説明

インピーダンスフィードバックアルゴリズムにおける処理を終結するためのシステムおよび方法

【課題】電気外科的処置の終了を決定するためのシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】患者Pの組織に電気外科用エネルギーを供給するように適合された電気外科用電源20および電気外科用エネルギーを組織に付与するように適合された少なくとも1つの能動電極を含む電気外科用器具10を備える電気外科用システムにおいて、電気外科用電源は、少なくとも1つの勾配を有する所望のインピーダンス軌道を生成するように適合されているマイクロプロセッサを備える。標的インピーダンス軌道は、1つ以上の標的インピーダンス値を含む。マイクロプロセッサはまた、標的インピーダンス軌道に沿った組織のインピーダンスを、対応する標的インピーダンス値に組織インピーダンスを実質的に一致するように出力レベルを調節することによって駆動するように適合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、Robert Whamらによって、2006年1月24日に出願された「組織シールのためのシステムおよび方法」と題する米国仮出願第60/761,443への優先権を主張している。その全体の内容は、その全体の内容が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(背景)
(技術分野)
本開示は、電気外科用システム、および電気外科的手順を実施するための方法に関する。より詳細には、本開示は、感知された組織性質およびその他の所定の値に基づき、特定の組織処置が終了するときを決定することに関する。
【背景技術】
【0003】
(関連する技術の背景)
エネルギーを基礎にした組織処置は当該技術分野では周知である。種々のタイプのエネルギー(例えば、電気、超音波、マイクロ波、寒冷、熱、レーザーなど)が、組織に付与されて所望の結果を達成する。電気外科は、高周波電流の手術部位への適用を含み、組織を切断、切除、凝固、シールなどを行う。単極電気外科では、供給源または能動電極が、電気外科用電源からの高周波エネルギーを組織に送達し、そして戻り電極が電源に電流を戻す。単極電気外科では、供給源電極は、代表的には、外科医によって保持される外科用器具の一部であり、そして処置されるべき組織に付与される。患者戻り電極は、能動電極から遠隔に配置され、電源に戻る電流を運ぶ。
【0004】
双極電気外科では、ハンドヘルド器具の電極の一方が能動電極として、そして他方が戻り電極として機能する。この戻り電極は、能動電極に緊密に近接して、電気回路が2つの電極(例えば、電気外科用鉗子)間に形成されるように配置される。このようにして、付与された電流は、これら電極間に位置決めされた身体組織に限定される。これら電極が互いから十分に分離されるとき、この電気回路は開放され、そしてそれ故、これら分離された電極のいずれかとの身体組織の不慮の接触は、電流を流れさせない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
感知された組織フィードバックが電気外科用エネルギーの送達を制御するために用いられ得ることが当該技術分野で知られている。本開示は、電気外科的処置の終了を決定するためのシステムおよび方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要約)
本開示は、電気外科的処置の終了を決定するためのシステムおよび方法に関する。このシステムは、マイクロプロセッサおよびセンサー回路を有する電気外科用電源を含む。センサー回路は、組織インピーダンスを連続的にモニターし、そしてオフセットインピーダンスを測定する。マイクロプロセッサは、組織インピーダンスを、上記オフセットインピーダンスの関数として規定される閾値インピーダンス値、およびハードコードされた終結インピーダンス値と比較する。組織インピーダンスがこの閾値インピーダンス値以上であるとき、処置は終了し、そしてこのシステムは、電源の出力を調節する。
【0007】
本開示の1つの局面によれば、電気外科用システムが開示される。このシステムは、組織に所定の出力レベルでエネルギーを供給するように適合された電気外科用電源を含む。この電気外科用電源は、少なくとも1つの勾配を有する所望のインピーダンス軌道を生成するように適合されているマイクロプロセッサを備える。この標的インピーダンス軌道は、1つ以上の標的インピーダンス値を含む。このマイクロプロセッサはまた、上記標的インピーダンス軌道に沿った組織のインピーダンスを、対応する標的インピーダンス値に組織インピーダンスを実質的に一致するように上記出力レベルを調節することによって駆動するように適合されている。このマイクロプロセッサは、組織インピーダンスを閾値インピーダンス値と比較し、そしてこの組織インピーダンスが上記閾値インピーダンス以上であると上記電気外科用電源の出力を調節するようにさらに適合されている。このシステムはまた、電気外科用エネルギーを組織に付与するように適合された少なくとも1つの能動電極を含む電気外科用器具を含む。
【0008】
本開示の別の局面は、電気外科的手順を実施するための方法を含む。この方法は:電気外科用電源から組織に所定の出力レベルで電気外科用エネルギーを付与する工程、および標的インピーダンス軌道を生成する工程を含む。この標的インピーダンス軌道は、1つ以上の標的インピーダンス値を含む。この方法はまた、上記出力レベルを、対応する標的インピーダンス値に組織インピーダンスを一致するように調節することによって、上記標的インピーダンス軌道に沿って組織インピーダンスを駆動する工程、および組織インピーダンスを閾値インピーダンス値と比較する工程、および該組織インピーダンスが該閾値インピーダンス以上であるとき、該電気外科用電源の出力を調節する工程を含む。
【0009】
本開示のさらなる局面によれば、電気外科用電源が開示される。この電気外科用電源は、組織に電気外科用エネルギーを供給するように適合されたRF出力ステージを含む。この電気外科用電源はまた、少なくとも1つの勾配を有する所望の標的インピーダンス軌道を生成するように適合されたマイクロプロセッサを含む。この標的インピーダンス軌道は、1つ以上の標的インピーダンス値を含む。このマイクロプロセッサはまた、この標的インピーダンス軌道に沿った組織のインピーダンスを、対応する標的インピーダンス値に組織インピーダンスを実質的に一致するように上記出力レベルを調節することによって駆動するように適合されている。このマイクロプロセッサは、組織インピーダンスを閾値インピーダンス値と比較し、そして上記組織インピーダンスが上記閾値インピーダンス以上であるとき上記電気外科用電源の出力を調節するようにさらに適合されている。
【0010】
本開示のさらなる局面によれば、上記マイクロプロセッサが、オフセットインピーダンス値および終結インピーダンス値の関数として閾値インピーダンス値を生成するようにさらに適合された、上記電気外科用システムが提供される。
【0011】
本開示のさらなる局面によれば、上記オフセットインピーダンス値が、最大電流値に対応するインピーダンス値、最小インピーダンス値および初期インピーダンス値からなる群から選択される、上記電気外科用システムが提供される。
【0012】
本開示のさらなる局面によれば、上記マイクロプロセッサが、反応期間の持続時間を反応タイマー値と比較し、そしてこの反応期間の持続時間が該反応タイマー値以上であるとき、上記電気外科用電源の出力を調節するようにさらに適合される、上記電気外科用システムが提供される。
【0013】
本開示のさらなる局面によれば、上記マイクロプロセッサが、反応期間の持続時間を反応タイマー値および時間オフセット期間の合計と比較し、そしてこの反応期間の持続時間がこの反応タイマー値および時間オフセット期間の合計以上であるとき、上記電気外科用電源の出力を調節するようにさらに適合される、上記電気外科用システムが提供される。
【0014】
本開示のさらなる局面によれば、上記マイクロプロセッサが、オフセットインピーダンス値および終結インピーダンス値の関数として閾値インピーダンス値を生成するようにさらに適合された、上記電気外科用電源が提供される。
【0015】
本開示のさらなる局面によれば、上記オフセットインピーダンス値が、最大電流値に対応するインピーダンス値、最小インピーダンス値および初期インピーダンス値からなる群から選択される、上記電気外科用電源が提供される。
【0016】
本開示のさらなる局面によれば、上記マイクロプロセッサが、反応期間の持続時間を反応タイマー値と比較し、そしてこの反応期間の持続時間が反応タイマー値以上であるとき、上記電気外科用電源の出力を調節するようにさらに適合される、上記電気外科用電源が提供される。
【0017】
本開示のさらなる局面によれば、上記マイクロプロセッサが、反応期間の持続時間を反応タイマー値および時間オフセット期間の合計と比較し、そしてこの反応期間の持続時間が反応タイマー値および時間オフセット期間の合計以上であるとき、上記電気外科用電源の出力を調節するようにさらに適合される、上記電気外科用電源が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本開示の電気外科的処置の終了を決定するためのシステムおよび方法により、感知された組織性質およびその他の所定の値に基づき、特定の組織処置が終了するときを決定される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本開示の種々の実施形態は、図面を参照して本明細書中に開示される。
【図1】図1は、本開示による電気外科用システムの概略ブロック図である。
【図2】図2は、本開示による電源の概略ブロック図である。
【図3】図3は、本開示による方法を示すフロー図である。
【図4】図4は、本開示によるインピーダンスの経時的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(詳細な説明)
本開示の特定の実施形態を、添付の図面を参照して本明細書で以下に説明する。以下の説明において、周知の機能または構成は、不必要な詳細で本開示を不明りょうにすることを避けるために詳細には説明されない。当業者は、本開示が、内視鏡器具または開放器具のいずれかとの使用のために適合され得ることを理解する。
【0021】
本方法は、制限されないで、超音波、レーザー、マイクロ波、および寒冷組織処置を含むその他の組織効果およびエネルギーを基礎にした様式に拡大され得ることが想定される。開示の方法はインピーダンス測定に基づくが、温度、電流、電圧、電力、エネルギー、電圧および電流の相のような、その他の組織およびエネルギー性質をモニターすることが組織の状態決定するために用いられ得ることもまた想定される。この方法は、電気外科用システムに組み込まれたフィードバックシステムを用いて実施され得るか、または独立型のモジュール実施形態(例えば、この電気外科用システムの電源のような種々の構成要素に電気的に接続される形態の取り外し可能なモジュール回路)であり得ることがさらに想定される。
【0022】
本開示は、組織フィードバックに基づき、組織へのエネルギー送達を制御するための方法に関する。電気外科用エネルギーが、組織を処置するために用いられている場合、測定され、そしてフィードバックとして用いられる組織特徴は、代表的には、インピーダンスであり、そして質問の信号は、元来、電気的である。組織を処置するためにその他のエネルギーが用いられている場合、質問の信号、そして感知される組織の性質はそれに応じて変化する。例えば、質問の信号が、熱、音、光、超音波などによって達成され得、そして初期組織特徴は、対応して、温度、密度、不透明性などであり得る。本開示による方法は、電気外科用エネルギーおよび対応する組織性質(例えば、インピーダンス)を用いて論議される。当業者は、この方法が、その他の電気エネルギー適用を用いて採用され得ることを認識する。
【0023】
図1は、本開示による電気外科用システムの概略図である。このシステムは、患者Pの組織を処置するための1つ以上の電極を有する電気外科用器具10を含む。この器具10は、1つ以上の能動電極を含む単極型(例えば、電気外科用切断プローブ、切除電極(単数または複数)など)、または1つ以上の能動電極および戻り電極を含む双極型(例えば、電気外科用シール鉗子)のいずれかであり得る。電気外科用RFエネルギーは、供給ライン12を経由して電源20によって器具10に供給され、この供給ラインは、能動出力端末に作動可能に接続され、この器具10が、組織を、凝固、シール、切除および/またはそれ以外に処置することを可能にする。
【0024】
この器具10が単極型器具である場合、エネルギーは、患者の身体上に配置され得る戻り電極(明瞭には示されていない)を通って電源20に戻され得る。このシステムはまた、患者Pとの全接触面積を最大にすることによって、損傷された組織の機会を最小にするように配列された複数の戻り電極を含み得る。さらに、この電源20および単極戻り電極は、いわゆる「組織から患者への」接触をモニターするための形態であり得、組織損傷の機会をさらに最小にするためのそれらの間に十分な接触を確実にする。
【0025】
この器具10が双極型器具である場合、この戻り電極は、能動電極(例えば、双極鉗子の対向する顎にある)に近接して配置される。電源20は、複数の供給端末および戻り端末、ならびに対応する数の電極配線を含み得ることがまた想定される。
【0026】
電源20は、この電源20を制御するための入力制御(例えば、ボタン、アクチベーター、スイッチ、タッチスクリーンなど)を含む。さらに、この電源20は、外科医に種々の出力情報(例えば、強度設定、処置終了インジケーターなど)を提供するための1つ以上のディスプレイスクリーンを含み得る。これら制御は、外科医が、RFエネルギーの電力、波形、およびその他のパラメーターを調節することを可能にし、特定のタスク(例えば、凝固、組織シール、強度設定など)のために適切な所望の波形を達成する。この器具10は、電源20の特定の入力制御には余分であり得る複数の入力制御を含み得ることがまた想定される。この器具10に入力制御を配置することは、電源20との相互作用を必要とすることなく外科手順の間のRFエネルギーパラメーターのより容易およびより迅速な変更を可能にする。
【0027】
図2は、コントローラー24、高電圧DC電源27(「HVPS」)およびRF出力相28を有する電源20の概略ブロック図を示す。このHVPS27は、高電圧DC電力をRF出力相28に提供し、これは、次いで、高電圧DC電力をRFエネルギーに変換し、そして高周波数RFエネルギーを能動電極24に送達する。特に、このRF出力相28は、高周波RFエネルギーの正弦波形を生成する。このRF出力相28は、種々の衝撃係数、ピーク電圧、波高因子、およびその他のパラメーターを有する複数の波形を生成するような形態である。特定の型の波形は、特定の電気外科用モードのために適切である。例えば、このRF出力相28は、切断モードで100%の衝撃係数の正弦波形を生成し、これは、組織を解剖するために最良に適合され、そして凝固モードで25%の衝撃係数の正弦波形を生成し、これは、出血を停止するように組織を焼灼するために最も用いられる。
【0028】
コントローラー24は、揮発型メモリー(例えば、RAM)および/または不揮発型メモリー(例えば、フラッシュ媒体、ディスク媒体など)であり得るメモリー26に作動可能に接続されたマイクロプロセッサ25を含む。このマイクロプロセッサ25は、HVPS27および/またはRF出力相28に作動可能に接続され、開放および/または閉鎖制御ループスキームに従って、マイクロプロセッサ25が電源20の出力を制御することを可能にする。
【0029】
種々の組織およびエネルギー性質(例えば、組織インピーダンス、組織温度、出力電流および/または電圧など)を測定するための1つ以上のセンサーを有するセンサー回路22を含む閉鎖ループ制御スキームまたはフィードバック制御ループが提供される。センサー回路22は、コントローラー24へのフィードバックを提供する。このようなセンザーは、当業者の条項内にある。コントローラー24は、次いで、HVPS27および/またはRF出力相28に信号を送り、これらは、次いで、DCおよび/またはRF電源をそれぞれ調節する。コントローラー24はまた、電源20または器具10の入力制御からの入力信号を受ける。コントローラー24は、この入力信号を、電源20によって出力される電力を調節するため、そして/またはそれに対するその他の制御機能を実施するために利用する。
【0030】
特に、センサー回路22は、組織インピーダンスを測定するために適合されている。これは、センサー回路22において、そして/またはマイクロプロセッサ25において電圧および電流信号を測定すること、およびそれらの関数として対応するインピーダンス値を算出することによって達成される。電力およびその他のエネルギー性質がまた、収集された電圧および電流信号に基づいて算出され得る。感知されたインピーダンス測定値は、電源20によってフィードバックとして用いられる。
【0031】
本開示による組織をシールする方法は、図3および図4を参照して以下に論議される。この方法は、メモリー26中に格納され、そしてマイクロプロセッサ25によって履行されるソフトウェアを基礎にした組織処置アルゴリズムで具現化され得る。図4は、エネルギーの特定の付与の間に組織が受ける種々の相を示す、インピーダンスの経時的なグラフを示す。エネルギーが付与されるとき組織インピーダンスにおける減少は、組織が融合(例えば、血管シール)され、切除され、または乾燥されているときに起こる。電気的エネルギーの発生のとき(すなわち、組織融合、切除、または乾燥の間)、組織加熱は、初期に感知されたインピーダンス未満である最小値に向かってインピーダンスを減少する。組織インピーダンスは、組織が凝固されているとき、ほぼ直ちに上昇し始める。
【0032】
予備加熱または初期乾燥ステージである相Iの間に、組織に供給されるエネルギーのレベルは十分に低く、そしてこの組織のインピーダンスは、初期インピーダンス値で開始する。組織により多くのエルルギーが付与されるとき、その中の温度は上昇し、そして組織インピーダンスは減少する。より後の時点で、組織インピーダンスは、最小インピーダンス値210に到達し、これは、沸騰温度(細胞内および細胞外流体沸騰温度)である約100℃の組織温度に対応する。
【0033】
相IIは、蒸発相または後期乾燥相であり、この間に組織は、湿った伝導性から乾燥した非伝導性性質までの相遷移を達成する。特に、細胞内および細胞外流体の大部分は、相Iの終期の間に迅速に沸騰し始めるとき、インピーダンスは、最小インピーダンス値210を超えて上昇し始める。十分なエネルギーが相IIの間に組織に連続的に付与されるとき、温度は、最小インピーダンス値210に一致する沸点を超えて上昇する。温度が上昇し続けるとき、組織は、湿った状態から固体状態までの相変化を受け、そして最終的には、乾燥状態になる。さらなるエネルギーが付与されるとき、組織は完全に乾燥され、そして最終的には蒸発され、スチーム、組織蒸気および黒こげを生成する。当業者は、図4の示されるインピーダンス変化が、例示の電気外科的手順を示し、しかも、本開示は、異なるインピーダンス曲線および/または軌道を有する電気外科的手順に対して利用され得ることを認識する。
【0034】
電気外科用エネルギーの付与は、測定されたインピーダンス信号の関数として電源20の出力を制御するインピーダンスフィードバックアルゴリズムを経由して制御される。このインピーダンスフィードバックアルゴリズムは、メモリー26内に格納され、そしてマイクロプロセッサ26によって履行される。この組織処置アルゴリズムは、予め規定された標的インピーダンス軌道に沿って測定された組織インピーダンスを駆動する(例えば、相Iでは下方、相IIでは上方など)。これは、測定されたインピーダンス値を対応する標的インピーダンス値に一致するように電源20の出力を調節することによって達成される。より詳細には、この組織処置アルゴリズムは、組織が、乾燥、凝固、融合および/まはシールのために適切に処置され、エネルギー付与を止め、そして/または遮断するときを識別する。
【0035】
ステップ100では、器具10は、組織と係合し、そして電源20が作動される(例えば、フットペダルまたはハンドスイッチを押すことによる)。ステップ110では、組織処置アルゴリズムが開始され、そしてコンフィギュレーションファイルがロードされる。このコンフィギュレーションファイルは、この組織処置アルゴリズムを制御する種々の予め規定された値を含む。特に、終結インピーダンス値220および反応タイマー値がロードされる。オフセットインピーダンス値と組合せた終結インピーダンス値が、処置の終了を示す閾値インピーダンス値を算出するために用いられる。特に、電気外科用エネルギーの組織への付与は、組織インピーダンスが、閾値インピーダンス以上であるまで続けられ、この閾値インピーダンスは、終結インピーダンス値とオフセットインピーダンス値を付加することによって決定される。終結インピーダンス値は、到達された最低の測定インピーダンスを超えて約10オームから約1000オームの範囲であり得る。
【0036】
終結状態はまた、所定の時間、すなわち、反応時間の間、電気外科用エネルギーを付与することを含み、これは、反応時間値によって具現化される。これは、処置プロセスが組織を過剰調理しないことを確実にする。この終結インピーダンス値220および反応タイマーは、ハードコードされ、そして組織の型、用いられている器具および使用者によって選択される設定に基づいて自動的に選択される。この終結インピーダンス値220は、組織処置の間のいずれのときにもロードされ得る。さらに、この終結インピーダンス値220および反応タイマーはまた、使用者によって入力され得る。
【0037】
ステップ120では、電源20は、器具10を通じて組織に電気外科用エネルギーを供給する。組織へのエネルギーの付与の間に、インピーダンスは、センサー回路22によって連続的にモニターされる。特に、このセンサー回路22で、および/またはマイクロプロセッサ25で、電圧および電流信号がモニターされ、そして対応するインピーダンス値が算出される。電力およびその他のエネルギー性質もまた、収集された電圧および電流信号に基づいて算出され得る。マイクロプロセッサ25は、収集された電圧、電流、およびインピーダンスをメモリー26中に格納する。
【0038】
ステップ130では、オフセットインピーダンス値が得られる。このオフセットインピーダンス値は、処置の終わりを示す閾値インピーダンス値を算出するために用いられる。この閾値インピーダンスは、終結インピーダンス値220とオフセットインピーダンス値との合計である。このオフセットインピーダンスは、実施されている電気外科的手順に依存して複数の方法で得られ得る。例えば、このオフセットインピーダンス値は、所望の組織効果を促進するために必要な組織を通過される最大電流の時間で測定された組織インピーダンスであり得る。単に絶対値、すなわち、終結インピーダンス値よりはむしろ、オフセットインピーダンス値によって参照され、そして部分的に規定される閾値インピーダンス値を用いることは、異なる組織型、顎充填物および変動する外科用デバイスを説明する。
【0039】
最小の測定されたインピーダンス、すなわち、最小インピーダンス値210はまた、上記オフセットインピーダンス値として用いられ得る。これは、組織が通常の乾燥プロセスで反応するとき特に有用である。図4に示されるように、インピーダンスは、最小インピーダンス値210に到達するまで初期値から低下する。所定の時間間隔の後、このインピーダンスは、組織が反応するときの乾燥の開始で再び上昇する。この反応が生じるために必要な時間長さ、および/または最小のインピーダンス値210は、組織の型、顎充填物または用いられている特定のデバイスを識別することによって種々の処置パラメーターを支援して規定し得る。なぜなら、この最小インピーダンス値210は、乾燥の開始ステージと揃っているからである。結果として、オフセットインピーダンス値は、インピーダンス勾配が正になるとき、すなわち、経時的なインピーダンス変化(dzdt)がゼロより大きいか、またはdzdtがほぼゼロであるときの時間の点で捕捉され得る。さらに、このオフセットインピーダンス値は、種々の異なる方法から、そして種々の異なるパラメーター:例えば、開始組織インピーダンス、最小電圧におけるインピーダンス、インピーダンスの正また負の勾配変化いずれかにおけるインピーダンス、および/またはプログラミング内もしくは末端使用者によって特定される定数値などを利用して算出され得る。開始インピーダンスは、質問のパルスを経由する電気外科的手順の付与の開始で捕捉され得る。
【0040】
ステップ140では、反応期間のタイミングは、この反応期間が反応タイマーを超えないことを確実にするために開始される。エネルギー付与は、閾値インピーダンス値が反応タイマーの満了の前に到達されるまで継続する。上記で論議されたように、エネルギー付与は、異なる型の組織および手順について変動し、それ故、閾値インピーダンスに類似の反応タイマーがまた、特定の作動要求に好都合であるように仕立てられることが望ましい。この目的のために、時間オフセット期間が利用される。特に、この時間オフセット期間は、反応タイマーに付加され、エネルギー付与の持続時間を延長する。複数の時間オフセット期間値がハードでコードされ(例えば、探索テーブル)、手順の間に適切な値がロードされる。使用者はまた、所望の時間オフセット期間を選択し得る。
【0041】
この時間オフセット期間およびオフセットインピーダンスはまた、測定されたインピーダンスが標的軌跡から逸脱するときに得られ得る。エネルギーサイクルの任意のサブセグメントにおける所定の標的軌道、または全体のサイクルを通じて偏差が追跡される。偏差が、使用者によって予め規定されるか、またはハードでコードされる許可された偏差に対して所定の閾値範囲の外側にあるとき、オフセットインピーダンスおよび時間オフセット期間が、上記で説明された様式で用いられる。
【0042】
ステッブ150では、インピーダンスフィードバックアルゴリズムは、初期測定インピーダンス、軌道の勾配として表される変化の所望の速度などのような種々の値に基づいて標的インピーダンス軌道を算出する。特に、このアルゴリズムは、経時的なインピーダンスの予め規定された所望の変化(すなわち、勾配)の速度(dZ/dt)に基づき、各時間ステップにおける標的インピーダンス値を算出する。変化の所望の速度は、変数として格納され得、そしてステップ100の間にロードされるか、または選択された器具によって決定される組織の型に基づいて手動または自動的に選択され得る。
【0043】
この標的インピーダンスは、所定の点(例えば、組織反応が実在し、そして安定であると考えられるときの点に対応する初期インピーダンス値および時間値)から開始する標的軌道の形態をとる。この軌道は、非直線状および/または準直線形態をとり得ることが想定される。この標的軌道は、図4に示されるように、実施されている電気外科的手順に依存して正または負の勾配を有し得る。凝固および/または組織シールの間に、組織インピーダンスを、低インピーダンス値から高インピーダンス値に駆動することが所望される。このような状況では、上記標的軌道は、直線状または準直線形状を有する。
【0044】
ステップ160では、インピーダンスフィードバックアルゴリズムは、測定されたインピーダンスを、標的インピーダンス軌道に一致する。このインピーダンスフィードバックアルゴリズムは、組織インピーダンスを標的インピーダンスに一致するように調節することを試みる。このアルゴリズムが、RFエネルギーを向けることを継続し、組織インピーダンスを特定された軌道に一致するように駆動する間に、このアルゴリズムは、適切な矯正をなすためにインピーダンスをモニターする。
【0045】
ステップ170では、このアルゴリズムは、組織処置が終了し、そしてこのシステムかRFエネルギーを止めるべきであるか否かを決定する。これは、実際の測定されたインピーダンスをモニターすることによって決定され、この実際に測定されたインピーダンスが、所定の閾値インピーダンス以上であるか否かを決定する。ステップ180では、このシステムは、時間の長さが、反応タイマー+時間オフセット期間を超える閾値インピーダンスに到達するか否かをモニターする。インピーダンスが閾値インピーダンス以上であるか、そして/または反応タイマーと時間オフセット期間の合計が満了した場合、上記アルゴリズムは、処置の信号終了にプログラムされ、そして電源20は遮断されるか、または初期状態に戻される。上記アルゴリズムはまた、測定されたインピーダンスが、所定の時間の間、閾値インピーダンスより大きいか否かを決定し得る。この決定は、組織が適正または完全にシールされていないとき、電気外科用エネルギーを早期に終結する可能性を最小にする。
【0046】
例えば、組織温度、電圧、電力および電流のような、その他の組織および/またはエネルギー性質がまた、処置の終結を決定するために採用され得る。特に、アルゴリズムは、組織性質を分析し、そして次に、組織応答または軌道中の特定の点で対応するインピーダンス値およびオフセット時間を獲得し、そしてこれらの値または時間が、上記で論議された様式で、絶対もしくは参照の遮断インピーダンスおよび/または時間として格納され得、そして/または用いられ得る。
【0047】
本開示のいくつかの実施形態が図面中に示され、そして/または本明細書中で論議されているが、本開示がそれらに限定されることは意図されず、この開示は、当該技術が許容し、しかも明細書が同様に読まれるような範囲の広さであることが意図されるからである。従って、上記の説明は、制限するものと解釈されるべきではなく、特定の実施形態の単なる例示である。当業者は、本明細書に添付した請求項の思想および範囲内のその他の改変を想定する。
【0048】
(要約)
電気外科的手順を実施するためのシステムおよび方法が開示される。このシステムは、組織に所定の出力レベルでエネルギーを提供するように適合された電気外科用電源を含む。この電気外科用電源は、少なくとも1つの勾配を有する所望のインピーダンス軌道を生成するように適合されたマイクロプロセッサを含む。この標的インピーダンス軌道は、1つ以上の標的インピーダンス値を含む。このマイクロプロセッサはまた、この標的インピーダンス軌道に沿った組織のインピーダンスを、対応する標的インピーダンス値に組織インピーダンスを実質的に一致するように出力レベルを調節することによって駆動するように適合されている。このマイクロプロセッサは、組織インピーダンスを閾値インピーダンス値と比較し、そしてこの組織インピーダンスが上記閾値インピーダンス以上であるとき上記電気外科用電源の出力を調節するようにさらに適合されている。このシステムはまた、電気外科用エネルギーを組織に付与するように適合された少なくとも1つの能動電極を含む電気外科用器具を含む。
【産業上の利用可能性】
【0049】
電気外科用システム、および電気外科的手順を実施するための方法が提供される。
【符号の説明】
【0050】
10 電気外科用器具
12 供給ライン
20 電源
22 センサー回路
24 能動電極
25 マイクロプロセッサ
26 メモリー
27 高電圧DC電源
28 RF出力相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−196458(P2012−196458A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−93203(P2012−93203)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【分割の表示】特願2007−12038(P2007−12038)の分割
【原出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(507364377)コヴィディエン・アクチェンゲゼルシャフト (62)
【Fターム(参考)】