インピーダンス整合装置及びそれを備えたプラズマ発生装置
【課題】可変コンデンサの調整処理を高速に行うことができるインピーダンス整合装置及びそれを備えたプラズマ発生装置を提供すること。
【解決手段】高周波電源Aと負荷Bとの間に接続された複数の可変コンデンサC1,C2と、負荷B側の反射係数の実部に応じた値と虚部に応じた値とを検出する検出部12と、この検出部12で検出した反射係数の実部に応じたZ値と虚部に応じたφ値とに基づいて、複数の可変コンデンサC1,C2の調整速度を多段階に変更する制御部13とを備える。そして、制御部13は、Z値及びφ値のいずれか一方のみが所定範囲に至ったときの当該所定範囲に至ったZ値及びφ値に対応する可変コンデンサC1,C2の調整速度を、Z値及びφ値の大きさが共に所定範囲に至ったときの調整速度よりも遅くする。
【解決手段】高周波電源Aと負荷Bとの間に接続された複数の可変コンデンサC1,C2と、負荷B側の反射係数の実部に応じた値と虚部に応じた値とを検出する検出部12と、この検出部12で検出した反射係数の実部に応じたZ値と虚部に応じたφ値とに基づいて、複数の可変コンデンサC1,C2の調整速度を多段階に変更する制御部13とを備える。そして、制御部13は、Z値及びφ値のいずれか一方のみが所定範囲に至ったときの当該所定範囲に至ったZ値及びφ値に対応する可変コンデンサC1,C2の調整速度を、Z値及びφ値の大きさが共に所定範囲に至ったときの調整速度よりも遅くする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インピーダンス整合装置及びそれを備えたプラズマ発生装置に関する。特に、高周波電源と負荷との間のインピーダンスを整合させるインピーダンス整合装置及びそれを備えたプラズマ発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体デバイスやFPD(Flat Panel Display)の製造プロセスでは、プラズマを利用してエッチング、堆積、酸化、スパッタリング等の処理を行うプラズマ発生装置が多く使われている。
【0003】
一般にプラズマ発生装置は、高周波電源から高周波電力に入力してプラズマ放電を発生させるプラズマ発生部を備えている。プラズマ発生部では、処理容器または反応室内に一対の電極を平行に配置して電極間に処理ガスを流し込み、高周波電源からの高周波電力を片側の電極に供給する。これにより、両電極間に高周波電界が発生し、この高周波電界により電子を加速させ、電子と処理ガスとの衝突電離によってプラズマを発生させるようにしている。
【0004】
かかるプラズマ発生装置は、高周波電源からプラズマ発生部に供給される高周波電力を最大にするため、高周波電源の出力インピーダンスとプラズマ発生部側の入力インピーダンスとを整合させるインピーダンス整合装置が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−206346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のインピーダンス整合装置では、高周波電源とプラズマ発生部との間に接続された複数の可変コンデンサと、プラズマ生成部側の反射係数に応じた値を検出する検出部とを備えている。そして、検出部により検出された反射係数に応じた値に基づきこれらの可変インピーダンスを制御してチャンバーに最大電力を供給している。
【0007】
しかし、従来のインピーダンス整合装置では、検出部により検出された反射係数に応じた値に基づき、以下のように各可変インピーダンスの調整しているため、これらの可変インピーダンスの調整の相乗効果で、制御目標を超えてしまい、静定時間が異常に長くなることがあった。
【0008】
ここで、従来のインピーダンス整合装置によるインピーダンスの整合制御について図13を参照して具体的に説明する。なお、図13におけるインピーダンス整合装置100では可変インピーダンスとして第1の可変コンデンサC101と第2の可変コンデンサC102を用いている。
【0009】
従来のインピーダンス整合装置100では、検出部により検出された反射係数ρ(=Z+jφ)のZ値の大きさに基づいて第1の可変コンデンサC101の調整を行い、反射係数ρのφ値の大きさに基づいて第2の可変コンデンサC102の調整を行っている。しかし、第1の可変コンデンサC101の調整制御は虚部φの変動を考慮したものではなく、第2可変コンデンサC102の調整制御は実部Zの変動を考慮したものではなかった。そのため、ほとんど場合、反射係数ρの実部Zと虚部φのうちいずれか一方が先に整合位置に到達していた。図14に、反射係数ρの虚部φが整合位置に先に到達した様子を示す。反射係数ρの虚部φが整合位置に達すると、第2の可変コンデンサC102の調整制御が停止する。
【0010】
しかし、このとき、反射係数ρの実部Zは整合位置に達していないため、図15に示すように、検出部により検出された反射係数ρのZ値の大きさに応じて第1の可変コンデンサC101の静電容量値の調整が行われる。しかし、この調整制御によって、図15に示すように、第1の可変コンデンサC101の調整制御に伴い、反射係数ρのφ値が変動してしまう。従って、反射係数ρの実部Zが整合位置に到達したときには、反射係数ρの虚部φが整合位置から外れてしまう。
【0011】
そのため、第2の可変コンデンサC102の調整制御が行われて、反射係数ρの虚部φを整合位置に到達させる。しかし、図16に示すように、第2の可変コンデンサC102の静電容量値の変動に伴い、反射係数ρの実部Zが変動してしまう。そのため、図17に示すように、第1の可変コンデンサC101の調整制御が行われ、かかる制御が繰り返し行われて、反射係数ρの実部Zと虚部φとが整合位置に到達して、第1及び第2の可変コンデンサC101,C102の調整制御が終了することになる。
【0012】
このように、従来のインピーダンス整合装置では、反射係数ρの実部Zの整合位置への到達と虚部φの整合位置への到達とを繰り返して、最終的に第1及び第2の可変コンデンサC101,C102の調整制御が完了する。そのため、第1及び第2の可変コンデンサC101,C102の調整との相乗効果により、静定時間が異常に長くなっていた。
【0013】
本発明は、上述したような課題に鑑みてなされたものであり、可変コンデンサの調整処理を高速に行うことができるインピーダンス整合装置及びそれを備えたプラズマ発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明においては上記課題を解決するために以下の手段を講じた。
【0015】
(1)高周波電源と負荷との間に接続された第1及び第2の可変コンデンサと、前記負荷側の反射係数の実部に応じた値と虚部に応じた値とを検出する検出部と、前記検出部で検出した反射係数の実部の大きさに基づいて前記第1の可変コンデンサを調整し、前記検出部で検出した反射係数の虚部の大きさに基づいて前記第2の可変コンデンサを調整する制御部と、を備え、前記制御部は、前記実部及び虚部の大きさのいずれか一方のみが所定範囲に至ったときの当該所定範囲に至った実部又は虚部に対応する可変コンデンサの調整速度を、前記実部及び虚部の大きさが共に所定範囲に至ったときの調整速度よりも遅くすることを特徴とするインピーダンス整合装置とした。
【0016】
(2)上記(1)のインピーダンス整合装置において、前記制御部は、前記実部の大きさが前記所定範囲に至る前までは、前記実部の大きさに比例した調整速度で前記第1の可変コンデンサを調整し、前記虚部の大きさが前記所定範囲に至る前までは、前記虚部の大きさに比例した調整速度で前記第2の可変コンデンサを調整したことを特徴とする。
【0017】
(3)上記(1)又は(2)のインピーダンス整合装置において、前記制御部は、前記実部の大きさが前記所定範囲よりも小さいとき、前記実部の大きさが前記所定範囲での調整速度よりもさらに遅い調整速度で前記第1の可変コンデンサを調整し、前記虚部の大きさが前記所定範囲よりも小さいとき、前記虚部の大きさが前記所定範囲での調整速度よりもさらに遅い調整速度で前記第2の可変コンデンサを調整したことを特徴とする。
【0018】
(4)高周波電力を出力する高周波電源と、前記高周波電力に入力してプラズマ放電を発生させるプラズマ発生部と前記高周波電源と前記プラズマ発生部との間のインピーダンスを整合させるインピーダンス整合装置とを備え、前記インピーダンス整合装置は、高周波電源と負荷との間に接続された第1及び第2可変コンデンサと、前記負荷側の反射係数の実部に応じた値と虚部に応じた値とを検出する検出部と、前記検出部で検出した反射係数の実部の大きさに基づいて前記第1の可変コンデンサを調整し、前記検出部で検出した反射係数の虚部の大きさに基づいて前記第2の可変コンデンサを調整する制御部と、を備え、前記制御部は、前記実部及び虚部の大きさのいずれか一方のみが所定範囲に至ったときの当該所定範囲に至った実部又は虚部に対応する可変コンデンサの調整速度を、前記実部及び虚部の大きさが共に所定範囲に至ったときの調整速度よりも遅くすることを特徴とするプラズマ発生装置とした。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、検出部で検出した反射係数の実部及び虚部の大きさのいずれか一方のみが所定範囲に至ったときの当該所定範囲に至った実部又は虚部に対応する可変コンデンサの調整速度を、検出部で検出した反射係数の実部及び虚部の大きさが共に所定範囲に至ったときの調整速度よりも遅くするので、第1及び第2の可変コンデンサの調整処理を高速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るインピーダンス整合装置の概略構成図である。
【図2】図1に示すインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【図3】図1に示すインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【図4】図1に示すインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【図5】図1に示すインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【図6】図1に示すインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【図7】図1に示す制御部の構成を示す図である。
【図8】図1に示す検出部の構成を示す図である。
【図9】図1に示すインピーダンス整合装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】図1に示すインピーダンス整合装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】他のインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【図12】他のインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【図13】従来のインピーダンス整合装置の概略構成図である。
【図14】従来のインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【図15】従来のインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【図16】従来のインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【図17】従来のインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
[1.インピーダンス整合装置の概要]
図1に示すように、本実施形態に係るインピーダンス整合装置10は、高周波電源Aと負荷(本実施形態ではプラズマ発生装置)Bとの間に設置されており、高周波電源Aの出力インピーダンスZoutと負荷B側の入力インピーダンスZinとのインピーダンス整合を行うものである。なお、入力インピーダンスZinとは、図1を使って説明すると、インピーダンス整合回路20の入力端10aより負荷B側の回路全体のインピーダンスのことである。
【0023】
高周波電源Aは、13.56MHzに代表されるRF周波数帯の高周波信号を出力するが、用途に応じて、VHF周波数帯やマイクロ波周波数帯のものなどを使用することができる。
【0024】
負荷Bであるプラズマ発生装置は、処理容器または反応室内に一対の電極を平行に配置して電極間に処理ガスを流し込み、高周波電源Aからの高周波信号を片側の電極に供給する。これにより、両電極間に高周波電界が発生し、この高周波電界により電子を加速させ、電子と処理ガスとの衝突電離によってプラズマを発生させるようにしている。
【0025】
インピーダンス整合装置10は、高周波電源Aを接続する入力端10aと、負荷Bを接続する出力端10bを備えている。そして、このインピーダンス整合装置10は、入力端10aと出力端10bとの間に位置するインピーダンス整合部11と、負荷B側の反射係数ρの実部Zに応じた値(以下、「Z値」と呼ぶ。)と虚部φに応じた値(以下、「φ値」と呼ぶ。)とを検出する検出部12と、インピーダンス整合部11を制御する制御部13とを備えている。
【0026】
インピーダンス整合部11には、高周波電源Aと負荷Bとの間に接続された第1の可変コンデンサC1及び第2の可変コンデンサC2を有している。第1の可変コンデンサC1は、高周波電源Aと負荷Bとの間に直列に接続されており、特に反射係数ρにおける実部Zに影響を及ぼす。また、第2の可変コンデンサC2は、高周波電源Aと負荷Bとの間に並列(伝送線と接地電圧間)されており、特に反射係数ρにおける虚部φに影響を及ぼす。
【0027】
制御部13は、検出部12で検出したZ値とφ値とに基づいて、インピーダンス整合部11の各可変コンデンサC1,C2の静電容量値を調整する。ここで、制御部13による第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の静電容量値の調整制御について説明する。
【0028】
本実施形態に係るインピーダンス整合装置10では、検出部12により検出されたZ値とφ値に対して、それぞれの整合位置(Z0,φ0)となる値(以下、「整合値」と呼ぶ。)との間で、図2に示すように、第1〜第3調整速度領域w1〜w3を有している。第1調整速度領域w1は、Z値>+Z2、又はZ値<−Z2であり、かつφ値>+φ2又はφ値<−φ2である。また、第2調整速度領域w2は、+Z1<Z値≦+Z2、又は−Z2≦Z値<−Z1であり、かつ+φ1<φ値≦+φ2、又は−φ2≦φ値<−φ1である。また、第3調整速度領域w3は、−Z1≦Z値<Z0、又はZ0<Z値≦+Z1であり、かつ−φ1≦φ値<φ0、又はφ0<φ値≦+φ1である。なお、図2及び後述する図4〜図6では、縦軸から左側がZ値のプロット領域であり、縦軸から右側がφ値のプロット領域である。また、横軸を挟んで上側が正極性側で下側が負極性側を示す。横軸方向は、Z値やφ値の変動を分かりやすくするためのものであり、特性上での意味を持つものではない。
【0029】
そして、制御部13は、検出部12で検出したZ値とφ値とがどの調整速度領域w1〜w3にあるかによって、図3に示すように、第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の静電容量値の調整速度を変更するようにしている。
【0030】
すなわち、制御部13は、検出部12で検出したZ値が第1調整速度領域w1にあるとき、第1の可変コンデンサC1を第1調整速度v1でその静電容量値を変更する。また、制御部13は、検出部12で検出したφ値が第1調整速度領域w1にあるとき、第2の可変コンデンサC2をφ値の大きさに応じた第1調整速度v1’でその静電容量値を変更する。
【0031】
検出部12で検出したZ値及びφ値が共に第2調整速度領域w2にあるとき、制御部13は、第1調整速度v1より遅く、Z値の大きさに応じた第2調整速度v2(<v1)で第1の可変コンデンサC1の静電容量値を変更し、第1調整速度v1’より遅くφ値の大きさに応じた第2調整速度v2’(<v1’)で第2の可変コンデンサC2の静電容量値を変更する。一方、検出部12で検出したZ値が第2調整速度領域w2にあるが、検出部12で検出したφ値が第2調整速度領域w2にないとき、制御部13は、第1調整速度v1より遅い第3調整速度v3(≦v1)で第1の可変コンデンサC1の静電容量値を変更する。また、検出部12で検出したφ値が第2調整速度領域w2にあるが、検出部12で検出したZ値が第2調整速度領域w2にないとき、制御部13は、第1調整速度v1’より遅い第3調整速度v3’(≦v1’)で第2の可変コンデンサC2の静電容量値を変更する。
【0032】
さらに、制御部13は、検出部12で検出したZ値が第3調整速度領域w3にあるとき、最小の第4調整速度v4(<v2,v3)で第1の可変コンデンサC1の静電容量値を変更する。同様に、制御部13は、検出部12で検出したφ値が第3調整速度領域w3にあるとき、最低速度の第4調整速度v4’(<v2’,v3’)で第2の可変コンデンサC2の静電容量値を変更する。
【0033】
このように、制御部13により第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の調整制御を行うことにより、その調整制御を迅速に行うことができる。以下、この点につき、図4〜図6を参照して具体的に説明する。
【0034】
図4に示すように、検出部12で検出したZ値とφ値とが第1調整速度領域w1にあるとき、制御部13は、第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の静電容量値をそれぞれZ値及びφ値の大きさに応じた第1調整速度v1,v1’で整合値に近づくように制御する。その後、検出部12で検出したZ値及びφ値のいずれか一方が第2調整速度領域w2になる。図4に示す例では、検出部12で検出したφ値が先に第2調整速度領域w2に入り、制御部13は、第2の可変コンデンサC2の静電容量値を一定速度である第2調整速度v2’で整合値に近づくように制御する。このとき、制御部13は、第1の可変コンデンサC1の静電容量値を引き続きZ値の大きさに応じた第1調整速度v1で整合値に近づくように制御する。このように、第2の可変コンデンサC2の静電容量値の調整速度が遅くなるため、φ値が整合値へ近づく時間を遅らせることができる。
【0035】
その後、図5に示すように、検出部12で検出したφ値が第3調整速度領域w3に入り、制御部13は、第2の可変コンデンサC2の静電容量値を一定速度である第4調整速度v4’で整合値に近づくように制御する。一方、検出部12で検出したZ値は第1調整速度領域w1にあるため、第1の可変コンデンサC1の静電容量値は、制御部13によりZ値の大きさに応じた第1調整速度v1で制御される。このとき、第2の可変コンデンサC2よりも第1の可変コンデンサC1の制御速度が速いために、制御部13による第1の可変コンデンサC1の調整に伴い、図5に示すように、φ値が整合値から遠ざかってしまう。このように、第2の可変コンデンサC2の静電容量値の調整速度が遅い状態を維持できるため、φ値が整合値へ近づく時間を遅らせることができる。
【0036】
次に、図6に示すように、検出部12で検出したZ値はφ値と同様に第2調整速度領域w2に入る。そのため。制御部13は、第1の可変コンデンサC1の静電容量値を、第2調整速度v2ではなく、調整速度v2よりも速度が速いZ値の大きさに応じた第3調整速度v3で調整する。一方、第2の可変コンデンサC2も同様に、第2調整速度v2’ではなく、調整速度v2’よりも速度が速いZ値の大きさに応じた第3調整速度v3’で調整する。従って、Z値とφ値とが同時に整合値に近づくことになる。その後、検出部12で検出したZ値及びφ値が第3調整速度領域w3に入ると、第1の可変コンデンサC1は調整速度v4で調整され、第2の可変コンデンサC2は調整速度v4’で調整され、Z値とφ値とが同時に整合値に近づくことになる。
【0037】
このように、本実施形態に係るインピーダンス整合装置10では、反射係数ρの実部Zと虚部φとが整合値に近づくほどその調整速度が遅くなるため、図6に示すように、反射係数ρの実部Zと虚部φとを同時期に整合値に到達させることができる。
【0038】
従って、静定時間が異常に長くなることを抑制することができ、第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の調整処理を迅速に行うことができる。
【0039】
また、静定時間を短縮できるため、プラズマ発生装置でのプラズマ着火条件を早期に確立することができる。しかも、可変コンデンサにおいて機械的に無駄の無い最適の動作が実現できるため、動作機構部品の磨耗寿命を延ばすことができる。
【0040】
[インピーダンス整合装置の具体的構成]
上述したインピーダンス整合装置の具体的構成の一例について、図7及び図8を参照して説明する。
【0041】
図7に示すように、第1及び第2の可変コンデンサC1,C2は、それぞれ、静電容量調整用の調節軸33,34を備えており、調節軸33,34を回転させることによって各可変コンデンサC1,C2の静電容量値を調整できるようになっている。
【0042】
制御部13は、第1の可変コンデンサC1を駆動するための第1パルスモータ31と、第2の可変コンデンサC2を駆動するための第2パルスモータ32とを備えている。第1パルスモータ31は、第1の可変コンデンサC1の調整軸33に接続されており、第2パルスモータ32は第2の可変コンデンサC2の調整軸34に接続されている。各パルスモータ31,32を駆動するドライバ回路31a,32aはコントローラ14に接続されており、コントローラ14からドライバ回路31a,32aに制御信号を送って各パルスモータ31,32を作動させるようになっている。そして、各パルスモータ31,32を作動させて調節軸33,34の回転位置を所望位置に位置させることで、各可変コンデンサC1,C2の静電容量値を調整可能としている。また、各パルスモータ31,32にはそれぞれの回転位置を検出するエンコーダ31b,32bが備えられており、各エンコーダ31b,32bによって、各調節軸33,34の現在位置を検出できるようになっている。なお、各調節軸33,34に直接エンコーダを設置して各調節軸33,34の現在位置を直接検出するようにしても良い。
【0043】
コントローラ14は、CPU40、ROM41、RAM42、A/D変換器43〜46、D/A変換器47,48を有して構成される。ROM41には制御プログラムが記憶されており、CPU40がROM41に記憶した制御プログラムを読み出して実行することによりコントローラ14としての各種機能を実行する。CPU40は、A/D変換器43〜46を介して、検出部12やエンコーダ31b,32bから各種情報を取得し、D/A変換器47,48を介して第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の静電容量値を制御する。
【0044】
次に、検出部12の構成について説明する。図8に示すように、検出部12は、電流センサ50、電圧センサ51、整流器52〜55、減算器56〜58、加算器59を有している。
【0045】
電流センサ50によって検出された電流Iは、整流器52によって整流されて減算器56に入力され、電圧センサ51によって検出された電圧Vは、整流器53によって整流されて減算器56に入力される。減算器56では、整流器53の出力|V|から整流器52の出力|I|を減算する。減算器56の出力は、反射係数ρの実部Zに比例する値であり、コントローラ14は減算器56からの出力をZ値の情報として入力する。
【0046】
また、電流センサ50によって検出された電流Iと電圧センサ51によって検出された電圧Vとは、加算器59で加算されると共に、減算器57により減算される。加算器59からの出力(V+I)は整流器54で整流され、減算器57からの出力(V−I)は整流器55で整流される。減算器58は、整流器54の出力|V+I|から整流器55の出力|V−I|を減算する。減算器58の出力は、反射係数ρの虚部φに比例する値であり、コントローラ14は減算器58からの出力をφ値の情報として入力する。
【0047】
以下、減算器56の出力が反射係数ρの実部Zに比例するZ値となり、減算器58の出力が反射係数ρの虚部φに比例するφ値となることについて説明する。
【0048】
負荷Bのインピーダンスをzとし、高周波電源Aと負荷Bとの間の伝送路のインピーダンスをrとすると、図8に示す電圧v及び電流iは次のように表現できる。
【数1】
【0049】
さらに以下のように規定される反射係数ρを用いると、電圧v及び電流iは次のように表現できる。
【数2】
【0050】
ここで、反射係数ρは定義から複素数、ρ=Z+jφと表現できる。従って、
【数3】
とすると、最終的に電圧v及び電流iは次のように表現できる。
【数4】
【0051】
電流センサ50は、電流iをビートダウンすることにより電流iの周波数ωcを低周波化して出力し、電流センサ50は、電圧vをビートダウンすることにより電圧vの周波数ωcを低周波化して出力する。このとき、電流センサ50は、一階時間微分をしているため、各々のビートダウン出力を大文字のVとIで表すと次のように表現できる。
【数5】
【0052】
ここでrおよびωは定数であり、Eは共通である。従って、センサ係数を調整して、VとIは次のように表現できる。
【数6】
【0053】
上記式により、VとIの大きさは、以下のように表現できる。
【数7】
【0054】
従って、減算器56の出力は、以下のように表現できる。
【数8】
【0055】
ここで、
【数9】
から
【数10】
となる。
【0056】
負荷Bが整合位置近傍のときZ2+φ2は1に比べて十分小さいため、kを係数とすると、
【数11】
となり、Zに比例した値を得ることができる。
【0057】
一方、加算器59の出力(V+I)と、減算器57の出力(V−I)は、次のように表現できる。
【数12】
【0058】
従って、整流器54の出力|V+I|と、整流器55の出力|V−I|は、次のように表現できる。
【数13】
【0059】
従って、減算器58の出力は、以下のように表現できる。
【数14】
【0060】
ここで、負荷Bが整合位置近傍のときZ2+φ2は1に比べて十分小さいため、k’を係数とすると、
【数15】
となり、φに比例した値を得ることができる。
【0061】
[3.インピーダンス整合装置の具体的動作]
以上のように構成されたインピーダンス整合装置10の具体的動作について図9及び図10を参照して説明する。
【0062】
制御部13は、インピーダンス整合処理を開始すると、図9に示すように、検出部12から出力されるZ値が第2調整速度領域w2にあるか否かを判定する(ステップS1)。この処理において、Z値が第2調整速度領域w2にあると判定すると(ステップS1:YES)、制御部13は、φ値が第2調整速度領域w2にあるか否かを判定する(ステップS2)。
【0063】
φ値が第2調整速度領域w2にないと判定すると(ステップS2:NO)、制御部13は、第1パルスモータ31の速度を低速に設定する(ステップS4)。これにより、第1の可変コンデンサC1は第2調整速度v2で調整される。一方、φ値が第2調整速度領域w2にあると判定すると(ステップS2:YES)、制御部13は、第1パルスモータ31の速度をZ値に応じた低速に設定する(ステップS3)。これにより、第1の可変コンデンサC1は第3調整速度v3で調整される。
【0064】
ステップS1において、Z値が第2調整速度領域w2にないと判定すると(ステップS1:NO)、制御部13は、Z値が第3調整速度領域w3にあるか否かを判定する(ステップS5)。この処理において、Z値が第3調整速度領域w3にあると判定すると(ステップS5:YES)、制御部13は、第1パルスモータ31の速度を最低速に設定する(ステップS4)。これにより、第1の可変コンデンサC1は第4調整速度v4で調整される。一方、ステップS3の処理において、Z値が第3調整速度領域w3にないと判定すると(ステップS5:NO)、制御部13は、第1パルスモータ31の速度をZ値に応じた高速に設定する(ステップS8)。これにより、第1の可変コンデンサC1は検出部12により検出したZ値に応じた第1調整速度v1で調整される。
【0065】
ステップS3,S4,S6,S7の処理が終了すると、制御部13は、検出部12から出力されるφ値が第2調整速度領域w2にあるか否かを判定する(ステップS8)。この処理において、φ値が第2調整速度領域w2にあると判定すると(ステップS8:YES)、制御部13は、Z値が第2調整速度領域w2にあるか否かを判定する(ステップS9)。
【0066】
Z値が第2調整速度領域w2にないと判定すると(ステップS9:NO)、制御部13は、第2パルスモータ32の速度を低速に設定する(ステップS11)。これにより、第2の可変コンデンサC2は第2調整速度v2’で調整される。一方、φ値が第2調整速度領域w2にあると判定すると(ステップS9:YES)、制御部13は、第2パルスモータ32の速度をφ値に応じた低速に設定する(ステップS10)。これにより、第2の可変コンデンサC2は第3調整速度v3’で調整される。
【0067】
一方、φ値が第2調整速度領域w2にないと判定すると(ステップS8:NO)、制御部13は、φ値が第3調整速度領域w3にあるか否かを判定する(ステップS12)。この処理において、φ値が第3調整速度領域w3にあると判定すると(ステップS12:YES)、制御部13は、第2パルスモータ32の速度を最低速に設定する(ステップS13)。これにより、第2の可変コンデンサC2は第4調整速度v4’で調整される。
【0068】
ステップS12の処理において、φ値が第3調整速度領域w3にないと判定すると(ステップS12:NO)、制御部13は、第2パルスモータ32の速度をφ値に応じた速度に設定する(ステップS14)。これにより、第2の可変コンデンサC2は検出部12により検出したφ値に応じた第1調整速度v1’で調整される。
【0069】
ステップS10,S11,S13,S14の処理が終了すると、制御部13は、検出部12から出力されるZ値及びφ値に基づき、モータ方向/停止制御処理を実行する(ステップS15)。このモータ方向/停止制御処理は、図10に示すステップS20〜S29の処理であり、後で説明する。この処理が終了すると、制御部13は、処理をステップS1に戻す。
【0070】
図10に示すように、モータ方向/停止制御処理を開始すると、制御部13は、検出部12から出力されるZ値が整合位置Z0であるか否かを判定する(ステップS20)。このZ0は所定の範囲を有するものであり、この範囲は、実質的にインピーダンス整合を行うことができる範囲である。この処理において、Z値が整合位置Z0であると判定すると(ステップS20:YES)、制御部13は、第1パルスモータ31を停止する(ステップS21)。これにより、第1の可変コンデンサC1の静電容量値の調整処理が停止する。
【0071】
一方、Z値が整合位置Z0ではないと判定すると(ステップS20:NO)、制御部13は、Z値がZ0を超えているか否かを判定する。すなわち、Z値が正極性かどうかを判定する(ステップS22)。この処理において、Z値が整合位置Z0を超えていると判定すると(ステップS22:YES)、制御部13は、第1パルスモータ31の回転方向を第1の可変コンデンサC1の静電容量値が減少する方向に設定する(ステップS23)。一方、Z値が整合位置Z0を超えておらず、負極性であると判定すると(ステップS22:NO)、制御部13は、第1パルスモータ31の回転方向を第1の可変コンデンサC1の静電容量値が増加する方向に設定する(ステップS24)。
【0072】
ステップS21,S23,S24の処理が終了すると、制御部13は、検出部12から出力されるφ値が整合位置φ0であるか否かを判定する(ステップS25)。この処理において、φ値が整合位置φ0であると判定すると(ステップS25:YES)、制御部13は、第2パルスモータ32を停止する(ステップS26)。これにより、第2の可変コンデンサC2の静電容量値の調整処理が停止する。
【0073】
一方、φ値が整合位置φ0ではないと判定すると(ステップS25:NO)、制御部13は、φ値が整合位置φ0以上であるか否かを判定する。すなわち、φ値が正極性かどうかを判定する(ステップS27)。このφ0は所定の範囲を有するものであり、この範囲は、実質的にインピーダンス整合を行うことができる範囲である。この処理において、φ値が整合位置φ0以上であると判定すると(ステップS27:YES)、制御部13は、第2パルスモータ32の回転方向を第2の可変コンデンサC2の静電容量値が減少する方向に設定する(ステップS28)。一方、φ値が整合位置φ0以上ではなく、負極性であると判定すると(ステップS27:NO)、制御部13は、第2パルスモータ32の回転方向を第2の可変コンデンサC2の静電容量値が増加する方向に設定する(ステップS29)。ステップS26,S28,S29の処理が終了すると、制御部13は、モータ方向/停止制御処理を終了する。
【0074】
このように、本実施形態に係るインピーダンス整合装置10では、検出部12で検出した反射係数ρのZ値とφ値とに基づいて、第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の調整速度を多段階に変更している。特に、反射係数ρの実部Zと虚部φとが整合値に近づくほどその調整速度が遅くなるように設定している。従って、最終的に反射係数ρの実部Zと虚部φとを同時期に整合値に到達させることができる。これにより、静定時間が異常に長くなることを抑制することができ、第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の調整処理を迅速に行うことができる。
【0075】
特に、本実施形態に係るインピーダンス整合装置10では、検出部12で検出したZ値及びφ値の大きさをそれぞれ大きい順に第1〜第3調整速度領域w1〜w3に分けている。そして、制御部13は、可変コンデンサC1,C2の静電容量値の調整速度を、調整速度領域w1ではそれぞれZ値及びφ値の大きさに応じた速度とし、第3調整速度領域w3では一定の速度としている。しかも、Z値及びφ値の大きさのいずれか一方のみが第2調整速度領域w2に至ったときの当該第2調整速度領域w2に至ったZ値又はφ値に対応する可変コンデンサの調整速度を、Z値及びφ値の大きさが共に所定範囲に至ったときの調整速度よりも遅くする。このようにすることにより、第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の調整処理をより迅速に行うことができる。
【0076】
[4.その他の実施形態]
上記実施形態では、制御部13は、検出部12で検出したZ値とφ値の大きさを大きい順に調整速度領域w1〜w3に分けたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、調整速度領域を2つ又は4以上設けるようにしてもよい。例えば、図11に示すように、調整速度領域w3を設けずに、調整速度領域w1,w2のみを設けるようにしてもよい。このようにすることで処理を複雑にすることなく、第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の高速調整が可能となる。また、調整速度領域w2のように、Z値及びφ値の大きさが共にその範囲に入ったときといずれか一方がその範囲に入ったときとで速度を変更する領域を複数設けるようにしてもよい。例えば、図12に示すように、第3調整速度領域w3を第2調整速度領域w2と同様の処理を行うようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、Z値とφ値とを同様の調整速度領域に分けることとしたが、本発明はこれに限られるものではなく、Z値とφ値とを異なる調整速度領域に分けるようにしてもよい。例えば、Z値を3つの調整速度領域に分け、φ値を4つの調整速度領域に分けるようにしてもよい。
【0078】
また、Z値とφ値の大きさと調整速度の情報とを関連づけたテーブルをROM41に記憶させておき、制御部13は、このテーブルに基づいて第1及び第2の可変コンデンサC1,C2を調整するようにしてもよい。そして、制御部13は、第1テーブルに基づき、第1の可変コンデンサC1の静電容量値の調整速度を変更し、第2テーブルに基づき、第2の可変コンデンサC2の容量値の調整速度を変更する。このようにすることで、調整速度の演算等が不要となり、制御部13での処理負荷を軽減することができる。
【0079】
本発明を、上述してきた実施形態を通して説明したが、本実施形態によれば、以下の効果が期待できる。
【0080】
(1)インピーダンス整合装置10は、高周波電源Aと負荷Bとの間に接続された第1及び第2の可変コンデンサC1,C2と、負荷B側の反射係数の実部Zに応じたZ値と虚部φに応じたφ値とを検出する検出部12と、検出部12で検出した反射係数ρの実部Zの大きさに基づいて第1の可変コンデンサC1を調整し、検出部12で検出した反射係数ρの虚部φの大きさに基づいて第2の可変コンデンサC2を調整する制御部13とを備える。そして、制御部13は、実部Z及び虚部φの大きさのいずれか一方のみが第2調整速度領域w2に至ったときの当該第2調整速度領域w2に至った実部Z又は虚部φに対応する可変コンデンサC1,C2の調整速度を、実部Z及び虚部φの大きさが共に第2調整速度領域w2に至ったときの調整速度よりも遅くしている。このようにすることで、実部Z及び虚部φの大きさのいずれか一方が早く整合値に近づくことを抑制することができ、その結果、第1及び第2の可変コンデンサの調整処理をより迅速に行うことができる。
【0081】
(2)制御部13は、実部Zの大きさが第2調整速度領域w2に至る前までは、実部Zの大きさに比例した調整速度で第1の可変コンデンサC1を調整し、虚部φの大きさが第2調整速度領域w2に至る前までは、虚部φの大きさに比例した調整速度で第2の可変コンデンサC2を調整する。実部Z及び虚部φが大きいほど第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の調整速度が速いため、第1及び第2の可変コンデンサの調整処理をより迅速に行うことができる。
【0082】
(3)制御部13は、実部Zの大きさが第2調整速度領域w2よりも小さい(第3調整速度領域w3)とき、実部Zの大きさが第2調整速度領域w2での調整速度v2,v3よりもさらに遅い調整速度v4で第1の可変コンデンサC1を調整し、虚部φの大きさが第2調整速度領域w2よりも小さい(第3調整速度領域w3)とき、虚部φの大きさが第2調整速度領域w2での調整速度v2,v3よりもさらに遅い調整速度v4で第2の可変コンデンサC2を調整する。このようにすることで、反射係数ρの実部Zと虚部φとをより同時期に整合値に到達させることができる。
【符号の説明】
【0083】
A 高周波電源
B 負荷(プラズマ発生装置)
10 インピーダンス整合装置
11 インピーダンス整合部
12 検出部
13 制御部
C1 第1の可変コンデンサ
C2 第2の可変コンデンサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、インピーダンス整合装置及びそれを備えたプラズマ発生装置に関する。特に、高周波電源と負荷との間のインピーダンスを整合させるインピーダンス整合装置及びそれを備えたプラズマ発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体デバイスやFPD(Flat Panel Display)の製造プロセスでは、プラズマを利用してエッチング、堆積、酸化、スパッタリング等の処理を行うプラズマ発生装置が多く使われている。
【0003】
一般にプラズマ発生装置は、高周波電源から高周波電力に入力してプラズマ放電を発生させるプラズマ発生部を備えている。プラズマ発生部では、処理容器または反応室内に一対の電極を平行に配置して電極間に処理ガスを流し込み、高周波電源からの高周波電力を片側の電極に供給する。これにより、両電極間に高周波電界が発生し、この高周波電界により電子を加速させ、電子と処理ガスとの衝突電離によってプラズマを発生させるようにしている。
【0004】
かかるプラズマ発生装置は、高周波電源からプラズマ発生部に供給される高周波電力を最大にするため、高周波電源の出力インピーダンスとプラズマ発生部側の入力インピーダンスとを整合させるインピーダンス整合装置が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−206346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のインピーダンス整合装置では、高周波電源とプラズマ発生部との間に接続された複数の可変コンデンサと、プラズマ生成部側の反射係数に応じた値を検出する検出部とを備えている。そして、検出部により検出された反射係数に応じた値に基づきこれらの可変インピーダンスを制御してチャンバーに最大電力を供給している。
【0007】
しかし、従来のインピーダンス整合装置では、検出部により検出された反射係数に応じた値に基づき、以下のように各可変インピーダンスの調整しているため、これらの可変インピーダンスの調整の相乗効果で、制御目標を超えてしまい、静定時間が異常に長くなることがあった。
【0008】
ここで、従来のインピーダンス整合装置によるインピーダンスの整合制御について図13を参照して具体的に説明する。なお、図13におけるインピーダンス整合装置100では可変インピーダンスとして第1の可変コンデンサC101と第2の可変コンデンサC102を用いている。
【0009】
従来のインピーダンス整合装置100では、検出部により検出された反射係数ρ(=Z+jφ)のZ値の大きさに基づいて第1の可変コンデンサC101の調整を行い、反射係数ρのφ値の大きさに基づいて第2の可変コンデンサC102の調整を行っている。しかし、第1の可変コンデンサC101の調整制御は虚部φの変動を考慮したものではなく、第2可変コンデンサC102の調整制御は実部Zの変動を考慮したものではなかった。そのため、ほとんど場合、反射係数ρの実部Zと虚部φのうちいずれか一方が先に整合位置に到達していた。図14に、反射係数ρの虚部φが整合位置に先に到達した様子を示す。反射係数ρの虚部φが整合位置に達すると、第2の可変コンデンサC102の調整制御が停止する。
【0010】
しかし、このとき、反射係数ρの実部Zは整合位置に達していないため、図15に示すように、検出部により検出された反射係数ρのZ値の大きさに応じて第1の可変コンデンサC101の静電容量値の調整が行われる。しかし、この調整制御によって、図15に示すように、第1の可変コンデンサC101の調整制御に伴い、反射係数ρのφ値が変動してしまう。従って、反射係数ρの実部Zが整合位置に到達したときには、反射係数ρの虚部φが整合位置から外れてしまう。
【0011】
そのため、第2の可変コンデンサC102の調整制御が行われて、反射係数ρの虚部φを整合位置に到達させる。しかし、図16に示すように、第2の可変コンデンサC102の静電容量値の変動に伴い、反射係数ρの実部Zが変動してしまう。そのため、図17に示すように、第1の可変コンデンサC101の調整制御が行われ、かかる制御が繰り返し行われて、反射係数ρの実部Zと虚部φとが整合位置に到達して、第1及び第2の可変コンデンサC101,C102の調整制御が終了することになる。
【0012】
このように、従来のインピーダンス整合装置では、反射係数ρの実部Zの整合位置への到達と虚部φの整合位置への到達とを繰り返して、最終的に第1及び第2の可変コンデンサC101,C102の調整制御が完了する。そのため、第1及び第2の可変コンデンサC101,C102の調整との相乗効果により、静定時間が異常に長くなっていた。
【0013】
本発明は、上述したような課題に鑑みてなされたものであり、可変コンデンサの調整処理を高速に行うことができるインピーダンス整合装置及びそれを備えたプラズマ発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明においては上記課題を解決するために以下の手段を講じた。
【0015】
(1)高周波電源と負荷との間に接続された第1及び第2の可変コンデンサと、前記負荷側の反射係数の実部に応じた値と虚部に応じた値とを検出する検出部と、前記検出部で検出した反射係数の実部の大きさに基づいて前記第1の可変コンデンサを調整し、前記検出部で検出した反射係数の虚部の大きさに基づいて前記第2の可変コンデンサを調整する制御部と、を備え、前記制御部は、前記実部及び虚部の大きさのいずれか一方のみが所定範囲に至ったときの当該所定範囲に至った実部又は虚部に対応する可変コンデンサの調整速度を、前記実部及び虚部の大きさが共に所定範囲に至ったときの調整速度よりも遅くすることを特徴とするインピーダンス整合装置とした。
【0016】
(2)上記(1)のインピーダンス整合装置において、前記制御部は、前記実部の大きさが前記所定範囲に至る前までは、前記実部の大きさに比例した調整速度で前記第1の可変コンデンサを調整し、前記虚部の大きさが前記所定範囲に至る前までは、前記虚部の大きさに比例した調整速度で前記第2の可変コンデンサを調整したことを特徴とする。
【0017】
(3)上記(1)又は(2)のインピーダンス整合装置において、前記制御部は、前記実部の大きさが前記所定範囲よりも小さいとき、前記実部の大きさが前記所定範囲での調整速度よりもさらに遅い調整速度で前記第1の可変コンデンサを調整し、前記虚部の大きさが前記所定範囲よりも小さいとき、前記虚部の大きさが前記所定範囲での調整速度よりもさらに遅い調整速度で前記第2の可変コンデンサを調整したことを特徴とする。
【0018】
(4)高周波電力を出力する高周波電源と、前記高周波電力に入力してプラズマ放電を発生させるプラズマ発生部と前記高周波電源と前記プラズマ発生部との間のインピーダンスを整合させるインピーダンス整合装置とを備え、前記インピーダンス整合装置は、高周波電源と負荷との間に接続された第1及び第2可変コンデンサと、前記負荷側の反射係数の実部に応じた値と虚部に応じた値とを検出する検出部と、前記検出部で検出した反射係数の実部の大きさに基づいて前記第1の可変コンデンサを調整し、前記検出部で検出した反射係数の虚部の大きさに基づいて前記第2の可変コンデンサを調整する制御部と、を備え、前記制御部は、前記実部及び虚部の大きさのいずれか一方のみが所定範囲に至ったときの当該所定範囲に至った実部又は虚部に対応する可変コンデンサの調整速度を、前記実部及び虚部の大きさが共に所定範囲に至ったときの調整速度よりも遅くすることを特徴とするプラズマ発生装置とした。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、検出部で検出した反射係数の実部及び虚部の大きさのいずれか一方のみが所定範囲に至ったときの当該所定範囲に至った実部又は虚部に対応する可変コンデンサの調整速度を、検出部で検出した反射係数の実部及び虚部の大きさが共に所定範囲に至ったときの調整速度よりも遅くするので、第1及び第2の可変コンデンサの調整処理を高速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るインピーダンス整合装置の概略構成図である。
【図2】図1に示すインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【図3】図1に示すインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【図4】図1に示すインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【図5】図1に示すインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【図6】図1に示すインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【図7】図1に示す制御部の構成を示す図である。
【図8】図1に示す検出部の構成を示す図である。
【図9】図1に示すインピーダンス整合装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】図1に示すインピーダンス整合装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】他のインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【図12】他のインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【図13】従来のインピーダンス整合装置の概略構成図である。
【図14】従来のインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【図15】従来のインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【図16】従来のインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【図17】従来のインピーダンス整合装置の調整動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
[1.インピーダンス整合装置の概要]
図1に示すように、本実施形態に係るインピーダンス整合装置10は、高周波電源Aと負荷(本実施形態ではプラズマ発生装置)Bとの間に設置されており、高周波電源Aの出力インピーダンスZoutと負荷B側の入力インピーダンスZinとのインピーダンス整合を行うものである。なお、入力インピーダンスZinとは、図1を使って説明すると、インピーダンス整合回路20の入力端10aより負荷B側の回路全体のインピーダンスのことである。
【0023】
高周波電源Aは、13.56MHzに代表されるRF周波数帯の高周波信号を出力するが、用途に応じて、VHF周波数帯やマイクロ波周波数帯のものなどを使用することができる。
【0024】
負荷Bであるプラズマ発生装置は、処理容器または反応室内に一対の電極を平行に配置して電極間に処理ガスを流し込み、高周波電源Aからの高周波信号を片側の電極に供給する。これにより、両電極間に高周波電界が発生し、この高周波電界により電子を加速させ、電子と処理ガスとの衝突電離によってプラズマを発生させるようにしている。
【0025】
インピーダンス整合装置10は、高周波電源Aを接続する入力端10aと、負荷Bを接続する出力端10bを備えている。そして、このインピーダンス整合装置10は、入力端10aと出力端10bとの間に位置するインピーダンス整合部11と、負荷B側の反射係数ρの実部Zに応じた値(以下、「Z値」と呼ぶ。)と虚部φに応じた値(以下、「φ値」と呼ぶ。)とを検出する検出部12と、インピーダンス整合部11を制御する制御部13とを備えている。
【0026】
インピーダンス整合部11には、高周波電源Aと負荷Bとの間に接続された第1の可変コンデンサC1及び第2の可変コンデンサC2を有している。第1の可変コンデンサC1は、高周波電源Aと負荷Bとの間に直列に接続されており、特に反射係数ρにおける実部Zに影響を及ぼす。また、第2の可変コンデンサC2は、高周波電源Aと負荷Bとの間に並列(伝送線と接地電圧間)されており、特に反射係数ρにおける虚部φに影響を及ぼす。
【0027】
制御部13は、検出部12で検出したZ値とφ値とに基づいて、インピーダンス整合部11の各可変コンデンサC1,C2の静電容量値を調整する。ここで、制御部13による第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の静電容量値の調整制御について説明する。
【0028】
本実施形態に係るインピーダンス整合装置10では、検出部12により検出されたZ値とφ値に対して、それぞれの整合位置(Z0,φ0)となる値(以下、「整合値」と呼ぶ。)との間で、図2に示すように、第1〜第3調整速度領域w1〜w3を有している。第1調整速度領域w1は、Z値>+Z2、又はZ値<−Z2であり、かつφ値>+φ2又はφ値<−φ2である。また、第2調整速度領域w2は、+Z1<Z値≦+Z2、又は−Z2≦Z値<−Z1であり、かつ+φ1<φ値≦+φ2、又は−φ2≦φ値<−φ1である。また、第3調整速度領域w3は、−Z1≦Z値<Z0、又はZ0<Z値≦+Z1であり、かつ−φ1≦φ値<φ0、又はφ0<φ値≦+φ1である。なお、図2及び後述する図4〜図6では、縦軸から左側がZ値のプロット領域であり、縦軸から右側がφ値のプロット領域である。また、横軸を挟んで上側が正極性側で下側が負極性側を示す。横軸方向は、Z値やφ値の変動を分かりやすくするためのものであり、特性上での意味を持つものではない。
【0029】
そして、制御部13は、検出部12で検出したZ値とφ値とがどの調整速度領域w1〜w3にあるかによって、図3に示すように、第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の静電容量値の調整速度を変更するようにしている。
【0030】
すなわち、制御部13は、検出部12で検出したZ値が第1調整速度領域w1にあるとき、第1の可変コンデンサC1を第1調整速度v1でその静電容量値を変更する。また、制御部13は、検出部12で検出したφ値が第1調整速度領域w1にあるとき、第2の可変コンデンサC2をφ値の大きさに応じた第1調整速度v1’でその静電容量値を変更する。
【0031】
検出部12で検出したZ値及びφ値が共に第2調整速度領域w2にあるとき、制御部13は、第1調整速度v1より遅く、Z値の大きさに応じた第2調整速度v2(<v1)で第1の可変コンデンサC1の静電容量値を変更し、第1調整速度v1’より遅くφ値の大きさに応じた第2調整速度v2’(<v1’)で第2の可変コンデンサC2の静電容量値を変更する。一方、検出部12で検出したZ値が第2調整速度領域w2にあるが、検出部12で検出したφ値が第2調整速度領域w2にないとき、制御部13は、第1調整速度v1より遅い第3調整速度v3(≦v1)で第1の可変コンデンサC1の静電容量値を変更する。また、検出部12で検出したφ値が第2調整速度領域w2にあるが、検出部12で検出したZ値が第2調整速度領域w2にないとき、制御部13は、第1調整速度v1’より遅い第3調整速度v3’(≦v1’)で第2の可変コンデンサC2の静電容量値を変更する。
【0032】
さらに、制御部13は、検出部12で検出したZ値が第3調整速度領域w3にあるとき、最小の第4調整速度v4(<v2,v3)で第1の可変コンデンサC1の静電容量値を変更する。同様に、制御部13は、検出部12で検出したφ値が第3調整速度領域w3にあるとき、最低速度の第4調整速度v4’(<v2’,v3’)で第2の可変コンデンサC2の静電容量値を変更する。
【0033】
このように、制御部13により第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の調整制御を行うことにより、その調整制御を迅速に行うことができる。以下、この点につき、図4〜図6を参照して具体的に説明する。
【0034】
図4に示すように、検出部12で検出したZ値とφ値とが第1調整速度領域w1にあるとき、制御部13は、第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の静電容量値をそれぞれZ値及びφ値の大きさに応じた第1調整速度v1,v1’で整合値に近づくように制御する。その後、検出部12で検出したZ値及びφ値のいずれか一方が第2調整速度領域w2になる。図4に示す例では、検出部12で検出したφ値が先に第2調整速度領域w2に入り、制御部13は、第2の可変コンデンサC2の静電容量値を一定速度である第2調整速度v2’で整合値に近づくように制御する。このとき、制御部13は、第1の可変コンデンサC1の静電容量値を引き続きZ値の大きさに応じた第1調整速度v1で整合値に近づくように制御する。このように、第2の可変コンデンサC2の静電容量値の調整速度が遅くなるため、φ値が整合値へ近づく時間を遅らせることができる。
【0035】
その後、図5に示すように、検出部12で検出したφ値が第3調整速度領域w3に入り、制御部13は、第2の可変コンデンサC2の静電容量値を一定速度である第4調整速度v4’で整合値に近づくように制御する。一方、検出部12で検出したZ値は第1調整速度領域w1にあるため、第1の可変コンデンサC1の静電容量値は、制御部13によりZ値の大きさに応じた第1調整速度v1で制御される。このとき、第2の可変コンデンサC2よりも第1の可変コンデンサC1の制御速度が速いために、制御部13による第1の可変コンデンサC1の調整に伴い、図5に示すように、φ値が整合値から遠ざかってしまう。このように、第2の可変コンデンサC2の静電容量値の調整速度が遅い状態を維持できるため、φ値が整合値へ近づく時間を遅らせることができる。
【0036】
次に、図6に示すように、検出部12で検出したZ値はφ値と同様に第2調整速度領域w2に入る。そのため。制御部13は、第1の可変コンデンサC1の静電容量値を、第2調整速度v2ではなく、調整速度v2よりも速度が速いZ値の大きさに応じた第3調整速度v3で調整する。一方、第2の可変コンデンサC2も同様に、第2調整速度v2’ではなく、調整速度v2’よりも速度が速いZ値の大きさに応じた第3調整速度v3’で調整する。従って、Z値とφ値とが同時に整合値に近づくことになる。その後、検出部12で検出したZ値及びφ値が第3調整速度領域w3に入ると、第1の可変コンデンサC1は調整速度v4で調整され、第2の可変コンデンサC2は調整速度v4’で調整され、Z値とφ値とが同時に整合値に近づくことになる。
【0037】
このように、本実施形態に係るインピーダンス整合装置10では、反射係数ρの実部Zと虚部φとが整合値に近づくほどその調整速度が遅くなるため、図6に示すように、反射係数ρの実部Zと虚部φとを同時期に整合値に到達させることができる。
【0038】
従って、静定時間が異常に長くなることを抑制することができ、第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の調整処理を迅速に行うことができる。
【0039】
また、静定時間を短縮できるため、プラズマ発生装置でのプラズマ着火条件を早期に確立することができる。しかも、可変コンデンサにおいて機械的に無駄の無い最適の動作が実現できるため、動作機構部品の磨耗寿命を延ばすことができる。
【0040】
[インピーダンス整合装置の具体的構成]
上述したインピーダンス整合装置の具体的構成の一例について、図7及び図8を参照して説明する。
【0041】
図7に示すように、第1及び第2の可変コンデンサC1,C2は、それぞれ、静電容量調整用の調節軸33,34を備えており、調節軸33,34を回転させることによって各可変コンデンサC1,C2の静電容量値を調整できるようになっている。
【0042】
制御部13は、第1の可変コンデンサC1を駆動するための第1パルスモータ31と、第2の可変コンデンサC2を駆動するための第2パルスモータ32とを備えている。第1パルスモータ31は、第1の可変コンデンサC1の調整軸33に接続されており、第2パルスモータ32は第2の可変コンデンサC2の調整軸34に接続されている。各パルスモータ31,32を駆動するドライバ回路31a,32aはコントローラ14に接続されており、コントローラ14からドライバ回路31a,32aに制御信号を送って各パルスモータ31,32を作動させるようになっている。そして、各パルスモータ31,32を作動させて調節軸33,34の回転位置を所望位置に位置させることで、各可変コンデンサC1,C2の静電容量値を調整可能としている。また、各パルスモータ31,32にはそれぞれの回転位置を検出するエンコーダ31b,32bが備えられており、各エンコーダ31b,32bによって、各調節軸33,34の現在位置を検出できるようになっている。なお、各調節軸33,34に直接エンコーダを設置して各調節軸33,34の現在位置を直接検出するようにしても良い。
【0043】
コントローラ14は、CPU40、ROM41、RAM42、A/D変換器43〜46、D/A変換器47,48を有して構成される。ROM41には制御プログラムが記憶されており、CPU40がROM41に記憶した制御プログラムを読み出して実行することによりコントローラ14としての各種機能を実行する。CPU40は、A/D変換器43〜46を介して、検出部12やエンコーダ31b,32bから各種情報を取得し、D/A変換器47,48を介して第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の静電容量値を制御する。
【0044】
次に、検出部12の構成について説明する。図8に示すように、検出部12は、電流センサ50、電圧センサ51、整流器52〜55、減算器56〜58、加算器59を有している。
【0045】
電流センサ50によって検出された電流Iは、整流器52によって整流されて減算器56に入力され、電圧センサ51によって検出された電圧Vは、整流器53によって整流されて減算器56に入力される。減算器56では、整流器53の出力|V|から整流器52の出力|I|を減算する。減算器56の出力は、反射係数ρの実部Zに比例する値であり、コントローラ14は減算器56からの出力をZ値の情報として入力する。
【0046】
また、電流センサ50によって検出された電流Iと電圧センサ51によって検出された電圧Vとは、加算器59で加算されると共に、減算器57により減算される。加算器59からの出力(V+I)は整流器54で整流され、減算器57からの出力(V−I)は整流器55で整流される。減算器58は、整流器54の出力|V+I|から整流器55の出力|V−I|を減算する。減算器58の出力は、反射係数ρの虚部φに比例する値であり、コントローラ14は減算器58からの出力をφ値の情報として入力する。
【0047】
以下、減算器56の出力が反射係数ρの実部Zに比例するZ値となり、減算器58の出力が反射係数ρの虚部φに比例するφ値となることについて説明する。
【0048】
負荷Bのインピーダンスをzとし、高周波電源Aと負荷Bとの間の伝送路のインピーダンスをrとすると、図8に示す電圧v及び電流iは次のように表現できる。
【数1】
【0049】
さらに以下のように規定される反射係数ρを用いると、電圧v及び電流iは次のように表現できる。
【数2】
【0050】
ここで、反射係数ρは定義から複素数、ρ=Z+jφと表現できる。従って、
【数3】
とすると、最終的に電圧v及び電流iは次のように表現できる。
【数4】
【0051】
電流センサ50は、電流iをビートダウンすることにより電流iの周波数ωcを低周波化して出力し、電流センサ50は、電圧vをビートダウンすることにより電圧vの周波数ωcを低周波化して出力する。このとき、電流センサ50は、一階時間微分をしているため、各々のビートダウン出力を大文字のVとIで表すと次のように表現できる。
【数5】
【0052】
ここでrおよびωは定数であり、Eは共通である。従って、センサ係数を調整して、VとIは次のように表現できる。
【数6】
【0053】
上記式により、VとIの大きさは、以下のように表現できる。
【数7】
【0054】
従って、減算器56の出力は、以下のように表現できる。
【数8】
【0055】
ここで、
【数9】
から
【数10】
となる。
【0056】
負荷Bが整合位置近傍のときZ2+φ2は1に比べて十分小さいため、kを係数とすると、
【数11】
となり、Zに比例した値を得ることができる。
【0057】
一方、加算器59の出力(V+I)と、減算器57の出力(V−I)は、次のように表現できる。
【数12】
【0058】
従って、整流器54の出力|V+I|と、整流器55の出力|V−I|は、次のように表現できる。
【数13】
【0059】
従って、減算器58の出力は、以下のように表現できる。
【数14】
【0060】
ここで、負荷Bが整合位置近傍のときZ2+φ2は1に比べて十分小さいため、k’を係数とすると、
【数15】
となり、φに比例した値を得ることができる。
【0061】
[3.インピーダンス整合装置の具体的動作]
以上のように構成されたインピーダンス整合装置10の具体的動作について図9及び図10を参照して説明する。
【0062】
制御部13は、インピーダンス整合処理を開始すると、図9に示すように、検出部12から出力されるZ値が第2調整速度領域w2にあるか否かを判定する(ステップS1)。この処理において、Z値が第2調整速度領域w2にあると判定すると(ステップS1:YES)、制御部13は、φ値が第2調整速度領域w2にあるか否かを判定する(ステップS2)。
【0063】
φ値が第2調整速度領域w2にないと判定すると(ステップS2:NO)、制御部13は、第1パルスモータ31の速度を低速に設定する(ステップS4)。これにより、第1の可変コンデンサC1は第2調整速度v2で調整される。一方、φ値が第2調整速度領域w2にあると判定すると(ステップS2:YES)、制御部13は、第1パルスモータ31の速度をZ値に応じた低速に設定する(ステップS3)。これにより、第1の可変コンデンサC1は第3調整速度v3で調整される。
【0064】
ステップS1において、Z値が第2調整速度領域w2にないと判定すると(ステップS1:NO)、制御部13は、Z値が第3調整速度領域w3にあるか否かを判定する(ステップS5)。この処理において、Z値が第3調整速度領域w3にあると判定すると(ステップS5:YES)、制御部13は、第1パルスモータ31の速度を最低速に設定する(ステップS4)。これにより、第1の可変コンデンサC1は第4調整速度v4で調整される。一方、ステップS3の処理において、Z値が第3調整速度領域w3にないと判定すると(ステップS5:NO)、制御部13は、第1パルスモータ31の速度をZ値に応じた高速に設定する(ステップS8)。これにより、第1の可変コンデンサC1は検出部12により検出したZ値に応じた第1調整速度v1で調整される。
【0065】
ステップS3,S4,S6,S7の処理が終了すると、制御部13は、検出部12から出力されるφ値が第2調整速度領域w2にあるか否かを判定する(ステップS8)。この処理において、φ値が第2調整速度領域w2にあると判定すると(ステップS8:YES)、制御部13は、Z値が第2調整速度領域w2にあるか否かを判定する(ステップS9)。
【0066】
Z値が第2調整速度領域w2にないと判定すると(ステップS9:NO)、制御部13は、第2パルスモータ32の速度を低速に設定する(ステップS11)。これにより、第2の可変コンデンサC2は第2調整速度v2’で調整される。一方、φ値が第2調整速度領域w2にあると判定すると(ステップS9:YES)、制御部13は、第2パルスモータ32の速度をφ値に応じた低速に設定する(ステップS10)。これにより、第2の可変コンデンサC2は第3調整速度v3’で調整される。
【0067】
一方、φ値が第2調整速度領域w2にないと判定すると(ステップS8:NO)、制御部13は、φ値が第3調整速度領域w3にあるか否かを判定する(ステップS12)。この処理において、φ値が第3調整速度領域w3にあると判定すると(ステップS12:YES)、制御部13は、第2パルスモータ32の速度を最低速に設定する(ステップS13)。これにより、第2の可変コンデンサC2は第4調整速度v4’で調整される。
【0068】
ステップS12の処理において、φ値が第3調整速度領域w3にないと判定すると(ステップS12:NO)、制御部13は、第2パルスモータ32の速度をφ値に応じた速度に設定する(ステップS14)。これにより、第2の可変コンデンサC2は検出部12により検出したφ値に応じた第1調整速度v1’で調整される。
【0069】
ステップS10,S11,S13,S14の処理が終了すると、制御部13は、検出部12から出力されるZ値及びφ値に基づき、モータ方向/停止制御処理を実行する(ステップS15)。このモータ方向/停止制御処理は、図10に示すステップS20〜S29の処理であり、後で説明する。この処理が終了すると、制御部13は、処理をステップS1に戻す。
【0070】
図10に示すように、モータ方向/停止制御処理を開始すると、制御部13は、検出部12から出力されるZ値が整合位置Z0であるか否かを判定する(ステップS20)。このZ0は所定の範囲を有するものであり、この範囲は、実質的にインピーダンス整合を行うことができる範囲である。この処理において、Z値が整合位置Z0であると判定すると(ステップS20:YES)、制御部13は、第1パルスモータ31を停止する(ステップS21)。これにより、第1の可変コンデンサC1の静電容量値の調整処理が停止する。
【0071】
一方、Z値が整合位置Z0ではないと判定すると(ステップS20:NO)、制御部13は、Z値がZ0を超えているか否かを判定する。すなわち、Z値が正極性かどうかを判定する(ステップS22)。この処理において、Z値が整合位置Z0を超えていると判定すると(ステップS22:YES)、制御部13は、第1パルスモータ31の回転方向を第1の可変コンデンサC1の静電容量値が減少する方向に設定する(ステップS23)。一方、Z値が整合位置Z0を超えておらず、負極性であると判定すると(ステップS22:NO)、制御部13は、第1パルスモータ31の回転方向を第1の可変コンデンサC1の静電容量値が増加する方向に設定する(ステップS24)。
【0072】
ステップS21,S23,S24の処理が終了すると、制御部13は、検出部12から出力されるφ値が整合位置φ0であるか否かを判定する(ステップS25)。この処理において、φ値が整合位置φ0であると判定すると(ステップS25:YES)、制御部13は、第2パルスモータ32を停止する(ステップS26)。これにより、第2の可変コンデンサC2の静電容量値の調整処理が停止する。
【0073】
一方、φ値が整合位置φ0ではないと判定すると(ステップS25:NO)、制御部13は、φ値が整合位置φ0以上であるか否かを判定する。すなわち、φ値が正極性かどうかを判定する(ステップS27)。このφ0は所定の範囲を有するものであり、この範囲は、実質的にインピーダンス整合を行うことができる範囲である。この処理において、φ値が整合位置φ0以上であると判定すると(ステップS27:YES)、制御部13は、第2パルスモータ32の回転方向を第2の可変コンデンサC2の静電容量値が減少する方向に設定する(ステップS28)。一方、φ値が整合位置φ0以上ではなく、負極性であると判定すると(ステップS27:NO)、制御部13は、第2パルスモータ32の回転方向を第2の可変コンデンサC2の静電容量値が増加する方向に設定する(ステップS29)。ステップS26,S28,S29の処理が終了すると、制御部13は、モータ方向/停止制御処理を終了する。
【0074】
このように、本実施形態に係るインピーダンス整合装置10では、検出部12で検出した反射係数ρのZ値とφ値とに基づいて、第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の調整速度を多段階に変更している。特に、反射係数ρの実部Zと虚部φとが整合値に近づくほどその調整速度が遅くなるように設定している。従って、最終的に反射係数ρの実部Zと虚部φとを同時期に整合値に到達させることができる。これにより、静定時間が異常に長くなることを抑制することができ、第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の調整処理を迅速に行うことができる。
【0075】
特に、本実施形態に係るインピーダンス整合装置10では、検出部12で検出したZ値及びφ値の大きさをそれぞれ大きい順に第1〜第3調整速度領域w1〜w3に分けている。そして、制御部13は、可変コンデンサC1,C2の静電容量値の調整速度を、調整速度領域w1ではそれぞれZ値及びφ値の大きさに応じた速度とし、第3調整速度領域w3では一定の速度としている。しかも、Z値及びφ値の大きさのいずれか一方のみが第2調整速度領域w2に至ったときの当該第2調整速度領域w2に至ったZ値又はφ値に対応する可変コンデンサの調整速度を、Z値及びφ値の大きさが共に所定範囲に至ったときの調整速度よりも遅くする。このようにすることにより、第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の調整処理をより迅速に行うことができる。
【0076】
[4.その他の実施形態]
上記実施形態では、制御部13は、検出部12で検出したZ値とφ値の大きさを大きい順に調整速度領域w1〜w3に分けたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、調整速度領域を2つ又は4以上設けるようにしてもよい。例えば、図11に示すように、調整速度領域w3を設けずに、調整速度領域w1,w2のみを設けるようにしてもよい。このようにすることで処理を複雑にすることなく、第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の高速調整が可能となる。また、調整速度領域w2のように、Z値及びφ値の大きさが共にその範囲に入ったときといずれか一方がその範囲に入ったときとで速度を変更する領域を複数設けるようにしてもよい。例えば、図12に示すように、第3調整速度領域w3を第2調整速度領域w2と同様の処理を行うようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、Z値とφ値とを同様の調整速度領域に分けることとしたが、本発明はこれに限られるものではなく、Z値とφ値とを異なる調整速度領域に分けるようにしてもよい。例えば、Z値を3つの調整速度領域に分け、φ値を4つの調整速度領域に分けるようにしてもよい。
【0078】
また、Z値とφ値の大きさと調整速度の情報とを関連づけたテーブルをROM41に記憶させておき、制御部13は、このテーブルに基づいて第1及び第2の可変コンデンサC1,C2を調整するようにしてもよい。そして、制御部13は、第1テーブルに基づき、第1の可変コンデンサC1の静電容量値の調整速度を変更し、第2テーブルに基づき、第2の可変コンデンサC2の容量値の調整速度を変更する。このようにすることで、調整速度の演算等が不要となり、制御部13での処理負荷を軽減することができる。
【0079】
本発明を、上述してきた実施形態を通して説明したが、本実施形態によれば、以下の効果が期待できる。
【0080】
(1)インピーダンス整合装置10は、高周波電源Aと負荷Bとの間に接続された第1及び第2の可変コンデンサC1,C2と、負荷B側の反射係数の実部Zに応じたZ値と虚部φに応じたφ値とを検出する検出部12と、検出部12で検出した反射係数ρの実部Zの大きさに基づいて第1の可変コンデンサC1を調整し、検出部12で検出した反射係数ρの虚部φの大きさに基づいて第2の可変コンデンサC2を調整する制御部13とを備える。そして、制御部13は、実部Z及び虚部φの大きさのいずれか一方のみが第2調整速度領域w2に至ったときの当該第2調整速度領域w2に至った実部Z又は虚部φに対応する可変コンデンサC1,C2の調整速度を、実部Z及び虚部φの大きさが共に第2調整速度領域w2に至ったときの調整速度よりも遅くしている。このようにすることで、実部Z及び虚部φの大きさのいずれか一方が早く整合値に近づくことを抑制することができ、その結果、第1及び第2の可変コンデンサの調整処理をより迅速に行うことができる。
【0081】
(2)制御部13は、実部Zの大きさが第2調整速度領域w2に至る前までは、実部Zの大きさに比例した調整速度で第1の可変コンデンサC1を調整し、虚部φの大きさが第2調整速度領域w2に至る前までは、虚部φの大きさに比例した調整速度で第2の可変コンデンサC2を調整する。実部Z及び虚部φが大きいほど第1及び第2の可変コンデンサC1,C2の調整速度が速いため、第1及び第2の可変コンデンサの調整処理をより迅速に行うことができる。
【0082】
(3)制御部13は、実部Zの大きさが第2調整速度領域w2よりも小さい(第3調整速度領域w3)とき、実部Zの大きさが第2調整速度領域w2での調整速度v2,v3よりもさらに遅い調整速度v4で第1の可変コンデンサC1を調整し、虚部φの大きさが第2調整速度領域w2よりも小さい(第3調整速度領域w3)とき、虚部φの大きさが第2調整速度領域w2での調整速度v2,v3よりもさらに遅い調整速度v4で第2の可変コンデンサC2を調整する。このようにすることで、反射係数ρの実部Zと虚部φとをより同時期に整合値に到達させることができる。
【符号の説明】
【0083】
A 高周波電源
B 負荷(プラズマ発生装置)
10 インピーダンス整合装置
11 インピーダンス整合部
12 検出部
13 制御部
C1 第1の可変コンデンサ
C2 第2の可変コンデンサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電源と負荷との間に接続された第1及び第2の可変コンデンサと、
前記負荷側の反射係数の実部に応じた値と虚部に応じた値とを検出する検出部と、
前記検出部で検出した反射係数の実部の大きさに基づいて前記第1の可変コンデンサを調整し、前記検出部で検出した反射係数の虚部の大きさに基づいて前記第2の可変コンデンサを調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記実部及び虚部の大きさのいずれか一方のみが所定範囲に至ったときの当該所定範囲に至った実部又は虚部に対応する可変コンデンサの調整速度を、前記実部及び虚部の大きさが共に所定範囲に至ったときの調整速度よりも遅くすることを特徴とするインピーダンス整合装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記実部の大きさが前記所定範囲に至る前までは、前記実部の大きさに比例した調整速度で前記第1の可変コンデンサを調整し、前記虚部の大きさが前記所定範囲に至る前までは、前記虚部の大きさに比例した調整速度で前記第2の可変コンデンサを調整したことを特徴とする請求項1に記載のインピーダンス整合装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記実部の大きさが前記所定範囲よりも小さいとき、前記実部の大きさが前記所定範囲での調整速度よりもさらに遅い調整速度で前記第1の可変コンデンサを調整し、前記虚部の大きさが前記所定範囲よりも小さいとき、前記虚部の大きさが前記所定範囲での調整速度よりもさらに遅い調整速度で前記第2の可変コンデンサを調整したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインピーダンス整合装置。
【請求項4】
高周波電力を出力する高周波電源と、
前記高周波電力に入力してプラズマ放電を発生させるプラズマ発生部と
前記高周波電源と前記プラズマ発生部との間のインピーダンスを整合させるインピーダンス整合装置とを備え、
前記インピーダンス整合装置は、
高周波電源と負荷との間に接続された第1及び第2可変コンデンサと、
前記負荷側の反射係数の実部に応じた値と虚部に応じた値とを検出する検出部と、
前記検出部で検出した反射係数の実部の大きさに基づいて前記第1の可変コンデンサを調整し、前記検出部で検出した反射係数の虚部の大きさに基づいて前記第2の可変コンデンサを調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記実部及び虚部の大きさのいずれか一方のみが所定範囲に至ったときの当該所定範囲に至った実部又は虚部に対応する可変コンデンサの調整速度を、前記実部及び虚部の大きさが共に所定範囲に至ったときの調整速度よりも遅くすることを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項1】
高周波電源と負荷との間に接続された第1及び第2の可変コンデンサと、
前記負荷側の反射係数の実部に応じた値と虚部に応じた値とを検出する検出部と、
前記検出部で検出した反射係数の実部の大きさに基づいて前記第1の可変コンデンサを調整し、前記検出部で検出した反射係数の虚部の大きさに基づいて前記第2の可変コンデンサを調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記実部及び虚部の大きさのいずれか一方のみが所定範囲に至ったときの当該所定範囲に至った実部又は虚部に対応する可変コンデンサの調整速度を、前記実部及び虚部の大きさが共に所定範囲に至ったときの調整速度よりも遅くすることを特徴とするインピーダンス整合装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記実部の大きさが前記所定範囲に至る前までは、前記実部の大きさに比例した調整速度で前記第1の可変コンデンサを調整し、前記虚部の大きさが前記所定範囲に至る前までは、前記虚部の大きさに比例した調整速度で前記第2の可変コンデンサを調整したことを特徴とする請求項1に記載のインピーダンス整合装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記実部の大きさが前記所定範囲よりも小さいとき、前記実部の大きさが前記所定範囲での調整速度よりもさらに遅い調整速度で前記第1の可変コンデンサを調整し、前記虚部の大きさが前記所定範囲よりも小さいとき、前記虚部の大きさが前記所定範囲での調整速度よりもさらに遅い調整速度で前記第2の可変コンデンサを調整したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインピーダンス整合装置。
【請求項4】
高周波電力を出力する高周波電源と、
前記高周波電力に入力してプラズマ放電を発生させるプラズマ発生部と
前記高周波電源と前記プラズマ発生部との間のインピーダンスを整合させるインピーダンス整合装置とを備え、
前記インピーダンス整合装置は、
高周波電源と負荷との間に接続された第1及び第2可変コンデンサと、
前記負荷側の反射係数の実部に応じた値と虚部に応じた値とを検出する検出部と、
前記検出部で検出した反射係数の実部の大きさに基づいて前記第1の可変コンデンサを調整し、前記検出部で検出した反射係数の虚部の大きさに基づいて前記第2の可変コンデンサを調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記実部及び虚部の大きさのいずれか一方のみが所定範囲に至ったときの当該所定範囲に至った実部又は虚部に対応する可変コンデンサの調整速度を、前記実部及び虚部の大きさが共に所定範囲に至ったときの調整速度よりも遅くすることを特徴とするプラズマ発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図17】
【公開番号】特開2011−124192(P2011−124192A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283365(P2009−283365)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
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