説明

インクジェット記録装置

【課題】取り扱いが容易であり、シートの十分な乾燥をより高い精度で検出することができるインクジェット記録装置を提供する
【解決手段】インクジェット記録装置は、記録ヘッドからのインク吐出によって記録が行われてから排紙が行われるまでの間に、シートを乾燥させる。また、インクジェット記録装置は、シートの記録画像の形成された記録領域に当接可能な当接部材を有している。そして、インクジェット記録装置は、テストパターンが記録されたシートに当接部材を当接させた後のテストパターンと、当接部材と当接していない状態のテストパターンとの間のテストパターンの変化を検出する検出手段を有している。そして、検出されたテストパターンの変化に応じて、乾燥手段によってシートを乾燥させることが必要であるかどうかを判断し、判断結果に応じて以降の同様の条件での記録の際に、シートの乾燥を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートにインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置に関し、特に記録を行った後にシートのさらなる乾燥を行うかどうかの判断を行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録では、シートのインク吸収性やインク定着性の違いによって、記録直後のインク乾燥状態は異なってくる。シートによるインク吸収速度及びインク定着速度は、代表的なシートである、光沢紙、コート紙、普通紙といった紙の分類で大きく異なる。また、同じ種類のシートに記録を行う場合であっても、シートを製造するメーカー間、商品ロット間、記録する温湿度の環境の変化によってもシートによるインク吸収速度及びインク定着速度が異なり、記録後の乾燥状態にバラツキがある。従って、記録装置によって記録が行われた後に一定の期間が経過した後にシートが記録装置から排紙される場合、同一の期間の乾燥が行われた後であっても、記録の際の条件によってはシートの乾燥が不十分である場合がある。シートの乾燥が不十分な状態で排紙された場合、記録のためにシートに打ち込まれたインク滴が十分に乾燥していない状態でシートの記録画像の部分が周囲と接触し、シート上における記録画像の表面が部分的に削られて記録画像に傷が生じる場合がある。特に、インク吸収性やインク定着性に乏しいシートに記録が行われた場合には、記録後の乾燥の進み方が遅く乾燥が不十分であることが多いので、シートが排紙されたときに記録画像に傷が生じ易い。
【0003】
一般に、記録が行われてから時間が長く経過する程、記録画像を形成するインク滴の乾燥が進むため、記録画像に傷が付き難くなる傾向にある。従って、記録画像への傷の発生を軽減させることだけが目的ならば、記録後の乾燥時間を多く設ける程有利であると言える。しかしながら、乾燥時間を長くすると、複数枚のシートに亘って記録を行う場合には、シートへの記録同士の間で必要以上に長い待ち時間が発生し、記録のスループットが低下するという課題がある。
【0004】
このような課題に対し、例えば特許文献1では、記録が行われる前にテスト用のシートに対して乾燥時間が異なる複数のテストパターンが記録され、そのシートが排紙トレイに排紙され、その上に白紙のシートが排紙されている。そのとき、テスト用のシートに記録されたテストパターンがまだ乾燥していない状態であれば、白紙のシートにテストパターンのインクが付着する。テスト用のシートに記録されたテストパターンが乾燥した状態であれば、白紙のシートにはインクは付着せず、その部分のシートは白い状態のままである。このように、白紙のシートへのインクの付着の状態を確認することで、シート上の記録画像が次のシートと接触したとしてもインクが次のシートに付着しない十分な乾燥時間を検出しているインクジェット記録装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−254699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で提案されている技術では、白紙のシートにインクが付着しているかどうかを、テストパターンごとにユーザーが見た目の判断で確認する必要がある。そのため、シートに記録されたテストパターンの画像が十分に乾燥した状態であるかどうかの判断の精度が確実でない場合がある。また、ユーザーの確認作業が必要なことからユーザーの手を煩わせることになり、記録装置の取り扱いが煩雑になってしまう。
【0007】
そこで本発明は、上記の事情に鑑み、取り扱いが容易であり、シートの十分な乾燥時間をより高い精度で検出することができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインクジェット記録装置は、インクによりシートに記録を行う記録手段と、前記記録手段によって記録されたシートに当接することが可能な当接部材と、前記記録手段によってシートに記録されたテストパターンを、前記当接部材を当接させた状態および当接していない状態それぞれにおいて検出する検出手段と、前記検出手段の検出に応じてシートを乾燥させる判断を行う判断手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、記録の行われた後のシートの十分な乾燥をより確実に検出することができるので、シートの乾燥が不十分であることによって生じる記録画像の品質の低下を抑えることができる。また、乾燥を過度に長くすることが抑えられるので、記録のスループットが向上する。また、ユーザーによる判断の必要がないので、インクジェット記録装置の取り扱いをより容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体の構成について模式的に示した斜視図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置の内部の構成について模式的に示した斜視図である。
【図3】図1のインクジェット記録装置の制御系の構成について示したブロック図である。
【図4】図1のインクジェット記録装置によって記録が行われる際の制御フローについて示したフローチャートである。
【図5】図1のインクジェット記録装置によってシートに記録されたテストパターンについて示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置1について模式的に示した斜視図である。インクジェット記録装置1は、インクを吐出してシートに記録を行う記録手段としての記録ヘッド2を搭載して往復移動するキャリッジ20を有している。本実施形態のインクジェット記録装置1は、記録ヘッド2をシートの搬送方向と交差する方向に走査させて1ライン毎に画像を記録する、いわゆるシリアルスキャン形式のインクジェット記録装置である。本実施形態では、シートを搬送する搬送方向と、記録ヘッド2の走査する主走査方向とは直交している。
【0013】
インクジェット記録装置1は、ロール状のシート3を支持するためのレール4を備えている。また、インクジェット記録装置1は、操作用のオペレーションパネル120を有しており、ユーザーはこれを用いてロール状のシート3についての情報等をインクジェット記録装置1へ送信することができる。
【0014】
記録ヘッド2内には、一定量のインクが貯留されている。記録ヘッド2には、インク滴の吐出される不図示の吐出口が複数形成されており、記録ヘッド2内のインクは、吐出口にてメニスカスを形成することにより、記録ヘッド2内に安定に保持されている。記録ヘッド2内部のインク流路のそれぞれには、発熱素子(電気熱変換体)が配置されている。発熱素子を選択的に通電し、その発熱素子から熱エネルギーを発生させることにより、インク流路内のインクが加熱されて膜沸騰により発泡し、そのときの発泡エネルギーによって吐出口からインク滴が吐出される。
【0015】
図2はインクジェット記録装置1の内部の構造について模式的に示した斜視図である。インクジェット記録装置1には、シート3の搬送方向に直交する主走査方向に延在するガイド軸21が取り付けられている。ガイド軸21は、キャリッジ20を貫通しており、キャリッジ20に搭載された記録ヘッド2は、ガイド軸21によって主走査方向への走査を案内されながら支持されている。キャリッジ20の下部には、シート3における記録画像の形成された記録領域に当接可能な当接部材10が取り付けられている。さらに、キャリッジ20には、LEDによって光を照射することが可能な光照射用光源と、光照射用光源から照射された光がシート3に反射した反射光を受光するための受光手段としてのフォトダイオードとを有する検知部30が取り付けられている。
【0016】
記録ヘッド2を搭載したキャリッジ20が所定の待機位置(ホームポジション)にあるときの、記録ヘッド2における吐出口の形成された面である吐出口形成面に対応する位置には、ワイプ5が配置されている。ワイプ5が記録ヘッド2における吐出口形成面に当接した状態で摺動することで、記録ヘッド2の吐出口形成面に付着したインクやゴミを掻き取ることができる。このように、所定の期間ごとに、ワイプ5によって記録ヘッド2における吐出口形成面のワイピングを行うことで、記録ヘッド2の吐出口形成面を清浄に保つことができる。
【0017】
また、インクジェット記録装置1は、不図示の搬送ローラ駆動用モータによって駆動力が伝達されて回転する搬送ローラ22と、搬送ローラ22に従動して回転する従動ローラ23とを有している。搬送ローラ22及び従動ローラ23は、ガイド軸21と同様に主走査方向に延在して配置されている。また、インクジェット記録装置1における搬送ローラ22及び従動ローラ23の搬送方向下流側には、プラテン9が配置されている。シート3が搬送される際には、プラテン9によってシート3が支持される。シート3が搬送される際には、図2に示されるように、プラテン9によりシート3が支持され、搬送ローラ22と従動ローラ23との間にシート3が挟まれてニップされた状態で搬送ローラ22が回転駆動されることにより、シート3が搬送方向に搬送される。シート3が搬送される際には、通常は図2のZ方向に搬送されるが、シート3の先端部の位置を調節するために、搬送ローラ22の回転を逆転させることで、Z方向の逆方向にも搬送することができる。
【0018】
さらに、プラテン9の先端部9Aは、下流側に向かうにつれて下方向へ湾曲して形成されている。従って、シート3が搬送され、シート3の先端部分3Aがプラテン9Aを超えると、自重で下方に垂れる構造となっている。このように、記録ヘッド2からのインク吐出による記録の行われた後のシート3は、自重で下方に垂れて、インクジェット記録装置1から所定の排紙位置に排紙される。このとき、プラテン9は、シート3を所定の排紙位置に排紙させる排紙手段として機能する。また、インクジェット記録装置1にはカッターユニット7が取り付けられており、カッターユニット7は、ロール状のシート3を切断するための刃を備えている。カッターユニット7の刃はプラテン9に設置されたレール8に沿って直進することができ、シート3への記録ヘッド2による記録を終えたシート3をカッターユニット7の刃によって破線3Bに沿って切断することが可能である。シートの切断を終えると、その後カッターユニット7は、元の位置に後退し、引き続いて記録を行うことができる。
【0019】
図3はインクジェット記録装置1における制御系の構成について示したブロック図である。インクジェット記録装置1は、本体駆動部100及び本体制御部200から成る。外部端末装置300のプリンタドライバより画像情報が入力されると、通信ケーブル310から通信インターフェース205を経て、CPU201へ入力された画像情報が送信される。そして、ユーザーにより入力された画像情報は、領域EEPROM202に書き込まれて記憶される。このときの処理を含め、記録に関わる処理全般が行われる際には、記録処理プログラムを格納したROM203、読み書き可能なRAM204が併用される。
【0020】
処理された情報は、CPU201を経由して、本体駆動部100を動作させるそれぞれのドライバへ送信される。ドライバは、スキャンドライバ210、ヘッドドライバ211、モータドライバ212が備えられている。これらのドライバは、それぞれの本体駆動部100へ信号を送る役割を持っている。本体駆動部100は、それぞれスキャン部101、ヘッド部102、キャリッジ110、紙搬送部111、カッター部112があり、ドライバからの信号を受信し、各駆動部を動作させることができる。一方、オペレーションパネル120からの信号は、オペレーションパネルドライバ213を経て、EEPROM202に記憶できる。
【0021】
スキャン部101は、図2の検知部30から光を照射し、その光がシートで反射した反射光を読み取ることで記録画像の濃度を検知することができる。スキャン部101からの信号は、スキャンドライバ210、CPU201を経て、EEPROM202に記憶させることができる。
【0022】
記録ヘッド2は、キャリッジ20及び搬送部111と連動しながら、ヘッドドライバ211及びモータドライバ212からの信号を受信して駆動される。記録を行うときは、記録ヘッド2がキャリッジ20を通じてX方向に走査しながらインクを吐出する記録動作と、Z方向へシートを搬送する搬送部111による搬送動作とを交互に行うことでシートに画像を形成する。
【0023】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置1による記録後のシートの乾燥についての設定を行い、それから記録ごとに行われるシートの乾燥について、図4のフローチャートを用いて説明する。
【0024】
まず、ステップS20で、給紙及び紙送りに関わる処理が行われる。ステップS20では、図1に示されるロール状のシート3をインクジェット記録装置1にセットした後、オペレーションパネル120を用いて、用紙の種類を入力する。用紙選択情報はオペレーションパネルドライバ213へ送られ、CPU201を経て、EEPROM202に情報が書き込まれる。続いて、EEPROM202、ROM203に格納された情報からRAM204を用いて給紙及び紙送りに関する処理が行われる。そこでの処理を基に、信号がCPU201に送信され、それからモータドライバ212を介して搬送部111へ送られる。搬送部111は、モータドライバから受信した信号を基に、ロール状のシート3の先端部分3Aを図2に示されるZ方向に搬送し、プラテン9上までシート3を搬送する。
【0025】
ステップS21では、記録画像情報を取得する処理を行う。端末装置300から記録画像が入力されると、その情報が通信ケーブル310を通って、通信インターフェース205に送信され、さらにCPU201に送信される。また、CPU201に送信された記録画像の情報は、CPU201からEEPROM202及びROM203に送信される。続いて、既に入力されている用紙の種類、記録画像についての情報から、RAM204を用いて、記録画像内の最大濃度の部分での記録画像の濃度を取得し、EEPROM202で情報を記憶させる。
【0026】
次に、ステップS22乃至ステップS26で、テストパターン部分に当接部材10を直接当接させ、当接した後のテストパターンと、当接していない状態のテストパターンとの間の表面状態の差を検知する処理を行う。
【0027】
ステップS22では、ステップS21で取得した記録画像についての情報を受け、記録画像に基づいて、図5に示されるテストパターン410のように用紙先端部にテストパターンの1回目の記録を行う。テストパターンの形成に関しては、記録画像の条件ごとに予めROM212に記憶されているものが使用される。テストパターンを形成する際のインク打ち込みに関しては、ステップS21で取得された記録画像についての情報に基づいて、記録画像に応じてEEPROM202に記憶されている最大濃度情報に従い、ROM203から算出された濃度のものが形成される。
【0028】
続いて、ステップS23で、実際に記録されたテストパターンの濃度をスキャン部101によって読み込むための処理を行う。濃度を読み取るための指示の信号が、CPU201からスキャンドライバ210に送信され、スキャンドライバ210がスキャン部101を動作させることで、スキャン部101がテストパターンの濃度の読み取りを行う。スキャン部101によるテストパターンの濃度の読み取りの際には、図2に示される検知部30のLEDの光源による光照射が行われ、その光がシートで反射した反射光を、フォトダイオードによって受光する。こうすることで、スキャン部101がテストパターン410の濃度を読み込む。スキャン部101によって読み取られたテストパターン410の濃度情報は、スキャンドライバ210を経て、CPU201経由でEEPROM202へ送られ、情報がそこに書き込まれる。
【0029】
ステップS24では、2回目のテストパターンの記録が行われる。2回目のテストパターンの記録の際には、まずシートにおける記録ヘッドに対応した記録位置がテストパターン410と重ならないところに配置されるまでシートの搬送が行われ、そこでテストパターン420の記録が行われる。2回目のテストパターンの記録においても、記録部410の記録が行われたステップS22と同様の方法で行われる。
【0030】
次に、ステップS25において、ステップS24で記録されたテストパターン420に当接部材10を接触させる動作を行う。まず、記録ヘッド2を搭載したキャリッジ20を図2に示されるX方向へ移動させ、主走査方向に関してシートに記録を行う記録部から離れた位置(ここではホームポジション)にキャリッジ20を配置させる。その後、キャリッジ20を下方に移動させ、キャリッジ20に取り付けられた当接部材20がシートの記録面に当接する位置まで当接部材10を移動させる。
【0031】
次に、キャリッジ20を主走査方向におけるシートに記録を行う記録部の方へ移動させる。このとき、当接部材10をシートにおける記録ヘッド2によって記録された記録画像の形成された記録領域に当接した状態で、キャリッジ20が主走査方向に移動する。その結果、当接部材10によってシートの記録領域が擦られることになり、シートに記録されているテストパターン420が当接部材10によって擦られることになる。このとき、シートに記録されたテストパターン420が当接部材10に擦られることにより、インクが乾いた状態でなければ、テストパターン420を形成するためにシートの記録面に打ち込まれているインクの一部が当接部材10によって削り取られる。シートにおける記録面のインクが削り取られた場合には、シートの白地の部分が部分的に露出されるようになり、その部分でのテストパターン420の濃度が低下する。インクが十分に乾いた状態であれば、シートに打ち込まれているインクは削り取られずに、シート上に位置したままである。そのため、当接部材10によってシートの表面が擦られた後であっても、記録画像の濃度はあまり低下しない。
【0032】
当接部材10によるシートの記録面への当接が終わると、キャリッジ20は初期位置のホームポジションに戻り、キャリッジ20がワイプ5と当接する。これにより、当接部材10がシートの記録面に打ち込まれたインクを削り取ったときには、ワイプ5によってワイピングされて当接部材10に付着したインクが除去される。従って、当接部材10におけるシートと当接する部分について、清浄に保つことができる。ワイプ5による当接部材10のワイピングを終えると、キャリッジ20は、シートと当接部材10との間に間隔が設けられつつ、記録に適した高さの位置に移動する。
【0033】
次に、ステップS26において、ステップS25で当接部材10と当接して擦られた後のテストパターン420の濃度を検知する。テストパターンの濃度を検知する方法としては、ステップS23と同様の方法で行われる。
【0034】
次に、ステップS30において、ステップS23及びステップS26で検知した濃度情報をEEPROM202から呼び出す。そして、当接部材10がテストパターン420に当接した後のテストパターンの濃度と、当接していない状態のテストパターンの濃度との間のテストパターン420の濃度比を算出し、これを閾値と比較する。テストパターンの濃度比は、当接部材10が当接した後のテストパターン420の濃度を、当接部材10と当接しないテストパターン410の濃度で除算することで算出される。すなわち、濃度比は、
濃度比=(当接部材10によって擦られた後のテストパターン420の濃度)/(当接部材10と当接しないテストパターン410の濃度)
で算出される。この濃度比によって、当接部材10による当接が行われた後のテストパターンの変化が検出され、シートに打ち込まれたインクの乾燥が十分であるかどうかの判断が行われる。シートに打ち込まれたインクの乾燥が十分でない場合には、後述するように予備乾燥が行われる。これは、インクの乾燥が十分でない場合には、当接部材10による当接によってテストパターンが削り取られることでテストパターンの濃度が低下する特性を利用した判定方法である。濃度比が小さくなる程、当接部材10の当接による濃度の低下が大きく、テストパターン420の表面がそれだけ大きく削り取られたことになる。
【0035】
本実施形態では、濃度比についての閾値が0.85に設定されている。濃度比を算出した結果、濃度比が0.85未満である場合には、シートに打ち込まれているインクが未乾燥であると判断され、予備乾燥有りのステップS30Bの処理が行われる。予備乾燥有りと判断された場合には、その判断結果がEEPROM202へ送信され、その情報を記憶手段に記憶させる。濃度比を算出した結果、濃度比が0.85以上である場合には、予備乾燥無しのステップS30Aの処理が行われ、その判断結果についての情報がEEPROM202へ送信され、その情報が記憶手段に記憶される。
【0036】
次に、ステップS40で、シートにおけるテストパターンの記録された部分を切断する動作が行われる。CPU201よりモータドライバ212へ動作命令が送信されることにより、カッター部112を動作させ、シートが図2及び図5に示される破線3Bで切断される。また、その後、切断後に記録を行えるように、シート3におけるテストパターンの記録されていない側の先端部分(破線3Bの上流側の先端部分)が頭出しの位置まで搬送される。
【0037】
その後、ステップS50乃至ステップS60で、記録が行われ、記録物を排紙する排紙処理が行われる。
【0038】
ステップS50では、ステップS21で入力された画像情報に基づき記録が行われる。続いてステップS51では、EEPROM202を参照し、ステップS30での判断の結果から得られた、予備乾燥が必要かどうかの情報を読み出す。予備乾燥有無についての情報がEEPROM202から読み出された結果、予備乾燥有の判断であった場合には、ステップS52で予備乾燥が行われる。予備乾燥では、記録ヘッド2によるインク吐出によってシートへの記録が行われてから排紙位置へのシートの排紙が行われるまでの間に、シートを乾燥させる。本実施形態では、予備乾燥において、シートの搬送を所定期間に亘って止め、インクジェット記録装置1からのシートの排紙前に、記録面が乾燥するのに必要とされる乾燥時間を設けることで、シートを十分に乾燥させる。本実施形態では、CPU201によって、シートの搬送が所定期間に亘って止められるように搬送が制御されている。従って、搬送を制御するCPU201が、シートを乾燥させることが可能な乾燥手段として機能している。本実施形態では、予備乾燥有と判断されている場合には、シートへの記録が行われてから排紙位置へのシートの排紙が行われるまでの間に、30秒間搬送を止めて、予備乾燥のための時間を設けている。予備乾燥が終わると、その後、シートの排紙が行われる。ステップS30での判断の結果、予備乾燥無しである場合には、予備乾燥は行われずに、そのままステップS60へ進み、シートの排紙が行われる。本実施形態では、ステップS40と同様の方法でシートの記録された部分が切断されてシートの排紙が行われる。
【0039】
ステップS70乃至ステップS73では、次に記録するための画像情報が待機しているかどうかが判定され、これ以降の記録についての繰り返し処理が必要かどうかの判定が行われる。ステップS70で、記録するための画像情報がない場合には、処理を終了し、記録を終了させる。
【0040】
次に記録するための画像情報が待機している場合にはステップS71に進み、待機している画像情報がステップS50で記録された画像と同じ条件の画像情報であるかどうかを判定する。ここでいう同じ条件の画像情報とは、記録される記録画像の中での最大濃度が同程度であることを示す。待機している画像情報が、ステップS50で記録された画像と同じ条件の画像情報であるならば、フローはステップS50へ戻り、予備乾燥時間の有無の判定を含め、ステップS60までの記録処理を繰り返し行う。待機している画像情報が違う条件の画像情報として入力されている場合には、フローはステップS72へ進み、次の画像情報を取得し、ステップS73へ進む。
【0041】
ステップS73では、ステップS21と同様の操作を行うことで、待機している記録画像での最大濃度を取得する。最大濃度が前回の記録で取得されているものと同じ程度である場合には、必要とされる用紙の乾燥は前回の記録で行われたものと同レベルであるため、テストパターンについての処理が行われず、ステップS50へ戻り、次の画像をそのまま記録する。画像濃度が前回の記録で得られたものと異なる場合には、テストパターンの記録の行われるステップS22まで戻り、テストパターンの記録処理及び予備乾燥有無の判断が行われる。このときには、前回の記録で行われたフローと同様の操作によって記録が行われる。
【0042】
なお、本実施形態では、当接した後のテストパターンの濃度と当接していない状態のテストパターンの濃度の比を算出し、算出された濃度比に応じてシートの予備乾燥が必要であるかどうかを判断する形態について説明した。ここで、算出された濃度比によって予備乾燥が必要であると判断された場合には、当接部材が当接したときのテストパターンの濃度の低下の程度に応じて、以降の同様の条件での記録の際に、乾燥の程度を調節するようにしても良い。このように、シートの乾燥の程度を調節するように、シートの乾燥が制御されても良い。本実施形態では、シートを乾燥させる予備乾燥を行う際には、シートの搬送を、濃度の変化に応じて搬送を止める期間の長さを調節することにより、シートの乾燥を制御しても良い。
【0043】
このように、本実施形態のインクジェット記録装置1では、シートへ記録画像の記録を行う前に、予めシートにテストパターンを記録し、テストパターンに当接部材を当接させる。そして、当接部材に当接した後のテストパターンと、当接部材に当接していない状態のテストパターンとの間の変化を検出している。これにより、テストパターンの乾燥が十分であるかどうかの判断が行われ、テストパターンの乾燥が十分でない場合には、その後の記録の際に、予備乾燥が行われる。このように、本発明によれば、当接部材による当接が行われたテストパターンと当接の行われていない状態のテストパターンとの間のテストパターンの変化をセンサ等の光学的な検出手段によって検出することができる。従って、テストパターンに基づいて、ユーザーによる見た目の判断の行われる必要がない。従って、シートの乾燥が必要であるかどうかの判断がセンサ等によって機械的に行うことができるようになり、シートの乾燥が必要であるかどうかの判断をより高精度に行うことができる。
【0044】
従って、さらなるシートの乾燥が必要であるにもかかわらず、そのままシートの排紙が行われることで、シートに打ち込まれたインクが乾燥しないまま排紙されることが抑えられる。従って、記録画像を形成するインクが周囲に接触することで、記録画像の品質が低下することを抑えることができる。また、シートが周囲に接触したときに記録画像の乾燥してないインクが周囲に付着し、周囲を汚してしまうことを抑えることができる。また、シートの乾燥を過度に長くすることが抑えられるので、記録のスループットが向上する。また、乾燥を過度に長くすることを抑えることができる。
【0045】
また、シートの乾燥が必要であるかどうかの判断がインクジェット記録装置側によって行われることになるので、ユーザーによる手間を省くことができ、判断のためにユーザーを煩わせることを抑えることができる。そのため、ユーザーによる取り扱いが容易になり、使用性に優れたインクジェット記録装置を提供することができる。
【0046】
なお、図4に示されるフローチャートは、本発明の実施の形態を示す一例であり、本発明はこの限りではない。
【0047】
また、シートを乾燥させる際には、シートの搬送の途中で搬送を一旦止めることでシートの乾燥を行うこととしたが、本発明はこれに限定されない。ヒータ等のシートを加熱する加熱手段を用いて一定期間に亘ってシートを加熱することとしても良い。このようにすることでシートの乾燥をより短時間で行うことができ、記録の効率を向上させることができる。また、本実施形態では、上記のインクジェット記録装置1は、記録ヘッド2の主走査方向の移動と、シートの副走査方向の搬送と、を伴って画像を記録するいわゆるシリアルスキャンタイプの記録装置である。しかし、本発明はシートの幅方向の全域に亘って延在する記録ヘッドを用いるフルラインタイプの記録装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
2 記録ヘッド
10 当接部材
22 搬送ローラ
30 検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクによりシートに記録を行う記録手段と、
前記記録手段によって記録されたシートに当接することが可能な当接部材と、
前記記録手段によってシートに記録されたテストパターンを、前記当接部材を当接させた状態および当接していない状態それぞれにおいて検出する検出手段と、
前記検出手段の検出に応じてシートを乾燥させる判断を行う判断手段と、
を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記乾燥は、前記記録手段によって記録が行われた後にシートの搬送を止めることでシートを乾燥させることを特徴とする、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記判断手段によってシートを乾燥させると判断されたときには、以降の同様の条件での記録の際にシートの乾燥を行うことを特徴とする、請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記それぞれ検出された前記テストパターンの変化が大きい程、シートの乾燥の程度を大きくすることを特徴とする、請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記当接部材は、前記記録手段を搭載して往復移動するキャリッジに設けられていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記テストパターンの濃度を光学的に検出するための光源と受光手段を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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