説明

インテグリンαIIbβ3特異的抗体およびペプチド

本発明は、インテグリンαIIbβ特異的抗体およびペプチドを提供する。その抗体およびペプチドは、他のインテグリンとほとんど免疫反応性を示さない、または全く免疫反応性を示さない。その抗体およびペプチドを用いて血小板凝集を阻害する方法も提供される。本発明は、9〜約50アミノ酸残基を含む、単離され、精製されたペプチドであって、配列番号4、5、6および7からなる群より選択されるアミノ酸残基配列を有し、血小板凝集を阻害する活性を有するペプチドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明の分野は、血小板凝集である。より具体的には、本発明は、インテグリン特異的抗体およびペプチド、および血小板凝集を阻害するためのそれら化合物の使用に関係する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
インテグリンαIIbβ阻害剤は、血小板インテグリンαIIbβへのフィブリノーゲンの結合を阻害し、それによって血小板血栓の形成に必須の血小板−血小板相互作用を阻害する、新規種類の抗血栓症薬である(非特許文献1;非特許文献2)。インテグリンαIIbβ阻害剤は、非ST上昇型急性冠症候群を有する患者、および経皮的冠動脈形成術を受ける患者の管理に使用される(非特許文献3)。これら阻害剤の中で、アブシキシマブ(ReoPro、Centocor,Inc.、Malvern、Pennsylvania、およびEli Lilly&Company、Indianapolis、Indiana)(非特許文献2)、エプチフィバチド(INTEGRILIN、COR Therapeutics,Inc.、South San Francisco、California、およびKey Pharmaceuticals,Inc.、Kenilworth、New Jersey)(非特許文献4、非特許文献5)、およびチロフィバン(Aggrastat、Merck&Co.,Inc.、Whitehouse Station、New Jersey)(非特許文献6)が、米国において臨床的に認可されている。最初に認可され、そして最も広く使用されている薬剤であるアブシキシマブは、マウス可変ドメインおよびヒト定常ドメインを有するキメラFabである。それは、リガンド結合領域に隣接するエピトープに結合し、そして空間的な妨害によってフィブリノーゲンの結合を阻害する。アブシキシマブは、インテグリンαβおよびαβと交差反応することが報告された(非特許文献5)。他方、エプチフィバチドおよびチロフィバンは、インテグリンのRGDリガンド相互作用部位に結合する小分子薬剤であり、そしてαIIbβ特異的である。それらは、アブシキシマブより低い親和性およびはるかに短い循環半減期を示した(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)。
【0003】
急性血小板減少症は、インテグリンαIIbβ阻害剤による治療の認識された合併症である。血小板減少症は、しばしば重篤であり(50×10/Lより少ない血小板)、最初にアブシキシマブを投与された患者の0.5%から1%(非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10)、および2回目投与後の患者の4%に起こる(非特許文献11;非特許文献12)。チロフィバンの臨床試験において、発生率は0.1%から0.5%の範囲であり、それは薬剤を投与されていない患者において見られる発生率のわずか2倍である(非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15)。エプチフィバチドのPURSUITトライアルにおいて、発生率は、研究薬剤を投与された患者において、プラセボを投与された患者とほぼ同じであった(非特許文献16)。エプチフィバチドを投与された患者の少数のサブセットのみが、重篤な、未解明の血小板減少症を起こした(非特許文献16)。インテグリンαIIbβ阻害剤によって誘発される血小板減少症の原因は未知であるが、最近、おそらくアブシキシマブとの最初の接触によって誘導された、アブシキシマブのマウス可変ドメインに対するヒト抗体が、アブシキシマブを2回目に投与された後に重篤な血小板減少症を起こした患者における血小板破壊の原因であったことが報告された(非特許文献17)。
【0004】
インテグリンαβ、αβ、αIIbβおよびαβは、Arg−Gly−Asp(RGD)トリペプチドを含む様々な接着タンパク質に結合する。この特徴を利用して、6つの無作為化残基にはさまれた、HCDR3におけるRGDモチーフを含む、接着タンパク質を模倣する合成ヒトmAbが、ファージディスプレイによる抗体ライブラリーから選択された(非特許文献18)。これら抗体のうち最も強力なFab−9は、インテグリンαβおよびαβよりほとんど1000倍良くインテグリンαβに結合する。しかし、Fab−9を含む選択された抗体のいずれも、2つのβインテグリン、αβおよびαIIbβを区別しなかった。従って、モチーフ最適化ライブラリーを産生して、Fab−9のHCDR3におけるRGDモチーフに対するさらなるラウンドの遺伝子操作および選択が、インテグリンαβまたはαIIbβのいずれかに関して特異性を有する抗体を産生し得るかどうか決定した(非特許文献19)。多くの選択された抗体がインテグリンαβまたはインテグリンαIIbβのいずれかにいくらかの選択性を示したが、全ての抗体は依然として両方のインテグリンに結合した。選択された抗体の大部分は、コンセンサス配列(K/R)XDを有していた。興味深いことに、RGDモチーフの中央の位置は、任意性が高いことが判明した。Glyは、Val、Ala、Asn、Arg、Thr、Gln、Asp、Ser、およびTrpによって置換され得ることが見出された(非特許文献19)。
【非特許文献1】Topol,E.J.、Byzova,T.V.、およびPlow,E.F.、「Platelet GPIIb/IIIa blockers」、1999年、Lancet 第353巻、p.227−231
【非特許文献2】Coller,B.S.、「Platelet GPIIb/IIIa antagonists:the first anti−integrin receptor therapeutics.」、1997年、J Clin Invest、第99巻、p.1467−1471
【非特許文献3】Proimos,G.、「Platelet aggregation inhibition with glycoprotein IIb−IIIa inhibitors.」、2001年、J Thromb Thrombolysis、第11巻、p.99−110
【非特許文献4】Phillips,D.R.およびScarborough,R.M.、「Clinical pharmacology of eptifibatide」、1997年、Am J Cardiol、第80巻、p.11B−20B
【非特許文献5】Scarborough,R.M.、「Development of eptifibatide.」、1999年、Am Heart J、第138巻、p.1093−1104
【非特許文献6】Vickers、S.、Theoharides,A.D.、Arison,B.、Balani,S.K.、Cui,D.、Duncan,C.A.、Ellis,J.D.、Gorham,L.M.、Polsky,S.L.、Prueksaritanont,T.、Ramjit,H.G.、Slaughter,D.E.、およびVyas,K.P.、「In vitro and in vivo studies on the metabolism of tirofiban.」、1999年、Drug Matab Dispos、第27巻、p.1360−1366
【非特許文献7】McClellan,K.J.およびGoa,K.L.、「Tirofiban.A review of its use in acute coronary syndromes.」、1998年、Drugs、第56巻、p.1067−1080
【非特許文献8】Berkowitz,S.D.、Sane,D.C.、Sigmon,K.N.、Shavender.J.H.、Harrington,R.A.、Tcheng,J.E.、Topol,E.J.およびCaliff,R.M.、「Occurrence and clinical significance of thrombocytopenia in a population undergoing high−risk precutaneous coronary revascularization.Evaluation of c7E3 for the Prevention of Ischemic Complications (EPIC) Study Group」、1998年、J Am Coll Cardiol、第32巻、p.311−319
【非特許文献9】Jubelirer,S.J.、Koenig,B.A.およびBates,M.C.、「Acute profound thrombocytopenia following C7E3 Fab(Abciximab)therapy:case reports,review of the literature and implications for therapy」、1999年、Am J Hematol、第61巻、p.205−208
【非特許文献10】Kereiakes,D.J.、Berkowitz,S.D.、Lincoff,A.M.、Tcheng,J.E.、Wolski,K.、Achenbach,R.、Melsheimer,R.、Anderson,K.、Califf,R.M.およびTopol,E.J.、「Clinical correlates and course of thrombocytopenia during percutaneous coronary intervention in the era of abciximab platelet glycoprotein IIb/IIIa blockage.」、2000年、Am Heart J、第140巻、p.74−80
【非特許文献11】Madan,M.、Kereiakes,D.J.、Hermiller,J.B.、Rund,M.M.、Tudor.G.、Anderson,L.、McDonald,M.B.、Berkowitz,S.D.、Sketch,M.H.,Jr.、Phillips,H.R.,3rdおよびTcheng,J.E.、「Efficacy of abciximab readministration in coronary intervention.」、2000年、Am J Cardiol、第85巻、p.435−440
【非特許文献12】Tcheng,J.E.、Kereiakes,D,J.、Braden,G.A.、Jordan,R.E.、Mascelli,M.A.、Langrall,M.A.およびEffron,M.B.、「Readministration of abciximab:interim report of the ReoPro readministration registry.」、1999年、Am Heart J、第138巻、p.S33−38
【非特許文献13】RESTORE Investigators、「Effects of platelet grycoprotein blockade with tirofiban on adverse cardiac events in patients with unstable angina or acute myocardial infarction undergoing coronary angioplasty.」、1997年、Circulation、第96巻、p.1445−1453
【非特許文献14】Platelet Receptor Inhibition in Ischemic Syndrome Management(PRISM)Study Investigators、「A comparison of aspirin plus tirofiban with aspirin plus heparin for unstable angina」、1998年、N Engl J Med、第338巻、p.1498−1505
【非特許文献15】Platelet Receptor Inhibition in Ischemic Syndrome Management in Patients Limited by Unstable Signs and Symptoms(PRISM−PLUS)Study Investigators、「Inhibition of the platelet glycoprotein IIb/IIIa receptor with tirofiban in unstable angina and non−Q−wave myocardial infarction.」、1998年、N Engl J Med、第338巻、p.1488−1497
【非特許文献16】McClure,M.W.、Berkowitz,S.D.、Sparapani,R.、Tuttle,R.、Kleiman,N.S.、Berdan,L.G.、Lincoff,A.M.、Deckers,J.、Diaz,R.、Karsch,K.R.、Gretler,D.、Kitt,M.、Simoons,M.、Topol,E.J.、Califf,R.M.およびHarrington,R.A.、「Clinical significance of thrombocytopenia during a non−ST−elevation acute coronary syndrome.The platelet glycoprotein IIb/IIIa in unstable angina:receptor suppression using integrilin therapy (PURSUIT)trial experience」、1999年、Circulation、第99巻、p.2892−2900
【非特許文献17】Curtis,B.R.、Swyers,J.、Divgi,A.、McFarland,J.G.およびAster,R.H.、「Thrombocytopenia after second exposure to abciximab is caused by antibodies that recognize abciximab−coated platelets.」、2002年、Blood、99、2054−2059
【非特許文献18】Barbas,C.F.,3rd、Languino,L.R.およびSmith,J.W.、「High affinity self−reactive human antibodies by design and selection:targeting the integrin ligand binding site.」、1993年、Proc Natl Acad Sci USA、第90巻、p.10003−10007
【非特許文献19】Smith,J.W.、Hu,D.、Satterthwait,A.、Pinz−Sweeney,S.およびBarbas,C.F.,3rd、「Building synthetic antibodies as adhesive ligands for integrins.」、1994年、J Biol Chem、第269巻、p.32788−32795
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の簡単な概要)
1つの好ましい実施態様において、本発明は、血小板凝集の単離および精製されたペプチド阻害剤であり、そのペプチドは9から約50アミノ酸残基を含み、そして配列番号4、5、6、および7からなる群から選択されるアミノ酸残基配列を有する。好ましい実施態様において、そのペプチドは配列番号5−7のいずれかのアミノ酸残基配列を含む。別の好ましい実施態様において、そのペプチドは、配列番号5−7のいずれかから成る。より好ましい実施態様において、そのペプチドは本質的に配列番号5−7のいずれかから成る。
【0006】
別の実施態様において、本発明は、インテグリンαIIbβと特異的に免疫反応し、そして配列番号8、25、26、27、28、29、30および31からなる群から選択されるアミノ酸残基配列を含む抗体を企図し、ここでそのアミノ酸残基配列は、抗体の相補性決定領域(CDR)内である。好ましい実施態様において、その抗体の相補性決定領域は、抗体の重鎖に位置する。より好ましい実施態様において、その抗体の相補性決定領域は、HCDR3である。
【0007】
さらに別の実施態様において、その抗体は、本明細書中でRAD3、RAD4、RAD9、RAD11、RAD12、RAD32、RAD34、RAD87、またはRAD88と呼ばれる抗体からなる群から選択され、そしてそれはインテグリンαIIbβと免疫反応性を有する。好ましい実施態様において、その抗体はヒト抗体である。
【0008】
またさらなる実施態様において、本発明は、インテグリンαIIbβと免疫反応性を有する抗体を企図する。
【0009】
本発明はまた、本発明の抗体、免疫グロブリン、およびペプチドを使用する方法を企図する。1つの実施態様において、その方法は、配列番号4、5、6、および7からなる群から選択されるアミノ酸残基配列を有する、有効な阻害量のペプチドと血小板を接触させることを含む、血小板凝集を阻害する方法である。
【0010】
さらなる実施態様において、その方法は、インテグリンαIIbβと特異的に免疫反応し、そして配列番号8、25、26、27、28、29、30および31からなる群から選択されるアミノ酸残基配列を含み、ここでそのアミノ酸残基配列は抗体の相補性決定領域内である、有効な阻害量の抗体と血小板を接触させることを含む、血小板凝集を阻害する方法である。
【0011】
本発明はまた、配列番号4、5、6および7からなる群から選択されるアミノ酸残基配列を有する、有効な阻害量のペプチドと血小板を接触させることを含む、フィブリノーゲンの血小板への結合を阻害する方法を企図する。
【0012】
本発明はまたさらに、インテグリンαIIbβと特異的に免疫反応し、そして配列番号8、25、26、27、28、29、30および31からなる群から選択されるアミノ酸残基配列を含み、ここでそのアミノ酸残基配列は抗体の相補性決定領域内である、有効な阻害量の抗体と血小板を接触させることを含む、血小板凝集を阻害する方法を企図する。
【0013】
本発明はまたさらに、インテグリンαIIbβ結合活性を有する抗体を企図し、ここでその結合は別のタンパク質の結合活性と競合し、その他のタンパク質はトリペプチドモチーフArg−Ala−Asp(RAD)のアミノ酸残基配列を含み、そしてここでその結合は標準的な競合アッセイにおいて行われる。さらなる実施態様において、そのタンパク質は別の抗体であり、その他の抗体は、他の抗体の相補性決定領域内にアミノ酸残基配列を含み、ここでそのアミノ酸配列は、配列番号8、25、26、27、28、29、30および31からなる群から選択され、そしてここでその結合は標準的な競合アッセイにおいて行われる。
【0014】
本発明のさらなる実施態様は、静脈内、動脈内、リンパ循環、腹腔内、経皮、皮下、筋肉内、関節空間への投与、または肺投与による投与に適当な形式で、血小板凝集のペプチド阻害剤および適当な医薬品キャリアを含む医薬品組成物を企図する。またさらなる実施態様は、インテグリンαIIbβと特異的に免疫反応する抗体および適当な医薬品キャリアを含む医薬品組成物を企図する。
【0015】
本発明のさらなる実施態様は、肺塞栓、一過性虚血発作(TIA)、深部静脈血栓症、冠動脈バイパス手術、および自己、非自己、または合成血管の移植におけるプロテーゼ弁または血管を挿入する手術からなるグループから選択される状態において血栓症を予防するための治療薬として、血小板凝集のペプチド阻害剤を使用することを企図する。さらなる実施態様は、血栓症を予防する治療薬として、インテグリンαIIbβと特異的に免疫反応する抗体を使用することを企図する。
【0016】
別の実施態様において、血小板凝集のペプチド阻害剤を、バルーンによって行われる血管形成手順、冠動脈アテレクトミー、およびレーザー血管形成術からなる群から選択される手順において血栓症を予防する治療薬としても使用し得る。さらなる実施態様において、インテグリンαIIbβと特異的に免疫反応する抗体を、血栓症を予防する治療薬として使用する。
【0017】
本発明はまた、血栓形成の異常、肺塞栓症、一過性虚血発作(TIA)、深部静脈血栓症、冠動脈バイパス手術、自己、非自己、または合成血管の移植におけるプロテーゼ弁または血管を挿入する手術からなるグループから選択される異常を治療または予防するために患者を治療する方法を企図し、その方法は望ましい治療を達成するために有効な量の、血小板凝集を阻害する活性を有するペプチドを患者に投与することを含む。本発明のさらなる実施態様は、望ましい治療を達成するために有効な量の、インテグリンαIIbβと特異的に免疫反応する抗体を患者に投与することを含む、血栓形成の異常を治療または予防するために患者を治療する方法を企図する。
【0018】
1つの局面において、本発明は、血小板凝集の、単離および精製されたペプチド阻害剤を提供する。そのペプチドは、9から約50アミノ酸残基、およびV(V/W)CRAD(K/R)RCに対応するアミノ酸残基配列(配列番号4、5、6、および7によって例示される)を有する。そのペプチドは、好ましくは配列番号5−7のいずれかのアミノ酸残基配列を含み、そしてより好ましくは配列番号5−7のいずれかのアミノ酸残基配列を有する。
【0019】
別の局面において、本発明は、インテグリンαIIbβと特異的に免疫反応する抗体を提供する。その抗体は、抗体の相補性決定領域内に、アミノ酸残基配列V(R/G)V(V/W)CRAD(R/K)RCYAMDVを含む(配列番号8、25、26、27、28、29、30、および31によって例示される)。好ましくは、相補性決定領域は抗体の重鎖に位置し、そしてより具体的には、相補性決定領域はHCDR3である。その抗体は、最も好ましくはヒト抗体である。典型的なおよび好ましい抗体は、本明細書中でRAD3、RAD4、RAD9、RAD11、RAD12、RAD32、RAD34、RAD87、またはRAD88と呼ばれる。本発明はまた、RAD3、RAD4、RAD9、RAD11、RAD12、RAD32、RAD34、RAD87、またはRAD88のいずれかの免疫反応性を有する抗体を企図する。
【0020】
さらに別の局面において、本発明は、血小板を、有効な阻害量の本発明のペプチドまたは抗体と接触させる工程を含む、血小板凝集を阻害する方法を提供する。
【0021】
またさらに別の局面において、本発明は、血小板を、有効な阻害量の本発明のペプチドまたは抗体と接触させる工程を含む、フィブリノーゲンの血小板への結合を阻害する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明は、インテグリンαIIbβと免疫反応する抗体を提供する。その様々な文法形式において抗体という用語は、本明細書中で免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗体結合部位またはパラトープを含む分子を指して使用される。典型的な抗体分子は、そのままの免疫グロブリン分子、実質的にそのままの免疫グロブリン分子、および当該分野においてFab、Fab’、F(ab’)およびF(v)として公知の部分を含む免疫グロブリン分子の一部、単一ドメイン抗体(dAb)、フォールディングされた免疫グロブリン構築物、およびその活性な断片である。
【0023】
本発明の抗体は、当該分野で周知であるように、ファージディスプレイ技術を用いて作成および同定される(例えば、国際特許申請公開WO94/18221を参照のこと)。そのような手順の詳細な説明を、以下の実施例において述べる。好ましい抗体は、ヒト抗体である。本発明は、新規にデザインした合成ヒト抗体ライブラリー由来の、インテグリンαIIbβ特異的ヒトmAbを開示する。まず、以前のライブラリーに存在した2つのシステイン残基をHCDR3から除去した。ジスルフィド架橋の除去と共に、HCDR3の長さの減少が、潜在的にHCDR3ループにおけるより構造的な柔軟性を可能にする。ジスルフィド架橋の除去は、以前に選択された抗体のHCDR3由来のペプチド(CSFGRGDIRNC)(配列番号1)およびその直線状のバージョンGSFGRGDIRNG(配列番号2)が、リガンド結合アッセイにおいてほとんど同じ有効性を有するという観察によって促進される(Smith,J.W.、Hu,D.、Satterthwait,A.、Pinz−Sweeney,S.およびBarbas,C.F.,3rd(1994)インテグリンの接着リガンドとしての合成抗体の作成。J Biol Chem 269、32788−32795)。2番目に、我々は、インテグリン結合コアモチーフとしてRGDよりもRADを選択し、そして側面領域の6つの残基を無作為化した。RADを含むペプチド、GRADSPは、RGDを含むペプチドが試験される実験において、不活性なコントロールペプチドとして広く使用されてきた(Wu,M.H.、Ustinova,E.およびGranger,H.J.(2001)フィブロネクチンおよびビトロネクチンに対するインテグリンの結合が、単離されたブタ冠細静脈のバリア機能を維持する。J Physiol 532、785−791;Slepian,M.J.、Massia,S.P.、Dehdashti,B.、Fritz,A.、およびWhitesell,L.(1998)ベータ1インテグリンよりもベータ3インテグリンが、損傷後の平滑筋細胞移動に関わるインテグリン−マトリックス相互作用を支配する。Circulation 97、1818−1827;Guilherme,A.、Torres,K.およびCzech,M.P.(1998)インスリン受容体およびインテグリンアルファ5ベータ1シグナル伝達経路間のクロストーク。J Biol Chem 273、22899−22903;Hautanen,A.、Gailit,J.、Mann,D.M.、およびRuoslahti,E.(1989)RGD配列およびその前後関係の修飾の、フィブロネクチン受容体による認識に対する影響。J Biol Chem 264、1437−1442;Adderley,S.R.、およびFitzgerald,D.J.(2000)糖タンパク質IIb/IIIaアンタゴニストは、カスパーゼ−3の活性化によって、ラット心筋細胞においてアポトーシスを誘導する。J Biol Chem 275、5760−5766)。しかし、我々が我々のモチーフ最適化ライブラリーからRADを選択したという事実(Smith,J.W.、Hu,D.、Satterthwait,A.、Pinz−Sweeney,S.およびBarbas,C.F.,3rd(1994)インテグリンの接着リガンドとしての合成抗体の作成。J Biol Chem 269、32788−32795)は、側面に位置する残基が、RADモチーフがインテグリンに結合し得るか否かを決定することを示唆する。我々は、無作為化した側面領域に埋め込まれたRADモチーフが、インテグリンαIIbβに特異的な抗体を選択する可能性を高め得るという仮説を立てた。
【0024】
ここで我々は、ファージディスプレイを使用して、無作為化HCDR3配列VGXXXRADXXXYAMDV(配列番号3)に基づく合成ヒト抗体ライブラリーからインテグリンαIIbβに特異的なモノクローナル抗体を選択した。選択した抗体は、HCDR3に強力なコンセンサスアミノ酸配列(V(V/W)CRAD(K/R)RC)(配列番号4、5,6および7によって例示される)、およびインテグリンαIIbβに対する高い特異性を示したが、インテグリンαβ、αβ、およびαβのような他のRGD結合インテグリンには示さなかった。選択された抗体、およびその配列が選択された抗体のHCDR3配列から得られた3つの合成ペプチドVWCRADRRC(配列番号5)、VWCRADKRC(配列番号6)、およびVVCRADRRC(配列番号7)は、エキソビボでインテグリンαIIbβおよびフィブリノーゲン間の相互作用、および血小板凝集を強力に阻害した。我々の知る限り、これらはインテグリンαIIbβに特異的な最初の完全なヒトモノクローナル抗体であり、そして血小板凝集を強力に阻害し得る。
【0025】
1つの局面において、本発明は、単離および精製された血小板凝集のペプチド阻害剤を提供する。そのペプチドは、9から約50アミノ酸残基、およびV(V/W)CRAD(K/R)RCに対応するアミノ酸残基配列を有する(配列番号4、5、6および7によって例示される)。そのペプチドは、好ましくは配列番号5−7のいずれかのアミノ酸残基配列を含み、そしてより好ましくは、配列番号5−7のいずれかのアミノ酸残基配列を有する。別の局面において、本発明はインテグリンαIIbβと特異的に免疫反応する抗体を提供する。その抗体は、抗体の相補性決定領域内にアミノ酸残基配列V(R/G)V(V/W)CRAD(R/K)RCYAMDVを含む(配列番号8、25、26、27、28、29、30および31によって例示される)。好ましくは、相補性決定領域は抗体の重鎖に位置し、そしてより具体的には、相補性決定領域はHCDR3である。その抗体は、最も好ましくはヒト抗体である。典型的なおよび好ましい抗体は、本明細書中でRAD3、RAD4、RAD9、RAD11、RAD12、RAD32、RAD34、RAD87、またはRAD88と呼ばれる。本発明はまた、RAD3、RAD4、RAD9、RAD11、RAD12、RAD32、RAD34、RAD87、またはRAD88のいずれかの免疫反応性を有する抗体を企図する。
【0026】
さらに別の局面において、本発明は、血小板を、有効な阻害量の本発明のペプチドまたは抗体と接触させる工程を含む、血小板凝集を阻害する方法を提供する。
【0027】
またさらに別の局面において、本発明は、血小板を、有効な阻害量の本発明のペプチドまたは抗体と接触させる工程を含む、フィブリノーゲンの血小板への結合を阻害する方法を提供する。
【0028】
本発明は、1つの実施態様において、本明細書中で記載したような結合部位を含み、そして前もって選択した標的分子に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体を記載する。本発明はまた、その抗体を産生する細胞系統、その細胞系統を産生する方法、およびヒトモノクローナル抗体を産生する方法を記載する。
【0029】
ファージミド粒子上の本発明のディスプレイタンパク質が、好ましい実施態様において、免疫グロブリン重鎖または軽鎖および線状のファージ膜アンカー間の融合タンパク質である限り、ディスプレイタンパク質は事実上、結合部位が導入された、遺伝子操作された免疫グロブリン重鎖または軽鎖であることが理解される。さらに、多くの実施態様において、ディスプレイタンパク質の発現を、1つまたは他方が膜アンカーとの融合タンパク質である、免疫グロブリン重鎖または軽鎖ペプチド間に形成されたヘテロダイマーとして、ファージミド表面に調製する。従って、融合タンパク質として重鎖が使用される場合、好ましい実施態様におけるディスプレイタンパク質は、軽鎖と会合した、アンカーで固定された重鎖を有するFab断片を含む。
【0030】
本発明はまた、1つの実施態様において、本明細書中で記載したような結合部位を含むヒトモノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドを記載し、そしてそのヒトモノクローナル抗体は、前もって選択した標的分子と特異的に結合する。ヒトモノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドを配列決定して、ポリヌクレオチド配列を同定し得る。DNA配列決定の方法は、当該分野で周知であり、そして本発明の実施態様のいずれかを実施するために使用し得る。その方法は、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、SEQUENASE(US Biochemical、Cleveland、Ohio)、Taqポリメラーゼ(Perkin−Elmer)、熱安定性のT7ポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway NJ)、またはポリメラーゼの組み合わせ、およびELONGASE増幅システム(Life Technologies、Gaithersburg、Md.)において見出されるもののようなプルーフリーディングエキソヌクレアーゼのような酵素を採用し得る。好ましくは、配列の調製は、Hamilton MICROLAB2200(Hamilton、Reno Nev.)、Peltier サーマルサイクラー200(PTC200;MJ Research、Watertown Mass.)およびABI CATALYST800(Perkin−Elmer)のような機械を用いて自動化する。次いでABI373または377DNA配列決定システム(Perkin−Elmer)、MEGABACE1000 DNA配列決定システム(Molecular Dynamics、Sunnyvale Calif.)、または当該分野で公知の他のシステムのいずれかを用いて、配列決定を行う。出てきた配列を、当該分野で周知の様々なアルゴリズムを用いて分析する。(例えば、Ausubel,F.M.(1997)Short Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、New York N.Y.、単元7.7;Meyers,R.A.(1995)Molecular Biology and Biotechnology、Wiley VCH、New York N.Y.、856−853頁を参照のこと。)
本発明のモノクローナル抗体を産生する細胞系統の調製を、本明細書中でさらに詳細に記載し、そして本明細書中で記載したファージミドベクター突然変異生成方法を用いて、および結合部位が導入されたことを示す、関心のあるモノクローナル抗体の基本的な結合パターンの決定を可能にする、日常的なスクリーニング技術を用いて達成し得る。従って、試験されるヒトモノクローナル抗体が前もって選択された標的分子に結合するなら、その試験されるヒトモノクローナル抗体、および本発明の細胞系統によって産生されるヒトモノクローナル抗体は、同等であると考えられる。
【0031】
過剰な実験無しに、前者が、後者が前もって選択した標的分子に結合することを阻害するかどうかを確かめることによって、ヒトモノクローナル抗体が、本発明のヒトモノクローナル抗体と同じ(すなわち同等の)特異性を有するかどうかを決定することも可能である。固相に存在する場合、標的分子への結合に関する標準的な競合アッセイにおいて、本発明のヒトモノクローナル抗体による結合の減少によって示されるように、試験されるヒトモノクローナル抗体が本発明のヒトモノクローナル抗体と競合するなら、2つのモノクローナル抗体は同じ、または密接に関連したエピトープに結合する可能性が高い。
【0032】
ヒトモノクローナル抗体が本発明のヒトモノクローナル抗体またはペプチドの特異性を有するかどうかを決定するさらに別の方法は、本発明のヒトモノクローナル抗体またはペプチドを、それが通常反応性の標的分子とプレインキュベートし、そして次いで試験されるヒトモノクローナル抗体を加えて、試験されるヒトモノクローナル抗体がその標的分子に結合する能力において阻害されるかどうかを決定することである。もし試験されるヒトモノクローナル抗体が阻害されるなら、おそらく、それは本発明のモノクローナル抗体またはペプチドと同じ、または機能的に同等のエピトープ特異性を有する。
【0033】
ヒトモノクローナル抗体が本発明のヒトモノクローナル抗体の特異性を有するかどうかを決定するさらなる方法は、問題の抗体の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸残基配列を決定することである。そのCDR領域において同一の、または機能的に同等のアミノ酸残基配列を有する抗体分子は、同じ結合特異性を有する。ペプチドを配列決定する方法は、当該分野において周知である。
【0034】
抗体の免疫特異性、その標的分子結合能力、およびその抗体がエピトープに対して示す付随(attendant)親和性は、その抗体が免疫反応するエピトープによって規定される。エピトープ特異性は、少なくとも部分的には、免疫グロブリン抗体の重鎖の可変領域のアミノ酸残基配列によって、そして部分的には軽鎖可変領域アミノ酸残基配列によって規定される。
【0035】
特に好ましいのは、E.coli微生物または真菌微生物またはハイブリドーマ細胞によって産生される、または本明細書中でさらに記載されるようにプラスミドベクターによって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性を有するヒトモノクローナル抗体である。ペプチド、ポリペプチド、タンパク質および抗体を産生するそのような方法は、当該分野で周知である。「〜の結合特異性を有する」という用語の使用は、同等のモノクローナル抗体は、同じまたは同様の免疫反応(結合)特徴を示し、そして前もって選択した標的分子への結合に関して競合することを示す。
【0036】
「保存的変異」という用語はまた、置換ペプチドを有する抗体も前もって選択した標的分子に結合するなら、未置換の親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸の使用を含む。同様に、本発明の別の好ましい実施態様は、上記で述べた重鎖および/または軽鎖ペプチドをコードするポリヌクレオチド、およびこれらのポリヌクレオチド配列に相補的なポリヌクレオチド配列に関連する。相補的なポリヌクレオチド配列は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で本発明のポリヌクレオチド配列とハイブリダイズする配列を含む。
【0037】
ヒトモノクローナル抗体は、特にそれらをヒトにおいて治療的に使用し得るなら、マウスモノクローナル抗体に対して特に利点を提供する。具体的には、ヒト抗体は、「外来性」抗原と同じくらい迅速に循環から除去されず、そして外来性抗原および外来性抗体と同じ方式では免疫系を活性化しない。
【0038】
本発明は、1つの実施態様において、本方法によって産生された本発明のモノクローナル抗体を企図する。
【0039】
別の好ましい実施態様において、本発明は、本発明のヒトモノクローナル抗体由来のFab断片を含む、短縮免疫グロブリン分子を企図する。Fc受容体を欠くFab断片は、可溶性であり、そして血清半減期において治療的利点を、そして可溶性Fab断片を使用する方法において診断的利点を提供する。可溶性Fab断片の調製は、一般的に免疫学分野において公知であり、そして様々な方法によって達成し得る。可溶性Fab断片を産生する好ましい方法を、本明細書中で記載する。
【0040】
好ましくは、本発明の抗体は、インテグリンαIIbβと特異的に免疫反応する。すなわち、抗体は、他のインテグリンと比較して、インテグリンαIIbβに対して優先的な結合を示す。典型的および好ましい抗体が本明細書中で開示され、そしてRAD3、RAD4、RAD9、RAD11、RAD12、RAD32、RAD34、RAD87、またはRAD88と呼ばれる。それら抗体のVH領域のアミノ酸残基配列を、図6で述べる。
【0041】
特に好ましいヒトモノクローナル抗体は、対で(H:L)重鎖(H)および軽鎖(L)免疫グロブリン可変領域アミノ酸残基配列を有するモノクローナル抗体の免疫反応(結合)特異性を有するものであり、ここで軽鎖は本明細書中で記載された軽鎖であり、そして重鎖は図6の引用された配列の1つおよびその保存的置換を有する。
【0042】
保存的置換は、アミノ酸配列の少なくとも1つの残基が除去され、そして異なる残基がその場所に挿入されたものである。そのような置換は、タンパク質の活性を維持することが望ましい場合に、一般的に表2に従って行われる。表2は、タンパク質においてアミノ酸を置換し得る、そして典型的には保存的置換と考えられるアミノ酸を示す。
【0043】
【化1】

(a)例えばシートまたはらせんコンフォメーションとしての、置換の領域におけるポリペプチドバックボーンの構造、(b)標的部位における分子の電荷または疎水性、または(c)側鎖の大きさを維持することに対するその影響がより有意に異なる残基を選択することによって、表2におけるものよりも保存的でない置換を選択し得る。一般的にタンパク質の性質において最も大きな変化を引き起こすことが予測される置換は、(a)親水性残基、例えばセリン、スレオニンを、疎水性残基、例えばロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、またはアラニンと(またはそれによって)置換する;(b)システインまたはプロリンを、あらゆる他の残基と(またはそれによって)置換する;(c)正に帯電した側鎖を有する残基、例えばリシン、アルギニン、またはヒスチジンを、負に帯電した残基、例えばグルタミン酸またはアスパラギン酸と(またはそれによって)置換する;または(d)大きな側鎖を有する残基、例えばフェニルアラニンを、側鎖を有さないもの、例えばグリシンと(またはそれによって)置換するものである。
【0044】
ラジオイムノアッセイ技術と組み合わせたスキャッチャード分析のような様々な方法を使用して、インテグリンに対する抗体の親和性を評価し得る。親和性は、結合定数Kとして表され、それは平衡状態下でのフリーの抗原およびフリーの抗体のモル濃度で割ったインテグリン−抗体複合体のモル濃度として規定される。複数のインテグリンエピトープに関するその親和性において不均一であるポリクローナル抗体の調製物に関して決定されたKは、インテグリンに対するその抗体の平均の親和性、またはアビディティを示す。特定のインテグリンエピトープに対して単一特異的なモノクローナル抗体の調製物に関して決定されたKは、親和性の真の尺度を示す。インテグリン−抗体複合体が激しい操作を耐えなければならないイムノアッセイにおいて使用するためには、約10から1012L/モルの範囲のKを有する高親和性抗体調製物が好ましい。最終的に好ましくは活性な形式でインテグリンの抗体からの解離を必要とする免疫精製および同様の手順において使用するためには、約10から10L/モルの範囲のKを有する低親和性抗体調製物が好ましい。(Catty,D.(1988)Antibodies, Volume I:A Practical Approach、IRL Press、Washington,D.C.;およびLiddell,J.E.およびCryer,A.(1991)A Practical Guide to Monoclonal Antibodies、John Wiley&Sons、New York、N.Y.)
親和性はまた、解離定数またはKとして表され得る。好ましい結合親和性は、10−6M、5×10−7M、10−7M、5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11M、5×10−12M、10−12M、5×10−13M、または10−13Mより低い解離定数またはKを有するものを含む。
【0045】
別の局面において、本発明は、血小板凝集を阻害するペプチドを提供する。そのペプチドは、9から約50アミノ酸残基を有し、そして本発明の抗体由来である。好ましくは、そのペプチドは式V(V/W)CRAD(K/R)RCに対応するアミノ酸残基配列を含む(配列番号4、5、6、および7によって例示される)。典型的および好ましいペプチドを、下記の実施例において述べる。
【0046】
本発明は、本明細書中で記載される治療方法を実施するために有用な治療組成物を企図する。本発明の治療組成物は、活性成分としてその中に溶解または分散した、本明細書中で記載されたようなヒトモノクローナル抗体またはそれ由来のペプチドの少なくとも1つの種とともに、生理学的に許容可能なキャリアを含む。好ましい実施態様において、治療組成物は、治療目的のためにヒト患者に投与された場合に免疫原性ではない。
【0047】
本明細書中で使用された場合、「薬学的に受容可能な」、「生理学的に許容可能な」という用語およびその文法的なバリエーションは、組成物、キャリア、希釈物、および試薬に言及する場合、交換可能に使用され、そしてその材料が、嘔気、めまい、胃の不調等のような望ましくない生理学的影響を産生することなく、ヒトに投与し得ることを示す。
【0048】
その中に溶解または分散した活性成分を含む薬理学的組成物の調製は、当該分野においてよく理解されている。典型的には、そのような組成物を、水性または非水性の液体溶液または懸濁液のいずれかとして滅菌注射液として調製するが、使用の前に液体における溶液または懸濁液に適当な固形形式も調製し得る。従って、抗体分子を含む組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、徐放性処方または粉末の形式、または他の組成物形式を取り得る。
【0049】
活性成分を、薬剤学的に許容可能な、および活性成分と適合性の賦形剤と、そして本明細書中で記載された治療方法において使用するために適当な量で混合し得る。適当な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等およびその組み合わせである。それに加えて、もし望ましいなら、その組成物は、活性成分の有効性を増強する湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化剤等のような少量の補助物質を含み得る。
【0050】
本発明の治療組成物は、その中の構成成分の薬剤学的に許容可能な塩を含み得る。薬剤学的に許容可能な塩は、例えば塩酸またはリン酸のような無機酸、または酢酸、酒石酸、マンデル酸等のような有機酸と形成される、酸添加塩(ペプチドのフリーのアミノ基と形成される)を含む。フリーのカルボキシル基と形成される塩も、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化鉄のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等のような有機塩基から得ることができる。
【0051】
生理学的に容認できるキャリアは、当該分野において周知である。液体キャリアの例は、活性成分および水に加えて材料を含まない、または生理学的pH値でリン酸ナトリウムのような緩衝液、生理食塩水またはリン酸緩衝化生理食塩水のような両方を含む、滅菌水性溶液である。またさらに、水性キャリアは1つ以上の緩衝塩、および塩化ナトリウムおよびカリウムのような塩、デキストロース、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および他の溶質を含み得る。
【0052】
液体組成物はまた、水に加えて、または水を除いて液体相を含み得る。そのようなさらなる液体相の例は、グリセリン、綿実油のような植物油、オレイン酸エチルのような有機エステル、および水−油エマルションである。
【0053】
治療組成物は、本発明のヒトモノクローナル抗体を、典型的には全治療組成物の重量あたり少なくとも0.1重量パーセントの抗体の量で含む。重量パーセントは、全組成物に対する抗体の重量による比である。従って、例えば0.1重量パーセントは、100グラムの全組成物あたり0.1グラムの抗体である。
【0054】
好ましくは、抗体を含む治療組成物は、典型的には組成物の容積あたり活性成分として1ミリリットル(ml)あたり約10マイクログラム(μg)から1mlあたり約100ミリグラム(mg)の抗体を含み、そしてより好ましくは約1mg/mlから約10mg/ml(すなわち約0.1から1重量パーセント)を含む。
【0055】
別の実施態様における治療組成物は、本発明のペプチドを、典型的には全治療組成物の重量あたり少なくとも0.1重量パーセントのペプチドの量で含む。重量パーセントは、全組成物に対するペプチドの重量による比である。従って、例えば0.1重量パーセントは、100グラムの全組成物あたり0.1グラムのペプチドである。
【0056】
好ましくは、ペプチドを含む治療組成物は、典型的には組成物の容積あたり活性成分として1ミリリットル(ml)あたり約10マイクログラム(μg)から1mlあたり約100ミリグラム(mg)のペプチドを含み、そしてより好ましくは約1mg/mlから約10mg/ml(すなわち約0.1から1重量パーセント)を含む。
【0057】
別の局面において、本発明は、本発明の組成物および化合物を用いた治療方法を企図する。ヒト患者においてインビボでヒトモノクローナル抗体を使用する利点を考えると、現在記載される抗体は、その抗体が結合する標的分子の機能をブロックまたは阻害するための治療薬としてインビボで使用するために、特によく適する。本明細書中で記載したモノクローナル抗体由来のペプチドも、本発明の治療方法における使用のために企図される。その方法は、標的分子を含むと考えられる試料を、治療的に有効な量の、標的分子に結合する本発明のヒトモノクローナル抗体またはペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0058】
インビボの様相に関して、その方法は、患者に治療的に有効な量の、本発明のヒトモノクローナル抗体またはペプチドを含む生理学的に容認できる組成物を投与することを含む。
【0059】
本発明のモノクローナル抗体およびペプチドの投与に関する投与量範囲は、標的分子によって媒介される疾患の症状が軽減する望ましい効果を産生するのに十分多いものである。投与量は、過粘稠度症候群、肺水腫、うっ血性心不全等のような、有害な副作用を引き起こすほど多くあるべきではない。一般的に、投与量は、年齢、状態、性別および患者における疾患の程度によって変化し、そして当業者によって決定され得る。投与量を、あらゆる合併症の場合において個々の医師が調節し得る。
【0060】
本発明の抗体の治療的に有効な量は、典型的には、生理学的に容認できる組成物中で投与した場合に、1ミリリットル(ml)あたり約0.1マイクログラム(μg)から約100μg/ml、好ましくは約1μg/mlから約5μg/ml、そして通常約5μg/mlの血漿濃度を達成するのに十分な抗体の量である。言い換えると、投与量は、毎日1回またはそれ以上の投与で、1日または数日間、約0.1mg/kgから約300mg/kg、好ましくは約0.2mg/kgから約200mg/kg、最も好ましくは約0.5mg/kgから約20mg/kgまで変化し得る。
【0061】
本発明のペプチドの治療的に有効な量は、典型的には、生理学的に容認できる組成物中で投与した場合に、1ミリリットル(ml)あたり約0.1マイクログラム(μg)から約100μg/ml、好ましくは約1μg/mlから約10μg/mlの血漿濃度を達成するのに十分なペプチドの量である。言い換えると、投与量は、毎日1回またはそれ以上の投与で、1日または数日間、約0.1mg/kgから約300mg/kg、好ましくは約0.2mg/kgから約200mg/kgまで変化し得る。
【0062】
本発明のヒトモノクローナル抗体またはペプチドを、注射によって非経口的に、または時間をかけて徐々に注入によって投与し得る。典型的には標的分子には体内で全身投与によって近づき得、そして従って最も多く治療組成物の静脈内投与によって治療されるが、標的とされる組織が標的分子を含む可能性がある場合、他の組織および伝達手段を企図する。従って、本発明のヒトモノクローナル抗体またはペプチドを、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮的に投与し得、そして蠕動性手段によって伝達し得る。
【0063】
本発明のヒトモノクローナル抗体またはペプチドを含む治療組成物を、例えば単位投与量の注射によるように、伝統的に静脈内投与する。本発明の治療組成物に関して使用された場合、「単位投与量」という用語は、対象の単位投与量として適当な、物理的に分離した単位を指し、各単位は、必要な希釈剤、すなわちキャリアまたは賦形剤と共に、望ましい治療効果を産生するために計算された、前もって決定された量の活性物質を含む。
【0064】
組成物は、製剤処方と適合性の方式で、そして治療的に有効な量で投与される。投与される量は、治療される患者、活性成分を利用する患者のシステムの能力、および望ましい治療的効果の程度に依存する。投与される活性成分の正確な量は、医師の判断に依存し、そして各個人に特有である。しかし、全身適用のために適当な投与量範囲が本明細書中で開示され、そして投与経路に依存する。投与の適当なレジメも可変性であるが、最初の投与に続く、引き続く注射または他の投与による、1時間またはそれ以上の間隔での反復投与によって典型的に表される。あるいは、インビボ治療に関して特定された範囲で血中濃度を維持するために十分な持続的静脈内注入が企図される。
【0065】
抗インテグリンαIIbβヒトモノクローナル抗体またはインテグリンαIIbβ結合部位を含むそれ由来のペプチドを、インビボまたはインビトロで、血小板に対するインテグリンαIIbβの機能を調節するために使用し得る。例えば、ヒトモノクローナル抗体またはペプチドを、薬剤学的に許容可能な組成物において使用し得、それはヒト患者に有効な量で投与された場合、血小板凝集を阻害することができ、そしてそれによって血栓の形成率を減少させる。従って、血小板凝集を阻害する抗インテグリンαIIbβヒトモノクローナル抗体のインビボにおける投与を、凝固および炎症性反応のいくつかのような、血小板の接着によって開始されるあらゆる生理学的反応を調節するためにインビボで使用し得る。
【0066】
この方法をインビボで実施する場合、生理学的に容認できる希釈剤、およびインテグリンαIIbβと免疫反応し、そして血小板凝集を阻害する抗体分子を含む、有効な量の抗体またはペプチド組成物を、哺乳類に静脈内投与し、そして抗体分子が存在するいかなるインテグリンαIIbβと免疫反応し、そして免疫反応産物を形成するのを可能にする、およびペプチドを含む結合部位がインテグリンαIIbβに結合し、そして正常なリガンドがもはや受容体に結合できないようにペプチド−受容体複合体を形成することを可能にするのに十分な時間、その哺乳類を維持する。
【0067】
本発明のインテグリンαIIbβ特異的抗体は、抗血栓治療薬として有用である。その抗体(またはその断片)を使用して、血小板凝集および血栓の形成を阻害し得る。その抗体を使用して、血小板凝集によって引き起こされ、そして血栓の形成または再形成の前に起こり得る環状の流れの変化(cyclic flow variations)も阻害し得る。その抗体を、血栓の形成または再形成(再閉塞)が予防されるべき様々な状況において使用し得る。例えば、その抗体を個体(例えば、ヒトのような哺乳類)に投与して、肺塞栓、一過性虚血発作(TIA)、深部静脈血栓症、冠血管バイパス手術、プロテーゼ弁または血管を挿入する手術(例えば、自己、非自己または合成血管移植において)における血栓症を予防し得る。本発明の抗体をまた、個体に投与して、バルーンによって行われる血管形成術、冠血管アテレクトミー、レーザー血管形成術、または他の適当な方法における血小板凝集および血栓症を予防し得る。抗体を、血管形成術の前に(血管形成術前)、血管形成術中、または血管形成術後に投与し得る。そのような治療は、血栓症を予防し、そしてそれによって死亡、心筋梗塞、またはPTCAまたは冠血管バイパス手術を必要とする再発性の虚血性イベントのような、血管形成術後の血栓性合併症の割合を抑制し得る。
【0068】
血小板の凝集は、凝固カスケードを活性化し、そしてより安定なフィブリン網および閉塞血栓を形成し、それは血栓溶解剤によって溶解し得る。その抗体を単独で、またはプラスミノーゲンアクチベーター(例えば組織プラスミノーゲンアクチベーター、ウロキナーゼ、またはストレプトキナーゼ、組換え組織プラスミノーゲンアクチベーター)のような血栓溶解剤、またはアスピリン、ヘパリン、またはクマリン抗凝固剤(例えばワーファリン)のような抗凝固剤または抗血小板薬と組み合わせて、個体(例えばヒト)に投与して、血栓溶解後に起こり得る再閉塞を予防または抑制し得、そして血栓の溶解を促進し得る。その抗体または断片を、再閉塞を引き起こし得る血小板凝集を予防するために十分な量で、血栓溶解剤または抗凝固剤の投与の前に、それと共に、またはそれに続いて投与し得る。
【0069】
有効な量(例えば、血小板凝集の阻害、そしてそれによる血栓形成の阻害に十分な量)の抗体または抗体断片を、滅菌生理食塩水のような薬剤学的に許容可能な賦形剤中で、非経口的に、好ましくは静脈内に投与し得る。緩衝化剤を含み得る。その抗体処方は、安定化剤(例えばポリソルベート80、USP/NF)のような、さらなる添加物を含み得る。その抗体を、単回投与で、持続的に、または複数回の注入(例えばボーラス注射、続いて持続注入)で投与し得る。あるいは、その抗体を、徐放性メカニズム(例えばポリマーまたはパッチ伝達システムによる)によって、または別の適当な方法によって投与し得る。投与される量は、臨床症状、個体の体重、他の薬剤(例えば血栓溶解剤)を投与するかどうかのような様々な因子に依存する。
【0070】
本発明のインテグリンαIIbβ特異的免疫グロブリンはまた、血栓のイメージングにも有用である。この目的のためには、抗体断片が一般的に好ましい。上記で記載したように、キメラ重鎖遺伝子を短縮形式でデザインし、免疫シンチグラフィーイメージングのために、キメラ免疫グロブリン断片(例えばFab、Fab’、またはF(ab’))を産生し得る。これらの分子を、直接または結合したDTPAのようなキレート化剤を介してのいずれかで、131ヨウ素、125ヨウ素、99テクネチウム、または111インジウムのような放射性同位体で標識して、放射性免疫シンチグラフィー剤を産生し得る。あるいは、放射性金属結合(キレート化)ドメインを、キメラ抗体部位に遺伝子操作して、標識の部位を提供し得る。従って、免疫グロブリンを、非ヒト血小板特異的可変領域、ヒト定常領域(好ましくは短縮されている)、およびメタロチオネインのような金属結合タンパク質由来の金属結合ドメインを有するタンパク質としてデザインし得る。
【0071】
インテグリンαIIbβ特異的免疫グロブリンを、血栓を有すると疑われる患者に投与する。標識免疫グロブリンが血栓部位に局在化するのを可能にするのに十分な時間の後、標識によって産生されるシグナルを、ガンマカメラのような光走査装置によって検出する。次いで検出されたシグナルを、血栓の画像に変換する。画像は、インビボにおいて血栓を位置付け、そして適当な治療戦略を考案することを可能にする。
【0072】
以下の実施例は、本発明の典型的な実施態様を説明し、そしてあらゆる方法において明細書または請求を制限しない。
【実施例】
【0073】
(細胞系統、タンパク質、およびペプチド)
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を、Biowhittaker(Walkersville、MA)から購入し、そして細胞と共に供給されたEGM−2培地(Biowhittaker)中で増殖させた。インテグリンαIIbβを、Enzyme Research Laboratories(South Bend、IN)から購入した。インテグリンαβ、およびαβは、Chemicon(Tamecula、CA)から購入した。ヒトフィブリノーゲンを、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO)から購入した。この研究において使用するペプチドを、Peptron(Taejon、Korea)で合成した。ヒトフィブリノーゲンおよびペプチドを、EZ−Link−PFP−ビオチン(Pierce、Rockford、IL)を用いて、製造会社による指示に従ってビオチン化した。アブシキシマブ(ReoPro)を、Eli Lilly(Indianapolis、IN)から購入した。
【0074】
(ライブラリーの産生)
全RNAを、6人の健康なドナーの骨髄から、TRI REAGENT(Molecular Research Center、Cincinnati、OH)を用いて調製した。第1鎖cDNAを、オリゴ(dT)プライマー(priming)を用いるSUPERSCRIPT Preamplification Systemを用いて合成した(Life Technologies、Gaithersburg、MD)。FR3の一部、無作為化HCDR3、およびC1に融合したVのFR4をコードするcDNA断片を、プライマーneo−rad−f(GTGTATTACTGTGCGAGAGTGGGGNNKNNKNNKCGTGCCGACNNKNNKNNKTACGCTATGGACGTCTGGGGC)(配列番号9)およびdpseq(AGAAGCGTAGTCCGGAACGTC)(配列番号10)および鋳型としてファージミドベクターpComb3X−TT(Barbas,C.F.,3rd、Burton,D.R.、Scott,J.K.、およびSilverman,G.J.(2001)Phage Display:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)を用いて、PCRによって増幅した。VのFR1からFR3までをコードするcDNA断片を増幅するために、調製したヒト骨髄cDNAを、プライマーDP−47N−term(GCTGCCCAACCAGCCATGGCCGAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTA)(配列番号11)およびDP−47FR3(CACTCTCGCACAGTAATACACGGCCGTGTCCTCGGCTCT)(配列番号12)を用いてPCRにかけた。全ての増幅を、Taqポリメラーゼ(Pharmacia、Piscataway、NJ)を用いた標準的なPCR条件下で行った。2つのcDNA断片を、プライマーlead−VH(GGCCATGGCTGGTTGGGCAGC)(配列番号13)およびdp−Ex(GAGGAGGAGGAGGAGGAGAGAAGCGTAGTCCGGAACGTC)(配列番号14)を用いて、オーバーラップエクステンションPCRによって組み立てた。ファージミドベクターpComb3X中の前に選択したDPK−26ヒトカッパ軽鎖cDNAを、プライマーompseq(AAGACAGCTATCGCGATTGCAGTG)(配列番号15)およびleadB(GGCCATGGCTGGTTGGGCAGC)(配列番号16)を用いて、PCRによって増幅した。重鎖断片ライブラリーおよび軽鎖をコードするcDNAを、プライマーompseqおよびdp−Exを用いて、オーバーラップエクステンションPCRによって融合した。できたFabをコードするライブラリーを、記載されたように、SfiI(Roche、Indianapolis、IN)で消化し、ファージミドベクターpComb3Xにライゲーションし、そしてE.coli株ER2537(New England Biolabs、Beverly、MA)に形質転換した(Barbas,C.F.,3rd、Burton,D.R.、Scott,J.K.、およびSilverman,G.J.(2001)Phage Display:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)。
【0075】
(ライブラリーの選択)
全部で7回のパニングを行った(Barbas,C.F.,3rd、Burton,D.R.、Scott,J.K.、およびSilverman,G.J.(2001)Phage Display:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)。最初に、固定化ヒトインテグリンαIIbβに対する5回のパニングを、コーティングのために50μlの金属緩衝液(25mMのTris−HCl、pH7.5、137mMのNaCl、1mMのKCl、1mMのMgCl、1mMのCaCl、および1mMのMnCl)中100ngのタンパク質、洗浄のためにTBS(Tris緩衝化生理食塩水)中0.05%のTween20、および溶出のためにTBS中10mg/mlのトリプシン(Becton−Dickson、Franklin Lakes、NJ)を用いて行った。Costar3690 96穴プレート(Corning、NY)を、パニングのために使用した。トリプシン処理を、37℃で30分間行った。6回目のパニングのために、金属緩衝液中25ngのタンパク質をコーティングのために使用し、そしてTBS中0.5%のTween20を洗浄のために使用した。7回目のパニングのために、12.5ngのタンパク質をコーティングのために使用した。プレートを、初回において5回、2回目および3回目において10回、そして残る4回において15回洗浄した。各回のアウトプットファージプールを、2次抗体として西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したヒツジ抗M13(Pharmacia)を用いたファージELISAによってモニターした。最終回のパニングの後、ファージをアウトプットプレートで増殖させた単一のクローンから産生し、そして記載されたようにファージELISAによってインテグリンαIIbβに対する結合に関して試験した(Barbas,C.F.,3rd、Burton,D.R.、Scott,J.K.、およびSilverman,G.J.(2001)Phage Display:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)。
【0076】
(軽鎖のシャッフリングおよび選択)
κおよびVλをコードするcDNAを、高度に保存された、それぞれ様々なVκおよびVλファミリーのN末端アミノ酸をコードする配列にハイブリダイズするセンスプライマー、およびVκおよびVλのFR4のC末端アミノ酸をコードする配列にハイブリダイズする逆向きプライマーを含む(Kabat,E.A.、Wu,T.T.、Perry,H.M.、Gottesman,K.S.、およびFoeller,C.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、U.S.Department of Health and Human Services、Public Health Service、Natl.Inst.Health、Bethesda)、以前に公開されたプライマーのパネルを用いて、調製したヒト骨髄cDNAから増幅した(Barbas,C.F.,3rd、Burton,D.R.、Scott,J.K.、およびSilverman,G.J.(2001)Phage Display:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)。CκおよびCλをコードする配列を、記載されたように調製し(Barbas,C.F.,3rd、Burton,D.R.、Scott,J.K.、およびSilverman,G.J.(2001)Phage Display:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)、そしてプライマーRSC−F(GAGGAGGAGGAGGAGGAGGCGGGGCCCAGGCGGCCGAGCTC)(配列番号17)およびlead−B(GGCCATGGCTGGTTGGGCAGC)(配列番号18)を用いて、オーバーラップエクステンションPCRによって、VκおよびVλをコードする配列にそれぞれ融合した。選択されたFabにおいてDPK−26ヒトカッパ軽鎖を置換するために、2つのクローニング戦略を使用した。1つのアプローチにおいて、DPK−26ヒトカッパ軽鎖cDNAを、SacIおよびXbaI(New England Biolabs)による制限酵素消化によって、最終回のパニングの後に得られたファージミドベクタープールから除去した。次いでヒト軽鎖をコードするライブラリーを、同じ制限酵素で消化し、調製したファージミドベクターにライゲーションし、そしてE.coli株ER2537に形質転換した。2番目のアプローチにおいて、cDNAをコードする重鎖断片を、lead−VHおよびdpseqプライマーを用いて最終回のパニングの後に得られたファージミドベクタープールから増幅し、そしてプライマーompseqおよびdp−EXを用いてオーバーラップエクステンションPCRによって、ヒト軽鎖をコードするライブラリーと融合した。できたFabをコードするライブラリーを、以前に記載されたように、SfiIで消化し、ファージミドベクターpComb3Xにライゲーションし、そしてE.coli株ER2537に形質転換した(Barbas,C.F.,3rd、Burton,D.R.、Scott,J.K.、およびSilverman,G.J.(2001)Phage Display:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)。2つの軽鎖ライブラリーを混合した後、それぞれ12.5ngのコートされたヒトインテグリンαIIbβを用いた3回のパニングを行った。各回においてプレートを15回洗浄した。最終回のパニングの後、アウトプットプレートで増殖させた単一のクローンからファージを産生し、そして記載されたように、ファージELISAによって、インテグリンαIIbβに対する結合に関して試験した(Barbas,C.F.,3rd、Burton,D.R.、Scott,J.K.、およびSilverman,G.J.(2001)Phage Display:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)。
【0077】
(ELISA)
可溶性Fabの産生に関して、公開された手順に従った(Barbas,C.F.,3rd、Burton,D.R.、Scott,J.K.、およびSilverman,G.J.(2001)Phage Display:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)。簡単には、選択されたコロニーを、5mlのスーパーブロス(superbroth)中で、37℃で6時間増殖させた。IPTG(イソプロピル−ベータ−D−チオガラクトピラノシド、Sigma−Aldrich)を1mMの最終濃度まで加えた後、一晩増殖を継続した。Costar3690 96穴プレートの各ウェルに関して、50μlの金属緩衝液中100ngのインテグリンαIIbβを、4℃で一晩コーティングした。TBS中3%(w/v)のスキムミルクを加え、続いて37℃で1時間インキュベーションすることによって、プレートを固定した。続いて、同じ容積のTBS中3%(w/v)のスキムミルクで希釈した50μlの培養上清、TBS中3%のスキムミルク中で1μg/mlに希釈した、50μlの西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ラット抗HAmAb 3F10(Roche)、および50μlのABTS基質溶液(Barbas,C.F.,3rd、Burton,D.R.、Scott,J.K.、およびSilverman,G.J.(2001)Phage Display:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)を、連続的に加えた。試薬を加える前に、プレートをTBS中0.05%のTween20で5回洗浄した。各工程において、プレートを37℃で1時間インキュベートした。選択されたFabの交差反応性をチェックするために、コーティングされたインテグリンαβ、αβ、およびαβを用いた同時アッセイを、上記で記載したのと同じ条件を用いて行った。
【0078】
(フィブリノーゲンの結合阻害アッセイ)
Costar3690 96穴プレートのウェルを、50μlの金属緩衝液中100ngのインテグリンαIIbβで、4℃で一晩コーティングした。プレートを水で2回洗浄し、そして160μlのTBS中3%(w/v)のスキムミルクで、37℃で1時間固定した。プレートを水で簡単に洗浄した後、TBS中3%(w/v)のスキムミルク中、1.2μMのビオチン化フィブリノーゲン50μlと混合した、50μlのFabを含む培養上清、精製Fab RAD87およびアブシキシマブ、または合成ペプチドを、各ウェルに加えた。最終濃度を、1.3×10−8Mから8.0×10−7MのFab、および8.9×10−8Mおよび9.1×10−5Mの合成ペプチドの間に調整した。37℃で2時間インキュベーションし、続いて水で10回、そしてTBS中0.05%のTween20で5回洗浄した後、TBS中3%(w/v)のスキムミルク中で希釈した50μlの0.5μg/mlのストレプトアビジン−HRP(Pierce)を加え、そして37℃で1時間インキュベートした。上記のように洗浄した後、50μlのABTS基質溶液(Barbas,C.F.,3rd、Burton,D.R.、Scott,J.K.、およびSilverman,G.J.(2001)Phage Display:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)を加えた。この実験を各濃度で3回繰り返して、平均値および標準偏差を得た。
【0079】
(フローサイトメトリー)
末梢血を健康なボランティアから取り、そしてACDチューブ(Becton Dickinson、San Jose、CA)中に採取した。HUVECを0.05%(w/v)のトリプシン、0.53mMのEDTA(Life Technologies)で5分間処理し、500gで2分間の遠心によって回収し、そしてPBS(リン酸緩衝化生理食塩水)中1%(w/v)のBSAに再懸濁した。続いて、Fab RAD87またはFabアブシキシマブを、0.2μMの最終濃度に達するように、40μlのPBS中1%(w/v)のBSAまたは40μlの末梢血に再懸濁した細胞に加えた。室温で40分間インキュベートし、続いてPBS中1%(w/v)のBSAで2回洗浄した後、750μlのPBS中1%(w/v)のBSAで希釈した、10μlのFITC結合抗ヒトIgGポリクローナル抗体(Sigma−Aldrich)を加え、そして室温で20分間インキュベートした。PBS中1%(w/v)のBSAで2回洗浄した後、Becton Dickinson(San Jose、CA)のFACStar装置を用いて、フローサイトメトリーを行った。
【0080】
(血小板凝集アッセイ)
ヒト末梢血を上記で記載したように採取した。135gで15分間遠心することによって、採取した末梢血から血小板が豊富な血漿(PRP)を得た。続く1500gで15分間の遠心は、血小板が少ない血漿(PPP)を産生した。PRPおよびPPPを混合することによって、血漿1μlあたり300,000−350,000の血小板の調整血漿を調製した。435μlの調整血漿に、15μlのPBSに溶解したRAD87 mAb、アブシキシマブ、およびペプチドを、20nMおよび100nMの間のmAbおよび0.4μMおよび90μMの間のペプチドの最終濃度まで加えた。以前に記載されたように、全血光凝集能測定装置(Chrono−log、Havertown、PA)を用いて、血小板凝集アッセイを行った(Klinkhardt,U.、Kirchmaier,C.M.、Westrup,D.、Breddin,H.K.、Mahnel,R.、Graff,J.、Hild,M.およびHarder,S.(2000)血小板凝集、フィブリノーゲン結合および血小板分泌パラメーターに対する、血小板糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤アブシキシマブまたはSR121566Aの、差次的なインビトロ効果。Thromb Res 97,201−207)。各試料のインピーダンスを、安定なベースラインが確立するまでモニターした(1分当たり<5mVのドリフト)。血小板凝集を誘発するために、9μlのADP溶液を、20μMの最終濃度に達するまで加えた。時間と共に1対の電極間のインピーダンスの増加を、分析のためにパーソナルコンピューターへ接続器を通して伝達した(AGGRO/LINK、Chrono−log)。
【0081】
(親和性の測定)
Fab RAD87およびアブシキシマブのインテグリンαIIbβに対する解離定数を、以前に記載されたように競合的ELISAによって決定した(Djavadi−Ohaniance,L.、Goldberg,M.E.、およびFirguet,B.(1996)溶液における抗体親和性の測定。Antibody Engineering(McCafferty,J.、Hoogenboom,H.R.、およびChiswell,J.編)77−98頁、IRL Press、Oxford;Yi,K.、Chung,J.、Kim,H.、Kim,I.、Jung,H.、Kim,J.、Choi,I.、Suh,P.、およびChung,H.(1999)SfiIおよびNotI部位を含むように修飾した原核生物発現ベクターにおける、抗−NCA−95scFv(CEA79scFv)の発現および特徴づけ。Hybridoma 18、243−249)。簡単には、Costar3690 96穴プレートのウェルを、50μlの金属緩衝液中、250ngのインテグリンαIIbβで、4℃で一晩コーティングした。プレートを水で5回洗浄し、そして160μlのPBS中2%のBSAで、37℃で2時間固定した。精製Fab RAD87またはFabアブシキシマブを、2×10−10Mの最終濃度に達するまでインテグリンαIIbβと混合した。インテグリンαIIbβの最終濃度を、1×10−7Mおよび1×10−10Mの間に調整した。これらの混合物を一晩インキュベートし、平衡化を可能にした。プレートを水で簡単に洗浄した後、抗体−抗原混合物をウェルに加え、そして室温で2時間インキュベートした。プレートをPBS中0.05%のTween20で3回洗浄した後、200ng/mlの西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗ヒトIgG抗体(Pierce)を加えた。室温で1時間インキュベートした後、プレートをPBS中0.05%のTween20で5回洗浄し、その後50μlのABTS基質溶液を加えた(Barbas,C.F.,3rd、Burton,D.R.、Scott,J.K.、およびSilverman,G.J.(2001)Phage Display:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)。37℃で2時間インキュベートした後、50μlの3N HClを加えることによって反応を停止させた。各ウェルの吸光度を、ELISAプレートリーダーにおいて、405nmで測定した。y軸にυ/[Ag]を、そしてx軸にυを使用してスキャッチャードプロットを描いた。[Ag]は、フリーの抗原の濃度である;υは結合した抗体の画分であり、それは規定された濃度の可溶性抗原の存在下での吸光度を、可溶性抗原の非存在下での吸光度で割ることによって得られた。スキャッチャードプロットの直線の勾配が、1/Kに等しい。
【0082】
(ハイブリッド未処理/合成ヒトFabライブラリーの産生および選択)
この研究の目的は、両方の部位を3つの無作為化アミノ酸残基ではさまれたRADモチーフをHCDR3に移植することによって、インテグリンαIIbβを他のRGD結合インテグリン、特にインテグリンαβと区別する合成ヒト抗体を産生することであった。最初に、我々は、中央の認識配列としてRGDモチーフよりもRADモチーフを使用した。2番目に、以前の研究の両方における、中央認識配列を囲むCXCジスルフィド架橋を除去した。3番目に、合成HCDR3ライブラリーを、ヒト骨髄cDNAから増幅した未処理のヒトVHライブラリーに移植した。従って、そのHCDR3における無作為化に加えて、多様化VHによって、2番目のレベルのライブラリーの複雑性が導入された。
【0083】
無作為化HCDR3配列VGXXXRADXXXYAMDV(配列番号3)を有するヒト抗体ライブラリーを、ファージミドベクターpComb3Xにおいて産生し、ここでXは20の通常天然アミノ酸のいずれかを表す。VH、重鎖可変ドメインのFR1からFR3をコードする断片を、ヒト可変重鎖遺伝子DP−47特異的プライマー、および鋳型として6人の健康なドナー由来のヒト骨髄cDNAを用いて、PCRによって増幅した。このハイブリッド未処理/合成重鎖断片ライブラリーを、まず以前に選択されたDPK−26ヒトカッパ軽鎖と対にした。できたFabライブラリーを、ファージミドベクターpComb3Xにクローニングし、1×10の独立した形質転換体の複雑性を得た。選択されていないライブラリーから無作為に選んだクローンが、VHおよびHCDR3配列における企図した多様性を確認した。固定化ヒトインテグリンαIIbβに対する7回のパニングの後、ファージELISAによって分析した場合、80%以上の選択されたクローンが、インテグリンαIIbβに結合した(Barbas,C.F.,3rd、Burton,D.R.、Scott,J.K.、およびSilverman,G.J.(2001)Phage Display:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)。
【0084】
選択された重鎖断片をコードする配列を、軽鎖シャッフリングに基づく2番目の選択工程にかけた。このために、DPK−26ヒトカッパ軽鎖を、ヒト骨髄cDNAから増幅したヒトカッパおよびラムダ軽鎖ライブラリーと置換した。できた未処理ヒト軽鎖ライブラリーを、再びファージミドベクターpComb3Xにクローニングし、7×10の独立した形質転換体の複雑性を得た。固定化ヒトインテグリンαIIbβに対する3回のパニングの後、ファージELISAによって分析した場合、全ての選択されたクローンがインテグリンαIIbβに結合した。
【0085】
最も強力な結合を示した10個の個々のクローンを、続いてDNA配列決定によって分析した。1つ以外全てのクローンが、コンセンサス配列V(V/W)CRAD(K/R)RC(配列番号14)を有する、HCDR3におけるジスルフィド架橋で束縛されたループを含んでいた(表2)。その例外であるクローンRAD1は、対応する配列THSRADRRE(配列番号19)を有していた(表2)。全てのクローンがDP47 VH重鎖断片を示した。4つのクローンがもともとのDPK−26ヒトカッパ軽鎖を有していたが、6つのクローンは未処理ヒト軽鎖ライブラリー由来のヒトカッパまたはラムダ軽鎖を示した。
【0086】
(選択されたヒトFabの生化学的および機能的特徴づけ)
10個の選択されたクローンから発現するFabを、そのRGD結合インテグリンとの反応性に関して、ELISAによって試験した。すべてのFabはヒトインテグリンαIIbβに強力に結合したが、ヒトインテグリンαβ、αβ、およびαβには結合しなかった(図1)。ヒト血小板表面に発現する天然インテグリンαIIbβに対する反応性をチェックするために、続いて全てのFabをフローサイトメトリーによって分析した。全ての選択されたFabはヒト血小板に結合するが、関連性のないFabは結合しないことが見出された。インテグリンαIIbβおよびフィブリノーゲン間の相互作用は、部分的にRGDモチーフによって媒介されるので、我々は次に、選択されたFabがこのタンパク質−タンパク質相互作用を阻害し得るかどうかを試験した。この目的のために、我々は、固定化インテグリンαIIbβ、ビオチン化フィブリノーゲン、およびアビジン−HRPに基づく競合的ELISAアッセイを確立した。選択されたFabを、ビオチン化フィブリノーゲンと異なる濃度で混合し、そして続いて固定化インテグリンαIIbβとインキュベートした。アビジン−HRPを用いて、固定化インテグリンαIIbβに結合したビオチン化フィブリノーゲンを検出した。全ての選択されたFabは、インテグリンαIIbβおよびフィブリノーゲンの相互作用の強力な阻害を示した。
【0087】
我々は続いて、インテグリンαIIbβに対して最も強力な結合を示したFab RAD87に焦点を当てた(図1)。Fab RAD87をE.coliにおいて発現し、そして以前に記載されたように精製した(Barbas,C.F.,3rd、Burton,D.R.、Scott,J.K.、およびSilverman,G.J.(2001)Phage Display:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)。フローサイトメトリーによって明らかになったように、Fab RAD87は、ヒト血小板のみに結合し、主にインテグリンαβを発現するHUVEC細胞には結合しなかった(図2)。対照的に、Fabアブシキシマブ(ReoPro、Eli Lilly、Indianapolis、IN)は、血小板およびHUVEC細胞の両方に結合し(図2)、その記録された2つのβインテグリンとの交差反応性を確認した(Bougie,D.W.、Wilker,P.R.、Wuitschick,E.D.、Curtis,B.R.、Malik,M.、Levine,S.、Lind,R.N.、Pereira,J.、およびAster,R.H.(2002)チロフィバンまたはエプチフィバチドによる治療後の急性血小板減少症は、リガンド結合GPIIb/IIIaに特異的な抗体に関連する。Blood 100、2071−2076)。Fab RAD87は、インテグリンαIIbβおよびフィブリノーゲン間の相互作用を、8.0×10−8MのIC50で、用量依存的な方式で阻害した。同時実験において、Fabアブシキシマブは9.0×10−8MのIC50を示した(図3A、表3)。競合的ELISAに基づいて(Suzuki,K.、Sato,K.、Kamohara,M.、Kaku,S.、Kawasaki,T.、Yano,S.、およびIizumi,Y.(2002)ヒト化抗糖タンパク質IIb/IIIaモノクローナル抗体、YM337およびアブシキシマブの、インビトロ抗血小板効果および結合性質に対する比較研究。Biol Pharm Bull 25、1006−1012;Co,M.S.、Yano,S.、Hsu,R.K.、Landolfi,N.F.、Vasquez,M.、Cole,M.、Tso,J.T.、Bringman,T.、Laird,W.、Hudson,D.ら(1994)血小板インテグリンgpIIb/IIIaに特異的なヒト化抗体。J Immunol 152、2968−2976)、一価のFab RAD87/インテグリンαIIbβ相互作用のK値は、3.3×10−9Mであった(表3)。同じアッセイは、一価のFabアブシキシマブ/インテグリンαIIbβ相互作用に関して、公開された6.2×10−9Mと比較して、1.1×10−9MのK値を得た(表3)(Tam,S.H.、Sassoli,P.M.、Jordan,R.E.、およびNakada,M.T.(1998)アブシキシマブ(ReoPro、キメラ7E3 Fab)は、糖タンパク質IIb/IIIaおよびアルファ(v)ベータ3インテグリンの等価な親和性および機能的阻害を示す。Circulation 98、1085−1091)。
【0088】
インテグリンαIIbβおよびフィブリノーゲン間の相互作用は、血小板凝集に必須の工程であるので、我々は次に、Fab RAD87がエキソビボで血小板凝集を阻害し得るかどうかを試験した。ADPをヒト末梢血から調製した調整血漿に20μMの最終濃度まで加えることによって、血小板凝集を誘発し、そして血小板凝集計によってモニターした。Fab RAD87は、60nMまたは3μg/mlのEC50で、血小板凝集を強力に阻害することが見出された(図4;表3)。同時実験において、FabアブシキシマブのEC50は、血小板凝集が5μMのADP濃度で誘発された場合、45nMと決定され、それは以前に34nMであると報告された(Klinkhardt,U.、Kirchmaier,C.M.、Westrup,D.、Breddin,H.K.、Mahnel,R.、Graff,J.、Hild,M.およびHarder,S.(2000)血小板凝集、フィブリノーゲン結合および血小板分泌パラメーターに対する、血小板糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤アブシキシマブまたはSR121566Aの、差次的なインビトロ効果。Thromb Res 97,201−207)。
【0089】
(選択されたHCDR3配列由来の合成ペプチドの生化学的および機能的特徴づけ)
その配列が、選択されたインテグリンαIIbβ結合FabのHCDR3配列から得られた、4つのノナペプチドを、化学的に合成した。このパネルは、3つの環状ペプチド、VWCRADKRC(配列番号6)、VWCRADRRC(配列番号5)、およびVVCRADRRC(配列番号7)、および直線状ペプチドTHSRADRRE(配列番号19)を含んでいた。上記で記載した競合的ELISAアッセイを用いて、全ての環状ペプチドは、マイクロモルの濃度範囲で、インテグリンαIIbβおよびフィブリノーゲン間の相互作用を阻害することが見出された。直線状ペプチドおよび3つのコントロールペプチド−2つは逆向きRADモチーフ、VVCDARRRC(配列番号20)およびTHSDARRRE(配列番号21)を有し、そして1つは無関係の配列を有する−は、同じ濃度範囲でそのタンパク質−タンパク質相互作用を阻害しなかった(図3B)。最も強力な環状ペプチド、VWCRADRRC(配列番号5)およびVWCRADKRC(配列番号6)のIC50を、それぞれ1.2×10−6Mおよび4.2×10−6Mと決定した。その配列をFab RAD87から得た環状ペプチドVVCRADRRCのIC50は、1.1×10−5であり、それはFab RAD87に関して得られた対応するIC50より2けた高い(図3B)。
【0090】
図5は、様々な濃度のVWCRADRRC(配列番号5)(A)、VVCRADRRC(配列番号7)(B)、VWCRADKRC(配列番号6)(C)、およびTHSRADRRE(配列番号19)およびコントロールペプチド(D)の存在下におけるエキソビボ血小板凝集アッセイを示す。驚くべきことに、3つの環状ペプチドの全ては90μMの濃度で血小板凝集を完全に阻害したが、直線状またはコントロールペプチドはしなかった。インテグリンαIIbβ/フィブリノーゲン相互作用アッセイと関連して、9μMと低い濃度で血小板凝集を阻害する唯一のペプチドである、環状ペプチドVWCRADRRC(配列番号5)が、再び最も強力な阻害剤であることが見出された。
【0091】
それらを抗血栓症薬として適用する可能性はアブシキシマブと重複するが、我々が本明細書中で記載したRAD抗体は、いくつかの特有の特徴を有する。まず、それらはヒト抗体であり、それらは患者において免疫反応を誘発する可能性がより低い。2番目に、RGDペプチドおよびペプチド模倣物と同様に(Xiong,J.P.、Stehle,T.、Zhang,R.、Joachimiak,A.、Frech,M.、Goodman,S.L.、およびArnaout,M.A.(2002)Arg−Gly−Aspリガンドとの複合体における、インテグリンアルファVベータ3の細胞外部分の結晶構造。Science 296、151−155)、RAD抗体は、インテグリンαIIbβのRGD結合部位を直接阻害する。対照的に、RGDまたはRGD様モチーフを含まないアブシキシマブによるインテグリンαIIbβ連結のメカニズムは、RGD結合部位の直接的阻害よりは、立体的またはアロステリックな妨害が関与すると考えられる。3番目に、RAD抗体はインテグリンαIIbβに選択的に結合するが、アブシキシマブはインテグリンαβおよびαIIbβを区別しない。アブシキシマブの交差反応性は、我々の初期のインテグリン結合合成抗体と同様である(Barbas,C.F.,3rd、Languino,L.R.、およびSmith,J.W.(1993)デザインおよび選択による高親和性自己反応性ヒト抗体:インテグリンリガンド結合部位の標的化。Proc Natl Acad Sci USA 90、10003−10007;Smith,J.W.、Hu,D.、Satterthwait,A.、Pinz−Sweeney,S.、およびBarbas,C.F.,3rd(1994)インテグリンの接着性リガンドとしての合成抗体の産生。J Biol Chem 269,32788−32795)。
【0092】
原因が未知である急性血小板減少症は、インテグリンαIIbβ阻害剤に伴う主な安全性問題の1つである。上記で言及したように、アブシキシマブのマウス可変ドメインに対するヒト抗体が、アブシキシマブを2回目に投与された後重篤な血小板減少症を発症した患者における血小板破壊の主な原因であると報告された(Curtis,B.R.、Swyers,J.、Divgi,A.、McFarland,J.G.およびAster,R.H.(2002)アブシキシマブに対する2回目の接触後の血小板減少症は、アブシキシマブにコートされた血小板を認識する抗体によって引き起こされる。Blood 99、2054−2059)。この発見は、そのCDRをヒト可変ドメインの枠組みに移植することによる、アブシキシマブのさらなるヒト化を必要とし得る(Rader,C.、Ritter,G.、Nathan,S.、Elia,M.、Gout,I.、Jungbluth,A.A.、Cohen,L.S.、Welt,S.、Old,L.J.、およびBarbas,C.F.,3rd(2000)治療的ヒト抗体産生の新規供給源としてのウサギ抗体レパートリー。J Biol Chem 275、13668−13676)。しかし、抗体の詳細な構造的情報に基づいた枠組みの精密な調整を伴わなければ、このCDR移植戦略は、現在臨床試験において評価されている抗インテグリンαIIbβモノクローナル抗体YM337の場合と同様に、しばしば抗原に対して非常に減少した親和性を有する抗体を産生する(Suzuki,K.、Sato,K.、Kamohara,M.、Kaku,S.、Kawasaki,T.、Yano,S.、およびIizumi,Y.(2002)ヒト化抗糖タンパク質IIb/IIIaモノクローナル抗体、YM337およびアブシキシマブの、インビトロ抗血小板効果および結合性質に対する比較研究。Biol Pharm Bull 25、1006−1012;Co,M.S.、Yano,S.、Hsu,R.K.、Landolfi,N.F.、Vasquez,M.、Cole,M.、Tso,J.T.、Bringman,T.、Laird,W.、Hudson,D.ら(1994)血小板インテグリンgpIIb/IIIaに特異的なヒト化抗体。J Immunol 152、2968−2976)。RAD抗体は、合成HCDR3以外は完全にヒト配列から構成されているので、それらはキメラまたはヒト化抗体より免疫原性が低いと期待される。しかし、我々のRAD抗体によるヒト抗イディオタイプ抗体の誘発はあり得る。循環抗イディオタイプ抗体は、RAD抗体を介して血小板表面に結合するより、RAD抗体の結合に関して血小板インテグリンαIIbβと競合するので、それらは重篤な血小板減少症を引き起こさないであろうというのは妥当な推定である。興味深い最近の発見は、チロフィバンおよびエプチフィバチドと複合体化した場合にインテグリンαIIbβを選択的に認識するヒト抗体が、小分子薬剤で治療された後に重篤な血小板減少症を発症した非常に限られた数の患者において見出されたことである(Bougie,D.W.、Wilker,P.R.、Wuitschick,E.D.、Curtis,B.R.、Malik,M.、Levine,S.、Lind,R.N.、Pereira,J.、およびAster,R.H.(2002)チロフィバンまたはエプチフィバチドによる治療後の急性血小板減少症は、リガンド結合GPIIb/IIIaに特異的な抗体に関連する。Blood 100、2071−2076)。この前後関係において、その結合様式は小分子薬剤を模倣するので、インテグリンαIIbβ上の免疫原性エピトープのディスプレイを誘発することによって、RAD抗体が血小板減少症を引き起こす可能性は残る。
【0093】
LJ−CP3、OPG2、およびPAC−1を含むインテグリンαIIbβに特異的ないくつかのマウスモノクローナル抗体(mAb)(Puzon−McLaughlin,W.、Kamata,T.およびTakada,Y.(2000)複数の不連続なリガンド模倣物抗体結合部位が、インテグリンアルファ(IIb)β(3)におけるリガンド結合ポケットを規定する。J Biol Chem 275、7795−7802;Kamata,T.、Irie,A.、Tokuhira,M.およびTakada,Y.(1996)アルファIIbベータ3(糖タンパク質IIb−IIIa)のフィブリノーゲンおよびリガンド模倣抗体(PAC−1、OP−G2、およびLJ−CP3)に対する結合に関するインテグリンアルファIIbサブユニットの決定的な残基。J Biol Chem 271、18610−18615;Prammer,K.V.、Boyer,J.、Ugen,K.、Shattil,S.J.、およびKieber−Emmons,T.(1994)抗インテグリンGPIIb−IIIa抗体における生物活性Arg−Gly−Aspコンフォメーション。Receptor 4、93−108;Tomiyama,Y.、Brojer,E.、Ruggeri,Z.M.、Shattil,S.J.、Smiltneck,J.、Gorski,J.、Kumar,A.、Kieber−Emmons,T.、およびKunicki,T.J.(1992)RGDリガンドの分子モデル。インテグリンアルファIIbベータ3に対する特異性を指示する抗体D遺伝子の部分。J Biol Chem 267、18085−18092;Niiya,K.、Hodson,E.、Bader,R.、Byers−Ward,V.、Koziol,J.A.、Plow,E.F.、およびRuggeri,Z.M.(1987)血小板活性化によって誘発された膜糖タンパク質IIb/IIIa複合体の表面発現の増加。フィブリノーゲンの結合および血小板凝集に対する関係。Blood 70、475−483;Bennett,J.S.、Hoxie,J.A.、Leitman,S.F.、Vilaire,G.、およびCines,D.B.(1983)モノクローナル抗体による刺激されたヒト血小板へのフィブリノーゲン結合の阻害。Proc Natl Acad Sci USA 80、2417−2421)が、HCDR3にRYDモチーフを含む。これらマウスmAbのインテグリンαIIbβへの結合を、RGDペプチドによって完全に阻害し得、そのRYDモチーフはRGD結合部位との直接的な相互作用を媒介していることを示唆する。興味深いことに、HCDR3にRGDモチーフを含むマウスmAbである16N7C2は、βインテグリン間を区別しなかった(Deckmyn,H.、Stanssens,P.、Hoet,B.、Declerck,P.J.、Lauwereys,M.、Gansemans,Y.、Tornai,I.およびVermylen,J.(1994)ヒト血小板糖タンパク質IIb/IIIa機能を阻害する、マウスモノクローナル抗体の重鎖CDR3におけるエキスタチン様Arg−Gly−Asp(RGD)を含む配列。Br J Haematol 87、562−571)。従って、我々の合成RADモチーフと同様に、ある前後関係中の天然RYDモチーフは、インテグリンαIIbβの選択的認識を提供する。しかし、合成RAD抗体と対照的に、LJ−CP3、OPG2、またはPAC−1のいずれも、RGD様モチーフを示すHCDR3におけるジスルフィド架橋を含まず(Tomiyama,Y.、Brojer,E.、Ruggeri,Z.M.、Shattil,S.J.、Smiltneck,J.、Gorski,J.、Kumar,A.、Kieber−Emmons,T.、およびKunicki,T.J.(1992)RGDリガンドの分子モデル。インテグリンアルファIIbベータ3に対する特異性を指示する抗体D遺伝子部分。J Biol Chem 267、18085−18092)、VDJ組換えによって達成され得る構造的多様性における限界、またはHCDR3におけるジスルフィド架橋に対する選択を示唆する。以前に、我々はインテグリンαβおよびαIIbβへの結合のためにHCDR3において合成的に移植したRGDモチーフまたはRGD模倣モチーフを有するヒト抗体を選択した(Barbas,C.F.,3rd、Languino,L.R.およびSmith,J.W.(1993)デザインおよび選択による高親和性自己反応性ヒト抗体:インテグリンリガンド結合部位のターゲティング。Proc Natl Acad Sci USA 90、10003−10007;Smith,J.W.、Hu,D.、Satterthwait,A.、Pinz−Sweeney,S.およびBarbas,C.F.,3rd(1994)インテグリンの接着リガンドとしての合成抗体の作成。J Biol Chem 269、32788−32795;Barbas,C.F.,3rd(1993)ファージディスプレイにおける最近の進歩。Curr Opin Biotechnol 4、526−530)。選択された抗体はどれも、いずれかのインテグリンに対して独占的に特異的ではなかった。より高い特異性を有する抗体を選択することを試みて、我々は、無作為化HCDR3配列VGXXXRADXXXYAMDV(配列番号3)を有する、新しい合成ヒト抗体ライブラリーを産生した。RGDモチーフをRADモチーフで置換することに加えて、新しいライブラリーの重要な特徴は、以前のライブラリーにおける、インテグリン結合モチーフおよびその側面配列を囲むCXCジスルフィド架橋の除去であった。興味深いことに、インテグリンαIIbβに対する新しいライブラリーの選択は、選択された抗体配列の90%に見出される、新しいモチーフを示すCXC型のジスルフィド結合を得た。CXCジスルフィド架橋中でのその選択は、もし不可能でないにしても非常にまれであった、このより小さいループ構造は、インテグリンαIIbβに対する例外的な選択性を生じた。
【0094】
HCDR3内の選択されたXXXRADXXX(配列番号22)モチーフの構造的束縛は、それらを抗体の骨格から切り離し、そしてそれらの機能的性質を評価するよう我々を促した。CXCジスルフィド架橋内にRADモチーフを示す3つの合成ペプチド、VWCRADRRC(配列番号5)、VWCRADKRC(配列番号6)、およびVVCRADRRC(配列番号7)は、選択されたRAD抗体のインテグリンαIIbβに対する結合、フィブリノーゲンのインテグリンαIIbβに対する結合、および血小板凝集を阻害したが、直線状合成ペプチドTHSRADRRE(配列番号19)はしなかった。インテグリンαIIbβに関するペプチドアンタゴニストを、ファージディスプレイによるペプチドライブラリーから選択した(O’Neil,K.T.、Hoess,R.H.、Jackson,S.A.、Ramachandran,N.S.、Mousa,S.A.、およびDeGrado,W.F.(1992)コンフォメーションが束縛されたファージペプチドライブラリーからの、GPIIb/IIIaに対する新規ペプチドアンタゴニストの同定。Proteins 14,509−515;Koivunen,E.、Wang,B.、およびRuoslahti,E.(1995)異なるリングサイズを有する環状ペプチドをディスプレイするファージライブラリー:RGD指向性インテグリンのリガンド特異性。Biotechnology(NY) 13、265−270;Koivunen,E.、Restel,B.H.、Rajotte,D.、Lahdenranta,J.、Hagedorn,M.、Arap,W.、およびPasqualini,R.(1999)ファージディスプレイライブラリー由来のインテグリン結合ペプチド。Methods Mol Biol 129、3−17)。CXC、CXC、CXC、およびCXC型の束縛ペプチドライブラリーを使用した。しかし、CXCおよびCXCペプチドライブラリーのみが、インテグリンαIIbβに対する結合物を得た。選択された配列を、2つのグループ、RGDモチーフを含むもの、およびRGDのグリシンまたはアルギニン残基のいずれかが置換されたRGD様モチーフを含むものに分類し得る。中央のグリシンは、セリン、スレオニン、ロイシン、アラニン、グルタミン、ヒスチジン、およびメチオニンのような様々な異なるアミノ酸残基で置換された。2つのペプチド;CRADVPLC(配列番号23)およびCMSRADRPC(配列番号24)が、RADモチーフを含んでいた。インテグリンαIIbβに対して選択されたRGDを含む配列は、インテグリンαβおよびαβに対して選択されたものと異なっており、そこでは芳香族残基Trp、Phe、またはTyrが、RGDモチーフのすぐC末端側の位置で豊富であった。それに加えて、いくつかの配列が、RGDモチーフの外側に1つまたは2つの塩基性残基を含んでいた。しかし、選択されたペプチド配列はいずれも、我々の選択したHCDR3配列VWCRADKRC(配列番号6)、VWCRADRRC(配列番号5)、およびVVCRADRRC(配列番号7)と類似性を共有していなかった。我々のCXCコアコンセンサス配列CRAD(K/R)RCを含むCXCペプチドライブラリーは、インテグリンαIIbβに対する結合ペプチドを得なかったという事実に注意し、それは我々の選択したHCDR3配列におけるN末端VWまたはVV残基が、インテグリンαIIbβとの相互作用において重要な役割を果たしていることを示唆する。
【0095】
ペプチドおよび抗体ライブライリー両方のファージディスプレイは、研究および開発において様々な適用のための標準的な技術となった(Barbas,C.F.,3rd、Burton,D.R.、Scott,J.K.、およびSilverman,G.J.(2001)Phage Display:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York;Kay,B.K.、Kasanov,J.およびYamabhai,M.(2001)ファージディスプレイコンビナトリアルペプチドライブラリーのスクリーニング。Methods 24、240−246;Sidhu,S.S.(2000)医薬品生物工学におけるファージディスプレイ。Curr Opin Biotechnol 11、610−616)。抗体免疫グロブリン可変ドメイン内のペプチドライブラリーのディスプレイがこの技術を合併し、抗体、ペプチド、およびペプチド模倣物薬剤の発見の間に興味深い関連を提供する。ここで我々は、新規特異的抗受容体ペプチドおよび抗体を産生するための、このアプローチの有効性を示した。生物活性および/または結合ペプチドの抗体の骨格における配置またはその骨格内におけるその産生は、生物学的ツールまたは治療薬として使用し得る免疫学的薬剤の迅速な開発を提供する(Barbas,C.F.,3rd(1993)ファージディスプレイにおける最近の進歩。Curr Opin Biotechnol 4、526−530)。しばしばペプチド自身はインビボにおいて折衷した活性を有し、そしてその結合はモニターすることが難しくあり得るが、抗体および抗体断片は比較的予測可能な薬物動態的挙動を示すので、抗体の状況におけるそのディスプレイが、検出の問題およびペプチドのタンパク質分解およびその迅速なクリアランスに関連する問題に取り組む。望ましい場合には、例えば癌の状況において、免疫エフェクターの結合の結果として、抗体のFc領域が、ペプチド配列に細胞破壊性質を与え得る。我々は、このアプローチを、結合活性を有する広い範囲のペプチドに適用して、有用な免疫学的薬剤を迅速に産生し得ると考える(Brown,K.C.(2000)細胞特異的ターゲティングの新規アプローチ:コンビナトリアルライブラリーからの細胞選択的ペプチドの同定。Curr Opin Chem Biol 4、16−21)。
【0096】
当業者は、今記載した実施態様の様々な適応および修飾が、本発明の範囲および意図から離れることなく形成され得ることを認識する。当該分野で公知の他の適当な技術および方法を、当業者によって、および本明細書中で記載された本発明の説明に照らして、多くの特定の様相において適用し得る。従って、本発明を本明細書中で明確に記載された以外のように実施し得ることが理解される。上記の説明は説明的であり、そして制限的ではないことが意図される。多くの他の実施態様が、上記の説明の検討時に、当業者に明らかである。従って、本発明の範囲は、そのような請求が権利を与えられる全範囲の同等物と共に、添付の請求に関して決定されるべきである。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、選択されたFabが、ヒトインテグリンαIIbβと結合するが、他のRGD結合ヒトインテグリンとは結合しないことを示す。固定化ヒトインテグリンαβ、αβ、αIIbβ、およびαβ、およびpComb3XをトランスフェクトしたE.coliによって発現された可溶性Fabを含む上清に基づくELISA結果を示す。検出のために、HRPに結合したラット抗HAmAbを使用した。
【図2】図2は、Fab RAD87が、ヒト血小板に結合するが、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に結合しないことを示す。フローサイトメトリーによる分析は、Fab RAD87が、インテグリンαβおよびαIIbβの両方を発現するヒト血小板のみに結合し、主にインテグリンαβを発現するHUVEC細胞に結合しないことを示した。対照的に、Fabアブシキシマブは、血小板およびHUVECの両方に結合し、記述されたその2つのβインテグリンとの交差反応性を確認した。y軸は、線形の尺度でイベントの数を与え、x軸は対数尺で蛍光強度を与える。
【図3】図3は、Fab RAD87および選択されたHCDR3配列由来の合成ペプチドが、インテグリンαIIbβおよびフィブリノーゲン間の相互作用を阻害することを示す。ビオチン化フィブリノーゲンを、(A)様々な濃度のFab RAD87およびアブシキシマブおよびネガティブコントロールとしてプールしたヒトIgG、および(B)合成ペプチドと混合し、そしてELISAプレートに固定化したインテグリンαIIbβに加えた。検出のためにストレプトアビジン−HRPを使用した。3つの独立した実験の平均値および標準偏差を示す。
【図4】図4は、Fab RAD87が、エキソビボで血小板凝集を阻害することを示す。示した血小板凝集アッセイは、全血光凝集能測定装置(lumi−aggregometer)から得た。各アッセイに関して、15μlのFab RAD87(A)またはFabアブシキシマブ(B)溶液を、435μlの血小板が豊富な血漿と混合し、最終濃度を20nMから100nMの間にした。次いでADPを20μMの最終濃度まで加え、そして凝集を10分間モニターした。3つの独立した実験のプロットした平均値および標準偏差を(C)で示す。
【図5】図5は、選択されたHCDR3配列由来の合成ペプチドが、エキソビボで血小板凝集を阻害することを示す。血小板凝集アッセイを、示したペプチド濃度の存在下で、図4で記載したように実施した。RADモチーフを有する3つの環状ペプチドは全て血小板凝集を強力に阻害した(A−C)が、RADモチーフを有する直線状ペプチドおよび逆向きRADモチーフを有する2つのコントロールペプチドは、バックグラウンド以上に影響を有さないことに注意すること(D)。全ての血小板凝集アッセイにおいて、アブシキシマブFabをポジティブコントロールとして使用した。
【図6】図6は、本発明の抗体の重鎖の一部のアミノ酸残基配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
9〜約50アミノ酸残基を含む、単離され、精製されたペプチドであって、配列番号4、5、6および7からなる群より選択されるアミノ酸残基配列を有し、血小板凝集を阻害する活性を有する、ペプチド。
【請求項2】
配列番号5〜7のいずれかのアミノ酸残基配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
配列番号5〜7のいずれかからなる、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
配列番号5〜7のいずれかから本質的になる、請求項2に記載のペプチド。
【請求項5】
インテグリンαIIBβと特異的に免疫反応し、配列番号8、25、26、27、28、29、30および31からなる群より選択されるアミノ酸残基配列を含む抗体であって、該アミノ酸残基配列が、該抗体の相補性決定領域内にある、抗体。
【請求項6】
前記相補性決定領域が、前記抗体の重鎖内に位置する、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
前記相補性決定領域が、HCDR3である、請求項5に記載の抗体。
【請求項8】
本明細書中で、RAD3、RAD4、RAD9、RAD11、RAD12、RAD32、RAD34、RAD87またはRAD88と示された抗体からなる群より選択される請求項5に記載の抗体であって、インテグリンαIIBβとの免疫反応性を有する、抗体。
【請求項9】
ヒト抗体である、請求項5に記載の抗体。
【請求項10】
請求項8に記載の抗体の免疫反応性を有する、抗体。
【請求項11】
血小板を、有効阻害量の請求項1に記載のペプチドと接触させる工程を包含する、血小板凝集を阻害する、方法。
【請求項12】
血小板を、有効阻害量の請求項5に記載の抗体と接触させる工程を包含する、血小板凝集を阻害する、方法。
【請求項13】
血小板を、有効阻害量の請求項1に記載のペプチドと接触させる工程を包含する、フィブリノゲンの血小板に対する結合を阻害する、方法。
【請求項14】
血小板を、有効阻害量の請求項5に記載の抗体と接触させる工程を包含する、血小板凝集を阻害する、方法。
【請求項15】
インテグリンαIIBβ結合活性を有する抗体であって、該結合が、他のタンパク質の結合活性と競合し、該他のタンパク質が、トリペプチドモチーフArg−Ala−Asp(RAD)のアミノ酸残基配列を含み、該結合が、標準競合アッセイで行われる、抗体。
【請求項16】
請求項15に記載の抗体であって、前記他のタンパク質が、他の抗体であって、該他の抗体が、該他の抗体の相補性決定領域内にアミノ酸残基配列を含み、該アミノ酸配列が、配列番号8、25、26、27、28、29、30および31からなる群より選択され、前記結合が、標準競合アッセイで行われる、抗体。
【請求項17】
9〜約50アミノ酸残基を含むペプチドをコードする単離され、精製されたポリヌクレオチドであって、配列番号4、5、6および7からなる群より選択されるアミノ酸残基配列を有し、該ペプチドが、血小板凝集を阻害する活性を有する、ポリヌクレオチド。
【請求項18】
請求項17に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項19】
請求項18に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項20】
タンパク質を産生するために、ポリヌクレオチドを使用するための方法であって、該方法は、
a)タンパク質発現のための条件下で、請求項19に記載の宿主細胞を培養する工程;
および
b)該宿主細胞培養物から、配列番号4、5、6および7からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質を回収する工程;
を包含する、方法。
【請求項21】
請求項1に記載のペプチド、および静脈内投与、動脈内投与、リンパ循環投与、腹腔内投与、経皮投与、皮下投与、筋肉内投与、関節空間投与または肺投与に適した形態で適切な薬学的キャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項22】
請求項5に記載の抗体、および静脈内投与、動脈内投与、リンパ循環投与、腹腔内投与、経皮投与、皮下投与、筋肉内投与、関節空間投与または肺投与に適した形態で適切な薬学的キャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項23】
請求項15に記載の抗体、および静脈内投与、動脈内投与、リンパ循環投与、腹腔内投与、経皮投与、皮下投与、筋肉内投与、関節空間投与または肺投与に適した形態で適切な薬学的キャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項24】
肺塞栓症、一過性脳虚血発作(TIA)、深静脈血栓症、冠状動脈バイパス手術、および人工弁または人工管を、自系、非自系または合成の管移植片に挿入するための手術からなる群より選択される状態における血栓症を予防するための処置のための医薬としての使用のための、請求項1に記載のペプチド。
【請求項25】
肺塞栓症、一過性脳虚血発作(TIA)、深静脈血栓症、冠状動脈バイパス手術、および人工弁または人工管を、自系、非自系または合成の管移植片に挿入するための手術からなる群より選択される状態における血栓症を予防するための処置のための医薬としての使用のための、請求項5に記載の抗体。
【請求項26】
肺塞栓症、一過性脳虚血発作(TIA)、深静脈血栓症、冠状動脈バイパス手術、および人工弁または人工管を、自系、非自系または合成の管移植片に挿入するための手術からなる群より選択される状態における血栓症を予防するための処置のための医薬としての使用のための、請求項15に記載の抗体。
【請求項27】
バルーン血管形成術、冠状動脈内じゅく腫切除術およびレーザー血管形成術により行なわれる血管形成術手順からなる群より選択される手順において、血栓症を予防するための処置のための医薬としての使用のための、請求項1に記載のペプチド。
【請求項28】
バルーン血管形成術、冠状動脈内じゅく腫切除術およびレーザー血管形成術により行なわれる血管形成術手順からなる群より選択される手順において、血栓症を予防するための処置のための医薬としての使用のための、請求項5に記載の抗体。
【請求項29】
バルーン血管形成術、冠状動脈内じゅく腫切除術およびレーザー血管形成術により行なわれる血管形成術手順からなる群より選択される手順において、血栓症を予防するための処置のための医薬としての使用のための、請求項15に記載の抗体。
【請求項30】
血栓形成の障害を処置または予防するために、被験体を処置する方法であって、該障害が、肺塞栓症、一過性脳虚血発作(TIA)、深静脈血栓症、冠状動脈バイパス手術、人工弁または人工管を、自系、非自系または合成の管移植片に挿入するための手術における血栓症からなる群より選択され、該方法は、所望の処置を達成するために有効な量の請求項1に記載のペプチドを該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項31】
血栓形成の障害を処置または予防するために、被験体を処置する方法であって、該障害が、肺塞栓症、一過性脳虚血発作(TIA)、深静脈血栓症、冠状動脈バイパス手術、人工弁または人工管を、自系、非自系または合成の管移植片に挿入するための手術における血栓症からなる群より選択され、該方法は、所望の処置を達成するために有効な量の請求項5に記載の抗体を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項32】
血栓形成の障害を処置または予防するために、被験体を処置する方法であって、該障害が、肺塞栓症、一過性脳虚血発作(TIA)、深静脈血栓症、冠状動脈バイパス手術、人工弁または人工管を、自系、非自系または合成の管移植片に挿入するための手術における血栓症からなる群より選択され、該方法は、所望の処置を達成するために有効な量の請求項15に記載の抗体を該被験体に投与する工程を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−501305(P2008−501305A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542749(P2006−542749)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/040381
【国際公開番号】WO2005/056575
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(501244222)ザ スクリプス リサーチ インスティテュート (33)
【Fターム(参考)】