説明

インターロイキン15(IL−15)に特異的なヒト抗体

【課題】IL-15(例えばヒトIL-15)に特異的に結合する単離されたヒトモノクローナル抗体及び関連する抗体ベースの組成物及び分子を提供する。
【解決手段】本ヒト抗体は、V-D-J組換え及びアイソタイプ・スイッチングを起こすことにより複数のアイソタイプのヒトモノクローナル抗体を産生できる、トランスフェクトーマ又はトランスジェニック・マウスなどの非ヒトトランスジェニック動物で産生させることができる。さらに、本ヒト抗体を含む医薬組成物、本ヒト抗体を産生する非ヒトトランスジェニック動物及びハイブリドーマ、並びに本ヒト抗体を用いた治療法及び診断法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
インターロイキン-15 (IL-15) は炎症誘発性サイトカインであり、14乃至15kDの糖タンパク質である。単球及びマクロファージ、線維芽細胞、ケラチノサイト及び樹状細胞を含む多種の細胞及び組織で、構成的発現が報告されている
(Waldmann and Tagaya, 1999; Fehniger and Caligiuri, 2001)。その発現は、IFN-γ及びLPSで刺激を受けたときや、又はウィルス、細菌もしくは原虫感染によって刺激を受けたときの単球で報告されているように、炎症状態で上方調節される(Kirman et al., 1998; Waldmann et al., 1998; Waldmann and Tagaya,
1999; Fehniger and Caligiuri, 2001)。さらに、リウマチ性関節炎などの慢性炎症性疾患では、局所的に産生されるIL-15 が、滑膜T細胞の動員及び活性化によって炎症を増幅しているようである。IL-15により誘導されるこの作用が、疾患の病因で中心的な役割を果たしていることが示唆されている
(Kirman et al., 1998; McInnes et al., 1996; McInnes et al., 1997; McInnes and
Liew, 1998; Fehniger and Caligiuri, 2001)。
【0002】
In vitro研究では、IL-15はIL-2と共通の生物活性をいくつか有し、その理由はこれらに共通の受容体成分があるためであることが示されている。T細胞上に存在するIL-15受容体は、固有のα鎖であるIL-15Rαから成るが、そのβ鎖及びγ鎖はIL-2Rと共通である。その結果、両者の受容体は同じJak/STATシグナリング配列を用いる。しかしながら、IL-2及びIL-15並びにそれらの受容体の複雑な調節及び示差的発現に基づき、in vivoでの機能には重要な違いがあることが報告されている (Kirman et al., 1998; Waldmann and Tagaya, 1999; Waldmann et al.,
2001)。さらに、ナチュラルキラー(NK)細胞、NK-T細胞及び上皮内リンパ球の発生、生存、増殖及び機能においては、IL-15に特有の役割があることに注目することも重要である(Kennedy et al., 2000; Liu et al.,2000)。
【0003】
McInnes及び共同研究者ら (McInnes et al., 1997; McInnes and
Liew, 1998) は、リウマチ性関節炎患者由来のT細胞において、IL-15を刺激した後にTNF-α産生が誘導されたことを報告した。さらに、IL-15で活性化した末梢血T細胞が、マクロファージによる著しいTNF-α産生を、細胞接触依存的な機序を通じて誘導することが示された。リウマチ性関節炎におけるTNF-αの破壊的役割のために、このサイトカインの阻害があると疾患の活性が低下する (Bathon
et al., 2000; Klippel, 2000; Lovell et al., 2000; Maini and Taylor, 2000)。
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
本発明は、ヒトIL-15に特異的に結合すると共に、IL-15の誘導する炎症誘発作用を阻害する完全ヒトモノクローナル抗体の初めての作製及び単離や、このような新規な抗体の特徴付け、並びに、多種のIL-15媒介性疾患を治療する上でのそれらの治療上の価値の実証、に基づくものである。例えばここで解説するように、本ヒト抗体は、その両者が炎症性の障害に一体に関与しているTNFα産生及びT細胞増殖の両方を阻害することが示されている。従って、本発明のヒト抗体は、このような疾患(及び他の何らかのIL-15媒介性障害)を治療及び予防する優れた手段となる。これらは、その固有の特異性(例えばエピトープ及び種特異性)、親和性、構造、機能的活性に起因すると共に、これらが完全ヒトであるために、ヒト患者に投与した場合に予め作製された他のIL-15抗体(例えばマウス及びヒト化抗体)よりも、著しく免疫原性が低く、またより治療効果が高く有用であるという事実に起因するものである。さらに本発明は、リウマチ性関節炎、乾癬、移植片拒絶及び癌などの炎症性疾患の治療を含め、ここで解説するヒト抗体などのIL-15阻害性抗体の新しい治療上用途の発見にも基づく。
【0005】
本発明の単離されたヒト抗体には、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、 IgA1、 IgA2、 IgAsec、IgD、及び IgEなどの多種の抗体アイソタイプが含まれる。典型的には、これらにはIgG1 (例えば IgG1k)、IgG3 及び IgM アイソタイプが含まれる。本抗体は完全長(例えば IgG1 又はIgG3 抗体)でもよく、又は、抗原結合部分(例えばFab、F(ab')2、Fv、一本鎖Fv フラグメント、単離された相補性決定領域 (CDR)又は2種以上の単離されたCDRの組合せ、など)のみを含むものでもよい。
【0006】
ある実施態様では、本ヒト抗体は組換え抗体である。ある具体的な実施態様では、本ヒト抗体は、それぞれSEQ ID NO:1 及び SEQ ID NO:3並びにそれらの保存的配列改変に記載された通りのヌクレオチド配列をそれらの可変領域に含むヒトIgG重鎖及びヒトカッパ軽鎖核酸にコードされている。別の実施態様では、本ヒト抗体は、それぞれSEQ
ID NO:2 及び SEQ ID NO:4並びにそれらの保存的配列改変に示すアミノ酸配列を含むIgG重鎖及びカッパ軽鎖可変領域を有する。
【0007】
本発明のヒト抗体は、当該抗体の重鎖及び軽鎖をコードする核酸を含有するトランスフェクトーマ(例えば不死化CHO細胞又はリンパ球から成るトランスフェクトーマ)など、ホスト細胞内で組換えにより産生させることも、あるいは、当該抗体を発現するハイブリドーマ(例えば当該抗体をコードするヒト重鎖導入遺伝子及びヒト軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック・マウスなどの非ヒトトランスジェニック動物から得たB細胞を不死化細胞に融合させて含有するもの)から直接得ることもできる。具体的な実施態様では、本抗体を、ここで146B7と言及するハイブリドーマか、又は、それぞれSEQ ID NO: 1 及び 3並びにそれらの保存的改変に記載された通りのヌクレオチド配列をそれらの可変領域に含むヒト重鎖及びヒト軽鎖核酸を含有するホスト細胞(例えばCHO細胞)トランスフェクトーマに、産生させる。具体的な実施態様では、本抗体を、ここで146B7、146H5, 404E4、及び404A8と言及されるハイブリドーマに産生させる。ある好適な実施態様では、本抗体は、IL-15のβ-及び/又はγ-鎖相互作用ドメイン上に位置するエピトープに特異的に結合するものである。
【0008】
別の実施態様では、本発明のヒト抗体は、ヒトIL-15に特異的に結合して、IL-15の炎症誘発作用誘導能を阻害するものであり、例えばIL-15がIL-15受容体に結合した時に、TNFαの産生を阻害したり、及び/又は、PBMC又はCTLL-2 T細胞などのT細胞の増殖を阻害する。典型的には、本ヒト抗体は、組換えヒトIL-15を分析物及び本抗体をリガンドとして用いて、BIACORE 3000装置で表面プラスモン共鳴(CPR)技術で判定した場合に、例えばほぼ10-8M、10-9M又は10-10M又はそれ未満など、ほぼ10-7M未満の解離平衡定数(KD)でIL-15に結合する。ある具体的な実施態様では、本抗体はヒトIL-15に、ほぼ6.5×10-8Mの解離平衡定数(KD)で結合する。
【0009】
別の局面では、本発明は、本発明の抗体又は抗原結合部分をコードする核酸分子を提供するものである。従って、本発明の抗体をコードする核酸を含有する組換え発現ベクタや、このようなベクタをトランスフェクトしたホスト細胞も、これらのホスト細胞を培養することで本発明の抗体を作製する方法と同様、本発明の包含するところである。
【0010】
さらに本発明は、それぞれSEQ ID NO:2
及びSEQ ID NO:4並びにこれらの保存的改変に示すアミノ酸配列を含む重鎖及び軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクタにも関する。このような発現ベクタは当業で公知である。その例には、例えば網状赤血球ライセートを用いたin vitro 転写/翻訳ベクタがある。
【0011】
さらに別の局面では、本発明は、IL-15に特異的に結合する多種のアイソタイプ(例えばIgG、IgA及び/又はIgM)のヒトモノクローナル抗体を発現できる、トランスジェニック・マウスなどの非ヒトトランスジェニック動物由来の単離されたB細胞を提供するものである。好ましくは、前記単離されたB細胞が、IL-15抗原の精製もしくは濃縮製剤、及び/又は、IL-15発現細胞、で免疫してあるトランスジェニック・マウスなどの非ヒトトランスジェニック動物から得られるとよい。好ましくは、トランスジェニック・マウスなどの非ヒトトランスジェニック動物が、ヒト重鎖導入遺伝子及びヒト軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するとよい。次に、この単離されたB細胞を不死化して、IL-15に対する比とモノクローナル抗体の供給源(例えばハイブリドーマ)とする。
【0012】
従って、本発明は、さらに、IL-15に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体を産生できるハイブリドーマを提供する。ある実施態様では、当該ハイブリドーマは、ヒト重鎖導入遺伝子及びヒト軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する、トランスジェニック・マウスなどの非ヒトトランスジェニック動物から得たB細胞を不死化細胞に融合させて含有するものである。この非ヒトトランスジェニック動物は、抗体産生ハイブリドーマを作製するために、IL-15抗原の精製もしくは濃縮製剤、及び/又は、IL-15発現細胞で免疫することができる。本発明が提供する具体的なハイブリドーマには、146B7、146H5、404E4、及び404A8がある。
【0013】
さらに別の局面では、本発明は、IL-15に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体を発現する、トランスジェニック・マウスなどの非ヒトトランスジェニック動物を提供するものである。具体的な実施態様では、当該の非ヒトトランスジェニック動物は、ヒト重鎖導入遺伝子及びヒト軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック・マウスである。当該非ヒトトランスジェニック動物は、IL-15抗原の精製もしくは濃縮製剤、及び/又は、IL-15発現細胞で免疫することができる。好ましくは、トランスジェニック・マウスなどの非ヒトトランスジェニック動物が、V-D-J組換え及びアイソタイプ・スイッチングを起こすことにより、IL-15に対して複数のアイソタイプ(例えば IgG、IgA及び/又は IgM)のヒトモノクローナル抗体を産生できるとよい。アイソタイプ・スイッチングは、例えば古典的アイソタイプ・スイッチングで起きるものでも、又は非古典的アイソタイプ・スイッチングで起きるものでもよい。
【0014】
別の局面では、本発明は、IL-15と特異的に反応するヒトモノクローナル抗体を作成する方法を提供するものである。ある実施態様では、本方法は、ヒト重鎖導入遺伝子及びヒト軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する、トランスジェニック・マウスなどの非ヒトトランスジェニック動物を、L-15抗原の精製もしくは濃縮製剤、及び/又は、IL-15発現細胞で免疫するステップを含む。次にこの動物のB細胞(例えば脾B細胞)を得、骨髄腫細胞に融合させて、IL-15に対するヒトモノクローナル抗体を分泌する不死のハイブリドーマ細胞を形成する。
【0015】
別の局面では、本発明は、例えば細胞傷害性薬物、酵素活性毒素、又はそのフラグメントなどの治療成分、放射性同位体又は低分子抗癌剤などの治療的成分に結合されたヒト抗IL-15抗体を特徴とする。
【0016】
別の局面では、本発明は、薬学的に許容可能な担体と、IL-15に特異的に結合する、少なくとも一種の本発明のヒトモノクローナル抗体とを含んで成る、例えば医薬組成物及び診断用組成物などの組成物を提供するものである。当該組成物にはさらに、他の免疫抑制剤、又は化学療法薬などの他の治療薬を含めることができる。
【0017】
さらに別の局面では、本発明は、例えばIL-15誘導性TNFα産生及び/又はT細胞増殖を阻害するなど、好ましくは構造上関連するタンパク質/サイトカイン(例えばIL-2)の活性(例えばTNFα産生及び/又はT細胞増殖)を阻害することなく、本発明の一種以上のヒト抗体を用いてIL-15の炎症誘発作用を阻害する方法を提供するものである。
【0018】
本発明のヒト抗体は、多種のIL-15媒介性疾患を、このような疾患に罹患した患者に本抗体を投与することにより治療及び/又は予防するために用いることができる。
【0019】
本発明の方法及び組成物を用いて治療(例えば寛解)又は予防できる疾患の例には、限定はしないが、炎症性障害、例えば関節炎(例えば乾癬性関節炎並びに活動性リウマチ性関節炎及び若年性リウマチ性関節炎を含むリウマチ性関節炎)、炎症性腸疾患、がある。例えば、本抗体が、錯角化症を減少させ、表皮の肥厚を減少させ、乾癬でケラチノサイトの増殖を低下させることが示されている。また本抗体は、リウマチ性関節炎に伴う炎症を低下させる、及び/又は、活性化白血球の細胞遊走を防ぐことが、示されている。さらに本抗体は、HIV感染などの感染性疾患の治療にも用いることができる。さらに本抗体は移植片拒絶を治療するためにも使用できる。またさらに本抗体は、腫瘍成長及び癌、例えばT細胞白血病など、IL-15媒介性血管新生の関与する多種の疾患の治療にも、用いることができる。
【0020】
また本発明のヒト抗体を、例えば抗炎症剤、DMARD(疾患改良抗リウマチ薬)、免疫抑制剤、化学療法薬、及び乾癬薬などの一種以上の付加的な治療薬と組み合わせてもよい。
【0021】
ある実施態様では、例えばステロイド系薬物又はNSAID(非ステロイド系抗炎症薬)などの抗炎症性薬剤など、本抗体による炎症誘発作用阻害を高める一種以上の薬剤で、対象を付加的に治療することができる。好適な薬剤には、例えばアスピリン及び他のサリチル酸塩、Cox-2阻害剤、例えばロフェコキシブ (ヴィオックス) 及びセレコキシブ (セレブレックス)、NSAID、例えばイブプロフェン (モトリン、アドビル)、フェノプロフェン(ナルフォン)、ナプロキセン(ナプロシン)、スリンダック(クリノリル)、ジクロフェナック(ヴォルタレン)、ピロキシカム(フェルデン)、ケトプロフェン(オルディス)、ジフルニザール(ドロビド)、ナブメトン(レラフェン)、エトドラック(ロジン)、オキサプロジン(デイプロ)、及びインドメタシン(インドシン)、がある。
【0022】
別の実施態様では、本発明のヒト抗体を、例えばメトトレキセート(リューマトレックス)、ヒドロキシクロロキン(プラケニル)スルファサラジン(アスルフィジン)、ピリミジン合成阻害剤、例えばレフルノミド(アラバ)、IL-1受容体遮断剤、例えばアナキンラ(キネレット)、及びTNF-α遮断剤、例えばエタネルセプト(エンブレル)、インフリキシマブ(レミケイド)及びアダリムマブなどの一種以上のDMARDと組み合わせて投与することができる。
【0023】
別の実施態様では、本発明のヒト抗体を、例えばシクロスポリン(サンジムン、ネオラール)及びアザチオプリン(イムラール)などの一種以上の免疫抑制剤と組み合わせて投与することができる。
【0024】
別の実施態様では、本発明のヒト抗体を、例えばドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチン(プラチノール)、ブレオマイシン(ブレノキサン)、カルムスチン(グリアデル)、シクロホスファミド(シトキサン、プロサイトックス、ネオサール)、及びクロラムブシル(ロイケラン)などの一種以上の化学療法薬と組み合わせて投与することができる。本発明によるヒト抗体を、放射線治療と併用投与することもできる。
【0025】
別の実施態様では、本発明のヒト抗体を、例えばコールタール、ビタミンA、コルチゾン又は他のコルチコステロイドを含有する局所用医薬や、例えばコルチコステロイド、メトトレキセート、レチノイド、例えばアシクレチン(ネオギタゾン)又はシクロスポリン(サンジムン、ネオラール)などの経口用又は注射用医薬など、一種以上の乾癬治療薬と組み合わせて投与することができる。他の治療法には、日光への暴露又は光線療法が含まれるであろう。
【0026】
別の実施態様では、本発明のヒト抗体を、例えばCD4特異抗体及びIL-2特異抗体などの他の抗体と組み合わせて投与することができる。本ヒト抗体と、CD4特異抗体又はIL-2特異抗体との組合せは、自己免疫疾患及び移植片拒絶の治療にとって特に有用であると考えられる。
【0027】
さらに別の局面では、本発明は、例えばIL-15媒介性疾患を診断するためなど、試料中のIL-15抗原の存在をin vitro又はin vivoで検出する方法を提供するものである。ある実施態様では、これは、検査対象の試料を、コントロール試料と並行して、本発明のヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合部分に、前記抗体及びIL-15間の複合体形成が可能な条件下で接触させることにより、行われる。次に複合体形成を両方の試料で(例えばELISAを用いて)検出し、これら試料間で複合体形成に何らかの統計上有意な違いがあれば、検査試料中にIL-15抗原が存在することの指標である。
【0028】
本発明の他の特徴及び長所は、以下の詳細な説明及び請求の範囲から明白となるであろう。
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、IL-15が媒介する多種の障害(即ち、IL-15の炎症誘発作用が引き起こす障害)を治療及び診断するための新規な抗体ベースの治療薬を提供するものである。ここで用いる用語「IL-15の炎症誘発作用」には、例えばTNFα及び他の炎症媒介物質の産生や、T細胞の動員/増殖など、IL-15により誘導されるあらゆる体液性又は細胞媒介性の免疫応答が含まれる。本発明の治療法では、IL-15上に存在するエピトープに特異的に結合する単離されたヒトモノクローナル抗体を利用する。
【0030】
ある実施態様では、本ヒト抗体は、V-D-J組換え及びアイソタイプ・スイッチングを起こすことにより、IL-15に対して複数のアイソタイプ(例えば IgG, IgA 及び/又は IgE)のヒトモノクローナル抗体を産生できる、トランスジェニック・マウスなどの非ヒトトランスジェニック動物で産生される。従って、本発明の多様な局面には、抗体及びその医薬組成物や、このようなモノクローナル抗体を作製するための非ヒトトランスジェニック動物、B細胞、ホスト細胞トランスフェクトーマ及びハイブリドーマが含まれる。本発明の抗体を用いて、IL-15が結合する細胞を検出する方法、及び/又は、IL-15媒介性機能をin vitro又はin vivoで阻害する方法も、本発明の包含するところである。IL-15が結合する細胞に薬剤を標的指向させる方法も包含されている。
【0031】
本発明がより容易に理解されるよう、いくつかの用語をまず定義しておく。更なる定義は、詳細な説明欄全体に記載されている。
【0032】
用語「IL-15」、「IL-15抗原」及び「インターロイキン 15」はここでは交換可能に用いられており、細胞が天然で発現するあらゆるバリアント又はアイソフォームを包含するものである。
【0033】
ここで言及する用語「抗体」には、抗体全体や、そのあらゆる抗原結合フラグメント(即ち「抗原結合部分」)又は一本鎖が含まれる。「抗体」とは、少なくとも2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖をジスルフィド結合で相互に接続して含む糖タンパク質、又はその抗原結合部分、を言う。各重鎖は、重鎖可変領域(ここではVHと省略される)と重鎖定常領域とから成る。重鎖定常領域はCH1、CH2及びCH3という3つのドメインから成る。各軽鎖は軽鎖可変領域(ここではVLと省略される)及び軽鎖定常領域から成る。軽鎖定常領域は一つのドメインCLから成る。VH及びVL領域はさらに、より保存されたフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域間に介在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に小さく分割することができる。各VH及びVLは、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端まで並んだ3つのCDR及び4つのFRから成る。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の多種の細胞(例えばエフェクタ細胞)を含むホスト組織又は因子や、古典的な補体系の第一コンポーネント(C1q)に対する免疫グロブリンの結合を媒介していると考えられる。
【0034】
抗体の「抗原結合部分」(又は簡単に「抗体部分」)という用語は、ここで用いる場合、抗原(例えばIL-15)への特異的結合能を維持した、抗体のうちの一つ以上のフラグメントを言う。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体のうちの数フラグメントに行わせることができることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合フラグメントの例には、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインから成る一価のフラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントから成る二価のフラグメントであるF(ab')2フラグメント;(iii)VH及びCH1ドメインから成るFdフラグメント;(iv)抗体の一本の腕のVL及びVHドメインから成るFvフラグメント;(v)VHドメインから成るdAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546);及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)もしくは又は(vii)選択に応じて合成リンカにより接合してもよい単離されたCDR、がある。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインVL及びVHは別々の遺伝子にコードされているが、これらは、VL及びVH領域が対を成して一価の分子を形成するような一個のタンパク質鎖に作製できるようにする合成リンカーにより、組換え法を用いて接合することができる(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば Bird et al. (1988) Science
242:423-426; and Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい)。このような一本鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されるものと、意図されている。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の従来技術を用いて得られ、それらのフラグメントは、インタクト抗体と同じ態様で実用性についてスクリーニングされている。
【0035】
ここで用いる用語「モノクローナル抗体」は、単一の結合特異性及び親和性を特定のエピトープに対して示す抗体を言う。従って、用語「ヒトモノクローナル抗体」とは、単一の結合特異性を示すと共に、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列を由来とする可変領域及定常領域を有するような抗体を言う。ある実施態様では、ヒトモノクローナル抗体は、ヒト重鎖導入遺伝子及び軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する、トランスジェニックマウスなどの非ヒトトランスジェニック動物から得られたB細胞を、不死化細胞に融合させて含むハイブリドーマにより産生される。
【0036】
用語「組換えヒト抗体」は、ここで用いる場合、例えば(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニック又はトランスクロモゾマルな動物(例えばマウス)から、又は、それから調製されたハイブリドーマから、単離された抗体(以下の項Iでさらに解説する)、(b)当該抗体を発現するように形質転換させたホスト細胞から、例えばトランスフェクトーマから、単離された抗体、(c)組換えのコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、及び(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングに関与する何らかの他の手段により調製、発現、創出又は単離された抗体など、組換え手段により調製、発現、創出又は単離されたあらゆるヒト抗体を包含する。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列を由来とする可変及び定常領域を有する。しかしいくつかの実施態様では、このような組換えヒト抗体にin vitro変異誘発を行って(あるいはヒトIg配列についてトランスジェニックな動物を用いる場合にはin vivoで体細胞変異誘発を行って)、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列を、ヒト生殖細胞系VH及びVL配列を由来とし、かつ関連はしているが、in vivoのヒト抗体生殖細胞系レパートリに天然では存在しないと思われる配列にすることもできる。
【0037】
ここで用いる「異種抗体」とは、このような抗体を産生する非ヒトトランスジェニック生物との関連から定義されている。この用語は、当該非ヒトトランスジェニック動物を構成しない生物に見られるものに相当すると共に、当該非ヒトトランスジェニック動物のそれ以外の種を概ね由来とするアミノ酸配列又はコーディング核酸配列を有する抗体を言う。
【0038】
ここで用いる「単離された抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を言うものと、意図されている(例えばIL-15に特異的に結合する単離された抗体は、IL-15以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしIL-15のエピトープに特異的に結合する単離された抗体は、他の関連するサイトカイン又は異なる種を由来とする他のIL-15タンパク質に対して交差反応性を有していてもよい。しかしながら、本抗体は好ましくはヒトIL-15に常に結合するものであるとよい。加えて、単離された抗体は、典型的には、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない。本発明の一実施態様では、異なるIL-15特異性を有する複数の「単離された」モノクローナル抗体の組合せを、良く定義された組成で配合する。
【0039】
ここで用いる「特異的結合」とは、所定の抗原に対して抗体が結合することを言う。典型的には、本抗体は、組換えヒトIL-15を分析物及び本抗体をリガンドとして用いて、BIACORE 3000装置で表面プラスモン共鳴(CPR)技術で判定した場合に、例えばほぼ10-8M、10-9M又は10-10M未満又はさらに低い値など、ほぼ10-7M未満の親和性(KD)で結合し、所定の抗原に対しては、所定の抗原又は密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えばBSA、カゼイン)に対するその結合親和性よりも、少なくとも2倍高い親和性で結合する。文言「ある抗原を認識する抗体」及び「ある抗原に特異的な抗体」は、ここでは、「ある抗原に特異的に結合する抗体」と交換可能に用いられている。
【0040】
用語「KD」は、ここで用いる場合、特定の抗体−抗原間相互作用の解離平衡定数を言うものと、意図されている。
【0041】
ここで用いる「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子にコードされた抗体クラス(例えばIgM又はIgG1)を言う。
【0042】
ここで用いる「アイソタイプ・スイッチング」とは、抗体のクラス又はアイソタイプが、ある1つのIgクラスから他のIgクラスの1つへ変化する現象を言う。
【0043】
ここで用いる「スイッチングなしのアイソタイプ」とは、アイソタイプ・スイッチングが起きなかったときに産生されるアイソタイプ・クラスの重鎖を言う。スイッチングなしのアイソタイプをコードするCH遺伝子は、典型的には、機能的再編成の起きるVDJ遺伝子のすぐ下流にある1番目のCH遺伝子である。アイソタイプ・スイッチングは古典的又は非古典的アイソタイプ・スイッチングに分類されてきた。古典的アイソタイプ・スイッチングは、導入遺伝子中の少なくとも1つのスイッチ配列領域が関与する組換え事象により起きる。非古典的なアイソタイプ・スイッチングは、例えばヒトσμとヒトΣμとの間の相同組換え(δ関連欠失)などで起きることがある。また導入遺伝子間及び/又は染色体間での組換えなど、その他の非古典的なスイッチング機序が起きてアイソタイプ・スイッチングにつながることもある。
【0044】
ここで用いる用語「スイッチ配列」とは、スイッチ組換えを担うDNA配列を言う。「スイッチ・ドナー」配列は典型的にはμスイッチ領域であり、スイッチ組換えの際に欠失するコンストラクト領域の5'側(即ち上流)にあるであろう。「スイッチ・アクセプタ」領域は、欠失することになるコンストラクト領域と、置換定常領域(例えばγ、ε、等)との間にあるであろう。組換えが常に起きるという特定の部位はないため、最終的な遺伝子配列は典型的にはコンストラクトからは予測不能であろう。
【0045】
ここで用いる「糖付加パターン」とは、タンパク質、より具体的には免疫グロブリンタンパク質、に共有結合した糖単位のパターンであると定義しておく。ある異種抗体の糖付加パターンを、導入遺伝子のCH遺伝子の由来となった元の種の糖付加パターンよりも、非ヒトトランスジェニック動物の種における糖付加パターンにより似ていると当業者が認識するのであれば、その異種抗体の糖付加パターンは、非ヒトトランスジェニック動物の種の産生する抗体上に天然で存在する糖付加パターンに実質的に似ている、と特徴付けることができる。
【0046】
ある物質についてここで用いる用語「天然で発生する」とは、ある物質が天然で見られるという事実を言う。例えば、(ウィルスを含む)生物中に存在し、天然の源から単離でき、研究室で人為的に改変されていないポリペプチド又はポリヌクレオチド配列は天然で発生したものである。
【0047】
ここで用いる用語「再編成される」とは、Vセグメントが、D-J又はJセグメントのすぐ隣に位置して、それぞれ完全VH又はVLドメインを実質的にコードするコンホメーションとなっているような重鎖又は軽鎖免疫グロブリン遺伝子座の配置を言う。再編成の起きた免疫グロブリン遺伝子座は、生殖細胞DNAに比較することで特定できる;再編成の起きた遺伝子座は少なくとも一つの組換えられた7量体/9量体相同配列を有するであろう。
【0048】
Vセグメントに関してここで用いる用語「再編成のない」又は「生殖細胞の配置」とは、Vセグメントが組換えられておらず、D又はJセグメントのすぐ隣にあるような配置を言う。
【0049】
ここで用いる用語「核酸分子」には、DNA分子及びRNA分子が包含されるものと、意図されている。核酸分子は一本鎖でも、又は二本鎖でもよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0050】
IL-15に結合する抗体又は抗体部分(例えばVH、VL、CDR3など)をコードする核酸に関してここで用いる用語「単離された核酸分子」とは、当該抗体又は抗体部分をコードするヌクレオチド配列が、IL-15以外の抗原に結合する抗体又は抗体部分をコードする、天然ではヒトゲノムDNA中で当該核酸をフランクしているであろう他のヌクレオチド配列を含まないことを言うものと、意図されている。SEQ ID NO: 1-4は、本発明のヒト抗IL-15抗体146B7の重鎖(VH)及び軽鎖(VL)可変領域を含むヌクレオチド及びアミノ酸配列に相当する。具体的には、SEQ ID NO:1 及び 2 は146B7抗体のVHに相当し、 SEQ ID NO:3及び4 は146B7抗体のVLに相当する。
【0051】
さらに本発明は、SEQ ID NO: 1-4に記載した通りの配列の「保存的配列改変」、即ち、前記ヌクレオチド配列にコードされた、又は、前記アミノ酸配列を含有する、当該抗体の結合特性に大きく影響又は変化させないようなヌクレオチド及びアミノ酸配列改変、も包含するものである。このような保存的配列改変にはヌクレオチド及びアミノ酸の置換、追加及び欠失が含まれる。例えば部位指定変異誘発及びPCR媒介変異誘発法など、当業で公知の標準的技術により、改変をSEQ ID NO:1-4に導入することができる。保存的アミノ酸置換には、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されるものが含まれる。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当業で定義されている。これらのファミリーには、塩基性の側鎖を持つアミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性の側鎖を持つアミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性側鎖を持つアミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性の側鎖を持つアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分枝側鎖を持つアミノ酸(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を持つアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)、がある。このように、ヒト抗IL-15抗体の中で予測される重要でないアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基に置換することが好ましい。
【0052】
代替的には、別の実施例では、例えば飽和変異誘発法などにより、抗IL-15抗体コーディング配列の全部又は一部にわたって変異を無作為に導入することができ、その結果改変された抗IL-15抗体を結合活性についてスクリーニングすることができる。
【0053】
従って、ここで開示する(重鎖及び軽鎖可変領域)ヌクレオチド配列にコードされた抗体、及び/又は、ここに開示する(即ちSEQ ID NO: 1-4)(重鎖及び軽鎖可変領域)アミノ酸配列を含有する抗体には、保存的に改変され、類似の配列にコードされた、又は、類似の配列を含有する、実質的に類似の抗体が含まれる。このような実質的に類似の抗体を、ここにSEQ ID No:1-4として開示された部分的(即ち重鎖及び軽鎖可変領域)配列に基づいてどのように作製できるかを、以下にさらに論じる。
【0054】
核酸の場合、用語「実質的な相同性」は、最適にアライメントして比較した場合の2つの核酸又はそのうちの指示した配列が、適当なヌクレオチド挿入又は欠失がありながらも、ヌクレオチドの少なくとも約80%、通常はヌクレオチドの少なくとも約90%乃至95%、そしてより好ましくは少なくとも約98%乃至99.5%が、同一であることを指すものである。代替的には、数セグメントが選択的ハイブリダイゼーション条件下で当該鎖の相補配列にハイブリダイズするときに、実質的な相同性が存在することとする。
【0055】
二つの配列間のパーセント同一性は、これら二つの配列を最適にアライメントするのに導入せねばならないギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮に入れたときの、これら配列に共通の同一位置の数の関数である(即ち、%相同性=同一位置の数/位置の総数×100)。二つの配列間の配列の比較及びパーセント同一性の決定は、以下の非限定的な例に解説するように、数学的アルゴリズムを用いて行うことができる。
【0056】
二つのヌクレオチド間のパーセント同一性は、GCGソフトウェア・パッケージ(http://www.gcg.comで入手できる)のGAPプログラムを用い、NWSgapdna.CMP マトリックスを用いて、ギャップ・ウェイトを40、50、60、70、又は80 にし、そしてレングス・ウェイトを1、2、3、4、5、又は6にして決定することができる。二つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間のパーセント同一性はまた、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれた E. マイヤース及びW. ミラーのアルゴリズム(Comput.
Appl. Biosci., 4:11-17 (1988)) を用い、PAM120 ウェイト残基表を用いて、ギャップ・レングス・ペナルティを12、そしてギャップ・ペナルティを4にして、決定することもできる。さらに、二つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェア・パッケージ(http://www.gcg.comで入手できる)のGAPプログラムに組み込まれたニードルマン及びワンシュ (J. Mol. Biol. (48):444-453 (1970))のアルゴリズムを用い、Blossum 62 マトリックス又はPAM250マトリックスのいずれかを用いて、ギャップ・ウェイトを16、14、12、10、8、6、又は4にし、レングス・ウェイトを1、2、3、4、5、又は6にして、決定することができる。
【0057】
さらに本発明の核酸及びタンパク質の配列を「クエリー配列」として利用して、公開データベースの検索を行って、例えば関連する配列を同定することなどができる。このような検索は、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のNBLAST 及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)を利用すれば行える。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラムを用い、スコア=
100、ワード長= 12 にして行うと、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索を、 XBLASTプログラムを用い、スコア= 50、ワード長= 3にして行うと、本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較を目的としてギャップのあるアライメントを行うには、Gapped BLAST をAltschul et
al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402が解説するとおりに利用できる。BLAST及びギャップドBLASTプログラムを利用する場合、各プログラムの(例えばXBLAST 及びNBLAST)のデフォルト・パラメータを利用できる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov. を参照されたい。
【0058】
当該核酸は全細胞中にあっても、細胞ライセート中にあっても、又は部分的に精製されたもしくは実質的に純粋な形で存在してもよい。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラム・クロマトグラフィ、アガロースゲル電気泳動法、及び当業で公知の他の技術を含む標準的な技術により、例えば他の細胞内核酸又はタンパク質など、他の細胞成分又は他の混入物質を取り除いて精製されている場合に、「単離されている」又は「実質的に純粋にされている」ことになる。
F. Ausubel, et al., ed. Current Protocols in Molecular
Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York (1987)を参照されたい。
【0059】
cDNA、ゲノム又はこれらの混合物由来である本発明の核酸組成物は、しばしば天然配列(改変された制限部位等を除き)のままであり、遺伝子配列を提供する標準的技術に従って変異させてもよい。コーディング配列の場合、これらの変異は、必要に応じアミノ酸配列を左右するものでもよい。具体的には、ここで解説した天然V、D、J、定常、スイッチ及び他のこのような配列に実質的に相同又は由来とするDNA配列が考えられる(「由来する」が、ある配列が別の配列と同一か、もしくは別の配列から改変されていることを指す場合)。
【0060】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれたときに「作動的に連結された」ことになる。例えば、あるプロモータ又はエンハンサが、あるコーディング配列の転写を左右するのであれば、その配列に作動的に連結されていることになる。転写制御配列に関する場合、作動的に連結されたとは、連結しようとするDNA配列が連続していることを意味し、また2つのタンパク質コーディング領域を接合するために必要な場合には、連続し、かつ読み取り枠内にあることを意味する。スイッチ配列の場合には、作動的に連結された、とは、当該配列がスイッチ組換えを起こし得ることを指す。
【0061】
ここで用いる用語「ベクタ」とは、連結された先の別の核酸を輸送できる核酸分子を言うものと、意図されている。ベクタの一種が、付加的なDNAセグメントを連結できる環状の二本鎖DNAループを言う「プラスミド」である。ベクタのもう一つの種類がウィルスベクタであり、この場合、付加的なDNAセグメントは、ウィルスゲノム内に連結させることができる。いくつかのベクタは導入された先のホスト細胞内で自律的複製が可能である(例えば細菌由来の複製開始点を有する細菌ベクタや、エピソームほ乳類ベクタなど)。他のベクタ(例えば非エピソームほ乳類ベクタなど)は、ホスト細胞に導入されるや、ホスト細胞のゲノムに組み込まれるため、ホストゲノムと一緒に複製される。さらに、いくつかのベクタは、作動的に連結された先の遺伝子の発現を命令することができる。このようなベクタをここでは「組換え発現ベクタ」(又は単に「発現ベクタ」)と呼ぶ。一般的に、組換えDNA技術で実用性のある発現ベクタは、しばしばプラスミドの形である。本明細書では、プラスミドが最も普通に用いられている形のベクタであるため、「プラスミド」及び「ベクタ」を交換可能に用いている場合がある。しかしながら、本発明には、例えばウィルスベクタ(例えば複製欠陥レトロウィルス、アデノウィルス及びアデノ随伴ウィルス)など、同等の機能を果たす他の形の発現ベクタも包含されることが、意図されている。
【0062】
ここで用いる用語「組換えホスト細胞(又は単に「ホスト細胞」)とは、組換え発現ベクタが導入された細胞を言うものと、意図されている。このような用語は、特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の後代も言うものと意図されていることは、理解されねばならない。突然変異又は環境による影響が原因で、特定の改変が継代に起きる場合があるため、このような後代は実際には親細胞と同一でないかも知れないが、それでも尚、ここで用いる用語「ホスト細胞」の範囲内に含まれる。
【0063】
ここで用いる用語「対象」にはヒト又は非ヒト動物が含まれる。例えば本発明の方法及び組成物は、リウマチ性関節炎などの関節炎など、炎症性疾患患者を治療するために用いることができる。用語「非ヒト動物」には、例えばヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、は虫類など、ほ乳類及び非ほ乳類などのあらゆる脊椎動物が含まれる。
【0064】
本発明の多様な局面を、以下の小項でさらに詳述する。
【0065】
I.IL-15に対するヒト抗体の作製
本発明のヒトモノクローナル抗体は、Kohler
and Milstein (1975) Nature 256: 495に解説された標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術など、多様な公知の技術により作製できる。体細胞ハイブリダイゼーション法が基本的には好適であるが、モノクローナル抗体を作製する他の技術、例えばBリンパ球のウィルス又は腫瘍形成性形質転換、ヒト抗体遺伝子のライブラリを用いたファージ・ディスプレイ技術、も利用できる。
【0066】
本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製する好適な動物系はマウス系である。免疫プロトコルや、免疫後の脾細胞を単離及び融合させる技術を含め、マウスにおけるハイブリドーマ作製は公知である。
【0067】
ある実施態様では、IL-15を狙ったヒトモノクローナル抗体を、マウス系ではなくヒト免疫系の一部を持つトランスジェニック又はトランスクロモゾマル・マウスを用いて作製する。ある実施態様では、本発明は、ここで「HuMAb」マウスと呼ばれる、再編成していないヒト重鎖(μ及びγ)及びκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子最小遺伝子座を、内因性のμ及びκ鎖遺伝子座を不活性化する標的設定された変異と一緒に含有する(Lonberg, et al. (1994) Nature 368(6474): 856-859)トランスジェニックマウスを利用する。従って、このマウスの示すマウスIgM又はκの発現は低く、免疫処置に応答して、導入されたヒト重鎖及び軽鎖導入遺伝子がクラス・スイッチング及び体細胞変異を起こすことにより高親和ヒトIgGκモノクローナル抗体が生じる
(Lonberg, N. (1994) Handbook of Experimental Pharmacologyで113:49-101レビューされた
上記のLonberg, N. et al. (1994) ; Lonberg, N. and
Huszar, D. (1995) Intern. Rev. Immunol. Vol. 13: 65-93, 及びHarding, F. and Lonberg, N. (1995) Ann. N.Y.
Acad. Sci 764:536-546)。HuMAbマウスの作製は、下の項II及びTaylor, L. et al. (1992)
Nucleic Acids Research 20:6287-6295; Chen, J. et al. (1993) International
Immunology 5: 647-656; Tuaillon et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci USA
90:3720-3724; Choi et al. (1993) Nature Genetics 4:117-123; Chen, J. et al.
(1993) EMBO J. 12: 821-830; Tuaillon et al. (1994) J. Immunol. 152:2912-2920;
Lonberg et al., (1994) Nature 368(6474): 856-859; Lonberg, N. (1994) Handbook
of Experimental Pharmacology 113:49-101; Taylor, L. et al. (1994) International
Immunology 6: 579-591; Lonberg, N. and Huszar, D. (1995) Intern. Rev. Immunol.
Vol. 13: 65-93; Harding, F. and Lonberg, N. (1995) Ann. N.Y. Acad. Sci
764:536-546; Fishwild, D. et al. (1996) Nature Biotechnology 14: 845-851に詳細に解説されている。さらに、すべてLonberg及びKay、並びにジェンファーム・インターナショナル社に付与された米国特許第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,789,650号;第5,877,397号;第5,661,016号;第5,814,318号;第5,874,299号;及び第5,770,429号;Surani et al.のto 米国特許第5,545,807号;1998年6月11日に公開された国際公報WO 98/24884;1994年11月10日に公開されたWO 94/25585;1993年6月24日に公開された WO 93/1227;1992年12月23日に公開されたWO 92/22645;1992年3月19日に公開されたWO 92/03918を参照されたい。特にHCO12トランスジェニックHuMabマウスの作製法を実施例2で解説する。
【0068】
免疫処置
IL-15に対する完全ヒトモノクローナル抗体を作製するためには、ヒト免疫グロブリン遺伝子(例えばHCo12、HCo7又はKMマウス)を含有するトランスジェニック又はトランスクロモゾマル・マウスをLonberg, N. et al. (1994) Nature 368(6474): 856-859; Fishwild, D. et
al. (1996) Nature Biotechnology 14: 845-851 及び WO 98/24884などに解説されたようにIL-15抗原の精製もしくは濃縮製剤及び/又はIL-15発現細胞で免疫することができる。代替的には、ヒトIl-15をコードするDNAでマウスを免疫することもできる。好ましくは、当該マウスは1回目の輸注時に6乃至16週齢であるとよい。例えば、IL-15抗原の精製もしくは濃縮製剤(5乃至50μg)を用いて、HuMAbマウスを腹腔内により免疫することができる。IL-15抗原の精製もしくは濃縮製剤を用いた免疫処置でも抗体が生じない場合、細胞株など、IL-15発現細胞でマウスを免疫して、免疫応答を促進することもできる。
【0069】
多様な抗原を用いて蓄積した経験では、HuMAbトランスジェニックマウスは、まず抗原を完全フロイント・アジュバントに入れて腹腔内(IP)又は皮下(SC)免疫し、その後不完全フロイントアジュバントに抗原を入れて1週置きに(最高で合計10回)腹腔内/皮下免疫処置したときに最も良く応答することが示された。免疫応答は、眼窩後方の採血で得た血漿試料で、免疫プロトコルの経過にわたって観察することができる。血漿はELISA(以下に解説するように)でスクリーニングすることができ、充分な抗体価の抗IL-15ヒト免疫グロブリンを持つマウスを融合に用いることができる。マウスは、と殺及び脾臓の摘出から3日前に抗原を静注して追加免疫することができる。
【0070】
IL-15に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作製
IL-15に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製するには、免疫後のマウスから脾細胞及びリンパ節細胞を単離し、マウス骨髄腫細胞株などの適した不死化細胞株に融合させることができる。こうして出来たハイブリドーマを次に、抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングすることができる。例えば免疫後のマウス由来の脾臓リンパ球の単個細胞懸濁液を、50% PEG(w/v)で、SP2/0-Ag8.653非分泌性マウス骨髄腫細胞 (ATCC, CRL 1580)に融合させることができる。細胞を平底の微量定量プレートに約1×105になるようにプレートし、通常の試薬の他に10%胎児クローン血清、5-10%オリゲン・ハイブリドーマ・クローニング・ファクター(アイジェン社)、及び1×HAT (シグマ社)を含有する選択培地で2週間インキュベートすることができる。ほぼ2週間後、HATをHTに取り替えた培地で細胞を培養できる。次に個々のウェルをELISAによりヒト抗IL-15モノクローナルIgM及びIgG抗体についてスクリーニングすることができる。広汎なハイブリドーマ成長が起きたら培地を通常10乃至14日後に観察できる。抗体を分泌しているハイブリドーマを再度プレートし、再度スクリーニングし、ヒトIgGについてまだ尚陽性であれば、限界希釈により少なくとも2回、抗IL-15モノクローナル抗体をサブクローニングすることができる。次に安定なサブクローンをin vitroで培養して、抗体を組織培養培地中に生じさせ、特徴付けに向けることができる。
【0071】
IL-15に対するヒトモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの作製
本発明のヒト抗体は、当業で公知のように、組換えDNA技術及び遺伝子トランスフェクション法の組合せなどを用いて、ホスト細胞トランスフェクトーマで作製することもできる (Morrison, S. (1985) Science 229:1202)。
【0072】
例えばある実施態様では、ヒト抗体遺伝子などの目的の遺伝子を、例えばWO 87/04462、WO 89/01036 及び EP 338 841 に開示されたGS遺伝子発現系又は当業で公知の他の発現系で用いられるものなどの真核性発現プラスミドなどの発現ベクタ内に連結することができる。クローンされた抗体遺伝子を持つ精製済みプラスミドを、例えばCHO細胞又はNSO細胞などの真核性ホスト細胞や、又は代替的には、植物由来細胞、真菌もしくは酵母細胞などの他の真核細胞に導入することができる。これらの遺伝子を導入するために用いる方法は、例えば電気穿孔法、リポフェクチン、リポフェクタミン又は他のものなど、当業で解説された方法でよいであろう。これらの抗体遺伝子をホスト細胞内に導入後、当該抗体を発現している細胞を同定及び選抜することができる。これらの細胞が、その後それらの発現レベルを増幅して抗体の生産率を上げることのできるトランスフェクトーマである。これらの培養上清及び/又は細胞から、組換え抗体を単離及び精製することができる。
【0073】
代替的には、これらのクローンされた抗体遺伝子を、E. coliなどの他の発現系や又は完全な生物中で発現させたり、あるいは合成により発現させることもできる。
【0074】
インタクト抗体を発現させるための部分的抗体配列の利用
抗体は、6つの重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を主に通じて標的抗原と相互作用する。そのため、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外にある配列よりも、個々の抗体間の違いが大きい。CDR配列は大半の抗体−抗原相互作用を担っているため、特定の天然発生型の抗体を由来とするCDR配列を、異なる性質を持つ異なる抗体由来のフレームワーク配列に移植した状態で含有するような発現ベクタを構築すると、特定の天然発生型抗体の性質を模倣する組換え抗体を発現させることができる(例えばRiechmann, L. et al., 1998, Nature 332:323-327; Jones, P. et al.,
1986, Nature 321:522-525; and Queen, C. et al., 1989, Proc. Natl. Acad. See.
U.S.A. 86:10029-10033を参照されたい)。このようなフレームワーク配列は生殖細胞抗体遺伝子配列を含む公開DNAデータベースから得ることができる。これらの生殖細胞配列は成熟型の抗体遺伝子配列とは異なるが、それはなぜなら、それらには、B細胞成熟の過程でV(D)J接合により形成される、完全にアセンブルされた可変遺伝子が含まれていないからである。生殖細胞遺伝子配列はまた、可変領域全体にわたって、高親和二次レパートリー抗体の配列とも、個々のレベルで均一に異なる。例えば、体細胞変異は、フレームワーク領域のアミノ末端部分では比較的に頻度が低い。例えば、体細胞変異は、フレームワーク領域1のアミノ末端部分及びフレームワーク領域4のカルボキシ末端部分では比較的に頻度が低い。さらに、数多くの体細胞変異は、抗体の結合特性に大きく影響するものではない。そのために、もとの抗体のものと同様な結合特性を有するインタクト組換え抗体を作り直す際に、特定の抗体のDNA配列全体を得る必要はない(1999年3月12日出願のPCT/US99/05535 を参照されたい)。典型的には、CDR領域にわたる部分的重鎖及び軽鎖配列があれば、この目的にとって充分である。この部分的配列を用いて、どの生殖細胞可変遺伝子及びジョイニング遺伝子セグメントが、組換え後の抗体可変遺伝子に寄与したかを決定する。次にこの生殖細胞配列を用いて、可変領域の欠けている部分を充填する。重鎖及び軽鎖リーダ配列はタンパク質成熟の過程で切断され、最終的な抗体の特性には寄与しない。欠けている配列を追加するためには、クローンされたcDNA配列を、ライゲーション又はPCR増幅法により、合成オリゴヌクレオチドに組み合わせることができる。代替的には、可変領域全体を一組の短い、重複のあるオリゴヌクレオチドとして合成し、PCR増幅法で組み合わせて、完全に人工的な可変領域クローンを作製することもできる。このプロセスは、特定の制限部位を削除又は含有させたり、あるいは特定のコドンを最適化するなどのいくつかの利点を有する。
【0075】
ハイブリドーマからの重鎖及び軽鎖転写産物のヌクレオチド配列を用いて、重複組の合成オリゴヌクレオチドをデザインし、天然配列と同一のアミノ酸コーディング能を持つ合成V配列を作製する。この合成重鎖及びカッパ鎖配列は3つの方法で天然配列と異なってもよい:一続きの反復ヌクレオチド塩基に中断を加えてオリゴヌクレオチド合成及びPCR増幅がし易いようにする;最適な翻訳開始部位をコザックの規則に従い導入する(Kozak, 1991, J. Biol. Chem. 266L19867019870);そしてHindIII部位をこの翻訳開始部位の上流に操作する。
【0076】
重鎖及び軽鎖可変領域の両方について、最適化されたコーディング鎖配列及び対応する非コーディング鎖配列を、この対応する非コーディングオリゴヌクレオチドのほぼ中間点で30乃至50ヌクレオチドに分割する。従って各鎖毎に、オリゴヌクレオチドを、150乃至400個のヌクレオチドのセグメントにわたる重複する二本鎖の組に組み立てることができる。次にこのプールをテンプレートとして用いて、150乃至400個のヌクレオチドから成るPCR増幅産物を作製する。典型的には、一個の可変領域オリゴヌクレオチドの組を2つのプールに分割し、これらのプールを別々に増幅して2つの重複するPCR産物を作製することになるであろう。次にこれらの重複する産物をPCR増幅で組み合わせて完全な可変領域を形成する。また、重鎖又は軽鎖定常領域(カッパ軽鎖のBbsI部位、又はγ重鎖のAgeI部位を含む)の重複するフラグメントをPCR増幅に含めることが、発現ベクタコンストラクト内に容易にクローンできるフラグメントを作製するには望ましいであろう。
【0077】
次に、再構築された重鎖及び軽鎖可変領域を、クローンされたプロモータ配列、リーダ配列、翻訳開始配列、リーダ配列、定常領域配列、3'側非翻訳配列、ポリアデニレーション配列、及び転写終了配列に組み合わせて、発現ベクタコンストラクトを形成する。重鎖及び軽鎖発現コンストラクトを単一のベクタ内で組み合わせることも、同時トランスフェクトすることも、順にトランスフェクトすることも、あるいはホスト細胞内に別々にトランスフェクトしてからこのホスト細胞を融合して、両方の鎖を発現するホスト細胞を形成することもできる。
【0078】
ヒトIgGκのための発現ベクタの構築に用いるプラスミドを以下に解説する(実施例1)。当該プラスミドは、PCR増幅後のV重鎖及びVカッパ軽鎖cDNA配列を用いると完全重鎖及び軽鎖最小遺伝子を再構築できるように構築された。これらのプラスミドは、完全ヒトIgG1κ又はIgG4κ抗体を発現させるために用いることができる。本発明の完全ヒト及びキメラ抗体には、さらにIgG2、IgG3、IgE、IgA、IgM、及びIgD抗体も含まれる。同様なプラスミドは、他の重鎖アイソタイプを発現させたり、又は、ラムダ軽鎖を含む抗体を発現させるためにも、構築することができる。
【0079】
このように、本発明の別の局面では、本発明のヒト抗IL-15抗体、146B7、147H5、404A8及び404E4、の構造上の特徴を用いて、IL-15に結合するなどの本発明の抗体の少なくとも一つの機能的特性を維持した、構造上関連するヒト抗IL-15抗体を作製する。より具体的には、146B7、147H5、404A8及び404E4の一つ以上のCDR領域を、既知のヒトフレームワーク領域及びCDRに組換えにより組み合わせることで、更なる、組換え操作された、本発明のヒト抗IL-15抗体を作製することができる。
【0080】
従って、別の実施態様では、本発明は:
(1)ヒト重鎖フレームワーク領域及びヒト重鎖CDRであって、前記ヒト重鎖CDRのうちの少なくとも一つが、図2に示された(又はSEQ ID NO: 2の対応アミノ酸残基)CDRのアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、ヒト重鎖フレームワーク領域及びヒト重鎖CDRと;(2)ヒト軽鎖フレームワーク領域及びヒト軽鎖CDRであって、前記ヒト重鎖CDRのうちの少なくとも一つが、図3に示された(又はSEQ ID NO: 4のアミノ酸残基に相当する)CDRのアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、ヒト軽鎖フレームワーク領域及びヒト軽鎖CDRと、を含む抗体を調製するステップ
を含み、
但し前記抗体がIL-15への結合能を維持している、抗IL-15抗体を調製する方法を提供するものである。
【0081】
当該抗体のIL-15への結合能は、実施例に記載したものなど、標準的な結合検定法(例えばELISA)を用いて判定することができる。
【0082】
抗体の重鎖及び軽鎖CDR3ドメインは特に重要な役割を、抗原に対する抗体の結合特異性/親和性において果たすことが当業で公知であるため、上述のように調製された本発明の組換え抗体は、好ましくは、146B7、147H5、404A8及び404E4の重鎖及び軽鎖CDR3を含むとよい。本抗体にさらに146B7、147H5、404A8及び404E4のCDR2を含めることもできる。本抗体にはさらに146B7、147H5、404A8及び404E4のCDR1を含めることもできる。本抗体にはさらに、前記CDRのいかなる組合せをも含めることができる。
【0083】
従って、別の局面では、さらに本発明は、(1)ヒト重鎖フレームワーク領域、ヒト重鎖CDR1領域、ヒト重鎖CDR2領域、及びヒト重鎖CDR3領域であって、但し前記ヒト重鎖CDR3領域が146B7、147H5、404A8及び404E4のCDR3、例えば図2に示す(又はSEQ ID NO: 2の対応アミノ酸残基)146B7のヒト重鎖CDR領域、から成る群より選択される、ヒト重鎖フレームワーク領域、ヒト重鎖CDR1領域、ヒト重鎖CDR2領域、及びヒト重鎖CDR3領域と、(2)ヒト軽鎖フレームワーク領域、ヒト軽鎖CDR1領域、ヒト軽鎖CDR2領域、及びヒト軽鎖CDR3領域であって、前記ヒト軽鎖CDR3領域が146B7、147H5、404A8及び404E4のCDR3、例えば図3に示す(又はSEQ ID NO: 4の対応アミノ酸残基)146B7のヒト軽鎖CDR領域、から成る群より選択される、ヒト軽鎖フレームワーク領域、ヒト軽鎖CDR1領域、ヒト軽鎖CDR2領域、及びヒト軽鎖CDR3領域と、を含む抗IL-15抗体、であって、前記抗体がIL-15に結合する、抗IL-15抗体、を提供するものである。さらに本抗体に、146B7、147H5、404A8及び404E4の重鎖CDR2及び/又は軽鎖CDR2を含めてもよい。さらに本抗体に、146B7、147H5、404A8及び404E4の重鎖CDR1及び/又は軽鎖CDR1を含めてもよい。
【0084】
上述の操作された抗体のCDR1、2、及び/又は3領域に、ここに開示した146B7、147H5、404A8及び404E4のそれと全く同じアミノ酸配列を含めることができる。しかしながら、当業者であれば、本抗体のIL-15への結合能が事実上保持されれば、146B7、147H5、404A8及び404E4通りのCDR配列から何らかの逸脱(例えば保存的配列改変)があってもよいことは理解されよう。従って、別の実施態様では、操作後の抗体は、146B7、147H5、404A8及び404E4の一つ以上のCDRに対し、例えば90%、95%、98% 又は99.5% 同一な一つ以上のCDRから成ってもよい。
【0085】
IL-15へ単に結合することだけでなく、上述したものなどの操作された抗体を、本発明の抗体の他の機能上の特徴:例えば:
(1)ヒトIL-15への結合、及び、IL-15誘導性炎症誘発作用の阻害;
(2)IL-15誘導性TNFα産生又はT細胞増殖の阻害;
(3)組換えヒトIL-15を分析物とし、当該抗体をリガンドとして用いたBIACORE 3000装置による表面プラスモン共鳴(SPR)技術で判定した場合、ほぼ10-7M未満の解離平衡定数(KD)でのヒトIL-15への結合;
(4)ヒトIL-15のβ及び/又はγ鎖相互作用ドメイン上に位置するエピトープへの結合;
(5)ヒトIL-15のAsp8の、ヒトIL-15受容体のβユニットへの結合、及び/又は、ヒトIL-15のGln108の、ヒトIL-15受容体のγユニットへの結合、に対する干渉:
(6)受容体に結合したヒトIL-15への結合;
(7)ヒトIL-15への結合、及びヒトIL-15の錯角化症誘導能の阻害;
(8)ヒトIL-15への結合、及びヒトIL-15の表皮肥厚誘導能の阻害;
(9)ヒトIL-15への結合、及びヒトIL-15のケラチノサイト増殖誘導能の阻害;及び/又は
(10)ヒトIL-15への結合、及びヒトIL-15の活性化白血球遊走誘導能の阻害;
などの保持について、選抜してもよい。
【0086】
IL-15に対するヒトモノクローナル抗体の特徴付け
本発明のヒトモノクローナル抗体は、多種の公知の技術を用いてIL-15への結合について特徴付けることができる。一般的には、当該抗体をELISAでまず特徴付ける。簡単に説明すると、微量定量プレートを、PBSに入れた精製IL-15で被覆した後、PBSで希釈したウシ血清アルブミン(BSA)などの無関係のタンパク質で遮断することができる。IL-15免疫マウスから採った血漿の希釈液を各ウェルに加え、37℃で1乃至2時間、インキュベートする。このプレートをPBS/Tween 20で洗浄した後、アルカリホスファターゼに結合させたヤギ抗ヒトIgG Fc特異ポリクローナル試薬と一緒に37℃で1時間、インキュベートする。洗浄後、プレートをABTS基質で展開させ、405のODで分析する。好ましくは、最も高い抗体価を生じるマウスを融合に用いるとよい。
【0087】
上述のELISA検定は、抗体、ひいてはIL-15免疫原との陽性反応性を示す抗体を産生するハイブリドーマを探すスクリーニングに用いることができる。こうして、IL-15に、好ましくは高い親和性で、結合するハイブリドーマをサブクローンし、さらに特徴付けることもできる。次に親細胞との反応性を維持した(ELISAにより)各ハイブリドーマから採った一個のクローンを選択し、細胞バンクを作製し、抗体精製に向けることができる。
【0088】
ヒト抗IL-15抗体を精製するには、選抜されたハイブリドーマを、ローラ瓶、2リットル入りスピナー・フラスコ、又は他の培養系で成長させることができる。上清を濾過し、濃縮してからプロテインA−セファロース(ニュージャージー州ピスカタウェイ、ファルマシア社)によるアフィニティ・クロマトグラフィにかけて当該タンパク質を精製することができる。緩衝液をPBSに交換し、1.43の吸光係数を用いたOD280により、又は好ましくはネフェロメータ分析により、濃度を判定できる。IgGはゲル電気泳動法及び抗原特異的方法で検査することができる。
【0089】
選抜されたヒト抗IL-15モノクローナル抗体が固有のエピトープに結合するかを調べるためには、各抗体を市販の試薬(イリノイ州ロックフォード、ピアース社)を用いてビオチン化することができる。ビオチン化MAbの結合は、ストレプトアビジン標識したプローブで検出できる。精製された抗体のアイソタイプを調べるには、公知の技術を用いてアイソタイプELISAを行うことができる。例えば、微量定量プレートのウェルを10μg/ml の抗ヒトIg で一晩かけて4℃で被覆できる。5% BSAで遮断した後、プレートを10μg/mlのモノクローナル抗体又は精製済みのアイソタイプ・コントロールに、周囲温度で2時間、反応させる。次にこのウェルをヒトIgGl 又は他のヒトアイソタイプ特異結合プローブに反応させることができる。プレートを展開させ、上述したように分析する。
【0090】
IL-15発現生存細胞へのモノクローナル抗体の結合を検査するためには、フローサイトメトリを利用できる。簡単に説明すると、膜結合IL-15を発現する細胞株及び/又はヒトPBMC(標準的な成長条件下で成長させたもの)を、0.1% BSA及び0.01% NaN3を含有する多様な濃度のモノクローナル抗体PBS溶液に4℃で1時間、混合する。洗浄後、細胞を、フルオレセインで標識された抗ヒトIgG抗体に、一次抗体染色と同じ条件下で反応させる。これら試料を、FACScan装置により、単個細胞を開口させる光及び側光散乱特性を用いて分析することができ、標識された抗体の結合を判定する。蛍光顕微鏡法を用いた代替的な検定法を(このフローサイトメトリ検定法に加えて又は代わりに)用いてもよい。細胞は上述した通りに染色し、蛍光顕微鏡法で調べることができる。この方法では、個々の細胞の観察が可能であるが、抗原の密度によっては感受性が劣るかも知れない。
【0091】
さらに抗IL-15ヒトIgGは、IL-15抗原との反応性についてウェスタン・ブロット法でもテストすることができる。簡単に説明すると、IL-15発現細胞からの細胞抽出物を調製し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法にかけることができる。電気泳動後、分離した抗原をニトロセルロース・メンブレンに写し取り、20%マウス血清で遮断し、テスト対象のモノクローナル抗体でプローブする。ヒトIgGの結合は、抗ヒトIgGアルカリホスファターゼを用いて検出し、BCIP/NBT基質錠剤(ミズーリ州セントルイス、シグマ・ケミカルズ社)で展開させることができる。
【0092】
II. ヒトモノクローナル抗IL-15抗体を産生する非ヒトトランスジェニック及びトランスクロモゾマル動物の作製
さらに別の局面では、本発明は、IL-15に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体を発現できるトランスジェニックもしくはトランスクロモゾマルマウスなどの非ヒトトランスジェニックもしくはトランスクロモゾマル動物を提供するものである。ある具体的な実施態様では、本発明は、IL-15抗原及び/又はIL-15発現細胞で免疫したときにマウスがヒト抗IL-15抗体を産生するように、ヒト重鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニックもしくはトランスクロモゾマル・マウスを提供する。前記ヒト重鎖導入遺伝子は、ここで詳細に解説し、例示する通りのHuMAbマウスなど、トランスジェニックの場合と同様に、マウスの染色体DNAに組み込ませることができる。反対に、前記ヒト重鎖導入遺伝子を、WO 02/43478 (2002年6月6日公開)に記載されたようなトランスクロモゾマル(例えばKM)マウスの場合と同様に、染色体外に維持することもできる。このようなトランスジェニック及びトランスクロモゾマル・マウスは、V-D-J組換え及びアイソタイプ・スイッチングを起こすことにより、IL-15に対して複数のアイソタイプ(例えばIgG、IgA 及び/又は IgE)のヒトモノクローナル抗体を産生できる。アイソタイプ・スイッチングは、例えば古典的又は非古典的なアイソタイプ・スイッチングなどで起きるものでもよい。
【0093】
外来の抗原刺激に対して異種抗体レパートリーで応答する非ヒトトランスジェニックもしくはトランスクロモゾマル動物をデザインするには、トランスジェニック動物内に含まれた異種免疫グロブリン導入遺伝子がB細胞発生の経路全体にわたって正確に機能する必要がある。これには、例えば、異種重鎖導入遺伝子のアイソタイプ・スイッチングが含まれる。従って、導入遺伝子は、抗体のアイソタイプ・スイッチングと、以下:(1)高レベルかつ細胞種特異的な発現、(2)機能遺伝子の再編成、(3)アレル排除の活性化及びアレル排除への応答、(4)充分な一次レパートリーの発現、(5)シグナル伝達、(6)体細胞の超変異、及び(7)免疫応答の際の導入遺伝子抗体遺伝子座の優性、のうちの一つ以上とが生じるように、構築される。
【0094】
前述の基準の全てを満たす必要はない。例えば、トランスジェニック動物の内因性免疫グロブリン遺伝子座を機能的に破壊した実施態様では、この導入遺伝子はアレル排除を活性化する必要はない。さらに、導入遺伝子が機能的に再編成された重鎖及び/又は軽鎖免疫グロブリン遺伝子を含む実施態様では、機能遺伝子の再編成という二番目の基準は、少なくとも導入遺伝子が既に再編成されている限りにおいて、不要である。分子免疫学の背景については、Fundamental Immunology, 2nd edition (1989), Paul William E., ed.
Raven Press, N.Y.を参照されたい。
【0095】
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体を作製するために用いる非ヒトトランスジェニックもしくはトランスクロモゾマル動物は、再編成された、再編成のない、又は再編成された及び再編成のないものの組合せの異種免疫グロブリン重鎖及び軽鎖導入遺伝子を、このトランスジェニック動物の生殖細胞に含有する。重鎖導入遺伝子のそれぞれは少なくとも一つのCH遺伝子を含む。加えて、この重鎖導入遺伝子が、このトランスジェニック動物のB細胞中で、複数のCH遺伝子をコードする異種導入遺伝子のアイソタイプ・スイッチングを支援できる機能的アイソタイプ・スイッチ配列を含有してもよい。このようなスイッチ配列は、導入遺伝子CH遺伝子の源として役立てた種由来の生殖細胞免疫グロブリン遺伝子座に天然で存在するものであってもよく、あるいはこのようなスイッチ配列は、導入遺伝子コンストラクトを受け取る側の種(トランスジェニック動物)にあるものを由来としてもよい。例えば、トランスジェニックマウスを作製するために用いるヒト導入遺伝子コンストラクトは、マウス重鎖遺伝子座に天然で存在するものと類似のスイッチ配列が導入されている場合には、より高頻度でアイソタイプ・スイッチング事象を起こすと思われる。これはおそらく、マウススイッチ・リコンビナーゼ酵素系で機能するにはこのようなマウススイッチ配列は最適であるが、ヒトスイッチ配列はそうでないからであろう。スイッチ配列は従来のクローニング法で単離及びクローンしてもよく、又は、免疫グロブリンスイッチ領域配列に関して公開された配列情報に基づいてデザインされた重複合成オリゴヌクレオチドからde novo合成してもよい (Mills
et al., Nucl. Acids Res. 15:7305-7316 (1991); Sideras et al., Intl. Immunol.
1:631-642 (1989))。前述のトランスジェニック動物のそれぞれの場合、機能的に再編成された異種重鎖及び軽鎖免疫グロブリン導入遺伝子が、このトランスジェニック動物のB細胞の大部分で見られる(少なくとも10パーセント)。
【0096】
本発明のトランスジェニック動物を作製するために用いる導入遺伝子は、少なくとも一つの可変遺伝子セグメント、一つの多様性遺伝子セグメント、一つのジョイニング遺伝子セグメント、及び少なくとも一つの定常領域遺伝子セグメント、をコードするDNAを含む重鎖導入遺伝子を含む。免疫グロブリン軽鎖導入遺伝子は、少なくとも一つの可変遺伝子セグメント、一つのジョイニング遺伝子セグメント、及び少なくとも一つの定常領域遺伝子セグメント、をコードするDNAを含む。前記軽鎖及び重鎖遺伝子セグメントをコードする遺伝子セグメントは、当該の非ヒトトランスジェニック動物を構成しない種を由来とする免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子セグメントをコードするDNAを由来とするか、又は、このようなDNAに相当するという点で、この非ヒトトランスジェニック動物にとって異種である。本発明の一局面では、これら個々の遺伝子セグメントが再編成されないように、即ち、機能的免疫グロブリン軽鎖又は重鎖をコードするよう、再編成されないように、導入遺伝子を構築する。このような再編成のない導入遺伝子は、IL-15抗原に暴露したときに、V、D、及びJ遺伝子セグメントの組換え(機能的再編成)を支援し、好ましくは、本非ヒトトランスジェニック動物内のD領域遺伝子セグメントの全部又は一部が再編成後の免疫グロブリン重鎖へ取り込まれることを支援するとよい。
【0097】
代替的な実施態様では、当該導入遺伝子は再編成のない「最小遺伝子座」を含むものである。このような導入遺伝子は典型的に、C、D、及びJセグメントの大部分や、V遺伝子セグメントのサブセットを含む。このような導入遺伝子コンストラクトにおいては、多様な調節配列、例えばプロモータ、エンハンサ、クラス・スイッチ領域、RNAプロセッシングの際のスプライス−ドナー及びスプライス−アクセプタ配列、組換えシグナル等、は、当該の異種DNA由来の対応する配列を含む。このような調節配列は、この導入遺伝子に、本発明で用いられる非ヒト動物と同じ種から、又は、関連する種から、導入してよい。例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子セグメントを導入遺伝子内でげっ歯類免疫グロブリンエンハンサ配列に組み合わせて、トランスジェニックマウスでの利用に向けてもよい。代替的には、哺乳動物のゲノムに天然で存在することが公知の機能的DNA配列にとって同種でないような合成調節配列を、導入遺伝子に組み込んでもよい。合成調節配列は、例えばスプライス−アクセプタ部位又はプロモータ/エンハンサ・モチーフの許容可能な配列を明示したものなど、コンセンサスの規則に従ってデザインされる。例えば、最小遺伝子座は、天然で発生する生殖細胞Ig遺伝子座に比較して、必須でないDNA部分(例えば介在配列;イントロン又はその一部分)に、少なくとも一つの中間(即ち当該部分の末端ではない)の欠失を有するゲノム免疫グロブリン遺伝子座部分を含む。
【0098】
本発明のある好適な実施態様では、IL-15に対するヒト抗体を作製するために用いるトランスジェニックもしくはトランスクロモゾマル動物は、WO98/24884の実施例5、6、8、又は14に解説された軽鎖導入遺伝子を1コピー含有する動物と、WO98/24884の実施例10で解説されたJH欠失動物と交配したその仔で育種したWO98/24884の実施例12で解説された導入遺伝子(例えばpHC1又はpHC2)のコピーを少なくとも1つ、典型的には2乃至10、そして時には25乃至50又はより以上、含有する。動物は、これら3種の形質のそれぞれについてホモ接合型となるよう、交配する。このような動物は以下の遺伝子型:(WO98/24884の実施例12に解説された)ヒト重鎖の再編成のない最小遺伝子座 の一個のコピー(染色体の1ハプロイド当たり)、(WO98/24884の実施例14に解説された)再編成されたヒトK軽鎖コンストラクトの一個のコピー(染色体の1ハプロイド当たり)、及び(WO98/24884の実施例10に解説された)機能的JHセグメントの全てを除去する各内因性マウス重鎖遺伝子座での欠失、を有する。このような動物を、JHセグメントの欠失についてホモ接合型になったマウス(WO98/24884の実施例10)と交配して、JH欠失についてホモ接合型、そしてヒト重鎖及び軽鎖コンストラクトについてヘミ接合型となった仔を作る。その動物に抗原を注射して、これらの抗原に対するヒトモノクローナル抗体の作製に用いる。
【0099】
このような動物から単離されたB細胞は、ヒト重鎖及び軽鎖について単一特異的であるが、それはこれらが各遺伝子のコピーを1つしか含有しないからである。さらに、これらはヒト又はマウス重鎖についても単一特異的となるであろうが、それは、内因性マウス重鎖遺伝子コピーの両方が、WO98/24884の実施例9及び12に解説するように導入されたJH領域全般の欠失のために、機能を失っているからである。さらに、B細胞の大部分が、ヒト又はマウス軽鎖について単一特異的となるであろうが、それは、再編成されたヒトκ軽鎖遺伝子の前記単一コピーが発現することで、B細胞の大部分において、内因性マウスκ及びラムダ鎖遺伝子の再編成がアレル及びアイソタイプの上、排除されることになるからである。
【0100】
本発明で用いるトランスジェニック及びトランスクロモゾマル・マウスは、大きなレパートリー、理想的には天然マウスのそれと実質的に同様なレパートリーで、免疫グロブリン産生を示す。このように、例えば内因性Ig遺伝子が不活化されている実施態様では、総免疫グロブリンレベルは、血清の約0.1 から10 mg/ml、好ましくは0.5 から5 mg/mlの範囲、理想的には少なくとも約1.0
mg/mlであろう。IgMからIgGへのスイッチを行うことのできる導入遺伝子がトランスジェニックマウスに導入されている場合、成体マウスの血清IgG対IgMの比は好ましくは約10:1である。IgG対IgMのこの比は幼若マウスではずっと低くなるであろう。おおざっぱに言って、当該脾臓及びリンパ節B細胞の約10%を越えるもの、好ましくは40乃至80%が、ヒトIgGタンパク質のみを発現する。
【0101】
前記レパートリーは、理想的には、天然マウスが示すものに、通常は少なくとも約10%、好ましくは25乃至50%又はそれ以上、近いとよいであろう。概して、少なくとも約1000種の異なる免疫グロブリン(理想的にはIgG)、好ましくは104乃至106又はそれ以上の種類が、主にマウスゲノムに導入された様々なV、J及びD領域の数に応じて産生されるとよいであろう。これらの免疫グロブリンは、典型的には、例えばブドウ球菌プロテインAなど、抗原性の高いタンパク質の約半分以上を認識するであろう。典型的には、前記免疫グロブリンは、所定の抗原に対し、例えば10-8M、10-9M又は10-10M未満又はそれ未満など、10-7M未満の親和性(KD)を示すであろう。いくつかの実施態様では、所定の抗原種に対する抗体応答で現れるV遺伝子の選択幅を制限するために、予め決められたレパートリーを持つマウスを作製することが好ましいであろう。予め決められたレパートリーを有する重鎖導入遺伝子には、ヒトにおいて所定の抗原種に対する抗体応答で優先的に用いられるヒトVH遺伝子などを含めてもよい。代替的には、いくつかのVH遺伝子を、多様な理由(例えば所定の抗原に対して親和性の高いV領域をコードする可能性が低い;体細胞変異及び親和性尖鋭化を起こす傾向が小さい;又は、特定のヒトに対して免疫原性である、など)のために、規定のレパートリーから除外してもよい。このように、多様な重鎖又は軽鎖遺伝子セグメントを含有する導入遺伝子が再編成される前に、このような遺伝子セグメントを、当該トランスジェニック動物以外の生物種由来であるとして、例えばハイブリダイゼーション又はDNA配列決定法などにより、容易に特定できよう。
【0102】
上述したトランスジェニック及びトランスクロモゾマル・マウスは、前述したように、例えばIL-15抗原の精製もしくは濃縮製剤、及び/又は、IL-15発現細胞で免疫することができる。選択的には、当該トランスジェニック・マウスを、ヒトIL-15をコードするDNAで免疫することもできる。このマウスが産生するB細胞は、導入遺伝子内スイッチ組換え(cisスイッチング)を通じてクラス・スイッチングを起こして、IL-15と反応性の免疫グロブリンを発現するであろう。この免疫グロブリンはヒト抗体(「ヒト配列抗体」とも呼ぶ)でもよく、そのときその重鎖及び軽鎖ポリペプチドは、ヒト導入遺伝子配列にコードされていてもよいが、前記ヒト導入遺伝子配列は、体細胞変異及びV領域組換えジョイント由来の配列や、生殖細胞にコードされた配列を含んでもよい。これらのヒト抗体は、ヒトVL又はVH遺伝子セグメント及びヒトJL又はDH及びJHセグメントにコードされたポリペプチド配列と実質的に同一であると言うことができ、ただし他の非生殖細胞配列も、体細胞変異及び示差的なV-J 及びV-D-J組換えジョイントの結果として存在してもよい。各抗体鎖の可変領域は、典型的に、ヒト生殖細胞V、J遺伝子セグメントに、そして重鎖の場合はD遺伝子セグメントに、少なくとも80パーセント、コードされている。しばしば可変領域の少なくとも85パーセントが、導入遺伝子上に存在するヒト生殖細胞配列にコードされている。可変領域配列のうちのしばしば90又は95パーセント又はそれ以上が、導入遺伝子上に存在するヒト生殖細胞配列にコードされている。しかしながら、体細胞変異並びにVJ及びVDJジョイニングでは非生殖細胞配列が導入されるために、当該ヒト配列抗体は、しばしば、このマウスの生殖細胞中のヒト導入遺伝子に見られるようなヒトV、D又はJ遺伝子セグメントにはコードされていない何らかの可変領域配列を(そして頻度は劣るが定常領域配列を)有するであろう。典型的には、このような非生殖細胞配列(又は個々のヌクレオチド位置)は、CDR中か、又はCDR近傍、あるいは体細胞変異が集中的に起きることが知られている領域に集まるであろう。
【0103】
所定の抗原に結合するヒト抗体は、例えばヒト配列γ鎖(例えばγ1、γ2a、γ2B、又はγ3)及びヒト配列軽鎖(例えばカッパ)を含むヒト抗体が生じるようなアイソタイプ・スイッチングにより生じさせることができる。このようなアイソタイプ・スイッチングの起きたヒト抗体は、親和性成熟及び抗原によるB細胞の選択の結果として、特に二次(又は後続)抗原刺激の結果として、一箇所以上の体細胞変異を、典型的には可変領域、そしてしばしばCDRの内部か、又はCDRから約10残基以内に、しばしば含有する。これらの高親和性ヒト抗体は、例えば10-8M、10-9M又は10-10Mもしくはそれ未満など、10-7M未満の結合親和性(KD)を有するであろう。
【0104】
本発明の別の局面は、ここで解説したトランスジェニック又はトランスクロモゾマル・マウス由来のB細胞を包含するものである。このB細胞を、高親和性(例えば10-7M未満)でIL-15に結合するヒトモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマを作製するために使用することができる。このように、別の実施態様では、本発明は、組換えヒトIL-15を分析物とし、当該抗体をヒトIL-15への結合のリガンドとして用いて、BIACORE 3000装置により表面プラスモン共鳴法(SPR)で判定したときの親和性(KD)が、例えば10-8M、10-9M又は10-10Mもしくはそれ未満など、10-7M未満のヒト抗体を産生するハイブリドーマを提供し、このとき当該抗体は:
(1)ヒトVL遺伝子セグメント及びヒトJLセグメントにコードされたポリペプチド配列に実質的に同一なポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域、及び(2)ヒトCL遺伝子セグメントにコードされたポリペプチド配列に実質的に同一なポリペプチド配列を有する軽鎖定常領域、から成るヒト配列軽鎖と;
(1)ヒトVH遺伝子セグメント、選択的にD領域、及びヒトJHセグメントにコードされたポリペプチド配列に実質的に同一なポリペプチド配列を有する重鎖可変領域、及び(2)ヒトCH遺伝子セグメントにコードされたポリペプチド配列に実質的に同一なポリペプチド配列を有する定常領域、から成るヒト配列重鎖と
を含む。
【0105】
IL-15に対する高親和ヒトモノクローナル抗体の開発は、組み込まれたヒト免疫グロブリン導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニックマウス中で、ヒト可変領域遺伝子セグメントのレパートリーを拡大する方法により容易になるが、当該方法は、前記組み込まれたヒト免疫グロブリン導入遺伝子には存在しないV領域遺伝子セグメントを含むV遺伝子導入遺伝子を前記ゲノムに導入するステップを含む。しばしば前記V領域導入遺伝子は、ヒトゲノムに天然で存在するような、又は、組換え法で一緒に別にスプライスされるような、ヒトVH又はVL(VK)遺伝子セグメント・アレイの一部分を含む酵母人工染色体であり、この酵母人工染色体の含有するV遺伝子セグメントは順序が狂っていても、又は省略されていてもよい。しばしば少なくとも5つ以上の機能的V遺伝子セグメントが前記YAC上に含有されている。このバリエーションでは、前記Vレパートリー拡大法で生じるトランスジェニックマウスを作製することが可能であり、このとき当該マウスは、V領域導入遺伝子上に存在するV領域遺伝子セグメントにコードされた可変領域配列と、ヒトIg導入遺伝子にコードされたC領域とを含む免疫グロブリン鎖を発現する。Vレパートリー拡大法により、少なくとも5個の異なるV遺伝子を有するトランスジェニックマウスを作製でき、また少なくとも約24個又はそれ以上のV遺伝子を含有するマウスも作製できる。いくつかのV遺伝子セグメントは非機能的であってもよい(例えば偽遺伝子等)。これらのセグメントを維持してもよいが、あるいは、必要に応じて当業者に可能な組換え法により選択的に欠失させてもよい。
【0106】
マウス生殖細胞を操作して、J及びC遺伝子セグメントを含有するヒトIg導入遺伝子には実質的に存在しない拡大されたVセグメント・レパートリーを有する機能的YACを含有させたら、拡大されたVセグメント・レパートリーを有する機能的YACを、異なるヒトIg導入遺伝子を有するマウス生殖細胞に交雑するバックグラウンドを含め、他の遺伝的バックグラウンドにこの形質を伝播及び交雑することができる。拡大されたVセグメント・レパートリーを有する複数の機能的YACを、1つのヒトIg導入遺伝子(又は複数のヒトIg導入遺伝子)と一緒に働かせるために生殖細胞に交雑してよい。ここではYAC導入遺伝子と言及するが、ゲノムに組み込んだときのこのような導入遺伝子は、酵母で自律的複製を行うのに必要な配列など、酵母配列を実質的に欠いていてもよい。このような配列は、選択に応じて、酵母での複製がもはや必要でなくなってから(即ちマウスES細胞又はマウス前接合子への導入前に)遺伝子操作(例えば制限消化及びパルス界ゲル電気泳動法又は他の適した方法など)により取り除いてもよい。ヒト配列免疫グロブリン発現の形質を伝播させる方法には、ヒトIg導入遺伝子を有し、そして選択的には、拡大されたVセグメント・レパートリーを有する機能的YACもさらに有するようなトランスジェニックマウスを育種する方法がある。VH及びVL遺伝子セグメントの両方がYAC上に存在してもよい。当該トランスジェニックマウスは、ヒトIg導入遺伝子、及び/又は、他のヒトリンパ球たんぱくをコードする導入遺伝子を含め、他のヒト導入遺伝子を持つバックグラウンドを含む、開業医が希望するいかなるバックグラウンドに交雑してもよい。さらに本発明は、拡大されたV領域レパートリーYAC導入遺伝子を有するトランスジェニックマウスにより産生される高親和ヒト配列免疫グロブリンを提供するものである。前の記載では本発明のトランスジェニック動物の好適な実施態様を解説したが、以下、4つのカテゴリーに分類された他の実施態様も考察されている:
I.再編成のない重鎖及び再編成される軽鎖免疫グロブリン導入遺伝子を含有するトランスジェニック動物;
II.再編成のない重鎖及び再編成のない軽鎖免疫グロブリン導入遺伝子を含有するトランスジェニック動物;
III.再編成される重鎖及び再編成のない軽鎖免疫グロブリン導入遺伝子を含有するトランスジェニック動物;及び
IV. 再編成される重鎖及び再編成される軽鎖免疫グロブリン導入遺伝子を含有するトランスジェニック動物。
【0107】
これらのカテゴリーのトランスジェニック動物のうち、好適な優先度は以下、II>I>III>IV(この場合の内因性の軽鎖遺伝子(又は少なくともK遺伝子)は、相同組換え(又は他の方法)によりノックアウトされている)、及びI>II>III>IV
(この場合の内因性軽鎖遺伝子はノックアウトされておらず、アレル排除により劣性とならなければならない)の通りである。
【0108】
III. 抗体結合体/イムノトキシン
別の局面では、本発明は、細胞毒、薬物(例えば免疫抑制剤)又は放射性同位元素などの治療部分に結合させたヒト抗IL-15モノクローナル抗体を特徴とする。細胞毒に結合させた場合、これらの抗体結合体は「イムノトキシン」と呼ばれる。細胞毒又は細胞傷害性薬剤には、細胞にとって有害(例えば致死させる)なあらゆる物質が含まれる。
例にはタキソール、シトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、ミトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びプロマイシン並びにこれらの類似体又は同族体、がある。治療的薬剤には、限定はしないが、抗代謝産物(例えばメトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオテパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU) 及びロムスチン (CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ミトマイシンC、及びcis-ジクロロジアミンプラチナム(II)
(DDP) シスプラチン)、アントラサイクリン (例えばダウノルビシン(以前のダウノマイシン)、及びドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC))、及び抗有糸分裂剤(例えばビンクリスチン及びビンブラスチン)、がある。本発明の抗体を、放射性ヨウ素などの放射性同位元素に結合させて、癌などのIL-15関連異常を治療するための細胞傷害性放射性医薬品を作製することもできる。
【0109】
本発明の抗体結合体を用いて所定の生物学的応答を修飾することができる。前記治療的部分は、古典的な化学療法薬に限定されるものと、捉えられてはならない。例えば当該の薬物成分は、所望の生物活性を有するタンパク質又はポリペプチドであってもよい。このようなタンパク質には、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス・エキソトキシン、又はジフテリア毒素などの酵素活性のある毒素又はその活性フラグメント;腫瘍壊死因子又はインターフェロン-γなどのタンパク質;又は、例えばリンホカイン、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)、又は他のサイトカイン又は成長因子などの生物学的応答修飾物質、が含まれよう。
【0110】
このような治療成分を抗体に結合させる技術は公知であり、例えばArnon et al., "Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of
Drugs In Cancer Therapy", in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,
Reisfeld et al. (eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstrom et al.,
"Antibodies For Drug Delivery", in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.),
Robinson et al. (eds.), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe,
"Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review",
in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et
al. (eds.), pp. 475-506 (1985); "Analysis, Results, And Future Prospective
Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy", in
Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.),
pp. 303-16 (Academic Press 1985), 及びThorpe et al., "The Preparation And Cytotoxic Properties Of
Antibody-Toxin Conjugates", Immunol. Rev., 62:119-58 (1982)を参照されたい。
【0111】
IV. 医薬組成物
別の局面では、本発明は、薬学的に許容可能な担体と一緒に調合された、本発明のヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を1つ又は組み合わせで含有する、医薬組成物などの組成物を提供するものである。ある好適な実施態様では、本組成物は、複数(例えば二種以上)の単離された本発明のヒト抗体の組合せを含有する。好ましくは、本組成物の抗体の各々が、IL-15の異なる、予め選択されたエピトープに結合するとよい。
【0112】
さらに本発明の医薬組成物を併用療法で投与することもでき、即ち他の薬剤と組み合わせることができる。例えばこの併用療法には、本発明の医薬組成物と、例えば抗炎症薬、DMARDs (疾患改変抗リウマチ薬)、免疫抑制剤、化学療法薬及び乾癬薬、などの少なくとも一種以上の付加的治療薬とを含めることができる。本発明の医薬組成物は、さらに、放射線療法と併用投与することもできる。CD4特異抗体及びIL-2特異抗体などの他の抗体との同時投与も本発明の包含するところである。CD4特異抗体又はIL-2特異抗体とのこのような組合せは、特に自己免疫疾患及び移植片拒絶などの治療に特に有用であると考えられる。
【0113】
ここで用いる「薬学的に許容可能な担体」には、生理学的に適合性あるあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗カビ剤、等張剤及び吸収遅延剤等が含まれる。好ましくは、当該の担体が静脈内、筋肉内、皮下、腸管外、脊髄もしくは表皮投与(例えば注射又は輸注により)に適しているとよい。投与経路によっては、活性化合物、即ち抗体、二重特異的及び多重特異的分子を、当該化合物を不活化しかねない酸及び他の天然条件の作用から当該化合物を保護する物質で被覆してもよい。
【0114】
「薬学的に許容可能な塩」とは、親化合物の所望の生物活性を保持しつつも、望ましくない毒性作用を与えないような塩を言う(例えばBerge, S.M., et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照されたい)。このような塩の例には、酸添加塩及び塩基添加塩がある。酸添加塩には、非毒性の無機酸、例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン等から誘導されたものや、非毒性の有機酸、例えば脂肪族モノカルボン酸及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族の酸、脂肪族及び芳香族のスルホン酸等から誘導されたものがある。塩基添加塩には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属から誘導されたものや、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン等の非毒性の有機アミンから誘導されたものがある。
【0115】
本発明の組成物は、当業で公知の多種の方法で投与することができる。当業者であれば理解されるように、投与の経路及び/又は形態は、所望の結果に応じて様々であろう。当該活性化合物は、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロ封入送達系を含め、制御放出製剤などの急速な放出から当該化合物を保護する担体と一緒に調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸など、生分解性で生体適合性あるポリマを用いることができる。このような製剤の調製法が数多く、特許付与されており、当業者に広く公知である。
例えばSustained and Controlled Release Drug
Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New
York, 1978を参照されたい。
【0116】
特定の投与経路で本発明の化合物を投与するには、当該化合物の失活を防ぐ物質でそれを被覆するか、又は当該化合物と同時投与することが必要な場合がある。例えば本化合物を、適したリポソームなどの担体又は希釈剤に入れて対象に投与してもよい。薬学的に許容可能な希釈剤には生理食塩水及び水性の緩衝液がある。リポソームには水中油中水CGFエマルジョンや、従来のリポソームがある(Strejan et al. (1984) J. Neuroimmunol. 7:27)。
【0117】
薬学的に許容可能な担体には無菌の水溶液又は分散液並びに、無菌の注射液又は分散液の即時調製用の無菌粉末がある。このような媒質及び薬剤の、薬学的に活性な物質のための使用は当業で公知である。従来の媒質又は薬剤が当該活性化合物にとって不適合でない限り、本発明の医薬組成物中のその使用は考察されたところである。補助的な活性化合物も、本組成物中に組み込むことができる。
【0118】
治療用の組成物は典型的に無菌でなければならず、また製造及び保管条件下で安定でなければならない。本組成物は、高い薬物濃度に適した溶液、マイクロ乳液、リポソーム、又は他の秩序ある構造として調合することができる。当該の担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びこれらの適した混合物などを含有する溶媒又は分散媒であってよい。適した流動性は、例えばレシチンなどのコーティングを用いたり、分散液の場合には必要な粒子の大きさを維持したり、そして界面活性剤を使用するなどにより、維持できる。多くの場合、例えば糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、又は塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含めることが好ましいであろう。注射用組成物の吸収を長引かせるには、モノステアリン酸塩及びゼラチンなど、吸収を遅らせる薬剤を組成物中に含めることにより、可能である。
【0119】
無菌の注射用溶液は、必要量の活性化合物を適した溶媒に、必要に応じて上に列挙した成分の1つ又は組み合わせと一緒に
加えた後、滅菌マイクロ濾過を行うことにより、調製できる。分散液は一般的には、塩基性の分散媒と、上に列挙したものの中で必要な他の成分とを含有する無菌の賦形剤に当該活性化合物を加えることで、調製されている。無菌の注射用溶液の調製用の無菌粉末の場合、好適な調製法は真空乾燥及び凍結乾燥(凍結乾燥)であり、その結果、活性成分及び付加的な所望の成分の粉末が、予め殺菌濾過されたその溶液から生じる。
【0120】
投薬計画は、最適な所望の応答(例えば治療的応答)が得られるように調節される。例えば単一の巨丸剤を投与してもよく、複数に分割された用量を一定期間にわたって投与しても、又は、治療状況の緊急度を指標として用量を比率的に増減させてもよい。例えば本発明のヒト抗体を、皮下注射により1週間当たり1回又は2回、あるいは皮下注射により1ヶ月間当たり1回又は2回、投与してもよい。投与の容易さ及び投薬量の均一性のためには、非経口用組成物を単位剤形で調合することが特に有利である。ここで用いる単位剤形とは、治療しようとする対象にとって単位型の投薬量として調整された物理的に別個の単位を言う。各単位は、必要な薬品用担体との関連から所望の治療効果を生ずるよう計算された所定量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形の詳細は、(a)活性化合物の固有の特徴、及び、達成しようとする特定の治療効果、及び(b)このような活性化合物を、個体の感受性の治療に向けて配合する技術に内在する限界、によって決定され、またこれらに直接依存する。
【0121】
薬学的に許容可能な抗酸化剤の例には:(1)水溶性の抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等;(2)油溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロール、等;及び(3)金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等がある。
【0122】
治療用組成物の場合、本発明の調合物には、経口、鼻孔、局所(口腔内及び舌下を含む)、直腸、膣及び/又は非経口投与に適したものが含まれる。当該調合物は適宜、単位剤形で提供してもよく、製薬業で公知のいずれの方法で調製してもよい。一個分の剤形を作製するために担体物質と組み合わせることのできる活性成分の量は、治療しようとする対象、及び特定の投与形態に応じて様々であろう。一個分の剤形を作製するために担体物質と組み合わせることのできる活性成分の量は、一般に、治療効果を生む組成物量となるであろう。概して、100パーセントのうちで、この量は約0.001パーセント乃至約99パーセントの活性成分、好ましくは約0.005パーセント乃至約70パーセント、最も好ましくは約0.01パーセント乃至約30パーセントの範囲であろう。
【0123】
経膣投与に適した本発明の調合物には、さらに、当業で適していることが公知の担体を含有するペッサリ、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー調合物がある。本発明の組成物の局所もしくは経皮投与用の剤形には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ及び吸入剤、がある。当該の活性化合物は、薬学的に許容可能な担体や、必要に応じて何らかの保存剤、緩衝剤、又は推進剤と、無菌条件下で混合してよい。
【0124】
ここで用いる文言「非経口投与」及び「非経口的に投与する」とは、通常は注射による、腸管内及び局所投与以外の投与形態を意味し、その中には、限定はしないが、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外及び胸骨内注射及び輸注、がある。
【0125】
本発明の医薬組成物中に用いてもよい適した水性及び非水性の担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、及びこれらの適した混合物、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステル、がある。適正な流動性は、例えばレシチンなどのコーティング材料を用いたり、分散液の場合には必要な粒子の大きさを維持したり、そして界面活性剤を使用するなどにより、維持できる。
【0126】
これらの組成物には、保存剤、湿潤剤、乳濁剤及び分散剤などのアジュバントを含有させてもよい。微生物の存在を防ぐには、上述の滅菌法と、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等の多種の抗菌剤及び抗カビ剤の含有の両方を行うと、確実になろう。例えば糖類、塩化ナトリウム等の等張剤を組成物に含めることも好ましいであろう。加えて、注射用の薬形の吸収を長引かせるには、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなど、吸収を遅らせる薬剤を含めることにより、可能である。
【0127】
本発明の化合物を製薬としてヒト及び動物に投与する場合、これらを単独で与えることもできるが、又は、例えば0.001%乃至90%(より好ましくは0.005%乃至70%、例えば0.01乃至30%)の活性成分を薬学的に許容可能な担体と組み合わせて含有する医薬組成物としても、与えることができる。
【0128】
選択した投与経路に関係なく、適した水和型で用いてもよい本発明の化合物、及び/又は、本発明の医薬組成物は、当業者に公知の常法により、薬学的に許容可能な剤形に調合される。
【0129】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、特定の患者、組成物、及び投与形態にとって、患者に毒性となることなく所望の治療応答を得るために有効量の活性成分が得られるよう、変更してもよい。選択される投薬量レベルは、用いる本発明の特定の組成物又は、そのエステル、塩又はアミドの活性、投与経路、投与機関、用いる特定の化合物の排出速度、治療期間、用いる特定の組成物と併用する他の薬物、化合物及び/又は物質、治療する患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康及び以前の医療歴等、医業で公知の因子を含め、多種の薬物動態学的因子に依拠することとなろう。当業において通常の技術を有する医師又は獣医であれば、本医薬組成物の必要な有効量を容易に決定及び処方することができる。例えば、この医師又は獣医は、当該医薬組成物中に用いる本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を得るのに必要なそれより少ないレベルで開始し、この投薬量を所望の効果が得られるまで次第に増加させていってもよい。一般的には、本発明の組成物の適した一日当たりの用量は、治療効果を生むために有効な最も少ない用量である化合物量であろう。このような有効量は一般に、上で解説した因子に依拠するであろう。投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下によることが好ましく、好ましくは標的部位の近位に投与するとよい。必要に応じ、治療用組成物の有効な一日分の用量を、2回、3回、4回、5回、6回又はそれ以上の小分けした用量に分けて別々に、全日にわたって適当な間隔を置きながら、選択的には単位剤形で、投与してもよい。本発明の化合物を単独で投与することも可能であるが、本化合物を医薬調合物(組成物)として投与することが好ましい。
【0130】
治療用組成物は当業で公知の医療器具を用いて投与できる。例えばある好適な実施態様では、本発明の治療用組成物を、例えば米国特許第5,399,163号;第5,383,851号;第5,312,335号;第5,064,413号;第4,941,880号;第4,790,824号;又は第4,596,556号に開示された器具などの無針皮下注射器具で投与することができる。本発明で有用な公知のインプラント及びモジュールの例には、制御された速度で薬品を分配するインプラント可能なマイクロ輸注ポンプを開示する米国特許第4,487,603号;薬品を皮膚を透過させて投与する治療器具を開示する米国特許第4,486,194号;精確な輸注速度で医薬を送達する医療用輸注ポンプを開示する米国特許第4,447,233号;継続的な薬物送達のための可変流量式のインプラント可能な輸注装置を開示する米国特許第4,447,224号;多チャンバ・コンパートメントを有する浸透圧薬物送達系を開示する米国特許第4,439,196号;及び浸透圧薬物送達系を開示する米国特許第4,475,196号、がある。数多くの他のこのようなインプラント、送達系、及びモジュールが当業者に公知である。
【0131】
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体を、in vivoで確実に適正に分布するように調合することができる。例えば血液脳関門(BBB)は数多くの親水性化合物を排除する。本発明の治療用化合物がBBBを確実に透過するようにする(望ましい場合)には、これらを例えばリポソーム中に調合することができる。リポソームの製造方法については、例えば米国特許第4,522,811号; 第5,374,548号;及び第5,399,331号を参照されたい。前記リポソームには、特定の細胞又は臓器に選択的に輸送されて指向性ある薬物送達を高めるような1つ以上の成分を含めてもよい (例えばV.V. Ranade
(1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685)。標的指向成分の例には、葉酸又はビオチン(例えばLow et al.の米国特許第5,416,016号を参照されたい);マンノシド(Umezawa et al., (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038);抗体 (P.G. Bloeman et al. (1995) FEBS Lett.
357:140; M. Owais et al. (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39:180);その様々な種が本発明の調合物や、本発明の分子の構成成分を成していてもよいサーファクタントプロテインA受容体 (Briscoe et al. (1995) Am. J. Physiol. 1233:134);p120 (Schreier et al. (1994) J. Biol. Chem.
269:9090);があり、さらにK. Keinanen; M.L.
Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346:123; J.J. Killion; I.J. Fidler (1994)
Immunomethods 4:273を参照されたい。本発明の一実施態様では、本発明の治療用化合物をリポソーム中に調合する。より好適な実施態様では、当該リポソームが標的決定成分を含む。最も好適な実施態様では、当該リポソーム中の治療用化合物を、腫瘍又は感染に近位の部位への大量注射により送達する。当該組成物は、注射筒での注入が容易な程度に流動性でなくてはならない。それは、製造及び保管条件下で安定でなくてはならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から守られていなくてはならない。
【0132】
リウマチ性関節炎のための「治療上有効量」とは、好ましくは、患者においてACR20のプリリミナリ・ディフィニション・オブ・インプルーブメント(原語:Preliminary Definition of Improvement)に至る量、より好ましくは、ACR50のプリリミナリ・ディフィニション・オブ・インプルーブメントに至る量、そしてさらにより好ましくはARCD70のプリリミナリ・ディフィニション・オブ・インプルーブメントに至る量であろう。
【0133】
ACR20のプリリミナリ・ディフィニション・オブ・インプルーブメントは:
20%以上の改善がテンダー・ジョイント・カウント(原語:Tender Joint Count)(TCJ)及びスウォレン・ジョイント・カウント(原語:Swollen Joint Count)(SWJ)にあり、そして、20%以上の改善が以下、5つの評価:ペイシェント・ペイン・アセスメント(原語:Patient
Pain Assessment)(VAS)、ペイシェント・グローバル・アセスメント(原語:Patient Global
Asessment)(VAS)、フィジシャン・グローバル・アセスメント(原語:Physician Global
Assessment)(VAS)、パテント・セルフ−アセッスド・ディスアビリティ(原語:Patent
Self-Assessed Disability)(HAQ)、アキュート・フェイズ・リアクタント(原語:Acute Phase Reactant)(CRP又はESR)のうちの3つにあること、と定義されている。
【0134】
ACR50 及び ACR70 も同様にそれぞれ50%以上及び70%以上の改善、と定義されている。更なる詳細についてはFelson et al. in
American College of Rheumatology Preliminary Definition of Improvement in
Rheumatoid Arthritis; Arthritis Rheumatism (1995) 38: 727-735を参照されたい。
【0135】
ある化合物の癌阻害能は、ヒト腫瘍での効験を予測する動物モデル系で評価できる。代替的には、ある組成物のこのような性質は、当業者に公知の検定でin vitroでの阻害を調べることで当該化合物の阻害能を検査することでも評価できる。ある治療用化合物の治療上有効量は、腫瘍の大きさを減少させるものでも、又は、対象の症状を寛解させるものでもよい。当業者であれば、このような量を、対象の体格、対象の症状の重篤度、及び特定の組成物又は選択された投与経路などの因子に基づいて決定できよう。
【0136】
さらに、当該抗体の、乾癬を治療又は予防する能力も、当業で公知の方法に従って評価できる。
【0137】
本組成物は、無菌、かつ、本組成物を注射筒で送達可能な程度に流動性でなくてはならない。当該の担体は、水に加え、等張の緩衝生理食塩水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びこれらの適した混合物であってよい。適正な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングを用いたり、分散液の場合には必要な粒子サイズを維持したり、そして界面活性剤を利用するなどにより、維持できる。多くの場合、糖類、マンニトール又はソルビトールなどの多価アルコール、及び塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含めることが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、モノステアリン酸アルミニウム又はゼラチンなど、吸収を遅らせる物質を組成物中に含めると、可能である。
【0138】
活性化合物を上述のように適切に保護すれば、当該化合物を、例えば不活性の希釈剤又は同化可能な食用担体と一緒に経口投与してもよい。
【0139】
V. 発明の用途及び方法
本発明による、IL-15に対するヒト抗IL-15抗体(この抗体の誘導体及び結合体も含む)及び前記抗体を含有する組成物は、多種のin vitro及びin vivoでの診断用途及び治療用途で用いることができる。
【0140】
ある実施態様では、本発明のヒト抗体を用いて、T細胞及び/又は単球/マクロファージによるIL-15誘導性TNFα産生を、好ましくはIL-2などの他のサイトカインが誘導するTNFα産生を阻害することなく、阻害する。本抗体をIL-15に接触させる(例えば対象に本抗体を投与する)ことにより、IL-15がIL-15受容体を通じてシグナル伝達する能力が阻害され、こうしてT細胞及び/又は単球/マクロファージによるTNFα産生も阻害される。好適な抗体は、IL-15に特異的なエピトープ(例えばガンマサブユニットなどの特定のサブユニット)に結合することで、IL-15誘導性TNFα産生は阻害するが、IL-2などの構造上関連するサイトカインによるTNFα産生には干渉しないものである。
【0141】
別の実施態様では、本発明のヒト抗体を用いて、IL-15誘導性T細胞動員及び/又は増殖を、好ましくは、IL-2などの構造上関連する他のサイトカインが誘導するT細胞増殖を阻害することなく、阻害する。TNFα産生の場合と同様に、本抗体をIL-15に接触させる(例えば対象に本抗体を投与する)ことにより、IL-15がIL-15受容体を通じてシグナル伝達する能力が阻害され、こうしてIL-15によるT細胞刺激が阻害される。
【0142】
従って、さらに別の実施態様では、本発明は、IL-15により媒介される障害(例えば自己免疫疾患、例えば乾癬、リウマチ性関節炎、又は炎症性腸疾患、又は感染性疾患、例えばHIV)を、前記障害を治療又は予防するのに有効量の本発明のヒト抗体を対象に投与することにより、治療又は予防する方法を提供するものである。本抗体は単独で投与することも、又は、当該IL-15媒介性疾患を治療又は予防するために本抗体と協働する又は相乗的に作用する、例えばステロイド系又は非ステロイド系炎症薬などの抗炎症薬や、又はサイトカインなど、別の治療薬と一緒に投与することもできる。
【0143】
ある具体的な実施態様では、本発明のヒト抗体を、リウマチ性関節炎(RA)を治療又は予防するために用いる。本抗体は、RAなどの疾患に伴う炎症の進行においてIL-15が果たす役割を制限する。T細胞、特にCD4+Tヘルパー細胞は、RAにおいて炎症プロセスの開始及び維持に関与している。別のサイトカインであるTNFαもこの炎症経路に関与しており、最終的にはRA患者の関節の破壊及び廃疾を引き起こす。局所でのIL-15合成は、T細胞の活性化及び動員や、TNFα及び他の炎症性サイトカインの誘導の両方で鍵となる役割を果たす。RAの進行におけるIL-15の役割には、マクロファージにより合成されるIL-15がT細胞動員を誘導するプロセスが関与している。活性化したT細胞は次に:(1)マクロファージ活性化を維持し;そして(2)TNFα産生を誘導する。刺激を受けたマクロファージはより多くのIL-15合成及びT細胞活性化を促進し、こうしてこのサイクルが続く。IL-15は、そのTNFα及びマクロファージに対する作用に加え、好中球を活性化して、局所的なB細胞による免疫グロブリン分泌、特にリウマチ因子合成、に影響を与える。
【0144】
従って、本発明の抗IL-15抗体は、RAを起こすIL-15の前述の作用を防止又は遮断するために用いることができ、こうしてこの疾患の予防又は治療に用いることができる。例えば本発明の抗IL-15抗体を用いて、RAに関与する炎症を阻害する、及び/又は、活性化白血球の遊走を防ぐことができる。
【0145】
本発明のヒト抗体を、メトトレキセートへの応答が乏しかったリウマチ性関節炎患者において構造損傷の進行を阻害したり、DMARDでの治療に失敗しなかった患者も含め、中程度から重度の活動性リウマチ関節炎患者において兆候及び症状を軽減し、構造損傷を遅らせるために、用いてよい。
【0146】
さらに本発明のヒト抗体は、IL-15の他の作用を遮断又は阻害するためにも、用いることができる。IL-15は単球及びマクロファージ、線維芽細胞、樹状細胞及びケラチノサイトを含め、多種の細胞及び組織で発現する。ケラチノサイトは、表皮や、粘膜組織の表皮内層の主要な構成要素である。ケラチノサイトの成長の制御は、そのいくつかがケラチノサイト自身によって産生されるサイトカイン及び成長因子の複雑なネットワークによって媒介されている。乾癬性プラークでは、ケラチノサイト由来IL-15がT細胞の蓄積、増殖及び生存に寄与している。ケラチノサイト数が増加し、その結果、関連する疾患症状のうちの少なくともいくつかの原因となる表皮過形成が引き起こされるような数多くの疾患が公知である。これらの疾患の中には、乾癬及びアトピー性皮膚炎などの慢性疾患や、慢性手湿疹、接触性皮膚炎、ウィルス性疣贅(HPV随伴)、皮膚性T細胞リンパ腫などの状態、糖尿病を原因とする創傷治癒不全などの治癒不全、がある。従って、本発明は、このような障害を治療又は予防するのに有効量の本発明のヒト抗IL-15抗体を患者に投与することにより、当該障害を治療又は予防する方法を提供するものである。例えば本発明の抗IL-15抗体を、乾癬における錯角化症を遮断又は阻害したり、乾癬における表皮肥厚を減少させたり、そして乾癬におけるケラチノサイトの増殖を減少させるために、用いることができる。
【0147】
IL-15はまた、腸管表皮細胞の機能も変調する(Reinecker, et al. (1996)
Gastroenterology 111:1706-13)。具体的には、IL-15は、粘膜表皮細胞上の修飾や、腸管表皮細胞内層の修飾を引き起こすことができ、従って、セリアック病などの炎症性腸疾患の病理発生に関与している。このような疾患でのIL-15の役割は、未処置のセリアック病患者の小腸でのIL-15+細胞の選択的過剰表現により示されている (WO 00/02582)。このように、IL-15がセリアック病の発症及び維持に直接関与していることが示されている。従って別の実施態様では、本発明の抗IL-15ヒト抗体(即ち、IL-15の炎症誘発作用を阻害するもの)を、セリアック病を治療又は予防するのに有効量の本抗体を患者に投与することにより、この障害を治療及び/又は予防するために用いることができる。
【0148】
加えて、IL-15はさらに、新しい血管の形成という、新血管形成又は脈管形成と呼ばれるプロセスを促進することが、本発明の発明者により見出された。従って、本発明の抗体のさらに別の用途には、血管新生の関与する疾患の予防又は治療がある。これらの疾患には、炎症性疾患に加え、血管新生に依拠する、又は、血管新生を特徴とする多種の癌が含まれる。
【0149】
さらに本発明のヒト抗体を、HIVなどの感染性疾患に関係したIL-15の作用を遮断又は阻害するために用いることもできる。従って、本発明の抗体の他の用途には、HIV-1などの感染性疾患の予防又は治療が含まれる。
【0150】
例えば、IL-15が媒介する多種の疾患を診断するために、本抗体をin vitro又はin vivoで用いることができる。具体的には、本抗体を用いて、IL-15のレベルや、又は、細胞膜表面上にIL-15を含有する、もしくは、その上の受容体にIL-15を結合させた(受容体結合型ヒトIL-15)細胞のレベルを検出することができる。その後、IL-15のこのようなレベルの検出を特定の疾患の症状と相関付けることができる。代替的には、本抗体を用いて、IL-15機能を阻害又は遮断でき、ひいてはIL-15機能により引き起こされる疾患症状を防止又は寛解させることができる。
【0151】
前述したように、本発明のヒト抗IL-15抗体を、全体的な抗炎症作用を高めるために、例えば免疫抑制剤又は抗炎症薬などの一種以上の他の治療薬と同時投与することができる。本抗体を作用物質に(免疫複合体として)連結することも、又は、前記作用物質とは別に投与することもできる。後者(別の投与)の場合、本抗体は、前記作用物質の前でも、後でも、又は同時にも投与することができる。適した治療薬には、とりわけ、抗炎症薬、DMARD(疾患改変抗リウマチ薬)、免疫抑制剤、化学療法薬、及び乾癬薬、がある。さらに本発明に基づくヒト抗体を放射線療法と併用投与することもできる。
【0152】
別の実施態様では、本発明のヒト抗体を、例えばCD4特異抗体及びIL-2特異抗体などの他の抗体と組み合わせて投与することができる。本発明の抗体をCD4特異抗体又はIL-2特異抗体と組み合わせると、自己免疫疾患及び移植片拒絶を治療するために特に有用であると考えられる。
【0153】
さらに、本発明のヒト抗IL-15抗体と、選択的に使用上の指示とを含むキットも、本発明の範囲内にある。本キットには、さらに、例えば免疫抑制剤などの一種以上の付加的な試薬、又は、一種以上の付加的な本発明のヒト抗体(例えば、IL-15抗原上の、第一のヒト抗体とは異なるエピトープに結合する補完的な活性を有するヒト抗体など)、を含めることができる。
【0154】
従って、本発明の抗体で処置した患者に、本ヒト抗体の治療効果を高める又は増大させる、例えば抗炎症薬などの別の治療薬を、(本発明のヒト抗体の投与前、投与と同時、又は投与後に)付加的に投与することができる。
【0155】
さらに別の実施態様では、化合物(例えば治療薬、標識、細胞毒、免疫抑制剤等)を本抗体に連結させることで、表面に(膜に結合した、又は、IL-15受容体に結合した)IL-15が結合した状態で有する細胞にこのような化合物を標的指向させるために、本発明のヒト抗体を用いることができる。このように、本発明は、IL-15発現細胞及びIL-15受容体発現細胞をex vivo、in vivo又はin vitroで(例えば放射性同位体、蛍光化合物、酵素、又は酵素コファクタなどの検出可能な標識を用いて)定位する方法も提供する。
【0156】
本発明の他の実施態様を以下の実施例の項で解説する。
【0157】
本発明を以下の実施例でさらに描出することとするが、以下の実施例をさらに限定的なものと捉えられてはならない。本出願全体を通じて引用された配列表、図面及び全参考文献、特許及び公開済み特許出願の内容を、引用をもってここに援用することを明示しておく。
【0158】
実施例
実施例1 Cmu標的化マウスの作製
CMDターゲティング・ベクタの構築
プラスミドpICEmuは、mu遺伝子に延びる、Balb/Cゲノム・ラムダ・ファージディスプレイから得られたマウスIg重鎖遺伝子座のEcoRI/XhoI断片を含有する(Marcu et al. Cell 22: 187, 1980)。このゲノム断片をプラスミドpICEMI9HのXhoI/EcoRI部位にサブクローンした
(Marsh et al; Gene 32, 481-485, 1984)。pICEmuに含まれたこれら重鎖配列は、muイントロン・エンハンサのちょうど3'側に位置するEcoRI部位の下流から、mu遺伝子の最後の膜貫通エキソンのほぼ1kb下流に位置するXhoI部位まで延びる。しかし、このmuスイッチ反復領域の大半は、E. coliを通過させて欠失させてある。
【0159】
ターゲティング・ベクタは以下の通りに構築された。1.3 kb のHindIII/SmaI 断片をpICEmuから切り出し、HindIII/SmaIで消化したpBluescript(カリフォルニア州ラホーヤ、ストラタジーン社)内にサブクローンした。このpICEmu断片は、Cmu1のほぼ1 kb 5'側に位置するHindIII部位からCmu1内にあるSmaI部位まで延びる。その結果得られたプラスミドをSmaI/SpeIで消化し、pICEmu由来の、Cmu1の3'側のSmaI部位から最後のCmuエキソンのちょうど下流に位置するXbaI部位まで延びる約4 kb のSmaI/XbaI 断片を挿入した。その結果得られたプラスミドpTAR1をSmaI部位で直線化し、neo発現カセットを挿入した。このカセットは、マウスホスホグリセレートキナーゼ(pgk)プロモータ(XbaI/Taq1断片Adra et al. (1987) Gene 60: 65-74)の転写制御下にあると共に、pgkポリアデニレーション部位(PvuII/HindIII
断片;Boer et al. (1990) Biochemical Genetics 28: 299-308) を含有するneo遺伝子から成る。このカセットは、プラスミドpKJ1 (Tybulewicz et al. (1991) Cell 65: 1153-1163に解説がある)から得たが、このプラスミドから前記neoカセットをEcoRI/HindIII断片として切り出し、EcoRI/HindIIIで消化したpGEM-7Zf(+)内にサブクローンして、pGEM-7 (KJ1)を作製した。このneoカセットを、pGEM-7 (KJ1)からEcoRI/SalI消化により切り出し、平滑末端にしてから、プラスミドpTAR1のSmaI部位にゲノムCmu配列とは反対の方向でサブクローンした。その結果得られたプラスミドをNot Iで直線化し、単純疱疹ウィルスチミジンキナーゼ(tk)カセットを挿入して、Mansour
et al. (1988) Nature 336:
348-352が解説した通りに、相同組換え体を持つESクローンを濃縮できるようにした。このカセットは、Tybulewicz et al. (1991) Cell 65: 1153-1163が解説したように、マウスpgkプロモータ及びポリアデニレーション部位を両端に持つtk遺伝子のコーディング配列から成る。その結果得られたCMDターゲティング・ベクタは、前記重鎖遺伝子座に合計でほぼ5.3 kb の相同性を含有し、neo発現カセットが一番目のCmuエキソンの非反復SmaI部位に挿入された変異mu遺伝子を生ずるよう、デザインされている。このターゲティング・ベクタを、ES細胞内に電気穿孔注入する前に、プラスミド配列内で切断するPvuIで直線化した。
【0160】
標的設定されたES細胞の作製及び分析
AB-1 ES 細胞 (McMahon, A. P. and Bradley, A., (1990)
Cell 62: 1073-1085) を有糸分裂不活性期のSNL76/7
細胞支持細胞層(同書)上で、基本的には解説
(Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: a Practical Approach (E. J. Robertson, ed.) Oxford:
IRL Press, p. 71-112のRobertson, E.
J. (1987))された通りに成長させた。直線化させたCMDターゲティング・ベクタを、電気穿孔法でAB-1細胞に、Hasty et al. (Hasty, P. R. et al. (1991)
Nature 350: 243-246)で解説された方法により注入した。注入後の細胞を100 mm 皿に、1-2×106細胞/皿の密度になるようにプレートした。24時間後、G418 (200マイクログラム/mlの活性成分)及び FIAU (5×10-7M)を培地に加え、薬物耐性クローンを8乃至9日間、展開させた。クローンを摘みだし、トリプシン処理し、2つの部分に分割し、さらに展開させた。その後各クローン由来の細胞の半分を凍結させ、残りの半分を、ベクタと標的配列との間の相同組換えについて分析した。
【0161】
DNA解析をサザン・ブロット・ハイブリダイゼーションで行った。DNAはLaird et al. (Laird, P. W. et al., (1991)
Nucleic Acids Res. 19 : 4293)が解説した通りに前記クローンから単離した。単離されたゲノムDNAをSpeIで消化し、muイントロン・エンハンサとmuスイッチ領域との間の配列にハイブリダイズするプローブA(図1)である915 bp のSacI 断片でプローブした。プローブAは、野生型遺伝子座の9.9 kbのSpeI断片と、CMDターゲティング・ベクタと相同組換えを起こしたmu遺伝子座の判断材料となる7.6kbのバンドとを検出する(neo発現カセットはSpeI部位を含有する)。サザン・ブロット解析でスクリーニングした1132 個のG418及びFIAU 耐性クローンのうち、3個が、mu遺伝子座での相同組換えを示す7.6 kb のSpeI バンドを示した。これら3個のクローンを酵素BglI、BstXI、及びEcoRI でさらに消化して、当該ベクタがmu遺伝子に相同的に組み込まれたことを確認した。プローブAとハイブリダイズした場合、BglI、BstXI、又はEcoRI で消化した野生型DNAのサザン・ブロットでは、それぞれ15.7、7.3、及び12.5 kbの断片が生ずるが、標的にしたmuアレルの存在は、それぞれ7.7、6.6、及び14.3 kbの断片で示される。SpeI消化により検出された3個の陽性クローンはすべて、neoカセットがCmu1エキソンへ挿入されたことの判断材料となる、予想通りのBglI、BstXI、及びEcoRI制限断片を示した。
【0162】
変異mu遺伝子を持つマウスの作製
264番、272番及び408番と指定した3つの標的設定されたESクローンを解凍し、C57BL/6J胚盤胞にBradley (Teratocarcinomas and Embryonic
Stem Cells: a Practical Approach. (E. J. Robertson, ed.) Oxford:
IRL Press, p. 113-151のBradley, A.
(1987) )の解説通りに注入した。注入された胚盤胞を偽妊娠メスの子宮に移して、注入されたES細胞及びホストの胚盤胞を由来とする細胞の混合物であるキメラマウスを作製した。このキメラへのES細胞の寄与度は、黒色のC57BL/6Jバックグラウンド上に見える、ES細胞系由来の野鼠色の皮の量により視覚的に判断できる。クローン272及び408では、ごく低いパーセンテージでキメラが生じた(即ち、野鼠色の着色率が低い)が、クローン264では、高率でオスのキメラが生じた。これらのキメラをC57BL/6Jメスと交配し、ES細胞ゲノムの生殖細胞伝播を示す野鼠色の仔を作った。尾の生検で得たDNAをBgII消化し、サザン・ブロット分析して、標的設定されたmu遺伝子のスクリーニングを行った(ES細胞DNAの分析について上述した通り)。野鼠色の仔のほぼ50%が、野生型のバンド15.7kbに加え、ハイブリダイズした7.7kbのBgIIバンドを示し、標的設定されたmu遺伝子の生殖細胞伝播が実証された。
【0163】
mu遺伝子の機能不活性化に関するトランスジェニックマウスの分析
neoカセットをCmu1に挿入したことでIg重鎖遺伝子が不活性化したかどうかを調べるために、クローン264キメラを、JH遺伝子セグメントを欠失させて重鎖発現を不活性化させるJHD変異がホモ接合型となったマウスと交配した(Chen et al, (1993)
Immunol. 5: 647-656)。4匹の野鼠色の仔を得た。血清を1月齢のこれら動物から得、ELISAで検定してマウスIgMの存在を調べた。4匹の仔のうち2匹がIgMを完全に欠いていた(表1を参照されたい)。4匹の動物を、尾の生検で得たDNAをBgII消化し、プローブA(図1を参照されたい)にハイブリダイズさせ、さらにStuI消化し、475bpのEcoRI/StuI断片(同書)にハイブリダイズさせる、といったサザン・ブロット分析で遺伝子型決定したところ、血清IgMを発現できない当該動物は、重鎖遺伝子座の一方のアレルがJHD変異を持ち、他方のアレルがCmu1変異を持つものであることが実証された。JHD変異がヘテロ接合型となったマウスは野生型のレベルの血清Igを示す。これらのデータは、Cmu1変異はmu遺伝子の発現を不活性化することを実証するものである。
【0164】
【表1】

【0165】
表1は、CMD及びJHD 変異の両方を持つマウス (CMD/JHD)、JHD変異についてヘテロ接合型のマウス (+/JHD)、野生型 (129Sv ×C57BL/6J)F1 マウス(+/+)、及び、JHD変異がホモ接合型のB細胞欠損マウス(JHD/JHD)について、ELISAで検出された血清IgMレベルを示す。
【0166】
実施例2 HCO12トランスジェニックマウスの作製
HCO12ヒト重鎖導入遺伝子
80 kb のpHC2 のインサート(Taylor et al., 1994, Int. Immunol., 6: 579-591)及び25 kbのpVx6のインサートを同時注入することで、HCO12導入遺伝子を作製した。プラスミドpVx6
を以下に解説するように構築した。
【0167】
生殖細胞ヒトVH1-18 (DP-14)遺伝子を、ほぼ2.5 kb の5' 側フランキング及び5 kb の3'側フランキングゲノム配列と一緒に含む、8.5 kb のHindIII/SalI
DNA 断片をプラスミド・ベクタpSP72 (ウィスコンシン州マジソン、プロメガ社)内にサブクローンして、プラスミドp343.7.16を作製した。生殖細胞ヒトVH5-51 (DP-73)遺伝子を、ほぼ5 kbの5' 側フランキング及び1 kb の3' 側フランキングゲノム配列と一緒に含む、7 kbのBamHI/HindIII
DNA断片を、pBR322ベースのプラスミド・クローニング・ベクタpGP1f (Taylor et al. 1992,
Nucleic Acids Res. 20: 6287-6295)内にクローンして、プラスミドp251fを作製した。pGP1f、pGP1k (SEQ ID NO:13)を由来とする新しいクローニング・ベクタを、EcoRV/BamHIで消化し、生殖細胞ヒトVH3-23 (DP47)遺伝子をほぼ4 kbの5' 側フランキング及び5 kb の3' 側フランキングゲノム配列と一緒に含む、10 kbのEcoRV/BamHI DNA
断片に連結した。その結果得られたプラスミドp112.2RR.7をBamHI/SalI で消化し、p251fの7 kbの精製済みBamHI/SalI インサートに連結した。その結果得られたプラスミドpVx4をXhoIで消化し、p343.7.16の8.5 kbの XhoI/SalI インサートに連結した。
【0168】
VH1-18遺伝子を他の2つのV遺伝子と同じ方向で持つクローンを得た。このクローンをpVx6と命名した後、NotIで消化し、精製されたその26 kbのインサートを、pHC2の精製済み80kbのNotIインサートと一緒に、1:1のモル比で、Hogan et al. (B. Hogan et al., Manipulating the Mouse Embryo, A
Laboratory Manual, 2nd edition, 1994, Cold Spring Harbor Laboratory Press,
Plainview NY)が解説したように半日齢(C57BL/6J
x DBA/2J)F2 胚の前核に同時注入した。これらの注入を受けた胚から発生したマウスから、V×6及びHC2の両方を由来とする配列を含むトランスジェニックマウスの3つの個別の株を確立した。これらの株を(HCO12)14881、(HCO12)15083、及び(HCO12)15087と命名する。次にこれらの3つの株のそれぞれを、実施例1で解説したCMD変異、JKD 変異 (Chen et al. 1993, EMBO J. 12: 811-820)、及び(KCo5)9272 導入遺伝子(Fishwild
et al. 1996, Nature Biotechnology 14: 845-851)を含むマウスに交配した。その結果得られるマウスは、ヒト重鎖及びカッパ軽鎖導入遺伝子を、内因性マウス重鎖及びカッパ軽鎖遺伝子座の破壊についてホモ接合型であることをバックグラウンドとして発現する。
【0169】
実施例3 IL-15に対するヒトモノクローナル抗体の作製
上述の通りに作製され、米国カリフォルニア州サンホセのメダレックス社より提供されたHCo12 及び HCo7 トランスジェニックマウスを、完全フロイント・アジュバント(CFA、米国ミシガン州デトロイト、ディフコ・ラボラトリーズ社、ロット番号121024LA)又は不完全フロイント・アジュバント(ICFA、ディフコ社、ロット番号121195LA)を添加したヒト組換えIL-15 (hIL-15、米国、シアトル、イムネックス社)で皮下的 (SC)腹腔内 (IP)又は静脈内 (IV)により免疫した。いくつかの場合では、KLHに結合させたhIL-15を免疫処置に用いた。完全もしくは不完全フロイント・アジュバントを添加したhIL-15で数回、追加し激した後、マウスの血清を、IL-15に対するヒト抗体の存在について検査した。
【0170】
最終的なクローン146B7、146H5、404E4及び404A8を生じたトランスジェニック・マウスの免疫処置スキーム
マウス番号 146 (HCo12)、ID 995-146、メス
170699 SC 12μg hIL-15 のCFA (ディフコ社、ロット番号121024LA)溶液
010799 SC 12μg hIL-15 のICFA (ディフコ社、ロット番号121195LA)溶液
150799 SC 12μg hIL-15 のICFA溶液
020899 SC 12μg hIL-15-KLH のICFA溶液
070999 SC 12μg hIL-15-KLH のICFA溶液
280999 SC 12μg hIL-15-KLH のCFA溶液
111099 IV 30μg hIL-15 のPBS溶液
121099 IV 30μg hIL-15 のPBS溶液
151099 このマウスのリンパ節及び脾細胞のSP2/0との融合
【0171】
マウス番号404 (HCo7)、ID 997-404、メス
201099 IP 25μg hIL-15-KLHのCFA (ディフコ社、ロット番号121024LA)
031199 IP 12.5μg hIL-15、12.5μg hIL-15-KLH、25μgのICFA溶液 (ディフコ 社、ロット番号121195LA)
101199 IV 12.5μg hIL-15、12.5μg hIL-15-KLH
121199 IV 12.5μg hIL-15、 12.5μg hIL-15-KLH
191199 このマウスのリンパ節及び脾細胞のSP2/0との融合
【0172】
培地
融合相手の培地(FPM):
イスコーブの改変ダルベッコ培地に、100
IU/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン、1 mM ピルビン酸ナトリウム、0.5
mM β-メルカプトエタノール(スコットランド、ペーズリー、ライフ・テクノロジーズ社)及び10% 熱不活化ウシ胎児血清(米国ユタ州、ハイクローン社)を添加した。
【0173】
融合選択培地(FSM):
30 ml オリゲン・ハイブリドーマ・クローニング・ファクター(米国メリーランド州、ガイザーズバーグ、アイジェン社)、HAT (1バイアル、メーカの推奨濃度、米国ミズーリ州セントルイス、シグマ・ケミカル社)及び0.5
mg/ml カナマイシン(スコットランド、ペーズリー、ライフ・テクノロジーズ社)を添加したFPM。
【0174】
融合クローニング培地(FCM):
20 ml オリゲン・ハイブリドーマ・クローニング・ファクター(米国メリーランド州、ガイザーズバーグ、アイジェン社)、HAT (1バイアル、メーカの推奨濃度、米国ミズーリ州セントルイス、シグマ・ケミカル社)及び0.5
mg/ml カナマイシン(スコットランド、ペーズリー、ライフ・テクノロジーズ社)を添加した培地。
【0175】
ハイブリドーマの調製:脾細胞及びリンパ節細胞のSP2/0
骨髄腫細胞との融合
ハイブリドーマを得るために、脾臓、鼠径及び大動脈周囲リンパ節をマウスから摘出した。脾臓及びリンパ節細胞の単個細胞懸濁液をSP2/0骨髄腫細胞に細胞比1:2で混合した。細胞を遠心分離で沈降させ、そのペレットを37℃の 1 ml ポリエチレングリコール (PBSによる50% w/v溶液、英国アーヴィン、シグマ−アルドリッチ社)中に静かに再懸濁させた。細胞を60秒間、渦流させた後、25 ml FPM-2 を加え、細胞を37℃で30乃至60分間、インキュベートした。インキュベート後、細胞を96ウェル・プレートでFSMに入れて1ウェル当たり(100μl中)0,75×105細胞 の細胞密度で培養した。3日後、100μl FSM を各ウェルに加えた。
【0176】
hIL-15で免疫したHCo7及びHCo12マウスの脾臓及びリンパ節を融合させたところ、IL-15を指向する抗体を産生するハイブリドーマがいくつか、生じた。完全ヒト抗IL-15抗体を産生する以下の4つの安定なクローンを単離した:(1)146LyD7F7B7改名後:146B7; (2)146DE2E12A3H5 改名後:146H5; (3) 404CG11B7E4 改名後:404E4;及び(4)404FB12E7A8 改名後:404A8。これらのクローンは、ヒトIgG1/kサブクラスのすべてだった。
【0177】
ハイブリドーマのスクリーニング
融合後7日目乃至11日目の間にウェルをヒト抗体の存在について以下のELISAを用いてスクリーニングした:
【0178】
培養上清中のヒトIgGの存在をスクリーニングするためのELISA
ヒトIgG抗体の存在を検出するELISAを行うために、100μl/ウェルの0.9μg/ml ウサギ-α-k-軽鎖抗体 (デンマーク、グロストラップ、ダコ社)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に入れてNunc
Maxisorp ELISA-プレートに加えた(インキュベーションは室温で一晩)。 ニワトリ血清(2%;スコットランド、ペーズリー、ライフ・テクノロジーズ社)及びTween-20 (0.05 %;PBSTC)を添加したPBSでこのプレートを遮断後、培養上清を加えた。1.5時間のインキュベート後、プレートを洗浄し、PBSTCで希釈した0.5μg/mlの西洋わさびペルオキシダーゼ(デンマーク、グロストラップ、ダコ社)に結合させたウサギ-α-ヒトIgG (Fab2-フラグメント) を加えた。1時間のインキュベート後、ウェルを洗浄し、基質であるABTS (2,2'-アジノビス-3-エチルベンズチアゾリン-スルホン酸、ドイツ、マンハイム、ロシュ・ダイアグノスティックス社)をメーカのプロトコル通りに加え、抗体結合を405nmで、EL808 ELISAリーダ(米国ヴァーモント州、ウィヌースキ、バイオ−テック・インスツルメンツ社)で評価した。
【0179】
IL-15特異抗体の存在をスクリーニングするためのELISA
ヒトIgG/k抗体を含有するウェルを、さらにヒト抗IL-15抗体の存在について、IL-15特異的ELISAで検査した。このELISAを行うために、100μl/ウェルの1μg/ml IL-15 をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に入れてNunc
Maxisorp ELISAプレート(室温で一晩、インキュベート)に加えた。ニワトリ血清(2%;スコットランド、ペーズリー、ライフ・テクノロジーズ社)及びTween-20 (0.05 %;PBSTC)を添加したPBSでこのプレートを遮断後、培養上清を加えた。1.5時間のインキュベート後、プレートを洗浄し、PBSTCで1/5000に希釈した西洋わさびペルオキシダーゼ(米国ペンシルヴァニア州、ウェスト・グローブ、ジャクソン・イムノ・リサーチ社)に結合させたα-ヒトIgG Fc を加えた。1時間のインキュベート後、ウェルを洗浄し、基質であるABTS (2,2'-アジノビス-3-エチルベンズチアゾリン−スルホン酸、ドイツ、マンハイム、ロシュ・ダイアグノスティックス社)をメーカのプロトコル通りに加え、抗体結合を405nmで、EL808 ELISAリーダ(米国ヴァーモント州、ウィヌースキ、バイオ−テック・インスツルメンツ社)で評価した。
【0180】
ハイブリドーマのサブクローニング
安定な抗IL-15細胞株を得るために、前記ハイブリドーマを細胞の(0.5細胞/ウェルまでの)限界希釈により、96ウェル・プレートでサブクローンした。
【0181】
これらのサブクローンを、ほぼ10日後に上述のIL-15
ELISAで検査した。いくつかのサブクローニング法ではFSMをFCMからFPMに相変化させた。サブクローンのアイソタイプは、以下に解説するELISAで判定された。
【0182】
ELISAによる抗IL-15抗体のアイソタイプ決定
アイソタイプELISAを行うために、100μl/ウェルの1μg/ml 抗ヒトFc(ジャクソン・イムノ・リサーチ社)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に入れてNunc
Maxisorp ELISAプレート(室温で一晩、インキュベート)に加えた。ニワトリ血清(2%;スコットランド、ペーズリー、ライフ・テクノロジーズ社)及びTween-20 (0.05 %;PBSTC)を添加したPBSでこのプレートを遮断後、培養上清を加えた。1.5時間のインキュベート後、プレートを洗浄し、アルカリホスファターゼ(ランド、プラーツ、ザイメッド社)に結合させたマウス-α-HuIgG1又は、西洋わさびペルオキシダーゼ(ザイメッド社)に結合させたマウス-α-HuIgG3を加えた。1時間のインキュベート後、ウェルを洗浄し、基質であるABTS (2,2'-アジノビス-3-エチルベンズチアゾリン−スルホン酸、ドイツ、マンハイム、ロシュ・ダイアグノスティックス社)をメーカのプロトコル通りに加えた。抗体結合を405nmで、EL808 ELISAリーダ(米国ヴァーモント州、ウィヌースキ、バイオ−テック・インスツルメンツ社)で評価した。
【0183】
実施例4 完全ヒト抗IL-15抗体のエピトープ特異性
治療的に機能し、そしてIL-15誘導性炎症誘発作用を阻害するためには、IL-15特異抗体は、IL-15受容体のIL-2Rβ鎖及び/又はγ鎖との相互作用に関与するIL-15エピトープを認識する必要がある。
【0184】
(Pettit et al.が解説した)変異タンパク質を用いて、 完全ヒト抗IL-15抗体、146B7、146H5、404A8及び404E4のエピトープ特異性を評価した。用いたIL-15変異体には、IL-15変異体Q108S (残基108位のGlnがSerに置換されたもの;γ鎖相互作用部位での変異)及び変異体D8SQ108S (残基108位のGlnをSerに、そして8位のAspをSerに置換したもの;IL-15のβ鎖及びγ鎖相互作用部位の両方での変異)が含まれていた。
【0185】
hIL-15及び変異型IL-15タンパク質に対するhIL-15特異抗体146B7、147H5、404A8及び404E4の結合を判定するためのELISA
このELISAを行うために、100μlの1μg/ml IL-15 又はhIL-15 変異型タンパク質のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)をNunc Maxisorp
ELISAプレートに加えて被覆した。ニワトリ血清(2%;スコットランド、ペーズリー、ライフ・テクノロジーズ社)及びTween-20 (0.05 %;PBSTC)を添加したPBSでこのプレートを遮断後、hIL-15特異抗体の連続希釈液をインキュベートした。洗浄後、PBSTCで1/5000に希釈したペルオキシダーゼ(米国ペンシルヴァニア州、ウェスト・グローブ、ジャクソン・イムノ・リサーチ社)に結合させたα-ヒトIgG Fcを加えた。洗浄後、基質であるABTS (2,2'-アジノビス-3-エチルベンズチアゾリン−スルホン酸、ドイツ、マンハイム、ロシュ・ダイアグノスティックス社)をメーカのプロトコルに従って加え、抗体結合を405 nmでEL808 ELISAリーダ(米国ヴァーモント州、ウィヌースキ、バイオ−テック・インスツルメンツ社)で評価した。
【0186】
完全ヒトIL-15特異抗体 146B7、146H5、404A8及び404E4 のhIL-15 並びにIL-15変異型タンパク質Q108S 及びD8SQ108Sへの結合を図1に示す。146B7又は146H5のいずれも、これらの変異型IL-15タンパク質に結合できなかった。両方の変異型ともQ108S変異を持つため、146B7及び146H5により認識されるエピトープは、IL-15のうちで、IL-15受容体のγ鎖と相互作用する重要なドメイン内にある。404A8及び404E4は両者とも、これら変異型タンパク質に結合できたため、これらの抗体は、IL-15のβ鎖及びγ鎖相互作用ドメイン外にあるエピトープを認識するものである。146B7及び146H5は両者とも、IL-15に、IL-15受容体のγ鎖と相互作用する領域で結合する。このことは、本発明の完全ヒト抗IL-15抗体を用いた増殖検定で得たデータと一致する。以下に詳述するように、404A8 又は404E4 のいずれも、CTLL-2細胞及びヒトPBMCのIL-15誘導性増殖を阻害できなかった。146B7 及び146H5は両者とも、 IL-15誘導性増殖を阻害できた。さらに、増殖の阻害は、IL-15と、IL-15受容体のγサブユニットとの相互作用を遮断することにより、達成される。
【0187】
実施例5 146B7のVH及びVL領域の配列
146B7の再編成のあるVH及びVLドメインのヌクレオチド配列及び推定アミノ酸配列を以下の手法を用いて決定した。これらの配列は、用いるVH及びVL生殖細胞系ファミリーに関する情報を提供する; これらの生殖細胞配列中の点変異は、動物の免疫処置の際のB細胞の親和性成熟が原因である。
【0188】
RNAの調製
総RNAを5×106個の146B7ハイブリドーマ細胞から、RNAzol (英国プール、バイオジェネシス社)を用いてメーカのプロトコルに従って調製した。
【0189】
cDNAの調製
146B7由来のRNAのcDNAを、3μgの総RNAから、緩衝剤(ドイツ、マンハイム、ロシュ・ダイアグノスティックス社)、オリゴd(T)15(米国ウィスコンシン州、マジソン、プロメガ社)、dNTP (米国、ベーリンガー・マンハイム社)及びRNAsin (プロメガ社)を加えたAMVリバース・トランスクリプターゼを用いてメーカのプロトコルに従って調製した。
【0190】
クローニング用のVH及びVL領域を増幅するために用いたPCRプライマ
用いたプライマ対:
VH:
FR1 5' プライマ
(1) AB62 CAg gTK CAg CTg gTg CAg TC
(2) AB63 SAg gTg CAg CTg KTg gAg TC
(3) AB65 gAg gTg CAg CTg gTg CAg TC
VHリーダ5'プライマ
(4) AB85 ATg gAC Tgg ACC Tgg AgC ATC
(5) AB86 ATg gAA TTg ggg CTg AgC Tg
(6) AB87 ATg gAg TTT ggR CTg AgC Tg
(7) AB88 ATg AAA CAC CTg Tgg TTC TTC
(8) AB89 ATg ggg TCA ACC gCC ATC
CT
VH3'プライマ
(9) AB90 TgC CAg ggg gAA gAC CgA Tgg
VK:
FR1 5'プライマ
(1) AB8 RAC ATC CAg ATg AYC CAg TC
(2) AB9 gYC ATC YRg ATg ACC CAg TC
(3) AB10 gAT ATT gTg ATg ACC CAg AC
(4) AB11 gAA ATT gTg TTg ACR CAg TC
(5) AB12 gAA ATW gTR ATg ACA CAg TC
(6) AB13 gAT gTT gTg ATg ACA CAG TC
(7) AB14 gAA ATT gTg CTg ACT CAg TC
VKリーダ5'プライマ:
(8) AB123 CCC gCT Cag CTC CTg ggg CTC CTg
(9) AB124 CCC TgC TCA gCT CCT ggg gCT gC
(10) AB125 CCC AgC gCA gCT TCT CTT CCT CCT
gC
(11) AB126 ATg gAA CCA Tgg AAg CCC CAg CAC
AgC
VK3'プライマ
(12) AB16 Cgg gAA gAT gAA gAC AgA Tg
【0191】
クローニング用のVH及びVL領域を増幅するために用いたPCR条件
PCR反応を、AmpliTaq ポリメラーゼ(パーキン・エルマー社)をGeneAmp PCRシステム9700 (米国カリフォルニア州、フォスター・シティ、パーキン・エルマー・アプライド・バイオシステムズ社)で用いて行った。
【0192】
PCRサイクル・プロトコル:
94° 2'
11サイクル94° 30''
1サイクル毎 65° 30'にマイナス 1°
72° 30"
30 サイクル94° 30''
55° 30"
72° 30''
72° 10'
4°まで冷却
【0193】
pGEMT-ベクタ系IでのVH及びVLのクローニング
アガロース・ゲルでPCR産物を解析後、この産物を S-400 もしくは S300マイクロスピン・カラム (米国ニュージャージー州ピスカタウェイ、アマーシャム・ファルマシア・バイオテック社)か、又はQIAEX II ゲル・エクストラクション・キット(ドイツ、ヒルデン、キアゲン社)で精製した。各実験につき、各VH及びVL領域のうちで、FR1又はリーダ・プライマを用いて2つの個別に増幅されたPCR産物を、メーカのプロトコルに従ってpGEMT-ベクタ系(プロメガ社)でクローンした。
【0194】
E. coli DH5αへの形質転換後、個々のコロニを、T7 及びSP6プライマを用いたコロニPCRにより、55℃で30サイクル通してスクリーニングした。各個別のコロニから採ったプラスミドDNAをQiaprepスピン・ミニプレップ・キット(キアゲン社)を用いて精製した。さらに分析するために、Nco1/Not1
(英国NEバイオ・ラブズ社及びロシュ・ダイアグノスティックス社)消化を行い、アガロース・ゲルで分析した。
【0195】
配列決定
V領域は、pGEMTベクタ系Iでクローニングした後に配列決定された。T7及びSp6プライマ(ベルギー、リュイック、ユーロジェンテック社)を、配列決定キット:ABIプリズムBigDyeターミネータ・サイクル・シーケンシング・レディ・リアクション・キット(英国ウォリントン、アプライド・バイオシステムズ社)とプロトコルに従って組み合わせて用いた。反応をABI PRISM 377 シーケンサ(PEアプライド・バイオシステムズ社)で行わせ、配列をプログラムDNAStar, SeqmanIIで解析した。次にこの配列を生殖細胞V遺伝子配列にVBASE
(www.mrc-cpe.cam.ac.uk/imt-doc/public/intro.htm)でアライメントした。
【0196】
146B7のVH及びVL領域のクローニング及び配列決定
ハイブリドーマ146B7由来のVH及びVL領域をPCRで増幅し、pGEMTベクタ系Iでクローンして、そのcDNA配列を決定した。当該ヌクレオチド配列及び対応するアミノ酸配列を、それぞれ図2 (SEQ ID
NO: 1 及び2) 及び図3(SEQ ID NO: 3 及び4)に示す。フレームワーク(FR)及び相補性決定領域(CDR)も示す。Vbaseでのアライメントに基づく146B7のVH領域の生殖細胞ファミリー:VH5-51 (VH5-サブグループ)、D2-15/D2 (DH-セグメント)、JH4b (JH-セグメント)。Vbaseでのアライメントに基づく146B7のVL領域の生殖細胞ファミリー: A27 (VKIII-サブグループ) 及びJK2 (JK-セグメント)。VH及びVLドメインに関する更なる情報は、Kabatデータベース http://immuno.bme.nwu.edu/ 又はhttp://www.Vbase.comに見られる。
【0197】
実施例6 146B7の親和結合特性
146B7の親和性を表面プラスモン共鳴(SPR)技術により、BIACORE 3000 装置を用いて解析して、以下の手法に従って生体分子タンパク質間相互作用を調べた。生体分子結合により起きる表面層上でのSPRシグナルの変化を検出し、表面層での質量密度の変化とする。親和性は以下の定義を用いて表現されている:ka=結合速度定数 (M-1sec-1);kd=解離速度定数(sec-1);KA=結合平衡定数=ka/kd(M-1);及びKD=解離平衡定数=kd/ka (M)。
【0198】
ヒトIL-15(hIL-15)に対する146B7の親和性を得るために異なる手法を行った。2つの異なる提供業者(米国シアトル、イムネックス社及び米国ニュージャージー州、ロッキーヒル、ペプロテック社)から得たヒト組換えIL-15をCM5センサ・チップに結合させた。センサ・チップに結合させたこの化合物をリガンドと定義する。他の実験では146B7をリガンドとして用いた。
【0199】
各動態解析において、センサチップに結合させたリガンドに適合させた解析物146B7又はhIL-15の結合を、基準コントロールCM5センサ・チップへの結合に比較した。解析物の連続希釈液を検査した(0、3.125、6.25、12.5、25、50μg/ml)。結合曲線及び解離曲線を、ラングミュアのモデル1:1で単量体での相互作用に合わせて、ka及びkdを決定し、KA及びKDを計算した。データはすべて、BIAエバリュエーション、バージョン3.1を用いて解析した。二価の相互作用に関しては、モデル「二価解析物」を用いた。解析はすべて、基線の変動分について補正した。
【0200】
146B7の抗体親和性を判定するために、抗体146B7の親和性を、イムネックス社及びペプロテック社という2つの異なる提供業者から得たヒト組換えIL-15について、BIACORE 3000で測定した。146B7をリガンドとして、そしてhIL-15を分析物として用いて、一価相互作用を判定した(曲線はラングミュア1:1で調整)。
【0201】
IL-15(イムネックス社製)に対する146B7の親和性を以下の通りに測定した:
結合速度定数ka: 1.07(±0.17)×105M-1 sec-1
解離速度定数kd: 6.56 (±0.09) ×10-3 sec-1
結合平衡定数KA: 1.55 (±0.21)×107 M-1
解離平衡定数KD: 6.59 (±0.88) ×10-8 M
【0202】
146B7の結合力を調べるために、IL-15 (イムネックス社製)をリガンドとして用い、そして146B7 を分析物として用いた。得られたデータを、抗体の二価相互作用を調整するラングミュア(1:1)曲線を用いて表現して分析する場合、抗体の結合力を判定した。
【0203】
146B7のIL-15(イムネックス社製)に対する結合力を以下の通りに測定した:
結合速度定数ka: 7.30 (±0.81)×105M-1 sec-1
解離速度定数kd: 1.45 (±2.05) ×10-3 sec-1
結合平衡定数KA: 5.03 (±3.40) ´ 108 M-1
解離平衡定数KD: 1.55 (±1.24) ×10-9 M
【0204】
ペプロテック社製IL-15に対する146B7の親和性及び結合力も判定した。異なる供給源のIL-15間で、親和性にも、又は結合力にも大きな違いは何ら見られなかった。
【0205】
CTLL-2細胞及びPBMCのヒトインターロイキン-15(hIL-15)誘導性増殖の、完全ヒト抗IL-15抗体による阻害に関する下記の実施例で解説するように、[3H]-チミジン取り込みで測定したところ、146B7 は用量依存的にIL-15誘導性増殖を阻害した。50%の阻害があったときの濃度であるIC50という、親和性を調べるためのより機能的な方法である数値を、これらの増殖阻害実験で計算したところ、3.1±0.91 nMだった。このIC50は、BIACORE 3000 (KD 1.5 nM)で、146B7をリガンドとして用い、そして組換えヒトIL-15を分析物として用いて測定された結合力と一致し、ここで得られた親和性及び結合力の測定値の裏付けとなった。
【0206】
実施例7 hIL-15誘導性TNF-α産生の、完全ヒト抗IL-15抗体による阻害
完全ヒト抗IL-15抗体146B7、146H5、404E4及び404A8がIL-15誘導性TNF-α産生に及ぼす作用を、以下の手法を用い、健康なボランティアから採った末梢血由来単核細胞(PBMC)を用いて研究した。IL-15に対する特異性を評価するために、これらの抗体がIL-2媒介性TNF-α産生に及ぼす作用も調べた。
【0207】
細胞培養
培養株は、2 mM L-グルタミン、100 IU/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン(すべてスコットランド、ペーズリー、ライフ・テクノロジーズ社から得た)及び10%
熱不活化ウシ胎児血清(米国ユタ州ハイクローン社)を加えたRPMI-1640中に維持された。
【0208】
末梢血単核細胞(PBMC)の精製
新鮮なヒト血液を健康なボランティアからインフォームド・コンセント後に採血し、ヘパリンを加えて凝固を防いだ。PBMCの精製をフィッコール(スウェーデン、ウプサラ、ファルマシア社)を用いた密度勾配遠心分離により行った。
【0209】
テスト化合物
HIL-15、ロット番号:6870-011、米国ワシントン州、シアトル、イムネックス社。 hIL-2、オランダ、アムステルダム、チロン・ベネルクス社。
用いた完全ヒト抗体:146B7 (バッチ:070101) 及び146B7RDJW07、404A8 (バッチ:030101) 及び404E4 (バッチ:080101) 、そしてアイソタイプ・コントロールとして抗体T1 (97-2B11-2B12、バッチ:190900)。
【0210】
PBMCによるヒトIL-15 (hIL-15)もしくはhIL-2誘導性TNF-α産生の抗IL-15抗体による阻害
PBMCを三重又は四重にして96ウェルの平底プレートで、1ウェル当たり1.5×105個の細胞にして、hIL-2又はhIL-15の存在下もしくは非存在下、そして抗IL-15抗体を加えて、又は加えずに、培養した。 アイソタイプ・コントロール抗体(T1)を陰性コントロールとして含めた。コンカナバリンA(2.5μg/ml、カルビオケム社)を増殖に関する陽性コントロールとして加えた。細胞を72時間、37℃で5% のCO2下でインキュベートした。上清を採集して、ヒトTNF-αの量をELISA (オランダ、ユトレヒト、U-サイテック社)で定量した。
【0211】
146B7及びアイソタイプ・コントロール抗体が、PBMCによるIL-15媒介性TNF-α産生に及ぼす作用を検査した。146B7はhIL-15媒介性TNF-α産生を用量依存的に阻害したが、他方、当該アイソタイプ・コントロール抗体はhIL-15誘導性TNF-α産生を阻害しなかった(図6)。二人の健康なボランティアのデータを示す。404E4 及び404A8はhIL-15誘導性TNF-α産生を阻害できなかった。
【0212】
抗IL-15抗体の特異性を確認するために、それらがhIL-2媒介性TNF-α産生に及ぼす作用を評価した。IL-2媒介性TNF-α産生の阻害は、146B7によっては誘導されなかった(図7)。hIL-2媒介性TNF-α産生において、404E4 又は404A8のいずれでも、用量依存的な阻害は見られなかった。
【0213】
hIL-15媒介性TNF-α産生の用量依存的な阻害は、146B7によってのみ、見られ、404E4及び404A8では見られなかった。この阻害作用はhIL-15に特異的だった。IL-2媒介性TNF-α産生は阻害されなかった。
【0214】
実施例8 CTLL細胞及びPBMCのヒトインターロイキン-15 (hIL-15)誘導性増殖の、完全ヒト抗IL-15抗体による阻害
抗体146B7、146H5、404E4及び404A8を、それらのT細胞増殖阻害能について、CTLL-2細胞 (Gillis et
al., 1978)及び末梢血単核細胞(PBMC) を用い、以下の手法を用いて検査した。
【0215】
細胞培養
培養株は、2 mM L-グルタミン、100 IU/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン(スコットランド、ペーズリー、ライフ・テクノロジーズ社から得たもの)及び10%
熱不活化ウシ胎児血清(米国ユタ州、ハイクローン社)を加えたRPMI-1640中に維持された。CTLL-2細胞(Gillis et al., 1978) は、36 単位 hIL-2/ml (オランダ、アムステルダム、チロン・ベネルクス社)を添加した上述の培地中に維持し、3乃至4日間、hIL-2を枯渇させてから、実験を開始した。CTLL-2細胞は使用前に三回、洗浄した。
【0216】
末梢血単核細胞(PBMC)の精製
新鮮なヒト血液を健康なボランティアからインフォームド・コンセント後に採血し、ヘパリンを加えて凝固を防いだ。PBMCの精製をフィッコール(スウェーデン、ウプサラ、ファルマシア社)を用いた密度勾配遠心分離により行った。
【0217】
テスト化合物
HIL-15、ロット番号:6870-011、米国ワシントン州、シアトル、イムネックス社。 hIL-2、オランダ、アムステルダム、チロン・ベネルクス社。
図8に示すこの報告でCTLL-2検定に用いた抗IL-15抗体:146B7、146H5、404A8、404E4。
PBMC検定に用いた抗IL-15抗体:146B7 (バッチ:070101)、404A8 (バッチ:030101) 及び 404E4 (バッチ:080101)。
【0218】
ヒトIL-15 (hIL-15) 又はhIL-2誘導性CTLL-2増殖の抗IL-15抗体による阻害
各実験において、細胞を三重にして96ウェルプレートに、hIL-2 又はhIL-15のいずれかの存在下又は非存在下で1ウェル当たり5×103個の細胞になるように接種した。増殖に対する作用を評価するために4種類の抗IL-15抗体のそれぞれを加えた。細胞を16時間、37℃で5% CO2下でインキュベートした。[3H]チミジン (1μCi/ウェル、英国バッキンガムシャイア、リトル・チャルフォント、アマーシャム・ライフ・サイエンセズ社)を加えてから4時間後に回収した(米国コネチカット州オレンジ、トムテック社、ハーベスター 96 Mach II M)。
【0219】
図8に示すように、CTLL-2細胞のIL-15誘導性増殖は、[3H]-チミジン取り込みの減少に反映されるように、146B7及び146H5により用量依存的に低下した。404E4及び404A8の両者とも、CTLL-2細胞のIL-15誘導性増殖を阻害できなかった。
【0220】
hIL-15 (hIL-15) 又はhIL-2誘導性のPBMCの増殖の抗IL-15抗体による阻害
PBMCを三重にして96ウェルのU型底プレート(Nunc、デンマーク、ナルジ・ナンク・インターナショナル社)で、1ウェル当たり5×104個の細胞にして、hIL-2もしくはhIL-15及び抗IL-15抗体の存在下又は非存在下で培養した。コンカナバリンA(2.5μg/ml、カルビオケム社)を増殖の陽性コントロールのために加えた。細胞を72時間、37℃で5% CO2下でインキュベートした。[3H]チミジン (1μCi/ウェル、英国バッキンガムシャイア、リトル・チャルフォント、アマーシャム・ライフ・サイエンセズ社)を加えてから16時間後に回収した(米国コネチカット州オレンジ、トムテック社、ハーベスター 96)。
【0221】
146B7 はIL-15誘導性[3H]-チミジン取り込みを用量依存的に阻害でき、従って増殖を阻害した(IC50=3.1±0.91 nM)。404E4及び404A8は両者とも、hIL-15誘導性PBMC増殖を阻害できなかった。146H5は、前に行った実験で得たデータに従って検査されなかった。146B7、404E4及び404A8のIL-15に対する特異性を確認するために、これらの抗体を、IL-2媒介性増殖に対するそれらの作用についても評価した。検査した抗IL-15抗体のいずれも、IL-2誘導性増殖に対する作用を示さなかった(図9)。
【0222】
実施例9 ヒト抗IL-15抗体146B7はヒトPBMC上に存在するヒトIL-15に結合する
テスト化合物
ヒトPBMCを、インフォームド・コンセント後に健康なボランティアから得た。
抗体 146B7 (バッチ番号 MDX015)、米国カリフォルニア州ミルピタス、メダレックス社。
【0223】
146B7及びヒトIgGのビオチン化
N-ヒドロキシスクシンイミド-ビオチン(シグマ社)をまずDMSO (最終希釈液:100 mg/ml)
で希釈し、次に0.1 M NaHCO3(最終希釈液:1 mg/ml、シグマ社)で希釈した。
抗体1mg当たり(1mlに希釈したもの)、600μlのビオチン溶液を加えた(暗、2時間、RT)。抗体−ビオチン溶液をスライド-a-ライザーTM透析カセット(オランダ、ペルビオ・サイエンス、ピアース社、10,000 MWCO)(4℃で一晩)で透析して未標識のビオチンを取り除いた。翌日、ビオチン化抗体の濃度を分光光度法(Ultrospec 2100pro)で280nmのODで判定した。
【0224】
末梢血の刺激
IL-15を誘導するために、健康なボランティアから静脈穿刺で血液を得た。PBMCを、ペニシリン(5 U/ml)、ストレプトマイシン(50μg/ml)、L-グルタミン (2mM) (バイオホイッテカー・ヨーロッパ社)及び10% ウシ胎児血清(オプティマム C241、マルチセル、ウィセント社)を添加したRPMI 1640 (バイオホイッテカー・ヨーロッパ社)で、最長2日間(37℃)で培養し、500 U/ml IFNγ(ベーリンガー・インゲルハイム社)で刺激した。
【0225】
フローサイトメトリ
細胞を、ペニシリン(5 U/ml)、ストレプトマイシン(50μg/ml)、L-グルタミン(2mM) (バイオホイッテカー・ヨーロッパ社)及び10% ウシ胎児血清(オプチマム
C241、マルチセル、ウィセント社)を添加したRPMI
1640 (バイオホイッテカー・ヨーロッパ社)中で、10%ヒトAB血清(オランダ、アムステルダム、CLB社)と一緒にプレインキュベートした。透過化(カリフォルニア州サンディエゴ、ベクトン・ディッキンソン社、Cytofix/CytopermTMキット中で20分間、4℃)及びPerm/WashTM(Cytofix/CytopermTMキット)緩衝液で洗浄した後、フローサイトメトリにより、PBMCにIL-15の染色を施した。この染色処置全般に渡って Perm/WashTM緩衝液
(Cytofix/CytopermTMキット) を用いることにより、継続的な透過性を保つことに成功した。これら細胞をビオチン化146B7又はビオチン化hIgG1 (20μg/ml、30分間、4℃) と一緒にインキュベートし、Perm/WashTM緩衝液で洗浄した後、細胞をストレプトアビジン-フィコエリトリン (ダコ社)と一緒に30分間(4℃)でインキュベートした。分析後に1試料当たり少なくとも5000個の細胞の蛍光強度をフローサイトメトリ (FACS Calibur、ベクトン・ディッキンソン社)で調べ、CellQuest Pro ソフトウェアを用いて単球の通門を調べた。データは以下:S.I.=(平均蛍光陽性染色)/(平均蛍光バックグラウンド染色)の通りに計算された刺激指数(S.I.)を示す。
【0226】
免疫細胞化学法
ヒト単球に存在するIL-15を検出するために、サイトスピン・プレパラートを全血試料から作製した。 5×104個の細胞(200μl)を遠心してSuperfrost(R)-プラス顕微鏡用スライド(メンゼル社)上に沈降させた後、スライドを空気乾燥(<60分間)し、2%パラホルムアルデヒド/PBS(8分間、4℃)で固定し、PBSで洗浄し、再び空気乾燥した。染色前にサイトスピン・プレパラートをPBS (+0.1% サポニン;PBSS)で透過化し、これをその後染色処置全般に用いた。内因性ペルオキシダーゼ活性を阻害するために、サイトスピン・プレパラートを、クエン酸/リン酸緩衝液(pH5.8、20分間、RT)で希釈した0.05% (v/v) 過酸化水素(H2O2)と一緒にインキュベートした。PBSSで洗浄後、内因性ビオチン活性をメーカの指示 (ビオチン・ブロッキング・キット、ダコ社、ベクタ・ラブズ)に従って阻害した。PBSSで洗浄後、このサイトスピン・プレパラートを、PBSSに溶かした10% (v/v)ヒトプールAB血清(オランダ、アムステルダム、CLB社)と一緒にインキュベートする(30分間)ことで非特異的結合部位を遮断した。その後、サイトスピン・プレパラートをビオチン化一次抗体(60分間、RT)と一緒にインキュベートし、PBSSで洗浄した後に、ビオチン化西洋わさびペルオキシダーゼ(streptABComplex/HRP、ダコ社;2% ヒトAB血清を含有するPBSSによる1:100溶液;30分間、RT)と複合体形成させたストレプトアビジンと一緒にインキュベートした。PBSSで洗浄した後、サイトスピン・プレパラートを、3-アミノ-9-エチルカルバゾール (0.5 mg/ml)及びH2O2(0.01%)の酢酸ナトリウム緩衝液 (50
mM、pH 4.9)溶液と一緒に10分間(RT)、インキュベートして、HRP活性の検出に向けた。サイトスピンを水道水で5分間、洗浄し、ヘマトキシリン(ダコ社)で1分間、対比染色し、水道水でさらに5分間、洗浄し、ファラマウント又はグリセルゲル(ダコ社)中に包埋した。
【0227】
フローサイトメトリ
IFNγで刺激したヒト単球への146B7の結合を図12に示す。ビオチン化146B7は未刺激の単球に結合することから、未刺激の細胞にIL-15が存在することが分かる。単球をIFNγで刺激すると、146B7のこれら細胞への結合が増し、培養一日目で最大に達する。コントロール抗体であるhIgG1は未刺激の単球への結合をほとんど示さない。IFNγで刺激すると、単球上の Fcγ受容体の発現が増加することで、hIgG1の結合が増す。
【0228】
免疫細胞化学法
図13は、146B7又はコントロール抗体hIgG1によるヒト単球の染色を示す。細胞質の明確な赤い染色が、細胞を146B7と一緒にインキュベートした後では観察されるが、コントロール抗体とインキュベートした後では観察されない。従って、146B7は単球中のhIL-15に結合し、この結合はIFNγでの刺激後に上方調節される。図13ではさらに、IL-15の染色が主に細胞内で起きていることも示す。
【0229】
実施例10 ヒト抗IL-15抗体146B7は組織中のIL-15に免疫組織化学的に結合する
テスト化合物
ヒト乾癬皮膚 − 組織試料をインフォームド・コンセント後に得た。デンマーク、コペンハーゲン、ゲントフテ大学病院皮膚科、ルイース・ヴィラーゼン。
抗体146B7 (バッチ番号.MDX015)、米国カリフォルニア州、ミルピタス、メダレックス社。
【0230】
146B7及びヒトIgGのビオチン化
N-ヒドロキシスクシンイミド-ビオチン(シグマ社)をまずDMSO (最終希釈液:100 mg/ml)
で希釈し、次に0.1 M NaHCO3(最終希釈液:1 mg/ml、シグマ社)で希釈した。
抗体1mg当たり(1mlに希釈したもの)、600μlのビオチン溶液を加えた(暗、2時間、RT)。抗体−ビオチン溶液をスライド-a-ライザーTM透析カセット(オランダ、ペルビオ・サイエンス、ピアース社、10,000 MWCO)(4℃で一晩)で透析して未標識のビオチンを取り除いた。翌日、ビオチン化抗体の濃度を分光光度法(Ultrospec 2100pro)で280nmのODで判定した。
【0231】
免疫組織化学法
検定まで組織を−80℃で保存した。解凍後、組織切片をアセトン中に固定し(10分間、RT)、空気乾燥した。内因性ペルオキシダーゼ活性を阻害するために、クエン酸/リン酸緩衝液(pH5.8、20分間、RT)で希釈した0.05%(v/v)過酸化水素(H2O2)と一緒に切片をインキュベートした。PBS-Tween 20 (PBST、0.05% v/v)で洗浄後、内因性ビオチン活性をメーカの指示 (ビオチン・ブロッキング・キット、ダコ社、ベクター・ラブ)に従って阻害した。PBSTで洗浄後、PBSTに溶かした10%(v/v)ヒトプールAB血清(オランダ、アムステルダム、CLB社)と一緒に組織切片をインキュベート(30分間)することで、非特異的結合部位を遮断した。血清を吸い取り、次に切片を、2%ヒトAB血清を含有するPBSで希釈したビオチン化一次抗体(146B7又はhIgG1)と一緒に60分間(RT)、インキュベートした。切片をPBSTで洗浄した。PBSTで洗浄した後、すべての組織切片を、streptABComplex/HRP (ダコ社;2%ヒトAB血清を含有するPBSで 1:100に希釈したもの;30分間、RT)と一緒にインキュベートした。PBSTで洗浄した後、酢酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH4.9)に溶かした3-アミノ-9-エチルカルバゾール (0.5 mg/ml) 及びH2O2(0.01%)と一緒に切片を10分間(RT)、インキュベートして、HRP活性の検出に向けた。切片を水道水で5分間、洗浄し、ヘマトキシリン(ダコ社)で1分間、対比染色し、水道水でさらに5分間、洗浄し、最後にファラマウント又はグリセルゲル(ダコ社)中に包埋した。
【0232】
結果
明確な細胞質の染色が、乾癬皮膚のケラチノサイトに、146B7による組織切片染色後に観察されたが、コントロール抗体による染色では観察されなかった(図14;146B7は、乾癬プラークから得られたIL-15陽性ケラチノサイトを染色する)。
【0233】
実施例11 ヒト抗IL-15抗体146B7 は、SCIDマウス−ヒト組織キメラ中のIL-15を遮断する:関節炎組織及び乾癬組織の両方における炎症の著しい阻害
テスト化合物
滑膜組織 − 若年性リウマチ性関節炎患者から、インフォームド・コンセント後に得た;米国オハイオ州、シンシナティ、チルドレンズ・ホスピタル・メディカル・センター、小児リウマチ科アレクセイ・グロム。
角膜切開刀生検 − 組織試料をインフォームド・コンセント後に得た。デンマーク、コペンハーゲン、ゲントフテ大学病院皮膚科、ルイース・ヴィラーゼン。
抗体146B7 (バッチ番号。MDX015)、乾癬実験用に米国カリフォルニア州ミルピタス、メダレックス社から。
抗体146B7 (バッチ番号。15-00RDJW07)、リウマチ性関節炎実験用に米国カリフォルニア州ミルピタス、メダレックス社から。
【0234】
SCIDマウス中のIL-15の阻害 − ヒト滑膜組織キメラ
新鮮な滑膜組織試料を、若年性リウマチ性関節炎患者から関節置換手術後に得た。試料を無菌状態で採集した。全滑膜組織試料から採った刻んだ組織断片を完全に混合して各プレパラートが確実に均質になるようにした。刻んだ試料(動物1匹当たり2乃至4移植片;一箇所当たり100mg)をSCID/NODマウス(ジャクソン・ラボラトリーズ)の背面に皮下的に植え付けた。移植片の移植日、及び移植後7日目、14日目、及び21日目に各動物に146B7 (500μg、i.p.) 又はPBS を投与した。移植後28日目に動物をと殺した。滑膜移植片を切除し、H&E染色に向けてホルマリン上に配置した。
【0235】
SCIDマウス − ヒト滑膜組織キメラ由来の組織のH&E染色の定量(Modified from Lehr et al., J. Histochem. Cytochem. 1997, 45, 1559)
SCIDマウス−ヒト滑膜組織キメラから得た切片のデジタル画像(2600×2060、jpg)を10倍対物レンズ(ツァイス顕微鏡;アキシオビジョン・ソフトウェア)を用いて得た後、Photoshop バージョン6.0 (カリフォルニア州マウンテンビュー、Adobe システムズ社)を用いてデータをコンピュータ解析し、1300×1300ピクセルに縮小した。各切片内で6つの10倍野を選び出し、スライド全体の上の組織の染色全体が最良に反映されるようにした。着色した核を全部選抜した後(許容差10で暗色の核を魔法の杖で)、所定の面積の光学密度表を作製し、平均染色強度を記録した(同様な/画像ヒストグラムコマンドの選択の後)。次にバックグラウンドを選択し、染色を定量した(許容差10でバックグランド上に魔法の杖)。核染色及びバックグラウンド染色間の差として、染色強度を計算した。これを任意の単位を持つ細胞化学的指数として指定した。データは平均及びs.e.m.として示されている。データをスチューデントのt検定で解析した。
【0236】
SCIDマウス−ヒト乾癬組織キメラにおけるIL-15の阻害
角膜切開刀生検を二人の患者の乾癬プラークから得、分割し、C.B-17 SCID (ジャクソン・ラボラトリーズ) マウスに移植した。移植後3週間目にマウスにPBS (プラセボ)、CsA (シクロスポリンA)(サンドス社)を15日間の間1日置きに10mg/kgの用量、又は、146B7を1日目に20mg/kg、そして8日目及び15日目に10 mg/kgの用量、投与した。最後の注射から1週間後にマウスをと殺し、4mmの穿孔生検を各異種移植片から採取した。パラフィン包埋用に生検をホルマリンに固定し、H&EでKi-67 核内抗原について染色した。
【0237】
SCIDマウス−ヒト乾癬組織キメラ由来の組織の免疫組織化学染色の定量
H&E染色切片を表皮の厚さ(μm)、 錯角化症の等級(0から3までの等級)、及び上側真皮の炎症性単核細胞の数、について評価した。Ki-67について染色した切片を、1mm2切片当たりのサイクリング(原語:cycling)ケラチノサイト数について評価した。各処理群中の4匹のマウスの平均値を計算し、各患者から採ったデータを平均及びs.e.m.として要約した。
【0238】
SCID/RA モデル
切片の顕微鏡観察から、最も濃く染色された核は浸潤細胞のものであることが分かった。従って、(相対的表面積で測定したときの)核の数を、浸潤の測定値とみなしている。146B7を注射すると、炎症性滑膜組織への浸潤細胞の数が、賦形剤処理に比較して減少する(図15a、p<0.05)。図15bは、異種移植された滑膜組織への細胞浸潤に対する146B7の作用を示し、賦形剤処理に比較したときの、暗色の核を持つ細胞数の減少を示す。
【0239】
SCID/乾癬モデル
図16は、146B7又はコントロール処理で処理したSCID/乾癬マウスを示す。賦形剤PBSに比較して、146B7を注射すると、角質層からリート・ペグ(原語:rete pegs)の始まりにかけて測定された表皮厚さで評価したときの乾癬の重篤度が低下した(図16A)): PBS (177.8±42.2μm)、CsA (91.0±15.2μm)、146B7 (62.5±9.1μm)。厚さの減少はさらに、角質層からリート・ペグの最深部までを測定した場合にも観察された(図16B):PBS (433.8±32.1μm)、CsA (303.8±62.9μm)及び146B7 (208.0±33.8μm)。さらに、錯角化症の等級が146B7処理により低下した(図16C):PBS
(1.6±0.4)、CsA (1.3±0.3)、146B7 (0.5±0.3)。その上、146B7は上側真皮中の炎症性単核細胞の数を減少させる(図16D):PBS (33.3±1.9 単核細胞)、CsA (19.4±8.5)、146B7 (16.4±0.1)。ヒトKi-67タンパク質の発現は細胞増殖と深い関係がある。分裂間期においてこの抗原を核内でのみ、検出することができるが、他方、有糸分裂時にはこのタンパク質の大半が染色体表面上に移動する。Ki-67タンパク質は細胞周期のすべての活動期 (G(1)、S、G(2)、及び有糸分裂)で存在するが、休止期 (G(0))では存在しないという事実から、これを、ある任意の細胞集団のうちのいわゆる成長群を判定する優れたマーカとすることができる。146B7はKi-67+サイクリング(原語:cycling)ケラチノサイトの数を減少させる(図16E):PBS (247.9±77.0)、CsA (116.0±24.1)、146B7 (73.8±9.9)。
【0240】
リウマチ性関節炎のヒトSCIDモデルでは、146B7で処理すると、炎症性細胞の炎症性組織への浸潤が阻害された。さらに、ヒト乾癬プラークを移植されたSCIDマウスでは、146B7処理により、CsA処理に比べ、乾癬の重篤度が軽減した。実際、146B7による処理の結果、炎症、表皮の厚さ、分裂ケラチノサイト数、及び錯角化症の重篤度が、ヒト/SCIDマウスで大きく低下した。
【0241】
実施例12 ヒト抗IL-15抗体146B7は、受容体に結合したIL-15を認識する
テスト化合物
hIgG1 - ヒトコントロール抗体(シグマ社)。
抗体146B7 メダレックス社、MDX015。
IL-15Rαを構成的に発現するRaji細胞(英国サザンプトン、サザンプトン・ゼネラル病院、テノバス・リサーチ・ラボラトリー、マーティン・グレニー)。
【0242】
146B7及びヒトIgGのビオチン化
N-ヒドロキシスクシンイミド-ビオチン(シグマ社)をまずDMSO (最終希釈液:100 mg/ml)
で希釈し、次に0.1 M NaHCO3(最終希釈液:1 mg/ml、シグマ社)で希釈した。
抗体1mg当たり(1mlに希釈したもの)、600μlのビオチン溶液を加えた(暗、2時間、RT)。抗体−ビオチン溶液をスライド-a-ライザーTM透析カセット(オランダ、ペルビオ・サイエンス、ピアース社、10,000 MWCO)(4℃で一晩)で透析して未標識のビオチンを取り除いた。翌日、ビオチン化抗体の濃度を分光光度法(Ultrospec 2100pro)で280nmのODで判定した。
【0243】
ELISAによる146B7のIL-15−IL-15Rα複合体への結合
平底マイクロタイタ・プレート(グライナー社)をIL-15Rα(米国ミネソタ州、ミネアポリス、R&Dシステムズ社)で被覆(室温で一晩)した後、プレートをPBS及びニワトリ血清(2%、RT、60分間)と一緒にインキュベートした。PBS (+0.05% Tween 20:PBST)で洗浄後、プレートを、未標識のIL-15 (50μl、RT、米国シアトル、イムネックス社)のいくつかの希釈液と一緒にインキュベートした。10分後、ビオチン化抗体を様々な濃度になるようにウェル(50μl)に加えた(室温で90分間)。PBSTで洗浄した後、プレートを、PBST-C (PBST 及び2% ニワトリ血清)に1:10,000になるように希釈したストレプトアビジン-ポリ-西洋わさびペルオキシダーゼ (オランダ、アムステルダム、CLB社)と一緒にインキュベート(室温で60分間)した。最後に、プレートを洗浄し、次に、メーカのプロトコルに従って、ABTS緩衝液にしたABTS (アジノビス-3-エチルベンズチアゾリン−スルホン酸、ドイツ、マンハイム、ロシュ・ダイアグノスティックス社)と一緒にインキュベートした。呈色反応を2% シュウ酸(50μl)で停止させた。結合を 405 nmでEL808 ELISA-リーダ (米国ヴァーモント州、ウィヌースキ、バイオ-テック・インスツルメンツ社)で評価した。
【0244】
Raji細胞上のIL-15−IL-15R 複合体への146B7 の結合
Raji細胞を、10% ヒトプールAB血清(オランダ、アムステルダム、CLB社)のFACS 緩衝液 (PBS、0.05%BSA、0.02% NaNO3)溶液と一緒にプレインキュベートした(4℃で20分間)。Raji 細胞(1-2*105細胞/ml)をウェル内に入れ、50μlの未標識のIL-15 を数種類の濃度で加えた (10% ヒトAB血清を加えたFACS緩衝液に希釈して)。この細胞を30分間(4℃)インキュベートし、FACS緩衝液で2回、洗浄した後、50μlのビオチン化抗体 (146B7 又は hIgG1)をウェルに加えた(4℃で30分間)。FACS緩衝液で2回、洗浄した後、50μlのストレプトアビジン-フィコエリトリンを各ウェルに加えた(4℃で30分間)。 FACS 緩衝液で2回、洗浄した後、細胞を200μlのFACS緩衝液中に取り出し、1試料当たり少なくとも5000個の細胞の蛍光強度を、CellQuestソフトウェアを用いたフローサイトメトリ(FACS Calibur、ベクトン・ディッキンソン社)による分析後に判定した。データは、以下の通り:
S.I. = (平均蛍光陽性染色)/(平均蛍光バックグラウンド染色)
に計算された刺激指数(S.I.)を示す。
【0245】
ELISA
ELISAにおける146B7のIL-15/IL-15R 複合体への結合を図19に示す。146B7の結合は、その受容体に結合しているIL-15の濃度が増すにつれ、高まる。コントロール抗体のIL-15又はIL-15Rへの結合の作用は何ら、観察されなかった。
【0246】
IL-15R発現Raji細胞への結合
Raji細胞上のIL-15/IL-15R複合体への146B7結合を図20に示す。146B7はIL-15/IL-15R 複合体に用量依存的に結合する。Raji細胞上のIL-15/IL-15R複合体へのhIgG1の結合は何ら、観察されなかった(図20)。
【0247】
146B7はIL-15に、このサイトカインがその受容体に結合した後で結合することができる。146B7は、IL-15上のうちで、受容体への結合に関与していないエピトープに結合する。
【0248】
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【0249】
均等物
当業者であれば、日常的な実験によって、ここに解説した本発明の具体的な実施態様の均等物を数多く、認識し、又は確認できることであろう。このような均等物は以下の請求の範囲の包含するところと、意図されている。従属請求項に開示した実施例のいかなる組合せも、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0250】
引用による援用
ここで引用する全公開文献、特許及び係属中の特許出願の全文を、引用をもってここに援用することとする。
【図面の簡単な説明】
【0251】
【図1】図1は、ヒトIL-15特異抗体146B7、147H5、404A8 及び404E4の、ヒトIL-15 (hIL-15)並びに変異型IL-15タンパク質Q108S及びD8SQ108Sへの結合を示すグラフを含む。抗体の連続希釈液を、それらのhIL-15又は変異型IL-15タンパク質D8SQ108S 及びQ108S への結合に関してELISAで調べた。
【図2】図2及び3は、抗体146B7由来のそれぞれVH及びVL領域のアミノ酸(SEQ IDNO:2 及び4) 並びにヌクレオチド (SEQ ID NO:1 及び3) 配列を示す。フレームワーク領域(FR)及び相補性決定領域 (CDR)を示す。
【図3】図2及び3は、抗体146B7由来のそれぞれVH及びVL領域のアミノ酸(SEQ IDNO:2 及び4) 並びにヌクレオチド (SEQ ID NO:1 及び3) 配列を示す。フレームワーク領域(FR)及び相補性決定領域 (CDR)を示す。
【図4】図4−Dは、IL-15媒介性TNF-α放出の、抗体146B7による阻害を示すグラフを含む。ヒトPBMCを、146B7抗体又はアイソタイプ・コントロール抗体(0.1、1、10μg/ml)と組み合わせたhIL-15 (0、50、100ng/ml)と一緒に72時間、インキュベートした。産生されたTNF-αの量をELISAで測定した。2人の健康なボランティアのデータを示す。
【図5】図5は、IL-2もしくはIL-15媒介性TNF-α産生に対する抗体146B7の作用を示すグラフである。ヒトPBMCを、146B7抗体(0.1、1、10μg/ml)と組み合わせたhIL-15 (0、50、100ng/ml)又はhIL-2(100ng/ml)と一緒に72時間、インキュベートした。産生されたTNF-αの量をELISAで測定した。
【図6】図6は、hIL-15誘導性CTLL-2増殖に対する抗体146B7、146H5、404E4 及び404A8の阻害活性を示すグラフである。hIL-2を枯渇させたCTLL-2細胞を、146B7、146H5、404E4 及び404A8の連続希釈液と組み合わせたhIL-15 (60 pg/ml) と一緒に48時間、インキュベートした。[3H]-チミジン取り込みを測定して増殖を表現した(cpm)。結果を平均値として示す。
【図7】図7乃至9は、 IL-15誘導性PBMC増殖に対する抗体146B7(図7)、404E4 (図8)及び404A8(図9)の阻害活性を示すグラフを含む。ヒトPBMCを、0.1、1、10μg/mlの146B7 (図7)、404E4 (図8) 又は 404A8 (図9)と組み合わせたhIL-15(0、25、100 ng/ml;それぞれ図7A、8A、及び9A)又はhIL-2 (0、10、100 ng/ml;それぞれ図7B、8B、及び9B) と一緒に72時間、インキュベートした。[3H]-チミジン取り込みを測定して増殖を表現した(cpm)。
【図8】図7乃至9は、 IL-15誘導性PBMC増殖に対する抗体146B7(図7)、404E4 (図8)及び404A8(図9)の阻害活性を示すグラフを含む。ヒトPBMCを、0.1、1、10μg/mlの146B7 (図7)、404E4 (図8) 又は 404A8 (図9)と組み合わせたhIL-15(0、25、100 ng/ml;それぞれ図7A、8A、及び9A)又はhIL-2 (0、10、100 ng/ml;それぞれ図7B、8B、及び9B) と一緒に72時間、インキュベートした。[3H]-チミジン取り込みを測定して増殖を表現した(cpm)。
【図9】図7乃至9は、 IL-15誘導性PBMC増殖に対する抗体146B7(図7)、404E4 (図8)及び404A8(図9)の阻害活性を示すグラフを含む。ヒトPBMCを、0.1、1、10μg/mlの146B7 (図7)、404E4 (図8) 又は 404A8 (図9)と組み合わせたhIL-15(0、25、100 ng/ml;それぞれ図7A、8A、及び9A)又はhIL-2 (0、10、100 ng/ml;それぞれ図7B、8B、及び9B) と一緒に72時間、インキュベートした。[3H]-チミジン取り込みを測定して増殖を表現した(cpm)。
【図10】図10は、IFNγで刺激した単球に対する抗体146B7の結合を示すグラフである。ヒトPBMCを IFNγ(500 U/ml) の存在下で最長2日間(37℃)、培養した。一試料当たり少なくとも5000個の細胞の蛍光強度を、フローサイトメトリ及び単球の通門による分析後に調べた。データは刺激指数(S.I.=(平均蛍光陽性染色)/(平均蛍光バックグラウンド染色)を示す。
【図11】図11は、抗体146B7(パネルB)又はアイソタイプ・コントロール抗体(パネルA)とのヒト単球の結合を示す。ヒトPBMCを単離し、この細胞をIFNγ(500U/ml)と一緒に培養後にサイトスピンを作製した。細胞をヘマトキシリンで対比染色した。
【図12】図12は、ヒト乾癬皮膚の、146B7(パネルB)又はアイソタイプ・コントロール抗体(hIgG1)(パネルA)との結合を示す。ヒト乾癬プラークを患者からインフォームド・コンセント後に得、検定まで−80℃で保存した。組織をビオチン化抗体で染色し、西洋わさびペルオキシダーゼの活性化後に観察した。
【図13】図13Aは、SCIDマウスを146B7又は賦形剤で処理した後のリウマチ性関節組織中の有核細胞のパーセンテージを示すグラフである。組織をヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色し、Photo Shop バージョン 6.0で解析した。データは、146B7処理(n=4)又は賦形剤処理(n=2)後のマウスの核(全面積のパーセンテージ)の平均及びs.e.m.として示されている。図13Bは、146B7(パネルB)又はPBS(パネルA)で処理した後の、SCIDマウス中に異種移植されたRA組織の代表的H&E染色を示す。
【図14】図14は、SCID/乾癬マウスにおける抗体146B7処理の作用を示すグラフを含む。パラフィン包埋に向けて生検をホルマリン固定し、H&EでKi-67核内抗原ついて染色した。図14Aは、角質層からリート・ペッグズ(原語:rete pegs)の始まりまで測定された表皮の厚さにより評価された、乾癬の重篤度を示す。図14Bは、角質層からリート・ペッグズの最深部まで測定された表皮の厚さを示す。図14Cは、錯角化症の等級を示す。図14Dは、上側真皮中の炎症性単核細胞数を示す。図14Eは、Ki-67+サイクリング・ケラチノサイトの数を示す。
【図15】図15は、抗体146B7 (パネルC)、CsA (パネルB)、又は賦形剤(パネルA)で処理した後のSCIDマウスに移植されたヒト乾癬皮膚のH&E染色を示す。移植から3週間後にマウスにPBS (プラセボ)、CsA (シクロスポリンA)(サンドス社)を、15日間にわたって1日置きに10mg/kgの用量、又は146B7を1日目に20 mg/kg、そして8日目及び15日目に10 mg/kgの用量、投与した。最後の注射から1週間後にマウスをと殺し、4 mm の穿孔生検を各異種移植片から採取した。パラフィン包埋に向けて生検をホルマリン固定し、H&Eで染色した。
【図16】図16は、146B7 (パネルC)、CsA (パネルB)、又は賦形剤(パネルA)で処理後のSCIDマウスに移植されたヒト乾癬皮膚のKi-67染色を示す。移植から3週間後にマウスにPBS (プラセボ)、CsA (シクロスポリンA)(サンドス社)を、15日間にわたって1日置きに10mg/kgの用量、又は146B7を1日目に20 mg/kg、そして8日目及び15日目に10 mg/kgの用量、投与した。最後の注射から1週間後にマウスをと殺し、4 mm の穿孔生検を各異種移植片から採取した。パラフィン包埋に向けて生検をホルマリン固定し、Ki-67核内抗原について染色した。
【図17】図17は、抗体146B7の、受容体に結合したIL-17への結合を示すグラフである。プレートをIL-15Rαで被覆し、IL-15と一緒にインキュベートした。10分後、ビオチン化146B7をウェルに加えた。146B7の、受容体に結合したIL-15への結合を405 nm でELISA-リーダで評価した。
【図18】図18は、IL-15が、Raji細胞上に発現したその受容体への結合後の、抗体146B7のIL-15への結合を示すグラフである。IL-15R発現Raji細胞をIL-15と一緒にインキュベート後、ビオチン化146B7 を10分後にこれら細胞に加えた。146B7の、受容体に結合したIL-15への結合をFACS分析で評価した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-15に結合し、重鎖及び軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域がSEQ ID NO:2に記載されたアミノ酸配列を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項2】
IL-15に結合し、重鎖及び軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分であって、前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO:4に記載されたアミノ酸配列を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項3】
IL-15に結合する単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分であって、
(a)図2に示す通りのCDR1、CDR2、及びCDR3配列(それぞれ配列TYWIG、IIYPGDSDTRYSPSFQG、GNWNCFDY)を含む重鎖可変領域と、
(b)図3に示す通りのCDR1、CDR2、及びCDR3配列(それぞれ配列RASQSVSSSYLA、GASRRAT、及びQRYGSSHT)を含む軽鎖可変領域と
を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項4】
以下の特徴:
(a)IL-15誘導性炎症誘発効果を阻害する;
(b)IL-15誘導性TNFα産生又はT細胞増殖を阻害する;
(c)組換えヒトIL-15を分析物とし、前記抗体をリガンドとして用いた表面プラズモン共鳴(SPR)技術で判定したときに10-7M未満の解離平衡定数(KD)でヒトIL-15に結合する;
(d)ヒトIL-15のβ鎖もしくはγ鎖相互作用ドメイン上に位置するエピトープに結合する;又は
(e)受容体結合型ヒトIL-15に結合する;
のうちの少なくとも一つを含む、上記請求項のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項5】
上記請求項のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合部分と薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項6】
IL-15発現細胞の活性を低下させる医薬を調製するための、上記請求項のいずれかに記載の抗体又は組成物の使用。
【請求項7】
IL-15により媒介される障害を治療するための医薬を調製するための、上記請求項のいずれかに記載の抗体又は組成物の使用。
【請求項8】
前記障害が炎症性腸疾患、乾癬、移植片拒絶、癌及び感染性疾患から成る群より選択される、請求項7に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図14E】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−256354(P2009−256354A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113689(P2009−113689)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【分割の表示】特願2003−522458(P2003−522458)の分割
【原出願日】平成14年8月23日(2002.8.23)
【出願人】(507316398)ゲンマブ エー/エス (18)
【Fターム(参考)】