説明

インク組成物、記録方法および記録物

【課題】目詰まりの生じにくさ、および形成される画像の耐光性が良好なインク組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係るインク組成物は、遊離酸として表した場合に下記式(1)で表される染料と、リチウムイオンと、カルボキシル基を有する芳香族化合物と、を含有する。
【化1】


(式(1)中、Qはハロゲン原子を表し;xは、2〜4の整数を表し;yは、1〜3の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物、記録方法および記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性の染料を含有するインクは、インクジェットプリンターや万年筆などの用途に広く用いられている。このようなインクに対しては、ノズルやペン先で目詰まりを生じにくいこと、乾燥性が良いこと、保存安定性に優れること、十分な濃度の画像を形成できること、形成された画像の色の変化が小さいこと、などの様々な性能が要求される。
【0003】
インクの目詰まりは、インク中の水分が蒸発した場合に、染料が析出して固化することが一因となって生じると考えられている。そのため水に対する飽和溶解度の高い染料を用いれば、濃度が高まっても析出しにくいため目詰まりを生じにくくさせることができると考えられている。また、染料の発色性を高めれば、相対的にインクに配合する濃度を下げることができるため目詰まりを生じにくくさせることができると考えられている。
【0004】
一方、目詰まりの生じやすさと乾燥の速さとは、トレードオフの関係にあるため、インクに種々の化合物を混合することによって、これらの性質のバランスをとることなども検討されている。また、染料の発色性、得られる画像の耐光性の改良についても、例えば、染料の分子を設計することなどの検討が行われている。
【0005】
特に、イエローの染料を用いたインクにおいては、得られる画像の耐光性を高める要求が強く、例えば、特許文献1には、2種のイエロー染料を含有し、一方のイエロー染料がpH緩衝能を有するというインクジェット用インクが提案されている。同文献には、このようなインクは、耐光性、発色性、色調に優れた画像を与えることができ、保存安定性もよい等の記載がある。
【0006】
また、例えば、特許文献2には、水混和性有機溶媒および染料を含むインクジェット記録用インクが開示されている。同文献には、このようなインクは、乾きがなく、吐出安定性が高く、得られる画像の色相、耐光性、耐水性が優れる旨の記載がある。さらに、例えば、特許文献3には、染料を含有するイエローインクを含む、インクジェット用インクセットが開示されている。同文献に記載されたイエローインクは、耐光性と吐出性が両立されるとの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−297541号公報
【特許文献2】特開2004−099725号公報
【特許文献3】特開2004−091537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の従来提案されているインクでは、少なくとも、目詰まりの生じにくさ、および形成される画像の耐光性、並びにこれらの性能のバランスについて、十分に満足する性能には必ずしも至っていない。
【0009】
発明者らは研究の結果、画像に極めて良好な耐光性を付与できる染料を見出だし、当該染料と、特定の化合物とを組み合わせることにより、形成される画像の耐光性および耐湿性、並びに目詰まりの生じにくさを向上できるという知見を得た。
【0010】
本発明の幾つかの態様にかかる目的の一つは、目詰まりの生じにくさ、および形成される画像の耐光性が良好なインク組成物を提供することにある。また、本発明の幾つかの態様にかかる目的の一つは、耐光性および耐湿性が良好な画像、およびそのような画像が記録された記録物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0012】
[適用例1]本発明に係るインク組成物の一態様は、遊離酸として表した場合に下記式(1)で表される染料と、リチウムイオンと、カルボキシル基を有する芳香族化合物と、を含有する。
【0013】
【化1】

【0014】
(式(1)中、Qはハロゲン原子を表し;xは、2〜4の整数を表し;yは、1〜3の整数を表す。)
本適用例のインク組成物は、主としてリチウムイオンの存在により、目詰まりを生じにくく、かつ、主として遊離酸として表した場合に式(1)で表される染料の存在により、当該インク組成物を用いて形成される画像の耐光性が良好である。また、主としてカルボキシル基を有する芳香族化合物の存在により、本適用例のインク組成物によって得られる記録物の耐湿性が良好である。
【0015】
本明細書において、遊離酸とは、塩を形成しておらず、かつ、イオン化していない酸のことを指す。
【0016】
[適用例2]適用例1において、前記芳香族化合物は、ナフタレン環またはベンゼン環を有してもよい。
【0017】
[適用例3]適用例2において、前記芳香族化合物は、2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−メトキシ−2−ナフトエ酸または安息香酸から選択される少なくとも一種であってもよい。
【0018】
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれか1例において、前記インク組成物に含有される前記染料と、前記芳香族化合物と、の含有モル比は、モル比[芳香族化合物/染料]として1〜10の範囲であってもよい。
【0019】
本適用例のインク組成物は、インクジェット方式のプリンターに導入して使用する場合に、インクジェットのノズルからの吐出性がさらに優れる。
【0020】
[適用例5]適用例1ないし適用例4のいずれか1例において、pHが、8以上10.5以下であってもよい。
【0021】
本適用例のインク組成物は、インクジェット方式のプリンターに導入して使用する場合に、プリンターの各部を腐食させにくく、かつ、さらに目詰まりを生じにくい。
【0022】
[適用例6]本発明に係る記録方法の一態様は、適用例1ないし適用例5のいずれか1例に記載されたインク組成物を用いる。
【0023】
本適用例の記録方法によれば、耐光性の良好な記録物を得ることができる。
【0024】
[適用例7]本発明に係る記録物の一態様は、適用例6に記載された記録方法で得られる。
【0025】
本適用例の記録物は、主として遊離酸として表した場合に式(1)で表される染料の存在により、耐光性が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は、以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。なお以下の実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0027】
1.インク組成物
本実施形態のインク組成物は、染料と、リチウムイオンと、カルボキシル基を有する芳香族化合物と、を含有する。
【0028】
1.1.染料
本実施形態のインク組成物に含有される染料は、遊離酸として表した場合に下記式(1)で表される。染料は、インク組成物中で電離していてもよく、その場合は、式(1)で表される染料の−SOH基の少なくとも1つが電離して−SOとなっていてもよく、さらに、この場合の対イオンは特に限定されない。したがって、本実施形態の染料は、酸、イオンおよび塩のいずれの形態であってもよいが、遊離酸として表現した場合に、下記式(1)の表記で表されるものである。以下、遊離酸として表現した場合に、下記式(1)の表記で表される染料を、単に、染料という場合がある。
【0029】
【化2】

【0030】
(式(1)中、Qはハロゲン原子を表し;xは、2〜4の整数を表し;yは、1〜3の整数を表す。)
本実施形態の染料は、水溶性のイエロー色素に属する。染料は、水を含む溶媒に添加された場合には、5つ存在する−SOH基の少なくとも1つが電離して−SOとなって、イオンとして該溶媒中に存在できる。また、染料は、水を含む溶媒に添加された場合には、5つ存在する−SOH基の全部が電離して−SOとなって該溶媒中に存在していてもよい。
【0031】
上記式(1)において、Qはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)が挙げられ、これらのうちでもQは、FまたはClが好ましく、Clが特に好ましい。また、式(1)には、Qが2つ存在するが、2つのQは、それぞれ独立に互いに異なるハロゲン原子であってもよい。
【0032】
式(1)中、xは2〜4の整数を表す。xは、染料の水への溶解性等を考慮して、適宜選択されうるが、このような観点から、整数3であることが好ましい。また、式(1)には、xが2箇所に現れているが、これらのxは、互いに異なる整数であってもよい。
【0033】
式(1)中、yは1〜3の整数を表す。yは、染料の水への溶解性等を考慮して、適宜選択されうるが、このような観点から、整数2であることが好ましい。
【0034】
上記のQ、x、およびyは、例えば、水への溶解性の要求に応じて適宜設計されうる。
【0035】
本実施形態の染料は、例えば次のようにして製造することができる。なお下記式(3)から下記式(8)において現れるQ、xおよびyは、それぞれ上記式(1)において述べたと同義である。
【0036】
まず、特開2004−75719号公報に記載の方法に準じて、市販の2−アミノ−4−ハロゲノフェノールを原料として得た下記式(3)で表される化合物を、重亜硫酸ナトリウムおよびホルマリンを用いてスルホン酸誘導体(4)に変換する。次いで、常法により、下記式(5)で表される5−アミノ−2−クロロ安息香酸をジアゾ化し、先に得られた式(4)のスルホン酸誘導体と、反応温度0〜15℃、pH2〜4でカップリング反応を行い、引き続き、反応温度80〜95℃、pH10.5〜11.5で加水分解反応を行うことにより、下記式(6)で表される化合物が得られる。
【0037】
【化3】

【0038】
【化4】

【0039】
【化5】

【0040】
【化6】

【0041】
次いで、式(6)で表される化合物(2当量)とハロゲン化シアヌル(1当量)、例えば塩化シアヌル(1当量)とを、反応温度15〜45℃、pH5〜8で縮合することにより下記式(7)で表される化合物が得られる。
【0042】
【化7】

【0043】
さらに得られた式(7)で表される化合物におけるトリアジン環上の塩素原子を、反応温度75〜90℃、pH7〜9の条件下、下記式(8)で表されるアミンで置換することにより、上記染料を得ることができる。
【0044】
【化8】

【0045】
式(8)で表されるアミンとしては、アミノメチルスルホン酸、タウリン(2−アミノエタンスルホン酸)、ホモタウリン(3−アミノプロパンスルホン酸)が具体例として挙げられる。
【0046】
本実施形態の染料の具体例を下記表1に示す。なお、下記表1中、Q、xおよびyは、上記式(1)について説明したと同義である。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
本実施形態のインク組成物中に染料を含有させる方法としては、染料そのもの(遊離酸の状態)で添加することでインク組成物としてもよいし、式(1)で表される染料の塩として添加することでインク組成物としてもよい。このようにすれば、インク組成物中に染料を含有させることができる。また、染料を塩として添加する場合、染料を遊離酸として表した場合に5つ存在する−SOH基は、それぞれ独立に、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、およびアンモニウム塩のいずれか一種であることができる。
【0050】
−SOH基のアンモニウム塩を形成するアンモニウムとしては、例えば、NHや、下記式(9)で表される4級アンモニウムを挙げることができる。
【0051】
【化9】

【0052】
式(9)中、Z〜Zはそれぞれ独立に水素原子、C1−C4アルキル基、ヒドロキシC1−C4アルキル基、またはヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキル基を表わし、Z〜Zの少なくとも1つは水素原子以外の基である。
【0053】
ここで、Z〜ZにおけるC1−C4アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、およびt−ブチル基が挙げられる。また、ヒドロキシC1−C4アルキル基の例としてはヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキジプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。同様に、ヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキル基の例としては、ヒドロキシエトキシメチル基、2−ヒドロキシエトキシエチル基、3−(ヒドロキシエトキシ)プロピル基、3−(ヒドロキシエトキシ)ブチル基、2−(ヒドロキシエトキシ)ブチル基等が挙げられる。
【0054】
なお、本明細書において、「C1−C4」との表記は、「炭素数が1ないし4の」の意味で用いる。同様に「C1−C8」との表記は、「炭素数が1ないし8の」の意味で用いる。
【0055】
本実施形態の遊離酸として表した場合に式(1)で表される染料やその塩は、以下の方法等により得ることができる。例えば、上述の染料の合成反応における、最終工程終了後の反応液に、アセトンやC1−C4アルコールなどの有機溶剤を加えることや、塩化ナトリウムを加えることなどにより析出した固体を濾過分離することにより、染料のナトリウム塩等をウェットケーキとして得ることができる。また、得られたナトリウム塩のウェットケーキを水に溶解後、塩酸等の酸を加えてそのpHを適宜調整し、析出した固体を濾過分離することにより、遊離酸の状態の染料を、あるいは染料の一部がナトリウム塩である化合物を得ることができる。
【0056】
また、得られたナトリウム塩のウェットケーキ又はその乾燥固体を水に溶解後、塩化アンモニウム等のアンモニウム塩を添加し、塩酸等の酸を加えてそのpHを、例えば1〜3に調整し、析出した固体を濾過分離することにより、染料のアンモニウム塩を得ることができる。
【0057】
また、後述するように前記反応終了後の反応液に、鉱酸(例えば塩酸、硫酸等)を加えて直接染料の固体を得ることもできる。この場合には、染料のウェットケーキを水に加えて撹絆し、例えば、水酸化カリウム;水酸化リチウム;アンモニア水;または上述の式(9)の有機4級アンモニウムの水酸化物;等を添加して造塩することにより、各々添加した化合物に応じたカリウム塩;リチウム塩;アンモニウム塩;または4級アンモニウム塩;等を得ることもできる。
【0058】
また上記例示した方法では、染料のモル数に対して、加える水酸化物等のモル数を制限することにより、例えばリチウム塩とナトリウム塩の混塩等;さらにはリチウム塩、ナトリウム塩、およびアンモニウム塩の混塩等;も調製することが可能である。染料の塩は、その塩の種類により溶解性等の物理的な性質、あるいはインク組成物に配合した場合のインク組成物の性能を変化させることができる。染料の、水への溶解性の観点からは、染料は、塩として添加されることが好ましい。
【0059】
本実施形態の染料の合成において、最終工程終了後の反応液は、本実施形態のインク組成物の製造に直接使用することもできる。しかし合成後に、スプレー乾燥等の方法により反応液等を乾燥して染料またはその塩を単離した後、これをインク組成物に添加してもよい。なおこのようにしてインク組成物に配合する場合には、反応液や単離物には、金属の塩化物、例えば塩化ナトリウム;硫酸塩、例えば硫酸ナトリウム;等の無機塩が、より少ない量で含まれることが好ましい。例えば塩化ナトリウムと硫酸ナトリウムの総含有量は、染料の総質量に対して1質量%以下程度が好ましく、下限値は0質量%、すなわち検出機器の検出限界以下であることが好ましい。無機塩の含有量の少ない反応液や単離物を得る方法としては、例えば公知の逆浸透膜によって塩を分離する方法;アセトンやC1−C4アルコール等の水溶性有機溶剤または含水水溶性有機溶剤によって精製または晶析する方法;が挙げられ、これらのいずれの方法によっても脱塩処理を行うことができる。
【0060】
本実施形態のインク組成物における染料の含有量は、染料の種類、溶媒成分の種類等を考慮して、適宜選択されうる。しかし、本実施形態のインク組成物は、インク組成物の総質量中に、染料の5つ存在する−SOH基の少なくとも1つが電離して−SOとなったイオンを、質量換算で、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%含有することが好ましい。上記の範囲とすることで、記録媒体上での発色性又は画像濃度に優れるとともに、目詰まりを生じにくくすることができる。
【0061】
式(1)において5つ存在する−SOH基の少なくとも1つが電離して−SOとなったイオンは、水に対する溶解性が十分に大きく、これによりインク組成物において染料の析出等を生じさせにくい性質を有する。そのため、インク組成物における染料の機能の一つとしては、ノズルやペン先の目詰まりを低減させることが挙げられる。また、染料は、インク組成物が画像等とされて乾燥された際に、酸または塩の状態で画像を構成する塗膜中に存在することになる。すなわちこのような画像には、染料またはその塩が含有されることとなる。染料またはその塩は、耐光性が良好であるため、インク組成物における染料の機能の一つとして、インク組成物によって形成された画像の耐光性を高めることを挙げることができる。なおここで述べている染料の機能は、他の構成(リチウムイオンやカルボキシル基を有する芳香族化合物)が、インク組成物中に共存することによって発現している可能性もある。
【0062】
1.2.リチウムイオン
本実施形態のインク組成物は、リチウムイオンを含有する。リチウムイオンは化学式では、「Li」で示されるイオンである。
【0063】
リチウムイオンの機能の一つとしては、インク組成物における上記染料の溶解性を高めることが挙げられる。リチウムイオンのこのような機能により、インク組成物がノズルやペン先での目詰まりを生じにくくなる。
【0064】
本実施形態のインク組成物は、インク組成物の総質量中に、リチウムイオンを、質量換算で、0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%含有する。
【0065】
本実施形態のインク組成物中にリチウムイオンを含有させる方法としては、特に限定されず、例えば、染料のうち5つ存在する−SOH基の少なくとも1つがリチウム塩となったものを添加することでインク組成物としてもよい。染料の溶解性を高める観点からは、染料は、上記式(1)で表される遊離酸、またはその塩とは別に水酸化リチウム、塩化リチウム、フッ化リチウム、炭酸リチウム等の無機リチウム化合物を添加することによってインク組成物とするのが好ましい。このようにすれば、上記式(1)で表される染料の状態(遊離酸または塩)に拠らず、目詰まりしにくいインク組成物とすることができる。さらに、無機リチウム化合物を添加する場合、後述のカルボキシル基を有する芳香族化合物の遊離酸と併用することによって、インク組成物のpH値の調整が容易となる。
【0066】
1.3.カルボキシル基を有する芳香族化合物
本実施形態のインク組成物は、カルボキシル基を有する芳香族化合物を含有する。カルボキシル基は化学式では「−COOH」で表される基である。芳香族化合物としては、特に限定されず、芳香環を有する化合物であることができる。
【0067】
ここで、芳香環としては、例えば、ベンゼン環等の単環炭化水素、ナフタレン環、アントラセン環、インデン環、ビフェニレン環、フルオレン環、フェナントレン環、ピレン環等の縮合多環炭化水素、およびこれらの環の環員が、硫黄、窒素等によって単数または複数置換された複素環を挙げることができる。さらに、上記芳香環は、該芳香環の全体が共役系を構成していなくてもよく、また、多環系環集合を構成していてもよい。またさらに、上記芳香環は、複数の上記芳香環が、単数または複数のメチレン結合、エーテル結合、スルフィド結合、スルホニル結合等によって互いに結合された構造であってもよい。
【0068】
そして、カルボキシル基を有する芳香族化合物は、カルボキシル基以外の官能基を有していてもよい。このような官能基としては、有機基、無機基のいずれでもよく、例えば、水酸基(ヒドロキシル基)、C1−C8アルキル基、C1−C8脂環式アルキル基、C1−C8アルコキシ基、エステル基、アシル基、オキソ基、メルカプト基、チオキソ基、ハロゲン基、アミノ基、アゾ基などを挙げることができる。
【0069】
さらに、カルボキシル基を有する芳香族化合物は、カルボキシル基を複数有してもよく、上述のカルボキシル基以外の官能基も複数有してもよい。
【0070】
カルボキシル基を有する芳香族化合物の例としては、安息香酸、マンデル酸、フタル酸、ナフトエ酸(1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸等)、ナフタル酸(2,6−ナフタレンジカルボン酸等)、ナフチル酢酸、ナフトキシ酢酸、ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸、4−ヒドロキシ安息香酸等)、ヒドロキシナフトエ酸(2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等)、およびアルコキシナフトエ酸(3−メトキシ−2−ナフトエ酸、3−エトキシ−2−ナフトエ酸、3−プロポキシ−2−ナフトエ酸、6−メトキシ−2−ナフトエ酸、6−エトキシ−2−ナフトエ酸、6−メトキシ−2−ナフトエ酸、6−プロポキシ−2−ナフトエ酸等)、並びに、その塩を挙げることができる。
【0071】
カルボキシル基を有する芳香族化合物の機能の一つとしては、記録物の耐湿性を高めることが挙げられる。このような機能が発現するメカニズムは定かではないが、カルボキシル基を有する芳香族化合物の溶解度が小さいために、得られる記録物の湿度による滲み等が抑えられることが一因かもしれない。また、本実施形態のインク組成物においては、カルボキシル基を有する芳香族化合物と、上述のリチウムイオンと、を共存させることにより、目詰まりを生じにくいインク組成物でありながら、耐湿性に優れる記録物を得ることが可能となる。
【0072】
また、カルボキシル基を有する芳香族化合物は、塩の形で添加され、インク組成物中に含有されることも可能であり、該スルホ基を有する芳香族化合物と塩基とが別々に添加され、インク組成物中に含有されることも可能である。このような塩としては、その構成する対イオンに特に限定されず、例えば、金属塩やアンモニウム塩等が挙げられるが、特にアルカリ金属塩が好ましく挙げられる。
【0073】
上記カルボキシル基を有する芳香族化合物又はその塩の含有量は、該カルボキシル基を有する芳香族化合物又はその塩の種類、染料の種類、溶媒成分の種類等により適宜決定されるが、インク組成物全質量に対し、好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは0.5〜10質量%の範囲である。
【0074】
本実施形態のインク組成物中にカルボキシル基を有する芳香族化合物を含有させる方法としては、カルボキシル基を有する芳香族化合物そのもの(遊離酸の状態)で添加してもよいし、カルボキシル基を有する芳香族化合物に存在するカルボキシル基の少なくとも1つが塩となっている化合物を添加してもよい。このようにすれば、インク組成物中にカルボキシル基を有する芳香族化合物を含有させることができる。また、後者の場合、カルボキシル基を有する芳香族化合物中に存在するカルボキシル基は、それぞれ独立に、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、およびアンモニウム塩のいずれか一種であることができる。カルボキシル基のアンモニウム塩を形成するアンモニウムとしては、例えば、NHや、上述の式(8)で表される4級アンモニウムを挙げることができる。カルボキシル基を有する芳香族化合物のカルボキシル基の少なくとも1つがリチウム塩である場合には、これをインク組成物に添加すれば、リチウムイオンをインク組成物に導入することができるとともに、インク組成物のpH値の調整が容易となる。
【0075】
カルボキシル基を有する芳香族化合物の含有量は、カルボキシル基を有する芳香族化合物の種類、染料の種類、溶媒成分の種類等により決められるが、インク組成物全質量に対し、質量換算で、0.2〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
【0076】
1.4.その他の成分
本実施形態のインク組成物は、溶媒として少なくとも水を含み、必要に応じて、その他の色材、有機溶剤、界面活性剤、その他の添加剤を適宜含有することができる。
【0077】
1.4.1.水
インク組成物に用いられる水は、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水などである。なお、各イオン等の分散の妨げにならない程度であれば、水中には他のイオン等の改質剤や不純物が存在してもよい。
【0078】
本実施形態のインク組成物における水の含有量は、成分の分散や溶解が維持できる範囲で限定されないが、インク組成物の全量に対して50質量%以上95質量%以下であることが好ましい。インク組成物における水の含有量が、この範囲内であれば、目詰まりを生じにくくすることができる。
【0079】
1.4.2.その他の色材
本実施形態のインク組成物は、効果を阻害しない範囲で、色相を微調整する目的等から他の公知の色材を含有してもよい。このような色材としては、顔料や染料が挙げられ、例えば、公知のイエロー染料として、C.I.ダイレクトイエロー34、C.I.ダイレクトイエロー58、C.I.ダイレクトイエロー86、C.I.ダイレクトイエロー132、C.I.ダイレクトイエロー173、C.I.ダイレクトオレンジ26、C.I.ダイレクトオレンジ29、C.I.ダイレクトオレンジ49、C.I.ダイレクトレッド62、C.I.ダイレクトレッド75、C.I.ダイレクトレッド79、C.I.ダイレクトレッド80、およびC.I.ダイレクトレッド84などが挙げられる。また、インク組成物に例示した染料を配合する場合には、インク組成物の目詰まりを生じ易くなる場合があり、そのようなことの生じない範囲の配合量とし、補助的に使用することが好ましい。
【0080】
1.4.3.有機溶剤
インク組成物には、有機溶剤が含有されてもよい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が挙げられる。水溶性有機溶剤であれば、インク組成物の吐出安定性を向上させたり、インク特性を変化させたりすることなく粘度を容易に変更させたりすることができる。有機溶剤の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1−C4アルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダソリジン−2−オン、1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の複素環式ケトン類;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン、アセトニルアセトン等のケトン類若しくはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;エチレングリコール、グリセリン、1,2−若しくは1,3−プロピレングリコール、1,2−若しくは1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のC2−C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ若しくはポリアルキレングリコール類(多価アルコール類)若しくはチオグリコール類;トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサン−1,2,6−トリオール等のポリオール(好ましくはトリオール)類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類(多価アルコールのC1−C4モノアルキルエーテル);γ−ブチロラクトン、リン酸トリエチル等のエステル類;フルフリルアルコール;テトラヒドロフルフリルアルコール;チオジグリコール;トリメチルグリシン;またはジメチルスルホキシド;等が挙げられる。
【0081】
なお、例示した有機溶剤には、例えばトリメチロールプロパン、トリメチルグリシン等のように、常温で固体の物質も含まれている。しかし、該物質等は固体であっても水溶性を示し、さらに該物質等を含有する水溶液は水溶性有機溶剤の効果を期待して使用することができる。
【0082】
また、上記例示した有機溶剤のうち、グリコールエーテル類は、浸透促進剤としての効果が高く、インク組成物に配合されると、インク組成物の記録媒体への浸透性を高めることができるとともに、カラー記録を行う場合には、記録媒体上で隣合うインク間のブリードが減少し、より鮮明な画像を得ることができる。
【0083】
さらに、上記例示した有機溶剤のうち、例えば、多価アルコール類、ケトン類、エステル類、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、チオジグリコール、およびトリメチルグリシンは、蒸気圧が純水よりも小さいか、常温で固体であって、揮発性が小さいため、保湿性が高い。そのため、これらの有機溶剤は、保湿剤としての効果が高く、インク組成物に配合されると、インク組成物からの水分の蒸発を抑制する効果を期待することができる。
【0084】
なお、保湿剤としては、上記例示した有機溶剤の他に、マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、マルトース等の糖類を挙げることができ、これらの糖類もインク組成物に好適に用いることができる。
【0085】
インク組成物に有機溶剤を含有させる場合、有機溶剤の合計の含有量は、インク組成物全量に対して、3質量%以上50質量%以下とすることが好ましく、インク組成物の粘度、保湿性や記録媒体への浸透、にじみ等を考慮すれば、例えば5質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
【0086】
1.4.4.界面活性剤
本実施形態のインク組成物は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、例えばアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、およびノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0087】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸およびその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型リン酸エステル、アルキル型リン酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホコハク酸塩、ジエチルへキシルスルホコハク酸塩、並びに、ジオクチルスルホコハク酸塩等が挙げられる。また、このような塩がリチウム塩として、界面活性剤を配合することにより、リチウムイオン(I2)をインク組成物に導入してもよい。
【0088】
カチオン性界面活性剤としては、2−ビニルピリジン誘導体、およびポリ4−ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
【0089】
両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダソリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、およびイミダソリン誘導体等が挙げられる。
【0090】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシンエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコール(アルコール)系;日信化学工業株式会社製の商品名サーフィノール(登録商標)104、82、465、オルフイン(登録商標)STG、PD002W(アセチレンジオール系);SIGMA−ALDRICH社製の商品名Tergitol(登録商標)5−S−7;等が挙げられる。
【0091】
また、界面活性剤は、界面張力を低下させる作用とともに消泡作用を有するものを用いてもよく、このような界面活性剤としては、例えば、高酸化油系、グリセリン脂肪酸エステル系、フッ素系、シリコーン系、アセチレンジオール系の界面活性剤を挙げることができる。
【0092】
1.4.5.添加剤
本実施形態のインク組成物は、防腐防徽剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、溶解助剤、退色防止剤等の公知の添加剤を含んでもよい。
【0093】
防腐防徽剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ベンゾチアゾール系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インタノン系、ベンジルブロムアセテート系、および無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられ、ピリジンオキシド系化合物としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられ、イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2−べンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアブリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防徽剤として酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等が;さらにはアーチケミカル社製の商品名プロクセル(登録商標)GXL(S)及びプロクセル(登録商標)XL−2(S);等が、それぞれ挙げられる。
【0094】
pH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム;あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;タウリン等のアミノスルホン酸;等が挙げられる。なお、例示したpH調整剤のうち、水酸化リチウムおよび炭酸リチウムは、インク組成物にリチウムイオン(I2)を導入することを兼ねて用いることができる。
【0095】
キレート試薬としては、例えばエチレンジアミン四酢酸2ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0096】
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジジクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
【0097】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物、スチルベン系化合物が挙げられ、ベンズオキサソール系化合物のように紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤等も使用できる。
【0098】
粘度調整剤としては、上述の有機溶剤の他に、水溶性高分子化合物が挙げられ、例えばポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等が挙げられる。
【0099】
溶解助剤としては、例えば尿素、ε−カプロラクタム、エチレンカーボネート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。インク組成物に溶解助剤が配合されると、上記染料またはその塩の溶解性を高めることができる場合がある。
【0100】
退色防止剤としては、各種の有機系および金属錯体系の退色防止剤を使用することができる。有機系の退色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、およびヘテロ環類等が挙げられ、金属錯体系としてはニッケル錯体、および亜鉛錯体等が挙げられる。インク組成物に退色防止剤が配合されると、インク組成物によって形成される画像の退色(色あせ等)をさらに低減させることができる。
【0101】
1.5.インク組成物の化学的性質
本実施形態のインク組成物においては、上記の遊離酸として表した場合に式(1)で表される染料と、カルボキシル基を有する芳香族化合物の含有モル比は、モル比「芳香族化合物/第1染料」として、1〜10が好ましい。また、インク組成物によって得られる記録物の耐湿性が優れる点から、前記モル比は1.5〜7が好ましい。
【0102】
また、インク組成物中の水素イオン濃度は、pHとして、8.0〜10.5であることが好ましく、8.5〜10.0であることがさらに好ましい。インク組成物が酸性(pH=5未満程度)であると、上記染料の溶解性およびカルボキシル基を有する芳香族化合物の溶解性が低下する場合があり、また、インク組成物を収容する容器等の腐食が生じる場合がある。そのため、インク組成物中の水素イオン濃度が、pHとして、8.0〜10.5であれば、このような不具合を生じにくく好適である。
【0103】
本実施形態のインク組成物の20℃における表面張力は、25〜45mN/mに調整されることが好ましい。また、本実施形態のインク組成物の20℃における粘度は、インクジェットに用いる場合のノズルからの吐出を容易化する観点から、10mPa・s以下に調整されることが好ましい。
【0104】
1.6.用途等
本実施形態のインク組成物は、天然および合成繊維材料または混紡品の染色、印捺、複写、マーキング、筆記、製図、スタンピング、記録(印刷)において好適に使用できる。本実施形態のインク組成物は、乾燥に対して、固体の析出を生じにくいため、特にインクジェットプリンターの記録ベッドの閉塞を起こしにくいのでインクジェットプリンターにおいて使用することが特に好適である。
【0105】
1.7.インク組成物の調製
本実施形態のインク組成物は、上述の成分を混合攪拌して調製することができる。各成分を溶解させる順序は特に制限はない。また、必要に応じインク組成物の調製後に、メンブレンフイルター等を用いて濾過を行って、インク組成物中の爽雑物を除いてもよい。また、本実施形態のインク組成物をインクジェットのインク組成物として使用する場合には、精密濾過を行ってもよい。精密濾過に使用するフィルターの孔径は、例えば1μm〜0.1μmとすることができる。
【0106】
1.8.作用効果
本実施形態のインク組成物は、上述のように、主としてリチウムイオンおよびカルボキシル基を有する芳香族化合物の存在により、インクジェット方式のプリンターに導入して使用する場合に、目詰まりを生じにくく、かつ、主として遊離酸として表した場合に式(1)で表される染料の存在により、当該インク組成物を用いて形成される画像の耐光性が良好である。また、本実施形態のインク組成物は、インクジェット方式のプリンターに導入して使用する場合に、インクジェットのノズルからの吐出性にも優れる。さらに、本実施形態のインク組成物は、インクジェット方式のプリンターに導入して使用する場合に、プリンターの各部を腐食させにくく、かつ、プリンターのヘッドのノズルの目詰まりを生じにくい。
【0107】
また、本発明のインク組成物は長期間保存後の固体析出、物性変化、色相変化等も抑制され、保存安定性も良好である。さらに、本実施形態のインク組成物に含有される遊離酸として表した場合に式(1)で表される染料は、水や水溶性有機溶剤に対する溶解性に優れるので、例えばメンブレンフイルターに対するろ過性も良好である。
【0108】
また、本実施形態のインク組成物は、保存安定性が高いため、連続式インクジェットプリンターに使用する場合にも好適であり、例えば、比較的長い時間間隔においてインクを再循環させて使用する場合や、オンデマンド式インクジェットプリンターによって断続的に使用する場合でも、好適に使用することができる。
【0109】
2.記録物および記録方法
本実施形態の記録物は、被記録媒体上に上述の画像が形成されたものである。
【0110】
本実施形態の記録物は、上述のインク組成物によって形成される。上述の本実施形態のインク組成物によって形成される。本実施形態の記録物は、被記録媒体に対して、各種の方法によってインク組成物を付着させて画像を形成することによって得ることができる。被記録媒体にインク組成物を付着させる方法としては、特に限定されず、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、浸染法、捺染法、スクリーン印刷等の印刷法、およびインクジェット記録法などを挙げることができる。これらの方法のうち好ましい方法として、インク組成物が充填された容器をインクジェットプリンターの所定位置に装填し、インク組成物の液滴を、ノズルから記録用の信号に応じて吐出させて被記録媒体に付着させて記録する方法が挙げられる。このようなインクジェットプリンターとしては、例えば、ピエゾ方式、バブルジェット(登録商標)方式等のいずれでも利用することができる。
【0111】
被記録媒体としては、インク組成物を塗布できる物体であれば、特に限定されない。本実施形態のインク組成物が塗布されて画像(塗膜)が形成される被記録媒体としては、例えば、紙、フィルム等のシート体、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、ガラス板、カラーフィルター用基板等が挙げられる。シート体としては、特に制限はなく、普通紙はもちろん、表面処理されたもの、具体的には紙、合成紙、フィルム等の基材にインク受容層を設けたもの等でもよい。ここでインク受容層とは、インクを吸収してその乾燥を早める等の作用を有する層である。インク受容層は、例えば基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工する方法;または無機粒子をポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に基材の表面に塗工する方法;等により設けられる。ここで無機粒子の材質としては、多孔質シリカ、アルミナソルや特殊セラミックス等が挙げられる。このようなインク受容層を有するシート体としては、インクジェット専用紙、インクジェット専用フィルム、光沢紙、または光沢フィルム等と称されるものが挙げられる。インク受容層を有するシート体の市販品としては、例えば、セイコーエプソン株式会社製、写真用紙クリスピア(高光沢)、写真用紙(光沢)(商品名);キャノン株式会社製、プロフェッショナルフォトペーパー、キヤノン写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]、および光沢ゴールド(商品名);日本ヒューレット・パッカード株式会社製、アドバンスフォト用紙(光沢)(商品名);富士フィルム株式会社製、画彩、写真仕上げPro(商品名);およびブラザー工業株式会社製、写真光沢紙BP7IG(商品名);等が挙げられる。また、普通紙とはインク受容層を設けていない紙のことを意味し、用途によってさまざまなものが数多く市販されている。市販されている普通紙としては、両面上質普通紙(セイコーエプソン株式会社製);PB PAPER GF−500(キヤノン株式会社製);Mu1tipurpose Paper、A11−in−onePrinting Paper(Hewlett Packard社製);等が挙げられる。また、特に用途をインクジェット記録に限定しないプレーンペーパーコピー(PPC)用紙等も普通紙として挙げることができる。
【0112】
本実施形態の記録物は、主として上記遊離酸として表した場合に式(1)で表される染料の存在により、耐光性が良好である。また、本実施形態の記録物は、上記染料、リチウムイオンおよびカルボキシル基を有する芳香族化合物の塩を含むことがある。そのため、これらの化合物、イオン、塩の総合的な寄与により、耐光性が良好である。
【0113】
また、本実施形態の記録物は、被記録体に、鮮明で、彩度および濃度が高く、優れた色相のイエロー色となることができる。このため、例えば、写真調のカラー画像を紙の上に忠実に再現し、退色などを生じにくく、長期の保存を可能にすることができる。また、本実施形態の記録方法によれば、写真調のカラー画像を被記録媒体の上に忠実に再現し、退色などを生じにくく、長期の保存が可能な記録物を得ることができる。
【0114】
本実施形態の記録物は、主として上記染料の存在により、画像の耐光性が良好である。すなわち、本実施形態の記録物は、記録された画像の彩度が高く、耐光性が良好であり、特に、彩度および耐光性のバランスに優れる。したがって、例えば、写真調の画像が形成されている場合に、退色等を生じにくく、長期保存安定性に優れている。
【0115】
3.実施例および比較例
以下、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0116】
3.1.インク組成物
実施例のインク組成物は、以下のように調製した。なお、特に記載のない限り、「部および%」の記載は、質量基準であり、また反応温度は内温である。なお実施例で用いた化合物の室温における水に対する溶解度は、いずれも100g/リットル以上であった。
【0117】
実施例1ないし実施例7および比較例1ないし比較例4に使用した化合物は、以下のように製造した。
【0118】
5−アミノ−2−クロロベンゼンスルホン酸20.8部を水酸化ナトリウムでpH6に調整しながら水200部に溶解し、次いで亜硝酸ナトリウム7.2部を加えた。この溶液を0〜10℃で、5%塩酸20部中に30分間かけて滴下した後、10℃以下で1時間攪拌してジアゾ化反応を行い、ジアゾ反応液を調製した。
【0119】
一方、2−(スルホプロポキシ)−5−クロロアニリン26.6部を、水酸化ナトリウムでpH7に調整しながら水130部に溶解し、10.4部の重亜硫酸ナトリウムおよび8.6部の35%ホルマリンを用いて、常法によりメチル−ω−スルホン酸誘導体とした。得られたメチル−ω−スルホン酸誘導体を、先に調製したジアゾ反応液中に加え、0〜15℃、pH2〜4で24時間攪拌した。反応液を水酸化ナトリウムでpH11とした後、同pHを維持しながら80〜95℃で5時間攪拌し、さらに100部の塩化ナトリウムを加えて塩析し、析出固体を濾過分離することにより下記式(10)で表されるアゾ化合物100部をウェットケーキとして得た。
【0120】
【化10】

【0121】
250部の氷水中にライオン社製、商品名:レオコール(登録商標)TD90(界面活性剤)0.10部を加えて激しく攪拌し、その中に塩化シアヌル3.6部を添加し0〜5℃で30分間攪拌し、懸濁液を得た。続いて上記式(10)で表される化合物のウェットケーキ100部を水200部に溶解し、この溶液に前記の懸濁液を30分間かけて滴下した。滴下終了後pH6〜8、25〜45℃で6時間撹絆した。得られた液に、タウリン37.5部を加え、pH7〜9、75〜90℃で4時間攪拌した。得られた反応液を20〜25℃まで冷却後、この反応液にアセトン800部を加え、20〜25℃で1時間攪拌した。析出固体を濾過分離することによりウェットケーキ50.0部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより、下記式(11)で表される本発明の水溶性アゾ化合物のナトリウム塩(λmax:408nm)13.5部を得た。これを以下「色材A」と称する。この色材Aは、イエロー染料に相当する。
【0122】
【化11】

【0123】
<インク組成物の調製>
実施例1ないし実施例7および比較例1ないし比較例4のインク組成物は、上記の色材Aを用い、他の化合物とともに表3に示した組成で混合して調製した。比較例5ないし比較例8のインク組成物は、色材として、C.I.ダイレクトイエロー173、132、86を単独または混合して、他の化合物とともに表3に示す組成で混合して調整した。
【0124】
それぞれのインク組成物は、0.45μmのメンブレンフィルターで濾過して爽雑物を除いて用いた。なお、これらのインク組成物のpHは、市販のpHメーターを用いて測定し、表3に併せて記した。なお、表3中に示すインク組成物の各成分はインク組成物全量に対する各成分の質量%を示し、水は残量と表記した。
【0125】
【表3】

【0126】
3.2.インク組成物の評価
<目詰り性の評価>
各実施例および各比較例のインク組成物を、それぞれ、インクジェットプリンターPM−G800(セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジ(Magenta室)に充填し、インクジェット専用記録媒体(写真用紙<光沢>;セイコーエプソン株式会社製、型番:KA420PSKR)に対し、10分間連続してベタ画像を記録し、全てのノズルが正常に吐出していることを確認後、インクカートリッジを装着したまま、ノズルでの乾燥状態を加速するために、記録ヘッドをヘッドキャップから外した状態で、40℃の環境に2週間放置した。そして、放置後、全ノズルが初期と同等に吐出するまでクリーニング動作を繰り返し、以下の判断基準により、回復しやすさを評価し、その結果を表3に記載した。
【0127】
A:1〜5回のクリーニング操作でカスレ、抜けの記録不良がなくなる。
B:6〜10回のクリーニング操作でカスレ、抜けの記録不良がなくなる。
C:11〜15回のクリーニング操作でカスレ、抜けの記録不良がなくなる。
D:16回以上のクリーニング操作でもカスレ、抜けの記録不良がなくならない。
【0128】
3.3.画像の耐光性の評価
<耐光性の評価>
上記のプリンター、カートリッジ及び記録媒体を用い、それぞれのインク組成物に対し、OD(Optical Density)値が0.9〜1.1の範囲に入るようにDutyを調整して記録を行った。これを直射日光のあたらない常温常湿環境にて1日放置した後、得られた記録物の耐光性を以下の条件下で評価した。
【0129】
蛍光灯耐候性試験機SFT−II(スガ試験機株式会社製)を用い、24℃、60%RHの条件下で、照度70,000luxにて記録物を7日間照射した。
【0130】
曝露サンプルのOD値(Optical Density)を、反射濃度計(「Spectrolino」Gretag社製)を用いて測定した。各測定値を以下の式に代入することにより、退色後の光学濃度残存率(Relict Optical Density;ROD)を求めた。
ROD(%)=(D/D)×100
(ここで、Dは、照射試験後のODであり、Dは、照射試験前のODである)
そして投入した期間(日数)を横軸、得られたRODを縦軸にプロットすることで、それぞれの近似曲線を求めた。得られた近似式によりRODが70%まで減少するまでの期間を求め、以下の判断基準により耐光性を評価し、その結果を表3に記載した。
【0131】
A:RODが90%以上
B:RODが80%以上90%未満
C:RODが70%以上80%未満
D:RODが70%未満
【0132】
3.4.画像の耐湿性の評価
<耐湿性の評価>
上記のプリンター、カートリッジ及び記録媒体を用い、それぞれのインク組成物に対し、白抜き文字(インクで文字以外の領域を記録することで白抜き文字として形成したもの;フォトンサイズ:14及び18pt、フォントタイプ:MSゴシック)の記録を行った。得られた画像について、40℃、85%RHの環境下に3日間放置した。放置後、目視にて以下の判断基準により耐湿性を評価し、その結果を表3に記載した。
A:白抜き部分に滲みが認められない。
B:文字は判読できるが、滲みが認められる。
【0133】
3.5.評価結果
表3をみると、色材A、水酸化リチウム、およびカルボキシル基を有する芳香族化合物を配合した実施例1ないし実施例7のインク組成物は、いずれも、遊離酸として表した場合に式(1)で表される染料、リチウムイオン、およびカルボキシル基を有する芳香族化合物が含まれる結果、耐光性および耐目詰まり性が良好であった。また、実施例1ないし実施例7のインク組成物は、いずれも、耐光性および耐目詰まり性のバランスについても良好であった。
【0134】
このような各実施例の結果と、各比較例の結果とを比較すると以下のことが判明した。
【0135】
まず、リチウムイオンを含まない比較例1〜3、5、6のインク組成物は、いずれも耐目詰まり性が不十分であった。したがって、インク組成物中にリチウムイオンが存在することと、耐目詰まり性が良好となることとの間に相関があることが判明した。
【0136】
次に、遊離酸として表した場合に式(1)で表される染料以外の染料を含む比較例5〜8のインク組成物は、いずれも耐光性が悪かった。そのため、インク組成物中に遊離酸として表した場合に式(1)で表される染料が存在することと、これを用いて形成される画像の耐光性が良好となることとの間に相関があることが判明した。
【0137】
そして、カルボキシル基を有する芳香族化合物を含まない比較例4〜6のインク組成物は、いずれも耐光性が不十分であった。そのため、インク組成物中にカルボキシル基を有する芳香族化合物が存在することと、耐光性が向上することとの間に相関があることが判明した。
【0138】
なお、カルボキシル基を有する芳香族化合物として、ナフトエ酸骨格を有する化合物を用いた実施例1−6、比較例2、3、7、8の記録物は、耐湿性に特に優れていた。これに対して、カルボキシル基を有する芳香族化合物として、安息香酸を用いた実施例7の記録物は、若干耐湿性が不足していた。
【0139】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明に係るインク組成物は、各種の記録用途、特にインクジェット記録用途に非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離酸として表した場合に下記式(1)で表される染料と、
リチウムイオンと、
カルボキシル基を有する芳香族化合物と、
を含有する、インク組成物。
【化1】

(式(1)中、Qはハロゲン原子を表し;xは、2〜4の整数を表し;yは、1〜3の整数を表す。)
【請求項2】
請求項1において、
前記芳香族化合物は、ナフタレン環またはベンゼン環を有する、インク組成物。
【請求項3】
請求項2において、
前記芳香族化合物は、2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−メトキシ−2−ナフトエ酸または安息香酸から選択される少なくとも一種である、インク組成物。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記インク組成物に含有される前記染料および前記芳香族化合物の含有モル比は、モル比[芳香族化合物/染料]として1〜10の範囲である、インク組成物。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
pHが、8以上10.5以下である、インク組成物。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載されたインク組成物を用いる、記録方法。
【請求項7】
請求項6に記載された記録方法で得られる、記録物。

【公開番号】特開2012−246383(P2012−246383A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118784(P2011−118784)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】