説明

インバート部材、及び、マンホール

【課題】 円滑に連続する流路であって、多様な流路形状を効率的に形成することができるとともに、型代の節減、型管理の容易化に資するインバート部材、及び、これを用いたマンホールを提供する。
【解決手段】 第1のインバート成型体11は、流路110と、第1の切断端面114を有している。第2のインバート成型体12は、流路120と、第2の切断端面124を有している。第1及び第2のインバート成型体11、12は、第1及び第2の切断端面114、124が、間隔dを隔てて相対向して配置されている。接合剤13は、間隔dを埋め、第1及び第2の切断端面114、124を接合し、相互に連なる流路110−120を構成している。
上述したインバート部材10は、桝基体30と組み合わされてマンホールに用いられる。インバート部材10は桝基体30の底部31に載置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバート部材、及び、これを用いたマンホールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マンホールは、複数の流路を一体的に成型したインバート部材を、マンホール底部に載置することにより、流路が形成されている。このように、インバート部材が一体成型物である場合、流路形状に応じて極めて多種の成型用型を用意しなければならず、莫大な型代が必要になるとともに、膨大な数に達する型の在庫管理が必要になり、更に、その中から必要な型を取り出さなければならないという困難を伴う。
【0003】
上述した問題の解決を狙った先行技術として、例えば、特許文献1に開示されているインバート部材は、直路成型体と、曲路成型体とを含み、両者が互いに接合されて、相互に連なる流路を構成している。両成型体の接合ステップにおいて、まず、接合した場合に連続する流路を構成する位置で、直路成型体、及び、曲路成型体を切断し、次に、切断して得られた直路成型体、及び、曲路成型体を、切断面において密着して接合する。
【0004】
しかし、特許文献1の開示内容に従って、直路成型体と、曲路成型体とを実際に切断した場合、両者の接合部分には隙間が生じ、この隙間が流動障害の原因となることが分かった。しかも、この隙間は、この種の部材の切断作業が、サンダー等の簡易な切断工作機を用いて行われるため、拡大される傾向にある。
【0005】
さらに、特許文献1の開示内容に従って、直路成型体と、曲路成型体とを実際に切断した場合、両切断面の接合部分には高低差のギャップが生じ、このギャップが、流路障害の原因となることが分かった。予め、直路及び曲路成型体の切断時に、両切断面の接合部分にギャップが生じないような理想の切断曲線を数学的に計算することもできるが、この計算には手間がかかる上、切断作業に極めて高度な熟練性が要求されることとなり、製造効率が低下する。
【特許文献1】特開2003−184116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、多様な流路形状を効率的に形成することができるインバート部材、及び、これを用いたマンホールを提供することである。
【0007】
本発明のもう1つの課題は、円滑に連続する流路を有するインバート部材、及び、これを用いたマンホールを提供することである。
【0008】
本発明の更にもう1つの課題は、製造コスト、及び、施工コストを低減することができるインバート部材、及び、これを用いたマンホールを提供することである。
【0009】
本発明の更にもう1つの課題は、型代の節減、型管理の容易化に資するインバート部材、及び、これを用いたマンホールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明に係るインバート部材は、第1のインバート成型体と、第2のインバート成型体と、接合剤とを含む。第1のインバート成型体は、直線状、又は、曲線状に伸びる流路と、第1の切断端面を有している。第2のインバート成型体は、曲線状に伸びる流路と、第2の切断端面を有している。第1のインバート成型体と、第2のインバート成型体とは、第1の切断端面と、第2の切断端面とが、間隔を隔てて相対向して配置されている。接合剤は、前記間隔を埋め、第1の切断端面と、第2の切断端面とを互いに接合し、相互に連なる流路を構成している。
【0011】
上述したように、本発明に係るインバート部材は、第1のインバート成型体と、第2のインバート成型体との組み合わせを含むから、基本的には、第1のインバート成型体のための成型用型と、第2のインバート成型体のための成型用型を準備するだけでよい。このため、型代の節減、型管理の容易化に資することができる。
【0012】
第1のインバート成型体は直線状、又は、曲線状に伸びる流路を有し、第2のインバート成型体は曲線状に伸びる流路を有するから、第1及び第2のインバート成型体との組み合わせにより、直路と曲路、又は、2つの曲路を有する一般的なインバート部材を提供することができる。
【0013】
要求される流路の多様性に対しては、第1又は第2のインバート成型体の使用数、及び、流路角度を選定することによって、容易、かつ、確実に対応できる。従って、多様な流路形状を持つインバート部材を効率的に提供し得る。また、製造に関しては必要最小限の種類の流路角度を持つインバート部を用意することで足りるから、過剰な型の準備が不要になり、型の管理が容易になる。
【0014】
本発明に係るインバート部材は、上述した構成に加えて、更に、第1及び第2のインバート成型体の接合構造に工夫を加えた点に大きな特徴がある。即ち、本発明に係るインバート部材において、第1のインバート成型体と、第2のインバート成型体とは、第1の切断端面と、第2の切断端面とが、間隔を隔てて相対向して配置されている。この間隔が接合剤で埋められていることにより、第1及び第2の切断端面が互いに接合され、相互に連なる流路が構成されている。この構成によると、第1及び第2の切断端面を正確に密着させる必要がなくなり、製造作業を効率的に行うことができる。
【0015】
また、第1及び第2の切断端面を正確に密着させる必要がなくなるから、例えば、実際の施工現場における組み立て作業を容易に実行することができる。従って、製造コスト、及び、施工コストを低減することができる。
【0016】
第1及び第2のインバート成型体は、第1及び第2の切断端面が、間隔を隔てて相対向して配置されているから、第1及び第2の切断端面の相対向する箇所に、流動障害となる高低差のギャップが生じたとしても、このギャップを間隔により緩和することができる。従って、本発明に係るインバート部材は、優れた流下機能を有することができる。
【0017】
さらに、第1及び第2のインバート成型体は、間隔に備えられている接合剤により、第1及び第2の切断端面が接合され、相互に連なる流路面を構成している。この構成によると、第1及び第2の切断端面の相対向する箇所に、高低差のギャップが生じたとしても、このギャップを接合剤により吸収し、円滑に連続する流路を形成することができる。従って、優れた流下機能を有するインバート部材を提供することができる。
【0018】
本発明に係るマンホールは、桝基体と、インバート部材とを含む。桝基体は、底部を有しており、インバート部材は桝基体の底部に載置されている。
【0019】
インバート部材は、上述した本発明に係るインバート部材である。従って、本発明に係るインバート部材の有する利点の全てを有するマンホールを得ることができる。
【0020】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【発明の効果】
【0021】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)多様な流路形状を効率的に形成することができるインバート部材、及び、これを用いたマンホールを提供することができる。
(2)円滑に連続する流路を有するインバート部材、及び、これを用いたマンホールを提供することができる。
(3)製造コスト、及び、施工コストを低減することができるインバート部材、及び、これを用いたマンホールを提供することができる。
(4)型代の節減、型管理の容易化に資するインバート部材、及び、これを用いたマンホールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の一実施形態に係るインバート部材の平面図、図2は図1に示したインバート部材の正面図である。図1及び図2を参照すると、本発明の一実施形態に係るインバート部材は、第1のインバート成型体11と、第2のインバート成型体12と、接合剤13とを含む。
【0023】
第1及び第2のインバート成型体11、12は、それぞれ円弧状の流路を有する半割り管体状であって、コンクリート材料や、合成樹脂材料により構成されている。第1及び第2のインバート成型体11、12に用いられるコンクリート材料としては、一般的なコンクリート材料の他に、好ましくは、レジンコンクリート、繊維強化コンクリート(FRC=fiber reinforced concrete)、ガラス繊維強化コンクリート(GRC=glass fiber reinforced concrete)等の複合コンクリート材料を用いることができる。
【0024】
また、第1及び第2のインバート成型体11、12に用いられる合成樹脂材料としては、ポリプロピレン(PP)等が好ましい。さらに、繊維強化プラスチック(FRP=Fiber Reinforced Plastics)や、不飽和ポリエステル樹脂等の合成樹脂材料に、炭酸カルシウムなどの充填材を混練し、ガラス繊維等に含浸させたシート状の複合樹脂材料(SMC=Sheet Molding compound)や、同じく合成樹脂材料に充填材を混練し、塊状にした複合樹脂材料(BMC=Bulk Molding Compound)等を用いることもできる。
【0025】
第1及び第2のインバート成型体11、12の各構成について、具体的に説明すると、まず、第1のインバート成型体11は、流路110と、流入端111と、流出端112と、凸縁113と、第1の切断端面114とを有している。
【0026】
流入端111、及び、流出端112は、ともに第1のインバート成型体11の中心点O10を中心とする円100の円周上に位置する。円100は、本発明の一実施形態に係るインバート部材が備えられるマンホールの内周面を表したものである。従って、円100は、具体的な施工条件に係るマンホールの構成に合わせて、形状、及び、寸法が変化する(図17及び図18参照)。
【0027】
流路110は、円弧状であって、流入端111と、流出端112との間を直線状に伸びるとともに、流路110の最基底部に、第1のインバート成型体11の長手方向に沿って伸びる中心線a11を有する。凸縁113は、中心線a11に直交する幅方向の両端縁に備えられている。
【0028】
第1の切断端面114は、流出端112の側であって、流路110の側壁部分に備えられており、流路110の一部に開口している。
【0029】
同様に、第2のインバート成型体12は、円弧状の流路120と、流入端121と、流出端122と、凸縁123と、第2の切断端面124とを有している。
【0030】
流入端121、及び、流出端122は、ともに中心点O10を中心とする円100の円周上に位置するとともに、流出端122の中心点P0が、中心点O10を原点とするXY座標系において、X軸上に位置する。
【0031】
流路120の内径は、流路110とほぼ同一の径寸法の円弧状であって、流入端121と、流出端122との間を曲線状に伸びるとともに、流路120の最基底部に、第2のインバート成型体12の長手方向に沿って伸びる中心線a12を有する。
【0032】
第2の切断端面124は、流出端122の側であって、流路120の側壁部分に備えられており、流路120の一部に開口している。凸縁123は、中心線a12に直交する幅方向の両端縁に備えられている。
【0033】
第2のインバート成型体12は、ある流路角度θをもって、第1のインバート成型体11に接合される。本実施形態において、第2のインバート成型体12の流路角度θは、流入端121の中心点P0と、第1のインバート成型体11の中心点O10とを結ぶ線分がY軸となす角度で表す。図示実施例の場合、流路角度θは90度である。
【0034】
第1及び第2のインバート成型体11、12の接合態様について、さらに詳細に説明すると、第1及び第2のインバート成型体11、12は、第1の切断端面114と、第2の切断端面124とが、間隔dを隔てて相対向して配置されている。
【0035】
間隔dは、5mm以上50mm以下の範囲で設定可能であって、運用上好ましくは15mm以上50mm以下で設定される。図1及び図2に示す間隔dは、第1の切断端面114と、第2の切断端面124との相対向面間に沿って条状に備えられており、且、凸部113、114の交点P2から、流出端112、122の中心点P3まで曲線状に延びている。
【0036】
接合剤13は、好ましくはモルタルを含み、間隔dを埋め、第1の切断端面114と、第2の切断端面124とを互いに接合する。第1及び第2のインバート成型体11、12は、接合剤13により流路110、120が互いに接合されるとともに、接合剤13の表面が好ましくはテーパ状に形成されることにより、第1及び第2の切断端面114、124が円滑に連続し、流路110と、流路120とが、相互に連なる一体的な流路110−120を構成している。
【0037】
上述したように、本発明の一実施形態に係るインバート部材は、第1及び第2のインバート成型体11、12の組み合わせを含むから、基本的には、第1のインバート成型体11のための成型用型と、第2のインバート成型体12のための成型用型を準備するだけでよい。このため、型代の節減、型管理の容易化に資することができる。
【0038】
第1のインバート成型体11は直線状に伸びる流路110を有し、第2のインバート成型体12は曲線状に伸びる流路120を有するから、第1及び第2のインバート成型体11、12との組み合わせにより、直路と曲路とを有する一般的なインバート部材を提供することができる。要求される流路の多様性に対しては、第2のインバート成型体12の使用数、及び、流路角度θを選定することによって、容易、かつ、確実に対応できる。従って、多様な流路形状を持つインバート部材を効率的に提供し得る。
【0039】
本発明の一実施形態に係るインバート部材は、上述した構成に加えて、更に第1及び第2のインバート成型体11、12の接合構造に工夫を加えた点に大きな特徴がある。即ち、本実施形態において、第1及び第2のインバート成型体11、12は、第1の切断端面114と、第2の切断端面124とが、間隔dを隔てて相対向して配置されている。この構成によると、第1及び第2の切断端面114、124を正確に密着させる必要がなくなり、製造作業を効率的に行うことができるとともに、実際の施工現場における組み立て作業を容易に実行することができる。従って、製造コスト、及び、施工コストを低減することができる。
【0040】
また、第1及び第2のインバート成型体11、12とは、第1及び第2の切断端面114、124が、間隔dを隔てて相対向して配置されているから、第1及び第2の切断端面114、124の相対向する箇所に、流動障害の原因となる高低差のギャップが生じたとしても、このギャップを間隔dにより緩和することができる。従って、円滑に連続する流路110−120を提供することができる。
【0041】
第1及び第2のインバート成型体11、12は、間隔dに備えられている接合剤13により、第1及び第2の切断端面114、124が接合され、相互に連なる流路110−120を構成している。この構成によると、この種のインバート部材において流動障害の原因となる隙間の発生を回避し、円滑に連続する流路110−120を提供することができる。
【0042】
同様に、第1及び第2の切断端面114、124の相対向する箇所に、高低差のギャップが生じたとしても、例えば、接合剤13の表面をテーパ状に形成することによって、ギャップを吸収し、円滑に連続する流路110−120を形成することができる。従って、優れた流下機能を有するインバート部材を提供することができる。
【0043】
上述したように、本発明の一実施形態に係るインバート部材は、第1及び第2のインバート成型体11、12の接合構造に工夫を加えた点に大きな特徴がある。従って、例えば、第1のインバート成型体11は、実施例とは異なり、曲線状に伸びる流路110(図示しない)を有することもできる。この構成によると、2つの曲路を有する一般的なインバート部材を提供することができる。
【0044】
図1及び図2に示したインバート部材の製造方法について、以下、図3乃至図5を参照して説明する。図3は本発明の一実施形態に係るインバート部材の製造方法について、第1の切断端面の切断工程を示す図、図4は本発明の一実施形態に係るインバート部材の製造方法について、第2の切断端面の切断工程を示す図、図5は図3の工程により得られた第1のインバート成型体と、図4の工程により得られた第2のインバート成型体との接合工程を示す平面図である。
【0045】
まず、第1の切断端面114の切断工程について、図3を参照して説明すると、未加工の第1のインバート成型体11(以下、第1の未加工成型体11と称する)を、その流入端111、及び、流出端112が、第1のインバート成型体11の中心点O10を中心とする円100の円周上に位置するように配置する。円100は、同形の治具を予め用意しておき、その治具の内部に第1の未加工成型体11を配置する、これにより、第1の未加工成型体11のセットが極めて容易になる。
【0046】
上述のようにして、第1の未加工成型体11をセットした後、次のようにして、切断加工を実行する。
(a1)第1の未加工成型体11に接合される第2のインバート成型体12の流路角度θを考慮し、その(θ/2)の角度になる点P1を、円100上にプロットする。
(b1)第1の未加工成型体11の端縁(=凸縁113)と、第2のインバート成型体12の端縁(=凸縁123)との交点P2をプロットする。
(c1)Y軸上における第1の未加工成型体11の流出端112の中心点P3を、円100の上にプロットする。
(d1)点P1、P2及びP3を通る半径R10の中心線L10を求める。半径R10の中心点O11は、中心点P3の接線Y0の上に取られている。
(e1)中心線L10より間隔dの1/2分だけ拡大した半径R11を有する曲線(=切断線L11)をもって切断する。
(f1)切断線L11に沿って、第1の未加工成型体11を切断し、斜線領域S11を切り取る。
【0047】
一方、第2の切断端面124の切断工程について、図4を参照して説明すると、未加工の第2のインバート成型体12(以下、第2の未加工成型体12と称する)を、流入端121、及び、流出端122が、第1のインバート成型体11の中心点O10を中心とする円100の円周上に位置するように配置する。円100においては、同形の治具を予め用意しておき、その治具の内部に第2の未加工成型体12を配置する、これにより、第2の未加工成型体12のセットが極めて容易になる。
【0048】
上述のようにして、第2の未加工成型体12をセットした後、次の処理に従って、切断加工を実行する。
(a2)点P1、P2及びP3を通る半径R10の中心線L10を求める。これらは、第1の未加工成型体11の加工処理時に得られたデータをそのまま利用する。
(b2)中心線L10より間隔dの1/2分だけ縮小した半径R12を有する曲線L12をもって切断する。
(c2)切断線L12に沿って、第2の未加工成型体12を切断し、斜線領域S12を切り取る。
【0049】
次に、図5を参照すると、第1のインバート成型体11には、切断線L11に沿って形成された円弧状の第1の切断端面114が現れており、第2のインバート成型体12には、切断線L12に沿って形成された円弧状の第2の切断端面124が現れている。
【0050】
第1及び第2のインバート成型体11、12は、第1の切断端面114と、第2の切断端面124とが、中心線L10を一致させることにより得られる間隔dを隔てて相対向して配置されている。間隔dは、後の工程において接合剤13により埋められる。
【0051】
図3乃至図5に示した製造方法によると、図1及び図2を参照して説明した利点を全て有するインバート部材を得ることができる。例えば、製造に関して、必要最小限の種類の流路角度θを持つ第2のインバート成型体12を用意することで足りるから、過剰な型の準備が不要になり、型の管理が容易になる。具体的に、第2のインバート成型体12を、流路角度θ=5度の刻みで準備することを想定した場合は、第2のインバート成型体12の成型用に18個の型を準備するだけでよい。また、第2のインバート成型体12を、流路角度θ=10度の刻みで準備することを想定した場合は、9個の型を準備するだけでよい。従って、多様な流路形状を持つインバート部材を効率的に提供し得る。
【0052】
これを仮に、インバート部材を一体成型して製造した場合、大量の型が必要となる。例えば、現在の実用上、左右片面180度を5度刻みにすると、型は左右一方向に対し、36個になる。これを左右で考えると72個必要となる。同様に左右片面180度を15度刻みにすると、型は左右一方向に対し12個になる。これを左右で考えると24個必要となる。同様に左右片側180度を20度刻みにすると、型は左右一方向に対し18個必要になる。これを左右で考えると36個必要になる。更に、角度の異なる流路を複数組み合わせる場合、必要となる型枠の種類は膨大な量になる。
【0053】
本実施形態では、第1及び第2のインバート成型体11、12を組み合わせてインバート部材を構成するから、組み合わせ以前において、第1及び第2のインバート成型体11、12は小型であり軽量、且、種類も少なくてすむので保管が容易である。特に、第1及び第2のインバート成型体11、12は、それ自体が小規模であり、保管費用を低額に抑えることができることに加え、第2のインバート成型体12に関しては、反転させることにより、左右対称の一方の型を省略できるから、型の数を必要最小限に抑えられる。
【0054】
また、第1及び第2のインバート成型体11、12は、好ましくは、PP等の合成樹脂材料や、FRP、SMC、BMC等の複合樹脂材料、又は、レジンコンクリートや、FRC、GRC等の複合コンクリート材料で構成されているから、第1及び第2のインバート成型体11、12の組み合わせに当たって、容易に、必要な形状に切断加工を施すことができる。
【0055】
従来技術(特許文献1)においては、第1及び第2のインバート成型体11、12を実際に切断した場合、両者の接合部分には隙間が生じ、この隙間が流動障害の原因となることが分かった。しかも、この種の切断作業は、一般にサンダー等の簡易な切断工作機を用いて行われるため、第1及び第2のインバート成型体11、12の各切断面には不規則な凹凸が生じる傾向にあり、隙間は拡大される傾向にある。
【0056】
また、従来技術においては、第1及び第2のインバート成型体11、12を実際に切断した場合、両切断面の接合部分には、流路障害の原因となる高低差のギャップが生じることが分かった。予め、直路及び第2のインバート成型体12の切断時に、両切断面の接合部分にギャップが生じないような理想の切断曲線を数学的に計算することもできるが、計算に手間がかかる上、切断作業に熟練性が要求されることとなり、製造効率が低下する。
【0057】
上述した従来技術に対し、本発明の一実施形態に係るインバート部材は、第1及び第2の切断端面114、124が、間隔dを隔てて相対向して配置されている。この構成によると、この種のインバート部材において流動障害の原因となる隙間の発生を回避し、円滑に連続する流路110−120を提供することができる。
【0058】
同様に、第1及び第2のインバート成型体11、12とは、第1及び第2の切断端面114、124が、間隔dを隔てて相対向して配置されているから、第1及び第2の切断端面114、124の相対向する箇所に、流動障害となる高低差のギャップが生じたとしても、間隔dによりギャップを緩和することができる。従って、本発明の一実施形態に係るインバート部材は、優れた流下機能を有することができる。
【0059】
さらに、第1及び第2のインバート成型体11、12は、間隔dに備えられている接合剤13により、第1及び第2の切断端面114、124が接合され、相互に連なる流路110−120を構成している。この構成によると、第1及び第2の切断端面114、124の相対向する箇所に、高低差のギャップが生じたとしても、例えば、接合剤13の表面をテーパ状に形成することによって、ギャップを吸収し、円滑に連続する流路110−120を形成することができる。従って、優れた流下機能を有するインバート部材を提供することができる。
【0060】
図1乃至図5を参照して説明したインバート部材は、桝基体等と組み合わされて、マンホールを構成する。次に、本発明の一実施形態に係るインバート部材を用いたマンホールについて説明する。図6は本発明の一実施形態に係るマンホールの一部を破断して示す斜視図、図7は図6に示したマンホールの平面図、図8は図7の8−8線に沿った断面図である。図6乃至図8において、図1乃至図5を参照して説明した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0061】
図6乃至図8を参照すると、本発明の一実施形態に係るマンホールは、桝基体30と、インバート部材10とを含む。桝基体30は、底部31を有している。桝基体30の側部には、第1の流入管取り付け孔32と、第2の流入管取り付け孔33と、流出管取り付け孔34とが設けられている。
【0062】
インバート部材10は、桝基体30の底部31の内面上に載置されている。インバート部材10を、底部31に設置するに当たっては、第1のインバート成型体11の流入端111を第1の流入管取り付け孔32に一致させるとともに、流出端112を流出管取り付け孔34に一致させる。また、第2のインバート成型体12の流入端121を、第2の流入管取り付け孔33に一致させる。
【0063】
そして、インバート部材10の外面と、桝基体30の内面との間に生じる隙間を、モルタル等の充填物4によって埋め、インバート部材10を桝基体30の内部に固定する。
【0064】
汚水等は、第1及び第2の流入管取り付け孔32、23に取り付けられた流入管(図示しない)からインバート部材10の流路110−120に流れ込み、インバート部材10の流路110−120を、矢印a11、a12の方向に流れ、流出管取り付け孔34から流出管(図示しない)に入り、放流される。
【0065】
図6及び図8に示すインバート部材10は、図1乃至図5を参照して説明したインバート部材であるから、図1乃至図5を参照して説明したインバート部材の有する利点の全てを有するマンホールを得ることができる。
【0066】
図9は、本発明のもう一つの実施形態に係るインバート部材の平面図である。図9において、図1乃至図8に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0067】
本発明の一実施形態に係るインバート部材の流路の多様性について、本実施例においては、三叉流路を有するインバート部材を例示しており、第1のインバート成型体11に対して、その左右両側から、2つの第2のインバート成型体12、12を接合してある。2つの第2のインバート成型体12は対称であり、同一の成型体を加工して得ることができるから、第2のインバート成型体12の個数が増加しても、その型数が増えることはない。
【0068】
このように、本発明の一実施形態に係るインバート部材は、第2のインバート成型体12を、複数用いることができるとともに、これらを第1のインバート成型体に対して容易に組み合わせることができるから、流路の多様性を確保することができる。
【0069】
図10は、本発明の更にもう一つの実施形態に係るインバート部材の平面図である。 図10において、図1乃至図9に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0070】
図10に示したインバート部材は、第1のインバート成型体11に対する第2のインバート成型体12の流路角度θが、図1乃至図9に示す第2のインバート成型体12と異なる。図10に示した実施例の場合、流路角度θは45度である。この場合も、第1及び第2の切断端面114、124の位置及び形状を選定することによって、容易、かつ、確実に接合することができる。
【0071】
図10に示したインバート部材の切断工程について、図11乃至図13を参照して説明する。図11は本発明のもう一つ実施形態に係るインバート部材の製造方法について、第1の切断端面の切断工程を示す図、図12は本発明のもう一つ実施形態に係るインバート部材の製造方法について、第2の切断端面の切断工程を示す図、図13は図11の工程により得られた第1のインバート成型体と、図12の工程により得られた第2のインバート成型体との接合工程を示す平面図である。
【0072】
まず、図11を参照して説明すると、第1の切断端面114について、第1の未加工成型体11を、その流入端111、及び、流出端112が、第1のインバート成型体11の中心点O10を中心とする円100の円周上に位置するように配置した後、次のようにして、切断加工を実行する。
(a1)第1の未加工成型体11に接合される第2のインバート成型体12の流路角度θを考慮し、その(θ/2)の角度になる点P1を、円100上にプロットする。
(b1)第1の未加工成型体11の端縁(=凸縁113)と、第2のインバート成型体12の端縁(=凸縁123)との交点P2
(c1)Y軸上における第1の未加工成型体11の流出端112の中心点P3を、円100の上にプロットする。
(d1)点P1、P2及びP3を通る半径R10の中心線L10を求める。半径R10の中心点O11は、中心点P3の接線Y0の上に取られている。
(e1)中心線L10より間隔dの1/2分だけ拡大した半径R11を有する曲線(=切断線L11)をもって切断する。
(f1)切断線L11に沿って、第1の未加工成型体11を切断し、斜線領域S11を切り取る。
【0073】
一方、第2の切断端面124について、図12を参照して説明すると、第2の未加工成型体12を、その流入端121、及び、流出端122が、第1のインバート成型体11の中心点O10を中心とする円100の円周上に位置するように配置した後、次の処理に従って、切断加工を実行する。
(a2)点P1、P2及びP3を通る半径R10の中心線L10を求める。これらは、第1の未加工成型体の加工処理時に得られたデータをそのまま利用する。
(b2)中心線L10より間隔dの1/2分だけ縮小した半径R12を有する曲線L12をもって切断する。
(c2)切断線L12に沿って、第1の未加工成型体11を切断し、斜線領域S12を切り取る。
【0074】
さらに、図13を参照すると、第1のインバート成型体11には、切断線L11に沿って形成された円弧状の第1の切断端面114が現れており、第2のインバート成型体12には、切断線L12に沿って形成された円弧状の第2の切断端面124が現れている。
【0075】
第1及び第2のインバート成型体11、12は、第1の切断端面114と、第2の切断端面124とが、中心線L10を一致させることにより得られる間隔dを隔てて、相対向して配置されている。間隔dは、後の工程において接合剤13により埋められる。
【0076】
図11乃至図13に示した製造方法によると、図1乃至図10を参照して説明した利点を全て有するインバート部材を得ることができる。
【0077】
図14は本発明の更にもう一つの実施形態に係るインバート部材の平面図、図15は図14に示したインバート部材の正面図、図16は図14及び図15に示したインバート部材について、第1及び第2のインバート成型体11、12の組み合わせを示す平面図である。図14乃至図16において、図1乃至図13に現れた構成部分と同一の構成部分については、同一の参照符号を付す。
【0078】
図14乃至図16に示した実施例の特徴は、間隔dが、平面で見て、直線状であることである。この実施例によっても、第1及び第2の切断端面114、124が接合剤13により結合され、相互に一体的な流路110−120を構成しているから、図1乃至図13を参照して説明した利点を全て有することができる。
【0079】
図17は本発明の更にもう一の実施形態に係るインバート部材の平面図、図18は図17に示したインバート部材の正面図である。図17及び図18において、図1乃至図16に現れた構成部分と同一の構成部分については、同一の参照符号を付す。
【0080】
図17及び図18に示したインバート部材は、一点鎖線で表す四角100の領域内で構成されることにより、具体的な施工条件に係るマンホールの内周面が角筒状である場合に対応した実施形態を表している。
【0081】
本実施形態によっても、第1及び第2のインバート成型体11、12は、第1及び第2の切断端面114、124が、間隔dを隔てて相対向して配置されており、且、間隔dに備えられている接合剤13により、第1及び第2の切断端面114、124が接合され、相互に連なる流路110−120を構成しているから、図1乃至図16を参照して説明した利点を全て有することができる。なお、本発明に係るインバート部材は、マンホールの内周面が長方形形状や、楕円形形状である場合にも、追従することができる。
【0082】
図17及び図18に示したインバート部材において、第1及び第2のインバート成型体11、12は、それぞれ凸縁113、123を有しておらず、交点P2が第1の未加工成型体11の端縁と、第2のインバート成型体12の端縁とに現れている。本実施形態によっても、第1及び第2のインバート成型体11、12は、点P1、P2及びP3を有するから、図3乃至図5などを参照して説明した方法を用いて製造することができる。
【0083】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の一実施形態に係るインバート部材の平面図である。
【図2】図1に示したインバート部材の正面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るインバート部材の製造方法について、第1の切断端面の切断工程を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るインバート部材の製造方法について、第2の切断端面の切断工程を示す図である。
【図5】図3の工程により得られた第1のインバート成型体と、図4の工程により得られた第2のインバート成型体との接合工程を示す平面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るマンホールの一部を破断して示す斜視図である。
【図7】図6に示したマンホールの平面図である。
【図8】図7の8−8線に沿った断面図である。
【図9】本発明のもう一つの実施形態に係るインバート部材の平面図である。
【図10】本発明の更にもう一つの実施形態に係るインバート部材の平面図である。
【図11】本発明のもう一つ実施形態に係るインバート部材の製造方法について、第1の切断端面の切断工程を示す図である。
【図12】本発明のもう一つ実施形態に係るインバート部材の製造方法について、第2の切断端面の切断工程を示す図である。
【図13】図11の工程により得られた第1のインバート成型体と、図12の工程により得られた第2のインバート成型体との接合工程を示す平面図である。
【図14】本発明の更にもう一つの実施形態に係るインバート部材の平面図である。
【図15】図14に示したインバート部材の正面図である。
【図16】図14及び図15に示したインバート部材について、第1のインバート成型体と、第2のインバート成型体との組み合わせを示す平面図である。
【図17】本発明の更にもう一の実施形態に係るインバート部材の平面図である。
【図18】図17に示したインバート部材の正面図である。
【符号の説明】
【0085】
10 インバート部材
11、12 第1、第2のインバート成型体(未加工成型体)
110、120 流路
114、124 第1、第2の切断端面
d 間隔
13 接合剤
30 桝基体
31 底部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のインバート成型体と、第2のインバート成型体と、接合剤とを含むインバート部材であって、
前記第1のインバート成型体は、直線状、又は、曲線状に伸びる流路と、第1の切断端面を有しており、
前記第2のインバート成型体は、曲線状に伸びる流路と、第2の切断端面を有しており、
前記第1のインバート成型体と、前記第2のインバート成型体とは、前記第1の切断端面と、前記第2の切断端面とが、間隔を隔てて相対向して配置されており、
前記接合剤は、前記間隔を埋め、前記第1の切断端面と、前記第2の切断端面とを互いに接合し、相互に連なる流路を構成している、
インバート部材。
【請求項2】
請求項1に記載されたインバート部材であって、
前記第2のインバート成型体は、複数である、インバート部材。
【請求項3】
請求項2又は3に記載されたインバート部材であって、
前記間隔は、5mm以上50mm以下である、インバート部材。
【請求項4】
桝基体と、インバート部材とを含むマンホールであって、
前記桝基体は、底部を有しており、
前記インバート部材は、請求項1乃至3の何れかに記載されたものでなり、前記桝基体の前記底部に載置されている、マンホール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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