説明

インク方式印刷機器で印刷運転中にポーズ機能を実行する方法

【課題】印刷運転中にポーズ機能を実行する方法を改良して、ポーズ機能の作動後に、特に印刷ポーズの終了後に、被印刷材料ウェブひいては印刷像に作用する温度および周辺空気の不都合な影響が低減されたものを提供する。
【解決手段】少なくとも1つの印刷機器DRを備え、プリントヘッド5を支持するプリントバー4を備えた印刷ユニット1が、被印刷材料ウェブ3に印刷し、ポーズ機能の作動により、被印刷材料ウェブ3の送り速度が、印刷運転時の速度から、所定の時間長さにわたって、所定の速度に低下し、その際、該時間長さを、ポーズの終了時に印刷機器DRの印刷ユニット1の下側で被印刷材料ウェブ3が湿気および/または温度に関する適切な特性を有するように選択し、ポーズの終了後に、被印刷材料ウェブ3を、再び印刷運転時の速度に加速する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク方式印刷システムの印刷運転中にポーズ機能を実行する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な材料、たとえば紙から成る被印刷材料、たとえばウェブ状の記録担体に単色または多色で印刷するために、インク方式印刷機器が用いられる。そのようなインク方式印刷機器の構造は公知である(たとえば欧州特許第0788882号参照)。ドロップオンデマンド(DoD)原理に従って作動するインク方式印刷機器は、インク通路が設けられたノズルを備えた1つまたは複数のプリントヘッドを備えており、プリントヘッドのアクチュエータは、プリンタ制御装置により制御して、被印刷材料ウェブに向かってインキ滴を形成し、インキ滴は、印刷像の印刷点を形成するために被印刷材料ウェブに向けられる。アクチュエータは、インキ滴を熱方式(バブルジェット)または圧電方式で形成することができる。
【0003】
被印刷材料ウェブに印刷する際に、多くの場合、たとえば印刷ジョブを印刷したあとの見当品質をコントロールするため、または被印刷材料ウェブの後処理の際の問題を解消するために、印刷運転中に、被印刷材料ウェブをポーズ機能で停止させる必要がある。被印刷材料ウェブの再始動後に、ポーズ機能をオンしたあとでプリントヘッドの直下にあるウェブ区分に印刷像の欠陥が生じることがある。インク方式印刷機器、たとえばインクジェット印刷システムの、特にカラー印刷の場合の比較的大きな転写域に基づいて、ポーズに起因する印刷像の欠陥に応じて多数の損紙が生じることになる。生じる印刷像の欠陥には、印刷像の歪み、色見当エラーならびに台形の印刷像のエラーが含まれる。その原因として、ポーズ中の被印刷材料ウェブの膨張または収縮およびこれに伴うプリントヘッドの下側における被印刷材料ウェブの位置ずれが挙げられる。
【0004】
図1に基づいて、これらの問題について説明する。印刷機器DRのうち、印刷ユニット1およびプリンタ制御装置2を図示する。被印刷材料ウェブ3に沿って印刷ユニット1が配置されており、印刷ユニット1は、被印刷材料ウェブ3の搬送方向にみて相前後に位置するプリントヘッド5を支持するプリントバー4を有している。多色印刷では、たとえば印刷しようとする色ごとに、それぞれ1つのプリントバー4を設けることができる。被印刷材料ウェブ3は、巻取ローラ9により、プリントバー4を通過するように送られる。プリントバー4は、ガイドローラ8を備えた支持部材に設けられている。印刷ユニット1の入口に回転位置発信器ローラ6が配置されており、回転位置発信器ローラ6は、被印刷材料ウェブ3により駆動され、被印刷物材料ウェブ3の送り運動に応じてパルスを形成し、パルスは、プリンタ制御装置2に送られ、プリンタ制御装置2により、個々のプリントヘッド5において印刷プロセスを実行する時点を決定するために用いられる。被印刷材料ウェブ3は、回転位置発信器ローラ6の上流側に配置された駆動ローラ7により、回転位置発信器ローラ6に送られる。
【0005】
図1には、たとえば印刷機器DRの停止状態で、被印刷材料ウェブ3が個々のウェブ区分BAにおいて印刷機器DRを介して印刷ユニット1または周辺空気(雰囲気)にどのように影響され得るのかを原理的に示す。駆動ローラ7と回転位置発信器ローラ6との間のウェブ区分BA1では、被印刷材料ウェブ3は、周辺空気にさらされており、その結果、周辺空気の湿気に起因する被印刷材料ウェブ3の膨張が生じる恐れがある。これに起因する被印刷材料ウェブ3の縦方向の変化は、回転位置発信器ローラ6を用いて補整することができる。同様に、回転位置発信器ローラ6の下流側で印刷ユニット1までのウェブ区分BA2において、周辺空気に起因する被印刷材料ウェブ3の膨張が生じることがある。この膨張は、回転位置発信器ローラ6により考慮されないままである。このことは、印刷ユニット1のプリントヘッド5の下側に位置するウェブ区分BA3にも当てはまり、そこでは被印刷材料ウェブ3は、プリントヘッド5の運転温度に起因して収縮する恐れがあるが、被印刷材料ウェブ3は、周辺空気にさらされているので、特にプリントバー4の間の間隔が大きい場合、ウェブ区分BA3は、周辺空気の湿気により膨張する恐れがある。両方の影響は重畳する。したがって被印刷材料ウェブ3は、駆動ローラ7から巻取ローラ9まで周辺の様々な影響にさらされ、その影響により、被印刷材料ウェブ3の収縮または膨張が生じることになる。これにより、特に印刷運転中のポーズのあとで印刷プロセスが再始動する際に、上述の印刷像の欠陥が生じることがある。
【0006】
したがってポーズ機能を作動させる際に、被印刷材料ウェブ3に以下の現象がみられる:
・周辺空気に対する被印刷材料ウェブ3の温度差および湿度差、これは印刷材料ウェブ3の収縮または膨張を伴う。
・被印刷材料ウェブ3に対するプリントヘッド5の温度差、これは被印刷材料ウェブ3の収縮を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第0788882号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の課題は、冒頭で述べたような、印刷運転中にポーズ機能を実行する方法を改良して、ポーズ機能の作動後に、特に印刷ポーズの終了後に、被印刷材料ウェブひいては印刷像に作用する温度および周辺空気の不都合な影響が低減されたものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために本発明の構成では、インク方式印刷システムの印刷運転中にポーズ機能を実行する方法において、少なくとも1つの印刷機器を備え、プリントヘッドを支持するプリントバーを備えた印刷ユニットが、被印刷材料ウェブに印刷し、ポーズ機能の作動により、被印刷材料ウェブの送り速度が、印刷運転時の速度から、所定の時間長さにわたって、所定の速度に低下し、その際、時間長さを、ポーズの終了時に印刷機器の印刷ユニットの下側で被印刷材料ウェブが湿気および/または温度に関する適切な特性を有するように選択し、ポーズの終了後に、被印刷材料ウェブを、再び印刷運転時の速度に加速する。
【0010】
好適には、被印刷材料ウェブが湿度および温度に関して周辺空気に適合すると、被印刷材料ウェブが適切な特性を有する。
【0011】
好適には、ポーズ機能の作動後に、前工程時間で、被印刷材料ウェブの送り速度が、所定の速度に低下し、前工程時間が経過すると、被印刷材料ウェブが、ポーズ時間にわたって停止する。
【0012】
好適には、ポーズ機能の作動後に、ポーズ時間全体にわたって、被印刷材料ウェブの送り速度が、所定の速度に低下する。
【0013】
好適には、印刷ユニットの上流側に配置された回転位置発信器ローラにより、被印刷材料ウェブの送り運動を測定し、測定結果をプリンタ制御装置に送り、被印刷材料ウェブの、回転位置発信器ローラの上流側に位置する区分が印刷ユニットに到達するように、前工程時間を選択する。
【0014】
好適には、被印刷材料ウェブに印刷するために、相前後に位置する2つの印刷機器を用い、被印刷材料ウェブの、第1の印刷機器内に位置する区分が第2の印刷機器の印刷ユニットに到達するように、前工程時間を選択する。
【0015】
好適には、被印刷材料ウェブに印刷するために、相前後に位置する2つの印刷機器を用い、ポーズ機能の作動後に、ポーズ時間全体にわたって、被印刷材料ウェブの送り速度が、所定の速度に低下する。
【0016】
好適には、各印刷機器の印刷ユニットが、ポーズ時間の作動後に、被印刷材料ウェブから離間する方向に移動する。
【0017】
好適には、各印刷機器の印刷ユニットのプリントヘッドの温度が、ポーズ時間の作動後に、低下する。
【0018】
好適には、被印刷材料ウェブを、印刷機器の間で冷却する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ポーズ機能の作動により、被印刷材料ウェブの送り速度が、印刷運転時に用いられる運転速度から所定の時間長さにわたって所定の値に低下する。時間長さは、ポーズの終了に際して、印刷機器の印刷ユニットの下側に、湿度および/または温度に関して印刷に適当な特性を有する被印刷材料ウェブが存在するように選択することができる。たとえば被印刷材料ウェブは、湿度および温度に関して周辺空気に適合させられる。
【0020】
本発明の対象となる別の態様は、従属請求項に記載された構成から明らかである。
【0021】
第1の態様では、ポーズ機能の作動後に、被印刷材料ウェブの送り速度は、印刷時の運転速度から、前工程時間で、所定の時間長さにわたって、所定の速度に低下し、前工程時間が経過すると、被印刷材料ウェブは、たとえば1minのポーズ時間にわたって停止し、続いて再び運転速度に加速される。
【0022】
第2の態様では、被印刷材料ウェブの送り速度は、印刷時の運転速度から、ポーズ機能の作動後に、たとえば1minのポーズ時間全体にわたって、所定の速度に低下し、ポーズの終了時に再び運転速度に加速される。
【0023】
本発明による方法の利点によれば、ポーズ中およびポーズの終了後に、被印刷材料ウェブの、温度および/または湿度に関して印刷に適した値を占めるウェブ区分が、印刷ユニットの下側に位置する。その値は、被印刷材料ウェブが湿度および温度に関して周辺空気に適合された場合に被印刷材料ウェブが占める値である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】インク方式印刷機器の印刷ユニットの原理を示すである。
【図2】被印刷材料ウェブの両面を印刷する2つの印刷機器を備えたツイン印刷システムの原理を示す図である。
【図3】a〜cは、ポーズ機能の様々な態様において時間tに関する被印刷材料ウェブの送り速度の関係を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施の形態を、図1〜図3を用いて具体的に説明する。
【0026】
本発明によれば、処理しようとする印刷ジョブにおけるインク方式印刷機器の印刷運転の要求または被印刷物材料ウェブを後処理する機器の要求に応じて、ポーズ機能の異なる2つの態様が実現される。
1.前工程時間を有する停止状態のポーズ
2.低速移動ポーズ。
【0027】
ポーズの両方の態様において、上述の印刷像の欠陥の低減により印刷品質が改善される。
【0028】
I.印刷機器DR(図1)における本発明の適用
1.前工程時間を有する停止状態のポーズ
前工程時間を有する停止状態のポーズでは、印刷運転を中断するためのポーズキーの作動後に、被印刷材料ウェブ3の送り速度は、印刷機器DRが停止するまえに、所定の時間tv(図3のb)にわたって、運転速度vdから速度vvに低下する。たとえば被印刷材料ウェブ3の送り速度は、tv=1min〜3minにわたって、vv=0.1m/sec〜0.3m/secに低下する。これによりウェブ区分BA2,BA1は、温度および湿度に関して周辺空気に適合され、つまり膨張または収縮に関して平衡状態となり、印刷ユニット1の下側に搬送される。これに続くポーズ時間tpでは、最大でも無視できる程度の小さな印刷材料ウェブ3の位置変動しか生じない。ポーズの終了後、印刷ユニット1の下側に、被印刷材料ウェブ3の、湿度および温度に関して印刷運転に適した特性を有する区分が位置する。次いで被印刷材料ウェブ3は、再び運転速度vdに加速される。
【0029】
2.低速移動ポーズ
低速移動ポーズ(図3のc)では、ポーズキーが作動すると、被印刷材料ウェブ3の速度が運転速度vdから低速移動速度vsに低下し、たとえばポーズ時間tpにわたって、vs=0.001m/s〜0.0015m/sに低下する。ポーズ機能のこの態様では、被印刷材料ウェブ3は停止しないので、常時、新たな被印刷材料ウェブ3が印刷ユニット1に搬送されるが、収縮または膨張の要因は、印刷運転中にも生じるが、既に補整されて平衡状態となっているので、温度差に起因する被印刷物材料ウェブ3の収縮または周辺空気における湿気に起因する被印刷物材料ウェブ3の膨張が生じることはない。印刷機器DRの下流側に場合によっては生じる被印刷物材料ウェブ3の弛みは、被印刷材料ウェブを後処理する機器13(図2)により吸収することができる。
【0030】
II.ツイン印刷システムにおける本発明の適用
1.ツイン印刷システムにおける特別な問題の説明
特別な問題は、ツイン印刷システムの運転時に生じる。この問題およびその解決手段を図2に基づいて説明する。図2には、2つの印刷機器DR1,DR2を備えた印刷システムDS(ツインプリンタ)の原理を示す。各印刷機器DRのうち、ここでは本発明を説明するのに必要な構成要素しか図示していない。残りの構成要素については、背景技術から理解することができ、同様に個々の構成要素の構造についても理解することができる。図2には、各印刷機器DRのうち、印刷ユニット1および乾燥ユニット10を示す。さらに被印刷材料ウェブ3の貯蔵ロール11(貯蔵ロール11から被印刷材料ウェブ3が第1の印刷機器DRに向かって搬送される)を図示し、印刷機器DR1と印刷機器DR2との間に、ターニングユニット12および回転位置発信器ローラ6を図示する。たとえば印刷機器DR1により、被印刷材料ウェブ3の表面が印刷され、印刷機器D2により裏面が印刷される。印刷機器DR1と印刷機器DR2との間で、被印刷材料ウェブ3は、ターニングユニット12により反転される。回転位置発信器ローラ6により、被印刷物材料ウェブ3の送り運動が測定され、測定結果は、プリンタ制御装置2に送られる。回転位置発信器ローラは、第1の印刷機器DR1の入口に設けてもよい。プリンタ制御装置2は、回転位置発信器ローラ6から測定信号を受け取り、公知のように印刷ユニット1と乾燥ユニットとを制御する。第2の印刷機器DR2により印刷された被印刷物材料ウェブ3は、次いで、後処理をする機器13に供給される。
【0031】
そのようなツインプリンタにおいて本発明を用いずにポーズ機能を調べると、印刷機器DR1,DR2において被印刷物材料ウェブ3の膨張および収縮の様々な要因が認められる。
【0032】
第1の印刷機器D1における状態
印刷ユニット1.1のプリントヘッド5は、たとえば約32℃の運転温度を有する。被印刷物材料ウェブ3の温度に対する、生じる温度差により、プリントヘッドの直下に位置する被印刷物材料ウェブ3が収縮する。被印刷物材料ウェブ3の収縮およびこれに伴う縦方向および横方向の被印刷物材料ウェブ3の変位は、印刷ユニット1.1の入口に配置された回転位置発信器ローラでは記録することができない。したがってポーズの終了後、第1の印刷機器DR1において印刷品質の欠陥が生じる。
【0033】
第2の印刷機器DR2における状態
既に第1の印刷機器DR1において印刷プロセスのあとで乾燥ユニット10.1で乾燥された被印刷材料ウェブ3は、ポーズ中に周辺空気から、被印刷材料ウェブ3の膨張をもたらす湿気を吸収する。被印刷材料ウェブ3の膨張は、回転位置発信器ローラ6の前後において縦方向および横方向の被印刷材料ウェブ3の長さ変化をもたらす。回転位置発信器ローラ6の上流側における被印刷材料ウェブ3の膨張およびこれに伴う縦方向のウェブの変位は、回転位置発信器ローラ6により記録され、プリンタ制御装置2に通知され、プリンタ制御装置2は、印刷ユニット1.2のプリントヘッド5の制御時点を相応に修正する。回転位置発信器ローラ6の下流側の被印刷材料ウェブ3の膨張およびこれに伴う変位(印刷ユニット1.2のプリントヘッドの下側の被印刷材料ウェブ3の変位も)は、回転位置発信器ローラ6により記録することができず、したがってプリントヘッドに、被印刷材料ウェブ3の変位に応じて印刷パルスを送ることができない。これにより印刷像の歪みが生じる。被印刷材料ウェブ3の収縮は、第2の印刷ユニット1.2のプリントヘッド5の下側でも行われる。もちろん被印刷材料ウェブ3の収縮は、周辺空気の湿気に起因する被印刷材料ウェブ3の膨張に対抗し、これにより生じる印刷像欠陥を低減する。
【0034】
2.ツイン印刷システムにおける上述の問題の解決手段
被印刷材料ウェブ3ひいては印刷像に対するこのような影響を回避する本発明による構成では、ツイン印刷システムにおいて両方の印刷機器DR1,DR2で異なる作用が得られる。
【0035】
2.1 前工程時間を有するポーズ
a)第2の印刷機器DR2における状態
ポーズ前工程時間tvの間における被印刷材料ウェブ3の低下した速度による運転中、被印刷材料ウェブ3に、周辺空気を介して湿気を吸収するためのより多くの時間が与えられるので、被印刷材料ウェブ3の停止状態を有するポーズの開始時に、被印刷材料ウェブ3の膨張の大部分が生じている。このような効果をサポートするために、印刷機器DRに相応の手段が設けられている場合には、被印刷材料ウェブ3による湿気の吸収に影響を及ぼす別の手段を講じることができる。
・設けられた冷却装置により、被印刷材料ウェブ3は追加的に冷却することができる。
・印刷機器DR1における被印刷材料ウェブ3の乾燥ユニット10.1は、オフ(遮断)することができる。
・第2の印刷機器DR2の上流側でターニング部分12にファンを配置することができる。
【0036】
b)第1の印刷機器DR1における状態
そこでは、印刷機器DR1における被印刷材料ウェブ3の加熱を減じる手段を講じることができる。ポーズキーが作動すると、ポーズ前工程時間tvの間、印刷ユニット1.1のプリントヘッドの温度は、約2〜3℃低下させることができ、その結果、被印刷材料ウェブ3は、プリントヘッドの下側で僅かしか収縮しない。
【0037】
両方の印刷機器DR1,DR2に追加的な手段を講じることができ、たとえばプリントヘッドは、ポーズの開始時に、たとえば1mm〜2mm、印刷運転時の現行のプリントヘッド位置から移動することができる。これによりプリントヘッド5から被印刷材料ウェブ3への熱伝達が低減する。
【0038】
2.2 低速移動ポーズ
低速移動ポーズでは、ポーズキーが作動すると、被印刷材料ウェブ3の速度が低下し、たとえばvs=0.001m/s〜0.015m/sに低下する。このようなポーズ機能の態様では、被印刷材料ウェブ3は停止しない。印刷機器DR2の下流側に場合によっては生じる被印刷材料ウェブ3の弛みは、被印刷材料ウェブ3の後処理装置13により吸収する必要がある。
【0039】
図1には、たとえば図2に示す印刷機器DR2の印刷ユニットである、印刷機器DRの印刷ユニット1を原理的に示す。印刷機器DR1は、被印刷材料ウェブ3の搬送方向(矢印PF)にみて駆動ローラ7の上流側に配置することができる。駆動ローラ7の上流側でも下流側でも周辺空気との接触が生じ、その結果、被印刷材料ウェブ3は膨張することがある。膨張の程度は、第1の印刷機器DR1から離間したあとの被印刷材料ウェブ3の温度にも関係する。回転位置発信器ローラ6の上流側の被印刷材料ウェブ3の膨張変化は、回転位置発信器ローラ6により考慮される。回転位置発信器ローラ6の下流側の膨張変化は、印刷画像にネガティブな影響を及ぼす恐れがある。印刷運転中、たとえば印刷ジョブを印刷したあとで見当品質をコントロールするためにポーズが導入されると、被印刷材料ウェブ3が第2の印刷ユニット1.2の上流側および下流側で膨張するかまたは収縮し、したがって印刷を再開する際に、個々のプリントバー4のプリントヘッド5はもはや正確な点で印刷像を被印刷材料ウェブ3に形成しない、という恐れがある。この問題を解決するために、本発明によれば、被印刷材料ウェブ3の低下した送り速度vvを有する前工程時間tvがポーズ前に導入されるか、または、ポーズの間、被印刷材料ウェブ3は速度vsの低速移動で移動する。その結果、被印刷材料ウェブ3は、周辺空気から湿気を吸収することができ、したがって印刷運転時の状態で各印刷ユニットの下側に到達する。
【0040】
図3から、印刷機器DRのポーズ機能において時間tに関して記録された被印刷材料ウェブ3の速度vの線図が看取される。
・図3のaには、本発明を用いない場合の印刷運転におけるポーズの終了前、終了中、終了後の印刷材料ウェブ3の送り速度vを示す。印刷機器DRは、先ず印刷運転で作動し、被印刷材料ウェブ3は、運転速度vdで印刷機器DRを通って搬送され、次いでポーズ機能が作動し、印刷機器DRは、短時間、たとえばtp=1minにわたって、停止(vp=0)する。ポーズのあとで、被印刷材料ウェブ3は、再始動し、被印刷材料ウェブ3は、再び運転速度vdに加速される。
・図3のbには、前工程を有するポーズ機能の場合に、印刷機器DRの運転時の被印刷材料ウェブ3の速度経過を示す。運転速度vdから、被印刷材料ウェブ3は、たとえば1min〜3minの前工程時間tvにわたってたとえば0.1m/sの低い速度vvに制動される。この時間の間に、被印刷材料ウェブ3は、周辺空気の湿気および温度を占めることができる。次いで被印刷材料ウェブ3は、たとえばポーズ時間tp=1minにわたって停止する(vp=0)。このポーズの間に、たとえば後処理13の機器における問題を解消することができる。ポーズの終了後に、被印刷材料ウェブ3は、再び運転速度vdに加速される。
【0041】
前工程時間tvは、被印刷材料ウェブ3が印刷ユニット1の下側に達するように選択され、その特性は、印刷運転時における特性に相当し、したがって既に考慮されている。たとえば前工程時間tvは、ウェブ区分BA1(図1)が印刷ユニット1の下側に達するように選択するか、または、前工程時間tvは、被印刷材料ウェブ3が第1の印刷機器DR1の出口または乾燥ユニット10.1の下流側で第2の印刷機器DR2の印刷ユニット1.2に達するように選択することができる。
【0042】
図3のcから、低速移動を有するポーズ機能が看取される。運転速度vdから、ポーズ機能の作動後に、被印刷材料ウェブ3の印刷速度は、たとえばvs=0.001m/sの低速移動速度に低下し、たとえばtp=1minのポーズの間に、低速移動速度vsで引き続き搬送される。ポーズが経過すると、被印刷材料ウェブ3は、再び運転速度vdに加速される。
【符号の説明】
【0043】
DS 印刷システム、 DR 印刷機器、 1 印刷ユニット、 2 プリンタ制御装置、 3 被印刷材料ウェブ、 4 印刷バー、 5 プリントヘッド、 6 回転位置発信器ローラ、 7 駆動ローラ、 8 ガイド支持体、 9 巻取ローラ、 10 乾燥ユニット、 11 被印刷材料ウェブの貯蔵ロール、 12 ターニングユニット、 13 後処理をする装置、 v 速度、 t 時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク方式印刷システムの印刷運転中にポーズ機能を実行する方法において、
少なくとも1つの印刷機器(DR)を備え、プリントヘッド(5)を支持するプリントバー(4)を備えた印刷ユニット(1)が、被印刷材料ウェブ(3)に印刷し、
ポーズ機能の作動により、被印刷材料ウェブ(3)の送り速度が、印刷運転時の速度(vd)から、所定の時間長さにわたって、所定の速度に低下し、その際、該時間長さを、ポーズの終了時に印刷機器(DR)の印刷ユニット(1)の下側で被印刷材料ウェブ(3)が湿気および/または温度に関する適切な特性を有するように選択し、
ポーズの終了後に、被印刷材料ウェブ(3)を、再び印刷運転時の速度(vd)に加速することを特徴とする、ポーズ機能を実行する方法。
【請求項2】
被印刷材料ウェブ(3)が湿度および温度に関して周辺空気に適合すると、被印刷材料ウェブ(3)が適切な特性を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポーズ機能の作動後に、前工程時間(tv)で、被印刷材料ウェブ(3)の送り速度が、所定の速度(vv)に低下し、前工程時間(tv)が経過すると、被印刷材料ウェブ(3)が、ポーズ時間(tp)にわたって停止する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ポーズ機能の作動後に、ポーズ時間(tp)全体にわたって、被印刷材料ウェブ(3)の送り速度が、所定の速度(vs)に低下する、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
印刷ユニット(1)の上流側に配置された回転位置発信器ローラ(6)により、被印刷材料ウェブ(3)の送り運動を測定し、測定結果をプリンタ制御装置(2)に送り、
被印刷材料ウェブ(3)の、回転位置発信器ローラ(6)の上流側に位置する区分(BA1)が印刷ユニット(1)に到達するように、前工程時間(tv)を選択する、請求項3記載の方法。
【請求項6】
被印刷材料ウェブ(3)に印刷するために、相前後に位置する2つの印刷機器(DR1,DR2)を用い、
被印刷材料ウェブ(3)の、第1の印刷機器(DR1)内に位置する区分が第2の印刷機器(DR2)の印刷ユニット(1.2)に到達するように、前工程時間(tv)を選択する、請求項3記載の方法。
【請求項7】
被印刷材料ウェブ(3)に印刷するために、相前後に位置する2つの印刷機器(DR1,DR2)を用い、
ポーズ機能の作動後に、ポーズ時間(tp)全体にわたって、被印刷材料ウェブ(3)の送り速度が、所定の速度(vs)に低下する、請求項4記載の方法。
【請求項8】
各印刷機器(DR1,DR2)の印刷ユニット(1)が、ポーズ時間(tp)の作動後に、被印刷材料ウェブ(3)から離間する方向に移動する、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
各印刷機器(DR1,DR2)の印刷ユニット(1)のプリントヘッド(5)の温度が、ポーズ時間(tp)の作動後に、低下する、請求項6または7記載の方法。
【請求項10】
被印刷材料ウェブ(3)を、印刷機器(DR1,DR2)の間で冷却する、請求項6から9までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−148564(P2012−148564A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−7099(P2012−7099)
【出願日】平成24年1月17日(2012.1.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(397018925)オーセ プリンティング システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (68)
【氏名又は名称原語表記】Oce Printing Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensallee 2, D−85586 Poing, Germany
【Fターム(参考)】