説明

インソールおよび妊婦用靴

【課題】 妊婦にとって歩きやすいインソールを提供する。
【解決手段】 インソール20は、妊婦の足を載置する載置部21と、妊婦の踵を囲むように載置部21に連続して設けられ、載置部21に妊婦が足を置いたとき、妊婦の踵に近づくように移動する壁部22,23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はインソールおよび妊婦用靴に関し、特に、妊婦の踵を保持するインソールおよび妊婦用靴に関する。
【背景技術】
【0002】
妊婦はホルモンのバランスが変化し、腹部が突出し、骨盤の支持靱帯や結合組織が弛緩し、体幹が後傾し、骨盤がゆがんでくる。妊婦は、このような体型になると、通常の靴では履きにくくなる。
【0003】
このような妊婦にとっても履きやすい靴が、たとえば特開平11−113609号公報(特許文献1)に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された靴においては、靴のヒール部分に、外側後端部と、内側後端部によって覆われる踵覆い部を設け、外側後端部には留め具と、その留め具掛けを有したバンドを設け、これが内側後端部に設けたバンド通しを通って、折り返されることで、ちょうど留め具で固定できる位置に来るようになっている。
【特許文献1】特開平11−113609号公報(段落番号0004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の、妊婦にとっても履きやすい靴は、上記のように構成されていた。靴の脱ぎ履きの際に、ベルトを緩めたり、締めたりすることで、靴の着脱を容易にしていた。しかしながら、このような構成だけでは、妊婦にとって履きやすいとしても、歩きやすいものではなかった。
【0006】
というのは、妊婦は、骨盤の両脚を支持する部分に胎児を保持するために、股関節が開いてくる。これによって、重心位置が通常より外側に位置し、いわゆる、がに股形状になり、歩行時には足の外側に力がかかるようになる。しかしながら、従来の靴は、それに対する対処がなされていないためである。また、インソールを用いて対処することも可能であるが、従来そのようなインソールは存在しなかった。
【0007】
この発明は、上記のような課題に鑑みてなされたもので、妊婦にとって歩きやすい、インソールおよび妊婦用靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかるインソールは、妊婦の足を載置する載置部と、妊婦の踵を囲むように載置部に連続して設けられ、載置部に妊婦が足を置いたとき、妊婦の踵に近づくように移動する壁部とを備える。
【0009】
載置部に妊婦が足を置いたとき、壁部が妊婦の踵に近づくように移動するため、インソールの上に足を載置すれば、妊婦の踵部が壁部にしっかりと保持される。したがって、妊婦は、インソールによってしっかり保持された状態で歩行できる。
【0010】
その結果、妊婦にとって歩きやすいインソールを提供できる。
【0011】
好ましくは、載置部の高さは変更可能である。
【0012】
さらに好ましくは、妊婦用靴には、上記のインソールが挿入されている。
【0013】
この発明の他の局面によれば、妊婦用靴は、妊婦の足を載置する載置部と、妊婦の踵を囲むように載置部に連続して設けられ、載置部に妊婦が足を置いたとき、妊婦の踵に近づくように移動する壁部とを備える。
【0014】
載置部に妊婦が足を置いたとき、壁部が妊婦の踵に近づくように移動するため、靴底に足を載置すれば、妊婦の踵部が壁部にしっかりと保持される。したがって、妊婦は、靴によってしっかり保持された状態で歩行できる。
【0015】
その結果、妊婦にとって歩きやすい妊婦用靴を提供できる。
【0016】
好ましくは、妊婦用靴は、つま先を載置する部分を同一に保ちながら、踵を載置する部分の高さを複数段階に調節するためのインソールを備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施形態にかかる妊婦の靴用のインソール(左足用)を示す平面図であり図1(B)は図1(A)において、B-Bで示す側面図である。
【0018】
図1を参照して、インソール10は、載置部11と、載置部11の側部および踵部に、妊婦の踵を囲むように設けられた内側壁部12、外側壁部13および踵側壁部14とを含む。載置部11のつま先側には、逆T字形状の隆起部17が設けられている。この隆起部17によって、妊婦は靴への踏み込みが容易になり、かつ、足の位置決めが容易になる。
【0019】
図1(B)を参照して、インソール10の高さは、つま先側の厚さa3=1〜2mmであり、踵側でa1=7〜8mmである。また、各壁部12〜14の高さは、a2=a1+10mm以上である。このように、各壁部12〜14の高さを高くしたため、妊婦がベタ足で歩行しても、踵をしっかりと保持できるため、妊婦は安定した歩行が可能になる。また、このようなインソール10を妊婦用の靴の内部に設けることにより、妊婦の足が靴の中でずれることはなくなり、妊婦は安心して歩行できる。
【0020】
次に、インソールの他の実施の形態について説明する。図2は、妊婦用靴の中にインソール20をしいた場合の断面図である。この断面図は、図1において、矢印II−IIで示す部分の断面図である(但し、図1においては、妊婦用靴は省略している)。この実施の形態のインソール20は、二重構造になっており、内部に空胴を有している。空胴は、載置部21の下部に設けられた空胴21aと、妊婦用靴の内側側皮部15と外側側皮部16の近傍に位置する内側および外側壁部22、23の内部に設けられた空胴22a,23aとを含み、それぞれの空胴21a〜23aは相互に接続されている。また、空胴21a〜23aには、適宜通気穴25a、25bが設けられている。
【0021】
なお、ここで、内側とは、足の親指の存在する側をいい、外側はその反対側をいう。
【0022】
このような構成のインソール20の載置部21に妊婦が足を置くと(図中矢印Aで示す)、空胴21aの空気が壁部22,23の空胴22a,23aに移動し、それによって、内側及び外側の壁部22,23の先端部がそれぞれ、図中矢印BおよびCで示す方向に移動する。その結果、妊婦の足は壁部22,23によって、よりしっかり保持される。また、身体の衝撃を最も感じる踵部に空気層を構成する空胴を設けたため、着地時の衝撃吸収が可能になる。なお、図示は省略しているが、踵部側にも同様に空胴が設けられている。
【0023】
妊婦が靴を脱いだ後、壁部22,23が靴の内側および外側の側皮部15,16から靴の中央部に倒れ込むと、次に妊婦が靴を履きにくくなる。そこで、この実施の形態においては、このような事態を避けるために、上記した通気穴25a,25bを設けておき、妊婦が靴を脱いだ後は、速やかに、空洞21a〜23aに空気が充填されるようにしている。
【0024】
なお、この空胴の設置位置は、妊婦の足の踵を適切に保持できる位置に適宜設ければよい。
【0025】
このように、足を降ろすことによって、空胴の空気が逃げて、踵部の衝撃を吸収でき、足を上げれば空気が空胴に再度充填されるため、妊婦は楽に歩行ができる。
【0026】
また、この実施の形態においては、インソール20の載置部21のみならず、壁部22,23にも空胴を設けた例に付いて説明したが、これに限らず、載置部21のみに設けても良い。
【0027】
次に、インソールのさらに他の実施の形態について説明する。図3は、この実施の形態におけるインソールの図2に対応する断面図である。この実施の形態のインソール30は、載置部31の上部と、載置部31に連続した内側および外側の壁32,33の内部にそれぞれ、空胴31a〜33aを有している。空胴31a〜33aは、相互に接続チューブ35,36で接続されている。また、空胴31a〜33aには、先の実施の形態と同様に、適宜、通気穴が設けられていてもよい。
【0028】
この実施の形態に係るインソール30においても、妊婦が足を載置部31上に載置すると(図中矢印A)、その下部の空気が空胴32a,33aに伝達され、空胴32a,33aが図中矢印B,Cに示すように膨張して、妊婦の歩行時の衝撃を吸収し、足の踵を保持する。
【0029】
次に、インソールのさらに他の実施の形態について説明する。図4は、この実施の形態におけるインソールの図2に対応する断面図である。この実施の形態のインソール40は、全体が弾性を有し、変形は可能であるが、復元性を有する材質で構成されている。したがって、妊婦が足を載置部41の上に置くと(図中矢印A)、それによって、載置部41に連続した内側および外側の壁42,43が、それぞれ、矢印B,Cで示す方向に移動して、妊婦の足の踵をしっかりと保持する。また、妊婦が載置部41から足を外すと、元の形状に戻る。
【0030】
上記実施の形態においては、インソールに踵を包み込む機能を持たせ、これを妊婦用靴に適用する例について説明したが、これに限らず、この機能を、妊婦用靴の底部、内側および外側の側皮部および踵部に設けてもよい。
【0031】
すなわち、妊婦用靴が、妊婦の足を載置する載置部と、妊婦の踵を囲むように載置部に連続して設けられ、載置部に妊婦が足を置いたとき、妊婦の踵に近づくように移動する壁部とを備えるようにしてもよい。
【0032】
この場合の一例を図5に示す。図5は図2に対応する、インソールが収容された妊婦用靴の断面図である。この例では、図1に示したような、空胴部の存在しない、通常のインソール50が靴に収容されている。靴底51に空胴52が設けられ、靴の内側側皮部15と外側側皮部16の近傍にそれぞれ空胴55、56が設けられる。空胴52と空胴55、56とは、接続チューブ53,54で接続されている。この構成においても、インソール50の上に妊婦が足を置くと(図中矢印Aで示す)、空胴52の空気が空胴55、56に移動し、それによって、インソール50の内側及び外側の壁部50a,50bの先端部がそれぞれ、図中矢印BおよびCで示す方向に移動する。その結果、上記と同様の効果が得られる。なお、図示は省略しているが、適宜通気孔が設けられている。
【0033】
次にさらに他の実施の形態について説明する。図6は、この発明のさらに他の実施の形態を示すインソールの側面図であり、基本的に、図1(B)に対応する。この実施の形態においては、インソール60は、そのつま先側を除く三方向に壁部61を有し、つま先の厚さa4は、図2の場合と同様の1〜2mmであり、踵側の厚さa5はa4プラス約10mmである。
【0034】
このインソール60の足の載置面62の上の壁部61の内部には、厚さa7=約10mmの補助インソール63を着脱自在に取付け可能である。また、ここで、a6=a5+a7+10mm以上とするのが好ましい。
【0035】
このように、インソール60の内部にインソール63を着脱自在に設けると、インソールにおける足の載置部の高さを変更することが可能になり、次のような効果が得られる。すなわち、妊婦は妊娠初期から8ヶ月頃までは、重心が後ろになるのでインソールの踵部の厚さはつま先部と比べて、約20mm高いのが好ましい。しかしながら、臨月近くになると、その厚さの差は約10mm程度であるのが好ましい。このように、インソール60の内部に補助インソール63を着脱自在に設けて、足の載置部の高さを変更可能にすれば、妊婦の妊娠月齢に応じて踵部の高さの調整が可能になる。
【0036】
なお、この実施の形態においても、上記実施の形態に示すように、インソールの内部に空洞を設けてもよい。
【0037】
また、上記実施の形態においては、インソールを妊婦用靴に用いた場合について説明したが、これに限らず、子供用の靴に適用してもよい。
【0038】
また、上記実施の形態においては、左足用のインソールについて説明したが、右足用も同様である。
【0039】
図面を参照してこの発明の一実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明にかかる、インソールは、踵をしっかり保持できるため、妊婦にとって歩きやすいインソールとして有利に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】妊婦用靴に使用されるインソールを示す図である。
【図2】妊婦用靴にインソールを挿入したときの、インソールの作動を示す図である。
【図3】インソールの他の実施の形態を示す断面図である。
【図4】インソールのさらに他の実施の形態を示す断面図である。
【図5】靴底に空胴を設けた場合の靴の断面を示す図である。
【図6】インソールのさらに他の実施の形態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0042】
10,20,30,40,50,60 インソール、11,21、31,41 載置部、12,22,32,42 内側壁部、13,23,33,43 外側壁部、14 踵側壁部、15内側側皮部、16 外側側皮部、17 隆起部、21a〜23a,31a〜33a 空胴、25 通気穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
妊婦の足を載置する載置部と、
妊婦の踵を囲むように前記載置部に連続して設けられ、前記載置部に妊婦が足を置いたとき、妊婦の踵に近づくように移動する壁部とを備える、インソール。
【請求項2】
前記載置部の高さを変更可能である、請求項1に記載のインソール。
【請求項3】
請求項1に記載のインソールが挿入された妊婦用靴。
【請求項4】
妊婦の足を載置する載置部と、
妊婦の踵を囲むように前記載置部に連続して設けられ、前記載置部に妊婦が足を置いたとき、妊婦の踵に近づくように移動する壁部とを備える、妊婦用靴。
【請求項5】
つま先を載置する部分を同一に保ちながら、踵を載置する部分の高さを複数段階に調節するためのインソールを備える、請求項4に記載の妊婦用靴。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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