インスリン抵抗性およびβ−細胞機能障害に関連する疾患を治療するためのリメポリドを含む医薬組成物
本発明は、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、糖尿病性腎症および/または糖尿病性神経障害の予防および治療のための、有効量の2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンまたはその誘導体を活性成分として含む医薬組成物に関する。本発明の別の目的は、インスリン感受性の増強およびβ−細胞代償の保持または増加のための、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンまたはその誘導体の使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、糖尿病性腎症および/または糖尿病性神経障害の予防および治療のための、有効量の2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンまたはその誘導体を活性成分として含む医薬組成物に関する。本発明の別の目的は、インスリン感受性の増強およびβ−細胞代償の保持または増加のための、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンまたはその誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満、インスリン抵抗性(IR)および脂質代謝異常(dyslipidaemia)などの代謝疾患は、病的状態および死亡の主要な原因として世界的に浮上している。特にここ数十年間で、IRは、一般の人々に非常によく見られる状態になり、健康保険に甚大な影響を及ぼす結果となっている。IRは、インスリンの正常な作用に対する身体の減少した不適切な反応と定義される。IRは、心血管疾患および2型糖尿病(T2DM)の発症のための重要な危険因子である。加えて、IRは、種々の心血管系危険因子(肥満、脂質代謝異常、高血圧および血液凝固障害)に関連しており、これは、まとめて示される場合、メタボリックシンドロームまたはシンドロームXと呼ばれている。いまでは、IRがメタボリックシンドロームの基礎となっている一体化した原因因子であり得るという考慮すべきエビデンスが存在する(Turner & Hellerstein (2005) Curr Opin Drug Discovery & Develop 8(1):115−126)。
【0003】
組織のインスリン反応性を直接的に改善することを目指している現行の治療的介入は、チアゾリジンジオン(TZD)を適用する。しかし、TZDは全身のインスリン感受性を改善することが示されているが、最近では心不全および心血管系の合併症の危険性を増加させることが知られるようになってきた。したがって、代謝障害疾患の特徴の1つがIRであり、その疾患の流行の拡大と闘うには、IRの代替治療が必要である。
【0004】
IRに加えて、膵β−細胞機能障害は、前糖尿病状態から糖尿病状態への進行に、極めて重要な役割を果たしている。β−細胞再生を刺激し、β−細胞塊を増大させ得るエキセンジン−4(Xu et al. Diabetes(1999)48(12):2270−2276;DeFronzo et al.(2005) Diabetes Care 28(5):1092−1100)またはシタグリプチン類似体(Mu et al.(2006) Diabetes55(6):1695−1704)などの薬剤の最近の開発は、T2DMにおける治療上の標的として、β−細胞塊にさらなる関心を集めている。
【0005】
したがって、本発明の基礎を形成している技術的な問題は、インスリン抵抗性および/またはβ−細胞機能障害に関連する疾患の予防または治療において、効果的に適用することができる医薬組成物、特に、治療効果を高め、副作用を最小限にするような組成物を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Xu et al. Diabetes(1999)48(12):2270−2276
【非特許文献2】DeFronzo et al.(2005) Diabetes Care 28(5):1092−1100
【非特許文献3】Mu et al.(2006) Diabetes55(6):1695−1704
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、インスリン抵抗性および/またはβ−細胞機能障害に関連する疾患の予防上もしくは治療上の処置および/またはモニタリングのための、有効量の2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよび/またはその生理学的に許容される塩および/または溶媒和物を活性成分として含む医薬組成物を提供することによって、この問題を解決する。
【0008】
驚いたことに、T2DMおよびその関連疾患などの医学的適応症に取り組むために、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよび前記誘導体を、医薬組成物中に活性成分として適用することができることが発明者らによって実証された。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】処置中の8〜12週齢のZF(fa/fa)ラットの体重を示す図である。
【図2】処置中の8〜12週齢のZF(fa/fa)ラットの朝のランダム血糖値を示す図である。
【図3】4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける空腹時血中グルコースレベルを示す図である。
【図4】4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける空腹時インスリンレベルを示す図である。
【図5】4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける経口グルコース負荷に対するインスリン反応を示す図である。
【図6】4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける経口グルコース負荷に対するグルコース反応を示す図である。
【図7】4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける重水素化グルコース処理試験によって定量化された膵臓の代償を示す図である。
【図8】4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける重水素化グルコース処理試験によって定量化されたインスリン感受性を示す図である。
【図9】薬物処置期間中のZucker fa/faラットおよび痩せた対照ラットの体重を示す図である。
【図10】週1回、およそ午前9時に決定されたランダム血糖値を示す図である。
【図11】4週間の薬物処置中における、グルコメーターの表示値によって決定された4時間空腹時血中グルコース濃度を示す図である。
【図12】1週間おきに決定した、4時間絶食後のインスリン濃度を示す図である。
【図13】前処置に関し、薬物処置開始前のGDT中、グルコースチャレンジに反応した血中グルコース濃度およびインスリン濃度を示す図である。
【図14】2週間の薬物処置に関し、薬物処置開始後2週目のGDT中、グルコースチャレンジに反応した血中グルコース濃度およびインスリン濃度を示す図である。
【図15】4週間の薬物処置に関し、薬物処置開始後4週目に行った3回目のGDT中、グルコースチャレンジに反応した血中グルコース濃度およびインスリン濃度を示す図である。
【図16】前処置、処置開始後2週間および処置開始後4週間にグルコースチャレンジに反応したインスリン感受性および膵臓の代償を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本出願を申請する前には、スルホニルベンゾイル−グアニジンが細胞のNa+/H+交互輸送機構の阻害剤であること、すなわち、それらが細胞のNa+/H+交換機構を阻害し、それによって優れた抗不整脈薬であり、特に、酸素欠乏の結果として発生する不整脈の治療に適していることは、EP0758644B1からのみ知られている。これらの物質は、優れた心臓保護作用を発揮し、それ故に急性心筋梗塞の治療、梗塞予防、梗塞後の治療、慢性心機能不全および狭心症の治療に適している。さらに、それらはすべての病的な低酸素性および虚血性の障害に対抗し、それによって1次的または2次的に引き起こされる疾病を治療することができる。病的な低酸素性または虚血性の局面におけるこれらの物質の保護作用のおかげで、外科的介入で、供給が一時的に減じられた状態の臓器を保護するために、臓器移植で、取り除かれた臓器を保護するために、血管形成術の血管介入または心臓介入において、神経系の虚血において、ショック状態の治療において、および本態性筋緊張亢進を予防するためにさらに適用される。加えて、本化合物は、例えば赤血球、血小板または白血球におけるNa+/H+交互輸送機構の活性の増加に伴う疾病を認識するための診断上の使用に適している。先行技術は、動脈硬化、糖尿病および糖尿病の後期合併症、特に肺、肝臓および腎臓の腫瘍疾病、線維性疾病ならびに臓器肥大および過形成などの細胞増殖によって引き起こされる疾病において、これらの物質を治療薬として用いることをさらに示唆している。
【0011】
しかし今や、本発明は、全身のIRが増加する一方で、β−細胞代償が同時に保持されることを明らかにする。これらの現象は、化合物2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンの影響力によって刺激され、T2DMおよびメタボリックシンドロームなどのような特定の臨床像のための本発明の療法の基礎を形成している。
【0012】
前述の化合物は、優れた忍容性とともに、非常に価値がある薬理学的特性を発揮する。体重増加、空腹時血中グルコースレベルまたはランダム血糖値(random blood glucose level)は、臨床試験において検討されたいずれの用量でも変化しない。これとは対照的に、空腹時インスリンは、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンによる処置前と比較して減少する。インスリン濃度曲線下面積(AUC)値も、経口グルコース負荷後に減少するが、グルコース負荷に対して反応するAUCは、処置前および処置後で類似した状態のままである。しかし、本発明の化合物は、β−細胞反応を維持するかまたは増加させもするので、より低いインスリンレベルが、β−細胞機能の年齢に関連した低下から生じないということは、予期せぬ発見である。それ故に、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンは、末梢のインスリン感受性を著しく増強する。
【0013】
本発明の化合物の前記生物活性は、当業者に知られている技術によって決定され得る。適した実験動物は、例えば、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、類人猿またはブタである。IRのインビボ評価のゴールドスタンダードは、オイグリセミック−高インスリン血症グルコースクランプ(euglycemic-hyperinsulinemic glucose clamp)である。他のツールは、定常状態血漿グルコース(steady-state plasma glucose)(SSPG)試験または頻回採血静脈内耐糖能試験(frequently sampled intravenous glucose tolerance test)である。インビボ膵β−細胞増殖を測定するのに利用できる技術には、[3H]チミジン(3HdT)手法または5−ブロモデオキシウリジン(BrdU)手法が含まれる。インスリン感受性およびβ−細胞力学の変化を決定するのに適した技術は、感度が良く、再現可能であり、操作上、簡単であり比較的高スループットでなければならない。
【0014】
前述のように、インスリン抵抗性は、2型糖尿病および心血管疾患の発症のための重要な危険因子である。2型糖尿病の病因は、インスリン抵抗性のみならず、進行性の膵機能不全も含む。信頼性があり、容易に行われる定量試験が開発されている。この重水素化グルコース処理試験(deuterated-glucose disposal test)(2H−GDT)を用いて、2型糖尿病の両方の様相を定量化することができる。
【0015】
骨格筋などの末梢組織によるグルコース負荷の解糖処理は、輸送、リン酸化および解糖経路に属する酵素の通過を含む、インスリン依存性の多くのステップによって決まる。加えて、グルコース有効性、グルコース自体が肝臓のグルコース産生を抑制し、組織へのグルコースの取り込みを加速させる両方の作用も、経口グルコース負荷の処理に寄与する。2H−GDTは、グルコースの取り込み、リン酸化および解糖代謝の比率を測定し、ひいてはインスリン抵抗性(IR)および膵β−細胞代償の適切さの両方を定量化するために使用することができる。2H−GDTは、経口重水素化グルコースチャレンジ、続いて重水(2H2O)生成量および血漿中インスリン濃度の測定からなる。グルコースの解糖代謝中にH原子が組織液中に放出されるので、2H2O生成量の測定値が、全身のグルコースの解糖処理率を表す。周囲のインスリン濃度について補正された2H2O生成量(すなわちインスリンの単位当たりの解糖代謝)は、組織のインスリン感受性を明らかにする。血糖可動域について補正されると(グルコース有効性の寄与を説明するために)、膵臓の代償は、解糖代謝(絶対2H2O生成量)がインスリン感受性に適合する程度を明らかにする。インスリン抵抗性の状態では、膵臓の代償は不十分であり、耐糖能は異常である。
【0016】
詳細には、全身の解糖の安定な同位体質量分析評価を含む、最近開発された重水素化グルコース処理試験(2H−DGT)は、血漿中インスリン×グルコースの単位当たりの2H2O生成量を測定することによって、IRの評価を可能にし、これは、動物または個人の重水素化[6,6'−2H2]グルコースでの(経口)負荷からの重水素(2H)の放出率および決定された血漿中インスリン濃度に基づいている(Turner & Hellerstein (2005) Curr Opin Drug Discovery & Develop 8(1):115−126)。加えて、IRに対する膵β−細胞代償の程度は、[6,6'−2H2]グルコース負荷後に達成される絶対2H2O生成量を測定することによって評価することができる。膵臓の代償の適切さは、周囲のインスリンの単位当たりの解糖処理(インスリン感受性を反映している)と達成されるグルコース利用の絶対率(IRに対する膵臓の代償を反映している)とを識別することによって評価することができる。
【0017】
2H−GDTは、以下の原則を厳守してデザインされる:i)周囲のグルコース濃度およびインスリン濃度は、生理学的に関係のある代謝状態を反映すべきであり、ii)試験は、組織による、インスリンが介在したグルコース利用を測定し、確立されたモデルにおいてIRを明らかにすべきであり、iii)方法は、心血管系の転帰およびT2DMの危険性に関して予測的であることが証明されているIRについての他の試験のように、比較可能な代謝状態を反映すべきである。基礎グルコース利用状態と最大グルコース利用状態との間の「ダイナミックレンジ」での血清中インスリン濃度は、これらの基準を満たす(Beysen et al.(2007) Diab Care 30:1143−1149)。さらに、定量的なやり方で動物またはヒトにおける全身の解糖を測定する2H−GDTは、オイグリセミック−高インスリン血症グルコースクランプ試験またはSSPG試験と強く相関する。本発明の範囲において、特に比較的高スループットで、一般的に使用される多くの前臨床動物モデルを対象に、薬剤がインスリン感受性およびインスリン代償反応に及ぼすインビボ効果を決定するためには、前記動的アッセイの利用は、結果として好ましい。加えて、2H−GDTは、簡単さおよびスループットの類似の程度を有する臨床設定に完全に変換される。
【0018】
本発明による医薬組成物の活性成分は、有効量の化合物2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンまたはその薬学的に使用される誘導体である。そのような誘導体は、例として、適合する化合物、塩またはプロドラッグの溶媒和物であり得る。好ましくは、溶媒和物および/または生理学的に許容される塩である。
【0019】
本発明の意味における「医薬組成物」は、医学分野における任意の薬剤であって、1種または複数の物質またはその製剤を含み、インスリン抵抗性および/またはβ−細胞機能障害に関連する疾患に罹患している患者の全体的な状態のまたは生体の特定領域の状態の病原性変異が少なくとも一時的に安定することができるように、予防、治療、経過観察またはアフターケアに使用することができる薬剤である。
【0020】
用語「β−細胞機能障害」は、生存力および/または代謝活性が減少し、その結果β−細胞代償およびインスリンレベルの減少につながる、β−細胞の増殖および/またはそれらの細胞代謝における任意の機能不全を指す。β−細胞機能のそのような損失は、例えば年齢に関連した劣化によって引き起こされるかまたは2型糖尿病へ進行して発症する可能性があるが、他のいずれの原因も除外されないものとする。本発明の範囲において、β−細胞機能障害とインスリン抵抗性との明らかな関係が好ましいため、本発明の医薬組成物は、特に、β−細胞機能障害およびインスリン抵抗性の両方に関連する疾患を標的とする。
【0021】
用語「有効量」、「有効用量」または「用量」は、本明細書において、相互に交換可能に使用され、疾患または病的状態に及ぼす予防的または治療的に関係のある効果を有する医薬化合物の量を表す。予防的効果は疾患の発生を防ぐ。治療的に関係のある効果は、疾患の1つまたは複数の症状をある程度緩和するか、あるいは疾患もしくは病的状態に関連するかまたはその原因となる1つまたは複数の生理学的または生化学的パラメータを一部または完全に正常に戻す。本発明による医薬組成物を投与するためのそれぞれの用量または投与量範囲は、前述の疾患、特にT2DMおよびいずれ出現する前記他の疾患の症状を軽減する所望の予防的効果または治療的効果を達成するのに十分高い。任意の特定のヒトへの投与についての具体的な用量レベル、頻度および期間は、用いられる具体的な化合物の活性、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間および投与経路、排泄率、薬物の組合せならびに具体的な治療が適用される特定疾患の重症度を含む種々の因子によって決まることが理解される。よく知られている手段および方法を使用して、正確な用量を、通常の実験の問題として、当業者の1人によって決定することができる。
【0022】
本発明のやり方で使用される化合物2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよびその調製用の出発原料は、それぞれ、文献(例えば、Houben−Weyl, Methoden der organischen Chemie[有機化学の手法], Georg−Thieme−Verlag, Stuttgartなどの標準的な著作物)に記載されているような、それ自体知られている方法によって、すなわち前記反応に適した既知の反応条件下で製造される。それ自体知られている改変例も使用され得るが、本明細書においてより詳しく言及されない。必要に応じて、出発原料はまた、それらを単離しない状態で粗反応混合物中に残すが、それらをさらに本発明による化合物に直ちに変換することによって、in−situで形成され得る。他方では、反応を段階的に実施することができる。
【0023】
例えば、アルキルベンゾイルグアニジン誘導体の調製方法は、EP0758644B1に記載されている。加えて、EP1282598B1は、スルホニルベンゾイルグアニジウム塩の製造方法を教示しており、ここでは、化合物N−(4,5−ビス−メタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン塩酸塩に関する調製が特に好まれている。N−(4,5−ビス−メタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン塩酸塩および塩酸塩水和物を調製する別の方法は、DE19951418A1に開示されている。前述の3つの文献は、本明細書によって本発明の開示に参照として組み込まれる。
【0024】
「溶媒和物」は、不活性な溶媒分子が化合物に結合し、それぞれの相互引力によって形成されているものと見なされる。好ましくは、溶媒和物は、一水和物、二水和物(dehydrate)またはアルコラートである。
【0025】
塩の供給は、塩基を使用して、化合物2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンの酸を関連した酸付加塩に変換することによって、例えば、エタノールなどの不活性溶媒中で等量の酸と塩基とを反応させた後、蒸発濃縮によって行うことができる。この反応に適した特定の塩基は、生理学的に許容される塩を生じるものである。例として、前述の化合物の酸は、塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムを使用して、相当する金属塩、特にアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩にまたは相当するアンモニウム塩に変換され得る。特に、エタノールアミンなどの生理学的に許容される塩を生じる有機塩基も、この反応に適している。
【0026】
他方では、酸を使用して、化合物2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンの塩基を関連した酸付加塩に変換することができ、例えば、エタノールなどの不活性溶媒中で等量の塩基と酸とを反応させた後、蒸発によって行うことができる。この反応に適した酸は、特に、生理学的に許容される酸を生じるものである。例として、使用することができるのは、無機酸、例えば硫酸、硝酸、塩酸もしくは臭化水素酸などのハロゲン化水素酸、オルトリン酸などのリン酸またはスルファミン酸、さらに有機酸、特に脂肪族、脂環式、アラリファティック、芳香族または複素環式の、一塩基または多塩基のカルボン酸、スルホン酸または硫酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、ピバル酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、メタンスルホン酸またはエタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンモノスルホン酸およびナフタレンジスルホン酸ならびにラウリル硫酸が挙げられる。生理学的に許容されない酸を有する塩、例えばピクリン酸塩は、化合物2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンの単離および/または精製に使用され得る。
【0027】
好ましい誘導体は、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘミフマル酸塩(hemi-fumerate)およびヘミリンゴ酸塩の群から選択される2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジン塩である。本発明のより好ましい実施形態では、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジン塩酸塩が、医薬組成物の活性成分を表す。
【0028】
医薬組成物はまた、本化合物の混合物および少なくとも単一(singe)の誘導体または誘導体の混合物を含んでよく、それぞれ、例として溶媒和物および/または塩を含み得る。2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジン塩酸塩水和物を使用することが最も好ましい。
【0029】
さらに、薬学的に使用される誘導体には、生体内で本発明の活性化合物2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンに直ちに開裂されるプロドラッグ誘導体、すなわち追加のアルキル基、アシル基、糖分子またはオリゴペプチドを有する修飾化合物が含まれ得る。本明細書において、本発明による化合物の、例えば、Int.J.Pharm.115,61−67(1995)に記載されているような、生物学的に分解可能なポリマー誘導体も含まれる。本発明の化合物は、それをそれらの官能性誘導体から、加溶媒分解、特に加水分解によって、または水素化分解によって遊離させることによって得ることができる。
【0030】
本発明による活性成分はまた、目的地へと方向づけられた輸送、標的細胞内への組み込みおよび/または分布を促進する別の分子と縮合または複合体形成され得る。
【0031】
さらに、活性成分は、単独でまたは他の治療と組み合わせて投与され得る。医薬組成物中に2種以上の化合物を使用することによって、相乗効果が達成され得る。すなわち、化合物2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンは、グリタゾン、エキセナチド、プラムリンチドまたはTZDなどの、活性成分として少なくとももう1つの薬剤と組み合わされる。本化合物は、同時にまたは逐次的に使用することができる。
【0032】
本発明の医薬組成物は、ヒトにおける医薬品および獣医薬として使用することができる。IRおよび/またはβ−細胞機能障害に関連する疾患が、T2DM、メタボリックシンドローム、腎症および/または神経障害によって代表されることが特に好ましい。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の基礎となっている疾患は、T2DMである。医学的適応症「T2DM」は、顕性の耐糖能異常および空腹時高血糖が表れるよりもずっと以前に、IRおよび他の代謝異常の発症を伴う進行性疾患である。
【0034】
医学的適応症「メタボリックシンドローム」は、心血管疾患を発症する危険性を増加させる医学的障害の組合せである。メタボリックシンドロームに分類するには、中心性肥満に加えて、2つのさらなる症状および特徴:空腹時高血糖(2型糖尿病、空腹時血糖異常、耐糖能異常またはインスリン抵抗性によって表される)、高血圧および脂質代謝障害(例えば、HDLコレステロールの減少および/またはトリグリセリドの上昇)が満たされていなければならない。
【0035】
医学的適応症「腎症」は、主に非炎症的に引き起こされる、腎臓および腎機能の疾患を指す。本発明の範囲における興味深いサブタイプは、キンメルスチール−ウィルソン症候群および毛細管内糸球体腎炎としても知られている糖尿病性腎症(diabetic nephropathy、nephropatia diabetica)によって反映されている。糖尿病性腎症は、腎臓糸球体の毛細血管障害によって引き起こされ、ネフローゼ症候群および結節性糸球体硬化症を特徴とする進行性腎疾患である。長年にわたる糖尿病に起因し、多くの西洋諸国における透析の主な原因である。
【0036】
医学的適応症「神経障害」は、通常、末梢神経障害の略である。末梢神経障害は、末梢運動神経、末梢知覚神経および自律神経の、神経全体または選択されたレベルを含む、機能障害および構造障害と定義される。神経障害は、糖尿病などの他の疾患またはアルコール乱用などの神経毒性物質から2次的に生じることが多い。
【0037】
本発明の医薬組成物は、薬品製造工学のためのおよび適切な投与量を有する一般的な固体または液体の担体、希釈剤(diluent)および/または添加剤(additive)および通常のアジュバントを使用して、知られている方法で製造される。単回剤形を製造するために活性成分と組み合わされる賦形剤(excipient)材料の量は、治療される宿主、特定の投与方法に応じて変化する。適した賦形剤には、経腸(例えば経口)、非経口または局所適用などの種々の投与経路に適しており、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンまたはその誘導体と反応しない有機物質または無機物質が含まれる。適した賦形剤の例は、水、植物油、ベンジルアルコール、アルキレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールトリアセテート、ゼラチン、ラクトースまたはデンプンなどの炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、タルクおよびワセリンである。
【0038】
本発明の意味において、「アジュバント」は、同時に、同時期にまたは逐次的に投与される場合、本発明の活性成分に対する特定の反応を可能にするか、増強するかまたは変更するすべての物質を表す。注射溶液用の知られているアジュバントは、例えば、水酸化アルミニウムもしくはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム組成物、QS21などのサポニン、ムラミルジペプチドもしくはムラミルトリペプチド、γ−インターフェロンもしくはTNFなどのタンパク質、M59、スクアレンまたはポリオールである。
【0039】
当該の組成物の活性成分は、錠剤、フィルム錠、コート錠、トローチ剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、ジュース剤、点滴剤、液剤、分散剤、懸濁剤またはそのデポー剤形などの経口投与;液剤、懸濁剤、クリーム剤、軟膏剤、散剤、ジェル剤、乳剤またはバンドエイドなどの経皮投与;坐剤、懸濁剤、乳剤、インプラントまたは液剤、好ましくは油性または水性液剤などの非経口投与(parental administration);特に坐剤などの直腸投与;軟膏剤、クリーム剤、ペースト剤、ローション剤、ジェル剤、スプレー剤、泡剤、エアゾール剤、液剤(例えば、エタノールまたはイソプロパノールなどのアルコール、アセトニトリル、DMF、ジメチルアセトアミド、1,2−プロパンジオールまたはそれらの1つとのおよび/または水との混合物などの溶液)または散剤などの局所適用;および静脈内注入、皮下注射または筋肉内投与、後者3つの例として液剤および懸濁剤などに適した形態に適合する。活性成分は、上記所与の適切な製剤形態における経粘膜、経尿道尿管、経膣または経肺投与に適合することもできる。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、医薬組成物は、経口または非経口投与され、より好ましくは経口投与される。特に、活性成分は、薬学的に許容される塩などの水溶性の形態で提供され、この塩は、酸付加塩および塩基付加塩の両方を含むことを意味する。組成物はまた、1種または複数種の以下のもの:血清アルブミンなどの担体タンパク質、緩衝剤、安定化剤、着色剤などを含み得る。添加剤は、当技術分野においてよく知られており、それらは種々の製剤形態に使用される。
【0041】
さらに、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよびその誘導体は、凍結乾燥されてよく、得られた凍結乾燥物(lyophilizate)は、例えば、注射用製剤を製造するために使用され得る。凍結乾燥物を得るための基本原理は、当業者に知られている。改良された希釈率を有する凍結乾燥物の製造方法は、DE19903275A1に例示的に記載されており、本明細書によって本発明の開示に参照として組み込まれる。
【0042】
示されている製剤は滅菌され、および/または滑沢剤、保存剤、安定化剤、充填剤、キレート剤、酸化防止剤、溶媒、結合剤、懸濁化剤、湿潤剤、乳化剤、塩(浸透圧に影響を及ぼすための)、緩衝物質、着色剤、着香剤および1種または複数種のさらなる活性物質、例えば1種または複数種のビタミン類などの助剤を含み得る。
【0043】
製剤形態中の予防的にまたは治療的に活性な成分の濃度は、約0.1から100wt%まで変化し得る。好ましくは、化合物2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンまたはその誘導体は、用量単位当たり、およそ1から600mgまで、より好ましくは5から100mgの間の用量で投与される。一般に、そのような用量範囲は、1日の総組込み(total daily incorporation)に適している。言い換えれば、日用量は、0.02から200mg/kg体重との間、好ましくは20から100mg/kg体重との間、より好ましくはおよそ0.02から10mg/kg体重との間である。しかし、各患者に対する特定の用量は、本明細書において既に記載されている幅広い種類の因子によって決まる。
【0044】
本発明はまた、インスリン抵抗性および/またはβ−細胞機能障害に関連する疾患の予防上もしくは治療上の処置および/またはモニタリングのための医薬品を製造するための、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよび/またはその生理学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用に関する。さらに、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよび/またはその生理学的に許容される塩および/または溶媒和物は、さらなる医薬品活性成分を調製するための中間体として用いることができる。医薬品は、例えば、活性成分を、少なくとも1種の固体、流動体および/または半流動体の担体または賦形剤と組み合わせることによって、および場合によって、適切な剤形中に単一種のまたは複数種の他の活性物質と併せて、非化学的なやり方で調製されることが好ましい。
【0045】
医薬品は、インスリン抵抗性および/またはβ−細胞機能障害に関連する疾患の開始を前もって防ぐために、または生じている症状および継続している症状を治療するために使用することができる。本発明に関するような疾患は、好ましくはT2DMおよび/またはその関連疾患であり、後者は、メタボリックシンドローム、糖尿病性腎症および糖尿病性神経障害の群から選択されることがより好ましい。医薬組成物に関する本明細書の先行教示は、前記疾患の予防および治療のための医薬品を製造するための、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよびその誘導体の使用に制限されることなく、有効であり適用できる。
【0046】
本発明の前述の医薬製品の用途は、特に治療上の処置に使用される。例えば、反応を促進し、疾患の症状を完全に根絶するために、化合物が明確な間隔をおいて投与されるならば、モニタリングは一種の治療と見なされる。同一の化合物または異なる化合物のいずれかが適用され得る。本発明の意味において、対象が家族性素因、遺伝的欠陥または以前に経験した疾患などの、T2DMを発現するためのいずれかの前提条件を所有している場合、予防上の処置は勧めることができる。
【0047】
本発明の目的はまた、インスリン感受性の増強および/またはβ−細胞代償の保持または増加のための、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよび/またはその生理学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用である。本明細書において、保持とは、測定方法および生体が関与しているという事実によって引き起こされる正規の統計範囲内で、類似の値を指す。最大10%の標準偏差は、保持と見なされるものとし、好ましくは最大わずか3%のみである。それに反して、インスリン感受性は、初期値を顕著に超える。インスリン感受性は、少なくとも2倍になり、好ましくは少なくとも3倍になり、より好ましくは少なくとも4倍になり、最も好ましくは少なくとも5倍になる。
【0048】
本明細書の以前のパラグラフによる使用は、インビトロモデルまたはインビボモデルのいずれかで行われ得る。それらのβ−細胞は、それら自体劣化を受けやすい、すなわち、それらはそれぞれ機能を自然に損失するかもしくはアポトーシスを受けるか、または前アポトーシス物質などの年齢促進物質に曝されるかのいずれかである。同様に、体細胞は、それら自体インスリン抵抗性であり得る、すなわち、インスリンの正常量が正常なインスリン反応を起こすには不十分であるか、またはコルチゾン、TNF−α、PAl−1もしくはレジスチンなどのIR促進薬に曝され得るかのいずれかである。防止される加齢プロセスおよび感作されるインスリン反応の両方を、本明細書の中で記載されている技術によってモニターすることができる。インビトロ使用は、T2DMに罹患しているヒトのサンプルに適用されることが好ましい。化合物2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンのいくつかの具体的な誘導体を試験することによって、ヒト対象の治療に最適であり得るような活性成分が選択される。選ばれた誘導体のインビボ用量率は、有利なことに、インビトロのデータを考慮して、それぞれの具体的な細胞の劣化感受性および/またはIRの重症度に対して前調整される。したがって、治療効果は著しく高められる。その上、予防上もしくは治療上の処置および/またはモニタリングのための医薬品を製造するための、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよびその誘導体の使用に関する本明細書の事前教示は、得策であれば、低減されたβ−細胞代償を予防し、IRを増加させるための化合物の使用に制限されることなく、有効であり適用できると見なされる。
【0049】
本発明の別の目的は、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、腎症および/または神経障害を治療するための方法であって、有効量の2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよび/またはその生理学的に許容される塩および/または溶媒和物を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与する方法を提供することである。治療される哺乳動物は、特にヒトである。好ましい治療は、経口または非経口投与である。T2DMを有する患者またはIRが存在することに基づいてT2DMを発症する危険性を負っている人々の、NHE1阻害剤である2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンを用いた治療は、これらの個々における全身のインスリン感受性を改善し、IRを好転させる。本発明およびその実施形態の先行教示は、得策であれば、治療の方法に制限されることなく、有効であり適用できる。
【0050】
本発明の範囲において、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンは、インスリン抵抗性および/またはβ−細胞機能障害に関連するヒトの疾患の予防上もしくは治療上の処置および/またはモニタリングに、初めて使用される。本発明は、長期のインスリン抵抗性に反応して、β−細胞代償の役割に対処する。前述の効果は、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンが、末梢のインスリン感作物質として(膵臓に負わせる分泌の義務を軽減することによって、β−細胞機能を2次的に保持すること)もしくは直接的なインスリン分泌促進物質として(組織へのインスリン投与(insulinization)を増加することによって、インスリン感受性を2次的に改善すること)のいずれかまたはその両方として働くように相互に関係付けられる。本発明による医薬組成物を提供する結果として、インスリン感受性が増加すると同時に、年齢に関連したβ−細胞機能(代償)の減少を防ぐが、逆にはなり得ない。その使用は、症状の直接的および即時の軽減をもたらす広範囲の治療に対する有望な新規アプローチである。その影響力は、T2DMおよびT2DMから生じる疾病と効率良く闘うには特に利益となる。本化合物およびその誘導体は、高い特異性および安定性;低い製造コストおよび取り扱いの都合良さを特徴とする。これらの特徴が、交差反応性および副作用がないことを含む再生可能な作用のためのならびに適合する標的構造との安全で信頼性がある相互作用のための基礎を形成している。
【0051】
本発明は、本明細書に記載されている特定の医薬組成物、使用および方法に限定されず、そのような事柄自体は、言うまでもなく、変化し得るということが理解されるべきである。また、本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態を記載する目的のみのためであり、添付の特許請求の範囲によってのみ規定される本発明の範囲を限定することを目的としたものではないということも理解されるべきである。添付の特許請求の範囲を含む本明細書において使用される場合、「a」、「an」および「the」などの、語の単数形は、その状況が他に明確に規定しない限り、相当するそれらの複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「活性成分」への言及は、単一のまたはいくつかの異なる活性成分を含み、「方法」への言及は、当技術分野における普通の技術者に知られている複数の同等のステップおよび方法などへの言及を含む。他に特に定義しない限り、本明細書において使用される科学技術用語はすべて、本発明が属する技術分野における普通の技術者によって共通に理解されているものと同じ意味を有する。
【0052】
本明細書において記載されているものと類似のまたは同等の方法および原料を、本発明の診療または試験に使用することができるが、適した例を以下に記載する。以下の例は、例証として提供されるものであり、限定するためのものではない。例の中では、(実際にはいつでも)汚染活動がない標準試薬および緩衝剤が使用される。
【0053】
図1は、処置中の8〜12週齢のZF(fa/fa)ラットの体重を示す(平均+/−SD、n=12)。
【0054】
図2は、処置中の8〜12週齢のZF(fa/fa)ラットの朝のランダム血糖値を示す(平均+/−SD、n=12、*p<0.05)。4週目のデータは、GDT群由来の4時間絶食後のグルコース表示値である。
【0055】
図3は、4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける空腹時血中グルコースレベルを示す(平均+/−SD、n=6)。
【0056】
図4は、4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける空腹時インスリンレベルを示す(平均+/−SD、n=6、*p<0.01)。
【0057】
図5は、4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける経口グルコース負荷に対するインスリン反応(インスリンAUC)を示す(平均+/−SD、n=6、GDT、*p<0.01 対処置前)。
【0058】
図6は、4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける経口グルコース負荷に対するグルコース反応(グルコースAUC)を示す(平均+/−SD、n=6、GDT)。
【0059】
図7は、4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける重水素化グルコース処理試験(2H−GDT;90分%D2O回収率)によって定量化された膵臓の代償を示す(平均+/−SD、n=6、GDT群、*p<0.01)。
【0060】
図8は、4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける重水素化グルコース処理試験(2H−GDT;%D2O回収率/インスリンAUC)によって定量化されたインスリン感受性を示す(平均+/−SD、n=6、*p<0.01)。
【0061】
図9は、薬物処置期間中のZucker fa/faラットおよび痩せた対照ラットの体重を示す。データは、平均+/−標準偏差;n=6/群(エラーバーは、印によって隠されている);対照fa/faラットとは*p<0.01である。
【0062】
図10は、週1回、およそ午前9時に決定されたランダム血糖値を示す。各群間に有意差はなかった。データは、平均+/−標準偏差;n=6/群である。
【0063】
図11は、4週間の薬物処置中における、グルコメーターの表示値によって決定された4時間空腹時血中グルコース濃度を示す。データは、平均+/−標準偏差;n=6/群;#痩せた対照とは異なっている(ボンフェローニ(Bonferroni)の事後検定)。
【0064】
図12は、1週間おきに決定した、4時間絶食後のインスリン濃度を示す。データは、平均+/−標準偏差;n=6/群;*fa/fa固形飼料(媒体)対照とは有意に異なっている。
【0065】
図13は、前処置に関し、薬物処置開始前のGDT中、グルコースチャレンジに反応した血中グルコース濃度およびインスリン濃度を示す。データは、平均+/−標準偏差(エラーバーは、いくつかの群の印によって隠されている);化合物A80mg/kgおよび痩せた対照についてはn=6;fa/fa媒体、化合物A40mg/kg、化合物B40mg/kgについてはn=5;化合物B80mg/kgについてはn=4;*fa/fa媒体対照とは異なっている;#痩せた媒体とは有意に異なっている。図13aは、グルコースチャレンジに反応した連続時点での濃度を示す。図13bは、図13aにグラフで示したグルコース反応の濃度曲線下面積(AUC60分)を示す。図13cは、グルコースチャレンジに反応した連続時点での濃度を示す。図13dは、図13cにグラフで示したインスリン反応のAUC60分を示す。図13bおよび13dについては、異なる群が棒によって表されており、左から右へ:痩せた媒体、fa/fa−媒体、化合物A40mpk、化合物A80mpk、化合物B40mpk、化合物80mpkである。
【0066】
図14は、2週間の薬物処置に関し、薬物処置開始後2週目のGDT中、グルコースチャレンジに反応した血中グルコース濃度およびインスリン濃度を示す。データは、平均+/−標準偏差(エラーバーは、いくつかの群の印によって隠されている);fa/fa媒体、化合物A40mg/kg、化合物A80mg/kg、化合物B40mg/kgおよび痩せた対照についてはn=6;化合物B80mg/kgについてはn=4;*fa/fa固形飼料媒体とは異なっている;#痩せた媒体とは有意に異なっている。図14aは、グルコースチャレンジに反応した連続時点でのグルコースの濃度を示す。図14bは、図14aにグラフで示したグルコース反応の濃度曲線下面積(AUC60分)を示す。図14cは、グルコースチャレンジに反応した連続時点でのインスリンの濃度を示す。図14dは、図14cにグラフで示したインスリン反応のAUC60分を示す。図14bおよび14dについては、異なる群が棒によって表されており、左から右へ:痩せた媒体、fa/fa−媒体、化合物A40mpk、化合物A80mpk、化合物B40mpk、化合物80mpkである。
【0067】
図15は、4週間の薬物処置に関し、薬物処置開始後4週目に行った3回目のGDT中、グルコースチャレンジに反応した血中グルコース濃度およびインスリン濃度を示す。データは、平均+/−標準偏差(エラーバーは、いくつかの事例において印によって隠されている);fa/fa固形飼料、化合物A40mg/kg、化合物B40mg/kgおよび痩せた対照についてはn=6;化合物A80mg/kg、化合物B80mg/kgについてはn=5;*fa/fa固形飼料媒体とは異なっている;#痩せた対照とは異なっている。図15aは、グルコースチャレンジに反応したグルコースの濃度を示す。図15bは、図15aにグラフで示したグルコース反応の濃度曲線下面積(AUC60分)を示す。図15cは、グルコースチャレンジに反応した連続時点でのインスリンの濃度を示す。図15dは、図15cにグラフで示したインスリン反応のAUC60分を示す。図15bおよび15dについては、異なる群が棒によって表されており、左から右へ:痩せた媒体、fa/fa−媒体、化合物A40mpk、化合物A80mpk、化合物B40mpk、化合物80mpkである。
【0068】
図16は、前処置(a、b)、処置開始後2週間(c、d)および処置開始後4週間(e、f)にグルコースチャレンジに反応したインスリン感受性(a、c、e)および膵臓の代償(b、d、e)を示す。*媒体処置(固形飼料)fa/faとは有意に異なっている;#痩せた対照とは有意に異なっている(ANOVA後のチューキー(Tukey)検定)。図16a〜16fについては、異なる群が棒によって表されており、左から右へ:痩せた媒体、fa/fa−溶媒、化合物A40mpk、化合物A80mpk、化合物B40mpk、化合物80mpkである。
【実施例】
【0069】
薬理学的研究報告I
研究デザイン
肥満したインスリン抵抗性のZF(fa/fa)ラットを、8から12週齢まで処置する、IRモデルとして使用した。特に断りのない限り、ラットは12時間点灯/12時間消灯のサイクルで飼育し、飼料および水を自由に摂取させた。研究は、Institutional Animal Care and Use Committeeによって承認された。研究には、合計18匹の動物(Charles Riverによって供給された8週齢の雄)がいた。研究開始時のランダム血糖値に基づいて、動物を3群(媒体群、化合物A群、化合物B群、各群n=6)にランダム化した。
【0070】
グループ1:ZFラット(fa/fa)(n=6)、化合物A(強制飼養によって150mg/kg)
グループ2:ZFラット(fa/fa)(n=6)、化合物B(固形飼料への混合物として40mg/kg/日)
グループ3:ZFラット(fa/fa)(n=6)、媒体処置(対照固形飼料、溶媒強制飼養)。
【0071】
グループ1および3の動物に、化合物Aまたは媒体(水)を、4週間(8から12週齢まで)経口強制飼養によって1日2回処置した。化合物Bを含む固形飼料をグループ2に自由に与えた。グループ1およびグループ3には、化合物Bを含まない固形飼料を自由に与えた。
【0072】
化合物Aは、カリポリドに相当する。化合物Bは、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジン塩酸塩水和物に相当する。
【0073】
血液採取および血漿中グルコースおよびインスリンアッセイ
朝のランダムな血液を、飼料を自由に与えられたラットから、尾の先端の小さな切り口によって採取した。血液は、ヘパリン添加チューブに収集した。血中グルコース濃度を、研究デザイン毎として、One−Touchグルコメーター(Lifescan Inc、Milptias、CA)を使用して測定した。血液サンプルを氷上に設置して遠心分離し、インスリンをアッセイするまで、血漿を−20℃で保管した。ラットにおける血漿中インスリン濃度を、ラット特異的ELISAキット(Crystal Chem Inc、Downers Grove、IL)を用いて測定した。
【0074】
2H−GDT
ラットを4時間絶食させた。2H−GDTチャレンジより1時間前に、ラットに1.75mg/g体重のH2O18(10%18O、Spectra、X XX)を経口強制飼養によって投与して、以前に記載されているような体内総水分量の測定を可能にした。t=0において、血中グルコース濃度をグルコメーターを用いて決定し、血液サンプルを得、ベースラインとなるインスリンおよびH2O18希釈度を決定した。次いで、動物に、[6,6'−2H]グルコース(2g/kg体重、水中50%、Cambridge Isotope Laboratory、Inc.、Andover、MA)を経口強制飼養によって投与した。ラットプロトコルにおいて使用した2g/kg経口グルコース負荷は、所望のダイナミックレンジの範囲内またはその付近のグルコースレベルを達成した。2回目の血液サンプルをt=30分に収集し、グルコース濃度およびインスリン濃度ならびに2H2O含有量を決定した。
【0075】
重水標識化プロトコル
動物に、0.9%NaCl中99%重水を腹腔内ボーラス投与(0.35μl/g体重)し、大体5%(体重の60%を水と推定して使用)の体内水分強化量に到達させ、次いで、研究の最後の4週間に飲料水中8%2H2Oを投与した。このプロトコルによると、齧歯動物において、体内水分2H2O強化量は、2、3日以内に安定な定常状態値に到達する。
【0076】
IRMS分析
血漿サンプルの100マイクロリットルアリコートをバイアルの突端部(cape)の内側に入れ、これを逆さにして、ガラス玉で充填されている加熱ブロックに、70℃で一晩置き、バイアルの内部の留出水分を収集した。血漿サンプルにおける血液の重水素および酸素−18同位体比は、Conflo−III Interfaceを介してThermo Finnigan MAT 253 IRMSと連結したThermo Finnigan High Temperature Conversion/Elemental Analyzerを使用して決定した。以前のサンプル由来のヒステリシス効果を最小限に抑えるために、最初の2回の測定値を廃棄した。重水素同位体存在量は、最初に、国際VSMOW標準に対してδ2H値で算出され、次いで、既知の強化量を有する標準の検量線を使用することによって、APEに変換された。2H2O強化量を、グルコース負荷後30分に、ラットについて算出した。強化量にTBWプールサイズを掛け、20(MW 2H2O)で割ることによって、2H2O強化量をmmoleに換算した。生成した総2H2Oを、所与の[6,6'−2H2]グルコース負荷の百分率として算出した。血漿インスリン(INS AUC)およびグルコース(GLU AUC)の濃度曲線下面積は、台形法を使用して算出した。2つの2H−GDTパラメータを算出した:1)2H2O生成量(%負荷)/INS AUC×GLU AUCおよび2)2H2O生成の絶対率(%負荷)。
【0077】
結果
体重
体重に関して(図1)、媒体処置群、化合物A処置群または化合物B処置群との間に有意差はなかった。
【0078】
朝のランダム血糖値
朝のランダム血糖値を、毎週午前9時から11時の間に測定した。この研究の4週間の間、朝のランダム血糖値に関して、化合物B処置群と媒体処置群との間に有意差はなかった(図2)。しかし、化合物A処置群は、他の2群と比較して、本研究の終わりまでに、より低い血糖値へと向かう傾向にあった。
【0079】
空腹時グルコースレベルおよび空腹時インスリンレベル
研究終了時、ラットを4時間絶食させ、グルコースレベルおよびインスリンレベルを測定した。化合物A処置動物および化合物B処置動物における空腹時グルコースレベルは、処置後により低い値へと向かう傾向にあったが、媒体処置群では、治療前と治療後で有意差はなかった(図3)。化合物A処置動物および化合物B処置動物の両方において、それらの処置前のレベルと比較して、空腹時インスリンレベルが有意により低かった(図4)。
【0080】
GDT
すべての動物は4週処置前および処置後の両方で2H−GDTを受けた。2H−GDTのために動物を4時間絶食させた。2H−GDTチャレンジより1時間前に、ラットに1.75mg/g体重のH218Oを経口強制飼養によって処置して、総水分含量の測定を可能にした。t=0分において血液サンプルを得、ベースラインのインスリン、グルコースおよびH218O希釈度を決定した。次いで、[6,6'−2H2]グルコース(2g/kg体重、水中50%)を動物に経口強制飼養によって処置した。グルコース濃度およびインスリン濃度ならびに2H2O含有量のために、90分時点で連続的に血液サンプルを採取した。膵臓の代償の適切さは、達成されたグルコース利用の絶対率(IRに対する膵臓の代償を反映している)と周囲のインスリンの単位当たりの処置グルコースの解糖処理(インスリン感受性を反映している)とを識別することによって評価した。β−細胞代償を、経口[6,6'−2H2]グルコース負荷後の%2H2O回収率として表し、インスリン感受性をインスリンAUC当たりの%2H2O回収率として表す。
【0081】
インスリンAUCレベル(図5)またはグルコースAUCレベル(図6)に関して、処置前または処置後のいずれも3群間に有意差はなかった。経口グルコース負荷中のグルコースAUCは、空腹時グルコースレベルと類似の傾向に従った。図を見ても分かるように、大きな標準偏差が見られたが、これは生理学的な変動を表していると思われる。しかし、処置後すべてのインスリンAUCレベルが、処置前と比較して有意により低かった。媒体処置動物における低下は、ZFラットの加齢(8から12週齢まで)によるβ−細胞劣化の自然な過程を表していると思われる。
【0082】
化合物A処置動物および化合物B処置動物におけるインスリンAUCの変化は、年齢に関連した劣化によって引き起こされ得るかまたはインスリン感受性が改善されたためにインスリン必要性が低減されたことによって引き起こされ得るかのいずれかであるので、その理由をGDT測定によって明らかにした。膵臓の代償に関して、処置前および処置後の両方とも、各群間に有意差はなかった。しかし、処置前および処置後の代償を各群内で比較したところ、媒体群および化合物A群の両方が処置後に膵臓のより低い代償を示しており(図7)、これは、ZFラットにおけるβ−細胞機能障害の自然な進行のためである可能性が最も高いことが明らかとなった。これとは対照的に、化合物Bを処置したZFラットは、ベースラインに存在したのと同程度の膵臓の代償を維持していた。これらの結果は、化合物B処置のみに反応したβ−細胞機能の保持を示唆している。
【0083】
これらの所見と一致して、GDTによって測定したインスリン感受性(図8)は、化合物B処置動物が、処置前の値と比較して、インスリン感受性を有意に増加させる(約4倍)一方で、処置後のインスリン感受性に関して、媒体処置群および化合物A処置群に、処置前と比較して有意な変化はないが、両群で増加値へと向かう傾向にあることを示した。したがって、化合物Bによって表されている2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジン塩酸塩水和物は、インスリン感受性を有意に増加させ、β−細胞代償における年齢に関連した低減を防ぎ、このことは、処置後のインスリンAUCの減少は化合物B処置動物に生理学的であることを示した。これらの結果はまた、インスリン抵抗性のモデルにおいて、インスリン濃度を評価する場合に、インスリン感受性を特徴づける必要性を強調した。
【0084】
薬理学的研究報告II
研究デザイン
以前の2H−GDT研究(薬理学的研究報告I)では、Zucker fa/faラットにおいて、化合物Bはインスリン感受性(SI)を増加させ、β−細胞反応性(膵臓の代償)を増加または維持した。しかし、この研究では、ベースラインの空腹時インスリンレベルは各群間で異なった。ランダム血糖、空腹時グルコースまたはグルコースAUCに関して、処置群のいずれにも変化がなかったという事実にもかかわらず、空腹時インスリンレベルおよびインスリンAUCに関して、全群の動物に全体的な減少が見られた。本研究の目的は、化合物AおよびBがSIおよび膵臓の代償(PC)に及ぼす効果の、最初の観察結果を確認することであった。第2の目的は、経口グルコース負荷に対するグルコースおよびインスリンの反応に及ぼす薬物の効果の経時的変化をより十分に明確にすることであった。以前の研究から多くの変更を行った。
【0085】
1.化合物AおよびBは、毎日の経口強制飼養のストレスを除去するために、飼料と混合した。食餌中に薬物が存在しても、摂餌量に悪影響を及ぼさず、血漿中の薬物の許容される濃度を与えるであろう。
【0086】
2.最終結果における偏りの可能性を除去するために、Zucker fa/faラットを、体重、空腹時グルコース濃度および空腹時インスリン濃度ならびにグリコシル化ヘモグロビンA1cレベル(Gly−HbA1c)の予備測定の結果に基づいて、処置群に割り付けた。
【0087】
3.空腹時グルコース濃度および空腹時インスリン濃度を毎週決定した。
【0088】
4.2H−GDTは、0、14および28日目に実施した。加えて、インスリンおよびグルコース反応の両方をより十分に明確にするために、2H−GDT中、血中グルコースレベルおよびインスリンレベルを、0、15、30、60および90分に決定した。
【0089】
5.処置によって達成されるグルコース恒常性の全体的な改善については、いずれも追加の評価を提供するために、グリコシル化HbA1cレベルを、0および28日目に決定した。
【0090】
6.痩せた対照群を、本研究に含めた。
【0091】
対象
Charles Riverから入手した36匹の肥満したZucker fa/faおよび6匹の痩せたZucker fa/?雄ラットを、通常の動物施設条件化で、12時間点灯/12時間消灯のサイクルで飼育した。ラットをケージに2匹ずつ飼育し、毎週4時間の絶食中を除き、飼料および水を自由に摂取できるようにした。水は、これらの絶食中にも摂取できる状態にし続けた。
【0092】
薬物
化合物Aは、カリポリドに相当する。化合物Bは、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジン塩酸塩水和物に相当する。化合物AおよびBは、Merck Seronoによって散剤形態で供給された。薬物は、およそ40または80mg/kgの用量を得るために、Research Diets、lnc(New Brunswick、NJ)によって、ペレット状の食餌(LabDiet、5001)に食餌1kg当たり0.44gまたは0.88gの濃度で組み込まれた。濃度は、300gのラットは約30g/dの固形飼料を食べるであろうという仮定に基づいて算出された。同一の固形飼料であるが薬物を含まないものを、痩せた対照群動物およびfa/fa対照群動物の両方のラットに与えた。
【0093】
群割り付け
研究開始より1週間前に、すべてのラットの体重を測定した。4時間の絶食後、血液サンプルを得、血中グルコース、インスリンおよびグリコシル化ヘモグロビンレベル(HbA1c)を決定した。次いで、動物を、これらのパラメータに基づいて、下記に掲載されている群に分けた。ラットは、処置開始時に8週齢であった。
【0094】
処置群:
1.ZFラット(fa/fa)(n=6)薬物を含まない固形飼料
2.ZFラット(fa/fa)(n=6)化合物A(40mg/kg/日)
3.ZFラット(fa/fa)(n=6)化合物A(80mg/kg/日)
4.ZFラット(fa/fa)(n=6)化合物B(40mg/kg/日)
5.ZFラット(fa/fa)(n=6)化合物B(80mg/kg/日)
6.痩せたZuckerラット(fa/?)(n=6)薬物を含まない固形飼料。
【0095】
投与計画
処置に適切な固形飼料は、1週間に1回行われる予定された4時間の絶食中を除いて、4週間継続的に摂取可能であった。
【0096】
体重および摂餌量
個々の体重を1週間に1回決定した。ケージ当たりの平均摂餌量も1週間に1回決定し、個々のラットの摂餌量は、ケージ平均を2で割る(1ケージ当たり2匹のラットが飼育されている)ことによって算出した。
【0097】
グルコースレベルおよびインスリンレベル
ランダム血糖値および空腹時(4時間)血中グルコースレベルの決定は、尾の毛細血管サンプルから得られた血液上で、手持ち式グルコメーター(OneTouch Ultra、Lifescan、Inc.Milapitas、CA)を使用して行った。血漿中インスリンレベルを、ラット特異的ELISA(Ultra Sensitive Rat Insulin ELISA Kit、Crystal Chem、Inc.、Chicago、IL)によって決定した。4時間の絶食期間は、午前9時に開始し、午後1時に血液採取後、終了した。
【0098】
HbA1cレベル
HbA1cレベルの決定は、研究開始より前および4週目の処置期間終了時に再度、DCA2000分析器(Bayer Healthcare LLC、Elkhart IN)を使用して行った。
【0099】
2H−GDT
インスリン感受性(SI)および膵臓の代償(PC)は、0、14および28日目に2H−グルコース処理試験を行うことによって測定した。
【0100】
時間−4h:GDTの朝に絶食を開始する前に、血液サンプルを採取してランダム血糖値(上記参照)を決定した。追加の血液サンプルを収集し、ベースラインの2H2Oおよび18O強化量を決定した。ラットの体重を測定し、4時間の絶食を開始した。水は絶食中に摂取可能であった。
【0101】
時間−3h:絶食開始後1時間目に、1.75mg/g体重の10%H218Oを経口強制飼養によって処置した(Spectraからの2H2O−遊離H2O18水;10%18O原子;カタログ番号51350)。
【0102】
時間0:絶食開始後4時間目に、血中グルコースレベルおよびインスリンレベルを決定した。ラットに4ml/kgの50%グルコース溶液(25%[6,6−2H2]グルコースおよび25%D−グルコースを含む)を経口強制飼養によって処置した。
【0103】
グルコースチャレンジ後の時間15、30、60および90分目に、血中グルコース濃度を、尾静脈血からグルコメーター表示値によって再度決定した。追加の血液サンプルを収集し、インスリンを決定した。グルコースチャレンジ後60および90分に、全血を収集し、2H2OおよびH218O強化量を決定した。すべての血液サンプルを遠心分離し、血漿をアッセイするまで−20℃で保管した。体内水分の重水素および酸素−18同位体強化量を、血漿サンプルの留出水分のIRIS分析によって決定した。
【0104】
算出
強化量(2H2O APE)に体内総水分量プールサイズを掛け、20(2H2Oの分子量)で割ることによって、2H2O強化量をmmolに換算した。生成した総2H2Oを、処置した[6,6'−2H2]グルコース負荷の百分率として算出した。血漿インスリンおよびグルコースの濃度曲線下面積(AUC 60分)は、台形法を使用して算出した(GraphPad Prsim)。
【0105】
2つのパラメータを2H−GDTから算出した
1.インスリン感受性指数(SI)=2H2O生成量(%負荷)/(グルコースAUC×インスリンAUC)。
【0106】
2.膵臓の代償(PC)=総[6,6'−2H2]グルコース負荷の百分率としての絶対2H2O生成量(%負荷)/積分されたグルコース反応(グルコースAUC;インスリン非依存性の利用について補正するため)。
【0107】
統計
グルコースおよびインスリン測定の全体的な結果を、要因として薬物および時間(反復)を使用する二元配置反復測定ANOVAによって分析した。最初の分析の後に、ボンフェローニの事後検定を行い、全群を比較した。データは、p<0.05で有意であると見なす。グルコースおよびインスリンのAUC60分値を、一元配置ANOVAによって分析した後、チューキーの全群比較を行った。
【0108】
データ除外
2H−GDT中、グルコース投与の失敗または部分的な失敗が原因で、強化が十分でないことが示されたデータを除外した。
【0109】
結果
研究前の群割り付け
研究開始時にfa/fa群間に有意差はなかった。予想通り、痩せた動物の体重および空腹時インスリンレベルは、すべてのfa/fa動物とは有意に異なった。グリコシル化ヘモグロビンおよび空腹時グルコースレベルは、痩せた動物においてやや低かったものの、これらの値が他の処置群の値と有意に異なっていなかった(表1)。
【0110】
【表1】
【0111】
体重および摂餌量
すべての動物は、実験期間中に体重が増え続け、このことは、薬物が良好に忍容されたということを示した(二元配置反復測定ANOVA後、ボンフェローニの事後検定:時間:F(4,136)=1488.41、p<0.0001;処置:F(6,36)=31.02、p<0.0001、交互作用 処置×時間:F(24,136)=12.69、p<0.0001)。4週間の処置期間にわたって、体重に関する有意差は、fa/fa群間に認められなかったが(図9)、痩せた対照群と比べて増加した。化合物A群および化合物B群の平均週間摂餌量は、痩せた対照と比較して増加したが、固形飼料を与えたfa/fa対照の摂餌量とは有意に異なっていなかった(表2)。
【0112】
【表2】
【0113】
ランダム血糖値
ランダム血糖値を、絶食していないラットにおいて、1週間に1回、およそ午前9時に決定した。固形飼料fa/fa群と他の処置群とのランダム血糖値の間には有意差はなかった(図10)(二元配置反復測定ANOVA後、ボンフェローニの事後検定:処置F6,136=0.93;p=0.48ns;時間:F4,136=3.25、p=0.01;交互作用F24,136=0.97、p=0.51ns)。
【0114】
空腹時血中グルコースレベル
空腹時血中グルコースを、1週間に1回、4時間の絶食後に決定した(午前9時に絶食、午後1時にサンプル採取)。種々の薬物処置群におけるグルコースレベルは、対照fa/fa群とは有意に異なっていなかった(図11)。化合物Aの40mg/kg用量は、4週間の投与の後に空腹時グルコース濃度が増加した(二元配置反復測定ANOVA後、ボンフェローニの事後検定:処置F6,136=5.26;p=0.0006;時間:F4,136=7.68、p=0.0001;交互作用F24,136=0.97、p=0.51ns)。
【0115】
空腹時インスリン濃度
ベースラインおよび処置4週後の空腹時インスリン濃度を、表3にまとめる(二元配置反復測定ANOVA後、ボンフェローニの事後検定:処置F6,36=11.24、p<0.0001;時間:F6,36=9.48、p<0.0001;交互作用F24,136=3.21、p<0.0001)。痩せた対照のインスリン濃度は、固形飼料を与えたfa/fa対照の濃度とは、3週目以外の各週で有意に異なっていた。処置4週目までに、80mg/kgの化合物Aは両方とも、fa/fa媒体対照と比べて、空腹時インスリンを有意に減少させた。しかし、これらの値は、痩せた対照の値を超えたままであった(図12)。
【0116】
グリコシル化ヘモグロビン
HbA1cレベルは、経時的な血糖コントロールを反映している。ベースラインでは、すべてのfa/fa群の平均HbA1cレベルは、有意にとはいえなかったが、痩せた対照のレベルをやや超えていた。4週目では、fa/fa対照群および化合物B80mg/kg群のHbA1cレベルは、痩せた対照のレベルを有意に超えていた(表3)。4週間の処置期間にわたって、HbA1cの変化は、いずれの処置群間でも統計的に有意ではなかった(表3)。
【0117】
【表3】
【0118】
2H−グルコース処理試験
化合物AおよびBが膵臓の機能およびインスリン感受性に及ぼす効果を決定するために、動物を離乳させ薬物を含む固形飼料に切り替える前、次いで薬物処置2週後および4週後に、ラットを2H−GDTに供した。
【0119】
処置前2H−GDTグルコースおよびインスリン反応
薬物処置開始前のグルコースチャレンジに反応して、血中グルコース濃度は、痩せた対照に比べて、すべてのfa/faラットにおいて増加した(図13a)。60分の時点では、割り付けられることになる40および80mg/kg化合物A群の両方のグルコースレベルが、fa/fa媒体に割り付けられることになる動物のレベルを超えて増加した。しかし、グルコースAUC(60分)は、fa/faラットの全群が、痩せた対照に比べて、類似の程度の経口耐糖能異常を有することを示した(図13b)。ベースラインでは、2H−GDTチャレンジ中、すべてのfa/fa動物は、痩せた対照と比較して、類似の程度の障害された高インスリン血症を示した(図13c、d)。
【0120】
2週目の2H−GDTグルコースおよびインスリン反応
薬物処置開始後2週目に、すべてのfa/fa動物は、痩せた対照に比べて、血中グルコース濃度が有意に増加した(図14a、b)。同様に、すべてのfa/fa動物は、痩せた対照に比べて、インスリン濃度が増加した(図14c、d)。化合物AおよびBは、処置2週後のグルコースまたはインスリン反応に影響を及ぼさなかった。
【0121】
4週目のGDTグルコースおよびインスリン反応
薬物処置開始後4週目に、化合物A(40および80mg/kg)および化合物B(40および80mg/kg)を処置したラットは、血中グルコース濃度およびインスリン濃度が上昇し続けた(図15a、b、c、d)。実際に、90分時点では、グルコースレベルは、化合物A40mg/kg処置群において、fa/fa媒体処置ラットのレベルを超えて上昇した。80mg/kgでは、化合物Bは、血中グルコースレベルをわずかに減少させたが、この値は、痩せた媒体ラットまたはfa/fa媒体対照のレベルと有意に異なっていないレベルであった。インスリン濃度は、80mg/kg化合物B群において、上昇したままであった。
【0122】
膵臓機能およびインスリン感受性
前処置
ベースラインで決定したインスリン感受性および膵臓の代償は、すべてのfa/fa群において類似しており(図16a、b)、痩せた対照と比較して有意に減少した。このことは、fa/faラットがそれらの重症のインスリン抵抗性に対して代償する能力は不十分であり、それらの耐糖能に寄与することを示している。後に80mg/kgの化合物Bを処置される動物群に見られた、膵臓の代償に関する明白な減少は、実験的な人為現象であると見なされ得る。その理由として、この減少は後の時点では見られず、同時に行われた他の尺度(例えば、体重、空腹時グルコースまたはインスリン濃度)で、これらの動物には差がなかったためである。PCに関するANOVAの結果:F6,29=33.02、p<0.0001;SIに関しては:F6,29=35.8、p<0.0001。
【0123】
2週間の処置
2週間の処置の後、化合物Bにおける膵臓の代償は、80mg/kg群が痩せた対照群とfa/fa対照群との中間にあった(図16c、d)。PCに関するANOVAの結果:F6,32=9.121、p<0.0001;SIに関しては:F6,32=132.7、p<0.0001。
【0124】
4週間の処置
4週間の薬物処置の後の結果は、2週間のものと類似していた(図16e、f)。80mg/kg化合物B群におけるインスリン感受性は、有意には改善されなかったものの、膵臓の代償に関してわずかな改善が見られた。PCに関するANOVAの結果:F6,32=6.17、p=0.0002;SIに関しては:F6,32=35.01、p<0.0001。
【0125】
結論
ベースラインでは、体重、摂餌量、HbA1c、ランダム血糖値、空腹時血中グルコース濃度またはインスリン濃度に関して、fa/fa群間に有意差はなかった。同様に、グルコースチャレンジに反応して、fa/fa群は、グルコースAUC(60分)またはインスリンAUC(60分)においてお互いに差はなかったが、痩せた対照とは有意に異なっていた。インスリン感受性および膵臓の代償の両方は、ベースラインでは、他の群と比べて低下していた化合物B(80mg/kg/d)群を除くすべてのfa/faラットにおいて類似していた。4週間の処置の後に、80mg/kgの化合物Aは、空腹時インスリン濃度を減少させたが、他のパラメータに及ぼす効果は全くなかった。化合物Aの用量は、(空腹時またはチャレンジに反応した)グルコースレベルもインスリン感受性も膵臓の代償も有意には改善しなかった。本実験における化合物Bの効果は、中等度であった。80mg/kg/dでの4週間の処置の後に、化合物Bは、グルコースチャレンジに反応してグルコースAUC60分を減少させた。グルコース濃度は、痩せた媒体対照の濃度とfa/fa媒体対照の濃度との中間にあったが、いずれからもわずかに異なっていた。実際には、インスリンAUC60分に及ぼす効果も、インスリン感受性(SI)のコンピュータ測定に及ぼす効果もなかった。膵臓の代償は、2週間の処置の後および4週間の処置の後の両方でわずかに改善されているように思われ、痩せた媒体対照またはfa/fa媒体対照のいずれか一方とわずかに異なっていた。しかし、この群における膵臓の代償は、ベースラインの他の群のものに比べて低い(悪い)ように思われたことが留意される。4週間の化合物Aの処置は、耐糖能を改善しなかったか、または高インスリン血症を有意には改善せず、過度のインスリン反応がfa/faラットにおいて見られた。高用量の化合物Bは、fa/fa対照と比べて、膵臓の代償において劣化を弱めた。化合物Bは、インスリン感受性を効果的には増加させないにしても、膵臓機能にプラスの効果をもたらす。
【0126】
医薬製剤に関連した例
例A:注射バイアル
本発明による活性成分100gおよびリン酸水素二ナトリウム5gの再蒸留水3l中溶液を、2N塩酸を使用してpH6.5に調整し、除菌し、注射バイアル中に移し、無菌条件下で凍結乾燥し、無菌条件下で密封する。各注射バイアルは、5mgの活性成分を含む。
【0127】
例B:坐剤
本発明による活性成分20gと、100gの大豆レシチンおよび1400gのカカオバターとの混合物を融解させ、金型に注入し、冷却する。各坐剤は、20mgの活性成分を含む。
【0128】
例C:液剤
本発明による活性成分1g、9.38gのNaH2PO4・2H2O、28.48gのNa2HPO4・12H2Oおよび0.1gの塩化ベンザルコニウムから、再蒸留水940ml中溶液を調製する。pHを6.8に調整して、溶液を1lにし、照射によって滅菌処理する。この液剤は、点眼剤の形態で使用され得る。
【0129】
例D:軟膏剤
本発明による活性成分500mgを、99.5gのワセリンと無菌条件下で混合する。
【0130】
例E:錠剤
本発明による活性成分1kg、4kgのラクトース、1.2kgのジャガイモデンプン、0.2kgのタルクおよび0.1kgのステアリン酸マグネシウムの混合物を、従来のやり方で、各錠剤が10mgの活性成分を含むように圧縮して錠剤を得る。
【0131】
例F:コート錠
例Eと同じように錠剤を圧縮し、続いて、従来のやり方で、ショ糖、ジャガイモデンプン、タルク、トラガカントおよび色素のコーティングでコートする。
【0132】
例G:カプセル剤
本発明による活性成分2kgを、従来の方法で、各カプセル剤が20mgの活性成分を含むように硬ゼラチンカプセルに導入する。
【0133】
例H:アンプル剤
本発明による活性成分1kgの再蒸留水60l中溶液を、除菌し、アンプル中に移し、無菌条件下で凍結乾燥し、無菌条件下で密封する。各アンプルは、10mgの活性成分を含む。
【0134】
例I:吸入スプレー
本発明による活性成分14gを10lの等張NaCl溶液に溶かし、ポンプ機構を備えた市販のスプレー容器に溶液を移す。溶液は、口または鼻に噴霧され得る。1回の噴霧ショット(約0.1ml)は、約0.14mgの用量に相当する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、糖尿病性腎症および/または糖尿病性神経障害の予防および治療のための、有効量の2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンまたはその誘導体を活性成分として含む医薬組成物に関する。本発明の別の目的は、インスリン感受性の増強およびβ−細胞代償の保持または増加のための、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンまたはその誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満、インスリン抵抗性(IR)および脂質代謝異常(dyslipidaemia)などの代謝疾患は、病的状態および死亡の主要な原因として世界的に浮上している。特にここ数十年間で、IRは、一般の人々に非常によく見られる状態になり、健康保険に甚大な影響を及ぼす結果となっている。IRは、インスリンの正常な作用に対する身体の減少した不適切な反応と定義される。IRは、心血管疾患および2型糖尿病(T2DM)の発症のための重要な危険因子である。加えて、IRは、種々の心血管系危険因子(肥満、脂質代謝異常、高血圧および血液凝固障害)に関連しており、これは、まとめて示される場合、メタボリックシンドロームまたはシンドロームXと呼ばれている。いまでは、IRがメタボリックシンドロームの基礎となっている一体化した原因因子であり得るという考慮すべきエビデンスが存在する(Turner & Hellerstein (2005) Curr Opin Drug Discovery & Develop 8(1):115−126)。
【0003】
組織のインスリン反応性を直接的に改善することを目指している現行の治療的介入は、チアゾリジンジオン(TZD)を適用する。しかし、TZDは全身のインスリン感受性を改善することが示されているが、最近では心不全および心血管系の合併症の危険性を増加させることが知られるようになってきた。したがって、代謝障害疾患の特徴の1つがIRであり、その疾患の流行の拡大と闘うには、IRの代替治療が必要である。
【0004】
IRに加えて、膵β−細胞機能障害は、前糖尿病状態から糖尿病状態への進行に、極めて重要な役割を果たしている。β−細胞再生を刺激し、β−細胞塊を増大させ得るエキセンジン−4(Xu et al. Diabetes(1999)48(12):2270−2276;DeFronzo et al.(2005) Diabetes Care 28(5):1092−1100)またはシタグリプチン類似体(Mu et al.(2006) Diabetes55(6):1695−1704)などの薬剤の最近の開発は、T2DMにおける治療上の標的として、β−細胞塊にさらなる関心を集めている。
【0005】
したがって、本発明の基礎を形成している技術的な問題は、インスリン抵抗性および/またはβ−細胞機能障害に関連する疾患の予防または治療において、効果的に適用することができる医薬組成物、特に、治療効果を高め、副作用を最小限にするような組成物を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Xu et al. Diabetes(1999)48(12):2270−2276
【非特許文献2】DeFronzo et al.(2005) Diabetes Care 28(5):1092−1100
【非特許文献3】Mu et al.(2006) Diabetes55(6):1695−1704
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、インスリン抵抗性および/またはβ−細胞機能障害に関連する疾患の予防上もしくは治療上の処置および/またはモニタリングのための、有効量の2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよび/またはその生理学的に許容される塩および/または溶媒和物を活性成分として含む医薬組成物を提供することによって、この問題を解決する。
【0008】
驚いたことに、T2DMおよびその関連疾患などの医学的適応症に取り組むために、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよび前記誘導体を、医薬組成物中に活性成分として適用することができることが発明者らによって実証された。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】処置中の8〜12週齢のZF(fa/fa)ラットの体重を示す図である。
【図2】処置中の8〜12週齢のZF(fa/fa)ラットの朝のランダム血糖値を示す図である。
【図3】4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける空腹時血中グルコースレベルを示す図である。
【図4】4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける空腹時インスリンレベルを示す図である。
【図5】4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける経口グルコース負荷に対するインスリン反応を示す図である。
【図6】4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける経口グルコース負荷に対するグルコース反応を示す図である。
【図7】4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける重水素化グルコース処理試験によって定量化された膵臓の代償を示す図である。
【図8】4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける重水素化グルコース処理試験によって定量化されたインスリン感受性を示す図である。
【図9】薬物処置期間中のZucker fa/faラットおよび痩せた対照ラットの体重を示す図である。
【図10】週1回、およそ午前9時に決定されたランダム血糖値を示す図である。
【図11】4週間の薬物処置中における、グルコメーターの表示値によって決定された4時間空腹時血中グルコース濃度を示す図である。
【図12】1週間おきに決定した、4時間絶食後のインスリン濃度を示す図である。
【図13】前処置に関し、薬物処置開始前のGDT中、グルコースチャレンジに反応した血中グルコース濃度およびインスリン濃度を示す図である。
【図14】2週間の薬物処置に関し、薬物処置開始後2週目のGDT中、グルコースチャレンジに反応した血中グルコース濃度およびインスリン濃度を示す図である。
【図15】4週間の薬物処置に関し、薬物処置開始後4週目に行った3回目のGDT中、グルコースチャレンジに反応した血中グルコース濃度およびインスリン濃度を示す図である。
【図16】前処置、処置開始後2週間および処置開始後4週間にグルコースチャレンジに反応したインスリン感受性および膵臓の代償を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本出願を申請する前には、スルホニルベンゾイル−グアニジンが細胞のNa+/H+交互輸送機構の阻害剤であること、すなわち、それらが細胞のNa+/H+交換機構を阻害し、それによって優れた抗不整脈薬であり、特に、酸素欠乏の結果として発生する不整脈の治療に適していることは、EP0758644B1からのみ知られている。これらの物質は、優れた心臓保護作用を発揮し、それ故に急性心筋梗塞の治療、梗塞予防、梗塞後の治療、慢性心機能不全および狭心症の治療に適している。さらに、それらはすべての病的な低酸素性および虚血性の障害に対抗し、それによって1次的または2次的に引き起こされる疾病を治療することができる。病的な低酸素性または虚血性の局面におけるこれらの物質の保護作用のおかげで、外科的介入で、供給が一時的に減じられた状態の臓器を保護するために、臓器移植で、取り除かれた臓器を保護するために、血管形成術の血管介入または心臓介入において、神経系の虚血において、ショック状態の治療において、および本態性筋緊張亢進を予防するためにさらに適用される。加えて、本化合物は、例えば赤血球、血小板または白血球におけるNa+/H+交互輸送機構の活性の増加に伴う疾病を認識するための診断上の使用に適している。先行技術は、動脈硬化、糖尿病および糖尿病の後期合併症、特に肺、肝臓および腎臓の腫瘍疾病、線維性疾病ならびに臓器肥大および過形成などの細胞増殖によって引き起こされる疾病において、これらの物質を治療薬として用いることをさらに示唆している。
【0011】
しかし今や、本発明は、全身のIRが増加する一方で、β−細胞代償が同時に保持されることを明らかにする。これらの現象は、化合物2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンの影響力によって刺激され、T2DMおよびメタボリックシンドロームなどのような特定の臨床像のための本発明の療法の基礎を形成している。
【0012】
前述の化合物は、優れた忍容性とともに、非常に価値がある薬理学的特性を発揮する。体重増加、空腹時血中グルコースレベルまたはランダム血糖値(random blood glucose level)は、臨床試験において検討されたいずれの用量でも変化しない。これとは対照的に、空腹時インスリンは、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンによる処置前と比較して減少する。インスリン濃度曲線下面積(AUC)値も、経口グルコース負荷後に減少するが、グルコース負荷に対して反応するAUCは、処置前および処置後で類似した状態のままである。しかし、本発明の化合物は、β−細胞反応を維持するかまたは増加させもするので、より低いインスリンレベルが、β−細胞機能の年齢に関連した低下から生じないということは、予期せぬ発見である。それ故に、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンは、末梢のインスリン感受性を著しく増強する。
【0013】
本発明の化合物の前記生物活性は、当業者に知られている技術によって決定され得る。適した実験動物は、例えば、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、類人猿またはブタである。IRのインビボ評価のゴールドスタンダードは、オイグリセミック−高インスリン血症グルコースクランプ(euglycemic-hyperinsulinemic glucose clamp)である。他のツールは、定常状態血漿グルコース(steady-state plasma glucose)(SSPG)試験または頻回採血静脈内耐糖能試験(frequently sampled intravenous glucose tolerance test)である。インビボ膵β−細胞増殖を測定するのに利用できる技術には、[3H]チミジン(3HdT)手法または5−ブロモデオキシウリジン(BrdU)手法が含まれる。インスリン感受性およびβ−細胞力学の変化を決定するのに適した技術は、感度が良く、再現可能であり、操作上、簡単であり比較的高スループットでなければならない。
【0014】
前述のように、インスリン抵抗性は、2型糖尿病および心血管疾患の発症のための重要な危険因子である。2型糖尿病の病因は、インスリン抵抗性のみならず、進行性の膵機能不全も含む。信頼性があり、容易に行われる定量試験が開発されている。この重水素化グルコース処理試験(deuterated-glucose disposal test)(2H−GDT)を用いて、2型糖尿病の両方の様相を定量化することができる。
【0015】
骨格筋などの末梢組織によるグルコース負荷の解糖処理は、輸送、リン酸化および解糖経路に属する酵素の通過を含む、インスリン依存性の多くのステップによって決まる。加えて、グルコース有効性、グルコース自体が肝臓のグルコース産生を抑制し、組織へのグルコースの取り込みを加速させる両方の作用も、経口グルコース負荷の処理に寄与する。2H−GDTは、グルコースの取り込み、リン酸化および解糖代謝の比率を測定し、ひいてはインスリン抵抗性(IR)および膵β−細胞代償の適切さの両方を定量化するために使用することができる。2H−GDTは、経口重水素化グルコースチャレンジ、続いて重水(2H2O)生成量および血漿中インスリン濃度の測定からなる。グルコースの解糖代謝中にH原子が組織液中に放出されるので、2H2O生成量の測定値が、全身のグルコースの解糖処理率を表す。周囲のインスリン濃度について補正された2H2O生成量(すなわちインスリンの単位当たりの解糖代謝)は、組織のインスリン感受性を明らかにする。血糖可動域について補正されると(グルコース有効性の寄与を説明するために)、膵臓の代償は、解糖代謝(絶対2H2O生成量)がインスリン感受性に適合する程度を明らかにする。インスリン抵抗性の状態では、膵臓の代償は不十分であり、耐糖能は異常である。
【0016】
詳細には、全身の解糖の安定な同位体質量分析評価を含む、最近開発された重水素化グルコース処理試験(2H−DGT)は、血漿中インスリン×グルコースの単位当たりの2H2O生成量を測定することによって、IRの評価を可能にし、これは、動物または個人の重水素化[6,6'−2H2]グルコースでの(経口)負荷からの重水素(2H)の放出率および決定された血漿中インスリン濃度に基づいている(Turner & Hellerstein (2005) Curr Opin Drug Discovery & Develop 8(1):115−126)。加えて、IRに対する膵β−細胞代償の程度は、[6,6'−2H2]グルコース負荷後に達成される絶対2H2O生成量を測定することによって評価することができる。膵臓の代償の適切さは、周囲のインスリンの単位当たりの解糖処理(インスリン感受性を反映している)と達成されるグルコース利用の絶対率(IRに対する膵臓の代償を反映している)とを識別することによって評価することができる。
【0017】
2H−GDTは、以下の原則を厳守してデザインされる:i)周囲のグルコース濃度およびインスリン濃度は、生理学的に関係のある代謝状態を反映すべきであり、ii)試験は、組織による、インスリンが介在したグルコース利用を測定し、確立されたモデルにおいてIRを明らかにすべきであり、iii)方法は、心血管系の転帰およびT2DMの危険性に関して予測的であることが証明されているIRについての他の試験のように、比較可能な代謝状態を反映すべきである。基礎グルコース利用状態と最大グルコース利用状態との間の「ダイナミックレンジ」での血清中インスリン濃度は、これらの基準を満たす(Beysen et al.(2007) Diab Care 30:1143−1149)。さらに、定量的なやり方で動物またはヒトにおける全身の解糖を測定する2H−GDTは、オイグリセミック−高インスリン血症グルコースクランプ試験またはSSPG試験と強く相関する。本発明の範囲において、特に比較的高スループットで、一般的に使用される多くの前臨床動物モデルを対象に、薬剤がインスリン感受性およびインスリン代償反応に及ぼすインビボ効果を決定するためには、前記動的アッセイの利用は、結果として好ましい。加えて、2H−GDTは、簡単さおよびスループットの類似の程度を有する臨床設定に完全に変換される。
【0018】
本発明による医薬組成物の活性成分は、有効量の化合物2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンまたはその薬学的に使用される誘導体である。そのような誘導体は、例として、適合する化合物、塩またはプロドラッグの溶媒和物であり得る。好ましくは、溶媒和物および/または生理学的に許容される塩である。
【0019】
本発明の意味における「医薬組成物」は、医学分野における任意の薬剤であって、1種または複数の物質またはその製剤を含み、インスリン抵抗性および/またはβ−細胞機能障害に関連する疾患に罹患している患者の全体的な状態のまたは生体の特定領域の状態の病原性変異が少なくとも一時的に安定することができるように、予防、治療、経過観察またはアフターケアに使用することができる薬剤である。
【0020】
用語「β−細胞機能障害」は、生存力および/または代謝活性が減少し、その結果β−細胞代償およびインスリンレベルの減少につながる、β−細胞の増殖および/またはそれらの細胞代謝における任意の機能不全を指す。β−細胞機能のそのような損失は、例えば年齢に関連した劣化によって引き起こされるかまたは2型糖尿病へ進行して発症する可能性があるが、他のいずれの原因も除外されないものとする。本発明の範囲において、β−細胞機能障害とインスリン抵抗性との明らかな関係が好ましいため、本発明の医薬組成物は、特に、β−細胞機能障害およびインスリン抵抗性の両方に関連する疾患を標的とする。
【0021】
用語「有効量」、「有効用量」または「用量」は、本明細書において、相互に交換可能に使用され、疾患または病的状態に及ぼす予防的または治療的に関係のある効果を有する医薬化合物の量を表す。予防的効果は疾患の発生を防ぐ。治療的に関係のある効果は、疾患の1つまたは複数の症状をある程度緩和するか、あるいは疾患もしくは病的状態に関連するかまたはその原因となる1つまたは複数の生理学的または生化学的パラメータを一部または完全に正常に戻す。本発明による医薬組成物を投与するためのそれぞれの用量または投与量範囲は、前述の疾患、特にT2DMおよびいずれ出現する前記他の疾患の症状を軽減する所望の予防的効果または治療的効果を達成するのに十分高い。任意の特定のヒトへの投与についての具体的な用量レベル、頻度および期間は、用いられる具体的な化合物の活性、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間および投与経路、排泄率、薬物の組合せならびに具体的な治療が適用される特定疾患の重症度を含む種々の因子によって決まることが理解される。よく知られている手段および方法を使用して、正確な用量を、通常の実験の問題として、当業者の1人によって決定することができる。
【0022】
本発明のやり方で使用される化合物2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよびその調製用の出発原料は、それぞれ、文献(例えば、Houben−Weyl, Methoden der organischen Chemie[有機化学の手法], Georg−Thieme−Verlag, Stuttgartなどの標準的な著作物)に記載されているような、それ自体知られている方法によって、すなわち前記反応に適した既知の反応条件下で製造される。それ自体知られている改変例も使用され得るが、本明細書においてより詳しく言及されない。必要に応じて、出発原料はまた、それらを単離しない状態で粗反応混合物中に残すが、それらをさらに本発明による化合物に直ちに変換することによって、in−situで形成され得る。他方では、反応を段階的に実施することができる。
【0023】
例えば、アルキルベンゾイルグアニジン誘導体の調製方法は、EP0758644B1に記載されている。加えて、EP1282598B1は、スルホニルベンゾイルグアニジウム塩の製造方法を教示しており、ここでは、化合物N−(4,5−ビス−メタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン塩酸塩に関する調製が特に好まれている。N−(4,5−ビス−メタンスルホニル−2−メチルベンゾイル)グアニジン塩酸塩および塩酸塩水和物を調製する別の方法は、DE19951418A1に開示されている。前述の3つの文献は、本明細書によって本発明の開示に参照として組み込まれる。
【0024】
「溶媒和物」は、不活性な溶媒分子が化合物に結合し、それぞれの相互引力によって形成されているものと見なされる。好ましくは、溶媒和物は、一水和物、二水和物(dehydrate)またはアルコラートである。
【0025】
塩の供給は、塩基を使用して、化合物2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンの酸を関連した酸付加塩に変換することによって、例えば、エタノールなどの不活性溶媒中で等量の酸と塩基とを反応させた後、蒸発濃縮によって行うことができる。この反応に適した特定の塩基は、生理学的に許容される塩を生じるものである。例として、前述の化合物の酸は、塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムを使用して、相当する金属塩、特にアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩にまたは相当するアンモニウム塩に変換され得る。特に、エタノールアミンなどの生理学的に許容される塩を生じる有機塩基も、この反応に適している。
【0026】
他方では、酸を使用して、化合物2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンの塩基を関連した酸付加塩に変換することができ、例えば、エタノールなどの不活性溶媒中で等量の塩基と酸とを反応させた後、蒸発によって行うことができる。この反応に適した酸は、特に、生理学的に許容される酸を生じるものである。例として、使用することができるのは、無機酸、例えば硫酸、硝酸、塩酸もしくは臭化水素酸などのハロゲン化水素酸、オルトリン酸などのリン酸またはスルファミン酸、さらに有機酸、特に脂肪族、脂環式、アラリファティック、芳香族または複素環式の、一塩基または多塩基のカルボン酸、スルホン酸または硫酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、ピバル酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、メタンスルホン酸またはエタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンモノスルホン酸およびナフタレンジスルホン酸ならびにラウリル硫酸が挙げられる。生理学的に許容されない酸を有する塩、例えばピクリン酸塩は、化合物2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンの単離および/または精製に使用され得る。
【0027】
好ましい誘導体は、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘミフマル酸塩(hemi-fumerate)およびヘミリンゴ酸塩の群から選択される2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジン塩である。本発明のより好ましい実施形態では、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジン塩酸塩が、医薬組成物の活性成分を表す。
【0028】
医薬組成物はまた、本化合物の混合物および少なくとも単一(singe)の誘導体または誘導体の混合物を含んでよく、それぞれ、例として溶媒和物および/または塩を含み得る。2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジン塩酸塩水和物を使用することが最も好ましい。
【0029】
さらに、薬学的に使用される誘導体には、生体内で本発明の活性化合物2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンに直ちに開裂されるプロドラッグ誘導体、すなわち追加のアルキル基、アシル基、糖分子またはオリゴペプチドを有する修飾化合物が含まれ得る。本明細書において、本発明による化合物の、例えば、Int.J.Pharm.115,61−67(1995)に記載されているような、生物学的に分解可能なポリマー誘導体も含まれる。本発明の化合物は、それをそれらの官能性誘導体から、加溶媒分解、特に加水分解によって、または水素化分解によって遊離させることによって得ることができる。
【0030】
本発明による活性成分はまた、目的地へと方向づけられた輸送、標的細胞内への組み込みおよび/または分布を促進する別の分子と縮合または複合体形成され得る。
【0031】
さらに、活性成分は、単独でまたは他の治療と組み合わせて投与され得る。医薬組成物中に2種以上の化合物を使用することによって、相乗効果が達成され得る。すなわち、化合物2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンは、グリタゾン、エキセナチド、プラムリンチドまたはTZDなどの、活性成分として少なくとももう1つの薬剤と組み合わされる。本化合物は、同時にまたは逐次的に使用することができる。
【0032】
本発明の医薬組成物は、ヒトにおける医薬品および獣医薬として使用することができる。IRおよび/またはβ−細胞機能障害に関連する疾患が、T2DM、メタボリックシンドローム、腎症および/または神経障害によって代表されることが特に好ましい。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の基礎となっている疾患は、T2DMである。医学的適応症「T2DM」は、顕性の耐糖能異常および空腹時高血糖が表れるよりもずっと以前に、IRおよび他の代謝異常の発症を伴う進行性疾患である。
【0034】
医学的適応症「メタボリックシンドローム」は、心血管疾患を発症する危険性を増加させる医学的障害の組合せである。メタボリックシンドロームに分類するには、中心性肥満に加えて、2つのさらなる症状および特徴:空腹時高血糖(2型糖尿病、空腹時血糖異常、耐糖能異常またはインスリン抵抗性によって表される)、高血圧および脂質代謝障害(例えば、HDLコレステロールの減少および/またはトリグリセリドの上昇)が満たされていなければならない。
【0035】
医学的適応症「腎症」は、主に非炎症的に引き起こされる、腎臓および腎機能の疾患を指す。本発明の範囲における興味深いサブタイプは、キンメルスチール−ウィルソン症候群および毛細管内糸球体腎炎としても知られている糖尿病性腎症(diabetic nephropathy、nephropatia diabetica)によって反映されている。糖尿病性腎症は、腎臓糸球体の毛細血管障害によって引き起こされ、ネフローゼ症候群および結節性糸球体硬化症を特徴とする進行性腎疾患である。長年にわたる糖尿病に起因し、多くの西洋諸国における透析の主な原因である。
【0036】
医学的適応症「神経障害」は、通常、末梢神経障害の略である。末梢神経障害は、末梢運動神経、末梢知覚神経および自律神経の、神経全体または選択されたレベルを含む、機能障害および構造障害と定義される。神経障害は、糖尿病などの他の疾患またはアルコール乱用などの神経毒性物質から2次的に生じることが多い。
【0037】
本発明の医薬組成物は、薬品製造工学のためのおよび適切な投与量を有する一般的な固体または液体の担体、希釈剤(diluent)および/または添加剤(additive)および通常のアジュバントを使用して、知られている方法で製造される。単回剤形を製造するために活性成分と組み合わされる賦形剤(excipient)材料の量は、治療される宿主、特定の投与方法に応じて変化する。適した賦形剤には、経腸(例えば経口)、非経口または局所適用などの種々の投与経路に適しており、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンまたはその誘導体と反応しない有機物質または無機物質が含まれる。適した賦形剤の例は、水、植物油、ベンジルアルコール、アルキレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールトリアセテート、ゼラチン、ラクトースまたはデンプンなどの炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、タルクおよびワセリンである。
【0038】
本発明の意味において、「アジュバント」は、同時に、同時期にまたは逐次的に投与される場合、本発明の活性成分に対する特定の反応を可能にするか、増強するかまたは変更するすべての物質を表す。注射溶液用の知られているアジュバントは、例えば、水酸化アルミニウムもしくはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム組成物、QS21などのサポニン、ムラミルジペプチドもしくはムラミルトリペプチド、γ−インターフェロンもしくはTNFなどのタンパク質、M59、スクアレンまたはポリオールである。
【0039】
当該の組成物の活性成分は、錠剤、フィルム錠、コート錠、トローチ剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、ジュース剤、点滴剤、液剤、分散剤、懸濁剤またはそのデポー剤形などの経口投与;液剤、懸濁剤、クリーム剤、軟膏剤、散剤、ジェル剤、乳剤またはバンドエイドなどの経皮投与;坐剤、懸濁剤、乳剤、インプラントまたは液剤、好ましくは油性または水性液剤などの非経口投与(parental administration);特に坐剤などの直腸投与;軟膏剤、クリーム剤、ペースト剤、ローション剤、ジェル剤、スプレー剤、泡剤、エアゾール剤、液剤(例えば、エタノールまたはイソプロパノールなどのアルコール、アセトニトリル、DMF、ジメチルアセトアミド、1,2−プロパンジオールまたはそれらの1つとのおよび/または水との混合物などの溶液)または散剤などの局所適用;および静脈内注入、皮下注射または筋肉内投与、後者3つの例として液剤および懸濁剤などに適した形態に適合する。活性成分は、上記所与の適切な製剤形態における経粘膜、経尿道尿管、経膣または経肺投与に適合することもできる。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、医薬組成物は、経口または非経口投与され、より好ましくは経口投与される。特に、活性成分は、薬学的に許容される塩などの水溶性の形態で提供され、この塩は、酸付加塩および塩基付加塩の両方を含むことを意味する。組成物はまた、1種または複数種の以下のもの:血清アルブミンなどの担体タンパク質、緩衝剤、安定化剤、着色剤などを含み得る。添加剤は、当技術分野においてよく知られており、それらは種々の製剤形態に使用される。
【0041】
さらに、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよびその誘導体は、凍結乾燥されてよく、得られた凍結乾燥物(lyophilizate)は、例えば、注射用製剤を製造するために使用され得る。凍結乾燥物を得るための基本原理は、当業者に知られている。改良された希釈率を有する凍結乾燥物の製造方法は、DE19903275A1に例示的に記載されており、本明細書によって本発明の開示に参照として組み込まれる。
【0042】
示されている製剤は滅菌され、および/または滑沢剤、保存剤、安定化剤、充填剤、キレート剤、酸化防止剤、溶媒、結合剤、懸濁化剤、湿潤剤、乳化剤、塩(浸透圧に影響を及ぼすための)、緩衝物質、着色剤、着香剤および1種または複数種のさらなる活性物質、例えば1種または複数種のビタミン類などの助剤を含み得る。
【0043】
製剤形態中の予防的にまたは治療的に活性な成分の濃度は、約0.1から100wt%まで変化し得る。好ましくは、化合物2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンまたはその誘導体は、用量単位当たり、およそ1から600mgまで、より好ましくは5から100mgの間の用量で投与される。一般に、そのような用量範囲は、1日の総組込み(total daily incorporation)に適している。言い換えれば、日用量は、0.02から200mg/kg体重との間、好ましくは20から100mg/kg体重との間、より好ましくはおよそ0.02から10mg/kg体重との間である。しかし、各患者に対する特定の用量は、本明細書において既に記載されている幅広い種類の因子によって決まる。
【0044】
本発明はまた、インスリン抵抗性および/またはβ−細胞機能障害に関連する疾患の予防上もしくは治療上の処置および/またはモニタリングのための医薬品を製造するための、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよび/またはその生理学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用に関する。さらに、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよび/またはその生理学的に許容される塩および/または溶媒和物は、さらなる医薬品活性成分を調製するための中間体として用いることができる。医薬品は、例えば、活性成分を、少なくとも1種の固体、流動体および/または半流動体の担体または賦形剤と組み合わせることによって、および場合によって、適切な剤形中に単一種のまたは複数種の他の活性物質と併せて、非化学的なやり方で調製されることが好ましい。
【0045】
医薬品は、インスリン抵抗性および/またはβ−細胞機能障害に関連する疾患の開始を前もって防ぐために、または生じている症状および継続している症状を治療するために使用することができる。本発明に関するような疾患は、好ましくはT2DMおよび/またはその関連疾患であり、後者は、メタボリックシンドローム、糖尿病性腎症および糖尿病性神経障害の群から選択されることがより好ましい。医薬組成物に関する本明細書の先行教示は、前記疾患の予防および治療のための医薬品を製造するための、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよびその誘導体の使用に制限されることなく、有効であり適用できる。
【0046】
本発明の前述の医薬製品の用途は、特に治療上の処置に使用される。例えば、反応を促進し、疾患の症状を完全に根絶するために、化合物が明確な間隔をおいて投与されるならば、モニタリングは一種の治療と見なされる。同一の化合物または異なる化合物のいずれかが適用され得る。本発明の意味において、対象が家族性素因、遺伝的欠陥または以前に経験した疾患などの、T2DMを発現するためのいずれかの前提条件を所有している場合、予防上の処置は勧めることができる。
【0047】
本発明の目的はまた、インスリン感受性の増強および/またはβ−細胞代償の保持または増加のための、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよび/またはその生理学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用である。本明細書において、保持とは、測定方法および生体が関与しているという事実によって引き起こされる正規の統計範囲内で、類似の値を指す。最大10%の標準偏差は、保持と見なされるものとし、好ましくは最大わずか3%のみである。それに反して、インスリン感受性は、初期値を顕著に超える。インスリン感受性は、少なくとも2倍になり、好ましくは少なくとも3倍になり、より好ましくは少なくとも4倍になり、最も好ましくは少なくとも5倍になる。
【0048】
本明細書の以前のパラグラフによる使用は、インビトロモデルまたはインビボモデルのいずれかで行われ得る。それらのβ−細胞は、それら自体劣化を受けやすい、すなわち、それらはそれぞれ機能を自然に損失するかもしくはアポトーシスを受けるか、または前アポトーシス物質などの年齢促進物質に曝されるかのいずれかである。同様に、体細胞は、それら自体インスリン抵抗性であり得る、すなわち、インスリンの正常量が正常なインスリン反応を起こすには不十分であるか、またはコルチゾン、TNF−α、PAl−1もしくはレジスチンなどのIR促進薬に曝され得るかのいずれかである。防止される加齢プロセスおよび感作されるインスリン反応の両方を、本明細書の中で記載されている技術によってモニターすることができる。インビトロ使用は、T2DMに罹患しているヒトのサンプルに適用されることが好ましい。化合物2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンのいくつかの具体的な誘導体を試験することによって、ヒト対象の治療に最適であり得るような活性成分が選択される。選ばれた誘導体のインビボ用量率は、有利なことに、インビトロのデータを考慮して、それぞれの具体的な細胞の劣化感受性および/またはIRの重症度に対して前調整される。したがって、治療効果は著しく高められる。その上、予防上もしくは治療上の処置および/またはモニタリングのための医薬品を製造するための、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよびその誘導体の使用に関する本明細書の事前教示は、得策であれば、低減されたβ−細胞代償を予防し、IRを増加させるための化合物の使用に制限されることなく、有効であり適用できると見なされる。
【0049】
本発明の別の目的は、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、腎症および/または神経障害を治療するための方法であって、有効量の2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよび/またはその生理学的に許容される塩および/または溶媒和物を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与する方法を提供することである。治療される哺乳動物は、特にヒトである。好ましい治療は、経口または非経口投与である。T2DMを有する患者またはIRが存在することに基づいてT2DMを発症する危険性を負っている人々の、NHE1阻害剤である2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンを用いた治療は、これらの個々における全身のインスリン感受性を改善し、IRを好転させる。本発明およびその実施形態の先行教示は、得策であれば、治療の方法に制限されることなく、有効であり適用できる。
【0050】
本発明の範囲において、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンは、インスリン抵抗性および/またはβ−細胞機能障害に関連するヒトの疾患の予防上もしくは治療上の処置および/またはモニタリングに、初めて使用される。本発明は、長期のインスリン抵抗性に反応して、β−細胞代償の役割に対処する。前述の効果は、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンが、末梢のインスリン感作物質として(膵臓に負わせる分泌の義務を軽減することによって、β−細胞機能を2次的に保持すること)もしくは直接的なインスリン分泌促進物質として(組織へのインスリン投与(insulinization)を増加することによって、インスリン感受性を2次的に改善すること)のいずれかまたはその両方として働くように相互に関係付けられる。本発明による医薬組成物を提供する結果として、インスリン感受性が増加すると同時に、年齢に関連したβ−細胞機能(代償)の減少を防ぐが、逆にはなり得ない。その使用は、症状の直接的および即時の軽減をもたらす広範囲の治療に対する有望な新規アプローチである。その影響力は、T2DMおよびT2DMから生じる疾病と効率良く闘うには特に利益となる。本化合物およびその誘導体は、高い特異性および安定性;低い製造コストおよび取り扱いの都合良さを特徴とする。これらの特徴が、交差反応性および副作用がないことを含む再生可能な作用のためのならびに適合する標的構造との安全で信頼性がある相互作用のための基礎を形成している。
【0051】
本発明は、本明細書に記載されている特定の医薬組成物、使用および方法に限定されず、そのような事柄自体は、言うまでもなく、変化し得るということが理解されるべきである。また、本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態を記載する目的のみのためであり、添付の特許請求の範囲によってのみ規定される本発明の範囲を限定することを目的としたものではないということも理解されるべきである。添付の特許請求の範囲を含む本明細書において使用される場合、「a」、「an」および「the」などの、語の単数形は、その状況が他に明確に規定しない限り、相当するそれらの複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「活性成分」への言及は、単一のまたはいくつかの異なる活性成分を含み、「方法」への言及は、当技術分野における普通の技術者に知られている複数の同等のステップおよび方法などへの言及を含む。他に特に定義しない限り、本明細書において使用される科学技術用語はすべて、本発明が属する技術分野における普通の技術者によって共通に理解されているものと同じ意味を有する。
【0052】
本明細書において記載されているものと類似のまたは同等の方法および原料を、本発明の診療または試験に使用することができるが、適した例を以下に記載する。以下の例は、例証として提供されるものであり、限定するためのものではない。例の中では、(実際にはいつでも)汚染活動がない標準試薬および緩衝剤が使用される。
【0053】
図1は、処置中の8〜12週齢のZF(fa/fa)ラットの体重を示す(平均+/−SD、n=12)。
【0054】
図2は、処置中の8〜12週齢のZF(fa/fa)ラットの朝のランダム血糖値を示す(平均+/−SD、n=12、*p<0.05)。4週目のデータは、GDT群由来の4時間絶食後のグルコース表示値である。
【0055】
図3は、4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける空腹時血中グルコースレベルを示す(平均+/−SD、n=6)。
【0056】
図4は、4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける空腹時インスリンレベルを示す(平均+/−SD、n=6、*p<0.01)。
【0057】
図5は、4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける経口グルコース負荷に対するインスリン反応(インスリンAUC)を示す(平均+/−SD、n=6、GDT、*p<0.01 対処置前)。
【0058】
図6は、4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける経口グルコース負荷に対するグルコース反応(グルコースAUC)を示す(平均+/−SD、n=6、GDT)。
【0059】
図7は、4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける重水素化グルコース処理試験(2H−GDT;90分%D2O回収率)によって定量化された膵臓の代償を示す(平均+/−SD、n=6、GDT群、*p<0.01)。
【0060】
図8は、4週間の処置の後、12週齢のZF(fa/fa)ラットにおける重水素化グルコース処理試験(2H−GDT;%D2O回収率/インスリンAUC)によって定量化されたインスリン感受性を示す(平均+/−SD、n=6、*p<0.01)。
【0061】
図9は、薬物処置期間中のZucker fa/faラットおよび痩せた対照ラットの体重を示す。データは、平均+/−標準偏差;n=6/群(エラーバーは、印によって隠されている);対照fa/faラットとは*p<0.01である。
【0062】
図10は、週1回、およそ午前9時に決定されたランダム血糖値を示す。各群間に有意差はなかった。データは、平均+/−標準偏差;n=6/群である。
【0063】
図11は、4週間の薬物処置中における、グルコメーターの表示値によって決定された4時間空腹時血中グルコース濃度を示す。データは、平均+/−標準偏差;n=6/群;#痩せた対照とは異なっている(ボンフェローニ(Bonferroni)の事後検定)。
【0064】
図12は、1週間おきに決定した、4時間絶食後のインスリン濃度を示す。データは、平均+/−標準偏差;n=6/群;*fa/fa固形飼料(媒体)対照とは有意に異なっている。
【0065】
図13は、前処置に関し、薬物処置開始前のGDT中、グルコースチャレンジに反応した血中グルコース濃度およびインスリン濃度を示す。データは、平均+/−標準偏差(エラーバーは、いくつかの群の印によって隠されている);化合物A80mg/kgおよび痩せた対照についてはn=6;fa/fa媒体、化合物A40mg/kg、化合物B40mg/kgについてはn=5;化合物B80mg/kgについてはn=4;*fa/fa媒体対照とは異なっている;#痩せた媒体とは有意に異なっている。図13aは、グルコースチャレンジに反応した連続時点での濃度を示す。図13bは、図13aにグラフで示したグルコース反応の濃度曲線下面積(AUC60分)を示す。図13cは、グルコースチャレンジに反応した連続時点での濃度を示す。図13dは、図13cにグラフで示したインスリン反応のAUC60分を示す。図13bおよび13dについては、異なる群が棒によって表されており、左から右へ:痩せた媒体、fa/fa−媒体、化合物A40mpk、化合物A80mpk、化合物B40mpk、化合物80mpkである。
【0066】
図14は、2週間の薬物処置に関し、薬物処置開始後2週目のGDT中、グルコースチャレンジに反応した血中グルコース濃度およびインスリン濃度を示す。データは、平均+/−標準偏差(エラーバーは、いくつかの群の印によって隠されている);fa/fa媒体、化合物A40mg/kg、化合物A80mg/kg、化合物B40mg/kgおよび痩せた対照についてはn=6;化合物B80mg/kgについてはn=4;*fa/fa固形飼料媒体とは異なっている;#痩せた媒体とは有意に異なっている。図14aは、グルコースチャレンジに反応した連続時点でのグルコースの濃度を示す。図14bは、図14aにグラフで示したグルコース反応の濃度曲線下面積(AUC60分)を示す。図14cは、グルコースチャレンジに反応した連続時点でのインスリンの濃度を示す。図14dは、図14cにグラフで示したインスリン反応のAUC60分を示す。図14bおよび14dについては、異なる群が棒によって表されており、左から右へ:痩せた媒体、fa/fa−媒体、化合物A40mpk、化合物A80mpk、化合物B40mpk、化合物80mpkである。
【0067】
図15は、4週間の薬物処置に関し、薬物処置開始後4週目に行った3回目のGDT中、グルコースチャレンジに反応した血中グルコース濃度およびインスリン濃度を示す。データは、平均+/−標準偏差(エラーバーは、いくつかの事例において印によって隠されている);fa/fa固形飼料、化合物A40mg/kg、化合物B40mg/kgおよび痩せた対照についてはn=6;化合物A80mg/kg、化合物B80mg/kgについてはn=5;*fa/fa固形飼料媒体とは異なっている;#痩せた対照とは異なっている。図15aは、グルコースチャレンジに反応したグルコースの濃度を示す。図15bは、図15aにグラフで示したグルコース反応の濃度曲線下面積(AUC60分)を示す。図15cは、グルコースチャレンジに反応した連続時点でのインスリンの濃度を示す。図15dは、図15cにグラフで示したインスリン反応のAUC60分を示す。図15bおよび15dについては、異なる群が棒によって表されており、左から右へ:痩せた媒体、fa/fa−媒体、化合物A40mpk、化合物A80mpk、化合物B40mpk、化合物80mpkである。
【0068】
図16は、前処置(a、b)、処置開始後2週間(c、d)および処置開始後4週間(e、f)にグルコースチャレンジに反応したインスリン感受性(a、c、e)および膵臓の代償(b、d、e)を示す。*媒体処置(固形飼料)fa/faとは有意に異なっている;#痩せた対照とは有意に異なっている(ANOVA後のチューキー(Tukey)検定)。図16a〜16fについては、異なる群が棒によって表されており、左から右へ:痩せた媒体、fa/fa−溶媒、化合物A40mpk、化合物A80mpk、化合物B40mpk、化合物80mpkである。
【実施例】
【0069】
薬理学的研究報告I
研究デザイン
肥満したインスリン抵抗性のZF(fa/fa)ラットを、8から12週齢まで処置する、IRモデルとして使用した。特に断りのない限り、ラットは12時間点灯/12時間消灯のサイクルで飼育し、飼料および水を自由に摂取させた。研究は、Institutional Animal Care and Use Committeeによって承認された。研究には、合計18匹の動物(Charles Riverによって供給された8週齢の雄)がいた。研究開始時のランダム血糖値に基づいて、動物を3群(媒体群、化合物A群、化合物B群、各群n=6)にランダム化した。
【0070】
グループ1:ZFラット(fa/fa)(n=6)、化合物A(強制飼養によって150mg/kg)
グループ2:ZFラット(fa/fa)(n=6)、化合物B(固形飼料への混合物として40mg/kg/日)
グループ3:ZFラット(fa/fa)(n=6)、媒体処置(対照固形飼料、溶媒強制飼養)。
【0071】
グループ1および3の動物に、化合物Aまたは媒体(水)を、4週間(8から12週齢まで)経口強制飼養によって1日2回処置した。化合物Bを含む固形飼料をグループ2に自由に与えた。グループ1およびグループ3には、化合物Bを含まない固形飼料を自由に与えた。
【0072】
化合物Aは、カリポリドに相当する。化合物Bは、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジン塩酸塩水和物に相当する。
【0073】
血液採取および血漿中グルコースおよびインスリンアッセイ
朝のランダムな血液を、飼料を自由に与えられたラットから、尾の先端の小さな切り口によって採取した。血液は、ヘパリン添加チューブに収集した。血中グルコース濃度を、研究デザイン毎として、One−Touchグルコメーター(Lifescan Inc、Milptias、CA)を使用して測定した。血液サンプルを氷上に設置して遠心分離し、インスリンをアッセイするまで、血漿を−20℃で保管した。ラットにおける血漿中インスリン濃度を、ラット特異的ELISAキット(Crystal Chem Inc、Downers Grove、IL)を用いて測定した。
【0074】
2H−GDT
ラットを4時間絶食させた。2H−GDTチャレンジより1時間前に、ラットに1.75mg/g体重のH2O18(10%18O、Spectra、X XX)を経口強制飼養によって投与して、以前に記載されているような体内総水分量の測定を可能にした。t=0において、血中グルコース濃度をグルコメーターを用いて決定し、血液サンプルを得、ベースラインとなるインスリンおよびH2O18希釈度を決定した。次いで、動物に、[6,6'−2H]グルコース(2g/kg体重、水中50%、Cambridge Isotope Laboratory、Inc.、Andover、MA)を経口強制飼養によって投与した。ラットプロトコルにおいて使用した2g/kg経口グルコース負荷は、所望のダイナミックレンジの範囲内またはその付近のグルコースレベルを達成した。2回目の血液サンプルをt=30分に収集し、グルコース濃度およびインスリン濃度ならびに2H2O含有量を決定した。
【0075】
重水標識化プロトコル
動物に、0.9%NaCl中99%重水を腹腔内ボーラス投与(0.35μl/g体重)し、大体5%(体重の60%を水と推定して使用)の体内水分強化量に到達させ、次いで、研究の最後の4週間に飲料水中8%2H2Oを投与した。このプロトコルによると、齧歯動物において、体内水分2H2O強化量は、2、3日以内に安定な定常状態値に到達する。
【0076】
IRMS分析
血漿サンプルの100マイクロリットルアリコートをバイアルの突端部(cape)の内側に入れ、これを逆さにして、ガラス玉で充填されている加熱ブロックに、70℃で一晩置き、バイアルの内部の留出水分を収集した。血漿サンプルにおける血液の重水素および酸素−18同位体比は、Conflo−III Interfaceを介してThermo Finnigan MAT 253 IRMSと連結したThermo Finnigan High Temperature Conversion/Elemental Analyzerを使用して決定した。以前のサンプル由来のヒステリシス効果を最小限に抑えるために、最初の2回の測定値を廃棄した。重水素同位体存在量は、最初に、国際VSMOW標準に対してδ2H値で算出され、次いで、既知の強化量を有する標準の検量線を使用することによって、APEに変換された。2H2O強化量を、グルコース負荷後30分に、ラットについて算出した。強化量にTBWプールサイズを掛け、20(MW 2H2O)で割ることによって、2H2O強化量をmmoleに換算した。生成した総2H2Oを、所与の[6,6'−2H2]グルコース負荷の百分率として算出した。血漿インスリン(INS AUC)およびグルコース(GLU AUC)の濃度曲線下面積は、台形法を使用して算出した。2つの2H−GDTパラメータを算出した:1)2H2O生成量(%負荷)/INS AUC×GLU AUCおよび2)2H2O生成の絶対率(%負荷)。
【0077】
結果
体重
体重に関して(図1)、媒体処置群、化合物A処置群または化合物B処置群との間に有意差はなかった。
【0078】
朝のランダム血糖値
朝のランダム血糖値を、毎週午前9時から11時の間に測定した。この研究の4週間の間、朝のランダム血糖値に関して、化合物B処置群と媒体処置群との間に有意差はなかった(図2)。しかし、化合物A処置群は、他の2群と比較して、本研究の終わりまでに、より低い血糖値へと向かう傾向にあった。
【0079】
空腹時グルコースレベルおよび空腹時インスリンレベル
研究終了時、ラットを4時間絶食させ、グルコースレベルおよびインスリンレベルを測定した。化合物A処置動物および化合物B処置動物における空腹時グルコースレベルは、処置後により低い値へと向かう傾向にあったが、媒体処置群では、治療前と治療後で有意差はなかった(図3)。化合物A処置動物および化合物B処置動物の両方において、それらの処置前のレベルと比較して、空腹時インスリンレベルが有意により低かった(図4)。
【0080】
GDT
すべての動物は4週処置前および処置後の両方で2H−GDTを受けた。2H−GDTのために動物を4時間絶食させた。2H−GDTチャレンジより1時間前に、ラットに1.75mg/g体重のH218Oを経口強制飼養によって処置して、総水分含量の測定を可能にした。t=0分において血液サンプルを得、ベースラインのインスリン、グルコースおよびH218O希釈度を決定した。次いで、[6,6'−2H2]グルコース(2g/kg体重、水中50%)を動物に経口強制飼養によって処置した。グルコース濃度およびインスリン濃度ならびに2H2O含有量のために、90分時点で連続的に血液サンプルを採取した。膵臓の代償の適切さは、達成されたグルコース利用の絶対率(IRに対する膵臓の代償を反映している)と周囲のインスリンの単位当たりの処置グルコースの解糖処理(インスリン感受性を反映している)とを識別することによって評価した。β−細胞代償を、経口[6,6'−2H2]グルコース負荷後の%2H2O回収率として表し、インスリン感受性をインスリンAUC当たりの%2H2O回収率として表す。
【0081】
インスリンAUCレベル(図5)またはグルコースAUCレベル(図6)に関して、処置前または処置後のいずれも3群間に有意差はなかった。経口グルコース負荷中のグルコースAUCは、空腹時グルコースレベルと類似の傾向に従った。図を見ても分かるように、大きな標準偏差が見られたが、これは生理学的な変動を表していると思われる。しかし、処置後すべてのインスリンAUCレベルが、処置前と比較して有意により低かった。媒体処置動物における低下は、ZFラットの加齢(8から12週齢まで)によるβ−細胞劣化の自然な過程を表していると思われる。
【0082】
化合物A処置動物および化合物B処置動物におけるインスリンAUCの変化は、年齢に関連した劣化によって引き起こされ得るかまたはインスリン感受性が改善されたためにインスリン必要性が低減されたことによって引き起こされ得るかのいずれかであるので、その理由をGDT測定によって明らかにした。膵臓の代償に関して、処置前および処置後の両方とも、各群間に有意差はなかった。しかし、処置前および処置後の代償を各群内で比較したところ、媒体群および化合物A群の両方が処置後に膵臓のより低い代償を示しており(図7)、これは、ZFラットにおけるβ−細胞機能障害の自然な進行のためである可能性が最も高いことが明らかとなった。これとは対照的に、化合物Bを処置したZFラットは、ベースラインに存在したのと同程度の膵臓の代償を維持していた。これらの結果は、化合物B処置のみに反応したβ−細胞機能の保持を示唆している。
【0083】
これらの所見と一致して、GDTによって測定したインスリン感受性(図8)は、化合物B処置動物が、処置前の値と比較して、インスリン感受性を有意に増加させる(約4倍)一方で、処置後のインスリン感受性に関して、媒体処置群および化合物A処置群に、処置前と比較して有意な変化はないが、両群で増加値へと向かう傾向にあることを示した。したがって、化合物Bによって表されている2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジン塩酸塩水和物は、インスリン感受性を有意に増加させ、β−細胞代償における年齢に関連した低減を防ぎ、このことは、処置後のインスリンAUCの減少は化合物B処置動物に生理学的であることを示した。これらの結果はまた、インスリン抵抗性のモデルにおいて、インスリン濃度を評価する場合に、インスリン感受性を特徴づける必要性を強調した。
【0084】
薬理学的研究報告II
研究デザイン
以前の2H−GDT研究(薬理学的研究報告I)では、Zucker fa/faラットにおいて、化合物Bはインスリン感受性(SI)を増加させ、β−細胞反応性(膵臓の代償)を増加または維持した。しかし、この研究では、ベースラインの空腹時インスリンレベルは各群間で異なった。ランダム血糖、空腹時グルコースまたはグルコースAUCに関して、処置群のいずれにも変化がなかったという事実にもかかわらず、空腹時インスリンレベルおよびインスリンAUCに関して、全群の動物に全体的な減少が見られた。本研究の目的は、化合物AおよびBがSIおよび膵臓の代償(PC)に及ぼす効果の、最初の観察結果を確認することであった。第2の目的は、経口グルコース負荷に対するグルコースおよびインスリンの反応に及ぼす薬物の効果の経時的変化をより十分に明確にすることであった。以前の研究から多くの変更を行った。
【0085】
1.化合物AおよびBは、毎日の経口強制飼養のストレスを除去するために、飼料と混合した。食餌中に薬物が存在しても、摂餌量に悪影響を及ぼさず、血漿中の薬物の許容される濃度を与えるであろう。
【0086】
2.最終結果における偏りの可能性を除去するために、Zucker fa/faラットを、体重、空腹時グルコース濃度および空腹時インスリン濃度ならびにグリコシル化ヘモグロビンA1cレベル(Gly−HbA1c)の予備測定の結果に基づいて、処置群に割り付けた。
【0087】
3.空腹時グルコース濃度および空腹時インスリン濃度を毎週決定した。
【0088】
4.2H−GDTは、0、14および28日目に実施した。加えて、インスリンおよびグルコース反応の両方をより十分に明確にするために、2H−GDT中、血中グルコースレベルおよびインスリンレベルを、0、15、30、60および90分に決定した。
【0089】
5.処置によって達成されるグルコース恒常性の全体的な改善については、いずれも追加の評価を提供するために、グリコシル化HbA1cレベルを、0および28日目に決定した。
【0090】
6.痩せた対照群を、本研究に含めた。
【0091】
対象
Charles Riverから入手した36匹の肥満したZucker fa/faおよび6匹の痩せたZucker fa/?雄ラットを、通常の動物施設条件化で、12時間点灯/12時間消灯のサイクルで飼育した。ラットをケージに2匹ずつ飼育し、毎週4時間の絶食中を除き、飼料および水を自由に摂取できるようにした。水は、これらの絶食中にも摂取できる状態にし続けた。
【0092】
薬物
化合物Aは、カリポリドに相当する。化合物Bは、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジン塩酸塩水和物に相当する。化合物AおよびBは、Merck Seronoによって散剤形態で供給された。薬物は、およそ40または80mg/kgの用量を得るために、Research Diets、lnc(New Brunswick、NJ)によって、ペレット状の食餌(LabDiet、5001)に食餌1kg当たり0.44gまたは0.88gの濃度で組み込まれた。濃度は、300gのラットは約30g/dの固形飼料を食べるであろうという仮定に基づいて算出された。同一の固形飼料であるが薬物を含まないものを、痩せた対照群動物およびfa/fa対照群動物の両方のラットに与えた。
【0093】
群割り付け
研究開始より1週間前に、すべてのラットの体重を測定した。4時間の絶食後、血液サンプルを得、血中グルコース、インスリンおよびグリコシル化ヘモグロビンレベル(HbA1c)を決定した。次いで、動物を、これらのパラメータに基づいて、下記に掲載されている群に分けた。ラットは、処置開始時に8週齢であった。
【0094】
処置群:
1.ZFラット(fa/fa)(n=6)薬物を含まない固形飼料
2.ZFラット(fa/fa)(n=6)化合物A(40mg/kg/日)
3.ZFラット(fa/fa)(n=6)化合物A(80mg/kg/日)
4.ZFラット(fa/fa)(n=6)化合物B(40mg/kg/日)
5.ZFラット(fa/fa)(n=6)化合物B(80mg/kg/日)
6.痩せたZuckerラット(fa/?)(n=6)薬物を含まない固形飼料。
【0095】
投与計画
処置に適切な固形飼料は、1週間に1回行われる予定された4時間の絶食中を除いて、4週間継続的に摂取可能であった。
【0096】
体重および摂餌量
個々の体重を1週間に1回決定した。ケージ当たりの平均摂餌量も1週間に1回決定し、個々のラットの摂餌量は、ケージ平均を2で割る(1ケージ当たり2匹のラットが飼育されている)ことによって算出した。
【0097】
グルコースレベルおよびインスリンレベル
ランダム血糖値および空腹時(4時間)血中グルコースレベルの決定は、尾の毛細血管サンプルから得られた血液上で、手持ち式グルコメーター(OneTouch Ultra、Lifescan、Inc.Milapitas、CA)を使用して行った。血漿中インスリンレベルを、ラット特異的ELISA(Ultra Sensitive Rat Insulin ELISA Kit、Crystal Chem、Inc.、Chicago、IL)によって決定した。4時間の絶食期間は、午前9時に開始し、午後1時に血液採取後、終了した。
【0098】
HbA1cレベル
HbA1cレベルの決定は、研究開始より前および4週目の処置期間終了時に再度、DCA2000分析器(Bayer Healthcare LLC、Elkhart IN)を使用して行った。
【0099】
2H−GDT
インスリン感受性(SI)および膵臓の代償(PC)は、0、14および28日目に2H−グルコース処理試験を行うことによって測定した。
【0100】
時間−4h:GDTの朝に絶食を開始する前に、血液サンプルを採取してランダム血糖値(上記参照)を決定した。追加の血液サンプルを収集し、ベースラインの2H2Oおよび18O強化量を決定した。ラットの体重を測定し、4時間の絶食を開始した。水は絶食中に摂取可能であった。
【0101】
時間−3h:絶食開始後1時間目に、1.75mg/g体重の10%H218Oを経口強制飼養によって処置した(Spectraからの2H2O−遊離H2O18水;10%18O原子;カタログ番号51350)。
【0102】
時間0:絶食開始後4時間目に、血中グルコースレベルおよびインスリンレベルを決定した。ラットに4ml/kgの50%グルコース溶液(25%[6,6−2H2]グルコースおよび25%D−グルコースを含む)を経口強制飼養によって処置した。
【0103】
グルコースチャレンジ後の時間15、30、60および90分目に、血中グルコース濃度を、尾静脈血からグルコメーター表示値によって再度決定した。追加の血液サンプルを収集し、インスリンを決定した。グルコースチャレンジ後60および90分に、全血を収集し、2H2OおよびH218O強化量を決定した。すべての血液サンプルを遠心分離し、血漿をアッセイするまで−20℃で保管した。体内水分の重水素および酸素−18同位体強化量を、血漿サンプルの留出水分のIRIS分析によって決定した。
【0104】
算出
強化量(2H2O APE)に体内総水分量プールサイズを掛け、20(2H2Oの分子量)で割ることによって、2H2O強化量をmmolに換算した。生成した総2H2Oを、処置した[6,6'−2H2]グルコース負荷の百分率として算出した。血漿インスリンおよびグルコースの濃度曲線下面積(AUC 60分)は、台形法を使用して算出した(GraphPad Prsim)。
【0105】
2つのパラメータを2H−GDTから算出した
1.インスリン感受性指数(SI)=2H2O生成量(%負荷)/(グルコースAUC×インスリンAUC)。
【0106】
2.膵臓の代償(PC)=総[6,6'−2H2]グルコース負荷の百分率としての絶対2H2O生成量(%負荷)/積分されたグルコース反応(グルコースAUC;インスリン非依存性の利用について補正するため)。
【0107】
統計
グルコースおよびインスリン測定の全体的な結果を、要因として薬物および時間(反復)を使用する二元配置反復測定ANOVAによって分析した。最初の分析の後に、ボンフェローニの事後検定を行い、全群を比較した。データは、p<0.05で有意であると見なす。グルコースおよびインスリンのAUC60分値を、一元配置ANOVAによって分析した後、チューキーの全群比較を行った。
【0108】
データ除外
2H−GDT中、グルコース投与の失敗または部分的な失敗が原因で、強化が十分でないことが示されたデータを除外した。
【0109】
結果
研究前の群割り付け
研究開始時にfa/fa群間に有意差はなかった。予想通り、痩せた動物の体重および空腹時インスリンレベルは、すべてのfa/fa動物とは有意に異なった。グリコシル化ヘモグロビンおよび空腹時グルコースレベルは、痩せた動物においてやや低かったものの、これらの値が他の処置群の値と有意に異なっていなかった(表1)。
【0110】
【表1】
【0111】
体重および摂餌量
すべての動物は、実験期間中に体重が増え続け、このことは、薬物が良好に忍容されたということを示した(二元配置反復測定ANOVA後、ボンフェローニの事後検定:時間:F(4,136)=1488.41、p<0.0001;処置:F(6,36)=31.02、p<0.0001、交互作用 処置×時間:F(24,136)=12.69、p<0.0001)。4週間の処置期間にわたって、体重に関する有意差は、fa/fa群間に認められなかったが(図9)、痩せた対照群と比べて増加した。化合物A群および化合物B群の平均週間摂餌量は、痩せた対照と比較して増加したが、固形飼料を与えたfa/fa対照の摂餌量とは有意に異なっていなかった(表2)。
【0112】
【表2】
【0113】
ランダム血糖値
ランダム血糖値を、絶食していないラットにおいて、1週間に1回、およそ午前9時に決定した。固形飼料fa/fa群と他の処置群とのランダム血糖値の間には有意差はなかった(図10)(二元配置反復測定ANOVA後、ボンフェローニの事後検定:処置F6,136=0.93;p=0.48ns;時間:F4,136=3.25、p=0.01;交互作用F24,136=0.97、p=0.51ns)。
【0114】
空腹時血中グルコースレベル
空腹時血中グルコースを、1週間に1回、4時間の絶食後に決定した(午前9時に絶食、午後1時にサンプル採取)。種々の薬物処置群におけるグルコースレベルは、対照fa/fa群とは有意に異なっていなかった(図11)。化合物Aの40mg/kg用量は、4週間の投与の後に空腹時グルコース濃度が増加した(二元配置反復測定ANOVA後、ボンフェローニの事後検定:処置F6,136=5.26;p=0.0006;時間:F4,136=7.68、p=0.0001;交互作用F24,136=0.97、p=0.51ns)。
【0115】
空腹時インスリン濃度
ベースラインおよび処置4週後の空腹時インスリン濃度を、表3にまとめる(二元配置反復測定ANOVA後、ボンフェローニの事後検定:処置F6,36=11.24、p<0.0001;時間:F6,36=9.48、p<0.0001;交互作用F24,136=3.21、p<0.0001)。痩せた対照のインスリン濃度は、固形飼料を与えたfa/fa対照の濃度とは、3週目以外の各週で有意に異なっていた。処置4週目までに、80mg/kgの化合物Aは両方とも、fa/fa媒体対照と比べて、空腹時インスリンを有意に減少させた。しかし、これらの値は、痩せた対照の値を超えたままであった(図12)。
【0116】
グリコシル化ヘモグロビン
HbA1cレベルは、経時的な血糖コントロールを反映している。ベースラインでは、すべてのfa/fa群の平均HbA1cレベルは、有意にとはいえなかったが、痩せた対照のレベルをやや超えていた。4週目では、fa/fa対照群および化合物B80mg/kg群のHbA1cレベルは、痩せた対照のレベルを有意に超えていた(表3)。4週間の処置期間にわたって、HbA1cの変化は、いずれの処置群間でも統計的に有意ではなかった(表3)。
【0117】
【表3】
【0118】
2H−グルコース処理試験
化合物AおよびBが膵臓の機能およびインスリン感受性に及ぼす効果を決定するために、動物を離乳させ薬物を含む固形飼料に切り替える前、次いで薬物処置2週後および4週後に、ラットを2H−GDTに供した。
【0119】
処置前2H−GDTグルコースおよびインスリン反応
薬物処置開始前のグルコースチャレンジに反応して、血中グルコース濃度は、痩せた対照に比べて、すべてのfa/faラットにおいて増加した(図13a)。60分の時点では、割り付けられることになる40および80mg/kg化合物A群の両方のグルコースレベルが、fa/fa媒体に割り付けられることになる動物のレベルを超えて増加した。しかし、グルコースAUC(60分)は、fa/faラットの全群が、痩せた対照に比べて、類似の程度の経口耐糖能異常を有することを示した(図13b)。ベースラインでは、2H−GDTチャレンジ中、すべてのfa/fa動物は、痩せた対照と比較して、類似の程度の障害された高インスリン血症を示した(図13c、d)。
【0120】
2週目の2H−GDTグルコースおよびインスリン反応
薬物処置開始後2週目に、すべてのfa/fa動物は、痩せた対照に比べて、血中グルコース濃度が有意に増加した(図14a、b)。同様に、すべてのfa/fa動物は、痩せた対照に比べて、インスリン濃度が増加した(図14c、d)。化合物AおよびBは、処置2週後のグルコースまたはインスリン反応に影響を及ぼさなかった。
【0121】
4週目のGDTグルコースおよびインスリン反応
薬物処置開始後4週目に、化合物A(40および80mg/kg)および化合物B(40および80mg/kg)を処置したラットは、血中グルコース濃度およびインスリン濃度が上昇し続けた(図15a、b、c、d)。実際に、90分時点では、グルコースレベルは、化合物A40mg/kg処置群において、fa/fa媒体処置ラットのレベルを超えて上昇した。80mg/kgでは、化合物Bは、血中グルコースレベルをわずかに減少させたが、この値は、痩せた媒体ラットまたはfa/fa媒体対照のレベルと有意に異なっていないレベルであった。インスリン濃度は、80mg/kg化合物B群において、上昇したままであった。
【0122】
膵臓機能およびインスリン感受性
前処置
ベースラインで決定したインスリン感受性および膵臓の代償は、すべてのfa/fa群において類似しており(図16a、b)、痩せた対照と比較して有意に減少した。このことは、fa/faラットがそれらの重症のインスリン抵抗性に対して代償する能力は不十分であり、それらの耐糖能に寄与することを示している。後に80mg/kgの化合物Bを処置される動物群に見られた、膵臓の代償に関する明白な減少は、実験的な人為現象であると見なされ得る。その理由として、この減少は後の時点では見られず、同時に行われた他の尺度(例えば、体重、空腹時グルコースまたはインスリン濃度)で、これらの動物には差がなかったためである。PCに関するANOVAの結果:F6,29=33.02、p<0.0001;SIに関しては:F6,29=35.8、p<0.0001。
【0123】
2週間の処置
2週間の処置の後、化合物Bにおける膵臓の代償は、80mg/kg群が痩せた対照群とfa/fa対照群との中間にあった(図16c、d)。PCに関するANOVAの結果:F6,32=9.121、p<0.0001;SIに関しては:F6,32=132.7、p<0.0001。
【0124】
4週間の処置
4週間の薬物処置の後の結果は、2週間のものと類似していた(図16e、f)。80mg/kg化合物B群におけるインスリン感受性は、有意には改善されなかったものの、膵臓の代償に関してわずかな改善が見られた。PCに関するANOVAの結果:F6,32=6.17、p=0.0002;SIに関しては:F6,32=35.01、p<0.0001。
【0125】
結論
ベースラインでは、体重、摂餌量、HbA1c、ランダム血糖値、空腹時血中グルコース濃度またはインスリン濃度に関して、fa/fa群間に有意差はなかった。同様に、グルコースチャレンジに反応して、fa/fa群は、グルコースAUC(60分)またはインスリンAUC(60分)においてお互いに差はなかったが、痩せた対照とは有意に異なっていた。インスリン感受性および膵臓の代償の両方は、ベースラインでは、他の群と比べて低下していた化合物B(80mg/kg/d)群を除くすべてのfa/faラットにおいて類似していた。4週間の処置の後に、80mg/kgの化合物Aは、空腹時インスリン濃度を減少させたが、他のパラメータに及ぼす効果は全くなかった。化合物Aの用量は、(空腹時またはチャレンジに反応した)グルコースレベルもインスリン感受性も膵臓の代償も有意には改善しなかった。本実験における化合物Bの効果は、中等度であった。80mg/kg/dでの4週間の処置の後に、化合物Bは、グルコースチャレンジに反応してグルコースAUC60分を減少させた。グルコース濃度は、痩せた媒体対照の濃度とfa/fa媒体対照の濃度との中間にあったが、いずれからもわずかに異なっていた。実際には、インスリンAUC60分に及ぼす効果も、インスリン感受性(SI)のコンピュータ測定に及ぼす効果もなかった。膵臓の代償は、2週間の処置の後および4週間の処置の後の両方でわずかに改善されているように思われ、痩せた媒体対照またはfa/fa媒体対照のいずれか一方とわずかに異なっていた。しかし、この群における膵臓の代償は、ベースラインの他の群のものに比べて低い(悪い)ように思われたことが留意される。4週間の化合物Aの処置は、耐糖能を改善しなかったか、または高インスリン血症を有意には改善せず、過度のインスリン反応がfa/faラットにおいて見られた。高用量の化合物Bは、fa/fa対照と比べて、膵臓の代償において劣化を弱めた。化合物Bは、インスリン感受性を効果的には増加させないにしても、膵臓機能にプラスの効果をもたらす。
【0126】
医薬製剤に関連した例
例A:注射バイアル
本発明による活性成分100gおよびリン酸水素二ナトリウム5gの再蒸留水3l中溶液を、2N塩酸を使用してpH6.5に調整し、除菌し、注射バイアル中に移し、無菌条件下で凍結乾燥し、無菌条件下で密封する。各注射バイアルは、5mgの活性成分を含む。
【0127】
例B:坐剤
本発明による活性成分20gと、100gの大豆レシチンおよび1400gのカカオバターとの混合物を融解させ、金型に注入し、冷却する。各坐剤は、20mgの活性成分を含む。
【0128】
例C:液剤
本発明による活性成分1g、9.38gのNaH2PO4・2H2O、28.48gのNa2HPO4・12H2Oおよび0.1gの塩化ベンザルコニウムから、再蒸留水940ml中溶液を調製する。pHを6.8に調整して、溶液を1lにし、照射によって滅菌処理する。この液剤は、点眼剤の形態で使用され得る。
【0129】
例D:軟膏剤
本発明による活性成分500mgを、99.5gのワセリンと無菌条件下で混合する。
【0130】
例E:錠剤
本発明による活性成分1kg、4kgのラクトース、1.2kgのジャガイモデンプン、0.2kgのタルクおよび0.1kgのステアリン酸マグネシウムの混合物を、従来のやり方で、各錠剤が10mgの活性成分を含むように圧縮して錠剤を得る。
【0131】
例F:コート錠
例Eと同じように錠剤を圧縮し、続いて、従来のやり方で、ショ糖、ジャガイモデンプン、タルク、トラガカントおよび色素のコーティングでコートする。
【0132】
例G:カプセル剤
本発明による活性成分2kgを、従来の方法で、各カプセル剤が20mgの活性成分を含むように硬ゼラチンカプセルに導入する。
【0133】
例H:アンプル剤
本発明による活性成分1kgの再蒸留水60l中溶液を、除菌し、アンプル中に移し、無菌条件下で凍結乾燥し、無菌条件下で密封する。各アンプルは、10mgの活性成分を含む。
【0134】
例I:吸入スプレー
本発明による活性成分14gを10lの等張NaCl溶液に溶かし、ポンプ機構を備えた市販のスプレー容器に溶液を移す。溶液は、口または鼻に噴霧され得る。1回の噴霧ショット(約0.1ml)は、約0.14mgの用量に相当する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン抵抗性および/またはβ−細胞機能障害に関連する疾患の予防上もしくは治療上の処置および/またはモニタリングのための、有効量の2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよび/またはその生理学的に許容される塩および/または溶媒和物を活性成分として含み、場合によって、薬学的に忍容されるアジュバントと一緒に含む医薬組成物。
【請求項2】
前記疾患が、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、糖尿病性腎症および/または糖尿病性神経障害であり、好ましくは2型糖尿病である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記活性成分が、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘミフマル酸塩およびヘミリンゴ酸塩の群から選択される2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジン塩である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記活性成分が、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジン塩酸塩水和物である、請求項1から3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記活性成分が、少なくとももう1つの活性成分と組み合わせられる、請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
経口または非経口投与、好ましくは経口投与のための、請求項1から5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
体重1kg当たり20から100mgまでの用量範囲で毎日投与するための、請求項1から6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
インスリン抵抗性および/またはβ−細胞機能障害に関連する疾患の予防上もしくは治療上の処置および/またはモニタリングのための医薬品を製造するための、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよび/またはその生理学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用。
【請求項9】
インスリン感受性の増強および/またはβ−細胞代償の保持または増加のための、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよび/またはその生理学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用。
【請求項10】
インスリン感受性が、少なくとも2倍になる、好ましくは少なくとも3倍になる、より好ましくは少なくとも4倍になる、最も好ましくは少なくとも5倍になる、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
膵β−細胞代償が、使用前のベースラインの、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%、非常に好ましくは100%保持される、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
少なくとも1週間、好ましくは2週間、より好ましくは3週間、最も好ましくは4週間の期間の、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
2型糖尿病、メタボリックシンドローム、糖尿病性腎症および/または糖尿病性神経障害を治療するための方法であって、有効量の2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グニジンおよび/またはその生理学的に許容される塩および/または溶媒和物を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与する方法。
【請求項1】
インスリン抵抗性および/またはβ−細胞機能障害に関連する疾患の予防上もしくは治療上の処置および/またはモニタリングのための、有効量の2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよび/またはその生理学的に許容される塩および/または溶媒和物を活性成分として含み、場合によって、薬学的に忍容されるアジュバントと一緒に含む医薬組成物。
【請求項2】
前記疾患が、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、糖尿病性腎症および/または糖尿病性神経障害であり、好ましくは2型糖尿病である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記活性成分が、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘミフマル酸塩およびヘミリンゴ酸塩の群から選択される2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジン塩である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記活性成分が、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジン塩酸塩水和物である、請求項1から3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記活性成分が、少なくとももう1つの活性成分と組み合わせられる、請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
経口または非経口投与、好ましくは経口投与のための、請求項1から5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
体重1kg当たり20から100mgまでの用量範囲で毎日投与するための、請求項1から6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
インスリン抵抗性および/またはβ−細胞機能障害に関連する疾患の予防上もしくは治療上の処置および/またはモニタリングのための医薬品を製造するための、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよび/またはその生理学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用。
【請求項9】
インスリン感受性の増強および/またはβ−細胞代償の保持または増加のための、2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グアニジンおよび/またはその生理学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用。
【請求項10】
インスリン感受性が、少なくとも2倍になる、好ましくは少なくとも3倍になる、より好ましくは少なくとも4倍になる、最も好ましくは少なくとも5倍になる、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
膵β−細胞代償が、使用前のベースラインの、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%、非常に好ましくは100%保持される、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
少なくとも1週間、好ましくは2週間、より好ましくは3週間、最も好ましくは4週間の期間の、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
2型糖尿病、メタボリックシンドローム、糖尿病性腎症および/または糖尿病性神経障害を治療するための方法であって、有効量の2−メチル−4,5−ジ−(メチルスルホニル)−ベンゾイル−グニジンおよび/またはその生理学的に許容される塩および/または溶媒和物を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2011−519877(P2011−519877A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507807(P2011−507807)
【出願日】平成21年4月11日(2009.4.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002701
【国際公開番号】WO2009/135583
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月11日(2009.4.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002701
【国際公開番号】WO2009/135583
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】
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