説明

インクジェット記録装置

【課題】
従来のインクジェット記録装置の印字について、複数個のノズルを用いて印字を行う場合は、印字開始信号を受け取ってから印字するまでの書出し時間をノズル毎に同一で有ったため、ノズル間に文字の書出し位置のズレという現象があった。ノズル間の書出し位置が均一に揃わず印字の見栄えが悪いという課題があった。
【解決手段】
従来の印字制御方式において、書出し時間をノズル毎に設定できることにより、ノズル間の書出し位置のズレを無くすことのできるインクジェット記録装置の実現が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品のマーキングに使用される産業用インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の複数個のノズルを有するインクジェット記録装置について、複数個のノズルが印字開始信号を受け取ってから帯電電極に帯電信号を与えるまでの書出し時間が全て同じであった(例えば、特許文献1参照)。そのため、ノズル毎にこの書出し時間を調整することが出来なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第448683号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
まず図2を用いて従来の複数個ノズルを有するインクジェット記録装置による印字について述べる。図2では2個のノズルを用いて印字する1例である。2つのノズルがそれぞれ横5ドット縦5ドットのマトリスク文字を印字し、偏向方向に対し上側のノズルが“E”という文字を、偏向方向対し下側のノズルが“B”という文字を印字している様子を示す。
【0005】
従来の印字制御方式では図2のタイミングチャートに示すように、外部からの印字開始信号を受け取ってから帯電電極に帯電信号を与えるまでの書出し時間がノズルに関係なく常に一定であった。
【0006】
インクジェット記録装置は被印字物をインク粒子の偏向方向とほぼ垂直に相対移動させながら被印字物上にドットマトリクス状の文字を形成する原理であるため、
複数個のノズルが同一タイミングで印字すると、図3に示すように物理的に印字した文字にはズレが生じ印字の見栄えが悪いという問題があった。
【0007】
また、この文字ずれは図2に示すノズルから噴出される粒子ビーム間の距離によっても影響される。図4に示すように粒子ビーム間の配置距離が近い場合は文字のずれが小さく、距離が離れるほど物理的に文字のずれが大きくなる。
【0008】
以上述べたように複数個のノズルを用いて印字した場合に印字のタイミングとノズルから噴出される粒子ビーム間の距離によって文字のずれが発生し、これにより印字の見栄えが悪いという欠点があった。複数個のノズルを用いて印字する場合でも印字がずれないことを実現することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ノズル毎に書出し時間を変更できるようにすることにより、(発明が解決しようとする課題)で述べた文字ずれという問題を解決することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数個のノズルを用いた印字においても文字ずれが発生しないことを特徴とするインクジェット記録装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施例にかかる全体構成を示す概観図である。
【図2】従来の複数のノズルによる印字の一例である。
【図3】従来の2つのノズルによる印字結果を示す概要図である。
【図4】従来における複数個のノズルを用いて同一タイミングで印字した場合の印字例である。
【図5】実施例に複数のノズルによる印字の一例である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の実施例の図面を用いて説明する。図1は、本実施例に係るインクジェット記録装置の全体構成を示す概観図である。
【0013】
まず、本実施例の構成について図1を用いて説明する。1はインクジェット記録装置全体を制御するMPU(マイクロプロセッシングユニット)、2はインクジェット記録装置内で一時的にデータを記憶しておくRAM(ランダムアクセスメモリー)、3はプログラムなどをあらかじめ記憶するROM(リードオンリーメモリー)、4は印字する内容等を表示する表示装置、5はパネルインターフェース、6は印字する文字情報を入力するパネル7は被印字物検出回路、8はインクジェット記録装置の印字動作を制御する印字制御回路、9はインク粒子に帯電させるビデオデータを記憶しておくビデオRAM、10はビデオデータを帯電信号にする文字信号発生回路である。
【0014】
11はインクを噴出するノズル、12はノズルより噴出したインクが粒子になりそのインク粒子に電荷を加える帯電電極、13はプラス偏向電極、14はマイナス偏向電極、プラス偏向電極13とマイナス偏向電極14が電界を形成する。15は印字に使用しないインクを回収するガター、16はガターより回収されたインクを再びノズルへ供給するポンプ、17は被印字物を検出するセンサー、18は被印字物を搬送するコンベア、19は印字の対象となる被印字物、20はデータ等を送るバスラインである。
【0015】
次に、印字について説明する。まず、5パネルインターフェースを介して6パネルで印字する内容等の情報を入力すると、MPU1は、ROM3に記憶されているプログラムにより、インク粒子へ帯電させるビデオデータを印字情報に応じて作成し、バスライン20を介してビデオRAM9へ格納する。被印字物センサー17が被印字物19を検知すると、被印字物検知回路7を通じて、MPU1へ印字開始の指令が届く。
【0016】
MPU1はビデオRAM9に記憶しているビデオデータをバスライン20を介して文字信号発生回路10へ送る。文字信号発生回路10は送られてきたビデオデータを帯電信号に変更する。印字制御回路8はバスライン20を介してこの帯電信号を帯電電極12へ送出するタイミングをコントロールする。ノズル11より噴出されたインクは帯電電極12内で粒子化し電荷を受け、プラス偏向電極13とマイナス偏向電極14によって形成される電界を飛行通過することにより偏向され、被印字物19へとインク粒子が飛行、付着し印字される。
【0017】
その際、インク粒子の帯電量に応じて偏向される。帯電量の大きいインク粒子の偏向量が大きく、帯電量の小さい粒子の偏向量が小さいこととなる。印字に使用されなかったインク、すなわち、帯電されなかったインク粒子はガター15より回収され、ポンプ16によって再びノズル11へ供給される。以上の方法によりインクジェット記録装置は印字を行う。
【0018】
上述したように、複数のノズルで同時に印字すると印字した文字にズレが生じる。また、ノズル間の距離によってもズレの程度が変わってくる。ノズル間の距離に応じて実際にどの程度ずれるかを把握し、各ノズルに書出しの時間の間隔を設け印字する必要がある。
【0019】
印字の手順としては、まず予めノズル毎に印字信号発生回路とノズル毎に書出し時間を制御で可能とするソフトウェアを設け、予めノズルの程度を確認しノズル間の書出し間隔の時間を決め、このソフトウェアにこの情報を予めソフトウェアに盛込みROM3に書込む。
【0020】
次に操作者が印字するドットマトリクスや文字データ等の情報を図1のパネル6より入力する。入力したドットマトリクス文字と印字データの桁数により文字作成回路で帯電信号を作成し、印字に必要とされない粒子である場合はこのインク粒子を印字に使用しない無荷電粒子と見なしバスライン21を介してこれらのビデオデータを図1のビデオRAM9に書込む、ビデオRAM9に格納されたビデオデータをバスライン21を介して文字信号発生回路10へ送信され、文字信号発生回路10でこのビデオデータを帯電信号の階段波形に変換する。
【0021】
以上のようなソフトウェアに書き出し時間のズレの情報を予め盛込むことにより、ノズル間の印字ズレを低減することが可能となる。以上の方法によりノズル間のズレ時間を予め決めノズル間の書出し位置のズレを補正することが可能となる。この印字例を図5に示す。
【0022】
図5の印字例では縦5ドットの2列印字のノズル1の書出し時間とノズル2の書出し時間の間に150msの時間ギャップという情報を予めソフトウェアに盛込みROM3に書込み、前述のソフトウェア処理により書出し間の時間ギャップを設けることが可能となる。
【0023】
従来における複数ノズルによる印字では、ノズル間に文字のズレが生じ印字の見栄えが悪いという問題があった。本実施例にかかる機能を用いることにより予めノズル毎に書出し時間を設定し印字開始時間の遅延を決定し、遅延した時間で文字のズレを補正することにより、ノズル間の印字のズレを補正することが可能となる。その差は図3に記載してある従来の高速印字の結果と比較すると明確に把握することができる。
【実施例2】
【0024】
本実施例は、インクジェット記録装置の操作部より各ノズル毎に書出し時間を任意に設定することができるインクジェット記録装置に関する。
【0025】
本実施例の実施手順は、実施例1と同じである。本実施例の機能を実現することにより、(発明が解決しようとする課題)で述べたノズル間のズレをという問題を解決することが可能となる。更に、各ノズルの書出し位置を任意に設定できるため、印字のレイアウト設定も簡易にすることが可能となる。ノズル間の配置位置に製造上のバラツキが生じてもノズル間のズレを補正することが可能となる。
【0026】
以上の各実施例によれば、縦列の横ピッチを均一に揃えることが可能なインクジェット記録装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
1…MPU、2…RAM、3…ROM、4…表示装置、5…パネルインタフェース、6…パネル、7…被印字物検知回路、8…印字制御回路、9…ビデオRAM、10…文字信号発生回路、11…ノズル、12…帯電電極、13…プラス偏向電極、14…マイナス偏向電極、15…ガター、16…ポンプ、17…被印字物検知センサー、18…コンベア、19…被印字物、20…バスライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧インクを複数個のノズルより噴出し、前記複数個のノズルを一定周期で振動させることにより、インクを一定周期で粒子化せしめ、印字される文字情報に基づいて粒子化の周期に同期した帯電信号を文字信号発生回路から各々ノズルの帯電電極に与えることにより、粒子化されたインク粒子のうち印字されるドットに対応するインク粒子に電荷を付与し、電荷が付与されたインク粒子を偏向電界中で偏向させ、被印字物上に印字を行う複数個のノズルを有するインクジェット記録装置であって、
前記文字信号発生回路から送信された印字開始信号を受信してから帯電電極に帯電信号を与えるまでの書出し時間がノズル毎に異なることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
加圧インクを複数個のノズルより噴出し、前記複数個のノズルを一定周期で振動させることにより、インクを一定周期で粒子化せしめ、印字される文字情報に基づいて粒子化の周期に同期した帯電信号を文字信号発生回路から各々ノズルの帯電電極に与えることにより、粒子化されたインク粒子のうち印字されるドットに対応するインク粒子に電荷を付与し、電荷が付与されたインク粒子を偏向電界中で偏向させ、被印字物上に印字を行う複数個のノズルを有するインクジェット記録装置であって、
前記文字信号発生回路から印字開始信号を受け取ってから帯電電極に帯電信号を与えるまでの書出し時間をノズル毎に設定し予めインクジェット記録装置に盛込み、複数個ノズルによる印字ずれの発生を無くすことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
操作部を備え、前記操作部より各ノズルの書出し時間を任意に設定できることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−228402(P2010−228402A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80870(P2009−80870)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】