説明

インパクト方式プリンタ及びその印字濃度制御方法

【課題】インクリボンの消耗度合いに適した印字出力を確立して無駄な出力を解消し、しかも適度な印字濃度で印字することができるインパクト方式プリンタ及びその印字濃度制御方法を提供することを課題とする。
【解決手段】通帳Pを搬送する通帳搬送路110上で該通帳Pの印字面を光学式に読み取る光学読取装置130と、前記通帳搬送路110上に導かれた通帳Pの印字面にインクリボン172を介して印字する印字ヘッド170とを備えたインパクト方式プリンタ1であって、前記光学読取装置130が読み取った初印字行の印字濃度を、基準の印字濃度と比較して濃淡度合いを求め、その濃淡度合いに基づいて前記印字ヘッド170が印字する次印字行以降の印字出力を制御して印字濃度を調整する印字濃度の調整機能を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動取引機で取引利用される通帳、伝票、小切手、有価カード、金券等の印字媒体に取引内容を印字するインパクト方式プリンタ及びその印字濃度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から業務用帳票類を印字するのに適している印字手段としてインパクト方式プリンタが知られている。これは高速摺動運動する素子に金属製の針(ドットピン)を取り付けて構成したインパクトヘッド(衝撃力発生装置)を有し、金属製の針と印字面との間に顔料粒子を含んだインクリボンを挟合させた状態で、インパクトヘッドの衝撃力によりインクリボンの顔料粒子を印字面に叩いて付着させることを繰り返している。つまり、金属製の針による印字面への打痕を結合させて印字することを動作原理としている。
【0003】
前記動作原理を用いたプリンタとして、冊子の厚み変化(例えば印字面が磁気ストライプに乗り上げたとき)に応じてインパクトヘッドの衝撃力を制御して印字濃度を調整するというインパクト方式の冊子プリンタが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−260396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1では冊子の厚み変化を検知することに基づいてインパクトヘッドの衝撃力を制御し、これにより均一な印字濃度になるように調整しているが、実際に印字した印字濃度はインクリボンの消耗度合いによって異なっていた。例えば、未使用のインクリボンを使用した場合は、インクリボンの表面に顔料粒子が高密度に存在しているために印字面には比較的濃く印字されることになる。インクリボンの使用経過にしたがって顔料粒子の密度が低下し、印字面への印字濃度は次第に薄くなってしまう。
【0006】
このようなこともあり、印字に際しては以下の問題が生じていた。
(1)インクリボンの使用経過に伴い該インクリボンに含まれている顔料粒子の密度が不均一な分布となり、インクリボンの位置によっては印字濃度が濃く、あるいは薄く現れるという印字斑を生じさせてしまうことになる。
(2)同じ厚みの紙面に印字したとしても、その紙の表面の微細な凹凸(表面粗さ状態)によって印字濃度が異なってしまう。
(3)インクリボンの顔料粒子の密度が低下しても安定した印字を確保できるようにインパクトヘッドに対しては強めの衝撃力を出力させるように設定している。このため、印字時には高電流により必要以上に強く印字する強打印字状態となり、印字面が強く叩かれて印字面に傷が付けられてしまうことがある。
(4)同じく強打印字状態のため、通帳等の冊子を扱っている場合に、印字面の裏面に付着されている顔料粒子が、紙面間で対向している対向紙面に転写されやすくなる。
(5)同じく強打印字状態のため、インクリボンの消耗が早まり、インクリボンが早期に寿命低下してしまう。
(6)同じく強打印字状態のため、必要以上の無駄なエネルギーを要し、印字時の出力効率が悪くなっていた。さらに、強打印字状態のために余分な騒音を発生させてしまうという問題を有していた。
【0007】
そこでこの発明は、インクリボンの消耗度合いに適した印字出力を確立して無駄な出力を解消し、しかも適正な印字濃度で印字することができるインパクト方式プリンタ及びその印字濃度制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、印字媒体を搬送する搬送路上で該印字媒体の印字面を光学式に読み取る光学式画像読取装置と、前記搬送路上に導かれた印字媒体の印字面にインクリボンを介して印字する印字ヘッドとを備えたインパクト方式プリンタであって、前記印字面における適切な印字濃度を記憶している記憶手段と、前記印字ヘッドにより印字された印字媒体から前記光学式画像読取装置が読み取った初印字行の印字濃度と、前記記憶手段が記憶している適切な印字濃度とを比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果に基づいて前記印字ヘッドが印字する次印字行以降の印字出力を制御して印字濃度を調整する印字濃度制御手段を備えたインパクト方式プリンタであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、印字ヘッドが初印字したときの印字濃度の濃淡度合いを読み取ることによって、その濃淡度合いに応じた最適な印字出力を次印字以降から出力することができる。このため、初印字時に印字濃度が濃いと読み取った場合は印字出力を下げて適正な印字濃度に調整することができる。この場合は、無駄な出力が回避されて低電力化及び低騒音化を図ることができる。一方、印字濃度が薄いときはインクリボンの交換、あるいは印字出力を上げて適正な印字濃度に調整することができるので明瞭な印字を確保することができる。
【0010】
このように、印字された実際の印字濃度を読み取って印字出力を調整する構成のため、印字斑を解消して良好な印字品質を確保することができる。さらに、インクリボンの消耗度合いに応じた印字出力に調整できるのでインクリボンは余分な消耗が無くなり、インクリボンの寿命延長を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】通帳の搬送位置との関係を示すインパクト方式プリンタの概略側面図。
【図2】インパクト方式プリンタの制御回路ブロック図。
【図3】上位装置からインパクト方式プリンタへの制御信号の送信状態を示す説明図。
【図4】(A)は初印字行の印字面の状態を示す要部平面図、(B)は次印字行以降の印字面の状態を示す要部平面図。
【図5】印字濃度制御時における印字出力された電流と時間との関係を電流量曲線により示す印字出力図。
【図6】インパクト方式プリンタの印字濃度制御動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図面は通帳処理機に内部構成されるインパクト方式プリンタを示し、通帳に印字した初印字の濃淡度合いに応じて次印字以降の印字濃度を調整する印字濃度調整手段を備えた実施形態を示す。
【実施例】
【0013】
図1はこの発明の一実施例を示すインパクト方式プリンタ1の構造を表わしている。このインパクト方式プリンタ1は図示しない通帳処理機に内蔵され、その前面に通帳Pを挿入させる通帳挿入口100を有している。この通帳挿入口100と連通する内方には、通帳Pを上下より挟持して水平に搬送する上下一対の搬送ローラR1,R2を通帳搬送方向に沿って複数対配設して構成される通帳搬送路110が備えられている。
【0014】
この通帳搬送路110に沿って挿入口センサ120と、光学読取装置130と、読取開始位置検知センサ140と、磁気ヘッド150と、印字開始位置検知センサ160と、印字ヘッド170と、自動頁めくり機構180とがこの順に配設されている。
【0015】
前記通帳挿入口100は通帳Pの印字頁を開いた状態で水平に挿入させる通帳の受入部であり、ここに挿入された通帳Pを通帳処理後に逆送して排出する排出口を兼ねた共通口として設けられている。この通帳挿入口100の奥方位置に隣接する通帳挿入検知位置P1には挿入口センサ120が配設され、この挿入口センサ120で通帳Pが挿入されたことを検知し、また排出されたことを検知する。
【0016】
光学読取装置130は光学式画像読取装置(イメージリーダ)として通帳搬送路110の上面側に対設され、該光学読取装置130の直下となる光学読取位置P2で挿入された通帳Pの印字面を上方から光学的に読み取る。例えば、通帳Pの頁情報を表わすバーコードや通帳Pに印字されている印字行の位置や印字された文字の濃淡度合いを読み取る。この光学読取装置130の奥方位置に隣接する光学読取開始位置P3には読取開始位置検知センサ140が配設され、この読取開始位置検知センサ140で逆送された通帳Pの後端を検知し、通帳Pが逆送時に光学読取開始位置P3に達したことを検知する。
【0017】
磁気ヘッド150は通帳搬送路110の下面側に対設され、搬送幅方向に走行する図示しない磁気ヘッド走行機構に保持されて挿入された通帳Pの下面側に備えられている磁気ストライプ上を走行する。これにより、磁気ストライプの磁気情報を読み取り、また書き込み処理する。
【0018】
印字開始位置検知センサ160は後述する印字ヘッド170の手前側に隣接する位置に配設され、この印字開始位置検知センサ160でここに導かれた通帳Pの前端を検知して通帳Pが印字送り位置P4に導かれたことを検知する。
【0019】
印字ヘッド170は搬送幅方向に走行するスライダ171に搭載され、そのスライダ171のスライド動作により該印字ヘッド170は搬送幅方向に走行し、印字ヘッド170の直下となる印字位置P5で通帳Pの印字面に一行ずつ横書きする。この印字ヘッド170の印字方式はインパクトヘッド方式が採用されている。このインパクトヘッド方式は、該印字ヘッド170と通帳搬送路110との間に介在させている帯状のインクリボン172を叩いて紙面(印字面)に印字するという衝撃力を利用した印字動作である。
【0020】
自動頁めくり機構180は通帳Pの印字頁の記入欄が一杯になった時点で、通帳Pを印字ヘッド170の奥方に位置する該自動頁めくり機構180に導き、ここで次の印字すべき頁面へとめくり動作する。
【0021】
次に、インパクト方式プリンタ1の印字濃度を調整する際の制御動作を、図2の制御回路ブロック図を参照して説明する。
上述のインパクト方式プリンタ1の制御動作を主に司る統合制御部202は、信号線L1を介して上位装置201に接続されている。該統合制御部202は、上位装置201から送信された文字符号信号を内部の処理信号(文字データ、搬送幅方向印字位置のデータ、搬送方向印字位置のデータ)に置き換える処理機能を有している。
【0022】
機構制御部203は、信号線L2を介して前記統合制御部202に接続されている。該機構制御部203は前記統合制御部202からの指示に基づき、信号線L3を介して接続されている前記挿入口センサ120と、信号線L4を介して接続されている前記印字開始位置検知センサ160及び、信号線L5を介して接続されている前記読取開始位置検知センサ140とからの情報を基に、信号線L6を介して接続している搬送モータ204を駆動し、その駆動力は搬送ベルト205を介して前記複数対の搬送ローラR1,R2に回転出力として伝えられる。
【0023】
また、前記機構制御部203は、前記統合制御部202からの指示に基づき、信号線L7により接続している印字モータ206を駆動し、その印字モータ206の駆動力は印字プーリ207を介して前記印字ヘッド170に印字出力として伝達される。
【0024】
光学解析部208は、信号線L8を介して前記統合制御部202に接続されている。該光学解析部208は統合制御部202からの指示に基づき信号線L9を介して接続された前記光学読取装置130に通帳の印字情報を読み取るように指示し、その読み取った印字情報を信号線L9を介して受け取る。この際、光学解析部208は前記統合制御部202から指定された領域の印字濃度(指定領域濃度情報)を、印字面上に存在する画像データから数値化し、信号線L8を介して統合制御部202に送信する。
【0025】
印字制御部209は信号線L10を介して前記統合制御部202に接続されている。該印字制御部209は統合制御部202から前記指定領域濃度情報と文字データと搬送幅方向印字位置データ及び搬送方向印字位置データを受け取る。また、印字制御部209は信号線L11を介して衝撃力演算部210に前記指定領域濃度情報を送信し、該衝撃力演算部210にて適切な衝撃力を演算させる。さらに、印字制御部209は前記文字データと電流量とを重畳させ、前記印字ヘッド170の印字出力に適した信号(印字ヘッドの基礎波形)に加工し、信号線L12を介して前記印字ヘッド170に送信する。
【0026】
例えば、図3に示すように、上位装置201からインパクト方式プリンタ1に文字符号信号として文字データと、その印字位置データとの符号化データ301,302,303が送信された場合、これらの信号をインパクト方式プリンタ1の統合制御部202が受付け、印字位置に通帳Pが導かれた時点で印字指示された内容の文字データを通帳Pに印字する。
【0027】
さらに、前記統合制御部202が最初の符号化データ301(図3参照)を受信すると、図4(A)に示すように、初印字行401(図示の例は通帳Pの一行目に印字した初印字行を示している)の文字データに加えて、初印字行401の印字位置を指定する搬送方向印字位置402のデータと搬送幅方向印字位置403のデータとの各データにしたがって所定の印字位置に指定された文字を初印字行401として印字する。
【0028】
次印字行411の印字に際しても、上位装置201からインパクト方式プリンタ1の統合制御部202に次印字行411の符号化データ302(図3参照)が送信されると、図4(B)に示すように、次印字行の文字データに加えて次印字行411の印字位置を指定する搬送方向印字位置413のデータと搬送幅方向印字位置414のデータとの各データにしたがって所定の印字位置に指定された文字を次印字行411として印字する。また、その次の次々印字行412、それ以降の印字行についても同様にして印字する。
【0029】
前記衝撃力演算部210は、前記統合制御部202からのデータ受信時に前記指定領域濃度情報が無いとき、つまり初印字行の印字のときは、図5に示すように、強めの印字出力である最大電流量曲線501が得られる第1電流量I1を使って印字ヘッド170に衝撃力を発生させる。これに対し、前記指定領域濃度情報があるときは、該指定領域濃度情報に応じた最適電流量曲線502が得られる低電力の第2電流量I2を使って印字ヘッド170に衝撃力を発生させる。
【0030】
したがって、前記初印字行401(図4(A)参照)を印字したときの印字濃度が濃いと判定した場合は、適正な印字濃度になるように次印字行411(図4(B)参照)からは印字濃度を下げた出力で印字することができる。図5にあっては、最大電流量曲線501で囲まれる面積と最適電流量曲線502で囲まれる面積との面積差503の分だけ印字出力を節約できることを表わしている。一方、初印字行401を印字したときに印字濃度が薄いと判定した場合は、その薄さ度合いによってインクリボン172を交換するように、その旨を係員に案内するか、あるいは印字出力を高めて印字を明瞭にするように指示する。
【0031】
さらに、前記統合制御部202においては、予め通帳Pの印字面に適した基準の印字濃度を記憶しているROM等で構成される記憶手段としての記憶部と、該記憶部が記憶している適切な印字濃度と印字ヘッド170が実際に印字した印字濃度とを比較する比較手段と、該比較手段が比較した比較結果に基づいて通帳Pの印字面に印字された印字濃度の濃淡度合いを求め、その濃淡度合いに基づいて印字出力を制御する印字濃度制御手段を格納している。
【0032】
ことに、統合制御部202が制御する印字濃度制御手段は初印字行の濃度情報に応じて、次印字行以降の印字濃度を適正な濃度に調整して印字出力を制御するという濃度調整機能を有している。
【0033】
前記比較手段は、初印字行に該当する初印字行401を印字した場合、その初印字行401を印字した特定領域の印字位置で、しかも印字された日付、取引金額あるいはコード番号等の特定の印字項目を比較印字としている。例えば、日付の場合は数字でしかも予め印字される位置と範囲(文字数)と印字される内容がほぼ決まっているため印字濃度を比較するときの比較条件が簡明であり、明瞭な比較印字となる。このように、明瞭な比較印字を特定しておくことにより、信頼性の高い濃度データが得られ、光学読取装置130での読み取り性能を高めることができる。
【0034】
さらに、顔料粒子が含まれているインクリボン172の性質から急激に濃度低下することはなく、長期使用に伴って次第に薄くなる傾向にある。したがって、印字濃度を制御する場合はインパクト方式プリンタ1の稼働初期に一回すればよい。例えば、金融機関等で一日の業務開始時に最初に受付けた通帳Pに対して一回実行すればよい。この際、各印字行について行うのではなく、通帳Pに最初に印字した初印字行の時点で印字濃度の制御を一回実行するとよい。
【0035】
この場合は、一日の最初だけ印字濃度の調整をすれば、次の通帳Pの印字からは印字濃度制御動作を省略して運用することができる。また、印字濃度制御動作を実行させたとき、通帳Pは通帳搬送路110上において、印字位置P5と光学読取位置P2との間で進退させるだけで印字濃度の制御動作が完了する。このため、印字濃度の制御を短時間に能率よく実行することができる。よって、通帳Pを用いた通常の取引利用時間とほぼ同時間で行うことができ、取引利用に顧客が違和感を生じることもない。
【0036】
次に、インパクト方式プリンタ1の印字濃度制御動作を図6のフローチャートを参照して説明する。
図3に示すように、上位装置201からインパクト方式プリンタ1に符号化データ301,302,303が送信されると、インパクト方式プリンタ1の統合制御部202は符号化データ301に基づいて、前記統合制御部202は前記機構制御部203に対し、通帳受入指示及び図4(A)に示す搬送方向印字位置402のデータを送り、印字制御部209に対し、図4(A)に示す搬送幅方向印字位置403のデータ及び文字のデータを送る。
【0037】
顧客が通帳Pを通帳挿入口100に挿入し、その挿入された通帳Pの前端を挿入口センサ120が検知すると(図1では通帳挿入検知位置P1に該当するAの位置)、機構制御部203は搬送モータ204を駆動する。
【0038】
この搬送モータ204の駆動に基づいて各搬送ローラR1,R2は回転し、通帳Pを通帳搬送路110に取り込み、通帳Pを内方へと搬送させつつ印字開始位置検知センサ160が通帳Pの前端通過を検知すれば(図1では印字送り位置P4に該当するBの位置)、機構制御部203は通帳Pを検知したことを契機に前記印字ヘッド170の直下に前記搬送方向印字位置402が合致するように前記搬送モータ204の出力を停止制御する。
【0039】
通帳Pが印字開始位置となる印字ヘッド170の直下に停止されると(図1では印字位置P5に該当するCの位置)、その搬送完了を前記統合制御部202に報告する。
【0040】
報告を受けた前記統合制御部202は、前記機構制御部203に対し、印字モータ206の駆動開始指示及び印字制御部209に対して衝撃力発生を同時に指示する。
【0041】
このとき、印字制御部209は衝撃力演算部210で適切な衝撃力を求める。この衝撃力を求める演算は、最大電流量曲線501で示す印字出力のデータが報告され、この報告を受けた印字制御部209が前記最大電流量曲線501と文字データとを重畳させた電流波形に基づき、最大電流量曲線501が得られる第1電流量I1を使って印字ヘッド170に衝撃力を発生させる。
【0042】
これにより、通帳搬送路110に取り込んだ通帳Pに対し、搬送方向印字位置402のデータ及び搬送幅方向印字位置403のデータ(図4(A)参照)に基づく指定された位置からの印字を初印字行401とする最大電流量曲線501での印字動作が実行される。この結果、印字ヘッド170は所定の衝撃力でインクリボン172を叩いて通帳Pの印字面の初印字行の記入欄に初印字行の取引データを印字する(ステップ601)。
【0043】
初印字行の印字濃度を判定するために、統合制御部202は機構制御部203に対して通帳Pの光学読取搬送を指示し、この指示にしたがって機構制御部203は搬送モータ204を逆回転し、各搬送ローラR1,R2の逆回転により通帳Pを前記通帳挿入口100側へと搬送する。
【0044】
そして、機構制御部203は通帳Pを逆送させつつ読取開始位置検知センサ140で通帳Pの逆搬送時に先に検知される後端が通過したことを検出すると(図1では光学読取開始位置P3に該当するDの位置)、統合制御部202に報告し、前記光学読取装置130の直下と通帳Pの後端が合致するまで通帳Pを逆送する(図1では光学読取位置P2に該当するEの位置)。
【0045】
統合制御部202は逆送された通帳Pの後端通過を検知したことの報告を契機に、前記光学解析部208に対し印字濃度を判定させる指示を行う。光学解析部208では光学読取装置130に通帳の印字状態を読み込ませ、読み込んだ印字情報を基に印字濃度の判定を行う(ステップ602)。このとき、該光学解析部208は統合制御部202に対し、当該通帳P、インクリボン172、最大電流量曲線501との組み合わせによる指定領域濃度情報を印字濃度の判定情報として報告する。
【0046】
統合制御部202は当該指定領域濃度情報を一旦蓄えた後、次印字行を印字するため、次の符号化データ302(図3参照)の搬送方向印字位置413のデータ(図4(B)参照)に基づいて通帳を一行分搬送する。これにより、通帳Pは再び取込方向に搬送され、印字開始位置検知センサ160の検知位置を通帳Pの前端が通過したことを契機に前記印字ヘッド170の直下に前記搬送方向印字位置413が合致するように前記搬送モータ204を停止させる(図1では印字位置P5に該当するFの位置)。そして、通帳Pが印字位置に停止されると、機構制御部203は搬送完了したことを統合制御部202に報告する。この報告を受けて統合制御部202は印字制御部209に対して搬送幅方向印字位置414のデータ及び文字データ、備蓄した当該指定領域濃度情報を送信する。
【0047】
これらのデータを受信した印字制御部209は指定領域濃度情報を衝撃力演算部210に送信する。衝撃力演算部210では受信した指定領域濃度情報に基づいて衝撃力を演算し(ステップ603)、この演算して求めた衝撃力に応じた最適電流量曲線502を印字制御部209に報告する。
【0048】
この報告を受けた印字制御部209は最適電流量曲線502と文字データとを重畳させた電流波形に基づき、最適電流量曲線502が得られる第2電流量I2を使って印字ヘッド170に衝撃力を発生させる旨を指示する(ステップ604)。印字ヘッド170は指示された衝撃力で前記インクリボン172を叩くことにより、印字面に所定の取引されたデータ(次印字以降の全データ)を印字する。
【0049】
これにより、印字面に対し、搬送方向印字位置413と、搬送幅方向印字位置414とを次印字行411(図4(B)参照)の印字開始位置とした最適電流量曲線502での印字出力による印字動作が完了する。
【0050】
初印字行の印字に要した印字出力は前記最大電流量曲線501で囲まれた面積(図5に点線で囲って示す)に相当し、次印字行の印字に要した印字出力は最適電流量曲線502で囲まれた面積であり、これらの面積差503の分だけ印字出力を節約できたことを示している。このことは、印字出力未調整により騒音として無駄に使われていたエネルギーを発生させなくなり、無駄な出力を効率よく解消できたと認められる。そして、次印字行だけでなく次々印字行以降も、その次の符号化データ303を加工することにより適切な印字濃度で無駄な印字出力を要せず、効率よく印字することができる(ステップ605)。
【0051】
なお、この一実施例の説明では、初印字行の印字濃度が濃い場合について説明したが、逆に印字濃度が淡い場合においてもこの発明が有効であり、印字ヘッド170に対する衝撃力の指示を、印字濃度が濃い場合と逆にすればよいのは言うまでも無い。
【0052】
上述のように、インパクト方式プリンタ1を用いて印字した際に、初印字行の印字濃度が濃いときは印字出力を下げて印字濃度を適正な濃さに調整することができる。このため、低電力化及び低騒音化を図ることができる。逆に、印字濃度が薄いときは印字出力を高めたり、インクリボン172を交換したりして適正な印字濃度に調整することができる。このため、明瞭な印字を確保することができる。
【0053】
この結果、印字斑を解消して良好な印字品質を確保することができる。ことに、必要最小限の印字出力に制御できるため、無駄な出力が無くなる。また、インクリボン172の消耗度合いに適した印字出力に調整できるのでインクリボン172に対しても余分な消耗が無くなり、インクリボン172の寿命延長を図ることができる。また、次印字行以降は濃度判定せずに続けて印字するため、通帳Pを再度逆送して濃度を読み取る必要がなく、短い処理時間で印字完了できる。
【0054】
この発明は上述の一実施例に記載された構成に限定されるものではなく、請求項に記載された技術思想に基づいて応用することができる。例えば、上述の一実施例では印字媒体の一例として通帳Pを用いたが、伝票、小切手、有価カード、金券等の印字可能な紙質を有する他の媒体であっても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
現金自動預払装置等に内部構成される通帳処理装置などに利用できる。
【符号の説明】
【0056】
1…インパクト方式プリンタ
110…通帳搬送路
130…光学読取装置
170…印字ヘッド
172…インクリボン
202…統合制御部
209…印字制御部
501…最大電流量曲線
502…最適電流量曲線
P…通帳

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字媒体を搬送する搬送路上で該印字媒体の印字面を光学式に読み取る光学式画像読取装置と、前記搬送路上に導かれた印字媒体の印字面にインクリボンを介して印字する印字ヘッドとを備えたインパクト方式プリンタであって、
前記印字面における適切な印字濃度を記憶している記憶手段と、
前記印字ヘッドにより印字された印字媒体から前記光学式画像読取装置が読み取った初印字行の印字濃度と、前記記憶手段が記憶している適切な印字濃度とを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づいて前記印字ヘッドが印字する次印字行以降の印字出力を制御して印字濃度を調整する印字濃度制御手段を備えた
インパクト方式プリンタ。
【請求項2】
前記比較手段は、
前記初印字行の特定領域に印字される特定の印字項目を比較印字とした
請求項1記載のインパクト方式プリンタ。
【請求項3】
前記印字濃度制御手段は、
業務開始時に印字媒体を最初に受付けて印字面に初印字行を印字した時点で印字濃度の制御を実行する
請求項1または2に記載のインパクト方式プリンタ。
【請求項4】
印字媒体を搬送する搬送路上において、
印字ヘッドにより印字された印字媒体の初印字行の印字濃度を光学式画像読取装置が読み取り、読み取った初印字行の印字濃度と、予め記憶している適切な印字濃度とを比較し、この比較結果に基づいて前記印字ヘッドが印字する次印字行以降の印字出力を制御する
インパクト方式プリンタの印字濃度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−240993(P2010−240993A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92573(P2009−92573)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】