説明

インテグラル型パワーステアリング装置

【課題】ストロークリミッタの開弁位置の調整を行うことができるインテグラル型パワーステアリング装置を提供すること。
【解決手段】ハウジングと別体で形成されると共にハウジング10と第1バルブ9aの間に設けられ、内部に第1バルブ本体91を収容する第1バルブ本体収容部が形成された第1バルブ位置調整部材97と、ハウジング10と別体で形成されると共にハウジングと第2バルブ9bの間に設けられ、内部に第2バルブ本体を収容する第2バルブ本体収容部91が形成された第2バルブ位置調整部材97とを有し、リミッタバルブのバルブ本体91は、バルブ本体91の長手方向において、ハウジング10との相対位置が調整可能に設けられていることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントロールバルブとパワーシリンダをステアリングギヤに組み込んで一体としたインテグラル型のパワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワーシリンダのピストンのストロークを制限するストロークリミッタを設けたインテグラル型パワーステアリング装置が知られている。特許文献1に開示される装置では、ストロークリミッタはプランジャを備えたバルブであり、操舵角(ハンドルの切れ角)が所定量に達すると(例えばセクタギヤが所定の回転位置に到達すると)、プランジャの先端部が押されてストロークリミッタを開弁する構成となっている。ストロークリミッタが開弁するとアシスト圧が低下し、それ以上のピストンのストロークが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−65667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ストロークリミッタの開弁位置は、車両やタイヤに応じて位置調整を行う必要がある。特許文献1に記載の技術では、開弁位置が固定されているため、位置調整を行うことができないという問題があった。本発明の目的とするところは、ストロークリミッタの開弁位置の調整を行うことができるインテグラル型パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の装置は、好ましくは、パワーシリンダのハウジングに対するストロークリミッタのバルブ本体の位置を調整可能に設けた。
【発明の効果】
【0006】
よって、バルブ本体のハウジングに対する位置が調整可能に設けられているため、ストロークリミッタの開弁位置を装置毎に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1のインテグラル型パワーステアリング装置の断面図である(車両に装着前)。
【図2】実施例1のリミッタバルブの断面図である(車両に装着後)。
【図3】実施例1のインテグラル型パワーステアリング装置の断面図である(車両に装着後、左操舵時)。
【図4】実施例1のインテグラル型パワーステアリング装置の断面図である(車両に装着後、右操舵時)。
【図5】他の実施例のインテグラル型パワーステアリング装置の断面図である(車両に装着前)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のインテグラル型パワーステアリング装置を実現する形態を、図面に基づき説明する。
【0009】
[実施例1]
まず、図1を用いて実施例1のインテグラル型パワーステアリング装置(以下、装置1という)の全体構成について説明する。図1は、車両に装着する前の装置1を、入力軸2の回転中心を通りセクタギヤ8の回転軸に垂直な平面で切った縦断面図である。以下、説明のため、入力軸2が延びる方向にx軸を設け、ステアリングホイールの側(図1の右側)を正方向とする。
【0010】
装置1は、ハウジング10と、ステアリングホールに接続される入力軸(スタブシャフト)2と、ハウジング10に収容され、ハウジング10の内部を第1圧力室16及び第2圧力室17に隔成するピストン7と、入力軸2とピストン7の間に設けられ、入力軸2の回転運動をピストン7の軸方向運動に変換する第1変換機構(ボールねじ機構5)と、ピストン7の外周に設けられたラック70と、ラック70に噛合いラック70(ピストン7)の軸方向運動を回転運動に変換すると共に、第2圧力室17内に配置されるセクタギヤ8とから構成される第2変換機構と、外部の油圧源から供給される作動油を選択的に第1圧力室16と第2圧力室17とに供給するコントロールバルブ6と、セクタギヤ8の回転方向運動をリンク機構を介して操舵輪に伝達する伝達機構(ピットマンアーム)と、必要な操舵角に達すると高圧側の圧力室を減圧(低圧側の圧力室を増圧)してピストン7のストローク(x軸方向移動)を制限するストロークリミッタであるリミッタバルブ9と、から構成されている。
【0011】
装置1はハウジング10内に収容されている。ハウジング10は、ピストン7及びセクタギヤ8を収容するステアリングハウジング11と、ステアリングハウジング11のx軸正方向側に設けられ、コントロールバルブ6を収容するバルブハウジング12と、バルブハウジング12のx軸正方向側の開口部を液密に封止するカバー13とから構成されている。
【0012】
入力軸2は、カバー13にボールベアリング130を介して回転自在に軸支されている。入力軸2のx軸負方向側の端部には中空部20が形成されており、この中空部20にトーションバー3のx軸正方向側の端部が挿入されている。入力軸2のx軸負方向側の外周は、略円筒状に形成されたロータ60の内周に挿入されている。入力軸2、トーションバー3、及びロータ60はピン30によって固定され、一体に回転するようになっている。入力軸2には、トーションバー3を介してねじ軸4が接続されている。ねじ軸4のx軸正方向側には、ねじ軸4と一体にバルブボディ61が形成されている。バルブボディ61は、バルブハウジング12にボールベアリング120を介して回転自在に軸支されている。バルブボディ61内には中空のロータ収容部610が形成されており、ロータ収容部610にはロータ60が回転自在に収容されている。ねじ軸4には、ロータ収容部610と連通して、中空のトーションバー収容部40が形成されており、トーションバー収容部40にはトーションバー3が収容されている。入力軸2のx軸負方向端の外周は、トーションバー収容部40のx軸正方向端の内周に挿入され、ベアリング41によって回転自在に軸支されている。トーションバー3のx軸負方向側の端部はねじ軸4のx軸負方向側の端部とピン31によって固定されている。
【0013】
ねじ軸4には、ボールねじ機構5を介してピストン7がx軸方向移動可能に設けられている。ピストン7は、ステアリングハウジング11内に形成された円筒状のシリンダ部14内に収容されている。シリンダ部14のx軸正方向側端は開口しているが、x軸負方向側端は底部140によって閉塞されている。セクタギヤ8は、ステアリングハウジング11内であってシリンダ部14と直交する方向に形成されたギヤ室15に収容されている。セクタギヤ8には、ピットマンアームが接続されている。ピストン7の外周には、ピストンシール71が装着されている。ピストンシール71により、シリンダ部14が第1圧力室16と第2圧力室17とに隔成されてパワーシリンダを構成している。シリンダ部14のピストンシール71よりx軸負方向側が第1圧力室16となり、シリンダ部14のピストンシール71よりx軸正方向側及びギヤ室15が第2圧力室17となっている。
【0014】
コントロールバルブ6は、ロータ60とバルブボディ61を有している。ロータ60の外周には、x軸方向に延びる切替溝600が複数所定の間隔で設けられている。ロータ60の外周に対向するバルブボディ61のロータ収容部610の内周には、x軸方向に延びる第1軸方向溝611と第2軸方向溝612が複数所定の間隔で形成されている。バルブボディ61の外周に対向するバルブハウジング12の内周面には、周方向に延びる吸入側周方向溝121と第1圧力室側周方向溝122とがx軸方向に互いに離間して形成されている。バルブボディ61には、第1軸方向溝611と第1圧力室側周方向溝122とを連通する第1油路613、第2軸方向溝612と第2圧力室17と連通する第2油路614、及びバルブボディ61の内周と外周とを連通する第3油路615が形成されている。バルブハウジング12には、外部のオイルポンプと接続する吸入ポート123と、吸入ポート123と吸入側周方向溝121とを連通する第4油路124と、第1圧力室側周方向溝122に接続する第5油路125が形成されている。ステアリングハウジング11には、第5油路125と第1圧力室16とを連通する第6油路126が形成されている。ロータ60の切替溝600、バルブボディ61の第1軸方向溝611、第2軸方向溝612は、入力軸2(ロータ60)とバルブボディ61との相対回転によって、オイルポンプからの作動油の供給先を第1圧力室16または第2圧力室17との間で切り替えるコントロールバルブ6を形成している。
【0015】
なお、ピストン7には第1リリーフ弁21が設けられている。第1リリーフ弁21は、第2圧力室17の圧力に対して第1圧力室16の圧力が所定以上の高圧になると開弁し、第1圧力室16内の作動液を第2圧力室17に排出する。また、バルブハウジング12には第2リリーフ弁22が設けられている。第2リリーフ弁22は、吸入ポート123の圧力に対して第2圧力室17の圧力が所定以上の高圧になると開弁し、第2圧力室17内の作動液を吸入ポート123に排出する。なお、リリーフ弁21,22を省略することとしてもよい。
【0016】
リミッタバルブ9は、第1圧力室16の容積が減少する方向(x軸負方向)で第1所定位置までピストン7が移動するとき、第2圧力室17内の圧力を第1圧力室16側に排出する第1バルブ9aと、第2圧力室17の容積が減少する方向(x軸正方向)で第2所定位置までピストン7が移動するとき、第1圧力室16内の圧力を第2圧力室17側に排出する第2バルブ9bとを有している。ステアリングハウジング11には、第1圧力室16に向かって第1バルブ9aが装着され、第2圧力室17(ギヤ室15)に向かって第2バルブ9bが装着されている。第1バルブ9aと第2バルブ9bとはステアリングハウジング11内に形成された第7油路18によって接続されている。図1は、装置1が車両に装着される前(バルブ本体91ないしピン95の位置が調整される前)の状態における第1バルブ9a及び第2バルブ9bを示す。
【0017】
以下、リミッタバルブ9の詳細について説明する。第1バルブ9a及び第2バルブ9bは同一構造であるため、第1バルブ9aについてのみ説明する。図2は、バルブ本体91の軸心を通る平面で第1バルブ9aを切った部分断面図である。図2は、装置1が車両に装着された後(バルブ本体91ないしピン95の位置が調整された後)の状態における第1バルブ9aを示す。
【0018】
第1バルブ9aは、ハウジング10の第1圧力室16側(ステアリングハウジング11の底部140)に設けられ、内部にプランジャ収容部910を有するバルブ本体91と、プランジャ収容部910内に設けられ、バルブ本体91の長手方向(x軸方向)に進退自在に設けられたプランジャ92と、バルブ本体91に設けられ、第1圧力室16と第2圧力室17側とを接続する連通路の一部を構成し、プランジャ92が当接する(着座する)ことにより上記連通路を遮断すると共に離間することにより連通させるシート部93と、プランジャ92をシート部93に付勢する付勢部材であるコイルスプリング94と、シート部93よりも第1圧力室16側に突出するようにプランジャ92に設けられ、ピストン7と当接し、ピストン7によって押圧されることによりプランジャ92と一体に移動しシート部93からプランジャ92を離間させ第1圧力室16と第2圧力室17とを連通させる当接部(ピン95)と、ハウジング10と別体で形成されると共にハウジング10とバルブ本体91の間に設けられ、内部にバルブ本体91を収容するバルブ本体収容部900が形成されたバルブ位置調整部材97(バルブハウジング90、ロックナット96)と、から構成されている。
【0019】
バルブ本体91のプランジャ収容部910は、バルブ本体91のx軸正方向側に設けられている。プランジャ収容部910のx軸正方向側開口部の外周には、他の部位よりも厚さが薄いかしめ部911が形成されている。バルブ本体91におけるプランジャ収容部910のx軸負方向端には、プランジャ収容部910とバルブ本体91の外周側とを連通させる貫通孔912が径方向に貫通形成されている。バルブ本体91の背後(x軸負方向側の端部)には螺合部913が形成されており、この螺合部913の外周には雄ねじ部914が形成されている。螺合部913の背後にはねじ頭915が形成されている。
【0020】
シート部93は中空部を有する円筒状に形成されており、この中空部がピン摺動孔930を構成している。シート部93の両端部の外周から厚さ1/3程度の位置から外周に向かうにつれて傾斜したかしめ当接部932が形成され、外周から厚さ1/3程度の位置から内周に向かうにつれて傾斜したシート面933が形成されている。ピン摺動孔930には、x軸方向に延びてシート部93の軸方向両端を連通する連通溝931が複数(本実施例1では4つ)形成され、周方向に所定間隔で配置されている。シート面933における連通溝931の開口部は、プランジャ92がシート面933に当接することで塞がれる。
【0021】
プランジャ92は、小径部であるピン95が大径部920と一体に設けられることで段付き形状に形成されており、x軸負方向側の段付きの部分(大径部920のx軸負方向端面)がコイルスプリング94が当接するバネ座を構成し、x軸正方向側の段付きの部分(大径部920のx軸正方向端)がシート部93に当接する弁体を構成している。ピン95は円棒状に形成されており、プランジャ92の大径部920を貫通するように圧入固定されている。大径部920のx軸正方向側に突出するピン95は、シート部93の内周(ピン摺動孔930)に摺動自在に挿入設置されてピストン7と当接可能な当接部950を構成している。なお、大径部920のx軸正方向端面から当接部950の先端(x軸正方向端)までのx軸方向長さは、シート部93のx軸方向長さよりも大きく設けられている。大径部920のx軸負方向側に突出するピン95は、コイルスプリング94の内周に挿入設置されてコイルスプリング94を保持するスプリング保持部951を構成している。
【0022】
コイルスプリング94は、プランジャ92とバルブ本体91との間に設けられている。コイルスプリング94は、バルブ本体91におけるプランジャ収容部910のx軸負方向側底部に設けられたバネ座916とプランジャ92のバネ座との間に圧縮状態で保持され、プランジャ92を、その大径部920がシート部93のシート面933に当接する方向に、つまり閉弁する方向に付勢している。コイルスプリング94の付勢力に抗する力でピン95(当接部950)がx軸負方向側に押圧されると、(スプリング保持部951がバルブ本体91のバネ座916に当接しない範囲で)プランジャ92が摺動することが可能となっている。その際、プランジャ92のx軸方向に対する倒れは、ピン95(当接部950)がシート部93のピン摺動孔930に対して摺動することで抑制される。コイルスプリング94は、第1圧力室16に作動油が供給され所定圧力よりも高圧となったとき(プランジャ92のx軸正方向側の受圧面に作用する圧力が所定圧力より高くなったとき)にはプランジャ92がx軸負方向側に移動して開弁し、第1圧力室16に作動油が供給されず所定圧力よりも低圧であるときにはプランジャ92がシート面933から離間せず閉弁する程度の強さのスプリングが用いられている。
【0023】
バルブ位置調整部材97は、バルブハウジング90とロックナット96から構成されている。バルブハウジング90は、内周側でバルブ本体91の貫通孔912と連通し、外周側で第2圧力室17側(第7油路18)と連通するように形成された貫通孔901(バルブ位置調整部材貫通孔)と、バルブハウジング90の内周側に形成された連通溝902と、バルブ本体91の長手方向(軸方向)において連通溝902の両側に設けられバルブハウジング90とバルブ本体91の間をシールするシール部材98(第1シール部材981及び第2シール部材982)と、内周側に形成された雌ねじ部907と、を備えている。
【0024】
バルブハウジング90は、ステアリングハウジング11内に挿入される挿入部90aと非挿入部90bとから構成されている。挿入部90aの内周には中空のバルブ本体収容部900が設けられている。バルブ本体収容部900には、連通溝902が周方向に全周にわたって形成されている。また、挿入部90aには、挿入部90aを(連通溝902のx軸負方向側で)径方向に貫通して挿入部90aの外周面及び内周面に開口するように貫通孔901が形成されている。貫通孔901は、バルブハウジング90の外周とバルブ本体収容部900(連通溝902)との間を貫通すると共に、バルブハウジング90がハウジング11に設置された状態で第7油路18に接続されている。連通溝902の一端側(x軸負方向端)は、バルブ本体91がバルブ本体91の長手方向において最も一方側(x軸負方向)寄りに位置するときの貫通孔912と対向する位置まで形成されている。連通溝902の他端側(x軸正方向端)は、バルブ本体91がバルブ本体91の長手方向において最も他方側(x軸正方向)寄りに位置するときの貫通孔912と対向する位置まで形成されている。例えば、図1に示すように、バルブ本体91がバルブハウジング90に対してx軸負方向寄りに位置する状態で貫通孔912は連通溝902に対向し開口すると共に、図2に示すように、バルブ本体91がバルブハウジング90に対してx軸正方向寄りに位置するように調整された状態でも貫通孔912は連通溝902に対向し開口する。言換えると、バルブハウジング90における連通溝902のx軸方向範囲は、バルブハウジング90に対するバルブ本体91の可動範囲内で、貫通孔912が常に連通溝902に連通するように設けられている。挿入部90aの内周には、連通溝902をx軸方向両側から挟んでOリング係合溝903,904が全周にわたって設けられている。このOリング係合溝903,904にはそれぞれOリングである第1シール部材981と第2シール部材982が係合されている。なお、Oリング以外のシール部材を用いてもよい。
【0025】
バルブハウジング90の挿入部90aには、貫通孔901のx軸負方向側に隣接して螺合部が形成されており、この螺合部の外周には雄ねじ部908が形成されている。挿入部90aの外周には、雄ねじ部908及び貫通孔901を挟んでOリング係合溝905,906が全周にわたって設けられ、このOリング係合溝905,906にはそれぞれOリングである第3シール部材991と第4シール部材991が係合されている。非挿入部90bには、雄ねじ部908(Oリング係合溝905)のx軸負方向側に隣接して、フランジ状の六角頭部61が形成されている。非挿入部90bの内周側には、バルブ本体収容部900と略同軸の中空部として、雌ねじ部907が形成されている。ロックナット96の外周には雄ねじ部960が形成されている。
【0026】
次に、第1バルブ9aの組み立てについて説明する。プランジャ92は、x軸正方向側から当接部950にシート部93を挿入し、x軸負方向側からスプリング保持部951にコイルスプリング94を挿入した状態で、バルブ本体91のプランジャ収容部910に収容される。プランジャ収容部910のx軸正方向側端のかしめ部911は、シート部93のかしめ当接部932の形状に沿って周方向に4箇所がかしめられる。バルブ本体91のx軸正方向端(かしめ部911)はシート部93のx軸正方向端(かしめ当接部932)と略同じx軸方向位置にある。プランジャ92がシート部93に当接した閉弁状態で、当接部950はバルブ本体91及びシート部93のx軸正方向端から突出するように設けられている。このように組み立てられたバルブ本体91は、バルブハウジング90のバルブ本体収容部900に収容され、雄ねじ部914が雌ねじ部907に螺合される。バルブ本体91がバルブハウジング90に対して最もx軸負方向側に位置するときでも(図1参照)、バルブ本体91のx軸正方向端はバルブハウジング90のx軸正方向端から突出するように設けられている。このように組み立てられたバルブハウジング90は、ハウジング10に装着され、雄ねじ部908がステアリングハウジング11の雌ねじ部に螺合される。具体的には、六角頭部909をスパナ等で回すことによりバルブハウジング90(第1バルブ9aのアセンブリ)がステアリングハウジング11に螺合される。第1バルブ9aは、ステアリングハウジング11に組みつけられた状態で、ピン95の先端(当接部950)が第1圧力室16内に突出しており、その軸方向はピストン7の摺動方向と同じx軸方向である。
【0027】
このようにハウジング10に装着された第1バルブ9aにおいて、バルブ本体91の雄ねじ部914は、バルブハウジング90の雌ねじ部907と螺合することにより、バルブ本体91の回転に伴ってバルブ本体91の長手方向(x軸方向)に移動可能に形成されている。これにより、バルブ本体91は、バルブ本体91の長手方向において、ハウジング10との相対位置が調整可能に設けられている。具体的には、ねじ頭915をドライバ等で回すことによりバルブハウジング90に螺合されたバルブ本体91(のアセンブリ)のx軸方向位置が調整される。ここで、コイルスプリング94の付勢力によりプランジャ92がシート部93に当接した閉弁状態では、バルブ本体91とプランジャ92(ピン95)との相対位置は不変である。よって、バルブ本体91のハウジング10に対するx軸方向位置を調整することで、第1圧力室16内に突出するピン95(当接部950)のハウジング10に対するx軸方向位置(突出量)の調整が行われることになる。ロックナット96の雄ねじ部960は、バルブハウジング90の雌ねじ部907と螺合することにより、ロックナット96の回転に伴ってx軸方向に移動可能に形成されている。ロックナット96(雄ねじ部960)が、雌ねじ部907に螺合され、ロックナット96がバルブ本体91のx軸負方向端面に当接することで、バルブハウジング90に対するバルブ本体91の長手方向位置が保持される。
【0028】
第2バルブ9bも第1バルブ9aと同様の構成を有している。第2バルブ9bはステアリングハウジング11に組みつけられた状態で、ピン95の先端(当接部950)はギヤ室15(第2圧力室17)内に突出しており、その軸方向はセクタギヤ8の回転方向に向いている。
【0029】
[実施例1の作用]
次に、装置1の作用を説明する。図3及び図4は、車両に装着した後の装置1の、図1と同様の縦断面図である。図3は、ステアリングホイールをピストン7が第1圧力室16の側(x軸負方向側)に移動するように操舵したとき(例えば左操舵時)の状態を示し、図4は、ステアリングホイールをピストン7が第2圧力室16の側(x軸正方向側)に移動するように操舵したとき(例えば右操舵時)の状態を示す。
【0030】
(ステアリングアシスト機能)
図3に示すように、ステアリングホイールをピストン7が第1圧力室16の側(x軸負方向側)に移動するように操舵すると、コントロールバルブ6により第2圧力室17に作動油が供給される。すなわち、オイルポンプから吐出された作動油は、吸入ポート123→第4油路124→第1軸方向溝611→第3油路615→切替溝600→第2軸方向溝612→第2油路614を通過して第2圧力室17に供給される。第2圧力室17内の圧力が上昇し、この圧力によりピストン7を第1圧力室16側に移動させるアシスト力が作用するため、ドライバはステアリングホイールを軽い力で操舵することができる。図4に示すように、ステアリングホイールをピストン7が第2圧力室17の側(x軸正方向側)に移動するように操舵すると、コントロールバルブ6により第1圧力室16に作動油が供給される。すなわち、オイルポンプから吐出された作動油は、吸入ポート123→第4油路124→第1軸方向溝611→第3油路615→切替溝600→第1軸方向溝611→第1油路613→第1圧力室側周方向溝122→第5油路125→第6油路126を通過して第1圧力室16に供給される。第1圧力室16内の圧力が上昇し、この圧力によりピストン7を第2圧力室17側に移動させるアシスト力が作用するため、ドライバはステアリングホイールを軽い力で操舵することができる。
【0031】
(ストロークリミッタ機能)
図3に示すように、ステアリングホイールをピストン7が第1圧力室16の側(x軸負方向側)に移動するように操舵すると、コントロールバルブ6により第2圧力室17に作動油が供給される。第2圧力室17内が所定圧力よりも高圧となると第2バルブ9bが開弁し、第7油路18に作動油が供給される。このとき第1圧力室16には作動油が供給されていないため、第1圧力室16内は所定圧力よりも低圧となっており第1バルブ9aは閉弁している。すなわち、第7油路18には作動油が供給されているものの、この作動油は第1圧力室16には供給されないようになっている。ステアリングホイールをピストン7が第1圧力室16側に移動するように回し続けると、ピストン7の端部が第1バルブ9aのピン95(当接部950)に当接する。さらにステアリングホイールを回しつつづけると、ピン95(当接部950)とともにプランジャ92がx軸負方向側に向かって移動し、プランジャ92がシート部93のシート面933から離間する。すなわち第1バルブ9aが開弁し、シート部93の連通溝931を介して第1圧力室16が第7油路18と連通する。このため、第7油路18を通って第2圧力室17内の作動油が第1圧力室16内に供給され、結果的に第1圧力室16内と第2圧力室17内の圧力は等しくなる。そのため、ピストン7を第1圧力室16側に移動させるアシスト力が作用しなくなり、ピストン7を第1圧力室16側に移動させる力はドライバがステアリングホイールを操舵する力のみとなる。図4に示すように、ステアリングホイールをピストン7が第2圧力室17側に移動するように操舵するときも同様であり、セクタギヤ8が第2バルブ9bのピン95(当接部950)に当接すると第2バルブ9aが開弁する。このため、第7油路18を通って第1圧力室16内の作動油が第2圧力室17内に供給され、第2圧力室17内と第1圧力室16内の圧力は等しくなる。そのため、ピストン7を第2圧力室17側に移動させるアシスト力が作用しなくなり、ピストン7を第2圧力室17側に移動させる力はドライバがステアリングホイールを操舵する力(操舵力)のみとなる。
【0032】
(位置調整機能)
装置1を車両に搭載した後、第1バルブ9aのピン95(当接部950)の位置を調整する際には、ステアリングホイールを、セクタギヤ8に接続されたピットマンアームのリンク機構がリンクストッパに当接する(ハンドルが突き当て状態となる)直前まで操舵して、ピン95(当接部950)の位置を決定する。上記操舵時の、第1圧力室16の容積が減少する方向(x軸負方向)でのピストン7の位置を第1所定位置と称する。ピストン7が第1所定位置にあってピン95(当接部950)に当接しているときに第1バルブ9aが閉弁状態となる(プランジャ92がシート部93に当接する)ように、バルブ本体91のハウジング10(バルブハウジング90)に対するx軸方向位置を調整する。または、閉弁状態にある第1バルブ9aのピン95(当接部950)が第1所定位置にあるピストン7に当接するまでバルブ本体91を回転させることで、バルブ本体91のハウジング10に対するx軸方向位置を調整する。この位置調整により、リンク機構がリンクストッパに当接する直前に、ピストン7がピン95(当接部950)と当接して第1バルブ9aが開弁され、作動油の圧力によるアシスト力が作用しないこととなるため、リンク機構の破損を抑制することができる。第2バルブ9bのピン95(当接部950)の位置調整方法も第1バルブ9aと同様であり、ステアリングホイールを、ピストン7が第2圧力室17側に移動するように回し続けると、ピン95(当接部950)の先端はセクタギヤ8の側面に当接することとなる。第2圧力室17の容積が減少する方向(x軸正方向)での、リンク機構がリンクストッパに当接する直前のピストン7の位置を第2所定位置と称する。閉弁状態にある第2バルブ9bのピン95(当接部950)が、ピストン7が第2所定位置にあるときのセクタギヤ8に当接するように、バルブ本体91のハウジング10に対する位置を調整する。このように、リミッタバルブ9のバルブ本体91は、バルブ本体91の長手方向において、ハウジング10との相対位置が調整可能に設けられている。よって、リミッタバルブ9の開弁位置を装置1毎に調整することができる。したがって、装置1が搭載される車両の転舵領域に合わせて、例えばステアリングホイールの操舵角や操舵輪の転舵角に応じて、開弁位置を調整することができる。本実施例1では、リンク機構の破損を抑制することができるような開弁位置に調整する。また、第1バルブ9aと第2バルブ9bにそれぞれ位置調整機能を持たせたため、左右の操舵方向のそれぞれで個別に開弁位置を調整することができる。
【0033】
なお、本実施例1では、シート部93をバルブ本体91とは別の部材としたが、バルブ本体91と一体にシート部93を設けてもよい。また、シート部93(連通溝931等)の構造は本実施例1のものに限らない。また、プランジャ92の構造は本実施例1のものに限らず、例えばピン95を大径部920に圧入固定するのではなく、大径部920と小径部(当接部)を一体に形成することとしてもよい。
【0034】
また、ハウジング10と一体にバルブハウジング90を設けてもよい。本実施例1では、バルブハウジング90をハウジング10とは別体で形成した。よって、バルブ本体91を収容すると共にバルブ本体91の位置を調整するための構造を比較的容易に形成することができる。すなわち、ハウジング10はリミッタバルブ9に比べて寸法が大きく、また例えば鋳造により形成されるため、小さく複雑な構造を形成しにくい。このようなハウジング10とは別の部材として、ハウジング10とバルブ本体91との間に、バルブハウジング90を設けた。よって、内部にバルブ本体91を収容するバルブ本体収容部900や、バルブ本体91の位置を調整するための雌ねじ部907等の小さく複雑な構造を、ハウジング10ではなくバルブハウジング90に形成することで、これらをより容易かつ正確に形成することができる。
【0035】
上記のようにバルブハウジング90をハウジング10と別体で形成した場合、ハウジング10に形成された接続油路(第7油路18)とバルブ本体91のプランジャ収容部910とをどのように連通させるかが問題となる。本実施例1では、バルブ本体91に、プランジャ収容部910とバルブ本体91の外周側とを連通させる貫通孔912を設け、バルブハウジング90に、内周側でバルブ本体91の貫通孔912と連通し、外周側で第7油路18と連通するように貫通孔901を形成した。よって、連通構造を簡素化し、装置1をコンパクト化することができる。すなわち、バルブハウジング90の内周側には軸方向にバルブ本体収容部900が形成され、バルブ本体収容部900に収容されるバルブ本体91の内周側には軸方向にプランジャ収容部910が形成されている。よって、バルブハウジング90に径方向の貫通孔901を設けてこれを第7油路18に接続し、バルブ本体91に径方向の貫通孔912を設けてこれをプランジャ収容部910に接続し、両貫通孔901,912を連通させれば、プランジャ収容部910と第7油路18とを連通する連通路を形成することができる。よって、バルブハウジング90をハウジング10と別体で形成した場合でも、上記連通路を設けるために、バルブハウジング90とバルブ本体91にそれぞれ径方向に貫通孔901,912を形成するだけでよいため、特別に配管等を設ける必要が無く、連通構造を簡素化し、装置1をコンパクト化することができる。
【0036】
上記のようにバルブハウジング90とバルブ本体91にそれぞれ設けた貫通孔901,912により連通路を形成する場合、両貫通孔901,912を連通させるための構造が必要になる。これに対し、バルブハウジング90の内周(バルブ本体収容部900)またはバルブ本体91の外周に溝を設け、この溝により両貫通孔901,912を連通させることが考えられる。本実施例1では、バルブハウジング90の内周(バルブ本体収容部900)に連通溝902を設けたため、バルブ本体91の外周側に連通溝を形成する場合に比べ、バルブハウジング90の軸方向長さを抑制することができる。すなわち、バルブ本体91はバルブハウジング90に対して軸方向に変位(位置調整)可能に設けられている。よって、この軸方向変位の全範囲に亘って、連通溝は両貫通孔901,912に連通する必要があり、連通溝はそれだけの軸方向長さを有する必要がある。ここで、第1バルブ9a(図2参照)を例にとると、仮にバルブ本体91の外周側に連通溝を形成した場合、特にバルブ本体91がバルブハウジング90に対してx軸負方向側に位置するときは、連通溝のx軸負方向側が位置調整用の構造(雌ねじ部907や雄ねじ部914)と干渉しないようにする必要がある一方、特にバルブ本体91がバルブハウジング90に対してx軸正方向側に位置するときは、連通溝のx軸正方向側が第1圧力室16と連通しないようにする必要がある。これらの必要を充足するためには、バルブハウジング90のx軸方向長さを長くする必要がある。これに対し、本実施例1のようにバルブハウジング90の内周側に連通溝902を形成した場合、上記必要が生じない。すなわち、バルブ本体収容部900において、バルブ本体91(貫通孔912)の軸方向変位可能分だけ連通溝902の軸方向長さを設定すれば足りる。このため、バルブハウジング90の軸方向長さを抑制することができ、これによりリミッタバルブ9の全体のサイズ(軸方向長)をコンパクト化することができる。なお、バルブハウジング90の貫通孔901は、連通溝902が延びるx軸方向範囲のいずれに位置することとしてもよい。本実施例1では、貫通孔901を、連通溝902のx軸負方向側の端部に配置した。このように貫通孔901を雄ねじ部914に近接して配置することで、貫通孔901と第7油路18との接続を容易化しつつ、バルブハウジング90を軸方向でよりコンパクト化することを図れる。
【0037】
なお、バルブ本体91のハウジング10(バルブハウジング90)に対する軸方向位置の調整は、バルブ本体91をハウジング10(バルブハウジング90)に圧入等により固定し、その固定位置を適宜調整することで行うこととしてもよい。本実施例1では、バルブ本体91の雄ねじ部914とハウジング10(バルブハウジング90)の雌ねじ部907との螺合によりバルブ本体91の軸方向位置調整を行うこととしたため、ハウジング10(バルブハウジング90)に対するバルブ本体91の固定強度を向上することができると共に、位置調整を容易かつ高精度に行うことができる。
【0038】
また、本実施例1では、バルブ本体91の調整後の軸方向位置を保持するロックナット96を設けたため、バルブ本体91の位置調整後の位置ずれを抑制することができる。ロックナット96は中空の円環状に設けられているため、ロックナット96をいちいち取り外すことなくバルブ本体91のねじ頭915をドライバ等で回すことができ、これにより位置調整の作業性を向上することができる。なお、ロックナット96の構成は実施例1のものに限定されず、またロックナット96を省略することとしてもよい。
【0039】
なお、ハウジング10における第1バルブ9aや第2バルブ9bの配置は実施例1のものに限定されない。図5は、他の配置例を示す、図1と同様の縦断面図である。図5に示すように、例えば第2バルブ9bは、ハウジング10において、ステアリングハウジング11ではなく、(コントロールバルブ6を収容する)バルブハウジング12に設置され、セクタギヤ8ではなく、ピストン7に当接することとしてもよい。この場合、第2バルブ9bを入力軸2ないしピストン7の軸方向(x軸方向)に対して傾斜して設けることで、第2バルブ9bの取付け自由度を向上しつつ装置1をコンパクト化することができる。
【0040】
[実施例1の効果]
以下、実施例1の装置1が奏する効果を列挙する。
(1)ハウジング10(ステアリングハウジング11、バルブハウジング12)と、ステアリングホールに接続される入力軸2と、ハウジング10に収容され、このハウジング10の内部を第1圧力室16及び第2圧力室17に隔成するピストン7と、入力軸2とピストン7の間に設けられ、入力軸2の回転運動をピストン7の軸方向運動に変換する第1変換機構(ボールねじ機構5)と、ピストン7の外周に設けられたラック70と、このラック70に噛合いラック70の軸方向運動を回転運動に変換すると共に、第2圧力室17内に配置されるセクタギヤ8と、から構成される第2変換機構と、外部の油圧源(オイルポンプ)から供給される作動油を選択的に第1圧力室16と第2圧力室17とに供給するコントロールバルブ6と、セクタギヤ8の回転方向運動を操舵輪に伝達する伝達機構(ピットマンアーム)と、第1圧力室16の容積が減少する方向で或る第1所定位置までピストン7が移動するとき、第2圧力室17内の圧力を第1圧力室16側に排出する第1バルブ9aと、第2圧力室17の容積が減少する方向で或る第2所定位置までピストン7が移動するとき、第1圧力室16内の圧力を第2圧力室17側に排出する第2バルブ9bと、から構成され、第1バルブ9aは、ハウジング10の第1圧力室16側に設けられ、内部に第1プランジャ収容部910を有する第1バルブ本体91と、第1プランジャ収容部910内に設けられ、第1バルブ本体91の長手方向に進退自在に設けられた第1プランジャ92と、第1バルブ本体91に設けられ、第1圧力室16と第2圧力室17側とを接続する連通路の一部(連通溝931)を構成し、第1プランジャ92が当接することにより前記連通路(連通溝931)を遮断すると共に離間することにより連通させる第1シート部93と、第1プランジャ92を第1シート部93に付勢する第1付勢部材(コイルスプリング94)と、第1シート部93よりも第1圧力室16側に突出するように第1プランジャ92に設けられ、ピストン7と当接し、ピストン7によって押圧されることにより第1プランジャ92と一体に移動し第1シート部93から第1プランジャ92を離間させ第1圧力室16と第2圧力室17とを連通させる第1当接部950(ピン95)と、から構成され、第1バルブ本体91は、第1バルブ本体91の長手方向において、ハウジング10との相対位置が調整可能に設けられ、第2バルブ9bは、ハウジング10の第2圧力室17側に設けられ、内部に第2プランジャ収容部910を有する第2バルブ本体91と、第2プランジャ収容部910内に設けられ、第2バルブ本体91の長手方向に進退自在に設けられた第2プランジャ92と、第2バルブ本体91に設けられ、第2圧力室17と第1圧力室16側とを接続する連通路の一部(連通溝931)を構成し、第2プランジャ92が当接することにより前記連通路(連通溝931)を遮断すると共に離間することにより連通させる第2シート部93と、第2プランジャ92を第2シート部93に付勢する第2付勢部材(コイルスプリング94)と、第2シート部93よりも第2圧力室17側に突出するように第2プランジャ92に設けられ、ピストン7またはセクタギヤ8と当接し、ピストン7またはセクタギヤ8によって押圧されることにより第2プランジャ92と一体に移動し第2シート部93から第2プランジャ92を離間させ第2圧力室17と第1圧力室16とを連通させる第2当接部950(ピン95)と、から構成され、第2バルブ本体91は、第2バルブ本体91の長手方向において、ハウジング10との相対位置が調整可能に設けられる。
よって、リミッタバルブ9の開弁位置を装置1毎に調整することができるため、装置1が搭載される車両の転舵領域に合わせてアシスト力を制限することができる。
【0041】
(2)ハウジング10と別体で形成されると共にハウジング10と第1バルブ本体91の間に設けられ、内部に第1バルブ本体91を収容する第1バルブ本体収容部900が形成された第1バルブ位置調整部材(バルブハウジング90)と、ハウジング10と別体で形成されると共にハウジング10と第2バルブ本体91の間に設けられ、内部に第2バルブ本体91を収容する第2バルブ本体収容部900が形成された第2バルブ位置調整部材(バルブハウジング90)とを有する。
よって、バルブ本体91を収容するための構造を容易に形成することができる。
【0042】
(3)第1バルブ本体91は、第1プランジャ収容部910と第1バルブ本体91の外周側とを連通させる第1バルブ本体貫通孔912を備え、第1バルブ位置調整部材(バルブハウジング90)は、内周側で第1バルブ本体貫通孔912と連通し、外周側で第2圧力室17側と連通するように形成された第1バルブ位置調整部材貫通孔901を備え、第2バルブ本体91は、第2プランジャ収容部910と第2バルブ本体91の外周側とを連通させる第2バルブ本体貫通孔912を備え、第2バルブ位置調整部材(バルブハウジング90)は、内周側で第2バルブ本体貫通孔912と連通し、外周側で第1圧力室16側と連通するように形成された第2バルブ位置調整部材貫通孔901を備える。
よって、連通構造を簡素化し、装置1をコンパクト化できる。
【0043】
(4)第1バルブ位置調整部材(バルブハウジング90)は、第1バルブ位置調整部材(バルブハウジング90)の内周側に形成された第1連通溝902と、第1バルブ本体91の長手方向において第1連通溝902の両側に設けられ第1バルブ位置調整部材(バルブハウジング90)と第1バルブ本体91の間をシールする第1シール部材981及び第2シール部材982を備え、第1連通溝902の一端側は、第1バルブ本体91が第1バルブ本体91の長手方向において最も一方側寄りに位置するときの第1バルブ本体貫通孔912と対向する位置まで形成され、第1連通溝902の他端側は、第1バルブ本体91が第1バルブ本体91の長手方向において最も他方側寄りに位置するときの第1バルブ本体貫通孔912と対向する位置まで形成され、第2バルブ位置調整部材(バルブハウジング90)は、第2バルブ位置調整部材(バルブハウジング90)の内周側に形成された第2連通溝902と、第2バルブ本体91の長手方向において第2連通溝902の両側に設けられ第2バルブ位置調整部材(バルブハウジング90)と第2バルブ本体91の間をシールする第3シール部材981及び第4シール部材982を備え、第2連通溝902の一端側は、第2バルブ本体91が第2バルブ本体91の長手方向において最も一方側寄りに位置するときの第2バルブ本体貫通孔912と対向する位置まで形成され、第2連通溝902の他端側は、第2バルブ本体91が第2バルブ本体91の長手方向において最も他方側寄りに位置するときの第2バルブ本体貫通孔912と対向する位置まで形成される。
よって、バルブハウジング90の軸方向長さを抑制し、リミッタバルブ9をコンパクト化することができる。
【0044】
(5)第1バルブ位置調整部材(バルブハウジング90)は、内周側に形成された第1雌ねじ部907を備え、第1バルブ本体91は、外周側に形成され、第1雌ねじ部907と螺合することにより第1バルブ本体91の回転に伴って第1バルブ本体91の長手方向に移動可能に形成された第1雄ねじ部914を有し、第2バルブ位置調整部材(バルブハウジング90)は、内周側に形成された第2雌ねじ部907を備え、第2バルブ本体91は、外周側に形成され、第2雌ねじ部907と螺合することにより第2バルブ本体91の回転に伴って第2バルブ本体91の長手方向に移動可能に形成された第2雄ねじ部914を有する。
よって、ハウジング10(バルブハウジング90)に対するバルブ本体91(ピン95)の位置調整を容易かつ高精度に行うことができる。
【0045】
(6)第1バルブ位置調整部材(バルブハウジング90)は、第1バルブ本体91の第1バルブ本体91の長手方向位置を保持する第1ロックナット96を備え、第2バルブ位置調整部材(バルブハウジング90)は、第2バルブ本体91の第2バルブ本体91の長手方向位置を保持する第2ロックナット96を備える。
よって、バルブ本体91の位置調整後の位置ずれを抑制することができる。
【0046】
[他の実施例]
以上、本発明を実現するための形態を、実施例1に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は実施例1に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
2 入力軸
5 ボールねじ機構(第1変換機構)
6 コントロールバルブ
7 ピストン
70 ラック(第2変換機構)
8 セクタギヤ(第2変換機構)
9a 第1バルブ
9b 第2バルブ
90 バルブハウジング(バルブ位置調整部材)
900 バルブ本体収容部
901 貫通孔(バルブ位置調整部材貫通孔)
902 連通溝
91 バルブ本体
910 プランジャ収容部
912 貫通孔(バルブ本体貫通孔)
92 プランジャ
93 シート部
931 連通溝(連通路)
94 コイルスプリング(付勢部材)
950 当接部
981 第1シール部材
982 第2シール部材
10 ハウジング
16 第1圧力室
17 第2圧力室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
ステアリングホールに接続される入力軸と、
前記ハウジングに収容され、このハウジング内部を第1圧力室及び第2圧力室に隔成するピストンと、
前記入力軸と前記ピストンの間に設けられ、前記入力軸の回転運動を前記ピストンの軸方向運動に変換する第1変換機構と、
前記ピストンの外周に設けられたラックと、このラックに噛合い前記ラックの軸方向運動を回転運動に変換すると共に、前記第2圧力室内に配置されるセクタギヤと、から構成される第2変換機構と、
外部の油圧源から供給される作動油を選択的に前記第1圧力室と第2圧力室とに供給するコントロールバルブと、
前記セクタギヤの回転方向運動を操舵輪に伝達する伝達機構と、
前記第1圧力室の容積が減少する方向で第1所定位置まで前記ピストンが移動するとき、前記第2圧力室内の圧力を前記第1圧力室側に排出する第1バルブと、前記第2圧力室の容積が減少する方向で第2所定位置まで前記ピストンが移動するとき、前記第1圧力室内の圧力を前記第2圧力室側に排出する第2バルブと、から構成され、
前記第1バルブは、
前記ハウジングの前記第1圧力室側に設けられ、内部に第1プランジャ収容部を有する第1バルブ本体と、
前記第1プランジャ収容部内に設けられ、前記第1バルブ本体の長手方向に進退自在に設けられた第1プランジャと、
前記第1バルブ本体に設けられ、前記第1圧力室と前記第2圧力室側とを接続する連通路の一部を構成し、前記第1プランジャが当接することにより前記連通路を遮断すると共に離間することにより連通させる第1シート部と、
前記第1プランジャを前記第1シート部に付勢する第1付勢部材と、
前記第1シート部よりも前記第1圧力室側に突出するように前記第1プランジャに設けられ、前記ピストンと当接し、前記ピストンによって押圧されることにより前記第1プランジャと一体に移動し前記第1シート部から前記第1プランジャを離間させ前記第1圧力室と前記第2圧力室とを連通させる第1当接部と、から構成され、
前記第1バルブ本体は、前記第1バルブ本体の長手方向において、前記ハウジングとの相対位置が調整可能に設けられ、
前記第2バルブは、
前記ハウジングの前記第2圧力室側に設けられ、内部に第2プランジャ収容部を有する第2バルブ本体と、
前記第2プランジャ収容部内に設けられ、前記第2バルブ本体の長手方向に進退自在に設けられた第2プランジャと、
前記第2バルブ本体に設けられ、前記第2圧力室と前記第1圧力室側とを接続する連通路の一部を構成し、前記第2プランジャが当接することにより前記連通路を遮断すると共に離間することにより連通させる第2シート部と、
前記第2プランジャを前記第2シート部に付勢する第2付勢部材と、
前記第2シート部よりも前記第2圧力室側に突出するように前記第2プランジャに設けられ、前記ピストンまたは前記セクタギヤと当接し、前記ピストンまたは前記セクタギヤによって押圧されることにより前記第2プランジャと一体に移動し前記第2シート部から前記第2プランジャを離間させ前記第2圧力室と前記第1圧力室とを連通させる第2当接部と、から構成され、
前記第2バルブ本体は、前記第2バルブ本体の長手方向において、前記ハウジングとの相対位置が調整可能に設けられる
ことを特徴とするインテグラル型パワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインテグラル型パワーステアリング装置において、
前記ハウジングと別体で形成されると共に前記ハウジングと前記第1バルブ本体の間に設けられ、内部に前記第1バルブ本体を収容する第1バルブ本体収容部が形成された第1バルブ位置調整部材と、
前記ハウジングと別体で形成されると共に前記ハウジングと前記第2バルブ本体の間に設けられ、内部に前記第2バルブ本体を収容する第2バルブ本体収容部が形成された第2バルブ位置調整部材とを有する
ことを特徴とするインテグラル型パワーステアリング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のインテグラル型パワーステアリング装置において、
前記第1バルブ本体は、前記第1プランジャ収容部と前記第1バルブ本体の外周側とを連通させる第1バルブ本体貫通孔を備え、
前記第1バルブ位置調整部材は、内周側で前記第1バルブ本体貫通孔と連通し、外周側で前記第2圧力室側と連通するように形成された第1バルブ位置調整部材貫通孔を備え、
前記第2バルブ本体は、前記第2プランジャ収容部と前記第2バルブ本体の外周側とを連通させる第2バルブ本体貫通孔を備え、
前記第2バルブ位置調整部材は、内周側で前記第2バルブ本体貫通孔と連通し、外周側で前記第1圧力室側と連通するように形成された第2バルブ位置調整部材貫通孔を備える
ことを特徴とするインテグラル型パワーステアリング装置。
【請求項4】
請求項3に記載のインテグラル型パワーステアリング装置において、
前記第1バルブ位置調整部材は、前記第1バルブ位置調整部材の内周側に形成された第1連通溝と、前記第1バルブ本体の長手方向において前記第1連通溝の両側に設けられ前記第1バルブ位置調整部材と前記第1バルブ本体の間をシールする第1シール部材及び第2シール部材を備え、
前記第1連通溝の一端側は、前記第1バルブ本体が前記第1バルブ本体の長手方向において最も一方側寄りに位置するときの前記第1バルブ本体貫通孔と対向する位置まで形成され、前記第1連通溝の他端側は、前記第1バルブ本体が前記第1バルブ本体の長手方向において最も他方側寄りに位置するときの前記第1バルブ本体貫通孔と対向する位置まで形成され、
前記第2バルブ位置調整部材は、前記第2バルブ位置調整部材の内周側に形成された第2連通溝と、前記第2バルブ本体の長手方向において前記第2連通溝の両側に設けられ前記第2バルブ位置調整部材と前記第2バルブ本体の間をシールする第3シール部材及び第4シール部材を備え、
前記第2連通溝の一端側は、前記第2バルブ本体が前記第2バルブ本体の長手方向において最も一方側寄りに位置するときの前記第2バルブ本体貫通孔と対向する位置まで形成され、前記第2連通溝の他端側は、前記第2バルブ本体が前記第2バルブ本体の長手方向において最も他方側寄りに位置するときの前記第2バルブ本体貫通孔と対向する位置まで形成される
ことを特徴とするインテグラル型パワーステアリング装置。
【請求項5】
請求項2に記載のインテグラル型パワーステアリング装置において、
前記第1バルブ位置調整部材は、内周側に形成された第1雌ねじ部を備え、
前記第1バルブ本体は、外周側に形成され、前記第1雌ねじ部と螺合することにより前記第1バルブ本体の回転に伴って前記第1バルブ本体の長手方向に移動可能に形成された第1雄ねじ部を有し、
前記第2バルブ位置調整部材は、内周側に形成された第2雌ねじ部を備え、
前記第2バルブ本体は、外周側に形成され、前記第2雌ねじ部と螺合することにより前記第2バルブ本体の回転に伴って前記第2バルブ本体の長手方向に移動可能に形成された第2雄ねじ部を有する
ことを特徴とするインテグラル型パワーステアリング装置。
【請求項6】
請求項5に記載のインテグラル型パワーステアリング装置において、
前記第1バルブ位置調整部材は、前記第1バルブ本体の前記第1バルブ本体の長手方向位置を保持する第1ロックナットを備え、
前記第2バルブ位置調整部材は、前記第2バルブ本体の前記第2バルブ本体の長手方向位置を保持する第2ロックナットを備える
ことを特徴とするインテグラル型パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−43454(P2013−43454A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180132(P2011−180132)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(301041449)日立オートモティブシステムズステアリング株式会社 (44)
【Fターム(参考)】