説明

インダクタ及び回路装置

【課題】落下等の衝撃に強いインダクタ及び回路装置を提供する。
【解決手段】基板5が矢印A方向に落下して、基板5に対して垂直な衝撃が加わったとすると、この衝撃の力が基板5から各リード4を介して磁性体コア2へと伝わる。このとき、各リード4が略螺旋の一部を描く様に曲がっていると、インダクタ1が略螺旋の一部を描く各リード4を通じて回転方向の力を受け、衝撃の力がインダクタ1の回転力となって分散される。このため、衝撃の力が各リード4の付け根に集中せずに済み、インダクタ1が破損し難くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードを有するインダクタ、及び該インダクタを搭載した回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回路装置としては、例えば回路の入力側や出力側から見た回路インピーダンスを高くするために、LC共振回路を用いたものがある。
【0003】
例えば、図8に示す様にインダクタ101とコンデンサ102を並列接続したLC共振回路103を入力端子104と低インピーダンス回路105間に挿入し、LC共振回路103の共振周波数を入力端子104から入力されるパルス信号の周波数に一致させる。入力端子104からパルス信号が入力されると、LC共振回路103が共振して高インピーダンスを示し、入力端子104から見たインピーダンスが高くなる。これにより、入力端子104が低インピーダンス回路105の回路インピーダンスから分離され、入力端子104を高インピーダンス回路106のみに接続しているものとみなすことができる。
【0004】
この様なLC共振回路103のインダクタ101としては、多様なタイプのものを適用することができ、例えば特許文献1、2等に記載されているものを適用することができる。特許文献1のインダクタは、ドラム型の磁性体コアの端面に対して複数のリードを垂直に固着し、この磁性体コアを基台に装着して、磁性体コアに巻回されたコイルの線材を磁性体コアの各リードに絡げて接続したものである。また、特許文献2のインダクタは、基台に対して複数のリードを垂直に固定し、ドラム型の磁性体コアを基台に装着して、磁性体コアに巻回されたコイルの線材を基台の各リードに絡げて接続したものである。
【0005】
ところで、LC共振回路103の消費電流が大きい(例えば約500mA以上)場合は、インダクタ101に流し得る直流電流も大きくする必要がある。このためには、コイルの線材を太くしたり、磁性体コアを大きくする必要があり、インダクタ101そのものが大型化して重くなる。
【特許文献1】実開平3−124613号公報
【特許文献2】実開平4−25209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、磁性体コアにコイルを巻回してなるインダクタは、落下等の衝撃に弱い。特に、インダクタが大型化して重くなる程、落下したときに加わるインダクタの衝撃が大きくなり、インダクタが破損し易くなる。
【0007】
このため、インダクタ全体をケースに収めて保護し、インダクタに直接衝撃が加わらない様にすることが考えられるが、この場合は、インダクタが大型化し、部品点数も多くなって、コストの上昇を招く。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、落下等の衝撃に強いインダクタ及び回路装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、インダクタ本体にリードを固定し、線材を巻回してなるインダクタを該リード線に接続したインダクタにおいて、前記リードは、略螺旋の一部を描く様に前記インダクタ本体から突出している。
【0010】
また、本発明は、複数のリードを有しており、該各リードが、同一の軸周りで略螺旋の一部を描く様に突出している。
【0011】
一方、他の本発明は、上記本発明のインダクタが搭載された基板を備える回路装置において、前記インダクタのインダクタ本体と前記基板との間に弾性体を介在させている。
【0012】
例えば、弾性体は、弾性を有する両面テープ又は弾性を有する塗料である。
【0013】
また、別の本発明は、インダクタが搭載された基板を備える回路装置において、前記インダクタが搭載された基板部位の裏面側に、空洞を設けている。
【0014】
更に、この様な本発明の回路装置においては、基板が、この基板両面に部品を搭載することが可能な両面基板であって、この両面基板の両面側を覆うそれぞれのシャーシを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のインダクタによれば、リードが略螺旋の一部を描く様にインダクタ本体から突出している。この略螺旋の一部とは、螺旋に近似する滑らかな円弧ラインの一部でも良いし、螺旋に近似する多角形状の屈曲ラインの一部でも良い。
【0016】
ここで、インダクタを搭載した基板が落下して、基板に対して垂直な衝撃が加わったものとする。このとき、衝撃の力が基板からインダクタのリードを介して該インダクタへと伝わり、機械的強度が弱いリードの付け根でインダクタが破損し易い。ところが、リードが略螺旋の一部を描く様に曲がっていると、インダクタが略螺旋の一部を描くリードを通じて回転方向の力を受けることになり、衝撃の力がインダクタの回転力となって分散される。このため、衝撃の力がリードの付け根に集中せずに済み、インダクタが破損し難くなる。
【0017】
これに対して、従来の様にリードをインダクタ本体に対して垂直に取り付けた場合は、基板に対して垂直な衝撃が加わると、衝撃の力が基板からインダクタのリードを介して該インダクタにも垂直に伝わり、基板とインダクタ本体との間にリードが挟み込まれる状態となって、衝撃の力がリードに集中し、リードの付け根でインダクタが破損してしまう。
【0018】
また、複数のリードを設け、該各リードを同一の軸周りで略螺旋の一部を描く様に突出させているので、インダクタを搭載した基板が落下したときには、インダクタが略螺旋の一部を描く全てのリードを通じて一回転方向の力を受けることになり、衝撃の力がインダクタの回転力となってより確実に分散される。
【0019】
一方、他の本発明の回路装置によれば、上記本発明のインダクタのインダクタ本体と基板との間に弾性体を介在させている。例えば、弾性体として、弾性を有する両面テープ又は弾性を有する塗料を用いている。この弾性体は、インダクタを搭載した基板が落下したときに、基板からインダクタへと伝わる衝撃の力を吸収するので、インダクタがより破損し難くなる。
【0020】
また、別の本発明の回路装置によれば、インダクタが搭載された基板部位の裏面側に、空洞を設けている。このため、この回路装置が落下して、インダクタが搭載された基板に対して垂直な衝撃が加わったときには、基板部位が空洞側に撓んで衝撃の力を吸収し、衝撃の力がインダクタに伝わる前に緩和される。
【0021】
更に、この様な本発明の回路装置では、両面基板の両面側を覆うそれぞれのシャーシを設けているので、該各シャーシを外して、両面基板の両面を修理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明のインダクタを、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明のインダクタの一実施形態を底面側から見て示す斜視図である。また、図2(a)及び(b)は、本実施形態のインダクタを示す側面図及び底面図である。尚、図2(a)には、本実施形態のインダクタが搭載された基板の一部が示されている。
【0024】
本実施形態のインダクタ1は、ドラム型の磁性体コア2の端面2aに対して一対のリード4を固着し、この磁性体コア2に線材を巻回してコイル3を形成し、このコイル3の線材3aの両端を各リード4の根元に絡げて半田付けしたものである。
【0025】
各リード4は、例えば、それらの一端を磁性体コア2の端面2aに形成された各小穴に差し込んで、該各一端を接着剤により接着して固定されている。これらのリード4は、磁性体コア2の中心軸周りで略螺旋の一部を描く様に該磁性体コア2の端面2aから突出している。
【0026】
基板5には、一対の孔5aが予め形成されており、各孔5aの径がインダクタ1の各リード4の外径よりも十分に大きくされるか、あるいは各孔5aの形状が各リード4の形状に近い円弧状に形成されている。このため、インダクタ1の各リード4を基板5のそれぞれの孔5aに容易に差し込むことができる。
【0027】
そして、各リード4の先端だけが基板5の裏面の配線パターンに半田付けされて、インダクタ1が基板5に搭載されている。この状態では、インダクタ1の各リード4の先端だけが基板5に半田付けされて固定され、該各リード4の他の部分が浮いている。
【0028】
ここで、基板5が矢印A方向に落下して、基板5に対して垂直な衝撃が加わったとすると、この衝撃の力が基板5から各リード4を介して磁性体コア2へと伝わる。このとき、各リード4が略螺旋の一部を描く様に曲がっていると、インダクタ1が略螺旋の一部を描く各リード4を通じて回転方向の力を受けることになり、衝撃の力がインダクタ1の回転力となって分散される。このため、衝撃の力が各リード4の付け根に集中せずに済み、インダクタ1が破損し難くなる。
【0029】
特に、コイルの線材が太かったり、磁性体コアが大型であって、インダクタが重い場合は、インダクタが落下等の衝撃に弱くて破損し易いので、本実施形態の適用が有効である。
【0030】
図3(a)及び(b)は、比較例のインダクタを示す側面図及び底面図である。この比較例のインダクタ11は、ドラム型の磁性体コア12の端面12aに対して直線状の各リード13を垂直に固着したものであり、基板14に搭載されている。この基板14が矢印A方向に落下して、この基板14に対して垂直な衝撃が加わると、衝撃の力が基板14から各リード13を介して磁性体コア12にも垂直に伝わり、基板14と磁性体コア12との間に各リード13が挟み込まれる状態となって、衝撃の力が各リード13に集中する。このため、各リード13の付け根で磁性体コア12が破損し易い。
【0031】
次に、本発明の回路装置を、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0032】
図4は、本発明の回路装置の一実施形態を示す側面図である。本実施形態の回路装置21では、図1のインダクタ1と基板5間に弾性体6を介在させている。弾性体6としては、弾性を有する両面テープ又は弾性を有する塗料等を適用することができる。
【0033】
この様にインダクタ1と基板5間に弾性体6を介在させた場合は、基板1が落下したときに、弾性体6が基板5からインダクタ1へと伝わる衝撃の力を吸収するので、インダクタ1がより破損し難くなる。
【0034】
図5は、本発明の回路装置の他の実施形態を示す側面図である。本実施形態の回路装置22では、インダクタ23の各リード24を基板25のそれぞれの孔25aに差し込んで、各リード24の先端を基板25の裏面の配線パターンに半田付けしている。そして、基板25を第1シャーシ26に載せて、各ビス27により基板25を第1シャーシ26にねじ止めし、更に第1シャーシ26に第2シャーシ28を重ね合わせて固定し、第2シャーシ28により基板25上のインダクタ23等の電子部品を覆っている。
【0035】
インダクタ23が搭載された基板25部位の裏面側には第1シャーシ26の凹部26aが位置し、この基板25部位の裏面側が空洞となっており、この基板25部位の撓み変形が可能にされている。このため、この回路装置22が矢印A方向に落下して、基板25に衝撃が加わったときには、インダクタ23搭載の基板25部位が第1シャーシ26の凹部26a側に撓んで衝撃の力を吸収し、衝撃の力がインダクタ23に伝わる前に緩和される。これにより、インダクタ23の破損が防止される。
【0036】
図6は、比較例の回路装置を示す側面図である。この比較例の回路装置31でも、インダクタ32を基板33に搭載し、この基板33を第1シャーシ34に載せて、各ビス35により基板33を第1シャーシ34にねじ止めし、更に第1シャーシ34に第2シャーシ35を重ね合わせて固定し、第2シャーシにより基板33上のインダクタ23等の電子部品を覆っている。ただし、インダクタ32が搭載された基板33部位の裏面側には空洞が存在しない。このため、回路装置31が矢印A方向に落下して、基板33に衝撃が加わっても、基板33が撓むことがなく、この衝撃の力の殆どが基板33上のインダクタ32に直接伝わる。従って、インダクタ32が破損し易い。
【0037】
図7は、本発明の回路装置の別の実施形態を示す側面図である。本実施形態の回路装置41では、インダクタ42を両面基板43に搭載し、この両面基板43を第1シャーシ44に載せて、各ビス45により両面基板43を第1シャーシ44にねじ止めし、更に第1シャーシ44の表裏に第2及び第3シャーシ46、47を重ね合わせて固定し、第2シャーシ46により両面基板43表面のインダクタ42等の電子部品を覆い、また第3シャーシ47により両面基板43裏面の電子部品を覆っている。
【0038】
インダクタ42が搭載された両面基板43部位の表面側及び裏面側には、第2シャーシ46の内部空間及び第3シャーシ47の内部空間が存在する。このため、この回路装置41が矢印A方向に落下して、両面基板43に衝撃が加わったときには、インダクタ42が搭載された両面基板43部位が上下に撓んで衝撃の力を吸収し、衝撃の力がインダクタ42に伝わる前に緩和される。これにより、インダクタ42の破損が防止される。
【0039】
また、この回路装置41のシャーシが、第1乃至第3シャーシ44、46、47かなる3層構造であるため、第2シャーシ46を取り外せば、両面基板43表面の電子部位を修理することができ、第3シャーシ47を取り外せば、両面基板43裏面の電子部位を修理することができる。
【0040】
尚、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、多様に変形することができる。例えば、インダクタの各リードとして、螺旋に近似する滑らかな円弧ラインの一部を描く様に突出するものを例示しているが、この代わりに、螺旋に近似する多角形状の屈曲ラインの一部を描く様に突出するものであっても良い。
【0041】
また、インダクタとして、各リードを磁性体コアに固着するものを例示しているが、磁性体コアを装着する基台を設け、この基台に各リードを固着したものであっても良い。あるいは、ボビンの周りに線材を巻回して、コイルを形成し、このボビンの中央もしくは周囲に磁性体を配置し、ボビンに各リードを固着したものであっても構わない。
【0042】
更に、図5及び図7の回路装置22、42において、インダクタイ23、42及び基板25、43の代わりに、図1のインダクタ1及び基板5を適用しても構わない。この場合は、インダクタの破損をより効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のインダクタの一実施形態を底面側から見て示す斜視図である。
【図2】(a)及び(b)は、図1のインダクタを示す側面図及び底面図である。
【図3】(a)及び(b)は、比較例のインダクタを示す側面図及び底面図である。
【図4】本発明の回路装置の一実施形態を示す側面図である。
【図5】本発明の回路装置の他の実施形態を示す側面図である。
【図6】比較例の回路装置を示す側面図である。
【図7】本発明の回路装置の別の実施形態を示す側面図である。
【図8】LC共振回路を示す回路図である。
【符号の説明】
【0044】
1、23、42 インダクタ
2 磁性体コア
3 コイル
4、24 リード
5、25、 基板
6 弾性体
21、22、41 回路装置
26、44 第1シャーシ
27、45 ビス
28、46 第2シャーシ
43 両面基板
47 第3シャーシ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタ本体にリードを固定し、線材を巻回してなるコイルを該リード線に接続したインダクタにおいて、
前記リードは、略螺旋の一部を描く様に前記インダクタ本体から突出したことを特徴とするインダクタ。
【請求項2】
複数のリードを有しており、該各リードが、同一の軸周りで略螺旋の一部を描く様に突出したことを特徴とする請求項1に記載のインダクタ。
【請求項3】
請求項1に記載のインダクタが搭載された基板を備える回路装置において、
前記インダクタのインダクタ本体と前記基板との間に弾性体を介在させたことを特徴とする回路装置。
【請求項4】
弾性体は、弾性を有する両面テープ又は弾性を有する塗料であることを特徴とする請求項3に記載の回路装置。
【請求項5】
インダクタが搭載された基板を備える回路装置において、
前記インダクタが搭載された基板部位の裏面側に、空洞を設けたことを特徴とする回路装置。
【請求項6】
基板が、この基板両面に部品を搭載することが可能な両面基板であって、この両面基板の両面側を覆うそれぞれのシャーシを有することを特徴とする請求項3又は5に記載の回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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