説明

インスリン分泌性ペプチドの合成

本発明は、固相および溶液相(「ハイブリッド」)アプローチを使用して合成されたインスリン分泌性ペプチドの調製に関するものである。広くは、このアプローチは、固相化学反応を使用して三つの異なるペプチド中間体フラグメントを合成することを含む。次に、溶液相化学反応を使用して、フラグメントの一つに追加のアミノ酸物質を付加する。次に、固液相でフラグメントをいっしょにカップリングさせる。フラグメントの一つにシュードプロリンを使用することは、そのフラグメントの固相合成を容易にし、このフラグメントから他のフラグメントへのその後の溶液相カップリングもまた容易にする。本発明は、GLP−1(7−36)などのインスリン分泌性ペプチドならびにその天然および非天然対応物を形成させるために非常に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固相および溶液相プロセスを使用して、インスリン分泌性ペプチド、特にグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、およびその対応物を調製する方法に関するものである。さらに本発明は、この方法に使用することができる中間体ペプチドフラグメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペプチド合成のための多数の方法が文献に記載されている(例えば、米国特許第6,015,881号;Mergler et al. (1988) Tetrahedron Letters 29:4005-4008;Mergler et al. (1988) Tetrahedron Letters 29:4009-4012;Kamber et al. (eds), Peptides, Chemistry and Biology, ESCOM, Leiden (1992) 525-526;Riniker et al. (1993) Tetrahedron Letters 49:9307-9320;Lloyd-Williams et al. (1993) Tetrahedron Letters 49:11065-11133;およびAndersson et al. (2000) Biopolymers 55:227-250を参照されたい。様々な合成法は、合成が行われる相、すなわち液相または固相の物理的状態により区別される。
【0003】
固相ペプチド合成(SPPS)では、アミノ酸またはペプチド基を固体支持体樹脂に結合させる。次に、関心対象のペプチド物質が形成するまで、支持体に結合したペプチドに連続的にアミノ酸またはペプチド基を結合させる。次に、支持体に結合したペプチドを典型的には支持体から切断し、さらなる加工および/または精製に供する。場合によっては、固相合成は成熟ペプチド産物をもたらし、別の場合では、支持体から切断されたペプチド(すなわち「ペプチド中間体フラグメント」)をさらに大型の成熟ペプチド産物の調製に使用する。
【0004】
固相プロセスから生成したペプチド中間体フラグメントは、固相合成プロセスまたは液相合成プロセス(本明細書において「溶液相合成」と呼ぶ)で一緒にカップリングさせることができる。固相による有用成熟ペプチドの合成が不可能であり、実際的でもない場合に、溶液相合成は特に有用でありうる。例えば固相合成では、長鎖ペプチドは、まだ固体支持体に結びついている間についには不規則なコンフォメーションをとり、伸長中の鎖に追加のアミノ酸またはペプチド物質を付加することが困難になるおそれがある。ペプチド鎖が支持体樹脂上で長くなるほど、カップリングおよび脱保護などのプロセス段階の効率が下がるおそれがある。次にはこのことが、活性化可能なアミノ酸、共試薬、および溶媒などの出発物質の損失増加に加えて、これらの問題を埋め合わせるための長い加工時間を招くおそれがある。ペプチドの長さが大きくなるほど、これらの問題が増えるおそれがある。
【0005】
したがって、固相手順のみを使用して単一フラグメントに合成された、30アミノ酸長を超える成熟ペプチドが見出されることは比較的まれである。代わりに個別のフラグメントを別々に固相上で合成し、次に固相および/または溶液相でカップリングさせ、所望のペプチド産物を構築することができる。このアプローチは、フラグメントの候補を注意深く選択する必要がある。いくつかの一般原理がフラグメント選択の指針となることがあるが、フラグメントの候補を経験的に試験することがかなり頻繁に必要となる。ある状況でうまくいくフラグメント戦略が、他の状況ではうまくいかないおそれがある。妥当なフラグメントの候補が明らかになった場合でさえも、合成戦略が商業的に妥当な条件で機能するためには、プロセス改革がなお必要なことがある。したがって、ハイブリッド型スキームを使用したペプチド合成は大変なことが多く、多くの場合で、実際の合成を行うまでどのような問題が合成スキームに内在するのか予測することは困難である。
【0006】
溶液相カップリングでは、二つのペプチド中間体フラグメント、または一つのペプチド中間体フラグメントおよび一つの反応性アミノ酸を、適切な溶媒中でカップリングするが、これを通常はカップリング反応の効率および質を促進する追加の試薬の存在下で行う。ペプチド中間体フラグメントは、一つのフラグメントのN−末端がもう一つのフラグメントのC−末端に、またはその逆にカップリング反応するように準備される。加えて、固相合成時に存在する側鎖保護基は、通常は溶液相カップリング時にフラグメント上に保持され、フラグメントの末端の特異的反応性を確実にする。これらの側鎖保護基は、典型的には成熟ペプチドが形成するまで除去されない。
【0007】
合成スキーム全体における一つまたは複数の段階のささやかな改善が、成熟ペプチドの調製おける重大な改善になりうる。このような改善は、時間および試薬全体の大規模な節約につながることができ、最終産物の純度および収率を大きく改善することもできる。
【0008】
ハイブリッド型合成における改善の重要性の考察は、これらの手順を使用して産生した任意の種類のペプチドにあてはめることができるが、治療的に有用なペプチドおよび商業的医学用途のための規模で製造されるペプチドの状況で特に重要である。大型生体分子薬、例えば治療用ペプチドの合成は非常に費用のかかることがある。他の要因に加えて、試薬のコスト、合成時間、多数の合成段階が原因で、これらの大型生体分子薬の合成プロセスのごくわずかな改善が、そのような薬を生産することが経済的に実行可能であるかにまでも重大な影響を及ぼしうる。このような改善が必要であるのは、大型生体分子薬に関するこれらの高い生産コストが原因であり、このことは、多くの場合で、この種の大型生体分子薬の適切な治療代替物がたとえあったとしても少数であるという事実に支援されている。
【0009】
このことは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)およびその対応物の場合に明らかに分かる。これらのペプチドは、2型インスリン非依存性糖尿病、および肥満などの関連代謝障害の処置のための可能性のある治療薬に関連づけられている。Gutniak, M.K., et al., Diabetes Care 1994:17:1039-44。
【0010】
Lopezらは、ネイティブなGLP−1が37アミノ酸残基長であったと判定した。Lopez, L. C., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 80:5485-5489 (1983)。この決定は、Uttenthal, L. O.ら(J. Clin. Endocrinal. Metabol., 61:472-479 (1985))の研究により確認された。ネイティブなGLP−1は、GLP−1(1−37)の表記で表示することができる。この表記は、このペプチドが1(N−末端)から37(C−末端)まで全てのアミノ酸を有することを示す。ネイティブなGLP−1は、配列番号1:
【0011】
【表1】

【0012】
のアミノ酸配列を有する。
【0013】
ネイティブなGLP−1(1−37)は、広くはインスリンの生合成を仲介することができないが、このペプチドの生物学的に重要なフラグメントが実際にインスリン分泌性を有することが報告された。例えば、ネイティブな31アミノ酸長ペプチドである配列2:
【0014】
【表2】

【0015】
のGLP−1(7−37)は、インスリン分泌性であり、ネイティブなGLP−1の7(N末端)から37(C末端)位のアミノ酸を有する。GLP−1(7−37)は末端のグリシンを有する。このグリシンが不在の場合に、結果として生じるペプチドは、まだインスリン分泌活性であり、配列番号3:
【0016】
【表3】

【0017】
のGLP−1(7−36)と呼ばれる。
【0018】
GLP−1(7−36)は、アミド化形のC−末端アルギニンを有して存在することが多く、この形は、GLP−1(7−36)−NH2の表記で表示することができる。
【0019】
GLP−1(1−37)は、広くはそのインスリン分泌性活性対応物にin vivoで変換される。例えば、GLP−1(1−37)は、自然にGLP−1(7−37)にin vivoで変換される。このペプチドは、今度はC−末端グリシンのタンパク質分解性除去により追加の加工を受けて、GLP−1(7−36)を産生することもまたあり、このペプチドはアミド化形GLP−1(7−36)−NH2で存在することが多い。したがって、治療処置は、GLP−1(1−37)またはその対応物の投与を伴うことがあり、このとき、そのインスリン分泌活性誘導体がin vivo形成することが期待される。しかし通常は、研究中の治療処置は、インスリン分泌活性GLP−1フラグメント自体の投与を伴う。
【0020】
US6,887,849によると、GLP−1(7−37)、GLP−1(7−36)およびGLP−1(7−36)−NH2のインスリン分泌活性は、膵β細胞に特異的と思われ、この細胞でこれらのペプチドはインスリン生合成を誘導すると思われる。このことは、これらのペプチドおよびその薬学的に許容される対応物を成人発症糖尿病の病因研究に有用にし、成人発症糖尿病は、インスリン分泌動特性が異常な、高血糖を特徴とする状態である。さらに、これらのグルカゴン様ペプチドは、この疾患の治療および処置に、ならびに高血糖の治療および処置に有用であろう。EP1137667B1によると、これらのペプチドまたはその薬学的に許容される対応物は、他の種類の糖尿病、肥満、グルカゴノーマ、気道分泌障害、代謝障害、関節炎、骨粗しょう症、中枢神経系疾患、再狭窄、神経変性疾患、腎不全、うっ血性心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変、肺水腫、高血圧症、および/または食物摂取減少が望まれる障害の治療にもまた有用でありうる。
【0021】
配列番号1〜3のネイティブなGLP−1(1−37)およびそのネイティブなインスリン分泌活性対応物は、代謝的に不安定であり、わずか1〜2分のin vivo血漿中半減期を有する。外因性に投与されたGLP−1もまた急速に分解する。この代謝不安定性は、ネイティブなGLP−1およびそのネイティブなフラグメントの治療潜在性を制限した。
【0022】
安定性が向上した、GLP−1ペプチドの合成対応物が開発された。例えば、配列番号4のペプチドがEP1137667B1に記載されている:
【0023】
【表4】

【0024】
このペプチドは、α−アミノイソ酪酸のアキラル残基(略名Aibで概略的に示す)が8および35位に出現し、これらの位置での対応するネイティブなアミノ酸の代わりになる以外は、ネイティブなGLP−1(7−36)と同様である。アキラルなα−アミノイソ酪酸は、メチルアラニンとしても知られている。このペプチドは、式(Aib8,35)GLP−1(7−36)−NH2と称することができる。
【0025】
EP1137667は、配列番号4のペプチドおよびその対応物を、固相技法を使用して単一フラグメントとして構築することができると述べている。EP1137667により示唆された単一フラグメント合成アプローチは問題がある。一問題点として、このアプローチは、最終的なアミノ酸カップリング、例えば、例として(Aib8,35)GLP−1(7−36)の場合はヒスチジンのカップリングでの高レベルのエピマー化につながるおそれがある。追加的に、クロマトグラフィーで精製する間に不純物を除去することが難しいおそれがあり、収率が低くなりすぎる傾向にある。結果として、商業的に許容される収率、純度、および量で配列番号4のペプチドおよびその対応物を製造できるために、配列番号4のペプチドを合成する改良された戦略が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
これらの心配に加えて、ペプチドの大規模生産についての産物の回収率および産物の純度、ならびに試薬の取扱い、保存および廃棄に関する問題点が、ペプチド合成スキームの実現可能性に大きな影響を及ぼすことがある。したがって、大バッチ量で、収率を改善して、商業的関心がもたれるペプチド物質を効率的に生産することができるペプチド合成プロセスの必要性が引き続きある。
【0027】
本発明は、インスリン分泌性ペプチドの調製に関するものであり、このペプチドは、固相および溶液相(「ハイブリッド型」)アプローチを使用して合成される。広くは、このアプローチは、固相化学反応を使用して三つの異なるペプチド中間体フラグメントを合成することを含む。次に、溶液相化学反応を使用して、フラグメントの一つに追加のアミノ酸物質を付加する。次に、固相および溶液相中でこれらのフラグメントを一緒にカップリングさせる。フラグメントの一つにシュードプロリン(pseudoproline)を使用することにより、フラグメントの固相合成が容易になり、それに続くこのフラグメントから他のフラグメントへの溶液相カップリングもまた容易になる。本発明は、GLP−1、GLP−1(7−36)ならびにこれらの天然および非天然対応物などのインスリン分泌性ペプチド、特にGLP−1(7−36)、ならびにその天然および非天然対応物を形成させるために非常に有用である。
【0028】
一局面では、本発明は、以下の段階を含む、インスリン分泌性ペプチドを作製する方法に関するものである:
a)アミノ酸配列HX8EX10(配列番号6)(配列中、X8およびX10はそれぞれアキラルなアミノ酸残基であるか、または前記フラグメントは、X8およびX10残基を含むその対応物であって、H、E、X8およびX10はそれぞれ側鎖保護を含んでいてもよい)を含むペプチドフラグメントを調製する段階;および
b)そのペプチドフラグメントをインスリン分泌性ペプチドに組み込む段階。
【0029】
好ましくは、X8は、メチルアラニン(Aib)に対応するアミノ酸残基である。X10は、好ましくはグリシンに対応するアミノ酸残基である。
【0030】
さらなる局面では、本発明は、アミノ酸配列HX8EX10(配列番号6)(配列中、X8およびX10は、それぞれアキラルなアミノ酸残基であり、H、E、X8およびX10はそれぞれ側鎖保護を含んでいてもよい)を有するペプチドフラグメントに関するものである。好ましくは、X8はAibに対応するアミノ酸残基であり、X10はグリシンに対応するアミノ酸残基である。
【0031】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、インスリン分泌性ペプチドを作製する方法に関するものである:
a)アミノ酸配列TFTSDVX17-18YLEG(配列番号8)(配列中、記号X17-18により表される残基はシュードプロリンのジペプチド残基である)を含むペプチドフラグメントまたはその対応物を調製する段階;および
b)このペプチドフラグメントをインスリン分泌性ペプチドに組み込む段階。
【0032】
別の局面では、本発明は、アミノ酸配列TFTSDVX17-18YLEG(配列番号8)(配列中、記号X17-18で表す残基はシュードプロリンのジペプチド残基であり、前記アミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含むペプチドまたはその対応物に関するものである。
【0033】
さらなる局面では、本発明は、以下の段階を含む、請求項1記載のインスリン分泌性ペプチドを作製する方法に関するものである:
a)アミノ酸配列HX8EX10(配列番号6)(配列中、X8およびX10は、それぞれアキラルなアミノ酸残基であり、HおよびEのそれぞれは側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第1のペプチドフラグメントを、アミノ酸配列TFTSDVX17-18YLEG(配列番号8)(配列中、記号X17-18で表す残基は、シュードプロリンのジペプチド残基であり、この配列の前記アミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第2のペプチドフラグメントとカップリングさせて、アミノ酸配列HX8EX10TFTSDVX17-18YLEG(配列番号11)(この配列の前記アミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第3のペプチドフラグメントを提供する段階;および
b)このペプチドフラグメントをインスリン分泌性ペプチドに組み込む段階。
【0034】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、インスリン分泌性ペプチドを作製する方法に関するものである:
a)アミノ酸配列QAAKEFIAWLVKX35(配列番号9)(配列中、X35はアキラルなアミノ酸残基であり、この配列の前記残基は、側鎖保護を含んでいてもよい)を含む、ペプチドフラグメントまたはその対応物を調製する段階;および
b)このフラグメントをインスリン分泌性ペプチドに組み込む段階。
【0035】
別の局面では、本発明は、以下の段階のうち一つまたは複数を含む、インスリン分泌性ペプチドを作製する方法に関するものである:
a)アミノ酸配列HX8EX10(配列番号6)(配列中、X8およびX10は、それぞれアキラルなアミノ酸残基であり、HおよびEはそれぞれ側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第1のペプチドフラグメントを提供する段階;
b)アミノ酸配列TFTSDVX17-18YLEG(配列番号8)(配列中、記号X17-18で表す残基は、シュードプロリンのジペプチド残基であり、この配列の前記アミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第2のペプチドフラグメントを提供する段階;
c)第1のフラグメントを第2のフラグメントとカップリングさせて、アミノ酸配列HX8EX10TFTSDVX17-18YLEG(配列番号11)(この配列の前記アミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第3のペプチドフラグメントを提供する段階;
d)アミノ酸配列QAAKEFIAWLVKX35(配列番号9)(配列中、X35はアキラルなアミノ酸残基であり、この配列の前記アミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第4のペプチドフラグメントを提供する段階;
e)アミノ酸配列QAAKEFIAWLVKX35R(配列番号12)(この配列の前記残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第5のペプチドフラグメントを提供するために、第4のフラグメントをアルギニンとカップリングさせる段階;および
f)アミノ酸配列HX8EX10TFTSDVX17-18YLEGQAAKEFIAWLVKX35R(配列番号13)(この配列の前記残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含むインスリン分泌性ペプチドを提供するために、第5のフラグメントを第3のフラグメントとカップリングさせる段階。
【0036】
好ましくは、本発明は、以下の段階を含む、インスリン分泌性ペプチドを作製する方法に関するものである:
a)アミノ酸配列HX8EX10(配列番号6)(配列中、X8およびX10はそれぞれアキラルなアミノ酸残基であり、HおよびEはそれぞれ側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第1のペプチドフラグメントを提供する段階;
b)アミノ酸配列TFTSDVX17-18YLEG(配列番号8)(配列中、記号X17-18で表す残基は、シュードプロリンのジペプチド残基であり、この配列の前記アミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第2のペプチドフラグメントを提供する段階;
c)第1のフラグメントを第2のフラグメントとカップリングさせて、アミノ酸配列HX8EX10TFTSDVX17-18YLEG(配列番号11)(この配列の前記アミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第3のペプチドフラグメントを提供する段階;
d)アミノ酸配列QAAKEFIAWLVKX35(配列番号9)(配列中、X35はアキラルなアミノ酸残基であり、この配列の前記アミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第4のペプチドフラグメントを提供する段階;
e)アミノ酸配列QAAKEFIAWLVKX35R(配列番号12)(この配列の前記残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第5のペプチドフラグメントを提供するために、第4のペプチドフラグメントをアルギニンとカップリングさせる段階;および
f)アミノ酸配列HX8EX10TFTSDVX17-18YLEGQAAKEFIAWLVKX35R(配列番号13)(この配列の前記アミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含むインスリン分泌性ペプチドを提供するために、第5のフラグメントを第3のフラグメントとカップリングさせる段階。
【0037】
別の局面では、本発明は、以下のさらなる段階を含む、本明細書前記の方法に関するものである:
g)アミノ酸配列HX8EX10TFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKX35R(配列番号5)およびその対応物(配列中、位置8、10および35の記号Xは、それぞれ独立してアキラルな、立体障害を受けていてもよいアミノ酸残基を表す)を含むインスリン分泌性ペプチドを提供するために、側鎖保護基を除去する段階。
【0038】
側鎖保護基を除去する段階は、少なくとも一つの酸分解性試薬および少なくとも一つのカチオンスカベンジャーを含む脱保護溶液を採用することによって好ましくは実施される。全体的な脱保護のための酸分解試薬は、好ましくはトリフルオロ酢酸(TFA)、HCl、BF3Et2OまたはMe3SiBrなどのルイス酸、液体フッ化水素酸(HF)、臭化水素(HBr)、トリフルオロメタンスルホン酸、およびその組み合わせからなる群より好ましくは選択される。適切なカチオンスカベンジャーは、好ましくはジチオスレイトール(DTT)、アニソール、p−クレゾール、エタンジチオールおよびジメチルスルフィドより選択される。脱保護溶液は水を含むこともまたある。
【0039】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、インスリン分泌性ペプチドを作製する方法に関するものである:
a)アミノ酸配列HX8EX10(配列番号6)(配列中、X8およびX10はそれぞれアキラルなアミノ酸残基であり、H、E、X8およびX10はそれぞれ側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第1のペプチドフラグメントを提供する段階;
b)アミノ酸配列TFTSDVX17-18YLEG(配列番号8)(配列中、記号X17-18で表す残基は、シュードプロリンのジペプチド残基であり、この配列の前記アミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第2のペプチドフラグメントを提供する段階;
c)第1のフラグメントを第2のフラグメントとカップリングさせて、アミノ酸配列HX8EX10TFTSDVX17-18YLEG(配列番号11)(この配列の前記アミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第3のペプチドフラグメントを提供する段階;
d)アミノ酸配列QAAKEFIAWLVKX35(配列番号9)(配列中、X35はアキラルなアミノ酸残基であり、この配列の前記アミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第4のペプチドフラグメントを提供する段階;
e)アミノ酸配列QAAKEFIAWLVKX35R(配列番号12)(この配列の前記アミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第5のペプチドフラグメントを提供するために、第4のペプチドフラグメントをアルギニンとカップリングさせる段階;および
f)式(配列番号5)HX8EX10TFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKX35Rおよびその対応物のインスリン分泌性ペプチド(配列中、位置8、10および35の記号Xは、それぞれ独立してアキラルな、立体障害を受けていてもよいアミノ酸残基を表し、これらのアミノ酸残基のうち一つまたは複数は側鎖保護を含んでいてもよい)を提供するために、第5のフラグメントを第3のフラグメントとカップリングさせる段階。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明による合成スキームの概略図である。
【0041】
フラグメント12は、アミノ酸配列HX8EX10(配列番号6)を含むペプチドフラグメントである。フラグメント14は、アミノ酸配列T11FTSD15VX17-18YL20EG(配列番号8)を含むペプチドフラグメントである。フラグメント16は、アミノ酸配列Q23AA25KEFIA30WLVKX35(配列番号9)を含むペプチドフラグメントである。中間体フラグメント18は、アミノ酸配列H78EX10TFTSD15VX17-18YL20EG(配列番号11)を含むペプチドフラグメントである。中間体ペプチドフラグメント20は、アミノ酸配列Q23AA25KEFIA30WLVKX35R(配列番号12)を含むペプチドである。産物11は、所望の保護されたペプチドH78EX10TFTSD15VX17-18YL20EGQAA25KEFIA30WLVKX35R(配列番号13)(配列中、17および18位のSer−Serは、まだ保護されているシュードプロリンの形である)である。この概略図を以下にさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
下に説明する本発明の態様は、網羅的であることを意図せず、以下の詳細な説明に開示される厳密な形に本発明を限定することも意図しない。それどころか、これらの態様は、他の当業者が本発明の原理および実施を解釈および理解できるように選択および説明されるものである。
【0043】
本発明は、固相および/または溶液相技法を使用して、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、ならびにその天然および非天然インスリン分泌活性対応物などのペプチドを作製するための合成法を対象とする。本発明のペプチド分子は、保護されていてもよいし、保護されていなくてもよいし、部分的に保護されていてもよい。保護には、N−末端保護、側鎖保護、および/またはC−末端保護を挙げることができる。本発明は、広くはこれらのグルカゴン様ペプチド、その対応物、フラグメントおよびその対応物、ならびにこれらの融合産物およびその対応物の合成を対象とするが、本明細書における発明の教示は、他のペプチドの合成に、特に固相および溶液相アプローチの組み合わせを使用して合成されるペプチド合成にもまた適用することができる。本発明は、不純物、特にピログルタミン酸不純物と関係するペプチド中間体フラグメントの合成にもまた適用することができる。本発明の実施に有用な好ましいGLP−1分子には、天然および非天然GLP−1(7−36)ならびにその対応物が含まれる。
【0044】
本明細書に使用する用語「アミノ酸配列を含む」は、好ましくは「アミノ酸配列を有する」ことを意味する。
【0045】
本明細書に使用する「対応物」は、ペプチドの天然および非天然アナログ、誘導体、融合化合物、塩などを表す。本明細書に使用するペプチドアナログは、広くは別のペプチドまたはペプチド対応物に対する一つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、逆位および/または付加などにより改変されたアミノ酸配列を有するペプチドを表す。置換には、一つまたは複数の天然または非天然アミノ酸が関与することがある。置換は、好ましくは保存的または高度に保存的でありうる。保存的置換は、あるアミノ酸から、広くは同じ実効電荷ならびに同じサイズおよび形状を有する別のアミノ酸への置換を表す。例えば、脂肪族の、または置換された脂肪族のアミノ酸側鎖を有するアミノ酸は、これらの側鎖における炭素とヘテロ原子の合計数の差が約4を超えないならば、およそ同じサイズを有する。これらの側鎖における分岐数の差が約1または2を超えないならば、これらはおよそ同じ形状をもつ。側鎖にフェニルまたは置換フェニル基を有するアミノ酸は、およそ同じサイズおよび形状を有するとみなされる。下に挙げるのは、5群のアミノ酸である。化合物中のアミノ酸を同一群の別のアミノ酸に交換すると、広くは保存的置換が生じる。
【0046】
群I:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニンおよびC1−C4脂肪族またはC1−C4ヒドロキシ置換脂肪族の側鎖(直鎖または一分岐)を有する非天然アミノ酸。
群II:グルタミン酸、アスパラギン酸、およびカルボン酸置換C1−C4脂肪族側鎖(非分岐または一分岐点)を有する非天然アミノ酸。
群III:リシン、オルニチン、アルギニン、およびアミンまたはグアニジノ置換C1−C4脂肪族側鎖(非分岐または一分岐点)を有する非天然アミノ酸。
群IV:グルタミン、アスパラギン、およびアミド置換C1−C4脂肪族側鎖(非分岐または一分岐点)を有する非天然アミノ酸。
群V:フェニルアラニン、フェニルグリシン、チロシンおよびトリプトファン。
【0047】
本明細書に使用する用語「対応物」は、さらに好ましくはペプチドの塩またはC−末端でアミド化されたその誘導体を表す。
【0048】
「高度保存的置換」は、あるアミノ酸から、側鎖に同じ官能基を有し、ほぼ同じサイズおよび形状を有する別のアミノ酸への交換である。脂肪族または置換された脂肪族のアミノ酸側鎖を有するアミノ酸は、これらの側鎖における炭素とヘテロ原子との合計数の差が2を超えない場合に、ほぼ同じサイズを有する。これらが側鎖に同数の分岐を有する場合に、これらはほぼ同じ形状を有する。高度保存的置換の例には、バリン対ロイシン、トレオニン対セリン、アスパラギン酸対グルタミン酸、およびフェニルグリシン対フェニルアラニンが挙げられる。
【0049】
「ペプチド誘導体」は、広くはペプチド、ペプチドアナログ、または一つもしくは複数のその側鎖、α−炭素原子、末端アミノ基、および/もしくは末端カルボン酸基の化学的改変を有する他のペプチド対応物を表す。例として、化学的改変には、化学的部分の付加、新しい結合の創出、および/または化学的部分の除去が挙げられるが、それに限定されるわけではない。アミノ酸側基での改変には、リシンe−アミノ基のアシル化、アルギニン、ヒスチジン、またはリシンのN−アルキル化、グルタミン酸またはアスパラギン酸のカルボン酸基のアルキル化、およびグルタミンまたはアスパラギンの脱アミドが挙げられるが、それに限定されるわけではない。末端アミノ基の改変には、デスアミノ、N−低級アルキル、N−ジ−低級アルキル、およびN−アシル(例えば−CO−低級アルキル)改変が挙げられるが、それに限定されるわけではない。末端カルボキシ基の改変には、アミド、低級アルキルアミド、ジアルキルアミド、および低級アルキルエステル改変が挙げられるが、それに限定されるわけではない。好ましい誘導体は、末端カルボキシ基でアミド化されている誘導体、例えばペプチドのアミド、低級アルキルアミド、またはジアルキルアミドである。したがって、部分的に、または完全に保護されたペプチドがペプチド誘導体を構成する。
【0050】
本発明の実施において、ある化合物がインスリンホルモンの合成または発現を刺激するか、またはその刺激を引き起こすか、またはその刺激を引き起こすことを助けることができるならば、その化合物は「インスリン分泌」活性を有する。好ましい実施形態では、インスリン分泌活性は、米国特許第6,887,849号および第6,703,365号に記載されたアッセイにより実証することができる。
【0051】
好ましい態様では、本発明は、以下の式(配列番号5)を有する合成(X8,X10,X35)GLP−1(7−36)ペプチド:
【0052】
【表5】

【0053】
およびその対応物(配列中、位置8、10、および35の記号Xは、それぞれ独立してアキラルな、立体障害を受けていてもよいアミノ酸残基を表す)を合成するための方法を提供する。X8、X10、および/またはX35残基の任意のものは、側鎖保護基を含んでいてもよい。この式のペプチドは、少なくともアキラルな、立体障害を受けていてもよいX8およびX35残基が位置8および35でネイティブなアミノ酸残基から置換されている点で、ネイティブなGLP−1(7−36)と異なる。X10残基は、ネイティブな、アキラルなグリシンまたは別のアキラルなアミノ酸に由来することがある。アキラルなX8、X10、およびX35アミノ酸の使用は、結果として生じるペプチドの安定化を助けるだけでなく、基本成分としてのこれらのアミノ酸の使用が、図1に示され、下にさらに説明される本発明の容易な合成経路もまた容易にすることもまた見出された。
【0054】
本発明の原理により合成することのできる(X8,X10,X35)GLP−11(7−36)ペプチドの特に好ましい態様には、式(配列番号4)のペプチド:
【0055】
【表6】

【0056】
およびその対応物が含まれ、この対応物は、好ましくはC−末端でアミド化されている。このペプチドは、X8およびX35の両方としてアキラルなα−アミノイソ酪酸残基(すなわち略名Aibで概略的に示すメチルアラニン)を使用し、好ましくはC−末端にアミドを有し、10位にネイティブなG残基を使用し、かつ式(Aib8,35)GLP−1(7−36)−NH2と称することができる。この表示は、アミノ酸「Aib」に対応するアミノ酸残基がネイティブなアラニンの代わりに8および35位に出現することを示す。アキラルなα−アミノイソ酪酸は、メチルアラニンとしてもまた知られている。配列番号4のペプチドは、EP1137667B1に記載されている。8および35位にAib残基が存在することは、体内での代謝分解を減速させ、ネイティブなGLP−1(7−36)ペプチドよりもこのペプチドを体内でずっと安定にする。
【0057】
本発明は、(Aib8,35)GLP−1(7−36)−NH2などのGLP−1(7−36)ペプチドを作製するための改良法を提供する。例として、図1は、GLP−1(7−36)ペプチドおよびその対応物を合成するための例示的な一スキーム10を概略的に示す。図1のスキーム10は、GLP−1(7−36)ペプチドのスケールアップ合成に特に適すると考えられる。スケールアップの手順は、典型的には商業的流通に有用な量のペプチドを提供するために行われる。例えば、スケールアップ手順におけるペプチドの量は、一バッチについて500gまたは1kgのことがあり、さらに典型的には一バッチについて数10kg〜数100kg以上のことがある。好ましい態様では、本発明の方法は、加工(合成)時間の短縮、産物の収率の改善、産物の純度の改善、ならびに/または必要な試薬および出発物質の量の減少などの改善を提供することができる。
【0058】
図1に示す合成スキーム10は、固相および溶液相技法の組み合わせを使用して、ペプチド産物11を調製する。
【0059】
図1に示すように、スキーム10は、固相上でペプチド中間体フラグメント12、14、および16を合成することを伴う。フラグメント12は、配列番号6のアミノ酸残基を含むペプチドフラグメント:
【0060】
【表7】

【0061】
(配列中、X8およびX10は上記の通りである)またはX8およびX10残基を含むその対応物である。一つまたは複数のアミノ酸残基は、従来の常法通りの側鎖保護基を含んでいてもよい。いくつかの態様では、ペプチドフラグメント12は、C−末端により樹脂に結合していてもよい。このフラグメントは、N−末端および/またはC−末端保護基を有してもよい。Fmocは、ペプチドフラグメントの固相合成に関して特に有用なN−末端保護基であることが見出された。
【0062】
フラグメント12は、ネイティブなGLP−1(7−36)ペプチドの7〜10位のアミノ酸に対応する4個のアミノ酸残基を含み、したがって、表記(X8,X10)GLP−1(7−10)で表すことができる。好ましい態様では、配列番号7:
【0063】
【表8】

【0064】
のX8はAibであり、X10はグリシンであるか、または10位にAib残基を含むその対応物である。配列番号7のペプチドフラグメントを、表記(Aib8)GLP−1(7−10)で表示し、ネイティブなGLP−1(7−10)の8位のネイティブなアラニンからAibへの置換を述べることができる。
【0065】
固相合成は、広くはフラグメント12のC−末端からN−末端方向で実施される。したがって、フラグメントのC−末端部に存在するX10アミノ酸は、固相樹脂支持体とカップリングする最初のアミノ酸残基である。次に、所望の配列に対応するようにアミノ酸残基を連続的に付加することによって固相合成は進行する。ペプチド中間体フラグメントの合成は、N−末端残基(例えばN−末端ヒスチジン残基(H)が新生ペプチド鎖に付加された後に完了する。
【0066】
配列番号6:および7のペプチドフラグメントの選択および使用は、スキーム10に重大な長所を提供する。まず第一に、Hは、少なくとも一部はエピマー化の問題が原因で、伸長中のペプチド鎖に付加することが困難なアミノ酸残基になりがちである。しかし、フラグメント12は、これらの心配を大部分軽減するに足るほど小さい。そのうえ、フラグメント12は、二つのキラル中心を有するに足るほど長い。したがって、単純な結晶化によりフラグメントを精製することができる。フラグメント12がAibで終止するならば、このフラグメントはキラル中心を一つだけ有し、その結果としてラセミ体を精製することがより困難であろう。アキラルなGをC−末端に位置させてもまた、ラセミ化する心配が回避されるが、そうでなくてもフラグメント12のC−末端をキラルEで終止しようとするとラセミ化する心配がありうる。要約すれば、ペプチド基本成分としてフラグメント12を選択することは、このフラグメントを構築し、それを精製し、かつそれを他のペプチド物質とカップリングさせることをさらに容易にする。フラグメントの選択もまた、Hの低ラセミ化を享受する。驚くことに、Hは、いくつかの実施形態で非常に低レベルの、例えば約3重量%のエピマー化でこのフラグメントに付加される。
【0067】
フラグメント14は、配列番号8:
【0068】
【表9】

【0069】
(配列中、記号X17-18で表す残基は、下にさらに定義するシュードプロリンのジペプチド残基であるか、または17および18位にX17-18を含むその対応物である)に記載のアミノ酸残基を含むペプチドフラグメントである。フラグメント14は、広くはネイティブなGLP−1(7−36)ペプチドの11〜22位のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を含むが、例外として、シュードプロリンジペプチド残基X17-18は、対応するネイティブなGLP−1(7−36)の17および18位を占有するSS(Ser−Ser)残基の代わりに使用される。
【0070】
フラグメント14の一つまたは複数のアミノ酸残基は、従来の実施による側鎖保護基を含むことがある。いくつかの態様では、ペプチドフラグメント14は、C−末端を介して結合した樹脂であってもよい。このフラグメントは、N−末端および/またはC−末端保護基を有していてもよい。Fmocは、ペプチドフラグメントの固相合成に関して特に有用なN−末端保護基であることが見出された。配列番号8のペプチドフラグメントは、17および18位のSer−Ser残基からX17-18シュードプロリン残基への置換を述べるために、表記(X17-18)GLP−1(11−22)で表すことができる。
【0071】
本発明の実施に使用する用語シュードプロリンは、SerまたはThrなどのヒドロキシル官能アミノ酸残基を含むジペプチドを表し、このジペプチドでは、ヒドロキシ官能側鎖は、α−アミノと側鎖ヒドロキシルとの間の、プロリン様の、TFA不安定なオキサゾリジン環として保護されている。オキサゾリジン環の結果として、ジペプチドは可逆的プロリン模倣体として機能する。
【0072】
一般的には、ペプチドに組み込まれる典型的なシュードプロリン残基は、式
【0073】
【化1】

【0074】
で表示することができ、式中、Φは、任意のアミノ酸残基を表示し、R1およびR2は、それぞれ独立して適切な二価連結部分である。頻繁に、R1は、式
【0075】
【化2】

【0076】
の二価部分であり、式中、R3よびR4は、それぞれ独立してHなどの一価部分またはメチルなどの低級アルキルである。R3およびR4は、環構造の共同メンバーのこともまたある。望ましくは、R3およびR4はそれぞれメチルである。オキサゾリジン環で保護されたSerの場合に、R2は二価部分CH2であるが、一方で、Thrの場合は、R2は二価部分(CH3)CHである。
【0077】
用語「低級アルキル」は、炭素原子1〜6個、好ましくは炭素原子1〜4個の分岐または直鎖一価アルキル基を表す。この用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、3−メチルブチル、n−ヘキシル、2−エチルブチルなどの基によってさらに例示される。好ましい低級アルキル残基は、メチルおよびエチルであり、メチルが特に好ましい。
【0078】
脱保護の間に、R1部分は切断されて、以下の式:
【0079】
【化3】

【0080】
(式中、ΦおよびR2は上に定義する通りである)のジペプチド残基を提供する。フラグメント14に適用されるシュードプロリン残基は、好ましくはSer−Ser残基に対応し、ここで、C−末端に近い方のSerはオキサゾリジン環で保護されており、以下の構造を有する:
【0081】
【化4】

【0082】
N−末端に近い方のSerであるヒドロキシを有する側鎖は、t−Bu保護基などにより保護されている。保護性オキサゾリジン環構造およびt−Buが切断されると、Ser−Ser残基が生じる。
【0083】
フラグメント14の合成における基本成分としてこのようなプロリン模倣体を使用することは、本発明の状況で重大な利点を提供する。第1には、フラグメント14の固相合成が非常に容易になる。シュードプロリンがフラグメント14の固相合成の過程で使用されない場合に、13〜11の残基からFmocを除去するときに大きな問題が起こることがある。この困難さはβシート形成が原因のおそれがあると考えられている。シュードプロリンの使用は、βシートの形成度を低下させることによりFmocの除去をずっと簡単にすると考えられている。第2に、それに続く下記のフラグメント14からフラグメント12への、フラグメント18を形成する固相カップリングが大いに容易になる。シュードプロリン残基の不在下で、典型的な溶液相カップリング溶媒へのフラグメント18の溶解度は非常に低い。シュードプロリンは、フラグメント18の溶解度特性を高め、このフラグメントを伴うフラグメント20への溶液相カップリングを容易にする(下記図1の考察を参照されたい)。
【0084】
固相合成は、一般的にはフラグメント14のC−末端からN−末端方向に実施される。したがって、フラグメントのC−末端部分に存在するGアミノ酸は、固相樹脂支持体とカップリングする最初のアミノ酸残基である。次に、固相合成は、所望の配列に対応するようにアミノ酸残基を連続的に付加することにより進行する。しかし、GLP−1(7−36)の17および18位にネイティブなSer残基対を連続的に付加する代わりに、X17-18シュードプロリンジペプチドが17および18位に対応する位置で伸長中の鎖に付加される。ペプチド中間体フラグメントの合成は、N−末端残基(例えば、N−末端トレオニン残基(T)が新生ペプチド鎖に付加された後に完了する。
【0085】
フラグメント16は、配列番号9:
【0086】
【表10】

【0087】
(配列中、X35は上に定義する通りであるか、またはX35残基を含むその対応物である)のアミノ酸残基を含むペプチドフラグメントまたはその対応物である。一つまたは複数のアミノ酸残基は、従来の実施による側鎖保護基を含むことがある。フラグメント16は、ネイティブなGLP−1(7−36)ペプチドの23〜35位のアミノ酸に対応するアミノ酸残基を含むが、例外として35位のネイティブなアミノ酸の代わりに、その位置にX35がある。フラグメント16は、表記(X35)GLP−1(23−35)で表示することができる。
【0088】
いくつかの態様では、ペプチドフラグメント16は、C−末端を介して樹脂に結合していてもよい。このフラグメントは、側鎖、N−末端および/またはC−末端に保護基を有していてもよい。Fmocは、ペプチドフラグメントの固相合成に関して特に有用なN−末端保護基であることが見出された。
【0089】
好ましい態様では、X35は、配列番号10:
【0090】
【表11】

【0091】
のAibまたは35位にAibを含むその対応物である。配列番号10のペプチドフラグメントは、表記(Aib35)GLP−1(23−35)で表示され、ネイティブなGLP−1(7−36)の35位のネイティブなアミノ酸からAibへの置換を述べることができる。
【0092】
配列番号9および10のフラグメント16が、C末端の36位にR(arg)残基をまだ含まないことに注意されたい。Argは、好ましくは側鎖保護を有さないArgを使用して、続いて溶液相中のフラグメント16のC−末端とカップリングする。この戦略は、図1のスキーム10に大きな利点を提供し、それは、この戦略が、保護されたArgを使用する結果生じがちな望まれない副反応を回避するからである。例えば、保護されたArgを脱保護する際に、脱保護の副産物がこのペプチドの他の構成要素、例えばトリプトファンと反応しがちなことがある。これは、精製のために利用できる未精製品中の所望のペプチドの量を低下させる。
【0093】
固相合成は、一般的にはフラグメント16のC−末端からN−末端方向に実施される。したがって、このフラグメントのC−末端部分に存在するX35アミノ酸は、固相樹脂支持体とカップリングする最初のアミノ酸残基である。次に、固相合成は、所望の配列に対応するようにアミノ酸残基を連続的に付加することにより進行する。ペプチド中間体フラグメントの合成は、N−末端残基(例えばN−末端グルタミン残基(Q)が新生ペプチド鎖に付加された後で完了する。フラグメント16の合成に使用される任意のアミノ酸は、従来の常法による側鎖保護を含むことがある。
【0094】
35をロードされた支持体樹脂近傍の立体障害が原因で、伸長中のペプチド鎖へのリシン(34)およびバリン(33)のカップリングが、問題となるおそれがある。過剰のアミノ酸を用いてさえも、これらのカップリング反応を強制的に完了させることは困難である。溶媒の選択および/または末端キャッピングは、この問題の軽減を助けることができる。カップリング溶媒の性質は、カップリングが完了に進む度合いに影響を及ぼすことができることが見出された。例えば一セットの実験では、3:1 NMP/DCM、1:1 NMP/DCM、1:1 DMF/DCM、および3:1 DMF/DCM中でカップリング反応を実施した。これらの溶媒を組み合わせる比は、体積に基づく。NMPはN−メチルピロリドンを表し、DCMはジクロロメタンを表し、DMFはジメチルホルムアミドを表す。1:1 DMF/DCMを使用した場合に、カップリング反応が完了までさらに進行することが見出された。
【0095】
リシンおよびバリンカップリングのそれぞれの後に末端キャッピングもまた使用して、樹脂に支持された未反応の物質がさらなるカップリング反応を続行することを防止することができる。所望により精製する間に、末端キャッピングされた物質の方が容易に除去される。従来の末端キャッピング技法を使用することができる。
【0096】
図1の参照を続けて、Argに加えてフラグメント12、14、および16を集合させて所望のペプチド11を完成する。これを達成するために、フラグメント12を固相上でフラグメント14に付加し、配列番号11:
【0097】
【表12】

【0098】
(配列中、X8、X10、およびX17-18は上に定義する通りである)のアミノ酸残基を組み込んださらに大型の中間体フラグメント18を産生する。好ましい態様では、上に定義する通り、X8はAibであり、X10はネイティブなGであり、X17-18はシュードプロリンジペプチド残基である。この中間体ペプチドフラグメントは、表記(X8,X10,X17-18)GLP−1(7−22)で表示することができる。
【0099】
図1に、Argを溶液相でフラグメント16のC−末端に付加し、配列番号12:
【0100】
【表13】

【0101】
(配列中、X35は上に定義する通りであり、好ましくはAibである)のアミノ酸残基を組み込んださらに大型の中間体ペプチドフラグメント20を回収することをさらに示す。好ましくは、このようにペプチドフラグメントに付加されたArgは側鎖保護を含まない。この中間体ペプチドフラグメント20は、表記(X35)GLP−1(23−36)で表示することができる。次に、ペプチドフラグメント18および20を、溶液相中でカップリングし、配列番号13の所望の保護されたペプチド11を回収するが、この配列で、17および18位のSer−Serは、まだ保護されたシュードプロリン形である:
【0102】
【表14】

【0103】
ペプチド11は、表記(X8,X10,X17-18,X35)GLP−1(7−36)と称することができる。他のアミノ酸が側鎖保護を有する限りにおいて、この保護を望ましくはこの段階の間に維持する。
【0104】
図1の反応スキームを実施するときに、固相および溶液相合成は、当産業界で公知の標準法により実施することができる。代表的な実施形態では、アミノ酸をC−末端からN−末端に付加する化学反応を使用して、ペプチドを固相中で合成する。したがって、特定のフラグメントのC−末端に隣接するアミノ酸またはペプチド基を、最初に樹脂に付加する。これは、アミノ酸またはペプチド基のC−末端官能基を樹脂支持体上の相補的官能基と反応させることによって起こる。アミノ酸またはペプチド基のN−末端側は、望まれない副反応を防止するためにマスクされる。アミノ酸またはペプチド基は、望ましくは側鎖保護もまた同様に含む。次に、関心対象のペプチドが形成するまで、アミノ酸またはペプチド基を、支持体に結合したペプチド物質に連続的に結合させる。これらの大部分は、従来の常法による側鎖保護もまた含む。各連続カップリングを行いながら、樹脂に結合したペプチド物質のN−末端のマスキング基を除去する。次に、N−末端がマスクされた次のアミノ酸のC−末端とこれを反応させる。したがって、固相合成の産物は、樹脂支持体に結合したペプチドである。
【0105】
固相ペプチド合成の実施に適した任意の種類の支持体を使用することができる。好ましい態様では、支持体は、ポリアミド、ポリスルファミド、置換ポリエチレン、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、多糖、またはポリスチレンなどの一つまたは複数のポリマー、コポリマー、またはポリマーの組み合わせから作製されうる樹脂を含む。ポリマー支持体は、ペプチド合成に使用される溶媒に十分に不溶性で不活性な任意の固体でありうる。固体支持体は、典型的には合成の間に伸長中のペプチドをカップリングし、所望の条件で切断し、支持体からペプチドを放出することができる連結部分を含む。適切な固体支持体は、光切断可能、TFA切断可能、HF切断可能、フッ素イオン切断可能、還元的切断可能、Pd(O)切断可能、求核的切断可能、またはラジカル切断可能なリンカーを有することがある。好ましい連結部分は、切断されたペプチドの側鎖基がまだ実質的に全体的に保護されている条件で切断可能である。
【0106】
合成の好ましい一方法では、ペプチド中間体フラグメントは、トリチル基を含む酸感受性固体支持体上で、さらに好ましくはペンダント塩素基を有するトリチル基を含む樹脂上で、例えば2−クロロトリチルクロリド(2−CTC)樹脂上で合成される(Barlos et al. (1989) Tetrahedron Letters 30(30):3943-3946)。例には、トリチルクロリド樹脂、4−メチルトリチルクロリド樹脂、4−メトキシトリチルクロリド樹脂、4−アミノブタン−1−オール2−クロロトリチル樹脂、4−アミノメチルベンゾイル2−クロロトリチル樹脂、3−アミノプロパン−1−オール2−クロロトリチル樹脂、ブロモ酢酸2−クロロトリチル樹脂、シアノ酢酸2−クロロトリチル樹脂、4−シアノ安息香酸2−クロロトリチル樹脂、グリシノール(glicinol)2−クロロトリチル樹脂、プロピオン酸(propionic)2−クロロトリチル樹脂、エチレングリコール2−クロロトリチル樹脂、N−Fmocヒドロキシルアミン2−クロロトリチル樹脂、ヒドラジン2−クロロトリチル樹脂もまた挙げられる。いくつかの好ましい固体支持体にはポリスチレンが挙げられ、これは、ジビニルベンゼンと共にコポリマー化して、反応基がアンカーされた支持体物質を形成させることができる。
【0107】
固相合成に使用されている他の樹脂には、スチレンとジビニルベンゼンとのコポリマーで、4−ヒドロキシメチルフェニル−オキシメチルアンカー基を有するものを含む「Wang」樹脂(Wang, S.S. 1973, J. Am. Chem. Soc.)および4−ヒドロキシ−メチル−3−メトキシフェノキシ酪酸樹脂(Richter et al. (1994), Tetrahedron Letters 35(27):4705-4706)が挙げられる。Wang、2−クロロトリチルクロリド、および4−ヒドロキシメチル−3−メトキシフェノキシ酪酸樹脂は、例えばCalbiochem-Novabiochem Corp.(San Diego, California)から購入することができる。
【0108】
固相合成のための樹脂を調製するために、樹脂は、適切な溶媒中で予備洗浄することができる。例えば、2−CTC樹脂などの固相樹脂をペプチドチャンバーに加え、適切な溶媒で予備洗浄する。予備洗浄した溶媒は、カップリング反応に使用される溶媒(または混合溶媒)の種類に基づき、またはその逆で選択することができる。洗浄およびその後のカップリング反応にも適する溶媒には、ジクロロメタン(DCM)、ジクロロエタン(DCE)、ジメチルホルムアミド(DMF)など、およびこれらの試薬の混合物が挙げられる。他の有用な溶媒には、DMSO、ピリジン、クロロホルム、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N−メチルピロリドン、およびその混合物が挙げられる。場合によっては、カップリングは、二成分溶媒系中で、例えば9:1〜1:9、さらに通例には4:1〜1:4の範囲の体積比のDMFおよびDCMの混液中で行うことができる。
【0109】
本発明の合成は、特に述べない限り、好ましくは適切な保護基の存在下で実施される。保護基の性質および使用は、当技術分野で周知である。広くは、適切な保護基は、加工および合成の間にそれが結びつく原子または部分が、例えば酸素または窒素が、望まれない反応に関与することを防止することを助けることができる任意の種類の基である。保護基には、側鎖保護基およびアミノ−またはN−末端保護基が挙げられる。保護基は、カルボン酸、チオールなどの反応または結合を防止することもまたできる。
【0110】
側鎖保護基は、側鎖の一部がペプチド合成、加工などの段階に使用される化学物質と反応することを防止することを助ける、アミノ酸側鎖(すなわちアミノ酸一般式H2N−C(R)(H)−COOHのR基)とカップリングした化学的部分を表す。側鎖−保護基の選択は、様々な要因、例えば行う合成、ペプチドが供される加工、および所望の中間体産物または最終産物の種類に依存することがある。側鎖保護基の性質は、アミノ酸自体の性質にもまた依存する。広くは、固相合成の間にα−アミノ基を脱保護するときに除去されない側鎖保護基が選択される。したがって、α−アミノ保護基および側鎖保護基は、典型的には同じではない。
【0111】
場合によっては、そして固相合成および他のペプチド加工に使用される試薬の種類に応じて、アミノ酸は、側鎖保護基の存在を必要としないことがある。このようなアミノ酸は、典型的には側鎖に反応性酸素、窒素、または他の反応性部分を含まない。
【0112】
側鎖保護基の例には、アセチル(Ac)、ベンゾイル(Bz)、tert−ブチル、トリフェニルメチル(トリチル)、テトラヒドロピラニル、ベンジルエーテル(Bzl)および2,6−ジクロロベンジル(DCB)、t−ブトキシカルボニル(Boc)、ニトロ、p−トルエンスルホニル(Tos)、アダマンチルオキシカルボニル、キサンチル(Xan)、ベンジル、2,6−ジクロロベンジル、メチル、エチルおよびt−ブチルエステル、ベンジルオキシカルボニル(Z)、2−クロロベンジルオキシカルボニル(2−Cl−Z)、t−アミルオキシ−カルボニル(Aoc)、および芳香族または脂肪族ウレタン型保護基、ニトロベラトリルオキシカルボニル(NVOC)などの感光性基;ならびにトリメチルシリルオキシカルボニル(TEOC)などのフッ素不安定基が挙げられる。
【0113】
本発明の実施においてGLP−1ペプチドを合成するために通常使用されるアミノ酸のための好ましい側鎖保護基は、以下の表Aに示される:
表A:
【0114】
【表15】

【0115】
アミノ末端保護基は、アミノ酸のα−アミノ基とカップリングした化学的部分を含む。典型的には、アミノ末端保護基は、伸長中のペプチド鎖に付加される次のアミノ酸の付加前、脱保護反応で除去されるが、そのペプチドを支持体から切断する場合に維持することができる。アミノ末端保護基の選択は、様々な要因、例えば行う合成の種類および所望の中間体産物または最終産物に依存することがある。
【0116】
アミノ末端保護基の例には、(1)アシル型保護基、例えばホルミル、アクリリル(Acr)、ベンゾイル(Bz)およびアセチル(Ac)など;(2)芳香族ウレタン型保護基、例えばベンジルオキシカルボニル(Z)および置換されたZなど、例えばp−クロロベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニルなど;(3)脂肪族ウレタン保護基、例えばt−ブチルオキシカルボニル(Boc)、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、アリルオキシカルボニルなど;(4)シクロアルキルウレタン型保護基、例えば9−フルオレニル−メチルオキシカルボニル(Fmoc)、シクロペンチルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、およびシクロヘキシルオキシカルボニルなど;ならびに(5)チオウレタン型保護基、例えばフェニルチオカルボニルなどが挙げられる。好ましい保護基には、9−フルオレニル−メチルオキシカルボニル(Fmoc)、2−(4−ビフェニリル)−プロピル(2)オキシカルボニル(Bpoc)、2−フェニルプロピル(2)−オキシカルボニル(Poc)およびt−ブチルオキシカルボニル(Boc)が挙げられる。
【0117】
ペプチドFmocまたはFmoc様化学反応が固相ペプチド合成に大いに好ましいのは、結果として生じる保護された状態のペプチドの切断が、弱酸性切断剤を使用して比較的直接的に行われるからである。この種の切断反応は、結果として生じる副産物、不純物などに関して比較的汚染されておらず、膨潤および萎縮洗浄液の両方から大規模にペプチドを回収することを技術的および経済的に実行可能にし、収率を上げる。ペプチド合成に関して本明細書に使用する「大規模」は、広くは1バッチあたり少なくとも500g、さらに好ましくは少なくとも2kgの範囲でペプチドを合成することを含む。大規模合成は、典型的にはキログラム〜メートルトン範囲の生産を可能にするサイズの、樹脂、溶媒、アミノ酸、カップリングおよび脱保護反応用化学物質などの試薬の量を収容することができるスチール製反応容器などの脱保護反応大型反応容器中で行われる。
【0118】
追加的に、Fmoc保護基は、側鎖保護基に対してペプチドから選択的に切断することができる結果、側鎖保護はFmocが切断された場所に残る。この種の選択性は、アミノ酸カップリングの間に側鎖の反応を最小にするために重要である。追加的に、側鎖保護基を、Fmocに対して選択的に切断して除去し、Fmocをその場所に残すことができる。下にさらに説明する精製スキームの間に、この後者の選択性は非常に都合よく頼られる。
【0119】
固相カップリング反応は、カップリング反応を増強または改善する一つまたは複数の化合物の存在下で行うことができる。反応速度を増大させ、副反応速度を減少することができる化合物には、第三級塩基、例えばジイソプロピルエチルアミン(DIEA)およびトリエチルアミン(TEA)の存在下で保護されたアミノ酸を活性化種(例えばBOP、PyBOPO、HBTU、およびTBTUは、全てHOBtエステルを発生する)に変換することができるホスホニウム塩およびウロニウム塩が挙げられる。他の試薬は、保護試薬を提供することによりラセミ化防止を助ける。これらの試薬には、カルボジイミド(例えばDCCまたはWSCDI)に補助求核剤(例えば、1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシ−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、またはHOSu)を添加したものが挙げられる。クロロギ酸イソブチルを補助求核剤と共に、または補助求核剤なしに使用した混合無水物法もまた、それに関連する低いラセミ化が原因で、アジド法と同様に利用することができる。これらの種類の化合物もまた、カルボジイミド介在性カップリングの速度を増大させることができ、AsnおよびGln残基の脱水を阻害することができる。
【0120】
カップリングが完了したと判定された後で、カップリング反応混合物を溶媒で洗浄し、それに続きペプチド物質のアミノ酸残基のそれぞれについてカップリングサイクルを繰り返す。次のアミノ酸をカップリングさせるために、樹脂に結合した物質からのN−末端保護基(例えば、Fmoc基)の除去は、典型的にはN−メチルピロリドン(NMP)またはジメチルホルムアミド(DMF)などの溶媒に20〜50%(重量に基づく)ピペリジンを含む試薬を用いた処理により達成される。Fmoc保護基を除去後に、典型的には数回の洗浄を行い、残留したピペリジンおよびFmoc副産物(ジベンゾフルベンおよびそのピペリジン付加物など)を除去する。
【0121】
続くアミノ酸は、樹脂支持体上のペプチド物質のローディング係数に対して化学量論的に過剰のアミノ酸で利用することができる。広くは、カップリング段階で使用されるアミノ酸の量は、樹脂上の第1のアミノ酸のローディング係数と少なくとも等しい(1当量以上)。好ましくは、カップリング段階に使用されるアミノ酸の量は、少なくとも1.3当量(0.3過剰)以上であり、最も好ましくは約1.5当量(0.5過剰)以上である。場合によると、例えばカップリング段階は、1〜3の範囲のアミノ酸当量を利用する。
【0122】
最終カップリングサイクルの後で、樹脂をNMPなどの溶媒で洗浄し、次にDCMなどの不活性な第2の溶媒で洗浄する。合成されたペプチド物質を樹脂から除去するために、切断されたペプチド物質がまだ十分な側鎖保護基および末端保護基を有するような切断処理を実施する。所定の位置に保護基を残すことは、樹脂の切断の間または後にペプチドフラグメントの望まれないカップリングまたは他の望まれない反応を防止することを助ける。Fmocまたは類似の化学反応をペプチドの合成に使用する場合に、保護された切断を任意の所望の方法で、例えば、DCMなどの溶媒中に酢酸または希TFAなどの比較的弱酸の試薬を使用することにより達成することができる。DCM中に0.5〜10重量パーセントの、好ましくは1〜3重量パーセントのTFAを使用することが典型的である。例えば米国特許第6,281,335号を参照されたい。
【0123】
固相樹脂からペプチド中間体フラグメントを切断する段階は、以下のような例示的なプロセスに沿って進行させることができる。しかし、樹脂からペプチド中間体フラグメントを効果的に切断する任意の適切なプロセスを使用することができる。例えば、樹脂に結合したペプチド物質が入った容器に約5〜20容、好ましくは約10容の酸性切断試薬含有
溶媒を加える。その結果、典型的にはビーズの形の樹脂は、試薬に浸される。液体内容物を適切な温度で適切な時間撹拌すると、切断反応が起こる。撹拌は、ビーズの凝集防止を助ける。適切な時間および温度条件は、使用される酸試薬、ペプチドの性質、樹脂の性質などの要因に依存するものである。全般的なガイドラインとして、約−15℃〜約5℃、好ましくは約−10℃〜約0℃で約5分〜2時間、好ましくは約25分〜約45分の撹拌が適切であろう。切断時間は、約10分〜約2時間の範囲のことがあり、また最長1日のことさえある。切断は、反応の間に典型的に起こりうる反応の発熱を調節するためにこのような冷却された温度範囲で望ましくは実施される。加えて、低温の切断反応は、トリチル基などの酸感受性側鎖保護基がこの段階で除去されることを防止する。
【0124】
切断処理の最後に、反応をクエンチする。これは、例えば、切断試薬をピリジンなどの適切な塩基と混合すること、および追加的に5分〜2時間、好ましくは約20分〜約40分などの追加的な時間撹拌し、かき混ぜ続けることによって達成することができる。塩基を添加することおよび撹拌の継続は、容器の内容物を温度を増加させる。撹拌の終わりに、容器の内容物は、約0℃〜約15℃、好ましくは約5℃〜約10℃の温度範囲にありうる。
【0125】
ペプチド収率の局面を改善するための樹脂の膨張および萎縮などの要因を、合成プロセス全体に組み込んでもよい。これらの技法は、例えば、米国特許公報第2005/0164912A1号に記載されている。
【0126】
いくつかの局面では、切断されたペプチドフラグメントは、他のペプチドフラグメントおよび/またはアミノ酸への溶液相カップリングのために調製することができる。溶液相中のペプチドカップリング反応は、例えば、New Trends in Peptide Coupling Reagents; Albericio, Fernando; Chinchilla, Rafeal; Dodsworth, David J.; and Najera, Armen; Organic Preparations and Procedures International (2003), 33(3), 203-303に総説されている。
【0127】
溶液相中におけるペプチド中間体フラグメントから他のフラグメントまたはアミノ酸へのカップリングは、in situカップリング試薬、例えば2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、o−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、o−(7−アゾベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、水溶性カルボジイミド(WSCDI)、またはo−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)を使用して実施することができる。他のカップリング技法は、ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)エステルおよびp−ニトロフェノール(HONp)エステルなどの予備形成した活性エステル;予備形成した対称無水物;N−カルボキシ無水物(NCA)などの非対称無水物;またはフッ化アシルおよび塩化アシルなどの酸ハライドを使用する。
【0128】
適切なカップリング溶媒は、溶液相カップリング反応に使用することができる。使用されるカップリング溶媒が、形成するペプチド結合のラセミ化度;ペプチドおよび/またはペプチドフラグメントの溶解度;ならびにカップリング反応速度に影響を及ぼしうることが了解されている。いくつかの態様では、カップリング溶媒は、一つまたは複数の水混和性試薬を含む。水混和性溶媒の例には、例えば、DMSO、ピリジン、クロロホルム、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、またはその混合物が挙げられる。
【0129】
他の態様では、カップリング反応は一つまたは複数の水非混和性試薬を含むことがある。水非混和性溶媒の例は、メチレンクロリドである。これらの態様では、水非混和性溶媒は、好ましくは脱保護反応と適合性であり、例えば水非混和性溶媒が使用されるならば、好ましくはその溶媒は脱保護反応に有害な影響を及ぼさない。
【0130】
ペプチド11が形成した後で、所望により産物を脱保護、精製、凍結乾燥、さらなる加工(例えば別のペプチドと反応させて融合タンパク質を形成させる)、これらの組み合わせなどに供することができる。
【0131】
例えば本発明によると、側鎖保護基は、典型的には固相合成の間ずっと、そして溶液相カップリング反応に入るときおよびその間にもまたずっとペプチド中間体フラグメント上に保持される。広くは、溶液相カップリング段階が完了後に一つまたは複数の脱保護段階を行い、一つまたは複数の保護基をペプチドから除去することができる。
【0132】
全体的な脱保護による側鎖保護基の除去は、典型的には側鎖保護基を切断するための酸分解薬剤を含む脱保護溶液を利用する。全体的な脱保護のために通常使用される酸分解試薬には、ニートなトリフルオロ酢酸(TFA)、HCl、BF3Et2OまたはMe3SiBrなどのルイス酸、液体フッ化水素酸(HF)、臭化水素(HBr)、トリフルエロメタンスルホン酸、およびその組み合わせが挙げられる。脱保護溶液は、適切なカチオンスカベンジャー、例えば、ジチオスレイトール(DTT)、アニソール、p−クレゾール、エタンジチオール、またはジメチルスルフィドのうち一つまたは複数もまた含む。脱保護溶液は、水もまた含むことがある。脱保護組成物中に存在する、本明細書に使用する試薬の量は、典型的には比で表現され、ここで、個別の構成要素の量は、分子が「重量部」または「体積部」などの「部」単位で表現され、分母は組成物中の合計部である。例えば、TFA:H2O:DTTを90:5:5(重量/重量/重量)の比で含有する脱保護溶液は、90/100重量部のTFA、5/100重量部のH2O、および5/100重量部のDTTを有する。
【0133】
いくつかの態様では、脱保護組成物中の酸分解薬剤、好ましくはTFAの量が90/100重量部を超える脱保護反応を行うことができる。他の好ましい脱保護組成物は、93/100重量部以上の量、または93/100重量部〜95/100重量部の範囲の量で酸分解薬剤の量を含む。
【0134】
沈殿は、典型的にはエーテル、例えばジエチルエーテルまたはMTBE(メチル tert−ブチル エーテル)を使用して行われる。沈殿後に、望ましくはペプチドを単離し、乾燥してから、他の成分と混合し、凍結乾燥し、パッケージに入れ、保存し、さらに加工し、かつ/または別な方法で取り扱う。これは、任意の適切な方法で達成することができる。一つの適切なアプローチによると、ペプチドを濾過により収集し、十分なMTBE洗浄で洗浄し、適切なレベルまで最終塩含量を低下させ、次に乾燥する。
【0135】
本発明は、GLP−1ペプチドおよびその対応物を含む広範囲のペプチドを精製するために有用な技法もまた提供する。
【0136】
特に好ましい精製プロセスは、クロマトグラフィー媒質による少なくとも二つの精製工程を伴い、ここで、少なくとも第1の工程は、第1のpHで起こり、少なくとも第2の工程は第2のpHで起こる。さらに好ましくは、第1の工程は酸性pHで起こり、第2の工程は塩基性pHで起こる。好ましい態様では、塩基性条件で起こる工程の前に、酸性状態の少なくとも一つの工程が起こる。例示的な実施形態では、この精製アプローチは、図1に示すスキーム10から生じる完全に保護されたペプチド11を精製する例示的な状況で説明することができる。最初にペプチドは、全体的に脱保護される。N−末端保護基および側鎖保護基の両方を切断する。第1のクロマトグラフィー工程は、約1〜5、好ましくは約2のpHを提供するために十分なTFAを使用した水/ACN(アセトニトリル)勾配で実施される。次に、第2の工程は、約8〜9、好ましくは8.5〜8.9のpHを提供するために少量のアンモニアおよび/または酢酸アンモニウムなどを使用した水/ACN勾配で実施される。
【0137】
酸であろうと塩基であろうと、均一なイオン種が各場合に存在する点で、pHの値は均一性を促進する。したがって、望ましくは酸性pHが十分に低いことにより、ペプチド物質中のアミノ酸残基の実質的に全てがプロトン化される。望ましくは塩基性pHが十分に高いことにより、ペプチド物質中のアミノ酸残基の実質的に全てが脱プロトンされる。酸および塩基クロマトグラフィーは、任意の順序で実施することができる。アセテートがクロマトグラフィーの産物でありうる限り、ペプチドアセテートが所望の産物である場合に、塩基性クロマトグラフィーを最後に行うことが好都合である。
【0138】
以下の例示的な実施例について本発明の原理をこれからさらに例示する。以下において、全てのパーセントおよび比は、別に明示的に述べない限り体積に基づくものである。
【0139】
実施例1 N−末端にFmoc保護ならびにHisおよびGluに側鎖保護を有するフラグメント12の固相合成
A.Fmoc−Glyをロードされた2CTC樹脂の調製
最初に、Fmoc−Glyをロードされた2CTC樹脂を調製した。使用する試薬の量を以下の表に挙げる:
【0140】
【表16】

【0141】
2−CTC樹脂を500mL容ペプチドリアクターにチャージし、400mLのDCMを用いて25℃で30分膨潤させた。ベッドから排液し、DMF:DCM(87.5:12.5)8容中のFmoc−Gly−OHおよびDIEAの溶液を添加した。混合物を温度25℃で2時間窒素下で撹拌した。
【0142】
ベッドから排液し、350mLのMFで1回および175mLのDMFで1回洗浄した。次に、2−CTC樹脂上に残った活性部位を350mLのMeOH:DIEA(9:1)溶液で1時間末端キャップした。ベッドから排液し、250mLのDMFで2回洗浄し、次に350mLのDCMで4回洗浄した。樹脂を3×350mLのIPAで洗浄することにより脱膨潤させた。樹脂を一定重量になるまで乾燥させ、ロードされた樹脂38.20gを得た。分析により、0.18mmol/gというローディング係数が示された。
【0143】
B.固相合成
【0144】
固相合成は、本実施例1の第A部で調製した、0.18mmol/gでロードされたFmoc−Gly−2−CTC樹脂20.0gから出発して実施した。樹脂をDCM(200mL)中で25℃で30分膨潤させた。DCM溶媒を排液し、樹脂をNMPで3回洗浄した(各洗浄について5容)。
【0145】
次に、樹脂をNMP中の20体積%ピペリジンで2回処理し(各処理について5容)、Fmoc保護基を除去した。2回目の20%ピペリジン/NMP処理後に、クロラニル試験陰性になるまで樹脂をNMP(各洗浄について5容)で5回洗浄した。
【0146】
カップリング溶液を調製するためにアミノ酸(2.85当量)および6−クロロ−1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(6−Cl−HOBT、2.85当量)を秤量し、2.55倍容のNMPに溶解させ、次に5〜10℃でDIEA(3.25当量)と混合した。TBTU(2.85当量)を5℃〜10℃で1.3倍容のNMPに溶解させた。次に、これら二つの溶液を合わせた。得られた溶液を反応容器に加えた。1.3倍容のDCMでフラスコをすすぎ、これをリアクターに加え、次に、これを25〜27℃で2〜3時間撹拌した。Kaiser試験のために試料を抜き取り、反応が完了したかチェックした。カップリング反応が3時間後に完了していなければ(Kaiser試験陽性)、反応容器から排液し、活性化アミノ酸の新鮮溶液を用いて再カップリングを行った。カップリング反応の完了後に、カップリング溶液を排液し、樹脂をNMPで4回洗浄した(各洗浄について5容)。次に、フラグメント中の残りのアミノ酸についてFmoc保護基の除去およびカップリング反応サイクルを繰り返した(すなわちGlu(OtBu)→Aib→His(trt)の順)。
【0147】
活性化Fmoc−His(trt)−OHとH−Aib−Glu(OtBu)−Gly−2−CTCとの間のカップリング反応が困難であること、および活性化Fmoc−His(trt)−OHが不安定であることから、1時間後に反応溶液を排液することによってカップリング反応を強制完了させ、直ちに第2の新鮮な活性化Fmoc−His(trt)−OH溶液を用いた再カップリング反応を行った。
【0148】
本実施例の第B部で使用した全ての試薬を以下の表に挙げる:
【0149】
【表17】

【0150】
樹脂に結合したペプチドフラグメントをNMP(5容)で4回、DCM(6容)で5回、IPA(5容)で3回洗浄した。次に、脱膨潤した樹脂を35℃で真空下で乾燥させ、樹脂および樹脂に結合したペプチド22.58gを得た。
【0151】
C.樹脂からのFmoc保護および側鎖保護されたフラグメントの切断
上記第B部から構築された樹脂をDCM(使用した樹脂重量に対して12.5容、樹脂1gあたり12.5mlのDCMまたは1kgあたり12.5リットル)中で25℃で30分膨潤させ、次に、DCMで2回洗浄し(各洗浄について6.25容)、あらゆるNMP残基を除去した。最終のDCM洗浄でこの樹脂を−5℃に冷却した。DCMを排液し、1% TFA/DCMの冷溶液を加え(−5℃〜−10℃で10容)、0℃で30分間撹拌した。ピリジン(1.3当量のTFA)をリアクターに加えてTFAを中和した。切断溶液を濾過し、フラスコに収集した。容器が25℃まで加温する間に、樹脂をDCM(7.5容)で7回洗浄した。洗液を切断溶液と混合した。DCM切断溶液を水(7.5容)と混合した。結果として生じる混合物を減圧下で蒸留し、DCMを除去した(28℃で350torr)。DCMが除去されると、ペプチドフラグメントは水から沈殿した。フラグメントを水で洗浄し、真空下で30℃〜35℃で乾燥させた。合計4.73gのFmoc−(Aib8)GLP−1(7−10)−OHを得た。
【0152】
実施例2
A.Fmoc−Glyをロードされた2CTC樹脂の調製
Fmoc−Glyをロードされた2CTC樹脂を調製した。使用した試薬の量を以下の表に挙げる:
【0153】
【表18】

【0154】
2−CTC樹脂を500mL容ペプチドリアクターにチャージし、400mLのDCMで30分膨潤させた。樹脂から排液し、DMF:DCM(87.5:12.5容)8容中のFmoc−Gly−OHおよびDIEAの溶液を加えた。混合物を25℃で2時間窒素下で撹拌した。
【0155】
樹脂ベッドから排液し、400mLのDMFで1回および200mLのDMFで1回洗浄した。次に、2−CTC樹脂上に残った活性部位をMeOH:DIEA(9:1容)溶液390mLで1時間末端キャップした。ベッドから再び排液し、350mLのDMFで2回洗浄し、350mLのDCMで4回洗浄した。次に、3×350mLのIPAで洗浄することにより樹脂を脱膨潤させた。一定重量になるまで樹脂を真空下で35℃で乾燥させ、ロードされた樹脂48.51gを得た。分析により、0.54mmol/gというローディング係数が示された。
【0156】
B.固相合成
【0157】
固相合成は、0.54mmol/gでロードされたFmoc−Gly−2−CTC樹脂27.59gから出発して実施した。樹脂をDCM(300mL)中で25℃で30分膨潤させた。DCM溶媒を排液し、樹脂をNMPで3回洗浄した(各洗浄について5容)。
【0158】
次に、樹脂をNMP中の20体積%ピペリジンで2回処理し(各処理について5容)、Fmoc保護基を除去した。2回目の20%ピペリジン/NMP処理後に、クロラニル試験陰性になるまで樹脂をNMPで6回洗浄した(各洗浄について5容)。
【0159】
カップリング溶液を調製するために、アミノ酸(1.7当量)および6−クロロ−1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(6−Cl−HOBT、1.7当量)を秤量し、4.6倍容のNMPに溶解させ、次に5℃〜10℃でDIEA(1.9当量)と混合した。TBTU(1.7当量)を5℃〜10℃で2.28倍量のNMPに溶解させた。次に、二つの溶液を合わせた。結果として生じる溶液を反応容器に加えた。フラスコを2.28容のDCMでリアクターにすすぎ入れ、これを次に25℃〜27℃で2〜3時間撹拌した。試料をKaiser試験のために抜き取り、反応が完了したかチェックした。カップリング反応の完了後に、カップリング溶液を排液し、樹脂をNMPで4回洗浄した(各洗浄について5容)。フラグメント中の残りのアミノ酸についてFmoc基の除去およびカップリング反応サイクルを繰り返した(すなわちGlu(OtBu)→Aib→His(trt)の順)。
【0160】
本実施例で使用した全ての試薬を以下の表に挙げる:
【0161】
【表19】

【0162】
C.樹脂からのフラグメントの切断
構築された樹脂をNMP(5容)で6回、次にDCM(6容)で8回洗浄し、NMP残基を除去した。最終のDCM洗浄で樹脂を−5℃に冷却した。DCMを排液後、1%TFA/DCMの冷(−5℃〜−10℃)溶液(10容)を加え、結果として生じるポット混合物を0℃で30分間撹拌した。ピリジン(TFAの1.3当量)をリアクターにチャージし、TFAを中和した。切断溶液をフラスコに収集した。容器を25℃まで加温する間に、樹脂をDCM(7.5容)で11回洗浄し、切断溶液に排液した。DCM溶液を水(10容)と混合した。結果として生じる混合物を減圧下で蒸留し、DCM(28℃で350torr)を除去した。DCMが除去されると、フラグメントは水から沈殿した。フラグメントを水で洗浄し、真空下で30℃〜35℃で乾燥させた。合計11.12gのFmoc−(Aib8)GLP−1(7−10)−OH(収率78.8%)を得た。
【0163】
実施例3
A.Fmoc−Glyをロードされた2CTC樹脂の調製
Fmoc−Glyをロードされた2CTC樹脂を調製した。使用する試薬の量を以下の表に挙げる:
【0164】
【表20】

【0165】
2−CTC樹脂を500mL容ペプチドリアクターにチャージし、400mLのDCMで30分膨潤させた。ベッドから排液し、DMF:DCM(87.5:12.5)8容中のFmoc−Gly−OHおよびDIEAの溶液を加えた。混合物を温度25℃で2時間窒素下で撹拌した。
【0166】
ベッドから排液し、400mLのDMFで1回洗浄した。次に、2−CTC樹脂上のあらゆる残りの活性部位をMeOH:DIEA(9:1)溶液390mLで1時間末端キャップした。ベッドから排液し、350mLのDMFで2回、次に350mLのDCMで4回洗浄した。4×250mLのIPAで洗浄することにより樹脂を脱膨潤させた。一定重量になるまで樹脂を真空下で35℃で乾燥させ、ロードされた樹脂52.02gを得た。分析により、0.72mmol/gのローディング係数が示された。
【0167】
B.固相合成
固相合成は、0.72mmol/gでロードされたFmoc−Gly−2−CTC樹脂24.43gから出発して実施した。樹脂をDCM(250mL)中で25℃で30分膨潤させた。DCM溶媒を排液し、樹脂をNMPで3回洗浄した(各洗浄について5容)。
【0168】
次に、樹脂をNMP中の20%ピペリジンで2回処理し(各処理について5容)、Fmoc保護基を除去した。2回目の20%ピペリジン/NMP処理後に、クロラニル試験陰性になるまで樹脂をNMPで6回洗浄した(各洗浄について5容)。
【0169】
カップリング溶液を調製するために、アミノ酸および6−クロロ−1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(6−Cl−HOBT)を秤量し、NMPに溶解させ、次に10℃〜5℃でDIEAと混合した。TBTUを10℃〜5℃でNMPに溶解させた。次に、二つの溶液を合わせた。結果として生じる溶液を反応容器に加えた。フラスコをDCMでリアクターにすすぎ入れ(量については以下の表参照)、これを25℃〜27℃で2〜6時間撹拌した。Kaiser試験のために試料を抜き取り、反応が完了したかチェックした。カップリング反応が3時間後に完了していなければ(Kaiser試験陽性)、反応容器から排液し、活性化アミノ酸の新鮮溶液を用いて再カップリングを行った。カップリング反応が完了した後で、カップリング溶液を排液し、樹脂をNMPで4回洗浄した(各洗浄について5容)。次に、フラグメント中の残りのアミノ酸についてFmoc基の除去およびカップリング反応サイクルを繰り返した(すなわちGlu(OtBu)→Aib→His(trt)の順)。
【0170】
本実施例に使用する全ての試薬を以下の表に挙げる:
【0171】
【表21】

【0172】
C.樹脂からのフラグメントFmoc−AA(7−10)−OHの切断
構築された樹脂をNMP(5容)で6回およびDCM(6容)で7回洗浄し、NMPを除去した。最終のDCM洗浄で樹脂を−5℃に冷却した。DCMを排液し、樹脂ベッドを1%TFA/DCM(11.26容)の冷溶液(−5℃〜−10℃)と共に0℃で5分洗浄した。切断溶液をフラスコに収集したが、フラスコにはTFAを中和するためのピリジン(合計TFAの1.3当量)を加えておいた。次に、冷1%TFA/DCM(6.14容)の第2の一部をリアクターに加え、2分間撹拌した。第2の切断溶液をもう一度収集フラスコに排液した。容器を25℃まで加温する間に、樹脂をDCMで9回洗浄し(8.2容)、切断溶液に排液した。DCM溶液を水(8.2容)と混合した。結果として生じる混合液を減圧下で蒸留し、DCMを除去した(28℃で350torr)。DCMが除去されると、フラグメントは水から沈殿した。フラグメントを水で洗浄し、30℃〜35℃の真空下で乾燥させた。配列番号7のFmoc−(Aib8)GLP−1(7−10)−OHを合計14.02g得た(収率86.6%)。分析から、純度94.3%ANが示された。
【0173】
実施例4 側鎖を保護されたFmoc−(Aib35)GLP−1(23−35)−OHの固相合成
A.Fmoc−Aibをロードされた2CTC樹脂の調製
Fmoc−Aibをロードされた2CTC樹脂を調製した。使用した試薬の量を以下の表に挙げる:
【0174】
【表22】

【0175】
2−CTC樹脂を500mL容ペプチドリアクターにチャージし、400mLのDCMで30分膨潤させた。ベッドから排液し、DMF:DCM(87.5:12.5)8容中のFmoc−Aib−OHおよびDIEAの溶液を加えた。混合物を温度25℃で2時間窒素下で撹拌した。
【0176】
ベッドから排液し、1回目は400mL、2回目は200mLのDMFで洗浄し、次に、2−CTC樹脂上に残ったあらゆる活性部位をMeOH:DIEA(9:1)溶液400mLで1時間末端キャップした。ベッドから排液した。樹脂を450mLのDMF/MeOH/DIEA(4:0.9:0.1)で1回、200mLのDMFで1回、および350mLのDCMで4回洗浄した。3×350mLのIPAで洗浄することにより、樹脂を脱膨潤させた。樹脂を一定重量になるまで乾燥させ、ロードされた樹脂45.15gを得た。分析により、0.24mmol/gというローディング係数が示された。
【0177】
B.固相合成
0.24mmol/gのローディング係数を有するFmoc−Aib−2−CTC樹脂10.01gを反応容器にチャージし、DCM(120mL)中で25℃で30分膨潤させた。DCM溶媒を排液し、樹脂をNMPで3回洗浄した(各洗浄について6容)。
【0178】
次に、樹脂をNMP中の5体積%ピペリジンで2回処理し(各処理について6容)、Fmoc保護基を除去した。2回目の5%ピペリジン/NMP処理後に、樹脂をNMPで4回洗浄した(各洗浄について6容)。
【0179】
カップリング溶液を調製するために、アミノ酸(1.875当量)および1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール一水和物(HOBT水和物、2.07当量)を3.5倍容のNMPに5℃〜10℃で溶解させ、次に、NMP(1.5倍容)中のHBTU溶液16.1mL(2.0当量)と混合した。次に、2.2mLのDIEA(2.63当量)を活性化容器に10℃〜5℃で加えた。結果として生じる溶液を反応容器に移した。活性化容器を1.5倍容のDCMでリアクターにすすぎ入れ、次にこれを25℃で2時間撹拌した。反応容器から排液した。活性化アミノ酸(1.875当量)の新鮮溶液を用いて、カップリング反応をもう一度繰り返した。2回目のカップリング反応が完了後に、カップリング溶液を排液し、樹脂をNMPで4回洗浄した(各洗浄について6容)。次に、Fmoc基の除去およびカップリング反応サイクルを、フラグメント中の残りのアミノ酸について繰り返した(すなわちLys(Boc)→Val→Leu→Trp(Boc)→Ala→Ile→Phe→Glu(OtBu)→Lys(Boc)→Ala→Ala→Gln(trt)の順)。
【0180】
本実施例に使用する全ての試薬を以下の表に挙げる:
【0181】
【表23】



【0182】
構築された樹脂をNMP(6容)で4回、DCM(6容)で4回、およびイソプロパノール(IPA、6容)で3回洗浄することにより単離した。構築された樹脂を35℃の真空下で乾燥させた。構築された樹脂14.3gを得た。
【0183】
C.構築された樹脂からの中間体フラグメントの切断
上記からの構築された樹脂6.6gを10倍容のDCM中で30分膨潤させ、−10℃に冷却した。DCMを排液し、1%TFA/DCM(12容、−5℃〜−10℃)の冷溶液を加え、0℃で30分間撹拌した。ピリジン(TFA2〜3当量)の入ったフラスコに切断溶液を収集した。25℃まで加温する間に、樹脂を1%TFA/DCM(10倍容)と共に5分間撹拌し、ピリジン(2〜3当量)を加えた。さらに5分後に、溶液を収集した。樹脂をDCMで4回洗浄した(10容)。全てのDCM洗液を水と混合した(水/DCM=1/4)。結果として生じる混合液を減圧下で蒸留し(28℃で350torr)、DCMを除去した。DCMが除去されると、フラグメントは水から沈殿した。フラグメントを水で洗浄し、30℃〜35℃の真空下で乾燥させた。切断手順をもう一度繰り返した。合計2.36gのFmoc−(Aib35)GLP−1(23−35)−OHを得た(収率92%)。
【0184】
実施例5
A.Fmoc−Aibをロードされた2CTC樹脂の調製
Fmoc−Aibをロードされた2CTC樹脂を調製した。本実施例に使用する試薬の量を以下の表に挙げる:
【0185】
【表24】

【0186】
2−CTC樹脂を500mL容ペプチドリアクターにチャージし、400mLのDCMで30分膨潤させた。ベッドから排液し、DMF:DCM(87.5:12.5)8容中のFmoc−Aib−OHおよびDIEAの溶液を加えた。混合物を温度25℃で2時間窒素下で撹拌した。
【0187】
ベッドから排液し、400mLのDMFで洗浄した。次に、2−CTC樹脂上に残ったあらゆる活性部位をMeOH:DIEA(9:1)溶液400mLで1時間末端キャップした。ベッドから排液し、400mLのDMFで1回、200mLのDMFで1回、および350mLのDCMで4回洗浄した。3×350mLのIPAで洗浄することにより樹脂を脱膨潤させた。一定重量になるまで樹脂を乾燥させ、ロードされた樹脂45.32gを得た。分析により、0.30mmol/gというローディング係数が示された。
【0188】
B.固相合成
固相合成は、0.30mmol/gでロードされたFmoc−Aib−2−CTC樹脂15.0gから出発して実施した。樹脂をDCM(150mL)中で25℃で30分膨潤させた。DCM溶媒を排液し、樹脂をDCMで2回(各洗浄について6容)およびNMPで3回(各洗浄について6容)洗浄した。
【0189】
次に、樹脂をNMP中の20%ピペリジンで2回処理し(各処理について6容)、Fmoc保護基を除去した。2回目の20%ピペリジン/NMP処理の後で、クロラニル試験陰性になるまで樹脂をNMPで6回洗浄した(各洗浄について6容)。
【0190】
カップリング溶液を調製するために、アミノ酸(1.7当量)および6−クロロ−1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(6−Cl−HOBT、1.7当量)を秤量し、2.6倍容のNMPに10℃〜5℃で溶解させ、次にDIEA(1.9から3.0当量)と混合した。TBTUまたはHBTU(1.7当量)を1.33倍容のNMPに10℃〜5℃で溶解させた。次に、二つの溶液を合わせた。結果として生じる溶液を反応容器に加えた。混合フラスコを1.33倍容のDCMでリアクターにすすぎ入れ、次にこれを樹脂と共に25℃〜27℃で2〜3時間撹拌した。Kaiser試験のために試料を抜き取り、反応が完了したかチェックした。カップリング反応が3時間後に完了していなければ(Kaiser試験陽性)、反応容器から排液し、活性化アミノ酸の新鮮溶液を用いて再カップリングを行った。カップリング反応が完了した後で、カップリング溶液を排液し、樹脂をNMPで4回洗浄した(各洗浄について6容)。次に、フラグメント中の残りのアミノ酸についてFmoc基の除去およびカップリング反応サイクルを繰り返した(すなわちLys(Boc)→Val→Leu→Trp(Boc)→Ala→Ile→Phe→Glu(OtBu)→Lys(Boc)→Ala→Ala→Gln(trt)の順)。
【0191】
2−メチルアラニン(Aib)と2−CTC樹脂との間の可能性のあるバトレッシング効果が原因で、第1の二つのアミノ酸(Lys(Boc)−34およびVal−33)のカップリング反応を強制完了させるにはかなり困難がある。したがって、(Lys(Boc)−34、Val−33)についての両カップリング反応を3回行った(すなわちカップリングの後に2回の再カップリングを行う)。また、Lys(Boc)−34およびVal−33のカップリング反応の後で、無水酢酸を使用して樹脂に結合した未反応の物質を末端キャップした。これは、クロマトグラフィー精製の間に所望の産物から不純物を遠く離すことによりその後の精製の効率を改善した。
【0192】
本実施例に使用する全ての試薬を以下の表に挙げる:
【0193】
【表25】

【0194】
C.構築された樹脂からのフラグメントの切断
上記から構築された樹脂をDCMで7回洗浄し(各洗浄について6容)、NMP残基を除去し、最後のDCM洗浄で樹脂を−5℃に冷却した。DCMを排液し、1%TFA/DCMの冷溶液(−5〜−10℃で12容)を加え、0℃で30分間撹拌した。ピリジン(TFAの1.3当量)の入ったフラスコに切断溶液を収集した。容器を25℃まで加温する間に、樹脂をDCMで9回洗浄し(10容)、切断溶液に排液した。DCM溶液を水(6容)と混合した。結果として生じる混合物を減圧下で蒸留し、DCMを除去した(28℃で350torr)。DCMが除去されると、フラグメントは水から沈殿した。フラグメントを洗浄し、30℃〜35℃の真空下で乾燥させた。この実施例について、切断手順をもう一度繰り返した。合計6.78gのFmoc−(Aib35)GLP−1(23−35)−OHを純度87.3%ANで得た(収率68.1%)。
【0195】
実施例6
A.Fmoc−Aibをロードされた2CTC樹脂の調製
Fmoc−Aibをロードされた2CTC樹脂を調製した。本実施例に使用する試薬の量を以下の表に挙げる:
【0196】
【表26】

【0197】
2−CTC樹脂を500mL容ペプチドリアクターにチャージし、400DCMで30分膨潤させた。ベッドから排液し、DMF:DCM(87.5:12.5)8容中のFmoc−Aib−OHおよびDIEAの溶液を加えた。混合物を温度25℃で2時間窒素下で撹拌した。
【0198】
ベッドから排液し、400mLのDMFで洗浄した。次に、2−CTC樹脂上に残ったあらゆる活性部位をMeOH:DIEA(9:1)溶液400mLで1時間末端キャップした。ベッドから排液し、400mLのDMFで1回洗浄し、200mLのDMFで1回洗浄し、350mLのDCMで4回洗浄した。3×350mLのIPAで洗浄することにより樹脂を脱膨潤させた。一定重量になるまで樹脂を乾燥させ、ロードされた樹脂47.56gを得た。分析により、0.37mmol/gというローディング係数が示された。
【0199】
B.固相合成
固相合成は、0.37mmol/gでロードされたFmoc−Aib−2−CTC樹脂25.0gから出発して実施した。樹脂をDCM(250mL)中で25℃で30分膨潤させた。DCM溶媒を排液し、樹脂をDCMで2回(各洗浄について6容)およびNMPで3回(各洗浄について6容)洗浄した。
【0200】
次に、樹脂をNMP中の20体積%ピペリジンで2回処理し(各処理について6容)、Fmoc保護基を除去した。2回目の20%ピペリジン/NMP処理後に、クロラニル試験陰性になるまで樹脂をNMPで6回洗浄した(各洗浄について6容)。
【0201】
カップリング溶液を調製するために、アミノ酸および6−クロロ−1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール(6−Cl−HOBT)を秤量し、3.2倍容のNMP(またはLys−34、Val−33、およびGln−23についてはDMF)に溶解させ、次に10℃〜5℃でDIEAと混合した。TBTUを10℃〜5℃で1.6倍容のNMP(またはLys−34、Val−33、およびGln−23についてはDMF)に溶解させた。次に、二つの溶液を合わせた。結果として生じる溶液を反応容器に加え、フラスコを1.6倍容のDCMでリアクターにすすぎ入れ、これを樹脂と共に25℃〜27℃で2〜3時間撹拌した。Kaiser試験のために試料を抜き取り、反応が完了したかチェックした。3時間後にカップリング反応が完了していなければ(Kaiser試験陽性)、反応容器から排液し、活性化アミノ酸の新鮮溶液を用いて再カップリングを行った。カップリング反応が完了した後で、カップリング溶液を排液し、樹脂をNMPで4回洗浄した(各洗浄について6容)。次に、フラグメント中の残りのアミノ酸についてFmoc基の脱保護およびカップリング反応サイクルを繰り返した(すなわちLys(Boc)→Val→Leu→Trp(Boc)→Ala→Ile→Phe→Glu(OtBu)→Lys(Boc)→Ala→Ala→Gln(trt)の順)。
【0202】
2−メチルアラニン(Aib)と2−CTC樹脂との間の可能性のあるバトレッシング効果が原因で、第1の二つのアミノ酸(Lys(Boc)−34およびVal−33)のカップリング反応を強制完了させるにはかなり困難がある。アミノ酸および6−Cl−HOBT両方の利用を1.7Eqから2.5Eqに、DIEAの利用を1.9Eqから3.0Eqに増加させることで、Lys(Boc)−34、Val−33、およびGln(trt)−23についてのカップリング条件を改変した。カップリング反応用の溶媒もまた、カップリング反応を強制完了させるためにNMPからDMPに変更した。また、本実施例では、Lys(Boc)−34およびVal−33のカップリング反応後に、樹脂に結合した未反応の物質を末端キャップするために無水酢酸を使用した。これは、クロマトグラフィー精製の間に所望の産物から不純物を遠く離すことによりその後の精製の効率を改善した。
【0203】
本実施例に使用する全ての試薬を以下の表に挙げる:
【0204】
【表27】

【0205】
C.構築された樹脂からのフラグメントの切断
上記から構築された樹脂をDCMで6回洗浄して(各洗浄について6容)NMPを除去し、最終のDCM洗浄で樹脂を−5℃に冷却した。DCMを排液し、1%TFA/DCMの冷溶液(−5℃〜−10℃で10容)を加え、0℃で30分間撹拌した。切断溶液をピリジン(TFAの1.3当量)の入ったフラスコに収集した。容器が25℃まで加温する間に、樹脂をDCMで7回洗浄し(6容)、切断溶液に排液した。DCM溶液を水(10容)と混合した。結果として生じる混合物を減圧下で蒸留し、DCMを除去した(28℃で350torr)。DCMが除去されると、フラグメントは水から沈殿した。フラグメントを洗浄し、真空下で30℃〜−35℃で乾燥させた。この実施例のために、切断手順をもう一度繰り返し、完全な切断を達成した。合計12.36gのFmoc−(Aib35)GLP−1(23−35)−OHを純度84.3%ANで得た(収率59.35%)。
【0206】
実施例7
1.樹脂の洗浄
予備ロードされたFmoc−Gly−O−2−CTC樹脂(0.18〜0.65mmol/gをロード)またはFmoc−Aib−O−2−CTC(0.25〜0.65mmol/gをロード)から出発して、標準的なFmoc化学反応を適用した。樹脂を最初に10倍容のDCMで30〜60分膨潤させた。次にDCMを排液し、樹脂を10倍容のNMPで3〜5回洗浄した(各回5分)。
【0207】
2.全般合成サイクル:
本実施例7の第A節にしたがって洗浄した樹脂を使用して、NMP中の20(v/v)%ピペリジンの約10×溶液で2回処理することによってFmoc除去を達成した。処理は各回15〜30分続けた。ピペリジン/NMP溶液を各処理後に排液した。次に、樹脂をNMPで4〜5回洗浄した(10倍容、各回5分)。
【0208】
カップリング溶液を調製するために、Fmocで保護されたアミノ酸(AA)およびHOBtを秤量し(1.5〜2.0当量)、10℃で4倍容のNMPに溶解させ、DIEA(1.5〜2.0当量)と混合した。HBTU(1.5〜2.0当量)を10℃で3倍容のNMPに溶解させた。次に、二つの溶液を合わせ、3倍容のDCMと1〜2分混合した。結果として生じる溶液を反応容器に加え、1.5〜5時間撹拌しながら樹脂と混合した。試料をKaiser試験のために抜き取り、反応が完了したかチェックした。不完全なカップリングは再カップリングさせた。カップリング反応が完了後、カップリング溶液を排液し、樹脂をNMPで5回洗浄した(10培養、各回5分)。
【0209】
A.一般的な合成手順により、同様に一般的な合成手順を使用してネイティブな配列を有するフラグメントFmoc−GLP−1(11−22)−2−CTCを段階的に構築し、配列番号7のフラグメントを、この第A節で調製した結果として生じるフラグメントFmoc−GLP−1(11−22)−2−CTCと、一般的な合成手順を使用してカップリングさせた。
【0210】
B.一般的な合成手順により、フラグメントFmoc−GLP−1(11−22)−2−CTCを段階的に構築した。しかし、Fmocの除去条件は、NMP中の20(v/v)%ピペリジンの代わりにNMP中の10(v/v)%ピペリジンおよび2(v/v)%DBUの溶液に変更した。加えて、AA14[Fmoc−Ser(tBu)−]の位置およびAA13[Fmoc−Thr(tBu)−]の位置での処理時間を1.5時間に延長して反応の完了を推進した。同じ一般的な合成手順を使用して、配列番号7のフラグメントを、結果として生じるFmoc−GLP−1(11−22)−2−CTCと、一般的な合成手順を使用してカップリングさせた。
【0211】
C.NMP中の10(v/v)%ピペリジンおよび2(v/v)%DBUとしてのFmoc除去溶液を用いた一般的な合成手順により、フラグメントFmoc−(X17-18)GLP−1(11−22)−2−CTCを段階的に構築した。次に、配列番号7のフラグメントを、結果として生じるFmoc−(X17-18)GLP−1(11−22)−2−CTCと、一般的な合成手順を用いてカップリングさせた。
【0212】
D.一般的な合成手順により、フラグメントFmoc−(X17-18)GLP−1(11−22)−2−CTCを段階的に構築した。次に、配列番号7のフラグメントを、結果として生じるFmoc−(X17-18)GLP−1(11−22)−2−CTCと、一般的な合成手順を用いてカップリングさせた。
【0213】
E.すぐ上の第D節の一般的な合成手順により、そして以下の表に述べる相違点を除き、フラグメントFmoc−(X17-18)GLP−1(11−22)−2−CTCを段階的に構築した。次に、配列番号7のフラグメントを、結果として生じるFmoc−(X17-18)GLP−1(11−22)−2−CTCフラグメントと、一般的な合成手順を使用してカップリングさせた。
【0214】
以下の表は、本実施例の手順A〜Eの詳細をまとめたものである:
【0215】
【表28】

【0216】
F.フラグメントの切断:
本実施例で合成された任意のペプチドフラグメントに関してフラグメントの切断を達成するために、構築されたペプチド−樹脂を10倍容のDCM中で30分膨潤させ、−10℃に冷却する。DCMを排液し、1%TFA/DCM溶液(10倍容)を加え、30分間撹拌する。ピリジン(TFAに対して2〜3当量)の入ったフラスコに切断溶液を収集する。25℃まで加温する間に、樹脂を1%TFA/DCM(10倍容)で5分処理し、次にピリジン(TFAの2〜3当量)を加える。もう5分間撹拌した後に、溶液を収集する。次に、樹脂を10倍容のDCMで4回洗浄する(各回5分)。全ての洗液および切断液を合わせ、水と混合する(水/DCM比=体積比約1/4)。結果として生じる混合液を減圧蒸留し、DCMを除去する(350torr/28℃)。DCMが除去されると、ペプチドフラグメントは水から析出(crash out)するので、濾過する。ペプチドフラグメントを水で洗浄し、30℃で真空下で乾燥させる。
【0217】
実施例8 液合成:Argの付加
(Aib35)GLP−1(23−35)フラグメント(表Aによる側鎖保護を有し、N−末端にFmoc保護を有する)(9.11g、3.94mmol)をDMSO(90mL)に溶解させた。この溶液に、10mLのDMSOと一緒にHOBt(2.42g、4当量)、HBTU(5.98g、4当量)、DIEA(3.44mL、5当量)、およびH−Arg(2HCl)−NH(3.88g、4当量)をチャージした。反応物を撹拌し、HPLCによりモニターした。4時間後に、反応は完了していなかったため、2mLのDIEAを加えた。反応を一晩行った。次に、ピペリジン(5mL)を反応混合物に加えた。Fmocの除去を2時間で行った。反応混合物を氷水(800mL)でクエンチし、40分撹拌した。形成した白色固体を濾過し、水(400mL)で洗浄し、一晩乾燥させ、フラグメント(Aib35)GLP−1(23−36)を得た(9.65g、重量収率109%)。
【0218】
実施例9
表Aに記載の側鎖保護基およびN−末端のFmoc保護を有するフラグメント(Aib8、X17-18)GLP−1(7−22)(7.73g、2.88mmol)をDMSO(65mL)に溶解させた。
【0219】
この溶液に、20mLのDMSOと一緒にHOBt(0.73g、4.77mmol)、HBTU(1.46g、3.85mmol)、DIEA(0.71mL、7.40mmol)、およびフラグメント(Aib35)GLP−1(23−36)(8.5g、3.45mmol)をチャージした。反応物を撹拌し、HPLCによりモニターした。3時間後に、カップリングは完了した。次に、ピペリジン(5mL)を反応混合物に加えた。Fmocの除去を2時間で行った。反応混合物を氷水(800mL)でクエンチし、30分撹拌した。形成した白色固体を濾過し、水(400mL)で洗浄し、一晩乾燥させ、保護されたペプチド(Aib8X17-18,Aib35)GLP−1(7−36)を得た。
【0220】
実施例10 全体的な脱保護
実施例9に準じて調製したペプチド(16.24g)をTFA/DTT/水溶液(100mL/5g/2.0mL)で2時間処理し、結果として生じる溶液を氷浴中のMTBE(800mL)に注いだ。30分撹拌後に、形成した白色固体を濾過し、MTBE(400mL)で洗浄し、乾燥させ、粗ペプチド産物を提供した(16.0g、重量収率138%)。結果として生じる脱保護されたペプチドを、これより「粗」ペプチドと呼ぶ。
【0221】
実施例11 精製
粗ペプチドの精製をKromasil(登録商標)C4(10ミクロン、2.0×25cm)カラムで行い、純度98+%および収率約60%(含有物比)で精製ペプチド回収した。精製は、pH2で第1通過のクロマトグラフィー精製と、それに続くpH9での第2通過を伴った。この精製の後に、精製されたペプチドは、多様な方法でさらに取扱いまたは加工することができる。例として、第2通過からの結果として生じる精製プールを凍結乾燥するか、または濃縮カラムを通過させ、沈殿により単離することができる。両方の単離により、所望のペプチド(アセテート)が回収されよう。
【0222】
二つの通過プロセスの概要として、粗ペプチドを5mg/ml(含有物に基づく)で10%アセトニトリル/水(0.2M酢酸)混合物に溶解させる。1000mgのインジェクション(含有物に基づく)をアセトニトリル/THF/水/TFA勾配を使用して繰り返し行い、純度約95%の画分をプールする。純度約70%の「リサイクル画分」もまたプールし、これは収率約34%を表す。同じアセトニトリル/THF/水/TFA勾配を使用して、リサイクル画分を再インジェクトし、純度約85%のプールを主プールと混合する。第1通過のクロマトグラフィー精製についての含有物比の収率は70%である。
【0223】
次に、同じKromasil(登録商標)C4カラムを用いるが、アセトニトリル/THF/水/酢酸アンモニウム(pH8.8)勾配を使用した第2通過で、合わせた第1通過のプール(pH2)をさらに精製した。画分を合わせ、第2通過の回収率約85%で98+%の純度を得た。両精製段階についての全体収率は60%(含有物比)となろう。
【0224】
次に、同じKromasil(登録商標)C4カラムを使用するが、メタノール/水/酢酸アンモニウムのステップ勾配を使用して、合わせた第2通過のプール(pH8.8)を濃縮した。画分を合わせ、単離の準備ができた状態にした。
【0225】
A.粗ペプチド溶液の調製:
粗ペプチド8gを0.2N酢酸/アセトニトリルの溶液(90%:10%)500mlに溶解させた。溶液を0.45ミクロンデュラポア(Durapore)フィルター(直径47mm)(Millipore)で1回、次にSupor EKVディスクスタックミクロンフィルター(直径0.65/0.2mm)(Pall Filters)で濾過した。粗インジェクション溶液をHPLCにより分析し、1mlあたり含有されるペプチド5.02mg(wt%)を含有することが見出された(含有されるペプチドは500ml×5.02mg/ml=2512mg)。
【0226】
B.クロマトグラフィー pH約2で第1通過
以下の条件で粗溶液を用いてインジェクションを4回繰り返して行った:
カラム:Kromasil製、C4(10ミクロン)充填、寸法2.0×25cm
検出器:280nmに設定した紫外検出器(バンド幅8nm、350/20nm参照)
カラム温度:室温
流速:13.0ml/分(後方圧約50bar)
移動相:
A=0.1%トリフルオロ酢酸/15%アセトニトリル/85%水混液
B=0.1%トリフルオロ酢酸/15%テトラヒドロフラン/70%アセトニトリル/15%水混液
勾配:勾配は、移動相A100%から開始し、0.1分維持する。次に、試料をポンプCによりカラムにマニュアルでロードする(ポンプCの説明については下記参照)。試料のロード後に、100%Aから83%Aへの直線勾配を1分運転する。次に、その後11分、移動相を83%Aに保つ。次に、第2の直線勾配を73%Aまで10分かけて運転する。次に、その後15分、移動相を73%Aに保つ。次に、運転を完了し、続いて100%Bのフラッシュを10分、続いて100%Aでカラムの再平衡化を20分行う。
【0227】
別のアイソクラチックHP1100ポンプ(ポンプC)を使用して9.0ml/分で試料をロードした。最初83%Aで11分間等濃度で維持し、続いて73%Aまで直線勾配をその後10分かけることにより、初期に溶出した不純物を主ピークと分離する。次に、73%Aを15分維持する間に、主ペプチドピークが溶出する。この73%Aで15分維持する間に、画分を収集する。
【0228】
C.pH約2の第1回通過のリサイクル:
合わせたプールに添加することができる純度を下回る純度をもつと判定された画分からリサイクルプールを得る。これらの画分を別々に合わせ、等容の水で希釈した。リサイクルのインジェクションを、この別々に合わせたプール由来のカラムに戻した。同じクロマトグラフィー条件を使用し、許容される純度の画分を合わせ、等容の水で希釈し、第1回通過の合わせたプールに加える。
【0229】
ペプチドピーク近くに溶出する不純物が増加することが原因で、リサイクルインジェクションのためのロードは、粗インジェクションよりも有意に少ない。平均して2回の粗インジェクション毎に1回のリサイクルインジェクションがある。
【0230】
D.pH8.8の第2回通過の分取クロマトグラフィー
最後に合わせた第1回通過プールをpH8.8で再クロマトグラフィーすることによりさらに精製した。第2回通過についてpH8.8を使用すると、不純物の溶出順序が有意に変化し、高い回収率でよりよい浄化が可能になる。この第2のクロマトグラフィー段階に使用する条件は次の通りであった:
カラム:Kromasil製、C4(10ミクロン)充填、寸法2.0×25cm
検出器:280nmに設定した紫外線検出器(バンド幅8nm、参照350/20nm)
カラム温度:室温
流速:13.0ml/分(後方圧約50bar)
移動相:
A=15%アセトニトリル/85%水(酢酸アンモニウム2g/lおよび濃水酸化アンモニウム1ml/lを含有する)の混液
B=15%テトラヒドロフラン/60%アセトニトリル/25%水(酢酸アンモニウム2g/lおよび濃水酸化アンモニウム1ml/lを含有する)の混液
勾配:勾配は、移動相A100%から開始し、0.1分維持する。次に、試料をポンプCによりカラムにマニュアルでロードする。試料のロード後に、100%Aから67%Aへの直線勾配を2分かけて運転する。次に、その後33分、移動相を67%Aに保つ。次に、運転を完了し、続いて100%Bのフラッシュを5分、続いて100%Aでカラムの再平衡化を15分行う。
【0231】
別のアイソクラチックHP1100ポンプを9.0ml/分(ポンプC)で使用して試料をロードした。30分のローディング段階の後で、100%Aから67%Aへの短い勾配を30.2〜32分かけた。67%Aに33分保つ間に、主ペプチドピークが溶出した。画分の収集は、カラムのロード後20分から開始して、主ピークが溶出を完了した後に終了する。画分を約15分収集する。許容される画分をプールし、等容の水で希釈する。この精製段階でリサイクルが可能であるが、廃棄する画分は全般にリサイクルインジェクションを正当化するに足るペプチドを含有しない。多数回のインジェクション行い、廃棄する画分をリサイクルのためにプールするならば、このリサイクルは実行可能になりうる。
【0232】
E.濃縮:
合わせたプールの第2回通過を最終的に合わせたものを同じカラムにロードし、異なる移動相を使用して迅速に溶出させ、単離用にペプチドを濃縮する。この段階に使用する条件は以下の通りであった:
カラム:Kromasil製、C4(10ミクロン)充填、寸法2.0×25cm
検出器:280nmに設定した紫外線検出器(バンド幅8nm、参照350/20nm)
カラム温度:室温
流速:13.0ml/分(後方圧約50bar)
移動相:
A=10%メタノール/90%20mM酢酸アンモニウムの混液
B=90%メタノール/10%20mM酢酸アンモニウムの混液
勾配:勾配は、移動相A100%から開始し、0.1分維持する。次に、試料をポンプCによりカラムにマニュアルでロードする。試料のロード後に、移動相を100%Aに5分保つ。次に、移動相を直ちに次の20分の100%Bに切り替える。次に、運転を完了させ、続いて100%Aで15分間カラムの再平衡化を行う。
【0233】
別のアイソクラチックHP1100ポンプを9.0ml/分(ポンプC)で使用して試料をロードした。45分のローディング段階の後で、100%Aを5分間短時間維持し、次に100%Bへの段階勾配を20分間運転して、ペプチドを溶出させた。100%Bへの段階勾配の2分後に主ピークが溶出を始めた。その後12分の画分はペプチドを含有し、単離のためにプールした。
【0234】
実施例12 凍結乾燥
1リットル容の広口FLPEボトルを黒く塗った。このボトルに、水性アセトニトリル/酢酸アンモニウム中の(Aib8X17-18,Aib35)GLP−1(7−36)アセテートの精製プール(210ml)を加えた。容器を脱イオン水3×5mLですすぎ、すすぎ液をプールに加えた。この溶液を混ぜて均一にし、次にキャップをして、液体窒素中でシェル凍結(shell frozen)した。凍結したボトルのキャップを外し、口を二重のキムワイプで覆い、輪ゴムで固定した。ボトルを凍結乾燥器のヴァキュテーナー(vacutainer)に置き、凍結乾燥させた。コンデンサーの温度は−89℃、圧は19ミクロンであった。
【0235】
24時間後にヴァキュテーナーに通気し、進行をチェックしたが、まだ氷の音が聞こえた。凍結乾燥を再び開始した。
【0236】
さらに18時間後にボトルを凍結乾燥器から取り出し、重量をチェックした。重量は不安定で、産物の吸湿性が原因で急速に増加した。固まった産物を黒く塗ったシンチレーションバイアルに速やかに移し、秤量し、ペプチド0.822gを得た。
【0237】
実施例13:精製ペプチドの沈殿
フラスコ中で、純粋な(Aib8X17-18,Aib35)GLP−1(7−36)アセテート100.5mgをMeOH/水(9:1容積比)中の20mM酢酸アンモニウム2mLに含む溶液を、MeOH/水(9:1容積比)中の20mM酢酸アンモニウム1mLで希釈した。撹拌しながら、イソプロパノール(IPA)20mLを20℃〜25℃でフラスコにゆっくりと流加した。15mLのIPAを添加後にポット混合物は濁った。撹拌を20℃〜25℃で一晩続けた。沈殿産物を濾過し、5mLのIPAで洗浄し、次に一定重量になるまで真空下で25℃で乾燥させた。ペプチド90.9mgを得た(回収率90.42%)。
【0238】
実施例14:精製ペプチドの単離
フラスコ中で、純粋な(Aib8X17-18,Aib35)GLP−1(7−36)アセテート497.7mgをMeOH/水(9:1容積比)中の20mM酢酸アンモニウム10mLに含む溶液を、MeOH/水(9:1容積比)中の20mM酢酸アンモニウム6mLで希釈した。撹拌しながら、イソプロパノール(IPA)40mLを20℃〜25℃で35分かけてフラスコにゆっくりと流加した。2mLのIPAを添加後にポット混合物は濁った。撹拌を20℃〜25℃で1時間続けた。沈殿産物を濾過し、5mLのIPAで洗浄し、次に一定重量になるまで真空下で25℃で乾燥させた。ペプチド458.4mgを得た(回収率92%)。
【0239】
実施例15:精製ペプチドの単離
フラスコ中、純粋な(Aib8X17-18,Aib35)GLP−1(7−36)アセテート約1000mgを、MeOH/水(9:1容積比)中の20mM酢酸アンモニウム150mLに含む撹拌溶液に、900mLのIPAを濃縮カラムを通して20℃〜25℃でゆっくりと加えた。この添加は45分かけて完了した。260mLのIPAを添加後にポット混合物は濁った。撹拌を20℃〜25℃で40分続けた。沈殿産物を濾過し、5mLのIPAで洗浄し、次に一定重量になるまで真空下で20℃〜25℃で乾燥させた。ペプチド746mgを得た(回収率74.6%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階のうち一つまたは複数を含む、インスリン分泌性ペプチドを作製する方法:
h)アミノ酸配列HX8EX10(配列番号6)(配列中、X8およびX10はそれぞれアキラルなアミノ酸残基であり、HおよびEはそれぞれ側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第1のペプチドフラグメントを提供する段階;
i)アミノ酸配列TFTSDVX17-18YLEG(配列番号8)(配列中、記号X17-18で表す残基はシュードプロリンのジペプチド残基であり、該配列のアミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第2のペプチドフラグメントを提供する段階;
j)該第1のフラグメントを該第2のフラグメントとカップリングさせて、アミノ酸配列HX8EX10TFTSDVX17-18YLEG(配列番号11)(該配列のアミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第3のペプチドフラグメントを提供する段階;
k)アミノ酸配列QAAKEFIAWLVKX35(配列番号9)(配列中、X35はアキラルなアミノ酸残基であり、該配列のアミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第4のペプチドフラグメントを提供する段階;
l)アミノ酸配列QAAKEFIAWLVKX35R(配列番号12)(該配列の残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第5のペプチドフラグメントを提供するために、該第4のペプチドフラグメントをアルギニンとカップリングさせる段階;および
m)アミノ酸配列HX8EX10TFTSDVX17-18YLEGQAAKEFIAWLVKX35R(配列番号13)(該配列の残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含むインスリン分泌性ペプチドを提供するために、該第5のフラグメントを該第3のフラグメントとカップリングさせる段階。
【請求項2】
a)〜f)の段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
以下の段階をさらに含む、請求項1または2記載の方法:
n)アミノ酸配列HX8EX10TFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKX35R(配列番号5)(配列中、位置8、10、および35の記号Xは、それぞれ独立してアキラルな、立体障害を受けていてもよいアミノ酸残基を表す)を含むインスリン分泌性ペプチドおよびその対応物を提供するために、側鎖保護基を除去する段階。
【請求項4】
以下の段階を含む、請求項1記載のインスリン分泌性ペプチドを作製する方法:
a)アミノ酸配列HX8EX10(配列番号6)(配列中、X8はAibに対応するアミノ酸残基であり、X10はグリシンに対応するアミノ酸残基であり、HおよびEはそれぞれ側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第1のペプチドフラグメントを提供する段階;
b)アミノ酸配列TFTSDVX17-18YLEG(配列番号8)(配列中、記号X17-18で表す残基はシュードプロリンのジペプチド残基であり、該配列のアミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第2のペプチドフラグメントを提供する段階;
c)該第1のフラグメントを該第2のフラグメントとカップリングさせて、アミノ酸配列HX8EX10TFTSDVX17-18YLEG(配列番号11)(該配列のアミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第3のペプチドフラグメントを提供する段階;
d)アミノ酸配列QAAKEFIAWLVKX35(配列番号9)(配列中、X35はAibに対応するアミノ酸残基であり、該配列のアミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第4のペプチドフラグメントを提供する段階;
e)アミノ酸配列QAAKEFIAWLVKX35R(配列番号12)(該配列の残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第5のペプチドフラグメントを提供するために、該第4のペプチドフラグメントをアルギニンとカップリングさせる段階;および
f)式HX8EX10TFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKX35R(配列番号5)(X8およびX35はAibに対応するアミノ酸残基であり、X10はグリシンに対応するアミノ酸残基である)のインスリン分泌性ペプチドおよびその対応物を提供するために、該第5のフラグメントを該第3のフラグメントとカップリングさせ、続いて該側鎖保護基を除去する段階。
【請求項5】
以下の段階を含む、請求項1記載のインスリン分泌性ペプチドを作製する方法:
a)アミノ酸配列HX8EX10(配列番号6)を含むペプチドフラグメントを調製する段階(配列中、X8およびX10はそれぞれアキラルなアミノ酸残基であるか、または該フラグメントは該X8およびX10残基を含むその対応物であり、H、E、X8およびX10はそれぞれ側鎖保護を含んでいてもよい);および
該ペプチドフラグメントをインスリン分泌性ペプチドに組み込む段階。
【請求項6】
8がメチルアラニンに対応するアミノ酸残基である、請求項1または5記載の方法。
【請求項7】
10がグリシンに対応するアミノ酸残基である、請求項1または5記載の方法。
【請求項8】
アミノ酸配列HX8EX10(配列番号6)(配列中、X8およびX10はそれぞれアキラルなアミノ酸残基であり、H、E、X8およびX10はそれぞれ側鎖保護を含んでいてもよい)を有するペプチドフラグメント。
【請求項9】
8がAibに対応するアミノ酸残基であり、X10がグリシンに対応するアミノ酸残基である、請求項8記載のペプチドフラグメント。
【請求項10】
インスリン分泌性ペプチドが、アミノ酸配列(配列番号5)HX8EX10TFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKX35R(配列中、位置8、10、および35の記号Xは、それぞれ独立してアキラルな、立体障害を受けていてもよいアミノ酸残基を表し、アミノ酸残基の一つまたは複数は側鎖保護を含んでいてもよい)およびその対応物を含む、請求項5記載の方法。
【請求項11】
8およびX35の少なくとも一つがAib残基である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
10がグリシン残基である、請求項10記載の方法。
【請求項13】
以下の段階を含む、請求項1記載のインスリン分泌性ペプチドを作製する方法:
b)アミノ酸配列TFTSDVX17-18YLEG(配列番号8)(配列中、記号X17-18で表す残基はシュードプロリンのジペプチド残基である)を含むペプチドフラグメントを調製する段階;および
該ペプチドフラグメントをインスリン分泌性ペプチドに組み込む段階。
【請求項14】
インスリン分泌性ペプチドが、アミノ酸配列HX8EX10TFTSDVX17-18YLEGQAAKEFIAWLVKX35R(配列番号13)(配列中、記号X8、X10、およびX35は、それぞれ独立してアキラルなアミノ酸残基を表し、X17-18はシュードプロリン残基であり、アミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)およびその対応物を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
17-18が、式
【化5】


(式中、Φは、側鎖保護を含んでいてもよい任意のアミノ酸残基を表し、R1およびR2はそれぞれ独立して適切な二価連結部分である)を有する、請求項1または13記載の方法。
【請求項16】
Φが、側鎖保護を含んでいてもよいSer残基を表す、請求項15記載の方法。
【請求項17】
2が−CH2−である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
1が、
【化6】


(式中、R3およびR4は、それぞれ独立してHもしくは低級アルキルより選択される一価部分であるか、またはR3およびR4は、環構造の共同メンバーであってもよい)である、請求項15記載の方法。
【請求項19】
3およびR4がそれぞれメチルである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
アミノ酸配列TFTSDVX17-18YLEG(配列番号8)(配列中、記号X17-18で表す残基はシュードプロリンのジペプチド残基であり、アミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含むペプチドまたはその対応物。
【請求項21】
以下の段階を含む、請求項1記載のインスリン分泌性ペプチドを作製する方法:
c)アミノ酸配列HX8EX10(配列番号6)(配列中、X8およびX10はそれぞれアキラルなアミノ酸残基であり、HおよびEはそれぞれ側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第1のペプチドフラグメントを、アミノ酸配列TFTSDVX17-18YLEG(配列番号8)(配列中、記号X17-18で表す残基はシュードプロリンのジペプチド残基であり、該配列のアミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第2のペプチドフラグメントとカップリングさせて、アミノ酸配列HX8EX10TFTSDVX17-18YLEG(配列番号11)(該配列のアミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含む第3のペプチドフラグメントを提供する段階;および
該ペプチドフラグメントをインスリン分泌性ペプチドに組み込む段階。
【請求項22】
以下の段階を含む、請求項1記載のインスリン分泌性ペプチドを作製する方法:
d)アミノ酸配列QAAKEFIAWLVKX35(配列番号9)(配列中、X35はアキラルアミノ酸残基であり、該配列の残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含むペプチドフラグメントまたはその対応物を調製する段階;および
該ペプチドフラグメントをインスリン分泌性ペプチドに組み込む段階。
【請求項23】
35がメチルアラニンアミノ酸残基である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
以下の段階をさらに含む、請求項22記載の方法:
e)アミノ酸配列QAAKEFIAWLVKX35R(配列番号12)(該配列の残基は側鎖保護を含んでいてもよい)を含むペプチドフラグメントを提供するために、アミノ酸配列QAAKEFIAWLVKX35(配列番号9)を含むペプチドフラグメントまたはその対応物をアルギニンとカップリングさせる段階。
【請求項25】
Rが側鎖保護を含まない、請求項24記載の方法。
【請求項26】
インスリン分泌性ペプチドが、アミノ酸配列HX8EX10TFTSDVX17-18YLEGQAAKEFIAWLVKX35R(配列番号13)(配列中、記号X8、X10、およびX35は、それぞれ独立してアキラルアミノ酸残基を表し、該配列のアミノ酸残基は側鎖保護を含んでいてもよく、X17-18はシュードプロリンの残基である)およびその対応物を含む、請求項22記載の方法。
【請求項27】
インスリン分泌性ペプチドが、アミノ酸配列(配列番号5)
【表29】


(配列中、位置8、10、および35の記号Xは、それぞれ独立してアキラルな、立体障害を受けていてもよいアミノ酸残基を表し、アミノ酸残基の一つまたは複数は側鎖保護を含んでいてもよい)およびその対応物を含む、請求項22記載の方法。
【請求項28】
インスリン分泌性ペプチドが、アミノ酸配列(配列番号4)
【表30】


およびその対応物を有する、請求項1〜7、13または21〜25記載の方法。
【請求項29】
インスリン分泌性ペプチドが、アミノ酸配列(配列番号4)
【表31】


およびC末端がアミド化されたその対応物を有する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記請求項記載の新規な方法およびペプチド。

【図1】
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【公表番号】特表2009−541257(P2009−541257A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515856(P2009−515856)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056052
【国際公開番号】WO2007/147816
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】