説明

インターホンシステム

【課題】伝送路の2線間による回線エコーの影響を低減させて良好な通話品質を確保する。
【解決手段】伝送路Lを経由して接続される子機1及び親機2は、マイク11、21に入力される送話音声の信号レベルとスピーカ12、22から出力される受話音声の信号レベルとを比較して送話状態又は受話状態の切り換えを行うためのボイススイッチ13、23と、伝送路の2線間による回線エコーを低減し、その低減量を補正するための減衰量補正部14、24とを備え、減衰量補正部は、伝送路の線間容量及び配線抵抗に起因してマイクに入力された音声信号の逆特性信号を生成するための逆特性信号発生回路140、240と、スピーカから出力させる音声信号に逆特性信号を加算するための加算回路142、242とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送路を経由して接続される子機及び親機の間で音声信号を送受信して通話を成立させるインターホンシステムに係り、特に、伝送路の2線間による回線エコーの影響を低減させて良好な通話品質を確保したインターホンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、受話器を有さず、スピーカ及びマイクを用いて通話を行う拡声通話の双方向通信をシステムとして、ボイススイッチ方式とエコーキャンセラ方式とを併用し、全2重に近い通信を安定して行うことのできる拡声通話装置が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
この拡声通話装置によれば、マイクから回線への出力信号による回線エコーを、エコーキャンセラを用いて除去し、当該回線エコーに対して設定された所定の回線エコー閾値に基づいてボイススイッチの動作を切り換えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−190533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、背景技術に記載した特許文献1の拡声通話装置によれば、回線エコーの影響を低減させて良好な通話品質を確保するにあたっては、ボイススイッチ方式とエコーキャンセラ方式とを併用し、これらを協調させなければならず、その回路構成が複雑となるばかりでなく、協調動作が煩雑となる難点があった。
【0006】
本発明は、この難点を解消するためになされたもので、伝送路を経由して接続される子機及び親機の間で音声信号を送受信して通話を成立させるにあたり、エコーキャンセラを使用せずとも伝送路の2線間による回線エコーを低減して良好な通話品質を確保することができるインターホンシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するため、本発明の第1の態様であるインターホンシステムは、子機の子機マイク及び子機スピーカと親機の親機マイク及び親機スピーカとの間で伝送路を経由して音声信号を送受信して通話を成立させる当該システムである。子機は、伝送路を経由して親機との間で通話を成立させる際、送話音声の信号レベルと受話音声の信号レベルとを比較して送話状態又は受話状態の切り換えを行うための子機ボイススイッチと、伝送路の2線間による回線エコーを低減し、その低減量を補正するための子機減衰量補正部とを備えている。子機減衰量補正部は、伝送路の線間容量及び配線抵抗に起因して子機マイクに入力された音声信号の逆特性信号を生成するための逆特性信号発生回路と、子機スピーカから出力させる音声信号に逆特性信号を加算するための加算回路とを有している。
【0008】
また、本発明の第2の態様であるインターホンシステムは、子機の子機マイク及び子機スピーカと親機の親機マイク及び親機スピーカとの間で伝送路を経由して音声信号を送受信して通話を成立させる当該システムである。親機は、伝送路を経由して子機との間で通話を成立させる際、送話音声の信号レベルと受話音声の信号レベルとを比較して送話状態又は受話状態の切り換えを行うための親機ボイススイッチと、伝送路の2線間による回線エコーを低減し、その低減量を補正するための親機減衰量補正部とを備えている。親機減衰量補正部は、伝送路の線間容量及び配線抵抗に起因して親機マイクに入力された音声信号の逆特性信号を生成するための逆特性信号発生回路と、親機スピーカから出力させる音声信号に逆特性信号を加算するための加算回路とを有している。
【0009】
また、本発明の第3の態様であるインターホンシステムは、本発明の第1の態様又は第2の態様において、逆特性信号発生回路は、音声信号が有する周波数特性のピークの逆特性を生成するための周波数補正回路、音声信号の位相を遅延させるための位相補正回路及び音声信号に歪みを発生させるための歪み補正回路のうち少なくとも何れか1の当該回路を備えている。減衰量補正部は、周波数補正回路、位相補正回路及び歪み補正回路のうち少なくとも何れか1の当該回路からの逆特性信号を調整して加算回路に送出するためのレベル調整回路を有している。
【0010】
また、本発明の第4の態様であるインターホンシステムは、本発明の第3の態様において、周波数補正回路にて生成する逆特性、位相補正回路にて遅延させる位相角、歪み補正回路にて発生させる歪みの歪み量及びレベル調整回路における調整レベルを、伝送路の線間容量及び配線抵抗に対応して可変するための回線検出部を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のインターホンシステムによれば、伝送路を経由して接続される子機の子機マイク及び子機スピーカと親機の親機マイク及び親機スピーカとの間で音声信号を送受信して通話を成立させるにあたって、伝送路の線間容量及び配線抵抗に起因して子機マイク/親機マイクに入力された音声信号の逆特性信号を生成し、この逆特性信号と子機スピーカ/親機スピーカから出力させる音声信号とを加算することにより、伝送路の2線間による回線エコーの影響を低減でき、良好な通話品質が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施例によるインターホンシステムの具体的な構成を示すブロック図である。
【図2】図2(A)、(B)、(C)はそれぞれ、本発明の実施例によるインターホンシステムにおいて適用される信号処理の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のインターホンシステムを適用した最良の実施の形態例について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施例によるインターホンシステムの具体的な構成を示す回路ブロック図であり、伝送路Lを経由して接続される子機1及び親機2で構成されている。
【0015】
子機1は、子機操作部10、子機マイク11、子機スピーカ12、子機ボイススイッチ13、子機減衰量補正部14、子機回線検出部15、子機送受信部16及び子機制御部17が備えられている。
【0016】
この子機1において、子機操作部10は、当該子機の使用者が親機2の使用者を呼び出すための操作(呼出操作)を行うとともに、当該子機の使用者が親機2の使用者からの呼び出しに応答して通話を成立させるための操作(応答操作)と、成立中の通話を終了するための操作(終話操作)とをそれぞれ行うにあたり、子機制御部17によって操作検出されるものである。
【0017】
子機マイク11及び子機スピーカ12は、子機1の使用者が親機2の使用者との間で通話を成立させるための子機音声(送話音声、受話音声)信号を入出力するものである。この子機スピーカ12は、前述の通話機能のみならず、親機2の使用者からの呼び出しがあることを、子機制御部17の制御によって音響出力することができる。
【0018】
子機ボイススイッチ13は、伝送路Lを経由して親機2との間で通話を成立させる際、送話音声の信号レベルと受話音声の信号レベルとを比較して送話状態又は受話状態の切り換えを行うためのものである。
【0019】
子機減衰量補正部14は、伝送路Lの2線間による回線エコーを低減し、その低減量を補正するためのものである。この子機減衰量補正部14は、伝送路Lの線間容量及び配線抵抗に起因して子機マイク11に入力される子機音声信号の逆特性信号を生成するための逆特性信号発生回路140を構成し、当該子機音声信号が有する周波数特性のピークの逆特性を生成するための周波数補正回路140a、当該子機音声信号の位相を遅延させるための位相補正回路140b及び当該子機音声信号に歪みを発生させるための歪み補正回路140cのうち少なくとも何れか1の当該回路、ここでは、全ての回路140a、140b、140cと、逆特性信号発生回路140を構成する周波数補正回路140a、位相補正回路140b及び歪み補正回路140cのうち少なくとも何れか1の当該回路からの出力信号、ここでは、全ての回路140a、140b、140cからの出力である逆特性信号をそれぞれ調整するためのレベル調整回路141と、子機スピーカ12から出力させる子機音声信号にレベル調整回路141からの出力である逆特性信号を加算するための加算回路142とを有している。
【0020】
子機回線検出部15は、子機減衰量補正部14の逆特性信号発生回路140を構成する周波数補正回路140aにて生成する逆特性、位相補正回路140bにて遅延させる位相角、歪み補正回路140cにて発生させる歪みの歪み量及びレベル調整回路141における調整レベル(調整の割合)を、伝送路Lの線間容量及び配線抵抗に対応して可変するためのものである。
【0021】
子機送受信部16は、子機減衰量補正部14及び伝送路Lの間の信号伝送ラインと、子機制御部17及び伝送路Lの間の信号伝送ラインとをそれぞれ形成するためのものである。また、子機制御部17は、子機1の構成各部を制御するためのものである。
【0022】
次に、親機2は、親機操作部20、親機マイク21、親機スピーカ22、親機ボイススイッチ23、親機減衰量補正部24、親機回線検出部25、親機送受信部26及び親機制御部27が備えられている。
【0023】
この親機2において、親機操作部20は、当該親機の使用者が子機1の使用者を呼び出すための操作(呼出操作)を行うとともに、当該親機の使用者が子機1の使用者からの呼び出しに応答して通話を成立させるための操作(応答操作)と、成立中の通話を終了するための操作(終話操作)とをそれぞれ行うにあたり、親機制御部27によって操作検出されるものである。
【0024】
親機マイク21及び親機スピーカ22は、親機2の使用者が子機1の使用者との間で通話を成立させるための親機音声(送話音声、受話音声)信号を入出力するものである。この親機スピーカ22は、前述の通話機能のみならず、子機1の使用者からの呼び出しがあることを、親機制御部27の制御によって音響出力することができる。
【0025】
親機ボイススイッチ23は、伝送路Lを経由して子機1との間で通話を成立させる際、送話音声の信号レベルと受話音声の信号レベルとを比較して送話状態又は受話状態の切り換えを行うためのものである。
【0026】
親機減衰量補正部24は、伝送路Lの2線間による回線エコーを低減し、その低減量を補正するためのものである。この親機減衰量補正部24は、伝送路Lの線間容量及び配線抵抗に起因して親機マイク21に入力される親機音声信号の逆特性信号を生成するための逆特性信号発生回路240を構成し、当該親機音声信号が有する周波数特性のピークの逆特性を生成するための周波数補正回路240a、当該親機音声信号の位相を遅延させるための位相補正回路240b及び当該親機音声信号に歪みを発生させるための歪み補正回路240cのうち少なくとも何れか1の当該回路、ここでは、全ての回路240a、240b、24cと、逆特性信号発生回路240を構成する周波数補正回路240a、位相補正回路240b及び歪み補正回路240cのうち少なくとも何れか1の当該回路からの出力信号、ここでは、全ての回路240a、240b、240cからの出力である逆特性信号をそれぞれ調整するためのレベル調整回路241と、親機スピーカ22から出力させる親機音声信号にレベル調整回路241からの出力である逆特性信号を加算するための加算回路242とを有している。
【0027】
親機回線検出部25は、親機減衰量補正部24の逆特性信号発生回路240を構成する周波数補正回路240aにて生成する逆特性、位相補正回路240bにて遅延させる位相角、歪み補正回路240cにて発生させる歪みの歪み量及びレベル調整回路241における調整レベル(調整の割合)を、伝送路Lの線間容量及び配線抵抗に対応して可変するためのものである。
【0028】
親機送受信部26は、親機減衰量補正部24及び伝送路Lの間の信号伝送ラインと、親機制御部27及び伝送路Lの間の信号伝送ラインとをそれぞれ形成するためのものである。また、親機制御部27は、親機2の構成各部を制御するためのものである。
【0029】
このように構成された本発明の実施例によるインターホンシステムにおいて、以下、具体的な動作について、図1及び図2(A)、(B)、(C)の説明図をそれぞれ参照して説明する。
【0030】
図1に示す親機2の使用者を呼び出すにあたり、子機1の使用者が子機操作部10を使用して所定の呼出操作を行うと、この操作を検出した子機制御部17は、呼出信号S1を生成し、子機送受信部16、伝送路L、親機2の親機送受信部26を経由して親機制御部27に送出する。
【0031】
親機2の親機制御部27は、子機1からの呼出信号S1を受信すると、子機1の使用者による呼び出しがあったことを検出し、その旨の呼出音や音声メッセージ等を親機スピーカ22から音響出力させて呼出報知を行うことができる。
【0032】
この後、前述の呼出報知を確認した親機2の使用者が親機操作部20を使用して所定の応答操作を行うと、当該操作を検出した親機制御部27は、親機ボイススイッチ23、親機減衰量補正部24及び親機回線検出部25がそれぞれ能動となるように制御するとともに、応答信号S2を生成し、前述の呼出信号S1と逆の信号伝送ラインを経由して子機1の子機制御部17に送出する。
【0033】
子機1の子機制御部17は、親機2からの応答信号S2を受信すると、親機2の使用者による応答があったことを検出し、子機ボイススイッチ13、子機減衰量補正部14及び子機回線検出部15がそれぞれ能動となるように制御する。
【0034】
次に、子機1の使用者が親機2の使用者との間で通話を成立させるにあたり、子機マイク11に入力した送話音声である子機音声信号S10は、子機ボイススイッチ13を経由して子機減衰量補正部14の逆特性信号発生回路140を構成する周波数補正回路140a、位相補正回路140b及び歪み補正回路140cにそれぞれ伝送されるとともに、同様の子機ボイススイッチ13、子機送受信部16を経由して伝送路Lに送出される。
【0035】
なお、子機1の子機送受信部16を経由して伝送路Lに送出された子機音声信号S10は、親機2の親機送受信部26、親機減衰量補正部24の加算回路242を経由して親機ボイススイッチ23に伝送されるものの、このとき、親機2の使用者による親機マイク21への音声入力がなければ、良好な通話品質の受話音声信号S10として親機スピーカ22から出力されることになる。
【0036】
一方、子機1の子機送受信部16を経由して伝送路Lに送出された子機音声信号S10は、伝送路Lの線間容量及び配線抵抗に起因して子機ボイススイッチ13に回線帰還音声信号S10aとしてフィードバックされるため、この回線帰還音声信号S10aの信号レベルが子機音声信号S10の信号レベルと比較して大きいと、回線帰還音声信号S10aが子機スピーカ12から出力されてしまい、子機1において良好な通話品質を確保できない虞がある。
【0037】
そこで、子機1の子機制御部17は、子機減衰量補正部14の逆特性信号発生回路140を制御するにあたり、子機ボイススイッチ13を経由して子機マイク11から伝送されてきた子機音声信号S10について、この子機音声信号S10が有する周波数特性のピークの逆特性を周波数補正回路140aにて生成する第1の信号処理、この子機音声信号S10の位相を位相補正回路140bにて遅延させる第2の信号処理、及び、この子機音声信号S10に対し歪み補正回路140cにて歪みを発生させる第3の信号処理のうち、少なくとも何れか1の信号処理を実行させ、例えば、図2(A)、(B)、(C)にそれぞれ示すように、それらの出力である逆特性信号S140a、S140b、S140cを生成する。
【0038】
また、子機1において、子機減衰量補正部14のレベル調整回路141は、逆特性信号発生回路140を構成する周波数補正回路140a、位相補正回路140b及び歪み補正回路14cのうち少なくとも何れか1の当該回路からの逆特性信号S140a、S140b、S140cについて、レベル調整を行った後、加算回路142に送出する。
【0039】
さらに、子機1において、子機減衰量補正部14の加算回路142は、子機送受信部16を経由してフィードバックされた回線帰還音声信号S10aと、レベル調整回路141からの出力である逆特性信号S140a、S140b、S140cとを加算して子機ボイススイッチ13に送出することにより、子機減衰量補正部14を経由して信号処理された回線帰還音声信号S10aの信号レベルは、子機音声信号S10の信号レベルと比較して十分に小さいものとなるため、この回線帰還音声信号S10aが子機スピーカ12から出力されることはなく、伝送路Lの2線間による回線エコーを低減することができ、子機1において良好な通話品質が確保される。
【0040】
なお、子機1において、子機減衰量補正部14の逆特性信号発生回路140を構成する周波数補正回路140aにて生成する逆特性、位相補正回路140bにて遅延させる位相角、歪み補正回路140cにて発生させる歪みの歪み量及びレベル調整回路141における調整レベルは、伝送路Lの線間容量及び配線抵抗に対応して容易に可変することができるため、子機1の設置場所として、通話を成立させる多種・多様な環境下に対応可能となる。
【0041】
次に、親機2の使用者が子機1の使用者との間で通話を成立させるにあたり、親機マイク21に入力した送話音声である親機音声信号S20は、親機ボイススイッチ23を経由して親機減衰量補正部24の逆特性信号発生回路240を構成する周波数補正回路240a、位相補正回路240b及び歪み補正回路240cにそれぞれ伝送されるとともに、同様の親機ボイススイッチ23、親機送受信部26を経由して伝送路Lに送出される。
【0042】
なお、親機2の親機送受信部26を経由して伝送路Lに送出された親機音声信号S20は、子機1の子機送受信部16、子機減衰量補正部14の加算回路142を経由して子機ボイススイッチ13に伝送されるものの、このとき、子機1の使用者による子機マイク11への音声入力がなければ、良好な通話品質の受話音声信号S20として子機スピーカ12から出力されることになる。
【0043】
一方、親機2の親機送受信部26を経由して伝送路Lに送出された親機音声信号S20は、伝送路Lの線間容量及び配線抵抗に起因して親機ボイススイッチ23に回線帰還音声信号S20aとしてフィードバックされるため、この回線帰還音声信号S20aの信号レベルが親機音声信号S20の信号レベルと比較して大きいと、回線帰還音声信号S20aが親機スピーカ22から出力されてしまい、親機2において良好な通話品質を確保できない虞がある。
【0044】
そこで、親機2の親機制御部27は、親機減衰量補正部24の逆特性信号発生回路240を制御するにあたり、親機ボイススイッチ23を経由して親機マイク21から伝送されてきた親機音声信号S20について、この親機音声信号S20が有する周波数特性のピークの逆特性を周波数補正回路240aにて生成する第1の信号処理、この親機音声信号S20の位相を位相補正回路240bにて遅延させる第2の信号処理、及び、この親機音声信号S20に対し歪み補正回路240cにて歪みを発生させる第3の信号処理のうち、少なくとも何れか1の信号処理を実行させ、例えば、図2(A)、(B)、(C)にそれぞれ示すように、それらの出力である逆特性信号S240a、S240b、S240cを生成する。
【0045】
また、親機2において、親機減衰量補正部24のレベル調整回路241は、逆特性信号発生回路240を構成する周波数補正回路240a、位相補正回路240b及び歪み補正回路240cのうち少なくとも何れか1の当該回路からの逆特性信号S240a、S240b、S240cについて、レベル調整を行った後、加算回路242に送出する。
【0046】
さらに、親機2において、親機減衰量補正部24の加算回路242は、親機送受信部26を経由してフィードバックされた回線帰還音声信号S20aと、レベル調整回路241からの出力である逆特性信号S240a、S240b、S240cとを加算して親機ボイススイッチ23に送出することにより、親機減衰量補正部24を経由して信号処理された回線帰還音声信号S20aの信号レベルは、親機音声信号S20の信号レベルと比較して十分に小さいものとなるため、この回線帰還音声信号S20aが親機スピーカ22から出力されることはなく、伝送路Lの2線間による回線エコーを低減することができ、親機2において良好な通話品質が確保される。
【0047】
なお、親機2において、親機減衰量補正部24の逆特性信号発生回路240を構成する周波数補正回路240aにて生成する逆特性、位相補正回路240bにて遅延させる位相角、歪み補正回路240cにて発生させる歪みの歪み量及びレベル調整回路241における調整の割合は、伝送路Lの線間容量及び配線抵抗に対応して容易に可変することができるため、親機2の設置場所として、通話を成立させる多種・多様な環境下に対応可能となる。
【0048】
なお、本発明のインターホンシステムにおいては、特定の実施の形態をもって説明してきたが、この形態に限定されるものでなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られた如何なる構成のインターホンシステムであっても採用できるということはいうまでもないことである。
【0049】
具体的に、本発明の実施例によれば、伝送路Lの2線間による回線エコーの影響を低減させて良好な通話品質を確保するために設けられる減衰量補正部及び回線検出部を、子機1及び親機2それぞれに備える態様について説明したが、この態様に限定されるものではない。例えば、設置場所等の多種・多様な環境下に対応させて、子機1又は親機2の何れかに備えることもでき、同様な効果が得られる。
【0050】
また、本発明の実施例によれば、伝送路Lの2線間による回線エコーの影響を低減させて良好な通話品質を確保するために設けられる減衰量補正部14、24において、伝送路Lの線間容量及び配線抵抗に起因してマイク11、21に入力される音声信号の逆特性信号を生成するための逆特性信号発生回路140、240の構成として、当該音声信号が有する周波数特性のピークの逆特性を生成するための周波数補正回路140a、240a、当該音声信号の位相を遅延するための位相補正回路140b、240b及び当該音声信号に歪みを発生させるための歪み補正回路140c、240cの3種の異なる当該補正回路を備える態様について説明したが、この態様に限定されるものではない。例えば、周波数補正回路140a、240a、位相補正回路140b、240b及び歪み補正回路140c、240cのうち少なくとも何れか1の当該補正回路のみ備える場合であっても、同様な効果が得られ、この態様によれば、子機1及び親機2の構成を簡素化することができる。
【0051】
また、本発明の実施例によれば、伝送路Lを経由して接続される子機1及び親機2のうち、子機1からの呼び出しを親機2にて報知して、この呼び出しに応答して通話を成立させる動作について説明したが、この態様に限定されるものではない。すなわち、親機2からの呼び出しを子機1にて報知して、この呼び出しに応答して通話を成立させる場合であっても、同様な効果が得られる。
【0052】
さらに、本発明の実施例によれば、伝送路Lを経由して接続される子機1及び親機2のそれぞれに、呼出操作機能及び応答・終話操作機能としての操作部10、20を備える態様について説明したが、この態様に限定されるものではない。すなわち、子機1及び親機2のうち何れか1の機器、例えば、子機1の子機操作部10にのみ呼出操作機能を備える一方、親機2の子機操作部20には、応答・終話操作機能のみを備えることで、住戸玄関等の住戸外に設置される子機1からの呼び出しを住戸内に設置される親機2にて報知し、この呼び出しに応答して通話を成立させるようなインターホンシステムに適用することもでき、同様な効果が得られる。
【符号の説明】
【0053】
1……子機
11……子機マイク
12……子機スピーカ
13……子機ボイススイッチ
14……子機減衰量補正部(減衰量補正部)
140……逆特性信号生成回路
140a……周波数補正回路
140b……位相補正回路
140c……歪み補正回路
141……レベル調整回路
142……加算回路
15……子機回線検出部(回線検出部)
2……親機
21……親機マイク
22……親機スピーカ
23……親機ボイススイッチ
24……親機減衰量補正部(減衰量補正部)
240……逆特性信号生成回路
240a……周波数補正回路
240b……位相補正回路
240c……歪み補正回路
241……レベル調整回路
242……加算回路
25……親機回線検出部(回線検出部)
L……伝送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
子機(1)の子機マイク(11)及び子機スピーカ(12)と親機(2)の親機マイク(21)及び親機スピーカ(22)との間で伝送路(L)を経由して音声信号を送受信して通話を成立させるインターホンシステムであって、
前記子機は、前記伝送路を経由して前記親機との間で通話を成立させる際、送話音声の信号レベルと受話音声の信号レベルとを比較して送話状態又は受話状態の切り換えを行うための子機ボイススイッチ(13)と、前記伝送路の2線間による回線エコーを低減し、その低減量を補正するための子機減衰量補正部(14)とを備え、
前記子機減衰量補正部は、前記伝送路の線間容量及び配線抵抗に起因して前記子機マイクに入力された音声信号の逆特性信号を生成するための逆特性信号発生回路(140)と、前記子機スピーカから出力させる音声信号に前記逆特性信号を加算するための加算回路(142)とを有することを特徴とするインターホンシステム。
【請求項2】
子機(1)の子機マイク(11)及び子機スピーカ(12)と親機(2)の親機マイク(21)及び親機スピーカ(22)との間で伝送路(L)を経由して音声信号を送受信して通話を成立させるインターホンシステムであって、
前記親機は、前記伝送路を経由して前記子機との間で通話を成立させる際、送話音声の信号レベルと受話音声の信号レベルとを比較して送話状態又は受話状態の切り換えを行うための親機ボイススイッチ(23)と、前記伝送路の2線間による回線エコーを低減し、その低減量を補正するための親機減衰量補正部(24)とを備え、
前記親機減衰量補正部は、前記伝送路の線間容量及び配線抵抗に起因して前記親機マイクに入力された音声信号の逆特性信号を生成するための逆特性信号発生回路(240)と、前記親機スピーカから出力させる音声信号に前記逆特性信号を加算するための加算回路(242)とを有することを特徴とするインターホンシステム。
【請求項3】
前記逆特性信号発生回路は、前記音声信号が有する周波数特性のピークの逆特性を生成するための周波数補正回路(140a、240a)、前記音声信号の位相を遅延させるための位相補正回路(140b、240b)及び前記音声信号に歪みを発生させるための歪み補正回路(140c、240c)のうち少なくとも何れか1の当該回路を備え、
前記減衰量補正部は、前記周波数補正回路、前記位相補正回路及び前記歪み補正回路のうち少なくとも何れか1の当該回路からの逆特性信号を調整して前記加算回路に送出するためのレベル調整回路(141、241)を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のインターホンシステム。
【請求項4】
前記周波数補正回路にて生成する逆特性、前記位相補正回路にて遅延させる位相角、前記歪み補正回路にて発生させる歪みの歪み量及び前記レベル調整回路における調整レベルを、前記伝送路の線間容量及び配線抵抗に対応して可変するための回線検出部(15、25)を備えることを特徴とする請求項3記載のインターホンシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−199751(P2011−199751A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66501(P2010−66501)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】