説明

インバータ一体型電動圧縮機

【課題】 ハウジングに一体に設けたインバータボックス内に設置されるインバータ装置の構成部品のうち発熱量の多い高電圧部品の冷却をさらに促進することができるインバータ一体型電動圧縮機を提供することを目的とする。
【解決手段】 電動モータ9と圧縮機構が内蔵されるハウジング2の外周にインバータボックス11を一体に設け、その内部に直流電力を三相交流電力に変換して電動モータ9に給電するインバータ装置20を収容設置してなる車両空調装置用のインバータ一体型電動圧縮機1において、車両30に搭載された状態でインバータボックス11内部の車両進行方向前方に面する位置に、インバータ装置20の構成部品のうち発熱量の多い高電圧部品21,22を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される空調装置用の圧縮機に適用して好適なインバータ装置が一体に組み込まれたインバータ一体型電動圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インバータ一体型の電動圧縮機は、電動モータおよび圧縮機構が内蔵されるハウジングの外周にインバータボックスを一体的に設け、その内部に発電機やバッテリ等の電源から供給される直流電力を三相交流電力に変換して電動モータに給電するインバータ装置を組み込むことによって構成される。このインバータ装置は、その構成部品として、キャパシタ、インダクタ、コモンモードコイル、パワー基板(IGBT等のパワー素子が実装された基板)等の高電圧部品を備えている。これらの高電圧部品は、自己発熱量が多いだけではなく、電動圧縮機が車両のエンジンルーム内等の高温雰囲気下に設置されるため、その輻射熱によっても加熱される。
【0003】
車両のエンジンルーム内温度は、百数十℃になる場合があり、上記高電圧部品は、それに応じた耐熱温度を持つようには作られるが、長時間にわたり耐熱温度に近い高温、高熱に晒されることにより劣化し、時間の経過と共に耐久性が低下する。そこで、上記のようなインバータ一体型電動圧縮機では、一般にハウジング内部に吸入される低温の冷媒ガスを利用して、ハウジング壁を介してインバータボックス内に設置されるインバータ装置の高電圧部品を冷却するようにしている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献2のように、インバータ装置を電動圧縮機と別体にして車両の前面に冷風導入ガイドを設けて設置し、走行風で強制冷却するとともに、電動圧縮機の設置位置を自由に選択し、外部からの侵入熱量を抑制するようにしたものも提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−191153号公報
【特許文献1】特開2002−219930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インバータ駆動の空調装置用電動圧縮機は、車両への搭載性からインバータ装置を電動圧縮機に組み込んだインバータ一体型の要望が高い上に、昨今エンジンルーム内がますます高密度化されていることに伴い搭載スペースが狭まっていることから、可能な限りコンパクト化することが求められている。このため、特許文献2のように、インバータ装置を別体化した構成は採用し難い。また、特許文献1のように、インバータ一体型とする場合でも、低温の冷媒ガスを用いて構成される冷却構造を徒に嵩だかに構成することができないため、インバータボックス内に設置される高電圧部品を低温の冷媒ガスにより内部側から冷却するにも自ずと限界がある。
【0006】
そこで、インバータボックス内に設置されるインバータ装置の構成部品のうちキャパシタ、インダクタ、コモンモードコイル、パワー基板(IGBT等のパワー素子が実装された基板)等高電圧部品の高温環境下での動作を保証し、その耐熱性および信頼性を確固たるものとするため、高電圧部品をハウジング内部から冷却するだけでなく、別の構成により高電圧部品を効果的に冷却し、その温度上昇を極力抑制することが求められている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ハウジングに一体に設けたインバータボックス内に設置されるインバータ装置の構成部品のうち発熱量の多い高電圧部品の冷却をさらに促進することができるインバータ一体型電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるインバータ一体型電動圧縮機は、電動モータと圧縮機構が内蔵されるハウジングの外周にインバータボックスを一体に設け、その内部に直流電力を三相交流電力に変換して前記電動モータに給電するインバータ装置を収容設置してなる車両空調装置用のインバータ一体型電動圧縮機において、車両に搭載された状態で前記インバータボックス内部の車両進行方向前方に面する位置に、前記インバータ装置の構成部品のうち発熱量の多い高電圧部品を配置したことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、インバータボックス内に収容設置されるインバータ装置の構成部品のうち発熱量の多い高電圧部品を、電動圧縮機が車両に搭載された状態でインバータボックスの車両進行方向前方に面する位置に配置した構成としているため、電動圧縮機の内部側からの冷却のみならず、インバータボックスの車両進行方向前方の面に当る車両走行時の走行風を利用することによっても高電圧部品を冷却することができる。従って、インバータ装置を構成する高電圧部品の冷却効果を高め、その温度上昇を抑制してインバータ一体型電動圧縮機の信頼性を向上させることができる。
【0010】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上記の本発明のインバータ一体型電動圧縮機において、前記電動圧縮機が、モータ軸線方向を前記車両進行方向と平行な方向に向けて搭載される場合、前記ハウジングの前記電動モータ収容部の一端部および前記インバータボックスの前記モータ軸線方向の一端部を車両進行方向前方に向けて搭載するとともに、前記インバータボックス内部の前記車両進行方向前方に向けられる一端部に前記高電圧部品を配置したことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、電動圧縮機がモータ軸線方向を車両進行方向と平行な方向に向けて搭載される場合、ハウジングの電動モータ収容部の一端部およびインバータボックスのモータ軸線方向の一端部を車両進行方向前方に向けて搭載し、そのインバータボックス内部の車両進行方向前方に向けられる一端部に高電圧部品を配置した構成としているため、インバータ装置を構成する高電圧部品を、インバータボックスに対して車両走行時の走行風が最もよく当る位置に面し配置した構成とすることができる。従って、走行風を有効に利用してインバータ装置を構成する高電圧部品を冷却することができ、その信頼性を向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上記の本発明のインバータ一体型電動圧縮機において、前記電動圧縮機が、モータ軸線方向を前記車両進行方向と直交する方向に向けて搭載される場合、前記ハウジングの前記電動モータ収容部の一側部および前記インバータボックスの前記モータ軸線方向の一側部を車両進行方向前方に向けて搭載するとともに、前記インバータボックス内部の前記車両進行方向前方に向けられる一側部に前記高電圧部品を配置したことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、電動圧縮機がモータ軸線方向を車両進行方向と直交する方向に向けて搭載される場合、ハウジングの電動モータ収容部の一側部およびインバータボックスのモータ軸線方向の一側部を車両進行方向前方に向けて搭載し、そのインバータボックス内部の車両進行方向前方に向けられる一側部に高電圧部品を配置した構成としているため、インバータ装置を構成する高電圧部品を、インバータボックスに対して車両走行時の走行風が最もよく当る位置に面し配置した構成とすることができる。従って、走行風を有効に利用してインバータ装置を構成する高電圧部品を冷却することができ、その信頼性を向上させることができる。
【0014】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上述のいずれかの本発明のインバータ一体型電動圧縮機において、前記高電圧部品が、前記インバータ装置を構成するキャパシタ、インダクタ、コモンモードコイル、パワー基板等の高電圧部品のうちの少なくとも1つ以上であることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、インバータ装置を構成するキャパシタ、インダクタ、コモンモードコイル、パワー基板(IGBT等のパワー素子が実装された基板)等の高電圧部品のうちの少なくとも1つ以上をインバータボックスの車両進行方向前方に面する位置に配置した構成としているため、それらの高電圧部品を車両走行時の走行風を有効に利用して冷却することができる。従って、インバータ装置を構成する高電圧部品の冷却効果を高め、その温度上昇を抑制して信頼性を一段と向上させることができる。
【0016】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上記の本発明のインバータ一体型電動圧縮機において、前記高電圧部品のうちの少なくとも1つ以上を、前記ハウジングの前記電動モータ収容部の一端部に設けられる冷媒吸入ポートの近傍において前記インバータボックス内部に配置したことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、高電圧部品のうちの少なくとも1つ以上を、ハウジングの電動モータ収容部の一端部に設けられる冷媒吸入ポートの近傍においてインバータボックス内部に配置しているため、冷媒吸入ポートからハウジング内に吸入された低温の冷媒ガスによって高電圧部品を冷却することができる。従って、高電圧部品の冷却を一段と促進し、その温度上昇を抑制して信頼性を一段と向上させることができる。
【0018】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上記の本発明のインバータ一体型電動圧縮機において、前記高電圧部品のうちの少なくとも1つ以上を、前記電動モータのステータに対して前記冷媒吸入ポートより吸入される冷媒ガスの流れ方向上流側に配置したことを特徴とする。
本発明によれば、高電圧部品のうちの少なくとも1つ以上を、電動モータのステータに対して冷媒吸入ポートより吸入される冷媒ガスの流れ方向上流側に配置しているため、冷媒吸入ポートからハウジング内に吸い込まれた最も温度の低い冷媒ガスによって高電圧部品を冷却することができる。従って、高電圧部品を効率よく冷却し、その温度上昇を抑制して信頼性を一段と向上させることができる。
【0019】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上述のいずれかの本発明のインバータ一体型電動圧縮機において、前記高電圧部品のうちの前記キャパシタ、インダクタ、コモンモードコイルの少なくとも1つ以上を、前記パワー基板に対して前記冷媒吸入ポートより吸入される冷媒ガスの流れ方向上流側に配置したことを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、高電圧部品のうちのキャパシタ、インダクタ、コモンモードコイルの少なくとも1つ以上を、パワー基板に対して冷媒吸入ポートより吸入される冷媒ガスの流れ方向上流側に配置しているため、高電圧部品のうちでも相対的に発熱温度が低いキャパシタ、インダクタ、コモンモードコイルを先に冷却することができ、これによって冷媒の温度上昇を極力抑制し、それらの下流側に配置されているパワー基板(IGBT等のパワー素子が実装された基板)を効果的に冷却することができる。従って、インバータ装置を構成する高電圧部品全体を効率よく冷却し、その温度上昇を抑制して信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、高電圧部品をインバータボックスの車両進行方向前方に面する位置に配置し、電動圧縮機の内部側からの冷却のみならず、インバータボックスの車両進行方向前方の面に当る車両走行時の走行風によっても冷却できるようにしているため、インバータ装置の高電圧部品の冷却効果を高め、その温度上昇を抑制してインバータ一体型電動圧縮機の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図4を用いて説明する。
図1には、本発明の第1実施形態にかかるインバータ一体型電動圧縮機のインバータボックス部を破断して示す部分縦断面図が示され、図2には、その一部を破断して示す平面図が示されている。インバータ一体型電動圧縮機1は、その外殻を構成するハウジング2を備えている。ハウジング2は、電動モータ9が収容されるモータハウジング3と、図示省略の圧縮機構が収容される圧縮機ハウジング4とをボルト5で一体に締め付け固定することによって構成される。このモータハウジング3および圧縮機ハウジング4は、アルミダイカスト製とされている。
【0023】
上記ハウジング2の内部に内蔵される電動モータ9および図示省略の圧縮機構は、モータ軸10(図1参照)を介して連結され、電動モータ9の回転によって圧縮機構が駆動されるように構成されている。モータハウジング3の一端側(図1の右側)には、冷媒吸入ポート6(図2参照)が設けられており、この冷媒吸入ポート6からモータハウジング3内に吸入された低温低圧の冷媒ガスは、電動モータ9の周囲を流通後、圧縮機構に吸い込まれて圧縮される。圧縮機構により圧縮された高温高圧の冷媒ガスは、圧縮機ハウジング4内に吐き出された後、圧縮機ハウジング4の一端側(図1の左側)に設けられている吐出ポート7から外部へと送出されるように構成されている。
【0024】
ハウジング2には、モータハウジング3の一端側(図1の右側)の下部および圧縮機ハウジング4の一端側(図1の左側)の下部の2箇所と、圧縮機ハウジング4の上部側1箇所との計3箇所に、取り付け脚8A,8B,8Cが設けられている。インバータ一体型電動圧縮機1は、この取り付け脚8A,8B,8Cが車両のエンジンルーム内に設置されている走行用原動機の側壁等にブラケットおよびボルトを介して固定設置されることにより搭載される。このインバータ一体型電動圧縮機1は、一般に固定ブラケットを介してそのモータ軸線L方向を車両の前後方向または左右方向に向け、上下3点で片持ち支持されるのが通常である。
【0025】
また、モータハウジング3の外周部には、その上方部にボックス形状をなすインバータボックス11が一体に成形されている。図1には、このインバータボックス11を破断した部分縦断面図が示されている。インバータボックス11は、図1ないし図3に示されるように、上面が開放された所定高さの周囲壁により囲われたボックス構造を有し、その上面開口部は、図示省略のシール材を介してビス19等でネジ止め固定されたカバー部材18により密閉された構成とされている。このインバータボックス11の一側面には、2つの電源ケーブル取り出し口12,13が設けられ、2本のP−N電源ケーブル14,15を介して発電機やバッテリ等の電源とインバータボックス11内に設置されるインバータ装置20とを接続できるように構成されている。
【0026】
インバータボックス11内に設置されるインバータ装置20は、電源ケーブルを接続する図示省略のP−N端子と、電源ラインに設けられるキャパシタ21、インダクタ22および図示省略のコモンモードコイル等の高電圧部品と、インバータ装置20の中核をなすインバータモジュール23と、インバータ装置20内の電気的配線をなす複数のバスバーを絶縁用樹脂材でインサート成形して一体化したバスバーアセンブリ24と、インバータ装置20で変換した三相交流電力を電動モータ9に供給するためのガラス密封端子25等々によって構成される。インバータモジュール23は、図示省略の複数個の電力用半導体スイッチング素子(IGBT等のパワー素子)とそれを動作させるパワー系制御回路とが実装されたパワー基板と、CPU等の低電圧で動作する素子を有する回路が実装されたCPU基板とをモジュール化したものである。
【0027】
上記構成を有するインバータ一体型電動圧縮機1は、図4に示されるように、車両30の矢印で示される進行方向Aに対してモータ軸線L方向(図3に示されたインバータ一体型電動圧縮機1のX,Y,Z軸のZ軸方向)が平行となるように車両30の前後方向に向けて搭載される。この場合、インバータ一体型電動圧縮機1は、モータハウジング3の冷媒吸入ポート6が設けられている一端部側(図1の右側端部)およびインバータボックス11の一端部側(図1および図2の右側端部)が車両進行方向前方に向けられた姿勢で搭載されることになる。
【0028】
本実施形態にあっては、上記のような姿勢で搭載されるインバータ一体型電動圧縮機1において、モータハウジング3の外周部に一体成形されているインバータボックス11の車両進行方向前方に面する位置に、インバータ装置20の構成部品のうち特に発熱量の多い高電圧部品、すなわちキャパシタ21、インダクタ22および図示省略のコモンモードコイル、ならびにIGBT等のパワー素子を実装したパワー基板(インバータモジュール23に含まれる)等の少なくとも1つ以上を配置した構成としている。ここでは、図1ないし図3に示すように、インバータボックス11の車両進行方向前方に面する位置に、キャパシタ21およびインダクタ22を配置した具体例が示されている。
【0029】
また、上記のキャパシタ21およびインダクタ22は、モータハウジング3の一端側に設けられている冷媒吸入ポート6の近傍位置であって、かつモータハウジング3内に設けられる電動モータ9のステータ9Aに対し、冷媒吸入ポート6から吸入されて電動モータ9の周囲を流通する冷媒ガスの流れ方向の上流側に配置されている。さらに、上記キャパシタ21、インダクタ22および図示省略のコモンモードコイル等の高電圧部品は、インバータモジュール23に設けられているパワー基板よりも上記冷媒流れ方向の上流側に配置された構成とされている。
【0030】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
上記インバータ一体型電動圧縮機1は、発電機やバッテリ等の電源から電源ケーブル14,15を介して供給された直流電力をインバータ装置20で空調負荷に対応した所定周波数の三相交流電力に変換して電動モータ9に給電することにより回転駆動される。これによって、圧縮機構が駆動され、モータハウジング3の一端側に設けられている冷媒吸入ポート6から吸入された低温低圧の冷媒ガスを高温高圧状態に圧縮する。この高温高圧の圧縮ガスは、圧縮機ハウジング4内に吐き出された後、そこから吐出ポート7を介して外部へと送出される。
【0031】
冷媒吸入ポート6から吸入された低温低圧の冷媒ガスは、モータハウジング3の一端部と電動モータ9のステータ9Aとの間の空間部に吸い込まれ、そこからステータ9Aの外周を通り圧縮機ハウジング4側へと流通され、圧縮機構に吸い込まれる。この間に、モータハウジング3の外周壁を介してそれと一体成形されているインバータボックス11内に設置されているインバータ装置20を構成する発熱部品のインバータモジュール23に含まれるパワー基板上のパワー素子(IGBT)やキャパシタ21、インダクタ22および図示省略のコモンモードコイル等の高電圧部品をハウジング2の内部側から冷却する。
【0032】
また、インバータボックス11内に設置されているインバータ装置20の構成部品のうち、上記した発熱量が多いキャパシタ21、インダクタ22および図示省略のコモンモードコイル、ならびに図示省略のパワー基板上のパワー素子(IGBT)等の高電圧部品の少なくとも1つ以上、本実施形態では、キャパシタ21およびインダクタ22の2つの部品がインバータ一体型電動圧縮機1が車両30に搭載された状態において、インバータボックス11の車両進行方向前方に面する位置に、配置されているため、これらキャパシタ21およびインダクタ22は、インバータボックス11の車両進行方向前方の面に当る車両走行時の走行風により外部からも冷却されることになる。
【0033】
このように、インバータ装置20を構成する高電圧部品のうちのキャパシタ21およびインダクタ22を、ハウジング2の内部側からの冷却のみならず、インバータボックス11の車両進行方向前方の面に当る車両走行時の走行風を利用して外部からも冷却することができるため、インバータ装置20を構成する高電圧部品の冷却効果を高め、その温度上昇を抑制することができる。従って、インバータ一体型電動圧縮機1の耐熱に対する信頼性を向上させることができる。
【0034】
また、上記した高電圧部品のうちのキャパシタ21およびインダクタ22を、モータハウジング3の一端部に設けられている冷媒吸入ポート6の近傍においてインバータボックス11の内部に配置しているため、冷媒吸入ポート6からモータハウジング3内に吸入される比較的温度の低い冷媒ガスによってキャパシタ21およびインダクタ22を冷却することができる。これによって、キャパシタ21およびインダクタ22の冷却を一段と促進し、その温度上昇を抑制して信頼性をより向上させることができる。
【0035】
さらに、上記キャパシタ21およびインダクタ22は、電動モータ9のステータ9Aに対して冷媒吸入ポート6より吸い込まれる冷媒ガスの流れ方向上流側に配置されているため、冷媒吸入ポート6からモータハウジング3内に吸い込まれた最も温度の低い冷媒ガスによってモータハウジング3の内部側から冷却されることになる。従って、キャパシタ21およびインダクタ22を効率よく冷却し、その温度上昇を抑制して信頼性を一段と向上させることができる。
【0036】
また、IGBT等のパワー素子を実装したパワー基板を含むインバータモジュール23は、冷媒吸入ポート6より吸入される冷媒ガスの流れ方向に対してキャパシタ21、インダクタ22および図示省略のコモンモードコイル等の下流側に配置されているため、相対的に温度が低いキャパシタ21、インダクタ22およびコモンモードコイルを先に冷却することにより上記冷媒ガスの温度上昇を抑制することができ、この冷媒ガスにより更にパワー基板に実装されているIGBT等のパワー素子を含むインバータモジュール23を冷却することができる。このため、高電圧部品全体を効果的に冷却し、インバータ装置20全体の温度上昇を抑制することができる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図5を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、インバータ一体型電動圧縮機1の車両30への搭載姿勢を変えている点およびそれに伴って高電圧部品の配置構成を変更している点が異なる。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態において、インバータ一体型電動圧縮機1は、図5に示されるように、車両30の矢印で示される進行方向Aに対してモータ軸線L方向(図3に示されたインバータ一体型電動圧縮機1のX,Y,Z軸のZ軸方向)が直交するように車両30の左右方向に向けて搭載される。
【0038】
この場合、インバータ一体型電動圧縮機1は、モータハウジング3の冷媒吸入ポート6が設けられている一側部(図2の下方面側)およびインバータボックス11の電源ケーブル取り出し口12,13が設けられている一側面(図2の下方面側)が車両進行方向前方に向けられた姿勢で搭載されることになる。そして、このインバータボックス11内の車両進行方向前方に向けられる一側部に、図5に示されるように、高電圧部品のうちのキャパシタ21およびインダクタ22が配置された構成とされている。
【0039】
上記のように、インバータ一体型電動圧縮機1がモータ軸線L方向を車両進行方向と直交する方向に向けて搭載される場合、そのインバータボックス11内の車両進行方向前方に向けられる一側部にインバータ装置20を構成する高電圧部品の1つ以上、すなわちキャパシタ21およびインダクタ22を配置した構成とすることにより、キャパシタ21およびインダクタ22をインバータボックス11に対して車両走行時の走行風が最もよく当る位置に面し配置した構成とすることができる。このため、走行風を有効に利用してインバータ装置20の高電圧部品であるキャパシタ21およびインダクタ22を外部から冷却することができ、その耐熱信頼性を一段と向上させることができる。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、インバータボックス11内部の車両進行方向前方に面する位置に、インバータ装置20を構成する高電圧部品のキャパシタ21、インダクタ22、コモンモードコイル、およびIGBT等のパワー素子が実装されたパワー基板等のうちのキャパシタ21およびインダクタ22を配置した例について説明したが、当該位置に配置する高電圧部品は、上記高電圧部品の何れか1つ以上であれば、何れであってもよく、また、2つ以上を配置する場合、その組み合わせについて、特に制限されるものではない。
【0041】
また、図5に示した第2実施形態において、インバータ一体型電動圧縮機1の吸入側と吐出側とを逆方向に向けて搭載してもよく、その場合は、高電圧部品もインバータボックス11内部の反対側の側部に配置されることになる。さらに、本発明において、圧縮機ハウジング4内に設けられる圧縮機構については、特に制限されるものではなく、ロータリ式、スクロール式、斜板式等々如何なる形式の圧縮機構を用いてもよい。また、インバータボックス11は、必ずしもモータハウジング3と一体成形する必要はなく、別体で成形したものを一体に組み付けた構成としてもよいことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインバータ一体型電動圧縮機のインバータボックス部を破断して示す部分縦断面図である。
【図2】図1に示すインバータ一体型電動圧縮機のインバータボックス側の一部を破断して示す平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るインバータ一体型電動圧縮機のインバータボックス内部における高電圧部品の配置構成を示す概略斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るインバータ一体型電動圧縮機の車両への搭載状態を示す平面配置図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るインバータ一体型電動圧縮機の車両への搭載状態を示す平面配置図である。
【符号の説明】
【0043】
1 インバータ一体型電動圧縮機
2 ハウジング
3 モータハウジング
6 冷媒吸入ポート
9 電動モータ
9A ステータ
11 インバータボックス
20 インバータ装置
21 キャパシタ
22 インダクタ
23 インバータモジュール(パワー基板を含む)
30 車両
A 車両進行方向
L モータ軸線方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと圧縮機構が内蔵されるハウジングの外周にインバータボックスを一体に設け、その内部に直流電力を三相交流電力に変換して前記電動モータに給電するインバータ装置を収容設置してなる車両空調装置用のインバータ一体型電動圧縮機において、
車両に搭載された状態で前記インバータボックス内部の車両進行方向前方に面する位置に、前記インバータ装置の構成部品のうち発熱量の多い高電圧部品を配置したことを特徴とするインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項2】
前記電動圧縮機が、モータ軸線方向を前記車両進行方向と平行な方向に向けて搭載される場合、前記ハウジングの前記電動モータ収容部の一端部および前記インバータボックスの前記モータ軸線方向の一端部を車両進行方向前方に向けて搭載するとともに、前記インバータボックス内部の前記車両進行方向前方に向けられる一端部に前記高電圧部品を配置したことを特徴とする請求項1に記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項3】
前記電動圧縮機が、モータ軸線方向を前記車両進行方向と直交する方向に向けて搭載される場合、前記ハウジングの前記電動モータ収容部の一側部および前記インバータボックスの前記モータ軸線方向の一側部を車両進行方向前方に向けて搭載するとともに、前記インバータボックス内部の前記車両進行方向前方に向けられる一側部に前記高電圧部品を配置したことを特徴とする請求項1に記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項4】
前記高電圧部品が、前記インバータ装置を構成するキャパシタ、インダクタ、コモンモードコイル、パワー基板等の高電圧部品のうちの少なくとも1つ以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項5】
前記高電圧部品のうちの少なくとも1つ以上を、前記ハウジングの前記電動モータ収容部の一端部に設けられる冷媒吸入ポートの近傍において前記インバータボックス内部に配置したことを特徴とする請求項4に記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項6】
前記高電圧部品のうちの少なくとも1つ以上を、前記電動モータのステータに対して前記冷媒吸入ポートより吸入される冷媒ガスの流れ方向上流側に配置したことを特徴とする請求項5に記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項7】
前記高電圧部品のうちの前記キャパシタ、インダクタ、コモンモードコイルの少なくとも1つ以上を、前記パワー基板に対して前記冷媒吸入ポートより吸入される冷媒ガスの流れ方向上流側に配置したことを特徴とする請求項5または6に記載のインバータ一体型電動圧縮機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−83571(P2009−83571A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253187(P2007−253187)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】