インプラント物品
【課題】周囲の歯などの組織を損傷する可能性が少なく、施術が容易であり、また新生骨生成スペースを確保し、正常な形態の骨形成を可能にすると共に摘出のための2次手術を必要としないインプラント物品を提供すること。
【解決手段】歯周組織の骨欠損部位または骨新生の必要な部位に、骨の誘導、増殖を生じさせるためにインプラントされるインプラント物品1である。生体吸収速度の異なる少なくとも2枚の吸収性膜からなる袋体10と、該袋体10内に充填された骨補填材9と、を有する。
【解決手段】歯周組織の骨欠損部位または骨新生の必要な部位に、骨の誘導、増殖を生じさせるためにインプラントされるインプラント物品1である。生体吸収速度の異なる少なくとも2枚の吸収性膜からなる袋体10と、該袋体10内に充填された骨補填材9と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯周病学領域及び口腔外科学領域における歯周組織誘導再生(GTR)法及び骨組織誘導再生(GBR)法のために使用されるインプラント物品に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病学領域及び口腔外科学領域での外科手術後の創傷治癒においては、歯肉結合組織性の細胞や上皮性細胞の治癒の速度が骨芽細胞より早いので、上皮細胞の深行増殖(ダウングロース)が起こり、骨の再生/新生が得られにくくなる。
【0003】
このため、最近の歯周学領域及び口腔外科学領域では、GTR/GBR法が注目されており、骨の欠損部位に対する骨の再生や骨の新生において有効性が認められている。
【0004】
その基本的な概念は、半透膜(組織液のみを透過する膜)を用いて歯肉結合組織性の細胞や上皮性細胞の患部への侵入を防ぎ、骨芽細胞の誘導を助けることによって骨の再生/新生を図るものである。
【0005】
この目的のため、従来4フッ化エチレン樹脂(PTFE)膜やポリエステル製フィルター等の半透膜を用いて、骨のできるための空隙を確保し、骨の再生を可能にしていた。
【0006】
ところが、これらの保護膜は生体内で非吸収性のため術後に取り除く必要があり、生体組織(歯肉骨膜弁等)と癒着しないので、術後縫合部の開列が起こり易いという欠点があった。
【0007】
非吸収性の保護膜の欠点を補うため、コラーゲン膜、ポリ乳酸膜、酸化セルロース膜、キトサン膜等の生体分解性膜を用いての臨床応用がなされており、生体内で分解吸収される期間や施術のため重要となる硬度、さらに(骨新生のための)空隙を確保し得る強度の点で問題を残しながら、現在、一部は実用化されている。
【0008】
例えば、特開平8−191843号公報(特許文献1)では、骨の誘導、増殖を生じさせる目的で、歯周組織の骨欠損部位または骨新生の必要な部位に、吸収性膜とともにインプラントされ、該膜を支持または固定するために使用され、生体吸収性材料で形成された固定器具を有する歯周組織再生のための補填材料が提案されている。
【0009】
この発明によれば、骨再生を期待する部位に使用する吸収性膜と固定器具とを一体化した補綴材料を生体吸収性材料で形成することによって、一定期間後にこれらの材料が生体内で分解吸収されるため、術後の除去処置が不要となり、また固定器具を吸収性膜と一体に成形することによって、施術が軽減できるとされている。
【0010】
しかし、この補填材料を骨欠損部に配置するためには、骨欠損部の直上及び周囲の組織を該器具が配置できる程度に広範囲に切り開く必要があり、手術による侵襲が大きく、周囲の歯などの組織を損傷する可能性があると同時に、手術が広範囲に及ぶため治癒が遅く、疼痛、腫脹も大きくなるという欠点がある。
【特許文献1】特開平8−191843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、手術による侵襲が小さく周囲の歯などの組織を損傷する可能性が少なく、施術が容易であり、また新生骨生成スペースを確保し、正常な形態の骨形成を可能にすると共に摘出のための2次手術を必要としないインプラント物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のインプラント物品は、歯周組織の骨欠損部位または骨新生の必要な部位に、骨の誘導、増殖を生じさせるためにインプラントされるインプラント物品であって、生体吸収速度の異なる少なくとも2枚の吸収性膜からなる袋体と、該袋体内に充填された骨補填材と、を有し、そのことにより上記目的が達成される。
【0013】
一つの実施形態では、前記袋体の生体吸収速度の遅い吸収性膜側に、生体吸収性の糸が接続される。
【0014】
一つの実施形態では、前記袋体の生体吸収速度の異なる2枚の吸収性膜の接合部に、生体吸収性の糸が接続される。
【0015】
一つの実施形態では、前記袋体は、生体吸収速度の早い吸収性膜Aと、該吸収性膜Aに比べて生体吸収速度の遅い吸収性膜Bとからなり、該吸収性膜Aと該吸収性膜Bの周囲が生体吸収性の糸で縫合され、または両吸収性膜A、Bの周囲がシールされている。
【0016】
一つの実施形態では、前記吸収性膜Aと、該吸収性膜Bとの生体吸収速度の比は時間で、1:2〜10である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のインプラント物品によれば、骨の欠損部位または骨新生の必要な部位にそのインプラント物品を配置するだけで、骨再生するスペースが確保できるため、広範囲な骨の欠損部位においても骨芽細胞の誘導を助けて骨の再生/新生を促進できる。
【0018】
またこの保護膜は、適度な分解(生体吸収)期間、硬度、強度を持っているため、施術し易く、適用される部位にそのまま設置すれば良いので、施術が確実かつ容易、迅速となる。
【0019】
さらに、生体吸収速度の異なる少なくとも2枚の吸収性膜からなる袋体と、該袋体内に充填された骨補填材と、を有するので、生体吸収速度の早い方の吸収性膜を骨側に配置すると、その吸収性膜が速く吸収されるため、骨移植をしたときと同様になる。
【0020】
当該袋体は、比較的小さな切開からも挿入が可能で、そのため手術の侵襲を小さく、治癒を早く、疼痛、腫脹を軽減することができる。生体吸収性糸が接続された当該袋体は、骨欠損部の直上にその糸で誘導、固定することにより、当該袋体を正確な位置に確実に固定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施形態を図面について説明する。
【0022】
図1〜図5に示すように、本発明のインプラント物品1は、袋体10と、該袋体10内に充填された骨補填材9と、を有する。該袋体10は、生体吸収速度の異なる少なくとも2枚の吸収性膜A,B(16,18)からなる。
【0023】
この実施例では、前記袋体10は、生体吸収速度の早い吸収性膜Aと、該吸収性膜Aに比べて生体吸収速度の遅い吸収性膜Bとからなる。
【0024】
該記吸収性膜Aと、該吸収性膜Bとの生体吸収速度の比は時間で、1:2〜10であるのが好ましい。
【0025】
吸収性膜Bとしては、例えば、以下のコラーゲン膜の保護膜があげられる。
(1)Reguarde、The Clinician's Preference, LLC社製
タイプIコラーゲンで、吸収性のメンブレン(膜)である。他のものに比べ、吸収時間が26週〜38週と非常に長く十分にスペース確保と骨再生を促進する。クラス最長の持続力、安定性がある。
(2)OSSIX、Implant Innovations Inc(3i)社製
吸収性コラーゲンメンブレンで、蛋白質からできている。6ヶ月の長期にわたりゆっくりと吸収される。
(3)Bio-Gide、Osteohealth社製
蛋白質を基に完成した吸収性のコラーゲン膜である。吸収時間は4ヶ月から6ヶ月となっている。BioMendに比べて柔らかく操作性がよい。
【0026】
吸収性膜Aとしては、例えば、以下のコラーゲン膜の保護膜があげられる。
(4)BioMend Regular、Zimmmer Dental社製
蛋白質を基に完成した吸収性のコラーゲン膜である。吸収時間は4週間から6週間となっている。比較的早く吸収させたいときや、前歯分の目立つ場所での場合、使用される。
(5)コーケンティッシュガイド、高研社製
アテロコラーゲンを主成分とした吸収性膜。
【0027】
また、上記のコラーゲン膜以外に、生体内で水分により分解、吸収される高分子ポリマー膜を使用することもできる。例えば、乳酸/グリコール酸共重合体、乳酸ホモポリマー、乳酸/ε−カプロラクタム共重合体等がある。
【0028】
該吸収性膜Aと該吸収性膜Bの周囲は生体吸収性の糸で縫合されても良く、または両吸収性膜A、Bの周囲がシールされていてもよい。そのシールは、生体吸収性に優れた接着剤等を用いて行われてもよく、あるいは加熱などによって両吸収性膜A、Bの周囲を接合してもよい。
【0029】
前記袋体10には、この袋体10を組織内の術者が望む位置に取り付けるためには生体吸収性の糸14(例えば、吸収性の縫合糸バイクリルピッドのような材質、吸収速度によって作られる。)が接続されているのが好ましい。そして、その糸14は、生体吸収速度の遅い保護膜Bの中か(図2)、A、B膜の接合部に接続される(図1)。
【0030】
図1に示すように、1本または複数本の糸14を袋体10の周囲に異なる位置に取り付けてもよく、図2に示すように、1本または複数本の糸14を袋体10の生体吸収速度の遅い保護膜Bの異なる位置に取り付けてもよい。
【0031】
図1で示すインプラント物品1を使用する場合は、図3に示すように歯周組織の骨欠損部位または骨新生の必要な部位Cに装着される。
【0032】
吸収性膜16,18のうち、骨側に位置するものAは速やかに吸収が起こるものが好ましく、例えば、BioMend Regularのような材質があげられる。粘膜側に位置するものBはなるべく長期にわたって存在するossixのような材質がよい。
【0033】
また、骨補填材としては、以下のものを粉砕したものを使用することができる。
(1)自家骨:自己の口腔内外から採取した骨
(2)他家骨:同種間(人間同士)で他の個体から採取した骨で脱灰凍結乾燥骨と凍結乾燥骨がある。
(3)異種骨:種の異なる固体から採取した骨
(4)人工骨:ハイドロキシアパタイト(HA)、リン酸三カルシウムや生体活性ガラスなどが用いられる。
【0034】
本発明のインプラント物品は、次のようにしてインプラントすることができる。
【0035】
図6は、歯周組織の骨欠損部位または骨新生の必要な部位Cを一点鎖線で示すものである。図中7は歯牙、3は歯肉である。
【0036】
図7に示すように、この部位Cの直上をさけて近傍に、歯肉3に比較的短い切開線5を設ける。図8および図9に示すように、この切開線5よりインプラント物品1を挿入し、インプラント物品1に接続された糸14を歯肉3から歯周組織に通して引っ張ることにより、インプラント物品1は、歯周組織の骨欠損部位または骨新生の必要な部位Cに配置され、糸14を縫合することにより同部に固定される。その後、切開線5は縫合される。
【0037】
インプラント物品1を構成する保護膜のうち、骨側に位置する生体吸収速度の早い吸収性膜Aが先に速やかに分解吸収され、その後粘膜側に位置する生体吸収速度の遅い吸収性膜Bが分解吸収されるため、骨移植をした場合と同様になる。
【0038】
このようにして、部位に骨の誘導、増殖を生じさせる。一定期間後にこれらの材料が生体内で分解吸収されるため、術後の除去処置が不要となる。
【0039】
なお、図10に示すように、複数本の糸14を袋体10に取り付ければ、図11に示すように、各隣接する糸14,14を結んでインプラント物品1を粘膜に固定することができる。糸の先端には針を付けて、粘膜を通すようにするのがよい。
【0040】
再生すべき骨組織の形態を保つため骨格構造(フレームワーク)を吸収性膜と一体に成形することによって、骨再生するスペースを確実に保つことができるため、広範囲な骨の欠損部位においても理想的な形態の骨組織の再生が期待できる。またこれらの補綴材料は、適度な分解(生体吸収)期間、硬度、強度を持っているため、施術し易く、術後に適用される部位にそのまま設置すれば良いので、施術が確実かつ容易、迅速となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施例のインプラント物品の概略説明図。
【図2】図1に示すインプラント物品の取り付け状態を示す概略断面図。
【図3】本発明の他の実施例のインプラント物品の概略説明図。
【図4】図3に示すインプラント物品の取り付け状態を示す概略断面図。
【図5】図1に示すインプラント物品の概略断面図。
【図6】図1に示すインプラント物品を部位にインプラントするための説明図。
【図7】図1に示すインプラント物品を部位にインプラントするための説明図。
【図8】図1に示すインプラント物品を部位にインプラントするための説明図。
【図9】図1に示すインプラント物品を部位にインプラントするための説明図。
【図10】他の実施例のインプラント物品を部位にインプラントするための説明図。
【図11】図10に示すインプラント物品を部位にインプラントするための説明図。
【符号の説明】
【0042】
1 インプラント物品
3 歯肉
5 切開線
7 歯牙
9 骨補綴材
10 袋体
16,18 吸収性膜
【技術分野】
【0001】
本発明は歯周病学領域及び口腔外科学領域における歯周組織誘導再生(GTR)法及び骨組織誘導再生(GBR)法のために使用されるインプラント物品に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病学領域及び口腔外科学領域での外科手術後の創傷治癒においては、歯肉結合組織性の細胞や上皮性細胞の治癒の速度が骨芽細胞より早いので、上皮細胞の深行増殖(ダウングロース)が起こり、骨の再生/新生が得られにくくなる。
【0003】
このため、最近の歯周学領域及び口腔外科学領域では、GTR/GBR法が注目されており、骨の欠損部位に対する骨の再生や骨の新生において有効性が認められている。
【0004】
その基本的な概念は、半透膜(組織液のみを透過する膜)を用いて歯肉結合組織性の細胞や上皮性細胞の患部への侵入を防ぎ、骨芽細胞の誘導を助けることによって骨の再生/新生を図るものである。
【0005】
この目的のため、従来4フッ化エチレン樹脂(PTFE)膜やポリエステル製フィルター等の半透膜を用いて、骨のできるための空隙を確保し、骨の再生を可能にしていた。
【0006】
ところが、これらの保護膜は生体内で非吸収性のため術後に取り除く必要があり、生体組織(歯肉骨膜弁等)と癒着しないので、術後縫合部の開列が起こり易いという欠点があった。
【0007】
非吸収性の保護膜の欠点を補うため、コラーゲン膜、ポリ乳酸膜、酸化セルロース膜、キトサン膜等の生体分解性膜を用いての臨床応用がなされており、生体内で分解吸収される期間や施術のため重要となる硬度、さらに(骨新生のための)空隙を確保し得る強度の点で問題を残しながら、現在、一部は実用化されている。
【0008】
例えば、特開平8−191843号公報(特許文献1)では、骨の誘導、増殖を生じさせる目的で、歯周組織の骨欠損部位または骨新生の必要な部位に、吸収性膜とともにインプラントされ、該膜を支持または固定するために使用され、生体吸収性材料で形成された固定器具を有する歯周組織再生のための補填材料が提案されている。
【0009】
この発明によれば、骨再生を期待する部位に使用する吸収性膜と固定器具とを一体化した補綴材料を生体吸収性材料で形成することによって、一定期間後にこれらの材料が生体内で分解吸収されるため、術後の除去処置が不要となり、また固定器具を吸収性膜と一体に成形することによって、施術が軽減できるとされている。
【0010】
しかし、この補填材料を骨欠損部に配置するためには、骨欠損部の直上及び周囲の組織を該器具が配置できる程度に広範囲に切り開く必要があり、手術による侵襲が大きく、周囲の歯などの組織を損傷する可能性があると同時に、手術が広範囲に及ぶため治癒が遅く、疼痛、腫脹も大きくなるという欠点がある。
【特許文献1】特開平8−191843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、手術による侵襲が小さく周囲の歯などの組織を損傷する可能性が少なく、施術が容易であり、また新生骨生成スペースを確保し、正常な形態の骨形成を可能にすると共に摘出のための2次手術を必要としないインプラント物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のインプラント物品は、歯周組織の骨欠損部位または骨新生の必要な部位に、骨の誘導、増殖を生じさせるためにインプラントされるインプラント物品であって、生体吸収速度の異なる少なくとも2枚の吸収性膜からなる袋体と、該袋体内に充填された骨補填材と、を有し、そのことにより上記目的が達成される。
【0013】
一つの実施形態では、前記袋体の生体吸収速度の遅い吸収性膜側に、生体吸収性の糸が接続される。
【0014】
一つの実施形態では、前記袋体の生体吸収速度の異なる2枚の吸収性膜の接合部に、生体吸収性の糸が接続される。
【0015】
一つの実施形態では、前記袋体は、生体吸収速度の早い吸収性膜Aと、該吸収性膜Aに比べて生体吸収速度の遅い吸収性膜Bとからなり、該吸収性膜Aと該吸収性膜Bの周囲が生体吸収性の糸で縫合され、または両吸収性膜A、Bの周囲がシールされている。
【0016】
一つの実施形態では、前記吸収性膜Aと、該吸収性膜Bとの生体吸収速度の比は時間で、1:2〜10である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のインプラント物品によれば、骨の欠損部位または骨新生の必要な部位にそのインプラント物品を配置するだけで、骨再生するスペースが確保できるため、広範囲な骨の欠損部位においても骨芽細胞の誘導を助けて骨の再生/新生を促進できる。
【0018】
またこの保護膜は、適度な分解(生体吸収)期間、硬度、強度を持っているため、施術し易く、適用される部位にそのまま設置すれば良いので、施術が確実かつ容易、迅速となる。
【0019】
さらに、生体吸収速度の異なる少なくとも2枚の吸収性膜からなる袋体と、該袋体内に充填された骨補填材と、を有するので、生体吸収速度の早い方の吸収性膜を骨側に配置すると、その吸収性膜が速く吸収されるため、骨移植をしたときと同様になる。
【0020】
当該袋体は、比較的小さな切開からも挿入が可能で、そのため手術の侵襲を小さく、治癒を早く、疼痛、腫脹を軽減することができる。生体吸収性糸が接続された当該袋体は、骨欠損部の直上にその糸で誘導、固定することにより、当該袋体を正確な位置に確実に固定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施形態を図面について説明する。
【0022】
図1〜図5に示すように、本発明のインプラント物品1は、袋体10と、該袋体10内に充填された骨補填材9と、を有する。該袋体10は、生体吸収速度の異なる少なくとも2枚の吸収性膜A,B(16,18)からなる。
【0023】
この実施例では、前記袋体10は、生体吸収速度の早い吸収性膜Aと、該吸収性膜Aに比べて生体吸収速度の遅い吸収性膜Bとからなる。
【0024】
該記吸収性膜Aと、該吸収性膜Bとの生体吸収速度の比は時間で、1:2〜10であるのが好ましい。
【0025】
吸収性膜Bとしては、例えば、以下のコラーゲン膜の保護膜があげられる。
(1)Reguarde、The Clinician's Preference, LLC社製
タイプIコラーゲンで、吸収性のメンブレン(膜)である。他のものに比べ、吸収時間が26週〜38週と非常に長く十分にスペース確保と骨再生を促進する。クラス最長の持続力、安定性がある。
(2)OSSIX、Implant Innovations Inc(3i)社製
吸収性コラーゲンメンブレンで、蛋白質からできている。6ヶ月の長期にわたりゆっくりと吸収される。
(3)Bio-Gide、Osteohealth社製
蛋白質を基に完成した吸収性のコラーゲン膜である。吸収時間は4ヶ月から6ヶ月となっている。BioMendに比べて柔らかく操作性がよい。
【0026】
吸収性膜Aとしては、例えば、以下のコラーゲン膜の保護膜があげられる。
(4)BioMend Regular、Zimmmer Dental社製
蛋白質を基に完成した吸収性のコラーゲン膜である。吸収時間は4週間から6週間となっている。比較的早く吸収させたいときや、前歯分の目立つ場所での場合、使用される。
(5)コーケンティッシュガイド、高研社製
アテロコラーゲンを主成分とした吸収性膜。
【0027】
また、上記のコラーゲン膜以外に、生体内で水分により分解、吸収される高分子ポリマー膜を使用することもできる。例えば、乳酸/グリコール酸共重合体、乳酸ホモポリマー、乳酸/ε−カプロラクタム共重合体等がある。
【0028】
該吸収性膜Aと該吸収性膜Bの周囲は生体吸収性の糸で縫合されても良く、または両吸収性膜A、Bの周囲がシールされていてもよい。そのシールは、生体吸収性に優れた接着剤等を用いて行われてもよく、あるいは加熱などによって両吸収性膜A、Bの周囲を接合してもよい。
【0029】
前記袋体10には、この袋体10を組織内の術者が望む位置に取り付けるためには生体吸収性の糸14(例えば、吸収性の縫合糸バイクリルピッドのような材質、吸収速度によって作られる。)が接続されているのが好ましい。そして、その糸14は、生体吸収速度の遅い保護膜Bの中か(図2)、A、B膜の接合部に接続される(図1)。
【0030】
図1に示すように、1本または複数本の糸14を袋体10の周囲に異なる位置に取り付けてもよく、図2に示すように、1本または複数本の糸14を袋体10の生体吸収速度の遅い保護膜Bの異なる位置に取り付けてもよい。
【0031】
図1で示すインプラント物品1を使用する場合は、図3に示すように歯周組織の骨欠損部位または骨新生の必要な部位Cに装着される。
【0032】
吸収性膜16,18のうち、骨側に位置するものAは速やかに吸収が起こるものが好ましく、例えば、BioMend Regularのような材質があげられる。粘膜側に位置するものBはなるべく長期にわたって存在するossixのような材質がよい。
【0033】
また、骨補填材としては、以下のものを粉砕したものを使用することができる。
(1)自家骨:自己の口腔内外から採取した骨
(2)他家骨:同種間(人間同士)で他の個体から採取した骨で脱灰凍結乾燥骨と凍結乾燥骨がある。
(3)異種骨:種の異なる固体から採取した骨
(4)人工骨:ハイドロキシアパタイト(HA)、リン酸三カルシウムや生体活性ガラスなどが用いられる。
【0034】
本発明のインプラント物品は、次のようにしてインプラントすることができる。
【0035】
図6は、歯周組織の骨欠損部位または骨新生の必要な部位Cを一点鎖線で示すものである。図中7は歯牙、3は歯肉である。
【0036】
図7に示すように、この部位Cの直上をさけて近傍に、歯肉3に比較的短い切開線5を設ける。図8および図9に示すように、この切開線5よりインプラント物品1を挿入し、インプラント物品1に接続された糸14を歯肉3から歯周組織に通して引っ張ることにより、インプラント物品1は、歯周組織の骨欠損部位または骨新生の必要な部位Cに配置され、糸14を縫合することにより同部に固定される。その後、切開線5は縫合される。
【0037】
インプラント物品1を構成する保護膜のうち、骨側に位置する生体吸収速度の早い吸収性膜Aが先に速やかに分解吸収され、その後粘膜側に位置する生体吸収速度の遅い吸収性膜Bが分解吸収されるため、骨移植をした場合と同様になる。
【0038】
このようにして、部位に骨の誘導、増殖を生じさせる。一定期間後にこれらの材料が生体内で分解吸収されるため、術後の除去処置が不要となる。
【0039】
なお、図10に示すように、複数本の糸14を袋体10に取り付ければ、図11に示すように、各隣接する糸14,14を結んでインプラント物品1を粘膜に固定することができる。糸の先端には針を付けて、粘膜を通すようにするのがよい。
【0040】
再生すべき骨組織の形態を保つため骨格構造(フレームワーク)を吸収性膜と一体に成形することによって、骨再生するスペースを確実に保つことができるため、広範囲な骨の欠損部位においても理想的な形態の骨組織の再生が期待できる。またこれらの補綴材料は、適度な分解(生体吸収)期間、硬度、強度を持っているため、施術し易く、術後に適用される部位にそのまま設置すれば良いので、施術が確実かつ容易、迅速となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施例のインプラント物品の概略説明図。
【図2】図1に示すインプラント物品の取り付け状態を示す概略断面図。
【図3】本発明の他の実施例のインプラント物品の概略説明図。
【図4】図3に示すインプラント物品の取り付け状態を示す概略断面図。
【図5】図1に示すインプラント物品の概略断面図。
【図6】図1に示すインプラント物品を部位にインプラントするための説明図。
【図7】図1に示すインプラント物品を部位にインプラントするための説明図。
【図8】図1に示すインプラント物品を部位にインプラントするための説明図。
【図9】図1に示すインプラント物品を部位にインプラントするための説明図。
【図10】他の実施例のインプラント物品を部位にインプラントするための説明図。
【図11】図10に示すインプラント物品を部位にインプラントするための説明図。
【符号の説明】
【0042】
1 インプラント物品
3 歯肉
5 切開線
7 歯牙
9 骨補綴材
10 袋体
16,18 吸収性膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯周組織の骨欠損部位または骨新生の必要な部位に、骨の誘導、増殖を生じさせるためにインプラントされるインプラント物品であって、
生体吸収速度の異なる少なくとも2枚の吸収性膜からなる袋体と、該袋体内に充填された骨補填材と、を有するインプラント物品。
【請求項2】
前記袋体の生体吸収速度の遅い吸収性膜側に、生体吸収性の糸が接続される請求項1に記載のインプラント物品。
【請求項3】
前記袋体の生体吸収速度の異なる2枚の吸収性膜の接合部に、生体吸収性の糸が接続される請求項1に記載のインプラント物品。
【請求項4】
前記袋体は、生体吸収速度の早い吸収性膜Aと、該吸収性膜Aに比べて生体吸収速度の遅い吸収性膜Bとからなり、該吸収性膜Aと該吸収性膜Bの周囲が生体吸収性の糸で縫合され、または両吸収性膜A、Bの周囲がシールされている請求項1に記載のインプラント物品。
【請求項5】
前記吸収性膜Aと、該吸収性膜Bとの生体吸収速度の比は時間で、1:2〜10である請求項1に記載のインプラント物品。
【請求項1】
歯周組織の骨欠損部位または骨新生の必要な部位に、骨の誘導、増殖を生じさせるためにインプラントされるインプラント物品であって、
生体吸収速度の異なる少なくとも2枚の吸収性膜からなる袋体と、該袋体内に充填された骨補填材と、を有するインプラント物品。
【請求項2】
前記袋体の生体吸収速度の遅い吸収性膜側に、生体吸収性の糸が接続される請求項1に記載のインプラント物品。
【請求項3】
前記袋体の生体吸収速度の異なる2枚の吸収性膜の接合部に、生体吸収性の糸が接続される請求項1に記載のインプラント物品。
【請求項4】
前記袋体は、生体吸収速度の早い吸収性膜Aと、該吸収性膜Aに比べて生体吸収速度の遅い吸収性膜Bとからなり、該吸収性膜Aと該吸収性膜Bの周囲が生体吸収性の糸で縫合され、または両吸収性膜A、Bの周囲がシールされている請求項1に記載のインプラント物品。
【請求項5】
前記吸収性膜Aと、該吸収性膜Bとの生体吸収速度の比は時間で、1:2〜10である請求項1に記載のインプラント物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−148790(P2008−148790A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337569(P2006−337569)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(598021007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(598021007)
【Fターム(参考)】
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