説明

インレットパイプ

【課題】樹脂製でありながらもインジェクタを容易且つ確実に固定可能なインレットパイプを提供する。
【解決手段】インレットパイプ1は、一端がスロットルボディ3に接続され、他端がエンジン2に接続される樹脂製の管路部10と、管路部10の途中に設けられ、インジェクタ4が挿入される挿入孔40と、管路部10と一体的に設けられ、インジェクタ4を支持する支持部50と、支持部50にインサート成型によって埋め込まれ、インジェクタ4の固定用の回転締結部材8と螺合する静止締結部材52と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの吸気系においてスロットルボディとエンジンを接続するジョイントであるインレットパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車等のエンジンの吸気系においては、燃焼室内へ流入する吸気の量を調節するスロットルバルブを備えるスロットルボディと、シリンダヘッド等に形成されて燃焼室内に繋がる吸気ポートとを繋ぐジョイントとして、管状のインレットパイプが使用されている。
【0003】
このインレットパイプは、一般にアルミダイキャスト等の金属製のものが使用されていたが、近年では樹脂製のものが使用されるようになってきている(例えば、特許文献1参照)。インレットパイプを樹脂から構成した場合、金属製と比較して熱伝導率が低くなるため、エンジンの発する熱をスロットルボディに伝えにくくすることが可能となる。また、エンジンとインレットパイプの間、またはインレットパイプとスロットルボディの間に断熱材等を設ける必要がなくなるため、部品点数を削減して吸気系を簡素化することが可能となる。
【0004】
また、インレットパイプには通常、吸気内へ燃料を噴射するインジェクタが挿入される挿入孔が設けられると共に、挿入孔に挿入されたインジェクタを支持する支持部が設けられている。インジェクタは、一般にカバー部材等の別部材を介して支持され、カバー部材は、ボルト等の締結部材によって支持部に固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−174836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インレットパイプを樹脂から構成した場合、ボルトと螺合するめねじを支持部に形成することは強度上難しいことから、上記特許文献1に記載のインレットパイプでは、カバー部材をボルトおよびナットで支持部に固定するようにしている。このため、インジェクタの着脱時における作業性が悪いという問題があった。特に、吸気効率の観点からインレットパイプの管長は極力短くする必要があり、ナットを着脱するためのスペースは非常に狭隘なものとなってしまうため、作業性が著しく悪化していた。
【0007】
また、上記特許文献1に記載のインレットパイプでは、支持部に設けられた孔部にカバー部材に固定されたカラーを挿通し、このカラー内部に挿通したボルトにナットを螺合させるように構成されている。すなわち、ボルトおよびナットはカラーを締結するのみであり、カラーは孔部に対して軸方向に移動可能な自由度を有して配置されている。このため、振動等によって樹脂製の孔部に摩耗や変形が生じ、インジェクタの支持にガタが発生しやすいという問題があった。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、樹脂製でありながらもインジェクタを容易且つ確実に固定可能なインレットパイプを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、一端がスロットルボディに接続され、他端がエンジンに接続される樹脂製の管路部と、前記管路部の途中に設けられ、インジェクタが挿入される挿入孔と、前記管路部と一体的に設けられ、前記インジェクタを支持する支持部と、前記支持部にインサート成型によって埋め込まれ、前記インジェクタの固定用の回転締結部材と螺合する静止締結部材と、を備えることを特徴とする、インレットパイプである。
【0010】
(2)本発明はまた、前記静止締結部材は、前記支持部に埋め込まれる埋没部に、抜け止め用の第1の凹凸形状と、回り止め用の第2の凹凸形状と、を有することを特徴とする、上記(1)に記載のインレットパイプである。
【0011】
(3)本発明はまた、前記第1の凹凸形状または前記第2の凹凸形状は、インサート成型において前記静止締結部材を金型に保持する治具の係合用として兼用されることを特徴とする、上記(2)に記載のインレットパイプである。
【0012】
(4)本発明はまた、前記静止締結部材は、前記支持部から露出する露出部を有し、前記第1の凹凸形状は、前記露出部に隣接して設けられ、インサート成型において前記静止締結部材を金型に保持する治具の係合用として兼用されることを特徴とする、上記(3)に記載のインレットパイプである。
【0013】
(5)本発明はまた、前記静止締結部材は、内周面にめねじが形成された非貫通のねじ穴を有し、前記ねじ穴の開口部の反対側の底部は、前記支持部に埋め込まれることを特徴とする、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のインレットパイプである。
【0014】
(6)本発明はまた、前記支持部は、前記管路部の外側から所定の突出方向に向けて突設され、前記静止締結部材は、前記支持部の先端部において前記ねじ穴の中心軸線が前記突出方向と略平行となるように配置されることを特徴とする、上記(5)に記載のインレットパイプである。
【0015】
(7)本発明はまた、前記突出方向は、前記挿入孔の中心軸線と略平行であることを特徴とする、上記(6)に記載のインレットパイプである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るインレットパイプによれば、樹脂製でありながらもインジェクタを容易且つ確実に固定可能という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るインレットパイプの使用時の状態を示した概略図である。
【図2】(a)インレットパイプの概略正面図である。(b)インレットパイプの一部を断面で示した分解正面図である。
【図3】インレットパイプの概略平面図である。
【図4】インレットパイプの概略右側面図である。
【図5】(a)静止締結部材の概略平面図である。(b)静止締結部材の片側を断面にした概略正面図(側面図)である。(c)静止締結部材の底面図である。
【図6】静止締結部材が金型に保持された状態を部分的に示した断面図である。
【図7】(a)〜(d)第1の凹凸形状および第2の凹凸形状のその他の形態の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係るインレットパイプ1の使用時の状態を示した概略図である。インレットパイプ1は、例えば自動二輪車等のエンジン2の吸気系において使用される部材であり、同図に示されるように、エンジン2の燃焼室(図示省略)内へ流入する吸気の量を調節するスロットルバルブ(図示省略)を備えるスロットルボディ3と、エンジン2のシリンダヘッド2a等に形成されて燃焼室内に繋がる吸気ポート2bとを繋ぐジョイントとして機能するように構成されている。また、インレットパイプ1は、吸気内へ燃料を噴射して混合気とするインジェクタ4が、ブラケット5を介して固定されるように構成されている。
【0020】
図2(a)は、インレットパイプ1の概略正面図であり、図2(b)は、インレットパイプ1の分解正面図であり、一部を断面で示している。また、図3は、インレットパイプ1の概略平面図であり、図4は、インレットパイプ1の概略右側面図である。なお、本実施形態では、図2(a)および(b)を正面図としているが、いずれの方向を正面としてもよいことは言うまでもない。
【0021】
これらの図に示されるように、インレットパイプ1は、管状の管路部10と、管路部10の一端に設けられる第1の接続部20と、管路部10の他端に設けられる第2の接続部30と、管路部10の途中に設けられた貫通孔である挿入孔40と、挿入孔40の近傍に設けられた支持部50と、を備えている。
【0022】
管路部10は、スロットルボディ3を通過した吸気がエンジン2の吸気ポート2bへと向かう通気路12を形成する略円形断面の管状の部材である。本実施形態では、図2(a)に示されるように、シリンダヘッド2aとスロットルボディ3の配置に合わせて、通気路12の中心軸線C1がやや湾曲した曲線状となるように管路部10を構成している。また、管路部10は、フェノール樹脂等の耐熱性を有する樹脂から構成されており、射出成型等によって一体成型されている。
【0023】
第1の接続部20は、管路部10の上流側の端部に設けられており、スロットルボディ3に接続される部分である。本実施形態では、第1の接続部20を、適宜のゴム製のインシュレータ22から構成している。このインシュレータ22は、図2(b)に示されるように、管路部10の吸気側端面14に連結されている。この場合、インシュレータ22は加硫接着によって管路部10と一体化させる。あるいは、インシュレータ22を管路部10の吸気側端面14と係合させて接着剤によって接着してもよい。また、インシュレータ22の外周部22aには、金属製のバンド6(図1参照)が取り付けられるようになっている。
【0024】
従って、スロットルボディ3は、インシュレータ22の内部に一部が挿入されることによってインレットパイプ1に接続される(図1参照)。そして、バンド6をボルト6aによって締め付けることにより、スロットルボディ3はインレットパイプ1に固定される。また、スロットルボディ3は、インシュレータ22に設けられた2つの位置決め突起22bによって、インレットパイプ1に接続される向きが定められるようになっている。
【0025】
第2の接続部30は、管路部10の下流側の端部に設けられており、エンジン2に接続される部分である。本実施形態では、第2の接続部30を、管路部10の半径方向に延出する略菱形状のフランジ部32と、フランジ部32の両端部近傍にそれぞれ配置された2つの貫通部材34と、から構成している。このうち、フランジ部32は、管路部10と貫通部材34を繋ぐ部分であり、樹脂により管路部10と一体成型されている。また、貫通部材34は、インレットパイプ1をエンジン2に固定するためのボルト7(図1参照)が挿通される円筒状の部材であり、適宜の強度を有する金属から構成されている。
【0026】
すなわち、インレットパイプ1は、貫通部材34に挿通されたボルト7を、エンジン2に形成されためねじ2c(またはナット)に螺合させて締結することにより、エンジン2に固定されるようになっている(図1参照)。なお、第2の接続部30のエンジン2と対向する面30aには、Oリング等のシール部材(図示省略)を配置するための環状のシール溝部36が形成されている。
【0027】
貫通部材34は、インサート成型、すなわち予め金型内に貫通部材34を配置した上で金型内に樹脂を充填して管路部10およびフランジ部32等を成型することにより、両端面が露出した状態(フランジ部32を貫通した状態)でフランジ部32内に埋め込まれている。本実施形態では、このようにインサート成型によってフランジ部32内に貫通部材34を埋め込むことで、管路部10およびフランジ部32を樹脂により一体的に成型しながらも、インレットパイプ1をエンジン2に十分な締結力で確実に固定することを可能としている。
【0028】
また、貫通部材34の外周部には、周方向に連続する溝状(くびれ状)の凹部34aが形成されており、フランジ部32を構成する樹脂は、成型時にこの凹部34aを埋めた状態で硬化するようになっている。すなわち、凹部34aは、フランジ部32と係合するようになっており、貫通部材34がフランジ部32から脱落するのを防止する抜け止め用の凹凸形状として機能している。
【0029】
挿入孔40は、管路部10の外側と通気路12を繋ぐように設けられた直線状の貫通孔であり、インジェクタ4のノズル4a側の一部が挿入される孔である(図1参照)。管路部10の湾曲の外側部分における第2の接続部30側端部には、上流側に向けて斜め方向に突出する略円柱状の突出部42が設けられており、挿入孔40は、この突出部42内において、突出部42の突出方向Aに沿って直線的に(すなわち、自身の中心軸線C2が突出方向Aと略平行となるように)形成されている。
【0030】
従って、挿入孔40は、通気路12の下流端12a近傍に正面視で斜め方向に繋がるように、すなわち図2(a)に示されるように、正面視において自身の中心軸線C2が通気路12の中心軸線C1(または中心軸線C1の接線)に対して上流側から鋭角に交差するように形成されている。また、挿入孔40は、図3および4に示されるように、平面視または側面視においては、自身の中心軸線C2が通気路12の中心軸線C1と略一致するように形成されている。
【0031】
なお、突出部42は、樹脂により管路部10と一体成型されている。また、挿入孔40の外側端部は、内径が拡大された拡大部40aとなっており、この拡大部40aとインジェクタ4の隙間には、Oリング等のシール部材(図示省略)が配置される。
【0032】
支持部50は、管路部10の突出部42よりも上流側において、突出部42と略平行な方向(突出方向B)に突出するように設けられている。支持部50は、突出部42と同様に、樹脂により管路部10と一体成型されており、図3および4に示されるように、正面側に設けられた略円柱状の円柱部50aと、円柱部50aから背面側に向けて延設された略壁状のリブ50bと、から構成されている。
【0033】
円柱部50aの先端部(上部)には、ブラケット5を固定するためのボルトである回転締結部材8(図1参照)と螺合する静止締結部材52が埋め込まれている。この静止締結部材52は、内周面にめねじが形成されたねじ穴52aを中央部に備える略有底円筒状の部材であり、適宜の強度を有する金属から構成されている。すなわち、静止締結部材52は、いわゆる袋ナットと同様に構成されている。
【0034】
静止締結部材52は、貫通部材34と同様にインサート成型により、ねじ穴52aの開口部52b側の端部が露出した状態で支持部50内に埋め込まれている。従って、本実施形態では、支持部50に固定された静止状態の静止締結部材52に対し、回転締結部材8のみを回転させてねじ込むことによりブラケット5を支持部50に締結して固定するようになっている。なお、ねじ穴52aの中心軸線C3は、図2(a)に示されるように、支持部50の突出方向Bおよび挿入孔40の中心軸線C2と略平行となっている。
【0035】
リブ50bの先端面(上面)の背面側端部近傍には、ブラケット5に設けられた位置決めピン(図示省略)が挿入される位置決め穴54が設けられている。そして、ブラケット5は、位置決めピンが位置決め穴54に挿入された状態で回転締結部材8によって支持部50に締結されることにより、インジェクタ4を挿入孔40内にノズル4a側の一部を挿入した状態で保持するように構成されている。インジェクタ4は、このようにしてインレットパイプ1に固定されるようになっている。
【0036】
すなわち、本実施形態では、インジェクタ4およびブラケット5を適切に配置した後に、静止締結部材52へ回転締結部材8をねじ込むだけで、インジェクタ4をインレットパイプ1に固定することが可能となっている。また、回転締結部材8を緩めて静止締結部材52から取り外すだけで、インジェクタ4をインレットパイプ1から取り外すことが可能となっている。
【0037】
従って、本実施形態によれば、ボルトとナットを適切に配置した上で2つの工具で両者を螺合させる作業を、第1の接続部20と第2の接続部30の間の狭隘なスペースにおいて行う必要がなくなるため、組立時およびメンテナンス時の作業性を大幅に向上させることができる。また、狭隘部用の特殊工具等を必要とすることもなく、一般的な工具のみで容易にインジェクタ4の着脱を行うことが可能となっている。
【0038】
なお、本実施形態では、図3および4に示されるように、支持部50の円柱部50aを、通気路12の中心軸線C1および挿入孔40の中心軸線C2に対して、正面側にオフセットして配置するようにしている。このようにすることで、管路部10の管長を短くしながらも、適切なサイズの静止締結部材52を設けることが可能となる。
【0039】
さらに、本実施形態では、円柱部50aから背面側に向けてリブ50bを延設することにより、円柱部50aをオフセットさせながらも支持部50の剛性を高めるようにしている。リブ50bは、円柱部50aよりも幅狭に構成されると共に、挿入孔40の中心軸線C2(すなわち、インジェクタ4の軸方向)と略平行に突出しているため、インジェクタ4との干渉が生じないようになっている。また、本実施形態では、リブ50bを活用して位置決め穴54を設けることにより、支持部50の形状をコンパクト且つ効率的な形状とすることを可能としている。
【0040】
また、本実施形態では、円柱部50aの基端部分を窪ませた逃げ部56を設けることによってフランジ部32周辺のスペースを確保し、インレットパイプ1をエンジン2に固定する際の作業性が阻害されないようにしている。
【0041】
また、本実施形態では、ねじ穴52aの中心軸線C3を、挿入孔40の中心軸線C2と略平行とすることで、インジェクタ4の挿入方向と回転締結部材8の挿入方向を揃えるようにしている。このようにすることで、インジェクタ4の着脱時の作業性をより向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態では、静止締結部材52のねじ穴52aの中心軸線C3と支持部50の突出方向を略平行とすることで、支持部50をコンパクトに構成しながらも、静止締結部材52を確実に保持することを可能としている。すなわち、このようにすることで、円柱部50aの半径方向の寸法を必要最低限にすることが可能となる。
【0043】
さらに、本実施形態では、静止締結部材52を底部52cを有する袋ナット状に構成することで、静止締結部材52の外周部52dだけではなく、底部52cも支持部50を構成する樹脂で覆われるようにしている。このようにすることで、静止締結部材52と支持部50の接触面積を増やし、静止締結部材52をより確実に保持することが可能となる。
【0044】
また、静止締結部材52の底部52cを支持部50内に埋めるようにすることで、貫通部材34および静止締結部材52の2種類の部材をインサート成型する金型の設計の自由度を高めることが可能となる。すなわち、互いに近接し、且つ異なる姿勢で配置される2種類の部材をインサート成型する場合において、一方の部材を片側だけ露出させるようにすることで、金型の分割面の設定を効率的にすることが可能となる。これにより、生産性を向上させることができる。
【0045】
次に、静止締結部材52の詳細について説明する。
【0046】
図5(a)は、静止締結部材52の概略平面図であり、同図(b)は、静止締結部材52の片側を断面にした概略正面図(側面図)であり、同図(c)は、静止締結部材52の底面図である。これらの図に示されるように、静止締結部材52は、中央部にねじ穴52aを備える略有底円筒状の部材であり、支持部50から露出する部分である露出部52eと、支持部50内に埋め込まれる埋没部52fと、から構成されている。
【0047】
露出部52eは、埋没部52fよりも大径の略フランジ状に構成されており、露出部52eの上面52e1にはねじ穴52aの開口部52bが設けられている。また、この開口部52bの縁部分には、回転締結部材8をねじ穴52aに誘導するための面取り52b1が設けられている。
【0048】
埋没部52fは、抜け止め用の第1の凹凸形状52gと、回り止め用の第2の凹凸形状52hと、が外周部52dに形成されている。具体的には、第1の凹凸形状52gは、支持部50と係合することにより、静止締結部材52が支持部50から脱落するのを防止するためのものであり、第2の凹凸形状52hは、支持部50と係合することにより、回転締結部材8をねじ穴52aにねじ込む際に静止締結部材52が共回りするのを、防止するためのものである。
【0049】
本実施形態では、第1の凹凸形状52gを、露出部52eに隣接する位置において周方向に連続する1つの溝状(くびれ状)に構成している。また、第2の凹凸形状52hを、ねじ穴52aの中心軸線C3と略平行に形成された複数の溝部52h1を有する平目ローレット形状に構成している。このように、埋没部52fに抜け止め用の第1の凹凸形状52gおよび回り止め用の第2の凹凸形状52hを設けることにより、インサート成形によって支持部50に埋め込まれた静止締結部材52を確実に保持することが可能となるため、インジェクタ4をインレットパイプ1に容易且つ確実に固定することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態では、露出部52eをフランジ状に構成すると共に、第1の凹凸形状52gを露出部52eに隣接させることにより、第1の凹凸形状52gを、インサート成型において静止締結部材52を金型に保持する治具の係合用として兼用するようにしている。図6は、静止締結部材52が金型100に保持された状態を部分的に示した断面図である。
【0051】
同図に示されるように、静止締結部材52は、第1の金型110に設けられた保持用凹部112内に露出部52eが収容されると共に、保持用突起部114がねじ穴52a内に挿入された状態で、第1の金型110に配置される。そして、第1の金型110と組み合わされる第2の金型120に設けられた押え治具122が、第1の凹凸形状52gと係合することによって金型100に保持されるようになっている。
【0052】
すなわち、静止締結部材52は、押え治具122が露出部52eを埋没部52f側から押えると共に埋没部52fを外周側から押えることにより、第1の金型110の保持用凹部112および保持用突起部114と第2の金型120の押え治具122の間に挟持されるようになっている。従って、本実施形態では、押え治具122の形状が切り欠き58となって支持部50に残されることとなる(図1〜4参照)。
【0053】
このようにすることで、静止締結部材52の形状を複雑化することなく、金型100に静止締結部材52を安定的に保持することができるため、製造コストを削減することが可能となる。また、金型100の分割面130を効率的に設定することができるため、生産性を向上させることができる。
【0054】
なお、第1の凹凸形状52gおよび第2の凹凸形状52hは、図5(a)〜(c)に示した形状に限定されるものではなく、支持部50と係合して抜け止め機能または回り止め機能を発揮可能な形状であればどのような形状であってもよい。図7(a)〜(d)は、第1の凹凸形状52gおよび第2の凹凸形状52hのその他の形態の例を示した図である。なお、同図(a)〜(d)においては、静止締結部材52の正面図および底面図を上下に配置して示している。
【0055】
第1の凹凸形状52gは、例えば同図(a)に示されるように、周方向に形成された複数の溝52g1から構成されるものであってもよい。この場合、同図(a)に示されるように、第1の凹凸形状52gと第2の凹凸形状52hを重ねて設けるようにしてもよいし、領域を分けて形成するようにしてもよい。また、この場合において、押え治具122が係合する窪み等の凹凸形状を別途設けるようにしてもよいし、露出部52eと埋没部52hの段差に押え治具122を係合させるようにしてもよい。
【0056】
また、第2の凹凸形状52hは、例えば同図(b)に示されるように、綾目ローレット形状であってもよい。この場合、第2の凹凸形状52hに回り止め機能だけでなく、抜け止め機能も持たせることができる。また、第2の凹凸形状52hは、例えば同図(c)に示されるような多角形状や、その他にもいわゆるDカット形状や二面カット形状等であってもよい。さらに第2の凹凸形状52hは、例えば同図(d)に示されるように、複数の凸部52h2から構成されるものであってもよい。
【0057】
また、第1の凹凸形状52gは、同図(d)に示されるように、第2の凹凸形状52hを構成する凸部52h2の端部によって構成されるものであってもよい。また、同図(d)に示されるように、第2の凹凸形状52hは底部52cに形成されるものであってもよく、この場合、凸部52h2に代えて溝部52h1や窪み等を底部52cに形成するようにしてもよい。さらに、図示は省略するが、金型100に対する静止締結部材52の姿勢によっては、第2の凹凸形状52hを押え治具122の係合用として兼用するようにしてもよい。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係るインレットパイプ1は、一端がスロットルボディ3に接続され、他端がエンジン2に接続される樹脂製の管路部10と、管路部10の途中に設けられ、インジェクタ4が挿入される挿入孔40と、管路部10と一体的に設けられ、インジェクタ4を支持する支持部50と、支持部50にインサート成型によって埋め込まれ、インジェクタ4の固定用の回転締結部材8と螺合する静止締結部材52と、を備えている。
【0059】
このようにすることで、静止締結部材52へ回転締結部材8をねじ込むだけで、インジェクタ4をインレットパイプ1に固定することが可能となるため、インレットパイプ1を樹脂製としながらもインジェクタ4を容易且つ確実に固定することができる。
【0060】
また、静止締結部材52は、支持部50に埋め込まれる埋没部52fに、抜け止め用の第1の凹凸形状52gと、回り止め用の第2の凹凸形状52hと、を有している。このようにすることで、静止締結部材52を支持部50で確実に保持することが可能となるため、締結作業を容易にすると共にインジェクタ4を適正な締結力で確実に固定することができる。
【0061】
また、第1の凹凸形状52gまたは第2の凹凸形状52hは、インサート成型において静止締結部材52を金型100に保持する治具(押え治具122)の係合用として兼用されている。このようにすることで、静止締結部材52の形状を複雑化することなく、金型100に静止締結部材52を安定的に保持することができる。
【0062】
また、静止締結部材52は、支持部50から露出する露出部52eを有し、第1の凹凸形状52gは、露出部52eに隣接して設けられ、インサート成型において静止締結部材52を金型100に保持する治具(押え治具122)の係合用として兼用されている。このようにすることで、第1の金型110に設けた保持用凹部112内に露出部52eを収容すると共に、第2の金型120に設けた押え治具122によって露出部52eを押えることが可能となるため、静止締結部材52を金型100に安定的に保持することができる。
【0063】
また、静止締結部材52は、内周面にめねじが形成された非貫通のねじ穴52aを有し、ねじ穴52aの開口部52bの反対側の底部52cは、支持部50に埋め込まれている。このようにすることで、静止締結部材52と支持部50の接触面積を増やすことが可能となるため、静止締結部材52をより確実に保持することができる。また、金型100の分割面130の設定を効率的にすることができる。
【0064】
また、支持部50は、管路部10の外側から所定の突出方向Bに向けて突設され、静止締結部材52は、支持部50の先端部においてねじ穴52aの中心軸線C3が突出方向Bと略平行となるように配置されている。このようにすることで、支持部50をコンパクトに構成しながらも、静止締結部材52の底部52c外周部52dを適切に覆い、静止締結部材52を確実に保持することができる。
【0065】
また、突出方向Bは、挿入孔40の中心軸線C2と略平行となっている。このようにすることで、支持部50とインジェクタ4の干渉を適宜に回避しつつ、支持部50によって静止締結部材52を確実に保持することができる。
【0066】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明のインレットパイプは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0067】
例えば、上記実施形態では、静止締結部材52をナットとし、回転締結部材8をボルトとした例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、静止締結部材52をボルトとし、回転締結部材8をナットとしてもよい。すなわち、図示は省略するが、静止締結部材52の露出部52eにおねじ部を設け、これにナットである回転締結部材8を螺合させることによってインジェクタ4を固定するようにしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、管路部10を緩やかに湾曲した形状に構成した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、管路部10は直線的に構成されるものであってもよい。また、上記実施形態では、第1の接続部20をインシュレータ22から構成した例を示したが、第1の接続部20を第2の接続部30と同様に、フランジ部と貫通部材から構成するようにしてもよい。また、インレットパイプ1の各部の形状および配置は、上記実施形態において示した例に限定されるものではなく、エンジン2およびスロットルボディ3の配置、ならびにインジェクタ4の種類等に応じて適宜に変更可能であることは言うまでもない。
【0069】
また、本発明の実施形態に記載された作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のインレットパイプは、自動車や自動二輪車を始め、各種エンジンを使用する機器の分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 インレットパイプ
2 エンジン
3 スロットルボディ
4 インジェクタ
8 回転締結部材
10 管路部
40 挿入孔
50 支持部
52 静止締結部材
52a ねじ穴
52b ねじ穴の開口部
52c 静止締結部材の底部
52e 露出部
52f 埋没部
52g 第1の凹凸形状
52h 第2の凹凸形状
100 金型
122 押え治具
B 支持部の突出方向
C2 挿入孔の中心軸線
C3 ねじ穴の中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端がスロットルボディに接続され、他端がエンジンに接続される樹脂製の管路部と、
前記管路部の途中に設けられ、インジェクタが挿入される挿入孔と、
前記管路部と一体的に設けられ、前記インジェクタを支持する支持部と、
前記支持部にインサート成型によって埋め込まれ、前記インジェクタの固定用の回転締結部材と螺合する静止締結部材と、を備えることを特徴とする、
インレットパイプ。
【請求項2】
前記静止締結部材は、前記支持部に埋め込まれる埋没部に、抜け止め用の第1の凹凸形状と、回り止め用の第2の凹凸形状と、を有することを特徴とする、
請求項1に記載のインレットパイプ。
【請求項3】
前記第1の凹凸形状または前記第2の凹凸形状は、インサート成型において前記静止締結部材を金型に保持する治具の係合用として兼用されることを特徴とする、
請求項2に記載のインレットパイプ。
【請求項4】
前記静止締結部材は、前記支持部から露出する露出部を有し、
前記第1の凹凸形状は、前記露出部に隣接して設けられ、インサート成型において前記静止締結部材を金型に保持する治具の係合用として兼用されることを特徴とする、
請求項3に記載のインレットパイプ。
【請求項5】
前記静止締結部材は、内周面にめねじが形成された非貫通のねじ穴を有し、
前記ねじ穴の開口部の反対側の底部は、前記支持部に埋め込まれることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載のインレットパイプ。
【請求項6】
前記支持部は、前記管路部の外側から所定の突出方向に向けて突設され、
前記静止締結部材は、前記支持部の先端部において前記ねじ穴の中心軸線が前記突出方向と略平行となるように配置されることを特徴とする、
請求項5に記載のインレットパイプ。
【請求項7】
前記突出方向は、前記挿入孔の中心軸線と略平行であることを特徴とする、
請求項6に記載のインレットパイプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−96239(P2013−96239A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236994(P2011−236994)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000143307)株式会社荒井製作所 (100)