説明

インタクトな細菌ミニセルを精製するための薬学的に適合可能な方法

本発明は、ミニセルを含有するサンプルを生物学的に適合する培地中での密度勾配遠心に供するステップを含む細菌ミニセルの精製方法を提供する。該方法は、任意により予備的な分画遠心ステップ及び1以上の濾過ステップを含んでもよい。本発明はまた、ミニセルを含有するサンプルを、親細菌細胞が糸状体となるよう誘導する条件に供し、続いて該サンプルを濾過してミニセルを親細菌細胞から分離するステップを含む細菌ミニセルの精製方法を提供する。本発明に係る方法は、任意により、精製ミニセル調製物からのエンドトキシンの除去ステップ、及び/又は精製ミニセル調製物の抗生物質による処理ステップを1以上含んでもよい。さらに本発明は、上記方法により調製され、かつミニセル10、10、10、1010又は1011個当たり約1個未満の汚染親細菌細胞を含有する、精製されたミニセル調製物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インタクトな細菌ミニセルを精製するための薬学的に適合可能な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミニセルは、DNAの分離をともなう細胞分裂の二分裂の際の協調を妨げることによって生じさせた大腸菌(E. coli)又はその他の細菌細胞の無核形態である。原核生物の染色体複製は、細胞中央の隔壁の形成をともなう正常な二分裂と連動している。大腸菌では、例えば、minCDなどのmin遺伝子の突然変異によって細胞分裂中の細胞極における隔壁の形成の阻害を除去することができ、結果として正常な娘細胞と無核のミニセルの生成に至る(de Boerら, 1992; Raskin及びde Boer, 1999; Hu及びLutkenhaus, 1999; Harry, 2001)。
【0003】
minオペロン突然変異の他、無核のミニセルはまた、例えば枯草菌(B. subtilis)でのdivIVB1におけるものなど、隔壁形成に影響する一定の範囲のその他の遺伝子再配列又は突然変異によっても生じる(Reeve及びCornett, 1975; Levinら, 1992)。ミニセルはまた、細胞分裂/染色体分離に関与するタンパク質の遺伝子発現レベルにおける変動によっても形成しうる。例えば、minEの過剰発現は極性分裂及びミニセルの生成をもたらす。同様に、例えば、枯草菌のsmc突然変異(Brittonら, 1998)、枯草菌のspoOJ欠失(Iretonら, 1994)、大腸菌のmukB突然変異(Hiragaら, 1989)、及び大腸菌のparC突然変異(Stewart及びD'Ari, 1992)など、染色体分離の欠陥から染色体を欠くミニセルが得られる。遺伝子産物はトランス型で提供してもよい。コピー数の多いプラスミドから過剰発現される場合、例えばCafAは細胞分裂の速度を亢進し、かつ/又は複製後の染色体分配を阻害し(Okadaら, 1994)、その結果、鎖状の細胞と無核のミニセルが形成される(Wachiら, 1989; Okadaら, 1993)。
【0004】
ミニセルは、特定の条件下で形成され、自発的に放出される他の小胞(ミニセルとは対照的に特定の遺伝子再配列又はエピソーム遺伝子発現により生じるものではない)とは異なる。このような他の小胞の例としては、小さな膜性の小胞である細菌ブレブがある(Dorwardら, 1989)。ブレブは例えばアグロバクテリウム(Agrobacterium)、バチルス(Bacillus)、ボルデテラ(Bordetella)、エシェリキア(Escherichia)、ナイセリア(Neisseria)、シュードモナス(Pseudomonas)、サルモネラ(Salmonella)及びシゲラ(Shigella)に由来するいくつかの細菌種で観察されている。細菌ブレブは例えば増殖環境の操作により(Katsuiら, 1982)、また、外的な膜脱安定化剤の使用により(Matsuzakiら, 1997)作り出すことができる。
【0005】
原核細胞内でのプラスミドの複製は染色体の複製からは独立しているため、上記の異常な細胞分裂の際にプラスミドは正常な娘細胞とミニセルの双方へと分離し得る。従って、組換えmin大腸菌由来のミニセルは染色体以外の全ての細菌細胞成分とともに相当数のプラスミドコピーを含み、それ自体、プラスミドにコードされる遺伝子のin vitro発現を研究する際に用いられている。Brahmbhatt (1987)、Harlowら (1995)、及びKiharaら (1996)参照。Brahmbhatt (1987)は、例えば、大腸菌ミニセルが20kbといった大きなDNAインサートをともなう組換えプラスミドを含むことができ、いずれの染色体DNAも含まず、かつ、同時に9種類以上の組換えタンパク質を発現し得ることを示した。
【0006】
最近の特許出願PCT/IB02/04632号(全体を参照により本明細書に組み入れる)は、治療用核酸分子を含有する組換えのインタクトな(intact)ミニセルを記載している。かかるミニセルは、in vitro及びin vivoにおいて宿主細胞にオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドを送達するための有効なベクターである。従って、これらは、転写及び/又は翻訳時に、疾患を改善又は治療する、あるいは被験体の特定の細胞型、組織又は器官に付随する形質を改変するように機能する核酸分子を導入するために特に有用である。
【0007】
in vivoにおけるミニセルの用途には、特に免疫した宿主における炎症反応を誘発する可能性のある、生きた親細菌、遊離エンドトキシン及び細胞破砕物(死滅親細菌、膜断片、核酸及び細胞内成分を含む)の点で、一般的に高純度のミニセル調製物が必要である。さらに、市販の医薬品におけるミニセルの使用には、国際的な認可医薬品基準のためにミニセルの精製方法が必要である。この目的のためには、ミニセル精製のための従来の方法は一般的に十分なものではない。
【0008】
従来の技術は、(a)低速遠心(親細胞の生物学的負荷を低減するため)、及び(b)グリセロール、スクロース又はパーコールの勾配中での差速沈降を含む。最初の分画的な低速遠心は、典型的に、上清液中のミニセルの50%〜70%を残しつつ親細胞を最大100分の1に低減させる。続いて、その後の差速沈降の2回のサイクルによって、10〜10個のミニセルあたり約1個の栄養細胞という純度を有するミニセル調製物が得られる。上記のような従来の方法は、Frazer及びCurtiss (1975)により概説されており、またReeve (1979)、Clark-Curtiss及びCurtiss(1983)、並びに米国特許第4,311,797号(Khachatouriansに対して付与)に記載されている。
【0009】
従来の精製方法により達成される純度は、in vivoにおける用途の全てにとって適度なものではなく、用途の中には10個を超えるミニセル、又はさらに1010個のミニセルの用量が必要なこともありうる。上記の汚染率では、これは1回用量あたり10,000個の生存親細胞と換算される。このような汚染レベルは、特に癌及びAIDS患者などの免疫不全患者においては致命的となりうる。例えば、志賀菌(Shigella dysenteriae)、サルモネラ腸炎菌(Salmonella enteritidis)及びリステリア菌(Listeria monocytogenes)生物に対するID50(感染者の50%における感染用量)は、それぞれ約10、1000及び10である。さらに、以前の研究では、親細胞の汚染レベルは異なる細菌株で変動することが報告されている(Clarke-Curtiss及びCurtiss, 1983)。この点に関し、PCT/IB02/04632号に記載の遺伝子治療用途では、一定範囲のグラム陰性及びグラム陽性細菌の変異株に由来するミニセルを使用することができ、また生存親細菌細胞汚染が実質的にないミニセルが必要でありうる。従って、従来のミニセル精製方法では、ミニセルの生物医薬用量のcGMP(現行の適正製造基準)製造のための品質管理を行うことはできない。
【0010】
別の欠点として、従来の精製方法で採用されている勾配形成培地(パーコール、スクロース及びグリセロール)はin vivoでの使用には適合しない。パーコールは毒性であるため、「研究目的のみ」の状況に限定される。スクロースは、勾配を高浸透圧にし、それがミニセルの生理学的変化を引き起こしうる。実際、本発明者は、ミニセルがスクロース勾配中で浸透圧ショックを受け、その結果、構造上変形すると判断している。グリセロールは、粘性が高く、ミニセル懸濁液から完全に除去することが困難である。従って、これらの密度勾配培地は効果的に細胞と細胞小器官又は細胞成分とを分離するが、ヒトの臨床用途に用いられる予定の生体細胞を分離するためには適していない。
【0011】
従来のミニセル精製技術を改善するためにいくつかの手法が開発されている。1つの手法は、染色体recA突然変異を有する親細胞を使用し、低線量の紫外線(UV)照射による処理を行うものである(Sancarら, 1979)。この手法の原理は、UV照射が、小さなプラスミドDNAとは対照的に、その標的の大きなサイズのために選択的に染色体DNAを分解することである。しかしながら、遺伝子治療及びワクチン用途に使用される組換えミニセルは、突然変異を全く有しない必要があり、またUV照射などの非特異的突然変異誘発法は、全てのプラスミドDNAが突然変異しないということを保証するものではない。
【0012】
ミニセル精製を改善するための別の手法は、例えばアンピシリン若しくはシクロセリンを用いることにより、又はジアミノピメリン酸(DAP)要求株に対してDAPを枯渇させることにより、細菌細胞壁の合成を阻害することによって行われる(Clarke-Curtiss及びCurtiss, 1983)。しかしながらこの手法にもまたいくつかの欠点がある。第1に、遺伝子治療に使用される多くの組換えプラスミドは、アンピシリン耐性マーカーを有しており、そのプラスミドを有する親細胞がアンピシリン耐性となることである。第2に、in vivoにおけるミニセル用途は、一定範囲の種々の細菌種に由来するミニセルを使用するが、この多くはDAP要求突然変異の影響を受けない可能性がある。第3に、抗生物質の大規模使用は、抗生物質耐性細菌の発生という付随するリスクのため望ましいものではない。
【0013】
最近、上述の懸念を解決するミニセル精製のための新規な手法が報告された(PCT/IB02/04632号)。この新規な方法は、クロスフロー濾過(供給流(feed flow)が膜表面と平行である;Forbes,1987)とデッドエンド濾過(供給流が膜表面に対して垂直である)を組み合わせて、10−7(すなわちミニセル10個当たり1個未満の親細胞)を超え、そして10−9ともなるミニセル純度を達成する。任意により、濾過の組み合わせは、低い遠心力での分画遠心を先行して行い、細菌細胞のある程度の部分を除去し、それにより上清をミニセルについて濃縮してもよい。
【0014】
この濾過手順は従来のミニセル精製技術に付随する欠点を克服するものであるが、これには制限もある。第1に、クロスフロー濾過によってミニセルの顕著な損失が生じ、製造過程に付加的コストが生じる。さらに、この濾過手順によって得られるミニセル調製物は、ある程度の細菌性エンドトキシンを含有し、これがin vivoで投与する場合に低刺激性ショックを引き起こす。最後に、この濾過方法を使用した場合にはバッチ間でミニセル純度が異なる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、最大のミニセル収量と純度を達成するが、生物学的に適合する培地を用いて細菌ミニセルを精製するための方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の及び他の必要性を解決するため、本発明は、ミニセルを含有するサンプルを生物学的に適合する培地中での密度勾配遠心に供することを含む、細菌ミニセルの精製方法を提供する。この方法は、任意により分画遠心の予備ステップを含んでもよい。
【0017】
本発明はまた、生物学的に適合する培地中での密度勾配遠心と濾過とを組み合わせる細菌ミニセルの精製方法を提供する。
【0018】
別の態様において、本発明は、ミニセルを含有するサンプルを、親細菌細胞が糸状体となるよう誘導する条件に供し、続いて該サンプルを濾過して、親細菌細胞からミニセルを分離する、ミニセル精製方法を提供する。
【0019】
また別の態様において、本発明は、(a)ミニセルを含有するサンプルを生物学的に適合する培地中での密度勾配遠心に供するステップ、(b)該サンプルを親細菌細胞が糸状体となるよう誘導する条件に供するステップ、続いて(c)該サンプルを濾過して、精製されたミニセル調製物が得られるステップを含むミニセル精製方法を提供する。
【0020】
本発明の方法は、任意により、精製されたミニセル調製物からエンドトキシンを除去するための1以上のステップ、及び/又は精製されたミニセル調製物を抗生物質で処理するステップを含んでもよい。
【0021】
最後に、本発明は、上述の方法に従って調製される、精製されたミニセル調製物を提供する。好ましくは、精製されたミニセル調製物は、ミニセル10個、10個、10個、1010個、又は1011個当たり約1個未満の汚染親細菌細胞を含有する。また好ましくは、精製されたミニセル調製物は、免疫された宿主において炎症反応又はエンドトキシンショックを誘発する可能性のあるエンドトキシン及び細胞破砕物(死滅親細菌、膜断片、核酸、及び細胞内成分を含む)を実質的に含まない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明者は、生物学的に適合する培地の使用により従来のミニセル精製が改善されることを確認している。これに関し、本発明者は一般的に使用されている密度勾配培地は、汚染物質からのミニセルの分離には有効であるが、ミニセルに対して有害な作用を及ぼすこともあることを観察している。例えば、従来の方法は一般的に30%スクロース勾配を使用し、十分な純度を達成するためにはスクロース勾配精製を2〜3回反復して行う必要がある。これによりミニセルは最大2時間にわたって高浸透圧に晒され、ミニセルに対して浸透圧ショックが引き起こされる可能性がある。本発明者は、スクロース勾配により精製されたミニセルが、他の手段により精製されたミニセルと比較して有意に変形することがあることを見出した。おそらくこの変形は、膜の脱安定化(そのためミニセル中に過剰な液体が入る)によって生じる。また、このような膜の脱安定化とそれに付随する膜の多孔性の増大によって、サイトゾルの成分(治療用核酸を含む)がミニセルの外に漏出する可能性もある。
【0023】
従って1つの態様において、本発明は、生物学的に適合する培地中での密度勾配遠心により親細菌細胞及び他の汚染物質からミニセルを分離することを含むミニセル精製方法を包含する。遠心分離後、ミニセルバンドを勾配から回収し、任意によりミニセルを密度勾配遠心のさらなるラウンドに供して純度を最大化してもよい。この方法は、ミニセル含有サンプルに対して分画遠心を行う予備ステップをさらに含んでもよい。分画遠心は、低遠心力で行う場合には、ある程度の部分の親細菌細胞を除去し、それにより上清をミニセルについて濃縮しうる。
【0024】
本明細書において使用する「生物学的に適合する培地」とは、ミニセルの生理又は形態に有害な影響を及ぼさない培地を意味する。好ましくは、生物学的に適合する培地はまた、宿主細胞の生理又は宿主生物の生理に有害な影響を及ぼさない。従って、「生物学的に適合する」の意味は文脈により決定される。例えば、特定の培地はある種のミニセルには生物学的に適合するが、別のものに対しては毒性となることがある。好ましくは、生物学的に適合する培地は、等張性でありかつ非毒性である。
【0025】
イオジキサノール(5,5’−[(2−ヒドロキシ−1−3プロパンジイル)−ビス(アセチルアミノ)]ビス[N,N’−ビス(2,3ジヒドロキシプロピル−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンカルボキサミド])の滅菌60%(w/v)水溶液であるOptiPrepTM(Axis-Shield PLC, Dundee, Scotland)は、生物学的に適合する培地の非常に好ましい例の1つである。研究者は、哺乳動物細胞及び細胞小器官、並びに膜小胞、ウイルス、タンパク質、核酸及びリポタンパク質を精製するためにOptiPrepTM及び他の類似の密度勾配培地を広く使用している。これらの使用は、Density Gradient Media. Applications and Products 2002(Axis-Shield PLC, Dundee, Scotland)において概説されている。しかしながら、このような培地は細菌由来のミニセルの精製には以前は使用されていなかった。実際、他の培地がミニセルの生理及び形態に有害な影響を及ぼすという本発明者の観察以前には、ミニセルを精製するための生物学的に適合する培地の必要性さえ認識されていなかった。
【0026】
OptiPrepTMを用いた場合、予め形成された勾配を使用することも、又は遠心によりその場(in situ)で勾配を形成する(自然発生勾配)ことも可能である。予め形成された勾配は、連続的勾配又は不連続勾配でありうる。OptiPrepTMの予め形成された勾配は、所望の濃度の溶液を遠沈管に積層し、管の上部を密封してそれを拡散の間、横にしておくことにより溶液を拡散させることで形成することができる。OptiPrepTMによる等浸透圧密度勾配の調製は、OptiPrepTM溶液を適当な希釈液で希釈することによる勾配溶液の調製に依存する。希釈液及び浸透圧調整剤(balancer)の選択は、実施者の通常の技能の範囲内である。
【0027】
別の態様において、本発明は、生物学的に適合する培地中での密度勾配遠心と濾過ステップとを組み合わせる。例えば、密度勾配遠心は、図1に例示するように連続濾過プロセスに組み込むことができる。1つのそのような連続濾過プロセスはPCT/IB02/04632号に記載されている。簡単に説明すると、これはクロスフロー濾過(供給流が膜表面と平行である)とデッドエンド濾過(供給流が膜表面に対して垂直である)を組み合わせるプロセスである。任意により、この組み合わせでは、低い遠心力での分画遠心を先行して行い、親細菌細胞のある程度の部分を除去し、それにより上清をミニセルについて濃縮しうる。また任意により、この組み合わせに続いて抗生物質処理を行って、残りの親細菌細胞を死滅させてもよい。
【0028】
クロスフロー濾過は、フィルター孔径に依存して、親細菌細胞などの大きな汚染物質から、また、細菌ブレブ、遊離エンドトキシン、核酸、細胞破砕物及び過剰な液体などの小さな汚染物質から、ミニセルを分離することができる。大きな汚染物質からミニセルを分離するためには、クロスフローフィルターの公称孔径は、ミニセルはフィルターを通過するが、大きな細菌細胞は通らないものでなければならない。この目的では、ミニセルが直径約0.4μmであり、細菌細胞はそれより大きいので、0.45μmの孔径が好ましい。ミニセルを小さい汚染物質から分離するためには、クロスフローフィルターの公称孔径は、汚染物質はフィルターを通過するが、ミニセルは通らないものでなければならない。この目的では、細胞ブレブは直径0.05μm〜0.2μmの範囲であり、その他のより小さな汚染物質は0.2μm未満であるので、0.2μmの孔径が好ましい。
【0029】
本発明におけるクロスフロー濾過の効果的な適用には典型的には、大孔径0.45μm前後での少なくとも1つのステップの後、小孔径0.2μm前後での少なくとも1つのステップを必要とする。一連のクロスフロー濾過ステップ間又はその最中、ミニセルの回収を最大限にするためにダイアフィルトレーションを行ってもよい。ダイアフィルトレーションでは、容量を一定に保ち、限外濾過膜を用いて所望の粒子(この場合はミニセル)を保持するが、所望ではない小さな溶質と粒子は除去される。
【0030】
クロスフロー濾過の使用は、細菌培養物などの高濃度の粒状物質を含む懸濁液にも適合し、培養液1リットル当たり1011〜1013個の細菌及びミニセル集団を含んでいてもよい。フィルターへの付着及び結果としてのミニセルの損失を最小にするため、細菌/ミニセル培養物を希釈してもよい(好ましくは、5倍〜10倍)。また、希釈により、適宜、低ポンプ圧及び低流速の使用も可能となる。
【0031】
クロスフロー濾過後に残った残留親細菌細胞を除去するため、デッドエンド濾過を行ってもよい。この目的では、孔径約0.45μmのフィルターを用いた少なくとも1回のデッドエンド濾過の使用が好ましい。
【0032】
一実施形態において、ミニセル精製方法は、生物学的に適合する培地による密度勾配遠心と、約0.2μm以下の孔径の少なくとも1つのフィルターを用いる濾過ステップとを組み合わせる。
【0033】
別の実施形態において、ミニセル精製方法は、生物学的に適合する培地による密度勾配遠心と、約0.45μmの孔径のフィルターを用いたデッドエンド濾過ステップとを組み合わせる。
【0034】
本発明者はまた、濾過の前に、親細菌細胞が糸状体となるように誘導することが、ミニセル精製を有意に改善することを発見した。ミニセル及び親細菌細胞は同じ直径(平均0.4μm)を有するため、細菌細胞の中には、細菌細胞の長さが少なくとも1μmである場合でさえも、辛うじてミニセルを保持するフィルターの孔(例えば0.45μmのクロスフロー又はデッドエンドフィルターの孔)を通過することができるものもある。これは、長楕円形の細菌細胞がフィルターに対して垂直に位置する場合に起こる。しかしながら、端と端が連結した細菌細胞からなる細菌細胞の糸状体は、そのようなフィルターを通過することができない。
【0035】
従って、本発明の別の態様は、濾過前に、汚染親細菌細胞が糸状体を形成するよう誘導することを必要とする。これは、ミニセル懸濁液を、親細胞においてストレス応答を誘導する環境条件に供することにより行う。このような条件は当業者に周知であり、嫌気条件、栄養制限条件及び異常な浸透圧条件が含まれる。高張性培地は、糸状体化の誘導に特に有用である。一例として、ミニセル懸濁液に、5%塩化ナトリウム(ストレス誘導剤)を含むトリプチケース・ソイ・ブロス(増殖培地)を添加することができる。このようなストレス誘導性条件下では、細胞は細胞分裂時に完全に分離することができなくなり、多数の細胞からなる長い細菌糸状体を形成する。
【0036】
本発明の好ましい実施形態は、ミニセル純度を高めるために細菌の糸状体化を利用する。従って、一態様において、本発明は、(a)ミニセルを含有するサンプルを生物学的に適合する培地中での密度勾配遠心に供するステップ、(b)該ミニセル含有サンプルを親細菌細胞が糸状体となるよう誘導する条件に供するステップ、続いて(c)該サンプルを濾過して、精製されたミニセル調製物を得るステップを含むミニセル精製方法を提供する。
【0037】
本発明者はさらに、エンドトキシンの除去がミニセル調製物を改善することを発見した。in vivoにおけるマウスの研究において、本発明者は残留エンドトキシンを含有するミニセル調製物の使用により生じる低刺激性ショックを観察した。従って、有用なミニセル調製物は、エンドトキシンを実質的に含まないことが好ましく、これはエンドトキシンを臨床上有意ではないレベル、又は患者において炎症反応若しくはエンドトキシンショックを誘導しないと考えられるレベルで含むことを意味する。
【0038】
エンドトキシンの除去方法は当技術分野で周知である。その方法の一例は、抗リピドA抗体で被覆した磁性ビーズ(例えば、DynabeadsTM;Dynal biotech, Oslo, Norway)を使用することである。抗体で被覆した磁性ビーズを試験管中でミニセル懸濁液と混合し、抗体がリピドA部分を介して遊離リポ多糖(LPS)と結合するようにインキュベートすることができる。懸濁液を含む試験管を続いて磁性スタンド(magnetic stand)に配置して、抗リピドA−LPS複合体形成磁性ビーズを固定し、ミニセルを回収する。新たなビーズを用いたインキュベーションを複数サイクル行うことにより、所望の純度レベルを達成しうる。
【0039】
LPSの深部のコア多糖部分に見出されるエピトープに結合するモノクローナル抗体もまた遊離エンドトキシンを除去するために有用である。LPSの深部のコア多糖部分は細菌膜の表面上に露出されないと考えられる。従って、LPSのこの部分に対して作製された抗体は、細菌細胞が結合したLPSには結合しないはずである。使用前に、そのような抗体がLPSの細胞表面に露出した成分とは交差反応しないことを確認するため試験するべきである。
【0040】
細菌性エンドトキシンが有害な副作用を引き起こす可能性のため、好ましいミニセル精製方法はそれらを除去する1以上のステップを含む。従って、一態様において、本発明は、生物学的に適合する培地中での密度勾配遠心ステップの後、得られる濃縮ミニセル調製物からエンドトキシンを除去するための1以上のステップを使用するミニセル精製方法を提供する。より好ましくは、方法はさらに上記のように1以上の濾過ステップを含む。
【0041】
本明細書に記載するミニセル精製技術は、種々の組み合わせで使用して、所望の純度の調製物を得ることができる。好ましい方法は、密度勾配遠心と濾過との組み合わせを含む。また好ましい方法は、親細菌細胞のストレス誘導型糸状体化と、それに続く濾過、及びミニセル調製物からのエンドトキシンの除去を含む。これらの技術の全てを使用する方法の一例(図1に概略を示す)は以下のとおりである。
【0042】
ステップA:ミニセルを生成する細菌細胞培養物の分画遠心。このステップは、2000gにて約20分間行うことができ、大部分の親細菌細胞を除去するが、上清中にミニセルが残る
ステップB:等張性かつ非毒性の密度勾配培地を用いた密度勾配遠心。このステップにより、ミニセルの損失を最小限に抑えて、多くの汚染物質(親細菌細胞を含む)からミニセルが分離される。好ましくはこのステップを精製方法内で反復して行う
ステップC:0.45μmフィルターによるクロスフロー濾過によりさらに親細菌細胞汚染を低減する
ステップD:残留親細菌細胞のストレス誘導型糸状体化。これは、ミニセル懸濁液をいくつかのストレス誘導性環境条件のいずれかに供することにより行いうる
ステップE:抗生物質処理を行って親細菌細胞を死滅させる
ステップF:クロスフロー濾過を行って、小さな汚染物質(膜ブレブ、膜断片、細菌破砕物、核酸、培地成分などを含む)を除去し、ミニセルを濃縮する。0.2μmフィルターを用いて、小さな汚染物質からミニセルを分離し、そして0.1μmフィルターを用いてミニセルを濃縮しうる
ステップG:デッドエンド濾過を行って死滅した糸状細菌細胞を排除する。このステップでは0.45μmフィルターを用いうる
ステップH:ミニセル調製物からのエンドトキシンの除去。このステップでは抗リピドAで被覆した磁性ビーズを使用しうる。
【0043】
当業者であれば、本明細書に概説する原理と一致するように、これらのステップの変形を使用し、追加の精製ステップを組み込むことができる。
【0044】
細菌ミニセルを精製するための上述した方法は、PCT/IB02/04632号に記載のようなin vivoにおける用途に有用な精製されたミニセル調製物を提供する。これらの調製物は、ミニセル10個当たり約1個未満の汚染親細菌細胞、好ましくはミニセル10個当たり約1個未満の汚染親細菌細胞、より好ましくはミニセル10個当たり約1個未満の汚染親細菌細胞、さらにより好ましくはミニセル1010個当たり約1個未満の汚染親細菌細胞、なおより好ましくはミニセル1011個当たり約1個未満の汚染親細菌細胞を含有する。好ましくは、汚染親細菌細胞はいずれも死滅し、これらの調製物は生存親細菌細胞を何ら含有しない。また好ましくは、精製されたミニセル調製物はエンドトキシン及び細胞破砕物(死滅親細菌、膜断片、核酸及び細胞内成分を含む)を実質的に含まない。既に説明したように、ミニセル調製物は、その調製物が臨床上有意ではないレベル、又は患者において炎症反応若しくはエンドトキシンショックを誘導しないレベルのエンドトキシンを含有する場合に、エンドトキシンを実質的に含まない。同様に、ミニセル調製物は、それが臨床上有意ではないレベル、又は患者において炎症反応を誘導しないレベルの細胞破砕物を含有する場合に、細胞破砕物を実質的に含まない。
【0045】
以下の例示的な例の参照は、本発明のより完全な理解を助けるためのものである。
【実施例1】
【0046】
本発明の技術を用いない濾過法の不安定性
本実施例は、本発明の技術を用いない、ミニセルを精製するための濾過法の使用が不安定な結果を生じうることを例示する。
【0047】
ネズミチフス菌(S. typhimurium)、大腸菌(E. coli)及び赤痢菌(Shigella flexneri)のミニセル産生変異細菌株を、細菌細胞及びミニセルのサイズを測定するために走査型電子顕微鏡法(SEM)により解析する。高解像度走査型電子顕微鏡法のために、以下の方法に従う。細菌培養物はトリプチケース・ソイ・ブロス(TSB)(BBL brand、Bacto Labs, Liverpool, NSW, Australiaより購入)中で増殖させる。培養液は製造業者の説明書に従い30g/lで調製し、121℃で15分間オートクレーブする。液体培養物を37℃にて振盪型インキュベーター中で一晩増殖させる。溶液を交換するため、細胞を13,000rpmで20分間遠心分離し、上清を捨て、そしてボルテックス・ミキサーを用いて細胞を新しい試薬(以下に記載)中に再懸濁する。これにより、細胞からイオン及び生体材料を洗い落とし、細胞を少量の蒸留水に懸濁した状態にする。試薬の順番は、次の通りである:(a)蒸留水1mlで再ペレット化する、(b)蒸留水1mlで再懸濁する、(c)250μlを清潔な真鍮標本プレートに載せる、(d)30℃にて一晩乾燥させる、(e)顕微鏡観察の直前に、Xenosput無塵真空スパッタコーター中にて2nmの金属クロムでコーティングする。コーティングした標本を、3キロボルトのビームエネルギーでHitachi S−900電界放射型走査電子顕微鏡により検査する(University of New South Wales, NSW, Australia)。様々な倍率でのデジタル画像を、ImageSlaveデジタイザーを用いて記録する。
【0048】
結果(ネズミチフス菌minCDE−株の代表的な画像を、図2A〜Dに示してある)は、親細菌細胞は長さ0.9μm〜4μm、幅0.4μm〜0.5μmの範囲であることを示している。図1の左側に概略を示した濾過ステップの後、いくつかのバッチでは残存する細菌の汚染がみられる。汚染細菌はサイズが小さく、すなわち長さが約0.9μmである。このことは、ミニセル(図2A)と大体同じ幅の小さいサイズの一部の細菌が、0.45μmクロスフローフィルター及びデッドエンドフィルターを通して漏出することを示している。
【実施例2】
【0049】
小細菌の除去:細菌糸状体への変換
本実施例は、濾過に先立って細菌を糸状体へと誘導することが、ミニセル精製プロセスを改善することを実証する。
【0050】
デッドエンドフィルターの孔径0.45μmよりも十分に大きい残存小サイズ親細菌を作り出すことにより、実施例1に記載の問題を解決するように研究をデザインした。細菌増殖環境中でのストレス誘導条件は、細菌細胞分裂時の完全な分離を妨げ、細菌糸状体を生じさせる。
【0051】
本研究は、高張性細菌増殖培地(ストレス誘導剤)がネズミチフス菌及び大腸菌のミニセル産生細菌株の糸状体化を安定に誘導することを実証する。全ての細菌は、−80℃で維持したグリセロールストックから増殖させる。ネズミチフス菌及び大腸菌株は、トリプチケース・ソイ・ブロス(TSB)(BBL brand、Bacto Labs, Liverpool, NSW, Australiaより購入)中で増殖させる。培養液は製造業者の説明書に従い30g/lで調製し、121℃で15分間オートクレーブする。液体培養物を37℃にて振盪型インキュベーター中で一晩増殖させる。一晩培養した細菌培養物を新たなTSB中に1:5,000で希釈し、OD600nmが0.2に到達するまで増殖させる。培養物を滅菌バイアル中の10本の5mlアリコートに分け、予めオートクレーブした滅菌NaClを、最終NaCl濃度(w/v)が0%(対照)、2%、3%、4.5%、5%、5.5%、6%、7%及び8%になるように各バイアルに加える。培養物を37℃にて静置状態でインキュベートし、2時間、4時間、8時間及び24時間においてサンプルを採取する。0時間の対照サンプルも、顕微鏡観察用に採取する。サンプルを13,200rpmで遠心分離し、細菌/ミニセルペレットを蒸留水に再懸濁する。各サンプルの液滴をガラススライド上に置き、風乾し、加熱固定する。各サンプルを、95%アルコール洗浄及び引き続くグラム・サフラニン液への1分間の浸漬によりグラム染色する。スライドを、LeicaモデルDMLB光学顕微鏡により可視化し、それと共にLeica DCカメラ及びLeica IM画像処理ソフトウェアにより画像解析を行う。サンプルは、倍率40×又は100×(油浸)にて観察する。
【0052】
上記実験を4回繰り返し、結果の信頼性を確認し、一連の対照を用いた変型も行う。
【0053】
結果(図3A〜B及び4A〜B)は、増大したNaCl濃度では、細菌細胞は端と端をつないだ2〜20個の球状桿菌よりなる糸状体を形成することを表している。NaCl濃度2%〜3%の範囲内では、糸状体化はまちまちであり(図3A及び4A)、より長いインキュベーション時間の後でもいくつかの細菌細胞は糸状体を形成しない。しかしながら、4%〜5%NaClでは、細菌細胞は確実に糸状体に変化する(図3B及び4B)。4%〜5%NaClでの糸状体化のための最適なインキュベーション時間は約4時間であり、24時間までのさらなるインキュベーションは一般に必要ではない。5.5%〜8%のより高い塩濃度は糸状体形成を減少させる。TSB寒天平板上での希釈液播種により各サンプルの生存細菌数を測定する予備的研究は、高い塩濃度(5.5%〜8%NaCl)では相当数の細菌細胞が死滅することを示唆し、これがこれらのNaCl濃度において減少した糸状体化が観察されることの理由かもしれない。
【0054】
細菌細胞生存率に対する種々のNaCl濃度の影響の最終的な研究は、LIVE/DEAD BacLight細菌生存率キット(Molecular Probes, Eugene, OR, USA)を用いて行う。このキットでは、緑色蛍光SYTO(登録商標)9染色及び赤色蛍光ヨウ化プロピジウム染色の2種類の核酸染色を用いる。これらの染色は健康な細菌細胞に浸透する能力に差がある。SYTO9染色は生存細菌と死滅細菌の両者を標識する。一方、ヨウ化プロピジウム(PI)は損傷した膜を有する細菌のみに浸透し、両方の色素が存在する場合にはSYTO9の蛍光を減少させる。従って、無傷の膜を有する生存細菌は緑色の蛍光を発し、損傷した膜を有する死滅細菌は赤色の蛍光を発する。塩誘導型糸状体化についての上述の実験を繰り返し、種々のNaCl濃度についての0時間、2時間、4時間、8時間及び24時間サンプルを取得する。サンプルを13,200rpmで遠心分離し、上清を捨て、細菌/ミニセルペレットを100μlのBSGに再懸濁する。SYTO9/PIの50/50混合液の0.5μlを各サンプルに添加し、15分間インキュベートする。サンプルを13,200rpmで遠心分離し、上清を捨て、ペレットを100μlの蒸留水に再懸濁する。各サンプルの液滴をガラススライド上に置き、風乾し、BacLight封入オイルの油滴で覆う。各サンプルを、LeicaモデルDMLB光学顕微鏡を用いて可視化し、それと共にLeica DCカメラ及びLeicaデジタル画像取得ソフトウェアにより画像解析を行う。サンプルは、倍率40×又は100×(油浸)にて観察する。
【0055】
結果(カラー写真は示していない)は、5.5%及びそれより高いNaCl濃度においては、相当数の細菌細胞が赤色の蛍光を発し(死滅細胞)、さらに7%及び8%のNaCl濃度では、細菌細胞のほとんど全てがインキュベーションの2時間のうちに死滅することを表している。この結果は、4時間のインキュベーション時間では、4%〜5%NaClが糸状体化を実現する最大限界であることを示す。2時間のインキュベーション後、生存細菌細胞は糸状体へと変化する。しかしながら、インキュベーション時間が増加すると糸状体は赤色の蛍光を発し、このことは、4%〜5%NaClでさえも細菌細胞にとっては十分なストレスであること、及びそれらが数世代の増殖の後に死滅し始めることを示唆している。このストレスは細菌細胞分裂中の完全な分離を妨げるようなので、細菌糸状体を形成させるのに足りる。このデータはまた、より高い塩濃度では糸状体化が達成されないことの理由を説明する。すなわち、該ストレスは毒性であり、細菌増殖及び細胞分裂を妨げ、さらに細胞死を引き起こす。
【実施例3】
【0056】
インタクトなミニセルを親細菌及び他の汚染物質と分離するための生物学的に適合する密度勾配培地の使用
細菌細胞/ミニセル培養物の分画遠心後、顕著な数の細菌細胞汚染物質を、生物学的に適合する培地を用いた密度勾配遠心により除去した。OptiPrepTM(Axis-Shield PLC, Dundee, Scotland)(イオジキサノール(5,5’−[(2−ヒドロキシ−1−3プロパンジイル)−ビス(アセチルアミノ)]ビス[N,N’−ビス(2,3ジヒドロキシプロピル−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンカルボキサミド])の滅菌60%(w/v)水溶液)は生物学的に適合する培地を構成する。6%〜12%勾配を25mlポリプロピレン透明遠沈管(Livingstone International Pty Ltd, Sydney, Australia)中に調製し、ミニセル/細菌細胞懸濁液1mlを各勾配の上に重層した。遠沈管を2,000gにて20分間遠心した。23本の1mlサンプルを遠沈管より回収し、倍率100×油浸対物レンズを用いて光学顕微鏡法により解析した。結果では、図5Aに示したように3つの主要な層が見られた。最上層は主にミニセルを含有し、細菌細胞及び細菌ブレブで汚染されていた。2番目に低い層は主として細菌細胞を有していたが、それらはミニセルよりも約2〜3倍長いようであった。ペレットは主に細菌細胞を有していた。
【0057】
粗ミニセル懸濁液(上方のバンド;図5A)を回収し、エッペンドルフチューブ中で13,200rpmにて30分間遠心分離した。ペレットを2mlの滅菌BSGに再懸濁し、上記と同様にOptiPrepTM勾配で再処理した。結果(図5B)では、比較的小さな細菌ペレットがあり、中間のバンドはずっと明瞭になり、そしてミニセルバンドがはっきりと現れた。遠沈管中の全領域(容量2mlずつ)を上記と同様に光学顕微鏡法で解析し、ミニセルバンドがほとんど細菌汚染物を有していないようであったこと以外は、結果は同様であった。ミニセルバンドを前と同じく回収し、上記と同様に3度目のOptiPrepTM勾配で再処理した。この処理は明瞭なバンドをもたらし(図5C)、顕微鏡により解析すると、細菌汚染物をほとんど有さず、大部分がミニセルであることが明らかになった。この実験を10回反復し、同様の結果を得た。
【実施例4】
【0058】
精製されたインタクトなミニセル調製物からの遊離エンドトキシンの顕著な減少
グラム陰性細菌のエンドトキシンはリポ多糖(LPS)分子であり、リピドA、コアオリゴ糖及びO−多糖と呼ばれる3つの異なるドメインを有している。リピドA及びコアオリゴ糖はエンドトキシン・コアを構成し、種々のグラム陰性細菌種間で比較的保存されている。リピドAはエンドトキシンの毒性部分であり、全てのLPSでコアオリゴ糖に共有結合している(Reitschelら, 1991)。
【0059】
残存する遊離エンドトキシンを、以下のように精製ミニセル調製物から除去した。プロテインGで被覆した磁性ビーズ(Dynal Biotech, Oslo, Norway)を、ヤギ抗リピドAポリクローナル抗体(Biodesign, Saco, Maine, USA)にコンジュゲートした。この抗体はネズミチフス菌LPSを含むある範囲の種々のグラム陰性細菌LPS種と交差反応性である。コンジュゲート反応はダイナビーズ−プロテインG(0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH5.0)0.5ml中で3回洗浄した)を抗リピドA抗体と共にインキュベートすることにより行った(穏やかに混合しながら4℃にてO/N)。過剰な抗体は、ダイナビーズ−プロテインG/抗リピドAコンジュゲートを0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH5.0)0.5ml中で3回洗浄することにより除去した。コンジュゲートを300μlの同バッファー中に再懸濁し、50μlを、遊離エンドトキシン除去のために500μlの精製ミニセル懸濁液を処理するために用いた。共インキュベーションを4℃にて1時間行い、続いてチューブを磁石(Dynal)上に置き、ミニセル上清を回収した。この処理を新たなダイナビーズ−プロテインG/抗リピドAコンジュゲートを用いて3回行い、残存遊離エンドトキシンが最大限除去されるようにした。
【実施例5】
【0060】
ミニセル精製手順中のインタクトなミニセル、細菌細胞及びエンドトキシン量の計測
この実験は、ミニセル回収量、親細菌数の減少及び遊離エンドトキシンの減少に関して、ミニセル精製手順の動態を確認するためにデザインした。以下に概説する完全な精製手順を3回行い、12ステップの各々にてサンプルを回収した。各サンプルを、フローサイメトリー並びに寒天平板上での生存数カウントにより、ミニセル及び細菌細胞数について解析した。エンドトキシン単位(EU)も、LALアッセイ(Charles River Laboratories, Inc. Wilmington, MA, USA)により各サンプルについて測定し、これはAustralian Microbiology Services Pty Ltd(Sydney, Australia)により行われた。完全な精製プロセスを以下に簡単に説明する。
【0061】
高コピー数プラスミド(核酸マーカー)を保持する組換えネズミチフス菌minCDE−株を、トリプチケース・ソイ・ブロス(TSB)25ml中で振盪しながら37℃にて一晩(O/N)増殖させた。その後、1LのTSBをそれぞれ含有する6本のフラスコにO/N培養物2mlを接種し、振盪しながら37℃にてさらにインキュベートした(サンプル1)。培養物を、有意な数の細菌細胞を沈殿させるために卓上遠心機中で2000gにて20分間、分画遠心した。上清(サンプル2)を回収し、0.1μmクロスフローフィルターに通すことにより濃縮した。懸濁液を、エッペンドルフ遠心機中で13,200rpmにて60分間遠心分離することによりさらに濃縮し、ミニセル/細菌細胞ペレットを16mlの滅菌BSGに再懸濁した(サンプル3)。16本の密度勾配(6%〜12%)を、生物学的に適合する培地であるOptiPrepTM(Axis-Shield PLC, Dundee, Scotland)を用いて25mlポリプロピレン透明遠沈管(Livingstone International Pty Ltd, Sydney, Australia)中に調製し、ミニセル/細菌細胞懸濁液1mlを各勾配の上に重層した。遠沈管を2,000gにて20分間遠心し、ミニセルバンド(図5A)を注射器で各遠沈管の上部から回収した。約24mlの粗ミニセル懸濁液(サンプル4)を回収し、これをエッペンドルフチューブ中で、13,200rpmにて30分間遠心分離した。ペレットを12mlの滅菌BSG中に再懸濁し、上記と同様にして12のOptiPrepTM勾配で再処理した。ミニセルバンド(図5B)を前と同じく回収し(サンプル5)、上記と同様にして4のOptiPrepTM勾配で再処理した。この処理により各遠沈管中に明瞭な散乱性のミニセルバンド(図5C)がもたらされ、それらを回収した(サンプル6)。ミニセル懸濁液を1LのTSBに添加し、汚染細菌細胞を再活性化するために、静置状態で37℃にて2時間インキュベートした(サンプル7)。NaCl(終濃度5%w/v)を懸濁液に加えて、生存細菌細胞にストレスを与え、細胞分裂中の隔壁形成の過程を阻害した。懸濁液を静置状態で37℃にて2時間インキュベートし、汚染細菌細胞の大部分が細菌糸状体に変化するようにした(サンプル8)。広範なスペクトルの抗生物質であるゲンタマイシン(200μg/ml)及びカナマイシン(200μg/ml)を懸濁液に添加し、37℃にて一晩インキュベートして全ての生存細菌細胞を死滅させた(サンプル9)。バッファー交換のために懸濁液を0.2μmクロスフローフィルターに通し、懸濁液を滅菌BSG中に再構築した(サンプル10)。このプロセスにより、例えば遊離エンドトキシン、溶解した細菌及びミニセル断片、核酸並びにTSBの栄養素などの0.2μmよりも小さな全ての汚染物質が除かれた。そして0.45μmデッドエンドフィルターに溶液を通すことにより、ミニセル懸濁液に由来する細菌糸状体を除去した。100kDaクロスフローフィルターに通すことで懸濁液を容量50mlまで濃縮し、その後13,200rpmで20分間遠心分離してミニセルをペレット化した。上清を捨て、ペレットを1mlの滅菌BSGに再懸濁した(サンプル11)。残存する遊離エンドトキシンは、実施例4に記載したのと同様に抗リピドA抗体にコンジュゲートしたダイナビーズ−プロテインGを用いて除去した。これによりサンプル12を得た。
【0062】
ミニセル及び細菌細胞の計数は、以下のようにフローサイトメトリーにより行った。ミニセル精製手順からの各サンプルを約10〜1010個のミニセルを有するように大まかに希釈し、サンプルの250μlを3.3μM Syto9緑色蛍光色素(Molecular Probes, Eugene, OR, USA)と共にインキュベートした。この色素は細菌細胞の無傷の膜及び損傷した膜を透過し、内在性の核酸に結合して、緑色蛍光を発する細菌細胞をもたらす。本発明者らの予備的研究では、この色素がミニセル膜をも透過し、緑色蛍光を発する組換えミニセルをもたらすことが示された。全てのサンプルをFACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson, San Jose, CA, USA)により、Cellquest取得・解析ソフトウェア(Becton Dickinson)を用いてカウントした。カウントは、緑色蛍光「FL1」トリガー(515〜545nmを検出する)により、37Vの閾値を用いて中間流速にて30秒間にわたって行った。FL1のPMT電圧は550Vに設定した。側方散乱光「SSC」のPMT電圧は524Vに設定した。適当なサンプル希釈では30秒当たり5000〜50000粒子の値が返され、最終的な粒子数は5回の反復実験の平均とした。ミニセルと細菌とはSSC及び緑色蛍光におけるそれらの差異に基づいて区別した。
【0063】
結果(図6A〜C)から、精製プロセスの開始時には6Lの細菌/ミニセル培養物がミニセル約5×1012個を有しており(図6A)、精製手順を通じて段階的な逸失が起こって最後には約5×1010個の回収量でミニセルが得られることが示された。
【0064】
手順の開始時での親細菌細胞数(図6B)はミニセル数と同等、すなわち細菌約5×1012個であった。精製プロセスは、抗生物質処理の時点で1000倍を超える細菌細胞の排除をもたらした。この時点で、ミニセル:細菌細胞の比は100:1を上回り、従ってフローサイトメトリー計測では解析したサンプル中に細菌細胞を検出することができなかった。抗生物質処理後では、平板生存数アッセイにより解析された全てのサンプルで、生存細菌細胞が全く存在しないことが明らかになった。最終精製サンプル中のゲノムDNAの存在についての定量的PCR解析により、1011個の精製ミニセル中、親細菌細胞(死滅細胞)は1個未満であることが示された。
【0065】
各サンプル中の遊離エンドトキシン計測(図6C)は、精製工程の開始時にサンプルが約10エンドトキシン単位(EU)を有していたことを示した。EUは3回目の勾配精製ステップ後には約10にまで減少した(図6C;サンプル6)。ミニセル/残存細菌細胞懸濁液を塩誘導型糸状体化のためにTSB中でインキュベートするとEUは再び増加したが(図6C;サンプル7〜9)、続く精製ステップにおいて10〜10EUまで減少した。
【0066】
水溶液中では精製したLPSは遊離LPSとして、またミセルとして見出されうることが知られている。これはリピドA部分が疎水性であり糖質部分(コア多糖及びO−多糖)は親水性であるためである。これにより、疎水性リピドAは埋入され、親水性多糖が水性環境と相互作用しているミセルが生じる。これらのミセルは様々な分子サイズの範囲で存在することが知られており、数百万ダルトン程にも大きなものでありうる。細菌細胞又はミニセルに結合したLPSは、リピドA部分が二重層膜中に埋もれていて、エンドトキシンではない。遊離LPSは、リピドA部分が哺乳動物細胞膜と相互作用することができ、それにより深刻な内毒素作用をもたらすので、エンドトキシンである。LPSミセルがin vivoでエンドトキシンであるかどうかは知られていない。
【0067】
本発明のミニセルは、in vivoでの治療用途に対して有用であり、従って当該精製手順は遊離LPS、すなわちエンドトキシンの除去に焦点を絞ったものである。しかしながら、LALアッセイはLPSの3つの形態、すなわち遊離型(エンドトキシン)、ミセル型(以下の研究はこれがエンドトキシンでないことを示唆している)及びミニセル表面結合型(エンドトキシンでない)の全てを測定する。一方で、抗リピドA抗体は遊離LPSのみに結合し、それを除去するようであり、なぜなら該抗体の抗原結合部位がミセル中又はインタクトなミニセル中のリピドAに到達し得ない(抗原部位が埋もれているため)からである。
【実施例6】
【0068】
精製ミニセル調製物中の遊離エンドトキシンレベルの測定
上記のことを実証するために、LALアッセイによってLPSのどの形態が実際に測定されるのかを確認すべく、一連のさらなる実験を行った。精製ミニセル調製物を、新たに調製したダイナビーズ−プロテインG/抗リピドAコンジュゲートを用いて遊離LPSを除去するために、順次に5回処理し、各精製段階からの以下のサンプルをLALアッセイにより解析した;(a)精製ミニセル懸濁液(LPSの3つの形態全て(すなわち遊離型、ミセル型及びミニセル表面膜結合型)を有すると予測される)、(b)回収されたダイナビーズ−プロテインG/抗リピドAコンジュゲート(おそらく結合した遊離型LPSを有する)、(c)ダイナビーズ−プロテインG/抗リピドA処理後に13,200rpmでの20分間のミニセル懸濁液の遠心分離により得られた上清(遊離型は抗リピドAにより取り除かれているはずであり、ミニセル結合LPSはミニセルペレット中に見出されるはずなので、これはおそらくミセル型LPSを有している)、(d)(c)から得られたペレット(滅菌発熱物質不含BSG中に再懸濁した)。対照の群、例えば抗リピドA抗体が遊離型LPSに結合してそれを除くことを確かめるためのダイナビーズ−プロテインG/抗リピドAコンジュゲートを用いて処理した精製ネズミチフス菌LPS(Sigma Chemical Company, St. Louis, MO, USA);希釈液が観察されるEUに寄与しないことを確かめるための希釈液サンプル等、も含められた。
【0069】
結果(表1、下掲)は、予想されたように、LALアッセイにより測定されるEUの大部分がミニセル表面膜結合LPS(D列)に伴うものであり、これは実施例7のin vivo研究で見られるようにエンドトキシンでない。この結果は、図6C(サンプル12)において見られた結果と類似する。上清(C列)もまた、顕著な量のEUを有し、各サンプルはダイナビーズ−プロテインG/抗リピドAコンジュゲートを用いて既に処理されていたため、これはおそらくLPSのミセル型である。興味深い結果がB列において見られ、B列は抗リピドA抗体処理が行われる各回で、精製ミニセル調製物において見出され得る遊離型LPSの量は20EU〜45EUのみであることを示した。この値は非経口投与医薬品の1回放出についての現行のエンドトキシン基準(350EU/用量)を大いに下回る(Grandics, 2000)。
【表1】

【実施例7】
【0070】
精製ミニセルが顕著なレベルのエンドトキシンを有していないことのin vivoにおける確認
精製ミニセル調製物を、上記のダイナビーズ−プロテインG/抗リピドAコンジュゲート手順を用いてエンドトキシン除去のために順次に(3回)処理した。10個の精製ミニセルを有する調製物の各々(すなわち、エンドトキシン除去前、並びに1回目の、2回目の、及び3回目のエンドトキシン除去ステップ後)を6週齢メス無胸腺ヌードマウス(1群当たり5匹)の尾静脈に注射した。本実施例において用いたマウスはAnimal Resources Centre(Perth, WA, Australia)から購入し、全ての動物実験は実験動物の管理及び使用の指針に従い、動物倫理委員会の承認を得て行った。実験は、EnGeneIC Pty Ltd(Sydney, NSW, Australia)のNSW州農業省認可小動物施設中で行った。マウスを4週間にわたって注意深く観察し、あらゆる内毒素ショックの兆候(例えば発熱、昏睡、食欲及び体重の低下、並びにそれに続く死亡)を記録した。その結果、エンドトキシン除去手順なしでは、大部分のマウスがすぐに発熱し、最初の12時間以内に昏睡状態に陥ることが示された。動物のほとんどは2週間以内に死亡した。1回目のエンドトキシン除去手順後のミニセルを投与されたマウスはより安定であり、最初の24時間、軽い発熱を示した。しかしながら、マウスは3日後には回復した。2回及び3回のエンドトキシン除去を行った精製ミニセルを投与されたマウスは有害な副作用を全く示さず、健康なままであった。このことは、ミニセルを哺乳動物宿主体内での医薬用途に用いる場合には、遊離エンドトキシン除去の新規なステップが必須であることを示唆した。
【0071】


【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明のミニセル精製技術を他のミニセル精製手順と統合することができる一つの方法を示す。
【図2】ネズミチフス菌(S. typhimurium)のminCDE−細菌株(一定範囲の異なるサイズ)及びこの株に由来するミニセルの走査電子顕微鏡写真を示す。(A)小さなサイズの親細菌(長さ1.1μm)及びミニセル(直径0.4μm)を示す。(B)大きな親細菌(長さ1.32μm)を示す。(C)さらに大きな親細菌(長さ1.6μm)を示す。(D)親細菌とミニセルとの混合物を示し、前者は長さ1μm〜4μmの範囲である。
【図3A】種々の時間にわたる種々のNaCl濃度を用いたインキュベーションに引き続く親ネズミチフス菌minCDE−細菌株の糸状体化を示す。
【図3B】NaClの不在下で4時間にわたり増殖培地中でインキュベートしたネズミチフス菌minCDE−細菌株(左側の写真)と、5%NaClの存在下での4時間のインキュベーション後に形成された細菌糸状体(右側の写真)のサイズを比較する蛍光顕微鏡写真を示す。
【図4A】種々の時間にわたる種々のNaCl濃度を用いたインキュベーションに引き続く親大腸菌minCDE−細菌株の糸状体化を示す。
【図4B】NaClの不在下で4時間にわたり増殖培地中でインキュベートした大腸菌minCDE−細菌株(左側の写真)と、5%NaClの存在下での4時間のインキュベーション後に形成された細菌糸状体(右側の写真)のサイズを比較する蛍光顕微鏡写真を示す。
【図5】図5A〜Cは、実施例3において説明するように、密度勾配遠心に生物学的に適合する培地(例えばOptiprep)を用いたミニセルの3回の連続精製段階を示す。最初の密度勾配遠心により分離された粗ミニセル調製物(図5A)によって、汚染物質、すなわち顕著な細菌ペレット及びミニセルと細菌ペレットとの間にバンドを形成する比較的小さなサイズの細菌細胞が明らかとなった。ミニセルバンドを回収し、2回目のOptiprep勾配(図5B)によって処理したところ、より明りょうなミニセルバンドと、小さな細菌細胞のより鮮明なバンドと、無視できる程度の細菌ペレットが明らかとなった。ミニセルバンドを回収し、3回目のOptiprep勾配(図5C)によって処理したところ、ミニセルの有意な精製が明らかとなった。
【図6A】図6A〜Cは、ミニセル精製手順のステップの間のミニセル(図6A)、生存細菌細胞(図6B)及びエンドトキシン(EU;図6C)の数をそれぞれ示す。精製プロセスにおいてサンプルを分析するために回収した種々の段階をx軸に示す。実験の詳細は実施例5に記載する。各値は3つのサンプルの平均であり、各サンプルは別々の精製プロセスから回収した。標準誤差バーを示す。
【図6B】図6A〜Cは、ミニセル精製手順のステップの間のミニセル(図6A)、生存細菌細胞(図6B)及びエンドトキシン(EU;図6C)の数をそれぞれ示す。
【図6C】図6A〜Cは、ミニセル精製手順のステップの間のミニセル(図6A)、生存細菌細胞(図6B)及びエンドトキシン(EU;図6C)の数をそれぞれ示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミニセルを含有するサンプルを生物学的に適合する培地中での密度勾配遠心に供するステップを含み、それにより該サンプル中の汚染物質からミニセルが分離されて精製されたミニセル調製物が得られる、精製方法。
【請求項2】
ミニセル含有サンプルに対して分画遠心を実施する予備ステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ミニセル含有サンプルを濾過するステップを少なくとも1回さらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ミニセル含有サンプルの濾過ステップが、少なくとも1つの約0.2μm以下の孔径のフィルターを用いる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
ミニセル含有サンプルの濾過ステップが、約0.45μmの孔径のフィルターを用いたデッドエンド濾過である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
精製されたミニセル調製物を抗生物質で処理するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
培地が等張性かつ非毒性である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
培地が本質的にイオジキサノール及び水からなる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
ミニセルを含有するサンプルを、親細菌細胞が糸状体となるよう誘導する条件に供し、続いて該サンプルを濾過するステップを含み、それによりミニセルが親細菌細胞から分離される、精製方法。
【請求項10】
条件が、異常な浸透圧条件、嫌気条件又は栄養制限条件である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
サンプルを高張性培地中でインキュベートする、請求項9記載の方法。
【請求項12】
濾過ステップが約0.45μmの孔径のフィルターを用いたデッドエンド濾過である、請求項9記載の方法。
【請求項13】
以下のステップ:
(a)ミニセルを含有するサンプルを生物学的に適合する培地中での密度勾配遠心に供するステップ、及び
(b)ミニセル含有サンプルを親細菌細胞が糸状体となるよう誘導する条件に供し、続いて該サンプルを濾過するステップ
を含み、それによりミニセルが該サンプル中の汚染物質から分離されて精製されたミニセル調製物が得られる、精製方法。
【請求項14】
ミニセル含有サンプルからエンドトキシンを除去するステップをさらに含む、請求項1記載の精製方法。
【請求項15】
エンドトキシン除去ステップが抗リピドA抗体を用いる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
ミニセル含有サンプルからエンドトキシンを除去するステップをさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項17】
ミニセル含有サンプルからエンドトキシンを除去するステップをさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項18】
以下のステップ:
(a)ミニセルを含有するサンプルを生物学的に適合する培地中での密度勾配遠心に供するステップ、
(b)該ミニセル含有サンプルを親細菌細胞が糸状体となるよう誘導する条件に供し、続いて該サンプルを濾過するステップ、及び
(c)該サンプルからエンドトキシンを除去するステップ
を含み、それによりミニセルが該サンプル中の汚染物質から分離されて精製されたミニセル調製物が得られる、精製方法。
【請求項19】
請求項1記載の方法により調製され、かつミニセル10個当たり約1個未満の汚染親細菌細胞を含有する、精製されたミニセル調製物。
【請求項20】
請求項1記載の方法により調製され、かつミニセル10個当たり約1個未満の汚染親細菌細胞を含有する、精製されたミニセル調製物。
【請求項21】
請求項1記載の方法により調製され、かつミニセル10個当たり約1個未満の汚染親細菌細胞を含有する、精製されたミニセル調製物。
【請求項22】
請求項1記載の方法により調製され、かつミニセル1010個当たり約1個未満の汚染親細菌細胞を含有する、精製されたミニセル調製物。
【請求項23】
請求項1記載の方法により調製され、かつミニセル1011個当たり約1個未満の汚染親細菌細胞を含有する、精製されたミニセル調製物。
【請求項24】
エンドトキシンを実質的に含まないミニセル調製物。
【請求項25】
細胞破砕物を実質的に含まないミニセル調製物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate


【公表番号】特表2007−520201(P2007−520201A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516573(P2006−516573)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002091
【国際公開番号】WO2004/113507
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(504146523)エンジェネイック モレキュラー デリバリー ピーティーワイ リミテッド (6)
【Fターム(参考)】