インダクタンス素子用コア及びインダクタンス素子装置
【課題】被巻回部への巻線の巻回を容易とするインダクタンス素子用コアを得ること。
【解決手段】インダクタンス素子用コア20は、枠状部及び枠状部の内側で少なくとも一端を枠状部に接続され巻線が巻装される中脚部(被巻回部)21aを有し、T字形部(第一コア)21及びC字形部(第二コア)22を含む少なくとも2つに分割され、中脚部(被巻回部)21aに巻線が巻装されたのち、相互に接合されるコアであり、T字形部(第一コア)21は、中脚部(被巻回部)21aが枠状部より突出するように分割されている。そのため、中脚部(被巻回部)21aへ巻線を巻装する際、巻線の巻回を容易とする。
【解決手段】インダクタンス素子用コア20は、枠状部及び枠状部の内側で少なくとも一端を枠状部に接続され巻線が巻装される中脚部(被巻回部)21aを有し、T字形部(第一コア)21及びC字形部(第二コア)22を含む少なくとも2つに分割され、中脚部(被巻回部)21aに巻線が巻装されたのち、相互に接合されるコアであり、T字形部(第一コア)21は、中脚部(被巻回部)21aが枠状部より突出するように分割されている。そのため、中脚部(被巻回部)21aへ巻線を巻装する際、巻線の巻回を容易とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスやチョークコイル等のインダクタンス素子用のコア、及び実装基板上にインダクタンス素子を実装するインダクタンス素子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トランスやチョークコイル等のインダクタンス素子用のコアであって、四角枠状の枠状部と、この枠状部の内側で両端を枠状部に接続され巻線が巻装される被巻回部とを有するコアにおいては、そのままでは、被巻回部に巻線を巻回することが容易ではないので、例えば2個に分割されたものが、被巻回部に巻線が巻装されたのち、相互に接合される。その分割形状としては、例えば、EI型コアと呼ばれるように、四角枠の3辺とその中央部から延びる被巻回部とからなるE字形部と、四角枠の残る1辺からなるI字形部とに分割される。このような形状に分割されるEI型コアにおいては、E字形部の3つの突出部を面一に作製することで、平板状のI字形部と容易に突き合わせることができるので、作製が容易である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−269590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような分割形状のEI型コアにおいては、中央部から延びる被巻回部が、側方に存在する枠部から突出していないので、ボビン等を使用することなく、コアの被巻回部に巻線を巻回する際に、巻回しづらいという課題があった。特に自動巻線機等を用いて被巻回部に巻線を巻回する場合には、容易ではないので改善が求められていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、被巻回部への巻線の巻回を容易とするインダクタンス素子用コア、及びこのコアを用いたインダクタンス素子装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のインダクタンス素子用コアは、巻線が巻装される被巻回部と被巻回部を囲繞する枠状部の一部で成る第一枠状部とを含み、被巻回部が第一枠状部より突出する第一コアと、枠状部の残る部分で成る第二枠状部を少なくとも含み、第一コアと接合される第二コアとを有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明のインダクタンス素子装置は、実装基板と、巻線が巻装される被巻回部と被巻回部を囲繞する枠状部の一部で成る第一枠状部とを含み、被巻回部が第一枠状部より突出して実装基板に固着される第一コア、及び枠状部の残る部分で成る第二枠状部を少なくとも含み、第一コアと接合される第二コアとからなるコアと、実装基板に固着された状態の第一コアの被巻回部に巻回される巻線とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第一コアと第二コアを含む2個以上に分割され、このうち、第一コアは、被巻回部が枠状部より突出するように分割されているので、ボビン等を使用することなく、被巻回部への巻線の巻回を容易とし、自動巻線機等を用いて被巻回部に巻線を巻回する場合においても困難となることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明に係るインダクタンス素子用コア及びインダクタンス素子装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
(実施の形態1)
図1は本発明に係るインダクタンス素子用コアの実施の形態1を示す斜視図である。図1において、インダクタンス素子用コア20は、分割された2つの部分である概略T字形を成すT字形部(第一コア)21と概略C字形を成すC字形部(第二コア)22とから構成され、フェライトや圧粉磁芯等の磁性部材で形成されている。T字形部21は、巻線が巻回される被巻回部である円柱状の中脚部21aと、この中脚部21aを中央部に立設する長尺平板状の延長部(第一枠状部)21bとから成る。C字形部22は、矩形状の一対の側脚部(第二枠状部)22a,22aと、この2つの側脚部22a,22aを繋ぐ連結部(第二枠状部)22bとから成る。そしてこのT字形部21とC字形部22とを対向させて合わせることで、側脚部22a,22aと延長部21bと連結部22bとで構成される四角枠状部の内側に中脚部21aを有するコア20が構成されている。つまり、コア20は、中脚部(被巻回部)21aが、覆われるものがなく且つ周囲に立設するものがなく、外方に向かって突出するように、2つに分割されている。
【0011】
次ぎに、本実施の形態のインダクタンス素子装置の製造方法について説明する。図2は実装基板にコア20のT字形部21を固着する様子を示す斜視である。図2において、まず、実装基板60のコア固着位置60aに、分割されたコア20の一方であるT字形部21が、例えば接着剤により固着される(コア固着工程)。実装基板60のコア固着位置60aの周囲に設けられた端子ピン立設位置60bには、巻線の両端部が引出線として絡げられる端子ピン31,32(端子接続箇所)が、はんだ付けにより立設されている(図2中他の端子ピンは省略している)。
【0012】
図3はT字形部21の中脚部21aに第一コイルが巻回された様子を示す斜視図である。図4はT字形部21の中脚部21aに第二コイルが巻回された様子を示す斜視図である。次ぎに、図3に示されるように、導電線40(40a)の一方の端を端子ピン31に電気的に接続するように絡げ(端子接続工程)、その後、図中矢印で示すように実装基板60を回転させて中脚部21aに導電線40(40a)を巻回することにより巻線を形成する(巻装工程)。そして、所定回数巻回した後に導電線40(40a)の反対側の端を端子ピン32に絡げる(端子接続工程)。次いで、図4に示されるように、他の端子ピン33に別の導電線40(40b)の一方の端を絡げ(端子接続工程)、矢印で示すように実装基板60を回転させて中脚部21aに導電線40(40b)を巻回して巻線を形成し(巻装工程)、所定回数巻回した後に、導電線40(40b)の反対側の端を、端子ピン34に絡げる(端子接続工程)。このように、端子挿入工程と巻装工程とを繰り返して中脚部21aに所定数の巻線を形成する。
【0013】
なお、上記製造方法においては、導電線40の端を端子ピンに絡げた後、導電線40を中脚部21aに巻回しているが、この限りではなく、例えば、所定の固定位置に導電線40の端を固定しておき、中脚部21aに巻回した後、固定位置から外して端子ピンに接続し直してもよいし、さらには、すべての巻線を中脚部21aに巻回した後、各導電線40の端を端子ピンに接続するようにしてもよい。すなわち、端子挿入工程と巻装工程とは、順序が互いに入れ替わってもよい。また、上記巻装工程においては、自動巻線機を用いて導電線40を巻回してもよいし、手作業により巻回してもよい。
【0014】
また、本実施の形態においては、巻線の両端部が電気的に接続される端子接続箇所として端子ピン31〜34が設けられているが、端子接続箇所は端子ピンに限らず、例えば端子パッド等でもよい。
【0015】
また、本実施の形態のコア巻線方法においては、中脚部21aに直接導電線40を巻回しているが、各巻線間の絶縁は、導電線40に被覆された例えばエナメル等の被覆材により確保している。巻線構造の耐圧を向上させたい場合には、被覆材の厚さを大きくする。
【0016】
図5はT字形部21の中脚部21aに第三コイルが巻回された後、C字形部22が固着される様子を示す斜視図である。上記端子接続工程と巻装工程とを繰り返して中脚部21aに所定数の巻線を形成した後、接着剤等でT字形部21にC字形部22を固着する(コア合体工程)。
【0017】
以上のように、本実施の形態のトランス(インダクタンス素子装置)の製造方法は、実装基板60にT字形部21を固着するコア固着工程と、導電線40の一端を固定位置に固定した後、T字形部21に導電線40を巻回する巻装工程とを有している。また、本実施の形態のトランス(インダクタンス素子装置)は、実装基板60と、実装基板60に固着されたT字形部21と、実装基板60に固着された状態のT字形部21に巻回されることにより、T字形部21に巻装された巻線とを有している。このように、最終的に実装される実装基板60にT字形部21が固着され、この状態でT字形部21に巻線するので、ボビン等を使用することなく、導電線40を直接T字形部21に容易に巻回することができ、小型化、省スペース化を図り、さらに部品点数の削減やコスト削減を実現することができる。
【0018】
図6は中脚部21aに嵌める筒状治具の様子を示す斜視図である。上記実施の形態においては、中脚部21aに直接導電線40を巻回しているが、巻線構造の耐圧をさらに向上させたい場合には、例えば以下のようにする。すなわち、図6に示すように、中脚部21aに円筒状の筒状治具45を嵌め、上記と同じ方法にて筒状治具45の周囲に導電線40を巻回し、コア合体工程の前に筒状治具45を引き抜くことにより、中脚部21aと巻線との間に空間を形成する。このように構成することにより、巻線構造の耐圧、ひいてはこの巻線構造を用いたトランス等の装置の耐圧を向上させることができる。
【0019】
なお、自動巻線機などを用いて中脚部に導電線を巻回する場合、T字形部21の周囲の実装基板60上に高さの大きい部品が搭載されていると、導電線を巻回しづらいことがある。このような場合には、図6に示す筒状治具45よりさらに長い(中脚部21aより所定量長い)筒状治具を用いて、これを中脚部21aに嵌め、高さの大きい部品より更に高さの高くなった部分に導電線を巻回し、その後、巻線を中脚部21aに移動(スライド)させるようにしながら筒状治具を引き抜くことにより、T字形部21の周囲に実装部品が突出している場合であっても自動巻線機を用いて中脚部21aに容易に導電線を巻回することができる。
【0020】
(実施の形態2)
図7は本発明に係るインダクタンス素子用コアの実施の形態2を示す斜視図である。インダクタンス素子用コア50は、概略T字形を成すT字形部(第一コア)51と概略C字形を成すC字形部(第二コア)52とから成る。T字形部51は、円柱状の中脚部(被巻回部)51aと平板状の延長部(第一枠状部)51bとから構成されている。C字形部52は、一対の側脚部(第二枠状部)52a,52aとこれらを繋ぐ連結部(第二枠状部)52bとから構成されている。そして、本実施の形態の側脚部52a,52aの内側面は、中脚部52aに巻装される巻線に沿う、断面円弧状の凹型の曲面とされている。
【0021】
このような構成のインダクタンス素子用コアにおいては、実施の形態1のものと同様の効果を得られる他に、側脚部52a,52aの断面積を増やして磁束を多く流すことができる。
【0022】
(実施の形態3)
図8は本発明に係るインダクタンス素子用コアの実施の形態3を示す斜視図である。インダクタンス素子用コア70は、概略T字形を成すT字形部(第一コア)71と概略C字形を成すC字形部(第二コア)72とから成る。T字形部71は、円柱状の中脚部(被巻回部)71aと平板状の延長部(第一枠状部)71bとから構成されている。C字形部72は、一対の側脚部(第二枠状部)72a,72aとこれらを繋ぐ連結部(第二枠状部)72bとから構成されている。そして、延長部71bの両端部の側脚部72a,72aと対向する部分に凹部71cが形成されており、この凹部に側脚部72a,72aが嵌り込む構造とされている。
【0023】
このような構成のインダクタンス素子用コアにおいては、実施の形態1のものと同様の効果を得られる他に、凹部71cに側脚部72a,72aが嵌り込むので、T字形部71、C字形部72相互間の位置決めが容易に精度良く行われるとともに、凹部71cの側面と接触することにより、側脚部72a,72aの長さに多少のばらつきがあっても延長部71bと離れてしまうことがない。
【0024】
(実施の形態4)
図9は本発明に係るインダクタンス素子用コアの実施の形態4を示す斜視図である。インダクタンス素子用コア80は、概略T字形を成すT字形部(第一コア)81と概略C字形を成すC字形部(第二コア)82とから成る。T字形部81は、円柱状の中脚部(被巻回部)81aと平板状の延長部(第一枠状部)81bと延長部81bの両端部に設けられた一対の側脚部(第一枠状部)81c,81cとから構成されている。C字形部82は、一対の側脚部(第二枠状部)82a,82aとこれらを繋ぐ連結部(第二枠状部)82bとから構成されている。そして、側脚部81c,81cは、側脚部82a,82aと接続されることにより枠状部を形成する。
【0025】
このような構成のインダクタンス素子用コアにおいても、中脚部(被巻回部)81aが枠状部より突出するように分割されているので、実施の形態1のものと概略同様の効果を得ることができる。つまり、この発明にかかるインダクタンス素子用コアは、一方のコア(第一コア)が、中脚部(被巻回部)81aが枠状部より突出するように分割されていれば、所定の効果を得ることができ、完全にT字形を成しているものに限らない。
【0026】
(実施の形態5)
図10は本発明に係るインダクタンス素子用コアの実施の形態5を示す斜視図である。インダクタンス素子用コア90は、概略T字形を成すT字形部(第一コア)91と概略C字形を成すC字形部(第二コア)92とから成る。T字形部91は、円柱状の中脚部(被巻回部)91aと平板状の延長部(第一枠状部)91bとから構成されている。C字形部92は、一対の側脚部(第二枠状部)92a,92aとこれらを繋ぐ連結部(第二枠状部)92bとから構成されている。そして、延長部91bの両端部と、側脚部92a,82aの先端に、それぞれ段状の係合部91c,91c、被係合部92c,92cが形成されている。この係合部91c,91cと被係合部92c,92cとは、相互に嵌り合うように係合する。
【0027】
このような構成のインダクタンス素子用コアにおいては、実施の形態1のものと同様の効果を得られる他に、係合部91c,91cと被係合部92c,92cとが相互に嵌り合うように係合するので、T字形部91、C字形部92相互間の位置決めが容易に精度良く行われるとともに、側脚部92a,92aの長さに多少のばらつきがあっても延長部91bと離れてしまうことがない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明は、実装基板上にトランスやチョークコイル等のインダクタンス素子を実装するインダクタンス素子装置の製造方法に適用されて有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るインダクタンス素子用コアの実施の形態1の斜視図である。
【図2】実装基板にコアのT字形部を固着する様子を示す斜視図である。
【図3】T字形部の中脚部に第一コイルが巻回された様子を示す斜視図である。
【図4】T字形部の中脚部に第二コイルが巻回された様子を示す斜視図である。
【図5】T字形部の中脚部に第三コイルが巻回された後、C字形部が固着される様子を示す斜視図である。
【図6】中脚部と巻線との間に空間を形成する目的で中脚部に筒状治具を嵌める様子を示す斜視図である。
【図7】本発明に係るインダクタンス素子用コアの実施の形態2の斜視図である。
【図8】本発明に係るインダクタンス素子用コアの実施の形態3の斜視図である。
【図9】本発明に係るインダクタンス素子用コアの実施の形態4の斜視図である。
【図10】本発明に係るインダクタンス素子用コアの実施の形態5の斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
20 コア
21,51,71,81,91 T字形部(第一コア)
21a,51a,71a,81a,91a 中脚部(被巻回部)
21b,51b,71b,81b,91b 延長部(第一枠状部)
22,52,72,82,92 C字形部(第二コア)
22a,52a,72a,82a,92a 側脚部(第二枠状部)
22b,52b,72b,82b,92b 連結部(第二枠状部)
31〜34 端子ピン(固定位置、端子接続箇所)
40 導電線
45 筒状治具
60 実装基板
60a コア固着位置
60b 端子ピン立設位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスやチョークコイル等のインダクタンス素子用のコア、及び実装基板上にインダクタンス素子を実装するインダクタンス素子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トランスやチョークコイル等のインダクタンス素子用のコアであって、四角枠状の枠状部と、この枠状部の内側で両端を枠状部に接続され巻線が巻装される被巻回部とを有するコアにおいては、そのままでは、被巻回部に巻線を巻回することが容易ではないので、例えば2個に分割されたものが、被巻回部に巻線が巻装されたのち、相互に接合される。その分割形状としては、例えば、EI型コアと呼ばれるように、四角枠の3辺とその中央部から延びる被巻回部とからなるE字形部と、四角枠の残る1辺からなるI字形部とに分割される。このような形状に分割されるEI型コアにおいては、E字形部の3つの突出部を面一に作製することで、平板状のI字形部と容易に突き合わせることができるので、作製が容易である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−269590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような分割形状のEI型コアにおいては、中央部から延びる被巻回部が、側方に存在する枠部から突出していないので、ボビン等を使用することなく、コアの被巻回部に巻線を巻回する際に、巻回しづらいという課題があった。特に自動巻線機等を用いて被巻回部に巻線を巻回する場合には、容易ではないので改善が求められていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、被巻回部への巻線の巻回を容易とするインダクタンス素子用コア、及びこのコアを用いたインダクタンス素子装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のインダクタンス素子用コアは、巻線が巻装される被巻回部と被巻回部を囲繞する枠状部の一部で成る第一枠状部とを含み、被巻回部が第一枠状部より突出する第一コアと、枠状部の残る部分で成る第二枠状部を少なくとも含み、第一コアと接合される第二コアとを有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明のインダクタンス素子装置は、実装基板と、巻線が巻装される被巻回部と被巻回部を囲繞する枠状部の一部で成る第一枠状部とを含み、被巻回部が第一枠状部より突出して実装基板に固着される第一コア、及び枠状部の残る部分で成る第二枠状部を少なくとも含み、第一コアと接合される第二コアとからなるコアと、実装基板に固着された状態の第一コアの被巻回部に巻回される巻線とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第一コアと第二コアを含む2個以上に分割され、このうち、第一コアは、被巻回部が枠状部より突出するように分割されているので、ボビン等を使用することなく、被巻回部への巻線の巻回を容易とし、自動巻線機等を用いて被巻回部に巻線を巻回する場合においても困難となることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明に係るインダクタンス素子用コア及びインダクタンス素子装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
(実施の形態1)
図1は本発明に係るインダクタンス素子用コアの実施の形態1を示す斜視図である。図1において、インダクタンス素子用コア20は、分割された2つの部分である概略T字形を成すT字形部(第一コア)21と概略C字形を成すC字形部(第二コア)22とから構成され、フェライトや圧粉磁芯等の磁性部材で形成されている。T字形部21は、巻線が巻回される被巻回部である円柱状の中脚部21aと、この中脚部21aを中央部に立設する長尺平板状の延長部(第一枠状部)21bとから成る。C字形部22は、矩形状の一対の側脚部(第二枠状部)22a,22aと、この2つの側脚部22a,22aを繋ぐ連結部(第二枠状部)22bとから成る。そしてこのT字形部21とC字形部22とを対向させて合わせることで、側脚部22a,22aと延長部21bと連結部22bとで構成される四角枠状部の内側に中脚部21aを有するコア20が構成されている。つまり、コア20は、中脚部(被巻回部)21aが、覆われるものがなく且つ周囲に立設するものがなく、外方に向かって突出するように、2つに分割されている。
【0011】
次ぎに、本実施の形態のインダクタンス素子装置の製造方法について説明する。図2は実装基板にコア20のT字形部21を固着する様子を示す斜視である。図2において、まず、実装基板60のコア固着位置60aに、分割されたコア20の一方であるT字形部21が、例えば接着剤により固着される(コア固着工程)。実装基板60のコア固着位置60aの周囲に設けられた端子ピン立設位置60bには、巻線の両端部が引出線として絡げられる端子ピン31,32(端子接続箇所)が、はんだ付けにより立設されている(図2中他の端子ピンは省略している)。
【0012】
図3はT字形部21の中脚部21aに第一コイルが巻回された様子を示す斜視図である。図4はT字形部21の中脚部21aに第二コイルが巻回された様子を示す斜視図である。次ぎに、図3に示されるように、導電線40(40a)の一方の端を端子ピン31に電気的に接続するように絡げ(端子接続工程)、その後、図中矢印で示すように実装基板60を回転させて中脚部21aに導電線40(40a)を巻回することにより巻線を形成する(巻装工程)。そして、所定回数巻回した後に導電線40(40a)の反対側の端を端子ピン32に絡げる(端子接続工程)。次いで、図4に示されるように、他の端子ピン33に別の導電線40(40b)の一方の端を絡げ(端子接続工程)、矢印で示すように実装基板60を回転させて中脚部21aに導電線40(40b)を巻回して巻線を形成し(巻装工程)、所定回数巻回した後に、導電線40(40b)の反対側の端を、端子ピン34に絡げる(端子接続工程)。このように、端子挿入工程と巻装工程とを繰り返して中脚部21aに所定数の巻線を形成する。
【0013】
なお、上記製造方法においては、導電線40の端を端子ピンに絡げた後、導電線40を中脚部21aに巻回しているが、この限りではなく、例えば、所定の固定位置に導電線40の端を固定しておき、中脚部21aに巻回した後、固定位置から外して端子ピンに接続し直してもよいし、さらには、すべての巻線を中脚部21aに巻回した後、各導電線40の端を端子ピンに接続するようにしてもよい。すなわち、端子挿入工程と巻装工程とは、順序が互いに入れ替わってもよい。また、上記巻装工程においては、自動巻線機を用いて導電線40を巻回してもよいし、手作業により巻回してもよい。
【0014】
また、本実施の形態においては、巻線の両端部が電気的に接続される端子接続箇所として端子ピン31〜34が設けられているが、端子接続箇所は端子ピンに限らず、例えば端子パッド等でもよい。
【0015】
また、本実施の形態のコア巻線方法においては、中脚部21aに直接導電線40を巻回しているが、各巻線間の絶縁は、導電線40に被覆された例えばエナメル等の被覆材により確保している。巻線構造の耐圧を向上させたい場合には、被覆材の厚さを大きくする。
【0016】
図5はT字形部21の中脚部21aに第三コイルが巻回された後、C字形部22が固着される様子を示す斜視図である。上記端子接続工程と巻装工程とを繰り返して中脚部21aに所定数の巻線を形成した後、接着剤等でT字形部21にC字形部22を固着する(コア合体工程)。
【0017】
以上のように、本実施の形態のトランス(インダクタンス素子装置)の製造方法は、実装基板60にT字形部21を固着するコア固着工程と、導電線40の一端を固定位置に固定した後、T字形部21に導電線40を巻回する巻装工程とを有している。また、本実施の形態のトランス(インダクタンス素子装置)は、実装基板60と、実装基板60に固着されたT字形部21と、実装基板60に固着された状態のT字形部21に巻回されることにより、T字形部21に巻装された巻線とを有している。このように、最終的に実装される実装基板60にT字形部21が固着され、この状態でT字形部21に巻線するので、ボビン等を使用することなく、導電線40を直接T字形部21に容易に巻回することができ、小型化、省スペース化を図り、さらに部品点数の削減やコスト削減を実現することができる。
【0018】
図6は中脚部21aに嵌める筒状治具の様子を示す斜視図である。上記実施の形態においては、中脚部21aに直接導電線40を巻回しているが、巻線構造の耐圧をさらに向上させたい場合には、例えば以下のようにする。すなわち、図6に示すように、中脚部21aに円筒状の筒状治具45を嵌め、上記と同じ方法にて筒状治具45の周囲に導電線40を巻回し、コア合体工程の前に筒状治具45を引き抜くことにより、中脚部21aと巻線との間に空間を形成する。このように構成することにより、巻線構造の耐圧、ひいてはこの巻線構造を用いたトランス等の装置の耐圧を向上させることができる。
【0019】
なお、自動巻線機などを用いて中脚部に導電線を巻回する場合、T字形部21の周囲の実装基板60上に高さの大きい部品が搭載されていると、導電線を巻回しづらいことがある。このような場合には、図6に示す筒状治具45よりさらに長い(中脚部21aより所定量長い)筒状治具を用いて、これを中脚部21aに嵌め、高さの大きい部品より更に高さの高くなった部分に導電線を巻回し、その後、巻線を中脚部21aに移動(スライド)させるようにしながら筒状治具を引き抜くことにより、T字形部21の周囲に実装部品が突出している場合であっても自動巻線機を用いて中脚部21aに容易に導電線を巻回することができる。
【0020】
(実施の形態2)
図7は本発明に係るインダクタンス素子用コアの実施の形態2を示す斜視図である。インダクタンス素子用コア50は、概略T字形を成すT字形部(第一コア)51と概略C字形を成すC字形部(第二コア)52とから成る。T字形部51は、円柱状の中脚部(被巻回部)51aと平板状の延長部(第一枠状部)51bとから構成されている。C字形部52は、一対の側脚部(第二枠状部)52a,52aとこれらを繋ぐ連結部(第二枠状部)52bとから構成されている。そして、本実施の形態の側脚部52a,52aの内側面は、中脚部52aに巻装される巻線に沿う、断面円弧状の凹型の曲面とされている。
【0021】
このような構成のインダクタンス素子用コアにおいては、実施の形態1のものと同様の効果を得られる他に、側脚部52a,52aの断面積を増やして磁束を多く流すことができる。
【0022】
(実施の形態3)
図8は本発明に係るインダクタンス素子用コアの実施の形態3を示す斜視図である。インダクタンス素子用コア70は、概略T字形を成すT字形部(第一コア)71と概略C字形を成すC字形部(第二コア)72とから成る。T字形部71は、円柱状の中脚部(被巻回部)71aと平板状の延長部(第一枠状部)71bとから構成されている。C字形部72は、一対の側脚部(第二枠状部)72a,72aとこれらを繋ぐ連結部(第二枠状部)72bとから構成されている。そして、延長部71bの両端部の側脚部72a,72aと対向する部分に凹部71cが形成されており、この凹部に側脚部72a,72aが嵌り込む構造とされている。
【0023】
このような構成のインダクタンス素子用コアにおいては、実施の形態1のものと同様の効果を得られる他に、凹部71cに側脚部72a,72aが嵌り込むので、T字形部71、C字形部72相互間の位置決めが容易に精度良く行われるとともに、凹部71cの側面と接触することにより、側脚部72a,72aの長さに多少のばらつきがあっても延長部71bと離れてしまうことがない。
【0024】
(実施の形態4)
図9は本発明に係るインダクタンス素子用コアの実施の形態4を示す斜視図である。インダクタンス素子用コア80は、概略T字形を成すT字形部(第一コア)81と概略C字形を成すC字形部(第二コア)82とから成る。T字形部81は、円柱状の中脚部(被巻回部)81aと平板状の延長部(第一枠状部)81bと延長部81bの両端部に設けられた一対の側脚部(第一枠状部)81c,81cとから構成されている。C字形部82は、一対の側脚部(第二枠状部)82a,82aとこれらを繋ぐ連結部(第二枠状部)82bとから構成されている。そして、側脚部81c,81cは、側脚部82a,82aと接続されることにより枠状部を形成する。
【0025】
このような構成のインダクタンス素子用コアにおいても、中脚部(被巻回部)81aが枠状部より突出するように分割されているので、実施の形態1のものと概略同様の効果を得ることができる。つまり、この発明にかかるインダクタンス素子用コアは、一方のコア(第一コア)が、中脚部(被巻回部)81aが枠状部より突出するように分割されていれば、所定の効果を得ることができ、完全にT字形を成しているものに限らない。
【0026】
(実施の形態5)
図10は本発明に係るインダクタンス素子用コアの実施の形態5を示す斜視図である。インダクタンス素子用コア90は、概略T字形を成すT字形部(第一コア)91と概略C字形を成すC字形部(第二コア)92とから成る。T字形部91は、円柱状の中脚部(被巻回部)91aと平板状の延長部(第一枠状部)91bとから構成されている。C字形部92は、一対の側脚部(第二枠状部)92a,92aとこれらを繋ぐ連結部(第二枠状部)92bとから構成されている。そして、延長部91bの両端部と、側脚部92a,82aの先端に、それぞれ段状の係合部91c,91c、被係合部92c,92cが形成されている。この係合部91c,91cと被係合部92c,92cとは、相互に嵌り合うように係合する。
【0027】
このような構成のインダクタンス素子用コアにおいては、実施の形態1のものと同様の効果を得られる他に、係合部91c,91cと被係合部92c,92cとが相互に嵌り合うように係合するので、T字形部91、C字形部92相互間の位置決めが容易に精度良く行われるとともに、側脚部92a,92aの長さに多少のばらつきがあっても延長部91bと離れてしまうことがない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明は、実装基板上にトランスやチョークコイル等のインダクタンス素子を実装するインダクタンス素子装置の製造方法に適用されて有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るインダクタンス素子用コアの実施の形態1の斜視図である。
【図2】実装基板にコアのT字形部を固着する様子を示す斜視図である。
【図3】T字形部の中脚部に第一コイルが巻回された様子を示す斜視図である。
【図4】T字形部の中脚部に第二コイルが巻回された様子を示す斜視図である。
【図5】T字形部の中脚部に第三コイルが巻回された後、C字形部が固着される様子を示す斜視図である。
【図6】中脚部と巻線との間に空間を形成する目的で中脚部に筒状治具を嵌める様子を示す斜視図である。
【図7】本発明に係るインダクタンス素子用コアの実施の形態2の斜視図である。
【図8】本発明に係るインダクタンス素子用コアの実施の形態3の斜視図である。
【図9】本発明に係るインダクタンス素子用コアの実施の形態4の斜視図である。
【図10】本発明に係るインダクタンス素子用コアの実施の形態5の斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
20 コア
21,51,71,81,91 T字形部(第一コア)
21a,51a,71a,81a,91a 中脚部(被巻回部)
21b,51b,71b,81b,91b 延長部(第一枠状部)
22,52,72,82,92 C字形部(第二コア)
22a,52a,72a,82a,92a 側脚部(第二枠状部)
22b,52b,72b,82b,92b 連結部(第二枠状部)
31〜34 端子ピン(固定位置、端子接続箇所)
40 導電線
45 筒状治具
60 実装基板
60a コア固着位置
60b 端子ピン立設位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線が巻装される被巻回部と前記被巻回部を囲繞する枠状部の一部で成る第一枠状部とを含み、前記被巻回部が前記第一枠状部より突出する第一コアと、
前記枠状部の残る部分で成る第二枠状部を少なくとも含み、前記第一コアと接合される第二コアと
を有することを特徴とするインダクタンス素子用コア。
【請求項2】
前記枠状部が、四角枠状を成し、
前記第一コアは、1辺の前記枠状部で成る前記第一枠状部と前記第一枠状部の略中央から延びる前記被巻回部とからなる概略T字形を成し、
前記第二コアは、前記枠状部の残る3辺の前記第二枠状部からなる概略C字形を成す
ことを特徴とする請求項1に記載のインダクタンス素子用コア。
【請求項3】
実装基板と、
巻線が巻装される被巻回部と前記被巻回部を囲繞する枠状部の一部で成る第一枠状部とを含み、前記被巻回部が前記第一枠状部より突出して前記実装基板に固着される第一コア、及び前記枠状部の残る部分で成る第二枠状部を少なくとも含み、前記第一コアと接合される第二コアとからなるコアと、
前記実装基板に固着された状態の前記第一コアの前記被巻回部に巻回される巻線と
を有することを特徴とするインダクタンス素子装置。
【請求項4】
前記巻線は、前記実装基板を回転することにより、前記第一コアの前記被巻回部に巻回される
ことを特徴とする請求項3に記載のインダクタンス素子装置。
【請求項1】
巻線が巻装される被巻回部と前記被巻回部を囲繞する枠状部の一部で成る第一枠状部とを含み、前記被巻回部が前記第一枠状部より突出する第一コアと、
前記枠状部の残る部分で成る第二枠状部を少なくとも含み、前記第一コアと接合される第二コアと
を有することを特徴とするインダクタンス素子用コア。
【請求項2】
前記枠状部が、四角枠状を成し、
前記第一コアは、1辺の前記枠状部で成る前記第一枠状部と前記第一枠状部の略中央から延びる前記被巻回部とからなる概略T字形を成し、
前記第二コアは、前記枠状部の残る3辺の前記第二枠状部からなる概略C字形を成す
ことを特徴とする請求項1に記載のインダクタンス素子用コア。
【請求項3】
実装基板と、
巻線が巻装される被巻回部と前記被巻回部を囲繞する枠状部の一部で成る第一枠状部とを含み、前記被巻回部が前記第一枠状部より突出して前記実装基板に固着される第一コア、及び前記枠状部の残る部分で成る第二枠状部を少なくとも含み、前記第一コアと接合される第二コアとからなるコアと、
前記実装基板に固着された状態の前記第一コアの前記被巻回部に巻回される巻線と
を有することを特徴とするインダクタンス素子装置。
【請求項4】
前記巻線は、前記実装基板を回転することにより、前記第一コアの前記被巻回部に巻回される
ことを特徴とする請求項3に記載のインダクタンス素子装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2008−283036(P2008−283036A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126672(P2007−126672)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(390013723)デンセイ・ラムダ株式会社 (272)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(390013723)デンセイ・ラムダ株式会社 (272)
【Fターム(参考)】
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