説明

インクジェット記録装置

【課題】2つの記録ヘッド列に対して混色させることなくワイピング可能であって、そのワイピング機構とともに全体を簡素化及び小型化する。
【解決手段】インクジェットヘッド21,22が前後方向で並行に2列配置され、それらに付着しているインクを拭き取るワイピング機構42は、1つのピニオン59と、これに噛み合うラック72,82を介して前後方向に往復移動する第1、第2移動フレーム53,54と、これらにそれぞれ揺動可能に支持されるとともに、揺動部分にノズル面20aを摺接可能な第1、第2ワイピングブレード63,93と、左右方向に突出するカムフォロア部64,94とを設けた第1、第2揺動フレーム52,55と、各カムフォロア部64,94を嵌入し、第1、第2移動フレーム53,54の往復移動に対応して第1、第2揺動フレーム52,55の揺動を規制する第1溝カム56及び第2溝カム57と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドクリーニング時にノズル面のインクのワイピングを行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置において、記録ヘッドのクリーニング工程の一つとして、ノズル面に付着したインクを拭き取るいわゆるワイピングがある。このワイピングは一般的に、薄板形状のワイピングブレードの縁部をノズル面に摺接させてインクを拭き取る作業となる。
【0003】
例えば特許文献1には、直列に配列した複数の記録ヘッドをメンテナンス装置上のメンテナンス位置に配置させ、その直列方向に沿ったワイピングブレードの縁部を当該直列方向に直交する方向で移動させて各記録ヘッドのノズル面に摺接させる構成が開示されている。これにより、直列に配列した各記録ヘッドのノズル面にそれぞれ異なるインクが付着している場合でも、インクを混色させることなく同時かつ迅速にワイピングできる。
【0004】
また、記録ヘッド列を移動させるキャリッジには、上下動させる機構がない。したがって、インクを拭き取った後のワイピングブレードを元の位置に戻す際には、インクの再付着を防ぐためにその縁部を各ノズル面から下方に離間させつつ移動させる必要がある。このため、当該従来技術には、ワイピングブレードを上下に揺動させる上下基板と、当該上下基板を揺動可能に支持しつつ前後移動させる移動基板と、さらに移動基板の移動位置に対応して上下基板の上下位置を規制するカム板とを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−35658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年のインクジェット記録装置では、いわゆるYMCKの4色の他にも大量の白インクを使用する。このため、上記YMCKの4色に対応する4つの記録ヘッドをまとめた1組目の記録ヘッド列の他に、白色に対応する複数の記録ヘッドだけをまとめた2組目の記録ヘッド列をさらに設け、それら2組の記録ヘッド列を個別に移動駆動させる場合が多い。
【0007】
これに対し、各記録ヘッド間のインクの混色を避けつつワイピングするために、当該2組の記録ヘッド列のそれぞれに対応して上記従来技術のワイピング機構を2つ設けることが考えられるが、その場合には部品点数が倍増するとともにインジェット記録装置全体が大型化してしまう。また、例えば2組の記録ヘッド列を直列に並べて上記従来技術のように1つのワイピングブレードで同時にワイピングする構成も考えられるが、この場合でもワイピング機構を含むメンテナンス装置全体がほぼ2倍に大型化してしまう。
【0008】
本発明の目的は、2つの記録ヘッド列に対して一方側の記録ヘッド列のノズル面を拭き取った後に、ワイピングブレードで拭き取ったインクが他方側の記録ヘッド列のノズル面に再度付着しないようにワイピング可能であって、そのワイピング機構とともに全体の簡素化及び小型化が可能なインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明は、メンテナンス位置に配置させた記録ヘッド列に対し、それぞれのノズル面に付着しているインクを拭き取るワイピング手段を備えたインクジェット記録装置であって、前記記録ヘッド列は、前記メンテナンス位置において並行に2列配置され、前記ワイピング手段は、1つのモータにより所定の回転角範囲で正転と逆転を切り替えて回転駆動される1つのピニオンと、それぞれ前記ピニオンに噛み合うラックを介して、前記2列の記録ヘッド列の並列方向に対し所定範囲を往復可能に移動する第1移動フレーム及び第2移動フレームと、前記第1移動フレーム及び前記第2移動フレームにそれぞれ対応して揺動可能に支持されるとともに、それぞれの揺動部分に、前記2列の記録ヘッド列に個別に対応して各ノズル面に摺接可能なワイピングブレードと、前記2列の記録ヘッド列の直列方向に突出するカムフォロア部とを設けた第1揺動フレーム及び第2揺動フレームと、前記第1揺動フレーム及び前記第2揺動フレームにそれぞれ対応して前記カムフォロア部を嵌入し、前記第1移動フレーム及び前記第2移動フレームのそれぞれの往復移動に対応して前記第1揺動フレーム及び前記第2揺動フレームの揺動を規制する第1溝カム及び第2溝カムと、を備えていることを特徴とする。
【0010】
本願第1発明においては、メンテナンス位置において記録ヘッド列を並行に2列配置する。各列における記録ヘッド同士、又は各記録ヘッド列同士がそれぞれ異なる色のインクを付着しているものとして、ワイピング手段はそれらインクを混色させずにそれぞれのノズル面を拭き取る必要がある。また、各記録ヘッド列同士が同色のインクを使用している場合であっても、一方側の記録ヘッド列のノズル面を拭き取った後に、ワイピングブレードで拭き取ったインクが他方側の記録ヘッド列のノズル面に再度付着することは好ましくない。このため、2つのワイピングブレードを各記録ヘッド列に個別に対応させて設け、それぞれを並列方向(記録ヘッド列の列が並ぶ方向)で移動させて対応する記録ヘッド列のノズル面を拭き取らせる必要がある。
【0011】
本願第1発明では、1つのモータにより回転駆動される1つのピニオンに対し、それぞれラックを介して第1移動フレーム及び第2移動フレームがそれぞれ上記並列方向に移動する。上記ピニオンは、所定の回転角範囲で正転と逆転を切り替えて回転駆動されることで、第1移動フレーム及び第2移動フレームは上記並列方向における所定範囲を往復動する。上記2つのワイピングブレードをそれぞれ個別に設けた第1揺動フレーム及び第2揺動フレームが、上記第1移動フレーム及び上記第2移動フレームにそれぞれ対応して揺動可能に支持されている。各ワイピングブレードは、第1揺動フレーム及び第2揺動フレームのそれぞれの揺動部分に設けられている。また、第1揺動フレーム及び第2揺動フレームのそれぞれの他の揺動部分には、直列方向(記録ヘッド列の各列の方向)に突出するカムフォロア部も設けられている。各カムフォロア部は、それぞれ個別に対応する第1溝カム及び第2溝カムに嵌入されている。これら第1溝カム及び第2溝カムは、各カムフォロア部を介して上記第1移動フレーム及び上記第2移動フレームのそれぞれの往復移動に対応して、上記第1揺動フレーム及び上記第2揺動フレームにそれぞれ設けられたワイピングブレードの揺動を規制する。
【0012】
これにより本願第1発明は、並行に2列設けた記録ヘッド列のそれぞれに個別に対応させて設けた2つのワイピングブレードを、1つのモータの駆動により連動させて一方側の記録ヘッド列のノズル面を拭き取った後に、ワイピングブレードで拭き取ったインクが他方側の記録ヘッド列のノズル面に再度付着しないように並列方向にワイピングできる。この結果、ワイピング手段とともにインクジェット記録装置全体の簡素化及び小型化が可能となる。
【0013】
第2発明は、上記第1発明において、前記第1揺動フレーム及び前記第2揺動フレームの少なくともいずれか一方は、前記第1移動フレーム及び前記第2移動フレームからの支持点に対して偏重しており、対応する第1溝カム及び第2溝カムは、前記偏重を利用して前記第1揺動フレーム及び前記第2揺動フレームを揺動させる偏重作動溝部を設けていることを特徴とする。
【0014】
本願第2発明においては、第1移動フレーム及び第2移動フレームが所定範囲を往復動する際に、第1揺動フレーム及び第2揺動フレームのいずれかのカムフォロア部が対応する第1溝カム及び第2溝カムの偏重作動溝部に到達することで、対応する第1揺動フレーム及び第2揺動フレームの偏重により自動的に揺動する。これにより、専用のモータなどを含む特別な駆動機構を必要とせずに、第1揺動フレーム及び第2揺動フレームを揺動させてワイピングブレードの上下動を制御できる。
【0015】
第3発明は、上記第1又は第2発明において、前記第1揺動フレーム及び前記第2揺動フレームの少なくともいずれか一方の前記カムフォロア部はその突出方向に付勢されており、対応する第1溝カム及び第2溝カムは、その溝底に段差を設けて前記付勢により前記カムフォロア部の進行方向を不可逆的に規制する不可逆進行溝部を設けていることを特徴とする。
【0016】
本願第3発明においては、第1溝カム及び第2溝カムがその経路溝の側面で各カムフォロア部の上下位置を規制するとともに、溝底の段差で突出方向に付勢されたカムフォロア部の進行経路を不可逆的に規制する不可逆進行部を設けている。この不可逆進行部の導出側にカムフォロア部を誘導する他の経路を設けることで、第1移動フレーム及び第2移動フレームの往路と復路とでカムフォロア部を異なる進行経路に誘導できる。
【0017】
第4発明は、上記第3発明において、第1溝カム及び第2溝カムは、前記不可逆進行溝部を用いて、前記第1移動フレーム及び前記第2移動フレームの往路と復路とで前記第1揺動フレーム及び前記第2揺動フレームの揺動角度を異ならせるよう構成されていることを特徴とする。
【0018】
本願第4発明においては、第1溝カム及び第2溝カムが不可逆進行溝部を用いて、第1移動フレーム及び第2移動フレームの往路と復路とで各カムフォロア部の上下位置を異ならせる、つまり巡回する軌跡の進行経路に誘導する。これにより、往路と復路とで前記第1揺動フレーム及び前記第2揺動フレームの揺動角度が異なり、それぞれのワイピングブレードの往路と復路のいずれか一方で記録ヘッド列のノズル面に摺接させ、他方で離間させることができる。この結果、ノズル面に対してワイピングブレードを(往復両方向ではなく)一方向だけでインクを拭き取らせることができ、他方向での再付着を防ぐことができる。
【0019】
第5発明は、上記第4発明において、前記第1移動フレーム及び前記第2移動フレームは、それぞれの前記ラックの歯方向を互いに対向させる配置で前記ピニオンを挟むように噛み合わせることで互いに逆方向に移動し、第1溝カム及び第2溝カムは、それぞれ対応する前記第1揺動フレーム及び前記第2揺動フレームの前記ワイピングブレードが、前記並列方向で前記2列の記録ヘッド列の外側の始点位置から前記2列の記録ヘッド列の内側の終点位置まで移動する往路において、当該ワイピングブレードの先端が対応する前記記録ヘッド列のノズル面より下方に位置するよう前記第1揺動フレーム及び前記第2揺動フレームの揺動角度を規制し、復路において当該ワイピングブレードの先端が対応する前記記録ヘッド列のノズル面を摺接可能な高さに位置するよう前記第1揺動フレーム及び前記第2揺動フレームの揺動角度を規制することを特徴とする。
【0020】
本願第5発明においては、第1移動フレーム及び第2移動フレームが、それぞれのラックの歯方向を互いに対向させる配置でピニオンを挟むように噛み合わせる。これにより、ピニオンの回転方向の切り替えによって、第1移動フレーム及び第2移動フレームにそれぞれ連結する2つのワイピングブレードが、互いに近接するか離間するかのいずれかで逆方向に移動する。
【0021】
本願第5発明では、第1溝カム及び第2溝カムの巡回経路の設定において、いずれも2列の記録ヘッド列の並列方向での外側に2つのワイピングブレードの先端のそれぞれの始点位置を設定し、2列の記録ヘッド列の並列方向での内側に終点位置を設定している。それぞれの始点位置から終点位置まで移動する往路においては、各ワイピングブレードの先端を対応する記録ヘッド列のノズル面より下方に位置させて摺動を回避するよう、第1揺動フレーム及び第2揺動フレームの揺動角度を規制する。また、それぞれの終点位置から始点位置まで移動する復路においては、各ワイピングブレードの先端を対応する記録ヘッド列のノズル面を摺接可能な高さに位置するよう、第1揺動フレーム及び第2揺動フレームの揺動角度を規制する。
【0022】
このように2つのワイピングブレードを対称的に動作させることで、それぞれのワイピング動作を同時に行うことができ、全体の作動時間を短縮できる。また、いずれの記録ヘッド列においても互いの内側から外側に向けてワイピングするため、高速動作でワイピングした際にワイピングブレードが拭き取ったインクが跳ねた場合でも、2列の記録ヘッド列の外側に跳ねるだけであるため互いに汚れるのを防ぐことができる。
【0023】
第6発明は、上記第5発明において、前記第1移動フレーム及び前記第2移動フレームは、前記往路の終点位置で互いに上下方向又は前記直列方向でほぼ重複するよう配置されていることを特徴とする。
【0024】
本願第6発明においては、互いに逆方向に移動する第1移動フレーム及び第2移動フレームが、互いに最も近接する上記往路の終点位置で重複する配置となるようそれぞれの形状、大きさが設定されていることで、ワイピング手段全体を小型化できる。
【0025】
第7発明は、上記第6発明において、前記第1移動フレーム及び前記第2移動フレームは、前記並列方向に沿った2本のガイド軸にそれぞれ摺動可能に支持され、それぞれの支持部が往復動する前記所定範囲で互いに交差しないよう配置されていることを特徴とする。
【0026】
本願第7発明においては、第1移動フレーム及び第2移動フレームがそれぞれ2本のガイド軸で支持される場合と比較して部品点数を削減できるとともに、ワイピング手段全体を小型化できる。
【0027】
第8発明は、上記第7発明において、前記第1移動フレーム及び前記第2移動フレームのそれぞれは、前記2本のガイド軸のそれぞれに対して摺動方向に並ぶ2つの摺動支持部で支持され、前記第1移動フレーム及び前記第2移動フレームは、互いに、その一方の摺動支持部を他方の2つの摺動支持部の間に配置していることを特徴とする。
【0028】
本願第8発明においては、各移動フレームの摺動方向に沿った各ガイド軸ごとの2つの摺動支持部の間隔を短縮化でき、すなわち各移動フレームの摺動方向長さを短く設定できるため、ワイピング手段全体を小型化できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、2つの記録ヘッド列に対して一方側の記録ヘッド列のノズル面を拭き取った後に、ワイピングブレードで拭き取ったインクが他方側の記録ヘッド列のノズル面に再度付着しないようにワイピング可能であって、そのワイピング機構とともに全体を簡素化及び小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態のインクジェット記録装置の外観全体を斜視で表した斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態のインクジェット記録装置の外観全体を上方から見た平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態のインクジェット記録装置の外観全体を前方から見た正面図である。
【図4】メンテナンス装置の外観全体を表す斜視図である。
【図5】第1揺動フレームの外観全体を表す斜視図である。
【図6】第1移動フレームの外観全体を表す斜視図である。
【図7】第2移動フレームの外観全体を表す斜視図である。
【図8】第2揺動フレームの外観全体を表す斜視図である。
【図9】4つのフレーム部材とその他周辺部を組み上げたワイピング機構だけの側面図である。
【図10】図9中の矢視Vから見た平面図である。
【図11】ガイド軸と前後移動する第1移動フレーム、第2移動フレームの配置関係を表す側面図である。
【図12】第1移動フレーム、第2移動フレームが最も離間した配置状態での上記図4に対応するメンテナンス装置の斜視図である。
【図13】第1溝カムの構成を表す図である。
【図14】第1溝カムの規制によって、第1揺動フレームの第1ワイピングブレードの上方縁部が描く軌跡を表す側面図である。
【図15】第1ワイピングブレード、第2ワイピングブレードのそれぞれの上方縁部が描く軌跡の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0032】
本実施の形態のインクジェット記録装置としてのインクジェットプリンタ1について説明する。具体的には、Tシャツ等の布帛を被記録媒体としてインクジェット方式により印刷を行う布帛印刷装置である。図1は、インクジェットプリンタ1の斜視図であり、図2は、インクジェットプリンタ1の平面図であり、図3は、インクジェットプリンタ1の正面図である。なお、当該インクジェットプリンタ1の前方向(図2中の下方向)をZ方向、右方向(図2、図3中の右方向)をX方向、上方向(図3中の上方向)をY方向とし、以下の各図においても対応する方向を付記し適用する。
【0033】
本実施の形態では、インクジェットプリンタ1は、第1インクジェットヘッド21および第2インクジェットヘッド22にそれぞれ対応するインクを供給して、被記録媒体へ印刷を行うインクジェットプリンタである。被記録媒体としてTシャツ等の布帛を扱い、入力された画像情報等に基づいてTシャツ等の布帛への印刷を行う。図1〜図3に示すように、インクジェットプリンタ1は、フレーム及び薄板を結合させて全体が略直方体形状に構成された筐体2を有している。
【0034】
本実施形態におけるインクジェットプリンタ1の記録機構は、周知のインクジェット式記録機構である。当該インクジェットプリンタ1には、第1インクジェットヘッド21と第2インクジェットヘッド22が設けられている。これら2つの第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22は、それぞれ下面にインクを噴射するノズル面20aを備えた4つの記録ヘッド20を左右方向(X方向:直列方向、以下同様)に直列に配列して構成されている。これら第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22を前後方向(Z方向:並列方向)に2列に並列させた配置で搭載したキャリッジ14は、筐体2の左右方向全体に渡って架設されたガイドレール11に沿って左右方向の移動を案内される。キャリッジ14は、ガイドレール11の右端部付近に設けたキャリッジモータ13からプーリ12を介した駆動によって左右方向に往復移動される。なお、上記第1インクジェットヘッド21及び第2インクジェットヘッド22が、それぞれ各請求項記載の記録ヘッド列に相当する。
【0035】
また、図1〜図3に示すように、筐体2の左端部の側面には白色のインクを収納する4つと、CMYK(シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K))の各色のインクを収納する4つの、合計8つのインクカートリッジ31が装着されている。そのうち白色インクを収納している4つのインクカートリッジ31と、上記第1インクジェットヘッド21の4つの記録ヘッド20とがそれぞれインク供給チューブを介して接続されており(図示省略)、インクカートリッジ31内の白インクを第1インクジェットヘッド21の各記録ヘッド20にそれぞれ供給している。また、CMYKの各色のインクを収納している4つのインクカートリッジ31と、上記第2インクジェットヘッド22の4つの記録ヘッド20とがそれぞれインク供給チューブを介して接続されており(図示省略)、インクカートリッジ31内の各色のインクを第2インクジェットヘッド22の各記録ヘッド20に対応付けて供給している。
【0036】
なお、本実施の形態では、インクジェットプリンタ1の左右方向が第1インクジェットヘッド21及び第2インクジェットヘッド22の主走査方向となる。
【0037】
また、筐体2には、インクジェットプリンタ1の前後方向(Z方向;以下同様)に被記録媒体を保持するプラテン5の移動を案内するための送り機構6が設けられている(図2中では省略)。この送り機構6は、ガイドレール7と、当該ガイドレール7の端部に設けられたプラテン搬送モータ8から構成されており、プラテン搬送モータ8の駆動によりプラテン5が前後方向で往復移動する。
【0038】
また、プラテン5は、平面視五角形に形成され、詳細には、長方形状の板体の操作者に対向する側の短辺の中央が突出した形状の五角形であり、その上面に、例えばTシャツなどの布帛からなる被記録媒体を水平に載置するのに適した形状となっている。尚、このプラテン5には、複数の種類があり被記録媒体であるTシャツ等のサイズや形状により使用するプラテン5の種類が決定される。
【0039】
また、図示する例では、ガイドレール11の左側の端部に、第1インクジェットヘッド21及び第2インクヘットヘッド22に対してメンテナンス行うメンテナンス装置40が設けられている。このメンテナンス装置40には、第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22に対し、各記録ヘッド20をそれぞれ後述のキャップで覆うキャッピング機能、各キャップを介してインクを吸引するパージ機能、及び各記録ヘッド20のノズル面20aに付着したインクを拭き取るワイピング機能を備えている。なお、図1〜図3において、メンテナンス装置40は簡略化して示している。
【0040】
キャリッジ14は、ガイドレール11の最も左側(X方向の負側)の端部に位置した際に、第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22をメンテナンス装置40の上方(Y方向の正側)のメンテナンス位置に位置させることができる。このメンテナンス位置において、第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22が前後方向(Z方向:並列方向)に2列に並列させた状態となり、メンテナンス装置40がこの配置状態の第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22に対して上記各メンテナンス機能を作動できる。
【0041】
図4に、このメンテナンス装置40の全体の外観を表す斜視図を示す。この図4において、メンテナンス装置40は、平板を組み合わせて全体を略直方体形状の外郭として構成した筐体41を備えている。この筐体41には、上記ワイピング機能を実行するワイピング機構42が備えられており、当該ワイピング機構42は2本のガイド軸51、第1揺動フレーム52、第1移動フレーム53、第2移動フレーム54、第2揺動フレーム55、第1溝カム56、第2溝カム57、及びワイピング駆動部58(後述の図9参照)を有している。
【0042】
またメンテナンス装置40は、各記録ヘッド20のそれぞれのノズル面20aに装着して上記キャッピング機能を実行するための8つキャップ43が備えられている。これら8つのキャップ43は、第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22のそれぞれの記録ヘッド列に対応して前後方向に2列に並列して配置されている。各キャップ列の上方位置が、第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22のメンテナンス位置となる。
【0043】
上記第1揺動フレーム52の外観全体の斜視図を図5に示す。この図5において、当該第1揺動フレーム52はフレーム本体部61、ブレード保持部62、第1ワイピングブレード63、及びカムフォロア部64を備えている。フレーム本体部61は、前後方向に沿って長く配置された2つの側壁部61aを有しており、それらが左右方向に並列に配置している間を架け渡すように2本の横梁61b,61cが一体に形成されている。
【0044】
2つの側壁部61aの前方端部にはブレード保持部62が架け渡されて装着されており、このブレード保持部62の上方に突出するよう第1ワイピングブレード63が設けられている。また2つの側壁部61aのそれぞれの後方端部には、カムフォロア部64が左右方向に貫通して設けられている。このカムフォロア部64は、全体が細長い略円柱形状であって、左側(X方向の負側)の端部が側壁部61aから大きく突出している。この突出側の端部は、付勢バネ65により常に左側へ付勢されている。また、2つの側壁部61aの対応する同じ位置に揺動支持孔61dが形成されており、この揺動支持孔61dを基準として第1揺動フレーム52全体は後方側(Z方向負側)に大きく偏重している。なお、揺動支持孔61dが、各請求項記載の第1移動フレームからの支持点に相当する。
【0045】
上記第1移動フレーム53の外観全体の斜視図を図6に示す。この図6において、当該第1移動フレーム53はフレーム本体部71とラック72を備えている。フレーム本体部71は、全体の左右方向の幅が上記第1揺動フレーム52より少し広い略平板形状であって、その幅方向両端にはそれぞれ前方に伸びた腕部71aが形成されている。これら腕部71aの先端と同じ幅方向両端の後端の計4箇所には、それぞれ下方(Y方向の負側)に折れ曲がった摺動支持部71bを有しており、それら摺動支持部71bには上記ガイド軸51を嵌合可能な摺動孔71cが形成されている。また、2つの腕部71aの先端で互いに対向する内側には、上記第1揺動フレーム52の左右方向の幅と同じ間隔でそれぞれ上方に折れ曲がった揺動支持部71dを有しており、それら揺動支持部71dには上記第1揺動フレーム52の2つの揺動支持孔61dに嵌合可能な凸形状の揺動支持点73が設けられている。また、フレーム本体部71の下面にはラック72が設けられており、その歯列がフレーム本体部71の左右方向略中央で前後方向に沿う配置に固定されている。
【0046】
上記第2移動フレーム54の外観全体の斜視図を図7に示す。この図7において、当該第2移動フレーム54はフレーム本体部81とラック82を備えている。フレーム本体部81は、後述する第2揺動フレーム55の左右方向の幅とほぼ同じ間隔でそれぞれ前後方向に伸びて並列に配置された2つの腕部81aと、それら2つの腕部81aの後端を架け渡す横梁81bとを有している。2つの腕部81aのそれぞれの先端と後端の計4箇所には、それぞれ上方(Y方向の正側)に折れ曲がった摺動支持部81cを有しており、それら摺動支持部81cには上記ガイド軸51を嵌合可能な摺動孔81dが形成されている。また、2つの腕部81aの先端で互いに対向する内側には、後述の第2揺動フレーム55の左右方向の幅と同じ間隔でそれぞれ上方に折れ曲がった揺動支持部81eを有しており、それら揺動支持部81eには後述する第2揺動フレーム55に設けられた2つの揺動支持孔91f(後述の図8参照)に嵌合可能な凸形状の揺動支持点83が設けられている。
【0047】
また、フレーム本体部81の上面にはラック82が設けられており、その歯列がフレーム本体部81の左右方向略中央で前後方向に沿う配置に固定されている。また、フレーム本体部81には、このラック82の歯列に沿って後述するピニオン59(後述の図9参照)が遊嵌可能な長孔81fが形成されている。
【0048】
上記第2揺動フレーム55の外観全体の斜視図を図8に示す。この図8において、当該第2揺動フレーム55はフレーム本体部91、ブレード保持部92、第2ワイピングブレード93、及びカムフォロア部94を備えている。フレーム本体部91は、前後方向に沿って長く配置された2つの側壁部91aを有しており、それらが左右方向に並列に配置している間を前端と後端で架け渡すように2本の横梁91b,91cが一体に形成されている。
【0049】
2つの側壁部91aの前方近くにはそれぞれ上方に伸びたブレード支持部91dが設けられており、これらブレード支持部91dの上端部の間に第2ワイピングブレード93を設けたブレード保持部92が架け渡されて装着されている。また2つの側壁部91aのそれぞれの後方端部には、カムフォロア部94が左右方向に貫通して設けられている。このカムフォロア部94は、全体が細長い略円柱形状であって、右側(X方向の正側)の端部が側壁部91aから大きく突出している。この突出側の端部は、付勢バネ95により常に左側へ付勢されている。また、2つの側壁部91aの上記ブレード支持部91dより少し後方にはそれぞれ上方に伸びた揺動支持部91eが設けられており、それらの先端にそれぞれ揺動支持孔91fが形成されている。当該第2揺動フレーム55の全体は、この揺動支持孔91fを基準として後方側に大きく偏重している。なお、揺動支持孔91fが、各請求項記載の第2移動フレーム54からの支持点に相当する。
【0050】
以上の4つのフレーム部材52,53,54,55とその他周辺部を組み上げたワイピング機構42だけの上記図4中の矢視Hから見た側面図を、図9に示す。この図9において、2本のガイド軸51(図中では同じ高さで重なって1本に見える)が上記筐体41(図4参照)の前後方向全体に渡って架設されている。これら2本のガイド軸51の間に、第1移動フレーム53と第2移動フレーム54が架け渡されている。これら第1移動フレーム53、第2移動フレーム54のそれぞれは、2本のガイド軸51のそれぞれに対して、軸方向に沿った2箇所の摺動支持部71b,81cの摺動孔71c,81dにガイド軸51が貫通されることで、前後方向で摺動可能に支持されている。
【0051】
また各ガイド軸51において、第1移動フレーム53の前方側の摺動支持部71bだけが、第2移動フレーム54の前後2つの摺動支持部81cの間に配置し、第2移動フレーム54の後方側の摺動支持部81cだけが、第1移動フレーム53の前後2つの摺動支持部71bの間に配置している。つまり第1移動フレーム53、第2移動フレーム54のそれぞれ前後1組の摺動支持部71b,81cは、互いに、その一方の摺動支持部71b,81cを他方2つの摺動支持部71b,81cの間に配置している。
【0052】
上述したように第1移動フレーム53、第2移動フレーム54のそれぞれのフレーム本体部71,81は平板形状で構成され、第1移動フレーム53が2本のガイド軸51の上方に、第2移動フレーム54が2本のガイド軸51の下方にそれぞれ水平に配置されている。このため、第1移動フレーム53、第2移動フレーム54のそれぞれの移動に伴い、それぞれの摺動支持部71b,81c同士が近接、離間することはあっても、それぞれのフレーム本体部71,81同士は互いに並行な配置関係を維持して接触することはない。なお、各摺動支持部71b,81cが、各請求項記載の支持部に相当する。
【0053】
揺動支持点73と揺動支持孔61dの嵌合によって第1揺動フレーム52が第1移動フレーム53の揺動支持部71dに支持されており、第1移動フレーム53が前後方向に移動した際には、第1揺動フレーム52も移動するとともに揺動支持点73を中心として揺動可能となっている。同様に、揺動支持点83と揺動支持孔91fの嵌合によって第2揺動フレーム55が第2移動フレーム54の揺動支持部81eに支持され、第2移動フレーム54が前後方向に移動した際には、第2揺動フレーム55も移動するとともに揺動支持点83を中心として揺動可能となっている。
【0054】
これら第1揺動フレーム52、第2揺動フレーム55がそれぞれ備える第1ワイピングブレード、第2ワイピングブレード93の上端縁部は、メンテナンス位置に位置している2つの第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22の各ノズル面20aに近い高さに配置され、第1揺動フレーム52、第2揺動フレーム55のそれぞれの揺動角度によってその高さ位置が上下動する。また、この図9中に示す状態では、2つの第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93が前後方向で近接しており、メンテナンス位置に位置している2つの第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22の間に位置している。
【0055】
なお、第1移動フレーム53、第2移動フレーム54のそれぞれの揺動支持点73,揺動支持点83は、第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93とほぼ同じ高さ、つまりメンテナンス位置に位置している2つの第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22の各ノズル面20aとほぼ同じ高さに配置されている。このように第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93の回動中心点が配置設定されていることにより、第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93が揺動した際のそれらの前後方向の移動量を減らすことができる。
【0056】
また、上記第1溝カム56が当該ワイピング機構42の左側の位置(図9中の奥側の位置)で上記筐体41に固定されており、その右側側面(図9中の手前側の側面)に形成された経路溝56aに上記第1揺動フレーム52のカムフォロア部64の突出部分が嵌入している。また、上記第2溝カム57が当該ワイピング機構42の右側の位置(図9中の手前側の位置)で上記筐体41に固定されており、その左側側面(図9中の奥側の側面)に形成された経路溝57aに上記第2揺動フレーム55のカムフォロア部94の突出部分が嵌入している。
【0057】
また、上下方向に沿った回転軸周りで回転可能な1つのピニオン59が、減速歯車101,102を介してモータ103に連結しており、これらが上記ワイピング駆動部58を構成している。ピニオン59は、第2移動フレーム54のフレーム本体部81に形成した長孔81fを貫通し、当該ピニオン59の上端部を第1移動フレーム53の下面に設けたラック72と同じ高さに位置させている。第1移動フレーム53、第2移動フレーム54のそれぞれラック72,82が当該ピニオン59に噛み合っており、モータ103の正転と逆転を切り替えた回転駆動によって第1移動フレーム53、第2移動フレーム54がそれぞれ前後方向に移動する。なお、以上の構成のワイピング機構42が、各請求項記載のワイピング手段に相当する。
【0058】
この第1移動フレーム53、第2移動フレーム54のラック72,82とピニオンの噛み合い状態を、上記図9中の矢視Vから見た平面図を図10に示す。なお、この図10においては、図示の煩雑を回避するために、第1移動フレーム53、第2移動フレーム54をそれぞれラック72,82の周辺部分だけ図中に示し、フレーム本体部71,81等の他の部分は省略している。この図10において、第1移動フレーム53のラック72はその歯方向が右方向(図中下方向)に向き、第2移動フレーム54のラック82はその歯方向が左方向(図中上方向)に向いており、それぞれ同一のピニオン59の径方向に対して逆側から噛み合っている。つまり、第1移動フレーム53、第2移動フレーム54は、それぞれのラック72,82の歯方向を互いに対向させる配置でピニオン59を挟むように噛み合わせている。
【0059】
このような噛み合い構造としていることで、例えばモータ103の駆動によりピニオン59を図示する上面視で時計回りのM方向に回転させた場合には、図中の上方に示すラック72と第1移動フレーム53が後方(図中の右方)に移動するとともに、図中の下方に示すラック82と第2移動フレーム54が前方(図中の左方)に移動する。また、ピニオン59を反時計回りのN方向に回転させた場合には、第1移動フレーム53が前方(図中の左方)に移動するとともに、第2移動フレーム54が後方(図中の右方)に移動する。このようにして、ワイピング駆動部58は、1つのピニオン59の回転によって、第1移動フレーム53、第2移動フレーム54を同時かつ互いに逆方向に移動させることができる。これにより、第1移動フレーム53、第2移動フレーム54にそれぞれ第1揺動フレーム52、第2揺動フレーム55を介して連動する2つの第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93は、ピニオン59の回転方向の切り替えによって互いに近接するか離間するかのいずれかで逆方向に移動する。
【0060】
また、これら第1移動フレーム53、第2移動フレーム54の前後移動範囲は、それぞれの摺動支持部71b,81c及び第1揺動フレーム52、第2揺動フレーム55の配置関係で規制される。例えば上記図8に示したように、第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93が近接している状態では、第1移動フレーム53が最も前方に位置し、第2移動フレーム54が最も後方に位置する。このときのガイド軸51と第1移動フレーム53、第2移動フレーム54の配置関係を表す側面図を、図11(a)に示す。この図11(a)に示す状態では、第1移動フレーム53、第2移動フレーム54が互いに上下方向でほぼ重複するよう配置されている。また、第1移動フレーム53の前方の摺動支持部71bと、第2移動フレーム54の後方の摺動支持部81cが近接する状態では、第1移動フレーム53が最も後方に位置し、第2移動フレーム54が最も前方に位置する。このときのガイド軸51と第1移動フレーム53、第2移動フレーム54の配置関係を表す側面図を図11(b)に示す。
【0061】
これら図11(a)と図11(b)の間における第1移動フレーム53、第2移動フレーム54のそれぞれの位置の差が前後移動範囲となり、それらの距離D1,D2は同等となる。そして上述したように、第1移動フレーム53、第2移動フレーム54のそれぞれ前後1組の摺動支持部71b,81cは、互いに、その一方の摺動支持部71b,81cを他方2つの摺動支持部71b,81cの間に配置している。このため、第1移動フレーム53、第2移動フレーム54のそれぞれの前後移動範囲においては、それぞれの摺動支持部71b,81cが互いに交差することはない。
【0062】
図11(b)に示す第1移動フレーム53、第2移動フレーム54の配置状態での上記図4に対応するメンテナンス装置40の斜視図を図12に示す。この図12に示すように、最も離間した状態の2つの第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93は、それぞれ2列のキャップ43より前後方向の外側に位置しており、つまりメンテナンス位置に位置した2つの第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22に対してもそれらの外側に位置する。
【0063】
次に、溝カム56,57の構成について説明する。図13(a)は第1溝カム56の側面図を示し、図13(b)は図13(a)中の矢視A−B断面の断面図を示し、図13(c)は図13(a)中の矢視A−C断面の断面図を示している。この第1溝カム56は、薄肉モールドにより成形された樹脂製部材である。図13(a)に示す当該第1溝カム56の側面(X方向正側の右側面、つまり図13(a)中の手前側)には、上記第1揺動フレーム52が備えるカムフォロア部64の突出側の先端部が嵌入移動可能な経路溝56aを、略環状に設けられている。
【0064】
まず最初に、図13(a)において、上記図11(b)に示した第1移動フレーム53の最後方位置に対応して、カムフォロア部64の先端部が第1溝カム56の経路溝56a内の第I経路点に位置する。この例では、この第I経路点の位置が、カムフォロア部64の移動経路の始点位置となる。この第I経路点から、ワイピング駆動部58の駆動によって第1移動フレーム53及び第1揺動フレーム52とともにカムフォロア部64が前方に移動した場合には、その高さ位置を維持したまま第II経路点を通過して前方へ直進し、第III経路点に到達する。ここまでは第1溝カム56の経路溝56aの上下の側壁によって、カムフォロア部64の高さ位置が規制されている。
【0065】
しかし、第III経路点より前方には下方の側壁がなくなるため、カムフォロア部64が第III経路点からさらに前方に移動した際には、その高さ位置が急に降下して第IV経路点に到達する。これは、上述したように第1揺動フレーム52全体が揺動支持孔64dを基準として後方側、つまりカムフォロア部64を備えた側に大きく偏重していることによる。すなわち、カムフォロア部64には常に下方に押し下げられる付勢力が働いており、第1溝カム56の経路溝56aの下方の側壁がない部分では当該カムフォロア部64が降下する。このような第III経路点から第IV経路点までの間の偏重作動溝部111にカムフォロア部64が到達した際には、第1揺動フレーム52がその偏重によって自動的に揺動する。この例では、この第IV経路点の位置がカムフォロア部64の移動経路の折返し点、つまり往路の終点位置となる。また、上記第I経路点と第IV経路点との間の前後方向の距離Dc1は、上記図11に示した第1移動フレーム53の前後移動範囲の距離D1と一致する。
【0066】
そして、第IV経路点から、ワイピング駆動部58の駆動方向の切り替えによって第1移動フレーム53及び第1揺動フレーム52とともにカムフォロア部64が後方に移動した場合には、経路溝56aの上下の側壁によって高さ位置を維持したまま後方へ直進し、第V経路点に到達する。この第V経路点より後方では、経路溝56aの下方の側壁が斜め上に傾斜している。このためカムフォロア部64が第V経路点から後方に移動した際には、経路溝56aの下方の側壁の規制により徐々に上昇して上記第II経路点に到達する。さらにカムフォロア部64が第II経路点から後方に移動した際には、経路溝56aの上下の側壁によって高さ位置を維持したまま後方へ直進し、最後方位置の第I経路点に終着する。この例では、第I経路点が、上述したようにカムフォロア部64の移動経路の始点位置でもあり、当該移動経路及び復路の終点位置でもある。
【0067】
また、図13(b)に示すように、第I経路点及び第II経路点では溝底が最も深く、第II経路点から第III経路点へ向かう経路において溝底が徐々に浅くなっている。また、図13(c)に示すように、第IV経路点においても溝底が最も深く、第IV経路点から第V経路点へ向かう経路において溝底が徐々に浅くなっている。そして、溝底が浅い第III経路点から、溝底が深い第IV経路点へ向かう経路においては、第IV経路点の近傍で急激に溝底の深さが変化する段差が設けられている。また、溝底が浅い第V経路点から、溝底が深い第II経路点へ向かう経路においては、第II経路点の近傍で急激に溝底の深さが変化する段差が設けられている。
【0068】
一方、上述したように、カムフォロア部64は付勢バネ65(上記図5参照)によって常にその突出側の先端方向に付勢され、第1溝カム56の溝底を押接している。このため、第III経路点から第IV経路点へ向かう経路においては、第IV経路点の近傍の段差部分が不可逆進行溝部112となって、カムフォロア部64の進行方向を不可逆的に規制する。つまり、カムフォロア部64は第III経路点から第IV経路点への進行は可能であるが、逆方向へは進行できない。同様に、第V経路点から第II経路点へ向かう経路においては、第II経路点の近傍の段差部分が不可逆進行溝部112となって、カムフォロア部64の進行方向を不可逆的に規制する。つまり、カムフォロア部64は第V経路点から第II経路点への進行は可能であるが、逆方向へは進行できない。
【0069】
これにより、カムフォロア部64の往路は必ず第I経路点から出発して、第II経路点、第III経路点の順で通過し、第IV経路点に終着する経路となる。また、逆の復路は必ず第IV経路点から出発して、第V経路点、第II経路点の順で通過し、第I経路点に終着する経路となる。
【0070】
以上のように、第1溝カム56が偏重作動溝部111と不可逆進行溝部112とを組み合わせて備えていることにより、第1移動フレーム53がその前後移動範囲の全体に渡って往復移動した場合には、カムフォロア部64の移動経路が必ず第I経路点、第II経路点、第III経路点、第IV経路点、第V経路点、第II経路点、第I経路点の順で巡回移動する経路となる。なお、第2溝カム57については、経路溝57aの形状も含めた全体の構成が上記第1溝カム56と前後方向及び左右方向で対称となっており、第2揺動フレーム55のカムフォロア部94に対して前後方向に対称的な巡回経路で進行させる(図示省略)。このようにして、第1溝カム56と第2溝カム57がそれぞれカムフォロア部64,94の往復移動に対応して高さ位置を規制することで、第1揺動フレーム52、第2揺動フレーム55の揺動角度及び第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93の高さ位置をも規制する。
【0071】
上記第1溝カム56の規制によって、第1揺動フレーム52の第1ワイピングブレード63の上方縁部は、図14中の太線で示す軌跡を描く。この図14は、第1揺動フレーム52と第1溝カム56の連結構成だけを、上記図8に対応する側面視で示している。なお、第I経路点と第II経路点との間の経路に対応する軌跡は省略している。
【0072】
上述したように、第1揺動フレーム52は、その前方端部に第1ワイピングブレード63を備え、後方端部にカムフォロア部64を備え、それらの間に揺動支持孔61dが位置する。このため、カムフォロア部64が第II経路点を通過する往路のほとんどでは、第1ワイピングブレード63の上方縁部が比較的低い位置を維持したまま前方移動する。また、カムフォロア部64が第IV経路点から出発する復路では、第1ワイピングブレード63の上方縁部が前半で比較的高い位置を維持したまま後方移動し、途中の後半から徐々に降下する。このように、第1揺動フレーム52の揺動角度と第1ワイピングブレード63の上方縁部の高さは、それぞれ往路と復路で相違する。なお、第1ワイピングブレード63の上方縁部の高さの変化は、第1溝カム56における往路と復路の経路溝の高低差と、上方縁部、揺動支持点、及びカムフォロア部の3点の配置関係によって決まる。
【0073】
図15には、第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93のそれぞれの上方縁部が描く軌跡の拡大図を示している。なおこの図15においては、第1ワイピングブレード63の上方縁部が描く軌跡は、第1溝カム56の各経路点に対応する第I〜第V位置で示している。また、第2ワイピングブレード93の上方縁部が描く軌跡は、第2溝カム57の各経路点に対応する第I′〜第V′位置で示している。また、図示を明確にするために、各軌跡の上下方向の縮尺を、前後方向の縮尺と比較してより大きく拡大して示している。
【0074】
この図15において、第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93のそれぞれの上方縁部は、前後方向で2列の第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22の外側の始点位置(図示する第I、I′位置)から、2列の第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22の内側の終点位置(図示する第IV、IV′位置)までを往路として移動する。この往路のほとんどにおいては、第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93のそれぞれの上方縁部が、それぞれメンテナンス位置に位置した第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22のノズル面20aより下方に離間して互いに接近するよう移動する。そして、復路の前半の第IV、IV′位置から第V、第V′位置までの間の区間においては、第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93のそれぞれの上方縁部が、対応する第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22の列のノズル面20aを摺接可能な高さに位置して互いに離間するよう移動する。

【0075】
なお、第IV、IV′位置から第V、第V′位置までの間の摺接区間においては、第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93がそれぞれ直立してノズル面20aに直交する姿勢角度を維持しまたまま摺動し、他の区間では傾斜する姿勢角度となる。また、復路中の第V、V′位置から第II、II′位置までの間の区間においては、第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93のそれぞれの上方縁部が、インク吸収性の高いスポンジからなるブレードクリーナ(特に図示せず)の表面に傾斜姿勢で摺接し、ノズル面20aから拭き取ったインクがブレードクリーナに拭き取られる。また上記図8に示すように、第1揺動フレーム52の場合と違い、第2揺動フレーム55においては第2ワイピングブレード93とカムフォロア部94の高さ位置が大きく異なっている。しかし、その分だけ揺動支持点83を高い位置に配置しているため、往路と復路とで第2ワイピングブレード93自体の姿勢角度とその上方縁部の高さの変化を小さく抑えている。
【0076】
以上説明したように、本実施形態のインクジェットプリンタ1においては、メンテナンス装置40の上方のメンテナンス位置において、第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22が並行に2列配置される。各インクジェットヘッド21,22の列における記録ヘッド20同士、又は各インクジェットヘッド21,22同士がそれぞれ異なる色のインクを付着しているため、ワイピング機構42はそれらインクを混色させずにそれぞれのノズル面20aを拭き取る必要がある。このため、2つの第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93を各インクジェットヘッド21,22に個別に対応させて設け、それぞれを第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22の並列方向である前後方向で移動させて、それぞれ対応する第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22のノズル面20aを拭き取らせる必要がある。
【0077】
本実施形態では、1つのモータ103により回転駆動される1つのピニオン59に対し、それぞれラック72,82を介して第1移動フレーム53及び第2移動フレーム54がそれぞれ前後方向に移動する。上記ピニオン59は、所定の回転角範囲で正転と逆転を切り替えて回転駆動されることで、第1移動フレーム53及び第2移動フレーム54は前後方向における所定範囲を往復動する。上記2つの第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93をそれぞれ個別に設けた第1揺動フレーム52及び第2揺動フレーム55が、上記第1移動フレーム53及び上記第2移動フレーム54にそれぞれ対応して揺動可能に支持されている。
【0078】
各ワイピングブレード63,93は、第1揺動フレーム52及び第2揺動フレーム55のそれぞれの揺動部分に設けられている。また、第1揺動フレーム52及び第2揺動フレーム55のそれぞれの他の揺動部分には、左右方向に突出するカムフォロア部64,94も設けられている。各カムフォロア部64,94は、それぞれ個別に対応する第1溝カム56及び第2溝カム57に嵌入されている。これら第1溝カム56及び第2溝カム57は、各カムフォロア部64,94を介して上記第1移動フレーム53及び上記第2移動フレーム54のそれぞれの往復移動に対応して、上記第1揺動フレーム52及び上記第2揺動フレーム55にそれぞれ設けられた第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93の揺動を規制する。
【0079】
これにより本実施形態は、並行に2列設けた第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22のそれぞれに個別に対応させて設けた2つの第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93を、1つのモータ103の駆動により連動させ、それぞれインクを混色させることなくノズル面20aを前後方向にワイピングできる。また、一方側のインクジェットヘッド21,22のノズル面20aを拭き取った後に、ワイピングブレード63,93で拭き取ったインクが他方側のインクヘットヘッド21,22のノズル面20aに再度付着することもない。この結果、ワイピング機構42とともにインクジェットプリンタ1全体の簡素化及び小型化が可能となる。
【0080】
また、本実施形態では特に、第1移動フレーム53及び第2移動フレーム54が所定範囲を往復動する際に、第1揺動フレーム52及び第2揺動フレーム55のいずれかのカムフォロア部64,94が対応する第1溝カム56及び第2溝カム57の偏重作動溝部111に到達することで、対応する第1揺動フレーム52及び第2揺動フレーム55の偏重により自動的に揺動する。これにより、専用のモータなどを含む特別な駆動機構を必要とせずに、第1揺動フレーム52及び第2揺動フレーム55を揺動させて第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93の上下動を制御できる。
【0081】
また、本実施形態では特に、第1溝カム56及び第2溝カム57がその経路溝56a,57aの側面で各カムフォロア部64,94の上下位置を規制するとともに、溝底の段差で突出方向に付勢されたカムフォロア部64,94の進行経路を不可逆的に規制する不可逆進行部112を設けている。この不可逆進行部112の導出側にカムフォロア部64,94を誘導する他の経路を設けることで、第1移動フレーム53及び第2移動フレーム54の往路と復路とでカムフォロア部64,94を異なる進行経路に誘導できる。
【0082】
また、本実施形態では特に、第1溝カム56及び第2溝カム57が不可逆進行溝部112を用いて、第1移動フレーム53及び第2移動フレーム54の往路と復路とで各カムフォロア部64,94の上下位置を異ならせる、つまり巡回する軌跡の進行経路に誘導する。これにより、往路と復路とで第1揺動フレーム52及び第2揺動フレーム55の揺動角度が異なり、それぞれの第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93の復路で第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22のノズル面20aに摺接させ、往路で離間させることができる。この結果、ノズル面20aに対してワイピングブレード63,93を(往復両方向ではなく)復路方向だけでインクを拭き取らせることができ、往路方向での付着を防ぐことができる。
【0083】
また、本実施形態では特に、第1移動フレーム53及び第2移動フレーム54が、それぞれのラック72,82の歯方向を互いに対向させる配置でピニオン59を挟むように噛み合わせる。これにより、ピニオン59の回転方向の切り替えによって、第1移動フレーム53及び第2移動フレーム54にそれぞれ連結する2つの第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93が、互いに近接するか離間するかのいずれかで逆方向に移動する。
【0084】
本実施形態では、第1溝カム56及び第2溝カム57の巡回経路の設定において、いずれも2列の第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22の並列方向、すなわち前後方向での外側に2つの第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93の先端のそれぞれの始点位置を設定し、2列の第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22の並列方向での内側に終点位置を設定している。それぞれの始点位置から折返し位置まで移動する往路においては、各ワイピングブレード63,93の先端を対応する第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22のノズル面20aより下方に位置させて摺動を回避するよう、第1揺動フレーム52及び第2揺動フレーム55の揺動角度を規制する。また、それぞれの折返し位置から始点位置まで移動する復路においては、各ワイピングブレード63,93の先端を対応する第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22のノズル面20aを摺接可能な高さに位置するよう、第1揺動フレーム52及び第2揺動フレーム55の揺動角度を規制する。
【0085】
このように2つの第1ワイピングブレード63、第2ワイピングブレード93を対称的に動作させることで、それぞれのワイピング動作を同時に行うことができ、全体の作動時間を短縮できる。また、いずれのインクジェットヘッド21,22の列においても互いの内側から外側に向けてワイピングするため、高速動作でワイピングした際にワイピングブレード63,93が拭き取ったインクが跳ねた場合でも、2列の第1インクジェットヘッド21、第2インクジェットヘッド22の外側に跳ねるだけであるため互いに汚れるのを防ぐことができる。
【0086】
また、本実施形態では特に、互いに逆方向に移動する第1移動フレーム53及び第2移動フレーム54が、互いに最も近接する往路の折返し位置で上下方向に重複する配置となるようそれぞれの形状、大きさが設定されていることで、ワイピング機構42全体を小型化できる。
【0087】
また、本実施形態では特に、第1移動フレーム53及び第2移動フレーム54は、前後方向に沿った2本のガイド軸51にそれぞれ摺動可能に支持され、それぞれの摺動支持部71b,81cが往復動する前後移動範囲で互いに交差しないよう配置されている。これにより、第1移動フレーム53及び第2移動フレーム54がそれぞれ個別に2本のガイド軸51で支持される場合と比較して部品点数を削減できるとともに、ワイピング機構42全体を小型化できる。
【0088】
また、本実施形態では特に、第1移動フレーム53及び第2移動フレーム54のそれぞれは、2本のガイド軸51のそれぞれに対して摺動方向に並ぶ2つの摺動支持部71b,81cで支持されている。また、第1移動フレーム53及び第2移動フレーム54は、互いに、摺動方向に並ぶ2つの摺動支持部71b,81cの一方を他方の2つの摺動支持部71b,81cの間に配置している。これにより、各移動フレーム53,54の摺動方向に沿った各ガイド軸51ごとの2つの摺動支持部71b,81cの間隔を短縮化でき、すなわち各移動フレーム53,54の摺動方向長さを短く設定できるため、ワイピング機構42全体を小型化できる。
【0089】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0090】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0091】
1 インクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)
20 記録ヘッド
20a ノズル面
21 第1インクジェットヘッド(記録ヘッド列)
22 第2インクジェットヘッド(記録ヘッド列)
40 メンテナンス装置
42 ワイピング機構
51 ガイド軸
52 第1揺動フレーム
53 第1移動フレーム
54 第2移動フレーム
55 第2揺動フレーム
56 第1溝カム
56a 経路溝
57 第2溝カム
57a 経路溝
58 ワイピング駆動部
59 ピニオン
61 フレーム本体部
61d 揺動支持孔(支持点)
63 第1ワイピングブレード
64 カムフォロア部
71 フレーム本体部
71b 摺動支持部(支持部)
71d 揺動支持部
72 ラック
73 揺動支持点
81 フレーム本体部
81c 摺動支持部(支持部)
81e 揺動支持部
82 ラック
83 揺動支持点
91 フレーム本体部
91f 揺動支持孔(支持点)
93 第2ワイピングブレード
94 カムフォロア部
103 モータ
111 偏重作動溝部
112 不可逆進行溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メンテナンス位置に配置させた記録ヘッド列に対し、それぞれのノズル面に付着しているインクを拭き取るワイピング手段を備えたインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッド列は、前記メンテナンス位置において並行に2列配置され、
前記ワイピング手段は、
1つのモータにより所定の回転角範囲で正転と逆転を切り替えて回転駆動される1つのピニオンと、
それぞれ前記ピニオンに噛み合うラックを介して、前記2列の記録ヘッド列の並列方向に対し所定範囲を往復可能に移動する第1移動フレーム及び第2移動フレームと、
前記第1移動フレーム及び前記第2移動フレームにそれぞれ対応して揺動可能に支持されるとともに、それぞれの揺動部分に、前記2列の記録ヘッド列に個別に対応して各ノズル面に摺接可能なワイピングブレードと、前記2列の記録ヘッド列の直列方向に突出するカムフォロア部とを設けた第1揺動フレーム及び第2揺動フレームと、
前記第1揺動フレーム及び前記第2揺動フレームにそれぞれ対応して前記カムフォロア部を嵌入し、前記第1移動フレーム及び前記第2移動フレームのそれぞれの往復移動に対応して前記第1揺動フレーム及び前記第2揺動フレームの揺動を規制する第1溝カム及び第2溝カムと、
を備えていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記第1揺動フレーム及び前記第2揺動フレームの少なくともいずれか一方は、前記第1移動フレーム及び前記第2移動フレームからの支持点に対して偏重しており、
対応する第1溝カム及び第2溝カムは、前記偏重を利用して前記第1揺動フレーム及び前記第2揺動フレームを揺動させる偏重作動溝部を設けていることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第1揺動フレーム及び前記第2揺動フレームの少なくともいずれか一方の前記カムフォロア部はその突出方向に付勢されており、
対応する第1溝カム及び第2溝カムは、その溝底に段差を設けて前記付勢により前記カムフォロア部の進行方向を不可逆的に規制する不可逆進行溝部を設けていることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
第1溝カム及び第2溝カムは、前記不可逆進行溝部を用いて、前記第1移動フレーム及び前記第2移動フレームの往路と復路とで前記第1揺動フレーム及び前記第2揺動フレームの揺動角度を異ならせるよう構成されていることを特徴とする請求項3記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記第1移動フレーム及び前記第2移動フレームは、それぞれの前記ラックの歯方向を互いに対向させる配置で前記ピニオンを挟むように噛み合わせることで互いに逆方向に移動し、
第1溝カム及び第2溝カムは、それぞれ対応する前記第1揺動フレーム及び前記第2揺動フレームの前記ワイピングブレードが、前記並列方向で前記2列の記録ヘッド列の外側の始点位置から前記2列の記録ヘッド列の内側の終点位置まで移動する往路において、当該ワイピングブレードの先端が対応する前記記録ヘッド列のノズル面より下方に位置するよう前記第1揺動フレーム及び前記第2揺動フレームの揺動角度を規制し、復路において当該ワイピングブレードの先端が対応する前記記録ヘッド列のノズル面を摺接可能な高さに位置するよう前記第1揺動フレーム及び前記第2揺動フレームの揺動角度を規制することを特徴とする請求項4記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記第1移動フレーム及び前記第2移動フレームは、前記往路の終点位置で互いに上下方向又は前記直列方向でほぼ重複するよう配置されていることを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記第1移動フレーム及び前記第2移動フレームは、前記並列方向に沿った2本のガイド軸にそれぞれ摺動可能に支持され、それぞれの支持部が往復動する前記所定範囲で互いに交差しないよう配置されていることを特徴とする請求項6記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記第1移動フレーム及び前記第2移動フレームのそれぞれは、前記2本のガイド軸のそれぞれに対して摺動方向に並ぶ2つの摺動支持部で支持され、
前記第1移動フレーム及び前記第2移動フレームは、互いに、その一方の摺動支持部を他方の2つの摺動支持部の間に配置していることを特徴とする請求項7記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−254541(P2012−254541A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127944(P2011−127944)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】