説明

インクジェット記録用紙及びその製造方法

【課題】 インク吸収性や発色性に著しく優れると共に、ダル調の光沢度があるインクジェット記録用紙を提供する。
【解決手段】 支持体、該し支持体上に準じ設けたインク吸収層及びコロイダルシリカ層とからなるインクジェット記録用紙。前記コロイダルシリカ層は、鎖状コロイダルシリカを主体とすると共に乾燥後の塗布量が1〜6g/mである層を、2層以上積層してなる層である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はインクジェット記録用紙及びその製造方法に関し、特に、印刷物のプルーフに使用できるほど画像の再現性がよく、かつ高級感のあるダル調の光沢感を有し、インク吸収性が良好で、インク吐出量の多いフォトタイプインクジェットプリンターに適した、インクジェット記録用紙及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット記録はインク滴を各種の方法によって飛翔させ、画像を形成させるため、印刷の高速化やフルカラー化が容易である上、装置が低価格であることから、近年目覚ましい普及を遂げている。それに伴い、インクジェット記録用紙の市場が多様化してきた。例えば、従来はインキと校正版を用いて行われていた印刷物のプルーフ作製を、インクジェットプリンターで行いたいという要望が高まってきている。特に、最近のフルカラーインクジェットプリンターでは、インク滴の微小化や染料濃度の薄いフォトインクの使用などにより、専用紙を使用した場合には銀塩写真に迫る画質を実現できるプリンターが出現している。
【0003】一般の印刷では、要求される印刷物の仕上がり感に応じた光沢度の紙が用いられており、例えば、キャストコート紙(グロスタイプ)、アート紙(セミグロスタイプ)、ダルアート紙(ダル調タイプ)、コート紙、微塗工紙、上質紙(マットタイプ)等が用途に応じて用いられている。このため、印刷用プルーフ用紙にも印刷用紙と同様に種々の光沢感を持つことが求められている。しかしながら、インクジェットプリンターに使用される記録用紙は、従来、光沢が高いグロスタイプか光沢の殆どないマットタイプに分類される。
【0004】光沢のあるインクジェット記録用紙を得るための従来技術としては、特開平7-101142号公報に記載されたような、インク受理層の上に粒子径が300nm以下のコロイド粒子の層を設け、75度鏡面光沢度が25%以上という光沢度を有するインクジェット記録用紙を得る方法や、特開平9-183265号公報に記載されたような、支持体上にコロイダルシリカと接着剤を含有するインク受理層を2層以上設ける方法、あるいは、特開平3-215080号、特開平3-256785号、特開平7-89220号、特開平7-117335号各公報に記載されたような、インク受理層を2層以上にして上層を光沢発現層にする方法等が開示されている。
【0005】これらの従来技術においては、いずれも写真やアートコート紙あるいはキャストコート紙に印刷された印刷物のように、かなり光沢レベルの高い製品を得ることが目的であるために、フィルムベースを用いたり、仕上げとして光沢がよりでやすい製法であるキャスト法や転写法を用いたり、あるいはコロイダルシリカの塗布量を極めて多くすることが行われている。
【0006】いずれにしても、光沢感を付与するためには、粒子径の小さな顔料すなわちシリカなどのコロイド粒子とバインダーを用いることとなるが、球状のコロイド粒子を用いると造膜後の空隙が小さくなるのでインク吸収速度が小さくなるという欠点がある。また、コロイダルシリカは合成非晶質シリカのような内部空隙を持たないので、コロイダルシリカを使用する場合には、必要とされるインク吸収容量を得るためにインク吸収層を厚く塗布する必要がある。しかしながら、インク吸収層を厚く塗布すると粉落ち現象が発生しやすくなる。そこで、バインダーの配合量を増やして粉落ちを防止した場合には、特に表面での吸収速度が遅くなってブリード現象が発生し、高解像度の印字ができないという欠点があった。
【0007】一方、インク受理層中の空隙が大きいとインク吸収速度が大きくなり、インク受理層に用いる顔料の比表面積を大きくすると大容量のインクを吸収することのできることが知られている。そこで、インク受理層には合成シリカのような一次粒子の小さいものを凝集させた、すなわち、比表面積が大きく粒子径が数μm以上の大きな合成非晶質シリカなどの顔料が広く用いられているが、これらの顔料を用いたインクジェット記録用紙は光沢感が殆どない、いわゆるマットタイプとなる。このように、従来の方法では、軽量コート紙やカレンダー仕上げのないダル調印刷用紙のような、適度な光沢感があるインクジェット記録用紙を製造することはできない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明の目的は、近年のフォトタイプ高解像度インクジェットプリンターを使用してもブリード現象が発生しない程度の十分なインク吸収性をもち、発色濃度が高く色の再現性に優れた印字物を得ることができると共に、軽量コート紙やカレンダー仕上げのないダル調印刷用紙のような適度な光沢感、すなわちダル調の適度な光沢感がある、印刷物のプルーフ作製に使用可能なインクジェット記録用紙及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の上記の目的は、支持体上にインク吸収層を設け、その上に各層の塗布量が1〜6g/mの鎖状のコロイダルシリカを主体とするコロイダルシリカ層を2層以上設けてなるインクジェット記録用紙によって解決された。特に、前記コロイダルシリカ層表面の75度鏡面光沢度が10%以上60%以下で、かつ、20度鏡面光沢度が10%以下となるようにすると共に、少なくとも、最表層に設けるコロイダルシリカ層に使用する鎖状のコロイダルシリカとしてカチオン性コロイダルシリカを使用することにより良好なインクジェット記録用紙が得られ、これは、鎖状のコロイダルシリカを主体とするコロイダルシリカ層を設ける前に、インク受理層をカレンダー処理することにより容易に製造される。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明におけるコロイダルシリカ層とは、光沢度、インクの濃度及び色再現性を本発明の目的に添うように調整する層である。また、本発明のコロイダルシリカ層に使用するコロイダルシリカは、鎖状、すなわち一次粒子である球状コロイダルシリカがある特定の個数、直列にあるいは一部分岐してつながったものである。その大きさ(長さ)は、レーザー散乱法で40〜200nmであることが好ましい。
【0011】コロイダルシリカの大きさ(長さ)が40nm未満である場合や、鎖状ではないいわゆる球状のコロイダルシリカでは、光沢感は得られるもののインクの吸収性が充分でなく、インク吸収速度が遅いために、混色の境界部でブリード現象と呼ばれるにじみが発生しやすく、特に多量のインクを吐出するフォトタイプインクジェットプリンターには適さない。
【0012】また、本発明で使用する鎖状コロイダルシリカは、一次粒子が3〜40nmのものからなることが好ましい。一次粒子が3nm未満のものは安定的に製造することが困難であり、40nmを越えると鎖状コロイダルシリカの比表面積が小さくなるため、コロイダルシリカ層におけるインクの補足率が低下するので発色性、すなわち発色濃度と色再現性が不十分となる。
【0013】ところで、一般に良く知られるコロイダルシリカは、粒子の形状が球状であってそれ自体がある程度の造膜性を有し、その傾向は粒子径が小さいものほど顕著である。粒子径の大きな球状コロイダルシリカを用いた場合には、造膜性を確保するためにバインダーが必要となり、コロイダルシリカ層のインク吸収速度が小さくなる。
【0014】一方粒子径の小さい球状コロイダルシリカは、造膜性は良いが、造膜後の空隙が小さくインク吸収速度は小さい。そこで本発明のように鎖状コロイダルシリカを使用すると、造膜時にコロイダルシリカ同士が適度に絡み合うので、バインダーを用いなくてもシリカ粒子の脱落が抑制されるのみならず、特に大きなインク吸収速度を必要とするフォトタイプインクジェットプリンターへ使用する際に求められる、適度な大きさの空隙が得られる。
【0015】尚、コロイダルシリカ層に通常の球状コロイド粒子を用いると、コロイダルシリカ層の塗工液がインク吸収層に浸透する。従って、光沢を発現させようとするとコロイダルシリカ層の塗布量を非常に多くする必要があるのでコスト高となる。また、インク吸収層の空隙に球状コロイド粒子が入り込み、インク吸収層の空隙を埋めることにもなるので、インク吸収速度が遅くなり、ブリード現象が発生しやすくなるため、多量のインクを吐出するフォトタイプインクジェットプリンターの記録用紙としては好ましくない。これに対し、本発明のように、鎖状でかつ特定の大きさを有するコロイダルシリカを用いた場合には、インク吸収層へのコロイダルシリカ層塗工液の浸透が抑制されるので、適度な塗工量で光沢が充分なものとなるのである。
【0016】本発明で使用する鎖状コロイダルシリカは、染料の定着あるいは耐水性の観点から、カチオン性であることが有利である。従って少なくとも最表層のコロイダルシリカ層にはカチオン性の鎖状コロイダルシリカを使用することが好ましい。また、耐水性はインクジェット記録用紙に要求される基本性能の一つであるのでコロイダルシリカ層にも耐水性を付与する必要があるが、通常染料定着剤はカチオンであるため、アニオン性のコロイダルシリカを混合することはできない。
【0017】そこで本発明においては、それ自身にも耐水性があると共に染料定着剤との併用もできるカチオン性鎖状コロイダルシリカを使用することが好ましく、耐水性を向上させる観点から、少なくとも最表層にはカチオン性のコロイダルシリカを使用することが特に好ましい。コロイダルシリカ層がアニオン性コロイダルシリカ層のみから構成されている場合には、乾燥速度が遅く、裏写りが発生しやすい。
【0018】充分な画像発色性を得るためには、コロイダルシリカ層はある程度厚いことが必要であるが、一回の塗布量を多くすると、乾燥後に粉落ちが生じる傾向が強くなる。そこで、粉落ち防止のためにバインダーを併用することも不可能ではないが、バインダーを併用した場合には特に表面でのインク吸収速度が遅くなり、ブリード現象が発生するため、高解像度の印字ができなくなる。従って、できるだけバインダーを使用しないことが好ましい。
【0019】この点、本発明で使用するコロイダルシリカは自己接着力が強く、基本的にはバインダーを必要としない。しかしながら、コロイダルシリカが粉落ちしないように、本発明においては一定の塗布量以下で形成されるコロイダルシリカ層を2層以上設けることが必要となる。この場合、コロイダルシリカ層1層あたりの塗布量は1〜6g/mであることが好ましく、より好ましくは1.5〜4g/mである。
【0020】コロイダルシリカ層中には、本発明の効果を損なわない程度に、染料定着剤、サイズ剤、消泡剤、色味調整剤などの各種添加剤を加えることが可能である。この場合、コロイダルシリカ層中の鎖状コロイダルシリカの割合は、90重量%以上であることが好ましい。
【0021】1回あたりの塗布量が1g/m未満であると、塗工回数を増やすことによってある程度の光沢が得られるものの、塗工面の均一性が不十分となる上塗工回数が増えるので製造コストも増加する。逆に、一回あたりの塗布量が6g/mを越えると、粉落ちが発生する上乾燥後の塗工層にひび割れが多くなり、印字の際にインクがヒビ割れの溝にそって表面を流れる現象が発生し、画像が乱れるので好ましくない。
【0022】本発明のコロイダルシリカ層はダル調であることが好ましい。ダル調とは印刷用コート紙の白紙光沢感を表す表現の一つで、しっとりと落ち着いた光沢感を意味する。このダル調を達成するために、75度鏡面光沢度が10〜60%であると同時に20度鏡面光沢度が10%以下であることが好ましい。より好ましくは75度鏡面光沢度が15%〜50%であると同時に20度鏡面光沢度が5%以下である。75度鏡面光沢度が10%以下ではダル調と呼ばれる光沢感が得られず、逆に60%を超えるとダル調というよりもグロス調という光沢感になる。20度鏡面光沢度が10%を超えるとダル調のしっとりとした光沢感が得られない。
【0023】光沢度はコロイダルシリカ層の総厚とカレンダー仕上げの条件で調整できる。コロイダルシリカ層の総厚を大きくする程、また、カレンダー処理線圧を高める程75度鏡面光沢度は向上する。このため、本発明の構成で75度鏡面光沢度が60%を超えるまでカレンダー処理線圧を高めると、結果的に表面が緻密となってインク吸収速度が遅くなり、ブリード現象が生じる。
【0024】本発明において使用する支持体は、シート状のものである限り特に限定されない。例えば、紙を初め、ポリエチレン、セロハン、ポリプロピレン、ポリエステルやポリ塩化ビニル等のフィルム類等を使用することができるが、コストや環境問題を考慮すると、安価でかつ再生可能な上質紙、アート紙、コート紙等の紙を用いることが好ましい。
【0025】支持体上に設けるインク吸収層は特に限定されるものではないが、比表面積や吸油量が大きい顔料と、水溶性または水分散性のバインダーを主成分とすることが好ましい。顔料としては、例えばカオリン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等を用いても良いが、特に無定形シリカ、合成非晶質シリカ、又はアルミナゾルを用いることが好ましい。
【0026】水溶性または水分散性のバインダーとしては、たとえばポリビニルアルコールやカゼイン、デンプン、ゼラチンなどの水溶性高分子、または、スチレン−ブタジエンラテックスやアクリル系ラテックス、酢酸ビニル系ラテックス等の水分散性高分子を用いることができる。
【0027】本発明におけるインク吸収層の塗布量は、目標に応じて適宜決定する。例えば、吸収性の大きな合成非晶質シリカ等の顔料が主体となった受理層では、単位体積あたりの空隙も大きいので塗布量としては少なくてもよいが、比較的吸収性の劣る焼成クレー等の顔料が主体となった受理層では、空隙が少ないので塗布量としては多くする必要がある。また、インク吸収層には、本発明の効果を損なわない程度に、必要に応じ、ポリアミン、第三級、第四級アンモニウム塩等のカチオン性樹脂や分散剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、サイズ剤、界面活性剤等を適宜添加することができる。
【0028】インク吸収層の表面が平滑であるとコロイダルシリカ層を均一に塗布することができるので、本発明においてはインク吸収層を塗布した後に、その表面をカレンダー処理することが好ましい。本発明におけるコロイダルシリカ層及びインク吸収層は、各種のブレードコータ、ロールコータ、エアーナイフコータ、バーコータ、カーテンコータ、ロッドブレードコータ等、各種の塗工装置を用いて適宜設けることができる。
【0029】インク吸収層表面やコロイダルシリカ層表面をカレンダー処理する場合には、各種のカレンダー装置を使用することができる。最終仕上げのカレンダー装置としては、スーパーカレンダーやソフトカレンダー等の、弾性ロールと金属ロールを組み合わせた装置を用いることが、光沢ムラや塗工層のヒビ割れの発生を少なくする上で好ましい。特にショア硬度Dで60〜90の範囲の弾性ロールを用いたソフトカレンダー装置を、線圧50〜200kgで使用した場合には、コロイダルシリカ層の空隙をつぶすこと無くダル調光沢を得やすい。
【0030】
【発明の効果】本発明のインクジェット記録用紙は、インク吸収性を有するインク吸収層の上に鎖状コロイダルシリカ層を有するので、印字ドットの発色性及び真円性に優れると共にダル調でしっとりとした光沢を有する上、フォトインクタイプインクジェットプリンターで印字しても十分なインク吸収性を具備した、高品位のインクジェット記録用紙である。
【0031】
【実施例】以下に実施例をあげて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。また、実施例中の配合部及び%は、特に断らない限りそれぞれ重量部及び重量%である。
【0032】実施例1.
支持体の作製支持体は、濾水度380mlのLBKP 85部と同500mlのNBKP 15部、填料としてタルク 15部、市販のロジン系サイズ剤 0.5部、市販のカチオン化でんぷん 0.3部、硫酸バンド 0.5部、及び、市販の紙力増強剤 0.1部を水に添加して0.8%のスラリーとした後、長網抄紙機を用い、坪量が130g/mとなるように抄造した。
【0033】インク吸収層用カラーの作製及び塗工合成非晶質シリカ(ファインシールX37B、徳山曹達製)100部、ポリビニルアルコール(PVA117、クラレ製)25部、エチレン酢酸ビニル共重合体エマルション(スミカフレックス401、住友化学製)10部、ノニオン性SBラテックス(LX438C、日本ゼオン製)5部、染料定着剤(ポリフィックス700、昭和高分子製)8部、消泡剤(SNデフォーマー480、サンノプコ社製)0.2部、カチオン性サイズ剤(ポリマロン360、荒川化学社製)3部及びブルーイング剤 0.005部、及び蛍光染料0.5部を水に添加して、固形分濃度が20%のインク吸収層用カラーを製造した。このカラーを、前述の支持体上に乾燥後の重量が15g/mとなるようにバーブレードコータで塗布し、塗工紙全体の水分率が4.5%となるまでスキャッフドライヤーで乾燥し、インク吸収層塗工紙■を得た。
【0034】コロイダルシリカ層の塗工上記のインク吸収層塗工紙■のインク吸収層上に、粒子径が80nmのアニオン性鎖状コロイダルシリカ(スノーテックスUP、日産化学社製)100部及び消泡剤(KM-72F、信越化学社製)0.2部を水に添加してなる20%スラリーを、バーブレードコーターを用い、乾燥後の重量が2g/mとなるように塗工し、水分率が4.5%となるまで乾燥して、第一コロイダルシリカ層とした。
【0035】次に、第二コロイダルシリカ層として、粒子径が90nmのカチオン性鎖状コロイダルシリカ(スノーテックスOUP、日産化学社製)100部、染料定着剤(ポリフィックス700、昭和高分子社製)6部、カチオン性サイズ剤(ポリマロン360、荒川化学社製)3部、消泡剤(KM-72F、信越化学社製)0.2部を水に添加してなる15%スラリーを、バーブレードコータを用いて乾燥後の重量が2g/mとなるように塗工した。
【0036】次いで裏面に、モビニール747を100部及びステアリン酸カルシウム(ノプコートC104H)0.1部を含有するカール修正液を乾燥後の重量が0.5g/mとなるように塗工し、水分率が4.8%となるまで乾燥した後、ソフトカレンダー装置にて、線圧100kg/cmの条件で仕上げ表面処理を行い、75度鏡面光沢度が20%のインクジェット用記録用紙を得た。
【0037】実施例2.第一、第二コロイダルシリカ層とも、粒子径が90nmのカチオン性コロイダルシリカ(スノーテックスOUP、日産化学社製)100部、染料定着剤(ポリフィックス700、昭和高分子社製)6部、カチオン性サイズ剤(ポリマロン360、荒川化学社製)3部、消泡剤(KM-72F、信越化学社製)0.2部を水に添加してなる15%のスラリーを、乾燥後の重量が2g/mとなるように塗工したこと以外は実施例1と全く同様にして、75度鏡面光沢度が22%のインクジェット用記録用紙を得た。
【0038】実施例3.第一コロイダルシリカ層で使用したスラリーを、粒子径が125nmのカチオン性コロイダルシリカ(スノーテックスSO、日産化学社製)100部、染料定着剤(ポリフィックス700、昭和高分子社製)6部、カチオン性サイズ剤(ポリマロン360、荒川化学社製)3部、及び消泡剤(KM-72F、信越化学社製)0.2部を水に添加してなる15%のスラリーに代えたこと以外は実施例1と全く同様にして、75度鏡面光沢度が18%のインクジェット用記録用紙を得た。
【0039】実施例4.インク吸収層を、ソフトカレンダー装置を用いて、線圧80kg/cmで予め処理した後コロイダルシリカ層を設けたこと以外は実施例2と全く同様にして、75度鏡面光沢度が45%のインクジェット記録用紙を得た。
【0040】実施例5.コロイダルシリカ層の第二層を設けた後に仕上げのソフトカレンダー処理を行わなかったこと以外は、実施例4と全く同様にして、75度鏡面光沢度が35%のインクジェット用記録用紙を得た。
【0042】比較例1.第一コロイダルシリカ層で使用したスノーテックスUPの代りに粒子径20nmの球状アニオン性コロイダルシリカを用い、第二コロイダルシリカ層で使用したスノーテックスOUPの代りには粒子径が40nmの球状カチオン性コロイダルシリカを使用したこと以外は実施例1と全く同様にして、75度鏡面光沢度が23%のインクジェット用記録用紙を得た。
【0043】比較例2.第一コロイダルシリカ層及び第二コロイダルシリカ層のコロイダルシリカとして、粒子径が40nmの球状カチオン性コロイダルシリカを使用したこと以外は、実施例1と全く同様にして、75度鏡面光沢度が20%のインクジェット用記録用紙を得た。
【0044】比較例3.第一コロイダルシリカ層のみを設け第二コロイダルシリカ層を設けなかったこと以外は、実施例2と全く同様にして、75度鏡面光沢度が15%のインクジェット用記録用紙を得た。
【0045】比較例4.第一コロイダルシリカ層の塗工量を8g/mとしたこと以外は比較例3と全く同様にして、75度鏡面光沢度が25%のインクジェット用記録用紙を得た。
【0046】比較例5.第一コロイダルシリカ層のコロイダルシリカとして粒子径が80nmのアニオン性鎖状コロイダルシリカ(スノーテックスUP、日産化学社製)100部を使用したこと以外は、比較例4と全く同様にして、75度鏡面光沢度が22%のインクジェット用記録用紙を得た。
比較例6.第二コロイダルシリカ層の塗工量を8g/mとしたこと以外は実施例2と全く同様にして、75度鏡面光沢度が32%のインクジェット用記録用紙を得た。
【0047】比較例7.第一コロイダルシリカ層及び第二コロイダルシリカ層として、粒子径が90nmのカチオン性コロイダルシリカ(スノーテックスOUP、日産化学社製)100部、ポリビニルアルコール(PVA117、クラレ社製)20部、及び消泡剤(KM-72F、信越化学社製)0.2部を水に添加してなる15%のカラーを、乾燥後の重量が2g/mとなるように塗工したこと以外は、実施例2と全く同様にして75度鏡面光沢度が15%のインクジェット用記録用紙を得た。
【0048】比較例8.塗工量を、第一及び第二コロイダルシリカ層とも0.5g/mとしたこと以外は、実施例2と全く同様にして75度鏡面光沢度が8%のインクジェット用記録用紙を得た。
【0049】比較例9.インク吸収層塗工紙■にコロイダルシリカ層を設けず、75度鏡面光沢度が4%のインクジェット記録用紙を得た。
【0050】比較例10.第一、第二コロイダルシリカ層の代りに、粒子径18nmの擬ベーマイト系アルミナゾル(アルミナソ゛ル-520 日産化学社製)を塗布・乾燥してなる層を設けたこと以外は、比較例6と全く同様にして75度鏡面光沢度が45%のインクジェット記録用紙を得た。
【0051】以上の実施例及び比較例の処法を表1にまとめた。
【表1】


【0052】得られた記録紙について種々の評価を行った結果は表2に示した通りである。
【表2】


【0053】以下に、得られた用紙の評価方法について記述する。表中の◎又は○の評価であれば実用上問題がないが、△以下の評価では実用上の問題がある。
1)光沢度JIS-P-8142及びJIS-Z-8141に準拠して、村上色彩技術研究所製鏡面光沢度計(GM-26for75度、GM-26D)により測定した、75度及び20度における鏡面光沢度である。
2)発色性発色性は、発色濃度とドットの真円性及びブリードによる境界にじみを評価した。
【0054】2-1)発色濃度セイコーエプソン社製のインクジェットプリンターPM-750Cを用いて、表計算ソフト『エクセル』で黒(BK)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黄色(Y)のベタ画像を作製し、プリンター添付のプリンタードライバーの設定を、印字品質についてはスーパーファイン、用紙については専用光沢紙をそれぞれ選択してプリントアウトした。恒温恒湿室にて一日間放置した後、マクベス濃度計(RD915、Macbeth社製)を用いて各色の印字濃度を測定し、その平均値を平均濃度とした。
【0055】評価基準◎:平均濃度が1.8以上である○:平均濃度が1.7以上〜1.8未満の範囲である△:平均濃度が1.6以上〜1.7未満の範囲である×:平均濃度が1.6未満である
【0056】2-2)真円性1)発色濃度と同様にしてグレー色の画像を印字し、顕微鏡にて250倍に拡大したドットの形状を、目視により以下の基準で評価した。
◎:輪郭がほぼ真円に近い○:輪郭はなめらかであり、形もほぼ円形である△:輪郭が乱れかつ円というよりむしろ楕円形である×:輪郭がぎざぎざで円とは言い難い
【0057】2-3)インク吸収性マゼンタとグリーンのベタ画像が隣接するパターンを印字し、その境界部分の滲み(ブリード)を下記の基準にて目視によって評価した。マゼンタとグリーンで生じる境界にじみ部は黒色になるため、より厳密な評価ができる。
◎:境界部で滲みが全く認められない○:境界部で滲みがほとんど認められない△:境界部で滲みがやや認めらる×:境界部で滲みが著しく認められる
【0058】3)表面強度記録面にセロテープを貼り、ゴムローラで20回強くこすり、端部をバネばかりに固定して180°の方向に対する剥離強度を測定し、下記の基準で評価した。
◎:剥離強度が500g以上である○:剥離強度が300g以上〜500g未満の範囲である△:剥離強度が200g以上〜300g未満の範囲である×:剥離強度が200g未満の範囲である
【0059】4)塗工層のヒビ割れ塗工層表面を電子顕微鏡で300倍に拡大した写真を、以下の基準により目視にて評価した。
◎:ひび割れ(亀裂)が全く認められない○:ひび割れ(亀裂)がやや(1〜2個/1視野)認められる△:ひび割れ(亀裂)がかなり(5〜10個/1視野)認められる×:ひび割れ(亀裂)が全面(10個以上/1視野)に認められる
【0060】表2の結果から明らかな如く、本発明のインクジェット記録用紙の場合には、フォトインク搭載のプリンターで印字しても十分な吸収性を有するインク吸収層と、その上にこのインク吸収性を損ねない範囲の塗布量の鎖状コロイダルシリカ層を有するので、しっとりとした面感のいわゆるダル調の印刷用紙のような光沢が白紙及び印字部においても達成される。従って、絵柄はもちろんのこと文字も、光沢が高すぎてギラつくということがないので読みやすく、しかも光沢紙と同等の高い発色性が得られることが実証された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体、該支持体上に順次設けたインク吸収層、及び、鎖状コロイダルシリカを主体とする2層以上のコロイダルシリカ層とからなるインクジェット記録用紙であって、前記コロイダルシリカ層の各層の塗布量が1〜6g/mであることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【請求項2】 コロイダルシリカ層表面の75度鏡面光沢度が10%以上60%以下であると共に、20度鏡面光沢度が10%以下である、請求項1に記載されたインクジェット記録用紙。
【請求項3】 少なくとも最表層に設けるコロイダルシリカ層に使用する鎖状コロイダルシリカがカチオン性である、請求項1又は2に記載されたインクジェット記録用紙。
【請求項4】 支持体上に、順次インク吸収層、及び、鎖状コロイダルシリカを主体とするコロイダルシリカ層を2層以上設けるインクジェット記録用紙の製造方法であって、前記鎖状コロイダルシリカを主体とするコロイダルシリカ層を設ける前にインク吸収層をカレンダー処理することを特徴とする、インクジェット記録用紙の製造方法。

【公開番号】特開2000−190626(P2000−190626A)
【公開日】平成12年7月11日(2000.7.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−372870
【出願日】平成10年12月28日(1998.12.28)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】