説明

インターフェロン−βを送達するための方法

【課題】インターフェロン−βの溶液へ放出される凝集性金属の量を低減させる方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、インターフェロン−βの溶液を保存および送達するための方法に関し、この保存溶液中で、凝集性金属の濃度は十億分の500である。凝集性金属としては、鉄、銅、ニッケル、モリブデンおよびタングステンが挙げられる。インターフェロン−βを保存するために有用な装置としては、シリンジ、バイアル、ボトルおよびバッグなどが挙げられるが、これらに限定されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2005年1月12日に出願された米国第60/643,273号の優先権を主張する。上記出願の全体の内容は本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、インターフェロン−βを保存および送達するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
インターフェロンは、種々の誘導因子(ウイルス、マイトジェンおよびポリヌクレオチドが挙げられる)に応答して、大半の動物細胞により分泌される、一本鎖ポリペプチドである。インターフェロンは、細胞機能の制御に関与し、抗ウイルス特性、抗増殖特性および免疫調節特性を有する。天然のヒトインターフェロンは、以下の3つの主要なクラスに分類される:インターフェロン−α(白血球)、インターフェロン−β(線維芽細胞)およびインターフェロン−γ(免疫性)。天然のインターフェロン−βは、二倍体の線維芽細胞により主に産生され、リンパ芽球様細胞により少量のインターフェロン−βが産生される。
【0004】
インターフェロン−βは、糖タンパク質である。その遺伝子の核酸配列およびアミノ酸配列は決定されている(非特許文献1;非特許文献2)。組換えインターフェロン−βは製造され、特徴付けられている。
【0005】
インターフェロン−βは、抗ウイルス、抗腫瘍および抗癌のような種々の生物学的活性および免疫学的活性を示す。インターフェロン−β−1aは、商標名Avonex(登録商標)の下で多発性硬化症の処置に関して米国内での販売が認可されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Houghtonら、「The Complete Amino Acid Sequence of Human Fibroblast Interferon as Deduced Using Synthetic Oligodeoxyribonucleotide Primers of Reverse Transcriptase,」Nucleic Acids Research(1980)8,pp.2885−94
【非特許文献2】T.Taniguchiら、「The Nucleotide Sequence of Human Fibroblast DNA,」Gene(1980)10,pp.11−15
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
一般的に、本発明は、インターフェロン−βの溶液を保存および送達するための方法に関し、この保存溶液中で、凝集性金属(aggregating metal)の濃度は十億分の500である。凝集性金属としては、鉄、銅、ニッケル、モリブデンおよびタングステンが挙げられる。インターフェロン−βを保存するために有用な装置としては、シリンジ、バイアル、ボトルおよびバッグなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0008】
一局面において、本発明は、インターフェロン−βの溶液を保存および送達するための方法を提供し、この方法は、この溶液を保持するためのハウジングを有する装置を提供する工程、および、このハウジングにインターフェロン−βの溶液を充填する工程を包含する。この溶液を充填した後、このハウジングは、十億分の500未満の濃度で、凝集性金属をこの溶液に放出する。
【0009】
別の局面において、このハウジングは、十億分の500未満、十億分の250未満、約十億分の100未満、約十億分の75未満、約十億分の50未満、または約十億分の25未満の総濃度で、凝集性金属をこの溶液に放出する。
【0010】
なお別の局面において、本発明は、インターフェロン−βの溶液を保存および送達するための方法を特徴とし、この方法は、この溶液を保持するためのハウジングを有する装置を提供する工程、およびインターフェロン−βの溶液をこのハウジングに充填する工程を包含する。この溶液を充填した後、この溶液中の凝集性金属によって生じるインターフェロン−βの凝集は、保存後15%未満、保存後10%未満、保存後5%未満、保存後2%未満である。
【0011】
なお別の局面において、本発明は、インターフェロン−βの溶液を保存および送達するための装置を特徴とし、この装置は、インターフェロン−β溶液およびインターフェロン−βの溶液を保持するためのハウジングを含む。このハウジングは、十億分の500未満、十億分の250未満、約十億分の100未満、約十億分の75未満、約十億分の50未満、または約十億分の25未満の総濃度で、凝集性金属をこの溶液に放出する。
【0012】
この局面の一実施形態において、ハウジング中に含まれるインターフェロン−βの溶液中の凝集性金属によって生じるインターフェロン−βの凝集は、保存後15%未満、保存後10%未満、保存後5%未満、保存後2%未満である。
【0013】
これらの局面の実施形態としては、一つ以上の以下のものが挙げられる。溶液をハウジング中に約10分間より長く、約120分間より長く、約360分間より長く、約480分間より長く保持した後に、このハウジングは、十億分の500未満の濃度または総濃度で、一種類の凝集性金属または複数の凝集性金属を放出する。溶液をハウジング中に約120分間〜約480分間の間、または約300分間〜約420分間の間、保持した後に、このハウジングは、約十億分の500未満の濃度または総濃度で、一種類の凝集性金属または複数の凝集性金属を放出する。ハウジングは、約十億分の250未満、約十億分の100未満、約十億分の75未満、約十億分の50未満、約十億分の25未満の濃度または総濃度で、一種類の凝集性金属または複数の凝集性金属を放出する。この凝集性金属は、鉄、銅、ニッケル、モリブデンまたはタングステンである。この装置は、シリンジ、ボトル、バイアルまたはバッグである。この装置のハウジングは、ガラス、金属またはプラスチックから構築される。このインターフェロン−βはインターフェロン−β−1aである。
例えば、本発明は以下を提供する:
(項目1)
インターフェロン−βの溶液を保存および送達するための方法であって、
インターフェロン−βの溶液を保持するためのハウジングを備える装置を提供する工程、
該インターフェロン−βの溶液を該ハウジングに充填する工程を包含し、
ここで、該溶液を充填した後、該ハウジングは、十億分の500未満の濃度で、一種類の凝集性金属を該溶液に放出する、方法。
(項目2)
前記溶液を前記ハウジング内で約10分間より長く保持した後に、該ハウジングが、十億分の500未満の濃度で、一種類の凝集性金属を該溶液に放出する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記溶液を前記ハウジング内で約120分間より長く保持した後に、該ハウジングが、約十億分の500未満の濃度で、一種類の凝集性金属を該溶液に放出する、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記溶液を前記ハウジング内で約360分間より長く保持した後に、該ハウジングが、約十億分の500未満の濃度で、一種類の凝集性金属を該溶液に放出する、項目2に記載の方法。
(項目5)
前記溶液を前記ハウジング内で約480分間より長く保持した後に、該ハウジングが、約十億分の500未満の濃度で、一種類の凝集性金属を該溶液に放出する、項目2に記載の方法。
(項目6)
前記溶液を前記ハウジング内で約120分間〜約480分間保持した後に、該ハウジングが、約十億分の500未満の濃度で、一種類の凝集性金属を該溶液に放出する、項目2に記載の方法。
(項目7)
前記溶液を前記ハウジング内で約300分間〜約420分間保持した後に、該ハウジングが、約十億分の500未満の濃度で、一種類の凝集性金属を該溶液に放出する、項目2に記載の方法。
(項目8)
前記ハウジングが、約十億分の250未満の濃度の一種類の凝集性金属を放出する、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記ハウジングが、約十億分の100未満の濃度の一種類の凝集性金属を放出する、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記ハウジングが、約十億分の75未満の濃度の一種類の凝集性金属を放出する、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記ハウジングが、約十億分の50未満の濃度の一種類の凝集性金属を放出する、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記凝集性金属が、鉄、銅、ニッケル、モリブデンおよびタングステンからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記凝集性金属がタングステンである、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記装置が、シリンジ、ボトル、バイアルまたはバッグである、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記装置がシリンジである、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記装置のハウジングが、ガラス、金属またはプラスチックから構築される、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記ハウジングがガラスから構築される、項目16に記載の方法。
(項目18)
インターフェロン−βの溶液を保存および送達するための方法であって、
インターフェロン−βの溶液を保持するためのハウジングを備える装置を提供する工程、
該インターフェロン−βの溶液を該ハウジングに充填する工程を包含し、
ここで、該溶液を充填した後、該ハウジングは、十億分の500未満の総濃度で、複数の凝集性金属を該溶液に放出する、方法。
(項目19)
前記溶液を前記ハウジング内で約10分間より長く保持した後に、該ハウジングが、約十億分の500の総濃度で、複数の凝集性金属を放出する、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記溶液を前記ハウジング内で約120分間より長く保持した後に、該ハウジングが、約十億分の500の総濃度で、複数の凝集性金属を放出する、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記溶液を前記ハウジング内で約360分間より長く保持した後に、該ハウジングが、約十億分の500の総濃度で、複数の凝集性金属を放出する、項目18に記載の方法。
(項目22)
前記溶液を前記ハウジング内で約480分間より長く保持した後に、該ハウジングが、約十億分の500の総濃度で、複数の凝集性金属を放出する、項目18に記載の方法。
(項目23)
前記溶液を前記ハウジング内で約120分間〜約480分間保持した後に、該ハウジングが、約十億分の500の総濃度で、複数の凝集性金属を放出する、項目18に記載の方法。
(項目24)
前記溶液を前記ハウジング内で約300分間〜約420分間保持した後に、該ハウジングが、約十億分の500の総濃度で、複数の凝集性金属を放出する、項目18に記載の方法。
(項目25)
前記ハウジングが、約十億分の250未満の総濃度の複数の凝集性金属を放出する、項目18に記載の方法。
(項目26)
前記ハウジングが、約十億分の100未満の総濃度の複数の凝集性金属を放出する、項目18に記載の方法。
(項目27)
前記ハウジングが、約十億分の75未満の総濃度の複数の凝集性金属を放出する、項目18に記載の方法。
(項目28)
前記ハウジングが、約十億分の50未満の総濃度の複数の凝集性金属を放出する、項目18に記載の方法。
(項目29)
インターフェロン−βの溶液を保存および送達するための方法であって、
インターフェロン−βの溶液を保持するためのハウジングを備える装置を提供する工程、
該インターフェロン−βの溶液を該ハウジングに充填する工程を包含し、
ここで、該溶液を充填した後、該溶液中の凝集性金属によって生じるインターフェロン−βの凝集は、保存後15%未満である、方法。
(項目30)
前記溶液中の凝集性金属によって生じるインターフェロン−βの凝集が、保存後10%未満である、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記溶液中の凝集性金属によって生じるインターフェロン−βの凝集が、保存後5%未満である、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記溶液中の凝集性金属によって生じるインターフェロン−βの凝集が、保存後2%未満である、項目29に記載の方法。
(項目33)
前記インターフェロン−βがインターフェロン−β−1aである、項目1〜32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
溶液を保持するためのハウジング、
該ハウジング中に保持されるインターフェロン−βの溶液
を備える装置であって、該ハウジングは、十億分の500未満の総濃度で、複数の凝集性金属を該インターフェロン−β溶液に放出する、装置。
(項目35)
前記ハウジングが、約十億分の250未満の総濃度の複数の凝集性金属を放出する、項目34に記載の装置。
(項目36)
前記ハウジングが、約十億分の100未満の総濃度の複数の凝集性金属を放出する、項目34に記載の装置。
(項目37)
前記ハウジングが、約十億分の75未満の総濃度の複数の凝集性金属を放出する、項目34に記載の装置。
(項目38)
前記ハウジングが、約十億分の50未満の総濃度の複数の凝集性金属を放出する、項目34に記載の装置。
(項目39)
前記溶液を前記ハウジング内で約10分間より長く保持した後に、該ハウジングが、約十億分の500未満の総濃度で、複数の凝集性金属を放出する、項目34に記載の装置。
(項目40)
前記溶液を前記ハウジング内で約120分間より長く保持した後に、該ハウジングが、約十億分の500未満の総濃度で、複数の凝集性金属を放出する、項目34に記載の装置。
(項目41)
前記溶液を前記ハウジング内で約360分間より長く保持した後に、該ハウジングが、約十億分の500未満の総濃度で、複数の凝集性金属を放出する、項目34に記載の装置。
(項目42)
前記溶液を前記ハウジング内で約480分間より長く保持した後に、該ハウジングが、約十億分の500未満の総濃度で、複数の凝集性金属を放出する、項目34に記載の装置。
(項目43)
前記溶液を前記ハウジング内で約120分間〜約480分間保持した後に、該ハウジングが、約十億分の500未満の総濃度で、複数の凝集性金属を放出する、項目34に記載の装置。
(項目44)
前記溶液を前記ハウジング内で約300分間〜約420分間保持した後に、該ハウジングが、約十億分の500未満の総濃度で、複数の凝集性金属を放出する、項目34に記載の装置。
(項目45)
前記溶液中の凝集性金属によって生じるインターフェロン−βの凝集が、保存後15%未満である、項目34に記載の装置。
(項目46)
前記溶液中の凝集性金属によって生じるインターフェロン−βの凝集が、保存後10%未満である、項目34に記載の装置。
(項目47)
前記溶液中の凝集性金属によって生じるインターフェロン−βの凝集が、保存後5%未満である、項目34に記載の装置。
(項目48)
前記溶液中の凝集性金属によって生じるインターフェロン−βの凝集が、保存後2%未満である、項目34に記載の装置。
(項目49)
シリンジ、ボトル、バイアルまたはバッグである、項目34に記載の装置。
(項目50)
シリンジである、項目34に記載の装置。
(項目51)
前記装置のハウジングが、ガラス、金属またはプラスチックから構築される、項目34に記載の装置。
(項目52)
前記ハウジングがガラスから構築される、項目34に記載の装置。
(項目53)
前記インターフェロン−βがインターフェロン−β−1aである、項目34〜52に記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、25℃、60%の相対湿度における、凝集性金属であるタングステンを含む市販のシリンジ内で4週間保存した後の、時間と凝集性金属の濃度との関数としてのインターフェロン−β−1aの凝集%のプロットである。
【図2】図2は、インターフェロン−βを保存するための装置を図示する。
【図3】図3は、図2に示される装置をセグメントAに沿って取った末端図(end−on view)である。
【図4】図4は、インターフェロン−βを保存するために有用な代替的装置を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本明細書で使用される場合、用語「インターフェロン−β」とは、インターフェロン−βの全ての形態(例えば、インターフェロン−β−1a)をいう。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「凝集」とは、インターフェロン分子間の相互作用の増大をいい。これは、乳光、微粒子の形成または溶液からのインターフェロン−βの沈殿の増大を引き起こす。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「十億分の「特定の数」未満の量の凝集性金属」とは、装置のハウジングからAvonex(登録商標)液体処方物の洗浄溶液に移される凝集性金属の量をいい、ここで、この洗浄溶液は、約240分間〜約480分間、約300分間〜約420分間、または約345分間〜約375分間、装置のハウジングと接触して配置される。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「十億分の「特定の数」未満のタングステン」とは、装置のハウジングからAvonex(登録商標)液体処方物の洗浄溶液へ移される凝集性金属の量をいい、ここで、この洗浄溶液は、約240分間〜約480分間、約300分間〜約420分間、または約345分間〜約375分間、装置のハウジングに適用される。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「装置」とは、インターフェロン−βを保存または送達するための任意の手段をいう。
【0020】
本明細書で使用される場合、、用語「ハウジング」とは、約10分間より長く、インターフェロン−βと直接接触する装置の構成要素をいう。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「洗浄溶液」とは、装置から溶液へ放出された凝集性金属の量を決定するために使用される、プラシーボ処方物のような溶液をいう。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「プラシーボ処方物」とは、薬物を含まない薬物組成物の成分を含む溶液をいう。
【0023】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により通常理解される意味と同一の意味を有する。本明細書で言及される、全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、それらの全体が参考として援用される。さらに、材料、方法および実施例は、例示のみであり、限定的であるとは意図されない。
【0024】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および上述の特許請求の範囲から明らかとなる。
【0025】
(発明の説明)
一般的に、本発明は、インターフェロン−β溶液を保存および送達するための方法を提供し、ここでは、例えば、10分間、120分間、360分間、480分間の保存後、凝集性金属(各々の金属または全ての凝集性金属の総量)の濃度が溶液の十億分の500未満である。特定の金属は、インターフェロン−βの凝集を引き起こす。例えば、図1に示されるように、凝集性金属(例えば、タングステン)の濃度の増大は、インターフェロン−β−1aの凝集の程度を増大させる。
【0026】
凝集は望ましくない。なぜなら、それは、乳光、微粒子の形成および薬物の沈殿を生じるからである。さらに、凝集は、薬物のより低いバイオアベイラビリティおよびインターフェロン−βを送達する際の困難さを導き得る。本明細書に記載される方法は、インターフェロン−βの保存溶液へ放出される凝集性金属の量を低下させ、サイズ除去クロマトグラフィにより測定される約15%未満、約10%未満、約5%未満または約2%未満の凝集を提供する。
【0027】
本発明はまた、インターフェロン−βの溶液を保持するための装置を提供し、10分間、120分間、360分間、または480分間より長く、この溶液をこの装置内で保持した後で、凝集性金属(各々金属または全ての凝集性金属の総量)の濃度は、溶液の十億分の500未満である。さらに、本明細書に記載される装置は、このハウジング内に保持されるインターフェロン−β溶液へ放出される凝集性金属の量を低下させ、約15%未満、約10%未満、約5%未満または約2%未満の凝集を提供する。
【0028】
図2および3を参照して、インターフェロン−β送達用のガラスシリンジ10は、インターフェロン−β−1aを保持するためのハウジング20と、ハウジング20からインターフェロン−β−1を分配するための針30とを備える(図2)。このハウジング20は、中央ボア24を規定する円柱状の壁22を備える(図3)。このハウジングの一端26は、針30に接続し、このハウジングの他方の端28は、プランジャー32を受容する。プランジャー32は、中央ボア24に配置され、円柱状の壁22と摩擦によって係合する。送達の間、プランジャー32を押し下げて、インターフェロン−βを分配する。シリンジ10内での保存の間、インターフェロン−β溶液は、ハウジング20の中央ボア24内に配置され、プランジャー32の端部と物理的に接触する。
【0029】
インターフェロン−βの溶液と接触する、シリンジの表面上の凝集性金属の量を除去するか、または低減させるために、シリンジ10は、使用前に構築されるか、または洗浄される。一般的に、凝集性金属(例えば、鉄、銅、ニッケル、モリブデンまたはタングステン)の量を除去するか、または低減させるために、シリンジ10は、使用前に構築されるか、または洗浄される。この凝集性金属は、保存(例えば、2℃〜30℃の間の温度での約10分間、約120分間、約360分間もしくは約480分間、約100時間、約200時間、約400時間、約700時間もしくは約1000時間より長いか、約120分間〜約480分間の間、もしくは約300分間〜約420分間の間の保存)の間に、シリンジの表面から放出され、インターフェロン−β溶液と接触する。
【0030】
十億分の500未満、十億分の250未満、十億分の100未満、十億分の75未満、十億分の50未満または十億分の25未満の凝集性金属(個々または総量で)が保存後にシリンジからインターフェロン−βの溶液へ放出されるように、シリンジ10が構築されるか、または洗浄される。シリンジの構築または洗浄はまた、このシリンジ内での溶液の保存後に、インターフェロン−β溶液中で15%未満、10%未満、5%未満または2%未満の凝集を提供する。インターフェロン−βの溶液またはプラシーボ処方物へ放出される凝集性金属の量は、インターフェロン−β溶液またはプラシーボ処方物について誘導結合プラズマ質量分析法または原子吸光分光を実行することによって、測定することができる。
【0031】
上記のレベルまで凝集%および凝集性金属の量を低減する保存条件を提供することができる適切なシリンジ保存装置は、Becton DickinsonおよびBunder Glas GmbHから入手できる。他のシリンジ保存装置は、当該分野において公知である。例えば、米国特許第6,352,522号、同第6,263,641号、同第4,895,716号および同第4,266,557号を参照のこと。これらの装置は、濃硫酸(例えば、98%)で洗浄して凝集性金属を除去し得、次に、1回以上塩基での洗浄を行い、あらゆる残留する硫酸を中和し、その後、この装置をインターフェロン−βで満たす。酸溶液および塩基溶液で洗浄した後、シリンジ内に残留する凝集性金属の量は、シリンジをゆすぎ、そして、約10分間より長くシリンジ内に保存したプラシーボ処方物について誘導結合プラズマ質量分析法または原子吸光分光を実行することによって決定され得る。
【0032】
上記において、保存装置はシリンジとして記載されるが、以下の条件で、インターフェロン−βを保存または送達するための他の装置は本発明の範囲内である:各々の装置の構成要素が約10分間より長くインターフェロン−βと接触して、インターフェロン−βの溶液へ十億分の500未満の凝集性金属を放出する。各々これらの装置は、保存溶液へ放出され得る凝集性金属の量を低減するように製造され得るか、またはこの装置が酸および塩基での洗浄によりきれいすることができるように製造され得る。他の保存装置の例としては、アンプル(40、図4)、バイアル(45、図4)およびバッグ(50、図4)が挙げられる。
【0033】
本発明は、以下の実施例にさらに説明されるが、これらの実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定しない。
【実施例】
【0034】
(実施例1−凝集性金属の放出を決定するための一般的な手順)
以下の手順は、保存後に溶液中に放出される凝集性金属の量を決定するために使用することができる。
【0035】
インターフェロン−βを保存する容器についての任意選択を、製造ロットから選ぶ。任意に選択された各々の容器を、インターフェロン−βを除く処方物の全成分を含むプラシーボ処方物で満たす。満たした容器を、約360分間より長い期間、周囲温度で保存する。プラシーボ処方物を任意の適切な手段により分析し、凝集性金属の濃度を決定する。適切な分析法としては、誘導結合質量分析法および原子吸光分光が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
(実施例2−Avonex(登録商標)からの凝集性金属放出の決定)
Avonex(登録商標)液体処方物は、注射用蒸留水(WFI)中に、インターフェロン−β−1a、酢酸ナトリウム三水和物、氷酢酸、アルギニン塩酸塩およびポリソルベート−20を含有する。詳細には、事前に満たしたガラスシリンジ内の各々0.5mL(30mcg用量)のAvonex(登録商標)は、WFI中、約4.8のpHで、30mcgのインターフェロン−β−1a、0.79mgの酢酸ナトリウム三水和物、0.25mgの氷酢酸、15.8mgのアルギニン塩酸塩および0.025mgのポリソルベート−20を含有する。プラシーボ処方物を、インターフェロン−β−1aを含まないAvonex(登録商標)処方物の各成分を合わせることにより調製する。インターフェロン−βの処方物の例は、国際公開第98/28007号に記載され、この全体の内容は、参考として本明細書に援用される。製造ロットからのシリンジの無作為サンプル(例えば、60)を選択し、保存溶液に放出された凝集性金属の量を評価する。シリンジをプラシーボ処方物で満たし、360分間〜480分間の間保存し、必要に応じて、室温で約5分間、超音波処理を行う。プラシーボ処方物のサンプルを誘導結合質量分析法によって分析し、凝集性金属の量を決定する。
【0037】
(他の実施形態)
本発明が、その詳細な説明と合わせて記載されたが、上記の説明は例示を意図したものであって本発明の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。他の局面、利点および改変は、上記の特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される発明。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−252026(P2011−252026A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−199996(P2011−199996)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【分割の表示】特願2007−551362(P2007−551362)の分割
【原出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】