説明

インフルエンザワクチンの生成

本発明は、概ね、インフルエンザウイルスに対する改善されたワクチンを生成するための材料および方法に関し、ワクチンは、同じインフルエンザAウイルス亜型またはインフルエンザB株のウイルスからの赤血球凝集素遺伝子およびノイラミニダーゼ遺伝子、ならびに異なるインフルエンザA亜型ウイルスまたはインフルエンザB株のウイルスからの内部遺伝子を有する再集合体ウイルスを含んでいる。一態様において、HAおよびNA遺伝子、ならびに内部遺伝子は、インフルエンザAの高病原性のH5N1株からである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(ウイルスワクチンの生成)
本出願は2008年12月16日に出願された、米国仮特許出願第61/122,961号の優先権の利益を主張し、上記米国仮特許出願は、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概ね、インフルエンザウイルスに対する改善されたワクチンを生成するための材料および方法に関する。本発明は、単一株のウイルス、例えば、インフルエンザAのH5N1株からの赤血球凝集素およびノイラミニダーゼを発現し、またインフルエンザ株からの内部遺伝子を全て有する再集合体ウイルス(reassortant virus)を提供する。赤血球凝集素遺伝子が変異されて、野生型株における赤血球凝集素遺伝子に比べて低減した病原性を示すことが企図される。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
効果的なワクチンを生成するには、宿主系から高収量で生成される大量のウイルスの増殖が必要である。許容できる収量を得るために、様々な型のウイルスが様々な増殖条件を必要とする。したがって、その中でウイルスが増殖する宿主は非常に重要である。ウイルス型に応じて、ウイルスは一次組織培養細胞中、確立された細胞系中、または発育卵(embryonated egg)(例えば、ニワトリからの発育卵)中で増殖され得る。
【0004】
ウイルスの宿主系として用いられる哺乳動物の細胞系のいくつかはウイルスを高収量で生成するが、このような細胞の腫瘍形成性の性質により、ワクチン生成についてのこれらの使用に対する規制上の制約が引き起こされる。実際、世界保健機関(WHO)の該当するガイドラインは、ウイルスワクチンの生成にはほんの少数の細胞系しか認められないことを指摘している。
【0005】
インフルエンザウイルスには、A型、B型、およびC型の一般的な3つの型が存在し、これらはウイルスの内部タンパク質の間に血清学的交差反応性がないことによって規定される。インフルエンザA型ウイルスは、ウイルスの糖タンパク質である赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)タンパク質の抗原性の違いに基づいて亜型にさらに分類される。ヒトは、インフルエンザA、B、およびC型の各々のウイルスに感染することによって引き起こされる疾患に感受性である。
【0006】
現在、ヒトにおけるインフルエンザ感染の最も重要な原因は、B型、ならびにインフルエンザA型の亜型H1N1およびH3N2に起因し得るものである。したがって、B型、ならびにインフルエンザA型の亜型H1N1およびH3N2の抗原は、現在の季節性インフルエンザのワクチン中に一般的に組み入れられるものである。現在入手可能なワクチンは、75〜90%の範囲の保護率を有する。しかし、汎流行感染を引き起こし得るインフルエンザ株は、例えば、典型的なインフルエンザワクチンによって保護されていないH5N1亜型の株である。H2、H7、およびH9亜型も汎流行の可能性がある。例えば、Koopmansら、Lancet、363巻、587〜93頁、2004年;Josephら、Md Med.、6巻、30〜2頁、2005年;Cameronら、virology、278巻、36〜41頁、2000年;およびHuberら、Pediatri Infect Dis、27巻(補完10):S113〜17頁、2008年を参照されたい。
【0007】
弱毒化生インフルエンザウイルスワクチンは、最近、米国において使用が認可されている。現在のワクチンの多くは季節性インフルエンザ感染用のものであり、インフルエンザAの2つの成分であるH1N1およびH3N2、ならびにインフルエンザBの成分を含んでいる。過去数年にわたって、インフルエンザタンパク質における抗原変動および変異のため、毎年少なくとも1つの成分が変更された。ヒトインフルエンザウイルスの臨床分離株は感染患者から採取したものであり、発育鶏卵中で、高増殖のドナーウイルスの実験室に適合されたマスター株であるA/PuertoRico/8/34(H1N1)インフルエンザ株と再集合されている(特許文献1)。再集合の目標は、一次臨床分離株からの少なくともHAまたはNA遺伝子を、マスター株のドナーウイルスの6個の内部遺伝子と組み換えることによって実現される候補のワクチン株の収量を増大することである。この戦略は、臨床分離株の抗原決定基に類似する抗原決定基を有する高増殖の再集合体を提供するものである(Wood, J. M.およびWilliams、M. S., Textbook of Influenza.、Blackwell Science Ltd、Oxford、1998年;Robertsonら、Biologicals、20巻、213頁、1992年)。ワクチンは、この再集合したウイルス株を発育卵中で増殖させ、次いで、精製されたウイルスを化学的手段によって不活化することによって調製される。
【0008】
高病原性のトリインフルエンザウイルスは、トリにおける重症の呼吸器疾患および死亡率を引き起こすことができる。この特徴は、H5およびH7亜型のHAに対してのみ知られている。トリのウイルスの中にはヒトに伝染する能力があるものがあるので、これらのウイルスはヒトの健康上の懸念ともなる。トリインフルエンザウイルスの病原性は多遺伝子性の性質であるが、HAタンパク質は感染において主要な役割を有することが示されている。ウイルス感染性の必要条件は、HA1およびHA2サブユニットに対する前駆体HAタンパク質(HAO)の切断である。この切断により、ウイルスおよびエンドソームの膜の融合を担うペプチドが放出される。低病原性のウイルスは、呼吸器または消化器の細胞によって分泌されるトリプシン様プロテアーゼによってのみ活性化される表面HA分子を発現する(Perdueら、Virus Res、49巻、173〜86頁、1997年)。高病原性ウイルスの切断部位は、様々な細胞のプロテアーゼによって、特に、大部分の細胞に存在する遍在性のフューリンによって切断され得る方法において変更される(Steinhauer D.、Virology、258巻、1〜20頁、1999年;Swayne D.、Vet Pathol、34巻、557〜67頁、1997年)。高病原性株は全て、一定して、切断部位に複数の(RおよびKなどの)塩基性残基を含んでいる(Perdueら、上述)。それゆえ、ウイルスは急速に伝播し、殆んどあらゆる器官において複製し、全身性感染を誘発することができる。
【0009】
弱毒化したH5N1再集合体ウイルスは、H5N1株からのHAおよびNA遺伝子を用いて、逆遺伝学(RG,Paleseら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)、93巻、11354〜58頁、1996年)によって、これらの遺伝子を病原性の低いウイルスからのインフルエンザウイルス内部遺伝子の残余を含む「バックボーン」ウイルス中に挿入して生成されている。しばしば用いられるバックボーンは、卵中で増殖するように高度に適合されている原型株A/Puerto Rico/8/34(A/PR/8/34)の亜型H1N1に由来し、2つの表面糖タンパク質である赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)だけがH5N1ウイルスに由来する。これらの再集合体ウイルスは卵におけるワクチン生成用にデザインされているが、当技術分野において公知の既存の逆遺伝学の再集合体の増殖は、卵中および細胞培養物中では不十分である。例えば、Suguitanら(PLoS Medicine、3巻、1541〜54頁、2006年)は、H5N1株、A/Hong Kong/213、およびA/Vietnam/1203/2004からのHAおよびNA遺伝子を有するウイルスを産生するための、低温適応Ann Arbor(caAA)バックボーンの使用を記載している。これらのウイルスはインビボの弱毒化を実証したものであり、すなわちトリにおいて致死的ではなく、野生型H5N1ウイルスで再チャレンジ(rechallenge)したマウスにおいてある程度の保護効果も示した。Shengqiangら(J Infectious Dis、179巻、1132〜8頁、1999年)はまた、汎流行性のHong Kong株HAおよびNA遺伝子、ならびにAnn Arbor株の内部遺伝子を用いて組換えウイルスを生成した。しかし、これらのウイルスの卵中の増殖は最適未満である。
【0010】
同様に、Mingら、Chin.J.Biotech.(2006年)22巻、720〜726頁は、とりわけH5N1株からの改変HA遺伝子およびH2N3からのNA遺伝子とともに、H9N2ウイルス株からの内部遺伝子を含む再集合体ウイルスを記載した。Shiら、Vaccine(2007年)25巻、7379〜7384頁は、とりわけH5N1株からの改変HAおよび野生型NA遺伝子とともに、H9N2株からの内部遺伝子を有する再集合体ウイルスを記載した。Hickmanら、(J.Gen.Virol.、89巻、2682〜2690頁、2008年)は、とりわけH1N1、H5N1、およびH7N2株からのHAおよび/またはNA遺伝子でレスキュー(rescue)したH9N2株からのバックボーン遺伝子を含むワクチンを記載した。
【0011】
最近の研究は、卵の設備の保全および維持のコスト、卵タンパク質からのウイルスの精製、ならびに残余の卵タンパク質に対するアレルギーなど、卵中のウイルスの増殖で通常観察される問題点を回避するために、哺乳動物細胞培養液中で増殖させたワクチンを産生することを試みている。数ある中でも、特許文献2および特許文献3は、ワクチン品質のウイルスを生成することができる細胞培養系の開発を論じている。ウイルスの増殖の改善に適合されたベロ細胞を開示し、ワクチン生成を記載しているKistnerら(Vaccine、16巻、960〜8頁、1998年)、ならびに、とりわけ、ベロ細胞中で増殖したホルマリン不活化されたH5N1全ウイルスワクチンを記載しているEhrlichら(New Eng J Med、35巻、2573〜84頁、2008年)も参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第7,037,707号明細書
【特許文献2】米国特許第6,146,873号明細書
【特許文献3】米国特許第7,132,271号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、当技術分野において、感染を引き起こさずに宿主において良好な免疫反応を誘発することができ、哺乳動物細胞培養中で堅調な増殖を示す、以前のワクチンに比べて抗原性の増大した汎流行性、または季節性のインフルエンザワクチンを生成する必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の概要)
本発明は、インフルエンザウイルスに対する改善されたワクチンの生成を提供するものであり、ワクチンは、同じウイルスのインフルエンザA亜型またはインフルエンザB株からの赤血球凝集素遺伝子およびノイラミニダーゼ遺伝子、ならびに異なるインフルエンザA亜型またはインフルエンザB株からの内部遺伝子を有する再集合体ウイルスを含んでいる。一態様において、HAおよびNA遺伝子、ならびに内部遺伝子は、インフルエンザAの高病原性H5N1株に由来する。
【0015】
一態様において、本発明は、第1のインフルエンザウイルスA亜型からの内部遺伝子セグメント(PB1、PB2、PA、NP、M、およびNS)、ならびに内部遺伝子が由来するインフルエンザウイルス亜型からの赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含み、内部遺伝子はインフルエンザA亜型の第1の株に由来し、HAおよびNA遺伝子はインフルエンザA亜型における第2の株に由来する、再集合体インフルエンザウイルスを提供する。NS遺伝子がNS1遺伝子、NS2遺伝子、またはNS1およびNS2遺伝子を含むことがさらに企図される。
【0016】
一実施形態において、本発明は、インフルエンザAのH5N1株の内部遺伝子セグメント(PB1、PB2、PA、NP、M、およびNS)、ならびにH5N1インフルエンザAウイルスからの赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含み、HAおよびNA遺伝子が同じウイルス株に由来する、精製された再集合体インフルエンザウイルスを企図するものである。関連の一実施形態において、HAおよびNA遺伝子は第1のH5N1クレードからであり、内部遺伝子は第2のH5N1クレードからである。さらなる一実施形態において、HAおよびNA遺伝子、ならびに内部遺伝子は同じクレードに由来する。NS遺伝子がNS1遺伝子、NS2遺伝子、またはNS1およびNS2遺伝子を含むことがさらに企図される。
【0017】
別の一実施形態において、本発明は、第1のインフルエンザウイルスB株からの内部遺伝子セグメントPB1、PB2、PA、M、NP、およびNS、ならびに第2のインフルエンザB株からの赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含み、ウイルスが哺乳動物細胞培養物中で増殖する能力を特徴とする再集合体インフルエンザウイルスを企図するものである。
【0018】
さらなる一実施形態において、再集合体ウイルスのHA遺伝子は弱毒化ウイルスを生成するように改変されている。一実施形態において、HA遺伝子は多塩基性切断部位で改変されている。またさらなる一実施形態において、HA遺伝子における多塩基性切断部位の改変は、
【0019】
【化1】

【0020】
の変異である。
【0021】
別の一実施形態において、ウイルスは哺乳動物細胞培養物中で増殖する能力を特徴とする。なおさらなる一実施形態において、哺乳動物細胞は、MRC−5、MRC−9、Lederle 130、Chang liverおよびWI−38;U937、ベロ、CV−1、IMR−90およびIMR−91、MDCK、MDBK、HEK、H9、CEMおよびCD4発現HUT78、PerC6、BHK−21細胞、BSC、およびLLC−MK2からなる群より選択される。関連の一実施形態において、哺乳動物細胞培養物はベロ細胞培養物である。
【0022】
ある実施形態において、インフルエンザA亜型は、
【0023】
【化2】

【0024】
を含む、H1からH16、およびN1からN9のあらゆる組合せを含む。いくつかの実施形態において、インフルエンザA亜型はH5N1である。
【0025】
一実施形態において、再集合体ウイルスの内部遺伝子は、当技術分野において公知であるH5N1ウイルス、および以下の詳細な説明にさらに詳しく記載するものに由来する。関連の一実施形態において、前記内部遺伝子は、
【0026】
【化3】

【0027】
からなる群より選択されるH5N1株に由来する。特定の一実施形態において、内部遺伝子はA/Vietnam/1203/2004からである。
【0028】
別の一実施形態において、再集合体ウイルスのHAおよびNA遺伝子は、当技術分野において公知であるH5N1ウイルス、および以下にさらに詳しく記載するものに由来する。さらなる一実施形態において、前記HAおよびNA遺伝子は、
【0029】
【化4】

【0030】
からなる群より選択されるH5N1株に由来する。
【0031】
ある実施形態において、内部遺伝子、ならびにHAおよびNA遺伝子は同じウイルス株に由来する。他の実施形態において、内部遺伝子、ならびにHAおよびNA遺伝子は異なるウイルス株に由来する。
【0032】
一実施形態において、HAおよびNA遺伝子はH5N1株A/Vietnam/1203/2004からである。別の一実施形態において、HAおよびNA遺伝子はH5N1株A/Indonesia/5/05からである。
【0033】
別の一態様において、本発明は、第1のインフルエンザウイルスA亜型からの内部遺伝子セグメント(PB1、PB2、PA、NP、M、およびNS)、ならびに内部遺伝子が由来するインフルエンザウイルス亜型からの赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含み、内部遺伝子がインフルエンザA亜型の第1の株に由来し、HAおよびNA遺伝子がインフルエンザA亜型における第2の株に由来する、抗原性再集合体インフルエンザウイルス組成物を提供する。NS遺伝子が、NS1遺伝子、NS2遺伝子、またはNS1およびNS2遺伝子を含むことがさらに企図される。
【0034】
一実施形態において、抗原性再集合体インフルエンザAウイルス組成物は、インフルエンザAのH5N1株に由来する内部遺伝子セグメント(PB1、PB2、PA、NP、M、およびNS)、ならびにH5N1インフルエンザウイルスAウイルスに由来する赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含み、HAおよびNA遺伝子は同じウイルス株に由来する。NS遺伝子が、NS1遺伝子、NS2遺伝子、またはNS1およびNS2遺伝子を含むことがさらに企図される。
【0035】
さらなる一実施形態において、本発明は、第1のインフルエンザウイルスB株からの内部遺伝子セグメントPB1、PB2、PA、M、NP、およびNS、ならびに第2のインフルエンザB株からの赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含む抗原性再集合体インフルエンザウイルス組成物を提供し、ウイルスは哺乳動物細胞培養物中で増殖する能力を特徴とする。
【0036】
一実施形態において、組成物のHA遺伝子は弱毒化ウイルスを生成するように改変されている。関連の一実施形態において、HA遺伝子は多塩基性切断部位で改変されている。
【0037】
さらなる一実施形態において、インフルエンザウイルスは、哺乳動物細胞培養物中で増殖する能力を特徴とする。
【0038】
一実施形態において、抗原組成物の内部遺伝子は、当技術分野において公知であるH5N1ウイルス、および以下にさらに詳しく記載するものに由来する。関連の一実施形態において、前記内部遺伝子は、
【0039】
【化5】

【0040】
からなる群より選択されるH5N1株に由来する。特定の一実施形態において、内部遺伝子はA/Vietnam/1203/2004からである。
【0041】
別の一実施形態において、抗原組成物のHAおよびNA遺伝子は、当技術分野において公知であるH5N1ウイルス、および以下にさらに詳しく記載するものに由来する。さらなる一実施形態において、前記HAおよびNA遺伝子は、
【0042】
【化6】

【0043】
からなる群より選択されるH5N1株に由来する。
【0044】
ある実施形態において、抗原組成物の内部遺伝子、ならびにHAおよびNA遺伝子は同じウイルス株に由来する。他の実施形態において、内部遺伝子、ならびにHAおよびNA遺伝子は異なるウイルス株に由来する。
【0045】
一実施形態において、抗原組成物のHAおよびNA遺伝子はH5N1株A/Vietnam/1203/2004からである。別の一実施形態において、HAおよびNA遺伝子はH5N1株A/Indonesia/5/05からである。
【0046】
なおさらなる一実施形態において、HA遺伝子における多塩基性切断部位の改変は、
【0047】
【化7】

【0048】
の変異である。
【0049】
別の一実施形態において、抗原組成物は薬学的に許容されるキャリアをさらに含む。
【0050】
一態様において、本発明は再集合体インフルエンザウイルスを含むワクチンを企図するものであり、ウイルスは、i)表面タンパク質HAをコードするポリヌクレオチドおよび表面タンパク質NAをコードするポリヌクレオチド(HAおよびNAの各々はインフルエンザウイルスA亜型の第1の株に由来する)、PB1をコードするポリヌクレオチド、PAをコードするポリヌクレオチド、PB2をコードするポリヌクレオチド、Mをコードするポリヌクレオチド、NS(NS1および/またはNS2)をコードするポリヌクレオチド、NPをコードするポリヌクレオチド(インフルエンザAウイルス亜型の第2の株に由来する、PB1、PB2、PA、NP、M、およびNSについてのポリヌクレオチド)を含み、ポリヌクレオチドは再集合したポリヌクレオチドのビリオンへのパッケージングを可能にするように作動可能に連結されている。
【0051】
関連の一実施形態において、本発明は再集合体インフルエンザAウイルスを含むワクチンを提供し、ウイルスは、表面タンパク質HAをコードするポリヌクレオチドおよび表面タンパク質NAをコードするポリヌクレオチド(HAおよびNAの各々はH5N1インフルエンザウイルスに由来する)、H5N1インフルエンザウイルスに由来する、PB1をコードするポリヌクレオチド、PAをコードするポリヌクレオチド、PB2をコードするポリヌクレオチド、Mをコードするポリヌクレオチド、NS1をコードするポリヌクレオチド、(NS1および/またはNS2、NPをコードするポリヌクレオチド、PB1、PA、PB2、M、NP、およびNSに対するポリヌクレオチド)を含み、ポリヌクレオチドは再集合したポリヌクレオチドのビリオンへのパッケージングを可能にするように作動可能に連結されている。
【0052】
関連の一実施形態において、本発明は再集合体インフルエンザウイルスを含むワクチンを企図するものであり、ウイルスは、表面タンパク質HAをコードするポリヌクレオチドおよび表面タンパク質NAをコードするポリヌクレオチド(HAおよびNAの各々はインフルエンザBウイルスの第1の株に由来する)、PB1をコードするポリヌクレオチド、PAをコードするポリヌクレオチド、PB2をコードするポリヌクレオチド、Mをコードするポリヌクレオチド、NPをコードするポリヌクレオチド、NSをコードするポリヌクレオチド(インフルエンザBウイルスの第2の株に由来する、PB1、PA、PB2、M、NP、およびNSについてのポリヌクレオチド)を含み、ポリヌクレオチドは再集合したポリヌクレオチドのビリオンへのパッケージングを可能にするように作動可能に連結されており、ウイルスは哺乳動物細胞培養物中で増殖する能力を特徴とする。
【0053】
一実施形態において、組成物のHA遺伝子は弱毒化ウイルスを生成するように改変されている。関連の一実施形態において、HA遺伝子は多塩基性切断部位で改変されている。
【0054】
一実施形態において、ワクチンにおける内部遺伝子は、当技術分野において公知であるH5N1ウイルス、および以下にさらに詳しく記載するものに由来する。関連の一実施形態において、前記内部遺伝子は、H5N1株A/Vietnam/1203/2004に由来する。
【0055】
別の一実施形態において、ワクチンにおけるHAおよびNA遺伝子は、当技術分野において公知であるH5N1ウイルス、および以下にさらに詳しく記載するものに由来する。さらなる一実施形態において、前記HAおよびNA遺伝子は、
【0056】
【化8】

【0057】
【化9】

【0058】
からなる群より選択されるH5N1株に由来する。
【0059】
ある実施形態において、ワクチンにおける内部遺伝子、ならびにHAおよびNA遺伝子は同じウイルス株に由来する。他の実施形態において、内部遺伝子、ならびにHAおよびNA遺伝子は異なるウイルス株に由来する。
【0060】
一実施形態において、ワクチンにおけるHAおよびNA遺伝子は、H5N1株A/Vietnam/1203/2004からである。別の一実施形態において、HAおよびNA遺伝子は、H5N1株A/lndonesia/5/05からである。
【0061】
なおさらなる一実施形態において、HA遺伝子における多塩基性切断部位の改変は、
【0062】
【化10】

【0063】
の変異である。
【0064】
別の一実施形態において、ワクチンはアジュバントをさらに含む。例示のアジュバントには、それだけには限定されないが、サポニン、非イオン性洗剤、植物油、鉱物ゲル、例えば、水酸化アルミニウム、界面活性物質、例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油または炭化水素エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ならびに潜在的に有用なヒトアジュバント、例えば、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−nor−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−s−n−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン、BCG(カルメットゲラン桿菌)、Corynebacterium parvum、ISCOM、ナノビーズ、スクアレン、およびブロック共重合体が含まれ、これらは単独で、または組み合わせて使用することが企図される。
【0065】
さらなる一実施形態において、ワクチンは不活化ワクチンである。不活化は、それだけには限定されないが、ホルムアルデヒド、UV照射、グルタルアルデヒド、バイナリーエチレンイミン(BEI)、およびβ−プロピオラクトンを含めた、当技術分野において公知の方法および薬剤を用いて行われることが企図される。ワクチンを弱毒化生ウイルスワクチンとして投与することも企図される。
【0066】
一実施形態において、ワクチンはHA1μgから75μgまでのHA含量を含む。さらなる一実施形態において、ワクチンは1ワクチンあたり1μgから30μgまでのHA含量を含む。関連の実施形態において、必要に応じて、HA1μg、3μg、5μg、7.5μg、10μg、12.5μg、15μg、20μg、25μg、30μg、または最高HA100μgのあらゆる量のワクチンの投与量を投与する。したがって、ワクチンの単回投与量は、赤血球凝集素約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約11μg、約12μg、約13μg、約14μg、約15μg、約16μg、約17μg、約18μg、約19μg、約20μg、約21μg、約22μg、約23μg、約24μg、約25μg、約30μg、約35μg、約40μg、約45μg、約50μg、約55μg、約60μg、約65μg、約70μg、約75μg、約80μg、約85μg、約90μg、約95μg、約100μg、および100μgを超えて有するものを含む(同じ量または異なる量の赤血球凝集素の単回または複数回投与量において提供される)。
【0067】
別の一実施形態において、本発明は、本明細書に記載するウイルス、抗原組成物、またはワクチンを、少なくとも1つのH5N1インフルエンザウイルス株の感染から被験体を保護するのに有効な量において投与することを含む、被験体における、少なくとも1つの汎流行のインフルエンザウイルス株に対する免疫反応を誘発するための方法を提供する。関連の一態様において、本発明は、本明細書に記載するウイルス、抗原組成物、またはワクチンを、少なくとも1つのインフルエンザAおよび/またはインフルエンザBウイルス株の感染から被験体を保護するのに有効な量において投与することを含む、被験体における、少なくとも1つの季節性インフルエンザウイルス株に対する免疫反応を誘発するための方法を企図するものである。
【0068】
さらなる一態様において、本発明は、本明細書に記載するウイルス、抗原組成物、またはワクチンの有効量を被験体に投与することを含む、H5N1インフルエンザウイルスによる被験体の感染を防ぐための方法を企図するものである。別の一態様において、本発明は、本明細書に記載するウイルス、抗原組成物、またはワクチンの有効量を被験体に投与することを含む、インフルエンザAまたはインフルエンザBウイルスによる被験体の感染を防ぐための方法を企図するものである。
【0069】
一実施形態において、本発明の方法において有用なワクチンは、HA1μgから75μgまでのHA含量を含む。別の一実施形態において、ワクチンは、1ワクチンあたり1μgから30μgのHA含量を含む。関連の実施形態において、必要に応じて、HA1μg、3μg、5μg、7.5μg、10μg、12.5μg、15μg、20μg、25μg、30μg、または最高HA100μgのあらゆる量のワクチン投与量を投与する。したがって、ワクチンの単回投与量は、赤血球凝集素約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約11μg、約12μg、約13μg、約14μg、約15μg、約16μg、約17μg、約18μg、約19μg、約20μg、約21μg、約22μg、約23μg、約24μg、約25μg、約30μg、約35μg、約40μg、約45μg、約50μg、約55μg、約60μg、約65μg、約70μg、約75μg、約80μg、約85μg、約90μg、約95μg、約100μg、および100μgを超えて有するものを含む(同じ量または異なる量の赤血球凝集素が単回または複数回投与量において提供される)。
【0070】
別の一態様において、本発明は、再集合体インフルエンザウイルスを含むワクチンを作製する方法を提供し、該ウイルスは、インフルエンザAのH5N1株の内部遺伝子セグメント(PB1、PB2、PA、NP、M、およびNS)、ならびにH5N1インフルエンザAウイルスからの赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含み、HAおよびNA遺伝子は同じウイルス株に由来し、HA遺伝子は弱毒化HA遺伝子を生成するように多塩基性切断部位で改変され、方法は再集合体ウイルスの増殖に適する条件下で哺乳動物細胞中にウイルスをトランスフェクトすることを含む。関連の一実施形態において、本明細書に記載するワクチンを作製する方法は、インフルエンザAまたはインフルエンザB型の季節性インフルエンザ株を含むワクチンを作製するのに有用である。
【0071】
一実施形態において、哺乳動物細胞は、MRC−5、MRC−9、Lederle 130、Chang liverおよびWI−38;U937、ベロ、CV−1、IMR−90およびIMR−91、MDCK、MDBK、HEK、H9、CEMおよびCD4発現HUT78、PerC6、BHK−21細胞、BSC、およびLLC−MK2からなる群より選択される。関連の一実施形態において、哺乳動物細胞はベロ細胞である。
【0072】
いくつかの実施形態において、上記に記載するウイルスおよび組成物は、インフルエンザの内部遺伝子6個全てを欠くことがさらに企図される。一実施形態において、再集合体ウイルスは、インフルエンザウイルスの内部遺伝子2個、3個、4個、または5個を含む。例えば、一実施形態において、再集合体ウイルスおよび/またはその組成物および/またはワクチンは、NS1遺伝子の全てまたは部分を欠く。
【0073】
なお別の一態様において、本発明は、任意のインフルエンザAおよびインフルエンザBウイルス株を用いて行われることが企図される。一実施形態において、再集合体ウイルスは、インフルエンザAからの8個のインフルエンザ遺伝子の任意の組合せを有していてよい。関連の一実施形態において、再集合体ウイルスは、インフルエンザBウイルスからのインフルエンザ遺伝子8個の任意の組合せを有していてよい。
【0074】
本発明から除外されるのは、それだけには限定されないが、米国特許第4,552,758号、同第7,037,707号、同第7,601,356号、同第7,566,458号、同第7,527,800号、同第7,510,719号、同第7,504,109号、同第7,465,456号、および同第7,459,162号;米国特許公開第20090297554号、同第20090246225号、同第20090208527号、同第20090175909号、同第20090175908号、同第20090175907号、同第20090136530号、同第20080069821号、同第20080057081号、同第20060252132号、同第20060153872号、同第20060110406号、同第20050158342号、同第20050042229号、および同第20070172929号;国際特許公開WO2008/157583号、WO2008/021959、WO2007/048089、WO2006/098901、WO2006/063053、WO2006/041819、WO2005/116260、WO2005/116258、WO2005/115448、WO2005/062820、WO2003/091401を含めた、本明細書に参照される任意の以前の公開において、先に開示されたか、または、例えば、A/Puerto Rico/8/34(H1N1)、A/Ann Arbor/6/60(H2N2)、A/Leningrad/134/17/57(H2N2)およびB/Ann Arbor/1/66などのバックボーンを用いて生成された、第1の亜型の1株からの内部遺伝子および同じ亜型の異なる株からのHAおよびNA遺伝子を有する任意のウイルス(インフルエンザAおよびインフルエンザB)、ならびに組換えウイルスにおいてインフルエンザA亜型の1株からの内部遺伝子および同じ亜型の異なる株のHAおよびNA遺伝子を含むことがある、FLUMISTTMワクチンに有用であるとその中で同定された任意のウイルスである。このような文書は全て、その全文が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0075】
一実施形態において、本発明はまた、インフルエンザ亜型の第1の株のバックボーン、ならびに同じインフルエンザ亜型の第2の株からのHAおよびNA遺伝子を含む、天然に存在する再集合体ウイルスを除外するものである。本明細書で用いられる「天然に存在する再集合体ウイルス」という用語は、外部の供給源からの介入なしに、ウイルス宿主などの天然の環境中で組み換わる再集合体ウイルスを意味する。
【0076】
さらなる一実施形態において、本発明は、バックボーンとして第1のインフルエンザAまたはB亜型からの改変された内部遺伝子を1つまたは複数(例えば、変異したA/Puerto Rico/8/34(H1N1)、A/Ann Arbor/6/60(H2N2)、またはB/Ann Arbor/1/66)、ならびに、例えば、米国特許公開第20070172929号において例示される、インフルエンザウイルスの同じ株からのHAおよびNA遺伝子を有する再集合体ウイルスを除外するものである。しかし、本発明は、一インフルエンザ亜型のバックボーン株の改変された内部遺伝子、ならびに同じ亜型であるが異なる株からのHAおよびNA遺伝子を含むウイルスが本発明の範囲内に含まれることを企図するものである。
【0077】
なお別の一実施形態において、本発明は、バックボーン/ドナー株として、例えば、A/Ann Arbor/6/60(H2N2)、A/Leningrad/134/17/57(H2N2)、B/Ann Arbor/1/66、および当技術分野において公知の他のものなど、低温適応ウイルスを用いて産生された再集合体ウイルス(ここで、内部のバックボーン遺伝子は第1の亜型からであり、HAおよびNA遺伝子は同じ亜型の異なる株からである)を除外するものである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1−1】図1は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Vietnam/1203/04(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図1−2】図1は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Vietnam/1203/04(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図1−3】図1は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Vietnam/1203/04(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図1−4】図1は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Vietnam/1203/04(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図1−5】図1は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Vietnam/1203/04(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図2−1】図2は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Indonesia/5/05(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図2−2】図2は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Indonesia/5/05(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図2−3】図2は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Indonesia/5/05(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図2−4】図2は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Indonesia/5/05(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図2−5】図2は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Indonesia/5/05(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図3−1】図3は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Turkey/Turkey/1/05(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図3−2】図3は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Turkey/Turkey/1/05(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図3−3】図3は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Turkey/Turkey/1/05(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図3−4】図3は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Turkey/Turkey/1/05(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図3−5】図3は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Turkey/Turkey/1/05(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図3−6】図3は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Turkey/Turkey/1/05(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図4−1】図4は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Anhui/1/05(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図4−2】図4は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Anhui/1/05(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図4−3】図4は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Anhui/1/05(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図4−4】図4は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Anhui/1/05(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図4−5】図4は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Anhui/1/05(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【図4−6】図4は、A/Hong Kong/213/03に由来する非コード領域を用いた、A/Anhui/1/05(H5N1)のHA切断部位のヌクレオチド配列、および他の内部遺伝子の配列の改変を示す図である。A/Hong Kongに由来する配列は下線付きである。
【発明を実施するための形態】
【0079】
(詳細な説明)
本発明は、様々なインフルエンザ株に由来する、両方ともウイルスの構造タンパク質である赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)、ならびにウイルス内部遺伝子[PB1、PB2、PA、NS(NS1、NS2)、M1、M2、およびNP]を有する再集合体ウイルスを含む、改善されたワクチンを提供する。本発明のワクチンは、ウイルスの内部遺伝子が特定のインフルエンザ株に由来し、HAおよびNA遺伝子は同じ株に由来するが、内部遺伝子が由来する株は、HAおよびNA遺伝子が由来するインフルエンザA亜型またはインフルエンザB株とは異なるインフルエンザA亜型またはインフルエンザB株であるものである。一態様において、HAおよびNA遺伝子は同じインフルエンザA亜型に由来し、別の一態様において、HAおよびNA遺伝子は異なるインフルエンザA亜型に由来する。本発明を、H5N1ワクチンおよび抗原組成物を特に参照して一貫して例証するが、記載通りに構築されるあらゆるインフルエンザ株が本発明に含まれることが理解される。本発明のワクチンは、インフルエンザAおよびインフルエンザB株に対するワクチンを含む。インフルエンザA株は、HA亜型16個およびNA亜型9個を含む。再集合体ウイルスは細胞培養物中で効率的に増殖することができ、これは発育卵における伝統的な増殖方法を凌ぐ改善された生成方法である。
【0080】
別段の定義がなされなければ、本明細書において用いられる技術用語および科学用語は全て、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。以下の参照は、当業者に、本発明において用いられる用語の多くの一般的定義を提供するものである:Singletonら、DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY(第2版、1994年);THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY(Walker編集、1988年);THE GLOSSARY OF GENETICS、第5版、R. Riegerら、(編集)、Springer Verlag(1991年);ならびにHaleおよびMarham、THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY(1991年)。
【0081】
本明細書に引用する各出版物、特許出願、特許、および他の参照は、本開示と相反しない程度まで、その全文が参照によって組み入れられる。
【0082】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、明らかに文脈が特に規定しなければ複数への言及を含むことをここで指摘する。
【0083】
本明細書で用いられる以下の用語は、特に特定しなければ、これらに帰する意味を有する。
【0084】
「再集合体ウイルス」という用語は、目的のウイルス株からの抗原タンパク質をコードする遺伝子セグメント(例えば、赤血球凝集素およびノイラミニダーゼ遺伝子)が、異なる株のウイルスからのウイルスのポリメラーゼ複合体(PB2、PB1、およびPA)遺伝子、または他の同様な遺伝子(例えば、M遺伝子およびNS遺伝子を含めた非糖タンパク質遺伝子、ならびに核タンパク質(NP)遺伝子)をコードする遺伝子セグメントと組み合わされたウイルスである。本明細書で用いられる「株」は、所定の種、例えば、インフルエンザAまたはB種、およびインフルエンザAウイルスの亜型の特定のウイルス改変体を意味する。例えば、ウイルスA/Vietnam/1203/2004はインフルエンザAウイルス、H5N1亜型であり、株名A/Vietnam/1203/2004である。
【0085】
「に由来する」という用語は、野生型の、または天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列から変更、または変異されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列の全てまたは部分を意味し、野生型の配列に由来するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、それがもはや野生型配列と同じ配列を有さないように、1つまたは複数の塩基またはアミノ酸が変更されている。
【0086】
本明細書で用いられる「亜型」という用語は、ウイルス株において発現されるHAおよびNA遺伝子に基づいて亜型に分けることができるインフルエンザA株内の様々なウイルスを意味する。インフルエンザA亜型の命名法はHA亜型(例えば、亜型は当技術分野において公知の16個の異なるHA遺伝子のいずれか1つである)、およびNA亜型(例えば、当技術分野において公知の9個の異なるNA遺伝子のいずれか)に基づく。例示の亜型には、それだけには限定されないが、H5N1、H1N1、H3N2、および当技術分野において公知の非常に多くのものが含まれる。
【0087】
本明細書で用いられる「クレード」という用語は、存在するインフルエンザAH5N1ウイルスの異なるカテゴリー化を意味する。H5N1クレードにおけるウイルスは一般的に関連しているが、正確なウイルスゲノムを共有していない。当技術分野において、例えば、クレード1、クレード2、クレード3、クレード4、クレード5、クレード6、およびクレード7と呼ばれる、H5N1亜型の少なくとも7つの異なるクレードが存在する。クレード2はサブクレードにさらに分類される。
【0088】
「抗原組成物」という用語は、免疫系を刺激し、宿主または被験体の免疫反応を誘発する材料を含む組成物を意味する。「免疫反応を誘発する」という用語は、抗原などの刺激への反応における、インビボの免疫細胞の刺激を意味する。免疫反応は、細胞性免疫反応(例えば、T細胞およびマクロファージの刺激)ならびに体液性免疫反応(例えば、B細胞および補体の刺激、ならびに抗体の生成)の両方からなる。細胞性免疫反応と体液性免疫反応とは相互に排他的ではなく、一方または両方が、本明細書に記載する抗原組成物、ウイルス、またはワクチンによって刺激されることが企図される。免疫反応は、それだけには限定されないが、抗体免疫アッセイ、増殖アッセイ、および詳細な説明においてさらに詳しく記載されている他のものを含む、当技術分野において周知の技術を用いて測定することができる。
【0089】
「弱毒化」という用語は、(野生型ウイルスに比べて)毒力の減少を示すウイルスまたは抗原組成物を記載するのに用いられる。改変されたHAは、野生型HAから改変されており、野生型HAタンパク質よりも低い程度で切断されるタンパク質をコードし、ウイルスの増殖の低減をもたらすHA遺伝子である。弱毒化ウイルスは、常にではないが通常、鼻腔内投与される。弱毒化ウイルスの投与は、本明細書に記載する任意の経路によることが企図される。
【0090】
本明細書で用いられる「不活化」という用語は、「死滅させた」または「死滅した」ウイルスとして当技術分野においてやはり公知であるウイルスを記載する。不活化ウイルスは、ウイルスが任意の方法で予め弱毒化されているか否かに関わらず、毒性の性質のない全体のウイルスであり、「生」ウイルスから生成される。不活化ウイルスは、常にではないが通常、筋肉内注射によって投与される。不活化ウイルスの投与は、本明細書に記載する任意の経路によることが企図される。
【0091】
本明細書で用いられる「ワクチン」という用語は、被験体においてウイルスに対する免疫性を確立するのに有用である、本明細書に記載する再集合体ウイルスを含む組成物を意味する。ワクチンは、薬学的に許容されるキャリアおよび/またはアジュバントを含むことが企図される。ワクチンは予防的または治療的であることが企図される。「予防的」処置は、疾患の徴候を表さず、または初期の徴候のみを表す被験体に、病状を発症する危険性を低減する目的で施す処置である。本発明の化合物を、病状を発症する可能性を低減するための、または発症した場合は病状の重症度を最小にするための予防的処置として与えてよい。「治療的」処置は、病状の徴候または症状を表す被験体に、これらの徴候または症状を低減、または排除する目的で施す処置である。徴候または症状は、生化学的、細胞上、組織学的、機能的、主観的、または客観的であってよい。
【0092】
ポリペプチドの「フラグメント」は、全長のポリペプチドまたはタンパク質発現生成物より小さいポリペプチドのあらゆる部分を意味する。一態様において、フラグメントは、1つまたは複数のアミノ酸残基が、全長のポリペプチドのアミノ末端および/またはカルボキシ末端から除去された、全長のポリペプチドの欠失類似体である。したがって、「フラグメント」は、以下に記載する欠失類似体のサブセットである。
【0093】
「類似体(analogue)」、「類似体(analog)」、または「誘導体」は、交換可能に用いられ、実質的に構造が類似しており、ある場合には異なる程度であるが、天然に存在する分子と同じ生物学的活性を有する化合物(例えば、ペプチドまたはポリペプチド)を意味する。類似体は、(i)ポリペプチドの1つもしくは複数の末端、および/または天然に存在するポリペプチド配列の1つもしくは複数の内部領域の1つまたは複数のアミノ酸残基の欠失(ii)ポリペプチドの1つもしくは複数の末端(典型的には「付加」類似体)、および/または天然に存在するポリペプチド配列の1つもしくは複数の内部領域(典型的には「挿入」類似体)の1つまたは複数のアミノ酸の挿入または付加、あるいは(iii)天然に存在するポリペプチド配列における他のアミノ酸への1つまたは複数のアミノ酸の置換、を含む1つまたは複数の変異に基づいて、類似体が由来する天然に存在するポリペプチドに比べて、そのアミノ酸配列の組成が異なる。本発明の再集合体ウイルスが、任意の1つまたは1つを超えるHA、NA、PB1、PB2、PA、M(M1およびM2)、NS(NS1およびNS2)、ならびにNP遺伝子を含む、ウイルス遺伝子の類似体を含むことが企図される。
【0094】
一態様において、類似体は、野生型もしくは天然に存在する配列、例えばペプチドに、約70%の配列類似性を示すが、100%未満の配列類似性を示す。一態様において、このような類似体または誘導体は、限定的なものではなく例示として、ホモアルギニン、オルニチン、ペニシラミン、およびノルバリンを含めた非天然のアミノ酸残基、ならびに天然に存在するアミノ酸残基を含む。別の一態様において、このような類似体または誘導体は、1つもしくは複数のD−アミノ酸残基からなり、または2つもしくはそれを超えるアミノ酸残基間に非ペプチドインターリンケージ(interlinkage)を含んでいる。一実施形態において、類似体または誘導体はポリペプチドのフラグメントであってよく、フラグメントは野生型ポリペプチドの少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50個のアミノ酸の長さにわたって実質的に相同(すなわち、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%相同)である。
【0095】
置換は、置換されるアミノ酸、およびそれを置換するアミノ酸の物理化学的または機能的関連性に基づいて、保存的または非保存的である。このタイプの置換は、当技術分野において周知である。あるいは、本発明は、非保存的でもある置換を包含する。例示の保存的置換は、Lehninger[Biochemistry、第2版、Worth Publishers, Inc.、New York(1975年)71〜77頁]に記載されており、以下に記載するものである。
【0096】
【化11】

【0097】
あるいは、例示の保存的置換をすぐ下に記載する。
【0098】
【化12】

【0099】
本明細書で用いられる「単離された」という用語は、その天然の環境から取り出されたウイルスまたは抗原組成物を意味する。したがって、単離された生物学的材料には、いくつかのまたは全ての細胞成分、すなわち天然の材料が天然に存在する細胞の成分(例えば、細胞質成分または膜成分)がない。一態様において、ウイルスまたは抗原組成物が細胞抽出物または上清中に存在する場合、ウイルスまたは抗原成分は単離されたとみなされる。核酸分子の場合、単離された核酸は、PCR生成物、単離されたmRNA、cDNA、または制限フラグメントを含んでいる。
【0100】
本明細書で用いられる「精製された」という用語は、それから組成物が得られる内因性材料を含めた、非関連の材料すなわち夾雑物の存在を低減または排除する条件下で単離されたウイルスまたは抗原組成物を意味する。例示として、制限的なものではないが、精製されたビリオンには、組織培養物もしくは卵タンパク質、および非特異的な病原体を含めた、宿主細胞または培養物成分が実質的にない。様々な実施形態において、夾雑物が本質的にない精製された材料は、少なくとも50%純粋であり、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、またはさらに少なくとも99%純粋である。純度は、クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、免疫アッセイ、組成分析、生物学的アッセイ、および当技術分野において公知の他の方法によって評価することができる。
【0101】
「薬学的組成物」という用語は、ヒトおよび哺乳動物を含む被験体動物に投与するのに適する組成物を意味する。薬学的組成物は、薬理学的有効量の本発明のウイルスまたは抗原組成物を含み、薬学的に許容されるキャリアも含んでいる。薬学的組成物は、有効成分、および薬学的に許容されるキャリアを構成する不活性成分、ならびにあらゆる2つまたはそれを超える成分の組合せ、複合体形成、または凝集に、直接的または間接的に起因するあらゆる生成物を含む組成物を包含する。したがって、本発明の薬学的組成物は、本発明の化合物または結合体、および薬学的に許容されるキャリアを混合することによって作製されるあらゆる組成物を包含する。
【0102】
「薬学的に許容されるキャリア」という用語は、あらゆる全ての臨床上有用な溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤、バッファー、および賦形剤、例えば、リン酸緩衝食塩水溶液、デキストロースまたはマンニトールの5%水溶液、およびエマルジョン、例えば、油/水または水/油エマルジョン、および様々なタイプの湿潤剤および/またはアジュバントを含む。適切な薬学的キャリアおよび処方物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版(Mack Publishing Co.、Easton、1995年)に記載されている。組成物に有用な薬学的キャリアは、有効薬剤を投与する意図された様式による。典型的な投与様式には、それだけには限定されないが、経腸(例えば、経口)、あるいは非経口(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、もしくは腹腔内注射、または局所、経皮、または経粘膜投与)が含まれる。「薬学的に許容される塩」は、例えば、金属塩(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)、およびアンモニアまたは有機アミンの塩を含めた、薬学的使用のために化合物または結合体中に処方することができる塩である。
【0103】
「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という用語は、生物学的にまたは他の点で望ましくないことがない材料を意味する。すなわち、該材料は、いかなる望ましくない生物学的効果も引き起こさずに、またはそれが含まれる組成物のいかなる成分とも有害な様式で相互作用することなく、個体に投与することができ、あるいは、以下に記載する、当技術分野において周知の経路を用いて投与した場合に、該材料は、生物学的にまたは他の点で望ましくないことがない。
【0104】
(インフルエンザ遺伝子)
インフルエンザウイルスは、分節型マイナス鎖RNAウイルスであり、オルトミクソウイルス科に属する。インフルエンザAウイルスは、9個の構造タンパク質からなり、調節的機能を有する1個の非構造NS1タンパク質をさらにコードしている。インフルエンザウイルスの分節型ゲノムは、RNA依存性RNAポリメラーゼタンパク質(PB2、PB1、およびPA)、核タンパク質(NP)、ノイラミニダーゼ(NA)、赤血球凝集素(サブユニットHA1およびHA2)、マトリックスタンパク質(M1およびM2)、ならびに非構造タンパク質(NS1およびNS2)を含む、少なくとも10個のポリペプチドをコードする8個のマイナス鎖RNA(nsRNA)遺伝子セグメント(PB2、PB1、PA、NP、M、NS、HA、およびNA)を含んでいる(Krugら、In The Influenza Viruses、R. M. Krug編集、Plenum Press、N.Y.、1989年、89〜152頁)。
【0105】
広範囲に及ぶ疾患を引き起こすインフルエンザウイルスの能力は、抗原の変更を行うことによって免疫系を回避するその能力によるものであり、これは宿主が動物のインフルエンザウイルスとヒトのインフルエンザウイルスの両方に同時に感染したときに生じると考えられている。宿主における変異および再集合中に、ウイルスは、別のウイルスからのHAおよび/またはNA表面タンパク質遺伝子をそのゲノム中に組み込み、それによって新しいインフルエンザ亜型を生成し、免疫系を回避することができる。
【0106】
(赤血球凝集素)
HAは、アミノ酸およそ560個を含み、全ウイルスタンパク質の25%を表す、ウイルスの表面糖タンパク質である。これは、感染の初期段階において、ウイルス粒子の宿主細胞への付着および宿主細胞中への侵入を担う。16個のHA亜型が知られており、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、またはH16亜型と分類されている。
【0107】
ウイルスのHA0前駆体のHA1およびHA2サブフラグメントへの切断は、ウイルスが細胞に感染するために必要なステップである。このように、宿主細胞における新しいウイルス粒子が新しい細胞に感染することができるビリオンに変換されるために、切断が必要とされる。切断は、内在性HA0膜タンパク質が、感染した細胞の小胞体から原形質膜に輸送される間に起こることが知られている。輸送の過程において、赤血球凝集素は、前駆体HAのアミノ末端フラグメントHA1およびカルボキシ末端HA2へのタンパク分解性切断を含めた、一続きの翻訳時修飾および翻訳後修飾を受ける。一次組織培養物または確立された細胞系中でインフルエンザ株を増殖させる上での主な困難の1つは、宿主細胞におけるインフルエンザ赤血球凝集素のタンパク分解性の切断活性化に対する必要性から生じる。
【0108】
非切断のHAは、ウイルスが細胞表面上のノイラミン酸含有受容体に付着するのを媒介し得ることが知られているが、感染サイクルにおける次の段階である融合の能力はない。HA2の疎水性アミノ末端が標的細胞中に挿入され得るように、切断によるHA2の疎水性アミノ末端の曝露が必要とされ、その結果ウイルスと標的細胞の膜との間に架橋が形成されると報告されている。この過程の後、2つの膜が融合し、ウイルスが標的細胞中に侵入する。
【0109】
HAのタンパク分解性の活性化は、トリプシン様エンドプロテアーゼによるアルギニン残基の切断を伴うが、この酵素はカルシウム依存性であり最適pHが中性である細胞内酵素であることが多い。活性化型のプロテアーゼは細胞酵素であるので、感染した細胞型が、HAが切断されるか否かを決定する。哺乳動物のインフルエンザウイルス、および非病原性のトリインフルエンザウイルスのHAは、限られた数の細胞型においてのみタンパク分解性の切断を受けやすい。一方、H5およびH7亜型の中でも病原性のトリウイルスのHAは、広範囲の様々な宿主細胞中に存在するプロテアーゼによって切断される。したがって、ウイルスの病原性の性質と相関する赤血球凝集素切断性における相違に起因する、宿主範囲における相違が存在する。
【0110】
切断性における相違は、HAの切断部位のアミノ酸配列における相違によるものである。配列分析により、非病原性トリインフルエンザウイルスおよび全ての哺乳動物のインフルエンザウイルスのHA分子のHA1およびHA2フラグメントは、1個のアルギニンによって連結されていることが示されている。これとは対照的に、病原性のトリ株は切断部位に一連のいくつかの塩基性アミノ酸を有しており、共通因子はリジン−アルギニンまたはアルギニン−アルギニンである(例えば、RRRK(配列番号15))。全てのインフルエンザウイルスの赤血球凝集素は、同じ一般的メカニズムによって切断され、塩基性アミノ酸の排除をもたらす。
【0111】
(ノイラミニダーゼ)
ノイラミニダーゼは、インフルエンザAウイルスの第2の膜糖タンパク質である。ウイルスのNAの存在は、感染性のウイルスからの多面的な防御免疫反応を産生するのに重要であることが示されている。NAは、1413個のヌクレオチドの遺伝子によってコードされる、アミノ酸413個のタンパク質である。インフルエンザウイルスでは9つの異なるNAの亜型が同定されており(N1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8、およびN9)、これらは全て野鳥に見出されている。NAは、感染した細胞の表面上の炭水化物部分から末端のノイラミン酸(シアル酸とも呼ばれる)残基を切断することによって、ウイルスのHAに対する細胞受容体の破壊に関与している。NAはまた、ウイルスタンパク質からシアル酸残基を切断し、ウイルスの凝集を防いでいる。このメカニズムを用いて、NAは、新しく形成したウイルス粒子が細胞膜に沿って蓄積するのを防ぐことによって、また粘膜表面上に存在する粘液を通したウイルスの輸送を促進することによって、ウイルスの子孫の放出を促進すると仮定されている。NAは抗原の変動をもたらす重要な抗原決定基である。
【0112】
ノイラミニダーゼの化学的インヒビターを投与すると、ウイルスの感染の重症度および伝播を制限する。ノイラミニダーゼのインヒビターは、ウイルスが宿主細胞から出芽するのを防ぐことによって、インフルエンザ感染と戦う。NAインヒビターの例には、それだけには限定されないが、吸入によって投与するザナミビル、経口投与するオセルタミビル、および非経口投与するペラミビルが含まれる。
【0113】
(インフルエンザの内部遺伝子)
表面タンパク質HAおよびNAの他に、インフルエンザウイルスは6個のさらなる内部遺伝子を含んでおり、これらは、ポリメラーゼ遺伝子PB1、PB2、およびPA、マトリックスタンパク質M1およびM2、核タンパク質(NP)、ならびに非構造タンパク質NS1およびNS2を含む、8個の異なるタンパク質を生じる(Horimotoら、Clin Microbiol Rev.、14巻(1)、129〜49頁、2001年)。
【0114】
子孫のビリオンへのパッケージングのために、ウイルスのRNAは、インフルエンザウイルスマトリックス1(M1)タンパク質および核外輸送タンパク質と会合して、3個のインフルエンザウイルスのポリメラーゼタンパク質、核タンパク質(NP)、およびウイルスのRNAから構成されるリボ核タンパク質複合体として、核から輸送される(Marshら、J Virol.、82巻、2295〜2304頁、2008年)。エンベロープ内に位置するM1タンパク質は、アセンブリーおよび出芽において機能すると考えられている。
【0115】
限られた数のM2タンパク質がビリオンに統合される(Zebedee, J.、Virol.、62巻、2762〜2772頁、1988年)。これらは、H+イオンチャンネル活性を有する四量体を形成し、エンドソーム中の低pHによって活性化されるとビリオン内部を酸性化し、その脱外被を促進する(Pintoら、Cell、69巻、517〜528頁、1992年)。アマンタジンは、M2イオンチャンネル活性を妨害することによってウイルス感染を防ぎ、したがってウイルスの脱外被を阻害する抗インフルエンザ薬である。
【0116】
非構造タンパク質であるNS1タンパク質は、スプライシングおよび核のmRNAの核外輸送の制御、ならびに輸送の刺激を含む、複数の機能を有する。NS1ノックアウトウイルスは生存可能であったが、インターフェロン非欠損細胞において親ウイルスほど効率的に増殖しなかったので、NS1の主な機能は宿主のインターフェロン活性に対抗することと考えられる(Garcia−Sastre、Virology、252巻、324〜330頁、1998年)。
【0117】
NS2タンパク質は、ウイルス粒子中に検出されている。ウイルス粒子中のNS2タンパク質の平均数は、130〜200分子であると推定されていた。インビトロの結合アッセイは、M1とNS2との間の直接的なタンパク質−タンパク質の接触を示している。NS2−M1複合体は、ウイルスが感染した細胞溶解物中の免疫沈降によってやはり検出された(Virology、196巻、249〜55頁、1993年)。NS2タンパク質は、ビリオン中に存在することが知られており(Richardsonら、Arch. Virol.、116巻、69〜80頁、1991年;Yasudaら、Virology、196巻、249〜255頁、1993年)、M1タンパク質との相互作用によって核からのRNPの搬出において役割を果たすと考えられている(Wardら、Arch. Virol.、140巻、2067〜2073頁、1995年)。
【0118】
(逆遺伝学と再集合体ウイルス)
特定の核酸およびタンパク質を単離し、改変するための技術は、当業者には周知である。本発明にしたがって、当業者の範囲内である、従来の分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術を用いることができる。このような技術は、文献において十分に説明されている。例えば、Sambrook、FritschおよびManiatis、Molecular Cloning :A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor、N.Y.:Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年(本明細書における「Sambrookら、1989年」);DNA Cloning. A Practical Approach、第I巻および第II巻(D. N. Glover編集、1985年);Oligonucleotide Synthesis(M. J. Gait編集、1984年);Nucleic Acid Hybridization[B. D. HamesおよびS. J. Higgins編集(1985)];Transcription And Translation[B. D. HamesおよびS. J. Higgins編集(1984年)];Animal Cell Culture[R. I. Freshney編集(1986年)];Immobilized Cells And Enzymes[IRL Press、(1986年)];B. Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning(1984年);Ausubel, F.M.ら(編集)、Current Protocols in Molecular Biology.、John Wiley & Sons, Inc.、1994年を参照されたい。これらの技術は、変異を含むPCR生成物を産生するために、変更されたヌクレオチドと一緒にオリゴヌクレオチドを用いた、部位特異的変異誘発を含んでいる。
【0119】
一態様において、本発明は、本明細書に記載し、当技術分野において公知である逆遺伝学法による、トリインフルエンザウイルスおよびそのワクチンの産生に基づくものである。
【0120】
インフルエンザウイルスのRNA転写のメカニズムは独特である(Horimotoら、Clin Microbiol Rev.、14巻(1)、129〜49頁、2001年)。細胞のmRNAから5’キャップがウイルスのエンドヌクレアーゼによって切断され、ウイルスのトランスクリプターゼによって転写のためのプライマーとして用いられる(Krugら、Cell、18巻、329〜334頁、1979年)。8個のRNAセグメントのうち6個がモノシストロニックな方法でmRNA中に転写され、HA、NA、NP、PB1、PB2、およびPAに翻訳される。対照的に、2つのRNAセグメントは、スプライシングによって2つのmRNAに各々転写される。MおよびNS遺伝子の両方について、コーディングmRNAが様々な読み枠において翻訳され、それぞれM1およびM2タンパク質、ならびにNS1およびNS2タンパク質を産生する。高濃度の遊離NPが、mRNA合成から相補的なRNA(cRNA)およびウイルスRNA(vRNA)の合成への移行を引き起こす(Shapiroら、J. Virol.、62巻、2285〜2290頁、1988年)。新しく合成されたvRNAは核においてNPとキャプシド形成し(encapsidate)、ウイルスmRNAの二次的な転写に対するテンプレートとして機能する。
【0121】
最近開発された逆遺伝学のシステムにより、インフルエンザウイルスゲノムの操作が可能になった(Paleseら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、93巻、11354〜58頁、1996年;NeumannおよびKawaoka、Adv. Virus Res.、53巻、265頁、1999年;Neumannら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、96巻、9345頁、1999年;Fodorら、J. Virol.、73巻、9679頁、1999年)。インフルエンザウイルスの状況における逆遺伝学は、マイナス鎖のRNAゲノムを有する生物体を組換え生成するために、マイナス鎖のRNAをcDNAへと操作するメカニズムである。逆遺伝学の技術は、ウイルスのポリメラーゼによるウイルスRNAの認識に、および成熟したビリオンを産生するのに必要なシグナルをパッケージングするのに不可欠であるマイナス鎖ウイルスの非コード領域を含む、合成の組換えウイルスRNAの調製を伴う。組換えRNAは、組換えDNAテンプレートから合成され、精製ウイルスポリメラーゼ複合体とインビトロで再構成されて、細胞をトランスフェクトするのに用いることができる組換えリボ核タンパク質(RNP)を形成する。米国特許第6,022,726号および同第6,001,634号を参照されたい。
【0122】
これらの組換え方法により、ポリペプチドのアミノ酸配列に対する特異的な変更を有するインフルエンザウイルス型を生成するのが可能になる。例えば、所望の置換を含むHA分子は、組換えインフルエンザウイルスの一部であってよい。一方法において、組換えインフルエンザウイルスは、「プラスミドオンリー(plasmid only)」系などの遺伝子操作方法によって作製される(Hoffmannら、Vaccine、20巻、3165頁、2002年)。
【0123】
組換えウイルスを産生するための別の一方法において、8個のプラスミド系が用いられ、この場合マイナス鎖のRNAがpol Iプロモーターから発現され、ポリメラーゼ複合体タンパク質の共発現により、感染性のインフルエンザAウイルスの形成がもたらされる(Hoffmannら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、97巻、6108〜13頁、2000年)。この技術により、インフルエンザの汎流行の場合に用いるためのcDNAからのキメラのワクチンの迅速な生成が可能になり、病原性株を弱毒化する可能性がもたらされ(Subbaraoら、Virology、305巻、192〜200頁、2003年)、同時に、6:2の立体配置(すなわち、内部遺伝子6個、ならびにHAおよびNA遺伝子2個(各遺伝子1個))に対して再集合体ウイルスをスクリーニングする必要性が除かれる。米国特許第7,037,707号も参照されたい。
【0124】
一実施形態において、H5N1など、高病原性のインフルエンザウイルスの場合、ウイルスの高病原性の性質の原因となるHAの多塩基性切断部位を部位特異的変異誘発によって除去してウイルスを弱毒化し、ウイルスの分類をBSL−3からBSL−2に変える。さらに、原型のドナー株の内部遺伝子の1つまたは複数を他の亜型のウイルスの遺伝子によって置換して増殖の性質をさらに改善する。
【0125】
高増殖の性質をH5N1野生型ウイルスの免疫学的利点と組み合わせているこのようなウイルスは、生成のための時間を節約するものであり、一態様において、バックボーンとしてVietnamまたはIndonesiaなどのH5N1ウイルスからの6個の内部遺伝子、ならびに実際のH5N1汎流行(様)株のHA(弱毒化のための変異した切断部位を有する)およびNAを有する6:2の再集合体である。高い増殖の可能性を有する再集合体ウイルスの別の一例は、VietnamまたはIndonesiaなどのH5N1ウイルスからの5個の内部遺伝子、バックボーンとしてH1N1株のPB2(細胞培養物中の増殖を改善するため)、ならびに実際のH5N1汎流行株のHA(弱毒化のための変異した切断部位を有する)およびNAを有する、5:1:2の再集合体である。
【0126】
いくつかの実施形態において、再集合体ウイルスは、遺伝子操作されたウイルスを産生するためのヘルパーウイルス系の使用を記載しているPaleseら(Proc. Natl. Acad. Sci USA、93巻、11354〜58頁、1996年)の方法を用いて調製される。一実施形態において、ウイルスはインフルエンザヘルパーウイルス法を用いて産生される。例えば、6:2再集合体を構築するために、弱毒化VN1203ウイルスを、ニワトリEgypt株などの第2のH5N1株からのHAおよびNAを導入するためのヘルパーウイルスとして用いてもよい(Alyら、Avian Dis.、52巻、269〜77頁、2008年)。トランスフェクタントウイルスの選択を、ヘルパーHAまたはNAタンパク質に対する中和抗体を用いて行う(例えば、上述、Paleseらの図2を参照されたい)。
【0127】
本明細書に記載する、2つの例示の弱毒化H5N1再集合体は、H5N1クレード1株A/Vietnam/1203/2004のバックボーン、すなわち6個の内部遺伝子(PB1、PB2、PA、NP、M、NS)を有し、1つはH5N1クレード1Vietnam1203株の変異したHAおよびNA、ならびに異なるクレード(例えばクレード2株A/Indonesia/5/05)のH5N1ウイルスの変異したHAおよびNAを含んでいる。これら2つの弱毒化RG再集合体は、標準のベロ細胞(ウシ胎仔血清を含む)または血清タンパク質を含まないベロ細胞において高増殖の可能性を有する。これらの再集合体ウイルスはまた、全てのH5N1タンパク質、すなわち核タンパク質および細胞性免疫の誘発を主に担っているマトリックスタンパク質を含んでいるので、既存のRG H5N1/PR8再集合体に比べて増強されたH5N1特異的免疫反応を誘発する可能性も有する。これらのH5N1特異的な細胞性免疫反応はまた、Tヘルパー細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、およびメモリー細胞を特異的に誘発することによって広範な免疫反応を誘発する能力も有し、結果として改善されたブースター効果をもたらすことがある。この結果は、卵に適応させた季節性株の亜型H1N1に由来する内部タンパク質を有する既存のH5N1/PR8再集合体には当てはまらない(これは、強力なH5N1特異的細胞性免疫反応を誘発しない)。
【0128】
多数のH5N1株が当技術分野において同定されており、その各々が本発明に適合する。例えば、数ある中で、Govorkovaら、J Virol.、2005年2月、79巻(4)、2191〜8頁;Proc Natl Acad Sci USA、103巻、2845〜50頁、2006年;Horimotoら、Clin Microbiol Rev、14巻、129〜49頁、2001年、およびCauthenら、J Virol.、74巻、6592〜9頁、2000年を参照されたい(例えば、Leeら、J Virol、79巻、3692〜02頁、2005年を参照されたい)。
【0129】
本発明において有用であるトリH5N1インフルエンザ株の例には、それだけには限定されないが、A/Vietnam/1203/2004(H5N1)(CDC♯2004706280)(VN1203)、A/Indonesia/05/2005(H5N1)(CDC♯2005740199)(IN5/05)、A/Cambodia/R0405050/2007(H5N1)(CamR04)、A/Anhui/1/05(H5N1)(AH1/05)A/turkey/Turkey/01/2005(H5N1)(TT01)(例えば、Carterら、Bio Drugs.、22巻、279〜92頁、2008年を参照されたい)、A/Vietnam/1194/2004、シチメンチョウインフルエンザウイルス株A/Turkey/England/50−92/91(H5N1)(例えば、Horimotoら、Clin Microbiol Rev、14巻、129〜49頁、2001年を参照されたい)、A/turkey/England/87−92BFC/91(H5N1)(Londtら、Avian Pathology、36巻、347〜350頁、2007年)、ニワトリインフルエンザウイルス株A/Chicken/Indonesia/03(H5N1)、ニワトリインフルエンザウイルス株A/Chicken/Hong Kong/220/97(例えば、Tumpeyら、J Virol、76巻、6344〜55頁、2002年を参照されたい)、ニワトリインフルエンザウイルス株A/Chicken/Scotland/59 (H5N1)(例えば、Horimotoら、上述を参照されたい)、ニワトリインフルエンザウイルス株A/Chicken/Hong Kong/258/97(H5N1)(例えば、Horimotoら、上述を参照されたい)、ニワトリインフルエンザウイルス株A/Chicken/Nakom−Patom/Thailand/CU−K2/2004(H5N1)(例えば、Anwarら、In Silico Biol.、6巻、161〜8頁、2006年;Viseshakulら、Virology.、328巻、169〜76頁、2004年を参照されたい)、ニワトリインフルエンザウイルス株A/Chicken/Hong Kong/31.2/2002(H5N1)、(例えば、Anwarら、上述を参照されたい)、ニワトリインフルエンザウイルス株A/Chicken/Vietnam/C58/04(H5N1)、(例えば、Anwarら、上述を参照されたい)、ニワトリインフルエンザウイルス株A/Chicken/Vietnam/38/2004(H5N1)(例えば、Anwarら、上述を参照されたい)、ニワトリインフルエンザウイルス株A/Chicken/Hong Kong/1000/97(H5N1)(例えば、Shanら、Biochem Biophys Res Commun.、302巻、377〜83頁、2003年を参照されたい)、ニワトリインフルエンザウイルス株A/Chicken/Hong Kong/317.5/01ならびにアヒルインフルエンザウイルス株A/Duck/Anyang/AVL−1/01(例えば、Tumpeyら、J Virol、76巻、6344〜55頁、2002年を参照されたい)、アヒルインフルエンザウイルス株A/Duck/Vietnam/11/2004(H5N1)、A/Hatay/2004/(H5N1)(例えば、Anwarら、上述を参照されたい)、アヒルインフルエンザウイルス株A/Duck/Korea/ES/03(H5N1)、A/Duck/Korea/ESD1/03 (H5N1)およびA/Duck/Hong Kong/821/02(H5N1)(例えば、Leeら、J Virol、79巻、3692〜02頁、2005年を参照されたい)、アヒルインフルエンザウイルス株A/Duck/Vietnam/11/2004(H5N1)、A/Duck/China/E319−2/03(Leeら、Vet Microbiol、124巻、193〜201頁、2007年を参照されたい)、シラサギインフルエンザウイルスA/egret/Hong Kong/757.2/02(H5N1)(例えば、Leeら、J Virol、79巻、3692〜02頁、2005年を参照されたい)、ガチョウインフルエンザウイルス株A/Goose/Guangdong/1/96(例えば、Cauthenら、J Virol.、74巻、6592〜9頁、2000年を参照されたい)、トリインフルエンザウイルス株A/Env/HK/437−4/99(例えば、Cauthenら、上述を参照されたい)、トリインフルエンザウイルス株A/Env/HK/437−6/99(例えば、Cauthenら、上述を参照されたい)、トリインフルエンザウイルス株A/Env/HK/437−8/99(例えば、Cauthenら、上述を参照されたい)、トリインフルエンザウイルス株A/Env/HK/437−10/99、(例えば、Cauthenら、上述を参照されたい)、トリインフルエンザウイルス株A/Quail/Vietnam/36/04(H5N1)(例えば、Anwarら、上述を参照されたい)、トリインフルエンザウイルス株A/Swan/Italy/179/06(H5N1)(例えば、Terreginoら、Vet Rec.、158巻、491頁、2006年を参照されたい)、トリインフルエンザウイルス株A/Hong Kong/156/97(H5N1)(HK156)(例えば、Cauthenら、上述を参照されたい)、ならびにトリインフルエンザウイルス株A/Hong Kong/213/03(H5N1)(HK213)(例えば、Shinyaら、J. Virol.、79巻、9926〜32頁、2005年を参照されたい)、ならびにLeeら、Emerging Infect Dis.、14巻、487〜90頁、2008年に公開されているものが含まれる。
【0130】
H5N1株からの内部遺伝子ならびにHAおよびNA遺伝子を知った上で、一代替の実施形態において、これらの遺伝子をコードするポリヌクレオチドは、当技術分野において周知であり日常的に行われている技術によって合成されることが理解される。
【0131】
別の一実施形態において、他のインフルエンザA亜型のインフルエンザウイルス、およびインフルエンザBウイルスが、本発明の方法および組成物において有用である。例えば、あらゆるH1からH16亜型を含めた任意のHA亜型を有するインフルエンザAウイルスが企図される。なおさらなる一実施形態において、NA亜型のN1からN9の任意のものを有するインフルエンザウイルスが、本発明には有用であることが企図される。
【0132】
ある実施形態において、再集合体を産生する場合、HAおよびNA亜型は同じ株に由来し、バックボーンは同じ亜型のインフルエンザウイルスに由来することが企図される。例示の組合せには、それだけには限定されないが、例えば、異なるH3N2ウイルス株からのH3およびN2遺伝子を有するH3N2バックボーン、または異なるH15N8ウイルス株からのH15およびN8遺伝子を有するH15N8バックボーンが含まれる。以下:
【0133】
【化13】

【0134】
のインフルエンザA亜型の任意のものが本発明において有用であることがさらに企図される。以下の亜型のインフルエンザAウイルス:
【0135】
【化14】

【0136】
が、以前に同定されている。表1は、再集合体ウイルスを産生するのに有用なインフルエンザA株からの、例示のHAおよびNA遺伝子を列挙するものである。
【0137】
【表1−1】

【0138】
【表1−2】

【0139】
【表1−3】

【0140】
企図されるさらなるインフルエンザAおよびBウイルスには、それだけには限定されないが、
【0141】
【化15】

【0142】
、およびあらゆる上記のウイルスに対する同様の性質を有するウイルスが含まれる。参照によって本明細書に組み入れられる米国特許公開第20090010962号は、本発明において有用なインフルエンザA H1N1ウイルスを記載している。
【0143】
インフルエンザA H5N1株を含む、同定されたインフルエンザA株のリストは、世界保健機関(WHO)および米国疾病管理予防センター(CDC)のインフルエンザAおよびH5N1亜型のデータベースから入手可能である。米国国立医学図書館によって維持されている国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のデータベースはまた、インフルエンザAおよびインフルエンザB種の同定されているウイルスのHAおよびNA遺伝子の長さおよび配列を記載する、最新のデータベースをやはり維持している。これらの機構によって列挙されている株、ならびに他の商用および学術用データベース、または文献出版物に記載され、および当技術分野において公知であるウイルス株が、本発明における使用に企図される。今後同定され、単離されるさらなるインフルエンザAおよびインフルエンザB株も、本発明において有用であることがやはり企図される。したがって、本明細書において特に例示されるあらゆるH5N1株、および当技術分野において公知であり、または後に発見されるH5N1株が、本発明の再集合体ウイルス、抗原組成物、ワクチン、および方法に適合する。
【0144】
本発明の新規性、および当技術分野において先に開示された再集合体ウイルスからの本発明の差別化を強調すると、本発明から特に除外されるのは、それだけには限定されないが、米国特許第4,552,758号、同第7,037,707号、同第7,601,356号、同第7,566,458号、同第7,527,800号、同第7,510,719号、同第7,504,109号、同第7,465,456号、同第7,459,162号;米国特許公開第20090297554号、同第20090246225号、同第20090208527号、同第20090175909号、同第20090175908号、同第20090175907号、同第20090136530号、同第20080069821号、同第20080057081号、同第20060252132号、同第20060153872号、同第20060110406号、同第20050158342号、同第20050042229号、および同第20070172929号;国際特許公開WO2008/157583、WO2008/021959、WO2007/048089、WO2006/098901、WO2006/063053、WO2006/041819、WO2005/116260、WO2005/116258、WO2005/115448、WO2005/062820、WO2003/091401を含めた、本明細書に参照される任意の以前の公開において、先に開示されたか、または、例えば、A/Puerto Rico/8/34(H1N1)、A/Ann Arbor/6/60(H2N2)およびB/Ann Arbor/1/66などのバックボーンを用いて生成された、1つの株からの内部遺伝子および同じ亜型の異なる株からのHAおよびNA遺伝子を有する任意のウイルス(インフルエンザAおよびインフルエンザB)、ならびに組換えウイルスにおいてインフルエンザA亜型の1株からの内部遺伝子および同じ亜型のHAおよびNA遺伝子を含むことがある、FLUMISTTMワクチンに有用であるとその中で同定された任意のウイルスである。このような文書は全て、その全文が本明細書に参照によって組み入れられる。
【0145】
一実施形態において、本発明は、また、インフルエンザ亜型の第1の株のバックボーン、ならびに同じインフルエンザ亜型の第2の株からのHAおよびNA遺伝子を含む、天然に存在する再集合体ウイルスを除外するものである。本明細書で用いられる「天然に存在する再集合体ウイルス」という用語は、外部の供給源からの介入なしに天然の環境中で組み換わる再集合体ウイルスを意味する。
【0146】
さらなる一実施形態において、本発明は、バックボーンとして第1のインフルエンザAまたはB亜型からの改変された内部遺伝子を1つまたは複数(例えば、変異体のA/Puerto Rico/8/34(H1N1)、A/Ann Arbor/6/60(H2N2)、もしくはB/Ann Arbor/1/66)、ならびに例えば、米国特許公開第20070172929号において例示される、インフルエンザウイルスの同じ株からのHAおよびNA遺伝子を有する再集合体ウイルスを除外するものである。しかし、本発明は、一インフルエンザ亜型のバックボーン株の改変された内部遺伝子、ならびに同じ亜型であるが異なる株からのHAおよびNA遺伝子を含むウイルスが本発明の範囲内に含まれることを企図するものである。
【0147】
なお別の一実施形態において、本発明は、バックボーン/ドナー株として、例えば、A/Ann Arbor/6/60(H2N2)、A/Leningrad/134/17/57(H2N2)、B/Ann Arbor/1/66、および当技術分野において公知の他のものなど、低温適応ウイルスを用いて産生された再集合体ウイルス(ここで、内部のバックボーン遺伝子は第1の亜型からであり、HAおよびNA遺伝子は同じ亜型の異なる株からである)を除外するものである。
【0148】
(細胞系)
典型的なインフルエンザウイルスは、ニワトリの卵中で増殖するように適応されているが、卵培養物を維持するための費用は、細胞培養物中でウイルスを増殖させるより著しく大きい。ワクチン用にインフルエンザウイルスを増殖させようと慣例的なニワトリ胚細胞(CEC)培養物を用いたが、これらはニワトリの胚全体のプロテアーゼ活性のいくつかだけをもたらし、それゆえ限られた範囲のインフルエンザウイルス株が複製される。CEC培養物を調製するための標準的な手順は、頭部および内部の器官の除去、ならびに複数のトリプシン処理ステップを伴う。これらの手順は、特に、数々のインフルエンザ株を複製することが示されている、脳、心臓、肺、肝臓、および腎臓の細胞の喪失をもたらす(Scholtissekら、J. Gen. Virol.、69巻、2155〜2164頁、1988年)。したがって、標準的な手順は、支持することができるウイルス株の点で制限される、線維芽細胞から主になる高度に選択された細胞集団をもたらす。
【0149】
インフルエンザウイルス生成における改善は、ニワトリ培養物および哺乳動物細胞系の両方において試みられてきた。例えば、標準的な細胞培養物におけるいくつかのインフルエンザA株の複製の制限は、組織培地にトリプシンを加えることによって改善され得ると報告されている。例えば、トリプシンの添加は、CEC培養物中で増殖する様々な株の感染力を大幅に増大する(Lazarowitzら、Virology、68巻、440〜454頁、1975年)。さらに、Stieneke−Groberら(EMBO J.、11巻、2407〜2414頁、1992年)は、フューリン様プロテアーゼとしてMDBK細胞におけるHA活性化酵素を同定した。このような酵素はヒトおよびマウスの組織から単離されており、真核生物のサブチリシン様エンドプロテアーゼの新しいファミリーを構成する。Katzら(J. Infect. Dis.、160巻、191〜98頁、1989年)は、MDCK細胞および発育卵の羊膜腔中のインフルエンザH3N2の増殖の特徴を比較し、MDCK細胞から得られたインフルエンザの力価は発育卵に匹敵し、MDCK増殖したウイルスはインビボで抗原性の増大を生じたことを示した。しかし、MDCK細胞を用いると問題点が存在する。例えば、MDCK細胞はヒトのワクチンを生成するのに認可されている細胞系ではなく、手順は、ウイルスがMDCK細胞系において増大し連続的に継代されることを必要とする。
【0150】
ウイルス増殖およびワクチン生成の改善に適応されたベロ細胞は、本明細書に参照によって組み入れられる、米国特許第6,146,873号およびKistnerら(Vaccine、16巻、960〜8頁、1998年)に記載されている。ベロ細胞は、世界保健機関にしたがってワクチンを生成するのに承認されている細胞系である。一実施形態において、本発明のウイルスは、以下の実施例に記載するように、ベロ細胞中で増殖する。
【0151】
さらなる哺乳動物の細胞系が、ウイルスの培養および増殖に有用である。ワクチンを調製するためのウイルスを培養するのに有用な例示の哺乳動物細胞には、それだけには限定されないが、MRC−5、MRC−9、Lederle 130、Chang liverおよびWI−38(ヒト線維芽細胞);U937(ヒト単球);ベロおよびCV−1(アフリカミドリザル):IMR−90およびIMR−91(平滑筋の特徴を有するヒト肺線維芽細胞)、MDCK(Madin Darbyイヌ腎臓)、MDBK(Madin Darbyウシ腎臓)、HEK(ヒト胎児の腎臓)、H9、CEMおよびCD4発現HUT78(ヒトT細胞):PerC6(ヒト網膜芽細胞);BHK−21細胞(仔ハムスター腎)、BSC(サル腎細胞)およびLLC−MK2(サル腎臓)が含まれる。
【0152】
(ワクチン)
組織培養調製物から得た所望のウイルス株を用いてワクチンを生成することが企図される。それだけには限定されないが、弱毒化ワクチン、不活化ワクチン、サブユニットワクチン、およびスプリットワクチンを含めた、多くのタイプのウイルスのワクチンが知られている。
【0153】
弱毒化ワクチンは、病原性を低減するいくつかのやり方で変更され、もはや疾患を引き起こさない生のウイルスワクチンである。弱毒化ウイルスは、度重なる世代についての組織培養物における増殖および病原性に関与する遺伝子を変異させるか、または除去するための遺伝子操作を含めたいくつかの方法で生成される。例えば、一実施形態において、病原性に関与するか、または疾患の出現に関与すると同定されたウイルスの遺伝子および/またはタンパク質は、ウイルスが細胞に感染し、細胞内で複製することが依然としてできるが、疾患を引き起こすことができないように変異、または変えられる。この一例は、HA1/HA2切断部位を変異させることである。ウイルスの弱毒化は、外来のエピトープをウイルス遺伝子のセグメント(例えばNA遺伝子)中に挿入し(J Virol、66巻、4647〜4653頁、1992年)、それによってゲノムの正常な機能を妨害することによってやはり成功している。ウイルスはまた、当技術分野において周知の低温適応法を用いて弱毒化される。例えば、A型およびB型インフルエンザウイルスを弱毒化するための方法を論じる、Maassabら、Rev Med Virol、9巻、237〜44頁、1999年、ならびにMDCK細胞中で増殖する低温適応したインフルエンザウイルスを記載する、Ghendonら(Vaccine、23巻、4678〜84頁、2005年)を参照されたい。
【0154】
ウイルスを弱毒化するためのさらなる方法は、NS1遺伝子を欠く再集合体ウイルスの構築を含む。例えば、機能的なNS1遺伝子を欠く弱毒化ウイルスを開示する、米国特許第6,468,544号、同第6,573,079号、同第6,669,943号、および同第6,866,853号、ならびに米国特許公開第20030157131号および同第20040109877号(これら各々の開示は本明細書に参照によって組み入れられる)を参照されたい。NS1遺伝子は、ウイルスにおいてNS1遺伝子の機能的な発現がないように、完全に欠失されるか、もしくは部分的に欠失されるか、または変異によって変更されてよい。NS1遺伝子を欠くウイルス粒子は、野生型ウイルスに比べて弱毒化された表現型を示す。
【0155】
弱毒化ウイルスを生成した後、標準的な方法を用いてワクチンを調製する。ウイルスを、当技術分野において公知の標準的な方法を用いて、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、高速(超)遠心分離、またはショ糖勾配を用いて精製する。
【0156】
サブユニットワクチンは死滅ワクチンである。サブユニットワクチンの生成は、免疫系を活性化するウイルスの部分を単離することを伴う。インフルエンザの場合は、精製したHAおよびNAを用いてサブユニットワクチンを調製するが、サブユニットワクチンを生成するのにウイルスタンパク質の任意の混合が用いられる。一般的に、HAなどのウイルスタンパク質は組換えウイルスの形態から抽出され、異なる株からのこれらのウイルスタンパク質の混合を含むようにサブユニットワクチンは処方される。
【0157】
スプリットワクチンは、エンベロープで覆われたウイルスを、エンベロープ中のタンパク質を可溶化するための洗剤で処理することによって生成される、死滅ワクチンである。インフルエンザウイルスの場合は、HAおよびNAを可溶化する。一実施形態において、スプリットワクチンを生成するために非イオン性洗剤を用いる。非イオン性洗剤の例には、それだけには限定されないが、ノナノイル−N−メチルフカミド(Mega9)、TritonX−100、オクチルグルコシド、ジギトニン、C12E8、ルブロール(Lubrol)、ノニデット(Nonidet)P−40、およびTween(例えば、Tween 20、80、または120)が含まれる。
【0158】
不活化ウイルスワクチンは、収集したウイルスを不活化し、哺乳動物における免疫反応を誘発するためのワクチンとして用いるのに知られている方法を用いてこれを処方することによって調製される。不活化は、それだけには限定されないが、ホルムアルデヒド、UV照射、グルタルアルデヒド、バイナリーエチレンイミン(BEI)、およびβ−プロピオラクトンを含む薬剤を用いて行われる。不活化剤は、溶液中の実質的に全てのウイルス粒子を不活化するのに十分に高い濃度で用いられる。例示のためには、制限なく、ガンマ線照射でのウイルスの不活化は米国特許第6,254,873号に記載されており、ホルマリンでの不活化は米国特許第6,254,873号および米国特許第6,635,246号に記載されており、ホルムアルデヒドでの不活化はJE−VAX(登録商標)、Couchら、J Infect Dis、1997年、176巻(補完1)、S38〜44頁における日本脳炎ウイルスワクチンに対して記載されており、可視光線による光線力学的不活化はWallisら、Journal of Immunology、1963年、91巻、677〜682頁に記載されており、UV光線での不活化はWO/2008/039494に記載されており、塩素の不活化はRice EWら、Emerg Infect Dis[インターネット上で連続(serial on the Internet)]2007年10月に記載されており、水不溶性、疎水性ポリカチオンでの不活化、例えば、表面上に塗布したN,N−ドデシルメチル−ポリエチレンイミン(PEI)は、Halderら、Proc. Natl. Acad. Sci USA、103巻、17667〜17671頁、2006年に記載されており、熱不活化はThomasら、Journal of Food Protection、70巻、674〜680頁に記載されており、βプロピオラクトンでの不活化(Inflexal VおよびFluvirinの生成に用いるものとして)はEUROPEAN PHARMACOPOEIA 5.0に記載されており、バイナリーエチレンイミンによる不活化は米国特許第6,803,041号に記載されている。各々のこれらの文書の開示は、ウイルス不活化のこれらの教示について、参照によって組み入れられる。不活化ステップ中、サブユニットの精製および/またはスプリット(split)を、ウイルスを細胞培養物から精製する前または精製後に行うことが企図される。例えば、不活化ウイルスワクチンの生成は、細胞材料の除去、ウイルスの不活化、精製、およびウイルスエンベロープの可溶化を伴うことがある。一実施形態において、本明細書に記載する再集合体ウイルスは、Kistnerら、Vaccine、25巻、6028〜36頁、2007年に記載されているベロ細胞から増殖、単離される。
【0159】
次いで、ワクチンを、当技術分野において公知の標準的なアジュバントおよびワクチン調製物を用いて調製する。アジュバントには、それだけには限定されないが、単独または組み合わせて用いることが企図される、サポニン、非イオン性洗剤、植物油、鉱物ゲル、例えば、水酸化アルミニウム、界面活性物質、例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油または炭化水素エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ならびに潜在的に有用なヒトアジュバント、例えば、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−nor−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−s−n−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン、BCG(カルメットゲラン桿菌)、Corynebacterium parvum、ISCOM、ナノビーズ、スクアレン、ならびにブロック共重合体が含まれる。
【0160】
ISCOMは、最初にMoreinら(Nature、308巻、457〜460頁、1984年)において記載された免疫刺激複合体(Immune Stimulating Complex)についての頭字語である。ISCOMは新規なワクチン送達系であり、慣例的なアジュバントとは異なる。ISCOMは2つの方法において形成される。いくつかの実施形態において、抗原を、その処方中に構造中に物理的に取り込む。他の実施形態において、ISCOM−マトリックス(例えば、Isconovaとして供給される)は抗原を含まないが、免疫化前にエンドユーザーによって選択される抗原と混合される。混合後、抗原はISCOM−マトリックスと一緒に溶液中に存在するが、構造中に物理的に組み入れられない。
【0161】
一実施形態において、アジュバントは水中油型エマルジョンである。水中油型エマルジョンは当技術分野において周知であり、アジュバント組成物として有用であると示唆されている(EP399843、WO95/17210、米国特許公開第20080014217号)。一実施形態において、代謝可能な油が、抗原組成物または単離されたウイルスの総容積の0.5%から20%(最終濃度)の量で、総容積の1.0%から10%の量で、または総容積の2.0%から6.0%の量で存在する。
【0162】
いくつかの実施形態において、アジュバントとして有用な水中油型エマルジョン系は、小型油滴のサイズを有する。ある実施形態において、液滴のサイズは、直径120nmから750nm、または120nmから600nmの範囲である。
【0163】
任意の水中油型組成物がヒトの投与に適するものであるために、エマルジョン系の油相は代謝可能な油を含んでいる。油は、レシピエントに毒性ではなく、代謝によって変換されることが可能である、任意の植物油、魚油、動物油、または合成油であってよい。木の実、種子、および穀物が植物油の一般的な供給源である。合成油も本発明の一部分であり、例えばNEOBEE(登録商標)などの市販の油を含むことができる。とりわけ適切な代謝可能な油はスクアレンである。スクアレン(2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエン)は、サメ肝油中に大量に、ならびにオリーブ油、コムギ胚種油、米ぬか油、およびイースト中に少量見出される不飽和油であり、本発明における使用にとりわけ適切な油である。スクアレンはコレステロールの生合成における中間体であるという事実のために代謝可能な油である(Merck index、第10版、エントリー番号8619)。水中油型エマルジョンに有用な例示の油には、それだけには限定されないが、ステロール、トコール、およびα−トコフェロールが含まれる。
【0164】
さらなる実施形態において、免疫系の刺激物をワクチンおよび/または薬学的組成物に加える。免疫刺激物には、単独または組み合わせて用いられる、サイトカイン、増殖因子、ケモカイン;リンパ球、単球、またはリンパ器官からの細胞の細胞培養物からの上清;植物からの細胞調製物および/または抽出物;細菌(例えば、BCG、マイコバクテリウム、コリネバクテリウム)、寄生体、またはマイトジェンからの細胞調製物および、または抽出物;ならびに他のウイルスまたは他の供給源に由来する新規な核酸(例えば、二本鎖RNA、CpG);ブロック共重合体、ナノビーズ、または当技術分野において公知の他の化合物が含まれる。
【0165】
アジュバントおよび他の免疫刺激物の特定の例には、それだけには限定されないが、リゾレシチン、配糖体(例えば、サポニンおよびサポニン誘導体、例えばQuil A(QS7およびQS21)またはGPI−0100)、陽イオン性界面活性剤(例えば、DDA)、四級炭化水素アンモニウムハロゲン化物、プルロニックポリオール、ポリアニオンおよび多原子イオン、ポリアクリル酸、非イオン性ブロック重合体(例えば、プルロニックF−127)、ならびに3D−MPL(3de−O−アシル化モノホスホリルリピドA)が含まれる。例えば、米国特許公開第20080187546号および第20080014217号を参照されたい。
【0166】
(免疫アッセイ)
本発明の再集合体ウイルス、抗原組成物、またはワクチンの抗原性および免疫反応の誘発を検出するのに有用である、抗原に対する抗体の免疫特異的な結合を検出するための様々な技術が、当技術分野において知られている。抗原と抗体との間の相互作用を検出する初期の方法は、ゲル中の沈降による複合体の検出および分析を伴うものであった。抗原−抗体結合対を検出するさらなる方法には、放射ヨウ素標識された検出抗体またはプロテインAなどのIgGと反応性である放射ヨウ素標識されたタンパク質の使用が含まれる。これらの初期の方法は、Methods in Enzymology、70巻、166〜198頁、1980年において概観されるように、当業者には周知である。
【0167】
血清学的アッセイは、インフルエンザ診断の判定において、ならびにウイルス株の疫学および抗原性に関する調査研究において広く用いられている。とりわけ、赤血球凝集素阻害(HIまたはHAI)アッセイは広く用いられている(Meisnerら、J Virol.、82巻、5079〜83頁、2008年;Couchら、Vaccine、25巻、7656〜63頁、2007年)。HIアッセイは、改変されたHA分子の抗原性を示すため、および非改変のHAタンパク質よりも抗原性があるか、または抗原性がないと、改変されたHAタンパク質を特徴付けるのを支援するためにやはり有用である。
【0168】
HIアッセイは、血清試料からの抗体が標準化された対照と結合する能力を決定する。HIアッセイにおいて、血清試料の段階希釈物(力価)を標準量の赤血球と混合し、これらが複合体に会合するのを肉眼的に検出する。目に見える複合体をもたらす最低レベルの力価測定した血清がアッセイ結果である。
【0169】
試料中のHA抗原のレベルを決定する一元放射拡散(SRD)アッセイは、Woodら(J Biol Standardization、5巻、237〜47頁、1997年)によって開発された。SRDアッセイは、HA特異的抗体が抗原に結合したときの対照の抗原および試験抗原(例えば、ワクチン)の拡散部位のゾーンを比較するものである。
【0170】
SRDアッセイ、および上記に記載し、当技術分野において公知である他のアッセイを、予め決定された量のHA抗原を含むワクチンを調製するため、ワクチン試料中のHAの量を決定するのに用いてもよい。
【0171】
(薬学的処方物および投与)
ワクチン組成物の投与は、一般的に予防目的である。組成物を予防的に投与することにより、後に続く任意の感染の防止または弱毒化がもたらされる。「薬学的に許容される」組成物は、レシピエント患者によって許容されるものである。有効量のワクチンを投与することが企図される。「有効量」は、十分な体液性免疫または細胞性免疫を誘発するなど、所望の生物学的効果を達成するのに十分な量である。これはワクチンのタイプ、レシピエントの年齢、性別、健康、および体重に依存してよい。所望の生物学的効果の例には、それだけには限定されないが、無症状の提示、症状における低減、組織または鼻汁中のウイルス力価における低減、インフルエンザウイルスによる感染からの完全な保護、およびインフルエンザウイルスによる感染からの部分的な保護が含まれる。
【0172】
本発明のワクチンまたは組成物は、その存在が、感染性のインフルエンザウイルスの少なくとも1つの株に対する少なくとも1つの1次的または2次的な体液性免疫反応または細胞性免疫反応を増強する、レシピエント患者の生理状態における検出可能な変化をもたらす場合、生理学的に重大である。ワクチン組成物は、ウイルス感染から保護するために投与される。「保護」は絶対的である必要はなく、すなわち、対照の集団または患者のセットに比べて統計的に有意な改善がある場合、インフルエンザ感染が全面的に防止、または根絶される必要はない。保護は、インフルエンザウイルス感染の症状の重症度または症状の開始の急速さを低減することに限定されることがある。
【0173】
一実施形態において、本発明の弱毒化または不活化ワクチン組成物は、感染の開始前に(予想される感染を防止もしくは弱毒化するために)、または実際の感染の開始後のいずれかに提供され、それによってウイルス感染に対して保護するものである。
【0174】
一態様において、本発明の方法は、薬学的組成物を投与するステップを含む。ウイルス、抗原組成物、またはワクチンを、吸入、鼻腔内、経口、および非経口を含む、当技術分野において公知の任意の手段において投与する。非経口投与経路の例には、皮内、筋肉内、静脈内、腹腔内、および皮下投与が含まれる。
【0175】
一実施形態において、インフルエンザワクチンの投与は、1投与量あたりの赤血球凝集素単位(HAU)の数に基づく。1HAUは、ニワトリ赤血球での標準的な赤血球凝集素アッセイにおいて50%の凝集を達成するのに必要とされる抗原の量と定義される。本明細書に記載するトリインフルエンザウイルスワクチンは、約10ng〜約1μgの間、約20ng〜約500ngの間、約50ng〜約250ngの間、約75ng〜約200ngの間、約100ng、約125ng、約150ng、または約175ngのHA単位(HAU)を含む処方物において有効である。関連の一実施形態において、不活化ウイルスを含むワクチン組成物は、約0.1から約200μgの赤血球凝集素タンパク質/mlに対応するウイルスの量、またはその中のあらゆる範囲もしくは値を含む。関連の一実施形態において、本発明のワクチン組成物は、ウイルスが弱毒化されている場合、約10から10プラーク形成単位(PFU)/ml、またはその中のあらゆる範囲もしくは値を含む。いくつかの実施形態において、ワクチン組成物は、約10、約10、約10、約10、約10、約10、約10、または約10PFU/mlを含む。ワクチン組成物が、10から約10PFU/ml、約10から約10PFU/ml、または約10から約10PFU/mlを含むことがさらに企図される。
【0176】
別の一態様において、不活化インフルエンザワクチンは、一元放射拡散(SRD)アッセイによって定量され(Kistnerら、Vaccine(2007年)25巻、6028〜36頁、およびWoodら、J. Biol. Stand.(1997年)5巻、237〜247頁参照)、赤血球凝集素のマイクログラム(1mlあたりまたは1投与量あたり)において表される。一実施形態において、季節性ワクチンの投与量は、1株あたり15μgであり、3投与量中合計で45μgである。(前)汎流行性ワクチンでは、投与量は典型的にはアジュバントによる。一態様において、投与量範囲は1ワクチンあたり1μgから15μgであり、いくつかの調製物では1ワクチンあたり最高75μgが有用である。一実施形態において、HA1μgから100μgの投与量のワクチン投与量を投与する。さらなる一実施形態において、ワクチンは、1ワクチンあたり1μgから30μgのHA含量を含む。関連の実施形態において、HA1μg、3μg、5μg、7.5μg、10μg、12.5μg、15μg、20μg、25μg、もしくは30μg、または必要に応じて最高100μgまでのあらゆる量のワクチン投与量を投与する。いくつかの実施形態において、ワクチンの投与量をワクチン調製物に用いるアジュバントに基づいて調節することが企図される。
【0177】
したがって、ワクチンの1回投与量は、赤血球凝集素約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約11μg、約12μg、約13μg、約14μg、約15μg、約16μg、約17μg、約18μg、約19μg、約20μg、約21μg、約22μg、約23μg、約24μg、約25μg、約30μg、約35μg、約40μg、約45μg、約50μg、約55μg、約60μg、約65μg、約70μg、約75μg、約80μg、約85μg、約90μg、約95μg、約100μg、および100μgを超えて有するものを含む(同量または異なる量の赤血球凝集素の1回投与量または複数回投与量において提供される)。
【0178】
ある実施形態において、ウイルスまたは抗原組成物を、ワクチン投与に企図されるのと同様のHA単位またはpfuを含む投与量において投与することがさらに企図される。
【0179】
溶液として投与する場合、ワクチンを水溶液の形態において調製する。このような処方物は当技術分野において公知であり、好適な溶媒中に抗原および他の好適な添加剤を溶解することによって調製される。このような溶媒には、例えば、水、生理食塩水、エタノール、エチレングリコール、およびグリセロールが含まれる。適切な添加剤には、認可されている色素、および抗菌性の保存剤、例えば、チメロサール(エチル水銀チオサリチル酸ナトリウム)が含まれる。このような溶液は、標準的な方法を用いて、例えば、部分的に加水分解されたゼラチン、ソルビトール、または細胞培地の添加によって安定化してもよく、例えば、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、および/もしくはリン酸二水素カリウム、またはTRISなどの試薬を用いて、標準的な方法を用いて緩衝化してもよい。液体処方物は懸濁物およびエマルジョンも含むことができる。懸濁物の調製は、例えば、コロイドミルの使用を含み、エマルジョンの調製は、例えば、ホモジナイザーの使用を含む。
【0180】
一実施形態において、ワクチンキャリアがポリマー性の遅延放出系であることが企図される。合成ポリマーは、当技術分野において周知の技術を用いて抗原の制御された放出をもたらすためのワクチンの処方物において有用である。
【0181】
本発明のさらなる態様および詳細は、限定的ではなく例示的であるものとされる以下の実施例から明らかとなる。
【実施例】
【0182】
(実施例)
(実施例1)
(逆遺伝学による、改変された切断部位を有する弱毒化A/Vietnam/1203/04株の産生)
ウイルス株A/Vietnam/1203/04(H5N1)は、致死性のヒトインフルエンザ症例から単離された高病原性株である。この株を弱毒化するために、HA切断部位の多塩基性の一続きのアミノ酸(RRRK(配列番号15))を除去した。Horimotoら(Vaccine、24巻、3669〜76頁、2006年)によって記載されている通りに、ポリメラーゼのスタッタリング(stuttering)による多塩基性アミノ酸の再形成を防ぐために、さらなる置換(R→TおよびK→T)を導入した。この改変により、高病原性のトリインフルエンザウイルスの主な病原性要因が低減され、低病原性の表現型に変換された。
【0183】
134継代のベロ細胞をEuropean Collection of Cell Cultures (ECACC、Salisbury、Wiltshire SP4 0JG、英国)から得た。ベロ細胞を、L−グルタミン4mMを補ったOPTI−PRO(登録商標)(Gibco、Carlsbad、CA)培地中で培養した。
【0184】
ウイルスを、トリプシン(Sigma、St.Louis、MO)5μg/mlを含むOPTI−PRO(登録商標)培地中のベロ細胞において、37℃および5%COで増殖させた。ウイルスの感染力価を、標準のTCID50分析によって決定した。赤血球凝集素アッセイを、ニワトリ赤血球の0.5%懸濁物で行った。トリプシンあり、またはなしのウイルスの増殖を、4mM L−グルタミン;5μg/mlトリプシン、0.01%DEAE−デキストラン(Sigma)、0.6%寒天(Sigma)を含むOPTI−PRO(登録商標)培地中ベロ細胞上の標準のプラークアッセイ試験によって決定し、プラーク形成単位(pfu)において表した。
【0185】
HAタンパク質中に改変された切断部位を有するウイルスA/Vietnam/1203/04(H5N1)を構築した。A/Vietnam/1203/04 PB2、PB1、PA、HA、NA、NP、M、およびNSセグメントに対応するcDNAを、GenBank(アクセッション番号:HAについてAY818135、NAについてAY818141、MについてAY818144、NPについてAY818138、NSについてAY818147、PAについてAY818132、PB1についてAY818129、およびPB2についてAY818126)において公開されている配列にしたがってGeneartAG(Regensburg、ドイツ)で合成した。
【0186】
A/Vietnam/1203/04のセグメントについてのウイルスの非コード領域(NCR)は部分的にのみ入手可能であったので、それぞれのA/HongKong/213/03セグメントに由来するNCRをVietnam/1203/2004のコード配列に加えた(A/HongKong/213/03についてのアクセッション番号:HA:AB212054;NA:AB212056;M:AB212057;NP:AB212055;NS:AB212058;PA:AB212053;PB1:AB212052;PB2:AB212050)。
【0187】
高病原性株A/Vietnam/1203/04(H5N1)のHA多塩基性切断部位を、低病原性H5株に見出されるトリプシン依存性配列TETR/GLFによって置き換えた(図1)。HA遺伝子の改変には、HA切断部位の一続きの塩基性アミノ酸の除去、ならびに野生型表現型への可能な復帰を防ぐための、近接する塩基性アミノ酸のアルギニン(R)およびリジン(K)のスレオニン(T)への置換、
【0188】
【化16】

【0189】
が含まれていた。
【0190】
図1は、ウイルス遺伝子のHA切断部位のヌクレオチド配列の改変を示す。A/HongKong/213/03に由来するNCRは図1において下線付きである。ゲノムフラグメントのcDNAのコピーをPCRによって得、そのPCR生成物をベロ細胞のトランスフェクションに用いた。トランスフェクションは、ウイルスの完全なゲノムを含む8個のcDNAを用いてHoffmannら(Proc. Natl. Acad. Sci. (USA)、97巻、6108〜113頁、2000年)の方法にしたがって行った。
【0191】
トランスフェクトしたベロ細胞を、6ウエルプレート中血清含有トランスフェクション培地(DMEM/F12+2mM L−グルタミン+10%FCS)中に接種した。細胞を37℃でインキュベートした。トランスフェクション6時間後、培地を、4mM L−グルタミンおよび1μg/mlトリプシンを補った無血清OPTI−PRO(登録商標)培地によって置き換えた。24時間後、トリプシン10μgを含むさらなる無血清培地を上清に加えた。72時間後、上清を収集し、新鮮ベロ細胞でのもう1つのさらなる継代(ブラインド継代)に用いた。この継代のインキュベーションを、100%細胞変性効果(CPE)の発生が観察されるまで続け、次いで上清を収集した。得られたウイルスをA/Vietnam/1203/04(H5N1)−HAttまたはattVN1203と名付けた。
【0192】
レスキューされたウイルスの連続したウイルスの2継代を、限外希釈においてベロ細胞上で行った。この目的では、24ウエルプレートのコンフルエントのベロ細胞に、4回繰返して作製した、10倍希釈の収集したウイルスを感染させた。2日間で、希釈(−5)の2つのウエルを収集し、第2ステップに用いた。第2ステップを同じ方法で行った。希釈(−6)の2日後に収集したウイルスを、ウイルスストックの生成に用いた。コンフルエントの単層のベロ細胞を有するT150cmRouxフラスコに、感染多重度(moi)0.0005を用いて最終継代において収集したウイルスを感染させた。室温で30分間インキュベートした後、接種物を除去し、トリプシン5μg/mlを補った無血清培地50mlを加えた。48時間で100%CPEが発生し、上清を収集し、160gで10分間遠心分離することによって澄明化し、クライオ(Cryo)チューブ中1mlでアリコートをとり、−80℃で凍結させた。
【0193】
ベロ細胞上で生成されたA/Vietnam/1203/04−HAattウイルスストックの感染力価を、ベロ細胞上TCID50アッセイを用いた力価測定によって決定した。独立した力価測定を2回行った。結果を表2に示す。卵中の増殖に比べて、ベロ細胞生成からのウイルス力価はおよそ10倍高かった。
【0194】
【表2】

【0195】
A/Vietnam/1203/04(H5N1)−HAatt(H5N1)ウイルスのHA遺伝子の配列を、HA切断部位で多塩基性の一続きのアミノ酸を除去する方法において操作した。この改変により、ヒトに対していかなる脅威も示さない低病原性の表現型に変換された。
【0196】
得られたA/Vietnam/1203/04(H5N1)−HAatt株の低病原性の表現型を確認するために、トリプシンなしでプラークを生成する能力を決定した。トリプシン存在下のベロ細胞上のプラークアッセイにおいて、A/Vietnam/1203/04(H5N1)−HAattウイルスはプラークを生成した(力価2×10PFU/ml)。これとは対照的に、トリプシンの非存在下ではウイルスはプラークを形成せず、ウイルスA/Vietnam/1203/04(H5N1)−HAattの非病原性の表現型を実証した。レスキューされたウイルスのクローニングされた配列に対する同一性を確認するために、HAおよびNA遺伝子の配列を検証した。あらゆる配列決定された遺伝子に変化は見られなかった。
【0197】
これらの結果は、インフルエンザのA/Vietnam/1203/2004(H5N1)株からの内部遺伝子(バックボーン)、ならびに同じウイルスからの弱毒化HAおよび野生型NA遺伝子を含む再集合体ウイルスは、細胞培養物における増殖に適応し、野生型のウイルスに比べて抗原性の低減を示すことを実証している。
【0198】
(実施例2)
(逆遺伝学による、改変された切断部位を有する弱毒化A/Indonesia/5/05株(A/Vietnam/1203/04 2:6トランスフェクタント)の産生)
ウイルス株A/Indonesia/5/05(H5N1)は、致死性のヒトインフルエンザ症例から単離された高病原性株である。この株を弱毒化するために、HA切断部位の多塩基性の一続きのアミノ酸(RRKK(配列番号21))を除去した。多塩基性アミノ酸の再形成を防ぐために、さらなる置換(R→TおよびS→T)を導入した(Horimotoら、Vaccine、24巻、3669〜76頁、2006年)。この改変により、高病原性トリインフルエンザウイルスの主な病原性要因が低減され、低病原性の表現型に変換されるはずである。
【0199】
細胞培養およびウイルスの増殖を、上記に記載した通りに行った。HAタンパク質中に改変された切断部位を有するウイルスA/Indonesia/5/05(H5N1)様を構築した。A/Indonesia/5/05のHAおよびNA、ならびにA/Vietnam/1203/04のPB2、PB1、PA、NP、M、およびNSセグメントに対応するcDNAを、GenBank(アクセッション番号:HAについてISDN125873、NAについてISDN125875、MについてAY818144、NPについてAY818138、NSについてAY818147、PATについてAY818132、PB1についてAY818129、およびPB2についてAY818126)において公開されている配列にしたがってGeneartAG(Regensburg、ドイツ)で合成した。
【0200】
A/Vietnam/1203/04セグメントについてのウイルスの非コード領域(NCR)は部分的にのみ入手可能であったので、それぞれのA/HongKong/213/03セグメントに由来するNCRを、A/Indonesia/5/05およびVietnam/1203/2004コード配列(A/HongKong/213/03についてのアクセッション番号HA:AB212054;NA:AB212056;M:AB212057;NP:AB212055;NS:AB212058;PA:AB212053;PB1:AB212052;PB2:AB212050)に加えた。高病原性株A/Indonesia/5/05(H5N1)のHA多塩基性切断部位を、低病原性H5株に見出されるトリプシン依存性配列TETR/GLFによって置き換えた(図2)。HA遺伝子の改変には、HA切断部位の一続きの塩基性アミノ酸の除去、ならびに
【0201】
【化17】

【0202】
のような、野生型表現型への可能な復帰を防ぐための、近接する塩基性アミノ酸RおよびSのTへの置換が含まれていた。図2はA/Indonesia/5/05のHA切断部位およびウイルス遺伝子のヌクレオチド配列の改変を示す。A/HongKong/213/03に由来するNCRは下線付きである。
【0203】
ゲノムのフラグメントのcDNAのコピーをPCRによって得、そのPCR生成物をベロ細胞のトランスフェクションに用いた。トランスフェクトしたベロ細胞を、血清含有トランスフェクション培地(DMEM/F12+2mM L−グルタミン+10%FCS)中、6ウエルプレート中に接種した。細胞を37℃でインキュベートした。トランスフェクションの6時間後、培地を、4mM L−グルタミンおよび1μg/mlトリプシンを補った無血清OPTIPRO(登録商標)培地によって置き換えた。24時間後、トリプシン10μgを含むさらなる無血清培地を上清に加えた。72時間後、上清を収集し、新鮮ベロ細胞でのもう1つのさらなる継代(ブラインド継代)に用いた。この継代のインキュベーションを100%細胞変性効果(CPE)が発生するまで維持し、次いで上清を収集した。得られたウイルスをA/Indonesia/5/05(H5N1)−HAttまたはRG−attVN1203/IN5/05と名付けた。
【0204】
レスキューされたウイルスの連続したウイルスの2継代を、限外希釈においてベロ細胞上で行った。この目的では、24ウエルプレートのコンフルエントのベロ細胞に、4回繰返して作製した、10倍希釈の収集したウイルスを感染させた。2日後、希釈(−6)の2つのウエルを収集し、第2ステップに用い、第2ステップを同じ方法で行った。希釈(−6)の2日後に収集したウイルスを、ウイルスストックの生成に用いた。コンフルエントの単層のベロ細胞を有するT150cmRouxフラスコに、moi0.0005を用いて最終継代において収集したウイルスを感染させた。室温で30分間インキュベートした後、接種物を除去し、トリプシン5μg/mlを補った無血清培地50mlを加えた。48時間後100%CPEが発生し、上清を収集し、160gで10分間遠心分離することによって澄明化し、クライオチューブ中1mlでアリコートをとり、−80℃で凍結させた。
【0205】
ベロ細胞上で生成されたA/Indonesia/5/05(H5N1)−HAattウイルスストックの感染力価を、ベロ細胞上TCID50アッセイを用いた力価測定によって推定した。独立した力価測定を2回行った。結果を表3に示す。
【0206】
【表3】

【0207】
A/Indonesia/5/05(H5N1)−HAatt(H5N1)ウイルスのHA遺伝子の配列を、HA切断部位の多塩基性の一続きのアミノ酸を除去するための方法で操作した。この改変により、ヒトに対していかなる脅威も示さない低病原性の表現型に変換された。得られたA/Indonesia/5/05(H5N1)−HAatt株の低病原性の表現型を確認するために、トリプシンなしでプラークを生成する能力を決定した。トリプシン存在下のベロ細胞上のプラークアッセイにおいて、A/Indonesia/5/05(H5N1)−HAattウイルスはプラークを生成した(力価3×10PFU/ml)。これとは対照的に、トリプシンの非存在下ではウイルスはプラークを形成せず、ウイルスA/Indonesia/5/05(H5N1)−HAattの非病原性の表現型を確証した。
【0208】
レスキューされたウイルスのクローニングされた配列に対する同一性を確認するために、HAおよびNA遺伝子の配列を検証した。あらゆる配列決定された遺伝子に変化は見られなかった。
【0209】
これらの結果は、インフルエンザのA/Vietnam/1203/2004(H5N1)株からの内部遺伝子(バックボーン)、ならびに異なるインフルエンザH5N1株(A/Indonesia/5/05)からの弱毒化HAおよび野生型NA遺伝子を含む再集合体ウイルスは、細胞培養物における増殖に適応し、野生型のウイルスに比べて抗原性の低減を示すことを実証している。
【0210】
次いで、ベロ細胞培養物中の弱毒化ウイルスの増殖を、ベロ細胞中の卵に適応させた逆遺伝学ウイルスの増殖と比べた。
【0211】
インフルエンザ株CDC RG Indo/05/2005は、PR8バックボーン(PR8に由来する6個の内部遺伝子)、ならびにA/Indonesia/05/2005株に由来するHAおよびNA遺伝子を有する6:2逆遺伝学株である。この株は卵に適応されており、慣例的な(卵由来の)不活化H5N1ワクチンについてのベースである。CDC RG Indo株を、32℃と37℃の2つの異なる温度で、ベロ細胞中で0.01から0.0001の感染多重度(MOI)で3回継代した。力価を表4に示す。最初のlog力価は、6.4〜6.7(32℃)および5.8〜6.8(37℃)の範囲であった。3継代後、力価は幾分高く、32℃で7.1〜7.2、および37℃で6.5〜7.4であった。このように最初の力価は低く、継代によりごくわずかに力価は改善した。
【0212】
【表4】

【0213】
新しいインフルエンザウイルスVietnam/1203/04(H5N1)−HAttウイルスは、8.71 log10 TCID50/mlの平均力価に増殖した。A/Indonesia/5/05(H5N1)−HAttウイルスの力価は8.88TCID50/mlであった(実施例1および2)。匹敵する、卵に適応させた株CDC RG Indo/05/2005と比べると、新しい株は、卵に適応させたウイルスよりも少なくとも2logステップ高く増殖した。
【0214】
(実施例3)
(再集合体ウイルスの安全性および有効性)
再集合体ウイルスの安全性および有効性を決定するために、マウスおよびニワトリにおいてインビボ試験を行った。10〜12週齢のBalb/cマウス(Charles River、Sulzfeld、ドイツ)を、表4Aおよび4Bに示す通り、漸増投与量のウイルスで鼻腔内チャレンジした(臨床症状:r、毛並みの乱れ;h、身体を丸める;m、つやがない(無気力);d、死亡;AST=死亡までの平均時間)。
【0215】
第1のマウス実験において(表5A)、マウスを2週間の期間にわたって臨床的にモニタリングした。ウイルスRG−attVN1203または6:2 Indonesia再集合体でチャレンジした後、主な臨床症状は観察されなかった。大部分のマウスが臨床症状を全く示さず、何匹かのマウスが第1週以内に毛並みの乱れを有し、第2週に完全に回復した。
【0216】
第2のマウス実験において(表5B)、投与量を、鼻腔内投与で、動物1匹あたり最高1×10TCID50に増大した。今回は、信頼できる病気の指標である体重減少(WL)をモニタリングした。H5N1ベースのRGウイルスにWLは観察されず、マウスは全て生存し、このことは、毒性がないことを示した。野生型チャレンジの対照である、VN1203およびIN5/05 H5N1野生型株は、6から8日以内にマウスを死亡させた。
【0217】
ニワトリにおける再集合体ウイルスの安全性を試験するために、表5Cおよび5Dに示す通り、7日齢のニワトリ(Spafas、ハンガリー)を漸増投与量のウイルスでチャレンジした。動物を2週間の期間にわたって臨床的にモニタリングした。
【0218】
表5Cに示すように、動物1匹あたり1×10および1×10TCID50の投与量で鼻腔内チャレンジした全てのニワトリにおいて、H5N1ベースのRGウイルスで主な臨床症状を観察できなかった。予想通り、CDC(PR8をベースにした前汎流行シードウイルス株である、CDC RG Indo/05/2005)から得られたBSL−2対照ウイルスは、ニワトリに対してやはり無毒性であり、非病原性であった。
【0219】
第2の適用経路を用いてこの結果を確認するために、ニワトリを、1羽あたり1×10TCID50の投与量の筋肉内注射(表5D)によってチャレンジした。ニワトリに対して無毒性であることが知られている2つの対照ウイルスである、CDC RG Indo/05/2005およびNIBRG−14(それぞれIN5/05、ならびにVN1194HAおよびNA遺伝子とのPR8ベースの再集合体)が含まれた。チャレンジ後、体重減少は観察できなかった。全ての動物が、対照動物であるリン酸緩衝生理食塩水(PBS)でチャレンジしたニワトリに匹敵して体重増加した。同じ実験において、ニワトリを、高病原性のH5N1野生型ウイルスIN5/05で鼻腔内チャレンジした。チャレンジ後2日以内に、ニワトリは全て過急性に死亡した(表5D)。
【0220】
これらのインビボの実験は、HA遺伝子における多塩基性切断部位を改変すると、H5N1ウイルスを強力に弱毒化することを確証している。
【0221】
【表5】

【0222】
(実施例4)
(逆遺伝学による、改変された切断部位を有する弱毒化A/Turkey/Turkey/1/05株の産生)
ウイルス株A/turkey/Turkey/1/05(H5N1)は、致死性のトリインフルエンザ症例から単離された高病原性株である。この株を弱毒化するために、HA切断部位の多塩基性の一続きのアミノ酸(RRRK(配列番号15))を除去した。多塩基性アミノ酸の再形成を防ぐために、さらなる置換(R→TおよびK→T)を導入した(Horimotoら、Vaccine、24巻、3669〜76頁、2006年)。この改変により、高病原性のトリインフルエンザウイルスの主な病原性要因が低減され、低病原性の表現型に転換されるはずである。
【0223】
細胞培養およびウイルスの増殖を、上記に記載した通りに行った。HAタンパク質中に改変された切断部位を有するウイルスA/Turkey/Turkey/1/05(H5N1)様を構築した。A/turkey/Turkey/1/05のHAおよびNA、ならびにA/Vietnam/1203/04のPB2、PB1、PA、NP、M、およびNSセグメントに対応するcDNAを、GenBank(アクセッション番号:HAについてDQ407519、NAについてEF619973、MについてEF541453、NPについてAY818138、NSについてEF541456、PAについてAY818132、PB1についてAY818129、およびPB2についてAY818126)において公開されている配列にしたがってGeneartAG(Regensburg、ドイツ)で合成した。
【0224】
A/Vietnam/1203/04のセグメントについてのウイルスの非コード領域(NCR)は部分的にのみ入手可能であるので、それぞれのA/HongKong/213/03セグメントに由来するNCRを、A/Indonesia/5/05およびVietnam/1203/2004コード配列(A/HongKong/213/03についてのアクセッション番号HA:AB212054;NA:AB212056;M:AB212057;NP:AB212055;NS:AB212058;PA:AB212053;PB1:AB212052;PB2:AB212050)に加えた。高病原性株A/Turkey/Turkey/1/05のHA多塩基性切断部位を、低病原性H5株に見出されるトリプシン依存性配列TETR/GLF(配列番号19を参照されたい)によって置き換えた(図3)。HA遺伝子の改変には、HA切断部位の一続きの塩基性アミノ酸の除去、ならびに
【0225】
【化18】

【0226】
のような、野生型表現型への可能な復帰を防ぐための、近接する塩基性アミノ酸RおよびKのTへの置換が含まれていた。図3はA/Turkey/Turkey/1/05のHA切断部位およびウイルス遺伝子のヌクレオチド配列の改変を示す。A/HongKong/213/03に由来するNCRは下線付きである。
【0227】
ゲノムのフラグメントのcDNAのコピーをPCRによって得、そのPCR生成物をベロ細胞のトランスフェクションに用いた。トランスフェクトしたベロ細胞を、血清含有トランスフェクション培地(DMEM/F12+2mM L−グルタミン+10%FCS)中、6ウエルプレートに接種した。細胞を37℃でインキュベートした。トランスフェクション6時間後、培地を、4mM L−グルタミンおよび1μg/mlトリプシン、および0.25μg/mlアムホテリシンBを補った無血清OPTIPRO(登録商標)培地で置き換えた。24時間後、トリプシン10μgを含むさらなる無血清培地を上清に加えた。72時間後、上清を収集し、新鮮ベロ細胞上のさらなる2継代(ブラインド継代)に用いた。この継代のインキュベーションを100%細胞変性効果(CPE)が発生するまで維持し、次いで上清を収集した。得られたウイルスをA/turkey/Turkey/1/05(H5N1)−HAttまたはRG−attVN1203/TT/1/05と名付けた。
【0228】
A/turkey/Turkey/1/05ウイルスストックを上記に記載した通りに生成した。ベロ細胞上で生成されたA/turkey/Turkey/1/05(H5N1)−HAattウイルスストックの感染力価を、ベロ細胞上TCID50アッセイを用いた力価測定によって推定した。独立した力価測定を2回行った。結果を表6に示す。
【0229】
【表6】

【0230】
クローニングされた配列に対する、レスキューされたウイルスの同一性を確認するために、HAおよびNA遺伝子の配列を検証した。配列決定したいかなる遺伝子にも変化は見られなかった。
【0231】
これらの結果は、インフルエンザのA/Vietnam/1203/2004(H5N1)株からの内部遺伝子(バックボーン)、ならびに異なるインフルエンザH5N1株(A/turkey/Turkey/1/05)からの弱毒化HAおよび野生型NA遺伝子を含む再集合体ウイルスは、細胞培養物における増殖に適応することを実証している。
【0232】
(実施例5)
(逆遺伝学による、改変された切断部位を有する弱毒化A/Anhui/01/05株の産生)
ウイルス株A/Anhui/01/05(H5N1)は、中国における致死性のヒトインフルエンザ症例から単離された高病原性株である。この株を弱毒化するために、HA切断部位の多塩基性の一続きのアミノ酸(RRRK(配列番号15))を除去した。多塩基性アミノ酸の再形成を防ぐために、さらなる置換(L→Q、R→T、およびK→T)を導入した(Horimotoら、Vaccine、24巻、3669〜76頁、2006年)。この改変により、高病原性のトリインフルエンザウイルスの主な病原性要因が低減され、低病原性の表現型に転換されるはずである。
【0233】
細胞培養およびウイルスの増殖を、上記に記載した通りに行った。HAタンパク質中に改変された切断部位を有するウイルスA/Anhui/01/05(H5N1)様を構築した。A/Anhui/01/05のHAおよびNA、ならびにA/Vietnam/1203/04のPB2、PB1、PA、NP、M、およびNSセグメントに対応するcDNAを、GenBank(アクセッション番号:HAについてDQ371928、NAについてEU128239、MについてEF541453、NPについてAY818138、NSについてEF541456、PAについてAY818132、PB1についてAY818129、およびPB2についてAY818126)において公開されている配列にしたがってGeneartAG(Regensburg、ドイツ)で合成した。
【0234】
A/Vietnam/1203/04セグメントについてのウイルスの非コード領域(NCR)は部分的にのみ入手可能であったので、それぞれのA/HongKong/213/03セグメントに由来するNCRを、A/Indonesia/5/05およびVietnam/1203/2004コード配列(A/HongKong/213/03についてのアクセッション番号HA:AB212054;NA:AB212056;M:AB212057;NP:AB212055;NS:AB212058;PA:AB212053;PB1:AB212052;PB2:AB212050)に加えた。高病原性株A/Anhui/01/05のHA多塩基性切断部位を、低病原性H5株に見出されるトリプシン依存性配列TETR/GLFによって置き換えた(図4)。HA遺伝子の改変には、HA切断部位の一続きの塩基性アミノ酸の除去、ならびに
【0235】
【化19】

【0236】
のような、野生型表現型への可能な復帰を防ぐための、近接する塩基性アミノ酸LのQへの、ならびにRおよびKのTへの置換が含まれていた。図4はA/Anhui/1/05のHA切断部位およびウイルス遺伝子のヌクレオチド配列の改変を示す。A/HongKong/213/03に由来するNCRは下線付きである。
【0237】
ゲノムのフラグメントのcDNAのコピーをPCRによって得、そのPCR生成物をベロ細胞のトランスフェクションに用いた。トランスフェクトしたベロ細胞を、血清含有トランスフェクション培地(DMEM/F12+2mM L−グルタミン+10%FCS)中、6ウエルプレートに接種した。細胞を37℃でインキュベートした。トランスフェクション6時間後、培地を、4mM L−グルタミン、1μg/mlトリプシン、および0.25μg/mlアムホテリシンを補った無血清OPTIPRO(登録商標)培地で置き換えた。24時間後、トリプシン10μgを含むさらなる無血清培地を上清に加えた。72時間後、上清を収集し、新鮮ベロ細胞上のさらなる2継代に用いた。この継代のインキュベーションを100%細胞変性効果(CPE)が発生するまで維持し、次いで上清を収集した。得られたウイルスをA/Anhui/01/05(H5N1)−HAttまたはPG−attVN1203/AH/1/05と名付けた。
【0238】
A/Anhui/01/05ウイルスストックを上記に記載した通りに生成した。ベロ細胞上で生成されたRG−attVN1203/AH/1/05ウイルスストックの感染力価を、ベロ細胞上TCID50アッセイを用いて力価測定によって推定した。独立した力価測定を2回行った。結果を表7に示す。
【0239】
【表7】

【0240】
クローニングされた配列に対してレスキューされたウイルスの同一性を確認するために、HAおよびNA遺伝子の配列を検証した。配列決定したいかなる遺伝子にも変化は見られなかった。
【0241】
これらの結果は、インフルエンザのA/Vietnam/1203/2004(H5N1)株からの内部遺伝子(バックボーン)、ならびに異なるインフルエンザH5N1株(A/Anhui/1/05)からの弱毒化HAおよび野生型NA遺伝子を含む再集合体ウイルスは、細胞培養物における増殖に適応することを実証している。
【0242】
(実施例6)
(インビボの再集合体ウイルスワクチンの投与)
H5N1内部遺伝子、ならびにHAおよびNA遺伝子を発現する組換え再集合体ウイルス(全ウイルス)のインビボの有効性を決定するために、当技術分野において周知の技術を用いて、ウイルスを被験体動物に投与した。例えば、Kistnerら(Vaccine、25巻、6028〜36頁、2007年)は、全不活化H5N1ウイルス株A/Vietnam/1203/2004を含むウイルスワクチンの被験体マウスへの投与、および、生ウイルスで再チャレンジしたときの、マウスを感染から保護するワクチンの能力の評価を記載している。
【0243】
さらに、Ehrlichら(N Engl J Med.、358巻、2573〜84頁、2008年)は、H5N1汎流行性インフルエンザ株に対するワクチンを投与することを含む、ヒト患者における臨床試験を記載している。各投与量が、ミョウバンアジュバント有りの赤血球凝集素抗原3.75μg、7.5μg、15μg、もしくは30μg、またはアジュバントなしのHA抗原7.5μgもしくは15μgを含む、不活化した全A/Vietnam/1203/2004を含む2投与量のワクチンを(21日離して)被験体に投与した。ベースラインにおいて、ならびに21日目および42日目に血清学的分析を行った。Ehrlichは、ワクチンが宿主被験体における免疫反応を誘発し、宿主がいくつかの異なるウイルス株での感染から保護されることを実証した。
【0244】
本発明の再構成体ウイルス、抗原組成物、またはワクチンは、上記に記載した技術を用いて、または当技術分野において公知の他の技術を用いて投与される。
【0245】
上記の例示の実施例に記載したように、本発明における多数の改変および変形が生じることが当業者には予想される。したがって、添付の特許請求の範囲に表す制限だけが、本発明に対して課されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のインフルエンザウイルスA亜型からの内部遺伝子セグメントPB1、PB2、PA、M、NP、およびNS、ならびに前記内部遺伝子セグメントが由来する前記インフルエンザウイルス亜型からの赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含み、前記内部遺伝子セグメントはインフルエンザA亜型の第1の株に由来し、前記HAおよびNA遺伝子は前記インフルエンザA亜型における第2の株に由来する、再集合体インフルエンザウイルス。
【請求項2】
インフルエンザAのH5N1株の内部遺伝子セグメントPB1、PB2、PA、M、NP、およびNS、ならびにH5N1インフルエンザAウイルスからの赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含み、前記HAおよびNA遺伝子が同じウイルス株に由来する、請求項1に記載の精製した再集合体インフルエンザウイルス。
【請求項3】
前記HAおよびNA遺伝子が第1のH5N1クレードからであり、前記内部遺伝子が第2のH5N1クレードからである、請求項2に記載の再集合体ウイルス。
【請求項4】
前記HAおよびNA遺伝子、ならびに前記内部遺伝子が同じH5N1クレードからである、請求項2に記載の再集合体ウイルス。
【請求項5】
前記HA遺伝子が弱毒化ウイルスを生成するように改変されている、請求項1または請求項2に記載の再集合体ウイルス。
【請求項6】
前記HA遺伝子が多塩基性切断部位で改変されている、請求項5に記載のウイルス。
【請求項7】
哺乳動物細胞培養物中で増殖する能力を特徴とする、請求項1または請求項2に記載のウイルス。
【請求項8】
前記哺乳動物細胞が、MRC−5、MRC−9、Lederle 130、Chang liverおよびWI−38;U937、ベロ、CV−1、IMR−90およびIMR−91、MDCK、MDBK、HEK、H9、CEMおよびCD4発現HUT78、PerC6、BHK−21細胞、BSC、およびLLC−MK2からなる群より選択される、請求項7に記載のウイルス。
【請求項9】
前記哺乳動物細胞培養物がベロ細胞培養物である、請求項7に記載のウイルス。
【請求項10】
前記内部遺伝子が、
【化20】

【化21】

からなる群より選択されるH5N1株に由来する、請求項1に記載のウイルス。
【請求項11】
前記HAおよびNA遺伝子が、
【化22】

からなる群より選択されるH5N1株に由来する、請求項1に記載のウイルス。
【請求項12】
前記内部遺伝子、ならびに前記HAおよびNA遺伝子が同じウイルス株に由来する、請求項1に記載のウイルス。
【請求項13】
前記内部遺伝子、ならびに前記HAおよびNA遺伝子が異なるウイルス株に由来する、請求項1に記載のウイルス。
【請求項14】
前記内部遺伝子がH5N1株A/Vietnam/1203/2004からである、請求項1から13のいずれか一項に記載のウイルス。
【請求項15】
前記HAおよびNA遺伝子がH5N1株A/Vietnam/1203/2004からである、請求項1から14のいずれか一項に記載のウイルス。
【請求項16】
前記HAおよびNA遺伝子がH5N1株A/Indonesia/5/05からである、請求項1から14のいずれか一項に記載のウイルス。
【請求項17】
前記多塩基性切断部位の改変が、
【化23】

の変異である、請求項1から16のいずれか一項に記載のウイルス。
【請求項18】
第1のインフルエンザウイルスA亜型からの内部遺伝子セグメントPB1、PB2、PA、M、NP、およびNS、ならびに前記内部遺伝子セグメントが由来する前記インフルエンザウイルス亜型からの赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含み、前記内部遺伝子セグメントはインフルエンザA亜型の第1の株に由来し、前記HAおよびNA遺伝子は前記インフルエンザA亜型における第2の株に由来する、抗原性再集合体インフルエンザウイルス組成物。
【請求項19】
前記抗原組成物が、インフルエンザAのH5N1株に由来する内部遺伝子セグメントPB1、PB2、PA、M、NP、およびNS、ならびにH5N1インフルエンザAウイルスに由来する赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含み、前記HAおよびNA遺伝子が同じウイルス株に由来する、請求項18に記載の抗原性再集合体ウイルス組成物。
【請求項20】
前記HA遺伝子が弱毒化ウイルスを生成するように改変されている、請求項18または請求項19に記載の抗原性再集合体インフルエンザウイルス組成物。
【請求項21】
前記HA遺伝子が多塩基性切断部位で改変されている、請求項20に記載の抗原性再集合体インフルエンザウイルス組成物。
【請求項22】
前記インフルエンザウイルスが哺乳動物細胞培養物中で増殖する能力を特徴とする、請求項18または請求項19に記載の抗原性再集合体インフルエンザウイルス組成物ウイルス。
【請求項23】
前記HAおよびNA遺伝子が、
【化24】

からなる群より選択されるH5N1株に由来する、請求項19に記載の抗原組成物。
【請求項24】
前記内部遺伝子が、
【化25】

【化26】

からなる群より選択されるH5N1株に由来する、請求項19に記載の抗原組成物。
【請求項25】
前記内部遺伝子セグメント、ならびに前記HAおよびNA遺伝子が同じウイルス株に由来する、請求項18に記載の抗原組成物。
【請求項26】
前記内部遺伝子セグメント、ならびに前記HAおよびNA遺伝子が異なるウイルス株に由来する、請求項18に記載の抗原組成物。
【請求項27】
前記内部遺伝子セグメントがA/Vietnam/1203/2004からである、請求項18から26のいずれか一項に記載の抗原組成物。
【請求項28】
前記HAおよびNA遺伝子がH5N1株A/Vietnam/1203/2004からである、請求項18から27のいずれか一項に記載の抗原組成物。
【請求項29】
前記HAおよびNA遺伝子がH5N1株A/Indonesia/5/05からである、請求項18から27のいずれか一項に記載の抗原組成物。
【請求項30】
前記多塩基性切断部位の改変が、
【化27】

の変異である、請求項21から29のいずれか一項に記載の抗原組成物。
【請求項31】
薬学的に許容されるキャリアをさらに含む、請求項18から29のいずれか一項に記載の抗原組成物。
【請求項32】
再集合体インフルエンザウイルスを含むワクチンであって、前記ウイルスは、
表面タンパク質HAをコードするポリヌクレオチドおよび表面タンパク質NAをコードするポリヌクレオチドであって、HAおよびNAは各々、インフルエンザウイルスA亜型の第1の株に由来する、ポリヌクレオチド;PB1をコードするポリヌクレオチド、PAをコードするポリヌクレオチド、PB2をコードするポリヌクレオチド、Mをコードするポリヌクレオチド、NPをコードするポリヌクレオチド、NSをコードするポリヌクレオチドであって、PB1、PA、PB2、M、NPおよびNSについての前記ポリヌクレオチドは、インフルエンザAウイルス亜型の第2の株に由来する、ポリヌクレオチド
を含み、前記ポリヌクレオチドは、再集合したポリヌクレオチドのビリオンへのパッケージングを可能にするように作動可能に連結されている、ワクチン。
【請求項33】
請求項32に記載の再集合体インフルエンザAウイルスを含むワクチンであって、前記ウイルスが、
表面タンパク質HAをコードするポリヌクレオチドおよび表面タンパク質NAをコードするポリヌクレオチドであって、HAおよびNAの各々はH5N1インフルエンザウイルスに由来する、ポリヌクレオチド;PB1をコードするポリヌクレオチド、PAをコードするポリヌクレオチド、PB2をコードするポリヌクレオチド、Mをコードするポリヌクレオチド、NPをコードするポリヌクレオチド、NSをコードするポリヌクレオチドであって、PB1、PA、PB2、M、NPおよびNSについての前記ポリヌクレオチドは、H5N1インフルエンザウイルスに由来する、ポリヌクレオチド
を含み、前記ポリヌクレオチドが、再集合したポリヌクレオチドのビリオンへのパッケージングを可能にするように作動可能に連結されている、ワクチン。
【請求項34】
前記HA遺伝子が弱毒化ウイルスを生成するように改変されている、請求項32または請求項33に記載の抗原性再集合体インフルエンザウイルス組成物。
【請求項35】
前記HA遺伝子が多塩基性切断部位で改変されている、請求項34に記載の抗原性再集合体インフルエンザウイルス組成物。
【請求項36】
前記内部遺伝子が、
【化28】

からなる群より選択されるH5N1株に由来する、請求項33に記載のワクチン。
【請求項37】
前記HAおよびNA遺伝子が、
【化29】

からなる群より選択されるH5N1株に由来する、請求項33に記載のワクチン。
【請求項38】
前記内部遺伝子セグメント、ならびに前記HAおよびNA遺伝子が同じウイルス株に由来する、請求項32または33のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項39】
前記内部遺伝子セグメント、ならびに前記HAおよびNA遺伝子が異なるウイルス株に由来する、請求項32または33のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項40】
前記HAおよびNA遺伝子がH5N1株A/Vietnam/1203/2004からである、請求項32から39のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項41】
前記HAおよびNA遺伝子がH5N1株A/Indonesia/5/05からである、請求項32から39のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項42】
前記HAが前記多塩基性切断部位で
【化30】

の変異によって改変されている、請求項32から41のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項43】
アジュバントをさらに含む、請求項32から42のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項44】
前記ワクチンが不活化ワクチンである、請求項32から43のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項45】
HA1μgから100μgのHA含量を含む、請求項32から44のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項46】
被験体における、少なくとも1つの汎流行のインフルエンザウイルス株に対する免疫反応を誘発するための方法であって、請求項18から31のいずれか一項に記載の抗原組成物、または請求項32から45のいずれか一項に記載のワクチンを、少なくとも1つのH5N1インフルエンザウイルス株の感染から前記被験体を保護するのに有効な量において投与することを含む、方法。
【請求項47】
インフルエンザウイルスによる被験体の感染を防ぐための方法であって、有効量の、請求項1から17のいずれか一項に記載のウイルス、請求項18から31のいずれか一項に記載の抗原組成物、または請求項32から45のいずれか一項に記載のワクチンを前記被験体に投与することを含む、方法。
【請求項48】
H5N1インフルエンザウイルスによる被験体の感染を防ぐための方法であって、有効量の、請求項1から17のいずれか一項に記載のウイルス、請求項18から31のいずれか一項に記載の抗原組成物、または請求項32から45のいずれか一項に記載のワクチンを前記被験体に投与することを含む、方法。
【請求項49】
前記ワクチンがHA1μgから100μgのHA含量を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ワクチンがHA1μgから30μgのHA含量を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ワクチンがHA1μgから15μgを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記ワクチンがHA単位10ngから1μgのHA含量を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
インフルエンザAのH5N1株の内部遺伝子セグメントPB1、PB2、PA、M、NP、およびNS、ならびにH5N1インフルエンザAウイルスからの赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含む再集合体インフルエンザウイルスを含むワクチンを作製する方法であって、前記HAおよびNA遺伝子は同じウイルス株に由来し、前記HA遺伝子は弱毒化HA遺伝子を生成するように多塩基性切断部位で改変されており、前記方法は、前記再集合体ウイルスの増殖に適する条件下で哺乳動物細胞中に、前記ウイルスをトランスフェクトすることを含む、方法。
【請求項54】
前記哺乳動物細胞が、MRC−5、MRC−9、Lederle 130、Chang liverおよびWI−38;U937、ベロ、CV−1、IMR−90およびIMR−91、MDCK、MDBK、HEK、H9、CEMおよびCD4発現HUT78、PerC6、BHK−21細胞、BSC、およびLLC−MK2からなる群より選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記哺乳動物細胞がベロ細胞である、請求項53に記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図3−5】
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【図3−6】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図4−5】
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【図4−6】
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【公表番号】特表2012−511914(P2012−511914A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540984(P2011−540984)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/068321
【国際公開番号】WO2010/077986
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】