説明

インクジェット記録装置

【課題】変形した用紙を浮きや皺を発生させずに保持し、適切にインクを打滴する。
【解決手段】複数の吸着穴が設けられた吸着面を有する用紙保持部材と、前記吸着面上に配置された厚み方向に空気を通す弾性部材と、前記複数の吸着穴と連通し、該吸着穴を負圧吸引することで前記弾性部材上に用紙を吸着保持する吸引手段と、前記吸着保持された用紙にインクを吐出して画像を記録するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドと前記用紙保持部材とを相対的に移動させる移動手段とを備えたインクジェット記録装置によって上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に係り、特に用紙を吸着して搬送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドのノズルからインクを吐出することにより、用紙上に記録を行うインクジェット印刷システムが知られている。インクジェット印刷システムにおいて、インクジェットヘッド近傍を用紙が通過する際に用紙が浮いていると、インクを打つ高さが異なるために画質が悪くなったり、用紙がヘッド面と擦れることでヘッド面を傷めたりする。したがって、用紙浮き高さを小さく抑えて用紙を保持する必要がある。
【0003】
このような課題に対し、空気の負圧により用紙保持面に用紙を吸着することで、用紙の浮きを防止する技術が知られている。例えば特許文献1には、インクジェット記録装置において用紙を吸着する方法として、吸着搬送ドラムの周囲に吸着シートを有する構成が開示されている。この技術によれば、適切な吸着圧力で用紙を吸着保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−208920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
汎用の印刷用紙(いわゆるインクジェット専用紙ではない一般のオフセット印刷などに用いられる塗工紙などのセルロースを主体とした用紙)に水性インク(水及び水に可溶な溶媒に染料、顔料などの色材を溶解又は分散させたインク)を用いてインクジェット方式で画像を記録すると、カールやコックリング(波打ち)が発生する。この現象は、インク中の水分によって、用紙の繊維間の水素結合が切断され、用紙が膨潤してしまうために生じる。
【0006】
このように、インクジェット記録装置によって記録された用紙は、インク打滴率の高い箇所と低い箇所が生じた際、概ね打滴の多い箇所が伸びる傾向にある。これにより、裏面印刷を行う際には、用紙の平面性が損なわれることがある。
【0007】
これに対し、特許文献1の技術では、上記のような伸びが発生した用紙に対しては、裏面通紙の際に平らな吸着シート面にきれいに吸着できないという問題があった。また平らな面に押し付けて吸着していくと、最後に用紙の歪が集まって用紙が突っ張った状況になり、用紙に浮きや皺を発生させてしまうという問題点がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、変形した用紙を浮きや皺を発生させずに保持するインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するための手段は、次のとおりである。
【0010】
第1の態様は、複数の吸着穴が設けられた吸着面を有する用紙保持部材と、前記吸着面上に配置された厚み方向に空気を通す弾性部材と、前記複数の吸着穴と連通し、該吸着穴を負圧吸引することで前記弾性部材上に用紙を吸着保持する吸引手段と、前記吸着保持された用紙にインクを吐出して画像を記録するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドと前記用紙保持部材とを相対的に移動させる移動手段とを備えたインクジェット記録装置。
【0011】
本態様によれば、変形した用紙を浮きや皺を発生させずに保持することができるので、用紙とインクジェットヘッドとを接触させることなく搬送し、用紙に対して適切にインクを打滴することができる。
【0012】
第2の態様は、第1の態様のインクジェット記録装置において、前記弾性部材上の用紙の表面に当接し、該用紙の厚み方向の高さを調整する用紙押さえローラを備えた。
【0013】
これにより、適切に変形した用紙を吸着保持することができる。
【0014】
第3の態様は、第2の態様のインクジェット記録装置において、前記用紙押さえローラと前記弾性部材との距離を用紙の厚みに応じて調整する調整機構を備えた。
【0015】
これにより、適切に用紙の厚み方向の高さを調整することができる。
【0016】
第4の態様は、第1から第3の態様のインクジェット記録装置において、前記弾性部材は多孔質構造を有し、前記弾性部材の端面に通気を遮る通気遮断部材が設けられている。
【0017】
これにより、適切に弾性部材上に用紙を吸着保持することができる。
【0018】
第5の態様は、第1から第4の態様のインクジェット記録装置において、前記弾性部材は、端面における厚み方向の断面が略V字型に形成されている。
【0019】
これにより、厚み方向の圧縮変形に対する抵抗を小さくすることができる。
【0020】
第6の態様は、第1から第5の態様のインクジェット記録装置において、前記用紙保持部材は、複数の吸着穴が設けられたシート状部材が上面に配置されたキャリッジである。
【0021】
これにより、適切に用紙を搬送し、インクを打滴することができる。
【0022】
第7の態様は、第1から第5の態様のインクジェット記録装置において、前記用紙保持部材は、外周上面を吸着面とする無端状のベルトであり、前記移動手段は、前記無端状のベルトをガイドする1対のローラと、該ローラを回転させる駆動手段とを備えた。
【0023】
これにより、適切に用紙を搬送し、インクを打滴することができる。
【0024】
第8の態様は、第1から第5の態様のインクジェット記録装置において、前記用紙保持部材は、複数の吸着穴が設けられたシート状部材が外周面に重ねて配置された円筒形状のドラムであり、前記移動手段は、前記ドラムを回転させる駆動手段を備えた。
【0025】
これにより、適切に用紙を搬送し、インクを打滴することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、変形した用紙を浮きや皺を発生させずに保持することができるので、用紙とインクジェットヘッドとを接触させることなく搬送し、用紙に対して適切にインクを打滴することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態に係る用紙保持装置の側面図
【図2】吸着シートの平面図
【図3】弾性体の平面図
【図4】弾性体の端部の断面図
【図5】第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図
【図6】用紙を模式的に示した図
【図7】用紙を模式的に示した図
【図8】第2の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図
【図9】ベルトを用紙搬送方向から見た断面図
【図10】用紙を模式的に示した図
【図11】第3の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図
【図12】用紙を模式的に示した図
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1の実施形態〕
図1は、本実施形態に係る用紙保持装置100の側面図である。同図に示すように、用紙保持装置100は、キャリッジ110、吸着シート114、弾性体116等から構成される。
【0029】
キャリッジ110は、保持する用紙よりも大きい平坦な上面を有している。
【0030】
吸着シート114は、ステンレスで形成された厚み(図1において上下方向)が均一のシートであり、キャリッジ110の上面に配置される。吸着シート114の上面は、用紙ホールド基準面となる。図2は、吸着シート114の平面図である。同図に示すように、吸着シート114には多数の吸着穴115が貫通している。
【0031】
キャリッジ110の内部には、負圧吸引を行う吸引部112が備えられており、吸引部112は吸着シート114の各吸着穴115と連通している。
【0032】
弾性体116は、厚み(図1において上下方向)が均一に形成されたシート状の部材であり、吸着シート114の上面に配置されている。図3は、弾性体116の平面図である。弾性体116としては、厚み方向に通気性がある軟質の材質が用いられ、例えば多孔質構造(連続気泡構造)を有するスポンジを用いることができる。弾性体116の厚さは、0.5mm以下であることが好ましい。本実施形態では、スポンジからなる厚さ0.2mmの弾性体116が、吸着シート114に貼り付けられているものとする。なお、弾性体116は、吸着シート114の上面にコーティングされた部材であってもよい。
【0033】
また、図4は、弾性体116の端部の断面図である。図4(a)に示すように、弾性体116の端面は、厚み方向の圧縮変形に対する抵抗を小さくするために、厚み方向の断面が弾性体116の内側に向けて略V字型に形成されている。なお、図4(b)に示すように、弾性体116の外側に向けて略V字型が形成されていてもよい。
【0034】
さらに弾性体116は、その端面に通気を遮る通気遮断部材としてコーティング膜117が施されている。
【0035】
このように構成された用紙保持装置100によれば、弾性体116の上面に用紙が載置された状態で吸引部112が負圧吸引すると、吸引圧力が吸着穴115及び弾性体116を介して用紙に作用し、用紙が弾性体116上に吸着保持される。なお、コーティング膜117により、弾性体116の端面の通気性が失われ、端部からの吸引の漏れが防止される。したがって、弾性体116の端部においても、適切に用紙を吸着保持することができる。
【0036】
図5(a)は、上記の用紙保持装置100を適用したインクジェット記録装置の全体構成図である。このインクジェット記録装置130は、用紙(枚葉紙)に水性インク(水及び水に可溶な溶媒に染料、顔料などの色材を溶解又は分散させたインク)を用いてインクジェット方式で画像を記録する枚葉式の水性インクジェットプリンタである。
【0037】
図5(a)に示すようにインクジェット記録装置130は、用紙保持装置100、用紙押さえローラ132、インクジェットヘッド134を備えている。
【0038】
用紙保持装置100は、駆動機構(不図示)により図5の右から左へ水平に移動可能に構成されている。
【0039】
用紙押さえローラ132は、用紙保持装置100に保持される用紙120の全幅よりも広い幅を持つ円筒形状のローラであり、用紙押さえローラ132の下側を通過する用紙120の上面に当接して回転する。
【0040】
インクジェットヘッド134は、用紙120の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドである。インクジェットヘッド134は、そのノズル列と対向する位置を通過する用紙120の上面にインクを打滴することで、画像を記録することができる。なお、インクジェットヘッド134は、図5の手前/奥行き方向に走査させることで用紙120の全幅にインクを打滴するように構成された所謂シャトル型のヘッドであってもよい。
【0041】
なお、用紙120は、特に限定されないが、一般のオフセット印刷などで使用される汎用の印刷用紙(いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする用紙)を用いることができる。本例では塗工紙が用いられる。塗工紙は、一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙などが好適に用いられる。
【0042】
図5(a)に示すように、まず用紙120が用紙保持装置100に載置される。ここでは用紙120はすでに表面が印字されており、これから裏面の印刷を行うものとする。その後用紙保持装置100は、図5(b)に示すように、駆動機構(不図示)によって図5の左方向に用紙120を搬送する。
【0043】
用紙押さえローラ132の表面及び弾性体116の表面は、低摩擦面に形成されている。また、用紙押さえローラ132は、調整機構(不図示)により、用紙120の厚みに応じて用紙保持装置100(弾性体116)との間の距離を調整可能に構成されている。この距離の調整は、用紙120の厚みを自動的に検出して行ってもよいし、ユーザが用紙の種類に応じて手動で調整してもよい。本実施形態では、用紙保持装置100の弾性体116の表面と用紙押さえローラ132の用紙接触面との距離が、用紙120の厚さと等しくなるように設定されている。
【0044】
したがって、用紙押さえローラ132は、用紙120を弾性体116に押し付けることなく、用紙120の浮きの部分を弾性体116に沿わせるように回転する。ここで、用紙押さえローラ132の表面及び弾性体116の表面は、用紙120を適切に弾性体116の表面に密着させることができる程度に低摩擦に形成されているため、用紙120の厚み方向の高さを適切に調整することができる。
【0045】
図5(c)に示すように、用紙120の全体が用紙押さえローラ132を通過すると、吸引部112が負圧吸引を開始する。これにより、用紙が弾性体116上に吸着保持される。
【0046】
さらに図5(d)に示すように、用紙120がインクジェットヘッド134の真下に到達すると、インクジェットヘッド134からインクが打滴され、印刷が行われる。
【0047】
図6は、このように吸着保持される用紙120を模式的に示した図である。用紙120は表面印字等で変形が生じているが、この変形部分は弾性体116に沈み込んでいる。本実施形態では、変形部分が0.1mm程度沈み込むように、吸引部112の吸引力が決められている。吸引部112の吸引力は、用紙120の硬さ、厚さ等に応じて調整可能に構成することが好ましい。
【0048】
このように、インクジェット記録装置130によれば、変形部分を無理に平らに矯正することなく自然に吸着させて保持することができる。また、用紙変形を無理に矯正していないため用紙変形の歪が分散された形で大きな浮きや皺を抑えることができる。
【0049】
また、図7は、用紙120が上方向に凸に浮きが発生している場合を示した模式図である。弾性の無い吸着シート114に直接吸着させた場合であれば、用紙120の浮きは、図7のBの範囲に発生する。
【0050】
しかし、吸着シート114の上面に弾性体116を形成した場合には、弾性体116に対して用紙120が全体的に沈み込んでいるため、用紙120の浮きは、図7のAの範囲に発生する。このように、吸着された状態ですでに用紙が弾性部材に沈み込んでいるため、分散した凸部に対しても内面より広い面積で吸着力を伝えられるので、用紙浮きレベルを抑制することができる。
【0051】
したがって、インクジェットヘッドの下を通過する際に、インクジェットヘッドと接触することがなく、また適切に吸着保持されているため、適切にインクを打滴して画像を記録することが可能である。
【0052】
〔第2の実施形態〕
次に、用紙をベルト搬送する場合について説明する。
【0053】
図8は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すようにインクジェット記録装置200は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のヘッド210K,210C,210M,210Yを有するインクジェットヘッド210と、インクジェットヘッド210のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、用紙220の平面性を保持しながら用紙220を搬送するベルト搬送部230と、インクジェットヘッド210による印字結果を読み取る印字検出部240等を備えている。
【0054】
ベルト搬送部230は、ローラ232、234間に無端状のベルト236が巻き掛けられた構造を有し、少なくともインクジェットヘッド210のノズル面及び印字検出部240のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0055】
図9は、ベルト236を用紙搬送方向から見た断面図である。同図に示すように、ベルト236は、ベルト本体237と弾性体238から構成される。
【0056】
ベルト236は、用紙220の幅よりも広い幅(図9において左右方向)寸法を有している。ベルト本体237は、ゴムやウレタンから形成され、その表面には多数の吸引穴(不図示)が貫通している。ベルト本体237の外周面が、用紙ホールド基準面となる。
【0057】
ベルト本体237の外周面には、弾性体238が配置されている。弾性体238は、厚さが均一に形成されたシート状の部材であり、厚み方向(図9において上下方向)に通気性を有している。材質としては、第1の実施形態の弾性体116と同様に、例えば多孔質構造のスポンジを用いることができる。また、弾性体238の両端面は、厚み方向の圧縮変形に対する抵抗を小さくするために断面が略V字型に形成されており、さらに吸引の漏れを防止するためにコーティング膜239が形成されている。
【0058】
なお、ベルト本体237と弾性体238との間に、多数の吸着穴が貫通した吸着シートを設けてもよい。
【0059】
図8に示したとおり、ローラ232、234間に掛け渡されたベルト236の内側においてインクジェットヘッド210のノズル面及び印字検出部240のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ250が設けられている。この吸着チャンバ250をファン252で吸引して負圧にすることによって、ベルト236上に載置された用紙220が吸着保持される。
【0060】
ベルト236が巻かれているローラ232、234の少なくとも一方にモータ(不図示)の動力が伝達されることにより、ベルト236は図8において反時計回り方向に駆動され、ベルト236上の用紙220は図8の右から左へと搬送される。
【0061】
インクジェット記録装置200には、給紙部202から用紙220が給紙される。ここでは用紙220はすでに表面が印字されており、これから裏面の印刷を行うものとする。給紙部202には、ローラ232に対向して用紙220の幅に対応した用紙押さえローラ260が配置されており、用紙220は用紙押さえローラ260とローラ232との間を通過してベルト236上に設置される。
【0062】
用紙押さえローラ260の表面及び弾性体238の表面は、低摩擦面に形成されている。また、用紙押さえローラ260は、用紙220の厚みに応じてベルト236(弾性体238)との間の距離を調整可能に構成されている。本実施形態では、ローラ232の表面と弾性体238との距離が、用紙220の厚さと等しくなるように設定されている。
【0063】
したがって、用紙押さえローラ260は、用紙220をローラ232に押し付けることなく、用紙220の浮きの部分をローラ232に沿わせるように回転する。ここで、用紙押さえローラ260の表面及び弾性体238の表面は、用紙220を適切に弾性体238の表面に密着させることができる程度に低摩擦に形成されているため、用紙220の厚み方向の高さを適切に調整することができる。
【0064】
ベルト搬送部230により形成される用紙搬送路上においてインクジェットヘッド210の上流側には、加熱ファン270が設けられている。加熱ファン270は、印字前の用紙220に加熱空気を吹き付け、用紙220を加熱する。印字直前に用紙220を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
【0065】
各ヘッド210K,210C,210M,210Yは、当該インクジェット記録装置200が対象とする用紙220の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。
【0066】
ヘッド210K,210C,210M,210Yは、用紙220の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド210K,210C,210M,210Yが用紙220の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
【0067】
ベルト搬送部230により用紙220がインクジェットヘッド210に対向する位置に搬送されてくると、用紙220は吸着チャンバ250により図8において下方向に吸引され、弾性体238上に吸着保持される。
【0068】
図10は、このように吸着保持される用紙220を模式的に示した図である。用紙220は表面印字等で変形が生じているが、この変形部分は弾性体238に沈み込んでいる。このように、用紙をベルト搬送する場合であっても、変形部分を無理に平らに矯正することなく自然に吸着させて搬送することができる。また、用紙変形を無理に矯正していないため用紙変形の歪が分散された形で大きな浮きや皺を抑えることができる。
【0069】
ベルト搬送部230により用紙220を搬送しつつ各ヘッド210K,210C,210M,210Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより用紙220上にカラー画像を形成し得る。
【0070】
このように、インクジェットヘッドの下を通過する際に、インクジェットヘッドと接触することがなく、また適切に吸着保持されているため、適切にインクを打滴して画像を記録することが可能である。
【0071】
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0072】
図8に示した印字検出部240は、インクジェットヘッド210の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ又はエリアセンサ)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりや着弾位置誤差などの吐出特性をチェックする手段として機能する。各色ヘッド210K,210C,210M,210Yにより印字されたテストチャート又は実技画像が印字検出部240により読み取られ、各色ヘッド210K,210C,210M,210Yの吐出判定が行われる。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
【0073】
印字検出部240の後段には後乾燥部280が設けられている。後乾燥部280は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
【0074】
多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
【0075】
後乾燥部280の後段には、加熱・加圧部290が設けられている。加熱・加圧部290は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ292で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0076】
こうして生成されたプリント物は排紙部204から排出される。
【0077】
〔第3の実施形態〕
次に、用紙をドラム搬送する場合について説明する。
【0078】
図11は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すようにインクジェット記録装置300は、各色インクに対応して設けられた複数のヘッド310K,310C,310M,310Yを有するインクジェットヘッド310と、インクジェットヘッド310のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、用紙320を保持して搬送する円筒形状の搬送ドラム330と、用紙320を搬送ドラム330に適切に吸着させるための用紙押さえローラ340等を備えている。
【0079】
搬送ドラム330は、外周面に用紙320を保持し、モータ(不図示)により図11において反時計回りに回転することで、用紙320を搬送する。搬送ドラム330の外周面に、用紙320の先端部を挟んで保持するグリッパーを設けてもよい。
【0080】
搬送ドラム330のドラム本体外周面には、吸着シート332(図12参照)が巻きつけられている。吸着シート332は、ステンレスで形成された厚みが均一のシートであり、多数の吸着穴(不図示)が貫通している。この吸着シート332の外周面は、用紙ホールド基準面となる。なお、搬送ドラム330及び吸着シート332については、特許文献1の態様を好ましく用いることができる。
【0081】
吸着シート332の外周面には、弾性体334(図12参照)が巻きつけられている。弾性体334は、厚み方向に通気性のある軟質の材質により均一の厚みに形成されており、これまでと同様に、例えば多孔質構造のスポンジを用いることができる。弾性体334の端面の形状や通気遮断部材としてのコーティング膜の形成は、第1、第2の実施形態と同様である。
【0082】
用紙押さえローラ340は、搬送ドラム330の外周面に用紙320を適切に吸着保持させるためのガイド部材であり、搬送ドラム330の外周面に対向し、インクジェットヘッド310よりも用紙320の搬送方向上流側に配置される。
【0083】
インクジェット記録装置300には、給紙部302から用紙320が供給される。ここでは用紙320はすでに表面が印字されており、これから裏面の印刷を行うものとする。
【0084】
給紙部302から供給された用紙320は、搬送ドラム330が反時計回りに回転することで、搬送ドラム330と用紙押さえローラ340との間を通過する。
【0085】
用紙押さえローラ340の表面及び弾性体334の表面は、低摩擦面に形成されている。また、用紙押さえローラ340は、用紙320の厚みに応じて搬送ドラム330(弾性体334)との間の距離を調整可能に構成されている。本実施形態では、搬送ドラム330上の弾性体334の表面と用紙押さえローラ340の用紙接触面との距離が、用紙320の厚さと等しくなるように設定されている。
【0086】
したがって、用紙押さえローラ340は、用紙320を弾性体334に押し付けることなく、用紙320の浮きの部分を弾性体334に沿わせるように回転する。ここで、用紙押さえローラ340の表面及び弾性体334の表面は、用紙320を適切に弾性体334の表面に密着させることができる程度に低摩擦に形成されているため、用紙320の厚み方向の高さを適切に調整することができる。
【0087】
また図11に示したとおり、搬送ドラム330の内部において用紙押さえローラ340を通過した位置からインクジェットヘッド310のノズル面に対向する位置までには、負圧吸引を行う吸引部350が設けられている。吸引部350は、当該位置において吸着シート332の各吸着穴と連通する。
【0088】
用紙押さえローラ340により厚み方向の高さが調整された用紙320は、さらに搬送ドラム330により搬送され、吸引部350により弾性体334上に吸着保持される。
【0089】
図12は、このときの用紙320を模式的に示した図である。用紙320は表面印字等で変形が生じているが、この変形部分は弾性体334に沈み込んでいる。このように、用紙をベルト搬送する場合であっても、変形部分を無理に平らに矯正することなく自然に吸着させて搬送することができる。また、用紙変形を無理に矯正していないため用紙変形の歪が分散された形で大きな浮きや皺を抑えることができる。
【0090】
ヘッド310K,310C,310M,310Yは、用紙320の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド310K,310C,310M,310Yが用紙320の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
【0091】
搬送ドラム330によりさらに用紙320が搬送され、用紙320がインクジェットヘッド310の真下に到達すると、インクジェットヘッド310からインクが打滴され、印刷が行われる。
【0092】
このように、インクジェットヘッドの下を通過する際に、インクジェットヘッドと接触することがなく、また適切に吸着保持されているため、適切にインクを打滴して画像を記録することが可能である。
【0093】
こうして生成されたプリント物は排紙部304から排出される。
【0094】
以上説明したように、これらの実施形態によれば、変形した用紙を浮きや皺を発生させずに保持することができるので、適切に用紙に対してインクを打滴することができる。
【符号の説明】
【0095】
100…用紙保持装置、110…キャリッジ、112,350…吸引部、114,332…吸着シート、115…吸着穴、116,238,334…弾性体、117,239…コーティング膜、120,220,320…用紙、130,200,300…インクジェット記録装置、132,262,340…用紙押さえローラ、134,210,310…インクジェットヘッド、230…ベルト搬送部、236…ベルト、330…搬送ドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吸着穴が設けられた吸着面を有する用紙保持部材と、
前記吸着面上に配置された厚み方向に空気を通す弾性部材と、
前記複数の吸着穴と連通し、該吸着穴を負圧吸引することで前記弾性部材上に用紙を吸着保持する吸引手段と、
前記吸着保持された用紙にインクを吐出して画像を記録するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドと前記用紙保持部材とを相対的に移動させる移動手段と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記弾性部材上の用紙の表面に当接し、該用紙の厚み方向の高さを調整する用紙押さえローラを備えたことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記用紙押さえローラと前記弾性部材との距離を用紙の厚みに応じて調整する調整機構を備えたことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記弾性部材は多孔質構造を有し、前記弾性部材の端面に通気を遮る通気遮断部材が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記弾性部材は、端面における厚み方向の断面が略V字型に形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記用紙保持部材は、複数の吸着穴が設けられたシート状部材が上面に配置されたキャリッジであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記用紙保持部材は、外周上面を吸着面とする無端状のベルトであり、
前記移動手段は、前記無端状のベルトをガイドする1対のローラと、該ローラを回転させる駆動手段とを備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記用紙保持部材は、複数の吸着穴が設けられたシート状部材が外周面に重ねて配置された円筒形状のドラムであり、
前記移動手段は、前記ドラムを回転させる駆動手段を備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−49247(P2013−49247A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189675(P2011−189675)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】