説明

インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物、及びインクジェット記録用水性インク

【課題】 グロスチェンジ及び耐擦性に優れるインクジェット記録用水性インクを提供することにある。
【解決手段】 (1)顔料、及び、(2)ポリオキシアルキレン構造又はポリラクトン構造を有する重合性不飽和単量体(a)とポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)とを必須構成成分とした共重合体(A)を含むするインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物、及び前記インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物を含有するインクジェット記録用水性インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物、及びそれを使用したインクジェット記録用水性インクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録用水性インクとして、顔料を用いたインクジェット記録用水性インク(以下、水性顔料インクと略す)の開発が進められている。
水性顔料インクは顔料粒子を水等の水性溶媒中に均一分散させた顔料分散液であり、例えば、顔料を界面活性剤や高分子分散剤で分散した水性顔料インクや、顔料表面に水分散可能な官能基を付与させた自己分散顔料を用いた水性顔料インク、顔料を水分散可能な樹脂で被覆した着色微粒子を用いた水性顔料インクなどが提案されている。
顔料インクは記録後、記録媒体上で顔料粒子を含むインク皮膜を形成することで着色させるため、染料インクのように記録媒体に浸透して発色するのに比べ、特に普通紙における発色性に優れており、また印刷像の耐水性や耐光性に優れている。しかしながら顔料の分散安定性や被記録部材への定着性が十分ではないといった問題や、形成された画像の光沢が劣ったり変化したり、耐擦性に乏しいといった問題があった。
【0003】
これに対し、例えば、顔料と水と、ポリエチレングリコール鎖やポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーを含有するモノマー組成物を重合させてなる水不溶性ビニルポリマーのポリマー粒子と、ウレタン樹脂と、を含んでなるインクジェット記録用水性インクが知られている(例えば特許文献1参照)。水不溶性ビニルポリマーとウレタン樹脂とを併用することによって普通紙に対する優れた発色性と、光沢を有する記録媒体に対する優れた光沢感とを有する画像を得ることが可能なインク組成物であって、とりわけ、グロスチェンジが改善された印刷画像が得られる。しかしながら本水性顔料インクは、満足する光沢と初期耐擦性の両立ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2006−282760号公報
【特許文献2】特開平10−60353号公報
【特許文献3】特開2006−63276号公報
【特許文献4】特開2007−131753号公報
【特許文献5】特開2005−272790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、グロスチェンジ及び耐擦性に優れるインクジェット記録用水性インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、(1)顔料、及び、(2)ポリオキシアルキレン構造又はポリラクトン構造を有する重合性不飽和単量体(a)とポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)とを必須構成成分とした共重合体(A)を含むインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物を使用することで、上記課題を解決することを見出した。
【0007】
ポリウレタンを含むペンダント構造が結合したポリウレタン含有構造単位を有する(メタ)アクリル共重合体を含む水性顔料インクは知られており、例えば特許文献2には、ポリアクリル酸又はその誘導体を塩化チオニルで還流することにより酸塩化物とし、次いで上記ポリウレタンと反応させることにより得たアクリル−ウレタン共重合体エマルションと高分子分散剤を含む水系顔料インクが記載されている。(特許文献2段落0010〜0011参照)
また、特許文献3、4には、油性顔料インクの顔料分散剤として、アクリル主鎖の末端にポリウレタン構造を導入した顔料分散剤が知られている。
【0008】
特許文献5においては、ポリウレタン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルを構成成分とした水分散性ポリマーが知られている。しかしながら、これらのインクは、専用紙において満足する光沢が得られない。
【0009】
本願は特許文献2〜5に記載の顔料分散剤とは異なり、共重合体主鎖に、ポリオキシアルキレン基又はポリラクトン基を有する構造単位と、ポリウレタン構造の少なくとも2種がペンダントされていることが特徴である。このような構造とすることで、グロスチェンジ及び耐擦性に優れることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、(1)顔料、及び、(2)ポリオキシアルキレン構造又はポリラクトン構造を有する重合性不飽和単量体(a)とポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)とを必須構成成分とした共重合体(A)を含むインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物を提供する。
【0011】
また本発明は、前記記載のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物を使用するインクジェット記録用水性インクを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、グロスチェンジ及び耐擦性に優れるインクジェット記録用水性インクを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(顔料)
本発明で使用する顔料は、有機顔料でも、無機顔料でも良い。
有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、インダンスレン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。
無機顔料としては、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等を使用できる。
【0014】
前記顔料の粒子径は、一次粒子径が1〜500nmの範囲にあるのが好ましく、さらに好ましいのは20〜200nmの範囲である。また、媒体中に分散した後の顔料の粒子径は、10〜300nmの範囲にあるのが好ましく、さらに好ましいのは、50〜150nmの範囲である。顔料の一次粒子径の測定は、電子顕微鏡や、ガスまたは溶質による吸着法、空気流通法、X線小角散乱法などで行うことができる。分散後の顔料粒子径の測定は、公知慣用の遠心沈降方式、レーザー回折方式(光散乱方式)、ESA方式、キャピラリー方式、電子顕微鏡方式などで行うことができる。
【0015】
(ポリオキシアルキレン構造又はポリラクトン構造を有する重合性不飽和単量体(a))
ポリオキシアルキレン構造又はポリラクトン構造を有する重合性不飽和単量体(a)(以下「重合性不飽和単量体(a)」と称する場合がある)において、ポリオキシアルキレン構造とは、具体的には、−(CH2m−O)−(但しm及びnは整数を表す)で表される。代表的なものとしては、ポリオキシエチレン構造、ポリオキシプロピレン構造またはポリオキシブチレン構造等の各種ポリオキシアルキレン構造などに加え、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)構造等の、前記したオキシアルキレン部分がランダムに共重合されたもの、あるいはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン構造等の、相異なるポリオキシアルキレン構造がブロック状に結合したもの、ジオキソラン環の開環重合によって得られるポリオキシアルキレン構造等が挙げられる。
【0016】
前記したポリオキシアルキレン構造の数平均分子量は、本発明の顔料分散剤の水分散性、所望される画像光沢の点から、好ましくは150〜5,000なる範囲内、より好ましくは200〜3,000なる範囲内、最も好ましくは300〜2,000なる範囲内である。
【0017】
ポリラクトン構造とは、ラクトンが開環重合したものであり、具体的には、−(C2m−CO−O)−(但しm及びnは整数を表す)で表される。使用されるラクトンに制限はないが、4〜7員環のラクトンが好ましい。具体的には、β−ラクトン(β−プロピオラクトンなど)、γ−ラクトン(γ−ブチロラクトンなど)、δ−ラクトン(δ−バレロラクトンなど)、ε−ラクトン(ε−カプロラクトンなど)、大環状ラクトン(エナントラクトン、ウンデカノラクトン、ドデカラクトンなど)などが挙げられる。ラクトンを構成するアルキレン基は直鎖状、分岐状いずれでもよい。
【0018】
前記ポリラクトン基の数平均分子量は、本発明の顔料分散剤の水分散性、所望される画像光沢の点から、100〜2,000の範囲が好ましい。
【0019】
所望される画像光沢の点から、ポリオキシアルキレン構造又はポリラクトン構造を有する重合性不飽和単量体(a)において、少なくとも1種類はオキシエチレン構造を有する重合性不飽和単量体であることが望ましい。
【0020】
ポリオキシアルキレン構造又はポリラクトン構造を有する重合性不飽和単量体(a)として、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトレメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
(ポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b))
ポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)は、水酸基を有する重合性不飽和単量体(c)とイソシアネート基を持つポリウレタンを反応させ、過剰のイソシアネート基を水酸基やアミノ基等の活性水素基を有する化合物で封止することで得られる。
【0022】
前記イソシアネート基を持つポリウレタンは、ジイソシアネート化合物及びジオール化合物からなるどんなポリウレタンジイソシアネートでもよいが、水分散性の観点から、カルボキシル基を有するポリウレタンジイソシアネートが好ましい。カルボキシル基は、通常、1分子中に1個以上のカルボキシル基を有するジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて導入する。
【0023】
本発明で使用する1分子中に1個以上のカルボキシル基を有するジオール化合物としては、例えば、多価アルコールと多塩基酸無水物との反応によって得られるエステル、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシアルカン酸等が挙げられる。好ましい化合物としては2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸が挙げられる。中でも、ジメチロールプロピオン酸、又はジメチロールブタン酸が入手が容易であり好ましい。
カルボキシル基は、ポリウレタンジイソシアネート中、重量比率に換算して1%〜15%となるように導入するのが好ましく、3%〜10%の範囲がなお好ましい。
【0024】
勿論、カルボキシル基を有さない汎用のジオール化合物を使用することもでき、これらは所望するインクの印刷適性により適宜選択することができる。ジオール化合物の例としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリヒドロキシポリカーボネート、ポリヒドロキシポリアセタール、ポリヒドロキシポリアクリレート、ポリヒドロキシポリエステルアミドおよびポリヒドロキシポリチオエーテルのような高分子のジオール化合物のほか、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等のような低分子量のジオール化合物が挙げられる。これらのジオール化合物は、1種のみを反応させてもよく、数種を混合して反応させてもよい。
【0025】
本発明で使用するジイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネー卜化合物、イソホロンジイソシアネー卜、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4−シクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネー卜化合物、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネー卜等の芳香脂肪族ジイソシアネー卜化合物、トルイレンジイソシアネー卜、フェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネー卜化合物が挙げられる。
中でも、印字画像の耐光変色が起こり難い点では、脂肪族ジイソシアネート化合物または脂環族ジイソシアネート化合物が好ましい。
【0026】
ジイソシアネート化合物及びジオール化合物を反応させてイソシアネート基を持つポリウレタンを得るには、ジオール化合物の水酸基に対してジイソシアネート化合物のイソシアネート基を過剰にして反応させればよい。過剰量は、ポリウレタンジイソシアネートが所望の分子量となるように適宜決定することができる。
ポリウレタンジイソシアネートの分子量は、反応比率から計算される理論分子量で、500〜100,000の範囲が好ましく、1,000〜50,000の範囲がなお好ましく、2,000〜30,000の範囲が最も好ましい。
【0027】
具体的な反応方法としては、例えば、前記ジオール化合物とジイソシアネート化合物の全量を溶剤中で反応させる方法や、反応性を考慮しながらジオール化合物を段階的にジイソシアネート化合物と溶剤中で反応させる方法等がある。
【0028】
重合溶媒は、イソシアナト基と反応しない溶媒が好ましい。例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
また、反応触媒として無機錫系、有機錫系等の公知のウレタン化触媒を使用しても良い。
【0029】
前記ジオール化合物と前記ジイソシアネート化合物との反応で得られた前記ポリウレタンジイソシアネートと、水酸基を有する重合性不飽和単量体(c)との反応は、どのようなイソシアナト基と水酸基のモル比でもよい。
【0030】
前記ポリウレタンジイソシアネートと、水酸基を有する重合性不飽和単量体(c)との反応は、前記ポリウレタンジイソシアネートを合成後に水酸基を有する重合性不飽和単量体(c)を添加しても良いし、前記ポリウレタンジイソシアネートを合成中に水酸基を有する重合性不飽和単量体(c)を添加しても良い。
【0031】
水酸基を有する重合性不飽和単量体(c)を添加する際には、重合禁止剤を同時に添加することが望ましい。重合禁止剤を添加しない場合は、水酸基を有する重合性不飽和単量体(c)の重合反応が起き、目的物が得られない恐れがある。
【0032】
前記、重合禁止剤としては、メトキノン、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、4−t−ブチルカテコール等が挙げられる。
【0033】
前記、重合禁止剤は反応系中の固形物に対して、10ppm〜1000ppm入れることが望ましく、100ppm〜1000ppmの間がさらに望ましい。
【0034】
水酸基を有する重合性不飽和単量体(c)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物、ポリエチレングリコールモノビニルエーテルなどが挙げられる。
【0035】
前記反応後、残存するイソシアナト基を、水酸基やアミノ基等の活性水素基を有する化合物で封止する。この反応は公知の方法で構わない。
【0036】
(ポリオキシアルキレン構造又はポリラクトン構造を有する重合性不飽和単量体(a)とポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)とを必須構成成分とした共重合体(A))
ポリオキシアルキレン構造又はポリラクトン構造を有する重合性不飽和単量体(a)とポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)とを必須構成成分とした共重合体(A)は、少なくとも、前記ポリオキシアルキレン構造又はポリラクトン構造を有する重合性不飽和単量体(a)と、前記工程で得られた前記ポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)混合物を含む重合性不飽和単量体を重合させて得ることができる。
【0037】
これの重合反応は、公知の方法が使用できる。中でも、溶媒中でラジカル重合開始剤を用いた溶液重合法が望ましい。
【0038】
溶液重合において、使用する重合溶媒は特に制限はない。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1 − ブタノール、第3 級ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ブチルセロソルブ、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸イソブチル等が挙げられる。
また、これらの溶媒は単独で使用しても良いし、混合して使用しても良い。
【0039】
溶液重合における重合温度は、一般的には50℃〜120℃の範囲である。
【0040】
また、溶液重合において使用するラジカル重合開始剤としては、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物などを用いることができる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、全モノマー量に対し、1重量%以上10重量%以下が好ましい。
【0041】
また、ポリオキシアルキレン構造又はポリラクトン構造を有する重合性不飽和単量体(a)やポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)に含まれる多官能重合性不飽和単量体によるゲル化を防ぐために、使用するラジカル重合開始剤の10時間半減期温度は、反応温度よりも10℃以上低いことが望ましい。
【0042】
また、ポリオキシアルキレン構造又はポリラクトン構造を有する重合性不飽和単量体(a)とポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)以外に、他の重合性不飽和単量体(以下重合性不飽和単量体(t)と称する場合がある)を使用してもよい。具体的には例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、スチレン、無水マレイン酸、ブタジエン、酢酸ビニル等が挙げられる。重合性不飽和単量体(t)は、本願の効果を損なわない程度に加えることができる。
【0043】
(ポリオキシアルキレン構造又はポリラクトン構造の導入比率)
共重合体(A)中のポリオキシアルキレン構造又はポリラクトン構造の導入比率は、式(1)で計算された比率が45%〜100%となるようにすることが好ましく、45%〜95%の範囲がなお好ましく、50%〜90%の範囲が最も好ましい。このような比率とすることで、特に光沢紙に適用した場合、所望される画像光沢が得られ特に好ましい。
【0044】
【数1】

【0045】
W:ポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)を含む混合物の原料である水酸基を有する重合性不飽和単量体(c)の仕込量(重量部)。但しポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)を含む混合物は、水酸基を有する重合性不飽和単量体(c)とイソシアネート基を持つポリウレタンを反応させ、過剰のイソシアネート基を水酸基やアミノ基等の活性水素基を有する化合物で封止させた状態の混合物である。
X:Wにおける水酸基を有する重合性不飽和単量体(c)であって、水酸基且つポリオキシアルキレン基又はポリラクトン基を含有する重合性不飽和単量体の仕込量(重量部)
Y:ポリオキシアルキレン構造又はポリラクトン構造を有する重合性不飽和単量体(a)の仕込量(重量部)
Z:重合性不飽和単量体(t)の仕込量(重量部)
【0046】
(ポリウレタンの導入比率)
共重合体(A)中のポリウレタン構造の導入比率は、式(2)で計算される値が1%〜200%となるように配合することが望ましく、3%〜150%の範囲がなお好ましく、5%〜100%の範囲が最も好ましい。
【0047】
【数2】

【0048】
V:ポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)を含む混合物の仕込量(重量部)。但しポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)を含む混合物は、水酸基を有する重合性不飽和単量体(c)とイソシアネート基を持つポリウレタンを反応させ、過剰のイソシアネート基を水酸基やアミノ基等の活性水素基を有する化合物で封止させた状態の混合物である。
W、Y、Z:式(1)と同じ
【0049】
ポリオキシアルキレン構造又はポリラクトン構造を有する重合性不飽和単量体(a)とポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)とを必須構成成分とした共重合体(A)の分子量としては特に制限されないが、インクジェットインキとして調整した後の顔料分散性及びインキ吐出性の観点から、重量平均分子量に換算して5,000〜50,000であることが好ましい。
【0050】
共重合体(A)の酸価は、分散性や吐出性の観点から150mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0051】
上記工程を経て得た共重合体(A)は、共重合体(A)の他に、ポリウレタン構造を有しない共重合体やウレタン樹脂等が含まれている混合物となっている。共重合体(A)以外の物質は除去しても良いし、混合物の状態で使用しても良い。
【0052】
(インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物)
本願のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物は、前記共重合体(A)を含む混合物を使用して分散させた顔料を含んだものである。
【0053】
インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物とする場合は、前記共重合体(A)が有するカルボキシル基が中和されていることが望ましく、中和率は、通常50〜100%、特に70〜100%の範囲に設定されることが好ましい。
【0054】
中和する塩基性物質としては、公知慣用のものがいずれも使用出来、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアの様な無機塩基性物質や、トリエチルアミン、アルカノールアミンの様な有機塩基性物質を用いることが出来る。
【0055】
前記共重合体(A)は、顔料100重量部に対して1〜150重量部使用することが好ましく、より好ましくは10〜100重量部である。
【0056】
顔料と前記共重合体(A)を含む混合物とを分散させる際に使用出来る分散装置としては、既に公知の種々の方式による装置がいずれも使用出来る。例えば、スチール、ステンレス、ジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素、ガラス等でできた直径0.1〜10mm程度の球状分散媒体の運動エネルギーを利用する方式、機械的攪拌による剪断力を利用する方式、高速で供給された被分散物流束の圧力変化、流路変化あるいは衝突に伴って発生する力を利用する方式、等の分散方式の分散装置を挙げることが出来る。具体的な分散装置としては、RED DEVIL社製ペイントコンディショナー、東洋精機(株)製の試験用分散機、三井鉱山(株)製SCミル SC100/32型、淺田鉄工(株)製プラネタリーミキサーPVM−5、ウィリー・エ・バッコーフェン社(WAB社)製ダイノーミル等が上げられる。
【0057】
(インクジェット記録用水性インク)
本発明のインクジェット記録用水性インクは、前記インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物に、インクジェット記録用水性インクの技術分野で公知慣用となっている各種添加剤、液媒体を含有させることにより得ることができる。
【0058】
具体的には、前記インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物を、重量基準で顔料固形分1〜10%となる様に水やその他の液媒体で希釈してインクジェット記録用水性顔料インクとする。粗大粒子や過小粒子の除去や、分散粒子の粒子径分布を調整するために、超遠心分離やミクロフィルターによる濾過を更に行っても良い。
【0059】
前記インクジェット記録用水性インクの調整の際に、インクやその印字物の諸物性の向上を図るためにさらにアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の水可溶性樹脂を添加しても良い。特にポリウレタン樹脂が好ましく、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂が耐擦性を付与でき最も好ましい。
前記水可溶性樹脂は、分散工程の終わった前記インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物に添加しても良い。
【0060】
前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂は、ジイソシアネート化合物及び1分子中に1個以上のカルボキシル基を有するジオール化合物及びその他のジオール化合物からなるどんなカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂でもよい。
【0061】
1分子中に1個以上のカルボキシル基を有するジオール化合物としては、例えば、多価アルコールと多塩基酸無水物との反応によって得られるエステル、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシアルカン酸等が挙げられる。好ましい化合物としては2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸が挙げられる。中でも、ジメチロールプロピオン酸、又はジメチロールブタン酸が入手が容易であり好ましい。
カルボキシル基は、ポリウレタンジイソシアネート中、重量比率に換算して1%〜15%となるように導入するのが好ましく、3%〜10%の範囲がなお好ましい。
【0062】
カルボキシル基を有さないその他のジオール化合物の例としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリヒドロキシポリカーボネート、ポリヒドロキシポリアセタール、ポリヒドロキシポリアクリレート、ポリヒドロキシポリエステルアミドおよびポリヒドロキシポリチオエーテルのような高分子のジオール化合物のほか、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等のような低分子量のジオール化合物が挙げられる。これらのジオール化合物は、1種のみを反応させてもよく、数種を混合して反応させてもよい。印字物への耐擦性の付与から高分子のジオール化合物を必須とすることが好ましい。
【0063】
ジイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネー卜化合物、イソホロンジイソシアネー卜、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4−シクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネー卜化合物、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネー卜等の芳香脂肪族ジイソシアネー卜化合物、トルイレンジイソシアネー卜、フェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネー卜化合物が挙げられる。
中でも、印字画像の耐光変色が起こり難い点では、脂肪族ジイソシアネート化合物または脂環族ジイソシアネート化合物が好ましい。
【0064】
重合溶媒は、イソシアナト基と反応しない溶媒が好ましい。例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
また、反応触媒として無機錫系、有機錫系等の公知のウレタン化触媒を使用しても良い。
【0065】
前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂は、通常重量平均分子量で、2,000 〜 100,000の範囲が好ましく、1,000〜50,000の範囲がなお好ましく、3,000 〜50,000の範囲が更に好ましく5,000 〜30,000の範囲が最も好ましい。
【0066】
添加量は重量換算で顔料100部に対してポリウレタン樹脂の不揮発分を通常0〜100部の範囲が好ましく、1〜50部の範囲がさらに好ましい。
【0067】
こうして得られたインクジェット記録用水性顔料インクは、公知慣用の被記録媒体に印字記録することが出来る。この際の被記録媒体としては、例えば、PPC紙の様な普通紙、写真用紙(光沢)、写真用紙(絹目調)等の様なインクジェット用専用紙、OHPフィルムの様な合成樹脂フィルム、アルミニウム箔の様な金属箔等の各種フィルム・シートが挙げられる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。なお以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は、いずれも重量基準である。
【0069】
<合成例1>(ポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体混合物M−1の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにメチルエチルケトン(以下、MEKと略す)465部、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン174部、ポリプロピレングリコール(OH基当量160)226部、ジメチロールプロピオン酸66部、及び触媒であるジブチル錫ジラウレート0.03部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、3時間反応を続けた。その後、プラクセルFM−5(ダイセル化学工業(株)製 ヒドロキシエチルメタクリレートのカプロラクトン5mol付加品)30部、メトキノン0.3部、MEK150部の混合物を添加した。イソシアナト基含有率が0.46%となるまで80℃で反応を続けた。エタノール50部を添加して、イソシアナト基含有率が0.02%以下になるまで80℃でさらに反応を続けた。反応終了後、溶媒であるMEKの一部を減圧留去し、ポリウレタン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む混合物M−1の50%溶液を得た。
【0070】
<合成例2>(ポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体混合物M−2の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK201部、イソホロンジイソシアネート140部、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(OH基当量56)274部、ジメチロールプロピオン酸56部、及び触媒であるジブチル錫ジラウレート0.03部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、3時間反応を続けた。その後、プラクセルFM−5の26部、メトキノン0.3部、MEK294部の混合物を添加した。イソシアナト基含有率が0.44%となるまで80℃で反応を続けた。エタノール50部を添加して、イソシアナト基含有率が0.02%以下になるまで80℃でさらに反応を続けた。反応終了後、溶媒の一部を減圧留去し、ポリウレタン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む混合物M−2の50%溶液を得た。
【0071】
<合成例3>(ポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体混合物M−3の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにメチルエチルケトン(以下、MEKと略す)384部、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン176部、ポリプロピレングリコール(OH基当量160)228部、ジメチロールプロピオン酸66部、及び触媒であるジブチル錫ジラウレート0.02部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、3時間反応を続けた。その後、プラクセルFM−5の24部、メトキノン0.2部、MEK110部の混合物を添加した。イソシアナト基含有率が0.56%となるまで80℃で反応を続けた。エタノール50部を添加して、イソシアナト基含有率が0.02%以下になるまで80℃でさらに反応を続けた。反応終了後、溶媒であるMEKの一部を減圧留去し、ポリウレタン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む混合物M−3の50%溶液を得た。
【0072】
<合成例4>(ポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体混合物M−4の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK456部、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン171部、ポリプロピレングリコール(OH基当量160)221部、ジメチロールプロピオン酸64部、及び触媒であるジブチル錫ジラウレート0.03部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、3時間反応を続けた。その後、プラクセルFM−5の39部、メトキノン0.3部、MEK150部の混合物を添加した。イソシアナト基含有率が0.41%となるまで80℃で反応を続けた。エタノール50部を添加して、イソシアナト基含有率が0.02%以下になるまで80℃でさらに反応を続けた。反応終了後、溶媒の一部を減圧留去し、ポリウレタン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む混合物M−4の50%溶液を得た。
【0073】
<合成例5>(ポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体混合物M−5の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK440部、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン165部、ポリプロピレングリコール(OH基当量160)214部、ジメチロールプロピオン酸62部、及び触媒であるジブチル錫ジラウレート0.03部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、3時間反応を続けた。その後、プラクセルFM−5の56部、メトキノン0.3部、MEK150部の混合物を添加した。イソシアナト基含有率が0.30%となるまで80℃で反応を続けた。エタノール50部を添加して、イソシアナト基含有率が0.02%以下になるまで80℃でさらに反応を続けた。反応終了後、溶媒の一部を減圧留去し、ポリウレタン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む混合物M−5の50%溶液を得た。
【0074】
<合成例6>(ポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体混合物M−6の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK425部、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン159部、ポリプロピレングリコール(OH基当量160)206部、ジメチロールプロピオン酸60部、及び触媒であるジブチル錫ジラウレート0.03部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、3時間反応を続けた。その後、プラクセルFM−5の73部、メトキノン0.3部、MEK150部の混合物を添加した。イソシアナト基含有率が0.19%となるまで80℃で反応を続けた。エタノール50部を添加して、イソシアナト基含有率が0.02%以下になるまで80℃でさらに反応を続けた。反応終了後、溶媒の一部を減圧留去し、ポリウレタン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む混合物M−6の50%溶液を得た。
【0075】
<合成例7>(ポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体混合物M−7の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK398部、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン149部、ポリプロピレングリコール(OH基当量160)193部、ジメチロールプロピオン酸56部、及び触媒であるジブチル錫ジラウレート0.03部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、3時間反応を続けた。その後、プラクセルFM−5の102部、メトキノン0.3部、MEK202部の混合物を添加した。イソシアナト基含有率が0.02%となるまで80℃で反応を続けた。エタノール50部を添加して、80℃でさらに反応を一時間続けた。反応終了後、溶媒の一部を減圧留去し、ポリウレタン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む混合物M−7の50%溶液を得た。
【0076】
<合成例8>(ポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体混合物M−8の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK489部、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン183部、ポリプロピレングリコール(OH基当量160)237部、ジメチロールプロピオン酸69部、及び触媒であるジブチル錫ジラウレート0.0部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、2時間反応を続けた。その後、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5.6部、メトキノン0.3部、MEK150部の混合物を添加した。イソシアナト基含有率が0.30%となるまで80℃で反応を続けた。エタノール50部を添加して、イソシアナト基含有率が0.02%以下になるまで80℃でさらに反応を続けた。反応終了後、溶媒の一部を減圧留去し、ポリウレタン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む混合物M−8の50%溶液を得た。
【0077】
表1に、前記得られた混合物M−1〜M−8の、ポリウレタンジイソシアネートの理論分子量、ポリウレタンジイソシアネート中のカルボキシル基重量比率、及びイソシアナト基と水酸基とのモル比を示す。
【0078】
【表1】

*) ポリウレタンジアイソシアネートと水酸基を有する重合性不飽和単量体との反応におけるイソシアナト基と水酸基とのモル比
【0079】
<合成例9>(ウレタン樹脂U−1の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK495部、イソホロンジイソシアネート172部、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(OH基当量56)252部、ジメチロールプロピオン酸69部、ネオペンチルグリコール7部及び触媒であるジブチル錫ジラウレート0.03部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、イソシアナト基含有率が0.54%となるまで80℃で反応を続け、エタノール50部を添加して、80℃でイソシアナト基含有率が0.02%以下になるまで反応を続けた。反応終了後、樹脂中のカルボキシル基が100%中和させるように5%KOH水溶液を加え、さらに水を加えて樹脂を溶解させた。溶媒の一部を減圧留去し、ウレタン樹脂水溶液U−1の50%溶液を得た。
【0080】
<合成例10>(ウレタン樹脂U−2の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK492部、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン184部、ポリプロピレングリコール(OH基当量160)239部、ジメチロールプロピオン酸69部、及び触媒であるジブチル錫ジラウレート0.03部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、イソシアナト基含有率が0.48%となるまで80℃で反応を続け、エタノール50部を添加して、80℃でイソシアナト基含有率が0.02%以下になるまで反応を続けた。反応終了後、樹脂中のカルボキシル基が100%中和させるように5%KOH水溶液を加え、さらに水を加えて樹脂を溶解させた。溶媒の一部を減圧留去し、ウレタン樹脂水溶液U−2の50%溶液を得た。
【0081】
<合成例11>(共重合体(A)混合物AU−1の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK347部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸ベンジル52部、メタクリル酸17部、ブレンマーPME−1000(日油(株)製 メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート:−CHCHO−ユニット数約23)207部、プラクセルFM−5の66部、合成例1で得たM−1溶液116部、V−65(和光純薬工業(株)製 2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))10.4部およびMEK218部の混合液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で11時間反応を継続させた。滴下が終了した時点から3時間後と6時間後に、パーブチルO(日油(株)製 ペルオキシ2−エチルヘキサン酸t−ブチル)を1.7部ずつ添加した。反応終了後、溶媒の一部を減圧留去し、共重合体(A)混合物AU−1の45%溶液を得た。
【0082】
<合成例12>(共重合体(A)混合物AU−2の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK344部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸ベンジル46部、メタクリル酸15部、ブレンマーPME−1000の182部、プラクセルFM−5の55部、M−1溶液205部、V−65 9.1部およびMEK173部の混合液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で11時間反応を継続させた。滴下が終了した時点から3時間後と6時間後に、パーブチルOを1.5部ずつ添加した。反応終了後、溶媒の一部を減圧留去し、共重合体(A)混合物AU−2の45%溶液を得た。
【0083】
<合成例13>(共重合体(A)混合物AU−3の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK347部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸ベンジル104部、M−5300(東亜合成(株)製 ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート カプロラクトンユニット数約2)17部、ブレンマーPME−1000の173部、プラクセルFM−5の48部、M−1溶液116部、V−65(和光純薬工業(株)製 2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))10.4部およびMEK218部の混合液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で11時間反応を継続させた。滴下が終了した時点から3時間後と6時間後に、パーブチルO(日油(株)製 ペルオキシ2−エチルヘキサン酸t−ブチル)を1.7部ずつ添加した。反応終了後、溶媒の一部を減圧留去し、共重合体(A)混合物AU−3の45%溶液を得た。
【0084】
<合成例14>(共重合体(A)混合物AU−4の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK346部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸ベンジル101部、メタクリル酸17部、ブレンマーPME−1000の169部、プラクセルFM−5の47部、合成例2で得たM−2溶液132部、V−65 10.1部およびMEK210部の混合液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で11時間反応を継続させた。滴下が終了した時点から3時間後と6時間後に、パーブチルOを1.7部ずつ添加した。反応終了後、溶媒の一部を減圧留去し、共重合体(A)混合物AU−4の45%溶液を得た。
【0085】
<合成例15>(共重合体(A)混合物AU−5の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK418部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸ベンジル50部、メタクリル酸17部、ブレンマーPME−1000の200部、プラクセルFM−5の63部、合成例3で得たM−3溶液149部、V−65の10部およびMEK233部の混合液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で11時間反応を継続させた。滴下が終了した時点から3時間後と6時間後に、パーブチルOを1.7部ずつ添加した。反応終了後、溶媒の一部を減圧留去し、共重合体AU−5の45%溶液を得た。
【0086】
<合成例16>(共重合体(A)混合物AU−6の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK347部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸ベンジル54部、メタクリル酸18部、ブレンマーPME−1000の215部、プラクセルFM−5の68部、合成例4で得たM−4溶液92部、V−65 10.7部およびMEK230部の混合液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で11時間反応を継続させた。滴下が終了した時点から3時間後と6時間後に、パーブチルOを1.8部ずつ添加した。反応終了後、溶媒の一部を減圧留去し、共重合体AU−6の45%溶液を得た。
【0087】
<合成例17>(共重合体(A)混合物AU−7の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK348部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸ベンジル56部、メタクリル酸19部、ブレンマーPME−1000の223部、プラクセルFM−5の70部、合成例5で得たM−5溶液66部、V−65 11.1部およびMEK243部の混合液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で11時間反応を継続させた。滴下が終了した時点から3時間後と6時間後に、パーブチルOを1.8部ずつ添加した。反応終了後、溶媒の一部を減圧留去し、共重合体AU−7の45%溶液を得た。
【0088】
<合成例18>(共重合体(A)混合物AU−8の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK420部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸ベンジル52部、メタクリル酸17部、ブレンマーPME−1000の208部、プラクセルFM−5の60部、合成例6で得たM−6溶液127部、V−65 10.4部およびMEK137部の混合液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で11時間反応を継続させた。滴下が終了した時点から3時間後と6時間後に、パーブチルOを1.7部ずつ添加した。反応終了後、溶媒の一部を減圧留去し、共重合体AU−8の45%溶液を得た。
【0089】
<合成例19>(共重合体(A)混合物AU−9の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK452部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸ベンジル56部、メタクリル酸19部、ブレンマーPME−1000の223部、プラクセルFM−5の67部、合成例7で得たM−7溶液83部、V−65 11.1部およびMEK126部の混合液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で11時間反応を継続させた。滴下が終了した時点から3時間後と6時間後に、パーブチルOを1.9部ずつ添加した。反応終了後、溶媒の一部を減圧留去し、共重合体AU−9の45%溶液を得た。
【0090】
<合成例20>(共重合体(A)混合物AU−10の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK345部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸ベンジル46部、メタクリル酸15部、ブレンマーPME−1000の183部、プラクセルFM−5の37部、合成例7で得たM−7溶液272部、V−65 9.1部およびMEK123部の混合液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で11時間反応を継続させた。滴下が終了した時点から3時間後と6時間後に、パーブチルOを1.5部ずつ添加した。反応終了後、溶媒の一部を減圧留去し、共重合体AU−10の45%溶液を得た。
【0091】
<合成例21>(共重合体(A)混合物AU−11の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK434部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸ベンジル43部、メタクリル酸15部、ブレンマーPME−1000の177部、プラクセルFM−5の59部、合成例8で得たM−8溶液213部、V−65 8.9部およびMEK79部の混合液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で11時間反応を継続させた。滴下が終了した時点から3時間後と6時間後に、パーブチルOを0.9部ずつ添加した。反応終了後、溶媒の一部を減圧留去し、共重合体AU−11の45%溶液を得た。
【0092】
<合成例22>(共重合体(A)混合物共重合体AU−12の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK419部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸ベンジル169部、メタクリル酸34部、ブレンマーPME−1000の101部、プラクセルFM−5の30部、合成例2で得たM−2溶液130部、V−65 10.1部およびMEK139部の混合液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で11時間反応を継続させた。滴下が終了した時点から3時間後と6時間後に、パーブチルOを1.7部ずつ添加した。反応終了後、溶媒の一部を減圧留去し、共重合体AU−12の45%溶液を得た。
【0093】
<比較合成例1>((メタ)アクリル共重合体HA−1の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコにMEK278部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸ベンジル60部、メタクリル酸20部、ブレンマーPME−1000の240部、ブレンマーPP−800(日油(株)製 ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、−CO−ユニット数約13) 80部、V−65 10.0部およびMEK340部の混合液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で11時間反応を継続させた。滴下が終了した時点から3時間後と6時間後に、パーブチルOを0.9部ずつ添加した。反応終了後、溶媒の一部を減圧留去し、重量平均分子量20,500の(メタ)アクリル共重合体HA−1の45%溶液を得た。
【0094】
<比較合成例2>((メタ)アクリル共重合体HA−2の合成)
ブレンマーPP−800の80部を、プラクセルFM−5の80部に変更する以外は比較例1と同様にして、重量平均分子量13,700の(メタ)アクリル共重合体HA−2の45%溶液を得た。
【0095】
表2にAU−1からAU−12、及びをHA−1、HA−2の、式(1)及び式(2)から算出した値、及び重量平均分子量を表示する。なお重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定され、ポリスチレン換算の値として表した。
【0096】
【表2】

【0097】
【数3】

【0098】
【数4】

【0099】
式(1)及び式(2)における記号は以下の通りである。
W:ポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)を含む混合物の原料である水酸基を有する重合性不飽和単量体(c)の仕込量(重量部)。但しポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)を含む混合物は、水酸基を有する重合性不飽和単量体(c)とイソシアネート基を持つポリウレタンを反応させ、過剰のイソシアネート基を水酸基やアミノ基等の活性水素基を有する化合物で封止させた状態の混合物。
X:Wにおける水酸基を有する重合性不飽和単量体(c)であって、水酸基且つポリオキシアルキレン基又はポリラクトン基を含有する重合性不飽和単量体の仕込量(重量部)
Y:ポリオキシアルキレン構造又はポリラクトン構造を有する重合性不飽和単量体(a)の仕込量(重量部)
Z:重合性不飽和単量体(t)の仕込量(重量部)
V:ポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)を含む混合物の仕込量(重量部)。但しポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)を含む混合物は、水酸基を有する重合性不飽和単量体(c)とイソシアネート基を持つポリウレタンを反応させ、過剰のイソシアネート基を水酸基やアミノ基等の活性水素基を有する化合物で封止させた状態の混合物。
【0100】
<実施例1>(インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C1の製造)
ファーストゲンブルー TGR〔DIC(株)製β型銅フタロシアニン顔料 C.I.ピグメント ブルー15:3〕4.00部と、合成例11で得たAU−1溶液3.09部、20%水酸化カリウム0.25部、MEK0.30部および水12.36部を仕込み、ペイントコンディショナー(直径0.5mmのジルコニアビーズ使用)で2時間分散した。分散終了後、ジルコニアビーズを除いて得られた液をエバポレーターでMEKを留去した後、遠心分離処理にて粗大粒子を除いた。水で調製を行い、不揮発分20.3%(顔料分15.0%)のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C1を得た。
【0101】
<実施例2>(インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C2の製造)
ファーストゲンブルー TGR4.00部と、合成例12で得たAU−2溶液 3.66部、20%水酸化カリウム0.31部および水12.04部を仕込み、ペイントコンディショナー(直径0.5mmのジルコニアビーズ使用)で2時間分散した。分散終了後、ジルコニアビーズを除いて得られた液をエバポレーターでMEKを留去した後、遠心分離処理にて粗大粒子を除いた。水で調製を行い、不揮発分21.3%(顔料分15.0%)のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C2を得た。
【0102】
<実施例3>(インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C3の製造)
実施例1のAU−1溶液3.09部を、合成例13で得たAU−3溶液3.09部に変更する以外は実施例12と同様に分散、調製を行い、不揮発分20.3%(顔料分15.0%)のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C3を得た。
【0103】
<実施例4>(インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C4の製造)
ファーストゲンブルー TGR4.00部と、合成例14で得たAU−4溶液3.16部、20%水酸化カリウム0.24部、MEK0.26部および水12.33部を仕込み、ペイントコンディショナー(直径0.5mmのジルコニアビーズ使用)で2時間分散した。分散終了後、ジルコニアビーズを除いて得られた液をエバポレーターでMEKを留去した後、遠心分離処理にて粗大粒子を除いた。水で調製を行い、不揮発分20.5%(顔料分15.0%)のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C4を得た。
【0104】
<実施例5>(インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C5の製造)
ファーストゲンブルー TGR4.00部と、合成例15で得たAU−5溶液2.87部、20%水酸化カリウム0.27部、MEK0.56部および水12.29部を仕込み、ペイントコンディショナー(直径0.5mmのジルコニアビーズ使用)で2時間分散した。分散終了後、ジルコニアビーズを除いて得られた液をエバポレーターでMEKを留去した後、遠心分離処理にて粗大粒子を除いた。水で調製を行い、不揮発分20.0%(顔料分15.0%)のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C5を得た。
【0105】
<実施例6>(インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C6の製造)
ファーストゲンブルー TGR4.00部と、合成例16で得たAU−6溶液2.99部、20%水酸化カリウム0.22部、MEK0.36部および水12.43部を仕込み、ペイントコンディショナー(直径0.5mmのジルコニアビーズ使用)で2時間分散した。分散終了後、ジルコニアビーズを除いて得られた液をエバポレーターでMEKを留去した後、遠心分離処理にて粗大粒子を除いた。水で調製を行い、不揮発分20.1%(顔料分15.0%)のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C6を得た。
【0106】
<実施例7>(インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C7の製造)
ファーストゲンブルー TGR4.00部と、合成例17で得たAU−7溶液2.88部、20%水酸化カリウム0.22部、MEK0.42部および水12.48部を仕込み、ペイントコンディショナー(直径0.5mmのジルコニアビーズ使用)で2時間分散した。分散終了後、ジルコニアビーズを除いて得られた液をエバポレーターでMEKを留去した後、遠心分離処理にて粗大粒子を除いた。水で調製を行い、不揮発分20.0%(顔料分15.0%)のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C7を得た。
【0107】
<実施例8>(インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C8の製造)
ファーストゲンブルー TGR4.00部と、合成例18で得たAU−8溶液2.77部、20%水酸化カリウム0.26部、MEK0.62部および水12.36部を仕込み、ペイントコンディショナー(直径0.5mmのジルコニアビーズ使用)で2時間分散した。分散終了後、ジルコニアビーズを除いて得られた液をエバポレーターでMEKを留去した後、遠心分離処理にて粗大粒子を除いた。水で調製を行い、不揮発分20.3%(顔料分15.0%)のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C8を得た。
【0108】
<実施例9>(インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C9の製造)
ファーストゲンブルー TGR4.00部と、合成例19で得たAU−9溶液2.58部、20%水酸化カリウム0.24部、MEK0.71部および水12.47部を仕込み、ペイントコンディショナー(直径0.5mmのジルコニアビーズ使用)で2時間分散した。分散終了後、ジルコニアビーズを除いて得られた液をエバポレーターでMEKを留去した後、遠心分離処理にて粗大粒子を除いた。水で調製を行い、不揮発分20.3%(顔料分15.0%)のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C9を得た。
【0109】
<実施例10>(インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C10の製造)
ファーストゲンブルー TGR4.00部と、合成例20で得たAU−10溶液3.15部、20%水酸化カリウム0.31部、MEK0.42部および水12.11部を仕込み、ペイントコンディショナー(直径0.5mmのジルコニアビーズ使用)で2時間分散した。分散終了後、ジルコニアビーズを除いて得られた液をエバポレーターでMEKを留去した後、遠心分離処理にて粗大粒子を除いた。水で調製を行い、不揮発分21.1%(顔料分15.0%)のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C10を得た。
【0110】
<実施例11>(インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C11の製造)
ファーストゲンブルー TGR4.00部と、合成例21で得たAU−11溶液3.26部、20%水酸化カリウム0.32部、MEK0.37部および水12.05部を仕込み、ペイントコンディショナー(直径0.5mmのジルコニアビーズ使用)で2時間分散した。分散終了後、ジルコニアビーズを除いて得られた液をエバポレーターでMEKを留去した後、遠心分離処理にて粗大粒子を除いた。水で調製を行い、不揮発分21.3%(顔料分15.0%)のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C11を得た。
【0111】
<実施例12>(インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物M1の製造)
実施例1のファーストゲンブルー TGRを、ファーストゲンスーパーマゼンタ RY〔大日本インキ化学工業(株)製C.I.Pigment Red 122〕に、AU−1溶液をAU−3溶液に変更する以外は 実施例1と同様に分散、調製を行い、不揮発分20.3%(顔料分15.0%)のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物M1を得た。
【0112】
<実施例13>(インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物Y1の製造)
実施例4のファーストゲンブルー TGRを、ファストイエロー7413〔山陽色素(株)製〕とする以外は、実施例4と同様に分散、調製を行い、不揮発分20.5%(顔料分15.0%)のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物Y1を得た。
【0113】
<実施例14>(インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C14の製造)
ファーストゲンブルー TGR4.00部と、合成例22で得たAU−12溶液2.85部、20%水酸化カリウム0.44部、MEK0.58部および水12.14部を仕込み、ペイントコンディショナー(直径0.5mmのジルコニアビーズ使用)で2時間分散した。分散終了後、ジルコニアビーズを除いて得られた液をエバポレーターでMEKを留去した後、遠心分離処理にて粗大粒子を除いた。水で調製を行い、不揮発分20.6%(顔料分15.0%)のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C14を得た。
【0114】
<比較例1>(インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C12の製造)
ファーストゲンブルー TGR4.00部と、比較合成例1で得たHA−1溶液2.67部、20%水酸化カリウム0.19部、MEK0.53部および水12.60部を仕込み、ペイントコンディショナー(直径0.5mmのジルコニアビーズ使用)で2時間分散した。分散終了後、ジルコニアビーズを除いて得られた液をエバポレーターでMEKを留去した後、遠心分離処理にて粗大粒子を除いた。水で調製を行い、不揮発分19.6%(顔料分15.0%)のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C12を得た。
【0115】
<比較例2>(インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C13の製造)
比較例1のHA−1溶液を、比較合成例2で得たHA−2溶液に変更する以外は比較例4と同様に分散、調製を行い、不揮発分19.6%(顔料分15.0%)のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C13を得た。
【0116】
(インクジェット記録用水性顔料インクの作成、評価)
<実施例15>
実施例1で製造したインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C1を用いてインクジェット記録用水性顔料インクを調製した。インク組成を以下に示す。
インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C1 26.7部
ウレタン樹脂水溶液U1(合成例9) 1.1部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10.0部
ジエチレングリコール 15.0部
サーフィノール465(エアプロダクツ社製) 0.8部
水 46.4部
【0117】
(インクジェット記録用水性顔料インクの性能評価)
上記実施例15にて調製したインクジェット記録用水性顔料インクを、市販のピエゾ方式インクジェットプリンタ(PX−G930、セイコーエプソン(株)製)のカートリッジに充填し、各種の被記録媒体に印字した。
【0118】
(専用紙光沢評価)
専用紙である、インク受理層を有する写真用紙(光沢)〔セイコーエプソン(株)製〕にベタ印字した。BYKガードナー社製ヘイズグロスメータを用いて、得られた印字物表面の20°グロス値を測定し、専用紙特性として、光沢性を判定した。表中にグロスとして表示した。
○:(グロス値)≧65
×:(グロス値)<65
【0119】
(擦過性)
専用紙である、写真用紙(光沢)〔セイコーエプソン(株)製〕を用いて評価を行った。同写真用紙にベタ印字を行い、印字直後、10分乾燥後にそれぞれ印字部を指で擦過し、こすれ具合を目視で評価した。表中に擦過性評価として表示した。評価基準を以下に記す。
A:印字は全くとれない
B:印字は殆どとれず、下地は汚れない
C:印字が擦りとられるが、下地は汚れない
D:印字が擦りとられ、下地が汚れる
E:印字が顕著に擦りとられ、下地もひどく汚れる
印字直後
○:A、B、C
×:D、E
10分後
○:A、B
×:C、D、E
【0120】
(グロスチェンジ(以下GCと略す))
専用紙である、写真用紙(光沢)〔セイコーエプソン(株)製〕を用いて評価を行った。同写真用紙にベタ印字を行い、一日乾燥後に印字部を指で擦過し、印刷表面の光沢の変化具合を目視で評価した。表中にGC評価として表示した。評価基準を以下に記す。
A:印字物に光沢の変化はない
B:印字物にわずかに光沢の変化が見られる。
C:印字物に光沢の変化が見られる。
D:印字部が擦りとられる。
○:A、B
×:C、D
【0121】
<実施例16>
実施例15のウレタン樹脂水溶液U1の1.1部を3.2部に、水46.4部を44.3部に変更する以外は実施例15と同様にして、インクジェット記録用水性顔料インクを調製し、評価した。
【0122】
<実施例17>
実施例15のウレタン樹脂水溶液U1の1.1部を合成例10で得たウレタン樹脂水溶液U2の3.2部に、水46.4部を44.3部に変更する以外は実施例15と同様にして、インクジェット記録用水性顔料インクを調製し、評価した。
【0123】
<実施例18>
実施例15のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C1を実施例2で製造したインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C2に、ウレタン樹脂水溶液U1の1.1部を2.0部に、水46.4部を45.5部に変更する以外は実施例15と同様にして、インクジェット記録用水性顔料インクを調製し、評価した。
【0124】
<実施例19>
実施例15のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C1を実施例3で製造したインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C3に変更する以外は実施例15と同様にして、インクジェット記録用水性顔料インクを調製し、評価した。
【0125】
<実施例20>
実施例15のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C1を実施例4で製造したインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C4に、ウレタン樹脂水溶液U1の1.1部を0.9部に、水46.4部を46.6部に変更する以外は実施例15と同様にして、インクジェット記録用水性顔料インクを調製し、評価した。
【0126】
<実施例21>
実施例15のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C1を実施例5で製造したインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C5に、ウレタン樹脂水溶液U1の1.1部を2.7部に、水46.4部を44.8部に変更する以外は実施例15と同様にして、インクジェット記録用水性顔料インクを調製し、評価した。
【0127】
<実施例22>
実施例15のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C1を実施例6で製造したインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C6に、ウレタン樹脂水溶液U1の1.1部を1.3部に、水46.4部を46.2部に変更する以外は実施例15と同様にして、インクジェット記録用水性顔料インクを調製し、評価した。
【0128】
<実施例23>
実施例15のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C1を実施例7で製造したインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C7に、ウレタン樹脂水溶液U1の1.1部を1.6部に、水46.4部を45.9部に変更する以外は実施例15と同様にして、インクジェット記録用水性顔料インクを調製し、評価した。
【0129】
<実施例24>
実施例15のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C1を実施例8で製造したインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C8に、ウレタン樹脂水溶液U1の1.1部を3.0部に、水46.4部を44.5部に変更する以外は実施例15と同様にして、インクジェット記録用水性顔料インクを調製し、評価した。
【0130】
<実施例25>
実施例15のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C1を実施例9で製造したインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C9に、ウレタン樹脂水溶液U1の1.1部を3.4部に、水46.4部を44.1部に変更する以外は実施例15と同様にして、インクジェット記録用水性顔料インクを調製し、評価した。
【0131】
<実施例26>
実施例15のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C1を実施例10で製造したインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C10に、ウレタン樹脂水溶液U1の1.1部を2.0部に、水46.4部を45.5部に変更する以外は実施例15と同様にして、インクジェット記録用水性顔料インクを調製し、評価した。
【0132】
<実施例27>
実施例15のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C1を実施例11で製造したインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C11に、ウレタン樹脂水溶液U1の1.1部を1.8部に、水46.4部を45.7部に変更する以外は実施例15と同様にして、インクジェット記録用水性顔料インクを調製し、評価した。
【0133】
<実施例28>
実施例12で製造したインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物M1を用い、以下の組成にてインクジェット記録用水性顔料インクを調製し、実施例15と同様に評価を行った。
インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物M1 40.0部
ウレタン樹脂水溶液U1 1.6部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10.0部
ジエチレングリコール 15.0部
サーフィノール465 0.8部
水 32.6部
【0134】
<実施例29>
実施例13で製造したインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物Y1を用い、以下の組成にてインクジェット記録用水性顔料インクを調製し、実施例15と同様に評価を行った。
インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物Y1 39.9部
ウレタン樹脂水溶液U1 1.4部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10.0部
ジエチレングリコール 15.0部
サーフィノール465 0.8部
水 32.9部
【0135】
<実施例30>
実施例14で製造したインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C14を用い、以下の組成にてインクジェット記録用水性顔料インクを調製し、実施例15と同様に評価を行った。
インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C14 26.6部
ウレタン樹脂水溶液U1 2.8部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10.0部
ジエチレングリコール 15.0部
サーフィノール465 0.8部
水 44.8部
【0136】
<比較例3>
比較例1で製造したインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C12を用い、以下の組成にてインクジェット記録用水性顔料インクを調製し、実施例15と同様に評価を行った。
インクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C12 26.7部
ウレタン樹脂水溶液U1 2.1部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10.0部
ジエチレングリコール 15.0部
サーフィノール465 0.8部
水 45.4部
【0137】
<比較例4>
比較例2のウレタン樹脂水溶液U1をウレタン樹脂水溶液U2に変更する以外は比較例3と同様にして、インクジェット記録用水性顔料インクを調製し、評価を行った。
【0138】
<比較例5>
比較例3のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C12を比較例2で製造したインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物C13に変更する以外は比較例3と同様にして、インクジェット記録用水性顔料インクを調製し、評価を行った。
これらの各評価項目の測定結果は、まとめて表3に示した。
【0139】
【表3】


*) 擦過性の0の列は印字直後における試験結果、10の列は印字10分後の試験結果
を表わす。
【0140】
この結果、本発明のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物を使用したインクジェット記録用水性顔料インクは、グロスチェンジ及び擦過性に関して合格値以上であった。更に、ポリオキシアルキレン構造又はポリラクトン構造の導入比率の高いものは、ウレタン20°GLOSS値が65以上と高い結果が得られた。
これに対し、ポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)を必須構成成分とした共重合体を含まないインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物を使用した比較例3〜5では、グロスチェンジが悪く、擦過性のバランスがとれなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)顔料、及び、(2)ポリオキシアルキレン構造又はポリラクトン構造を有する重合性不飽和単量体(a)とポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)とを必須構成成分とした共重合体(A)を含むことを特徴とするインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物。
【請求項2】
前記ポリウレタン構造を有する重合性不飽和単量体(b)におけるポリウレタン構造が酸基を含む、請求項1にインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載のインクジェット記録用水性顔料分散体含有組成物を含有することを特徴とするインクジェット記録用水性インク。
【請求項4】
ポリウレタン樹脂を含有する、請求項3に記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項5】
前記ポリウレタン樹脂が酸基を含む、請求項4に記載のインクジェット記録用水性インク。

【公開番号】特開2011−219650(P2011−219650A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91310(P2010−91310)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】