インクジェット記録装置
【課題】濡れ性の高い記録媒体あるいは濡れ性の低い記録媒体の場合の、光硬化型インクを硬化する際の光照射量の不足、過剰な照射などを防止できるインクジェット記録装置の提供。
【解決手段】記録媒体上に光硬化性インクを吐出するインクジェット記録ヘッドと、前記記録媒体を搬送させるための搬送手段と、前記記録媒体上に吐出された該光硬化性インクに光を照射する光照射装置と、前記光照射装置の照射量を制御する光照射量制御装置とを備えるインクジェット記録装置において、前記インクジェット記録ヘッドが配設される前記搬送装置の搬送方向上流側と、前記光照射装置が配設される前記搬送装置の搬送方向下流側との間に、前記搬送手段により搬送される前記記録媒体上に吐着されたインクのうち、前記記録媒体の表面上に残存するインク量を検出するインク量検出手段を備えることを特徴とする。
【解決手段】記録媒体上に光硬化性インクを吐出するインクジェット記録ヘッドと、前記記録媒体を搬送させるための搬送手段と、前記記録媒体上に吐出された該光硬化性インクに光を照射する光照射装置と、前記光照射装置の照射量を制御する光照射量制御装置とを備えるインクジェット記録装置において、前記インクジェット記録ヘッドが配設される前記搬送装置の搬送方向上流側と、前記光照射装置が配設される前記搬送装置の搬送方向下流側との間に、前記搬送手段により搬送される前記記録媒体上に吐着されたインクのうち、前記記録媒体の表面上に残存するインク量を検出するインク量検出手段を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、光硬化性のインクを記録媒体に吐出させて画像を形成するインクジェット記録装置に関し、特に光照射を制御する手段を有するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、インクジェット記録方式は複数個配列されたノズルからインクの液滴を吐出できることから、任意のパターンを記録媒体上に簡便に生成でき、しかも無駄に排出されるインク量が少ないので環境面からも有利である。このためインクジェット記録方式は、写真画像、各種文書、液晶表示装置のカラーフィルタなどの様々な印刷用途に用いられている。
このインクジェット記録方式として、紫外線硬化性を有するインクを用いる光硬化型インクジェット方式がある。この光硬化型インクジェット方式はインクジェット専用紙以外の樹脂フィルムや金属等のインクを吸収しない記録媒体にも印刷できる点で注目されている。
【０００３】
また、光硬化型インクジェット方式は、水性インクや油性インクを用いたインクジェット方式に比べ、インクの乾燥工程が省略できるため、消費エネルギーが少なく、環境面でも有利とされている。
しかしながら、記録速度の高速性の要求から、硬化のための紫外線光源の大型化や大出力化が必要となり、結果的に消費電力が増すという問題点があった。
【０００４】
このような問題点を解決する発明として、特許文献１のインクジェット記録装置の発明が知られている。この特許文献１には、記録媒体Ｋを搬送方向Ａに搬送する搬送装置と、光硬化性のインクを吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドと、複数の紫外線光源を有する照射装置と、これら記録ヘッドおよび照射装置を制御する制御装置とを備えているインクジェット記録装置が開示されている。そしてこのインクジェット記録装置に用いられる制御装置としてはインクの吐出に関する記録ヘッドの制御条件に基づいて照射装置を制御することが記載されている。具体的にはインクを吐出するか否かのＯＮ、ＯＦＦ条件、あるいはドットのサイズ（諧調）を変化させる場合におけるヘッドの駆動波形制御条件に基づいて光源を制御する方式が開示されている。この場合における照射条件とは、ユーザが与える印刷データから推定されるものとなる。
【０００５】
しかしながら、紫外線硬化性を有するインクを吐出してなるインクジェット記録装置に使用される記録媒体は、前述したように樹脂フィルムや金属等のように材質が多岐に渡り、前記インクに対する記録媒体の濡れ性も多様である。
【０００６】
すなわち、記録媒体が普通紙、塗工紙、合成紙、樹脂シートなどのように、記録媒体の濡れ性が高かったり低かったりしている場合には、記録媒体上に吐出された未乾燥のインクの厚さは相違したものとなっており、これを一定の紫外線照射量で乾燥させた場合には、インクの硬化不足、あるいは過剰な量の紫外線照射を引き起こすことになる。したがって、特許文献１に記載されるように、画像データを基にインク量を予測して、照射量の制御を試みた場合、記録媒体の濡れ性が高い場合あるいは低い場合などでは、紫外線照射量が不足したり、過剰に照射するなど、問題があった。また特許文献２には、特許文献１と同様、インクジェット記録装置の発明がされている。この発明も記録ヘッドからの吐出量に応じてフラッシュ光源に印加する電圧の単位時間あたりのパルス数を変化させてインクの加熱具合を変化させる発明が開示されており、濡れ性などに関することは考慮されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、第１の目的は、光硬化性を有するインクを様々な濡れ性を有する記録媒体上に吐出するインクジェット記録装置において、インクの硬化に必要な光の照射量を最適化し、消費エネルギーを低減するようにするインクジェット記録装置を提案することにある。
また第２の目的は、このような新規なインクジェット記録装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記の課題を解決するために、以下の解決手段を本発明は提供できる。すなわち本発明は、以下の通りである。
（１） 記録媒体上に光硬化性インクを吐出するインクジェット記録ヘッドと、前記記録媒体を搬送させるための搬送手段と、前記記録媒体上に吐出された該光硬化性インクに光を照射する光照射装置と、前記光照射装置の照射量を制御する光照射量制御装置とを備えるインクジェット記録装置において、
前記インクジェット記録ヘッドが配設される前記搬送装置の搬送方向上流側と、前記光照射装置が配設される前記搬送装置の搬送方向下流側との間に、前記搬送手段により搬送される前記記録媒体上に吐着されたインクのうち、前記記録媒体の表面上に残存するインク量を検出するインク量検出手段を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
（２） 前記インク量検出手段が非接触式変位検出手段であることを特徴とする前記（１）に記載のインクジェット記録装置。
（３） 前記非接触式変位検出手段を用いて取得した前記記録媒体表面上の前記インク量をインクの厚みとして捉え、その厚みに基づいて、前記光照射装置の照射量を制御する光量制御手段を有することを特徴とする前記（２）に記載のインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【０００９】
本発明によれば、記録媒体上に光硬化性インクを吐出する記録ヘッドと、前記ヘッドと前記記録媒体とを相対的に搬送移動させるための搬送手段と、前記記録媒体上に吐出された前記インクに光を照射する照射装置と、前記インクを硬化させるために照射すべき光の照射量を決定する照射量決定部とを備えるインクジェット記録装置において、前記ヘッドの搬送方向下流側でありかつ前記紫外線照射部の搬送方向上流側にインク量検出手段を備えたので、前記記録ヘッドより記録媒体上に吐出されたインクのうち、前記記録媒体の表面上に残存するインク量を、前記記録ヘッドより下流に設けた前記インク量検出手段によって検出することができ、さらに該インク量に基づいて、前記照射装置の照射量を決定することができるようになり、前記インク量に基づいて最適な光の量を照射できるようになり、無駄なエネルギーの削減が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【００１０】
【図１】本発明のインクジェット記録装置の構成を説明するための例である。
【図２】本発明のインクジェット記録装置に使用するインクジェット記録ヘッドの構成を説明するための例図である。
【図３】本発明のインクジェット記録装置に使用するインクジェット記録ヘッドの構造を説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【００１１】
以下、本発明のインクジェット記録装置を、実施形態により、図面を参照しながら説明する。
図１はインクジェット記録ヘッド、およびインクジェット記録装置の概要を示す図であり、図２は、本発明のインクジェット記録装置の構成と動作を説明するための装置構成の例図であり、図３は記録ヘッドの構造と動作を説明するための部分斜視図である。
本発明のインクジェット記録装置は、光硬化性インクを吐出するインクジェット記録ヘッド１０と、記録媒体４０を搬送させるための搬送手段２と、光照射装置（以下、単に照射装置と記載する）３と、光照射装置３の照射量を制御する照射量制御装置４とを備えている。
本発明のインクジェット記録装置は、図１（Ａ）に示すように、搬送装置２の搬送方向上流側に搬送装置２に対向した位置にインクジェット記録ヘッド１０が配設され、また照射装置３は、このインクジェット記録ヘッド１０が配設される搬送装置２の前記搬送方向上流側よりも下流側の、前記同様の搬送装置に対向した位置に配設され、これらインクジェット記録ヘッド１０と照射装置３との間の前記搬送手段に対向した位置に、搬送装置２により搬送される記録媒体４０の表面上のインク量を検出するインク量検出手段５を備えている。
【００１２】
搬送手段：
記録媒体４０は記録媒体供給部（図示せず）から、搬送装置２によって図示するX方向（図１中、搬送装置２の上流（図中右側）から下流（図中左側）の方向）に搬送される。このような搬送装置２としては、搬送ベルト、搬送ロール、直動ステージ等が使用可能である。
【００１３】
記録媒体４０：
本発明は、様々なインク濡れ性を有する記録媒体に対応できる。このような記録媒体４０としては、印刷用紙の表面にコーティングを施したコート紙でもよく、非コート紙でもよい。また記録媒体４０としては、ＰＥＴフィルム、ＰＥフィルム等の樹脂フィルムでもよく、アルミ等の金属箔あるいは金属プレートであってもよい。また、記録媒体４０の形態としては、連帳紙であってもよいし、枚葉紙であってもよい。
【００１４】
インク：
本発明のインクジェット記録装置では、インクジェット記録ヘッド１０はインクタンク２００と接続され、インク供給管２０１を介して光硬化性のインク３０が記録ヘッド１０に導入される。ここで、光硬化性インクとは、光を照射すると硬化するインクであればよく、ラジカル重合型インクでもよいし、カチオン重合型インクでもよい。すなわちインクの硬化の硬化重合のモードには拠らない。インクの硬化に使用される光としては、Ｘ線、紫外線、可視光線、赤外線などを挙げることができる。このうち本発明は紫外線で硬化可能な紫外線硬化性インクが好ましい。
【００１５】
インク量検出手段：
本発明のインクジェット記録装置に使用されるインク量検出手段であるインク量検出装置５は、搬送装置２に対向して配設されるインクジェット記録ヘッド１０の下流部の搬送装置２に対向して設けられる。このインク量検出装置５により、記録媒体４０上に記録される（吐出される）光硬化性インクの厚みが計測される。ここにいう“インクの厚み”とは、記録媒体の表面からインクの最表面までの垂直距離を意味する。本発明に使用されるインク量検出装置５は、非接触式変位測定装置が好適であり、具体的には、レーザ式変位計、超音波式変位計、渦電流式変位計、静電容量式変位計等が挙げられる。この中でも精度の観点からレーザ式変位計がより好適である。このようなレーザ式変位計により、記録媒体表面上のインク量（吐着インクの厚み）は複数点計測してもよいし、あるいはインク量検出装置５を２次元的に走査することによりインク吐着厚みを計測してもよい。このようなインク量検出装置５によって計測したインク厚みデータに基づいて、図１（Ｂ）に示すように、光量算出手段６がインクの厚み量に対する最適な光量照射量（好ましくは紫外線照射量）を算出し、照射量制御装置４によって制御して、照射装置３を駆動する。これにより、照射装置３から制御された光（好ましくは紫外線）量が照射され、記録媒体４０上の光硬化性インク３０を硬化（重合硬化）する。なお図１（Ｂ）においてインク量検出装置の検出部分５ａを、インクジェット記録ヘッドが設けられる搬送装置２と対向する上流側とその下流側に設けられる照射装置３との間に設け、インク量検出装置の検出部５ａからの信号をインク量検出装置の制御部５ｂで受けてこの受信値を光量算出手段（好ましくは紫外線量算出手段）６により、光量算出手段６がインクの厚み量に対する最適な光量照射量が算出されるようにすることが好ましい。
【００１６】
このようなインクジェット記録装置において、前記非接触式変位検出手段を用いて、前記記録媒体上のインクの吐着した厚みを検出し、前記照射量決定部によって、該吐着インクの厚みに応じた光の照射量を可変制御する制御手段を有するので、樹脂フィルムや金属等の前記記録媒体の前記インクに対する濡れ性によらず、実際に吐着して表面に残存するインク量に基づいて光量（好ましくは紫外線量）を照射できるようになり、無駄なエネルギーの削減が可能となる。たとえばインク量検出装置の制御部５ｂでは、インク量検出装置の検出部５ａでの測定範囲を制御したり、測定間隔を制御可能であり、これらの制御データを反映させたインク量（インク層の厚さ）によりインク膜厚データをインク量検出装置５により得られ、このインク膜厚データが光量算出手段６に入力されると、光量算出手段６では各インク特性を例えばデータベースからのデータを用いて照射量を算出して照射装置３の照射を制御するように、制御電流値を求めることができる。なお本発明では、本装置では、インク膜厚データのデータ収集頻度に応じて以下のような対応をすることもできる。
【００１７】
たとえばインク膜厚データのデータ収集頻度が頻繁な場合には、この頻繁なデータを用いて照射装置３の照射を制御するように、制御電流値を求め、照射量制御装置に出力して、照射装置３を制御する。またインク膜厚データの頻度が緩慢な検出装置を使用する場合には、データ間を間挿法を用いて求めた値を用いて照射装置３の照射量を制御したり、前段のインクジェット記録ヘッドの吐出パターンからのインク量を考慮して制御することもできる。
【００１８】
この光の照射量の算出データにより照射制御装置４では、照射装置３を制御して、最適な光照射を記録媒体４０に対して行うことができる。上記したようなインク量検出手段が前記したインクの厚みを検出する非接触式変位検出手段であるので、本発明では、記録媒体４０に影響を与えることなく、また樹脂フィルムや金属等の記録媒体のインクの濡れ性によらず（濡れ性を評価したり測定することなく）、実際に記録媒体表面に吐着した前記インク量（インクの厚さ）に基づいて光の量（好ましくは紫外線量）を照射できるようになり、無駄なエネルギーの削減が可能となる。
【００１９】
硬化装置（照射装置）：
本発明のインクジェット記録装置に使用される照射装置（好ましくは紫外線照射装置）３としては、ＬＥＤ（発光ダイオード）、ＬＤ（レーザダイオード）、エキシマレーザランプ、などのレーザ光源、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等の光源（好ましくは紫外光源）が挙げられる。このうち、寿命、効率の観点からＬＥＤが照射装置３として、より好適に選択できる。
【００２０】
インクジェット記録ヘッド：
本発明のインクジェット記録装置１に使用されるインクジェット記録ヘッド１０は、インク流路ユニット１０１と、該ユニットを保持するヘッドハウジング１０２と、圧電素子ユニット１０３とから構成される。
インク流路ユニット１０１は、図３に示すように、オリフィス板１３０と、インク流路形成板１４２と、ダイヤフラム形成板１２２がこの順に貼付されて成る。
圧電素子ユニット１０３は棒状圧電素子１１０を櫛歯状に圧電素子支持基板１１３に固着して成る。この構造により、記録ヘッド１０には、ｎ個のノズル１３１が構成される。すなわち、各ノズル１３１は、図３のオリフィス板１３０に所定ピッチで列状に配置したｎ個のノズル（ノズル開口部）１３１を有している。そしてインク流路は、ノズル１３１を開口端とするインク加圧室１４０と、このインク加圧室１４０にインクを導くインク流入口１４５と、このインク流入口１４５にインクを供給する共通インク室１５０で構成される。また、ダイヤフラム形成板１２２の貼付により、インク加圧室１４０の少なくとも１壁面はダイヤフラム１２０で形成される。そして、ダイヤフラム１２０のインク加圧室１４０と反対面（ダイヤフラムにより形成される加圧室の面と反対の面）には、圧電素子ユニット１０３の棒状圧電素子１１０が取りつけられる。即ち、棒状圧電素子１１０の先端部がダイヤフラム１２０に突き当てて圧電素子ユニットはダイヤフラムに接着される。各ノズルは同一構造である。
【００２１】
各ノズル素子の棒状圧電素子１１０は、圧電素子支持基板１１３に接着され圧電素子ユニット１０３を構成する。そして、圧電素子支持基板１１３の圧電素子配列方向の両側には柱状の圧電素子支持基板固定部１１４があり、その底面がインク流路ユニット１０１に接着等により固定される。一方、インク流路ユニット１０１は、前記接着固定部の近傍でヘッドハウジング１０２に接着固定されているため、圧電素子支持基板固定部１１４の底面がヘッドハウジング１０２に対して固定されていることになる。
なお、棒状圧電素子１１０は、図３に示すように積層構造であり、複数の圧電素子１１１が層状電極１１２を介して積層されている。そして層状電極１１２は、１つおきに棒状圧電素子の側面に形成された共通電極１１２１と個別電極１１２２に接続される。共通電極１１２１と個別電極１１２２は圧電素子支持基盤１１３の上面に形成された共通電極１１２１と個別電極１１２２に接続され、更に図３に示すように個別電極１１２２はフレキシブルケーブル１６０のフレキシブルケーブル端子１６１に接続される。
【００２２】
以上の構造のインクジェット記録ヘッド１０は、フレキシブルケーブル１６０を介して記録ヘッド駆動装置２０からの信号で駆動される。なお共通電極１１２１については図示していないが、共通電極も個別電極と同様に、フレキシブルケーブルのフレキシブルケーブル端子に接続され、記録ヘッド駆動装置２０からの信号で駆動される。
【００２３】
本発明のインクジェット記録装置１は、前記したインクジェット記録ヘッド１０を駆動するためのインクジェット記録ヘッド駆動装置２０を備えている。
【００２４】
記録ヘッド駆動装置２０：
記録ヘッド駆動装置２０は、図２に示すように、記録データ信号作成回路３０２、圧電素子駆動データ信号作成回路３０３、圧電素子駆動スイッチング回路３０４、タイミング信号発生回路３０１、圧電素子駆動信号パルス発生回路３０５を備える。
図示しない上位装置（例えば、パーソナルコンピュータ）からの記録信号入力データに応じて、記録データ信号作成回路３０２で記録データ信号が作成され、この作成された記録データ信号とタイミング信号発生回路３０１からのタイミング信号を基に、圧電素子駆動データ信号作成回路３０３は圧電素子駆動データ信号を作成する。圧電素子駆動データ信号作成回路３０３は、圧電素子駆動スイッチング回路３０４のスイッチング素子３０４１を制御する。そして、スイッチング素子３０４１を介して圧電素子駆動信号パルス発生回路３０５に接続され、該スイッチング素子のＯＮ、ＯＦＦが、圧電素子駆動データ信号で制御されるスイッチング素子駆動回路３０４２により、各ノズルの圧電素子１１０は圧電素子駆動信号パルスで駆動される。
【００２５】
インクジェット記録装置の記録媒体への記録方法：
本発明のインクジェット記録装置では、記録媒体に印刷する場合、操作面（図示せず）上で印刷の設定を行うことができる。たとえば手差し面から記録媒体４０を導入して記録媒体４０上に印刷しようとする場合、所定の操作をインクジェット記録装置の操作面上で入力して設定する。そしてインクジェット記録装置では、これらの入力された設定に基づいて、以下に記載するように、記録媒体４０上に印刷が実行されていく。
図１に示すように、インクジェット記録ヘッド１０はインクタンク２００と接続され、インク供給管２０１を介して紫外線硬化性のインク３０が記録ヘッド１０に導入される。インクジェット記録ヘッド１０に導入されたインクは、記録ヘッド駆動装置２０からの制御により搬送装置２から搬送されてきた記録媒体４０上に吐出され、記録媒体４０上に印刷データとして記録される。
【００２６】
インクジェット記録ヘッド１０により印刷データが記録媒体４０上に記録された後、インクジェット記録ヘッド１０の下流部に設けられたインク量検出装置５により、記録媒体４０上の紫外線硬化性インク３０の厚みが計測される。このようなインク量検出装置５によって計測したインク厚みデータは、図１（Ｂ）に基づいて、光量算出手段６がインクの厚み量に対する最適な光の照射量を算出し、照射量制御装置４によって、照射装置３を制御して駆動することにより、記録媒体４０上の光硬化性インク３０を硬化する。また光硬化性インクとして、紫外線硬化性インクが好ましく用いられる。なお本発明では光（Ｘ線、紫外線、可視光）により硬化するインクを用いるが、インクとして、たとえば電子線照射により硬化するインク、あるいはその他の放射線等の照射により硬化するような、その他のインクの選択が可能である。ただし、その他のインクを選択した場合、照射装置としてはそのインクの硬化を行うことができる線源（たとえばβ線源などの放射線源）が選ばれる。その後、記録媒体４０は記録媒体排出部（図示せず）に搬送され、インクジェット記録方式における記録（定着）工程が完了する。
【００２７】
また本発明のインクジェット記録装置では、記録媒体４０上のインクに対して省エネルギー化も可能としたので、印刷の高速時においても最適な光の照射量を制御できる設計上の余裕が生まれ、好ましい態様としてＬＥＤを用いた照射をパルスによる制御により、ＬＥＤが受ける熱ダメージも最小にできるので、照射装置が長期に亘って劣化も少なく、安定した印刷が可能なインクジェット記録装置が得られる。
【符号の説明】
【００２８】
１ インクジェット記録装置
２ 搬送装置
３ 光照射装置
４ 照射量制御装置
５ インク量検出装置
５ａ インク量検出装置の検出部
５ｂ インク量検出装置の制御部
６ 光量算出手段
１０ インクジェット記録ヘッド
２０ インクジェット記録ヘッド駆動装置
３０ インク
４０ 記録媒体
１０１ インク流路ユニット
１０２ ヘッドハウジング
１０３ 圧電素子ユニット
１１０ 圧電素子
１１１ 層状圧電素子
１１２ 層状電極
１１２１ 共通電極
１１２２ 個別電極
１１３ 圧電素子支持基板
１１４ 圧電素子支持基板固定部
１２０ ダイヤフラム
１２２ ダイヤフラム形成板
１３０ オリフィス板
１３１ ノズル
１４０ インク加圧室
１４２ インク流路形成板
１４５ インク流入孔
１５０ 共通インク室
１６０ フレキシブルケーブル
１６１ フレキシブルケーブル端子
２００ インクタンク
２０１ インク供給管
３０１ タイミング信号発生回路
３０２ 記録データ信号作成回路
３０３ 圧電素子駆動データ信号作成回路
３０４ 圧電素子駆動スイッチング回路
３０４１ スイッチング素子
３０４２ スイッチング素子駆動回路
３０５ 圧電素子駆動信号パルス発生回路
【先行技術文献】
【特許文献】
【００２９】
【特許文献１】特開２００４−２３７５８８号公報
【特許文献２】特開２００６−１５０６３３号公報
【技術分野】
【０００１】
本発明は、光硬化性のインクを記録媒体に吐出させて画像を形成するインクジェット記録装置に関し、特に光照射を制御する手段を有するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、インクジェット記録方式は複数個配列されたノズルからインクの液滴を吐出できることから、任意のパターンを記録媒体上に簡便に生成でき、しかも無駄に排出されるインク量が少ないので環境面からも有利である。このためインクジェット記録方式は、写真画像、各種文書、液晶表示装置のカラーフィルタなどの様々な印刷用途に用いられている。
このインクジェット記録方式として、紫外線硬化性を有するインクを用いる光硬化型インクジェット方式がある。この光硬化型インクジェット方式はインクジェット専用紙以外の樹脂フィルムや金属等のインクを吸収しない記録媒体にも印刷できる点で注目されている。
【０００３】
また、光硬化型インクジェット方式は、水性インクや油性インクを用いたインクジェット方式に比べ、インクの乾燥工程が省略できるため、消費エネルギーが少なく、環境面でも有利とされている。
しかしながら、記録速度の高速性の要求から、硬化のための紫外線光源の大型化や大出力化が必要となり、結果的に消費電力が増すという問題点があった。
【０００４】
このような問題点を解決する発明として、特許文献１のインクジェット記録装置の発明が知られている。この特許文献１には、記録媒体Ｋを搬送方向Ａに搬送する搬送装置と、光硬化性のインクを吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドと、複数の紫外線光源を有する照射装置と、これら記録ヘッドおよび照射装置を制御する制御装置とを備えているインクジェット記録装置が開示されている。そしてこのインクジェット記録装置に用いられる制御装置としてはインクの吐出に関する記録ヘッドの制御条件に基づいて照射装置を制御することが記載されている。具体的にはインクを吐出するか否かのＯＮ、ＯＦＦ条件、あるいはドットのサイズ（諧調）を変化させる場合におけるヘッドの駆動波形制御条件に基づいて光源を制御する方式が開示されている。この場合における照射条件とは、ユーザが与える印刷データから推定されるものとなる。
【０００５】
しかしながら、紫外線硬化性を有するインクを吐出してなるインクジェット記録装置に使用される記録媒体は、前述したように樹脂フィルムや金属等のように材質が多岐に渡り、前記インクに対する記録媒体の濡れ性も多様である。
【０００６】
すなわち、記録媒体が普通紙、塗工紙、合成紙、樹脂シートなどのように、記録媒体の濡れ性が高かったり低かったりしている場合には、記録媒体上に吐出された未乾燥のインクの厚さは相違したものとなっており、これを一定の紫外線照射量で乾燥させた場合には、インクの硬化不足、あるいは過剰な量の紫外線照射を引き起こすことになる。したがって、特許文献１に記載されるように、画像データを基にインク量を予測して、照射量の制御を試みた場合、記録媒体の濡れ性が高い場合あるいは低い場合などでは、紫外線照射量が不足したり、過剰に照射するなど、問題があった。また特許文献２には、特許文献１と同様、インクジェット記録装置の発明がされている。この発明も記録ヘッドからの吐出量に応じてフラッシュ光源に印加する電圧の単位時間あたりのパルス数を変化させてインクの加熱具合を変化させる発明が開示されており、濡れ性などに関することは考慮されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、第１の目的は、光硬化性を有するインクを様々な濡れ性を有する記録媒体上に吐出するインクジェット記録装置において、インクの硬化に必要な光の照射量を最適化し、消費エネルギーを低減するようにするインクジェット記録装置を提案することにある。
また第２の目的は、このような新規なインクジェット記録装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記の課題を解決するために、以下の解決手段を本発明は提供できる。すなわち本発明は、以下の通りである。
（１） 記録媒体上に光硬化性インクを吐出するインクジェット記録ヘッドと、前記記録媒体を搬送させるための搬送手段と、前記記録媒体上に吐出された該光硬化性インクに光を照射する光照射装置と、前記光照射装置の照射量を制御する光照射量制御装置とを備えるインクジェット記録装置において、
前記インクジェット記録ヘッドが配設される前記搬送装置の搬送方向上流側と、前記光照射装置が配設される前記搬送装置の搬送方向下流側との間に、前記搬送手段により搬送される前記記録媒体上に吐着されたインクのうち、前記記録媒体の表面上に残存するインク量を検出するインク量検出手段を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
（２） 前記インク量検出手段が非接触式変位検出手段であることを特徴とする前記（１）に記載のインクジェット記録装置。
（３） 前記非接触式変位検出手段を用いて取得した前記記録媒体表面上の前記インク量をインクの厚みとして捉え、その厚みに基づいて、前記光照射装置の照射量を制御する光量制御手段を有することを特徴とする前記（２）に記載のインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【０００９】
本発明によれば、記録媒体上に光硬化性インクを吐出する記録ヘッドと、前記ヘッドと前記記録媒体とを相対的に搬送移動させるための搬送手段と、前記記録媒体上に吐出された前記インクに光を照射する照射装置と、前記インクを硬化させるために照射すべき光の照射量を決定する照射量決定部とを備えるインクジェット記録装置において、前記ヘッドの搬送方向下流側でありかつ前記紫外線照射部の搬送方向上流側にインク量検出手段を備えたので、前記記録ヘッドより記録媒体上に吐出されたインクのうち、前記記録媒体の表面上に残存するインク量を、前記記録ヘッドより下流に設けた前記インク量検出手段によって検出することができ、さらに該インク量に基づいて、前記照射装置の照射量を決定することができるようになり、前記インク量に基づいて最適な光の量を照射できるようになり、無駄なエネルギーの削減が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【００１０】
【図１】本発明のインクジェット記録装置の構成を説明するための例である。
【図２】本発明のインクジェット記録装置に使用するインクジェット記録ヘッドの構成を説明するための例図である。
【図３】本発明のインクジェット記録装置に使用するインクジェット記録ヘッドの構造を説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【００１１】
以下、本発明のインクジェット記録装置を、実施形態により、図面を参照しながら説明する。
図１はインクジェット記録ヘッド、およびインクジェット記録装置の概要を示す図であり、図２は、本発明のインクジェット記録装置の構成と動作を説明するための装置構成の例図であり、図３は記録ヘッドの構造と動作を説明するための部分斜視図である。
本発明のインクジェット記録装置は、光硬化性インクを吐出するインクジェット記録ヘッド１０と、記録媒体４０を搬送させるための搬送手段２と、光照射装置（以下、単に照射装置と記載する）３と、光照射装置３の照射量を制御する照射量制御装置４とを備えている。
本発明のインクジェット記録装置は、図１（Ａ）に示すように、搬送装置２の搬送方向上流側に搬送装置２に対向した位置にインクジェット記録ヘッド１０が配設され、また照射装置３は、このインクジェット記録ヘッド１０が配設される搬送装置２の前記搬送方向上流側よりも下流側の、前記同様の搬送装置に対向した位置に配設され、これらインクジェット記録ヘッド１０と照射装置３との間の前記搬送手段に対向した位置に、搬送装置２により搬送される記録媒体４０の表面上のインク量を検出するインク量検出手段５を備えている。
【００１２】
搬送手段：
記録媒体４０は記録媒体供給部（図示せず）から、搬送装置２によって図示するX方向（図１中、搬送装置２の上流（図中右側）から下流（図中左側）の方向）に搬送される。このような搬送装置２としては、搬送ベルト、搬送ロール、直動ステージ等が使用可能である。
【００１３】
記録媒体４０：
本発明は、様々なインク濡れ性を有する記録媒体に対応できる。このような記録媒体４０としては、印刷用紙の表面にコーティングを施したコート紙でもよく、非コート紙でもよい。また記録媒体４０としては、ＰＥＴフィルム、ＰＥフィルム等の樹脂フィルムでもよく、アルミ等の金属箔あるいは金属プレートであってもよい。また、記録媒体４０の形態としては、連帳紙であってもよいし、枚葉紙であってもよい。
【００１４】
インク：
本発明のインクジェット記録装置では、インクジェット記録ヘッド１０はインクタンク２００と接続され、インク供給管２０１を介して光硬化性のインク３０が記録ヘッド１０に導入される。ここで、光硬化性インクとは、光を照射すると硬化するインクであればよく、ラジカル重合型インクでもよいし、カチオン重合型インクでもよい。すなわちインクの硬化の硬化重合のモードには拠らない。インクの硬化に使用される光としては、Ｘ線、紫外線、可視光線、赤外線などを挙げることができる。このうち本発明は紫外線で硬化可能な紫外線硬化性インクが好ましい。
【００１５】
インク量検出手段：
本発明のインクジェット記録装置に使用されるインク量検出手段であるインク量検出装置５は、搬送装置２に対向して配設されるインクジェット記録ヘッド１０の下流部の搬送装置２に対向して設けられる。このインク量検出装置５により、記録媒体４０上に記録される（吐出される）光硬化性インクの厚みが計測される。ここにいう“インクの厚み”とは、記録媒体の表面からインクの最表面までの垂直距離を意味する。本発明に使用されるインク量検出装置５は、非接触式変位測定装置が好適であり、具体的には、レーザ式変位計、超音波式変位計、渦電流式変位計、静電容量式変位計等が挙げられる。この中でも精度の観点からレーザ式変位計がより好適である。このようなレーザ式変位計により、記録媒体表面上のインク量（吐着インクの厚み）は複数点計測してもよいし、あるいはインク量検出装置５を２次元的に走査することによりインク吐着厚みを計測してもよい。このようなインク量検出装置５によって計測したインク厚みデータに基づいて、図１（Ｂ）に示すように、光量算出手段６がインクの厚み量に対する最適な光量照射量（好ましくは紫外線照射量）を算出し、照射量制御装置４によって制御して、照射装置３を駆動する。これにより、照射装置３から制御された光（好ましくは紫外線）量が照射され、記録媒体４０上の光硬化性インク３０を硬化（重合硬化）する。なお図１（Ｂ）においてインク量検出装置の検出部分５ａを、インクジェット記録ヘッドが設けられる搬送装置２と対向する上流側とその下流側に設けられる照射装置３との間に設け、インク量検出装置の検出部５ａからの信号をインク量検出装置の制御部５ｂで受けてこの受信値を光量算出手段（好ましくは紫外線量算出手段）６により、光量算出手段６がインクの厚み量に対する最適な光量照射量が算出されるようにすることが好ましい。
【００１６】
このようなインクジェット記録装置において、前記非接触式変位検出手段を用いて、前記記録媒体上のインクの吐着した厚みを検出し、前記照射量決定部によって、該吐着インクの厚みに応じた光の照射量を可変制御する制御手段を有するので、樹脂フィルムや金属等の前記記録媒体の前記インクに対する濡れ性によらず、実際に吐着して表面に残存するインク量に基づいて光量（好ましくは紫外線量）を照射できるようになり、無駄なエネルギーの削減が可能となる。たとえばインク量検出装置の制御部５ｂでは、インク量検出装置の検出部５ａでの測定範囲を制御したり、測定間隔を制御可能であり、これらの制御データを反映させたインク量（インク層の厚さ）によりインク膜厚データをインク量検出装置５により得られ、このインク膜厚データが光量算出手段６に入力されると、光量算出手段６では各インク特性を例えばデータベースからのデータを用いて照射量を算出して照射装置３の照射を制御するように、制御電流値を求めることができる。なお本発明では、本装置では、インク膜厚データのデータ収集頻度に応じて以下のような対応をすることもできる。
【００１７】
たとえばインク膜厚データのデータ収集頻度が頻繁な場合には、この頻繁なデータを用いて照射装置３の照射を制御するように、制御電流値を求め、照射量制御装置に出力して、照射装置３を制御する。またインク膜厚データの頻度が緩慢な検出装置を使用する場合には、データ間を間挿法を用いて求めた値を用いて照射装置３の照射量を制御したり、前段のインクジェット記録ヘッドの吐出パターンからのインク量を考慮して制御することもできる。
【００１８】
この光の照射量の算出データにより照射制御装置４では、照射装置３を制御して、最適な光照射を記録媒体４０に対して行うことができる。上記したようなインク量検出手段が前記したインクの厚みを検出する非接触式変位検出手段であるので、本発明では、記録媒体４０に影響を与えることなく、また樹脂フィルムや金属等の記録媒体のインクの濡れ性によらず（濡れ性を評価したり測定することなく）、実際に記録媒体表面に吐着した前記インク量（インクの厚さ）に基づいて光の量（好ましくは紫外線量）を照射できるようになり、無駄なエネルギーの削減が可能となる。
【００１９】
硬化装置（照射装置）：
本発明のインクジェット記録装置に使用される照射装置（好ましくは紫外線照射装置）３としては、ＬＥＤ（発光ダイオード）、ＬＤ（レーザダイオード）、エキシマレーザランプ、などのレーザ光源、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等の光源（好ましくは紫外光源）が挙げられる。このうち、寿命、効率の観点からＬＥＤが照射装置３として、より好適に選択できる。
【００２０】
インクジェット記録ヘッド：
本発明のインクジェット記録装置１に使用されるインクジェット記録ヘッド１０は、インク流路ユニット１０１と、該ユニットを保持するヘッドハウジング１０２と、圧電素子ユニット１０３とから構成される。
インク流路ユニット１０１は、図３に示すように、オリフィス板１３０と、インク流路形成板１４２と、ダイヤフラム形成板１２２がこの順に貼付されて成る。
圧電素子ユニット１０３は棒状圧電素子１１０を櫛歯状に圧電素子支持基板１１３に固着して成る。この構造により、記録ヘッド１０には、ｎ個のノズル１３１が構成される。すなわち、各ノズル１３１は、図３のオリフィス板１３０に所定ピッチで列状に配置したｎ個のノズル（ノズル開口部）１３１を有している。そしてインク流路は、ノズル１３１を開口端とするインク加圧室１４０と、このインク加圧室１４０にインクを導くインク流入口１４５と、このインク流入口１４５にインクを供給する共通インク室１５０で構成される。また、ダイヤフラム形成板１２２の貼付により、インク加圧室１４０の少なくとも１壁面はダイヤフラム１２０で形成される。そして、ダイヤフラム１２０のインク加圧室１４０と反対面（ダイヤフラムにより形成される加圧室の面と反対の面）には、圧電素子ユニット１０３の棒状圧電素子１１０が取りつけられる。即ち、棒状圧電素子１１０の先端部がダイヤフラム１２０に突き当てて圧電素子ユニットはダイヤフラムに接着される。各ノズルは同一構造である。
【００２１】
各ノズル素子の棒状圧電素子１１０は、圧電素子支持基板１１３に接着され圧電素子ユニット１０３を構成する。そして、圧電素子支持基板１１３の圧電素子配列方向の両側には柱状の圧電素子支持基板固定部１１４があり、その底面がインク流路ユニット１０１に接着等により固定される。一方、インク流路ユニット１０１は、前記接着固定部の近傍でヘッドハウジング１０２に接着固定されているため、圧電素子支持基板固定部１１４の底面がヘッドハウジング１０２に対して固定されていることになる。
なお、棒状圧電素子１１０は、図３に示すように積層構造であり、複数の圧電素子１１１が層状電極１１２を介して積層されている。そして層状電極１１２は、１つおきに棒状圧電素子の側面に形成された共通電極１１２１と個別電極１１２２に接続される。共通電極１１２１と個別電極１１２２は圧電素子支持基盤１１３の上面に形成された共通電極１１２１と個別電極１１２２に接続され、更に図３に示すように個別電極１１２２はフレキシブルケーブル１６０のフレキシブルケーブル端子１６１に接続される。
【００２２】
以上の構造のインクジェット記録ヘッド１０は、フレキシブルケーブル１６０を介して記録ヘッド駆動装置２０からの信号で駆動される。なお共通電極１１２１については図示していないが、共通電極も個別電極と同様に、フレキシブルケーブルのフレキシブルケーブル端子に接続され、記録ヘッド駆動装置２０からの信号で駆動される。
【００２３】
本発明のインクジェット記録装置１は、前記したインクジェット記録ヘッド１０を駆動するためのインクジェット記録ヘッド駆動装置２０を備えている。
【００２４】
記録ヘッド駆動装置２０：
記録ヘッド駆動装置２０は、図２に示すように、記録データ信号作成回路３０２、圧電素子駆動データ信号作成回路３０３、圧電素子駆動スイッチング回路３０４、タイミング信号発生回路３０１、圧電素子駆動信号パルス発生回路３０５を備える。
図示しない上位装置（例えば、パーソナルコンピュータ）からの記録信号入力データに応じて、記録データ信号作成回路３０２で記録データ信号が作成され、この作成された記録データ信号とタイミング信号発生回路３０１からのタイミング信号を基に、圧電素子駆動データ信号作成回路３０３は圧電素子駆動データ信号を作成する。圧電素子駆動データ信号作成回路３０３は、圧電素子駆動スイッチング回路３０４のスイッチング素子３０４１を制御する。そして、スイッチング素子３０４１を介して圧電素子駆動信号パルス発生回路３０５に接続され、該スイッチング素子のＯＮ、ＯＦＦが、圧電素子駆動データ信号で制御されるスイッチング素子駆動回路３０４２により、各ノズルの圧電素子１１０は圧電素子駆動信号パルスで駆動される。
【００２５】
インクジェット記録装置の記録媒体への記録方法：
本発明のインクジェット記録装置では、記録媒体に印刷する場合、操作面（図示せず）上で印刷の設定を行うことができる。たとえば手差し面から記録媒体４０を導入して記録媒体４０上に印刷しようとする場合、所定の操作をインクジェット記録装置の操作面上で入力して設定する。そしてインクジェット記録装置では、これらの入力された設定に基づいて、以下に記載するように、記録媒体４０上に印刷が実行されていく。
図１に示すように、インクジェット記録ヘッド１０はインクタンク２００と接続され、インク供給管２０１を介して紫外線硬化性のインク３０が記録ヘッド１０に導入される。インクジェット記録ヘッド１０に導入されたインクは、記録ヘッド駆動装置２０からの制御により搬送装置２から搬送されてきた記録媒体４０上に吐出され、記録媒体４０上に印刷データとして記録される。
【００２６】
インクジェット記録ヘッド１０により印刷データが記録媒体４０上に記録された後、インクジェット記録ヘッド１０の下流部に設けられたインク量検出装置５により、記録媒体４０上の紫外線硬化性インク３０の厚みが計測される。このようなインク量検出装置５によって計測したインク厚みデータは、図１（Ｂ）に基づいて、光量算出手段６がインクの厚み量に対する最適な光の照射量を算出し、照射量制御装置４によって、照射装置３を制御して駆動することにより、記録媒体４０上の光硬化性インク３０を硬化する。また光硬化性インクとして、紫外線硬化性インクが好ましく用いられる。なお本発明では光（Ｘ線、紫外線、可視光）により硬化するインクを用いるが、インクとして、たとえば電子線照射により硬化するインク、あるいはその他の放射線等の照射により硬化するような、その他のインクの選択が可能である。ただし、その他のインクを選択した場合、照射装置としてはそのインクの硬化を行うことができる線源（たとえばβ線源などの放射線源）が選ばれる。その後、記録媒体４０は記録媒体排出部（図示せず）に搬送され、インクジェット記録方式における記録（定着）工程が完了する。
【００２７】
また本発明のインクジェット記録装置では、記録媒体４０上のインクに対して省エネルギー化も可能としたので、印刷の高速時においても最適な光の照射量を制御できる設計上の余裕が生まれ、好ましい態様としてＬＥＤを用いた照射をパルスによる制御により、ＬＥＤが受ける熱ダメージも最小にできるので、照射装置が長期に亘って劣化も少なく、安定した印刷が可能なインクジェット記録装置が得られる。
【符号の説明】
【００２８】
１ インクジェット記録装置
２ 搬送装置
３ 光照射装置
４ 照射量制御装置
５ インク量検出装置
５ａ インク量検出装置の検出部
５ｂ インク量検出装置の制御部
６ 光量算出手段
１０ インクジェット記録ヘッド
２０ インクジェット記録ヘッド駆動装置
３０ インク
４０ 記録媒体
１０１ インク流路ユニット
１０２ ヘッドハウジング
１０３ 圧電素子ユニット
１１０ 圧電素子
１１１ 層状圧電素子
１１２ 層状電極
１１２１ 共通電極
１１２２ 個別電極
１１３ 圧電素子支持基板
１１４ 圧電素子支持基板固定部
１２０ ダイヤフラム
１２２ ダイヤフラム形成板
１３０ オリフィス板
１３１ ノズル
１４０ インク加圧室
１４２ インク流路形成板
１４５ インク流入孔
１５０ 共通インク室
１６０ フレキシブルケーブル
１６１ フレキシブルケーブル端子
２００ インクタンク
２０１ インク供給管
３０１ タイミング信号発生回路
３０２ 記録データ信号作成回路
３０３ 圧電素子駆動データ信号作成回路
３０４ 圧電素子駆動スイッチング回路
３０４１ スイッチング素子
３０４２ スイッチング素子駆動回路
３０５ 圧電素子駆動信号パルス発生回路
【先行技術文献】
【特許文献】
【００２９】
【特許文献１】特開２００４−２３７５８８号公報
【特許文献２】特開２００６−１５０６３３号公報
【特許請求の範囲】
【請求項１】
記録媒体上に光硬化性インクを吐出するインクジェット記録ヘッドと、前記記録媒体を搬送させるための搬送手段と、前記記録媒体上に吐出された該光硬化性インクに光を照射する光照射装置と、前記光照射装置の照射量を制御する光照射量制御装置とを備えるインクジェット記録装置において、
前記インクジェット記録ヘッドが配設される前記搬送装置の搬送方向上流側と、前記光照射装置が配設される前記搬送装置の搬送方向下流側との間に、前記搬送手段により搬送される前記記録媒体上に吐着されたインクのうち、前記記録媒体の表面上に残存するインク量を検出するインク量検出手段を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項２】
前記インク量検出手段が非接触式変位検出手段であることを特徴とする請求項１に記載のインクジェット記録装置。
【請求項３】
前記非接触式変位検出手段を用いて取得した前記記録媒体表面上の前記インク量をインクの厚みとして捉え、その厚みに基づいて、前記光照射装置の照射量を制御する光量算出手段を有することを特徴とする請求項２に記載のインクジェット記録装置。
【請求項１】
記録媒体上に光硬化性インクを吐出するインクジェット記録ヘッドと、前記記録媒体を搬送させるための搬送手段と、前記記録媒体上に吐出された該光硬化性インクに光を照射する光照射装置と、前記光照射装置の照射量を制御する光照射量制御装置とを備えるインクジェット記録装置において、
前記インクジェット記録ヘッドが配設される前記搬送装置の搬送方向上流側と、前記光照射装置が配設される前記搬送装置の搬送方向下流側との間に、前記搬送手段により搬送される前記記録媒体上に吐着されたインクのうち、前記記録媒体の表面上に残存するインク量を検出するインク量検出手段を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項２】
前記インク量検出手段が非接触式変位検出手段であることを特徴とする請求項１に記載のインクジェット記録装置。
【請求項３】
前記非接触式変位検出手段を用いて取得した前記記録媒体表面上の前記インク量をインクの厚みとして捉え、その厚みに基づいて、前記光照射装置の照射量を制御する光量算出手段を有することを特徴とする請求項２に記載のインクジェット記録装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図２】
【図３】
【公開番号】特開２０１０−２１４９１５（Ｐ２０１０−２１４９１５Ａ）
【公開日】平成２２年９月３０日（２０１０．９．３０）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−６７３５６（Ｐ２００９−６７３５６）
【出願日】平成２１年３月１９日（２００９．３．１９）
【出願人】（０００００６７４７）株式会社リコー (37,907)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年９月３０日（２０１０．９．３０）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年３月１９日（２００９．３．１９）
【出願人】（０００００６７４７）株式会社リコー (37,907)
【Ｆターム（参考）】
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