説明

インターロイキン−10生成を増進するためのテトラサイクリン化合物の使用方法

【課題】外在性IL-10を投与することの制限を解消し、哺乳類細胞中の内在性IL-10生成の増進方法を提供すること。
【解決手段】本発明は有効量のテトラサイクリン誘導体を投与することを含む、哺乳類の細胞及び組織中の内在性インターロイキン-10生成の増進方法である。また、その方法は有効量のテトラサイクリン誘導体を哺乳類に投与することによりインターロイキン-10生成を増進することを含む。好ましいテトラサイクリン化合物はそれらの抗菌活性を低下又は排除するように修飾されたテトラサイクリン化合物である。その方法は過度のIL-1及びTNFα生成を特徴とする哺乳類の医療症状を治療するのに使用し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は国立歯科研究協会により授与された、R37 DE-03987のもとに政府の支持によりなされた。政府は本発明に或る種の権利を有する。
本発明は哺乳類の細胞又は組織中の内在性インターロイキン-10(以下、IL-10と称する)生成の増進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
インターロイキン、インターフェロン、コロニー刺激因子及びTNFαはサイトカインと称される多様な多機能性タンパク質のグループの例である。サイトカインは種々の細胞中に非常に低い濃度で通常存在する分泌可溶性タンパク質のクラスである。リンパ系細胞、炎症造血細胞及び結合組織細胞の如きその他の細胞(例えば、繊維芽細胞、造骨細胞)は細胞増殖、分化及びエフェクター機能を調節することにより免疫応答、炎症応答、修復応答及び急性期応答を調節する種々のサイトカインを分泌する。サイトカインの作用は種々の細胞型の高アフィニティー受容体への結合により媒介される(Collierら, Trends in Pharmacol. Sci. 10: 427-431 (1989))。
例えば、サイトカインインターロイキン-1(IL-1)はマクロファージ、滑膜細胞、ケラチノサイト、軟骨細胞及び多形核白血球の如き細胞型中で生成される。それは多種の症状、特に炎症により伴われる症状に役割を果たすことが知られている。
【0003】
幾つかの有害な作用が増大されたIL-1と関連している。例えば、関節炎では、IL-1は滑膜肥大と関連する滑膜細胞を刺激する。更に、IL-1は軟骨基質分解を増進し、軟骨細胞による軟骨修復を抑制する。また、このサイトカインは骨吸収を誘発し、こうして慢性関節リウマチに見られる骨密度の損失と関係しているかもしれない(Weinblattら, Journal of Rheumatology 19:(Sup. 32):85-91(1992))。
過度のIL-1生成は発熱、筋肉消耗及び嗜眠状態を生じ得る。IL-1の生物活性の総説について、Larrickら, Immunology Today 10:61-66(1989)を参照のこと。こうして、IL-1の特定の生物活性を抑制することが治療上望ましい。
IL-1活性を抑制する一つの方法は全身遺伝子療法の使用による。米国特許第5,766,585号明細書はIL-1アンタゴニストをコードする組換えベクターを投与することによる哺乳類の慢性関節リウマチ炎症及びその他の自己免疫疾患の治療方法を開示している。
【0004】
TNFαはIL-1の生成を誘発するサイトカインである。TNFαは微生物感染症及び腫瘍性疾患に対するホスト免疫応答中に活性化マクロファージだけでなく多種のその他の細胞により生成される17kDaペプチドである。また、このサイトカインは炎症応答の重要な媒介物質であることが認められている(Beutlerら, Ann. Rev. Immunol. 7: 625 (1989))。それ故、TNFαだけでなくIL-1の特定の生物活性を抑制することが治療上望ましい。
別の重要なサイトカインはヘルパーT細胞、B細胞、単球、マクロファージ及びその他の細胞型により生成される35-40 kDaペプチドであるIL-10である。in vitroで、IL-10はIL-1及びTNFαを含むサイトカイン生成を抑制するその能力により証明されるように免疫抑制性を示した(総説について、Fiorentinoら, Journal of Immunology 147: 3815 (1991)を参照のこと)。
また、IL-10はその他の炎症性サイトカインの活性化を抑制し、それ故、強力な抗炎症活性を有する。また、IL-10はマスト細胞及び胸腺細胞の増殖を刺激することが知られている(Mooreら“Interleukin-10”, Annual Review in Immunology 11: 165-190 (1993))。
【0005】
過度のIL-1及びTNFα生成を特徴とする或る種の症状の治療においてIL-10を投与することが最近では重要であった。このような疾患又は症状として、人工関節移植片の弛緩、炎症、糖尿病、癌、移植片対宿主疾患、ウイルス感染症、真菌感染症及び細菌感染症、リポ多糖エンドトキシンショック、低下した骨髄機能の疾患、血小板減少症、骨多孔症、脊椎関節症、パジェット病、炎症性膀胱疾患、関節炎、骨関節炎、自己免疫疾患、例えば、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、並びに結合組織疾患が挙げられる。
例えば、精製IL-10は或る型のウイルス感染症を抑制することがin vitroで示された。米国特許第5,665,345号明細書はIL-10を投与することによるヒト細胞中のヒト免疫不全ウイルス、レトロウイルス、及びカポージ肉腫の複製の抑制方法を開示している。
【0006】
また、IL-10は或る種の癌の治療における使用について示唆されていた。米国特許第5,570,190号明細書は外在性IL-10を投与して急性骨髄性白血病及び急性リンパ性白血病を患っている哺乳類を治療することを開示している。IL-10は精製形態又は組換え形態で投与されると言われており、急性白血病芽細胞の増殖を抑制すると考えられている。しかしながら、IL-10の精製非経口形態又は組換え非経口形態を調製することに関連する多大の費用がいる。
同様に、IL-10は重度の複合免疫不全マウスの骨髄転移を抑制することが示されていた(Stearnsら, Invasion Metastasis 17(2):62-74 (1997))。
過度のIL-1及びTNFα生成を特徴とする症状を治療するための上記の通常のアプローチは外在性の精製又は組換えIL-10を静脈内投与することに制限されていた。IL-10はタンパク質であるので、哺乳類に静脈内注入することが困難である。何とならば、タンパク質がしばしば溶液から滲出し、静脈内投与セットに使用されるプラスチック又はガラスに結合するからである。また、タンパク質はしばしば不適合性であり、またデキストロース又は生理塩類溶液の如き生理溶液と混合された時に沈殿する。加えて、経口経路及び局所経路がIL-10投与に利用できない。タンパク質が胃腸道中で分解されるので、経口経路が利用できない。
【0007】
上記アプローチのいずれもがヒト用に認可されており、経口経路、注射経路及び局所経路に利用できる化合物を使用して疾患又は症状の予防及び治療のために哺乳類中の内在性IL-10生成を増進することを示唆していない。
化合物、テトラサイクリンは下記の一般構造:
【0008】
【化1】

【0009】
を示す。
環核のナンバリングシステムは以下のとおりである。
【0010】
【化2】

【0011】
テトラサイクリン並びに5-OH(テラマイシン)誘導体及び7-Cl(オーレオマイシン)誘導体は自然に存在し、公知の抗生物質である。天然テトラサイクリンはそれらの抗生物質の性質を失わないで修飾し得るが、構造の或る種の元素が保持される必要がある。基本テトラサイクリン構造になされてもよく、またなされなくてもよい修飾がMitscherによりThe Chemistry of Tetracyclines, 6章, Marcel Dekker, Publishers, New York (1978)に概説されていた。Mitscherによれば、テトラサイクリン環系の5-9位にある置換基が抗生物質の性質を全く失わないで修飾し得る。しかしながら、基本環系の変化又は1-4位及び10-12位にある置換基の置換は実質的に小さい抗菌活性を有し、又は有効な抗菌活性を有しない合成テトラサイクリンを一般にもたらす。化学修飾テトラサイクリン(以下、CMTと称する)の例は4-デジメチルアミノテトラサイクリンであり、これは普通非抗菌性テトラサイクリンであると考えられる。
【0012】
テトラサイクリン抗生物質の使用は、有効であるが、望ましくない副作用をもたらし得る。例えば、抗生物質テトラサイクリンの長期投与は健康なフローラ、例えば、腸フローラを減少又は排除することがあり、また抗生物質耐性生物の生産又は日和見酵母及び真菌の過剰増殖をもたらし得る。長期テトラサイクリン療法のこれらの副作用は糖尿病の患者に特に不利であり得る。何とならば、これらの患者は感染症及び損傷された創傷治癒に特にかかりやすいからであり、これらは或る将来の時点で感染症を治療するための抗生物質療法を必要とし得る。
テトラサイクリンは、それらの抗生物質の性質に加えて、幾つかのその他の用途を有すると記載されていた。例えば、テトラサイクリンはまたコラーゲン分解酵素、例えば、哺乳類コラゲナーゼ、ゲラチナーゼ、マクロファージエラスターゼ及び細菌コラゲナーゼの活性を抑制することが知られている(Golubら, J. Periodont. Res. 20:12-23 (1985); Golubら, Crit. Revs. Oral Biol. Med. 2: 297-322 (1991);米国特許第4,666,897号;同第4,704,383号;同第4,935,411号;同第4,935,412号)。加えて、テトラサイクリンは哺乳類骨格筋中の消耗及びタンパク質分解を抑制することが知られていた(米国特許第5,045,538号)。
【0013】
更に、テトラサイクリンは骨タンパク質合成を増進することが米国再発行特許第34,656号に、また臓器培養中に骨吸収を低下することが米国特許第4,704,383号に示されていた。
同様に、Golubらの米国特許第5,532,227号はテトラサイクリンがタンパク質の過度のグリコシル化を改善し得ることを開示している。特に、テトラサイクリンは糖尿病患者のコラーゲンの過度のグリコシル化から生じる過度のコラーゲン架橋を抑制する。
これらの性質はテトラサイクリンが幾つかの疾患を治療するのに有益にする。
例えば、非抗菌性テトラサイクリンを含む、テトラサイクリンは関節炎を治療するのに有効であるという幾つかの示唆があった。例えば、Greenwaldら,“テトラサイクリンはアジュバント関節炎でメタロプロテイナーゼ活性を抑制し、またフルビプロフェンと組み合わせて、骨損傷を改善する”, Journal of Rheumatology 19:927-938(1992); Greenwaldら,“MMPインヒビターによる分解関節炎障害の治療:マトリックスメタロプロテイナーゼの抑制におけるテトラサイクリンの潜在的な役割:治療潜在性”, Annals of the New York Academy of Sciences 732: 181-198 (1994); Kloppenburgら,“活性慢性関節リウマチにおけるミノサイクリン”, Arthritis Rheum 37:629-636 (1994); Ryanら,“骨関節炎における軟骨分解を改良するテトラサイクリンの潜在性”, Current Opinion in Rheumatology 8: 238-247 (1996); O'Dellら,“ミノサイクリン又は偽薬による初期の慢性関節リウマチの治療”, Arthritis Rheum 40:842-848 (1997)を参照のこと。
【0014】
テトラサイクリンはまた皮膚疾患の治療における使用について示唆されていた。例えば、Whiteら, lancet, Apr. 29, 966頁(1989)はテトラサイクリンミノサイクリンがジストロフィー性表皮水疱症(これは過剰のコラゲナーゼに関連すると考えられる寿命に脅威の皮膚症状である)を治療するのに有効であると報告している。
皮膚障害におけるテトラサイクリンの有効性がまたElewskiら, Journal of the American Academy of Dermatology 8:807-812 (1983)により研究されていた。
Elewskiらはテトラサイクリン抗生物質が皮膚疾患で抗炎症活性を有し得ることを開示していた。
同様に、Plewigら, Journal of Investigative Dermatology 65:532 (1975)は抗菌剤が炎症性皮膚病を治療するのに有効であるという仮説を試験するために設計された実験を開示している。Plewigらの実験はテトラサイクリンがヨウ化カリウムパッチにより誘発されるプステルを治療する際に抗炎症性を有することを証明している。
【0015】
非ステロイド抗炎症薬と組み合わせてのテトラサイクリンの使用がアクネ・ブルガリスにより生じる炎症性皮膚障害の治療において研究されていた。Wongら, Journal of American Academy of Dermatology 1: 1076-1081 (1084)はテトラサイクリンとイブプロフェンの組み合わせを研究し、テトラサイクリンがアクネ・ブルガリスに対し有効な薬剤であり、一方、イブプロフェンがシクロキシゲナーゼの抑制により得られる炎症を軽減するのに有益であることを見出した。Funtら, Journal of the American Academy of Dermatology 13: 524-525 (1985)は抗菌用量のミノマイシンをイブプロフェンと組み合わせることによる同様の結果を開示していた。
【0016】
抗菌性テトラサイクリン誘導体であるドキシサイクリンは硝酸塩生成を抑制するのに使用されていた。D'Agostinoら, Journal of Infectious Diseases: 177:489-92 (1998)は、細菌リポ多糖(以下、LPSと称する)で注射されたマウスに投与された、ドキシサイクリンがIL-10非依存性メカニズムにより硝酸塩生成を抑制することにより保護効果を与えたという実験を開示している。また、in vitroで行なわれた実験はドキシサイクリンが内在性IL-10放出を増進しないでLPS活性化マクロファージによる酸化窒素合成を抑制することを示した。これらのデータは本発明の結果と逆である。
以上に基づいて、テトラサイクリンは異なる治療に有効であることが判明された。しかしながら、テトラサイクリンがIL-10の内在的生成を増進するのに使用し得ることは全く示唆されていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
それ故、本発明の利点の一つは外在性IL-10を投与することの上記制限を解消し、哺乳類細胞中の内在性IL-10生成の増進方法を提供することである。その他の利点は当業者が容易に思いつくであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の開示)
これらの目的及びその他の目的が有効量のテトラサイクリン誘導体を哺乳類の細胞に投与することによる哺乳類の細胞又は組織中の内在性インターロイキン-10生成の増進方法を提供する本発明により達成し得ることが今発見された。
本発明の好ましい実施態様が説明及び記載の目的のために選ばれたが、本発明の範囲を何ら限定するものではないことが意図されている。本発明の或る局面の好ましい実施態様が添付図面に示される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】CMT-3(6-デメチル-6-デオキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン)及びCMT-5(テトラサイクリンピラゾール)に対する投与量依存応答のLPS刺激ヒト末梢血マクロファージによるIL-10生成を示す時系列グラフである。
【図2】IL-1、IL-1+CMT-5(テトラサイクリンピラゾール)、IL-1+CMT-3(6-デメチル-6-デオキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン)及びIL-1+CMT-8(6-α-デオキシ-5-ヒドロキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン)で刺激されたヒト末梢血単球細胞によるIL-10生成の棒グラフである。
【図3】IL-1、IL-1+CMT-3(6-デメチル-6-デオキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン)及びIL-1+CMT-5(テトラサイクリンピラゾール)で刺激された場合にノーザンブロット分析により測定された培養液中の第三継代ヒト滑膜繊維芽細胞様細胞中のIL-10mRNA発現の棒グラフである。
【図4】IL-1、IL-1+CMT-5(テトラサイクリンピラゾール)及びIL-1+CMT-3(6-デメチル-6-デオキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン)で刺激されたヒト皮膚繊維芽細胞様細胞、ヒト滑膜繊維芽細胞様細胞、及びヒト末梢血単球細胞中のIL-10生成を示す三次元の投与量依存応答グラフである。
【図5】U937細胞培養液及びHL-60細胞培養液中のサイトカインTNFα及びIL-1の抑制により測定されたIL-10生物活性のグラフである。詳しくは、HL-60細胞をLPS単独で刺激し、次いでHL-60細胞をヒト末梢血単球細胞からの上澄み(これはIL-1+CMT-8を添加していた)で刺激した。U937細胞をLPS単独で刺激し、次いでヒト末梢血単球細胞からの上澄み(これはLPS+CMT-8を添加していた)で刺激した。ELISAを使用して、生成されたTNFα及びIL-1の量を測定した。抗IL-10抗体をU937細胞及びHL60細胞に添加した場合に、内在性TNFα及びIL-1生成が増大された。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明の方法は内在性IL-10生成を増進するのに有益であり,これはIL-1及びTNFα生成を抑制し、又はダウンレギュレートすることが知られている。本明細書に使用される、内在性IL-10生成の増進は哺乳類内のin vivo又は哺乳類の細胞もしくは組織内のin vitroの通常のレベルより実質的に上にIL-10サイトカインレベルを増大し、又はアップレギュレートすることと定義される。内在性IL-10生成は通常のレベルより少なくとも約10%から約1600%まで増進されることが好ましい。内在性IL-10をアップレギュレートすることはサイトカインIL-1及びTNFαのダウンレギュレーションをもたらす。
本発明の方法は、例えば、生きている哺乳類だけでなく、培養された組織、臓器又は細胞系中でin vivo、in vitro、及びex vivoで使用し得る。哺乳類として、例えば、ヒト、並びにペット動物、例えば、イヌ及びネコ、実験動物、例えば、ラット及びマウス、並びに牧場動物、例えば、ウマ及びウシが挙げられる。本明細書に使用される組織は一緒になって或る種の特別な機能を行なう同様に特殊化された細胞の集合である。培養された細胞系はIL-10を生成するあらゆる細胞、例えば、ヒト末梢血単球細胞又は滑膜繊維芽細胞様細胞を含む。
【0021】
本発明のin vivo実施は医療及び獣医の疾患、症状、及び症候群のレリーフ又は軽減における適用を可能にする。特に、その方法は増大された、又は過度のIL-1及びTNFα生成と関連し、又はそれらにより媒介される疾患又はその他の症状を患っている哺乳類を保護するための手段を与え、この場合、内在性IL-10生成を増進することが有益であろう。このような症状又は疾患として、炎症、糖尿病、癌、移植片対宿主疾患、ウイルス感染症、真菌感染症及び細菌感染症、リポ多糖エンドトキシンショック、低下された骨髄機能の疾患、血小板減少症、人工関節弛緩、骨多孔症、脊椎関節症、パジェット病、炎症性膀胱疾患、関節炎、骨関節炎、自己免疫疾患、例えば、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス及び結合組織疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書に使用されるテトラサイクリン誘導体は下記の一般構造:
【0022】
【化3】

【0023】
を示す。
多環核のナンバリングシステムは以下のとおりである。
【0024】
【化4】

【0025】
テトラサイクリン並びに5-OH(オキシテトラサイクリン、例えば、テラマイシン)誘導体及び7-Cl(クロロテトラサイクリン、例えば、オーレオマイシン)誘導体は自然に存在し、公知の抗生物質である。半合成テトラサイクリンとして、例えば、ドキシサイクリン、ミノサイクリン及びメタサイクリンが挙げられる。
テトラサイクリン抗生物質の使用は、一般に感染症を治療するのに有効であるが、望ましくない副作用をもたらし得る。例えば、抗生物質テトラサイクリンの長期投与は健康なフローラ、例えば、腸フローラを減少又は排除することがあり、また抗生物質耐性生物の生産又は酵母及び真菌の過剰増殖をもたらし得る。これらの重大な不利は典型的にはこれらの化合物の慢性投与を必要とする治療レジメを排除する。
抗生物質テトラサイクリンに構造上関連しているが、それらの抗生物質活性が化学修飾により実質的に排除され、又は完全に排除された化合物のクラスが特定された。抗生物質活性の実質的な排除は抗生物質活性がテトラサイクリンのそれよりも実質的に小さい場合に生じる。抗生物質活性がテトラサイクリンのそれよりも少なくとも約10倍小さいことが好ましく、テトラサイクリンのそれよりも少なくとも約5倍小さいことが更に好ましい。
【0026】
基本テトラサイクリン構造になされてもよく、またなされなくてもよい修飾がMitscher, L.A.によりThe Chemistry of Tetracycline Antibiotics, Marcel Dekker, New York (1978), 6章に概説されていた。Mitscherによれば、テトラサイクリン環系の5-9位における修飾が抗生物質の性質を全く失わないでなし得る。
しかしながら、環系の基本構造の変化、又は1-4位及び10-12位にある置換基の置換は実質的に小さい抗菌活性を有し、又は抗菌活性を実質的に全く有しない合成テトラサイクリンを一般にもたらす。
化学修飾テトラサイクリン(CMT)誘導体として、例えば、4-デジメチルアミノテトラサイクリン(CMT-1)、テトラサイクリノニトリル(CMT-2)、6-デジメチル-6-デオキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン(CMT-3)、7-クロロ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン(CMT-4)、テトラサイクリノピラゾール(CMT-5)、4-ヒドロキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン(CMT-6)、12α-デオキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン(CMT-7)、5-ヒドロキシ-6-α-デオキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン(CMT-8)、4-デジメチルアミノ-12-α-デオキシアンヒドロテトラサイクリン(CMT-9)、及び7-ジメチルアミノ-6-デメチル-6-デオキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン(CMT-10)が挙げられる。全てがIL-10の内在性生成を増進する非抗菌性テトラサイクリンとして有益である。
【0027】
本発明の使用に適した特に好ましいテトラサイクリン誘導体として、6-デメチル-6-デオキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン(CMT-3)、6-α-デオキシ-5-ヒドロキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン(CMT-8)、及びテトラサイクリノピラゾール(CMT-5)が挙げられる。
また、抗菌活性を有するテトラサイクリン誘導体が本発明において意図されている。しかしながら、このような化合物は抗菌活性を実質的に有しないが、哺乳類の細胞又は組織中でIL-10の内在性生成を増進するのに有効である量で使用されることが好ましい。この型の好ましい化合物として、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、デメクロサイクリン、及びミノサイクリンが挙げられる。
【0028】
化学修飾され、かつ抗菌性のテトラサイクリン誘導体は当業界で知られている方法によりつくられる。例えば、Mitscher, L.A., The Chemistry of Tetracycline Antibiotics, Marcel Dekker, New York (1978), 6章、並びに米国特許第4,704,383号及び同第5,532,227号を参照のこと。
本発明の方法において、有効量のテトラサイクリン誘導体が投与される。本明細書に使用される有効量は内在性IL-10生成を増進するという特定の結果を得るのに有効な量である。テトラサイクリン誘導体は抗菌活性を殆ど有しないか、又は全く有しない量で与えられることが好ましい。テトラサイクリン誘導体は、それが微生物の増殖を有意に阻止しない場合に有効に抗菌性ではない。それ故、その方法はその抗菌性を低下又は排除するように化学修飾されたテトラサイクリン誘導体を有益に使用し得る。このような化学修飾テトラサイクリンの使用が本発明において好ましい。何とならば、それらが抗菌性テトラサイクリンよりも高レベルで使用し得るとともに、或る種の不利、例えば、有益な微生物の無差別の死滅、及び耐性微生物の出現(これはしばしば抗微生物量又は抗菌量のこのような化合物の使用を伴う)を回避することができるからである。
【0029】
本発明の方法に有益なテトラサイクリン誘導体は投薬量依存様式でそれらの有益な効果を示すことが明らかである。こうして、広い制限内で、多量のテトラサイクリン誘導体の投与は少量の投与よりも大きな程度に内在性IL-10生成を増進することが観察された。更に、効力が毒性が見られるレベルより低い投薬量で観察された。
被験者についての最大投薬量は望ましくない副作用又は耐えられない副作用を生じない最高投薬量である。例えば、テトラサイクリン化合物は約0.1mg/kg/日から約30mg/kg/日まで、好ましくは約1mg/kg/日から約18mg/kg/日までの量で投与し得る。本発明の目的のために、副作用として、臨床上重大な抗微生物活性又は抗菌活性だけでなく、毒性作用が挙げられる。例えば、約50mg/kg/日を超える投薬量はおそらくヒトを含む殆どの哺乳類で副作用を生じるであろう。いずれにしても、当業者は当分野の技能及び知識により導かれ、本発明は記載された効果を得るのに有効である投薬量を無制限に含む。
【0030】
その方法は哺乳類の細胞もしくは組織中又は哺乳類中でIL-10生成を増進するのに有効である量のテトラサイクリン誘導体を投与し、又は与えることを伴う。
テトラサイクリン誘導体の投与は種々の方法で行ない得る。培養された細胞系又は組織系中で、テトラサイクリン誘導体は細胞又は組織を有効量のテトラサイクリン誘導体と直接接触させることにより投与し得る。
生きている哺乳類では、本発明のテトラサイクリン誘導体は非経口経路及び腸経路(これはまた徐放送達系を含む)により全身投与し得る。例えば、本発明のテトラサイクリン誘導体は送出の好ましい経路である静脈内で容易に投与し得る(例えば、静脈内注射)。静脈内投与は当業者により理解されるようにテトラサイクリン誘導体を好適な担体(ビヒクル)又は賦形剤中で混合することにより行ない得る。
経口使用又は腸使用がまた意図され、錠剤、カプセル、ピル、トローチ、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェハ、チューインガム等の如き製剤がテトラサイクリン誘導体を与えるのに使用し得る。
【0031】
また、テトラサイクリン誘導体の送出として、局所適用が挙げられる。それ故、担体が局所用に適していることが好ましい。このような局所用に適していると思われる組成物として、ゲル、軟膏、ローション、クリーム、外用薬等が挙げられる。また、テトラサイクリン誘導体は担体ベース又はマトリックス等とともに混入されて皮膚に直接適用し得る前包装された手術用包帯もしくはやけど包帯又はバンデージを与えてもよい。それ故、ビヒクル中約25%(w/w)までの量のテトラサイクリン誘導体の局所適用が指示に応じて適している。更に好ましくは、約0.1%から約10%までのテトラサイクリン誘導体の適用が本発明に従って内在性IL-10生成を有効に増進すると考えられる。これらの量は治療される被験者に重大な毒性を誘発しないと考えられる。
【0032】
例えば、或る場合には、制限された生体分布のみを有するテトラサイクリン化合物が局所活性に好ましいかもしれない。このような実質的に局所の分布を示すCMT-2、CMT-6、及びその他のCMTが、広い全身抑制を示さないで、損傷の部位でIL-10活性を増進する際にそれらの局所効力について好ましい。これらの非吸収性CMTの局所適用は口の病変に望ましいであろう。何とならば、CMTはたとえ飲み込まれたとしてもかなりの程度まで吸収されないからである。
また、テトラサイクリン誘導体の組み合わされ、又は協調された局所かつ全身の投与が本発明に意図されている。例えば、非吸収性テトラサイクリン化合物、例えば、CMT-2又はCMT-6が局所投与でき、一方、被験者中で実質的な吸収及び有効な全身分布の可能なテトラサイクリン化合物、例えば、CMT-1、CMT-3、CMT-7、又はCMT-8が全身投与し得る。
【0033】
本発明はテトラサイクリン誘導体がサイトカインIL-10(これはIL-1及びTNFαの生成及び生物活性をダウンレギュレートする)の内在性生成を増進するという本件出願人による予期しない観察に基づいて開発された。また、本件出願人はテトラサイクリンがIL-10を発現することができる系中でIL-10の内在性生成を増進することを予想することについて生理学的又は生化学的な基礎を知らない。それ故、テトラサイクリン誘導体が内在性IL-10生成を増進するとわかることは驚くべきことである。
当業者は哺乳類中の内在性インターロイキン-10生成の増進方法を実証するための下記の実施例の能力を認めるであろう。それ故、以下に示される結果は或る種の化学修飾テトラサイクリン誘導体が哺乳類の細胞又は組織中で内在性IL-10生成を増進することができることを明らかに示す。しかしながら、更に一般に、これらの誘導体は内在性IL-10を増進することが望ましいその他の生物系、及びその他の疾患又は症状に利用し得る。
【0034】
(実施例)
以下の実施例は本発明の更なる理解を助けるために示される。使用される特別な方法及び条件は本発明の更なる例示であることが意図され、本発明の妥当な範囲を限定しない。
実施例1
LPS刺激ヒト末梢血マクロファージに関するテトラサイクリンの効果
健康なヒト血液ドナーから得られた末梢血単球細胞(PBMNC)をリンフォプレプ(ナイコムド、オスロ、ノルウェー)で密度勾配遠心分離により白血球濃厚液から分離した。Levy及びEdgington, Journal of Experimental Medicine, 151:1232 (1980)の操作を使用して、細胞をその後に塗布し、ヒト血清被覆プラスチック皿に付着させた。次いで細胞をヒト血清アルブミン及びEDTAを含むパック生理食塩水で脱着し、改良Wright-Giemsa染色剤で染色されたサイトスピン製剤の顕微鏡試験により90%以上の単核食細胞であることを確かめた。
【0035】
培地
次いで細胞をテフロン(登録商標)ビーカー中で非付着条件下で10%ヒトAB血清(NABI)、2ミリモル/Lのグルタミン、1ミリモル/Lのピルベート、25ミリモル/LのHEPES、100μg/mlのストレプトマイシン、及び20μg/mlのセフォタキシムを補給したRPMI1640培地(ギブコ、英国)を含む培地中で最低7日間にわたって培養した。Liaoら, Blood, 83(8):2294-2304 (1994)の操作を使用して、マクロファージ(単球由来マクロファージ)に分化したPBMNCを培養液から回収した。単球由来マクロファージを1x106細胞/mlで無血清培地中で再懸濁させ、種々の実験のためにウェルプレートに塗布した。ならし培地を回収し、その後の分析のために約-80℃で凍結した。
【0036】
単球由来マクロファージの生存度を種々の濃度(約5μMから約200μMまで)のCMTの存在下でMTSテトラゾリウム化合物〔3-(4,5-ジメチルチアオゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム〕を着色ホルマゼン生成物(プロメガ、マジソン、WI)に生物還元する細胞の能力を測定することによりアッセイした。5μM及び10μMのCMT濃度で細胞に関して有意な細胞傷害作用がないことを観察した。
ならし培地
ならし培地は下記の添加剤とともにマクロファージ培養物を含んでいた:(a)細菌LPSなし;(b)0.2μg/mlの細菌LPS(これはIL-1、TNFα、及びIL-10の生成を増進することが知られている);(c)0.2μg/mlの細菌LPS+5μMのCMT-3(高レベルの抗コラゲナーゼ活性を有するテトラサイクリン誘導体);(d)0.2μg/mlの細菌LPS+10μMのCMT-5(認められる抗コラゲナーゼ活性を有しないテトラサイクリン誘導体);(e)0.2μg/mlの細菌LPS+10μMのCMT-3;(f)0.2μg/mlの細菌LPS+20μMのCMT-3。
【0037】
ヒトIL-10を結合するモノクローナル抗体を含むELISAキット(エンドゲン社、ウォバーン、MA)を使用して、ならし培地を細胞培養液中のインキュベーションの2時間後、4時間後、8時間後及び24時間後に内在性IL-10生成について分析した。
結果を図1にグラフで示す。LPSを使用しないマクロファージの培養は検出できる内在性IL-10の生成をもたらさなかった。しかしながら、培養液中のマクロファージへの0.2μg/mlのLPSの投与は内在性IL-10生成を6時間後に約180pg/ml(ピコグラク/ml)に、また24時間の終了時に約230pg/mlに著しく刺激した。
【0038】
LPS刺激マクロファージ(LPSの不在下のマクロファージではない)へのCMT-3の投与はLPS単独により生じた上昇レベルを超えて投与量依存様式でIL-10生成を増大した。投与量を約5μMのCMT-3に増加すると、内在性IL-10生成のレベルを増大しなかった。8時間後に、10μM及び20μMのCMT-3の投与量は、LPS単独により生じるIL-10のレベルを超えて、内在性IL-10生成を夫々約50%から約100%まで増大した。
同様に、10μMのCMT-3及び20μMのCMT-3は24時間の終了の時点で内在性IL-10生成を夫々約380pg/ml及び約400pg/mlに増大し続けた。10μMの投与量のCMT-5は8時間の期間で10μMのCMT-3と同じ内在性IL-10生成の増大を生じた。これはLPS単独により生じるIL-10のレベルを超えて内在性IL-10生成の約50%から約100%の増大に相当する。しかしながら、10μMのCMT-5は24時間の長いインキュベート期間ではCMT-3と同様に内在性IL-10生成を増大し続けなかった。
【0039】
実施例2
IL-1刺激ヒト末梢血単球細胞に関するテトラサイクリンの効果
健康なヒト血液ドナーから得られたヒトPBMNCをフィコール-ペーク(ファーマシア、米国)で密度勾配遠心分離により白血球濃厚液から新たに分離した。
培地
次いで細胞を24ウェル組織培養プレート中で1%FBS(ウシ胎児血清)、2ミリモル/Lのグルタミン、100μg/mlのストレプトマイシン、及び100単位のペニシリンを補給したRPMI1640培地(ギブコ、英国)を含む培地中で培養した。PBMNCを1x106細胞/mlで無血清培地中で再懸濁させ、種々の実験のためにウェルプレートに塗布した。ならし培地を回収し、その後の分析のために約-20℃で凍結した。
【0040】
ならし培地
ならし培地は下記の添加剤とともにPBMNC培養物を含んでいた:(a)IL-1なし;(b)1ng/mlのIL-1;(c)1ng/mlのIL-1+5μg/mlのCMT-5(テトラサイクリンピラゾール);(d)1ng/mlのIL-1+5μg/mlのCMT-3;及び(e)1ng/mlのIL-1+5μg/mlのCMT-8。
ヒトIL-10を結合するモノクローナル抗体を含むELISAキット(エンドゲン社、ウォバーン、MA)を使用して、ならし培地を48時間のインキュベーション期間後に内在性IL-10生成について分析した。
図2はヒトPBMNCによるIL-10生成の棒グラフである。IL-1を使用しないで、IL-1を使用して、又はIL-1+CMT-5を使用して単核細胞を培養すると、検出できる内在性IL-10の生成をもたらさなかった。しかしながら、1ng/mlのIL-1+5μg/mlのCMT-3を用いる培養は48時間の終了時に約160pg/mlまでの量の内在性IL-10を生じた。同様に、単核細胞に添加されたIL-1+5μg/mlのCMT-8を用いる培養はIL-10の内在性生成を約180pg/mlまで増大した。これは内在性IL-10生成の約16倍までの増大に相当する。
【0041】
実施例3
IL-1刺激ヒト滑膜繊維芽細胞様細胞に関するテトラサイクリンの効果
ヒト滑膜繊維芽細胞様細胞(SF)を150cm2の組織培養フラスコ中で2ミリモル/Lのグルタミン、100μg/mlのストレプトマイシン、及び100単位のペニシリンを補給したDMEM培地中に1%のFBSを含む培地中で培養した。培養液は更に(a)1ng/mlのIL-1;(b)1ng/mlのIL-1+5μg/mlのCMT-5;(c)1ng/mlのIL-1+5μg/mlのCMT-3;及び(d)5μg/mlのCMT-5である対照を含んでいた。細胞を48時間の期間にわたってインキュベートした。メッセンジャーRNAを単離し、IL-10生成をノーザンブロット分析により分析した。
図3を参照して、ノーザンブロット分析を使用して、内在性IL-10mRNA発現又は生成を吸収単位に基づいてグラフで示す。CMT-3は吸収単位の増大により表されるSF細胞中の内在性IL-10生成を著しく増進した。図4を参照して、SF細胞中の内在性IL-10の生成は約25pg/mlまでであった。内在性IL-10生成の増大はIL-1+CMT-5で刺激された細胞について観察されなかった。これらの結果は或る種の化学修飾テトラサイクリン誘導体がSF細胞中で内在性IL-10生成を増進することができることを明らかに示す。
【0042】
実施例4
IL-1刺激皮膚繊維芽細胞様細胞中のIL-10生成に関するテトラサイクリンの効果
皮膚繊維芽細胞様細胞(DF)を150cm2の組織培養フラスコ中で2ミリモル/Lのグルタミン、100μg/mlのストレプトマイシン、及び100単位のペニシリンを補給したDMEM培地中に1%のFBSを含む培地中で培養した。培養液は更に(a)添加剤なし;(b)1ng/mlのIL-1;(c)1ng/mlのIL-1+5μg/mlのCMT-5;及び(d)1ng/mlのIL-1+5μg/mlのCMT-3を含んでいた。ヒトIL-10を結合するモノクローナル抗体を含むELISA(エンドゲン社、ウォバーン、MA)を使用して、内在性IL-10生成を測定した。培養液を48時間インキュベートした。
IL-1及びCMT-3を添加した場合、DF細胞はIL-10の内在性生成を示さなかった。IL-1+CMT-5を添加した場合、同様の結果がDF細胞により示された。これらのデータはDF細胞が内在性IL-10を生成しないことを示す。これらの結果が図4にグラフで示され、これはIL-1、IL-1+CMT-5及びIL-1+CMT-3で刺激されたヒトDF細胞、ヒトSF細胞、及びヒトPBMNC中の内在性IL-10生成を要約する三次元のグラフである。
【0043】
実施例5
次の実験を設計して、生成された内在性IL-10が生物活性であることを測定した。内在性IL-10の生物活性を、2種のインジケーター細胞系U937(ATCC、受理番号CRL1593、ロックビル、Md)及びHL-60(ATCC、受理番号CCL240、ロックビル、Md)中でサイトカインTNF-α及びIL-1生成を抑制するその能力により測定した。これらの細胞系を1mlの平底ウェル中で培養した(1x106細胞/ml)。実験に使用した上澄みを生成するために、PBMNCを1ng/mlのIL-1+5μg/mlのCMT-8で刺激し、48時間インキュベートした。この上澄みは1.23pg/mlのIL-10を含んでいた。
細胞系HL-60を(a)5μg/mlのLPS;(b)5μg/mlのLPS+5μg/mlのCMT-8で処理されたPBMNCからの20%の上澄み;(c)5μg/mlのLPS+5μg/mlのCMT-8で処理されたPBMNCからの20%の上澄み+抗IL-10抗体(エンドゲン社、ウォバーン、MA)とともに培養した。U937細胞を(a)5μg/mlのLPS;(b)5μg/mlのLPS+5μg/mlのCMT-8で処理されたPBMNCからの20%の上澄み;(c)5μg/mlのLPS+5μg/mlのCMT-8で処理されたPBMNCからの20%の上澄み+抗IL-10抗体とともに培養した。
【0044】
図5はU937細胞培養液及びHL-60細胞培養液中のサイトカインTNFα及びIL-1の抑制により測定されたIL-10生物活性のグラフである。内在性TNFα及びIL-1生成を、生成されたサイトカインの量(pg/ml)をELISAアッセイすることにより測定した。CMT-8刺激PBMNCからの上澄み(sup)はU937細胞及びHL-60細胞中の内在性TNF-α及びIL-1生成をダウンレギュレートした。この効果は抗IL-10抗体(抗IL-10)により阻止された。これらのデータは或る種の化学修飾テトラサイクリン誘導体がIL-1及びTNFα生成を抑制し、又はダウンレギュレートする内在性IL-10の生成を増進することを明らかに示す。
【0045】
こうして、現在、本発明の好ましい実施態様であると考えられるものが記載されたが、当業者はその他の実施態様及び更なる実施態様が本発明の趣旨から逸脱しないでなし得ることを理解し、本明細書に示された特許請求の範囲の真の範囲内に入るような全てのこのような更なる改良及び変化を含むことが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の細胞に有効量のテトラサイクリン誘導体を投与することを特徴とする、哺乳類の細胞又は組織中の内在性インターロイキン-10生成の増進方法。
【請求項2】
前記テトラサイクリン誘導体が有効な抗菌活性を実質的に有しない請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項3】
前記テトラサイクリン誘導体が4-デジメチルアミノテトラサイクリンである請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項4】
前記哺乳類の細胞又は組織が哺乳類中にある請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項5】
前記テトラサイクリン誘導体が6-デメチル-6-デオキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリンである請求の範囲第3項記載の方法。
【請求項6】
前記テトラサイクリン誘導体がテトラサイクリノ-ピラゾールである請求の範囲第3項記載の方法。
【請求項7】
前記テトラサイクリン誘導体が7-クロロ-4-デジメチルアミノテトラサイクリンである請求の範囲第3項記載の方法。
【請求項8】
前記テトラサイクリン誘導体が4-ヒドロキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリンである請求の範囲第3項記載の方法。
【請求項9】
前記テトラサイクリン誘導体が12α-デオキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリンである請求の範囲第3項記載の方法。
【請求項10】
前記テトラサイクリン誘導体が5-ヒドロキシ-6-α-デオキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリンである請求の範囲第3項記載の方法。
【請求項11】
前記テトラサイクリン誘導体が4-デジメチルアミノ-12α-デオキシアンヒドロテトラサイクリンである請求の範囲第3項記載の方法。
【請求項12】
前記テトラサイクリン誘導体が7-ジメチルアミノ-6-デメチル-6-デオキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリンである請求の範囲第3項記載の方法。
【請求項13】
前記テトラサイクリン誘導体がテトラサイクリノニトリルである請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項14】
前記テトラサイクリン誘導体が抗菌性テトラサイクリンである請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項15】
前記テトラサイクリン誘導体がテトラサイクリンである請求の範囲第14項記載の方法。
【請求項16】
前記テトラサイクリン誘導体がミノサイクリンである請求の範囲第14項記載の方法。
【請求項17】
前記テトラサイクリン誘導体がドキシサイクリンである請求の範囲第14項記載の方法。
【請求項18】
前記テトラサイクリン誘導体を経口投与する請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項19】
前記テトラサイクリン誘導体を全身投与する請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項20】
前記テトラサイクリン誘導体を局所投与する請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項21】
前記テトラサイクリン誘導体を徐放送達系により全身投与する請求の範囲第19項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−148838(P2011−148838A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103656(P2011−103656)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【分割の表示】特願2009−277751(P2009−277751)の分割
【原出願日】平成11年9月10日(1999.9.10)
【出願人】(508095256)ザ リサーチ ファウンデーション オブ ステイト ユニバーシティ オブ ニューヨーク (11)
【出願人】(501022055)ユニヴァーシティー オヴ ロチェスター (2)
【Fターム(参考)】