説明

インクジェット記録装置

【課題】キャリッジに複数の短借ヘッドからなるラインヘッドを取り付けたヘッド用基板を取り付けたインクジェット記録装置にあっても通常の短尺ヘッドを用いることができるようにする。
【解決手段】キャリッジ9に、複数の短尺ヘッド11を千鳥状に配置してなるラインヘッドを取り付けたヘッド用基板12を取り付け、このキャリッジの下側に位置する被記録体2に上記ラインヘッドにてインクジェット記録を行うインクジェット記録装置において、ヘッド用基板のキャリッジに対する取り付け面側に、キャリッジに設けた穴26内に入り込む突出部25を設け、ヘッド用基板の表側で、かつ上記突出部の位置に、短尺ヘッドを取り付けると共に、ノズル用穴を有するヘッド取り付け面27を凹設した構成になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクの噴射により記録媒体、主として布帛にシリアルプリント方式にてインクジェット印刷(捺染)を行うインクジェット記録装置で、特に短尺のノズル列を有する短尺ヘッドを千鳥状に複数配列してなるラインヘッドを複数列設けてなるインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリアルプリント方式のインクジェット記録時の記録ヘッドの走査速度は、諸条件にて制限されて上限が存在するため、生産効率をよくするためには1回の記録領域を広くする必要が生じる。そしてこの記録領域を広くするために、短尺ヘッドを千鳥状に配置してラインヘッドとして構成し、これでインクジェット記録を行うものが従来から知られていた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−188013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来技術にあっては、短尺ヘッドを所定の厚さを有するヘッド用基板の表面に搭載する構成になっていたため、短尺ヘッドのノズル面と記録媒体の表面との間に上記ヘッド用基板の厚みが介在することになり、その分、短尺ヘッドのノズル面を、短尺ヘッドの本体より突出しなければならず、この短尺ヘッドに特殊な形状のものを用いなければならないという不具合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、キャリッジに、複数の短尺ヘッドを千鳥状に配置してなるラインヘッドを取り付けたヘッド用基板を取り付け、このキャリッジの下側に位置する被記録体に上記ラインヘッドにてインクジェット記録を行うインクジェット記録装置において、ヘッド用基板のキャリッジに対する取り付け面側に、キャリッジに設けた穴内に入り込む突出部を設け、ヘッド用基板の表側で、かつ上記突出部の位置に、短尺ヘッドを取り付けると共に、ノズル用穴を有するヘッド取り付け面を凹設した構成になっている。
【0006】
そして上記インクジェット記録装置において、短尺ヘッドのヘッド用基板の取り付け面への取り付け部の長手方向両側に取り付け用のフランジを設け、一方のフランジの先端辺にV字状溝を設け、他方のフランジに短尺ヘッドの長手方向と平行の当接面を設け、ヘッド用基板のヘッド取り付け面に、短尺ヘッドの一方のフランジに設けたV字条溝に係合する位置決めピンと、他方のフランジに設けた位置決め面に当接する位置決めピンを設けた構成にした。
【0007】
また、これらのインクジェット記録装置において、キャリッジに取り付けるヘッド用基板の長手方向の一端部をキャリッジの表面に沿って揺動可能にしてキャリッジに係合し、ヘッド用基板の長手方向他端部に、ヘッド用基板をキャリッジの表面に沿って揺動するようにしてキャリッジに設けた揺動装置を連結した構成にした。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1の構成によれば、所定の厚さを有するヘッド用基板に、複数の短尺ヘッドからなるラインヘッドを取り付けるようにしたインクジェット記録装置にあっても、通常の仕様の短尺ヘッドを用いて、この短尺ヘッドのヘッド用基板の下側に位置する記録媒体に対するノズル面の位置を適正にとることができ、通常仕様の短尺ヘッドを用いて上記記録媒体が布帛である場合での捺染を品質よく行うことができる。
【0009】
また、本発明の請求項2の構成によれば、ラインヘッドを構成する各短尺ヘッドをヘッド用基板の取り付け面に対して簡単な位置決め構成にて精度よく取り付けることができる。
【0010】
また、本発明の請求項3の構成によれば、ラインヘッドを取り付けたヘッド用基板のキャリッジに対する位置合わせを簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るインクジェット記録装置を示す正面図である。
【図2】インクジェット記録部を示す平面図である。
【図3】記録ヘッド装置を示す概略的な平面図である。
【図4】記録ヘッド装置を示す概略的な正面図である。
【図5】短尺ヘッドを取り付けたヘッド用基板及び揺動装置を一部破断して示す部分平面図である。
【図6】図5のA−A線に沿う一部断面図である。
【図7】ヘッド用基板を示す一部破断斜視図である。
【図8】図7のB−B線に沿う断面図である。
【図9】図7のC−C線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明を実施するためのインクジェット記録装置を概略的に示す正面図であり、図中1は記録媒体である布帛2を供給する布帛供給部、3は布帛2の走行にしたがってこれの表面にインクジェットにて印刷するインクジェット記録部、4は乾燥部、5は折部である。そして上記インクジェット記録部3は布帛2を搬送する搬送ベルト6と、この搬送ベルト6に上側から対向するように設けられた記録ヘッド装置7にて構成されている。
【0013】
記録ヘッド装置7は図2に示すようになっていて、布帛2の走行方向と直交する方向にレール8,8に沿って移動可能にしたキャリッジ9に、複数、例えば4列(Y,M,C,K)のラインヘッド10a,10b,10c,10dを、ノズル列を布帛2の走行方向と平行にしてキャリッジ9の移動方向に並列に配列した構成になっている。そしてこの記録ヘッド7は、上記キャリッジ9を布帛2を停止させた状態で一方向に移動、あるいは往復動することにより上記布帛2に1サイクルの印刷を行い、ついで上記ラインヘッド10a〜10dの長さにわたって、あるいはこのラインヘッド10a〜10dの長さに所定長さを加えた長さにわたる布帛2を間欠走行させてから停止して上記印刷動作を繰り返すことにより、布帛2の表面に、これの走行方向に所定の長さにわたる連続した絵柄、あるいは相互に所定の隙間をあけた絵柄を繰り返し印刷するようになっている。
【0014】
上記ラインヘッド10a〜10dは、1列で所定の長さを得ることがむずかしいので、図3に示すように各1列のラインヘッドに、例えば5個の短尺ヘッド11を千鳥状に配置した構成になっている。なおこの実施の形態では、1列のラインヘッドに2列の短尺ヘッド列を用いた例を示したが、これは1列でもよい。また上記短尺ヘッド11は5個に限るものではなく、3個を千鳥状に配置してもよい。各ラインヘッド10a〜10dの各短尺ヘッド11は、ヘッド用基板12を介して上記キャリッジ9に取り付けられるようになっている。
【0015】
上記ヘッド用基板12は、これの両端部で固定ねじ13,13にてキャリッジ9に固定されるようになっている。また、このヘッド用基板12の一端部はキャリッジ9に突設した位置決めピン14を支点にしてキャリッジ9の平面方向に揺動自在に係合されており、またこれの他端にはキャリッジ9に設けた揺動装置15が連結されていて、このヘッド用基板12は上記固定ねじ13,13にて固定される前に、揺動装置15を駆動することにより、位置決めピン14を支点にてキャリッジ9の上面に沿って揺動方向(スクイーズ方向)に位置調整できるようになっている。上記固定ねじ13が貫挿されるヘッド用基板12に設けたボルト穴は、固定ねじ13の径より大きくなっていて、上記ヘッド用基板12の移動を吸収できるようになっている。
【0016】
上記揺動装置15は、例えば図5に示すようになっていて、ヘッド用基板12の端部の下側に、キャリッジ9に設けた凹部16内に収納されて、ヘッド用基板12の揺動方向に移動自在に設けたスライドブラケット17と、このスライドブラケット17に突設され、ヘッド用基板12に設けられたU溝18に係合するピン19と、スライドブラケット17に螺合するねじ20と、このねじ20を回転するウォームホイール装置21とからなっていて、ウォームホイール装置21のハンドル22を回転することにより、このハンドル22に同軸に設けたウォーム23とウォーオムホイール24を介して、上記ねじ20を回転することによりスライドブラケット17が移動して、上記ピン19を介して上記ヘッド用基板12を揺動するようになっている。
【0017】
ウォールホイール装置21のねじ部には、ウォームホイール装置21のブラケット21aとスライドブラケット17の間にばね17aが介装してあり、このばね17aにてねじ20の遊びを吸収するようにしている。
【0018】
上記したように短尺ヘッド11を取り付けるヘッド用基板12は、キャリッジ9の上面に取り付けられるようになっている。このため、短尺ヘッド11をヘッド用基板12の表面に取り付けた場合、短尺ヘッドのノズルを、これの取り付け面から上記ヘッド用基板12とキャリッジ9の厚さ分だけ長く突出しなければならない。その場合、短尺ヘッド1の仕様を通常のものに対してノズルの突出長さを変えたものに変更しなければならない。
【0019】
そこで本発明にあっては、図6〜図9に示すように、ヘッド用基板12の裏側に、これのキャリッジ9に対する取り付け面12aに対して突出する突出部25を設け、一方キャリッジ9にこの突出部25が嵌合する穴26を設け、この穴26に上記突出部25を嵌挿して、このキャリッジ9にヘッド用基板12を取り付けるようにしている。上記突出部25の突出高さは、一例としてキャリッジ9の厚さに相当する高さにしてある。
【0020】
ヘッド用基板12の表側で、かつ上記突出部25に対応する位置に各短尺ヘッド11を取り付けるヘッド取り付け面27が凹設してあると共に、このヘッド取り付け面27の各短尺ヘッド取り付け位置に各短尺ヘッド11のノズルが突出するノズル用穴28が設けてある。上記ヘッド取り付け面27の深さは、このヘッド取り付け面27に取り付けた短尺ヘッド11のノズル先端が、このヘッド用基板12の突出部25の下面に対して所定の位置(例えば同一面状)となる深さになっている。
【0021】
各短尺ヘッド11の上記ヘッド取り付け面27への取り付けは、図5に示すように、短尺ヘッドの長手方向両側に設けたフランジ29a,29bを、ヘッド取り付け面27にねじ込む固定ねじ30,30にて締結することによって行われるようになっている。
【0022】
図5において、短尺ヘッド11の一方のフランジ29aにはV字状溝31が設けてあり、他方のフランジ29bにはL字状に切り欠かれていて、短尺ヘッドの長手方向と平行にした位置決め面32が設けてあり、一方のフランジ29aのV字状溝31をヘッド取り付け面27に突設した位置決めピン33に係合し、他方のフランジ29bの位置決め面32に他の位置決めピン34を当接することにより、各短尺ヘッド11がヘッド用基板12のヘッド取り付け面27に位置決めされるようになっている。そして各短尺ヘッド11は、このように位置決めした状態で固定ねじ30,30にて固定する。
【0023】
ヘッド用基板12の長手方向両端部には、このヘッド用基板12を取り扱う際に便利なように取手35が設けてある。
【0024】
上記構成において、ヘッド用基板12への短尺ヘッド11は、この短尺ヘッド11の一方のフランジ29aに設けたV字状溝31をヘッド取り付け面27の位置決めピン33に当接させると共に、他方のフランジ29bに設けた位置決め面32を他の位置決めピン34に当接することにより、ヘッド用基板12のヘッド取り付け面27に位置決めセットされる。そしてこの状態で、両フランジ29a,29bを固定ねじ30,30にて固定することにより、各短尺ヘッド11がヘッド用基板12に位置決めされた状態で取り付けられる。
【0025】
このときにおいて、上記ヘッド取り付け面27がヘッド用基板12に凹設して設けられていて、このヘッド取り付け面27がキャリッジ9に設けた穴26内に入り込んでいることにより、このヘッド取り付け面27の深さ方向の位置を任意に設定でき、したがってこのヘッド取り付け面27に取り付ける短尺ヘッド11のノズル面をキャリッジ9の厚さに関係なく、記録媒体である布帛2との間隔を設定することができる。
【0026】
上記のようにして各短尺ヘッド11を取り付けたヘッド用基板12は、これの取手35を持って移動し、キャリッジ9に取り付ける。このときのヘッド用基板12は、これの一端部をキャリッジ9に突設した位置決めピン14に、及び他端部のU溝18をスライドブロック17のピン19に係合する。そしてスライドブロック17をウォームホイール装置21にて操作してスライドブロック17を移動することにより、ヘッド用基板12が位置決めピン14を支点にて揺動され、この揺動作動により布帛2の走行方向に対する平行度が調整される。その後、固定ねじ13にて固定する。
【0027】
上記ウォームホイール装置21の作動時において、このねじ20の遊びがばね17aにて吸収されることにより、ウォームホイール装置21の作動によりヘッド用基板12の上記調整を精度よく行うことができる。
【0028】
上記した実施の形態は、ラインヘッド10a〜10dを記録媒体の走行方向と平行に配置して、この記録媒体の走行方向と直交する方向に移動して印刷するシリアルプリント方式のインクジェット記録装置に適用した例を示したが、ラインヘッド10aから10dを記録媒体の走行方向と直交する姿勢に配置して、記録媒体の走行にしたがって印刷するようにしたものにも適用してもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0029】
1…布帛供給部、2…布帛、3…インクジェット記録部、4…乾燥部、5…折部、6…搬送ベルト、7…記録ヘッド装置、8…レール、9…キャリッジ、10a〜10d…ラインヘッド、11…短尺ヘッド、12…ヘッド用基板、12a…取り付け面、13…固定ねじ、14…位置決めピン、15…揺動装置、16…凹部、17…スライドブラケット、17a…ばね、18…U溝、19…ピン、20…ねじ、21…ウォームホイール装置、21a…ブラケット、22…ハンドル、23…ウォーム、24…ウォームホイール、25…突出部、26…穴、27…ヘッド取り付け面、28…ノズル用穴、29a,29b…フランジ、30…固定ねじ、31…V字状溝、32…位置決め面、33,34…位置決めピン、35…取手。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリッジに、複数の短尺ヘッドを千鳥状に配置してなるラインヘッドを取り付けたヘッド用基板を取り付け、このキャリッジの下側に位置する被記録体に上記ラインヘッドにてインクジェット記録を行うインクジェット記録装置において、
ヘッド用基板のキャリッジに対する取り付け面側に、キャリッジに設けた穴内に入り込む突出部を設け、
ヘッド用基板の表側で、かつ上記突出部の位置に、短尺ヘッドを取り付けると共に、ノズル用穴を有するヘッド取り付け面を凹設した
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
短尺ヘッドのヘッド用基板の取り付け面への取り付け部の長手方向両側に取り付け用のフランジを設け、一方のフランジの先端辺にV字状溝を設け、他方のフランジに短尺ヘッドの長手方向と平行の当接面を設け、
ヘッド用基板のヘッド取り付け面に、短尺ヘッドの一方のフランジに設けたV字条溝に係合する位置決めピンと、他方のフランジに設けた位置決め面に当接する位置決めピンを設けた
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
キャリッジに取り付けるヘッド用基板の長手方向の一端部をキャリッジの表面に沿って揺動可能にしてキャリッジに係合し、ヘッド用基板の長手方向他端部に、ヘッド用基板をキャリッジの表面に沿って揺動するようにしキャリッジに設けた揺動装置を連結したことを特徴とする請求項1,2のいずれか記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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