説明

インクジェット記録装置

【課題】縁有り記録と、縁無し記録とによって記録を行うことが可能であっても、記録形式に応じてテストパターンの検知領域を定めることのできるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置は、縁有り記録、縁無し記録の記録形式に応じたテストパターンの両端部の位置を検出する。縁有り記録の際には、縁有りテストパターンの両端部の間の領域に記録され、縁有りテストパターンにおける画素を形成するインクを吐出する吐出口について、テストパターンからインクの吐出状態の検出が行われる。また、縁無し記録の際には、縁無しテストパターンの両端部の間の領域に記録され、縁無しテストパターンにおける画素を形成するインクを吐出する吐出口について、テストパターンからインクの吐出状態の検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルライン形式のインクジェット記録装置に関し、特に記録ヘッドの吐出口からのインク吐出状態を検知するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置として、インクジェット方式の記録装置が知られている。このインクジェット記録装置は、吐出口よりインクを吐出し、これを記録媒体に定着させることで、文字、画像を形成させるものである。また近年では、インクジェット記録装置の中でも、記録幅に対応した吐出口列を備えた記録ヘッドを有し、記録媒体を搬送させつつ記録を行うフルライン形式のインクジェット記録装置が採用されている。フルライン形式のインクジェット記録装置は、記録の高速化が可能であることから広く使用されつつある。このようなフルライン形式のインクジェット記録装置においては、記録媒体における幅方向の縁部に余白を設けて記録を行う縁有り記録と、余白を設けずに記録を行う縁無し記録とを行うことのできるものがある。
【0003】
インクジェット記録装置においては、なんらかの理由で吐出口からのインクの吐出が良好でない状態になることがある。このようにインクの吐出が良好でない状態になった場合、吐出の良好でない状態にある吐出口について、その吐出口からのインク吐出を停止したり、代わりに別の吐出口からインクを吐出させる等の対策を行うことが求められる場合がある。このようなときには、吐出の良好でない状態にある吐出口の位置を検出することが求められる。
【0004】
インク吐出状態の良好でない吐出口が生じたときに、その吐出口を検出する方法として、記録媒体にテストパターンを記録し、テストパターンの画像からインク吐出の良好でない状態の吐出口を検出する方法が知られている。例えば、特許文献1には、記録ヘッドが記録媒体の幅方向の全体に亘って記録を行うことが可能なフルライン形式であって、記録媒体に記録を行う記録手段と、記録されたテストパターンを読み取るセンサを有するインクジェット記録装置について開示されている。センサによってテストパターンが読み取られることにより、記録ヘッドに吐出不良の状態にある吐出口が生じた場合に、テストパターンが検知されることによって吐出不良の状態にある吐出口が検出されている。特に、特許文献1では、記録媒体の幅方向の外側縁部に余白が生じないように記録が行われる縁無し記録が行われる場合において、テストパターンが検知されることによって吐出の良好でない状態にある吐出口が検出されている。特許文献1に開示されたインクジェット記録装置では、縁無し記録が行われる場合に、記録媒体の幅方向に記録媒体を横断するように記録されたテストパターンが用いられてインク吐出の良好でない状態の吐出口が検出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−205742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、縁無し記録が行われる場合には、記録画像は、記録媒体からはみ出すように、記録媒体の幅方向へ記録媒体よりも長く形成される。その一方、縁有り記録が行われる場合には、記録画像は記録媒体の幅方向に対し記録媒体内に収まるように部分的に記録される。そのため、縁有り記録が行われる場合には、縁無し記録の際に使用される吐出口の一部に、記録に使用されない吐出口が生じる。このように、縁有り記録によって記録が行われる場合と、縁無し記録によって記録が行われる場合との間で、記録ヘッドにおける使用される吐出口の領域が異なる。そのため、テストパターンを記録し、テストパターンからインク吐出の良好でない状態の吐出口を検出するときには、縁有り記録が行われる場合と、縁無し記録が行われる場合との間で、必要とされるテストパターンの領域が異なる。このように、縁有り記録と縁無し記録とを行うことのできるインクジェット記録装置では、テストパターンからインク吐出の良好でない状態の吐出口の検出を行う際の、テストパターンにおける検出領域が定まらない。
【0007】
テストパターンの記録の際に使用される吐出口を縁有り記録に使用される吐出口に合わせると、縁無し記録が行われるときに、記録ヘッド内の吐出口の一部に、インクの吐出状態が良好であるかの検出が行われない吐出口が生じる場合がある。また、テストパターンの記録の際に使用される吐出口を縁無し記録に使用される吐出口に合わせると、縁有り記録が行われるときに、記録に使用されない吐出口についてまで、インクの吐出状態が良好であるかの検出が行われる場合がある。そのため、インクの吐出状態が良好であるかの検出の行われる領域について、記録ヘッド内のどの吐出口の範囲に設定するのかを設定することができない。
【0008】
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、縁有り記録と、縁無し記録とによって記録を行うことが可能であっても、記録形式に応じてテストパターンの検知領域を定めることのできるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のインクジェット記録装置は、記録媒体を搬送しながら、記録媒体の搬送方向に交差する方向に沿って記録媒体の全域に亘って記録可能に配列された複数の吐出口から、記録媒体にインクを吐出して記録を行い、記録媒体における前記吐出口の配列された配列方向の縁部に余白を形成しつつ記録を行う縁有り記録と、前記配列方向の縁部に余白を設けずに記録を行う縁無し記録とを行うことが可能なインクジェット記録装置であって、前記縁有り記録によって記録を行う縁有り記録モードまたは前記縁無し記録によって記録を行う縁無し記録モードから記録を行う際の記録モードを設定する記録モード設定手段と、前記縁有り記録モードで記録を行う際に使用される吐出口からのインクの吐出によって記録される縁有りテストパターンの両端部の位置を検出する縁有りテストパターン端部検出手段と、前記縁無し記録モードで記録を行う際に使用される吐出口からのインクの吐出によって記録される縁無しテストパターンの両端部の位置を検出する縁無しテストパターン端部検出手段と、前記縁有りテストパターン端部検出手段によって検出された前記縁有りテストパターンの両端部の間の領域に記録され、前記縁有りテストパターンにおける画素を形成するインクを吐出する吐出口について、前記縁有りテストパターンからインクの吐出状態の検出を行う縁有り記録吐出状態検出手段と、前記縁無しテストパターン端部検出手段によって検出された前記縁無しテストパターンの両端部の間の領域に記録され、前記縁無しテストパターンにおける画素を形成するインクを吐出する吐出口について、前記縁無しテストパターンからインクの吐出状態の検出を行う縁無し記録吐出状態検出手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、縁有り記録と、縁無し記録とで、使用される吐出口に応じた領域についてインク吐出の良好でない状態の吐出口の検出処理を行うことができるインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成について模式的に示した断面図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置の制御系に関する構成を説明するためのブロック図である。
【図3】図1のインクジェット記録装置における記録ヘッド、記録媒体及びスキャナ部について示した平面図である。
【図4】図3の記録ヘッドによって記録媒体に記録されたテストパターンについて説明するための説明図である。
【図5】図1のインクジェット記録装置によって、記録ヘッドの吐出口についてのインク吐出状態の検出が行われる際の制御フローについて示したフローチャートである。
【図6】図5のフローで、インク吐出状態の良好でない吐出口が検出されたときに、その吐出口について補完処理が行われる際の制御フローについて示したフローチャートである。
【図7】図1のインクジェット記録装置による縁無し記録で用いられるテストパターンを検出する検出処理と、検知マークの検出処理について説明するための平面図である。
【図8】図7のテストパターンの両端部の位置についての検出処理と、検知マークの検出処理について説明するための平面図である。
【図9】図1のインクジェット記録装置による縁有り記録で用いられるテストパターンの両端部の位置についての検出処理と、検知マークの検出処理について説明するための説明図である。
【図10】図8、図9のテストパターンからインク吐出の良好でない状態の吐出口を検出する際の検出処理について説明するための説明図である。
【図11】図1のインクジェット記録装置によって記録されたテストパターンにおいて、位置基準検知マークについて説明するための平面図である。
【図12】図1のインクジェット記録装置によって記録されたテストパターンにおいて、位置基準検知マークを検出する際の検出処理について説明するための説明図である。
【図13】図1のインクジェット記録装置によって記録されたテストパターンによって、インク吐出が良好でない状態の吐出口が検出されたときに、その吐出口の位置を検出するための検出処理について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の第一実施形態に係るインクジェット記録装置200の概略構成を模式的に示した図である。なお、以下の実施の形態はあくまでも例示であり、本発明の範囲を限定する趣旨のものではない。
【0014】
インクジェット記録装置200は、記録媒体を搬送しながら、記録媒体にインクを吐出して記録を行う。インクジェット記録装置200は、記録媒体の搬送方向に交差する方向に沿って記録媒体の全域に亘って記録可能に配列された複数の吐出口を有する記録ヘッド106を有している。インクジェット記録装置200は、このような記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して記録を行うフルライン形式のインクジェット記録装置である。本実施形態のインクジェット記録装置200は、記録媒体における記録ヘッド106の延在する延在方向の縁部に余白を形成しつつ記録を行う縁有り記録と、記録ヘッドの延在方向の縁部に余白を設けずに記録を行う縁無し記録とを行うことが可能である。本実施形態では、記録媒体における記録の行われる面は白色である。
【0015】
インクジェット記録装置200は、記録媒体に記録を行う記録機能と、記録媒体上の記録画像を読取る読取装置を備えている。本実施形態では、記録処理を行う記録媒体(記録シート)としてロールシート(搬送方向において記録単位(1ページ)の長さよりも長い連続したシート)が用いられている。しかしながら、同一面への複数ページ分の記録を途中で切断せずに続けて行える長尺の連続シートであれば、ロール状となったものには限らない。また、連続シートの切断は、インクジェット記録装置200が自動的に切断するものであってもよいし、ユーザーがマニュアル指示を行って切断するものであってもよい。記録媒体の材質も紙には限らず、記録処理可能なものであれば種々のものを用いることができる。また、インクジェット記録装置は、連続シートへの記録のみではなく、所定のサイズに予めカットされたカットシートへの記録をも可能なインクジェット記録装置としてもよい。また、複数色の記録剤を用いたカラー記録を行うものには限らず、黒色(グレーを含む)のみによるモノクロ記録を行うものとしてもよい。また、記録は、可視画像の記録には限らず、不可視もしくは視認が困難な画像の記録としてもよいし、一般的な画像以外の、例えば配線パターン、部品の製造における物理的パターン、DNAの塩基配列等の記録など種々のものの記録としてもよい。つまり、記録剤を記録媒体に付与可能なものであれば種々のタイプの記録装置に適用可能である。また、図1のインクジェット記録装置200と接続された外部装置からの指示で当該インクジェット記録装置200における記録処理の動作を制御させる場合、この外部装置が記録制御装置となる。
【0016】
インクジェット記録装置200は、以下の構成要素101〜115を含み、これらが1つの筐体内に配置される。ただし、これらの構成要素を複数の筐体に分けて構成してもよい。
【0017】
制御ユニット108は、コントローラ(CPUまたはMPUを含む)やユーザーインターフェース情報の出力器(表示情報や音響情報などの発生器)、各種I/Oインターフェースを備えた制御部を内蔵し、インクジェット記録装置200全体の各種制御を司る。
【0018】
ロールシートユニットとして上段シートカセット101aと下段シートカセット101bの2基を備える。使用者はロールシート(以下、シート)をマガジンに装着してからインクジェット記録装置本体に装填する。上段シートカセット101aから引き出されたシートは図中a方向に、下段シートカセット101bから引き出されたシートは図中b方向にそれぞれ搬送される。いずれのカセットからのシートも図中c方向に進行して搬送ユニット102に到達する。搬送ユニット102は、複数の回転ローラ104を通して記録処理中にシートを図中d方向(水平方向)に搬送する。給紙元のシートカセットを一方から他方に切り替える際は、既に引き出されているシートをカセット内に巻き戻し、新たに給紙させるシートがセットされているカセットから新たに給紙する。
【0019】
搬送ユニット102の上方には記録ヘッドユニット105が搬送ユニット102と対向して配置される。記録ヘッドユニット105では複数色(本実施形態では7色)分の独立した記録ヘッド106がシートの搬送方向に沿って保持されている。本実施形態では、インクジェット記録装置200は、K(ブラック)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロー)、G(グレー)、LM(ライトマゼンタ)、LC(ライトシアン)、の7色に対応した7つの記録ヘッドを有する。もちろん、これら以外の色を用いたものでもよいし、これらの全てを用いる必要もない。本実施形態のインクジェット記録装置200は、搬送ユニット102によるシートの搬送に同期させて、記録ヘッド106からインクを吐出させてシート上に画像を形成する。なお、記録ヘッド106はインクの吐出先が回転ローラ104と重ならない位置に配置される。インクはシートに直接吐出されるものに代え、中間転写体にインクを付与した後、そのインクをシートに付与されることによって画像が形成されるものとしてもよい。このときには、中間転写体を介して記録媒体に記録されたテストパターンから、中間転写体にインクを吐出して付与するための吐出口についての検出を行うこととすれば良い。
【0020】
上述したような搬送ユニット102、記録ヘッドユニット105及び記録ヘッド106を含んで記録ユニットが構成されている。インクタンク109は各色のインクを独立して貯蔵する。インクタンク109からはチューブによって各色に対応して設けられたサブタンクまでインクが供給され、サブタンクから各記録ヘッド106までチューブを介してインクが供給される。記録ヘッド106は、記録時の搬送方向d方向に沿って各色(本実施形態では7色)のインクを吐出するために吐出口がライン状に配列されたラインヘッドである。各色のラインヘッドは、継ぎ目無く単一のチップで形成されたものであってもよいし、分割された吐出口チップが一列又は千鳥配列のように規則的に並べられたものであってもよい。本実施形態では、上述したように、インクジェット記録装置200は、フルライン形式の記録ヘッド106を有している。吐出口からインクを吐出するインクジェット方式としては、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。記録の行われる際には、記録データに基づいて各ヘッドの吐出口からインクが吐出される。吐出のタイミングは、搬送用エンコーダ103の出力信号によって決定される。
【0021】
シートに画像が形成された後、当該シートは搬送ユニット102から、スキャナユニット107まで搬送される。スキャナユニット107では、シート上の記録画像や特殊パターンを光学的に読取って記録画像に問題がないかどうかの確認や、インクの吐出状態を含む本装置の状態確認等を行う。本実施形態では、テストパターンの記録画像を読み込み、読み取られたテストパターンの画像についての解析を行うことにより、吐出口についてのインクの吐出状態を確認するものとしている。しかしながら、吐出状態の確認については、読み取られたテストパターンの画像と、予め記憶されている画像との比較を行うことにより記録の成否が確認されて行われるものでもよい。確認の方法は種々のものの中から適宜選択することが可能である。
【0022】
シートはスキャナユニット107近傍からe方向に搬送され、カッタユニット110に導入される。カッタユニット110では所定の記録領域に対応した単位の長さ毎にシートが切断される。記録する画像サイズに応じてこの所定の記録領域に対応した単位の長さは異なる。例えばL版サイズの写真では搬送方向の長さは135mm、A4サイズでは搬送方向の長さは297mmでシートがカットされる。カッタユニット110は、片面記録の場合はページ単位でシートを切断するが、記録ジョブの内容によってはページ単位で切断しない場合もある。
【0023】
また、カッタユニット110は、両面記録が行われる場合には、第1面(たとえばおもて面)に所定の長さ分の画像を連続して記録し、その後第2面(たとえば裏面)を記録したときにページ単位でシートを切断することとしても良い。このように、シートの第1面に記録が行われたときに、ページごとにシートが切断されなくても良い。なお、カッタユニット110は、片面記録や両面記録の裏面記録に際し、1枚の画像毎に切断するものに限らない。所定の長さ分搬送されるまで切断せず、所定の長さまで搬送された後で切断し、1枚(1頁)の画像毎に切り離すのは別のカッタ装置で手動操作等によって切断するものとしてもよい。またシートの幅方向に関しては、切断が必要な場合、別のカッタ装置を用いて切断することになる。
【0024】
カッタユニット110から搬送されたシートは、ユニット内を図中f方向に搬送され、裏面記録ユニット111に搬送される。裏面記録ユニット111は、シートの片面のみに画像を記録する場合に、シートの裏面に所定の情報を記録させるためのユニットである。シートの裏面に記録する情報としては、記録画像毎に対応した文字、記号、コード等の情報(例えば、オーダー管理用番号等)が含まれる。裏面記録ユニット111は、記録ヘッド106が両面記録の記録ジョブのための画像を記録する場合、記録ヘッド106が画像を記録する領域以外に上記したような情報を記録しても良い。本実施形態では、裏面記録ユニット111においても、インクジェットによる記録方式が採用されている。
【0025】
裏面記録ユニット111を通ったシートは、次に乾燥ユニット112に搬送される。乾燥ユニット112は、インクが付与されたシートを短時間で乾燥させるために、図中g方向に通過するシートを温風(加温された気体(空気))で加熱するユニットである。なお、乾燥の方法は温風を用いるのに代え、冷風、ヒーターによる加温、待機させることのみによる自然乾燥、紫外光等の電磁波の照射など種々のものも採用可能である。ページごとの単位長さに切断されたシートは1枚ずつ乾燥ユニット112内を通過して、図中h方向に搬送されて仕分けユニット114に搬送される。仕分けユニット114は、複数のトレー(本実施形態では18個)を保持しており、ページごとの単位長さ等に応じてシートの排紙先のトレーを区別する。各トレーには、トレー番号が割り当てられている。仕分けユニット114では、ユニット内を図中i方向に通過するシートを、各トレー上に設けられたセンサでトレーの空きやシートが満載か否かなどを確認しながら記録画像毎に設定されたトレー番号に対応するトレーに排紙していく。切断されたシートの排出先となるトレーは、記録ジョブの発行元(ホスト装置)で特定のものが指定される場合や、インクジェット記録装置側で空いているトレーが任意に指定される場合がある。1つのトレーには予め決められた枚数まで排紙可能である。この予め決められた枚数を超える記録ジョブの場合、複数のトレーに跨って排紙される。トレーに対して排紙可能なシートの枚数やサイズ、種類などは、そのトレーの大きさ(タイプ)等によって異なっている。図1において縦(上下)に並んでいるトレー(以下、大トレー)は大サイズ(A4サイズ等、L版サイズより大きいもの)のシート、小サイズ(L版サイズ)のシートの排紙が可能である。また、横(左右)に並んでいるトレー(以下、小トレー)は小サイズ(L版サイズ)のシートの排紙が可能であるが大サイズのシートの排紙はできない。そして、大トレーの方が小トレーより排紙可能なシートの出力枚数が多い。また、シート排紙中や排紙完了等の状態は、表示器を用いてユーザーが識別可能にする(例えば、LED等を用いる)。例えば、トレーのそれぞれに互いに異なる色で発光する複数のLEDを設け、点灯しているLEDの色や点灯状態か点滅状態かなどによって各トレーの種々の状態をユーザーに通知可能である。また、インクジェット記録装置200の有する複数のトレーのそれぞれには、優先順位を付すことができる。インクジェット記録装置200は、記録ジョブを実行するにあたり、空いている(シートが存在しない)トレーを、予め設定されている優先順位に従って、順にシートの排出先として割り当てていく。本実施形態のインクジェット記録装置200におけるデフォルトでは、大トレーは図1の上のトレーほど優先順位が高く、また小トレーは図1の左側のトレーほど優先順位が高い。また、本実施形態では、大トレーの優先順位よりも、小トレーの優先順位の方が高い。この優先順位については、ユーザーがシートを取り出しやすい位置ほどトレーの優先順位を高く設定してやればよいが、ユーザーによる操作によっても適宜変更可能である。
【0026】
シート巻取りユニット113は、ページ毎に切断されずにおもて面が記録されたシートの巻取りを行う。両面記録の際にはまずおもて面に画像形成が行われたシートを、ページ単位では切断せず、連続したおもて面への記録が終了した後にカッタユニット110によってシートを切断する。おもて面が記録されたシートは、ユニット内を図中のj方向に通過し、シート巻取りユニット113が巻取る。そして、一連のページ分のおもて面の画像形成が終了して、巻き取られたシートは、先のおもて面とは反対面を記録可能な面にして、つまり記録ヘッド106に対向させる面を反転させて、再度ユニットの図中のk方向に搬送される。このようにシートの切断及び記録媒体の搬送が行われることで、先のおもて面とは反対の裏面の画像の記録を行わせる。通常の片面記録の場合は、画像が記録されたシートは、シート巻取りユニット113による巻取りを行わせずに仕分けユニット114に搬送される。
【0027】
このように、両面記録の際は、シート巻取りユニット113を用いてシートの巻取りを行い、シートを反転させて裏面の記録を行うため、片面記録のときと両面記録のときとでは仕分けユニット114への排紙の際のシートの面が異なる。即ち、片面記録の場合はシート巻取りユニット113を用いたシートの反転が行われないので、先頭ページの画像が記録されたシートは先頭ページの画像が図1の下方を向いた状態で排紙される。そして1つの記録ジョブが複数ページあるジョブの場合、先頭ページのシートからトレーに排紙され、以後後続のページへと順次排紙されシートが重なっていく。このような排紙をフェイスダウン排紙と呼ぶ。一方、両面記録の場合はシート巻取りユニット113を用いたシートの反転が行われるので、先頭ページの画像が記録されたシートは先頭ページの画像が上を向いた状態で排紙される。そして1つの記録ジョブが複数枚のシートの出力を行うジョブの場合、最後のページを含むシートからトレーに排紙され、以後若いページのシートへと順次排紙されシートが重なっていき、最終的に先頭ページの画像が記録されたシートが排紙される。このような排紙をフェイスアップ排紙と呼ぶ。
【0028】
操作ユニット115は、ユーザーが種々の操作を行ったり、ユーザーに種々の情報を通知したりするためのユニットである。例えば、ユーザーに指定された画像が記録されたシートはどこのトレーに積載されているか、あるいは当該画像が記録中か記録終了かなど、オーダー毎の記録状況の確認が可能である。また、インク残量や、シートの残量等、装置の各種状態の確認、ヘッドクリーニング等の装置メンテナンスの実施の指示を行うためにユーザーが操作/確認可能である。
【0029】
図2は、本実施形態に係る、図1で示したインクジェット記録装置200における制御に関わる構成を説明するためのブロック図である。CPU201、ROM202、RAM203、画像処理部207、エンジン制御部208、スキャナ制御部209が主に制御ユニット108に含まれる。そして、制御ユニット108にHDD204、操作部206、外部I/F205などがシステムバス210を介して接続される。
【0030】
CPU201は、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)形態の中央演算処理部であり、図1の制御ユニット108に含まれる。CPU201は、プログラムの実行やハードウェアの起動によりインクジェット記録装置200全体の動作を制御する。ROM202は、CPU201が実行するためのプログラムやインクジェット記録装置200の各種動作に必要な固定データを格納する。RAM203は、CPU201がワークエリアとして用いられたり、種々の受信データの一時格納領域として用いられたり、各種設定データを記憶させたりする。HDD204は、CPU201が実行するためのプログラム、記録データ、インクジェット記録装置200の各種動作に必要な設定情報を、内蔵するハードディスクに記憶させたり、読み出したりすることが可能である。なお、HDD204に代えて、他の大容量記憶装置としてもよい。
【0031】
操作部206は、ユーザーが種々の操作を行うためのハードキーやタッチパネル、またユーザーに種々の情報を提示(通知)するための表示部を含み、図1の操作ユニット115に対応するものである。またユーザーへの情報の提示は音声発生器からの音響情報に基づく音響(ブザー、音声等)を出力することによっても行うこともできる。
【0032】
画像処理部207は、インクジェット記録装置200で扱う記録データ(例えば、ページ記述言語で表されたデータ)の画像データ(ビットマップ画像)への展開(変換)や画像処理を行う。入力された記録データに含まれる画像データの色空間(たとえばYCbCr)を、標準的なRGB色空間(たとえばsRGB)に変換する。また、画像データに対し、有効な(インクジェット記録装置200が記録処理可能な)画素数への解像度変換、画像解析、画像補正等、様々な画像処理が必要に応じて施される。これらの画像処理によって得られた画像データは、RAM203または、HDD204に格納される。
【0033】
エンジン制御部208は、CPU201等から受信した制御コマンドに応じて、記録データに基づく画像をシート上に記録する処理の制御を行う。また、エンジン制御部208は、各色の記録ヘッド106へのインク吐出指示や、記録媒体上でのドット位置(インクの着弾位置)を調整するための吐出タイミング設定、ヘッド駆動状態取得に基づく調整等を行う。さらにエンジン制御部208は、記録データに応じて記録ヘッドの駆動制御を行い、記録ヘッドからインクを吐出させシート上に画像を形成させる。また、エンジン制御部208は、給紙ローラの駆動指示、搬送ローラの駆動指示、搬送ローラの回転状況取得等を行う等、搬送ローラの制御を行うと共に、シートを適切な速度及び経路で搬送させ、また、その搬送を停止させる。
【0034】
スキャナ制御部209は、CPU201等から受信した制御コマンドに応じて、イメージセンサーの制御を行い、シート上の画像を読取り、赤(R)、緑(G)および青(B)色のアナログ輝度データを取得し、デジタルデータに変換する。イメージセンサーとしては、CCDイメージセンサーやCMOSイメージセンサー等を採用可能である。また、イメージセンサーはリニアイメージセンサーとしてもエリアイメージセンサーとしてもよい。また、スキャナ制御部209は、イメージセンサーの駆動指示、該駆動に基づくイメージセンサーの状況取得を行う。そして、イメージセンサーから取得した輝度データが解析され、記録ヘッド106からのインクの吐出の良好でない状態にある吐出口やシートの切断位置の検出等が行われる。スキャナ制御部209で画像が正しく記録されていると判定されたシートは、シート上のインクの乾燥処理が施された後に、指定された仕分けユニットのトレーに排紙される。
【0035】
ホスト装置211は、上述した外部装置に対応し、本実施形態のインクジェット記録装置200の外部に接続され、インクジェット記録装置200に記録を行わせるための画像データ(記録データ)の供給源となる装置である。ホスト装置211は、種々の記録ジョブのオーダーを発行してインクジェット記録装置200に送信する。ホスト装置211としては、汎用のパーソナルコンピュータ(PC)によって実現されてもよいし、他のタイプのデータ供給装置としてであってもよい。他のタイプのデータ供給装置としては、画像をキャプチャーして画像データを生成する画像キャプチャー装置がある。画像キャプチャー装置は、原稿上の画像を読取って画像データを生成するリーダ(スキャナ)、ネガフィルムやポジフィルムを読取って画像データを生成するフィルムスキャナなどである。また、画像キャプチャー装置の他の例として静止画を撮影してデジタル画像データを生成するデジタルカメラ、動画を撮影して動画像データを生成するデジタルビデオもある。その他、ネットワーク上にフォトストレージを設置したり、着脱可能な可搬性メモリを挿入するソケットを設けたりし、フォトストレージや可搬性メモリに格納された画像ファイルを読み出して画像データに生成して記録するものとしてもよい。また、汎用的なPCに代え、本実施形態のインクジェット記録装置専用の端末とするなど、種々のデータ供給装置としてもよい。これらのデータ供給装置はインクジェット記録装置の構成要素としてもよいし、インクジェット記録装置の外部に接続した別の装置としてもよい。また、ホスト装置211をPCとした場合、PCの記憶装置に、OS、画像データを生成するアプリケーションソフトウェア、インクジェット記録装置200用のプリンタドライバがインストールされる。プリンタドライバは、本実施形態のインクジェット記録装置200を制御したり、アプリケーションソフトウェアから供給された画像データをインクジェット記録装置200が扱える形式に変換して記録データを生成したりする。また、記録データから画像データへの変換をホスト装置211側で行ってからインクジェット記録装置200に供給するようにしてもよい。なお、以上の処理の全てをソフトウェアで実現することは必須ではなく、一部または全部をハードウェアによって実現するようにしてもよい。ホスト装置211から供給される画像データやその他のコマンド、更にステータス信号等は、外部I/F205を介してインクジェット記録装置200と送受信可能である。外部I/F205はローカルI/FであってもネットワークI/Fであってもよい。また、外部I/F205は、有線による接続であっても無線による接続であっても構わない。
【0036】
インクジェット記録装置200内の上記した各構成はシステムバス210を介して接続され、互いに通信可能である。
【0037】
なお、以上の例では、1つのCPU201が図2に示したインクジェット記録装置200内の全ての構成要素を制御するものとしたが、この構成以外としてもよい。即ち、各機能ブロックのいくつかが別途CPUを備え、それぞれのCPUによって個別に制御するものとしてもよい。また、各機能ブロックは図2に示した構成以外の分担のさせ方により個別の処理部または制御部として適宜分割したり、いくつかを統合したりするなど、種々の形態を採用可能である。また、メモリからのデータの読み出しにはDMAC(Direct Memory Access Controller)も用いることもできる。
【0038】
なお、本実施形態のインクジェット記録装置200は、ホスト装置211から供給される画像データに基づいて、縁有り記録によって記録を行う縁有り記録モードまたは縁無し記録によって記録を行う縁無し記録モードから記録を行う際の記録モードを設定できる。このとき、本実施形態では、CPU201は、縁有り記録モードまたは縁無し記録モードから記録モードを設定する記録モード設定手段として機能する。
【0039】
図3は、本実施形態に係る記録媒体と記録ヘッドユニット、スキャナ部の位置と、テストパターンの記録位置と、吐出の良好でない状態にある吐出口の有無についての検出処理を説明するための図である。図3には、記録媒体304にロール紙を用いて、記録媒体304に吐出の良好でない状態にある吐出口の有無についての検出処理のためのテストパターン305を記録する例について示されている。記録領域306は、ユーザーからの記録指示により実際に記録される記録画像の領域である。
【0040】
矢印307は、記録媒体304が搬送される方向を示している。矢印307の方向を記録媒体の搬送方向とする。
【0041】
矢印308は、記録ヘッドの吐出口の配列方向を示している。矢印308の方向をヘッド主走査方向とする。
【0042】
記録ヘッドユニット300は、複数の記録ヘッドを備える。本実施形態では、記録ヘッドユニット300は、7つの記録ヘッドで構成する。各記録ヘッドは、記録媒体の搬送方向下流から、K(ブラック)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロー)、G(グレー)、LM(ライトマゼンタ)、LC(ライトシアン)の7色に対応している。
【0043】
主走査移動方向301、302は、記録ヘッドユニット300が主走査する際の移動方向を示すものである。図3(a)は、使用吐出口領域309が記録ヘッドユニット300のほぼ中央部である場合の、記録媒体及び記録ヘッドユニット300の平面図である。図3(b)は、記録ヘッドユニット300が、図3(a)の状態よりも、記録ヘッドユニット300の主走査方向の主走査移動方向301へ移動したときの記録媒体及び記録ヘッドユニット300の平面図である。図3(c)は、図3(a)の状態よりも、主走査移動方向302へ移動したときの記録媒体及び記録ヘッドユニット300の平面図である。記録ヘッドユニットが使用されていく過程で記録ヘッドユニットが主走査移動方向301、302へ移動することで、記録ヘッドユニットにおける一部の吐出口のみの使用頻度が高くなることが抑えられる。記録ヘッドユニットにおける広範囲の吐出口が分散して使用されるように記録動作が行われるので、記録ヘッドユニットの耐久性が向上する。また、記録ヘッドユニット300を主走査移動301、302に移動させることで、特定の吐出口への使用量の偏りを抑えることができる。従って、吐出口ごとの使用の偏りによる記録画像での濃度段差の発生を低減させることができ、このことによる記録画像への影響を軽減させることができる。テストパターンが記録され、そのテストパターンを記録した吐出口についての吐出状態の検出処理が行われた後については、その記録ヘッド位置での記録が終了するまで記録ヘッドの主走査方向への移動は行われない。主走査方向への移動が行われたときには、その都度、テストパターンの記録が行われ、記録ヘッドの位置ごとに、テストパターンを記録した吐出口についての吐出状態の検出処理が行われる。
【0044】
スキャナ部303は、記録ヘッドユニット300に対して、記録媒体の搬送方向の下流側に配置される。スキャナ部303は、記録ヘッドユニット300におけるインク吐出の良好でない吐出口の有無について検出処理を行うために、記録媒体304に記録されたテストパターン305を読み取る。
【0045】
次に、吐出の良好でない状態にある吐出口についての有無の検出について説明する。吐出の良好でない状態にある吐出口についての有無の検出は、記録領域306同士の間に記録したテストパターン305がスキャナ部303によって読取られ、その読取画像が解析されることで行われる。これにより、インクジェット記録装置は、記録ヘッドにおけるインクの吐出が行われない吐出口や着弾位置の精度の低い吐出口といった吐出が良好でない状態の吐出口の有無を判断する。本実施形態では、記録ヘッドに吐出が良好でない状態にある吐出口があると判断された場合には、記録動作が停止されずに、他の吐出口による代用打滴、すなわち補完のための記録が行われる。なお、吐出が良好でない状態にある吐出口があると判断された場合に、記録動作を停止し、記録ヘッドの回復制御が行われることとしても良い。
【0046】
このときに記録媒体に記録されるテストパターンについては、そのときに設定されている記録モードに対応したテストパターンが記録される。インクジェット記録装置において、縁有り記録を行う縁有り記録モードが設定されている場合には、記録媒体上に縁有り記録が行われる範囲内でテストパターンが形成される。インクジェット記録装置において、縁無し記録を行う縁無し記録モードが設定されている場合には、記録媒体上に縁無し記録が行われる範囲内でテストパターンが形成される。このように、予め設定されている記録モードに応じてテストパターンが形成される。すなわち、本実施形態では、インクジェット記録装置200は、設定された記録モードに応じて、縁有りテストパターンまたは縁無しテストパターンとから記録媒体に記録するテストパターンを選択するテストパターン選択手段を有している。本実施形態では、CPU201が、縁有りテストパターンまたは縁無しテストパターンとから記録媒体に記録するテストパターンを選択するテストパターン選択手段として機能している。
【0047】
ここで、インク吐出が良好でない状態にある吐出口が検出された場合に、そのインク吐出が良好でない状態にある吐出口への補完のための記録について説明する。記録ヘッドに、吐出が良好でない状態にある吐出口が存在すると、そこでインクが正常に吐出されないためにその部分について記録されるべき領域に記録が行われず、記録画像として空白部分が生じてしまう。これにより、記録媒体上の記録画像に、搬送方向への白スジが発生し、これによって記録画像の画像品位が低下してしまう。吐出不良状態にある吐出口への補完では、吐出が良好でない状態にある吐出口で吐出されるべきインクが、近接する別の吐出口によって代用されることでインク吐出が行われる。これにより、記録画像における白スジによる記録画像の品質の低下が軽減される。本実施形態では、記録ヘッドは、2列の吐出口列を備える構成である。従って、本実施形態では、吐出不良状態にある吐出口への補完のための記録においては、配列方向に吐出が良好でない状態にある吐出口と同位置であって、もう一方の吐出口列の吐出口によってインク吐出が代用される。なお、記録ヘッドに2列より多くの吐出口列を備える場合や、同色の記録ヘッドを複数備える構成の場合、補完のための記録は、3つ以上の複数の吐出口列によって代用が行われても良いし、別の記録ヘッドの吐出口によって代用されても良い。また、白スジによる記録画像への影響を軽減するために、別色の吐出口による代用打滴や、複数色の吐出口による代用打滴が行われても良い。
【0048】
図4は、本実施形態に係るテストパターンの記録方法を説明するための説明図である。テストパターン401は、記録ヘッドユニット400によって記録媒体上に記録された、記録ヘッドユニット400において吐出の良好でない状態にある吐出口の検出を行うためのテストパターンである。図中の矢印は記録媒体の搬送方向を示す。
【0049】
テストパターン402は、テストパターン401の一部を拡大したものある。各テストパターン403から409は、各記録ヘッドに対応する吐出の良好でない状態にある吐出口を検出するためのテストパターンである。テストパターン403から409はそれぞれ、K(ブラック)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロー)、G(グレー)、LM(ライトマゼンタ)、LC(ライトシアン)の各色のインクを吐出する記録ヘッドに対応するテストパターンである。各テストパターン403から409は、対応する記録ヘッドから同じ形状のパターンを記録している。テストパターン403にのみ、後述するヘッド位置基準検知マーク411が記録されている。検知マーク410は、テストパターン内の領域で、インクが打たれずに記録媒体の色そのものによって形成された白抜きによって形成されている。検知マーク410は、それぞれの色のテストパターンに対応する記録ヘッドによって矩形状に形成され、記録ヘッドの主走査方向に等間隔に記録されている。検知マーク410は、吐出の良好でない状態にある吐出口の解析の際に、記録ヘッドの吐出口とテストパターンを形成するそれぞれの画素との間の相対的な位置関係を認識するためのパターンである。後述するように、予め設定されているテストパターンの画像と、実際のテストパターンの画像とが比較されて、記録ヘッドにおける吐出口と記録媒体との間の相対的な位置関係を認識することができる。また、テストパターンからインク吐出状態の良好でない吐出口が検出された際に、ヘッド位置基準検知マーク411からの位置を検出することで、その吐出口の記録ヘッドにおける位置を認識することができる。ヘッド位置基準検知マーク411は、白抜きによって形成された領域に、白抜き領域の周囲の色とは別の色の記録ヘッドの打滴によってベタ記録しているパターンである。ヘッド位置基準検知マーク411は、検知マーク410と同様に矩形状のパターンである。テストパターン401におけるヘッド位置基準検知マーク411の配置については、後述する図11でより詳細に説明する。
【0050】
テストパターン412は、テストパターン402の一部を拡大したものである。記録ヘッドユニット413は、記録ヘッドユニット400の記録ヘッドの一部を拡大したものである。記録ヘッド414は、K(ブラック)の記録ヘッドである。415は、Y(イエロー)の記録ヘッドである。各記録ヘッドは、吐出口列416と吐出口列417で示すように、2列の吐出口列を備える。図では、各吐出口列を構成する各吐出口を円形状で示す。テストパターン412は、記録ヘッドユニット413に示す記録ヘッドの吐出口で打滴し記録した例を示す。テストパターン412のK(ブラック)のテストパターンの記録方法について説明する。各パターン領域418から421は、テストパターンを構成するパターン領域で、記録ヘッド414で記録する。
【0051】
このように、パターン領域418は、ヘッド位置基準検知マーク411と、検知マーク410とによって、記録ヘッドにおける吐出口と、テストパターンを形成する画素のそれぞれとの間の相対的な位置関係について認識するためのパターン領域である。パターン領域418の記録の際には、検知マークの記録の際に吐出の良好でない状態にある吐出口がある場合に、その吐出口からのインクによる影響を軽減させるため、吐出口列416と吐出口列417の両方の吐出口が使用される。パターン領域418の記録の際に複数の吐出口列が使用されてパターンが記録されるので、仮に吐出の良好でない状態にある吐出口がある場合でも、もう一方の吐出口列の吐出口からのインク吐出によってもインク滴が打滴される。従って、吐出の良好でない状態にある吐出口があったとしても、その吐出口から所定位置に記録されないことによって生じる白スジの記録画像への影響が軽減される。パターン領域418は、記録ヘッドにおける吐出口と、テストパターンとの間の相対的な位置関係について認識するためのパターン領域であるので、このパターン領域の内部には、白スジは表れない方が良い。これにより、より明瞭に記録されたテストパターンによって記録ヘッドにおける吐出口とテストパターンとの間の相対的な位置関係が確認されるので、記録ヘッドとテストパターンとの間の位置精度が高く保たれる。
【0052】
本実施形態では、ヘッド位置基準検知マーク411は、K(ブラック)の白抜き領域422の吐出口に、対応するY(イエロー)の記録ヘッドの吐出口でベタ記録する。ヘッド位置基準検知マーク411の中心位置423に対応する吐出口位置が、ヘッド位置基準検知マーク411に対応する吐出口位置になる。検知マーク410は、K(ブラック)の白抜きで記録され、中心位置424に対応する吐出口位置が検知マーク410の基準に対応する吐出口位置になる。検知マークを白抜きの矩形状で記録することで、後述する吐出の良好でない状態にある吐出口を検出するパターン領域419に隣接する領域にはインクが打滴される。これにより、テストパターンの読み取りの際に、記録画像のフレアの影響によるパターン領域419への紙白の白かぶりによる影響が軽減される。ヘッド位置基準検知マークの検出方法については、後述する図12の説明で詳細に述べる。
【0053】
また、パターン領域419、420は、吐出の良好でない状態にある吐出口が記録ヘッド内にある場合に、その吐出口を検出するためのパターン領域である。パターン領域419は、吐出口列416についての吐出の良好でない状態にある吐出口を検出するためのパターン領域で、吐出口列416によりベタ記録される。パターン領域420は、吐出口列417についての吐出の良好でない状態にある吐出口を検出するためのパターン領域で、吐出口列417によりベタ記録される。パターン領域421は、テストパターン後端の領域で、次のテストパターンとの余白である。この部分に余白が設けられるので、パターン領域420に検知対象外の記録ヘッドからのインクが打滴されることが抑えられる。これにより、記録媒体の搬送方向上流のテストパターンを形成する記録ヘッドの取付け位置ずれや、インク吐出でタイミングずれがあった場合でも、インク吐出状態の検出を正確に行うことができる。
【0054】
図5は、本実施形態に係る、吐出の良好でない状態にある吐出口の検知処理のためのテストパターンの読み取りと解析処理の手順を説明するためのフローチャートである。ステップS101では、スキャナ部で、記録媒体に記録されたテストパターンが読み取られる。スキャナ部がテストパターンの読み取りを開始するタイミングとしては、パターン記録開始タイミングから所定量の時間を待ち、その後に読み取りが開始されてもよい。また、パターン記録終了タイミングから所定量記録媒体が搬送され、その後読み取りが開始されてもよい。読み取りを終了するタイミングとしては、読取り開始から所定の副走査ライン数の読取りが行われて、パターン記録が終了する。
【0055】
ステップS102では、スキャナ制御部は、ステップS101で読取った読取り画像からテストパターンを検出する。読取画像中にテストパターンが記録されているかを判断する。テストパターンの検出処理の詳細は、後述する図7の説明にて詳細に述べる。ステップS103では、スキャナ制御部は、ステップS102の処理で読取画像から、テストパターンを検出できたかを確認し、検出できなかった場合、テストパターン検出エラー処理を実施する。
【0056】
ステップS104では、スキャナ制御部は、ステップS102で検出したパターンの検出位置に基づき、読取画像におけるテストパターンから1つの検知マークを検出する。検知マークの検出処理の詳細は、後述する図7の説明にて詳細に述べる。ステップS105では、スキャナ制御部は、ステップS104の処理で1つの検知マークを検出できたかを確認し、検出できなかった場合、テストパターン検出エラー処理を実施する。ステップS106では、スキャナ制御部は、ステップS104の処理で検出位置に基づき、テストパターン中の検知マークをすべて検出する。すべての検知マークの検出処理の詳細は、後述する図8の説明にて詳細に述べる。
【0057】
ステップS107では、スキャナ制御部は、テストパターンのヘッド主走査方向の両端部を検出する。テストパターンの両端部の検出処理の詳細は、後述する図8、図9の説明にて詳細に述べる。ステップS108では、スキャナ制御部は、ステップS107でパターン端部を検出できたかを確認し、検出できなかった場合、テストパターン検出エラー処理を実施する。ステップS109では、スキャナ制御部は、テストパターンを解析し、吐出の良好でない状態にある吐出口の領域を検出する。各テストパターンのパターン端部からもう一方の端部までについてテストパターンの解析を行うことで、吐出の良好でない状態にある吐出口についての検出が行われる。吐出の良好でない状態にある吐出口の解析の処理の詳細については、後述する図10の説明にて詳細に述べる。ステップS110では、スキャナ制御部は、ステップS109でテストパターンの両端部の間の領域において、吐出の良好でない状態にある吐出口の領域を検出したかどうかが確認される。吐出の良好でない状態にある吐出口の領域があった場合には、そこで吐出の良好でない状態にある吐出口があるとの判定処理が行われる。吐出の良好でない状態にある吐出口が無かった場合には、そこで吐出の良好でない状態にある吐出口が無いとの判定処理が行われる。
【0058】
ステップS111では、スキャナ制御部は、テストパターンの解析結果から、吐出の良好でない状態にある吐出口があるとの判定があった場合の処理を行う。ここでは、記録制御部に吐出の良好でない状態にある吐出口があることを通知し、記録動作を停止し、後述する吐出の良好でない状態にある吐出口についての補完処理が実施される。なお、吐出の良好でない状態にある吐出口があるとの判定があった場合には、記録ヘッドユニットの回復動作が行われることとしても良い。ステップS112では、スキャナ制御部は、テストパターンの解析結果から、吐出の良好でない状態にある吐出口が無いとの判定があった場合の処理を行う。ここでは、記録制御部に吐出の良好でない状態にある吐出口がないことを通知し、記録動作を続けさせる。ステップS113では、スキャナ制御部は、テストパターンの解析結果から読み取った読取画像からテストパターンを検出できなかった場合や、検知マークの検出に失敗した場合の処理を行う。ここでは、記録制御部に対して、テストパターンの記録の際にエラーが生じたことを通知し、記録動作を停止する。
【0059】
図6は、本実施形態に係る、吐出の良好でない状態にある吐出口についての補完処理の手順を説明するためのフローチャートである。ステップS201では、スキャナ制御部は、吐出の良好でない状態にある吐出口の有無についての検出処理の結果から、吐出の良好でない状態にある吐出口があるとの判定であったか、吐出の良好でない状態にある吐出口が無いとの判定であったかが確認される。吐出の良好でない状態にある吐出口が存在する場合には、その吐出口についての補完処理が行われる。吐出の良好でない状態にある吐出口が存在しない場合には、補完処理を終了する。
【0060】
ステップS202では、スキャナ制御部は、複数の検知マークからヘッド位置基準検知マークを検出する。ヘッド位置基準検知マークを検出する処理は、後述する図12で詳細に説明する。ステップS203では、スキャナ制御部は、吐出の良好でない状態にある吐出口の有無についての検出処理で、吐出の良好でない状態にある吐出口が有るとの判定をした領域をすべて選択する。そして、選択された領域において、吐出の良好でない状態にある吐出口についての補完処理を行ったかどうかが判定される。すべて吐出の良好でない状態にある吐出口についての補完処理を行っていた場合は、処理を終了する。ステップS204では、スキャナ制御部は、吐出の良好でない状態にある吐出口についての有無の監視の処理で吐出の良好でない状態にある吐出口が有ると判定した領域のうち、吐出の良好でない状態にある吐出口についての補完処理を行っていない領域を選択する。ステップS205では、スキャナ制御部は、選択した吐出の良好でない状態にある吐出口の領域に近接する検知マークを検出する。
【0061】
ステップS206では、スキャナ制御部は、ヘッド位置基準検知マークの位置に基づき、近接する検知マークに対応する記録ヘッドにおける吐出口位置を判断する。ステップS207では、スキャナ制御部は、近接する検知マークに対応する吐出口位置に基づき、吐出の良好でない状態にある吐出口の位置を検出する。ステップS208では、吐出の良好でない状態にある吐出口を含む所定量の吐出口の領域について補完処理を行う。
【0062】
ステップS205、S206、S207、S208におけるインク吐出の良好でない状態にある吐出口の補完処理については、後述する図13の説明にて詳細に述べる。
【0063】
図7は、本実施形態に係る吐出の良好でない状態にある吐出口の有無についての検出処理において、読み取った画像からテストパターンを検出する処理と、検出したテストパターンから1つの検知マークを検出する処理を説明するための図である。
【0064】
読取画像700は、スキャナ部で、記録媒体に記録したテストパターンを読み取った画像を示す。読取画像700は、カラー画像でRGB各チャンネル16ビットの画像である。記録媒体外領域702は、記録媒体の外側を読取った画像領域で、スキャナの読取位置に対向する部材を読み取った結果である。本実施形態では、センサに対向する位置に、スキャナのキャリブレーションに使用するキャリブレーションローラが配置されている。キャリブレーションローラは、スキャナの読取位置に対向する領域が、黒い部材によって形成されている。従って、スキャナによる記録画像の読み取りの際には、キャリブレーションローラの位置する記録媒体外領域702は、記録媒体の紙白の部分に比べ輝度の低い領域になる。
【0065】
キャリブレーションローラは、スキャナの白基準を取得するためのローラで、ローラ面の一部の領域が白基準領域で、それ以外の領域はローラ部材である。本実施形態では、ローラ部材は黒い樹脂によって形成されており、スキャナ部で記録画像と一緒にその部分を読み取ると、その部分の輝度値は記録媒体の紙白部分に比べ低くなる。なお、キャリブレーションローラの白基準領域以外のローラ部材は、黒い樹脂以外のものでもよく、ローラ全面を白基準領域としてもよい。ローラ全面を白基準領域とする場合には、記録される面の記録画像以外の部分(紙白領域)が黒に近い色である記録媒体が用いられることが好ましい。
【0066】
テストパターン検出領域703は、読取画像700からテストパターン701を検出する処理における、探索領域である。
【0067】
テストパターン701を検出する処理について説明する。テストパターン領域704は、テストパターン検出領域703の一部を拡大した図である。テストパターンの検出の判定は、所定領域の平均濃度の閾値判定で行う。各判定領域705から708は、それぞれ紙白、K(ブラック)、M(マゼンタ)、C(シアン)の領域を検出する領域である。各領域の大きさは、各テストパターンの大きさ以下の所定の大きさで、各領域間の距離は、各テストパターン間の距離に対応している。
【0068】
判定領域705は、紙白領域の判定を行う領域である。紙白領域の判定方法としては、領域内のRチャンネルの平均輝度が所定の閾値以上であってGチャンネルの平均輝度が所定の閾値以上であって、Bチャンネルの平均輝度が所定の閾値以上であるときに、検知領域が紙白領域であることが判定される。
【0069】
判定領域706は、K(ブラック)領域の判定が行われる領域である。K(ブラック)領域の判定方法としては、領域内のRチャンネルの平均輝度が所定の閾値以下であって、Gチャンネルの平均輝度が所定の閾値以下であって、Bチャンネルの平均輝度が所定の閾値以下であるときに、検知領域がK領域であると判定する。
【0070】
判定領域707は、M(マゼンタ)領域の判定を行う領域である。M(マゼンタ)領域の判定方法としては、領域内のRチャンネルの平均輝度が所定の閾値より高く、Gチャンネルの平均輝度が所定の閾値以下で、Bチャンネルの平均輝度が所定の閾値より高いときに、検知領域がM領域であると判定する。
【0071】
判定領域708は、C(シアン)領域の判定を行う領域である。C(シアン)領域の判定方法としては、領域内のRチャンネルの平均輝度が所定の閾値以下で、Gチャンネルの平均輝度が所定の閾値より高く、Bチャンネルの平均輝度が所定の閾値より高いときに検知領域がC領域であると判定する。
【0072】
各判定領域705から708について、K、M、C領域のそれぞれであると判定された場合には、テストパターンが検出されたと判定される。一方、そのうちの1つ以上の領域について、K、M、C領域のそれぞれの領域でないと判定された場合には、テストパターンは検出されていないと判定される。
【0073】
次に、テストパターンから1つの検知マークを検出する処理について説明する。検知マークの検出では、テストパターンの検出した位置に基づく所定領域を検知マークの探索領域画像とし、あらかじめ保持している検知マークの画像をテンプレート画像として、画像相互相関処理により行う。本実施形態では、画像相互相関処理としてSSD(Sum of Squared intensity Difference)を用いて、探索領域とテンプレート画像の相違度が計算されて検出される方法を用いる。なお、画像相互相関処理として、SAD(Sum of Absolute Difference)や、NCC(Normalized Cross−Correlation)など他の計算方法を用いてもよい。図7、図8では、便宜上、検知対象または検知処理を終えた検知マークについて、十字のマークを付している。
【0074】
画像相互相関処理は、読取画像のRGBチャンネルのいずれか1つのチャンネル情報を用いて行う。処理において使用されるチャンネルは、各テストパターンの読取画像における色の輝度が最も低くなるチャンネルとすればよい。例えば、C(シアン)であれば、読取画像においてRチャンネルの輝度が最も低くなるため、Rチャンネルを処理すればよい。
【0075】
検知マークの探索領域画像709は、上述したテストパターンを検出した位置に基づいて、検知マークを含むことが保障できる領域で、SSDの探索領域画像である。検知マークのテンプレート画像710は、あらかじめ保持している検知マークの画像で、SSDのテンプレート画像である。矢印712は、検知マークの探索領域画像709と検知マークのテンプレート画像710との画像相互相関処理において、テンプレート画像を走査させてSSDを計算する処理の行われる方向を図示したものである。SSDの結果、相違度が最小の位置において、その相違度が所定値以下であれば検知対象の検知マークが検知マーク位置にあると判定し、相違度が所定値より大きい場合は検知対象の検知マークは検知マーク位置にはないと判定する。このように、予め設定されているテンプレート画像と、読み取られたテストパターンの画像とが比較されて、記録ヘッドとテストパターンとの間の相対的な位置関係の確認が行われる。
【0076】
図8は、本実施形態に係る、吐出の良好でない状態にある吐出口についての有無の検出処理において、縁無し記録のテストパターンの全ての検知マークを検出する処理と、テストパターンの両端部を検出する処理を説明するための図である。
【0077】
読取画像800は、スキャナ部で、テストパターン領域を読み取った読取画像を示す。読取画像800は、カラー画像でRGB各チャンネル16ビットの画像である。記録媒体外領域802は、記録媒体の外側を読取った画像領域で、スキャナの読取位置に対向する部材を読み取った結果である。本実施形態では、センサに対向する部材は、スキャナのキャリブレーションに使用するキャリブレーションローラである。読み取り時、読取位置に対向するキャリブレーションローラの領域は黒い部材の領域のため、記録媒体外領域802は、輝度の低い領域になる。テストパターン領域803は、検知マークを検出した領域周囲を拡大した図である。テストパターン領域804は、テストパターン左端領域を拡大した図である。テストパターン領域805は、テストパターン右端領域を拡大した図である。検知マーク検出位置806は、先述した一つの検知マークを検出する処理で、検出した検知マーク位置を示す。
【0078】
すべての検知マークを検出する処理について説明する。矢印807は、隣接する検出済みの白抜きの検知マーク位置に基づき、それに続く検知マークを検出する処理を示したものである。検知マークを検出する処理は、検知済みの検知マーク位置に基づき、検出対象検知マーク位置の所定領域を検知マークの探索領域画像とし、あらかじめ保持している検知マークの画像をテンプレート画像として、画像相互相関処理によって行われる。画像相関処理の詳細は、図7の説明で述べた1つの検知マークを検出する処理と同様である。SSDの結果、相違度が最小の位置において、その相違度が所定値以下であれば検知対象の検知マークは検知マーク位置にあると判定し、相違度が所定値より大きい場合は検知対象の検知マークは検知マーク位置にはないと判定する。検知マークの検出では、本実施形態においては検知マーク検出位置806から、図8に示すテストパターン左方向に検出処理を繰り返す。SSDの結果、相違度が所定値より大きく検知マーク位置ではないと判定した場合、順次行われている検知マークの検出処理を終了する。次に、検知マーク検出位置806から、テストパターンの右方向へ順次検知マークの検出処理を繰り返す。SSDの結果、相違度が所定値より大きく検知マーク位置ではないと判定した場合、順次行われている検知マークの検出処理を終了する。次に、検知マーク検出位置806から、下方のテストパターン検知マークの検出を行い、同様に左方向の検知マークの検出、右方向の検知マークの検出を繰り返す。
【0079】
次に、パターン両端部を検出する処理について説明する。パターン両端部の検出は、後述する吐出の良好でない状態にある吐出口の解析処理において、記録されたテストパターンについて解析する際に、解析する範囲を決めるために行われる。まず、インクジェット記録装置が、縁無し記録によって記録が行われる縁無し記録モードに設定されている場合について説明する。パターン両端部の検出では、テストパターンの記録が記録媒体に縁無し記録によって行われているため、記録媒体の端部を検出すればよい。パターン左端部の検出について説明する。テストパターン804の矢印808は、検出した左端の検知マークの位置からパターン左端部の検出領域を判断する処理を示す。パターン左端部の検出領域は、記録媒体外領域802と記録媒体の紙白領域を含む領域である。グラフ809は、パターン左端部の検出領域の輝度値を記録媒体の搬送方向に加算平均した平均輝度値を図示したものである。Y軸811は輝度を示し、X軸812は、平均画素位置を示す。平均画素間隔813は、スキャナの読取りの1画素の間隔に対応する。輝度閾値814は、パターン端部を判定する際に用いられる閾値である。パターン端部の判定は、平均輝度と閾値とが交差する近傍の平均画素位置で判定する。グラフ809では、パターン端部画素位置815をパターン左端部として検出する。
【0080】
パターン右端部の検出は、パターン左端部と同様に行われる。グラフ810では、パターン端部画素位置816をパターン右端部として検出する。
【0081】
このように、インクジェット記録装置200は、縁無し記録モードで記録を行う際に使用される吐出口からのインクの吐出によって記録される縁無しテストパターンの両端部の位置を検出する縁無しテストパターン端部検出手段を有している。本実施形態では、CPU201が、縁無しテストパターン端部検出手段として機能する。そして、本実施形態では、縁無しテストパターンの形成された領域で、吐出口列の配列方向に沿って、それぞれの位置での輝度値が検出される。そして、そこで検出された輝度値が予め設定されている輝度値についての閾値を下回った部分が、縁無しテストパターン外部の領域として認識される。これにより、縁無しテストパターン外部の領域について位置が特定され、縁無しテストパターンの端部の位置が検出される。
【0082】
次に、インクジェット記録装置が、縁有り記録によって記録が行われる縁有り記録モードに設定されている場合について説明する。図9は、本実施形態に係る、吐出の良好でない状態にある吐出口についての有無の判断処理において、縁有り記録のテストパターンについてのパターン端部位置の検出処理を説明するための図である。図8の説明では、縁無し記録のテストパターンの処理について述べたが、ここでは記録範囲の幅より記録媒体の幅が大きい場合の縁有り記録のテストパターンの処理について説明する。
【0083】
図9の読取画像900に、スキャナ部によって読み取られたテストパターン領域についての読取画像が示されている。読取画像900は、カラー画像でRGB各チャンネル16ビットの画像である。記録媒体外領域902は、記録媒体の外側を読取った画像領域である。本実施形態では、キャリブレーションローラは、センサに対向する位置に配置されている。スキャナによる記録画像の読み取りの際には、キャリブレーションローラ上に記録媒体が配置され、記録媒体の紙白部分とキャリブレーションローラとの間の輝度の差が明瞭になる。スキャナによる記録画像の読み取りの際には、読取位置に対向するキャリブレーションローラの領域が黒い部材によって形成されているため、記録媒体外領域902は記録媒体の紙白部分に比べ輝度の低い領域になる。
【0084】
テストパターン領域903は、検知マークを検出する領域周囲を拡大した図である。テストパターン領域904は、テストパターン左端領域を拡大した図である。テストパターン領域905は、テストパターン右端領域を拡大した図である。
【0085】
検知マークの検出は、図8で述べた方法と同様に検出することができる。
【0086】
なお、本実施形態では、図9に示されるテストパターンの最も右側に形成されている白抜きの検知マークについては、記録ヘッドとテストパターンとの間の相対的な位置関係の確認には用いられていない。これは、テストパターンの端部付近では、テンプレート画像と読み取られたテストパターンの画像との比較の際に、テストパターン外側における記録媒体の紙白部分からのノイズが含まれてしまうので、位置関係の確認の際の信頼性が低くなるからである。また、テストパターンの端部に関しては、テストパターンの端部位置が、テストパターンの部分と紙白の部分との間の輝度の差によってより正確な位置が検出されるので、端部位置を直接用いた方が正確である。従って、テストパターンの端部に近い位置に形成されている白抜きの検知マークは、記録ヘッドとテストパターンとの間の相対的な位置関係の確認の際に用いられなくても良い。
【0087】
次にパターン両端部を検出する処理を説明する。パターン両端部の検出は、後述する吐出の良好でない状態にある吐出口についての解析処理で、記録されたテストパターンの全域を解析するために、パターンにおける記録媒体の幅方向への両方の端部を検出する処理である。ここでは、パターン両端部の検出は、テストパターンを記録媒体に縁有り記録をしているため、テストパターンの端部を検出すればよい。
【0088】
テストパターンの検出における一例として、図におけるテストパターン左端部の検出について説明する。グラフ906は、パターン左端部の検出した左端の検知マーク位置に基づき、パターン端部領域の輝度値を記録媒体の搬送方向に加算平均した平均輝度値を図示したものである。Y軸908は輝度を示し、X軸909は、平均画素位置を示す。平均画素間隔910は、スキャナの読取りの際の画素同士の間隔に対応し、一つの間隔の長さである。輝度閾値911は、パターン端部を判定するための閾値である。パターン端部の判定は、平均輝度と閾値とが交差する近傍の平均画素位置で判定する。グラフ906では、パターン端部画素位置912をパターン左端部として検出する。
【0089】
パターン右端部の検出については、パターン左端部の際の検出と同様に行われる。グラフ907では、パターン端部画素位置913をパターン右端部として検出する。
【0090】
このように、インクジェット記録装置200は、縁有り記録モードで記録を行う際に使用される吐出口からのインクの吐出によって記録される縁有りテストパターンの両端部の位置を検出する縁有りテストパターン端部検出手段を有している。本実施形態では、CPU201が、縁有りテストパターン端部検出手段として機能する。そして、本実施形態では、縁有りテストパターンの形成された領域で、吐出口列の配列方向に沿ってそれぞれの位置での輝度値が検出される。そして、そこで検出された輝度値が、予め設定されている輝度値についての閾値を超えた部分について、縁有りテストパターン外部の領域として認識される。これにより、縁有りテストパターン外部の領域について位置が特定され、縁有りテストパターンの端部の位置が検出される。
【0091】
図10は、本実施形態に係る吐出の良好でない状態にある吐出口の有無についての検出処理において、吐出の良好でない状態にある吐出口が存在する場合の、その吐出口の検出処理について説明するための図である。テストパターン1000は、K(ブラック)の記録ヘッドのテストパターンである。記録ヘッド1001は、K(ブラック)の記録ヘッドの一部を拡大した図である。記録ヘッド1001は、吐出口列1002と吐出口列1003の2列の吐出口列で構成している。吐出口1004は、正常にインクを吐出する吐出口を示している。吐出口1005は、吐出状態の良好でない吐出口を示している。吐出の良好でない状態にある吐出口についての検出領域1006は、吐出口列1002についての吐出の良好でない状態にある吐出口を検出するパターン領域である。
【0092】
図示されるように、吐出口列1002には、吐出の良好でない状態にある吐出口1005があるため、記録したパターンには白スジが発生する。吐出の良好でない状態にある吐出口の検出領域1007は、吐出口列1003における吐出の良好でない状態にある吐出口を検出するためのパターン領域である。
【0093】
吐出の良好でない状態にある吐出口についての解析処理について説明する。
【0094】
インクジェット記録装置200は、予め検出されているテストパターンにおける両端部の間の領域に記録されているテストパターンから、テストパターンにおける画素を形成するインクを吐出する吐出口について、インクの吐出状態の検出が行われる。縁無し記録モードに設定されている場合には、予め検出された縁無しテストパターンの両端部の間の領域に記録され、縁無しテストパターンにおける画素を形成するインクを吐出する吐出口について、インクの吐出状態の検出が行われる。このように、インクジェット記録装置200は、縁無しテストパターンからインクの吐出状態の検出を行う縁無し記録吐出状態検出手段を有している。本実施形態では、CPU201が、縁無しテストパターンからインクの吐出状態の検出を行う縁無し記録吐出状態検出手段として機能している。一方、縁有り記録モードに設定されている場合には、予め検出された縁有りテストパターンの両端部の間の領域に記録され、縁有りテストパターンにおける画素を形成するインクを吐出する吐出口について、インクの吐出状態の検出が行われる。このように、インクジェット記録装置200は、縁有りテストパターンからインクの吐出状態の検出を行う縁有り記録吐出状態検出手段を有している。本実施形態では、CPU201が、縁有りテストパターンからインクの吐出状態の検出を行う縁有り記録吐出状態検出手段として機能している。
【0095】
インクの吐出状態の検出が行われる際には、解析処理は、テストパターンが読み取られた読取画像から、吐出の良好でない状態にある吐出口の有無が解析される。本実施形態では、検出領域内でのテストパターンにおける輝度値に基づき、吐出の良好でない状態にある吐出口の有無が解析される。インクジェット記録装置200は、記録ヘッドの吐出口配列の解像度よりもスキャナの読取解像度の方が、解像度が低い構成である。そのため、吐出の良好でない状態にある吐出口の有無の判定では、1吐出口単位ではなく、複数の吐出口を含む吐出口領域が特定され、その領域の複数の吐出口の単位についてインク吐出の良好でない状態の吐出口の有無の判定が行われている。なお、本実施形態では記録ヘッドの吐出口配列の解像度よりスキャナの読取解像度が低い構成としたが、吐出口配列の解像度よりスキャナの読取解像度が高い構成が採用されても良い。また、後述する吐出の良好でない状態にある吐出口についての解析処理において、1吐出口単位で吐出口が特定されてもよい。
【0096】
吐出の良好でない状態にある吐出口についての解析は、読取画像のRGBチャンネルのいずれか1つのチャンネル情報を用いて行う。解析するチャンネルは、各テストパターンの読取画像における記録ヘッド色の輝度が最も低くなるチャンネルとすればよい。例えば、C(シアン)であれば、読取画像においてRチャンネルの輝度が最も低くなるため、Rチャンネルを解析すればよい。
【0097】
グラフ1010は、検出した検知マーク位置に基づいて、読取画像における吐出の良好でない状態にある吐出口についての検出領域1006の輝度値を、記録媒体の搬送方向に加算平均した平均輝度値を図示したものである。Y軸1011は輝度値を示し、X軸1012は平均画素位置を示す。平均画素間隔1013は、スキャナの読取りの際の画素同士の間隔に対応し、一つの間隔の長さである。輝度閾値1014は、平均輝度値に基づき吐出の良好でない状態にある吐出口からのインク吐出による画素を判定するための閾値である。グラフ1010では、画素1015を吐出の良好でない状態にある吐出口からのインクによる画素と判定している。本実施形態の検出処理では、吐出の良好でない状態にある吐出口からのインクによる画素に対応する複数の吐出口を含む領域を、吐出の良好でない状態にある吐出口の領域とする。
【0098】
図11は、テストパターンにおいて、位置基準検知マークの配置の一例について説明するための図である。図11には、記録媒体1100にロール紙を用いて、記録媒体1100に、吐出の良好でない状態にある吐出口の有無についての検出処理のためのテストパターン1106を記録する例が示されている。記録ヘッドユニット1101は、複数の記録ヘッドを備える。記録ヘッドユニット1101は、図3で説明した記録ヘッドユニットと同じである。
【0099】
記録ヘッドの主走査移動1102は、記録ヘッドユニット1101の主走査の際における移動方向を示すものである。ヘッド主走査移動1102の詳細については、図3で説明したヘッド主走査移動と同じである。テストパターン領域1108は、記録媒体に記録される領域で、縁無し記録が行われる際に吐出の良好でない状態にある吐出口の有無についての解析の対象となる領域を示す。
【0100】
記録媒体外のテストパターン領域1107、1109は、記録ヘッドの主走査移動方向において、記録媒体外のテストパターン領域で、記録媒体への記録の行われない領域である。図11に示されるように、テストパターンの一部は記録媒体の外部に形成されても良い。これにより、テストパターンと、テストパターンのそれぞれの画素を形成する吐出口との間の相対的な位置関係をより正確に認識することができる。
【0101】
記録ヘッドのヘッド位置基準検知マークについて説明する。記録媒体に少なくとも1つ以上のヘッド位置基準検知マークがテストパターン内に記録されるように、テストパターンにヘッド位置基準検知マークが配置される。このとき、使用される記録媒体幅と、移動し得る記録ヘッドの主走査方向に沿う位置の間の組み合わせは、どのような組み合わせであっても良い。本実施形態では、図11に示されるように、記録ヘッドの幅に対応する記録可能範囲にヘッド位置基準検知マーク1110、1111、1112の3つのヘッド位置基準検知マークが配置されている。3つのヘッド位置基準検知マークの識別は、ヘッド主走査方向に連続するヘッド位置基準検知マークの個数で識別する。ヘッド位置基準検知マークのそれぞれを識別することで、それぞれのヘッド位置基準検知マークの位置を特定することができ、それぞれのヘッド位置基準検知マークを形成する吐出口を特定することができる。
【0102】
第1のヘッド位置基準検知マーク1110は、ヘッド位置1103に対応するヘッド位置基準検知マークである。第1のヘッド位置基準検知マーク1110は、ヘッド位置基準検知マークを1つ配置したもので、マークの中心が基準位置である。
【0103】
第2のヘッド位置基準検知マーク1111は、ヘッド位置1104に対応するヘッド位置基準検知マークである。第2のヘッド位置基準検知マーク1111は、ヘッド位置基準検知マークをヘッド主走査方向に2つ連続して配置したもので、左側のマークの中心が基準位置である。
【0104】
第3のヘッド位置基準検知マーク1112は、ヘッド位置1105に対応するヘッド位置基準検知マークである。第3のヘッド位置基準検知マーク1112は、ヘッド位置基準検知マークをヘッド主走査方向に3つ連続して配置したもので、中央のマークの中心が基準位置である。ヘッド位置基準検知マークの検出処理は後述する、図12の説明で詳細に述べる。
【0105】
図12は、本実施形態に係る吐出の良好でない状態にある吐出口についての補完処理において、記録ヘッドのヘッド位置基準検知マークを検出する処理を説明するための説明図である。
【0106】
テストパターン1200は、K(ブラック)の記録ヘッドのテストパターンである。ヘッド位置基準検知マーク1201は、テストパターン1200のヘッド位置基準検知マーク位置を拡大した図である。検知マーク1202は、テストパターン1200の検知マーク位置を拡大した図である。
【0107】
ヘッド位置基準検知マークを検出する処理について説明する。ヘッド位置基準検知マークの検出は、検出した検知マークの白抜き領域のRGB各チャンネルの輝度値に基づき検出する。ヘッド位置基準検知マークは、検知マークの白抜き領域をY(イエロー)でベタ記録しているため、検出の判断は、ベタ記録領域のBチャンネルの輝度値が所定値以下であるか否かで行う。平均輝度領域1203は、ヘッド位置基準検知マーク領域の記録媒体の搬送方向の平均輝度値を示す。平均輝度領域1204は、検知マーク領域の記録媒体の搬送方向の平均輝度値を示す。
【0108】
グラフ1207〜1209は、平均輝度領域1203の輝度値を図示したもので、1207がRチャンネル、1208がGチャンネル、1209がBチャンネルの輝度値を示す。グラフ1210〜1212は、平均輝度領域1204の輝度値を図示したもので、1210がRチャンネル、1211がGチャンネル、1212がBチャンネルの輝度値を示す。各グラフ、Y軸1205は輝度値を示し、X軸1206は平均画素位置を示す。
【0109】
閾値1213は、平均輝度領域が紙白領域かY(イエロー)のベタ記録領域であるかを判定する輝度値の閾値である。ヘッド位置基準検知マークの検出は、グラフ1208に示すGチャンネルの平均輝度値で閾値1213以上の値となる領域があり、グラフ1209に示すBチャンネルの平均輝度値で閾値1213以上の値となる領域がないことで検出する。検知マークの検出は、グラフ1208に示すGチャンネルの平均輝度値で閾値1213以上の値となる領域があり、グラフ1209に示すBチャンネルの平均輝度値で閾値1213以上の値となる領域があることで検出する。
【0110】
図13は、本実施形態に係る吐出の良好でない状態にある吐出口についての補完処理において、吐出の良好でない状態にある吐出口周囲の所定範囲の吐出口を補完する処理について説明するための図である。図13を用いて、吐出の良好でない状態にある吐出口の有無についての検出処理において検出された吐出の良好でない状態にある吐出口領域1301の補完処理を行う例について説明する。テストパターン1300は、K(ブラック)の記録ヘッドのテストパターンである。
【0111】
まず、吐出の良好でない状態にある吐出口についての補完処理では、ヘッド位置基準検知マーク1302を検出する。次に吐出の良好でない状態にある吐出口領域1301に近接する検知マークを検出する。ここでは、吐出の良好でない状態にある吐出口領域の位置と検出済みの検知マーク位置に基づき、吐出の良好でない状態にある吐出口領域1301に最も近い検知マーク1303を検出する。次に、検知マーク1303の記録ヘッドにおける吐出口位置を特定する。検知マーク1303は、ヘッド位置基準検知マーク1302から検知マーク3つ分の間隔があるので、ヘッド位置基準検知マークの吐出口位置をNとして、それぞれの検知マーク間の距離がM吐出口とすると、検知マーク1303の吐出口位置はN+(M×3)となる。次に吐出の良好でない状態にある吐出口領域の記録ヘッド内における吐出口位置を特定する。読取画像において、吐出の良好でない状態にある吐出口領域と近接する検知マーク1303の距離がL画素とする。それぞれの画素間の距離がK吐出口に対応すると、吐出の良好でない状態にある吐出口領域の記録ヘッドにおける吐出口位置1307は、N+(M×3)+(L×K)となる。本実施形態では、Lは負の値になる。次に、特定した吐出の良好でない状態にある吐出口領域の吐出口周囲の所定量吐出口の補完処理を行う。補完処理は、特定した吐出口位置にずれがある可能性があるため、特定した吐出口のみの補完処理を行うのではなく所定量の吐出口について補完処理を行う。ずれの原因としては、本実施形態では、解析する読取画像の解像度が吐出口列の配列の解像度より低いことが挙げられる。読取画像の解像度が低いため、吐出の良好でない状態にある吐出口の有無についての検出処理で検出された吐出口の位置を1吐出口単位で特定できない。そのため、吐出の良好でない状態にある吐出口を含む周辺の吐出口の領域が検出されることになる。また、スキャナ読み取り時の諸収差の影響で、読取画像が記録ヘッドの主走査方向に歪んでいる可能性についても挙げられる。補完処理を行う所定量を13吐出口とすると、吐出口位置N+(M×3)+(L×K)−6の吐出口から、N+(M×3)+(L×K)+6の吐出口までの補完処理の対象吐出口1310についての補完処理を行うことになる。
【0112】
以上のように、本実施形態では、予め縁有り記録モードが設定されている際には、縁有り記録に対応したテストパターンが記録される。また、縁無し記録モードが設定されている際には、縁無し記録に対応したテストパターンが記録される。そして、縁無し記録モードが設定されている際には、記録媒体の紙白部分と記録媒体の外側部分(キャリブレーションローラ)との間の輝度の差によって、テストパターンの端部が検出される。具体的には、一般的に記録媒体の紙白部分の方が輝度が高いため、予め設定されている輝度についての閾値よりも輝度の高い部分をテストパターン領域として端部位置を検出する。また、縁有り記録モードが設定されている際には、テストパターンの部分と、記録媒体の紙白部分との間の輝度の差によってテストパターンの端部が検出される。具体的には、一般的に記録媒体の外部の方が輝度が低いので、予め設定されている輝度値についての閾値を下回った部分をテストパターン外部の領域として認識し、テストパターンの端部位地が検出される。そして、検出されたテストパターンの端部の間の領域について、吐出口からのインク吐出の状態についての検知が行われる。
【0113】
従って、縁有り記録モードの場合及び縁無し記録モードの場合のいずれの場合においても、記録モードに対応したテストパターンの端部の間の領域について吐出口からのインク吐出の状態についての検知が行われる。従って、記録の際に用いられる領域以外の吐出口について、吐出口からのインク吐出の状態の検知が不必要な部分に無駄に行われることが抑えられる。また、記録に用いられる吐出口であるにもかかわらず、吐出口からのインク吐出の状態の検知が行われないまま、記録が行われることが抑えられる。
【0114】
このように、検知処理の不必要な領域に形成された吐出口についての、インク吐出の状態についての検知が無駄に行われることが抑えられるので、検知処理のために必要とされる時間を短縮させることができる。従って、インクジェット記録装置の使用の際の、ユーザーの煩わしさを少なく抑えることができる。また、記録の際に使用される吐出口については、吐出口からのインク吐出の状態の検知がより確実に行わるので、インク吐出の状態が良好でない状態で吐出口からインク吐出が行われることがより少なく抑えられる。これにより、記録画像の品質を高く維持することができる。
【0115】
なお、上記実施形態では、記録媒体は記録の行われる面が白色のものが用いられたが、本発明はこれに限定されない。記録媒体の外部の領域との間の輝度の差及びテストパターンとの間で輝度の差が検出されるのであれば、記録媒体は白色でなくても良い。また、キャリブレーションローラは、記録媒体との間の輝度の差が検出されるのであれば、黒色でなくても良い。
【0116】
なお、本明細書において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わずに用いられる。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または記録媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0117】
また、「記録装置」とは、プリンタ、プリンタ複合機、複写機、ファクシミリ装置などのプリント機能を有する装置、ならびにインクジェット技術を用いて物品の製造を行なう製造装置を含む。
【0118】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものである。記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【符号の説明】
【0119】
106 記録ヘッド
200 インクジェット記録装置
305、401、1000、1106、1200、1300 テストパターン
410、1110、1111、1112 ヘッド位置基準検知マーク
411、 検知マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送しながら、記録媒体の搬送方向に交差する方向に沿って記録媒体の全域に亘って記録可能に配列された複数の吐出口から、記録媒体にインクを吐出して記録を行い、記録媒体における前記吐出口の配列された配列方向の縁部に余白を形成しつつ記録を行う縁有り記録と、前記配列方向の縁部に余白を設けずに記録を行う縁無し記録とを行うことが可能なインクジェット記録装置であって、
前記縁有り記録によって記録を行う縁有り記録モードまたは前記縁無し記録によって記録を行う縁無し記録モードから記録を行う際の記録モードを設定する記録モード設定手段と、
前記縁有り記録モードで記録を行う際に使用される吐出口からのインクの吐出によって記録される縁有りテストパターンの両端部の位置を検出する縁有りテストパターン端部検出手段と、
前記縁無し記録モードで記録を行う際に使用される吐出口からのインクの吐出によって記録される縁無しテストパターンの両端部の位置を検出する縁無しテストパターン端部検出手段と、
前記縁有りテストパターン端部検出手段によって検出された前記縁有りテストパターンの両端部の間の領域に記録され、前記縁有りテストパターンにおける画素を形成するインクを吐出する吐出口について、前記縁有りテストパターンからインクの吐出状態の検出を行う縁有り記録吐出状態検出手段と、
前記縁無しテストパターン端部検出手段によって検出された前記縁無しテストパターンの両端部の間の領域に記録され、前記縁無しテストパターンにおける画素を形成するインクを吐出する吐出口について、前記縁無しテストパターンからインクの吐出状態の検出を行う縁無し記録吐出状態検出手段と
を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
記録媒体における記録の行われる面は白色であって、
前記縁有りテストパターン端部検出手段は、前記縁有りテストパターンの形成された領域で前記配列方向に沿ってそれぞれの位置での輝度値を検出し、検出された輝度値が予め設定されている輝度値についての閾値を超えた部分を前記縁有りテストパターン外部の領域として認識して、前記縁有りテストパターンの端部の位置を検出し、
前記縁無しテストパターン端部検出手段は、前記縁無しテストパターンの形成された領域で前記配列方向に沿ってそれぞれの位置での輝度値を検出し、検出された輝度値が、予め設定されている輝度値についての閾値を下回った部分を前記縁無しテストパターン外部の領域として認識して、前記縁無しテストパターンの端部の位置を検出することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記記録モード設定手段によって設定された記録モードに応じて、前記縁有りテストパターンまたは前記縁無しテストパターンとから記録媒体に記録するテストパターンを選択するテストパターン選択手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−158067(P2012−158067A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18947(P2011−18947)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】