説明

インサイチュー腫瘍破壊療法で使用するための免疫刺激性サポニン

本発明は、腫瘍破壊のステップおよび免疫刺激量の免疫増強物質の投与のステップを含むインサイチュー腫瘍破壊療法で使用するための医薬組成物に、ならびに薬剤の製造でのこのような医薬組成物の使用に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍破壊のステップおよび免疫刺激量の免疫増強物質の投与のステップを含むインサイチュー腫瘍破壊療法で使用するための医薬組成物、ならびに薬剤の製造でのこのような医薬組成物の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌は、新生物増殖を説明するために使用される一般用語である。新生物は、一般に通常よりも高速で増殖する、組織の異常な、通常は脱分化形と見なされる。大半の場合、新生物細胞は周囲組織に浸潤し、さらに新生物細胞は体内の他の場所に転移して増殖を続ける。
【0003】
新生物塊、腫瘍の局所および局部処置、例えば外科手術は、転移の可能性に影響を及ぼさない。従って追加の療法、例えば細胞毒性薬による処置が必要である。このような処置は概して、化学療法として公知である。
【0004】
局所処置はもちろん、固形腫瘍処置の第1のステップである。局所処置は伝統的に、腫瘍切除によって行われる。
【0005】
別の手法はインサイチューでの腫瘍破壊である。インサイチューでの腫瘍破壊の特徴は、腫瘍は除去されないが、壊死させられることである。原則として、照射はインサイチューでの腫瘍破壊の形であるが、腫瘍破壊の他の多くの方法が開発されている。一般的な方法は例えば、光感作化合物と続いてのレーザによるこの活性化の組合せを使用する、光線力学療法、レーザ光、マイクロ波、電流、超音波、高密度焦点式超音波による、もしくは高周波によるインサイチュー加熱、または寒冷療法:凍結により組織を壊死させることである。
【0006】
インサイチューでの腫瘍破壊により、破壊された腫瘍塊は体内に存在したままである。腫瘍塊が体内に存在することにより、腫瘍特異性抗原に対する免疫応答を試行および構築する可能性(癌免疫療法)は未解決のままである。腫瘍特異性抗原に対するこのような免疫応答の誘発が成功することの利点は、免疫応答がしばらくの間続いて、局所腫瘍破壊の影響を受けにくい、体内の別の箇所の腫瘍局在化を最終的に排除することである。
【0007】
しかし非自己抗原に基づくワクチン開発から公知であることに反して、腫瘍抗原に対する免疫応答の誘発は決して容易ではない。
【0008】
基本的に、腫瘍抗原は主に、体の通常の構成要素:自己抗原である。従って免疫系はこれ自体、自己抗原の耐性状態につながる自己に対する免疫応答を下方制御する。
【0009】
それゆえ腫瘍破壊に基づく癌免疫療法の開発は、非常に特異的な手法を必要とする。
【0010】
実際に非メチル化シチジルグアノシルオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)は現在、腫瘍特異性自己抗原に対する免疫応答を誘発することができる免疫増強化合物の圧倒的に最も好ましい特異的な群と見なされている。
【0011】
これらのシチジルグアノシルオリゴデオキシヌクレオチドは、トル様受容体9(TLR9)作用薬として作用する。CpGモチーフは、Th1応答のこの優先的誘発および腫瘍特異性CD8Tリンパ球のために突出している。TLR9は主に、内部移行してCpGモチーフに直接応答するB細胞および樹状細胞(DC)によって発現される。TLR9のトリガー時に、DCは成熟して、排出リンパ節に移動し、そこで抗原をTおよびBリンパ球に提示する。重要なことにこれらのDCは、腫瘍特異性CTLの効率的なプライミングに不可欠な、交差提示として公知のプロセスである、MHCクラスI分子に捕捉された抗原を提示する独自の能力を獲得する。このようなものとしてCpG投与は、予防環境における腫瘍増殖を防止することが報告されており、マウスで確立された腫瘍を根絶することができる。Nierkens,S.et al.(Cancer Res.68:5390−5396(2008))およびRoux,S.et al.(Cancer Immunol.Immunoth.57:1291−1300(2008))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Nierkens,S.et al.(Cancer Res.68:5390−5396(2008))
【非特許文献2】Roux,S.et al.(Cancer Immunol.Immunoth.57:1291−1300(2008))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし特に抗DNA抗体および自己免疫の誘発を含む、CpG ODNの使用に関する潜在的な安全上の懸念が幾つかある。さらにより多くの量でおよびより長期間にわたって投与されるときのこの毒性、ならびにこの使用に関わる費用も懸念事項である。
【0014】
従って、他の免疫増強化合物への要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上述の懸念事項を低減または克服する手段を提供する。
【0016】
インサイチューでの腫瘍破壊後の腫瘍特異性抗原に対する免疫応答の誘発におけるTLR9およびこの作用薬の主要な役割を考えると、当業者はこの役割を、このような他の免疫増強化合物がTLR9作用薬としても作用する前提条件と見なす。
【0017】
驚くべきことに、TLR9機構に全く関係を持たないサポニンが、それにもかかわらず、腫瘍破壊後の腫瘍特異性自己抗原に対する免疫応答を誘発するのに非常に好適であることが今や見出された。さらになお予想外には、この有効性は、未知の機構を通じてではあるが、CpGの有効性に匹敵するか、またはCpGの有効性よりもなお良好であると思われる。
【0018】
腫瘍破壊の瞬間またはこの付近における腫瘍内または腫瘍周囲へのサポニンの投与によって、インサイチューでの腫瘍破壊後に腫瘍特異性抗原に対する非常に有意な免疫応答が誘発されることが見出された。この免疫応答は長続きして、従ってこのような細胞が体内に潜在的に存在する場合でも、転移細胞を排除するのに非常に好適である。さらにこの免疫応答は、処置の数週間後に同じ種類の腫瘍細胞が相当量で意図的に投与された場合でも、これらの増殖を防止するのに十分に強力であると思われる。
【0019】
サポニンは今まで、例えば細菌またはウイルスワクチンにおいて非自己抗原に対するアジュバントとしてのみ記載されている。腫瘍細胞を死滅させるための、細胞毒としてのサポニンの使用は、Bachran,C.et al.(Medicinal Chemistry 8:575−584(2008))によって記載されている。PCT出願WO 2008/063129には、腫瘍細胞の死滅のための細胞毒としての、脂質含有粒子中のサポニンの使用が記載されている。
【0020】
しかし本発明において、サポニンは腫瘍破壊のプロセスですでに死滅した細胞と組合せて使用されるので、この細胞毒性効果は関係がない。この細胞毒性効果は何の役割も果たさないので、破壊された腫瘍に対する効果はいずれにしろ予想されない。さらに化学療法におけるサポニンの細胞毒性効果は、投与の瞬間のみに作用する。サポニンは免疫応答を確立せず、それゆえサポニンは一時的に低い代謝活性を有する転移細胞;潜伏細胞に対して作用しない。
【0021】
インサイチューでの腫瘍破壊後の腫瘍特異性自己抗原に対する免疫応答の誘発におけるサポニンの役割は、これまで未知であり、上述の理由で予想できない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】CpG−ODNおよびサポニンベースのアジュバントと組合せたアブレーション後の強力な抗腫瘍免疫。右大腿に確立されたB16F10腫瘍を凍結アブレーション単独によって、CpGとの組合せによって、または表示した非細菌性アジュバントとの組合せによって処置した。40日後、未処置および無腫瘍マウスの側腹に腫瘍細胞(15.000B16F10細胞)によってs.c.再攻撃した。腫瘍サイズを2から4日ごとに監視した。アブレーションのみ、またはCpG−ODNとの組合せの後の腫瘍増殖からの保護の制限を示す、Kaplan−Meier生存曲線。
【図1B】CpG−ODNおよびサポニンベースのアジュバントと組合せたアブレーション後の強力な抗腫瘍免疫。右大腿に確立されたB16F10腫瘍を凍結アブレーション単独によって、CpGとの組合せによって、または表示した非細菌性アジュバントとの組合せによって処置した。40日後、未処置および無腫瘍マウスの側腹に腫瘍細胞(15.000B16F10細胞)によってs.c.再攻撃した。腫瘍サイズを2から4日ごとに監視した。アブレーションのみ、または混合された水中油型、油中水型またはアルミニウムアジュバントとの組合せの後の腫瘍増殖からの保護の制限を示す、または保護を示さない生存曲線。
【図1C】CpG−ODNおよびサポニンベースのアジュバントと組合せたアブレーション後の強力な抗腫瘍免疫。右大腿に確立されたB16F10腫瘍を凍結アブレーション単独によって、CpGとの組合せによって、または表示した非細菌性アジュバントとの組合せによって処置した。40日後、未処置および無腫瘍マウスの側腹に腫瘍細胞(15.000B16F10細胞)によってs.c.再攻撃した。腫瘍サイズを2から4日ごとに監視した。アブレーションのみ、または表示した(混合された)アジュバントとの組合せの後の腫瘍増殖からの相対保護を示す生存曲線。サポニンベースのアジュバントは、最も強力な保護を示す。
【図1D】CpG−ODNおよびサポニンベースのアジュバントと組合せたアブレーション後の強力な抗腫瘍免疫。右大腿に確立されたB16F10腫瘍を凍結アブレーション単独によって、CpGとの組合せによって、または表示した非細菌性アジュバントとの組合せによって処置した。40日後、未処置および無腫瘍マウスの側腹に腫瘍細胞(15.000B16F10細胞)によってs.c.再攻撃した。腫瘍サイズを2から4日ごとに監視した。サポニンベースのアジュバントと組合されたアブレーションが、CpG−ODN同時投与と組合されるときに追加の保護を示す生存曲線。=凍結と比較してp<0.05、**=凍結/CpGと比較してp<0.001。3種類の独立した実験で匹敵するデータが得られた。
【発明を実施するための形態】
【0023】
従って本発明の第1の実施形態は、腫瘍破壊のステップおよび免疫刺激量の免疫増強物質を投与するステップを含むインサイチュー腫瘍破壊療法で使用するための、医薬組成物に関し、前記免疫増強物質はサポニンである。
【0024】
サポニンは原則として植物グリコシドの総称であり、中でもキラヤサポナリアのサポニンは最も古く、最も頻繁に使用される。
【0025】
粗サポニンは実際には、同じ基本構造を共有するが、異なる側鎖を有するサポニンの混合物である。異なるサポニン構成要素は主に、この親水性度/疎水性度が異なる。
【0026】
HPLCは、粗サポニン混合物から各種のサポニン構成要素を検出および単離するのに好ましい方法である。複数の精製抽出物、例えばQS−7、−17、−18、−21、GPI−0100、QuilA、QvacおよびBioQは、各種の供給元から市販されている。
【0027】
好ましくは、サポニンは、以下の構成要素:QS−7、QS−17、QS−18またはQS−21の少なくとも1つを含む。
【0028】
QuilAおよびこの構成要素、Vax Sap、SuperSap、GPI−0100、QP UF1000なども、好ましいサポニンである。
【0029】
それゆえ本実施形態の好ましい形は、サポニンが以下の構成要素:QS−7、QS−17、QS−18、QS−21、QuilA、Vax Sap、SuperSap、GPI−0100またはQP UF 1000の少なくとも1つを含む、本発明による医薬組成物に関する。
【0030】
サポニンの別の魅力的な免疫刺激形は、いわゆる空の免疫刺激複合体(空のISCOMS)である。空の免疫刺激複合体調製物は、これらがサポニン、脂質およびコレステロールの混合物から作製されるという点でサポニンとは異なる。この調製の間に、サポニン自体よりもなお免疫増強性である小型ミセル様粒子が形成される。
【0031】
それゆえ本実施形態の別の好ましい形は、サポニンが空の免疫刺激複合体の形である、本発明による医薬組成物に関する。
【0032】
本発明は、ヒトの医学および獣医学の分野で等しく適用できることは言うまでもない。
【0033】
一方ではサポニンおよび他方ではCpG ODNの異なる作用機序の観点から、2つの組合せ投与のいずれの増強効果も予想できない。
【0034】
しかし驚くべきことに、サポニンとCpG ODNの組合せ使用で強力な相乗効果があることが見出された。
【0035】
この予想外の相乗作用が好都合なのは、この相乗作用によってサポニンと組合せて投与するときに、標準未満の量のCpG ODNを使用できることである。この相乗作用は次に、上述したCpG ODNの使用の欠点を明らかに軽減する。この観点から、CpG ODNをサポニンと組合せて投与するという条件で、CpG ODNの使用は再び魅力的なものとなる。
【0036】
非自己抗原に対する免疫応答の誘発のためのアジュバントとしての、CpGと組合せたサポニンの使用はUS Patent US 7049302に記載されているが、上述した理由のために、自己抗原に対する相乗効果はもちろんのこと、複合効果も予想できる。
【0037】
それゆえ本実施形態のさらに好ましい形は、CpG ODNをさらに含む、本発明による医薬組成物に関する。
【0038】
免疫刺激で使用するためのCpG ODNは、1994年から記載されている(US Patent US6429199)。CpGモチーフは、基本的に構造5’−X−C−pG−X−S’を有する。CpGモチーフ5’−Pu−Pu−CpG−Pyr−Pyrは、中でも最も免疫増強性であることが公知である(Scheule,R.K.,Advanced Drug Delivery Reviews 44:119−134(2000))。基本的に、この長さは8から80塩基であり、CpGモチーフは少なくとも1個の非メチル化CpGモチーフを含有する。
【0039】
異なる動物種における効率のわずかな相違が頻繁に見られる。単に1例として;ヒトTLR9はCpGモチーフG−T−CpG−T−Tによって最適にトリガーされるのに対して、マウスTLR9は、G−A−CpG−T−Tによってさらに最適にトリガーされる(Krieg,A.M.,Nature Medicine 9:831−835(2003)。
【0040】
7つの獣医種および3つの実験種についての最適なCpGモチーフは、Rankin,R.,et al,in Antisense and Nucleic Acid Drug Development 11:333−340(2001)によって記載されている。イヌおよびネコ免疫細胞増殖を効率的に刺激するCpGモチーフは、Wernette,C.M.,et al.によってVeterinary Immunol.And Immunopath.84:223−236(2002)に記載されている。家禽におけるCpGモチーフの利用は、とりわけAmeiss,K.A.,et al.,in Veterinary Immunol.And Immunopath.110:257−267(2006)によって記載されている。
【0041】
異なるCpGモチーフを有するCpG ODNは容易に市販品を入手することができ、所望ならば異なるCpGモチーフは容易に合成される。CpG ODNの好適な量は、とりわけ上述の刊行物および実施例の節に見出すことができる。
【0042】
再び上述のように、本発明がヒトの医学および獣医学の分野で等しく適用できることは言うまでもないが、CpGモチーフを本発明が使用される動物種に適合させることが(必須ではないが)勧められる。この適合は、上で要約した刊行物に基づいて容易に行うことができる。
【0043】
原則として、腫瘍破壊のステップおよび免疫増強物質の投与のステップは、異なる瞬間にまたは同時に行うことができる。しかし理論的に、腫瘍破壊を適用する数日前、またはより良好には1週間もしくはなお2週間以上前に、免疫系を「プライミング」する目的で、腫瘍を免疫増強物質によって調整することは好ましい経路であることが予想される。
【0044】
しかし驚くべきことに、免疫増強物質の投与が腫瘍破壊後に、腫瘍破壊後の数日以内に、腫瘍破壊後の好ましくは1日以内に、さらに好ましくは12時間以内に、なおさらに好ましくは6時間以内に、またなおさらに好ましくは2時間以内に行われる場合、ステップの順序が逆転されるときよりも免疫刺激のレベルが良好であることが見出された。
【0045】
免疫増強物質の投与が腫瘍破壊の約2時間前と破壊の瞬間との間に行われるときにも、非常に良好な結果が得られる。このことは、破壊が誘発した新生物塊の構造の変化のために、破壊の後に新生物塊に接近または進入するのがより困難であり得るためである。
【0046】
腫瘍破壊の2時間前と腫瘍破壊の2時間後との間隔における免疫増強物質の投与は、周術期投与と呼ばれる。
【0047】
従って、本実施形態の1つの好ましい形は、腫瘍破壊のステップおよび本発明による免疫増強物質の投与のステップを含む、インサイチュー腫瘍破壊療法で使用するための医薬組成物に関し、前記ステップは以下の順序:
a.腫瘍の破壊
b.免疫増強物質の投与
である。
【0048】
本実施形態のさらに好ましい形は、上述の順序でのステップに関し、ここで免疫増強物質の投与は、この好ましい順序で腫瘍破壊後の24時間以内、12時間以内、またはなお6時間以内に続く。
【0049】
また、本実施形態の別の好ましい形は、腫瘍破壊のステップおよび本発明による免疫増強物質の投与のステップを含む、インサイチュー腫瘍破壊療法で使用するための医薬組成物に関し、前記ステップは:
a.免疫増強物質の周術期投与
b.腫瘍の破壊
である。
【0050】
免疫増強物質の投与部位に関して、以下の考慮がなされるべきである:
好ましくは、免疫増強物質は、新生物塊中に直接投与される。わずかながら好ましくないが、免疫増強物質が新生物塊周辺の1つ以上の場所に投与される、腫瘍周辺投与も可能である。別の、しかしあまり好ましくない投与は、新生物塊の排出領域への皮下投与である。最後に、好ましくは新生物塊の場所付近での静脈内投与が可能である。
【0051】
従って免疫増強物質の前記投与は、この好ましさの低い順から、静脈内投与、新生物塊の排出領域への皮下投与、腫瘍周辺投与または腫瘍内投与によって行われる。
【0052】
本発明の別の実施形態は、腫瘍破壊を受けた、癌に罹患している哺乳動物の処置のための薬剤の製造における、本発明による医薬組成物の使用に関する。
【0053】
本発明のまた別の実施形態は、腫瘍破壊を受けるまたは受けた、癌に罹患している哺乳動物の処置のための周術期投与用薬剤の製造における、本発明による医薬組成物の使用に関する。
【0054】
実施例
【実施例1】
【0055】
マウスおよび腫瘍細胞
C57BL/6nマウス(6から8週齢)をCharles River Wiga(ドイツ、Sulzfeld)から購入して、Central Animal Laboratory(オランダ、Nijmegen)にて、特定の無菌バリア条件下で維持した。飲用水および標準の実験室用ペレット食を任意に与え、マウスを特定の処置群への無作為割当ての前に、少なくとも1週間収容した。実験は、Nijmegen Animal Experiments Committeeの動物ケアガイドライン(guidelines for animal care)に従って行った。
【0056】
マウス黒色腫株化細胞B16F10(ATCC)を完全培地(MEM、5%ウシ胎仔血清(Greiner Bio−one)、100U/mlペニシリンGナトリウムおよび100μg/mlストレプトマイシン(Pen/Strep)、MEMピルビン酸ナトリウム(1mM)、NaHCO、MEMビタミン、MEM非必須アミノ酸(すべてGibcoより)、20μM β−メルカプトエタノール(β−ME))中で培養した。
【0057】
腫瘍モデルおよび凍結手術
腫瘍細胞をPBSおよびマトリゲル(2:1)の混合物中に懸濁させて、総体積50μl中の0.510個の細胞を右大腿に皮下注射した。6から8mmの腫瘍直径が測定されたとき(概して第9から10日)、マウスを処置群に無作為に割当てた。冷凍アブレーション(Cryo)は、イソフルラン/O/NO麻酔下で、先端が循環液体窒素流によって冷却される液体窒素冷凍アブレーションシステム(CS76,Frigitronics、コネチカット州、Shelton)を使用して行った。凍結および解凍の2回の処理サイクルの間に、腫瘍は巨視的に凍結されたが、周囲の健常組織は損傷されないままであった。長期間の腫瘍保護の誘発を監視するために、冷凍アブレーションの40日後に、1510個のB16OVAまたはB16F10細胞でマウスを再攻撃した。再攻撃は100μl PBS中で右側腹部に皮下注射した。腫瘍体積が1000mmを超えたとき、または腫瘍が皮膚バリアから突出したときにマウスを殺処分した。
【0058】
アジュバント注射
完全ホスホロチオエート修飾主鎖を有するCpG 1668(’5−TCCATGACGTTCCTGATGCT−3’)をSigma Genosys(英国、Haverhill)から購入した。CpGをPBS腫瘍周辺に注射した(p.t.,アブレートした腫瘍を覆う10μl×2回の注射に分割された30μg)。以下のアジュバントを使用した(すべてIntervet BV,Boxmeerによって供給された):鉱油ベースの油中水型エマルション(マルコール52)(1)および非鉱油ベースの油中水型エマルション(ミグリオール840)(1);鉱油を使用する水中油型エマルション、スクアランを使用する水中油型エマルション(2);およびビタミンEアセテートを使用する水中油型エマルション(3);マトリクスC 750μg/ml(Isconova);QuilAサポニン(Brenntag)500μg/ml;水酸化アルミニウム(Brenntag)0.75%(重量/体積);またはリン酸アルミニウム(Brenntag)0.75%(重量/体積)。本明細書では、2種類の油中水型エマルションを1:1の比で混合して、3種類の水中油型エマルションを1:1:1の比で混合した。アルミニウムベースのアジュバントを1:1の比で混合して使用したが、別個にも使用した。すべての非細菌性アジュバント(またはこの混合物)をp.t.注射した(CpG−ODN注射から空間的に隔離され、20μl×2回の注射に分割された40μl)。すべての注射はアブレーション後30分以内に行った。
【0059】
(1:Jansen et al,Vaccine,23,1053−1060,2005,2:O’Hagan Expert Re.Vaccines,6,669−710,2007,3:Rijke et al,in Adv.Avian Immunol.Res.Eds.T.F.Davison,N.Bumstead and P.Kaiser 265−271,1995)
【0060】
統計解析
ログランク検定を使用して、Kaplan Meier生存曲線を解析した。
【0061】
結果:
図1のグラフから以下の通り明らかであるように、腫瘍破壊および免疫増強物質としてのCpG ODNの投与の組合せによって、80日後に50%未満の生存率がもたらされる。さらに生存曲線には有意な横ばい状態はない(図1a)。
【0062】
腫瘍破壊および免疫増強物質としての水中油型、油中水型、またはAlOHアジュバントの投与の組合せすべてによって、保護の低下がもたらされた(図1bおよび1c)。
【0063】
しかし腫瘍破壊および免疫増強物質としての、QuilAの形でまたは空の免疫刺激複合体としてのサポニンの投与の組合せにより、80日後に75%を超える印象的な生存率がもたらされる。さらにこの場合には生存曲線に有意な横ばい状態がある(図Ic)。
【0064】
腫瘍破壊ならびにCpGおよび免疫増強物質としての、QuilAの形でまたは空の免疫刺激複合体としてのサポニンの併用投与の組合せによって、80日後に90%を超えるなお高い生存率および生存曲線の非常に強い横ばい状態がもたらされる(図1d)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍破壊のステップおよび免疫刺激量の免疫増強物質を投与するステップを含むインサイチュー腫瘍破壊療法で使用するための医薬組成物であって、前記免疫増強物質がサポニンであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
前記サポニンが以下の構成要素:QS−7、QS−17、QS−18、QS−21、QuilA、Vax Sap、SuperSap、GPI−0100またはQP UF 1000の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記サポニンが空の免疫刺激複合体の形であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
加えて前記医薬組成物がCpG ODNを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
腫瘍破壊のステップおよび請求項1から4に記載の免疫増強物質の投与のステップを含む、インサイチュー腫瘍破壊療法で使用するための医薬組成物であって、前記ステップが以下の順序:
a.腫瘍の破壊
b.免疫増強物質の投与
であることを特徴とする、医薬組成物。
【請求項6】
前記免疫増強物質投与ステップが腫瘍破壊後24時間以内に続くことを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記免疫増強物質投与ステップが腫瘍破壊後12時間以内に続くことを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記免疫増強物質投与ステップが腫瘍破壊後6時間以内に続くことを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項9】
腫瘍破壊のステップおよび請求項1から4に記載の免疫増強物質の投与のステップを含むインサイチュー腫瘍破壊療法で使用するための医薬組成物であって、前記ステップが:
a.免疫増強物質の周術期投与
b.腫瘍の破壊
である、医薬組成物。
【請求項10】
前記免疫増強物質の前記投与部位がこの好ましさの低い順から、静脈内、新生物塊の排出領域への皮下、腫瘍周辺または腫瘍内である、請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
腫瘍破壊を受けた、癌に罹患している哺乳動物の処置のための薬剤の製造における、請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項12】
腫瘍破壊を受けるまたは受けた、癌に罹患している哺乳動物の処置のための周術期投与用薬剤の製造における、請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【公表番号】特表2012−513444(P2012−513444A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542808(P2011−542808)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067721
【国際公開番号】WO2010/072743
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(506196247)インターベツト・インターナシヨナル・ベー・ベー (85)
【出願人】(511153312)
【Fターム(参考)】