説明

インクジェット記録装置および記録データ形成方法

【課題】定着性のために記録速度に支障を与えることなく、時分割ヘッド駆動方式を行う場合にも比較的正確なデューティ制御を行う。
【解決手段】記録ヘッドの複数の記録素子のうち所定数の記録素子ずつ順次、時分割駆動する時分割駆動方式を採用した記録装置において、同時駆動対象の所定数の記録素子に与えられる記録データのONドットの数を計数し、そのONドットの計数値に基づいて、指定されたデューティ率に従って当該記録データの間引き対象となるONドットを決定し、その間引きを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時分割駆動方式を採用したインクジェット記録装置および記録データ形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、高速、低騒音、カラー化の容易さ、低ランニングコストなどの利点を有し、各種用途の記録手段として急速に普及してきている。特に、記録媒体の全幅に亘る記録素子(ノズル)列を備えたラインヘッドを用いたインクジェット記録装置はその高速性により、産業用印刷機としての利用が拡大している。
【0003】
インクジェット記録装置における記録物では記録動作に際し記録素子の全てが同時駆動され得るようにすると、次のような問題が生じる。すなわち、近傍ノズル同士の相互のクロストーク(メニスカス振動)などにより吐出が不安定になるだけでなく、大電流によってヘッド近傍では共通電源ラインのロスに起因する電圧降下が増加するため、同時駆動ノズル数が大きくなればなるほど、ノズルヒータに印加される駆動電圧の落ち込みが増え、記録安定性を損なう。また、瞬時的な大電流に耐えうる電源を必要とする等の不都合が生じる。このため、記録ヘッド内では通常、全ノズルを数ノズルから数十ノズル単位毎の複数ブロックに分割し、各ブロック内のノズルを順次、時分割駆動するようにして、前述した問題の発生を抑制するようにしている。
【0004】
一方、ラインヘッドを用いたインクジェット記録装置においてベタ画像などを高速記録した場合、記録媒体の搬送速度にインクの定着が間に合わず、搬送ローラからの転写等により、画像部への不要インクの付着や、次ページへのインクの写り込み等が起き、画質低下を招いてしまう。これを防ぐため、インクの吐出量(記録Duty)を制御して、紙面上の単位面積あたりに吐出されるインクの量を減少させることによりインクの速乾性を上げて定着性を向上させるいわゆるデューティ制御が行われる。デューティ制御の方法としては、予めホスト側のソフトウェアにおいて元画像を間引きする方法や、ハードウェアで行う場合は、例えば予め設定されている間引きパターンと記録データの論理積(AND)を取ることにより記録データをマスクする記録デューティ制御が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−21950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ハードウェア内でデューティ制御を行おうとする場合、予め設定されている間引きパターンと記録データとの論理積を取るため元画像に対して実際に記録する画像のデューティ率は、間引きパターンと元画像の記録データの重なる偶然の確率に依存してしまい、指定したデューティ率が実際の記録結果に正しく反映されないことがあり得る。また、ホスト側で行うソフトウェアによるデューティ制御は、間引きによって画像圧縮の割合が低くなり、結果として画像データの転送時間が延びてしまう。その結果、記録速度に対して画像データ転送速度が間に合わなくなり、ラインヘッドを用いた記録装置の利点である高速記録に支障を与えるおそれが生じる。
【0006】
また、従来の方式ではホスト側のソフトウェア、記録装置側のハードウェアのいずれで行う場合にも、デューティ制御において時分割ヘッド駆動方式を考慮せずに間引きパターンを選定している。そのため、記録する画像データと間引きパターンの組み合わせによっては、時分割駆動において記録データに応じてあるタイミングで駆動されるノズルと間引きパターンとの関係により、同時駆動ノズルのうち、必要以上に多くのノズルについてONドットが間引きから逃れたり、必要以上に多くのノズルについてONドットが間引かれたりすることが生じた。これにより、時分割駆動方式の利点を活かすことが出来ず、電圧降下軽減やメニスカス振動防止に対する有効性を持たない結果となり、記録画質安定性に支障を与えるおそれがあった。
【0007】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、その目的は、定着性のために記録速度に支障を与えることなく、時分割ヘッド駆動方式を行う場合にも比較的正確なデューティ制御を行うことができるインクジェット記録装置および記録データ形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の記録データ形成方法は、複数の記録素子を備えた記録ヘッドを有し、前記複数の記録素子のうち所定数の記録素子ずつ順次、時分割駆動することにより記録媒体に画像を記録する記録装置における記録データ形成方法であって、前記時分割駆動における同時駆動対象となる前記所定数の記録素子に与えられる記録データ部分を抽出するステップと、指定されたデューティ率に従って、前記抽出された記録データ部分に対して、ONドットの間引きを行うステップとを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、この方法を実施するための本発明によるインクジェット記録装置は、複数の記録素子を備えた記録ヘッドを有し、前記複数の記録素子のうち所定数の記録素子ずつ順次、時分割駆動することにより記録媒体に画像を記録する記録装置において、前記時分割駆動における同時駆動対象となる前記所定数の記録素子に与えられる記録データのONドットの数を計数する計数手段と、指定されたデューティ率に従って、前記記録ヘッドに与える当該記録データ部分毎に、前記ONドットの計数値に基づいてONドットの間引きを行う間引き手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
時分割駆動方式の場合、ある時点で同時に駆動対象となる駆動記録素子群と、その時点で駆動されない非駆動記録素子群とが存在する。そこで、本発明では同時に駆動対象となる記録素子群に対する記録データ部分のうち、実際にインクの吐出が指示されるONドットのみを間引きの対象とする。これにより、従来のように画一的な間引きパターンを記録データに割り当てることによってデューティ率の制限を超える個数のインク滴を一時に吐出してしまうような不具合が排除される。
【0011】
このように、本発明によれば、実際の記録データのONドットのみを間引きの対象として、デューティ率に応じた割合でONドットを間引くので、実際の記録データがどのような記録データであっても、時分割駆動時の同時駆動記録素子群単位でデューティ率に応じて確実にONドットの間引きが行われることになる。
【0012】
前記記録ヘッドは、記録素子の個数が多いラインヘッドに適用して好適である。
【0013】
前記計数手段のどの計数値に該当するONドットの間引きを行うか、および、どの計数値で前記計数手段のリセットを行うかは、前記指定されたデューティ率に応じて予め定めておくことができる。
【0014】
前記計数手段は、前記時分割駆動における同時駆動対象となる前記所定数の記録素子の一群に対する前記計数手段による計数結果を、次に同時駆動対象となる前記所定数の記録素子の他の一群に対する前記計数手段による計数動作に引き継ぐようにしてもよい。
【0015】
1ライン分の記録データのうち、前記時分割駆動における同時駆動対象となる前記所定数の記録素子に与えられる記録データ部分を格納する複数の分割データレジスタを備え、前記計数手段は、前記複数の分割データレジスタに記憶されたデータを順次シリアルに読み出して計数動作を行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば簡単な構成で、デューティ制御において高速性を損なわず記録データを時分割駆動に適した形態で適正に間引きすることができる。例えば、ベタ画像等の駆動ノズル数が多い記録時にデューティ制御の目的である高速記録におけるインクの定着性向上と時分割駆動の目的である電圧降下軽減による記録安定性を両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の適用可能なライン型の記録ヘッド(ラインヘッド)100を用いたインクジェット記録装置の主要部の概略の構成を示した図である。
【0019】
記録ヘッド100は、記録媒体(用紙)106の搬送方向に対してその記録幅全域に亘って並んだ複数の記録素子を備え、これらの記録素子を駆動することにより、横一列に配置された記録素子に対応したノズル(記録ノズル)よりインクを吐出し記録を行う。(本明細書において「横」とは用紙搬送方向にほぼ直交する方向をいう。)
【0020】
図1に示した例では、記録ヘッド100は、ブラックヘッド(K)101、シアンヘッド(C)102、マゼンタヘッド(M)103、イエローヘッド(Y)104の順番で並行に配置された複数のラインヘッドからなり、これらの各ラインヘッドから異なる色のインクを吐出することにより、フルカラー印刷を行うことができる。各ラインヘッドの位置は固定であり、搬送ローラ105が用紙106を搬送と同期してKCMYの各ラインヘッドからインクが吐出され、記録を行う。このようにヘッドを固定し用紙を一定方向に搬送するラインヘッド型のインクジェット記録装置は、ヘッドを往復させることにより記録するシリアルプリンタに比べて高速記録が可能である。
【0021】
図2は、図1に示したインクジェット記録装置を用いて記録を行う記録方法を説明するための図である。
【0022】
情報処理装置(PC等)のモニタ200において、R(レッド)G(グリーン)B(ブルー)で表された画像201に対応する画像データは、ソフトウェア(ドライバ)によって色処理され、K(ブラック),C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)の4色それぞれの画像データ202〜205を含む記録データに変換され、インクジェット記録装置に送られる。例えば、モニタ200上で緑色の部分はC(シアン)ヘッドとY(イエロー)ヘッドから、モニタの色を再現しうるデューティ率で個々のヘッドからインクが吐出される。これにより、用紙上の当該記録画像分は緑色に見える。
【0023】
図3は、図1の記録ヘッド100を用いた記録装置300における記録データの転送経路を説明するための図である。記録データは、情報処理装置上のドライバ311により圧縮データとされ、情報処理装置からUSB等のインタフェース312を介して記録装置300に送られる。USBコントローラ303から得られた記録データは、CPU304を経由して、受信メモリ(例えばSDRAM等)305に保管された後、制御回路(例えばASIC等)302の内部で解凍され、記録メモリ(例えばSDRAM等)306に書き込まれる。その後、記録データは記録メモリ306から制御回路302を介し、記録ヘッド100へ転送される。記録ヘッド100には記録データを保管するレジスタがあり、1ライン分のデータを受信すると、吐出の準備が完了し、用紙の搬送状態によって最適なタイミングでインク吐出が行われる。なお、この例では、上記各部(302〜306)はインクジェット記録装置の制御基板301上に搭載されている。ラインヘッドを用いた記録装置においては記録ヘッドへのデータ転送を1ライン分の記録データ単位で行う。
【0024】
図4は、記録ヘッドの各ノズル内に設けられたノズルヒータを駆動するための駆動パルス信号403の概略のパルス波形を示した図である。
【0025】
本実施の形態の記録装置の駆動パルス403はダブルパルスの方式を採用している。即ち、ノズルからインクを吐出させる時に、まずプレヒートパルス400を印加し、その後、インターバルタイム401を介してメインヒートパルス402を印加する周知の駆動方法である。プレヒートパルス400は主にインク温度に対して補正するための制御パルスであり、これのみではインクが吐出されない範囲内のパルス幅t1に設定される。インターバルタイム401はある限定された範囲、例えばt2:2〜3[μsec]以内であると、t2の増加に伴いインク吐出量が僅かに増加する傾向がある。また、記録ヘッドの温度(インク温度)が高くなるとインク吐出量も増加することが解っている。従って、記録ヘッドの温度上昇に伴い、インターバルタイム401の幅t2を小さくすることによってインク吐出量を補正出来る。メインヒートパルス402はノズル内に発泡現象を発生させ、ノズルよりインク滴を吐出させるためのパルスである。ノズルヒータの抵抗値は製造時ある程度ばらつく為、通常メインヒートパルス402のパルス幅t3にて補正する。
【0026】
尚、低温環境での動作開始時等に、短時間で記録ヘッド100を所定の温度までヒート・アップする為に、プレヒートパルス400のみを連続的に印加することもある。
【0027】
次に、図5を参照して記録ヘッド100の時分割駆動方法を説明する。
【0028】
図5(a)の本実施の形態に用いる記録ヘッド100は#1〜#2560迄のノズル列を持ち、記録分解能は600[dot/inch]である。従って全ノズルを使用した場合の最大記録幅は理論値約4.3[inch]となるが、他の記録ヘッドとの微小な位置調整用の冗長領域をとる必要があるので最大記録幅の設計値としては例えば4[inch]にする。
【0029】
図示の通り2560個のノズル列をNO.1〜NO.40のブロックに分割すると、各々のブロックは夫々64個のノズルから構成される。
【0030】
次に図5(b)にて、各ブロック内でノズルがどのような順序で時分割駆動されるかを説明する。
【0031】
図5(b)の縦方向は時分割駆動の時間的な流れを示し、タイムスロット1〜16に時分割されている。1つのタイムスロットは例えば6〜7[μsec]程度である。横方向には各タイムスロットでブロック内のどのノズルが駆動されるかを時分割駆動対象ノズルとして黒升で示す。本図ではブロックNO.1の場合を例示する。
【0032】
各々のタイムスロットの時分割駆動対象ノズルは、次のとおりである。
タイムスロット 1: # 1、# 3、# 5、# 7
タイムスロット 2: #25、#27、#29、#31
タイムスロット 3: #49、#51、#53、#55
タイムスロット 4: # 9、#11、#13、#15
タイムスロット 5: #33、#35、#37、#39
タイムスロット 6: #57、#59、#61、#63
タイムスロット 7: #17、#19、#21、#23
タイムスロット 8: #41、#43、#45、#47
タイムスロット 9: # 2、# 4、# 6、# 8
タイムスロット10: #26、#28、#30、#32
タイムスロット11: #50、#52、#54、#56
タイムスロット12: #10、#12、#14、#16
タイムスロット13: #34、#36、#38、#40
タイムスロット14: #58、#60、#62、#64
タイムスロット15: #18、#20、#22、#24
タイムスロット16: #42、#44、#46、#48
【0033】
上記の通り、前半の8つのタイムスロットで奇数番号のノズル、後半の8つのタイムスロットで偶数番号のノズルが駆動される。あるタイムスロットから次のタイムスロットに移行する時に、比較的離れたノズル番号に跳んでいるのは、次のインク吐出に与える影響を小さく抑えたい為である。
【0034】
上記時分割駆動はブロックNO.1〜NO.40迄、全てのブロックで並行して行なうので、例えばブロックNO.2では
タイムスロット 1: # 65、# 67、# 69、# 71
タイムスロット 2: # 89、# 91、# 93、# 95
タイムスロット 3: #103、#105、#107、#109
タイムスロット 4: # 73、# 75、# 77、# 79
タイムスロット 5: # 97、# 99、#101、#103
タイムスロット 6: #121、#123、#125、#127
タイムスロット 7: # 81、# 83、# 85、# 87
タイムスロット 8: #105、#107、#109、#111
タイムスロット 9: # 66、# 68、# 70、# 72
タイムスロット10: # 90、# 92、# 94、# 96
タイムスロット11: #104、#106、#108、#110
タイムスロット12: # 74、# 76、# 78、# 80
タイムスロット13: # 98、#100、#102、#104
タイムスロット14: #122、#124、#126、#128
タイムスロット15: # 82、# 84、# 86、# 88
タイムスロット16: #106、#108、#110、#112
という順序となる。
【0035】
なお、時分割駆動対象ノズルについて実際にインクが吐出されるか否かは、後述する最終的な間引き後の記録データに基づいて決まる。
【0036】
図6に、記録ヘッドの時分割駆動を行う際の幾つかの電気信号を示す。ラインヘッド1ライン分の記録を行う際に、奇数番号のノズルを選択する信号がODD信号601、偶数番号のノズルを選択する信号がEVEN信号602である。先にODD信号がアクティブになった後にEVEN信号がアクティブになり、記録の際2つの信号は相補的にどちらかがアクティブになる。その他にブロック内のどの8ノズルを選択するかを決めるデコード信号として、BE0、BE1、BE2の3つの信号600がある。
【0037】
これらの各論理値に対応して例えばブロックNO.1では、下記の如くノズルが選択される。
BE2 BE1 BE0 選択されるノズル
0 0 0 # 1〜# 8
0 0 1 # 9〜#16
0 1 0 #17〜#24
0 1 1 #25〜#32
1 0 0 #33〜#40
1 0 1 #41〜#48
1 1 0 #49〜#56
1 1 1 #57〜#64
【0038】
ODD信号601、EVEN信号602、それに加えBE0、BE1、BE2の3つの信号600は全てのブロック(ブロックNO.1〜40)に共通な信号である。
【0039】
図6の各タイムスロット1〜16では図5(b)の各タイムスロット1〜16に対応した4つのノズルが各々選択的に駆動される。
【0040】
前述の如く、各ブロックで1タイムスロット毎に4ノズルが駆動され、且つ40ブロック並行に駆動されるので、1本の記録ヘッド内で同時に駆動される最大ノズル数は160ということになる。
【0041】
図7は本実施の形態における、ASIC等の制御回路302の内部構成の一例を示している。この回路例では時分割駆動に対応したデューティ制御を行うための処理回路として、デューティ制御レジスタ部71とデューティ制御演算部72とを備えている。本発明においてデューティ制御の処理をホスト側で行わず記録装置本体側で行う理由は、前述したようにホスト側で記録装置へのデータ転送前にデューティ制御を行うと、圧縮率が低下し画像データの容量が大きくなるのに対し、記録装置側で行うことによりデータ容量を大きくすることがないのでデータ転送時間に影響を与えずにデューティ制御を行えるためである。
【0042】
デューティ制御レジスタ部71は、デューティ率設定レジスタ711と、1ヘッドあたり16個の分割データレジスタ712から構成される。デューティ率設定レジスタ711は、画像の記録に際してデューティ率の値を設定するためのレジスタである。ここでいう「デューティ率」とは使用者やシステムが目的や記録画像に合わせ選択する、記録画像の間引き率に相当する値である。16個の分割データレジスタ712は、図8に示すように、上記1ラインの記録期間の16個のタイムスロットに対応して設けられ、1ライン分の記録データのうち、同時駆動対象の所定数の記録素子に与えられる記録データ部分を格納するレジスタである。換言すれば、各タイムスロットにおける時分割駆動対象ノズルの記録データを格納するレジスタである。
【0043】
分割データレジスタ712は本発明において必須の要素ではないが、このレジスタを用いることにより、後述する時分割駆動方式における同時駆動ノズルの記録データをまとめて1レジスタ内に格納することができるので、後述するカウンタ(計数手段)でのカウント対象の記録データの読み出しが容易になる。
【0044】
デューティ制御レジスタ部71には外部ブロックとの接続信号として、CPU304から、動作の基本となるクロック信号(CLK)、リセット動作を行うリセット信号(N_RESET)、制御回路302をアクティブにするチップセレクト信号(N_CS)、制御回路内部のレジスタへの書込みをアクティブにするライトイネーブル信号(N_WE3〜N_WE0)、その他にメモリやCPU304から、アドレス番地を指定するアドレスバス(A_IN)、リードライトされるデータを送受信するデータバス(D_IN)等の論理回路の動作上必要な基本的信号が入力される。これらの信号により、デューティ率などの元画像のデータを間引く情報がデューティ制御レジスタ部に保管される。
【0045】
デューティ制御演算部72は、間引きタイミング生成回路721と、カウンタ722、マスク処理回路723により構成される。このデューティ制御演算部702は、記録に必要なタイミング信号、記録データを転送する信号、及びデューティ制御レジスタ部71からの信号を受けて、画像データに対して間引きを行った記録画像データを出力する。この制御回路302は印刷可能な色分(4色であれば4つ)の制御回路がある。
【0046】
カウンタ722は分割データレジスタ712の16個のレジスタに対して、各レジスタに格納された記録データのONドットの出現個数を順次計数する。このカウンタ722の計数出力は、設定されているデューティ率に応じて、間引きタイミング生成回路721で判断され、間引きタイミング信号が生成される。この間引きタイミング信号に基づいて、マスク処理回路723で入力記録データから該当するONドットが間引いて、出力される。ここで「間引」とは、インク吐出を指示する特定のONドットのデータをマスクすること、例えば、当該画素についてインク吐出を指示するデータ“1”を、インク非吐出を指示するデータ“0”に書き換えることに相当する。
【0047】
図9に、ユーザが指定したデューティ率に対して記録装置が間引きを行うカウンタ動作を示す。この図は、分割データレジスタに存在する順次のONドットのカウント時に、デューティ率(%)(ここでは5%きざみ)に応じて、何番目のカウント時にそのONドットを間引くかを決定する規則を示している。例えば、設定したデューティ率が50%の場合、時分割駆動方式における16分割された時分割駆動対象ノズルのうちONドットの記録データがあるノズル(すなわちONドット)についてカウントを行い、カウント値(計数値)が2となる毎にその記録データに対し間引き(記録データ:“1”⇒“0”)を行うとともに、カウンタをリセットする。設定したデューティ率が55%の場合、カウント値が3,5,7,9,12,14,16,18,20となる毎にその記録データに対し間引きを行うとともに、カウント値20でカウンタをリセットする。同様にして、設定したデューティ率が90%の場合、カウント値が10となる毎にその記録データに対し間引きを行うとともに、カウンタをリセットする。
【0048】
なお、ここでは指定デューティ率を50%〜100%の間で5%刻みで設定できるようにしているが、これに限るものではない。例えば1%刻みで指定できる構成にしてもよい。
【0049】
図10に、このような間引きタイミングを生成することができる間引きタイミング生成回路721の一例を示す。
【0050】
図中のカウンタ722は、分割データレジスタ712の対応するレジスタに格納された記録データがドット単位(画素単位)に読み出されたときその出力をクロック入力端に受けて、その記録データ中のONドットをカウントするバイナリ・カウンタである。このカウンタ722のビット数は図9に示したようなその記録装置がサポートするデューティ率のなかでカウントすべきONドット数の最大値をカバーする値とする。デコーダ92は、カウンタ722のカウント出力の各値に対応するn個の出力端子を有する。カウンタ722のビット数をmビットとすると、n=2m−1となる。リセットデータレジスタ93は、リセットデータを設定するための、デコーダ92の出力端子数に対応する(またはそれ以上の)ビット数のレジスタである。リセットデータとは、設定されたデューティ率に応じて決まるカウンタ動作時のリセット対象のカウント値に対応するビット位置のみに“1”を設定し、他のビット位置に“0”を設定したデータである。このリセットデータレジスタ93の出力をAND回路97でそれぞれビット対応にデコーダ92の出力と論理積をとることにより、リセットデータが発生したとき、該当するANDゲートの出力がNOR回路98から出力され、これによりカウンタ722がリセットされる(“0”に戻る)。その後、カウンタ722はカウント値0から新たなカウント動作を開始する。
【0051】
間引きデータレジスタ94は、リセットデータレジスタ93と同様、デコーダ92の出力端子数に対応する(またはそれ以上の)ビット数のレジスタである。記憶するデータとしては間引きデータを記憶する。ここでの間引きデータは、図9の「カウント動作」で示したような間引きを行うカウント値に対応するビット位置のみ“1”を設定し、他のビット位置に“0”を設定したデータである。例えば、デューティ率55%の場合、カウント値3,5,7,9,12,14,16,18,20に対応するビット位置に“1”が設定された間引きデータが間引きデータレジスタ94に格納される。この出力をデコーダ92の出力とビット単位に論理積をとるAND回路95により、当該間引き対象となるカウント値がデコーダ92の出力に現れるたびに、いずれかのAND回路95から間引き指示出力が発生し、これがOR回路96を介して間引きタイミング信号として出力される。この間引きタイミング信号はマスク処理回路723へ送られ、入力記録データの該当するドット位置のONドットが間引かれる。
【0052】
図11は本発明の実施の形態における時分割デューティ制御の処理手順を示したフローチャートである。この処理は、図3のCPU304のプログラム制御下で制御回路302の動作によって実現される。後述する他のフローチャートの処理についても同様である。
【0053】
記録装置は、時分割デューティ制御を開始すると、まず、ホスト側から送信される1ページ分の画像データを受信メモリ305のイメージバッファ(図示せず)に格納する(S11)。また、制御回路302は前記で説明した時分割駆動対象ノズルの16分割された同時駆動ノズルそれぞれについて16個の分割データレジスタを内部に設定する(S12)。続いて格納した画像データからCPU304が時分割駆動対象ノズルのうち、記録データのある数をカウントし、レジスタに保存する(S13)。その後、間引き処理を行い(S14)、ヘッドに間引きされた記録データを送信する(S15)。記録データが終了すれば(S16,Yes)、時分割デューティ制御を終了する。
【0054】
図12は、時分割デューティ制御における間引き処理の概要を示したフローチャートである。ユーザがデューティ率を指定するとファームウェアはデューティ率設定レジスタに指定された値を書込み、間引きタイミング生成回路721において、間引き率を計算し読み込む(S21)。続いてカウンタ722にて、上述したように、時分割駆動対象ノズルのうち、それぞれのヘッドについて画像データのONとなるノズル数(すなわちONドット数)をカウントする(S22)。この時点のカウント値に基づいて間引きタイミングか否かを判断し(S23)、間引きタイミングであればマスク処理回路723にて画像データの当該ONドットの間引きを行う(S24)。この処理をヘッド1ラインについて、時分割数だけ実行する(S25)。
【0055】
なお、カウンタは、分割データレジスタが切り替わる時点でリセットされないので、前の分割データについてのカウント値を次の分割データに対して引き継ぐ。これによって、より正確なデューティ制御が行える。
【0056】
図13は、本実施の形態による4インチヘッドの2560本のノズルを上述のように40ブロックに分割した場合の実際の記録データに対して時分割駆動で記録する際にどのような間引きが行われるかの例を示している。図の最上部は受信した記録データの例を示している。黒四角がONドットを示し、空白がOFFドットを示している。その下の「時分割駆動」の格子マップは図5に示したと同様の図である。さらにその下には、上記入力記録データに対して、間引きされた後の実際の記録データを示している。
【0057】
上述したように、各分割データレジスタに格納された時分割駆動対象ノズルの記録データに対してそのONドットのカウントを行い、間引き条件が満たされたときONドットのマスク処理を行う。図の例では、デューティ率を80%と設定した場合を想定している。この場合、図9に示したように、カウント値が“5”に達する毎にONドットの間引きが行われると共にカウンタのリセットが行われる。したがって、記録データのONドットのカウント数100回に付20個のONドットがマスクされることになる。これは5分の1の割合でのマスクとなるので、タイムスロット1の吐出ノズルについてはノズル#1、#3、#5、#7、#65、#67・・・にONドットがある。最初の5番目のONドットである#65を間引くことになる。同様に、ノズル#67、#69、#71・・・とカウントを行い、次の5番目のONドットをマスクする。
【0058】
また時分割駆動対象ノズルのカウントは時分割駆動をまたぐ場合、タイムスロット1から2、2から3・・・においても有効である。例えばタイムスロット1の吐出ノズルの最後である#1927ノズル(図示せず)にONドットがあり、カウント数が“2”の場合、2回目の吐出ノズルでありONドットがあるノズル#25はカウント数“3”から数え始め、同様に5番目のONドットをマスクする。このような動作をヘッド1ラインである2560ノズル数まで繰り返す。続いて2ライン目、3ライン目と同様の処理を行う。
【0059】
上述したように、本実施の形態によれば、記録データの如何によらず、デューティ率にあったデューティ制御を行うことが可能となる。また、インクジェット記録装置側で、指定したデューティ率となる間引きを、電圧降下の防止に有効な箇所で行うことができる。
【0060】
なお、通常、間引きを行う場合、記録画像に対して間引きする箇所が均等に散らばっていた方が実際に記録した画像は小さい文字や細い線の抜けが分散する為、見栄えが良くなることが知られている。本実施の形態における間引きはこの点を特に考慮してはいないが、メニスカス振動防止のために時分割駆動のパターン自体に拡散性を持っており、また記録データと時分割されたノズルの吐出の組み合わせは偶然であるので、間引きに対して十分なランダム性を持っていると言える。
【0061】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形、変更を行うことが可能である。例えば、上述した記録ヘッドの本数、色数、ノズル数、時分割駆動数、等はあくまで説明のための例示であり、本発明はそれらの具体的な構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の適用可能なライン型の記録ヘッド(ラインヘッド)を用いたインクジェット記録装置の主要部の概略の構成を示した図である。
【図2】図1に示したインクジェット記録装置を用いて記録を行う記録方法を説明するための図である。
【図3】図1の記録ヘッドを用いた記録装置における記録データの転送経路を説明するための図である。
【図4】記録ヘッドの各ノズル内に設けられたノズルヒータを駆動するための駆動パルス信号の概略のパルス波形を示した図である。
【図5】本発明の実施の形態における記録ヘッドの時分割駆動方法の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態における記録ヘッドの時分割駆動を行う際の幾つかの電気信号を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における制御回路の内部構成の一例を示す図である。
【図8】16個の分割データレジスタの概略構成を示す図である。
【図9】ユーザが指定したデューティ率に対して記録装置が間引きを行うカウンタ動作を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態における間引きタイミングを生成することができる間引きタイミング生成回路の一例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態における時分割デューティ制御の処理手順を示したフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態の時分割デューティ制御における間引き処理の概要を示したフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態において実際の記録データに対して時分割駆動で記録する際にどのような間引きが行われるかの例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
71…デューティ制御レジスタ部
72…デューティ制御演算部
92…デコーダ
93…リセットデータレジスタ
94…間引きデータレジスタ
95…AND回路
96…OR回路
97…AND回路
98…OR回路
100…記録ヘッド(ラインヘッド)
105…搬送ローラ
106…用紙(記録媒体)
200…モニタ
201…画像
300…記録装置
301…制御基板
302…制御回路
303…コントローラ
305…受信メモリ
306…記録メモリ
311…ドライバ
312…インタフェース
400…プレヒートパルス
401…インターバルタイム
402…メインヒートパルス
403…駆動パルス信号
600…イネーブル信号
601…ODD信号
602…EVEN信号
702…デューティ制御演算部
711…デューティ率設定レジスタ
712…分割データレジスタ
721…タイミング生成回路
722…カウンタ
723…マスク処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録素子を備えた記録ヘッドを有し、前記複数の記録素子のうち所定数の記録素子ずつ順次、時分割駆動することにより記録媒体に画像を記録する記録装置における記録データ形成方法であって、
前記時分割駆動における同時駆動対象となる前記所定数の記録素子に与えられる記録データ部分を抽出するステップと、
指定されたデューティ率に従って、前記抽出された記録データ部分に対して、ONドットの間引きを行うステップとを備えた
ことを特徴とする記録データ形成方法。
【請求項2】
複数の記録素子を備えた記録ヘッドを有し、前記複数の記録素子のうち所定数の記録素子ずつ順次、時分割駆動することにより記録媒体に画像を記録する記録装置において、
前記時分割駆動における同時駆動対象となる前記所定数の記録素子に与えられる記録データ部分のONドットの数を計数する計数手段と、
指定されたデューティ率に従って、前記記録ヘッドに与える当該記録データ部分毎に、前記ONドットの計数値に基づいてONドットの間引きを行う間引き手段とを備えた
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記記録ヘッドはラインヘッドである請求項2記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記計数手段のどの計数値に該当するONドットの間引きを行うか、および、どの計数値で前記計数手段のリセットを行うかを、前記指定されたデューティ率に応じて予め定めたことを特徴とする請求項2または3記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記計数手段は、前記時分割駆動における同時駆動対象となる前記所定数の記録素子の一群に対する前記計数手段による計数結果を、次に同時駆動対象となる前記所定数の記録素子の他の一群に対する前記計数手段による計数動作に引き継ぐ請求項4記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
1ライン分の記録データのうち、前記時分割駆動における同時駆動対象となる前記所定数の記録素子に与えられる記録データ部分を格納する複数の分割データレジスタを備え、前記計数手段は、前記複数の分割データレジスタに記憶されたデータを順次シリアルに読み出して計数動作を行う請求項2〜5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図2】
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