説明

インフルエンザタンパク質を製造および使用する組成物および方法

本発明は、個体の免疫系にマルチマー展示として提示して免疫応答を誘発するインフルエンザタンパク質、例えば、マトリックスおよび核タンパク質の組成物を提供する。これらの組成物は、必要に応じて、免疫刺激配列 (ISS) を含んでなる免疫調節化合物 (IMC) の任意の型と関連させる。本発明は、さらに、細胞および/または体液の免疫応答を誘発できる、インフルエンザマトリックスおよび核タンパク質の組成物を提供する。本発明は、また、インフルエンザウイルスによる感染に関連する症状を改善し、またはインフルエンザウイルスによる感染の危険を減少させる、これらの組成物、例えば、ワクチンを製造および使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス、特にインフルエンザウイルスおよび種々のインフルエンザタンパク質を含有する組成物の分野に関する。これらの組成物は、インフルエンザに対する免疫応答を誘発させ、インフルエンザの感染の危険を減少させ、および/またはインフルエンザウイルスによる感染の症状を改善するために有効である。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関 (World Health Organization、WHO) が記載するように、インフルエンザウイルスA型およびB型の両方は急性呼吸器病気の共通の原因である。両方のウイルス型はかなりの罹病率および死亡率の流行病を引き起こすことがあり、インフルエンザウイルスBの感染はしばしば局在化大発生に限定されるが、インフルエンザAウイルスは、世界的な汎発流行病を含む、より大きい流行病の主要な原因である。インフルエンザウイルスはオルトミクソウイルス (Orthomyxovirus) 科の1員であり、そしてヒト、ウマ、イヌ、トリおよびブタを含む、広い個体範囲を有する。
【0003】
それは包膜ネガティブ-センスRNAウイルスであり、10ウイルスタンパク質をエンコードする8 RNAセグメント中で産生される。このウイルスは感染した個々の細胞核中で複製する。インフルエンザウイルスは若者および老人、または免疫無防備個体に対して最も危険である。このウイルスはニワトリの卵の中で高い力価に増殖することができ、ここでニワトリの卵はインフルエンザワクチン製造のためのウイルス発生のベヒクルとして働く。
【0004】
現在2つの型のワクチンが使用されている。より慣用のワクチンは不活性化ワクチン (殺したウイルスを含有する) であり、注射により、典型的には腕への注射により接種される。最も普通のヒトワクチンは3つのウイルス株から精製し、不活性化された物質を含有する3価インフルエンザワクチン (TIV) である。典型的には、このワクチンは2つのインフルエンザAウイルスサブタイプおよびインフルエンザBウイルス株からの物質を含む。第2のワクチンは、鼻噴霧fluワクチン (時には弱毒化インフルエンザ生ワクチンについてLAIVと呼ばれる) と称され、2003年に承認され、そして鼻噴霧器で投与される弱毒化 (弱化) 生ワクチンを含有する。
【0005】
インフルエンザAウイルスはそれらの表面抗原を頻繁に変化させるが、B型インフルエンザウイルスは頻繁には変化させない。1つの株による感染直後、引き続く抗原変異型に対して完全に保護しないことがある。結局、次の流行病を引き起こす可能性が最も高い循環性株に合致する、インフルエンザに対する新しいワクチンを毎年設計しなくてはならない。したがって、WHOは人々の間を循環する最も優勢なインフルエンザ株の監視に基づいてデータを毎年収集し、インフルエンザワクチンの組成を推奨している。現在、ワクチンはその中にインフルエンザAウイルスの2つのサブタイプと、1つのインフルエンザBウイルスとを含有する。典型的には、ワクチンは健康な成人のほぼ50%〜80%を臨床的疾患に対して保護する。
【0006】
インフルエンザワクチンが入手可能であるにもかかわらず、子供、中高年層およびある種の危険が高いグループ間の病気の率はなお有意であり、そして発展途上国において、ワクチン接種は散在的であるか、あるいは存在しない。工業化された国において、レシピエント集団を収容するために十分なインフルエンザワクチンの生産は現在の技術を使用する製造の問題、ワクチンの製造に要求される高い費用および時間により妨害される。さらに、新しいウイルス株および将来の汎発流行病の可能性の脅威は、いっそう有効にかつ効率よく製造されるインフルエンザワクチンの重要性を高めた。
【0007】
種々のグループはいくつかのインフルエンザタンパク質、例えばマトリックスについて研究を実施して、それらの免疫原性およびインフルエンザに対するワクチンの一部分としての使用の可能性を決定した。例えば、下記の文献を参照のこと: Filette et al.、Vaccine 24: 6597-601 (2006) およびLiu et al.、Vaccine 23: 366-371 (2004) 。しかしながら、今日まで、インフルエンザのための万能ワクチン、特に個体において体液および細胞の反応を誘発するワクチンが欠如している。したがって、インフルエンザウイルスの多数の株に対して長期間持続する有効な保護を提供する、改良されたインフルエンザワクチンが必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、インフルエンザタンパク質を含んでなる組成物およびワクチン、それらを製造し、使用する方法を提供する。ある態様において、組成物およびワクチンは免疫刺激配列 (ISS) を含んでなる免疫調節化合物 (IMC) をさらに含んでなる。
【0009】
1つの態様において、本発明は、免疫系に対してマルチマー展示として提示され、個体において免疫応答を誘発できる、インフルエンザマトリックスタンパク質 (M2e) の細胞外ドメインのマルチマーを含んでなる組成物を提供する。ある場合において、マルチマー展示は非タンパク質担体との関連により達成される。1つの態様において、マルチマーはM2eの少なくとも2つのコピーを含んでなる。他の態様において、M2eマルチマーはIMCと関連させる。
【0010】
他の面において、M2eマルチマーまたはM2e/IMCマルチマーは核タンパク質 (NP) をさらに含んでなる。1つの態様において、マルチマーはNPとM2eとを含んでなる融合タンパク質である。他の態様において、M2eはNPに共有結合的またはイオン的に結合している。ある態様において、M2eはNPのカルボキシ末端側に位置する。他の態様において、M2eはNPのアミノ末端側に位置する。他の態様において、M2eはNPのアミノ末端側およびカルボキシ末端側の両方に位置する。他の態様において、M2eはNPに対して内部に位置する。他の態様において、M2e/IMCマルチマーをNPと関連させる。他の態様において、M2e/IMCマルチマーをNP/IMCと関連させる。他の態様において、M2e/NPマルチマーをIMCと関連させる。ある態様において、IMCは1018、B型オリゴヌクレオチド、キメラ免疫調節化合物およびC型オリゴヌクレオチドから成る群から選択される。
【0011】
他の面において、本発明は、担体をさらに含んでなる上記組成物のいずれかを提供する。ある態様において、担体は明礬、微小粒子、リポソームおよびナノ粒子から成る群から選択される。
【0012】
他の面において、本発明は、マルチマー展示として免疫系に対して提示され、個体において免疫応答を誘発することができる、M2eマルチマーの組成物を含んでなるワクチンを提供する。ある態様において、組成物はIMC、アジュバントまたは担体をさらに含んでなる。他の態様において、組成物はNPをさらに含んでなる。他の態様において、組成物はM2eの少なくとも2つのコピーとNPとを含んでなる融合タンパク質である。他の態様において、上記組成物のいずれかはIMCをさらに含んでなる。
【0013】
他の態様において、ワクチンは明礬、微小粒子、リポソームおよびナノ粒子から成る群から選択される担体をさらに含んでなる。他の態様において、ワクチンは1018 IMC、B型オリゴヌクレオチド、キメラ免疫調節化合物およびC型オリゴヌクレオチドから成る群から選択されるIMCを含んでなる。他の態様において、上記ワクチンのいずれかは少なくとも1つの3価不活性化インフルエンザワクチン (TIV) の1または2以上の成分をさらに含んでなる。ある態様において、TIVはフルゾン (Fluzone) 、フルビリン (Fluvirin) 、フルアリックス (Fluarix) 、フルラバル (FluLaval) 、フルブロック (FluBlock) 、フルアド (FluAd) 、インフルバック (Influvac) およびフルバックス (Fluvax) から成る群から選択される。
【0014】
他の面において、本発明は、マルチマー展示として免疫系に対して提示されるインフルエンザマトリックスタンパク質 (M2e) の細胞外ドメインのマルチマーの組成物を含んでなり、前記マルチマーが個体において免疫応答を誘発することができる、ワクチンを個体に投与することによって、個体においてインフルエンザウイルスによる感染に関連する1または2以上の症状を改善する方法を提供する。1つの態様において、ワクチンはNPをさらに含んでなる。ある態様において、ワクチンはIMCをさらに含んでなる。
【0015】
他の面において、本発明は、(a) M2eの少なくとも2つのコピーを含んでなるワクチンおよび (b) TIVの1または2以上の成分を個体に投与することを含んでなる、個体においてインフルエンザウイルスによる感染の可能性を減少させる方法を提供する。1つの態様において、ワクチンはNPをさらに含んでなる。他の態様において、ワクチンはIMCをさらに含んでなる。他の態様において、TIVはフルゾン (Fluzone) 、フルビリン (Fluvirin) 、フルアリックス (Fluarix) 、フルラバル (FluLaval) 、フルブロック (FluBlock) 、フルアド (FluAd) 、インフルバック (Influvac) およびフルバックス (Fluvax) から成る群から選択される。
【0016】
他の面において、本発明は、(a) M2eの少なくとも2つのコピーを含んでなるワクチンおよび (b) 1価不活性化ワクチンの1または2以上の成分を個体に投与することを含んでなる、個体においてインフルエンザウイルスによる感染の可能性を減少させる方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1−1】図1は、ヒト、ブタおよびトリの種についてのコンセンサスM2e配列、および種々のインフルエンザAアイソレイト間におけるM2eエピトープの保存を描写する。また、コンセンサス配列の変異型がインフルエンザウイルスの異なる株について示されている。
【図1−2】図1は、ヒト、ブタおよびトリの種についてのコンセンサスM2e配列、および種々のインフルエンザAアイソレイト間におけるM2eエピトープの保存を描写する。また、コンセンサス配列の変異型がインフルエンザウイルスの異なる株について示されている。
【図1−3】図1は、ヒト、ブタおよびトリの種についてのコンセンサスM2e配列、および種々のインフルエンザAアイソレイト間におけるM2eエピトープの保存を描写する。また、コンセンサス配列の変異型がインフルエンザウイルスの異なる株について示されている。
【図1−4】図1は、ヒト、ブタおよびトリの種についてのコンセンサスM2e配列、および種々のインフルエンザAアイソレイト間におけるM2eエピトープの保存を描写する。また、コンセンサス配列の変異型がインフルエンザウイルスの異なる株について示されている。
【0018】
【図2】図2は、1990-2005コンセンサスNP配列とA/プエルトリコ (Puerto Rico/8/34 (H1N1) のNP配列との比較を描写する。アミノ酸の同様なマトリックスに基づいて、保存的変化はダッシュ符号付きのボックス中に示して強調されており、ニュートラルは一本線ボックスであり、そして非保存は二重線ボックスである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、インフルエンザタンパク質を含んでなる組成物および/またはワクチン、およびそれらを製造し、使用する方法を提供する。これらの組成物およびワクチンは、インフルエンザウイルスで感染した個体において免疫応答を誘発するために有効である。さらに、組成物およびワクチンは、インフルエンザウイルスによる感染に関連する症状を改善し、そしてインフルエンザウイルスによる感染の危険を減少させるために有効である。
一般的方法
【0020】
本発明の実施において、特記しない限り、分子生物学 (組換え技術を包含する) 、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学および免疫学の慣用技術を使用し、これらの技術は当業者の技量の範囲内である。このような技術は文献、例えば、下記の文献に十分に説明されている: Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版 (Sambrook他、1989) およびMolecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版 (SambrookおよびRussel、2001) (この文書中でこの本明細書中で一緒にかつ個々に“Sambrook”と呼ぶ) 、Oligonucleotide Synthesis (編者: M. J. Gait、1984); Animal Cell Culture (編者: R. I. Freshney、1987); Handbook of Experimental Immunology (編者: D. M. WeirおよびC. C. Blackwell); Gene Transfer Vectors for Mammalian (編者: J. M. MillerおよびM. P. Calos、1987); Current Protocols in Molecular Biology (編者: F. M. Ausubel他、1987、2001までの付録を含む); PCR: The Polymerase Chain Reaction (編者: Mullis他、1994); Current Protocols in Immunology (編者: J. E. Coligan 他、1991); The Immunoassay Handbook (編者: D. Wild、Stockton Press NY、1994); Bioconjugate Techniques (編者: Greg T. Hermanson、Academic Press、1996); Methods of Immunological Analysis (編者: R. Masseyeff、W. H. AlbertおよびN. A. Staines、Weinheim: VCH Verlags gesellschaft mbH、1993); HarlowおよびLane (1988) 、Antibodies, A Laboratory Manual、Gold Spring Harbor Publications、New York、およびHarlowおよびLane (1999) 、Using Antibodies; A Laboratory Manual Gold Spring Harbor Laboratory Press、Gold Spring Harbor、NY (一緒にかつ個々に“HarlowおよびLane”と呼ぶ) 、Beaucage 他編、Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry (John Wiley & Sons, Inc.、New York、2000); およびAgrawal編、Protocols for Oligonucleotides and Analogs, Synthesis and Properties (Human Press, Inc.、New Jersey、1993) 。
定義
【0021】
本明細書において使用するとき、「ワクチン」は個体において免疫応答を誘発させるために使用する抗原製剤である。ワクチンは抗原性である2以上の構成成分を有することができる。
【0022】
本明細書において使用するとき、「マルチマー展示」はマトリックス (M2e) のような分子が提示される方法を意味する。1つの態様において、これは分子が個体の免疫系に対して展示される方法を意味する。マルチマー展示は下記との関連を包含するが、これらに限定されない: スペーサー領域をもつか、あるいはもたない直線的に (例えば、末端対末端で) 展示された分子のポリマーまたは反復単位、および非直線的方法で展示された多数の単位 (例えば、分子の放射状展示、ランダムの配向、およびその他) 。多数の単位は担体またはあらゆる型のプラットホーム分子との関連により物理的に展示することができ、このような担体またはプラットホーム分子は下記を包含するが、これらに限定されない: 他のインフルエンザタンパク質 (例えば、核タンパク質) 、非インフルエンザタンパク質または非タンパク質プラットホーム分子、例えば、微小担体、アルミニウム塩、他の無機塩、微小粒子、ナノ粒子、ウイルス様粒子、デンドリマー、ミセル、天然または合成のポリマーおよびリポソーム。
【0023】
本明細書において使用するとき、「非タンパク質担体」は、タンパク質ではなく、インフルエンザマトリックスおよび/または核タンパク質のマルチマー展示を達成するために使用できる担体である。
【0024】
本明細書において互換的に使用するとき、用語 「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は下記を包含する: 一本鎖DNA (ssDNA) 、二本鎖DNA (dsDNA) 、一本鎖RNA (ssRNA) および二本鎖RNA (dsRNA) 、修飾されたオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオシド、またはそれらの組み合わせ。核酸は線状または環状の立体配置であることができるか、あるいはオリゴヌクレオチドは線状セグメントおよび環状セグメントの両方を含有することができる。
【0025】
核酸は、例えばホスホジエステル連鎖または交互連鎖に通して、連結されたヌクレオシドのポリマー、例えばホスホロチオエートエステルである。ヌクレオシドは糖に結合したプリン (アデニン (A) またはグアニン (G) またはそれらの誘導体) またはピリミジン (チミン (T) 、シトシン (C) またはウラシル (U) またはそれらの誘導体) 塩基から成る。DNA中の4つのヌクレオシド単位 (または塩基) はデオキシアデノシド、デオキシグアニシド、デオキシチミジンおよびデオキシシチジンと呼ぶ。ヌクレオチドはヌクレオシドのホスフェートエステルである。
【0026】
用語 「ISS」 または「免疫刺激配列」は、本明細書において使用するとき、in vitro、in vivoおよび/またはex vivoで測定したとき測定可能な免疫応答を生じるポリヌクレオチド配列を意味する。測定可能な免疫応答の例は下記を包含するが、これらに限定されない: 抗原特異的抗体産生、サイトカイン分泌、リンパ球集団、例えば、NK細胞、CD4+ Tリンパ球、CD8+ Tリンパ球、Bリンパ球およびその他の活性化または拡張。好ましくは、ISS配列はTh1型応答を優先的に活性化する。本発明において使用するポリヌクレオチドは少なくとも1つのISSを含有する。本明細書において使用するとき、「ISS」はまたISS含有ポリヌクレオチドの簡潔な用語である。
【0027】
用語 「免疫調節化合物」 または「IMC」は、本明細書において使用するとき、免疫調節活性を有し、免疫刺激配列またはISSを含む核酸部分を含んでなる分子を意味する。IMCは2以上のISSを含んでなる核酸部分から成り、ISSから成るか、あるいはそれ自身上に免疫調節活性をもたないことができる。IMCはオリゴヌクレオチドから成ることができるか (「オリゴヌクレオチドIMC」) 、あるいは追加の部分を含むことができる。したがって、用語IMCは、2またはそれ以上の核酸部分を組込み、それらの少なくとも1つが非ヌクレオチドスペーサー部分に共有結合した配列5’ -CG-3’ を含んでなる、キメラ免疫調節化合物 (“CIC類”) を包含する。
【0028】
用語「免疫調節」は微粒子状組成物および/またはポリヌクレオチドを指示することができる。こうして、ポリヌクレオチド単独として提示される場合、匹敵する免疫調節活性を示さない配列を本発明の免疫調節組成物中に含有されるポリヌクレオチドがもたないときでさえ、本発明の免疫調節組成物は免疫調節活性を示すことができる。ある態様において、単独で提示されるとき、本発明の免疫調節組成物のポリヌクレオチドは「分離された免疫調節活性」をもたないか、あるいは「劣った分離された免疫調節活性」(すなわち、微粒子状組成物と比較したとき) を有する。免疫応答の少なくとも1つの面を示す標準的アッセイ、例えば本明細書に記載するアッセイを使用して、同一核酸主鎖 (例えば、ホスホロチオエート、ホスホジエステル、キメラ) を有する分離されたポリヌクレオチドの免疫調節活性を測定することによって、ポリヌクレオチドの「分離された免疫調節活性」は決定される。
【0029】
用語「複合体」は、IMCおよびマルチマーが連結されている複合体を意味する。このような複合体の連結は共有結合および/または非共有結合の結合を包含する。
【0030】
用語「に関連する」は、共有結合ならびに非共有結合の両方の相互作用を意味することができる。例えば、M2eはIMCに対する共有結合によりならびにIMCとの非共有結合的相互作用によりIMCに関連することができる。
【0031】
「アジュバント」は、抗原のような免疫原性因子に添加したとき、その混合物に対する暴露時にレシピエント個体においてその因子に対する免疫応答を非特異的に増強または高める物質を意味する。
【0032】
用語「微小担体」は、水に不溶性であり、約150、120または100 μmより小さい、より普通に約50〜60 μmの大きさを有し、約10 μmより小さいまたは約5 μmより小さいことができる微粒子状組成物を意味する。微小担体は「ナノ担体」を包含し、これらは約1 μmより小さい、好ましくは約500 nmより小さい大きさを有する微小担体である。微小担体は固相粒子、例えば、天然に存在する生物適合性ポリマー、合成ポリマーまたは合成コポリマーから形成された粒子を包含するが、アガロースまたは架橋されたアガロースから形成された微小担体ならびにこの分野において知られている他の生物分解性物質を本明細書における微小担体の定義に含めるか、あるいは排除することができる。
【0033】
哺乳動物の生理学的条件下に非腐食性および/または非分解性であるポリマーまたは他の物質、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、シリカ、セラミック、金、ラテックス、ヒドロキシアパタイト、および強磁性および常磁性の物質から固相微小担体を形成する。哺乳動物の生理学的条件下に分解性であるポリマー (例えば、ポリ (乳酸) 、ポリ (グリコール酸) およびそれらのコポリマー、例えば、ポリ (D,L-ラクチド-コ-グリコリド) または腐食性であるポリマー (例えば、ポリ (オルトエステル) 、例えば3,9-ジエチリデン-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン (DETOSU) またはポリ (無水物) 、例えばセバシン酸のポリ (無水物)) から生物分解性固相微小担体を形成することができる。
【0034】
微小担体は典型的には形状が球形であるが、球形から逸脱する微小担体もまた許容される (例えば、楕円形、桿状およびその他) 。いくつかの固相微小担体は、不溶性の特質を有するので、水および水に基づく (水性) 溶液から濾過可能である (例えば、0.2ミクロンのフィルターを使用する) 。また、微小担体は抗原を含まない液相 (例えば、油性または脂肪性) 、例えばリポソーム、イスコム (iscoms) (免疫刺激性複合体、これらはコレステロール、リン脂質およびアジュバント活性サポニン) であるか、あるいは水中油型または油中水型エマルジョンにおいて見出される小滴またはミセル、例えばMF59であることができる。
【0035】
典型的には、生物分解性液相微小担体は生物分解性油を組込み、それらのいくつかはこの分野において知られており、スクアレンまたは植物油を包含する。用語「非生物分解性」は、本明細書において使用するとき、正常の哺乳動物の生理学的条件下に分解または腐食しない微小担体を意味する。一般に、微小担体が正常のヒト血清中で37℃において72時間のインキュベーション後に分解しない (すなわち、その質量または平均ポリマー長さの5%より多くを喪失しない) 場合、微小担体は非生物分解性であると考える。
【0036】
「個体」または「被検体」は脊椎動物、例えばトリ、好ましくは哺乳動物、例えばヒトである。哺乳動物は下記を包含するが、これらに限定されない: ヒト、非ヒト霊長類、農場の動物、スポーツの動物、実験用動物、齧歯類 (例えば、マウスおよびラット) およびペット。
【0037】
物質の「有効量」または「十分量」は、必要な生物学的効果、例えば、臨床的結果を含む、有益な結果を生じるために十分な量であり、そしてそれ自体「有効量」はそれが適用される関係に依存する。本発明の関係において、インフルエンザマトリックスタンパク質 (M2e) の細胞外ドメインのマルチマーを含んでなる組成物の有効量の例は、個体において免疫応答を誘発するために十分な量である。有効量は1または2以上の投与で投与することができる。
【0038】
用語「共投与」は、本明細書において使用するとき、少なくとも2つの異なる物質を十分に密接な時間で投与して免疫応答をモジュレートすることを意味する。好ましくは、共投与は少なくとも2つの異なる物質を同時に投与することを意味する。
【0039】
免疫応答、例えば、体液または細胞の免疫応答の「刺激」は、反応の誘発および/または増強から発生することができる、応答の増加を意味する。
【0040】
本明細書において使用するとき、そしてこの分野において十分に理解されているように、「処置」は臨床的結果を含む、有益なまたは必要な結果を得るためのアプローチである。本発明の目的に対して、有益なまたは必要な結果は下記を包含するが、これらに限定されない: 1または2以上の症状の軽減または改善、感染の程度の減少、感染の安定化された (すなわち、悪化しない) 状態、感染状態の改善または一時的緩和、および寛解 (部分的または完全な) 、検出可能なまたは検出不可能であるかどうかにかかわらず。また、「処置」は、処置を受けない場合期待される生存に比較して、生存の延長を意味することができる。
インフルエンザタンパク質の組成物
【0041】
マトリックスタンパク質M1およびM2は、インフルエンザAウイルスのゲノム7によりコードされる。インフルエンザA M2-タンパク質の細胞外部分はまたM2eとして知られており、そして23アミノ酸長さである。それは感染および慣用のワクチン接種の間に最小に免疫原性であり、そしてすべてのインフルエンザA株にわたって高い配列保存を有する。抗原としてのM2eの1つの利点は、多数の流行病およびいくつかの汎発流行病にかかわらず、最初のインフルエンザウイルスが1933年に単離されて以来、その配列の保存がほとんど変化していないことである。
【0042】
本発明は、マルチマーが個体において免疫応答を誘発することができる、インフルエンザマトリックスタンパク質 (M2e) の細胞外ドメインのマルチマーを含んでなる組成物を提供する。1つの面において、M2eタンパク質のマルチマーはM2eの少なくとも2つのコピーを含んでなる。理論により拘束されないで、M2eの多数のコピーはM2eが個々の免疫系にマルチマー展示として提示されることを可能とするので、M2eの多数のコピーは個体において免疫応答を誘発させるために重要である。したがって、1つの態様において、組成物はM2eの2つのコピーを含んでなる。
【0043】
他の態様において、組成物はM2eの3、4または5コピーを含んでなる。なお他の態様において、組成物はM2eの6、7または8コピーを含んでなる。なお他の態様において、組成物はM2eの9、10、11または12コピーを含んでなる。なお他の態様において、組成物はM2eの12より多いコピーを含んでなる。また、M2eマルチマーは、いっそう詳細に後述するように、免疫刺激配列 (ISS) を含んでなるIMCに結合することができる。マルチマーは当業者に知られている任意の方法でつくることができ、この方法はプラットホーム分子の使用を包含するが、これに限定されない。当業者が本発明のマルチマーを製造し、使用できる方法のいくつかの態様を実施例において例示する。
【0044】
本発明は、また、種々の配列のM2eのマルチマーを含んでなる組成物を提供する。マルチマーは同一配列または変化する配列のM2eのコピーを含むことができる。ヒトのM2eのコンセンサス配列は、SLLTEVETPIRNEWGCRCNDSSD (配列番号7) である。ブタのM2eのコンセンサス配列は、SLLTEVETPIRNGWECRCNDSSD (配列番号8) である。トリのM2eのコンセンサス配列は、SLLTEVETPTRNGWECKCSDSSD (配列番号9) である。第1図は、このコンセンサス配列ならびにブタおよびトリの動物のコンセンサス配列を示す。しかしながら、第1図が描写するように、インフルエンザA内に多数のアイソレイトが存在し、アイソレイトのいくつかにおいて、コンセンサス配列からの1または2以上のアミノ酸変異型が存在する。本発明は、組成物中でM2eのマルチマー (必要に応じてIMCとともに) を発生させるために、これらのアイソレイトのいずれかの組合わせの使用を考える。
【0045】
次いで、ワクチンとして使用するためにおよび/または本明細書に記載するように個体への投与に適当な形態で、組成物を処方することができる。特に、組成物は、公衆の健康のために大きい重要性をもつアイソレイトからの配列をもつM2eタンパク質を含んでなることができる。1つの面において、本発明は、それを必要とする個体において免疫応答を誘発するために、H5N1株からのM2eのマルチマーを含んでなる組成物を提供する。これらの組成物は、トリインフルエンザウイルスによる感染の可能性を減少させるために、あるいはトリインフルエンザウイルスによる感染に関連する症状を治療するために予防的に使用できる。
【0046】
本発明の他の面において、組成物はM2eの1または2以上のマルチマーと核タンパク質 (NP) とを含んでなる。第2図は、その変異型とともに核タンパク質のコンセンサス配列を示す。GenBank中に存在する815の全長ヒトインフルエンザNP配列のうちで、76%は1990〜2005年に単離されたウイルスに由来する。この期間において、82% (503の配列) はH3N2アイソレイトに由来する。コンセンサスNP配列は、1990〜2005年のアイソレイトからのすべての全長ヒトNP配列に基づいて発生された (第2図) 。A/Puerto Rico/8/34 (H1N1) 配列を1990年後に見出されたコンセンサス配列に対して比較すると、92%のアミノ酸配列の同一性が存在する。
【0047】
A/Puerto Rico/8/34 (H1N1) NP配列は、そのコンセンサスに対して98%の配列類似性を有する。Blosum 45アミノ酸類似性マトリックスに基づいて、アミノ酸の差の12は非保存的またはニュートラル置換であることが見出された。コンセンサスH3N2配列は位置98、146および197に3つのユニークアミノ酸置換を有し、各場合において、置換は保存されている。NPが単一コピーまたは多数のコピーで表現されることができることが考えられる。1つの態様において、NPは二量体として発現される。他の態様において、NPはより高い次数の構造物、例えばトリマーに関連する。
【0048】
他の面において、M2eコピーおよびNPは融合タンパク質として発現される。M2eポリヌクレオチド配列は任意の適当な発現ベクター 中にクローニングすることができ、そして組成物のために必要なタンパク質配列を発現させることができる。実施例において、M2eおよびNPとの融合タンパク構築物のポリヌクレオチドおよびタンパク質配列の両方を開示し、これらは本発明のこの面の実施において使用できる。組成物は、また、融合タンパク質ではない方法で、例えば、共有結合、イオン結合を介してまたは他の物理的力 (例えば、ファン・デル・ワールス) により互いに関連する方法で、M2eおよびNPを含んでなることができる。
【0049】
本発明は、また、M2eの1または2以上のマルチマーと核タンパク質 (NP) とを異なる方位で含んでなる組成物および融合タンパク質を提供する。これらの融合タンパク質は1または2以上のヒスチジン残基 (「hisタグ」) 、好ましくは6ヒスチジン残基をそれらのカルボキシ末端にさらに含んでなることができる。1つの態様において、1または2以上のM2eタンパク質はNPのアミノ末端側に位置する。他の面において、1または2以上のM2eタンパク質はNPのカルボキシ末端に位置する。
【0050】
他の面において、1または2以上のM2eタンパク質はNPのアミノ末端側およびカルボキシ末端側の両方に位置する。他の面において、M2eは1または2以上のNP配列内に位置する。なお他の面において、M2eおよびNPは互いに交互する。特に好ましい態様において、M2eタンパク質の4または8コピーはNPのアミノ末端およびカルボキシ末端の両方に位置する。1つの特に好ましい態様において、M2eタンパク質の4コピーはNPのアミノ末端およびカルボキシ末端の両方に位置する。すべての態様において、M2eタンパク質の1または2以上のコピーの後に、スペーサー配列を必要に応じて含めることができる。
【0051】
理論により拘束されないで、NPを使用して細胞障害性Tリンパ球 (CTL) およびインターフェロン (例えば、IFN-γ) の応答の誘発を促進することができ、これらの応答はインフルエンザ感染の抑制に寄与することができる。M2eはインフルエンザウイルスに対する抗体の応答の誘発を促進することができる。CTLの応答および抗体の応答は、いずれの1つの単独よりも大きい程度に個体の免疫を相乗的に増強することができる。さらに、NPは、また、M2e抗体の応答を増強することができるヘルパーTリンパ球エピトープを提供することができる。
【0052】
本発明の組成物、マルチマーM2eまたはマルチマーM2e/NPは、いっそう詳細に後述する、免疫刺激配列 (ISS) を含んでなる免疫調節化合物をさらに含んでなることができる。好ましい態様において、マルチマーは融合タンパク質として発現される。マルチマーは必要に応じてIMCと関連させる。M2eおよびNPを融合タンパク質として発現させ、この融合タンパク質をIMCに結合させることの1つの利点は製造がより容易であることである。各インフルエンザタンパク質を別々のタンパク質として発現させ、それらを別々に結合する代わりに、両方のタンパク質を一度に発現させ、IMCに接合させ、これにより製造プロセスを簡素化する。
免疫調節化合物 (IMC類) および免疫刺激配列 (ISS)
【0053】
本発明の組成物および方法は、免疫刺激配列 (ISS) を含んでなる免疫調節化合物 (IMC) の任意の型とともに利用できる。用語「IMC」は、本明細書において使用するとき、in vitro、in vivoおよび/またはex vivoで測定したとき測定可能な免疫応答を生じるオリゴヌクレオチド配列を意味する。IMCは非メチル化シトシン、グアニンジヌクレオチド配列 (例えば、シトシン、次いでグアノシンを含有し、ホスフェート結合により結合されている「CpG」またはDNA) を含有し、免疫系を刺激する。免疫系の刺激を決定する種々の方法を後述する。免疫刺激配列および/または免疫刺激核酸は、この分野において記載されてきている。
【0054】
例えば、免疫刺激核酸は米国特許第6,194,388号; 米国特許第6,207,646号および米国特許第6,239,116号に記載されてきている。IMCは種々の刊行物に記載されてきている。例えば、下記を参照のこと: 米国特許公開No. 20060058254; WO 2004/058179; 米国特許第6,589,940号; 米国特許公開No. 20040006034; 米国特許公開No. 200700027098; WO 95/55495。さらに、キメラ免疫調節化合物 (CIC類) として知られている免疫刺激核酸のクラスは、また、本発明のマルチマーとともに使用可能である。例えば、下記を参照のこと: 米国特許第7,255,868号; 米国特許公開No. 20030199466; 米国特許公開No. 20070049550; 米国特許公開No. 20030225016; 米国特許公開No. 20040132677およびWO 03/000922。
【0055】
IMCは一般に8塩基または塩基対より大きい任意の長さであることができる。他の態様において、IMCは少なくとも10、15または20塩基または塩基対長さである。ある態様において、IMCは最大30、50、60、80または100塩基または塩基対長さである。IMCは式: 5’ -X1X2CGX3X4-3’ により表されるCpGモチーフを含有し、式中X1、X2、X3およびX4はヌクレオチドである。1つの面において、本発明のIMCはa) 少なくとも1つのCGジヌクレオチドを含有する少なくとも8塩基長さのパリンドローム配列およびb) ポリヌクレオチドの5’ 末端またはその付近に少なくとも1つのTCGトリヌクレオチドを含むことができる。
【0056】
IMCは少なくとも1つの少なくとも8塩基長さのパリンドローム配列を含有し、このパリンドローム配列は少なくとも1つのCGジヌクレオチドを含有するする。また、IMCはポリヌクレオチドの5’ 末端またはその付近に少なくとも1つのTCGトリヌクレオチド配列を含有できる (すなわち、5’ -TCG) 。ある場合において、パリンドローム配列および5’ -TCGはIMC中で0、1または2塩基だけ分離されている。ある場合において、パリンドローム配列は5’ -TCGのすべてまたは一部分を含む。これらのIMCは米国特許公開No. 20060058254およびWO 2004/058179にいっそう完全に記載されている。
【0057】
他の面において、本発明のIMCはオクタマーのIMC類を含んでなり、これらは一般的にオクタマーの配列5’ -プリン、プリン、シトシン、グアニン、ピリミジン、ピリミジン、シトシン、(シトシンまたはグアニン) -3’ のCG含有配列を含んでなる。当業者にとって容易に明らかなように、このクラスの配列は下記を包含する: GACGTTCC; GACGCTCC; GACGTCCC; GACGCCCC; AGCGTTCC; AGCGCTCC; AGCGTCCC; AGCGCCCC; AACGTTCC; AACGCTCC; AACGTCCC; AACGCCCC; GGCGTTCC; GGCGCTCC; GGCGTCCC; GGCGCCCC; GACGTTCG; GACGCTCG; GACGTCCG; GACGCCCG; AGCGTTCG; AGCGCTCG; AGCGTCCG; AGCGCCCG; AACGTTCG; AACGCTCG; AACGTCCG; AACGCCCG; GGCGTTCG; GGCGCTCG; GGCGTCCG; GGCGCCCG。
【0058】
IMCは、また、下記から成る群から選択されるオクタマーを含んでなることができる: AACGTTCC; AACGTTCG; GACGTTCCおよびGACGTTCG。1つの態様において、IMCオクタマーは5’ -プリン、プリン、シトシン、グアニン、ピリミジン、ピリミジン、シトシン、グアニン-3’ を含んでなるか、あるいはIMCオクタマーは5’ -プリン、プリン、シトシン、グアニン、ピリミジン、ピリミジン、シトシン、シトシン-3’ を含んでなる。また、IMCオクタヌクレオチドは5’ -GACGTTCG-3’ 、 5’ -GACGTTCC-3’ 、 5’ -AACGTTCG-3’または5’ -AACGTTCC-3’ を含んでなることができる。
【0059】
他の面において、1018 IMCを含んでなるか、あるいは1018 IMCから成るIMCを本発明のM2eまたはM2e/NPマルチマーとの関連 (共有結合または非共有結合) において使用できる。1018 IMCの構造は、多数の科学論文ならびに特許において発表されてきている。例えば、下記を参照のこと: Hessel 他 (2005) 、J. Exp. Med. 202 (11); 1563。一般に、1018 IMCは (5’ -TGACTGTGAACGTTCGAGATGA-3’ ) (配列番号10) である。
【0060】
また、キメラ免疫調節化合物(「CIC類」) のようなIMCは、本発明のM2eまたはM2e/NPマルチマーとともに使用できる。一般に、CIC類は1または2以上の核酸部分と1または2以上の非核酸部分とを含んでなる。2以上の核酸部分をもつCIC中の核酸部分は同一であるか、あるいは異なることができる。2以上の非核酸部分をもつCIC中の非核酸部分は同一であるか、あるいは異なることができる。こうして、1つの態様において、CICは2またはそれ以上の核酸部分と1または2以上の非核酸スペーサー部分とを含んでなり、ここで少なくとも1つの非核酸スペーサー部分は2つの核酸部分に共有結合されている。ある態様において、少なくとも1つの核酸部分は配列5’ -CG-3’ を含んでなる。ある態様において、少なくとも1つの核酸部分は配列5’ -TCG-3’ を含んでなる。
M2eまたはM2e/NPマルチマーの放出
【0061】
1つの態様において、M2eまたはM2e/NPマルチマーはそれ自体で個体の中に放出される。他の態様において、マルチマーは1または2以上のIMCとともに放出される。1つの態様において、マルチマーは複合体としてIMCとともに共投与される。他の態様において、マルチマーは別のベヒクル中のIMCとともに投与される。マルチマーの投与はIMCと同時であることができる。また、以下のIMCの放出についての解説において、IMCを使用するマルチマーを放出を考える。
【0062】
また、インフルエンザマルチマーおよび/またはマルチマー/IMCを他のインフルエンザワクチンとともに投与して、インフルエンザワクチンの効能を増強することができる。インフルエンザマルチマーおよび/またはマルチマー/IMCとともに使用するために考えられるインフルエンザワクチンの型は下記を包含するが、これらに限定されない: 全ウイルスワクチン、スプリットウイルスワクチン、サブユニット精製ウイルスワクチン、組換えサブユニットワクチンおよび組換えウイルスワクチン。
【0063】
さらに、マルチマーまたはマルチマー/IMCはまたインフルエンザの多価ワクチン (例えば、1価、2価または3価) の1または2以上の成分とともに放出することができる。1つの面において、マルチマーまたはマルチマー/IMCの組成物をインフルエンザの3価不活性化ワクチン (TIV) の1または2以上の成分とともに放出させる。TIVの標準成分は、インフルエンザウイルスの3つの異なる株からの赤血球凝集素 (HA) およびノイラミニダーゼを包含する。使用できるTIVの例は下記を包含するが、これらに限定されない: フルゾン (Fluzone) 、フルビリン (Fluvirin) 、フルアリックス (Fluarix) 、フルラバル (FluLaval) 、フルブロック (FluBlock) 、フルアド (FluAd) 、インフルバック (Influvac) およびフルバックス (Fluvax) 。
【0064】
TIV類は食品および薬物投与 (Food and Drug Administration) (FDA) により使用が承認されている量で使用される。2価インフルエンザウイルス (DIV) は2つの異なるインフルエンザ株からの赤血球凝集素を含有するであろう。1価インフルエンザワクチン (MIV) はただ1つのインフルエンザ株、例えばH5N1からの赤血球凝集素およびノイラミニダーゼを含有するであろう。また、TIV、DIVおよびMIVはノイラミニダーゼ成分を含有しないで、3、2または1つのインフルエンザ株からの赤血球凝集素のみを含有することができるであろう。さらに、マルチマーまたはマルチマー/IMCは、また、3より多い分離インフルエンザ株 (4価またはそれより高い) からの赤血球凝集素およびノイラミニダーゼを含有するインフルエンザワクチンとともに放出することができるであろう。
【0065】
これらのTIV、DIVおよびMIVはマルチマーまたはマルチマー/IMC組成物と同時に投与するか、あるいはマルチマーまたはマルチマー/IMC組成物の投与の前後に間隔を置いて投与することができる。1つの面において、マルチマーまたはマルチマー/IMCは、TIV、DIVおよびMIVの投与前に個体に投与して、赤血球凝集素含有ワクチンに対する応答を増強することができる。1つの態様において、マルチマーまたはマルチマー/IMCをTIV、DIVおよびMIVの投与の約1日前に投与する。他の態様において、マルチマーまたはマルチマー/IMCをTIV、DIVおよびMIVの約2、3、4、5または6日前に投与する。他の態様において、マルチマーまたはマルチマー/IMCをTIV、DIVおよびMIVの約1週前に投与する。他の態様において、マルチマーまたはマルチマー/IMCをTIV、DIVおよびMIVの約1.5または2週前に投与する。他の態様において、マルチマーまたはマルチマー/IMCをTIV、DIVおよびMIVの約2.5、3、3.5または4週前に投与する。
【0066】
また、マルチマーまたはマルチマー/IMCは1価不活性化ワクチン (MIV) 、例えばH5N1株についてのワクチンとともに投与できる。MIVはただ1つのインフルエンザ株からの赤血球凝集素およびノイラミニダーゼを含有する。これらのMIVはマルチマーまたはマルチマー/IMC組成物と同時に投与するか、あるいはマルチマーまたはマルチマー/IMC組成物の投与の前後に間隔を置いて投与することができる。1つの面において、マルチマーまたはマルチマー/IMCはMIVの投与前に個体に投与して、MIVの応答を増強することができる。1つの態様において、マルチマーまたはマルチマー/IMCをMIVの投与の約1日前に投与する。他の態様において、マルチマーまたはマルチマー/IMCをMIVの約2、3、4、5または6日前に投与する。他の態様において、マルチマーまたはマルチマー/IMCをMIVの約1週前に投与する。他の態様において、マルチマーまたはマルチマー/IMCをMIVの約1.5または2週前に投与する。他の態様において、マルチマーまたはマルチマー/IMCをMIVの約2.5、3、3.5または4週前に投与する。
【0067】
M2e、M2e/NP、M2e/IMCおよびM2e/NP/IMC構築物を放出ベクター、例えばプラスミド、コスミド、ウイルスまたはレトロウイルスの中に組込むことができ、引き続いてこれらのベクターは治療的に有益なポリペプチド、例えばサイトカイン、ホルモンおよび抗原をコードすることができる。このようなベクター中へのIMCの組込みはそれらの活性に悪影響を与えない。
【0068】
炎症を起こした組織、例えば鼻の膜に対する組成物のターゲテッド放出のために、コロイド状分散系を使用できる。コロイド状分散系は高分子複合体、ナノカプセル、微小球、ビーズ、および液体に基づく系、例えば水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを包含する。1つの態様において、本発明のコロイド系はリポソームである。
【0069】
リポソームはin vitroおよびin vivoにおける放出ベヒクルとして有効である人工的膜小胞である。0.2〜4.0 μmの範囲の大きさを有する、大きい単層小胞 (LUV) は大きい高分子を含有する水性緩衝液の実質的な百分率を包封できることが示された。RNA、DNAおよび無傷のビリオンは水性内部内に被包することができ、生物学的に活性な形態で細胞に放出することができる (Fraley 他、Trend Biochem. Sci. 6: 77、1981) 。哺乳動物細胞に加えて、リポソームは植物、酵母菌および細菌細胞においてポリヌクレオチドを放出するために使用されてきている。
【0070】
リポソームが効率よい遺伝子転移ベヒクルであるためには、下記の特性が存在すべきである: (1) アンチセンスポリヌクレオチドを高い効率でコードする遺伝子を被包すると同時に、遺伝子の生物学的活性を危うくしない; (2) 非ターゲット細胞に比較してターゲット細胞に対する優先的なかつ実質的な結合; (3) 小胞の水性内容物をターゲット細胞の細胞質へ高い効率で放出する; および (4) 遺伝情報の正確なかつ有効な発現 (Mannino 他、Biotechniques 6: 682、1988) 。
【0071】
リポソームの組成物は、通常ステロイド、ことにコレステロールと組合わせた、リン脂質、特に相転位温度が高いリン脂質の組合わせであるのが普通である。また、他のリン脂質または他の脂肪を使用できる。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度および2価カチオンの存在に依存する。
【0072】
リポソーム製造において有効な脂肪の例は次の通りである: ホスファチジル化合物、例えばホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシドおよびガングリオシド。ジアシルホスファチジルグリセロールは特に有効であり、ここで脂質部分は14〜18個の炭素原子、特に16〜18個の炭素原子を含有し、飽和である。リン脂質の例は次の通りである: 卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリン。
【0073】
プラスミドのターゲッティングは解剖学的因子および機械論的因子に基づいて分類できる。解剖学的分類は、選択性、例えば、器官特異性、細胞特異性およびオルガネラ特異性のレベル基づく。機械論的ターゲッティングは、それが受動的または能動的であるかどうかに基づいて区別できる。受動的ターゲッティングは、洞様毛細血管を含有する器官における細網内皮系 (RES) の細胞に分配を行うリポソームの自然の傾向を利用する。他方において、能動的ターゲッティングは、リポソームを特定のリガンド、例えばモノクローナル抗体、糖、グリコリピドまたはタンパク質にカップリングすることによって、あるいは局在化の天然に存在する部位以外の器官および細胞型に対するターゲッティングを達成するためにリポソームの組成または大きさを変化させることによって、リポソームを変更することを含む。
【0074】
ターゲテッド放出系の表面は種々の方法で変更することができる。リポソームのターゲテッド放出系の場合において、脂質グループをリポソームの脂質2層中に組込んで、リポソーム2層との安定な関連にターゲッティングリガンドを維持することができる。脂質連鎖をターゲッティングリガンドに結合するために、種々のよく知られている結合基を使用できる (例えば、下記の文献を参照のこと: Yanagawa 他、Nuc. Acids Symp. Ser. 19: 189 (1988); Grabarek 他、Anal. Biochem. 185: 131 (1990); Staros 他、Anal. Biochem. 156: 220 (1986) およびBoujrad 他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5728 (1993) 。また、マルチマーまたはマルチマー/IMCのターゲテッド放出は、ウイルスおよび非ウイルスの組換え発現ベクターの表面に、抗原または他のリガンドに、モノクローナル抗体にまたは必要な結合特異性を有する任意の分子にIMCを結合させることによって達成できる。
【0075】
当業者は、また、オリゴヌクレオチド-ペプチド複合体の製造において有効な方法をよく知っているか、あるいは容易に決定することができる。結合はIMCオリゴヌクレオチドのどちらの末端においても達成することができるか、あるいは内部に位置する適当に修飾された塩基 (例えば、シトシンまたはウラシル) において達成することができる。参考のため、オリゴヌクレオチドをタンパク質におよびIgのオリゴ糖部分に結合する方法は知られている (例えば、下記の文献を参照のこと: O’Shannessy 他、J. Applied Biochem. 7: 374 (1985) 。他の有用な文献は次の通りである: Kessler: “Nonradioactive Labeling Methods for Nucleic Acids”、Kricka (編者) 、Nonisotopic DNA Probe Techniques (Acad. Press、1992)) 。
【0076】
また、本発明に従うオリゴヌクレオチドIMCとのペプチド薬物の共投与は、組換え発現ベクター (プラスミド、コスミド、ウイルスまたはレトロウイルス) 中にIMCをシスまたはトランスで組込むことによって達成することができ、ここで組換え発現ベクターはそれにより放出可能な療法的に有益なタンパク質をコードする。本発明の実施において使用する発現ベクター中へのオリゴヌクレオチドIMCの組込みを望む場合、このような組込みは当業者に対して詳細な説明を必要としない慣用技術を使用して達成できる。しかしながら、概観について、当業者は下記の文献を調べてみることができる: Ausubel、Current Protocols in Molecular Biology (前掲) 。
【0077】
簡潔には、組換え発現ベクター (どんなタンパク質をもコードせず、オリゴヌクレオチドIMCの担体として使用されるものを含む) の構築において、標準結合技術を使用する。構築されたベクター中の正しい配列を確認する分析のために、結合混合物を使用して個々の細胞を形質転換し、成功した形質転換体を適当ならば抗体耐性により選択できる。形質転換体からベクターを製造し、制限により分析しおよび/または、例えば、下記の方法により配列決定する: Messing他の法 (Nucleic Acids Res. 9: 309、1981) 、Maxam他の方法 (Methods in Enzymology 65: 499、1980) または当業者に知られているであろう他の適当な方法。切断されたフラグメントの大きさの分離は、例えば、下記に記載されているように、慣用のゲル電気泳動より実施される: Maniatis 他、Molecular Cloning pp. 133-134、1982。
【0078】
個々の細胞を発現ベクターで形質転換し、そしてプロモーターの誘発、形質転換体の選択または遺伝子の増幅に適当であるように修飾された慣用栄養培地中で培養する。培養条件、例えば温度、pHおよびその他は、発現のために選択された個々の細胞とともに従来使用されたものであり、当業者にとって明らかであろう。
【0079】
本発明において使用するオリゴヌクレオチドIMCのための担体として組換え発現ベクターを使用する場合、プラスミドおよびコスミドは病原性を欠如するために特に好ましい。しかしながら、プラスミドおよびコスミドはウイルスよりも速くin vivo分解しやすいので、全身的に投与した遺伝子治療ベクターにより発揮されるISS免疫刺激活性を実質的に阻害するために適切な投薬量のIMCを放出できない。ウイルスベクターの代替物のうちで、アデノ関連性ウイルスは病原性が低いという利点を有するであろう。アデノ関連性ウイルスは外来遺伝子を挿入する能力が比較的低いが、合成できる本発明のオリゴヌクレオチドIMCのサイズが比較的小さいために、この関係において問題は提起されないであろう。1つの態様において、DNAワクチンまたはウイルスベクターを使用してM2cマルチマーまたはM2c/NPマルチマー (必要に応じてオリゴヌクレオチドIMCを含む) を発現させる。
【0080】
本発明においてにおいて使用できる他のウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ関連性ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアまたはRNAウイルス、例えばロタウイルスを包含する。レトロウイルスベクターはネズミ、トリまたはヒトHIVレトロウイルスの誘導体であることが好ましい。単一の外来遺伝子を挿入できるレトロウイルスの例は下記を包含するが、これらに限定されない: マロネーマウス白血病ウイルス (MoMuLV) 、ハーベイネズミ肉腫ウイルス (HaMuSV) 、ネズミ乳癌ウイルス (MuMTV) およびラウス肉腫ウイルス (RSV) 。多数の追加のレトロウイルスのベクターは多数の遺伝子を組込むことができる。これらのベクターのすべては選択可能なマーカーの遺伝子を転移または組込むことができるので、形質導入された細胞を同定し、発生させることができる。
【0081】
組換えレトロウイルスは欠陥を有するので、感染性ベクター粒子を製造するために助けを必要とする。この助けは、例えば、LTR内の調節配列の制御下にレトロウイルスの構造遺伝子のすべてをコードするプラスミドを含有するヘルパー細胞系統を使用することによって、提供することができる。これらのプラスミドは、パッケージング機構が包膜のためにRNA転写物を認識できるようにするヌクレオチド配列を欠如している。パッケージングシグナルを欠失するヘルパー細胞系統は下記を包含するが、これらに限定されない: 例えば、T2、PA317およびPA 12。これらの細胞系統は、ゲノムが包装されていないので、空のビリオンを産生する。
【0082】
パッケージングシグナルが無傷であるが、構造遺伝子が問題の他の遺伝子で置換されている、このようなヘルパー細胞中にレトロウイルスベクターを導入する場合、ベクターをパッケージングし、ベクタービリオンを生じさせることができる。例えば、特定のターゲット細胞上のレセプターのリガンドをコードする他の遺伝子と一緒に、1または2以上の問題の配列をウイルスベクター中に挿入することによって、ベクターをターゲット特異性とすることができる。
【0083】
例えば、糖、グリコリピドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチドを挿入することによって、レトロウイルスのベクターをターゲット特異性とすることができる。レトロウイルスのベクターをターゲッティングする抗体を使用することによって、好ましいターゲッティングは達成される。レトロウイルスのゲノム中に挿入してオリゴヌクレオチドIMCを含有するレトロウイルスのベクターのターゲット特異的放出を可能とする、特定のポリヌクレオチド配列を当業者は知っているか、あるいは過度の実験を実施しないで容易に確認することができる。
マルチマーおよびマルチマー/IMC
【0084】
本発明は、M2cマルチマー、M2c/IMCマルチマー、M2c/NPマルチマーおよびM2e/NP/IMCマルチマーを含んでなる、すべての医薬組成物を包含する。本発明のIMCとともに使用するために好ましい薬学上許容される担体は、無菌の水性または非水性の溶液、懸濁液および乳濁液を包含することができる。非水性溶媒の例は次の通りである: プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチル。水性担体は下記を包含する: 水、アルコール性/水性の溶液、乳濁液または懸濁液、例えば生理的食塩水および緩衝化媒質。
【0085】
非経口ベヒクルは下記を包含する: 塩化ナトリウム溶液、リンガーデキシトロース、デキシトロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンガーまたは固定油。静脈内ベヒクルは下記を包含する: 流動性および栄養補充液、電解質補充液 (例えば、リンガーデキシトロースに基づくもの) およびその他。また、保存剤および他の添加剤、例えば抗菌剤、酸化防止剤、キレート化剤、および不活性気体およびその他が存在することができる。また、本発明に従う引き続く再構成および使用のために、この分野においてよく知られている手段を使用して、マルチマーまたはマルチマー/IMCを凍結乾燥することができる。選択的に、マルチマーまたはマルチマー/IMを液体であるワクチン (例えば、TIV) と組合わせて使用する場合、マルチマーまたはマルチマー/IMをその上液体として配合することができる。
【0086】
吸収促進剤、洗浄剤および化学的刺激剤(例えば、ケラチン溶解剤)はターゲット組織中へのIMC組成物の透過を増強することができる。有機およびペプチドに基づく薬物を首尾よく放出させたるために使用されてきている吸収促進剤および洗浄剤に関する一般的原理に関する参考文献は次の通りである: Chien、Novel Drug Delivery System、Ch. 4 (Marcel Dekker、1992) 。
【0087】
特に適当な鼻吸収促進剤の例はChien前掲のCh. 5、表2および3に記載されている; より温和な促進剤が好ましい。また、粘膜/鼻の放出のために本発明の方法において使用する適当な促進剤は下記の文献に開示されている: Chang 他、Nasal Drug Delivery、“Treatise on Controlled Drug Delivery”、Ch. 9およびその表3-4B (Marcel Dekker、1992) 。皮膚を通す薬物の吸収を増強することが知られている適当な促進剤は下記の文献に開示されている: Sloan、Use of Solubility Parameters from-Regular Solution Theory to Describe Partitioning-Driven Processes、Ch. 5、“Prodrugs: Topical and Ocular Drug Delivery” (Marcel Dekker、1992) およびこのテキストのいずれかの場所。
【0088】
また、医薬組成物はインフルエンザウイルスに対する免疫応答の誘発に使用するために配合されるワクチンを包含することができる。1つの面において、本発明は、M2eの少なくとも2つのコピーを含んでなるマルチマーの組成物を含んでなるワクチンを提供する。また、ワクチンはNPをさらに含むことができる。1つの態様において、ワクチンはNPとM2eの少なくとも2つのコピーとを含んでなる融合タンパク質を含んでなる組成物を含有する。また、これらのワクチンは本明細書に記載する方法で必要に応じてIMCをさらに含む。使用できるIMCの例は下記を包含するが、これらに限定されない: 1018 ISS、7909および他のB型オリゴ、CIC類、例えばC295およびその他、C型オリゴ、例えばC792およびその他。
【0089】
また、ワクチンは本明細書に記載する担体を含むことができる。使用できる担体の例は下記を包含するが、これらに限定されない: 明礬、微小粒子、リポソームおよびナノ粒子。さらに、本発明のワクチンは1価、2価または1つの3価不活性化インフルエンザワクチン (TIV) の1または2以上の成分を含有することができる。使用できる1価ワクチンの例はH5汎発流行病ワクチンである。使用できるTIVの非限定的例は次の通りである: フルゾン (Fluzone) 、フルビリン (Fluvirin) 、フルアリックス (Fluarix) 、フルラバル (FluLaval) 、フルブロック (FluBlock) 、フルアド (FluAd) 、インフルバック (Influvac) およびフルバックス (Fluvax) である。
個体にマルチマーまたはマルチマー/IMCを投与する方法および経路
【0090】
本発明のマルチマーまたはマルチマー/IMC組成物およびワクチンは、薬物放出に適当な任意の利用可能な方法および経路で投与される。好ましい態様において、本発明のマルチマーまたはマルチマー/IMC組成物およびワクチンは、他の標準インフルエンザワクチンと同様に、針を使用する注射により投与される。1つの態様において、IMCを含むかまたは含まないマルチマーは当業者に知られている任意の放出手段により、上部および/または下部の気道に放出される。好ましい態様において、IMCを含むかまたは含まないマルチマーはワクチンとして放出される。
【0091】
必要に応じて、マルチマーは他の1価、2価または3価のインフルエンザワクチンとともに投与される。他の可能な放出法は鼻内放出である。マルチマーまたはマルチマー/IMCの他の可能な放出法はガス注入法である。他の投与法はex vivo法 (例えば、マルチマーまたはマルチマー/IMCとインキュベートまたはトランスフェクトした細胞の放出) ならびに全身的または局在化経路を含む。当業者は認識するように、IMCを個体の中に向ける放出の方法および経路はIMCのin vivo分解を回避すべきである。
【0092】
インフルエンザウイルス感染のような呼吸器障害を扱うとき、鼻内投与手段は特に有効である。このような手段は、本発明のマルチマーまたはマルチマー/IMC組成物のエーロゾル懸濁液の吸入を包含する。鼻粘膜、気管および細気管支へのマルチマーまたはマルチマー/IMC組成物の放出に適当な噴霧装置はこの分野においてよく知られており、したがってここで詳述しない。鼻内薬物放出に関する一般的概観は下記の文献を調べてみることができる: Chien、Novel Drug Delivery System、Ch. 5 (Marcel Dekker、1992) 。
【0093】
1つの面において、本発明のマルチマーまたはマルチマー/IMC組成物およびワクチンはそれを必要とする個体に約0.1μg〜約5 mg、より好ましくは0.25μg〜3 mg、さらにより好ましくは0.5μg〜1 mg、さらにより好ましくは0.75μg〜500μg、さらにより好ましくは1μg〜100μgの投与量で投与される。
本発明の方法の実施において使用するキット
【0094】
上記方法において使用するために、本発明によりキットがまた提供される。このようなキットは下記のいずれかまたはすべてを含むことができる: M2e、M2e/NP、M2e/IMC (結合または非結合) 、M2e/NP/IMC (結合または非結合) のマルチマー、薬学上許容される担体 (IMCと前もって混合することができる) または凍結乾燥されたマルチマーまたはマルチマー/IMCを再構成するための懸濁基剤、追加の薬剤、各IMCおよび追加のマルチマーのための無菌のバイアル、またはそれらの混合物のための単一のバイアル、個体に対するマルチマーまたはマルチマー/IMCの放出に使用する装置、探求した免疫調節作用が処置した個体において達成された徴候を検出するアッセイ試薬、マルチマーまたはマルチマー/IMCを投与する方法および時間のインストラクションおよび適当なアッセイ装置。
【0095】
さらに、本発明は、また、M2cマルチマーまたはM2c/NPマルチマー (IMCに対して結合しているか、あるいはしていない) とインフルエンザウイルス (例えば、TIV) の1または2以上の成分とを含んでなるキットを提供する。
本発明の方法
【0096】
本発明の組成物および/またはワクチンは、インフルエンザウイルスの異なる株による感染を防除する免疫応答を誘発させるために使用できる。免疫応答のターゲットであることができるインフルエンザウイルスの典型的な株を第1図に示す。ヒト、トリおよびブタのM2eのコンセンサス配列およびそれらの変異型を第1図に示す。NPのコンセンサス配列およびその変異型を第2図に示す。インフルエンザウイルスに対する免疫応答は、体液性応答または細胞の免疫応答または両方の応答の組合わせであることができる。
【0097】
動物または細胞の集団における免疫応答は下記を包含するいずれかの方法で検出することができる: IFN-γ、IFN-α、IL-2、IL-12、TNF-α、IL-6、IL-4、IL-5、IP-10、ISG-54K、MCP-1の1または2以上の発現の増加、または免疫刺激の特徴を示す遺伝子発現プロファイルの変化ならびにB細胞集団および樹状細胞成熟のような応答。細胞集団において免疫応答を刺激する能力は、例えば、免疫抑制因子についてのアッセイ系において、多数の用途を有する。
【0098】
マルチマーに対する免疫応答の分析 (定性的および定量的の両方) はこの分野において知られている任意の方法によることができ、このような方法は下記を包含するが、これらに限定されない: 抗原特異的抗体の産生の測定 (特異的抗体 + サブクラスの測定を含む) 、リンパ球、例えばCD4+ T細胞、NK細胞またはCTL類の特異的集団の活性化の測定、サイトカイン、例えばIFN-γ、IFN-α、IL-2、IL-4、IL-5、IL-10またはIL-12の産生および/またはヒスタミンの放出の測定。
【0099】
特異的抗体応答を測定する方法は酵素結合免疫収着アッセイ (ELISA) を包含し、この分野においてよく知られている。リンパ球、例えばCD4+ T細胞の特異的型の数の測定は、例えば蛍光活性化細胞ソーティング (FACS) を使用して達成できる。細胞障害性およびCTLのアッセイは、例えば、下記の文献に記載されているように実施できる: Raz 他 (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 9519-9523およびCho他 (2000) 。サイトカイン濃度は、例えばELISAにより測定できる。免疫原に対する免疫応答を評価するこれらおよび他のアッセイはこの分野においてよく知られている。例えば、下記を参照のこと: SELECTED METHODS IN CELLULAR IMMUNOLOGY (1980) 編者: MishellおよびShiigi、W. H. Freeman and Co.。
【0100】
好ましくは、Th1型応答は刺激、すなわち、誘発および/または増強される。本発明を参照すると、マルチマーまたはマルチマー/IMCで処理しない対照細胞に比較してマルチマーまたはマルチマー/IMCで処理した細胞からのサイトカイン産生を測定することによって、Th1型免疫応答をin vitroまたはex vivoで決定できる。細胞のサイトカイン産生を決定する方法は、本明細書に記載する方法およびこの分野において知られている方法を包含する。マルチマーまたはマルチマー/IMC処理に応答して産生されたサイトカインの型は、細胞によるTh1型またはTh2型バイアスト免疫応答を示す。
【0101】
本明細書において使用するとき、用語「Th1型バイアスト」サイトカイン産生は、刺激の非存在下のこのようなサイトカインの産生に比較した刺激の存在下のTh1型免疫応答に関連するサイトカイン産生の測定可能な増加を意味する。このようなTh1型バイアストサイトカインの例は下記を包含するが、これらに限定されない: IL-2、IL-12、IFN-γ、IFN-αおよびTNF-α。対照的に、「Th2型バイアストサイトカイン」はTh2型免疫応答に関連するものを意味し、下記を包含するが、これらに限定されない: IL-4、IL-5およびIL-13。マルチマーまたはマルチマー/IMC活性の決定に有効な細胞は、免疫系の細胞、個体から単離された一次細胞および/または細胞系統、好ましくはAPC類およびリンパ球 (例えば、マクロファージおよびT細胞) および脾細胞を包含する。
【0102】
また、Th-1免疫応答の刺激はマルチマーまたはマルチマー/IMCで処置した個体において測定可能であり、この分野において知られている方法により実施することができ、このような方法は下記を包含するが、これらに限定されない: (1) マルチマーまたはマルチマー/IMCによる処置前後に測定したINF-γ; (2) マルチマーまたはマルチマー/IMCによる処置前後のIL-12、IL-18および/またはIFN (ρ、δまたはγ) のレベルの増加; (3) マルチマーまたはマルチマー/IMCで処置しない対照に比較したマルチマーまたはマルチマー/IMC処置個体における「Th1型バイアスト」抗体産生。
【0103】
種々のこれらの決定は、本明細書に記載する方法またはこの分野において知られている方法をin vitroまたはex vivoで使用して、脾細胞、APC類および/またはリンパ球によりつくられたサイトカインを測定することによって実施できる。これらの決定のいくつかは、本明細書に記載する方法またはこの分野において知られている方法を使用してインフルエンザ特異的抗体のクラスおよび/またはサブクラスを測定することによって実施できる。
【0104】
マルチマーまたはマルチマー/IMC処置に応答して産生された抗原特異的 (すなわち、インフルエンザ特異的) 抗体のクラスおよび/またはサブクラスは、細胞によるTh1型またはTh2型バイアスト免疫応答を示す。本明細書において使用するとき、用語「Th1型バイアスト」抗体の産生は、Th1型免疫応答に関連する抗体 (すなわち、Th1型関連抗体) 産生の測定可能な増加を意味する。1または2以上のTh1関連抗体を測定できる。
【0105】
このようなTh1型バイアスト抗体の例は下記を包含するが、これらに限定されない: ヒトIgG1および/またはIgG3 (例えば、下記の文献を参照のこと: Widhe他 (1998) Scand. J. Immunol. 47:575-581およびde Martino他 (1999) Ann. Allergy Asthma Immunol. 83: 160-164) およびネズミIgG2a。対照的に、「Th2型バイアスト抗体」はTh2型免疫応答に関連する抗体であり、下記を包含するが、これらに限定されない: ヒトIgG2、IgG4および/またはIgE (例えば、下記の文献を参照のこと: Widhe他 (1998) およびde Martino他 (1999)) およびネズミIgG1および/またはIgE。
【0106】
マルチマーまたはマルチマー/IMCの投与の結果として起こるTh1型バイアストサイトカイン誘発は、細胞の免疫応答、例えば、NK細胞、細胞障害性キラー細胞、Th1ヘルパー細胞および記憶細胞により実行される免疫応答を増強させる。これらの応答は、特にインフルエンザウイルスの種々の株に対する保護的および療法的ワクチン接種において使用するために有益である。それ自体として、本発明の組成物およびワクチンはインフルエンザウイルスの多数の株に対して予防接種をする万能ワクチンとして使用できる。
【0107】
また、マルチマーおよび/またはマルチマー/IMCの組成物およびワクチンは、個体におけるインフルエンザウイルスによる感染に関連する1または2以上の症状を改善するために使用することができる。これは、マルチマーが個体において免疫応答を誘発することができるインフルエンザマトリックスタンパク質 (M2e) の細胞外ドメインのマルチマーを含んでなるワクチンを個体に投与することによって達成される。インフルエンザウイルスによる感染に関連する症状は下記を包含するが、これらに限定されない: 身体の痛み (特に関節および咽喉) 、せきおよびくしゃみ、極端な風邪および発熱、疲労、頭痛、刺激された目やにの出ている目、鼻の鬱血、悪心および嘔吐、および赤くなった目、皮膚 (特に顔) 、口、咽喉および鼻。1つの態様において、ワクチンはNPを含んでなる。本発明の1つの態様において、ワクチンはIMCをさらに含んでなる。
【0108】
本発明の他の面において、本発明の組成物およびワクチンは、(a) M2eの少なくとも2つのコピーを含んでなるワクチンおよび (b) 1価、2価または3価の不活性化ワクチン (TIV) の1または2以上の成分を個体に投与することによって、インフルエンザウイルスによる感染の可能性を減少させる方法を提供する。TIVの例は下記を包含するが、これらに限定されない: フルゾン (Fluzone) 、フルビリン (Fluvirin) 、フルアリックス (Fluarix) 、フルラバル (FluLaval) 、フルブロック (FluBlock) 、フルアド (FluAd) 、インフルバック (Influvac) およびフルバックス (Fluvax) 。ある態様において、ワクチンは上に記載したようにNPをさらに含んでなる。他の態様において、ワクチンは本明細書に記載しかつこの分野において知られている方法でIMCをさらに含んでなる。
【0109】
以下の実施例により本発明のいくつかの面を例示するが、これらの実施例は本発明をいかなる方法においても限定しない。
【実施例】
【0110】
実施例1.8x (M2e) - NP - 6xHisTag (N8 - hisタッグド) の構築
核タンパク質遺伝子に対して5’ に融合されたマトリックス2 (M2e) の細胞外部分の8コピーを含有する構築物をつくり、大腸菌 (E. coli) 中で発現させた。この構築物のヌクレオチド配列は次の通りである (下線が引かれている配列はプラスミドベクター中に遺伝子構築物をクローニングするために使用した制限酵素部位を示す。):
【0111】
【化1】

【0112】
【化2】

【0113】
下記は融合タンパク質のタンパク質配列である:
【化3】

【0114】
実施例2.4x (M2e) - NP -4x (M2e) - 6xHisTag (N4/C4 - hisタッグド) の構築
核タンパク質遺伝子に対して3’ および5’ に融合されたM2e遺伝子の4コピーを含有する構築物をつくり、大腸菌 (E. coli) 中で発現させた。この構築物のヌクレオチド配列は次の通りである:
【0115】
【化4】

【0116】
【化5】

【0117】
下記は融合タンパク質のタンパク質配列である:
【化6】

【0118】
実施例3.4x (M2e) - NP - 6xHisTag (N4 - hisタッグド) の構築
核タンパク質遺伝子に対して5’ に融合されたM2e遺伝子の4コピーを含有する構築物をつくり、大腸菌 (E. coli) 中で発現させた。この構築物のヌクレオチド配列は次の通りである:
【0119】
【化7】

【0120】
下記は融合タンパク質のタンパク質配列である:
【化8】

【0121】
実施例4.4x (M2e-スペーサー) - NP - 6xHisTag (N4類 - hisタッグド) の構築
M2e遺伝子の4コピーと核タンパク質遺伝子に対して5’ に融合されたスペーサーとを含有する構築物をつくり、大腸菌 (E. coli) 中で発現させた。この構築物のヌクレオチド配列は次の通りである:
【0122】
【化9】

【0123】
【化10】

【0124】
下記は融合タンパク質のタンパク質配列である:
【化11】

【0125】
実施例5.8x (M2e) - NP (N8 - 非hisタッグド) の構築
核タンパク質遺伝子に対して5’ に融合されたM2e遺伝子の8コピーを含有する構築物をつくり、大腸菌 (E. coli) 中で発現させた。この構築物のヌクレオチド配列は次の通りである:
【0126】
【化12】

【0127】
【化13】

【0128】
下記は融合タンパク質のタンパク質配列である:
【化14】

【0129】
実施例6.4x (M2e) - NP -4x (M2e) (N4/C4 - 非hisタッグド) の構築
核タンパク質遺伝子に対して5’ および3’ の両方に融合されたM2e遺伝子の4コピーを含有する構築物をつくり、大腸菌 (E. coli) 中で発現させた。この構築物のヌクレオチド配列は次の通りである:
【0130】
【化15】

【0131】
【化16】

【0132】
下記は融合タンパク質のタンパク質配列である:
【化17】

実施例7.4x M2e - NP (N4 - 非hisタッグド) の構築
核タンパク質遺伝子に対して5’ に融合されたM2e遺伝子の4コピーを含有する構築物をつくり、大腸菌 (E. coli) 中で発現させた。この構築物のヌクレオチド配列は次の通りである:
【0133】
【化18】

【0134】
下記は融合タンパク質のタンパク質配列である:
【化19】

実施例8.4x (M2e-スペーサー) - NP (N4類 - hisタッグド) の構築
【0135】
核タンパク質遺伝子に対して5’ に融合されたスペーサーをもつM2e遺伝子の4コピーと核タンパク質とを含有する構築物をつくり、大腸菌 (E. coli) 中で発現させた。この構築物のヌクレオチド配列は次の通りである:
【0136】
【化20】

【0137】
【化21】

【0138】
下記は融合タンパク質のタンパク質配列である:
【化22】

【0139】
実施例9.NP - 8x (M2e) (C8 - 非hisタッグド) の構築
【0140】
核タンパク質遺伝子に対して3’ で融合されたM2e遺伝子の8コピーを含有する構築物をつくり、大腸菌 (E. coli) 中で発現させた。この構築物のヌクレオチド配列は次の通りである:
【0141】
【化23】

【0142】
実施例10.NP、M2eおよびIMCの共有結合および非共有結合の複合体
この実施例において、製造されたNP、M2eおよびIMCを含んでなる、種々の共有結合および非共有結合の複合体を説明する。アセチル化M2eペプチドを3’ チオ295 ISSに結合して「二重複合体」を製造した。次いで多数の (単一を含む) のコピーを引き続いてNPタンパク質に結合させた。同時に、「競合的結合性複合体」NPタンパク質をNHS活性化M2eペプチドおよびNHS活性化3’ 295 ISSに結合した。すべての反応体を同時に添加することによって、NPタンパク質上の同一部位に対してIMCおよびM2eペプチドを競合的に結合させる。NPタンパク質中の自然RNA結合性ポケットを使用してM2e-IMC複合体のIMC成分を非共有結合的に捕捉することによって、「イオン関連複合体」を製造した。過剰のM2e-IMC複合体を遊離NPタンパク質と反応させて、非共有結合タンパク質結合ペプチド複合体を生じさせた。
【0143】
実施例11.IMCに結合したM2eペプチドは、明礬とともに放出させたとき、強い抗体応答を誘発させる。
インフルエンザM2タンパク質 (M2e) 単独 (5μg) の細胞外ドメインを表す合成ペプチド、1018 ISS (20μg) と混合したM2e (5μg) 、1018 ISS (ほぼ20μg) に結合したM2e (5μg) または明礬に結合したM2e-1018 ISS複合体を2週の間隔で2回筋肉内注射して、10匹のBALB/cマウスのグループを免疫化した。第2免疫化後2週に、マウスを放血させ、抗M2eペプチドIgG1およびIgG2a抗体の力価をELISAにより測定した。M2e単独は免疫原性ではなく、検出可能なIgG1およびIgG2a抗体を誘発しなかった。同様に、1018 ISSと混合したM2eは免疫原性ではなかった。M2e-1018 ISS複合体は免疫原性であり、それぞれIgG1およびIgG2aについて、ほぼ21,000および10,000の抗M2e幾何平均力価を誘発した。明礬に放出結合したM2e-1018 ISS複合体は非常に免疫原性であり、それぞれIgG1およびIgG2aについて、94,000および39,500の抗M2e力価を誘発した。
【0144】
実施例12.M2e-1018 ISS複合体は、明礬またはDOTAPとともに放出させたとき、免疫原性であり、そしてNPの添加はM2e応答に影響を与えた。
1018 ISS (ほぼ20μg) に結合したM2e (5μg) 、またはインフルエンザ核タンパク質 (NP、10μg) と混合したM2e-1018 ISS複合体、明礬に結合したM2e-1018 ISS複合体、明礬に結合しそしてNPと混合したM2e-1018 ISS複合体、またはカチオン性脂質DOTAPとともに放出させたM2e-1018 ISS複合体、またはNPと混合しそしてDOTAPとともに放出させたM2e-1018 ISS複合体を2週の間隔で2回筋肉内注射して、10匹のBALB/cマウスのグループを免疫化した。第2免疫化後2週に、マウスを放血させ、抗M2eペプチドIgG1およびIgG2a抗体の力価をELISAにより測定した。実施例1におけるように、M2e-1018 ISS複合体は免疫原性であり、それぞれIgG1およびIgG2aについて、ほぼ6,600および2,000の比較的低い抗M2e幾何平均力価を誘発した。
【0145】
NPと混合したM2e-1018 ISS複合体は減少した抗M2e IgG1力価 (1,000の幾何平均) を与えたが、M2e-1018 ISS複合体単独に比較して非常に同様なIgG2a力価 (2,200) を与えた。明礬上のポリマーの立体配置におけるM2e-IMC複合体の放出は抗M2e IgG1およびIgG2aの両方の力価を誘発し、これらの力価はM2e-1018 ISS複合体単独で誘発された力価よりも有意に高かった (それぞれ21,000および14,000の幾何平均) 。再び、M2e-1018 ISS複合体 + 明礬配合物にNPを添加すると、生ずる抗M2e IgG1力価を約50%だけ減少させ、そして生ずる抗M2e IgG2a力価を2倍増加させた。DOTAP配合物中のM2e-1018 ISSの放出はM2e-1018 ISS複合体 + 明礬配合物と同様なIgG1力価を誘発したが、明礬配合物よりも有意に低いIgG2a力価を誘発した。
【0146】
実施例13.M2e-1018 ISS明礬配合物の免疫原性
明礬とともに放出した1018 ISS (ほぼ20μg) に結合したM2e (5μg) 、明礬とともに放出した1018 ISS (ほぼ20μg) と混合したM2e (5μg) 、1018 ISS (20μg) と混合したM2e (5μg) および明礬とともに放出したNP (10μg)、またはNP (10μg) および明礬と混合したM2e-1018 ISS複合体を2週の間隔で2回筋肉内注射して、5匹のBALB/cマウスのグループを免疫化した。第2免疫化後2週に、マウスを放血させ、抗M2eペプチドIgG1およびIgG2a抗体の力価をELISAにより測定した。明礬とともに放出したM2e-1018 ISSは1018 ISSと混合し、明礬とともに放出したM2eよりも有意に高い抗M2e IgG1応答を誘発した (それぞれ266,000対17,000) 。NPを非IMC結合M2e + 明礬に添加すると、M2eに対する両方のIgG1 (17,000 → 700) およびIgG2a (13,000 → < 600) 応答は劇的に減少した。実施例2に一致して、NPをM2e-1018 ISS複合体 + 明礬配合物に添加すると、抗M2e IgG1応答はわずかに減少し (187,000対266,000) そして抗M2e IgG2応答は約2倍増加した (40,000対15,500) 。
【0147】
実施例14.M2eおよびNPの融合タンパク質はM2eおよびNPの両方に対する抗体応答を誘発することができる。
実施例5に記載する融合タンパク質N8 (非Hisタッグド) を本明細書に記載するように構築した。N8融合タンパク質単独 (10μg) 、一次的注射で完全フロイントアジュバント (CFA) および二次的免疫化で不完全フロイントアジュバント (IFA) とともに放出したN8融合タンパク質 (10μg) 、または明礬とともに放出したM2e-1018 ISS複合体 (5μgのM2eペプチド、20μgの1018 ISS) を2週の間隔で2回筋肉内注射して、5匹のBALB/cマウスのグループを免疫化した。第2免疫化後2週に、マウスを放血させ、抗M2eペプチドおよび抗NP IgG1およびIgG2a抗体の力価をELISAにより測定した。
【0148】
N8融合タンパク質単独はM2eに対して測定可能なIgG1およびIgG2a応答を発生した (それぞれ5,600および2,000) 。N8融合タンパク質をCFA/IFAとともに放出したとき、抗M2e IgG1力価は抗原単独と比較して約17倍増加し (95,000) そしてIgG2aは約4倍増加した (9,400) 。N8 M2e/NPで誘発した抗M2e IgG1力価はM2eペプチド-IMC複合体 + 明礬配合物で発生させたIgG1力価に類似したが、IgG2a力価は約5倍低かった (それぞれ118,000および48,000) 。N8 M2e/NP融合タンパク質は、CFA/IFAアジュバントを使用するか、あるいは使用しない力価に類似する、強い抗NP IgG1力価を発生した (それぞれ104,000および110,000) 。抗NP IgG2a応答はCFA/IFAアジュバントを使用するか、あるいは使用しないN8融合タンパク質についてと同様であり、IgG1力価よりも約6倍低かった。期待するように、M2eペプチド-IMC複合体 + 明礬配合物はNPに対して測定可能な抗体応答を発生しなかった。
【0149】
実施例15.異なるアジュバントを使用するM2e/NP融合タンパク質の免疫原性
融合タンパク質N8 (非Hisタッグド) (実施例5記載したような) およびN4/C4 (非Hisタッグド) (実施例6記載したような) を本明細書に記載するように構築した。明礬とともに放出したN4/C4融合タンパク質 (10μg) 、明礬とともに放出したN8融合タンパク質 (10μg) 、イスコマトリックス (Iscomatrix) アジュバントとともに放出したN4/C4融合タンパク質 (10μg) 、イスコマトリックスとともに放出したN8融合タンパク質 (10μg) 、1018 ISS (10μg) と混合したN8融合タンパク質 (10μg) 、または明礬とともに放出したM2eペプチド-1018 ISS複合体 (5μgのM2eペプチド、20μgの1018 ISS) を2週の間隔で2回筋肉内注射して、5匹のBALB/cマウスのグループを免疫化した。第2免疫化後2週に、マウスを放血させ、抗M2eペプチドおよび抗NP IgG1およびIgG2a抗体の力価をELISAにより測定した。
【0150】
明礬またはイスコマトリックスとともに放出したN8およびN4/C4融合タンパク質のすべては同様な抗M2e IgG1力価を生成し、そしてこれらの力価はM2eペプチド-1018 ISS + 明礬配合物を使用して発生させたと同一の範囲および力価であった (45,000〜56,000対74,500) 。N8 + 1018 ISS配合物は非常に低い抗M2e IgG1力価を生成した (1,000) 。イスコマトリックスまたは1018 ISSとともに放出した融合タンパク質およびM2eペプチド-IMC + 明礬配合物のすべては、融合タンパク質 + 明礬配合物よりも高い抗M2e IgG2a力価を生成した (4,200〜19,000対1,500) 。これは、マウスにおけるIgG2aの生成に導くTh1応答を誘発するイスコマトリックスおよび1018 ISSアジュバントの既知能力と一致する。
【0151】
N8 + 明礬およびN4/C4 + 明礬配合物の両方は、NPに対して強いIgG1応答および低いIgG2a応答を誘発した (それぞれ29,000および49,000) 。N8 + イスコマトリックスおよびN4/C4 + イスコマトリックス配合物の両方は、NPに対して明礬配合物よりもいっそうバランスのとれたIgG1/IgG2a応答を誘発した (それぞれIgG1について16,000および9,000、およびIgG2aについて28,000および16,000) 。N8 + 1018 ISS配合物はNPに対して低いIgG1およびIgG2a応答を誘発した。M2eペプチド配合物は、期待するように、NPに対して測定可能な抗体応答を誘発しなかった。
【0152】
実施例16.異なるアジュバントとともに放出したM2e/NP融合タンパク質の免疫原性
単独で放出したN8融合タンパク質 (25μg) 、明礬と、MF59アジュバントと、MF59 + 1018 ISS (25μg) とまたは1018 ISS (25μg) ととともに放出したN8融合タンパク質 (25μg) 、または明礬とともに放出したN4/C4融合タンパク質 (25μg) を2週の間隔で2回筋肉内注射して、5匹のBALB/cマウスのグループを免疫化した。5匹のマウスの対照グループにはPBSのみを与えた。第2免疫化後2週に、マウスを放血させ、抗M2eペプチドおよび抗NP IgG1およびIgG2a抗体の力価をELISAにより測定した。第2免疫化後4週に、マウスを殺し、脾臓を収集し、脾細胞をELISPOTアッセイにおいて使用して、IFN-γを生成するNP特異的T細胞の数を決定した。
【0153】
N8融合タンパク質単独はM2e特異的IgG1およびIgG2aの両方の抗体を低いレベルで生成した (それぞれ2,700および < 600) 。明礬とともに放出したN8融合タンパク質、MF59とともに放出したN8、および明礬とともに放出したN4/C4のすべてはIgG1がIgG2aより高い同様な抗M2e抗体力価を生成した (それぞれIgG1について33,000、21,500および40,000対IgG2aについて < 600、800および1000) 。N8 + MF59配合物の中に1018 ISSを添加すると、抗M2e IgG1力価は約50%だけ減少したが、IgG2a力価は28倍増加した (それぞれ10,000対21,000) 。N8 + 1018 ISS配合物はIgG1およびIgG2aの両方について低い抗M2e力価を生成した (900および2,400) 。
【0154】
N8融合タンパク質単独はIgG1がIgG2aより高い強い抗NP力価を生成した (それぞれ115,000および9,000) 。明礬またはMF59アジュバントを使用すると、これらの応答は約2倍増加した。N4/C4 + 明礬はN8 + 明礬で生成した力価に類似する抗NP力価を生成した。MF59 + 1018 ISSと組合わせたN8の放出は、明礬またはMF59配合物よりも非常に高いIgG2a応答および非常に低いIgG1応答を生ずる抗体応答のシフトを誘発した (それぞれ413,000および49,000) 。1018とともにN8を放出すると、IgG1からIgG2aへのシフトが示された (それぞれ2,600および40,000) が、全体の力価はN8 + MF59 + 1018 ISSグループにおける力価よりも非常に低かった。
【0155】
ELISPOTアッセイを使用して、N8単独、N8 + 明礬、N8 + MF59およびN8 + 1018 ISS配合物のすべては、BALB/cマウスについてNP特異的CD8ペプチドを使用するか、あるいは全NPアミノ酸配列をカバーするペプチドプール (60〜90 sfu/106細胞) を使用する再刺激後、同様な数のIFN-γスポット形成細胞を産生した。NP特異的IFN-γスポット形成細胞の数は、他のグループにおけるよりもC8 + MF59 + 1018 ISSを受け取ったグループにおいて実質的に高かった (180〜290 sfu/106細胞) 。
【0156】
実施例17.動物の研究
【0157】
BALB/cマウス (10匹/グループ) を上に示すNP/M2e構築物、IMCに結合したNP/M2e構築物または対照物質 (NPおよびM2e単独、NP-IMCおよびM2e-IMC/明礬) で2回免疫化する (例えば、週0および2において) 。第2免疫化後2週に、マウスを放血させ、血清をアッセイしてNPおよびM2e特異的抗体応答を決定する。マウス脾臓を収集し、IFN-γおよびIL-4 ELISPOTおよび/またはサイトカインELISAを使用して、脾細胞をNP特異的細胞についてin vitroアッセイする。
【0158】
実施例18.マルチマーおよびTIVを使用する免疫化
インフルエンザによる感染の危険状態にあるか、あるいは免疫応答の誘発を必要とする個体に、下記の1または2以上の組合わせでワクチン接種をする: (1) M2c/IMCマルチマー + 3価不活性化ワクチン (TIV); (2) M2e/IMCおよびNP/IMCマルチマー + TIV; (3) M2e/NP/IMCマルチマー + TIV。個体を必要に応じてワクチン接種の前後に監視して、免疫学的応答 (例えば、体液性および/または細胞の応答) および/または生理学的応答 (例えば、インフルエンザ感染との症状的関連性の減少) 。マルチマーの使用量は1μg〜100μgであり、そしてインフルエンザウイルスによる感染の危険を減少するためにTIVと組合わせて使用する。
【0159】
明確さおよび理解を目的として例示および実施例により本発明を多少詳細に説明してきたが、当業者にとって明らかなように、ある種の変化および変更は可能である。したがって、これらの説明および実施例は本発明の範囲を限定するとして解釈すべきでない。
【0160】
本明細書において引用するすべての特許、特許出願および刊行物は、各個々の刊行物、特許または特許出願が引用することによって本明細書の一部分とされるとして特別にかつ個々に示しているのと同程度に、すべての目的に対してそれらの全体において引用することによって本明細書の一部とされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフルエンザマトリックスタンパク質 (M2e) が免疫系に対してマルチマー展示として提示され、個体において免疫応答を誘発することができる、M2eの細胞外ドメインのマルチマーを含んでなる組成物。
【請求項2】
M2eの少なくとも2つのコピーを非タンパク質プラットホーム分子と関連させることによって、マルチマー展示を達成する、請求項1の組成物。
【請求項3】
免疫刺激配列 (ISS) を含んでなる免疫調節化合物 (IMC) をさらに含んでなる、請求項1または2の組成物。
【請求項4】
IMCをマルチマーに関連させる、請求項3の組成物。
【請求項5】
核タンパク質 (NP) をさらに含んでなる、請求項1〜4のいずれかの組成物。
【請求項6】
M2eの少なくとも2つのコピーをNPに共有結合的またはイオン的に結合させることによって、マルチマー展示を達成させる、請求項5の組成物。
【請求項7】
M2eの少なくとも2つのコピーとNPとを含んでなる融合タンパク質により、マルチマー展示を達成する、請求項6の組成物。
【請求項8】
M2eのコピーがNPのカルボキシ末端側に位置する、請求項7の組成物。
【請求項9】
M2eのコピーがNPのアミノ末端側に位置する、請求項7の組成物。
【請求項10】
M2eのコピーがNPのカルボキシ末端側およびアミノ末端側の両方に位置する、請求項7の組成物。
【請求項11】
NPに関連するISSを含んでなるIMCをさらに含んでなる、請求項5〜10のいずれかの組成物。
【請求項12】
担体をさらに含んでなる、請求項1〜11のいずれかの組成物。
【請求項13】
担体が明礬、微小粒子、リポソームおよびナノ粒子から成る群から選択される、請求項12の組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかの組成物を含んでなるワクチン。
【請求項15】
アジュバントをさらに含んでなる、請求項14のワクチン。
【請求項16】
少なくとも1つの3価不活性化インフルエンザワクチン (TIV) の1または2以上の成分をさらに含んでなる、請求項14のまたは15のワクチン。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれかのワクチンを個体に投与することによって、個体におけるインフルエンザウイルスによる感染に関連する1または2以上の症状を改善する方法。
【請求項18】
請求項14〜16のいずれかのワクチンを個体に投与することを含んでなる、個体におけるインフルエンザウイルスによる感染の可能性を減少させる方法。
【請求項19】
請求項14〜15のいずれかのワクチンと1価不活性化ワクチンの1または2以上の成分とを個体に投与することを含んでなる、個体におけるインフルエンザウイルスによる感染の可能性を減少させる方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−536878(P2010−536878A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522039(P2010−522039)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/073921
【国際公開番号】WO2009/026465
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(501161136)ダイナバックス テクノロジーズ コーポレイション (13)
【Fターム(参考)】