インク式印刷機器において少なくとも1つのプリントバーを印刷位置に位置決めする装置
【課題】インク式印刷機器において少なくとも1つのプリントバーを印刷位置に位置決めする装置を改良して、プリントバーを印刷位置に精確に位置決めできるものを提供する。
【解決手段】プリントバー1ごとに2つの駆動兼ガイドユニットAFが設けられており、駆動兼ガイドユニットは、ガイド手段5と位置決め板8とを備えており、プリントバーは、駆動兼ガイドユニットごとに、位置決めピン9を備えたプリントバー収容部11を備えており、ガイド手段およびプリントバー収容部は、駆動兼ガイドユニットにプリントバーを嵌め込む際に、プリントバーのプリントバー収容部が、駆動兼ガイドユニットのガイド手段に浮遊支承式に載置され、ガイド手段を印刷位置に調節したあとで、プリントバーが駆動兼ガイドユニットにセンタリングされかつロックされ、その際、位置決めピンが位置決め板に係入するように、形成されている。
【解決手段】プリントバー1ごとに2つの駆動兼ガイドユニットAFが設けられており、駆動兼ガイドユニットは、ガイド手段5と位置決め板8とを備えており、プリントバーは、駆動兼ガイドユニットごとに、位置決めピン9を備えたプリントバー収容部11を備えており、ガイド手段およびプリントバー収容部は、駆動兼ガイドユニットにプリントバーを嵌め込む際に、プリントバーのプリントバー収容部が、駆動兼ガイドユニットのガイド手段に浮遊支承式に載置され、ガイド手段を印刷位置に調節したあとで、プリントバーが駆動兼ガイドユニットにセンタリングされかつロックされ、その際、位置決めピンが位置決め板に係入するように、形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク式印刷機器において少なくとも1つのプリントバーを印刷位置に位置決めする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の材料、たとえば紙から成る被印刷物、たとえばシートまたは帯状の記録担体を単色または多色で印刷するために、インク式印刷機器が用いられる。そのようなインク式印刷機器の構造は公知である(たとえば欧州特許公開第0788882号明細書参照)。たとえばドロップオンデマンド(DoD)方式で作動するインク式印刷機器は、印刷ユニットとして、インク溝を備えた単数または複数のプリントヘッドを有するノズルを備えており、ノズルのアクチュエータは、プリンタ制御装置により操作されて、被印刷物に向けられるインキ滴を形成し、その際、印刷像のための印刷点が形成される。アクチュエータは、インキ滴をサーマル式(バブルジェット)またはピエゾ式に形成する。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許公開第19726642号明細書において、インクプリントヘッドとクリーニング兼シール装置とを位置決めするための装置が開示されている。インクプリントヘッドは、印刷位置からクリーニング位置へ、また再び元の位置へ旋回可能である。クリーニング兼シール装置は、インクプリントヘッドに対して接近および離間する方向に調節可能である。クリーニング兼シール装置は、シールキャップと払拭リップとを備えている。
【0004】
インクジェット式印刷システムでは、インクのインクヘッドは、プリントバーに機械式に取り付けることができる。印刷運転状態で、クリーニングおよび保守のために、プリントヘッドのノズルは、それぞれ被印刷物に対して異なる距離を占める必要がある。このためにプリントバーひいてはプリントヘッドは、鉛直方向に、それぞれ被印刷物に対して異なる距離にある位置に移動可能である。2つの位置を設定する必要がある:
・印刷位置:被印刷物に対して平行のプリントヘッドの位置決め。このためにプリントバーは、高さ調節可能であるか、または被印刷物に対して傾斜してもしくは角度を成して調節可能であり、かつ被印刷物の走行方向に対して横向きの並進運動で調節可能である必要がある。
・クリーニング位置:プリントヘッドのノズルをクリーニングするための位置。クリーニングに際して、たとえばインクが、正圧または負圧により、プリントヘッドのノズルを介して押し出されるか、または吸い込まれる。インクは、次いで単数または複数のゴムリップ(ワイパと云われる)により払拭される。このためにプリントバーがゴムリップを越えて移動可能であるか、またはゴムリップがプリントバーを越えて移動可能である。ゴムリップに対するプリントバーの精確な位置決めが必要であり、その際、ゴムリップとノズルとの間の一定のオーバーラップを確保する必要がある。
【0005】
米国特許第6095701号明細書において、プリントヘッドを、3方向に調整可能であるようにプリントヘッド収容部に格納することが公知である。これによりプリントヘッドを使用位置で調整することができる。
【0006】
米国特許第7090329号明細書において、印刷ユニットが記載されており、個の印刷ユニットでは、プリントヘッドがロッドに配置されている。プリントヘッドは、ロッドに沿って摺動可能であり、加えて、ロッドはプリントヘッドと共に回動可能である。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許公開第10057062号明細書において、調整方法が記載されており、この調整方法に従って、複数のプリントヘッドを印刷物に対して位置決めすることができる。そのために、プリントヘッドは、相互に印刷方向に対して横向きに移動可能である。これにより印刷像は、印刷方向に対して横向きに調節することができる。
【0008】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第69301763号の翻訳文において、インク式印刷機器が開示されており、このインク式印刷機器では、複数のプリントヘッドがキャリッジ中央に配置されており、その際、プリントヘッドは、印刷媒体の方向に対して平行かつ垂直に運動可能である。その際、プリントヘッドは、相互にずらして、または端部で向き合って配置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許公開第0788882号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許公開第19726642号明細書
【特許文献3】米国特許第6095701号明細書
【特許文献4】米国特許第7090329号明細書
【特許文献5】ドイツ連邦共和国特許公開第10057062号明細書
【特許文献6】ドイツ連邦共和国特許出願公開第69301763号の翻訳文
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、冒頭で述べたような、インク式印刷機器において少なくとも1つのプリントバーを印刷位置に位置決めする装置を改良して、プリントバーを印刷位置に精確に位置決めできるものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題を解決するために本発明の構成では、インク式印刷機器において少なくとも1つのプリントバーを印刷位置に位置決めする装置において、プリントバーごとに2つの駆動兼ガイドユニットが設けられており、駆動兼ガイドユニットは、調節可能な1つのガイド手段と少なくとも1つの位置決め板とをそれぞれ備えており、プリントバーは、駆動兼ガイドユニットごとに、調節可能な位置決めピンを備えたプリントバー収容部を備えており、駆動兼ガイドユニットのガイド手段およびプリントバーのプリントバー収容部は、次のように形成されていて、つまり、駆動兼ガイドユニットにプリントバーを嵌め込む際に、プリントバーのプリントバー収容部が、駆動兼ガイドユニットのガイド手段に浮遊支承式に載置され、ガイド手段を印刷位置に調節したあとで、プリントバーが駆動兼ガイドユニットにセンタリングされかつロックされ、その際、位置決めピンが位置決め板に係入するように、形成されている。
【0012】
好適には、少なくとも1つの位置決め板が、駆動兼ガイドユニットに調節可能に配置されている。
【0013】
好適には、駆動兼ガイドユニットごとに、相互間隔を置いて2つの位置決め板が設けられており、位置決め板は、プリントバー収容部内で調節可能に配置された位置決めピンと協働し、プリントバーは、4つの位置決め点で、駆動兼ガイドユニットにセンタリングされかつロックされるようになっている。
【0014】
好適には、第1の位置決め板もしくは第2の位置決め板にそれぞれ凹所が設けられており、プリントバー収容部に配置された位置決めピンは、ガイド手段がプリントバー収容部と共に降下すると、位置決め板の凹所に係入するようになっている。
【0015】
好適には、第1の駆動兼ガイドユニットに第1の位置決め板が設けられており、第1の位置決め板は、円錐形の凹所を備えており、第2の駆動兼ガイドユニットに第2の位置決め板が設けられており、第2の位置決め板は、角柱の凹所を備えている。
【0016】
好適には、凹所は、傾斜した側面を備えている。
【0017】
好適には、両方の駆動兼ガイドユニットに、それぞれ第3の位置決め板が設けられており、第3の位置決め板は、扁平な表面を有している。
【0018】
好適には、位置決めピンは、先端で丸く形成されており、位置決めピンと位置決め板に設けられた凹所との間に、凹所に位置決めピンが係入し始めてからロックされるまえに、遊びが形成されるようになっている。
【0019】
好適には、ガイド手段は、駆動兼ガイドユニットごとにそれぞれ少なくとも1つの収容ピンを備えており、収容ピンは、それぞれプリントバー収容部に設けられた収容孔に係入するようになっており、各収容孔の直径は、駆動兼ガイドユニットにプリントバーを浮遊支承するために、各収容ピンの直径よりも大きくなっており、収容ピンに被せられるばね手段が設けられており、ばね手段は、ばね力を、ガイド手段に向かってプリントバー収容部に及ぼすようになっている。
【0020】
好適には、駆動兼ガイドユニットにおけるプリントバーの浮遊支承の遊びが、第1の位置決め板の凹所の係入直径よりも小さく選択されているか、もしくは第2の位置決め板の角柱の凹所の係入幅よりも小さく選択されている。
【0021】
好適には、インク式印刷機器において印刷位置にプリントバーを位置決めする方法において、プリントバーを、ガイド手段を備えた2つの駆動兼ガイドユニットに嵌め込み、ガイド手段の収容ピンをプリントバーのプリントバー収容部の収容孔に係入し、その際、各収容孔の直径を、各収容ピンの直径よりも大きく選択し、ばね手段を、プリントバー収容部を介して収容ピンに被せ、ガイド手段に向かってプリントバー収容部にばね力を及ぼすようにし、駆動兼ガイドユニットにプリントバーを位置決めする際に、プリントバー収容部に移動可能に支承された位置決めピンが駆動兼ガイドユニットに配置された位置決め板に係入するまで、ガイド手段を降下し、プリントバー収容部をガイド手段から離間し、位置決めピンを、プリントバーの重量とばね手段のばね力とに基づいて、対応する位置決め板に位置決めし、プリントバーを、駆動兼ガイドユニットにセンタリングし、ロックする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるインク式印刷機器では、複数のプリントヘッドを備えた少なくとも1つのプリントバーは、印刷位置に精確に位置決め可能である。印刷位置を設定するために、2つの駆動兼ガイドユニットを備えた装置が提供され、駆動兼ガイドユニットとプリントバーが連結可能である。プリントバーを嵌め込んで、そしてプリントバーは、2つの駆動兼ガイドユニットと連結される。その際、先ずプリントバーは大まかに中間位置に位置決めされ、各駆動兼ガイドユニットに浮遊支承される(位置決め精度、運動方向に±50μm)。印刷位置における精確な位置決めは、調節可能なストッパ対偶により実現され、ストッパ対偶に、プリントバー自体がセンタリングされる(位置決め精度、全方向に±5μm)。このためにプリントバーは、ばね力および自重により印刷位置に押し付けられる。ストッパ対偶として、駆動兼ガイドユニットに設けられた位置決め板およびプリントバーに設けられた位置決めピンを用いることができる。さらに位置決め板をプリントバーに配置して、位置決めピンを駆動兼ガイドユニットに配置してもよい。
【0023】
本発明の別の態様は、従属請求項から明らかである。
【0024】
本発明による装置は、以下の利点を有している:
・プリントバーのための高価で、高精度かつ遊びのないガイドは不要である。
・ストッパ対偶により印刷位置において極めて高い精度(±5μm)が得られる。
・最初の調節は、少なくとも1つの位置決め板の調節により、水平方向のプリントバー位置の一度の調節動作で行われる(不動の支承)。
・鉛直方向の設定は、微細なねじ山を用いた少なくとも1つの位置決めピンの調節を介して行われる。
・印刷休止後の印刷位置におけるプリントバーの新たな位置決めは不要である。プリントバーの新たな位置決めは、手動で操作または制御することなく自動で精確に行われる。
・温度影響は補償される。
・位置決め装置は保守が不要である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】駆動兼ガイドユニットにプリントバーを組み付けるまえの状態でプリントバーと駆動兼ガイドユニットとを備えた印刷ユニットを示す図である。
【図2】プリントバー付近で、連結手段と共に駆動兼ガイドユニットを示す展開図である。
【図3】駆動兼ガイドユニットにプリントバーを組み付けたあとの状態でプリントバーを備えた印刷ユニットを示す図である。
【図4】位置決めピンを示す図である。
【図5】a、bは、位置決め板を示す図である。
【図6】位置決めピンと位置決め板とから成るストッパ対偶を連結状態で示す図である。
【図7】プリントバーを浮遊支承する際の位置決め動作の開始段階を示す図である。
【図8】位置決め板に位置決めピンが係入し始める状態を示す図である。
【図9】位置決め板に位置決めピンが最終的に位置決めされた状態を示す図である。
【図10】駆動兼ガイドユニットと共に底板を上からみた図である。
【図11】プリントバーを上からみて示す図である。
【図12】プリントバーおよび底板を組み合わせた状態で上からみた図である。
【図13】駆動兼ガイドユニットおよびプリントバーを印刷位置で示す図である。
【図14】a〜cは、たとえば被印刷物に対して水平方向および鉛直方向のプリントバーの調節機能を示す図である。
【図15】a、bは、たとえば被印刷物に対して水平方向および鉛直方向のプリントバーの調節機能を示す図である。
【図16】たとえば被印刷物に対して水平方向および鉛直方向のプリントバーの調節機能を示す図である。
【図17】プリントバーのクリーニング位置を示す図である。
【図18】クリーニング位置に到達するまえの状態でプリントバーの前センタリングを示す図である。
【図19】印刷位置にプリントバーを降下する際のストッパ対偶の協働の一例を示す図である。
【図20】印刷位置にプリントバーを降下する際のストッパ対偶の協働の一例を示す図である。
【図21】印刷位置にプリントバーを降下する際のストッパ対偶の協働の一例を示す図である。
【図22】印刷位置にプリントバーを降下する際のストッパ対偶の協働の一例を示す図である。
【図23】プリントバーおよび底板における温度の影響を補償する原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
印刷ユニットは、たとえばそれぞれ5つのプリントヘッドを備えたたとえば4つのプリントバーを備えており、各プリントバーは、別のプリントバーとは無関係に運転することができる。したがって各プリントバーは、別のプリントバーとは無関係に、鉛直に、印刷位置からクリーニング位置へ、またその逆に運動可能である。印刷位置では、被印刷物が印刷され、クリーニング位置では、印刷ユニット全体が、プリントヘッドを破損することなく運動可能であり、プリントヘッドがクリーニングされる。
【0028】
本発明の課題は、プリントバーを位置決めする装置を提供することであり、その装置では、印刷位置へのプリントバーの運動が安価に実施可能であり、しかも、印刷位置において精確なプリントバーの支承が達成される。プリントバーを位置決めする装置は、駆動兼ガイドユニットを備えており、駆動兼ガイドユニットは、印刷ユニットのハウジング内に定位置に配置されている。
【0029】
以下に、本発明を、プリントバー1の位置決め装置に基づいて説明するが、以下の説明は、本発明を制限するものではない。以下の説明は、複数のプリントバー1の位置決めに適用することができる。その際、各プリントバー1は、別のプリントバー1とは無関係に位置決め可能である。
【0030】
図1には、駆動兼ガイドユニットAF1,AF2にプリントバー1を位置決めするまえの状態で、位置決め装置を示す。図2には、プリントバー1の連結手段および駆動兼ガイドユニットAFの連結手段と共に駆動兼ガイド手段AFの構造を示す。図3には、駆動兼ガイド手段AF1,AF2にプリントバー1を嵌め込んだあとの状態で、プリントバー1と駆動兼ガイドユニットAF1,AF2との協働を示す。
【0031】
図1に示すように、プリントバー1は、プリントヘッドDKのためのプリントヘッド収容部2を備えている。プリントヘッド収容部2は、両側で、側面3a,3bまで延びており、側面3a,3bは、それぞれ駆動兼ガイドユニットAF1,AF2のための連結手段9,11を備えている。
【0032】
図3に示すように、各プリントバー1は、両方の側面3a,3bで、それぞれ駆動兼ガイドユニットAF1,AF2に支承されており、たとえばプリントバー1は、左側の側面3aで、駆動兼ガイドユニットAF1に支承されていて、右側の側面3bで、駆動兼ガイドユニットAF2に支承されている。駆動兼ガイドユニットAF1,AF2は、同一に構成されているが、個別に操作可能である。
【0033】
図2には、プリントバー1の一部と共に、駆動兼ガイドユニットAFを分解図で示す。駆動兼ガイドユニットAFは、2つの脚部S1,S2を有するU字形に形成された支承ブロックLBを備えており、脚部S1と脚部S2との間に、駆動ユニットおよびガイドユニットが支承されている。駆動ユニットに、たとえばステップモータ4と、ステップモータ4により駆動される往復スピンドル16とを設けることができ、ガイドユニットに、往復スピンドル16と連結されたガイドキャリッジ17を設けることができ、ガイドキャリッジ17は、ガイド手段としてのプリントバー連行体5と収容ピン6とを備えている。ステップモータ4は、支承ブロックLBの脚部S1に配置可能であり、支承ブロックLBの他方の脚部S2は、印刷ユニットのハウジングに取付可能であるか、または、底板14の一部であってよく、底板14に、プリントバー1を嵌め込むことができる(図10)。往復スピンドル16は、支承ブロックLBの脚部S1,S2に支承されていて、ガイドキャリッジ17と結合されたスピンドルキャリッジ18と協働する。スピンドルキャリッジ18は、スピンドルナットを備えている。往復スピンドル16は、スピンドルナット内で運動するので、往復スピンドル16が回動すると、スピンドルナットひいてはスピンドルキャリッジ18およびガイドキャリッジ17が、往復スピンドル16の延伸方向に移動する。このためにスピンドルキャリッジ18は、リニアガイド19(図3)にガイドされる。ガイドユニットは、スピンドルキャリッジ18に取り付けられたガイドキャリッジ17を備えているので、スピンドルキャリッジ18が移動すると、ガイドキャリッジ17も連動する。ガイドキャリッジ17は、プリントバー連行体5を備えており、プリントバー連行体5は、プリントバー1のプリントバー収容部11ごとに収容ピン6を備えている。底板S2上に、位置決め板8が配置されており、位置決め板8は、底板S2と、ねじ(図示していない)によりねじ止め可能である。
【0034】
プリントバー1を駆動兼ガイドユニットAFと連結するために、駆動兼ガイドユニットAFは、第1の連結手段を備えており、第1の連結手段のために、ここでは特にガイドキャリッジ17の印刷手段連行体5と位置決め板8とが設けられている。プリントバー1は、その側面3に、プリントバー収容部11と位置決めピン9とから成る第2の連結手段を備えている。プリントバー1の各側面3に、プリントバー連行体5ごとに少なくとも1つのプリントバー収容部11が取り付けられている。図示の実施の形態では、プリントバー連行体5ごとにそれぞれ2つのプリントバー収容部11が設けられている。プリントバー収容部11は、プリントバー連行体5の収容ピン6のための収容孔7と、孔内でガイドされる位置決めピン9とを備えており、位置決めピン9は、駆動兼ガイドユニットAFの位置決め板8と協働する。さらに収容孔7および収容ピン6ごとに1つのばね手段10が設けられており、ばね手段10により、所定の予荷重を各プリントバー収容部11に及ぼすことができる。位置決めピン9は、少なくとも中央部分にねじ山を備えているので、位置決めピン9は、プリントバー収容部11内で鉛直方向にねじ回しにより調節しかつロックすることができる。ばね手段10は、組み合わされた状態で、収容ピン6にねじ被せられ、その際、プリントバー収容部11に作用するばね力が調節可能である。
【0035】
駆動兼ガイドユニットAFにプリントバー1を嵌め込む際に、プリントバー収容部11は、ガイドキャリッジ17のプリントバー連行体5に載置され、その際、プリントバー連行体5の収容ピン6は、プリントバー収容部11の収容孔7に係入する(図1の破線)。プリントバー1の位置決めは、第1の位置決めステップでは不要である。プリントバー1は、その重量に基づいて、プリントバー連行体5に載置される。ばね手段10を介して付加的な力がプリントバー連行体5に及ぼされると、プリントバー連行体5に作用する圧力を追加的に高めることができる。収容孔7が収容ピン6よりも大きな直径を有している場合、プリントバー1は、ガイドキャリッジ17上で水平面に沿って可動に維持される(浮遊支承)。ばね手段10が収容ピン6に被せられると、所定の予荷重をプリントバー連行体5ひいてはガイドキャリッジ17に及ぼすことができ、予荷重により、反力が作用しない場合にプリントバー1が持ち上がることを防止する。位置決めピン9は、未だ、対応する位置決め板8に載置しない。図3にはこの状態を示しており、ここでは、プリントバー1は、駆動兼ガイドユニットAFに嵌め込まれているが、未だ、駆動兼ガイドユニットAFに対するプリントバー1のロックは行われていない。
【0036】
プリントバー1は、その浮遊支承に基づいて、水平方向に運動可能であり(図3の矢印PF1)、鉛直方向には、ばね手段10のばね力に対抗する運動性が存在する。たとえば実現可能なプリントバー1の運動範囲は、水平方向に約±2mm、鉛直方向に約±7mmに選択することができる。
【0037】
駆動兼ガイドユニットAFに対するプリントバー1のロックは、位置決めピン9を介して行われ、位置決めピン9は、プリントバー1が降下する際に、対応する位置決め板8に当接し、その際、位置決め板8はストッパとして機能する。位置決めピン9と位置決め板8とから成るユニットは、以下に、ストッパ対偶ともいう。
【0038】
駆動兼ガイドユニットAFをプリントバー1に嵌め込む際に、2つの位置決めステップが行われる:
・第1の位置決めステップにおいて中間位置(図3)が形成され、中間位置では、プリントバー1は、駆動兼ガイドユニットAFに浮遊式に支承されており、したがってプリントバー1の位置決めはあとで修正することができる。
・第2の位置決めステップでは、プリントバー1は、最終位置として印刷位置(たとえば図13に示す)に到達する。この最終位置では、プリントバー1は、駆動兼ガイドユニットAFに精確にセンタリングしてロックされており、このために、ストッパ対偶として、位置決め板8と位置決めピン9とが設けられている。駆動兼ガイドユニットAFごとにそれぞれ2つのストッパ対偶8,9が用いられ、その際、ストッパ対偶8,9は、それぞれプリントバー連行体5の両側に配置されている。
・さらにプリントバー1は、逆方向に、たとえばクリーニング位置にもたらすこともできる(図17)。
【0039】
第2の位置決めステップで、駆動兼ガイドユニットAFにおいてプリントバー1を精確にロックするために、たとえば各駆動兼ガイドユニットAFにそれぞれ2つの位置決め板8を設けてよく、位置決め板8は、プリントバー収容部11の位置決めピン9とそれぞれ協働する。1つの実施の形態では、それぞれ1つの位置決めピン9と1つの位置決め板8とから成る4つのストッパ対偶8,9が設けられており、その際、プリントバー連行体5の両側にストッパ対偶8,9が配置されており、プリントバー1の4つのプリントバー収容部11ひいてはプリントバー1は、被印刷物に対して平行の全ての平面上における所定の位置にもたらすことができる。ストッパ対偶8,9の位置決めピン9は、それぞれ同一に構成してもよいが、位置決め板8は、個別に構成されている。
【0040】
印刷位置では、プリントバー1は、浮遊支承により、機械式に分離して、位置決め板8に繰り返し精確に位置決めされる。浮遊支承に起因するプリントバー1の調節範囲に基づいて、かつストッパ対偶8,9の調節可能な構成に基づいて、プリントバー1は、所定の位置で、被印刷物に対して全方向に移動可能である(図3、矢印PF1)。
【0041】
図4には、位置決めピン9の構造を示す。位置決めピン9は、中央部分でねじ山(図示していない)を備えることができ、その際、対応する印刷手段収容部11にねじ回しにより調節可能である。位置決めピン9の先端は、丸く形成することができ、これにより、プリントバー1が降下する際に、対応する位置決め板8との連結が容易になる。
【0042】
図5は、位置決め板8の構造を示す。位置決め板8は、駆動兼ガイドユニットAFの底板S2(図10の底板14)にねじ止め可能であり、このために、たとえば2つの孔24が設けられており、孔24を通ってたとえばねじをガイドすることができる。これに対して位置決め板8は、位置決めピン9との協働に関して種々に構成されており:
・位置決め板8aは、円錐形の凹所12を備えており、凹所12は、たとえば孔25に通じており、
・位置決め板8bは、角柱の凹所13を備えており、凹所13は、たとえば貫通孔26に開口可能であり、
・位置決め板8cは、その表面で扁平に形成されている。
【0043】
位置決めピン9と協働する際に、位置決め板8aは、不動の支承部(自由度0)を形成し、位置決め板8bは、自由度1(矢印PF2)を有する可動の支承部を形成し、位置決め板8cは、自由度2(矢印PF3)を有する可動の支承部を形成する。
【0044】
図5のbは、位置決め板8を拡大図で示しており、ここでは、位置決め板8a,8bは断面図で示しており:
・位置決め板8cは、扁平な板として構成されており、位置決め板8cは、水平方向の位置決めピン9の摺動を許容し、したがって自由度2を有しており、
・位置決め板8aは、対応する位置決めピン9のための円錐形の凹所12を備えており、したがって位置決め板8aは、位置決めピン9の摺動を許容せず、したがって自由度を有しておらず、不動の支承部として用いられる。位置決め板8aへの位置決めピン9の進入を容易にするために、凹所12は、面取りされた側壁23を備えた円錐形の凹所として形成されており、
・位置決め板8bは、長孔13を備えていて、1方向の位置決めピン9の摺動を許容する(自由度1)。ここでは位置決め板8bへの位置決めピン9の進入を容易にするために、面取りされた側面23を備えた角柱の凹所23が設けられている。
【0045】
底板14上の様々な位置決め板8a〜8cの配置は、図5から看取され、図10に関して説明する。
【0046】
プリントバー1が印刷位置にある場合、全ての位置決めピン9は、対応する位置決め板8と接触している。図6から、位置決め板8aを用いた場合のストッパ対偶8,9の機能が看取される。印刷位置へプリントバー1を降下する動作において、位置決めピン9は、位置決め板8aの円錐形の凹所12に進入し、プリントバー1の自重とばね手段10により追加的に及ぼされるばね予荷重とに基づいて、凹所12においてストッパまで位置決めされる。ばねの予荷重は、たとえばガイドキャリッジ17がたとえば7mm鉛直方向に降下すると、形成される。プリントバー1の位置は、この位置決め点P1で、全方向に不動に規定されるが、2つの調節の可能性により以下のように影響が及ぼされる:
・水平方向で、位置決め板8aの調節により(矢印PF5)、
・鉛直方向で、プリントバー収容部11内で位置決めピン9をねじ回して調節することにより(矢印PF4)。
【0047】
図7〜図9は、位置決め板8bを用いる場合の位置決め動作の経過を詳しく示す。図7では、プリントバー1は、規定されない鉛直位置にある。プリントバー1は、駆動兼ガイドユニットAF2のガイドキャリッジ17のプリントバー連行体5に載置され、追加的にばね手段10の所定のばね荷重によりプリントバー連行体5に押し付けられる。プリントバー1の鉛直方向の位置は、たとえばステップモータ4のステップ数により特定される。プリントバー1の水平方向位置は、浮遊支承に基づいて、約2mmの運動範囲内にある(収容ピン6と収容孔7との異なる直径に起因する)。次いでプリントバー1は、ガイドキャリッジ17と共に、下方へ移動し、それも、位置決めピン9が位置決め板8bの凹所13に到達するまで移動する(図8)。凹所13に進入する際に、プリントバー1は、位置決め板8bの水平方向位置と高さ調節された位置決めピン9の鉛直方向位置とにより規定された位置に位置決めされる。プリントバー1の印刷位置の高い精度を繰り返し保証するために、後続のステップで、追加的に予荷重がストッパ対偶8,9に及ぼされ、その際、ガイドキャリッジ17がさらにたとえば7mm降下する(図9)。そこでプリントバー1は、自重と予荷重とにより印刷位置を占める。
【0048】
図7〜図9において、位置決め板8として位置決め板8bを用いている。位置決め板8aを用いる位置決めも同様に行われる。位置決め板8cを用いる場合、位置決めピン9は、位置決め板8cの表面に当接するだけである。
【0049】
図10から、プリントバー1を省略した、底板14上の位置決め板8の配置構造が看取される。特に位置決め板8の位置決め点Pを図示する。底板14は、プリントバー1のための矩形の貫通孔15を備えている。底板14の側面に、駆動兼ガイドユニットAF1,AF2がそれぞれ配置されており、駆動兼ガイドユニットAF1,AF2において、単に、ここでは収容ピン6を備えたプリントバー連行体5と位置決め板8とを示す。駆動兼ガイドユニットAF1は、位置決め点P1に位置決め板8cを備えており、位置決め板8cは、自由度2を有する可動の支承部を備えていて、かつ位置決め点P2に位置決め板8aを備えており、位置決め板8aは、不動の支承部を形成する。位置決め点P2に設けられた位置決め板8aは、その位置で、底板14に沿って水平方向に調節可能である(矢印PF5)。駆動兼ガイドユニットAF2は、位置決め点P3に位置決め板8cを備えており、したがって自由度2を有する可動の支承部を有していて、かつ、位置決め点P4に位置決め板8bを備えており、したがって自由度1を有する可動の支承部を有している。位置決め板8のうち専ら位置決め板8aが調節可能に駆動兼ガイドユニットAF1に配置されており、位置決め板8b,8cは、それぞれ底板14と調節不能に結合され、たとえばねじ止めされている。
【0050】
図11には、プリントバー1を平面図で示す。プリントバー1に、プリントヘッド収容部2上にプリントヘッドDRが配置されている。側面3a,3bは、位置決めピン9と収容孔7とを有するプリントバー収容部11を備えている。
【0051】
図12には、底板14に嵌め込まれたプリントバー1の全体を平面図で示す。駆動兼ガイドユニットAFのうち、収容ピン6を備えたプリントバー連行体5と位置決め板8とを図示し、プリントバー1では、収容孔7と位置決めピン9とを備えたプリントバー収容部11を図示する。看取されるように、収容孔7の直径は、収容ピン6の直径よりも大きい。
【0052】
図13には、印刷位置でプリントバー1を示す。さらに印刷運転前にどのようにして駆動兼ガイドユニットAFにプリントバー1を調節できるのか看取される。駆動兼ガイドユニットAF1,AF2と共にプリントバー1を図示している。プリントバー1を水平方向に調節するために、位置決め板8aは、摺動可能に底板14上の位置決め点P2に配置されており、さらに位置決め点P4に、縦長の凹所13を備えた位置決め板8bが定位置に不動に設けられている。位置決め点P1および位置決め点P3に位置する位置決めピン9もまた、そこに位置決め板8cが取り付けられているので、水平方向に可動である。プリントバー1を鉛直方向に調節するために、位置決めピン9は、プリントバー収容部11内で調節可能である。
【0053】
図14のa〜cには、水平方向のプリントバー1の調節機能を示す。ここでは、プリントバー1の調節後の位置を図示している。
【0054】
図14のaでは、プリントバー1はx方向に、たとえば被印刷物の搬送方向に対して横向きに移動されている。ここでは、位置決め板8aは移動されており(矢印PF6)、さらに位置決めピン9は、位置決め板8bの凹所内で移動されている。位置決め板8c上の位置決めピン9は、このような移動に追従する。
【0055】
図14のbでは、片側(左側)におけるy方向のプリントバー1の移動を示す。その際、位置決め板8aは、y方向に移動されている(矢印PF7)。位置決め板8c上に位置する位置決めピン9は、この移動に追従し、位置決めピン9は、位置決め点P4でその位置を維持する。
【0056】
プリントバー1のx方向およびy方向の移動は、図14のcから看取される。
【0057】
移動の範囲は、収容孔7の直径と収容ピン6の直径とにより制限される。
【0058】
位置決め板8の構成およびその配置構造により、水平面上で行われるプリントバー1の全ての調節は、専ら位置決め板8aの移動により行うことができる。
【0059】
鉛直方向のプリントバー1の調節は、位置決めピン9により行われ、位置決めピン9は、プリントバー収容部11に対して移動可能である。このために各位置決めピン9は、たとえば中央部分にねじ山を備え、同様にプリントバー収容部11は、ねじ山を備えることができるので、位置決めピン9は、プリントバー収容部11を通ってねじ回すことができる。図15および図16に、鉛直方向の調節機能を概略的に示す。
【0060】
図15のaには、プリントバー1が被印刷物20に対して平行でない状態を示す。これを修正するために、位置決めピン9は、プリントバー収容部11内で移動される(図15のb)。位置決めピン9aが下方にねじ回されると、これによりプリントバー1は上方へ移動し(矢印PF8)、位置決めピン9bが上方へねじ回されると、下方へのプリントバー1の運動が行われる(矢印PF9)。横軸線を中心とするプリントバー1の回動が行われる。
【0061】
図16において、プリントバー1の別の調節機能が得られる。ここでは被印刷物20に対するプリントバー1の平行度のずれ(図16のa)は、プリントバー1がその長手軸線を中心に回動することにより修正される。このために図16のaに示す実施の形態では、位置決めピン9cがプリントバー収容部11内で下方へねじ回され、これによりプリントバー1が持ち上げられる(図16のb、矢印PF10)。
【0062】
図15および図16において、矢印PF8〜PF10は、プリントバー1の運動方向を表す。
【0063】
図14〜図16には、どのようにしてプリントバー1が印刷運転の開始前に印刷位置に調節できるのかを示す。印刷運転中にプリントバー1を繰り返し位置決め板8から持ち上げる必要があるので、印刷運転では、プリントバー1のセンタリングも必要である。持上は、プリントバー1を様々な作業位置に移動するために必要であり、その際、たとえばプリントヘッドDKがクリーニングされるか、またはプリントヘッドに保護キャップが被せられる。作業位置は、印刷位置の上方にあり、印刷位置に応じたプリントバー1のセンタリングは、ここでは不要である。プリントバー1が再び印刷位置に移動すると、再度、被印刷物20に対するプリントバー1の精確な調節を実現する必要がある。
【0064】
図17には、たとえばクリーニング位置におけるプリントバー1の初期状態を示す。駆動ユニットAFは、プリントバー連行体5を持ち上げて、ひいてはプリントバー1のためのプリントバー収容部11を持ち上げる。ばね手段10は、プリントバー収容部11を、ガイドキャリッジ17のプリントバー連行体5に押し付け、クリーニング位置におけるプリントバー1の精確な位置を規定する。位置決めピン9は、対応する位置決め板8から離間される。この位置では、プリントバー1の浮遊支承が有効である。浮遊支承が広い範囲の遊びを許容するので、プリントバー1は、水平方向に運動可能である。浮遊支承の最大の遊びが制限されることにより、前センタリングを導入することができ、たとえばプリントバー連行体5上にセンタリングピン21が設けられており(図18)、センタリングピン21は、プリントバー収容部11に設けられた受け孔22に係入する(図17、図18)。センタリングピン21および受け孔22の直径の選択により、プリントバー1の水平方向の運動自由度を設定することができる。
【0065】
プリントバー1がたとえばクリーニング位置に運動する際に、プリントバー1は、位置決め板8に対して滑動可能である。プリントバー1が再び印刷位置に降下する際に、位置決めピン9は、対応する位置決め板8に当接し、その際、浮遊支承の最大遊びが、位置決め板8aの円錐形の凹所12の直径もしくは位置決め板8b(図5)の楔形の凹所13の幅よりも小さいので、再び位置決めが行われる。プリントバー1が降下する際に、位置決めピン9は、位置決め板8aもしくは位置決め板8bの凹所12もしくは凹所13の傾斜面23に当接する(たとえば図19では位置決め板8a、図20では位置決め板8b;これらは断面図で示す)。プリントバー1がさらに降下すると、プリントバー1は、降下する際に形成される水平方向に作用する力を介して水平方向にスライドされる。水平方向の力は、プリントバー1の重量により位置決め板8a,8bの傾斜面23に沿って形成される(図19、図20)。プリントバー1は、位置決めピン9がその最終位置に到達するまで、降下可能である。ストッパ対偶8,9に応じて、位置決めピン9と位置決め板8との間の当接箇所は、それぞれ別の接触面を有する:
・ストッパ対偶9,8b(図19):不動の支承部8aと位置決めピン9との間の線接触(円形)。
・ストッパ対偶9,8b(図20):位置決め板8bと位置決めピン9との間の2点接触。
・ストッパ対偶9,8c:位置決め板8cの表面と位置決めピン9との間の点接触。
【0066】
プリントバー1がさらに下方へ移動すると、プリントバー1の重力は、ガイドキャリッジ17が駆動ユニットによりさらに降下され、プリントバー1が既にその終了位置を占めるので、位置決め点Pごとに設けられたばね手段10のばね力により増強される。図21および図22にその状態を示す。これに起因する力の増加により、位置決め精度が高まり、振動に対する感度が低下する。これにより印刷位置へ移動する際に高い精度が得られる(±5μm)。
【0067】
ストッパ対偶8,9の構成および配置構造は、温度変化が生じても極めて好適である。温度変化に際して、プリントバー1および底板14の不均等な延伸長さの膨張が生じる。異なる膨張は、位置決め板8の構成により補償することができる。たとえばプリンタをスイッチオンする際に、プリントバー1が底板14よりも迅速に加熱されると、プリントバー1は、支承部の固定点(位置決め点P2)から出発して、ストッパ対偶8,9により、緊締されることなく全方向に膨張する。したがってプリントバー1は、以下の理由により、制限されずに膨張する:
・位置決め板8bは、長孔13の方向の位置決めピン9のスライドを許容する(図23、矢印PF11)、
・位置決め板8cは、x方向およびy方向の位置決めピン9のスライドを許容する(図23、矢印PF12)。
【0068】
プリントバー1の水平方向の調節と鉛直方向の調節との構造的な分離により、温度変化が生じる際に鉛直方向の調節が維持される。プリントバー1の水平方向位置は、専ら位置決め板8bおよび位置決め板8cの位置により設定され、調節され、プリントバー1の鉛直方向位置は、プリントバー収容部11内での位置決めピン9の回動(ねじ伝動装置を介する高さ調節)により設定される。
【0069】
各実施の形態では、それぞれ4つのストッパ対偶が設けられている。しかし、たとえば3つのストッパ対偶を用いても十分であり、たとえば1つの位置決めピン9および位置決め板8cを省略してもよい。
【符号の説明】
【0070】
DK プリントヘッド、 AF 駆動兼ガイドユニット、 LB 支承ブロック、 PF 矢印、 1 プリントバー、 2 プリントヘッド収容部、 3 プリントバーの側面、 4 ステップモータ、 5 プリントバー連行体、 6 プリントバーのための収容ピン、 7 プリントバー収容部に設けられた収容孔、 8 プリントバーのための位置決め板、 9 位置決めピン、 10 所定の予荷重を形成するためのばね手段、 11 プリントバー収容部、 12 円錐形の凹所、 13 角柱の凹所、 14 底板、 15 貫通孔、 16 往復スピンドル、 17 ガイドキャリッジ、 18 スピンドルキャリッジ、 19 リニアガイド、 20 被印刷物、 21 センタリングピン、 22 受け孔、 23 凹所12,13の側面、 24 孔、 25 孔、 26 貫通孔、 P 位置決め点
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク式印刷機器において少なくとも1つのプリントバーを印刷位置に位置決めする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の材料、たとえば紙から成る被印刷物、たとえばシートまたは帯状の記録担体を単色または多色で印刷するために、インク式印刷機器が用いられる。そのようなインク式印刷機器の構造は公知である(たとえば欧州特許公開第0788882号明細書参照)。たとえばドロップオンデマンド(DoD)方式で作動するインク式印刷機器は、印刷ユニットとして、インク溝を備えた単数または複数のプリントヘッドを有するノズルを備えており、ノズルのアクチュエータは、プリンタ制御装置により操作されて、被印刷物に向けられるインキ滴を形成し、その際、印刷像のための印刷点が形成される。アクチュエータは、インキ滴をサーマル式(バブルジェット)またはピエゾ式に形成する。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許公開第19726642号明細書において、インクプリントヘッドとクリーニング兼シール装置とを位置決めするための装置が開示されている。インクプリントヘッドは、印刷位置からクリーニング位置へ、また再び元の位置へ旋回可能である。クリーニング兼シール装置は、インクプリントヘッドに対して接近および離間する方向に調節可能である。クリーニング兼シール装置は、シールキャップと払拭リップとを備えている。
【0004】
インクジェット式印刷システムでは、インクのインクヘッドは、プリントバーに機械式に取り付けることができる。印刷運転状態で、クリーニングおよび保守のために、プリントヘッドのノズルは、それぞれ被印刷物に対して異なる距離を占める必要がある。このためにプリントバーひいてはプリントヘッドは、鉛直方向に、それぞれ被印刷物に対して異なる距離にある位置に移動可能である。2つの位置を設定する必要がある:
・印刷位置:被印刷物に対して平行のプリントヘッドの位置決め。このためにプリントバーは、高さ調節可能であるか、または被印刷物に対して傾斜してもしくは角度を成して調節可能であり、かつ被印刷物の走行方向に対して横向きの並進運動で調節可能である必要がある。
・クリーニング位置:プリントヘッドのノズルをクリーニングするための位置。クリーニングに際して、たとえばインクが、正圧または負圧により、プリントヘッドのノズルを介して押し出されるか、または吸い込まれる。インクは、次いで単数または複数のゴムリップ(ワイパと云われる)により払拭される。このためにプリントバーがゴムリップを越えて移動可能であるか、またはゴムリップがプリントバーを越えて移動可能である。ゴムリップに対するプリントバーの精確な位置決めが必要であり、その際、ゴムリップとノズルとの間の一定のオーバーラップを確保する必要がある。
【0005】
米国特許第6095701号明細書において、プリントヘッドを、3方向に調整可能であるようにプリントヘッド収容部に格納することが公知である。これによりプリントヘッドを使用位置で調整することができる。
【0006】
米国特許第7090329号明細書において、印刷ユニットが記載されており、個の印刷ユニットでは、プリントヘッドがロッドに配置されている。プリントヘッドは、ロッドに沿って摺動可能であり、加えて、ロッドはプリントヘッドと共に回動可能である。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許公開第10057062号明細書において、調整方法が記載されており、この調整方法に従って、複数のプリントヘッドを印刷物に対して位置決めすることができる。そのために、プリントヘッドは、相互に印刷方向に対して横向きに移動可能である。これにより印刷像は、印刷方向に対して横向きに調節することができる。
【0008】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第69301763号の翻訳文において、インク式印刷機器が開示されており、このインク式印刷機器では、複数のプリントヘッドがキャリッジ中央に配置されており、その際、プリントヘッドは、印刷媒体の方向に対して平行かつ垂直に運動可能である。その際、プリントヘッドは、相互にずらして、または端部で向き合って配置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許公開第0788882号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許公開第19726642号明細書
【特許文献3】米国特許第6095701号明細書
【特許文献4】米国特許第7090329号明細書
【特許文献5】ドイツ連邦共和国特許公開第10057062号明細書
【特許文献6】ドイツ連邦共和国特許出願公開第69301763号の翻訳文
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、冒頭で述べたような、インク式印刷機器において少なくとも1つのプリントバーを印刷位置に位置決めする装置を改良して、プリントバーを印刷位置に精確に位置決めできるものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題を解決するために本発明の構成では、インク式印刷機器において少なくとも1つのプリントバーを印刷位置に位置決めする装置において、プリントバーごとに2つの駆動兼ガイドユニットが設けられており、駆動兼ガイドユニットは、調節可能な1つのガイド手段と少なくとも1つの位置決め板とをそれぞれ備えており、プリントバーは、駆動兼ガイドユニットごとに、調節可能な位置決めピンを備えたプリントバー収容部を備えており、駆動兼ガイドユニットのガイド手段およびプリントバーのプリントバー収容部は、次のように形成されていて、つまり、駆動兼ガイドユニットにプリントバーを嵌め込む際に、プリントバーのプリントバー収容部が、駆動兼ガイドユニットのガイド手段に浮遊支承式に載置され、ガイド手段を印刷位置に調節したあとで、プリントバーが駆動兼ガイドユニットにセンタリングされかつロックされ、その際、位置決めピンが位置決め板に係入するように、形成されている。
【0012】
好適には、少なくとも1つの位置決め板が、駆動兼ガイドユニットに調節可能に配置されている。
【0013】
好適には、駆動兼ガイドユニットごとに、相互間隔を置いて2つの位置決め板が設けられており、位置決め板は、プリントバー収容部内で調節可能に配置された位置決めピンと協働し、プリントバーは、4つの位置決め点で、駆動兼ガイドユニットにセンタリングされかつロックされるようになっている。
【0014】
好適には、第1の位置決め板もしくは第2の位置決め板にそれぞれ凹所が設けられており、プリントバー収容部に配置された位置決めピンは、ガイド手段がプリントバー収容部と共に降下すると、位置決め板の凹所に係入するようになっている。
【0015】
好適には、第1の駆動兼ガイドユニットに第1の位置決め板が設けられており、第1の位置決め板は、円錐形の凹所を備えており、第2の駆動兼ガイドユニットに第2の位置決め板が設けられており、第2の位置決め板は、角柱の凹所を備えている。
【0016】
好適には、凹所は、傾斜した側面を備えている。
【0017】
好適には、両方の駆動兼ガイドユニットに、それぞれ第3の位置決め板が設けられており、第3の位置決め板は、扁平な表面を有している。
【0018】
好適には、位置決めピンは、先端で丸く形成されており、位置決めピンと位置決め板に設けられた凹所との間に、凹所に位置決めピンが係入し始めてからロックされるまえに、遊びが形成されるようになっている。
【0019】
好適には、ガイド手段は、駆動兼ガイドユニットごとにそれぞれ少なくとも1つの収容ピンを備えており、収容ピンは、それぞれプリントバー収容部に設けられた収容孔に係入するようになっており、各収容孔の直径は、駆動兼ガイドユニットにプリントバーを浮遊支承するために、各収容ピンの直径よりも大きくなっており、収容ピンに被せられるばね手段が設けられており、ばね手段は、ばね力を、ガイド手段に向かってプリントバー収容部に及ぼすようになっている。
【0020】
好適には、駆動兼ガイドユニットにおけるプリントバーの浮遊支承の遊びが、第1の位置決め板の凹所の係入直径よりも小さく選択されているか、もしくは第2の位置決め板の角柱の凹所の係入幅よりも小さく選択されている。
【0021】
好適には、インク式印刷機器において印刷位置にプリントバーを位置決めする方法において、プリントバーを、ガイド手段を備えた2つの駆動兼ガイドユニットに嵌め込み、ガイド手段の収容ピンをプリントバーのプリントバー収容部の収容孔に係入し、その際、各収容孔の直径を、各収容ピンの直径よりも大きく選択し、ばね手段を、プリントバー収容部を介して収容ピンに被せ、ガイド手段に向かってプリントバー収容部にばね力を及ぼすようにし、駆動兼ガイドユニットにプリントバーを位置決めする際に、プリントバー収容部に移動可能に支承された位置決めピンが駆動兼ガイドユニットに配置された位置決め板に係入するまで、ガイド手段を降下し、プリントバー収容部をガイド手段から離間し、位置決めピンを、プリントバーの重量とばね手段のばね力とに基づいて、対応する位置決め板に位置決めし、プリントバーを、駆動兼ガイドユニットにセンタリングし、ロックする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるインク式印刷機器では、複数のプリントヘッドを備えた少なくとも1つのプリントバーは、印刷位置に精確に位置決め可能である。印刷位置を設定するために、2つの駆動兼ガイドユニットを備えた装置が提供され、駆動兼ガイドユニットとプリントバーが連結可能である。プリントバーを嵌め込んで、そしてプリントバーは、2つの駆動兼ガイドユニットと連結される。その際、先ずプリントバーは大まかに中間位置に位置決めされ、各駆動兼ガイドユニットに浮遊支承される(位置決め精度、運動方向に±50μm)。印刷位置における精確な位置決めは、調節可能なストッパ対偶により実現され、ストッパ対偶に、プリントバー自体がセンタリングされる(位置決め精度、全方向に±5μm)。このためにプリントバーは、ばね力および自重により印刷位置に押し付けられる。ストッパ対偶として、駆動兼ガイドユニットに設けられた位置決め板およびプリントバーに設けられた位置決めピンを用いることができる。さらに位置決め板をプリントバーに配置して、位置決めピンを駆動兼ガイドユニットに配置してもよい。
【0023】
本発明の別の態様は、従属請求項から明らかである。
【0024】
本発明による装置は、以下の利点を有している:
・プリントバーのための高価で、高精度かつ遊びのないガイドは不要である。
・ストッパ対偶により印刷位置において極めて高い精度(±5μm)が得られる。
・最初の調節は、少なくとも1つの位置決め板の調節により、水平方向のプリントバー位置の一度の調節動作で行われる(不動の支承)。
・鉛直方向の設定は、微細なねじ山を用いた少なくとも1つの位置決めピンの調節を介して行われる。
・印刷休止後の印刷位置におけるプリントバーの新たな位置決めは不要である。プリントバーの新たな位置決めは、手動で操作または制御することなく自動で精確に行われる。
・温度影響は補償される。
・位置決め装置は保守が不要である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】駆動兼ガイドユニットにプリントバーを組み付けるまえの状態でプリントバーと駆動兼ガイドユニットとを備えた印刷ユニットを示す図である。
【図2】プリントバー付近で、連結手段と共に駆動兼ガイドユニットを示す展開図である。
【図3】駆動兼ガイドユニットにプリントバーを組み付けたあとの状態でプリントバーを備えた印刷ユニットを示す図である。
【図4】位置決めピンを示す図である。
【図5】a、bは、位置決め板を示す図である。
【図6】位置決めピンと位置決め板とから成るストッパ対偶を連結状態で示す図である。
【図7】プリントバーを浮遊支承する際の位置決め動作の開始段階を示す図である。
【図8】位置決め板に位置決めピンが係入し始める状態を示す図である。
【図9】位置決め板に位置決めピンが最終的に位置決めされた状態を示す図である。
【図10】駆動兼ガイドユニットと共に底板を上からみた図である。
【図11】プリントバーを上からみて示す図である。
【図12】プリントバーおよび底板を組み合わせた状態で上からみた図である。
【図13】駆動兼ガイドユニットおよびプリントバーを印刷位置で示す図である。
【図14】a〜cは、たとえば被印刷物に対して水平方向および鉛直方向のプリントバーの調節機能を示す図である。
【図15】a、bは、たとえば被印刷物に対して水平方向および鉛直方向のプリントバーの調節機能を示す図である。
【図16】たとえば被印刷物に対して水平方向および鉛直方向のプリントバーの調節機能を示す図である。
【図17】プリントバーのクリーニング位置を示す図である。
【図18】クリーニング位置に到達するまえの状態でプリントバーの前センタリングを示す図である。
【図19】印刷位置にプリントバーを降下する際のストッパ対偶の協働の一例を示す図である。
【図20】印刷位置にプリントバーを降下する際のストッパ対偶の協働の一例を示す図である。
【図21】印刷位置にプリントバーを降下する際のストッパ対偶の協働の一例を示す図である。
【図22】印刷位置にプリントバーを降下する際のストッパ対偶の協働の一例を示す図である。
【図23】プリントバーおよび底板における温度の影響を補償する原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
印刷ユニットは、たとえばそれぞれ5つのプリントヘッドを備えたたとえば4つのプリントバーを備えており、各プリントバーは、別のプリントバーとは無関係に運転することができる。したがって各プリントバーは、別のプリントバーとは無関係に、鉛直に、印刷位置からクリーニング位置へ、またその逆に運動可能である。印刷位置では、被印刷物が印刷され、クリーニング位置では、印刷ユニット全体が、プリントヘッドを破損することなく運動可能であり、プリントヘッドがクリーニングされる。
【0028】
本発明の課題は、プリントバーを位置決めする装置を提供することであり、その装置では、印刷位置へのプリントバーの運動が安価に実施可能であり、しかも、印刷位置において精確なプリントバーの支承が達成される。プリントバーを位置決めする装置は、駆動兼ガイドユニットを備えており、駆動兼ガイドユニットは、印刷ユニットのハウジング内に定位置に配置されている。
【0029】
以下に、本発明を、プリントバー1の位置決め装置に基づいて説明するが、以下の説明は、本発明を制限するものではない。以下の説明は、複数のプリントバー1の位置決めに適用することができる。その際、各プリントバー1は、別のプリントバー1とは無関係に位置決め可能である。
【0030】
図1には、駆動兼ガイドユニットAF1,AF2にプリントバー1を位置決めするまえの状態で、位置決め装置を示す。図2には、プリントバー1の連結手段および駆動兼ガイドユニットAFの連結手段と共に駆動兼ガイド手段AFの構造を示す。図3には、駆動兼ガイド手段AF1,AF2にプリントバー1を嵌め込んだあとの状態で、プリントバー1と駆動兼ガイドユニットAF1,AF2との協働を示す。
【0031】
図1に示すように、プリントバー1は、プリントヘッドDKのためのプリントヘッド収容部2を備えている。プリントヘッド収容部2は、両側で、側面3a,3bまで延びており、側面3a,3bは、それぞれ駆動兼ガイドユニットAF1,AF2のための連結手段9,11を備えている。
【0032】
図3に示すように、各プリントバー1は、両方の側面3a,3bで、それぞれ駆動兼ガイドユニットAF1,AF2に支承されており、たとえばプリントバー1は、左側の側面3aで、駆動兼ガイドユニットAF1に支承されていて、右側の側面3bで、駆動兼ガイドユニットAF2に支承されている。駆動兼ガイドユニットAF1,AF2は、同一に構成されているが、個別に操作可能である。
【0033】
図2には、プリントバー1の一部と共に、駆動兼ガイドユニットAFを分解図で示す。駆動兼ガイドユニットAFは、2つの脚部S1,S2を有するU字形に形成された支承ブロックLBを備えており、脚部S1と脚部S2との間に、駆動ユニットおよびガイドユニットが支承されている。駆動ユニットに、たとえばステップモータ4と、ステップモータ4により駆動される往復スピンドル16とを設けることができ、ガイドユニットに、往復スピンドル16と連結されたガイドキャリッジ17を設けることができ、ガイドキャリッジ17は、ガイド手段としてのプリントバー連行体5と収容ピン6とを備えている。ステップモータ4は、支承ブロックLBの脚部S1に配置可能であり、支承ブロックLBの他方の脚部S2は、印刷ユニットのハウジングに取付可能であるか、または、底板14の一部であってよく、底板14に、プリントバー1を嵌め込むことができる(図10)。往復スピンドル16は、支承ブロックLBの脚部S1,S2に支承されていて、ガイドキャリッジ17と結合されたスピンドルキャリッジ18と協働する。スピンドルキャリッジ18は、スピンドルナットを備えている。往復スピンドル16は、スピンドルナット内で運動するので、往復スピンドル16が回動すると、スピンドルナットひいてはスピンドルキャリッジ18およびガイドキャリッジ17が、往復スピンドル16の延伸方向に移動する。このためにスピンドルキャリッジ18は、リニアガイド19(図3)にガイドされる。ガイドユニットは、スピンドルキャリッジ18に取り付けられたガイドキャリッジ17を備えているので、スピンドルキャリッジ18が移動すると、ガイドキャリッジ17も連動する。ガイドキャリッジ17は、プリントバー連行体5を備えており、プリントバー連行体5は、プリントバー1のプリントバー収容部11ごとに収容ピン6を備えている。底板S2上に、位置決め板8が配置されており、位置決め板8は、底板S2と、ねじ(図示していない)によりねじ止め可能である。
【0034】
プリントバー1を駆動兼ガイドユニットAFと連結するために、駆動兼ガイドユニットAFは、第1の連結手段を備えており、第1の連結手段のために、ここでは特にガイドキャリッジ17の印刷手段連行体5と位置決め板8とが設けられている。プリントバー1は、その側面3に、プリントバー収容部11と位置決めピン9とから成る第2の連結手段を備えている。プリントバー1の各側面3に、プリントバー連行体5ごとに少なくとも1つのプリントバー収容部11が取り付けられている。図示の実施の形態では、プリントバー連行体5ごとにそれぞれ2つのプリントバー収容部11が設けられている。プリントバー収容部11は、プリントバー連行体5の収容ピン6のための収容孔7と、孔内でガイドされる位置決めピン9とを備えており、位置決めピン9は、駆動兼ガイドユニットAFの位置決め板8と協働する。さらに収容孔7および収容ピン6ごとに1つのばね手段10が設けられており、ばね手段10により、所定の予荷重を各プリントバー収容部11に及ぼすことができる。位置決めピン9は、少なくとも中央部分にねじ山を備えているので、位置決めピン9は、プリントバー収容部11内で鉛直方向にねじ回しにより調節しかつロックすることができる。ばね手段10は、組み合わされた状態で、収容ピン6にねじ被せられ、その際、プリントバー収容部11に作用するばね力が調節可能である。
【0035】
駆動兼ガイドユニットAFにプリントバー1を嵌め込む際に、プリントバー収容部11は、ガイドキャリッジ17のプリントバー連行体5に載置され、その際、プリントバー連行体5の収容ピン6は、プリントバー収容部11の収容孔7に係入する(図1の破線)。プリントバー1の位置決めは、第1の位置決めステップでは不要である。プリントバー1は、その重量に基づいて、プリントバー連行体5に載置される。ばね手段10を介して付加的な力がプリントバー連行体5に及ぼされると、プリントバー連行体5に作用する圧力を追加的に高めることができる。収容孔7が収容ピン6よりも大きな直径を有している場合、プリントバー1は、ガイドキャリッジ17上で水平面に沿って可動に維持される(浮遊支承)。ばね手段10が収容ピン6に被せられると、所定の予荷重をプリントバー連行体5ひいてはガイドキャリッジ17に及ぼすことができ、予荷重により、反力が作用しない場合にプリントバー1が持ち上がることを防止する。位置決めピン9は、未だ、対応する位置決め板8に載置しない。図3にはこの状態を示しており、ここでは、プリントバー1は、駆動兼ガイドユニットAFに嵌め込まれているが、未だ、駆動兼ガイドユニットAFに対するプリントバー1のロックは行われていない。
【0036】
プリントバー1は、その浮遊支承に基づいて、水平方向に運動可能であり(図3の矢印PF1)、鉛直方向には、ばね手段10のばね力に対抗する運動性が存在する。たとえば実現可能なプリントバー1の運動範囲は、水平方向に約±2mm、鉛直方向に約±7mmに選択することができる。
【0037】
駆動兼ガイドユニットAFに対するプリントバー1のロックは、位置決めピン9を介して行われ、位置決めピン9は、プリントバー1が降下する際に、対応する位置決め板8に当接し、その際、位置決め板8はストッパとして機能する。位置決めピン9と位置決め板8とから成るユニットは、以下に、ストッパ対偶ともいう。
【0038】
駆動兼ガイドユニットAFをプリントバー1に嵌め込む際に、2つの位置決めステップが行われる:
・第1の位置決めステップにおいて中間位置(図3)が形成され、中間位置では、プリントバー1は、駆動兼ガイドユニットAFに浮遊式に支承されており、したがってプリントバー1の位置決めはあとで修正することができる。
・第2の位置決めステップでは、プリントバー1は、最終位置として印刷位置(たとえば図13に示す)に到達する。この最終位置では、プリントバー1は、駆動兼ガイドユニットAFに精確にセンタリングしてロックされており、このために、ストッパ対偶として、位置決め板8と位置決めピン9とが設けられている。駆動兼ガイドユニットAFごとにそれぞれ2つのストッパ対偶8,9が用いられ、その際、ストッパ対偶8,9は、それぞれプリントバー連行体5の両側に配置されている。
・さらにプリントバー1は、逆方向に、たとえばクリーニング位置にもたらすこともできる(図17)。
【0039】
第2の位置決めステップで、駆動兼ガイドユニットAFにおいてプリントバー1を精確にロックするために、たとえば各駆動兼ガイドユニットAFにそれぞれ2つの位置決め板8を設けてよく、位置決め板8は、プリントバー収容部11の位置決めピン9とそれぞれ協働する。1つの実施の形態では、それぞれ1つの位置決めピン9と1つの位置決め板8とから成る4つのストッパ対偶8,9が設けられており、その際、プリントバー連行体5の両側にストッパ対偶8,9が配置されており、プリントバー1の4つのプリントバー収容部11ひいてはプリントバー1は、被印刷物に対して平行の全ての平面上における所定の位置にもたらすことができる。ストッパ対偶8,9の位置決めピン9は、それぞれ同一に構成してもよいが、位置決め板8は、個別に構成されている。
【0040】
印刷位置では、プリントバー1は、浮遊支承により、機械式に分離して、位置決め板8に繰り返し精確に位置決めされる。浮遊支承に起因するプリントバー1の調節範囲に基づいて、かつストッパ対偶8,9の調節可能な構成に基づいて、プリントバー1は、所定の位置で、被印刷物に対して全方向に移動可能である(図3、矢印PF1)。
【0041】
図4には、位置決めピン9の構造を示す。位置決めピン9は、中央部分でねじ山(図示していない)を備えることができ、その際、対応する印刷手段収容部11にねじ回しにより調節可能である。位置決めピン9の先端は、丸く形成することができ、これにより、プリントバー1が降下する際に、対応する位置決め板8との連結が容易になる。
【0042】
図5は、位置決め板8の構造を示す。位置決め板8は、駆動兼ガイドユニットAFの底板S2(図10の底板14)にねじ止め可能であり、このために、たとえば2つの孔24が設けられており、孔24を通ってたとえばねじをガイドすることができる。これに対して位置決め板8は、位置決めピン9との協働に関して種々に構成されており:
・位置決め板8aは、円錐形の凹所12を備えており、凹所12は、たとえば孔25に通じており、
・位置決め板8bは、角柱の凹所13を備えており、凹所13は、たとえば貫通孔26に開口可能であり、
・位置決め板8cは、その表面で扁平に形成されている。
【0043】
位置決めピン9と協働する際に、位置決め板8aは、不動の支承部(自由度0)を形成し、位置決め板8bは、自由度1(矢印PF2)を有する可動の支承部を形成し、位置決め板8cは、自由度2(矢印PF3)を有する可動の支承部を形成する。
【0044】
図5のbは、位置決め板8を拡大図で示しており、ここでは、位置決め板8a,8bは断面図で示しており:
・位置決め板8cは、扁平な板として構成されており、位置決め板8cは、水平方向の位置決めピン9の摺動を許容し、したがって自由度2を有しており、
・位置決め板8aは、対応する位置決めピン9のための円錐形の凹所12を備えており、したがって位置決め板8aは、位置決めピン9の摺動を許容せず、したがって自由度を有しておらず、不動の支承部として用いられる。位置決め板8aへの位置決めピン9の進入を容易にするために、凹所12は、面取りされた側壁23を備えた円錐形の凹所として形成されており、
・位置決め板8bは、長孔13を備えていて、1方向の位置決めピン9の摺動を許容する(自由度1)。ここでは位置決め板8bへの位置決めピン9の進入を容易にするために、面取りされた側面23を備えた角柱の凹所23が設けられている。
【0045】
底板14上の様々な位置決め板8a〜8cの配置は、図5から看取され、図10に関して説明する。
【0046】
プリントバー1が印刷位置にある場合、全ての位置決めピン9は、対応する位置決め板8と接触している。図6から、位置決め板8aを用いた場合のストッパ対偶8,9の機能が看取される。印刷位置へプリントバー1を降下する動作において、位置決めピン9は、位置決め板8aの円錐形の凹所12に進入し、プリントバー1の自重とばね手段10により追加的に及ぼされるばね予荷重とに基づいて、凹所12においてストッパまで位置決めされる。ばねの予荷重は、たとえばガイドキャリッジ17がたとえば7mm鉛直方向に降下すると、形成される。プリントバー1の位置は、この位置決め点P1で、全方向に不動に規定されるが、2つの調節の可能性により以下のように影響が及ぼされる:
・水平方向で、位置決め板8aの調節により(矢印PF5)、
・鉛直方向で、プリントバー収容部11内で位置決めピン9をねじ回して調節することにより(矢印PF4)。
【0047】
図7〜図9は、位置決め板8bを用いる場合の位置決め動作の経過を詳しく示す。図7では、プリントバー1は、規定されない鉛直位置にある。プリントバー1は、駆動兼ガイドユニットAF2のガイドキャリッジ17のプリントバー連行体5に載置され、追加的にばね手段10の所定のばね荷重によりプリントバー連行体5に押し付けられる。プリントバー1の鉛直方向の位置は、たとえばステップモータ4のステップ数により特定される。プリントバー1の水平方向位置は、浮遊支承に基づいて、約2mmの運動範囲内にある(収容ピン6と収容孔7との異なる直径に起因する)。次いでプリントバー1は、ガイドキャリッジ17と共に、下方へ移動し、それも、位置決めピン9が位置決め板8bの凹所13に到達するまで移動する(図8)。凹所13に進入する際に、プリントバー1は、位置決め板8bの水平方向位置と高さ調節された位置決めピン9の鉛直方向位置とにより規定された位置に位置決めされる。プリントバー1の印刷位置の高い精度を繰り返し保証するために、後続のステップで、追加的に予荷重がストッパ対偶8,9に及ぼされ、その際、ガイドキャリッジ17がさらにたとえば7mm降下する(図9)。そこでプリントバー1は、自重と予荷重とにより印刷位置を占める。
【0048】
図7〜図9において、位置決め板8として位置決め板8bを用いている。位置決め板8aを用いる位置決めも同様に行われる。位置決め板8cを用いる場合、位置決めピン9は、位置決め板8cの表面に当接するだけである。
【0049】
図10から、プリントバー1を省略した、底板14上の位置決め板8の配置構造が看取される。特に位置決め板8の位置決め点Pを図示する。底板14は、プリントバー1のための矩形の貫通孔15を備えている。底板14の側面に、駆動兼ガイドユニットAF1,AF2がそれぞれ配置されており、駆動兼ガイドユニットAF1,AF2において、単に、ここでは収容ピン6を備えたプリントバー連行体5と位置決め板8とを示す。駆動兼ガイドユニットAF1は、位置決め点P1に位置決め板8cを備えており、位置決め板8cは、自由度2を有する可動の支承部を備えていて、かつ位置決め点P2に位置決め板8aを備えており、位置決め板8aは、不動の支承部を形成する。位置決め点P2に設けられた位置決め板8aは、その位置で、底板14に沿って水平方向に調節可能である(矢印PF5)。駆動兼ガイドユニットAF2は、位置決め点P3に位置決め板8cを備えており、したがって自由度2を有する可動の支承部を有していて、かつ、位置決め点P4に位置決め板8bを備えており、したがって自由度1を有する可動の支承部を有している。位置決め板8のうち専ら位置決め板8aが調節可能に駆動兼ガイドユニットAF1に配置されており、位置決め板8b,8cは、それぞれ底板14と調節不能に結合され、たとえばねじ止めされている。
【0050】
図11には、プリントバー1を平面図で示す。プリントバー1に、プリントヘッド収容部2上にプリントヘッドDRが配置されている。側面3a,3bは、位置決めピン9と収容孔7とを有するプリントバー収容部11を備えている。
【0051】
図12には、底板14に嵌め込まれたプリントバー1の全体を平面図で示す。駆動兼ガイドユニットAFのうち、収容ピン6を備えたプリントバー連行体5と位置決め板8とを図示し、プリントバー1では、収容孔7と位置決めピン9とを備えたプリントバー収容部11を図示する。看取されるように、収容孔7の直径は、収容ピン6の直径よりも大きい。
【0052】
図13には、印刷位置でプリントバー1を示す。さらに印刷運転前にどのようにして駆動兼ガイドユニットAFにプリントバー1を調節できるのか看取される。駆動兼ガイドユニットAF1,AF2と共にプリントバー1を図示している。プリントバー1を水平方向に調節するために、位置決め板8aは、摺動可能に底板14上の位置決め点P2に配置されており、さらに位置決め点P4に、縦長の凹所13を備えた位置決め板8bが定位置に不動に設けられている。位置決め点P1および位置決め点P3に位置する位置決めピン9もまた、そこに位置決め板8cが取り付けられているので、水平方向に可動である。プリントバー1を鉛直方向に調節するために、位置決めピン9は、プリントバー収容部11内で調節可能である。
【0053】
図14のa〜cには、水平方向のプリントバー1の調節機能を示す。ここでは、プリントバー1の調節後の位置を図示している。
【0054】
図14のaでは、プリントバー1はx方向に、たとえば被印刷物の搬送方向に対して横向きに移動されている。ここでは、位置決め板8aは移動されており(矢印PF6)、さらに位置決めピン9は、位置決め板8bの凹所内で移動されている。位置決め板8c上の位置決めピン9は、このような移動に追従する。
【0055】
図14のbでは、片側(左側)におけるy方向のプリントバー1の移動を示す。その際、位置決め板8aは、y方向に移動されている(矢印PF7)。位置決め板8c上に位置する位置決めピン9は、この移動に追従し、位置決めピン9は、位置決め点P4でその位置を維持する。
【0056】
プリントバー1のx方向およびy方向の移動は、図14のcから看取される。
【0057】
移動の範囲は、収容孔7の直径と収容ピン6の直径とにより制限される。
【0058】
位置決め板8の構成およびその配置構造により、水平面上で行われるプリントバー1の全ての調節は、専ら位置決め板8aの移動により行うことができる。
【0059】
鉛直方向のプリントバー1の調節は、位置決めピン9により行われ、位置決めピン9は、プリントバー収容部11に対して移動可能である。このために各位置決めピン9は、たとえば中央部分にねじ山を備え、同様にプリントバー収容部11は、ねじ山を備えることができるので、位置決めピン9は、プリントバー収容部11を通ってねじ回すことができる。図15および図16に、鉛直方向の調節機能を概略的に示す。
【0060】
図15のaには、プリントバー1が被印刷物20に対して平行でない状態を示す。これを修正するために、位置決めピン9は、プリントバー収容部11内で移動される(図15のb)。位置決めピン9aが下方にねじ回されると、これによりプリントバー1は上方へ移動し(矢印PF8)、位置決めピン9bが上方へねじ回されると、下方へのプリントバー1の運動が行われる(矢印PF9)。横軸線を中心とするプリントバー1の回動が行われる。
【0061】
図16において、プリントバー1の別の調節機能が得られる。ここでは被印刷物20に対するプリントバー1の平行度のずれ(図16のa)は、プリントバー1がその長手軸線を中心に回動することにより修正される。このために図16のaに示す実施の形態では、位置決めピン9cがプリントバー収容部11内で下方へねじ回され、これによりプリントバー1が持ち上げられる(図16のb、矢印PF10)。
【0062】
図15および図16において、矢印PF8〜PF10は、プリントバー1の運動方向を表す。
【0063】
図14〜図16には、どのようにしてプリントバー1が印刷運転の開始前に印刷位置に調節できるのかを示す。印刷運転中にプリントバー1を繰り返し位置決め板8から持ち上げる必要があるので、印刷運転では、プリントバー1のセンタリングも必要である。持上は、プリントバー1を様々な作業位置に移動するために必要であり、その際、たとえばプリントヘッドDKがクリーニングされるか、またはプリントヘッドに保護キャップが被せられる。作業位置は、印刷位置の上方にあり、印刷位置に応じたプリントバー1のセンタリングは、ここでは不要である。プリントバー1が再び印刷位置に移動すると、再度、被印刷物20に対するプリントバー1の精確な調節を実現する必要がある。
【0064】
図17には、たとえばクリーニング位置におけるプリントバー1の初期状態を示す。駆動ユニットAFは、プリントバー連行体5を持ち上げて、ひいてはプリントバー1のためのプリントバー収容部11を持ち上げる。ばね手段10は、プリントバー収容部11を、ガイドキャリッジ17のプリントバー連行体5に押し付け、クリーニング位置におけるプリントバー1の精確な位置を規定する。位置決めピン9は、対応する位置決め板8から離間される。この位置では、プリントバー1の浮遊支承が有効である。浮遊支承が広い範囲の遊びを許容するので、プリントバー1は、水平方向に運動可能である。浮遊支承の最大の遊びが制限されることにより、前センタリングを導入することができ、たとえばプリントバー連行体5上にセンタリングピン21が設けられており(図18)、センタリングピン21は、プリントバー収容部11に設けられた受け孔22に係入する(図17、図18)。センタリングピン21および受け孔22の直径の選択により、プリントバー1の水平方向の運動自由度を設定することができる。
【0065】
プリントバー1がたとえばクリーニング位置に運動する際に、プリントバー1は、位置決め板8に対して滑動可能である。プリントバー1が再び印刷位置に降下する際に、位置決めピン9は、対応する位置決め板8に当接し、その際、浮遊支承の最大遊びが、位置決め板8aの円錐形の凹所12の直径もしくは位置決め板8b(図5)の楔形の凹所13の幅よりも小さいので、再び位置決めが行われる。プリントバー1が降下する際に、位置決めピン9は、位置決め板8aもしくは位置決め板8bの凹所12もしくは凹所13の傾斜面23に当接する(たとえば図19では位置決め板8a、図20では位置決め板8b;これらは断面図で示す)。プリントバー1がさらに降下すると、プリントバー1は、降下する際に形成される水平方向に作用する力を介して水平方向にスライドされる。水平方向の力は、プリントバー1の重量により位置決め板8a,8bの傾斜面23に沿って形成される(図19、図20)。プリントバー1は、位置決めピン9がその最終位置に到達するまで、降下可能である。ストッパ対偶8,9に応じて、位置決めピン9と位置決め板8との間の当接箇所は、それぞれ別の接触面を有する:
・ストッパ対偶9,8b(図19):不動の支承部8aと位置決めピン9との間の線接触(円形)。
・ストッパ対偶9,8b(図20):位置決め板8bと位置決めピン9との間の2点接触。
・ストッパ対偶9,8c:位置決め板8cの表面と位置決めピン9との間の点接触。
【0066】
プリントバー1がさらに下方へ移動すると、プリントバー1の重力は、ガイドキャリッジ17が駆動ユニットによりさらに降下され、プリントバー1が既にその終了位置を占めるので、位置決め点Pごとに設けられたばね手段10のばね力により増強される。図21および図22にその状態を示す。これに起因する力の増加により、位置決め精度が高まり、振動に対する感度が低下する。これにより印刷位置へ移動する際に高い精度が得られる(±5μm)。
【0067】
ストッパ対偶8,9の構成および配置構造は、温度変化が生じても極めて好適である。温度変化に際して、プリントバー1および底板14の不均等な延伸長さの膨張が生じる。異なる膨張は、位置決め板8の構成により補償することができる。たとえばプリンタをスイッチオンする際に、プリントバー1が底板14よりも迅速に加熱されると、プリントバー1は、支承部の固定点(位置決め点P2)から出発して、ストッパ対偶8,9により、緊締されることなく全方向に膨張する。したがってプリントバー1は、以下の理由により、制限されずに膨張する:
・位置決め板8bは、長孔13の方向の位置決めピン9のスライドを許容する(図23、矢印PF11)、
・位置決め板8cは、x方向およびy方向の位置決めピン9のスライドを許容する(図23、矢印PF12)。
【0068】
プリントバー1の水平方向の調節と鉛直方向の調節との構造的な分離により、温度変化が生じる際に鉛直方向の調節が維持される。プリントバー1の水平方向位置は、専ら位置決め板8bおよび位置決め板8cの位置により設定され、調節され、プリントバー1の鉛直方向位置は、プリントバー収容部11内での位置決めピン9の回動(ねじ伝動装置を介する高さ調節)により設定される。
【0069】
各実施の形態では、それぞれ4つのストッパ対偶が設けられている。しかし、たとえば3つのストッパ対偶を用いても十分であり、たとえば1つの位置決めピン9および位置決め板8cを省略してもよい。
【符号の説明】
【0070】
DK プリントヘッド、 AF 駆動兼ガイドユニット、 LB 支承ブロック、 PF 矢印、 1 プリントバー、 2 プリントヘッド収容部、 3 プリントバーの側面、 4 ステップモータ、 5 プリントバー連行体、 6 プリントバーのための収容ピン、 7 プリントバー収容部に設けられた収容孔、 8 プリントバーのための位置決め板、 9 位置決めピン、 10 所定の予荷重を形成するためのばね手段、 11 プリントバー収容部、 12 円錐形の凹所、 13 角柱の凹所、 14 底板、 15 貫通孔、 16 往復スピンドル、 17 ガイドキャリッジ、 18 スピンドルキャリッジ、 19 リニアガイド、 20 被印刷物、 21 センタリングピン、 22 受け孔、 23 凹所12,13の側面、 24 孔、 25 孔、 26 貫通孔、 P 位置決め点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク式印刷機器において少なくとも1つのプリントバーを印刷位置に位置決めする装置において、
プリントバー(1)ごとに2つの駆動兼ガイドユニット(AF)が設けられており、該駆動兼ガイドユニット(AF)は、調節可能な1つのガイド手段(5)と少なくとも1つの位置決め板(8)とをそれぞれ備えており、
プリントバー(1)は、駆動兼ガイドユニット(AF)ごとに、調節可能な位置決めピン(9)を備えたプリントバー収容部(11)を備えており、
駆動兼ガイドユニット(AF)のガイド手段(5)およびプリントバー(1)のプリントバー収容部(11)は、次のように形成されていて、つまり、駆動兼ガイドユニット(AF)にプリントバー(1)を嵌め込む際に、プリントバー(1)のプリントバー収容部(11)が、駆動兼ガイドユニット(AF)のガイド手段(5)に浮遊支承式に載置され、ガイド手段(5)を印刷位置に調節したあとで、プリントバー(1)が駆動兼ガイドユニット(AF)にセンタリングされかつロックされ、その際、位置決めピン(9)が位置決め板(8)に係入するように、形成されていることを特徴とする、インク式印刷機器において少なくとも1つのプリントバーを印刷位置に位置決めする装置。
【請求項2】
少なくとも1つの位置決め板(8a)が、駆動兼ガイドユニット(AF)に調節可能に配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
駆動兼ガイドユニット(AF)ごとに、相互間隔を置いて2つの位置決め板(8)が設けられており、該位置決め板(8)は、プリントバー収容部(11)内で調節可能に配置された位置決めピン(9)と協働し、プリントバー(1)は、4つの位置決め点で、駆動兼ガイドユニット(AF)にセンタリングされかつロックされるようになっている、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
第1の位置決め板(8a)もしくは第2の位置決め板(8b)にそれぞれ凹所(12もしくは13)が設けられており、プリントバー収容部(11)に配置された位置決めピン(9)は、ガイド手段(5)がプリントバー収容部(11)と共に降下すると、位置決め板(8a,8b)の凹所(12,13)に係入するようになっている、請求項3記載の装置。
【請求項5】
第1の駆動兼ガイドユニット(AF1)に第1の位置決め板(8a)が設けられており、該第1の位置決め板(8a)は、円錐形の凹所(12)を備えており、
第2の駆動兼ガイドユニット(AF2)に第2の位置決め板(8b)が設けられており、該第2の位置決め板(8b)は、角柱の凹所(13)を備えている、請求項4記載の装置。
【請求項6】
凹所(12,13)は、傾斜した側面(23)を備えている、請求項5記載の装置。
【請求項7】
両方の駆動兼ガイドユニット(AF)に、それぞれ第3の位置決め板(8c)が設けられており、該第3の位置決め板(8c)は、扁平な表面を有している、請求項5または6記載の装置。
【請求項8】
位置決めピン(9)は、先端で丸く形成されており、位置決めピン(9)と位置決め板(8a,8b)に設けられた凹所(12,13)との間に、凹所(12,13)に位置決めピン(9)が係入し始めてからロックされるまえに、遊びが形成されるようになっている、請求項4から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
ガイド手段(5)は、駆動兼ガイドユニット(AF)ごとにそれぞれ少なくとも1つの収容ピン(6)を備えており、該収容ピン(6)は、それぞれプリントバー収容部(11)に設けられた収容孔(7)に係入するようになっており、各収容孔(7)の直径は、駆動兼ガイドユニット(AF)にプリントバー(1)を浮遊支承するために、各収容ピン(6)の直径よりも大きくなっており、収容ピン(6)に被せられるばね手段(10)が設けられており、該ばね手段(10)は、ばね力を、ガイド手段(5)に向かってプリントバー収容部(11)に及ぼすようになっている、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
駆動兼ガイドユニット(AF)におけるプリントバー(1)の浮遊支承の遊びが、第1の位置決め板(8a)の凹所(25)の係入直径よりも小さく選択されているか、もしくは第2の位置決め板(8b)の角柱の凹所(26)の係入幅よりも小さく選択されている、請求項9記載の装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の装置を用いて、インク式印刷機器において印刷位置にプリントバーを位置決めする方法において、
プリントバー(1)を、ガイド手段(5)を備えた2つの駆動兼ガイドユニット(AF)に嵌め込み、ガイド手段(5)の収容ピン(6)をプリントバー(1)のプリントバー収容部(11)の収容孔(7)に係入し、その際、各収容孔(7)の直径を、各収容ピン(6)の直径よりも大きく選択し、
ばね手段(10)を、プリントバー収容部(11)を介して収容ピン(6)に被せ、ガイド手段(5)に向かってプリントバー収容部(11)にばね力を及ぼすようにし、
駆動兼ガイドユニット(AF)にプリントバー(1)を位置決めする際に、プリントバー収容部(11)に移動可能に支承された位置決めピン(9)が駆動兼ガイドユニット(AF)に配置された位置決め板(8)に係入するまで、ガイド手段(5)を降下し、プリントバー収容部(11)をガイド手段(5)から離間し、位置決めピン(9)を、プリントバー(1)の重量とばね手段(10)のばね力とに基づいて、対応する位置決め板(8)に位置決めし、プリントバー(1)を、駆動兼ガイドユニット(AF)にセンタリングし、ロックする、
ことを特徴とする、インク式印刷機器において印刷位置でプリントバーを位置決めする方法。
【請求項1】
インク式印刷機器において少なくとも1つのプリントバーを印刷位置に位置決めする装置において、
プリントバー(1)ごとに2つの駆動兼ガイドユニット(AF)が設けられており、該駆動兼ガイドユニット(AF)は、調節可能な1つのガイド手段(5)と少なくとも1つの位置決め板(8)とをそれぞれ備えており、
プリントバー(1)は、駆動兼ガイドユニット(AF)ごとに、調節可能な位置決めピン(9)を備えたプリントバー収容部(11)を備えており、
駆動兼ガイドユニット(AF)のガイド手段(5)およびプリントバー(1)のプリントバー収容部(11)は、次のように形成されていて、つまり、駆動兼ガイドユニット(AF)にプリントバー(1)を嵌め込む際に、プリントバー(1)のプリントバー収容部(11)が、駆動兼ガイドユニット(AF)のガイド手段(5)に浮遊支承式に載置され、ガイド手段(5)を印刷位置に調節したあとで、プリントバー(1)が駆動兼ガイドユニット(AF)にセンタリングされかつロックされ、その際、位置決めピン(9)が位置決め板(8)に係入するように、形成されていることを特徴とする、インク式印刷機器において少なくとも1つのプリントバーを印刷位置に位置決めする装置。
【請求項2】
少なくとも1つの位置決め板(8a)が、駆動兼ガイドユニット(AF)に調節可能に配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
駆動兼ガイドユニット(AF)ごとに、相互間隔を置いて2つの位置決め板(8)が設けられており、該位置決め板(8)は、プリントバー収容部(11)内で調節可能に配置された位置決めピン(9)と協働し、プリントバー(1)は、4つの位置決め点で、駆動兼ガイドユニット(AF)にセンタリングされかつロックされるようになっている、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
第1の位置決め板(8a)もしくは第2の位置決め板(8b)にそれぞれ凹所(12もしくは13)が設けられており、プリントバー収容部(11)に配置された位置決めピン(9)は、ガイド手段(5)がプリントバー収容部(11)と共に降下すると、位置決め板(8a,8b)の凹所(12,13)に係入するようになっている、請求項3記載の装置。
【請求項5】
第1の駆動兼ガイドユニット(AF1)に第1の位置決め板(8a)が設けられており、該第1の位置決め板(8a)は、円錐形の凹所(12)を備えており、
第2の駆動兼ガイドユニット(AF2)に第2の位置決め板(8b)が設けられており、該第2の位置決め板(8b)は、角柱の凹所(13)を備えている、請求項4記載の装置。
【請求項6】
凹所(12,13)は、傾斜した側面(23)を備えている、請求項5記載の装置。
【請求項7】
両方の駆動兼ガイドユニット(AF)に、それぞれ第3の位置決め板(8c)が設けられており、該第3の位置決め板(8c)は、扁平な表面を有している、請求項5または6記載の装置。
【請求項8】
位置決めピン(9)は、先端で丸く形成されており、位置決めピン(9)と位置決め板(8a,8b)に設けられた凹所(12,13)との間に、凹所(12,13)に位置決めピン(9)が係入し始めてからロックされるまえに、遊びが形成されるようになっている、請求項4から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
ガイド手段(5)は、駆動兼ガイドユニット(AF)ごとにそれぞれ少なくとも1つの収容ピン(6)を備えており、該収容ピン(6)は、それぞれプリントバー収容部(11)に設けられた収容孔(7)に係入するようになっており、各収容孔(7)の直径は、駆動兼ガイドユニット(AF)にプリントバー(1)を浮遊支承するために、各収容ピン(6)の直径よりも大きくなっており、収容ピン(6)に被せられるばね手段(10)が設けられており、該ばね手段(10)は、ばね力を、ガイド手段(5)に向かってプリントバー収容部(11)に及ぼすようになっている、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
駆動兼ガイドユニット(AF)におけるプリントバー(1)の浮遊支承の遊びが、第1の位置決め板(8a)の凹所(25)の係入直径よりも小さく選択されているか、もしくは第2の位置決め板(8b)の角柱の凹所(26)の係入幅よりも小さく選択されている、請求項9記載の装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の装置を用いて、インク式印刷機器において印刷位置にプリントバーを位置決めする方法において、
プリントバー(1)を、ガイド手段(5)を備えた2つの駆動兼ガイドユニット(AF)に嵌め込み、ガイド手段(5)の収容ピン(6)をプリントバー(1)のプリントバー収容部(11)の収容孔(7)に係入し、その際、各収容孔(7)の直径を、各収容ピン(6)の直径よりも大きく選択し、
ばね手段(10)を、プリントバー収容部(11)を介して収容ピン(6)に被せ、ガイド手段(5)に向かってプリントバー収容部(11)にばね力を及ぼすようにし、
駆動兼ガイドユニット(AF)にプリントバー(1)を位置決めする際に、プリントバー収容部(11)に移動可能に支承された位置決めピン(9)が駆動兼ガイドユニット(AF)に配置された位置決め板(8)に係入するまで、ガイド手段(5)を降下し、プリントバー収容部(11)をガイド手段(5)から離間し、位置決めピン(9)を、プリントバー(1)の重量とばね手段(10)のばね力とに基づいて、対応する位置決め板(8)に位置決めし、プリントバー(1)を、駆動兼ガイドユニット(AF)にセンタリングし、ロックする、
ことを特徴とする、インク式印刷機器において印刷位置でプリントバーを位置決めする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−101540(P2012−101540A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244572(P2011−244572)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(397018925)オーセ プリンティング システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (68)
【氏名又は名称原語表記】Oce Printing Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensallee 2, D−85586 Poing, Germany
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(397018925)オーセ プリンティング システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (68)
【氏名又は名称原語表記】Oce Printing Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensallee 2, D−85586 Poing, Germany
【Fターム(参考)】
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