説明

インモールドラベル

【課題】インモールド成型用合成樹脂に対して好適にヒートシールすることができ、ラベルの厚さが薄い場合においても高い遮光性を有し、且つ表面の白さも良好であるインモールドラベルを提供する。
【解決手段】ラベル用基材に遮光性物質を含有するヒートシール層を設けたインモールドラベルにおいて、当該ヒートシール層が5〜24質量%のヒートシール性樹脂を含有し、且つヒートシール層の反対面におけるC光源2度視野の明度Lが89以上であり、当該ヒートシール層と反対側の基材表面に顔料塗工層(4)を設けることを特徴とするインモールドラベルとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールド成型時に使用されるインモールドラベルに関するものである。詳しくは、ポリプロピレンなどのインモールド成型用合成樹脂素材に対して好適にヒートシールすることができ、ラベルの厚さが薄い場合においても遮光性物質を配合することで高い遮光性を有し、且つ表面の白さも良好であることによって、色味の再現性が良好なインモールドラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インモールド成型容器に用いられる樹脂は、成型加工適性や価格の面からオレフィン系樹脂が多く用いられている。そのため、インモールドラベルに使用されるヒートシール性樹脂としては、オレフィン類の単独重合体、オレフィン類の2種類以上からなる共重合体、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、ビニルアルコール、アクリル酸誘導体、ビニルエーテルなどの官能基含有モノマーとの共重合体等といったポリオレフィン系樹脂が使用されている。これらポリオレフィン系樹脂を単独で、若しくは他の熱可塑性樹脂や填料等の添加物を配合して、印刷、塗工、ラミネートなどの方法によりヒートシール層が設けられている。
【0003】
インモールド成型容器の用途として、食品、化粧品、洗剤等を容器に充填して店頭に配置される場合がある。しかしながら、成型容器に十分な遮光性がない場合、外部から紫外線等の光を受けると容器内の成分が変質する問題があった。例えば、生ミルクを使用した食品に至っては味が低下するといった問題点が指摘されている。そのため、インモールド成型容器の周壁部の外周に遮光性を付与させた紙、合成樹脂含浸紙、合成樹脂コート紙、合成紙あるいは合成樹脂フィルム等を単独で、あるいは組み合わせたラベルをヒートシールした遮光性容器が広く用いられている。ラベルに遮光性を付与する手段としては、肉厚の基材シート、墨色や群青色等の着色剤を含有した樹脂やアルミ二ウム蒸着などの方法を単独若しくは組み合わせて用いられている。
【0004】
上記したような高い遮光性や好適なヒートシール性をインモールドラベルに付与する手段として、特許文献1では、700μmの肉厚なラベル用基材の裏面に厚さ約12μmのアルミニウム蒸着2軸延伸フィルムを積層する、もしくはカーボンブラックを20質量%含有する膜厚約60μmの黒ベタ印刷し、膜厚約12μmと推測する押し出しコーティングによりヒートシール層を設ける方法が提案されている。しかしながら、この提案では、全体の厚さが少なくとも約750μm以上となるため、金型内への押入のためのラベルマガジンストッカー内に収納できるラベル枚数が少なるため効率が悪く加工コストがかかる。さらには曲げ剛性が高く、容器形状に沿ったラベルとすることが困難となるため、容器形状の選択幅が著しく狭いといった問題がある。加えて、ラベル用基材を厚くすることは、それだけ原材料コストがかかるため、加工コスト増と原材料コスト増によってラベル全体のコストを著しく押し上げてしまう問題がある。
【0005】
特許文献2には、特許文献1と比較して厚みの薄いラベル用基材を用い、その裏面に黒ベタ印刷を施す、もしくは少なくとも50質量%のヒートシール性樹脂を含有するヒートシール層にカーボンブラック等の黒色顔料を8〜15質量%、及び酸化チタン等の白色顔料を30〜50質量%配合し光隠蔽性を付与することで、厚さの薄いラベル用基材を用いても高い遮光性を得る方法が提案されている。また、特許文献3には特許文献1と比較して厚さが30〜300μmと薄いラベル用基材裏面に、カーボンブラックを25〜75質量%、ヒートシール性樹脂を75〜25質量%含有する膜厚1〜5μmのヒートシール層を設けることで、薄いラベル用基材を用い、且つ遮光性とヒートシール性を1層で両立させている方法が提案されている。しかしながら、これら提案では、ヒートシール性樹脂の配合比率が高いために、印刷・ラベル抜きする前のシートを積み上げた状態、あるいはロールにするといったような圧力がかかる状態においてはシート間でブロッキングが発生し、表面を悪くするといった問題がある。さらには、印刷を施す際や成型する際にもブロッキング現象が発生し、シートの重送を引き起こしてしまうといった問題がある。加えて、必要な遮光性を出すためにカーボンブラックを多用しているため、強い黒色の塗料が裏面に塗工されることとなり、ラベル用基材の厚みが薄い場合にはラベル表面の明度Lが低下し、文字、絵などを印刷する際に色調や表面の外観を悪くするという問題がある。加えて、強い黒色の塗工層が断裁時に紙紛となって飛散し、ラベル表面に付着することで黒欠点となる問題もある。
【0006】
特許文献3には遮光性を有するヒートシール塗料がトルエンを主体とする溶剤により調製されているが、加工時の環境を整えることや、周辺環境への影響を防ぐための配慮が必要であることなどにより、加工コストを押し上げたり、作業性を悪くするといった問題がある。
【0007】
さらに、上記特許文献においてはラベル用基材として合成紙を用いる方法も提案されているが、合成紙を基材としたラベルでは、その表面に静電気が帯電しやすい性質があり、印刷時のインキののりが悪くなったり、歩留まりを悪化させたり、また、一般的に同等の厚さの繊維シートに比べこわさがなく、ラベル加工性が悪いといった問題もある。
【0008】
特許文献4では、カーボンブラック以外の遮光性物質として活性炭を用いる方法が提案されている。しかし、活性炭を遮光性物質として用いる場合、同量のカーボンブラックを配合する場合と比較すると、遮光性が劣るという問題がある。また、良好な活性炭分散液を作成するには、適切な分散機の選択や分散時間を長く設定する等の配慮が必要であり、さらに分散の状況によっては、安定性が悪く、短時間でゲル化もしくは沈殿が生じてしまうといった問題がある。
【0009】
【特許文献1】特開平8−230953号公報
【特許文献2】特開平9−295383号公報
【特許文献3】特開平10−177343号公報
【特許文献4】特開2004−151270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記したような問題点を解決することを課題とする。詳しくは、ブロッキング防止のためにヒートシール性樹脂を少量配合としながらもインモールド成型時においてポリプロピレンなどの合成樹脂素材に好適にヒートシールできる性能を有し、且つ厚みの薄いラベル用基材でもラベル表面から照射された強い光の透過を効果的に遮ることができる性能を一つの層を設けることで実現することを課題とする。さらには、カーボンブラック等の遮光性を有する黒色材料を含有するヒートシール層がラベル表面の明度Lに影響を及ぼすことが少なく、色味の良好な印刷を施すことができ、インモールド成型による合成樹脂容器などに好適に使用されるインモールドラベルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等はこの課題を解決するために鋭意研究した結果、遮光性物質を含有するヒートシール層(2)に特定の比率でヒートシール性樹脂を配合し、当該層をラベル用基材(1)に設けることにより本発明を完成するに至った。次いで、ラベル用基材(1)とヒートシール層(2)との間に中間層(3)、ラベル用基材の表面に顔料塗工層(4)を設けることでさらに優れた性能を得ること可能であることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明の請求項1に係る発明は、主として繊維からなるラベル用基材(1)に遮光性物質を含有するヒートシール層(2)を設けたインモールドラベルにおいて、ヒートシール層(2)が5〜24質量%のヒートシール性樹脂を含有し、且つヒートシール層(2)の反対面におけるC光源2度視野の明度L*(JIS P8150:2004)が89以上であることを特徴とするインモールドラベルである。
【0013】
本発明の請求項2に係る発明は、厚さが60〜200μmであることを特徴とする請求項1に記載のインモールドラベルである。
【0014】
本発明の請求項3に関わる発明は、ラベル用基材(1)とヒートシール層(2)との間に、中間層(3)を設けることを特徴とする請求項1または2に記載のインモールドラベルである。
【0015】
本発明の請求項4に係る発明は、ラベル用基材(1)に設けられたヒートシール層(2)と反対側の面に、顔料塗工層(4)を設けることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインモールドラベルである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明においては、ヒートシール層側の面を裏面、ヒートシール層の反対面を表面とする。本発明における「遮光」とは、ラベルの表面から強い光を照射したときに、その光がラベルの裏面まで通過しないことを意味し、「遮光性」とはその程度を示す。本発明においては、遮光性の評価は、投光器と一体化された白色光ランプの電圧を調整することでランプの照度を調整できるようにし、サンプル載置台にあけた穴を塞ぐようにサンプルを置いてサンプルに一定の光を照射し、サンプルの裏面に照度計を設置してその照度を測定し、光の透過率で遮光性の評価を行った。
【0017】
本発明における「好適なヒートシール性」とは、遮光性インモールドラベルとともに合成樹脂基材を容器に成型後、滅菌工程における200℃の過酸化水素の蒸気にさらされても、当該ラベルが剥離して浮くことがない状態を維持できることをいう。
【0018】
ヒートシール層(2)においては、カーボンブラック等の遮光性物質を配合するためヒートシール層が黒色系の色調を示しており、ラベル用基材の不透明度が低い場合には、この色調が透過することによって表面の見た目の白さが損なわれる。本発明者等が鋭意検討した結果、この黒色系の色調の透過程度とISO白色度(JIS P8148:2001年、)とには相関がないが、C光源2度視野の明度Lとは相関があることを見出した。
【0019】
本発明では、表面の明度Lが89以上であることが必要である。一般的にインモールド成型時において金型に挿入されたラベルにかかる圧力は高く、ラベル用基材(1)、および後述の中間層(3)、顔料塗工層(4)の不透明度は圧力に伴い減少する傾向があるため、ヒートシール層に含まれる遮光性物質に起因する黒色系の色調が表面に表れてきやすくなる。ラベル表面の明度Lが89未満の場合、インモールド成型によって黒色系の色調がより強調され、その結果、表面の外観が損なわれる。また、白地に限らず、程度の差はあれども様々な色においても色調が黒味を帯びてしまう傾向があり、印刷時に色調の再現性が損なわれる。
【0020】
本発明では、図1に示すようにラベル用基材(1)の片面にヒートシール層(2)を設ける。このヒートシール層(2)には、ヒートシール性樹脂と遮光性物質を配合する必要がある。
【0021】
本発明で用いられるヒートシール性樹脂としては、容器の合成樹脂素材に合わせてヒートシール性の良好な合成樹脂エマルションを選択するとよく、例えば容器の合成樹脂素材がポリプロピレンの場合は、ポリプロピレン系樹脂エマルションが特に好ましい。具体的には、前述のオレフィン類の単独重合体、オレフィン類の2種類以上からなる共重合体、スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、ビニルアルコール、アクリル酸誘導体、ビニルエーテルなどの官能基含有モノマーとの共重合体等といったポリオレフィン系樹脂等が使用できるが、これらに限定されるものではない。本発明において、ヒートシール性樹脂の配合率は5〜24質量%とする必要があり、好ましくは9〜18質量%である。ヒートシール性樹脂が5質量%未満であると好適なヒートシール性を得るのに必要な接着力が不足し、9質量%未満ではラベルは接着するものの、条件によってはラベルが一部剥離することがあるため好ましくない。また、24質量%より多く配合すると接着力としては十分であるが、印刷前やラベル抜きする前のシートを積み上げたり、ロール状にしたりする際に圧力がかかることでブロッキングが生じ、印刷を施す面が損なわれる危険性がある。それにより、印刷を施す際や成型する際は重送を引き起こしてしまい問題となる。また、18質量%より多く配合すると、ヒートシール性樹脂が水系エマルションの場合にはエマルションとしての安定性が悪くなる傾向がみられ、塗料中に含まれる他の添加物との相溶性が悪くなることから、均一な塗工面を得ることが困難となる。
【0022】
ヒートシール性樹脂が水系エマルションの場合、ヒートシール層(2)自体の強度が弱くなるために断裁時において紙紛が発生しやすくなり、さらにはインモールド成型後にヒートシール層(2)内部からの剥離も発生しやすい。そのため、ヒートシール層(2)には樹脂バインダーを配合することが好ましい。樹脂バインダーの種類には特に限定はないが、例えば合成高分子ラテックスとしてはアクリル系、スチレン系、スチレン−アクリル系、スチレン−ブタジエン系などの各種共重合体を用いることができる。樹脂バインダーの配合率は25質量%以下であることが好ましい。25質量%を超えるとヒートシール層の強度は十分であるが、ブロッキングを引き起こす危険性が増すため好ましくない。なお、樹脂バインダー以外にも、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の合成バインダー、酸化デンプン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、酵素変性デンプン、変性デンプン、デンプン誘導体、カゼイン等の天然系バインダーなどを必要に応じて1種類以上を混合して適宜使用することができる。
【0023】
ヒートシール層(2)に使用する遮光性物質としては、カーボンブラック、活性炭、鉄黒、酸化鉄等の黒色顔料、及び黒色染料が挙げられるが、内容物充填工程に際し金属探知機を通過することや遮光性、コスト等の観点からカーボンブラックが特に好ましい。カーボンブラックは、原料により分類され、ガスブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アントラセンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンカーボンブラック、サーマルブラック等が挙げられる。ファーネスブラックが顔料分散性とコストの面から好ましい。本発明においては、これらカーボンブラックを適切な分散剤及び分散機を用いて水分散した分散体が好適に用いられる。また、本発明ではラベル用基材(1)の坪量、厚さ、層構成、各塗工層の含有する顔料の種類と配合量等の組合せによって、ヒートシール層(2)の遮光性の程度が異なるため、遮光性物質の配合率に限定はなく、本発明で所望とする遮光性が維持できる配合率であれば良い。しかしながら、ヒートシール層(2)の黒色系の色調が強い場合、ラベル表面の明度Lへの影響や従来の問題点であった断裁紙紛の黒色化が強調されるといった問題があるため、遮光性を満足する範囲内でなるべくヒートシール層(2)が黒くなりにくい配合率とするとよい。
【0024】
ヒートシール層(2)には、ヒートシール性樹脂の配合比率を下げるために白色顔料を配合することが好ましい。また、白色顔料等を配合することでカーボンブラック等の遮光性物質によるヒートシール層の黒色化を低減する効果があり、その結果、表面の明度Lへの影響や従来の問題点であった断裁紙紛の黒色化を低減することができる。ここで使用される白色顔料としては、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、合成非晶質シリカ、ゼオライト等の無機系填料、またはポリスチレン、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂などの有機顔料等の一般的に塗工用として使用される白色顔料成分の1種類以上を適宜混合して用いることができる。特に白色度と光の屈折率が高い酸化チタンを使用することで表面の明度Lを向上させ、且つヒートシール層(2)の白さを大きく向上させることができる。白色顔料の種類や配合率によって、ヒートシール層の白さ、および表面の明度Lへの影響が異なるが、ヒートシール性に影響のない範囲であれば特に種類や配合率に限定はなく、目的に応じて選定するとよい。また、本発明のヒートシール層(2)には、性能を損なわない範囲で樹脂バインダー、分散剤、耐水化剤、潤滑剤、消泡剤などの各種助剤を必要に応じ添加することができる。
【0025】
ヒートシール層(2)をラベル用基材(1)に設ける方法としては、既知の塗工設備を用いるとよい。例えば、エアナイフコーター、ロッドコーター、バーコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ゲートロールコーター等、その他各種印刷方式が挙げられる。あるいは、既知の各種ラミネーターを用いてラベル用基材と貼合してもよい。
【0026】
ヒートシール層(2)の固形分塗工量としては、後述の中間層(3)を設けない場合は、7.5〜17.5g/mが好ましい。また、中間層を設けた場合の固形分塗工量としては5.0〜15.0g/mが好ましい。中間層(3)を設けない場合に7.5g/m未満、あるいは中間層(3)を設ける場合に5.0g/m未満とすると、ヒートシール層(2)の塗工面が不均一となることで、接着力が低下し、好適なヒートシール性が得られなくなるため好ましくない。また、中間層(3)を設けない場合に17.5g/mを超えると、あるいは中間層(3)を設ける場合に15g/mを超えると、一定以上の接着力の向上が見られず不経済となるため好ましくない。
【0027】
本発明では、図2に示すようにラベル用基材(1)とヒートシール層(2)の間に、中間層(3)を設けることができる。この中間層(3)を設けることで、ヒートシール層の成分がラベル用基材(1)の内部へ浸透するのを抑えることが可能となる。さらには、中間層(3)を設けることによりラベル用基材(1)の面の凹凸による影響を受けないため、ヒートシール層(2)の固形分塗工量が少ない場合でも均一な塗工層を得ることができ、それにより好適なヒートシール性を得るのに必要な最低固形分塗工量を5.0g/mとする効果がある。加えて、ヒートシール層が含有する遮光性物質に起因する黒色系の色調が表面に透けて見えないように隠蔽する効果があるため、表面の明度Lが向上し、印刷外観が良好になる。また、ラベル用基材(1)にピンホールがある場合、黒色のヒートシール層成分がラベルの表面に抜けて黒欠点となるのを防ぐ効果も得られる。
【0028】
中間層(3)の固形分塗工量は2.5g/m以上であることが好ましい。2.5g/m未満では、上記のような好適なヒートシール性を得る効果が期待できず、さらには、中間層(3)による隠蔽効果も薄くなり、ラベル表面の明度Lを向上させる効果が低くなるため好ましくない。
【0029】
中間層(3)を形成する塗工液は、白色顔料と樹脂バインダーを主体に構成されることが好ましい。白色顔料としては、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、合成非晶質シリカ、ゼオライト等の無機系填料、またはポリスチレン、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂などの有機顔料等の一般的に塗工用として使用される白色顔料成分を必要に応じて1種類以上を適宜混合して用いることができる。特にカオリンを用いると黒色のヒートシール層塗料の浸透抑制効果が良好であり、表面の明度Lへの影響を低減させるだけでなく、ラベル用基材(1)にピンホールがある場合においてはヒートシール層塗料が表面へ抜けることによる黒欠点を防ぐ効果も良好であるため好ましい。樹脂バインダーの種類としては特に限定はなく、例えば合成高分子ラテックスとしてアクリル系、スチレン系、スチレン−アクリル系、スチレン−ブタジエン系などの各種共重合体を用いることができる。あるいは、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の合成バインダー、酸化デンプン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、酵素変性デンプン、変性デンプン、デンプン誘導体、カゼイン等の天然系バインダーなどを必要に応じて1種類以上を混合して適宜使用することができる。また、中間層(3)には、分散剤、耐水化剤、潤滑剤などの各種助剤を必要に応じ適宜添加することができる。
【0030】
中間層(3)において、白色顔料の配合率は75〜90質量%が好ましく、樹脂バインダーの配合率は25〜10質量%が好ましい。白色顔料の配合率が90質量%、または樹脂バインダーの配合率が10質量%未満である場合、ヒートシール層成分の浸透抑制効果が低下してしまい、加えて、中間層の強度が弱くなることで、インモールド成型後に中間層の塗工層内部から容易に剥離すること可能性があるため好ましくない。また、白色顔料の配合率が75質量%未満、あるいは樹脂バインダーの配合率が25質量%以上では、樹脂バインダーの種類によっては、ヒートシール層(2)との密着性が悪くなり、インモールド成型後にヒートシール層(2)と中間層(3)の界面で剥離しやすくなるため好ましくない。
【0031】
本発明では、図3、及び4に示すようにラベル用基材(1)表面に顔料塗工層(4)を設けることができる。顔料塗工層(4)を設けることで、上記中間層と同様に遮光性を有するヒートシール層の黒色の色調を隠蔽し、ラベル表面の明度Lを向上させることができる。また、ISO白色度の低いラベル用基材(1)を用いてもラベル表面に高いISO白色度を付与することが可能となり、さらには、インキ発色、作業性等の印刷適性も向上することができる。加えて、当該顔料塗工層(4)の処方をアレンジすることで、凸版方式、オフセット方式、グラビア方式、孔版方式等の様々な印刷方式に対応したラベルを提供することが可能となる。なお、顔料塗工層(4)の固形分塗工量に限定はなく、89以上の表面の明度Lが得られる固形分塗工量であれば良い。
【0032】
顔料塗工層(4)を形成する塗工液は、白色顔料と樹脂バインダーを主体に構成される。白色顔料としては、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、合成非晶質シリカ、ゼオライト等の無機系填料やスチレン系あるいはアクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン等の一般的に塗工用として使用される白色顔料成分を必要に応じて1種類以上を適宜混合して用いることができる。ラベル表面のISO白色度及び明度Lを向上させるためには、屈折率の大きな白色顔料、例えば酸化チタン等を使用することが好ましい。樹脂バインダーの種類としては特に限定はなく、例えば合成高分子ラテックスとしてアクリル系、スチレン系、スチレン−アクリル系、スチレン−ブタジエン系などの各種共重合体を用いることができる。あるいは、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の合成バインダー、酸化デンプン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、酵素変性デンプン、変性デンプン、デンプン誘導体、カゼイン等の天然系バインダーなどを必要に応じて1種類以上を混合して適宜使用することができる。また、顔料塗工層(4)には、分散剤、耐水化剤、潤滑剤などの各種助剤を必要に応じ適宜添加することができる。当該顔料塗工層(4)において、白色顔料の配合率は75〜90質量%が好ましく、樹脂バインダーの配合率は25〜10質量%が好ましい。白色顔料の配合率が75質量%未満、または樹脂バインダーの配合率が25質量を超えた場合は、インキセット性が悪くなったり、ブロッキングが生じる可能性が高くなるため好ましくない。また、白色顔料の配合率が90質量%を超えた場合、または樹脂バインダーの配合率が10質量%未満である場合においては、インキセット性が良好であり、ブロッキングする可能性はほとんどないが、顔料塗工層の強度が弱くなることで、印刷時に紙ムケ等の印刷トラブルが発生する危険性が増すため好ましくない。
【0033】
本発明における中間層(3)及び顔料塗工層(4)の塗工方法としては、既知の塗工設備を用いるとよい。例えば、エアナイフコーター、ロッドコーター、バーコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ゲートロールコーター等、その他各種印刷方式、ラミネート方式が挙げられる。
【0034】
本発明の構成としては例えば図1〜図4が考えられ、ヒートシール層(2)、中間層(3)並びに顔料塗工層(4)の各層に使用される樹脂バインダー、エマルション、各種填料や顔料などの種類や配合率、あるいは固形分塗工量、及びラベル用基材(1)の厚さや坪量といった様々な組合せで構成することができるが、インモールドラベルとしての特性が得られ、ラベル表面の明度Lが89以上となるような組合せであれば良く、そうなるように設定すればよい。
【0035】
本発明のインモールドラベルの厚さは、全体で60〜200μmであることが好ましい。ラベル用基材(1)の厚さが大きければ、一般的に不透明度も高くなり、その結果として、表面の明度Lも高くなるが、インモールドラベルの成型加工する際の加工適性が悪くなる。さらには、原材料費もかかることでラベル全体のコストを押し上げてしまうので好ましくない。そのため、加工適性と原材料コストを考慮したラベル用基材の厚さとしては、60〜200μmの範囲が好ましいのである。また、坪量においては、特に限定はないが坪量を大きくすることは原材料コストがかかるため、本発明で所望とする性能を維持できる範囲でなるべく小さいことが好ましい。
【0036】
本発明のラベル用基材(1)は、原料繊維として針葉樹や広葉樹の化学パルプ、半化学パルプ若しくは機械パルプ等の木材パルプ、これら木材パルプを化学処理したマーセル化パルプ若しくは架橋パルプ、麻や綿等の非木材系繊維、レーヨン繊維等の再生繊維、またはポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維若しくはポリアミド繊維といった合成繊維等が用いられる。これら繊維のうち、製品のコスト、強度、静電気、抄紙適性等の観点から、木材パルプ、非木材系繊維、再生繊維が好ましい。とりわけ、製品コストの観点から、木材パルプが一層好ましい。また、一般的にラベル用基材(1)が厚いほど不透明度が高いが、前記加工適性やコストも考慮すると、必要以上に厚くせずに性能を損なわない範囲で白色顔料等の填料を内添し、不透明度を上げることが好ましい。填料としては、タルク、カオリン、クレー、焼成カオリン、デラミカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、二酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、硫酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ホワイトカーボン、アルミノ珪酸塩、シリカ、セリサイト、スメクタイトなどの無機填料やポリスチレン樹脂微粒子、微小中空粒子などの有機合成填料が挙げられる。また、内添薬品として、紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、サイズ剤、歩留まり向上剤、濾水性向上剤、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤などの製紙用各種補助剤を必要に応じて適宜選択、あるいは組み合わせて使用できる。また、叩解度は特に限定しないが、叩解を進めない方が紙の密度が低くなり不透明度が高くなるため、本発明の性能を損なわない範囲で叩解度を設定するとよい。
【0037】
このように、各種薬品を添加することによって調製された原料を抄紙するにあたって、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤーフォーマー、短網抄紙機、またはこれら抄紙機のコンビネーションなど、あらゆる抄紙機を用いることができる。
【0038】
また、本発明においては、ヒートシール層(2)を塗工する必要があるため、抄紙機上でサイズプレスやゲートロールコーター等を使用し、ラベル用基材の塗工適性を向上させることが好ましい。この際に使用される薬品としては、酸化デンプン、疎水化デンプンなどの変性デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアマイド、スチレン−アクリル酸樹脂エマルションラテックスなど通常のサイズプレス等の工程で慣用されている薬品が使用できる。
【実施例】
【0039】
以下実施例、比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0040】
実施例1
[ラベル用基材の作成]
市販の針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を重量比50:50でパルパーに投入し、固形分換算5質量%で十分に離解した後、ダブルディスクリファイナーを使用して、叩解度をカナディアンスタンダードフリーネスで500mlとした原料パルプスラリーを調製した。その後、調合タンクにおいてカオリン(商品名「HT」、エンゲルハード社製)を対パルプ当たり5質量%添加した後、湿潤紙力増強剤(商品名「アラフィックス100」、荒川化学工業(株)製)を固形分換算で0.5質量%、乾燥紙力増強剤(商品名「ポリストロン117」、荒川化学工業(株)製)を固形分換算で0.5質量%添加し、サイズ剤(商品名「サイズパインN771」、荒川化学工業(株)製)を対パルプ重量当たり固形分換算で0.5質量%添加した後、液体硫酸アルミニウムを固形分換算で3質量%添加して十分攪拌し、紙料を得た。この紙料を、長網抄紙機を使用して坪量100g/m、厚さ117μm、不透明度84.5%のラベル用基材(1)を抄造した。
【0041】
[ヒートシール層の塗工]
続いて、全塗料固形分100質量%のうちを湿式重質炭酸カルシウム(商品名「FMT−90」、ファイマテック(株)製)を79.4質量%とし、バインダーとしてスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスエマルション(商品名「ニポール GT−1751」、日本ゼオン(株)製)を固形分換算で10質量%、リン酸エステル化デンプン(商品名「MS4600」、日本食品化工(株)製)を固形分換算で5質量%、ヒートシール性樹脂としてポリプロピレン樹脂エマルション(商品名「ケミパール EP−310H」、三井化学(株)製)を固形分換算で5質量%、カーボンブラック分散液(商品名「TB−510 Black TR」、大日精化工業(株)製)を固形分換算で0.6質量%配合した塗料を調製し、エアナイフコーターにより固形分塗工量7.5g/mを前記ラベル用基材(1)裏面に塗工した。
【0042】
実施例2
実施例1のヒートシール層(2)の塗料処方として、ポリプロピレン樹脂エマルション(商品名「ケミパールEP−310H」)を固形分換算で9質量%、湿式重質炭酸カルシウム(商品名「FMT−90」)を固形分換算で75.4質量%とした以外は実施例1と全く同様に作成した。
【0043】
実施例3
実施例1のヒートシール層(2)の塗料処方におけるポリプロピレン樹脂エマルション(商品名「ケミパールEP−310H」)を固形分換算で22質量%、湿式重質炭酸カルシウム(商品名「FMT−90」)を固形分換算で62.4質量%とした以外は実施例1と全く同様に作成した。
【0044】
実施例4
ラベル用基材(1)とヒートシール層(2)との間に、下記中間層(3)を設けた以外は、実施例2と全く同様に作成した。
[中間層の塗工]
全塗料固形分100質量%のうち、カオリン(商品名「ULTRA WHITE 90」、エンゲルハード社製)を65質量%、酸化チタン(商品名「タイペーク A−220」、石原産業(株)製)を15質量%配合し、バインダーとしてスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスエマルション(商品名「ニポール GT−1751」、日本ゼオン(株)製)を固形分換算で15質量%、リン酸エステル化デンプン(商品名「MS4600」、日本食品化工(株)製)を固形分換算で5質量%配合した塗料を調製し、ブレードコーターにより固形分塗工量5.0g/mでラベル用基材の裏面に塗工した。
【0045】
実施例5
実施例1のヒートシール層(2)の塗工において、固形分塗工量を5.0g/mとした以外は実施例4と全く同様に作成した。
【0046】
実施例6
下記顔料塗工層を設けた以外は、実施例2と全く同様に作成した。
[顔料塗工層の塗工]
実施例4の中間層(3)と同じ塗料を調製し、エアナイフコーターにより固形分塗工量5.0g/mでラベル用基材(1)の表面に塗工した。
【0047】
実施例7
実施例6と全く同様の顔料塗工層(4)を設けた以外は、実施例5と全く同様に作成した。
【0048】
実施例8
実施例1のラベル用基材(1)の作成に用いた紙料を使用し、長網抄紙機にて坪量40g/m、厚さ47μm、不透明度44.0%としたラベル用基材を得た。これに実施例4の中間層(3)の塗料を固形分塗工量15g/mとして中間層(3)を設け、さらに実施例5と全く同様にしてヒートシール層を設けた。加えて、実施例6の顔料塗工層(4)の塗料を固形分塗工量25g/mとしてラベル用基材の表面に設けた。
【0049】
実施例9
実施例1のヒートシール層(2)の塗料処方において、カーボンブラック分散液を固形分換算で2.0質量%の活性炭分散液(商品名「AC−2000」、大日精化工業(株)製)に変更し、湿式重質炭酸カルシウム(商品名「FMT−90」)を固形分換算で78質量%とした以外は実施例2と全く同様にして作成した。
【0050】
比較例1
実施例1のヒートシール層(2)の塗料処方として、ポリプロピレン樹脂エマルション(商品名「ケミパールEP−310H」)を固形分換算で3質量%、湿式重質炭酸カルシウム(商品名「FMT−90」)を固形分換算で81.4質量%とした以外は実施例1と全く同様に作成した。
【0051】
比較例2
ヒートシール層(2)の固形分塗工量を15g/mとした以外は比較例1と全く同様に作成した。
【0052】
比較例3
実施例1のヒートシール層(2)の塗料処方として、ポリプロピレン樹脂エマルション(商品名「ケミパールEP−310H」)を固形分換算で26質量%、湿式重質炭酸カルシウム(商品名「FMT−90」)を固形分換算で58.4質量%とした以外は実施例1と全く同様に作成した。
【0053】
比較例4
実施例1のラベル用基材(1)の処方において、カオリン(商品名「HT」)を対パルプ当たり20質量%配合とし、坪量を58g/m、厚さを64μm、不透明度を78.0%とした以外は実施例2と全く同様に作成した。
【0054】
実施例及び比較例について以下の項目の評価を行った。
【0055】
[ヒートシール性の評価]
各サンプルをラベルサイズ(縦70mm、横200mm)に打ち抜き、自動ラベル供給装置を用いて、射出成型用金型に真空を利用してラベル表面が金型に接するように固定した。その後、ポリプロピレン樹脂(融点186℃)を溶融押出し、射出成型により容器状とするとともにサンプルと融着させ、次いで金型を冷却した後、サンプルが貼着した樹脂容器を取り出した。得られた容器を200℃の過酸化水素の蒸気にさらし、冷却後にラベル外観を目視評価した。以下の3段階で評価し、△以上を合格とした。
○:全くラベル剥離が観察されない。
△:一部分のみラベル剥離が観察される。
×:全体にラベル剥離が観察される。
【0056】
[遮光性の評価]
投光器と一体化された白色光ランプ(商品名「LAMP HOUSE MODEL 15HLE」、セナ−(株)製)を変圧器(商品名「POWER SUPPLY MODEL 1515D」、セナー(株)製)に繋いで、電圧を調整することでランプの照度を調整できるようにし、ランプから150mmの距離を隔ててサンプル載置台を配置した。サンプル載置台には直径80mmの穴が開けてあり、サンプルはこの穴を塞ぐようにサンプル載置台に置いた。この装置を暗室内に設置し、サンプルが置かれていない状態において、サンプル載置台に開けられた穴の中央部の照度が1万ルックスとなるように照度を調整した。照度の測定は、照度計(商品名「デジタル照度計 THI」、ミノルタ(株)製)を用いて行った。サンプルをサンプル載置台に置き、上記のように1万ルックスの照度の光を照射したとき、サンプル載置台の穴を通って透過する光をサンプル裏面に照度計を設置して照度を測定し、その透過率で遮光性を評価した。透過率が5.0%以下を合格とした。
【0057】
[ブロッキング評価]
各サンプルを100cmに断裁し、ヒートシール層(2)とその反対面が接触するようにサンプル2枚を重ね合わせ、200Nの荷重をかけ、40℃、RH90%の条件下で24時間静置する。その後、手でサンプル剥離をさせ、接触面の接着状況と接触面を目視評価した。以下の3段階で評価し、△以上を合格とした。
○:接着がなく、簡単に剥離する。
△:接着が生じているが、面を全く破壊することがなく容易に剥離することができる。
×:接着が生じており、剥離すると面が破壊される。あるいは剥離ができない。
【0058】
[ラベル表面の明度L、不透明度測定]
微分分光光度計(商品名「エルレホ分光光度計 SE070R」、ローレンツェン アンド ベットレー(株)製)を用い、ラベル表面の明度LについてはJIS P8150:2004に準拠してC光源2度視野の明度Lを測定し、89以上を合格とした。また、ラベル用基材(1)の不透明度は当該微分分光光度計を用い、JIS P8149:2001に準拠して測定した。
【0059】
[ラベル外観の評価]
オフセット印刷用インキ(商品名「TKハイユニティ 藍」、東洋インキ製造(株)製)0.6gをRIテスター(商品名「RI型テスター」、(株)IHI機械システム製)によって各サンプルに印刷し、24時間静置した。これを、上記[ヒートシール性の評価]と全く同様に貼着させた樹脂容器を得た後、そのラベル外観を目視評価した。以下の3段階で評価し、△以上を合格とした。
○:印刷色に黒味がなく、インキ発色性が良好である
△:印刷色に黒味はないが、インキ発色性が不良である
×:印刷色に黒味があり、インキ発色性が不良である
【0060】
[厚さ測定]
ラベル用基材またはラベルの厚さは、自動昇降式紙厚計(商品名「自動昇降式紙厚計 TM600」、熊谷理機工業(株)製)を用い、JIS P8118:1998に準拠して測定した。
【0061】
実施例および比較例の各評価結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1の結果から、以下のことが確認された。
・実施例1〜3および比較例1、3の結果より、ヒートシール性樹脂が5質量%以上でヒートシール性が得られ、9質量%以上で好適なヒートシール性が得られることがわかる。さらには、ヒートシール性樹脂の配合率を多くすることで、ブロッキング性が劣る傾向にあることがわかる。
・実施例4、5の結果より、中間層(3)を設けることでラベル表面の明度Lが向上し、ヒートシール層(2)の固形分塗工量が5.0g/mでも好適なヒートシール性を得られることわかる。
・実施例6の結果より、顔料塗工層(4)を設けることで、ラベル表面の明度Lが向上し、ラベル外観が良好となることがわかる。
・実施例7、8の結果より、中間層(3)、顔料塗工層(4)を両方設けることでラベル表面の明度Lが大きく向上し、さらにラベル用基材(1)の厚さが薄い場合や不透明度が低い場合であっても、高い明度Lを付与できることがわかる。
・実施例9の結果より、遮光性物質を活性炭とした場合であっても本発明の性能が得られる。ただし、所望する遮光率を得るのに必要な配合率がカーボンブラックよりも多くなっている。
・比較例2の結果より、ヒートシール性樹脂が5質量%未満ではヒートシール層(2)の塗工量を増やしても十分なヒートシール性が得られないことが分かる。
・比較例3の結果より、ヒートシール性樹脂の配合量が25質量%を超えるとブロッキングが発生し、ヒートシール層(2)と接触する面を悪くすることが分かる。
・比較例4の結果より、ラベル表面の明度Lが89未満ではラベル外観が損なわれることがわかる。
【0064】
本発明で設けられるヒートシール層(2)、中間層(3)、顔料塗工層(4)の構成により、ヒートシール性樹脂を少量配合としても、好適なヒートシール性を得ることができた。また、ラベル用基材(1)の厚さが薄くてもカーボンブラック等の遮光性物質を配合することで、高い遮光性も得ることができた。さらには、本発明の層構成を用いれば、ラベル用基材(1)の不透明度が低い場合でも、所望する表面の明度Lを得ることができた。以上のように、ブロッキング防止のためにヒートシール性樹脂を少量配合としながらもインモールド成型時にポリプロピレンなどの合成樹脂素材に好適にヒートシールできる性能を有し、且つ厚さが薄いラベル用基材でもラベル表面から照射された強い光の透過を効果的に遮ることができる性能を一つの層を設けることで実現した。さらに、カーボンブラック等の遮光性を有する黒色材料を含有するヒートシール層がラベル表面の明度Lに影響を及ぼすことが少なく、色味の良好な印刷を施すことができ、インモールド成型による合成樹脂容器などに好適に使用されるインモールドラベルを提供できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、インモールド成型用ラベルとして用いることができ、ポリオレフィン樹脂エマルションの種類を選択することで、あらゆる合成樹脂基材のプラスチック容器に好適に利用することができる。さらに、ラベル自体に遮光性を有しているため、透明性の高い合成樹脂基材にも本発明の遮光性インモールドラベルを用いることで容易に遮光性を付与することができる。加えて、表面の明度Lが高く、見た目の白さが維持されているため、デザイナーのイメージそのままに、色味の再現性が高い印刷柄や外観の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明による遮光性ラベルの一実施の形態を示す構成図である。
【図2】本発明による遮光性ラベルの一実施の形態を示す構成図である。
【図3】本発明による遮光性ラベルの一実施の形態を示す構成図である。
【図4】本発明による遮光性ラベルの一実施の形態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0067】
1 ラベル用基材
2 ヒートシール層
3 中間層
4 顔料塗工層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として繊維からなるラベル用基材(1)に遮光性物質を含有するヒートシール層(2)を設けたインモールドラベルにおいて、ヒートシール層(2)が5〜24質量%のヒートシール性樹脂を含有し、且つヒートシール層(2)の反対面におけるC光源2度視野の明度L(JIS P8150:2004)が89以上であることを特徴とするインモールドラベル。
【請求項2】
厚さが60〜200μmであることを特徴とする請求項1に記載のインモールドラベル。
【請求項3】
ラベル用基材(1)とヒートシール層(2)との間に、中間層(3)を設けることを特徴とする請求項1または2に記載のインモールドラベル。
【請求項4】
ラベル用基材(1)に設けられたヒートシール層(2)と反対側の面に、顔料塗工層(4)を設けることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインモールドラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−244591(P2009−244591A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90956(P2008−90956)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000225049)特種製紙株式会社 (45)