説明

インクジェット記録装置

【課題】記録媒体の裏面に対し帯電の傾向に応じた適切な加湿を行うことにより、高品位な画像を出力しながら裏面の汚染を回避することが可能なインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】記録中に記録媒体201の裏面が汚染される懸念が高い場合において、記録媒体201の裏面のみに水分を塗布する。これにより、高分子樹脂等によって構成される記録媒体201の裏面が搬送に伴って帯電するのを抑え、インクやインクミストが記録媒体201の裏面側に付着することを回避することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク滴を吐出することによって、搬送される記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置に関する。特に、帯電しやすい裏面を有する記録媒体の、インクミストによる汚染を抑える構成に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、通常、搬送中の記録媒体に対し、固定された記録ヘッドあるいは搬送方向とは交差する方向に移動する記録ヘッドからインクを吐出して、画像を記録する。このようなインクジェット記録装置では、近年吐出量の小液滴化や画像の高解像度化が進み、高画質な写真画像が出力可能になって来るとともに、記録媒体に余白を設けずに記録を行う所謂余白なし記録が可能なものも数多く提供されている。
【0003】
余白なし記録を行う際、記録ヘッドは記録媒体の先端や後端或いは側端にもはみ出してインクを吐出する。よって、一般に、装置内の記録ヘッドの吐出口面に対向する位置には、はみ出して吐出されたインクを吸収するための吸収体が配備されている。
【0004】
しかしながら、近年のようにインクの小液滴化が推進されると、インクミストは装置内に浮遊しやすくなり、はみ出して吐出されたインクは必ずしも吸収体に吸着されない傾向がある。特に、搬送中の記録媒体は搬送ローラとの摩擦等によって帯電する場合があり、電荷を有するインクミストが記録媒体の非記録面や裏面に引き寄せられて汚染するという弊害も現れている。
【0005】
このような弊害に対し、特許文献1には、記録前の記録媒体を加湿することにより、記録媒体の帯電を抑え、インクミストの特に裏面側の付着を抑制する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−306266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法では、表面すなわち画像が記録される面も、裏面と同様に一様に加湿している。よって、湿度が高すぎると、表面にしわ、にじみ、記録媒体のカール、などが発生し、出力物の品位を低下させてしまう恐れがあるため、その湿度調整が難しい。
【0008】
特に、近年では、写真出力への重要に伴い、様々な種類の写真専用紙が提供されている。例えば、RC基材の光沢紙やPP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の高分子樹脂を裏面基材としたものが挙げられる。そして、これら専用紙では、表面に比べて裏面の方が帯電されやすい傾向を有しており、特許文献1のように記録媒体の表裏面を一様に加湿しても、裏面の帯電ひいては汚染を十分に抑えることが出来ない場合があった。また、裏面の汚染を回避するために十分な加湿を行おうとすると、今度は表面の画像品位を損なってしまう恐れがあった。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものである。よってその目的とするところは、記録媒体の裏面に対し帯電の傾向に応じた適切な加湿を行うことにより、高品位な画像を出力しながら裏面の汚染を回避することが可能なインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために本発明は、記録媒体を搬送する手段と、搬送される前記記録媒体に対し、記録データに従ってインクを吐出することにより画像を記録する記録手段と、前記搬送の方向において前記記録手段よりも上流に配置し、搬送される前記記録媒体の裏面に近接することにより、前記裏面に該裏面の帯電を抑制するための液体を塗布する塗布手段と、記録媒体の種類、記録モード、環境湿度の少なくとも1つに応じて、前記塗布手段の前記裏面への近接および離間を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高分子樹脂等によって構成される記録媒体の裏面が搬送に伴って帯電するのを抑え、インクやインクミストが記録媒体の裏面側に付着することを回避することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1で使用するインクジェット記録装置の記録部構成を示す断面図である。
【図2】実施例2で使用するインクジェット記録装置の記録部構成を示す断面図である。
【図3】水分塗布ローラ202の構成例を示す図である。
【図4】水分塗布ローラ202の構成例を示す図である。
【図5】インクジェット記録装置における制御の構成を説明するブロック図である。
【図6】実施例1の記録動作シーケンスを説明するフローチャートである。
【図7】実施例2の記録動作シーケンスを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1で使用するインクジェット記録装置の記録部の構成を示す断面図である。記録ヘッド223を搭載したキャリッジ222は、X方向に延びるキャリッジ軸221に挿通されており、キャリッジ軸221に案内指示されながらX方向に一定の速度で走査する。このとき、記録ヘッド223は、不図示のケーブルを介して受信した画像信号に従って、Z方向にインクを吐出する。これにより記録媒体201に対し、1回分の記録走査が行われる。1回分の記録走査が行われると、記録媒体201を支持する搬送ローラ203が図の矢印の方向に回転し、記録ヘッド223のY方向の記録幅に対応した距離だけ記録媒体201をY方向に搬送する。このようなX方向への記録走査とY方向への搬送動作を繰り返すことにより、記録媒体に段階的に画像が形成される。画像の記録が完了した記録媒体は、不図示の排紙ローラによって装置外に排出される。
【0014】
記録媒体201の搬送経路であって記録ヘッド223による記録が行われる位置には、記録媒体201を下方から支えるプラテン206が配備されている。プラテン206は、記録媒体201の平滑性を保つと共に、記録ヘッド223の吐出口面と記録媒体201の距離を一定にする役割を担っている。
【0015】
プラテン206には、記録媒体201の先端部や後端部、また左右端部を記録する際に、記録媒体201からはみ出たインクを収容するための溝穴209が配備されている。溝穴209に収容されたインクやインクミストは、その後、不図示の穴を通って記録装置の下部に設けられた廃液吸収材に吸収および保持されるようになっている。
【0016】
本実施例の記録装置内部には、記録媒体周囲の温度および湿度を検出するための温湿度センサ208が配備されている。本実施形態の記録装置では温湿度センサ208が検出した温度や湿度に応じて、記録媒体裏面に対する水分塗布の可否やその量を判断する構成になっている。
【0017】
本実施例において特徴的な水分塗布ローラ202は、搬送ローラ203と共に記録媒体203を挟持し搬送すると共に、その裏面を適量に加湿する役割を担っている。水分塗布ローラ202は、図の様にZ方向に上下移動が可能な構成になっており、下方に位置しているときは、記録媒体の搬送経路から外れ、水分が充填されている水分収納機07に収容される。一方、上方に位置しているときは、搬送ローラ203と共に記録媒体201を挟持し、記録媒体の搬送ローラ対の一部を担いながら、その裏面に水分を塗布する。
【0018】
図3および図4は、本実施例に使用可能な水分塗布ローラ202の構成例を示す図である。図3を参照するに、水分塗布ローラ202は、金属ローラ212の外周囲に多孔質部材などからなる表面部材を巻きつけることにより構成されている。そして、図1では図示していなかった汲み上げローラ213と接触回転することにより、汲み上げローラ213を介して水分収納器207から汲み上げられた水分が、表面部材211に吸収される仕組みになっている。このとき、汲み上げローラ213と水分吸収ローラ202の隙間や両ローラの回転速度を調整することにより、水分吸収ローラ202が含有する水分量ひいては記録媒体の裏面に付与する水分量を調整することが可能になっている。
【0019】
一方、図4は、本実施例の水分塗布ローラ202が、ブレード214と接触しながら回転することにより、水分収納器207から汲み上げられた水分を一様に均す仕組みを示している。このとき、水分吸収ローラ202に対するブレード214の侵入量やその圧力を調整することにより、水分吸収ローラ202が含有する水分量ひいては記録媒体の裏面に付与する水分量を調整することが出来る。
【0020】
図5は、本実施例のインクジェット記録装置における制御の構成を説明するためのブロック図である。制御部300は、CPU304を用いながら、ROM303に格納されている制御プログラムやパラメータに従って、記録装置全体を制御する。このときRAM305は、画像データを一時的に保存したり、CPU304のワークエリアとして使用されたりする。
【0021】
例えば制御部300は、インターフェイスI/Fを介してホスト装置301から受信した画像データに対し、ROM303に格納されたプログラムに従って画像処理を施し、記録ヘッド223が記録可能な記録データを生成する。そして、記録ヘッド223の1回の走査分の記録データが蓄積されると、生成した記録データに従ってヘッドドライバ307を制御し、記録ヘッド223からインクを吐出させると共に、キャリッジモータ308を駆動し、キャリッジ222をX方向に移動させる。このような1回分の記録走査が終了すると、次に制御部は、搬送モータ309を駆動し、搬送ローラ203を回転させることによって、記録媒体をY方向に所定量搬送する。
【0022】
また、制御部300は、記録動作に伴って駆動回路306を制御し、水分塗布ローラ202の昇降を行う。
【0023】
図6は、本実施例の制御部300が実行する記録動作シーケンスを説明するためのフローチャートである。
【0024】
ホスト装置から画像データが送信され記録動作が開始されると、制御部300は、まずステップS1において受信したコマンドを解析し記録する記録媒体の種類を取得する。そして、ステップS2において、余白なし記録モードが設定されているか否かを判断する。余白なし記録モードが設定されていればステップS3へ進み、設定されていなければステップS11へ進む。
【0025】
ステップS3では、ステップS1で取得された記録媒体が、その裏面が帯電しやすい所定の記録媒体であるか否かを判断する。このような所定の記録媒体とは、具体的には、その裏面が、PP、PET等の高分子樹脂を裏面基材としたものを示す。高分子樹脂の記録媒体と判断した場合はステップS4へ進み、高分子樹脂でない場合はステップS11へ進む。
【0026】
更にステップS4において、制御部300は温湿度センサ208が検出した環境水分量が、10g/m3以下であるか否かを判断する。10g/m3以下である場合はステップS5へ進み、10g/m3以下ではない場合はステップS11へ進む。
【0027】
以上のように、本実施例では、余白なし記録であると判断され、記録媒体の裏面が高分子樹脂であると判断され、且つ環境水分量が10g/m3以下であると判断された場合に、記録媒体の裏面側への汚染が懸念されるものとする。そして、この場合に限って、ステップS5からステップS10の加湿記録シーケンスを実行する。一方、以上3つの条件のうち1つでも満たされない場合は、ステップS11からステップS13の通常記録シーケンスを実行する。
【0028】
加湿記録シーケンスに進むと、制御部300は、まずステップS5において、駆動回路306を駆動し、水分塗布ローラ202を上昇させ、搬送路ローラ203に近接させる。このとき、水分塗布ローラ202が搬送ローラ203に完全に接触してしまうと、搬送ローラに水分が移り、その後搬送される記録媒体の表面に転写されてしまう。よって、搬送ローラ203と共に記録媒体を挟持可能でありながら、接触しない程度に水分塗布ローラ202を搬送ローラに近づける。
【0029】
その後ステップS6において、制御部300は、搬送モータ309を駆動して搬送ローラ203を回転させ、記録媒体201の搬送を開始する。搬送ローラ203の回転に伴い記録媒体201はY方向に移動し、記録媒体201を下方から支持する水分塗布ローラ202も回転する。水分塗布ローラ202の表面部材211は水分を含有しているので、搬送される記録媒体の裏面に水分が少しずつ転写される。
【0030】
図3を参照するに、水分塗布ローラ203は搬送ローラ203とは反対側の位置で汲み上げローラ213と接触している。よって、その回転に伴って汲み上げローラ213が汲み上げた水分が表面部材211に供給される。この際、制御部300は、汲み上げローラ213と水分吸収ローラ202の隙間やローラの回転速度を調整することにより、水分吸収ローラ202に転写する水分量ひいては記録媒体の裏面に付与する水分量を調整することが可能になっている。このような構成のもと、搬送中の記録媒体の裏面に対し、滞ることなく且つ一様に水分を転写することが出来る。
【0031】
続くステップS7では、キャリッジモータ308および記録ヘッド223を駆動して、搬送中の記録媒体201に対し、記録データに従った記録動作を実行する。記録動作が完了すると、ステップS8へ進み、記録媒体201を装置外へ排出する。記録媒体の排出動作が完了すると、ステップS9へ進み、制御部300は再び駆動回路306を駆動して、水分塗布ローラ202を下降させる。以上で加湿記録モードが終了する。
【0032】
一方、通常記録モードでは、水分塗布ローラ203による記録媒体201への水分塗布は行わない。よって、制御部300による水分塗布ローラ203の昇降工程は行わず、水分塗布ローラ203は記録媒体から離間されたままとする。すなわち、制御部300は、ステップS10において搬送動作を開始し、ステップS11において記録動作を実行し、ステップS12において排出動作を実行する。
【0033】
以上説明した本実施例の加湿モードによれば、搬送ローラ203と共に記録媒体を挟持する水分塗布ローラの回転に伴って、記録媒体の裏面のみに水分を一様に転写することが出来る。よって、このような搬送ローラ対との摩擦による静電気は抑えられ、搬送ローラ対よりも下流の側にある記録媒体は帯電され難くなる。その結果、余白なし記録で記録媒体からはみ出してインクを吐出する場合であっても、はみ出して吐出されたインクやインクミストが記録媒体の裏面側に付着することを抑え、汚染のない印刷物を出力することが可能となる。
【0034】
また、本実施例によれば、記録媒体の裏面が汚染される懸念が高い場合に限って、記録媒体の裏面に水分を塗布しているので、過剰な加湿により記録媒体の表面の画像品位を劣化させたり、記録媒体を損傷させたりすることがない。すなわち、裏面が汚染されない印刷物を安定して出力することが出来る。
【0035】
(実施例2)
図2は、本発明の実施例2で使用するインクジェット記録装置の記録部の構成を説明するための断面図である。実施例1の構成と異なる点は、搬送方向(Y方向)において、記録ヘッド223よりも下流の位置に、裏面に付与された水分を拭取るための水分拭取りローラ224、およびこれと共に記録媒体201を挟持しながら回転する拍車211を用意したことである。
【0036】
水分拭取りローラ224の周囲は吸収体が巻きつけられており、水分塗布ローラ202によって塗布された記録媒体裏面の水分を、回転しながら拭取る構成になっている。本実施例において、水分拭取りローラ224は水分塗布ローラ202と同様に昇降可能な構成なっている。
【0037】
図7は、本実施例の制御部300が実行する記録動作シーケンスを説明するためのフローチャートである。実施例1と異なる点は、水分塗布ローラ上昇と記録動作実行の間に水分拭取りローラ224を上昇させる工程(ステップS76)を設けたことと、および水分塗布ローラ下降の後に水分拭取りローラ224を下降させる工程(ステップS81)を設けたことである。通常記録シーケンスについては実施例1と同様である。但し、本実施例の水分拭取りローラ224については、必ずしも下降させる必要は無く、常に記録媒体を支持していることも可能である。
【0038】
以上説明した本実施例の加湿モードによれば、記録前の記録媒体の裏面に対し水分を一様に転写する一方、排出前にはその水分を水分拭取りローラによって除去している。すなわち、記録中の記録媒体の帯電を抑えることによって記録媒体裏面の汚染を防止しつつ、排出後の記録媒体には余分な水分が残らないようにしている。実施例1のように、水分拭取りローラを備えない構成では、あまり多くの水分が記録媒体の裏面に塗布されていると、排出後の取り扱いに注意が必要だったり、積載された前ページの画像に水分が転写してしまったりする懸念が生じる。よって、実施例1では、そのような弊害が懸念されない程度に、水分塗布ローラ202が記録媒体の裏面に対し、薄くかつ一様に水分を塗布する必要があった。しかしながら本実施例の構成であれば、拭取りローラによって、記録媒体の排出前にその水分は拭取られるので、水分塗布ローラが塗布する水分を多少多めに設定することが出来、記録媒体裏面の帯電をより確実に抑えることが可能となる。
【0039】
なお、以上説明した実施例では、記録モードが余白なし記録モードであり、記録媒体の裏面が高分子樹脂であり、且つ環境水分量が10g/m3以下である場合に限って、加湿記録シーケンスを実行したが、本発明はこのような条件に限定されるものではない。例えば、余白なし記録を行わなくても、記録媒体の種類や環境湿度によっては、記録媒体の裏面にインクミストが付着しやすい場合もある。このような場合には、余白なし記録モードでなくても、加湿記録シーケンスを実行しても良い。また、図4のステップS4では、環境湿度のみを判断しているが、環境湿度と共に環境温度も取得し、両者の組み合わせから判断する形態であっても良い。すなわち、加湿記録シーケンスを実行するか通常シーケンスを実行するかは、上記実施例に限定されず様々な条件に応じて判断することが出来る。
【0040】
更に、取得した様々な条件に応じて、汲み上げローラ213と水分吸収ローラ202の隙間やローラの回転速度を、制御部300が調整する構成とすることも出来る。このようにすれば、水分吸収ローラ202が含有する水分量ひいては記録媒体の裏面に付与する水分量を、様々な条件の組み合わせから推定される帯電の程度に応じて適切に調整することが可能になる。
【0041】
また、上記実施例では、記録媒体に対し「水分」を付与すると説明したが、このような「水分」は、純水などの水に限定されるものではない。高分子樹脂の帯電を抑制することが可能で水分塗布ローラから転写可能な液体であれば、どのような材料も本発明に採用することができる。
【0042】
なお、以上の実施例では、通常記録シーケンスにおいて、搬送ローラ203と対となって記録媒体を挟持する手段を特に示さなかった。しかし、通常記録シーケンスにおいても、搬送ローラと対となって記録媒体を搬送する補助ローラ手段(ピンチローラ、拍車等)は必要である。このため、例えば、水分を保持しない補助ローラを別に用意し、加湿記録シーケンスでは水分塗布ローラ202を搬送ローラ203に対峙させ、通常記録シーケンスでは補助ローラを搬送ローラ203に対峙させるような構成にしてもよい。また、搬送ローラ203と水分塗布ローラ202のローラ対よりも更に上流に、記録媒体を搬送するための別の搬送ローラ対を配置しておくことも有効である。
【0043】
更に、以上では記録媒体の裏面全体に水分を塗布する構成で説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものでもない。本発明者らの検討によれば、記録媒体の裏面でインクが付着しやすい領域は限られており、約40mmの幅の外周囲であった。よって、そのような領域に対してのみ部分的に水分を塗布するように、水分付与ローラを配備してもよい。例えば、X方向の幅が記録媒体の幅よりも短い水分塗布ローラ202を、X方向に複数配置し、記録媒体の先端および後端の40mmについては、全ての水分塗布ローラで記録媒体の搬送を行う。一方、その他の領域については両側端の2つの水分塗布ローラのみ上昇させておき、他のローラは下降させておいてもよい。このようにすれば、無駄に水分を塗布および消費することなく、裏汚れのない高品位な印刷物を安定して出力することが可能となる。なお、以上のように、記録装置の構成によって、記録媒体の裏面において帯電されがちな箇所は異なる場合がある。本発明においては、そのような一部に対して水分を塗布することも含んでおり、本発明の範疇である。
【0044】
更にまた、以上では記録ヘッドの記録走査と記録媒体の搬送動作を交互に繰り返すことにより記録媒体に画像を記録するシリアル型のインクジェット記録装置を例に説明したが、本発明はこのような記録装置に限定されるものではない。記録ヘッドが搬送方向と交差する方向に記録媒体の幅に対応する分の領域を有し、移動しない記録ヘッドに対し記録媒体を一定の速度で搬送することにより画像を記録するフルライン型の記録装置であっても、本発明は無論有効である。
【符号の説明】
【0045】
201 記録媒体
202 水分塗布ローラ
203 搬送ローラ
206 プラテン
207 水分収納器
208 温湿度センサ
209 溝穴
221 キャリッジ軸
222 キャリッジ
223 記録ヘッド
300 制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する手段と、
搬送される前記記録媒体に対し、記録データに従ってインクを吐出することにより画像を記録する記録手段と、
前記搬送の方向において前記記録手段よりも上流に配置し、搬送される前記記録媒体の裏面に近接することにより、前記裏面に該裏面の帯電を抑制するための液体を塗布する塗布手段と、
記録媒体の種類、記録モード、環境湿度の少なくとも1つに応じて、前記塗布手段の前記裏面への近接および離間を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、裏面が高分子樹脂で構成されている記録媒体に対しては前記塗布手段を近接させ、裏面が高分子樹脂で構成されていない記録媒体に対しては前記塗布手段を離間させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は、記録媒体に余白を設けずに記録を行う余白なし記録モードが設定されている場合は前記記録媒体に対し前記塗布手段を近接させ、前記余白なし記録モードが設定されていない場合は前記記録媒体に対し前記塗布手段を離間させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記制御手段は、環境湿度が所定の値より低い場合は前記記録媒体に対し前記塗布手段を近接させ、前記所定の値より高い場合は前記記録媒体に対し前記塗布手段を離間させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記塗布手段は、外周囲に前記液体を含有することが可能な材料を有しており、搬送される前記記録媒体の裏面に接触しながら回転することによって、前記裏面に前記液体を塗布することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記搬送の方向において前記記録手段よりも下流に配置し、搬送される前記記録媒体の裏面に接触することにより前記裏面に塗布された前記液体を除去するための手段、を更に備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記制御手段は、記録媒体の種類、記録モード、環境湿度の少なくとも1つに応じて、前記裏面へ塗布する前記液体の量を調整することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記記録媒体の裏面の一部に対してのみ前記液体を塗布するように、前記塗布手段を制御することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記記録手段は、搬送される前記記録媒体に対し、記録データに従ってインクを吐出しながら前記搬送の方向と交差する方向に移動することにより画像を記録し、
前記記録手段による移動と前記記録媒体の搬送動作とを繰り返すことにより前記記録媒体に画像を記録することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記記録手段は、前記搬送の方向と交差する方向に前記記録媒体の幅に対応する領域を有し、該記録手段に対して前記記録媒体を一定の速度で搬送させることにより、前記記録媒体に画像を記録することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107335(P2013−107335A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255261(P2011−255261)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】