説明

インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法

【課題】光輝性に優れた画像を形成するモードと、適度な光輝性と優れた耐ガス性を有する画像を形成するモードと、使用者が適宜選択することができるインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】本発明のインクジェット記録装置は、光輝性顔料が分散した光輝性インクと、色材を実質的に含まないクリアインクとを用いて画像を記録するインクジェット記録装置であって、インクジェット法により光輝性インクのみを記録媒体に吐出し画像を形成する第1モードと、インクジェット法により光輝性インクを記録媒体に吐出して第1画像を形成する工程と、第1画像上にインクジェット法によりクリアインクを吐出して第2画像を形成し、第1画像と第2画像とからなる画像を形成する工程とを備えた第2モードとを有し、第1モードおよび第2モードからモードを選択して記録媒体に画像を記録することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録面に光輝性を有する画像が形成された記録物の需要が高まっている。光輝性を有する画像を形成する方法としては、従来は、例えば、平坦性の高い記録面を有する記録媒体を準備して、これに金属箔を押しつけて記録する箔押し記録法、記録面が平滑なプラスチックフィルムに対して金属等を真空蒸着する方法、および、記録媒体に光輝性顔料インキを塗布し、さらにプレス加工を行う方法等が知られている。
また、インクジェット法によって光輝性顔料を有するインク(以下、光輝性インクという)を吐出して記録する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。光輝性インクを用いた記録方法によれば、光輝性を有する画像を簡便に形成することができるとともに、種々の画像を容易に形成することができるという利点がある。
【0003】
ところで、光輝性インクを用いて記録された画像(メタリック画像)は、印刷直後は金属光沢を有しているが、大気中のオゾンガス等によって、経時的に光輝性(光沢)が低下するという問題がある。このような経時的低下を防止するために、透明インク(クリアインク)を表面に付与してメタリック画像を保護する方法等が挙げられる。
しかし、メタリック画像の表面に透明インクを付与した場合、経時的な光輝性の低下は抑制することはできるが、メタリック画像のみの場合と比較して、メタリック画像の光沢度が低下するといった問題もあった。このため、高い光輝性が必要なのか、高い耐久性(耐ガス性)が必要なのかによって、そのニーズに合わせた画像を容易に形成することが可能なインクジェット記録装置が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−174712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、光輝性に優れた画像を形成するモードと、適度な光輝性と優れた耐ガス性を有する画像を形成するモードと、使用者が適宜選択することができるインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のインクジェット記録装置は、光輝性顔料が分散した光輝性インクと、色材を実質的に含まないクリアインクと、を用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、
インクジェット法により、実質的に前記光輝性インクのみを前記記録媒体に吐出し前記画像を形成する第1モードと、
インクジェット法により前記光輝性インクを前記記録媒体に吐出して第1画像を形成する工程と、当該第1画像上にインクジェット法によりクリアインクを吐出して第2画像を形成し、前記第1画像と前記第2画像とからなる前記画像を形成する工程とを備えた第2モードとを有し、
前記第1モードおよび前記第2モードからモードを選択して前記記録媒体に前記画像を記録することを特徴とする。
これにより、光輝性に優れた画像を形成するモードと、適度な光輝性と優れた耐ガス性を有する画像を形成するモードと、使用者が適宜選択することができるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0007】
本発明のインクジェット記録装置では、前記第1モードおよび前記第2モードの他に、
インクジェット法により、前記光輝性インクを、前記記録媒体に前記第1モードの場合よりも単位面積当たりの吐出量を多く吐出して前記画像を形成する第3モードを有し、
前記第1モード、前記第2モードおよび前記第3モードからモードを選択して前記記録媒体に前記画像を記録することが好ましい。
これにより、低コストで画像を形成することができる。
【0008】
本発明のインクジェット記録装置では、前記第1モードおよび前記第2モードの他に、
インクジェット法により前記光輝性インクを前記記録媒体に吐出して第1画像を形成する工程と、当該第1画像上にインクジェット法によりクリアインクを吐出して第2画像を形成し、前記第1画像と前記第2画像とからなる前記画像を形成する工程とを備え、前記光輝性インクを、前記記録媒体に前記第2のモードの場合よりも単位面積当たりの吐出量を多く吐出して前記画像を形成する第4モードを有し、
前記第1モード、前記第2モードおよび前記第4モードからモードを選択して前記記録媒体に前記画像を記録することが好ましい。
これにより、使用者の求める画像の品質の選択の幅を広げることができる。
【0009】
本発明のインクジェット記録装置では、ユーザーの指示を受け付ける制御手段を備え、
前記制御手段が受け付けた前記指示に基づき、前記第1モード、前記第2モードからモードを選択することが好ましい。
これにより、使用者の求める画像の品質の選択の幅を広げることができる。
本発明のインクジェット記録装置では、前記光輝性インク中に含まれる光輝性顔料は、銀粒子であることが好ましい。
これにより、光輝性に優れた画像を形成することができる。また、銀粒子は比較的高い原料であるが、本発明の方法を用いることで、目的に応じてコスト設定することが可能となる。
【0010】
本発明のインクジェット記録装置では、前記第2モードにおける前記光輝性インクの単位面積当たりの吐出量は、前記第1モードにおける前記光輝性インクの単位面積当たりの吐出量よりも少ないことが好ましい。
これにより、第2モードにおいて第1モードに比較して低コストで画像を形成することができる。
本発明のインクジェット記録装置では、前記光輝性インクは、水を50質量%以上含有することが好ましい。
これにより、インクのコストを低くすることができ、各モードを有することによる効果をより顕著なものとすることができる。
【0011】
本発明のインクジェット記録方法は、光輝性顔料が分散した光輝性インクと、色材を実質的に含まないクリアインクと、を用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
インクジェット法により、実質的に前記光輝性インクのみを前記記録媒体に吐出し前記画像を形成する第1モードと、
インクジェット法により前記光輝性インクを前記記録媒体に吐出して第1画像を形成する工程と、当該第1画像上にインクジェット法によりクリアインクを吐出して第2画像を形成し、前記第1画像と前記第2画像とからなる前記画像を形成する工程とを備えた第2モードとを有し、
前記第1モードおよび前記第2モードからモードを選択して前記記録媒体に前記画像を記録することを特徴とする。
これにより、光輝性に優れた画像を形成するモードと、適度な光輝性と優れた耐ガス性を有する画像を形成するモードと、使用者が適宜選択することができるインクジェット記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の概略構成の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《インクジェット記録装置》
まず、本発明のインクジェット記録装置(液滴吐出装置)の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明のインクジェット記録装置の概略構成の一例を示す斜視図である。
【0014】
図1に示すように、インクジェット記録装置としてのインクジェット式プリンタ1(以下、プリンタ1という)は、フレーム2を有している。フレーム2には、プラテン3が設けられ、プラテン3上には、記録媒体送りモーター4の駆動により記録媒体Pが給送されるようになっている。また、フレーム2には、プラテン3の長手方向と平行に、棒状のガイド部材5が設けられている。
【0015】
ガイド部材5には、キャリッジ6がガイド部材5の軸線方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ6は、フレーム2内に設けられたタイミングベルト7を介して、キャリッジモーター8に連結されている。そして、キャリッジ6は、キャリッジモーター8の駆動により、ガイド部材5に沿って往復移動されるようになっている。
キャリッジ6には、ヘッド9が設けられるとともに、ヘッド9に液体としてのインクを供給するためのインクカートリッジ10が着脱可能に配置されている。インクカートリッジ10内のインクは、ヘッド9に備えられた図示しない圧電素子の駆動により、インクカートリッジ10からヘッド9へと供給され、ヘッド9のノズル形成面に形成された複数のノズルから、プラテン3上に給送された記録媒体Pに対して吐出されるようになっている。これにより記録物を製造することが可能となる。
【0016】
また、プリンタ1は、光輝性顔料が分散した光輝性インクと、色材を実質的に含まないクリアインクとが吐出可能となっている。
そして、プリンタ1は、実質的に光輝性インクのみを記録媒体Pに吐出しメタリック画像を形成する第1モードと、光輝性インクを記録媒体Pに吐出して第1画像を形成する工程と、当該第1画像上にクリアインクを吐出して第2画像を形成し、第1画像と第2画像で構成された画像を形成する工程とを有する第2モードと、第1モードよりも単位面積当たりの光輝性インクの吐出量を多く記録媒体Pに吐出して画像を形成する第3モードと、光輝性インクを記録媒体に吐出して第1画像を形成する工程と、当該第1画像上にクリアインクを吐出して第2画像を形成し、第1画像と第2画像とからなる画像を形成する工程とを備え、光輝性インクを、記録媒体に第2モードの場合よりも単位面積当たりの吐出量を多く吐出して画像を形成する第4モードと、を備えており、使用者が適宜選択可能となっている。なお、プリンタ1は、第3モード、第4モードを備えるか否かは特に限定されず、第1モード及び第2モードの2種類を有しているプリンタ1であってもよい。また、「実質的に光輝性インクのみ」とは、例えば、不可避的に光輝性インク以外のインクが混ざってしまった場合、他のインクが混じっているが十分な機能を奏しておらず事実上光輝性インクのみと同視出来る場合等のことを示す。
【0017】
ところで、光輝性インクを用いて記録された画像(メタリック画像)は、印刷直後は金属光沢を有しているが、大気中のオゾンガス等によって、経時的に光輝性(光沢)が低下するという問題がある。このような経時的低下を防止するために、本発明者らは、透明インク(クリアインク)を表面に付与してメタリック画像を保護する方法があることを発見した。
【0018】
しかし、メタリック画像の表面に透明インクを付与した場合、経時的な光輝性の低下は抑制することはできるが、メタリック画像のみの場合と比較して、メタリック画像の光沢度が低下するといった問題があった。このため、高い光輝性が必要なのか、高い耐久性(耐ガス性)が必要なのかによって、そのニーズに合わせた画像を容易に形成することが可能なインクジェット記録装置が今後望まれると考えた。
【0019】
本発明のインクジェット記録装置では、上述したような第1モードと第2モードとを備え、使用者が適宜選択可能となっている点に特徴を有している。
また、本発明者らは、光輝性インクの単位面積当たりの吐出量を多くすることでも、オゾンガス等による光輝性の経時的低下を抑えられる知見を得た。その知見より、本発明のインクジェット記録装置は、第1モードよりも単位面積当たりの光輝性インクの吐出量を多く記録媒体Pに吐出して画像を形成する第3モードを有していると好ましい。これによって、第1モードよりも光輝性の経時的低下を抑えた記録物を得ることが可能となり、一層使用者のニーズに合わせた画像を形成出来る。
【0020】
一方、本発明のインクジェット記録装置は、光輝性インクを記録媒体に吐出して第1画像を形成する工程と、当該第1画像上にクリアインクを吐出して第2画像を形成し、第1画像と第2画像とからなる画像を形成する工程とを備え、光輝性インクを、記録媒体に第2モードの場合よりも単位面積当たりの吐出量を多く吐出して画像を形成する第4モードを有していると好ましい。これによって、第2モードよりも光輝性の経時的低下を抑えた記録物を得ることが可能となり、一層使用者のニーズに合わせた画像を形成出来る。
【0021】
また、第2モードにおける光輝性インクの単位面当たりの吐出量は、第1モードにおける光輝性インクの単位面積当たりの吐出量よりも少ないのが好ましい。これにより、第2モードにおいて第1モードに比較して低コストで画像を形成することができる。
具体的には、第2モードにおける光輝性インクの単位面当たりの吐出量は、第1モードにおける光輝性インクの単位面積当たりの吐出量よりも10%以上50%以下程度少ないのが好ましい。
このように第1モード、第2モードの他に、第3モード、第4モードを有することで、使用者の求める画像の品質の選択の幅を広げることができる。
吐出方法としては、サーマルジェット(バブルジェット(「バブルジェット」は登録商標))方式でもよい。また、従来公知の方法はいずれも使用できる。
【0022】
《インクジェット記録方法》
次に、本発明のインクジェット記録方法の好適な実施形態について説明する。
本発明のインクジェット記録方法は、光輝性顔料が分散した光輝性インクおよび/または色材を実質的に含まないクリアインクをインクジェット法により記録媒体に吐出して、記録媒体上に画像を記録する方法である。
【0023】
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、上述したようなプリンタ1を用いて画像を形成するものであり、光輝性インクを前記記録媒体に吐出し画像を形成する第1モードと、プリンタ1を用いて光輝性インクを記録媒体に吐出して第1画像を形成する工程と、第1画像上にさらにクリアインクを吐出して第2画像を形成し、第1画像と第2画像とで構成された画像を形成する工程とを有する第2モードと、第1モードよりも記録媒体Pに単位面積当たりの光輝性インク吐出量を多くして画像を形成する第3モードとを有し、目的の画質等に応じてこれら各モードを適宜選択するものである。
【0024】
第1モードでは、光輝性インクのみを用いて画像を形成することにより、優れた光輝性を有する画像を形成することが可能であり、第3モードと比較して低コストで画像が形成可能である。
第2モードでは、光輝性インクで形成した第1画像の上に、クリアインクで形成した第2画像を重ねることで、形成される画像の耐ガス性(特に耐オゾンガス性)を向上させることができる。第2モードで形成された画像は、第1モードで形成された画像と比較して、光輝性は劣るが、耐ガス性に優れたものとなっている。
さらに、第3モードでは、光輝性インクの吐出量を第1モードよりも多くすることで、光輝性の経時的低下を抑える事が可能となる。
【0025】
このように、上記第1モードおよび第2モードを有し、かつ、適宜選択可能となっていることにより、使用者は、初期の光輝性の高い画像が優れていれば、経時的な劣化は問題としない場合には第1モードを選択し、適度な光輝性があり、経時的にも安定な画像を求める場合には第2モードを選択することができ、それぞれのニーズに合わせた画像を容易に形成することができる。
また、上述のような、第4モードを有していれば、第2モードよりは高コストであるが、光輝性インクの吐出量を第2モードよりも多くすることで、光輝性の経時的低下を抑える事が可能となる。
【0026】
[記録装置]
次に、第1から第4モードを備えている記録装置について説明をするが、本発明において第1のモードと第2モードは必須であるが、第3のモードと第4モードは任意である。記録装置はホスト装置などから入力された画像に基づいて自動的に第1から第4モードを選択しても良いが、下記に記載のようにユーザーの指示に基づいて各モードを選択するよう構成されていても良い。
【0027】
記録装置はユーザーからの指示に基づいてモードを制御する制御手段を有する場合、制御手段はユーザーが指示を入力出来る画面を表示する表示手段を合わせて有している。制御手段の具体例としては特に限定されないが、CPU、ASICなどが挙げられ、複数の制御チップによって制御手段を構成させても良い。また、制御手段はユーザーインターフェースを、記録装置に設けられた画面等に直接表示しても良く、パーソナルコンピューター等のホスト装置の画面に表示させてもよい。
【0028】
制御手段は第1から第4モードを、ユーザーインターフェースを介して入力されたユーザーの指示に基づいて制御する設計されている。このような、ユーザーインターフェースの具体例としては、特に限定されないが、例えば「高光沢、長期保存(第4モード)」、「高光沢、通常保存(第3モード)」、「通常光沢、長期保存(第2モード)」、「通常光沢、通常保存(第1モード)」等のメニューを表示して、ユーザーに選択させるものが考えられる。また、ユーザーの求める保存期間(例えば6ヶ月)、ユーザーの求める光沢度(例えば60°光沢度が300)、等、記録画像の条件を入力させて、その条件により記録装置が自動的にモードを選択させるものも考えられる。
[記録媒体]
記録媒体としては、特に限定されず、例えば、各種の紙、布、フィルム、シート等が挙げられる。
【0029】
[光輝性インク]
光輝性インクは、光輝性顔料を含有する。光輝性インクに含有される光輝性顔料としては、インクジェット記録方法によって当該インクの液滴を吐出できる範囲内で、任意のものを用いることができる。光輝性顔料は、光輝性インクが樹脂インクの層の上に付着したときに、光輝性を付与する機能を有し、また、付着物に光輝性を付与することもできる。このような光輝性顔料としては、パール顔料や金属粒子があげられる。パール顔料の代表例としては、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス等の真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。一方、金属粒子としてはアルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅等の粒子を挙げることができ、これらの単体またはこれらの合金およびこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0030】
本実施形態で使用される光輝性顔料は、光沢度(光輝性)の高さの観点から、銀粒子を用いることが好ましい。また、銀粒子は比較的高い原料であるが、本発明の方法を用いることで、目的に応じてコスト設定することが可能となる。なお、光沢度に関する基準としてはJIS Z 8741(1997)が挙げられる。
以下、光輝性インクの具体例として銀インクを用いて説明する。
(1)銀粒子
上述したように、本実施形態に係る銀インクは、銀粒子を含むものである。このように、銀インクが、銀粒子を含むものであることにより(特に、所定の条件を満足するワックスとともに含むことにより)、優れた金属光沢を有する画像を形成することができる。また、銀は、各種金属の中でも、白色度の高い金属であるため、他色のインクと重ね合わせることにより、金色、銅色等の様々な金属色を表現することができる。
【0031】
銀粒子の平均粒子径は、3nm以上100nm以下であるのが好ましく、20nm以上65nm以下であるのがより好ましい。これにより、銀インクを用いて形成される画像の光沢感(光輝性)および耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、インクジェット方式によるインクの吐出安定性(着弾位置精度、吐出量の安定性等)を特に優れたものとすることができ、長期間にわたって所望の画質の画像をより確実に形成することができる。なお、本明細書では、「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒子径のことを指すものとする。平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
【0032】
銀インク中における銀粒子の含有率は、0.5質量%以上30質量%以下であるのが好ましく、5.0質量%以上15質量%以下であるのがより好ましい。これにより、インクのインクジェット方式による吐出安定性、インクの保存安定性を特に優れたものとすることができる。また、記録物とされたときの記録媒体上での銀粒子の密度(単位面積当たりの含有量)が低い場合から高い場合まで、広い密度の範囲で、良好な画質、耐擦性を実現することができる。
銀粒子は、いかなる方法で調製されたものであってもよく、例えば、銀イオンを含む溶液を用意し、この銀イオンを還元ずることにより、好適に形成することができる。
【0033】
(2)樹脂
光輝性インクは、樹脂を含有していても良く、これを含有することで定着性や耐擦性が向上する。樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリメタアクリル酸エステル、ポリエチルアクリル酸、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、フッ素樹脂、フッ化ビニリデン、ポリオレフィン樹脂、セルロース、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン、スチレン−アクリルアミド共重合体、ポリイソブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ロジン系樹脂、ポリエチレン、ポリカーボネート、塩化ビニリデン樹脂、セルロースアセテートブチレートなどのセルロース系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、ロジンエステル等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0034】
(3)水
本発明にかかる光輝性インクは、水を50質量%以上含む水系インクであっても、水の含有量が50質量%未満である非水系インクであってもよい。
水を50質量%以上含む水系インクである場合、銀粒子の分散性が向上し、形成した画像表面に銀粒子を効果的に配列させることができる。その結果、光輝性および耐ガス性に優れた画像をより効果的に記録(形成)することができる。また、インクのコストを低くすることができ、各モードを有することによる効果をより顕著なものとすることができる。
【0035】
インク中において、水を含有させる場合には、主に銀粒子を分散させる分散媒として機能する。インクが水を含むことにより、銀粒子等の分散安定性等を優れたものとすることができ、また、インクジェット記録装置のノズル付近でのインクの不本意な乾燥(分散媒の蒸発)を防止しつつ、インクが付与される記録媒体上での乾燥を速やかに行うことができるため、所望の画像の高速記録を、長期間にわたって好適に行うことができる。インク中に水を含有させる場合には、その水の含有率は、特に限定されないが、20質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、25質量%以上70質量%以下であるのがより好ましい。
【0036】
(4)多価アルコール
本発明に係る光輝性インクは、多価アルコールを含有することが好ましい。多価アルコールは、本実施形態に係るインクをインクジェット式記録装置に適用した場合に、インクの乾燥を抑制し、インクジェット式記録ヘッド部分におけるインクによる目詰まりを防止することができる。
【0037】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどが挙げられる。中でも、炭素数が4〜8アルカンジオールが好ましく、炭素数が6〜8のアルカンジオールがより好ましい。これにより、記録媒体への浸透性を特に高いものとすることができる。インク中における多価アルコールの含有率は、特に限定されないが、0.1質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であるのがより好ましい。
上記の多価アルコールの中でも、インクは、1,2−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンを含むものであるのが好ましい。これにより、インク中における銀粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができ、インクの保存安定性を特に優れたものとすることができるとともに、インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0038】
(5)グリコールエーテル
本発明に係る光輝性インクは、グリコールエーテルを含有することが好ましい。グリコールエーテルを含有することにより、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。インク中におけるグリコールエーテルの含有率は、特に限定されないが、0.2質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、0.3質量%以上10質量%以下であるのがより好ましい。
【0039】
(6)界面活性剤
本発明に係る光輝性インクは、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0040】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
【0041】
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。
さらに、本発明に係るインクは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などのその他の界面活性剤を含有することもできる。
光輝性インク中における上記界面活性剤の含有率は、特に限定されないが、0.01質量%以上5.0質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%以上1.5質量%以下であるのがより好ましい。
【0042】
(7)その他の成分
本発明に係る光輝性インクは、上記以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、pH調整剤、浸透剤、有機バインダー、尿素系化合物、アルカノールアミン(トリエタノールアミン等)等の乾燥抑制剤、チオ尿素等が挙げられる。
【0043】
[クリアインク]
クリアインクは、色材を実質的に含まないインクである。なお、「色材を実質的に含まない」とは、例えばクリアインク中の色材の含有量が0.1質量%未満、好ましくは0.05質量%未満であり、一層好ましくは0.01質量%未満であることをいう。
クリアインクは、実質的に色材を含有しておらず、クリアインクによって形成される層が光透過性を備えていれば、組成は特に限定されず、例えば、光輝性インクの項で説明した銀粒子以外の成分である、樹脂、水、多価アルコール、グリコールエーテル、界面活性剤等で構成することができる。
クリアインク中における樹脂の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であるのがより好ましい。クリアインクは樹脂を含有していることによって一層優れた耐ガス性を画像に付与するインクとなる。
【0044】
なお、上記実施形態では、光輝性インク、クリアインクによって画像を形成する場合について説明したが、さらに、色材を含むカラーインクを用いてもよい。
光輝性インクで形成したメタリック画像の上に、カラーインクで画像を形成することで、カラーメタリック画像を形成することができる。また、使用者の画質の選択の幅をさらに広げることができる。
なお、第2モードにおいては、メタリック画像とクリアインクで形成したクリア画像の間に、カラー画像を乗せてもよいし、クリア画像の上にカラー画像を乗せてもよい。
カラーインクとしては、例えば、以下のようなものを用いることができる。
【0045】
[カラーインク]
カラーインクには、色材が含まれており、カラーインクとしては、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、ダークイエロー、レッド、グリーン、ブルー、オレンジ、バイオレット等のインク、ブラックインク、ライトブラックインク等が挙げられる。
色材としては、顔料および染料が挙げられ、通常のインクに使用することができる色材を特に制限なく使用することができる。
【0046】
本実施形態に使用可能な顔料としては、特に制限されないが、各種公知の顔料が挙げられる。
イエロー有機顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180等が挙げられる。
【0047】
マゼンタ有機顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、またはC.I.ピグメントバイオレット19、23、32、33、36、38、43、50等が挙げられる。
【0048】
シアン有機顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、15:34、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー4、60等が挙げられる。
また、マゼンタ、シアンおよびイエロー以外の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、10、C.I.ピグメントブラウン3、5、25、26、C.I.ピグメントオレンジ2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63等が挙げられる。
顔料は、平均粒子径が10nm以上200nm以下の範囲にあるものが好ましく、より好ましくは50nm以上150nm以下程度のものが好ましい。本実施形態における顔料の添加量は、1質量%以上25質量%以下程度の範囲が好ましく、より好ましくは3質量%以上20質量%以下の範囲である。
【0049】
本実施形態において使用可能な染料としては、例えば、アクリジン染料、アニリン染料、アントラキノン染料、アジン染料、アゾメチン染料、ベンゾー及びナフトキノン染料、インジゴイド染料、インドフェノール染料、インドアニリン染料、インダミン染料、ロイコ染料、ナフタールイミド染料、ニグロシン染料、インジュリン染料、ニトロ及びニトロソ染料、オキサジン及びジオキサジン染料、酸化染料、フタロシアニン染料、ポリメチン染料、キノフタロン染料、硫化染料、トリ及びジアクリルメタン染料、チアジン染料、チアゾール染料、キサンテン染料、シアニン染料等が挙げられる。
【0050】
具体的なイエロー系染料としては、C.I.アシッドイエロー1、3、11、17、19、23、25、29、36、38、40、42、44、49、59、61、70、72、75、76、78、79、98、99、110、111、127、131、135、142、162、164、165、C.I.ダイレクトイエロー1、8、11、12、24、26、27、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、110、132、142、144、C.I.リアクティブイエロー1、2、3、4、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、22、23、24、25、26、27、37、42、C.I.フードイエロー3、4、C.I.ソルベントイエロー15、19、21、30、109等が挙げられる。
【0051】
具体的なマゼンタ系の染料としては、例えば、C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、37、42、51、52、57、75、77、80、82、85、87、88、89、92、94、97、106、111、114、115、117、118、119、129、130、131、133、134、138、143、145、154、155、158、168、180、183、184、186、194、198、209、211、215、219、249、252、254、262、265、274、282、289、303、317、320、321、322、C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230、231、C.I.リアクティブレッド1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、15、16、17、19、20、21、22、23、24、28、29、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、46、49、50、58、59、63、64、C.I.ソルビライズレッド1、C.I.フードレッド7、9、14等が挙げられる。
【0052】
具体的なシアン系の染料としては、例えば、C.I.アシッドブルー1、7、9、15、22、23、25、27、29、40、41、43、45、54、59、60、62、72、74、78、80、82、83、90、92、93、100、102、103、104、112、113、117、120、126、127、129、130、131、138、140、142、143、151、154、158、161、166、167、168、170、171、182、183、184、187、192、199、203、204、205、229、234、236、249、C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、25、41、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、120、123、158、160、163、165、168、192、193、194、195、196、199、200、201、202、203、207、225、226、236、237、246、248、249、C.I.リアクティブブルー1、2、3、4、5、7、8、9、13、14、15、17、18、19、20、21、25、26、27、28、29、31、32、33、34、37、38、39、40、41、43、44、46、C.I.ソルビライズバットブルー1、5、41、C.I.バットブルー4、29、60、C.I.フードブルー1、2、C.I.ベイシックブルー9、25、28、29、44等が挙げられる。
【0053】
その他の色系統の具体的な染料としては、例えば、C.I.アシッドグリーン7、12、25、27、35、36、40、43、44、65、79、C.I.ダイレクトグリーン1、6、8、26、28、30、31、37、59、63、64、C.I.リアクティブグリーン6、7、C.I.アシッドバイオレット15、43、66、78、106、C.I.ダイレクトバイオレット2、48、63、90、C.I.リアクティブバイオレット1、5、9、10等が挙げられる。
これらの染料は、前記した各色の系の染料の群内および各群間から複数選択して使用することができる。
本実施形態における染料の添加量は、1質量%以上25質量%以下程度の範囲が好ましく、より好ましくは3質量%以上20質量%以下の範囲である。
【0054】
また、カラーインクには、樹脂成分が含まれているのが好ましい。これにより、第2画像の記録媒体に対する密着性をより高いものとすることができる。
樹脂成分としては、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリメタアクリル酸エステル、ポリエチルアクリル酸、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、フッ素樹脂、フッ化ビニリデン、ポリオレフィン樹脂、セルロース、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン、スチレン−アクリルアミド共重合体、ポリイソブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ロジン系樹脂、ポリエチレン、ポリカーボネート、塩化ビニリデン樹脂、セルロースアセテートブチレートなどのセルロース系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、ロジンエステル等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0055】
カラーインク中における前記樹脂成分の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であるのがより好ましい。これにより、発色性の優れた第2画像をより効果的に形成することができる。樹脂成分を含有することによって一層優れた耐ガス性を有するインクとなる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]光輝性インクの調製
ポリビニルピロリドン(PVP、重量平均分子量10000)を70℃の条件下で15時間加熱して、その後室温で冷却をした。そのPVP1000gを、エチレングリコール溶液500mlに添加してPVP溶液を調整した。別の容器にエチレングリコールを500ml入れ、硝酸銀128gを加えて電磁攪拌器で十分に攪拌をして硝酸銀溶液を調整した。PVP溶液を120℃の条件下でオーバーヘッドミキサーを用いて攪拌しつつ、硝酸銀溶液を添加して約80分間加熱して反応を進行させた。そして、その後室温で冷却をさせた。得られた溶液を遠心分離機で2200rpmの条件下で10分間遠心分離を行った。その後、分離が出来た銀粒子を取り出して、余分なPVPを除去するためエタノール溶液500mlに添加した。そして、さらに遠心分離を行い、銀粒子を取り出した。さらに、取り出した銀粒子を真空乾燥機で35℃、1.3Paの条件下で乾燥させた。
上記によって製造された銀粒子10質量%に、1,2−ヘキサンジオールを3質量%、トリエタノールアミンを0.3質量%、トリメチロールプロパンを15質量%、非イオン性界面活性剤(日信化学工業株式会社製オルフィン(R)E1010)1質量%、さらに濃度調整用のイオン交換水を添加することにより、光輝性インクとした。
【0057】
[2]クリアインクの調整
1,2−ヘキサンジオールが3質量%、トリメチロールプロパンが15質量%、樹脂(ジョンクリル(R)62(BASF社製))が10質量%、非イオン性界面活性剤(日信化学工業株式会社製オルフィン(R)E1010)が1質量%、pH調整剤(トリエタノールアミン)が0.3質量%、イオン交換水が残分となるように調整をした。
【0058】
[3]記録物の形成
まず、光輝性インクとクリアインクをインクジェットプリンタ(「PX−G930」セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジに充填した。インクジェットプリンタの制御部には、光輝性インクを吐出しメタリック画像を形成する第1モードと、光輝性インクを吐出して第1画像を形成する工程と、当該第1画像上にクリアインクを吐出して第2画像を形成する工程とを有する第2モードとを記憶させた。
【0059】
次に、市販の光沢紙(セイコーエプソン製 写真用紙<光沢>)をプリンタにセットした。
次に、第1モードで、光輝性インクの下記式(1)で表されるduty(%)の値を10%、20%、30%、40%、50%、60%に設定して、それぞれの値における画像を別々の光沢紙に形成し、記録物を形成した。
duty(%)=実記録ドット数/(縦解像度×横解像度)×100 … (1)
(式(1)中、「実記録ドット数」は単位面積当たりの実記録ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。)
【0060】
また、第2モードで、光輝性インクのduty(%)の値を10%から60%に設定して第1画像をそれぞれ形成し、その後に各第1画像のそれぞれに、クリアインクのduty(%)の値を10%に設定し、第2画像を形成し、記録物を形成した。その結果を表1に示した。また、上記と同様にして、光輝性インクのduty(%)の値を30%、40%、50%、60%で第1画像を形成し、それぞれについてクリアインクのduty(%)の値を30%に設定し、第2画像を形成し、記録物を形成した。その結果を表2に示した。
【0061】
[4]耐ガス性評価
前記各実施例および各比較例に係る記録物について、光沢度計(MINOLTA MULTI GLOSS 268)を用い、煽り角度60°での光沢度(初期値)を測定した。
その後、「オゾンウェザーメーターOMS−H型」(商品名、スガ試験機株式会社製)を用い、温度が23.0℃、湿度が50%RH、およびオゾン濃度40ppmの条件下で上記各実施例および各比較例の記録物を2時間オゾンに暴露することにより行った。
オゾン暴露前後の記録物の煽り角度60°での光沢度を測定した。
この結果を表1、2に示した。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
表1、表2から明らかなように、クリアインクを重ねた第2モードで形成した記録物では、耐ガス性が向上していることがわかった。このように、第1モード、第2モードを有することで、使用者が適宜選択して目的の画質の画像を備えた記録物を得ることができるものとなる。また、光輝性インクのdutyを向上させると降下率が低下させることが出来る(第3モード、第4モード)。
【符号の説明】
【0065】
1…インクジェット式プリンタ(プリンタ) 2…フレーム 3…プラテン 4…記録媒体送りモーター 5…ガイド部材 6…キャリッジ 7…タイミングベルト 8…キャリッジモーター 9…ヘッド 10…インクカートリッジ P…記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光輝性顔料が分散した光輝性インクと、色材を実質的に含まないクリアインクと、を用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、
インクジェット法により、実質的に前記光輝性インクのみを前記記録媒体に吐出し前記画像を形成する第1モードと、
インクジェット法により前記光輝性インクを前記記録媒体に吐出して第1画像を形成する工程と、当該第1画像上にインクジェット法によりクリアインクを吐出して第2画像を形成し、前記第1画像と前記第2画像とからなる前記画像を形成する工程とを備えた第2モードとを有し、
前記第1モードおよび前記第2モードからモードを選択して前記記録媒体に前記画像を記録することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記第1モードおよび前記第2モードの他に、
インクジェット法により、前記光輝性インクを、前記記録媒体に前記第1モードの場合よりも単位面積当たりの吐出量を多く吐出して前記画像を形成する第3モードを有し、
前記第1モード、前記第2モードおよび前記第3モードからモードを選択して前記記録媒体に前記画像を記録する請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第1モードおよび前記第2モードの他に、
インクジェット法により前記光輝性インクを前記記録媒体に吐出して第1画像を形成する工程と、当該第1画像上にインクジェット法によりクリアインクを吐出して第2画像を形成し、前記第1画像と前記第2画像とからなる前記画像を形成する工程とを備え、前記光輝性インクを、前記記録媒体に前記第2のモードの場合よりも単位面積当たりの吐出量を多く吐出して前記画像を形成する第4モードを有し、
前記第1モード、前記第2モードおよび前記第4モードからモードを選択して前記記録媒体に前記画像を記録する請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
ユーザーの指示を受け付ける制御手段を備え、
前記制御手段が受け付けた前記指示に基づき、前記第1モード、前記第2モードからモードを選択する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記光輝性インク中に含まれる光輝性顔料は、銀粒子である請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記第2モードにおける前記光輝性インクの単位面積当たりの吐出量は、前記第1モードにおける前記光輝性インクの単位面積当たりの吐出量よりも少ない請求項1ないし5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記光輝性インクは、水を50質量%以上含有する請求項1ないし6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
光輝性顔料が分散した光輝性インクと、色材を実質的に含まないクリアインクと、を用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
インクジェット法により、実質的に前記光輝性インクのみを前記記録媒体に吐出し前記画像を形成する第1モードと、
インクジェット法により前記光輝性インクを前記記録媒体に吐出して第1画像を形成する工程と、当該第1画像上にインクジェット法によりクリアインクを吐出して第2画像を形成し、前記第1画像と前記第2画像とからなる前記画像を形成する工程とを備えた第2モードとを有し、
前記第1モードおよび前記第2モードからモードを選択して前記記録媒体に前記画像を記録することを特徴とするインクジェット記録方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−179864(P2012−179864A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45566(P2011−45566)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】