説明

インク供給制御装置、該インク供給制御装置を備えた印刷装置、及びインク供給制御方法

【課題】インクタンク内へ落下する状態が正常ではないと判断されたインクがインクヘッドへ供給されるのを未然に防止することができるインク供給制御装置、及び該インク供給制御装置を備えた印刷装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るインク供給制御装置は、少なくとも一部が透明な材質で形成されたインクタンク5と、インクタンク5の下部と上部とを連結するチューブ4と、チューブ4内のインク20を送り出すチューブポンプ(循環部)6と、インクタンク5の透明な材質で形成された部分を通じて、インクタンク5の上部のチューブ4に付加された落下部41から落下するインク20の状態を外部から検知する検知部7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクの状態に応じてインクヘッドへのインクの供給を制御するインク供給制御装置、該インク供給制御装置を備えた印刷装置、及びインク供給制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクヘッドのノズルからインクを吐出して印刷するインク吐出装置は、インクの粒子成分(顔料、金属粒子等)が、インクタンクの内部にて沈降、凝集、堆積、沈殿等(以下、沈降等)するおそれがあった。インクの粒子成分が沈降等した場合、インクが高粘度化してインクヘッドのノズルの目詰まりの原因になって、インクの吐出が不安定になる等、印刷品質を維持することが困難になるという問題があった。
【0003】
そこで、特許文献1では、インクタンクの底部にインクを撹拌するためのマグネチックスターラー回転子を設け、インクタンク内のインクをマグネチックスターラー回転子の回転により撹拌することが可能なインクジェット記録装置用インクタンクが開示されている。特許文献1に開示してあるインクジェット記録装置用インクタンクでは、底部に滞留しやすいインクの粒子成分の沈降等を解消することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−110458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示してあるインクジェット記録装置用インクタンクでは、マグネチックスターラー回転子の破損片等がインクに混入し、インクヘッドのノズルの目詰まりの原因になりやすいという問題点があった。また、特にインクが強磁性体である場合、マグネチックスターラー回転子にインクが付着しやすく、インクの粒子成分が凝集しやすいという問題点があった。
【0006】
また、インクの粒子成分の沈降等が解消しているか否かは、実際にインクヘッドからインクを吐出するまで判断することができなかった。したがって、インクの粒子成分の沈降等を抑制する対策を過剰に取る必要があり、コストダウンが困難になるという問題点もあった。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、落下する状態が正常ではないと判断されたインクがインクヘッドへ供給されるのを未然に防止することができるインク供給制御装置、該インク供給制御装置を備えた印刷装置、及びインク供給制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために第1発明に係るインク供給制御装置は、インクヘッドへのインクの供給を制御するインク供給制御装置において、少なくとも一部が透明な材質で形成されたインクタンクと、該インクタンクの下部と上部とを連結するチューブと、該チューブ内のインクを送り出す循環部と、前記インクタンクの透明な材質で形成された部分を通じて、前記インクタンクの上部の前記チューブに付加された落下部から落下するインクの状態を外部から検知する検知部とを備えることを特徴とする。
【0009】
第1発明では、少なくとも一部が透明な材質で形成されたインクタンクと、該インクタンクの下部と上部とを連結するチューブと、該チューブ内のインクを送り出す循環部と、インクタンクの透明な材質で形成された部分を通じて、インクタンクの上部のチューブに付加された落下部から落下するインクの状態を外部から検知する検知部とを備える。インクヘッドからインクを吐出することなく落下するインクの状態が正常であるか否かを判断することができるので、検知した結果に基づいて、ユーザが落下するインクの状態が正常ではないと判断した場合、インクタンクからインクヘッドへインクを供給しないよう操作することで、インクヘッドのノズルの目詰まりを予防し、インクの吐出を安定して行うことが可能となる。また、チューブを介して循環させたインクについても、インクヘッドのインクの粒子成分の沈降等が解消しているか否かを判断することができるので、インクの粒子成分の沈降等の解消に要する時間を最小限にすることができる。さらに、インクタンク内にてインクの液面にインクが落下するので、インクの粒子成分の撹拌を促し、粒子成分の沈降等を抑制することが可能となる。
【0010】
また、第2発明に係るインク供給制御装置は、第1発明において、前記検知部で検知した結果に基づいて落下するインクの状態が正常であるか否かを判別する判別手段を備え、該判別手段で落下するインクの状態が正常ではないと判別した場合、前記インクタンクから前記インクヘッドへインクを供給しないよう制御することを特徴とする。
【0011】
第2発明では、検知した結果に基づいて落下するインクの状態が正常であるか否かを判別し、落下するインクの状態が正常ではないと判別した場合、インクタンクからインクヘッドへインクを供給しないよう制御する。インクヘッドからインクを吐出することなく落下するインクの状態が正常であるか否かを判別することができるので、検知した結果に基づいて、落下するインクの状態が正常ではないと判別した場合、インクタンクからインクヘッドへインクを供給しないよう動作を制御することで、インクヘッドのノズルの目詰まりを予防し、インクの吐出を安定して行うことが可能となる。また、チューブを介して循環させたインクについても、インクヘッドのインクの粒子成分の沈降等が解消しているか否かを判別することができるので、インクの粒子成分の沈降等の解消に要する時間を最小限にすることができる。さらに、インクタンク内にてインクの液面にインクが落下するので、インクの粒子成分の撹拌を促し、粒子成分の沈降等を抑制することが可能となる。
【0012】
また、第3発明に係るインク供給制御装置は、第1又は第2発明において、前記検知部は撮像装置であり、前記判別手段は該撮像装置で撮像した画像の変化に基づいて落下するインクの状態が正常であるか否かを判別することを特徴とする。
【0013】
第3発明では、撮像装置で撮像した画像の変化に基づいて落下するインクの状態が正常であるか否かを判別するので、落下するインクの形状、色調、幅等の変化を把握することができ、インクの粒子成分の分散度合いが変化したか否かを判別することが可能となる。
【0014】
また、第4発明に係るインク供給制御装置は、第1又は第2発明において、前記検知部は光学センサであり、前記判別手段は該光学センサで検出した値の変化に基づいて落下するインクの状態が正常であるか否かを判別することを特徴とする。
【0015】
第4発明では、光学センサで検出した値の変化に基づいて落下するインクの状態が正常であるか否かを判別するので、落下するインクの形状、色調、幅等の変化を把握することができ、インクの粒子成分の分散度合いが変化したか否かを判別することが可能となる。
【0016】
また、第5発明に係る印刷装置は、第1乃至第4発明のいずれか1つのインク供給制御装置を備えることを特徴とする。
【0017】
第5発明では、上述したインク供給制御装置を備えることにより、インクヘッドからインクを吐出することなく落下するインクの状態が正常であるか否かを判断(判別)することができるので、検知した結果に基づいて、落下するインクの状態が正常ではないと判断(判別)した場合、インクタンクからインクヘッドへインクを供給しないようユーザが操作(動作を制御)することで、インクヘッドのノズルの目詰まりを予防し、インクの吐出を安定して行うことが可能となる。また、チューブを介して循環させたインクについても、インクの粒子成分の沈降等が解消しているか否かを判断(判別)することができるので、インクの粒子成分の沈降等の解消に要する時間を最小限にすることができる。さらに、インクタンク内にてインクの液面にインクが落下するので、インクの粒子成分の撹拌を促し、粒子成分の沈降等を抑制することが可能となる。
【0018】
次に、上記目的を達成するために第6発明に係るインク供給制御方法は、インクタンクからインクヘッドへのインクの供給を制御するインク供給制御方法であって、前記インクタンク内に貯留されたインクを下方から上方へ送り出し、インクの液面に上方からインクを落下させる工程と、落下させたインクの状態を検知することによりインクの状態が正常であるか否かを判別する工程と、インクの状態が正常であるか否かに基づいて、前記インクタンクから前記インクヘッドへのインクの供給を制御する工程とを含むことを特徴とする。
【0019】
第6発明では、インクタンク内に貯留されたインクを下方から上方へ送り出し、インクの液面に上方からインクを落下させる。落下させたインクの状態を検知することによりインクの状態が正常であるか否かを判別し、インクの状態が正常であるか否かに基づいて、インクタンクからインクヘッドへのインクの供給を制御する。インクヘッドからインクを吐出することなく落下するインクの状態が正常であるか否かを判断(判別)することができるので、検知した結果に基づいて、落下するインクの状態が正常ではないと判断(判別)した場合、インクタンクからインクヘッドへインクを供給しないようユーザが操作(動作を制御)することで、インクヘッドのノズルの目詰まりを予防し、インクの吐出を安定して行うことが可能となる。また、チューブを介して循環させたインクについても、インクの粒子成分の沈降等が解消しているか否かを判断(判別)することができるので、インクの粒子成分の沈降等の解消に要する時間を最小限にすることができる。さらに、インクタンク内にてインクの液面にインクが落下するので、インクの粒子成分の撹拌を促し、粒子成分の沈降等を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
上記構成によれば、インクヘッドからインクを吐出することなく落下するインクの状態が正常であるか否かを判断(判別)することができるので、検知した結果に基づいて、落下するインクの状態が正常ではないと判断(判別)した場合、インクタンクからインクヘッドへインクを供給しないようユーザが操作(動作を制御)することで、インクヘッドのノズルの目詰まりを予防し、インクの吐出を安定して行うことが可能となる。また、チューブを介して循環させたインクについても、インクの粒子成分の沈降等が解消しているか否かを判断(判別)することができるので、インクの粒子成分の沈降等の解消に要する時間を最小限にすることができる。さらに、インクタンク内にてインクの液面にインクが落下するので、インクの粒子成分の撹拌を促し、粒子成分の沈降等を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に係るインク供給制御装置を備えるインクジェット式印刷装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るインク供給制御装置のインクタンクの構成を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るインク供給制御装置のインクタンクの他の構成を示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るインク供給制御装置のチューブに付加された落下部の構成を模式的に示す拡大断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るインク供給制御装置のインクタンクの他の構成を示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るインク供給制御装置のチューブポンプの構成を示す模式図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係るインク供給制御装置の落下するインクの状態を説明する模式図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係るインク供給制御装置を備えるインクジェット式印刷装置の構成を模式的に示す概略図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係るインク供給制御装置を備えるインクジェット式印刷装置の、インク供給開閉弁を設ける場合の構成を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るインク供給制御装置を備えるインクジェット式印刷装置の概略構成を示す模式図である。図1に示すインクジェット式印刷装置1は、インクヘッド2と、インクタンク5、チューブ4、チューブポンプ(循環部)6及び撮像装置7からなるインク供給制御装置10と、真空ポンプ35と、圧縮空気供給源36と、制御装置37とを備えている。インクヘッド2は、インク20を吐出する複数のノズル21の開口部22を一面に形成してあり、圧電素子等によりノズル21内のインク20を押出すことで、ノズル21の開口部22からインク20を吐出する。圧電素子等は、制御装置37により駆動制御される。インクヘッド2のサイズは、例えば、長さが略120mm、幅が略10mm、高さが略100mmである。ノズル21の数は、インク20を吐出して印刷する対象物により異なり数十本〜数百本程度であり、ノズル21のピッチは広くて1mm程度である。なお、ノズル21の開口部22の配列は、一列であっても、複数列であっても良い。また、複数のノズル21の開口部22の全てが連続して配列されている必要はない。
【0024】
インクタンク5は、インクヘッド2へ供給するインク20を貯留する。インクジェット式印刷装置1で使用するインク20は、例えば、顔料系インク、金属粒子(電極材料であるAu、Ag、Cu、Pd、Ni)、又は導電性粒子を含むインクであり、液体中に粒子成分(顔料、金属粒子等)が分散している。なお、インク20は、金属粒子等に加えてセラミック、樹脂等を含んでも良い。また、インク20の粘度は、40mPa・s以下の低粘度が好ましく、特に10mPa・s〜25mPa・sの粘度が好ましい。インクタンク5の容量は、例えば50mLである。インクタンク5の下部には、インク20をインクヘッド2へ供給する通路の入口となる供給口8が設けられている。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態1に係るインク供給制御装置10のインクタンク5の構成を示す模式図である。図2に示すように、インクタンク5は円柱状に形成されており、チューブ4は、インクタンク5の下部と上部とを連結している。チューブ4は、インクタンク5の上部の側面に固定され、インクタンク5の内部に延伸している。インクタンク5の内部に延伸している部位をチューブ4の落下部41とする。落下部41の下方先端とインクタンク5内のインク20の液面との間に所定の距離を設け、落下部41の下方先端からインク20の液面にインク20を落下させる。
【0026】
図3は、本発明の実施の形態1に係るインク供給制御装置10のインクタンク5の他の構成を示す模式図である。図3に示すように、落下部41をL字状のステンレス製配管とし、インクタンク5の側面にバーブ継手9で固定してチューブ4に付加しても良い。
【0027】
図4は、本発明の実施の形態1に係るインク供給制御装置10のチューブ4に付加された落下部41の構成を模式的に示す拡大断面図である。図4(a)の構成では、インクタンク5の上部内壁より下側に、落下部41を突出させている。また、図4(b)の構成では、インクタンク5の上部内壁の周辺部分を撥液処理した開口部を落下部41としている。これにより、インクタンク5内へインク20を確実に落下させることができる。
【0028】
インクタンク5は、ポリプロピレン、ガラス等の透明な材質で形成されており、透明な材質で形成された部分を通して外部から内部を見ることが可能となっている。もちろん、インクタンク5の全面が透明である必要はなく、後述する撮像装置7等の検知部を用いて、落下するインク20の状態を外部から検知することが可能でありさえすれば良い。
【0029】
図5は、本発明の実施の形態1に係るインク供給制御装置10のインクタンク5の他の構成を示す模式図である。図2と同様、インクタンク5は円柱状に形成されており、チューブ4は、インクタンク5の下部と上部とを連結している。図5に示すインクタンク5は、撮像装置(検知部)7で撮像することができるように、観察窓51を一部に設けてある。観察窓51を通じて、落下するインク20の状態を外部から検知することができる。
【0030】
また、チューブ4は、シリコン系のチューブであり、外部からの押圧力に応じて変形する材質のチューブであれば特に限定されるものではない。本実施の形態では、チューブ4の内径を例えば3mmとする。
【0031】
チューブ4の中途には、チューブ4内のインク20を送り出す循環部として、チューブポンプ6を備えている。チューブポンプ6の動作は制御装置37により制御される。図6は、本発明の実施の形態1に係るインク供給制御装置10のチューブポンプ6の構成を示す模式図である。
【0032】
チューブポンプ6は、内周が略円形である筐体63の内周に沿って、弾性を有するチューブ4を配置し、中央で回転するロータ61の互いに対向する位置に設けてある一対のローラ62でチューブ4を押圧する。ロータ61の回転により一対のローラ62を移動させ、チューブ4内のインク20をチューブ4に沿って押圧することでインク20を送り出す。図6の例では、ロータ61が時計回りに回転しているので、インク20はチューブ4が連結されたインクタンク5の下部から吸引され、連結されたインクタンク5の上部へと送り出される。
【0033】
一対のローラ62が通過した後は、チューブ4の押圧された部分は復元力により元の形状へ戻り、体積が元に戻る。チューブ4の体積が元に戻ることでインク20が連続してインクタンク5の下部から吸引される。
【0034】
チューブポンプ6は、弁を用いていないので、インク20のように粘性を有する液体を移送するのに適しており、唯一の消耗品であるチューブ4のみを交換すれば良いという高いメンテナンス性を有している。もちろん、図6に示す構成のチューブポンプ6に限定されるものではなく、インク20を確実に循環させることができるアクチュエータなら何でも良い。
【0035】
図1に戻って、インクタンク5の側方には、インクタンク5の内部を撮像することが可能な撮像装置(検知部)7を備えている。撮像装置7で撮像した画像データは、制御装置37へ送信され、画像データに基づいてインクタンク5内のインク20の粒子成分の分散度合いが変化したか否かをユーザが判断する。
【0036】
具体的には、インクタンク5にインク20を供給した直後の、落下部41からインク20の液面に対して落下するインク20の状態を基準として、ユーザが落下状態の変化を判断する。図7は、本発明の実施の形態1に係るインク供給制御装置10の落下するインク20の状態を説明する模式図である。
【0037】
図7(a)は、インクタンク5にインク20を供給した直後の、落下部41から落下するインク20の状態を示している。この場合、インク20の粒子成分の沈降等が解消していないので、インク20は、落下部41から一定の幅で連続して落下する。
【0038】
一方、次第にインク20の粒子成分が沈降等した場合には、チューブ4が連結されたインクタンク5の下部における滞留等が原因となって、図7(b)に示すように断続的に落下したり、図7(c)に示すように幅Wが図7(a)より広くなったりする。また、インク20が劣化等した場合には、図7(d)に示すようにインク20の色が変化することもある。
【0039】
このように、撮像装置7で撮像した画像データに基づいて、落下するインク20の状態を確認し、落下するインク20の連続性の有無、幅、色調の変化等を算出し、ユーザは、例えばインクタンク5にインク20を供給した直後に算出した値から10%程度変化したと判断した場合に、インク20の落下状態が正常ではないと判断する。
【0040】
図1に戻って、インクタンク5の上部には、インクタンク5内の空気を吸引して内部を負圧状態(1〜3kPa)にするための真空経路31と、圧縮空気(圧縮ガス)を供給するためのガス供給経路32とが接続されている。定常的にノズル21からインク20が垂れ落ちないように、密閉されたインクタンク5の上部を負圧状態としている。これにより、負圧によりインクヘッド2へのインク20の供給を停止することができ、インク20の粒子成分の沈降等が解消するまで、インクタンク5内のインク20を連続的に循環させることができる。
【0041】
一方、印刷時にノズル21から吐出する量よりも多量にインク20を排出させる場合(パージ時)、真空経路31に設けてある負圧用の開閉弁33を閉じ、ガス供給経路32に設けてある圧縮空気用の開閉弁34を開くことで、インクタンク5内に圧縮空気を供給する。インクタンク5内に圧縮空気を供給することにより、インクタンク5内のインク20をノズル21の開口部22から押出し、印刷時にノズル21から吐出する量よりも多量にインク20を排出することができる(パージ動作)。なお、負圧用の開閉弁33は、圧力調整弁を介して真空ポンプ35に接続してある。また、圧縮空気用の開閉弁34は、圧力調整弁を介して圧縮空気供給源36に接続してある。さらに、負圧用の開閉弁33及び圧縮空気用の開閉弁34の開閉は、制御装置37で制御している。
【0042】
インクヘッド2の下方には、被印刷物73を載置したステージ72を配置してある。被印刷物73は、ステージ72に吸着され、ステージ72に対して移動しないように固定される。ステージ72は、三軸方向に移動することが可能であり、インクヘッド2のノズル21から吐出するインク20の位置に合わせて、載置した被印刷物73を移動させる。なお、ステージ72の移動は、制御装置37で制御している。
【0043】
以下、本発明の実施の形態1に係るインク供給制御装置10を備えるインクジェット式印刷装置1のインク供給制御動作を説明する。まず、ガス供給経路32に設けてある圧縮空気用の開閉弁34を閉じて、真空経路31に設けてある負圧用の開閉弁33を開き、インクタンク5の上部を負圧状態にする。この状態でチューブポンプ6を起動させ、チューブ4を押圧することによりチューブ4内のインク20をインクタンク5の下部側から上部側へ送り出す。
【0044】
チューブ4内のインク20は、チューブ4内を移動して落下部41からインクタンク5内のインク20の液面に落下する。インクタンク5にインク20を供給した直後は、インク20の劣化もなく、粒子成分の沈降等も解消していることから、インク20は落下部41から連続して一定の幅で落下する。
【0045】
制御装置37は、真空経路31に設けてある負圧用の開閉弁33を適度に閉じ、ガス供給経路32に設けてある圧縮空気用の開閉弁34を開いて、インクタンク5内に貯留してあるインク20をインクヘッド2へ供給する。つまり、吸引の程度を開閉弁33の閉じ具合で調整することにより、印刷に必要な分量のインク20をインクヘッド2へ供給することができる。
【0046】
撮像装置7は、落下部41から落下するインク20を撮像する。ユーザは、撮像した画像データに基づいて、落下するインク20の連続性の有無、幅の変化、色調の変化等を確認し、例えばインクタンク5にインク20を供給した直後に算出した値から10%程度変化したと判断した場合に、インク20の落下状態が正常ではないと判断する。この場合、制御装置37は、ユーザによる図示しない入力装置からの入力を受け付け、開閉弁34を閉じて開閉弁33を開くことにより、インクタンク5からインクヘッド2へインク20を供給しないよう操作する。
【0047】
以上のように本実施の形態1によれば、インクヘッド2からインク20を吐出することなく落下するインク20の状態が正常であるか否かを判断することができるので、検知した結果に基づいて、ユーザが落下するインク20の状態が正常ではないと判断した場合、インクタンク5からインクヘッド2へインク20を供給しないよう操作することで、インクヘッド2のノズル21の目詰まりを予防し、インク20の吐出を安定して行うことが可能となる。また、チューブ4を介して循環させたインク20についても、インク20の粒子成分の沈降等が解消しているか否かを判断することができるので、インク20の粒子成分の沈降等の解消に要する時間を最小限にすることができる。さらに、インクタンク5内にてインク20の液面にインク20が落下するので、インク20の粒子成分の撹拌を促し、粒子成分の沈降等を抑制することが可能となる。また、インク20の循環経路をインクタンク5及びチューブ4により閉じたループで形成しているので、外部からのコンタミネーションが生じる可能性がないことは言うまでもない。
【0048】
(実施の形態2)
本実施の形態2に係るインク供給制御装置を備えるインクジェット式印刷装置1の概略構成は、実施の形態1と同様であることから、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する。本実施の形態2は、落下するインク20の状態に応じて制御装置37がインク20の状態が正常であるか否かを判別して、正常ではないと判別した場合、自動的にインクヘッド2へインク20を供給しないよう動作を制御する点で実施の形態1と相違する。
【0049】
図8は、本発明の実施の形態2に係るインク供給制御装置10を備えるインクジェット式印刷装置1の構成を模式的に示す概略図である。図8に示すように、インクタンク5は円柱状に形成されており、チューブ4は、インクタンク5の下部と上部とを連結している。チューブ4は、上部からインクタンク5の内部に延伸しており、落下部41からインクタンク5内のインク20の液面にインク20が落下する。
【0050】
インクタンク5は、ポリプロピレン、ガラス等の透明な材質で形成されており、外部から内部を見ることが可能となっている。もちろん、インクタンク5の全面が透明である必要はなく、撮像装置7で落下するインク20の状態を撮像することが可能でありさえすれば良い。
【0051】
チューブ4の中途には、チューブ4内のインク20を送り出す循環部として、チューブポンプ6を備えている。チューブポンプ6の動作は制御装置37により制御される。もちろん、チューブポンプ6に限定されるものではなく、インク20を確実に循環させることができるアクチュエータなら何でも良い。
【0052】
インクタンク5の側方には、インクタンク5の内部を撮像することが可能な撮像装置(検知部)7を備えている。撮像装置7で撮像した画像データは、制御装置37へ送信され、制御装置37は、判別手段として機能し、画像データに基づいてインクタンク5内のインク20の粒子成分の分散度合いが変化したか否かを判別する。
【0053】
具体的には、インクタンク5にインク20を供給した直後の、落下部41からインク20の液面に対して落下するインク20の状態を基準として、制御装置37が落下状態の変化を判別する。制御装置37は、インクタンク5にインク20を供給した直後の撮像装置7で撮像した画像データを記憶しておき、その後に撮像した画像データと比較する。
【0054】
例えば、インク20の粒子成分が沈降等した場合には、制御装置37は、落下するインク20の連続性の有無を判別する。ここでは、予め記憶してある画像データと撮像した画像データとを比較して落下するインク20が連続的であるか否かを判別し、連続的でないと判別した場合には、開閉弁34を閉じて開閉弁33を開くよう動作を制御する。これにより、インクタンク5の上部は負圧状態となり、インク20はインクヘッド2へ供給されない。
【0055】
また、制御装置37は、落下するインク20の幅が変化したか否かを判別する。ここでは、記憶してある画像データにおけるインク20の幅と、撮像した画像データにおけるインク20の幅とを比較し、10%以上変化したと判別した時点で開閉弁34を閉じて開閉弁33を開くよう動作を制御する。これにより、インクタンク5の上部は負圧状態となり、インク20はインクヘッド2へ供給されない。
【0056】
さらに、制御装置37は、落下するインク20の色調が変化したか否かを判別する。ここでは、カラー画像データを撮像しておき、記憶してあるカラー画像データにおける落下するインク20の色調(明度、彩度等)と、撮像した画像データにおける落下するインク20の色調(明度、彩度等)とを比較し、10%以上変化したと判別した時点で開閉弁34を閉じて開閉弁33を開くよう動作を制御する。これにより、インクタンク5の上部は負圧状態となり、インク20はインクヘッド2へ供給されない。
【0057】
なお、真空ポンプ35の開閉弁34を閉じて開閉弁33を開くよう動作を制御することに限定されるものではなく、インクタンク5とインクヘッド2との間にインク供給開閉弁を設け、インク供給開閉弁の開閉動作を制御しても良い。図9は、本発明の実施の形態2に係るインク供給制御装置10を備えるインクジェット式印刷装置1の、インク供給開閉弁を設ける場合の構成を模式的に示す概略図である。
【0058】
図9に示すように、インクタンク5は円柱状に形成されており、チューブ4は、インクタンク5の下部と上部とを連結している。インクタンク5の側方には、筒体5の内部を撮像することが可能な撮像装置(検知部)7を備えている。撮像装置7で撮像した画像データは、制御装置37へ送信され、制御装置37は、画像データに基づいてインクタンク5内のインク20の粒子成分の分散度合いが変化したか否かを判別する。
【0059】
具体的には、インクタンク5にインク20を供給した直後の、落下部41からインク20の液面に対して落下するインク20の状態を基準として、落下する状態の変化を判別する。制御装置37は、インクタンク5にインク20を供給した直後の撮像装置7で撮像した画像データを記憶しておき、その後に撮像した画像データと比較する。
【0060】
例えば、インク20の粒子成分が沈降等した場合には、制御装置37は、落下するインク20の連続性の有無を判別する。ここでは、予め記憶してある画像データと撮像した画像データとを比較して落下するインク20が連続的であるか否かを判別し、連続的でないと判別した場合には、開閉弁39を閉じるよう動作を制御する。これにより、インクヘッド2への流路は閉鎖され、インク20はインクヘッド2へ供給されない。
【0061】
また、制御装置37は、落下するインク20の幅が変化したか否かを判別する。ここでは、制御装置37は、記憶してある画像データにおける落下するインク20の幅と、撮像した画像データにおける落下するインク20の幅とを比較し、10%以上変化したと判別した時点で開閉弁39を閉じるよう動作を制御する。これにより、インクヘッド2への流路は閉鎖され、インク20はインクヘッド2へ供給されない。
【0062】
さらに、制御装置37は、落下するインク20の色調が変化したか否かを判別する。ここでは、カラー画像データとして撮像しておき、記憶してあるカラー画像データにおける落下するインク20の色調(明度、彩度等)と、撮像した画像データにおける落下するインク20の色調(明度、彩度等)とを比較し、10%以上変化したと判断した時点で開閉弁39を閉じるよう動作を制御する。これにより、インクヘッド2への流路は閉鎖され、インク20はインクヘッド2へ供給されない。
【0063】
以上のように本実施の形態2によれば、制御装置37が判別手段として機能することにより、落下するインク20の状態が正常であるか否かを判別することができ、正常ではないと判別した場合、インクタンク5からインクヘッド2へインク20を供給しないよう動作を制御することで、インクヘッド2のノズル21の目詰まりを予防し、インク20の吐出を安定して行うことが可能となる。また、チューブ4を介して循環させたインク20についても、インク20の粒子成分の沈降等が解消しているか否かを判別することができるので、インク20の粒子成分の沈降等の解消に要する時間を最小限にすることができる。さらに、インクタンク5内にてインク20の液面にインク20が落下するので、インク20の粒子成分の撹拌を促し、粒子成分の沈降等を抑制することが可能となる。
【0064】
なお、本実施の形態1及び2において、撮像装置7の代わりに光学センサを用いても良い。この場合、光が透過するか否かに応じて、落下するインク20が連続的であるか否かを判別することができる。また、反射光の受光範囲により、落下するインク20の幅が変化したか否かを判別することもできる。さらに、反射光のスペクトルにより、落下するインク20の色調(明度、彩度等)が変化したか否か、透過率が変化したか否か等も判別することができる。
【0065】
その他、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内であれば多種の変形、置換等が可能であることは言うまでもない。例えば、本発明に係るインク供給制御装置10をインクジェット式印刷装置1に用いることに限定されるものではなく、例えばジェットディスペンサ、湿式電子写真装置等に用いても同様の効果が期待できる。
【符号の説明】
【0066】
1 インクジェット式印刷装置
2 インクヘッド
4 チューブ
5 インクタンク
6 チューブポンプ(循環部)
7 撮像装置(検知部)
8 供給口
10 インク供給制御装置
20 インク
33、34、39 開閉弁
35 真空ポンプ
36 圧縮空気供給源
37 制御装置(判別手段)
41 落下部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクヘッドへのインクの供給を制御するインク供給制御装置において、
少なくとも一部が透明な材質で形成されたインクタンクと、
該インクタンクの下部と上部とを連結するチューブと、
該チューブ内のインクを送り出す循環部と、
前記インクタンクの透明な材質で形成された部分を通じて、前記インクタンクの上部の前記チューブに付加された落下部から落下するインクの状態を外部から検知する検知部と
を備えることを特徴とするインク供給制御装置。
【請求項2】
前記検知部で検知した結果に基づいて落下するインクの状態が正常であるか否かを判別する判別手段を備え、
該判別手段で落下するインクの状態が正常ではないと判別した場合、前記インクタンクから前記インクヘッドへインクを供給しないよう制御することを特徴とする請求項1に記載のインク供給制御装置。
【請求項3】
前記検知部は撮像装置であり、前記判別手段は該撮像装置で撮像した画像の変化に基づいて落下するインクの状態が正常であるか否かを判別することを特徴とする請求項1又は2に記載のインク供給制御装置。
【請求項4】
前記検知部は光学センサであり、前記判別手段は該光学センサで検出した値の変化に基づいて落下するインクの状態が正常であるか否かを判別することを特徴とする請求項1又は2に記載のインク供給制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインク供給制御装置を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
インクタンクからインクヘッドへのインクの供給を制御するインク供給制御方法であって、
前記インクタンク内に貯留されたインクを下方から上方へ送り出し、インクの液面に上方からインクを落下させる工程と、
落下させたインクの状態を検知することによりインクの状態が正常であるか否かを判別する工程と、
インクの状態が正常であるか否かに基づいて、前記インクタンクから前記インクヘッドへのインクの供給を制御する工程と
を含むインク供給制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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