紙をソフトカレンダーを用いて処理し、実施例1のインクジェット記録材料を作製した。この際の、インク受容層の色相と、印刷仕上がりをシミュレーションする校正対象印刷用紙の色相との間のCIE Lab(L表色系)で規定される色差を、0.2に調節した。
【0042】
(比較例1)
処理組成物に用いた着色剤のうち、YELLOW HGを用いなかった以外には、実施例1と同様にして比較例1のインクジェット記録材料を作製した。この際の、インク受容層の色相と、印刷仕上がりをシミュレーションする校正対象印刷用紙の色相との間のCIE Lab(L表色系)で規定される色差を、2.2に調節した。
【0043】
比較例1のインクジェット記録材料を、キセノン光照射試験機(アトラス社製Ci−4000)にて、温度40℃湿度50%RH条件下、放射強度0.5W/mで24時間照射した。照射後の色相を、色彩色差計(グレタグマクベス社製、Spectroeye)を用いて測定し、実施例1〜4に対するb(B)値に相当する値を求めた。
【0044】
(実施例2)
処理組成物に用いた着色剤のうち、YELLOW HGをYELLOW 3G(東洋インキ製造社製)に変更した以外には、実施例1と同様にして実施例2のインクジェット記録材料を作製した。本着色剤を、アクリル板に0.02g/m塗工し、キセノン光照射試験機(アトラス社製Ci−4000)にて放射強度0.5W/mで120時間照射した際の光学濃度残存率は91%であった。この際の、インク受容層の色相と、印刷仕上がりをシミュレーションする校正対象印刷用紙の色相との間のCIE Lab(L表色系)で規定される色差を、0.5に調節した。
【0045】
(実施例3)
処理組成物に用いた着色剤のうち、YELLOW HGをYELLOW H2RN−2(東洋インキ製造社製)に変更した以外には、実施例1と同様にして実施例3のインクジェット記録材料を作製した。本着色剤を、アクリル板に0.02g/m塗工し、キセノン光照射試験機(アトラス社製Ci−4000)にて放射強度0.5W/mで120時間照射した際の光学濃度残存率は97%であった。この際の、インク受容層の色相と、印刷仕上がりをシミュレーションする校正対象印刷用紙の色相との間のCIE Lab(L表色系)で規定される色差を、0.4に調節した。
【0046】
(実施例4)
処理組成物に用いた着色剤のうち、YELLOW HGの量を0.005部に変更した以外には、実施例1と同様にして実施例4のインクジェット記録材料を作製した。この際の、インク受容層の色相と、印刷仕上がりをシミュレーションする校正対象印刷用紙の色相との間のCIE Lab(L表色系)で規定される色差を、0.6に調節した。
【0047】
(実施例5)
[インク受容層下層の塗液1の調製]
水350部に四ホウ酸ナトリウム十水和物6部(HBO換算で0.97部)を溶解し、ここに湿式合成シリカ(トクヤマ社製ファインシールX−37B)100部を添加した後ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いで固形分40%のポリウレタン樹脂(DIC社製ハイドランWLS201)100部(固形分40部)を添加・混合し、YELLOW HG(東洋インキ製造社製)0.01部を添加してインク受容層下層の塗液1を得た。
【0048】
[インク受容層上層の塗液1の調製]
上記アルミナ水和物ゾルの100部に、けん化度88mol%、4%水溶液の25℃における粘度95mPa・秒のポリビニルアルコール(クラレ社製PVA235)の10%水溶液70部(固形分7部)を添加し、インク受容層上層の塗液1を調製した。
【0049】
[インクジェット記録材料の作製]
坪量157g/mの原紙(三菱製紙社製ダイヤフォーム)上に、インク受容層下層の塗液1を、乾燥後の塗工量が10g/mとなるようにエアナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させた。次いで得られた塗工紙をソフトカレンダーを用いて処理した後、インク受容層上層の塗液1を、乾燥後の質量が10g/mとなるようにエアナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させた後、得られた塗工紙をソフトカレンダーを用いて処理することで実施例5のインクジェット記録材料を作製した。この際の、インク受容層の色相と、印刷仕上がりをシミュレーションする校正対象印刷用紙の色相との間のCIE Lab(L表色系)で規定される色差を、1.0に調節した。
【0050】
(比較例2)
処理組成物に用いた着色剤のうち、YELLOW HGを用いなかった以外には、実施例5と同様にして比較例2のインクジェット記録材料を作製した。この際の、インク受容層の色相と、印刷仕上がりをシミュレーションする校正対象印刷用紙の色相との間のCIE Lab(L表色系)で規定される色差を、2.4に調節した。
【0051】
比較例2のインクジェット記録材料を、キセノン光照射試験機(アトラス社製Ci−4000)にて、温度40℃湿度50%RH条件下、放射強度0.5W/mで24時間照射した。照射後の色相を、色彩色差計(グレタグマクベス社製、Spectroeye)を用いて測定し、実施例5〜8に対するb(B)値に相当する値を求めた。
【0052】
(実施例6)
インク受容層下層の塗液1に用いた着色剤のうち、YELLOW HGをYELLOW 3G(東洋インキ製造社製)に変更した以外は、実施例5と同様にして実施例6のインクジェット記録材料を作製した。この際の、インク受容層の色相と、印刷仕上がりをシミュレーションする校正対象印刷用紙の色相との間のCIE Lab(L表色系)で規定される色差を、1.2に調節した。
【0053】
(実施例7)
インク受容層下層の塗液1に用いた着色剤のうち、YELLOW HGをYELLOW H2RN−2(東洋インキ製造社製)に変更した以外は、実施例5と同様にして実施例7のインクジェット記録材料を作製した。この際の、インク受容層の色相と、印刷仕上がりをシミュレーションする校正対象印刷用紙の色相との間のCIE Lab(L表色系)で規定される色差を、1.1に調節した。
【0054】
(実施例8)
インク受容層下層の塗液1に用いた着色剤のうち、YELLOW HGの量を0.005部に変更した以外は、実施例5と同様にして実施例8のインクジェット記録材料を作製した。この際の、インク受容層の色相と、印刷仕上がりをシミュレーションする校正対象印刷用紙の色相との間のCIE Lab(L表色系)で規定される色差を、1.3に調節した。
【0055】
(実施例9)
[気相法シリカ分散液の調製]
水392部を攪拌しながら、400mPa・秒の粘度を有するジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体の50%水溶液8部(固形分4部)、気相法シリカ(BET法による比表面積90m/g)100部を添加し、ブレード型分散機を使用して予備分散した。得られた予備分散液をコロイドミルで処理して、固形分濃度20.8%の気相法シリカ分散液を得た。この分散物を水で100倍に希釈し、ガラス基板上に散布して走査電子顕微鏡で観察したところ、観察野において粒子が占める面積の80%以上を、長辺が100〜400nmの粒子が占めていた。
【0056】
[インク受容層上層の塗液2の調製]
上記の気相法シリカ分散液の100部(固形分20.8部)に、けん化度88mol%、4%水溶液の25℃における粘度95mPa・秒のポリビニルアルコール(クラレ社製PVA235)の10%水溶液40部(固形分4部)を添加し、混合してインク受容層上層の塗液2を調製した。
【0057】
[インクジェット記録材料の作製]
インク受容層上層の塗液1の代わりに、インク受容層上層の塗液2を用いた以外には、実施例5と同様にして実施例9のインクジェット記録材料を作製した。この際の、インク受容層の色相と、印刷仕上がりをシミュレーションする校正対象印刷用紙の色相との間のCIE Lab(L表色系)で規定される色差を、1.2に調節した。
【0058】
(比較例3)
処理組成物に用いた着色剤のうち、YELLOW HGを用いなかった以外には、実施例9と同様にして比較例3のインクジェット記録材料を作製した。この際の、インク受容層の色相と、印刷仕上がりをシミュレーションする校正対象印刷用紙の色相との間のCIE Lab(L表色系)で規定される色差を、2.4に調節した。
【0059】
比較例3のインクジェット記録材料を、キセノン光照射試験機(アトラス社製Ci−4000)にて、温度40℃湿度50%RH条件下、放射強度0.5W/mで24時間照射した。照射後の色相を、色彩色差計(グレタグマクベス社製、Spectroeye)を用いて測定し、実施例9に対するb(B)値に相当する値を求めた。
【0060】
[式|b(A)−b(B)|の計算]
実施例1〜9、比較例1〜3のインクジェット記録材料のb値(b(A))と、b(B)とから計算して、式|b(A)−b(B)|の値を求めた。
【0061】
[黄変性の評価]
実施例1〜9、比較例1〜3のインクジェット記録材料を、キセノン光照射試験機(アトラス社製Ci−4000)にて、温度40℃湿度50%RH条件下、放射強度0.5W/mで24時間照射し、照射前後のb値の差(Δb)を求めることで、黄変性の度合いを次の基準の通り評価した。評価の×レベルは、実使用上問題となるレベルである。
○:Δb0.5以下
△:Δb0.5を超えて1.5以下
×:Δb1.5を超える
【0062】
実施例1〜9、比較例1〜3のインクジェット記録材料の評価結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1より、実施例1〜9の支持体上に、少なくとも一方の表面にサブミクロン顔料、バインダー、着色剤を含有するインク受容層を有するインクジェット記録材料において、該インクジェット記録材料のCIE Lab(L表色系)で規定されるb値をb(A)とし、該インクジェット記録材料のインク受容層から該着色剤を除いて得られる記録材料を、キセノン光照射試験機にて照射した際の照射後のb値をb(B)としたとき、b(A)が、b(B)と、式|b(A)−b(B)|≦1.5の関係を満足することを特徴とするインクジェット記録材料は、白紙黄変性が良好である。
【0065】
一方、比較例1〜3のインクジェット記録材料のように、式|b(A)−b(B)|≦1.5の関係を満足していないものについては、白紙黄変性が悪く、実使用上問題となるレベルであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、少なくとも一方の表面にサブミクロン顔料、バインダー、着色剤を含有するインク受容層を有するインクジェット記録材料において、該インクジェット記録材料のCIE Lab(L表色系)で規定されるb値をb(A)とし、該インクジェット記録材料のインク受容層から該着色剤を除いて得られる記録材料を、キセノン光照射試験機にて照射した際の照射後のb値をb(B)としたとき、b(A)が、b(B)と下記の式を満足することを特徴とするインクジェット記録材料。
式 |b(A)−b(B)|≦1.5
【請求項2】
該インクジェット記録材料が、印刷仕上がりをシミュレーションする印刷校正に用いられる校正用インクジェット記録材料である請求項1に記載のインクジェット記録材料。
【請求項3】
該着色剤が、アクリル板もしくは金属板に0.02g/m塗工し、キセノン光照射試験機にて放射強度0.5W/mで120時間照射した際の光学濃度残存率が90%以下である請求項1記載のインクジェット記録材料。
【請求項4】
該インクジェット記録材料のインク受容層の色相と、印刷仕上がりをシミュレーションする校正対象印刷用紙の色相との間のCIE Lab(L表色系)で規定される色差が、1.5以下である請求項2記載の校正用インクジェット記録材料。

【公開番号】特開2011−51157(P2011−51157A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200486(P2009−200486)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】